昭和31(う)1658 業務上過失傷害被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和32年7月18日 福岡高等裁判所 破棄自判
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      被告人は無罪。          理    由  本件控訴の趣意は、弁護人鳥山忠雄、同副島武之助連名提出の控訴趣意書記載の とおりであるから、これ

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判決文本文5,630 文字)

主文原判決を破棄する。 被告人は無罪。 理由本件控訴の趣意は、弁護人鳥山忠雄、同副島武之助連名提出の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用する。 同控訴趣意第一点(イ)について。 原審における鑑定人A、同B作成の各鑑定書、証人C、同D、同Eの各証言によれば、所論のごとく坑内において岩石に発破孔(深さ約四・五尺)を穿ち火薬(通常ダイナマイト)を装填して発破を行う場合、岩盤の強度、穿孔の順序、位置、角度等の不適、装薬量の寡少その他の原因により、装填火薬は爆発したが岩盤爆破の効果が十分でなく、発破孔がその儘の状態において、或はその孔口が一部破砕した状態において残存する場合を、所謂「鉢を打つ」、「鉄砲を打つ」又は「空発」と称し、この場合においては残存する発破孔(即ち鉢孔)内に火薬が残留しないのを通例とするが、極めて稀有な例外的事例として火薬の一部が不爆に終つて残留する場合があり、しかも「鉢を打つ」ことと火薬の一部残留との間には必ずしも因果関係が存するものでないことが認められる。 又原判決がその理由において、「当時同箇所は被告人の前番者発破係員Fが発破作業を実施し、その折装填ダイナマイトの一部が不爆に終り爆破不成功に帰し、その穿孔(鉢孔)を残置した儘云々と」判示していることも所論のとおりである。しかし、原判決挙示の証拠によれば右判示のとおり、装填ダイナマイトの一部が不爆に終つていた事実は極めて明らかであり、只被告人において当時該事実を認識していたか否かが被告人の採つた爾後の処置について過失の有無を判断する上に重要な意義を有するものであるが、判文を熟読すれば原判決は被告人が当時右一部不爆の事実を察知していたものと認定したものではなく、被告人に有利な判断をしていることが認められるか 失の有無を判断する上に重要な意義を有するものであるが、判文を熟読すれば原判決は被告人が当時右一部不爆の事実を察知していたものと認定したものではなく、被告人に有利な判断をしていることが認められるから、原判決に所論の如き事実誤認は存しない。論旨は理由がない。 同控訴趣意第一点(ロ)について。 よつて記録を精査するに、原審における証人G(公判及び公判準備期日共)、同H同Cの各証言、被告人の司法警察員に対する供述調書によれば、被告人の指揮、監督下にある仕操夫(先山)Iが本件事故を惹起した鉢孔附近に穿孔するに際しては、該鉢孔を点検した上これと交錯しないよう約一〇糎を隔てた箇所に穿孔ドリルをかけて作業した事実が窺われる。原判決挙示にかかるIの司法警察員に対する供述調書によつては未だ以て論旨摘示の如き原判示事実を認め難いのみならず、該調書は前後に矛盾撞着があり又経験則に副わないところがあつて前掲各証拠に対比し措信し難い。然るに原審が該供述調書によりIがドリルを同作業箇所の盤際右端の鉢孔に繰り入れた事実を認定したのは証拠の判断を誤り判決に影響を及ぼすべき事実を誤認したものにして原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。 同控訴趣意第二点(イ)(ロ)及び第三点(二)について、石炭鉱山保安規則第一九〇条は「不発」と題してその第一項に、装填された火薬類が点火後爆発しないとき、又はその爆発の確認が困難であるときは、当該発破係員は左の各号(危険防止の処置)の規定を守らなければならない旨規定し、同第一九一条第一項は、装填された火薬類が不発のときは、当該発破係員は第一、二号、第四、五号の方法により不発火薬類を回収する処置を構じなければならない言及び同第二第三項は、不発火薬類を回収することが出来ない場合に採るべき処置について詳細規定している、従つて右各条項を 一、二号、第四、五号の方法により不発火薬類を回収する処置を構じなければならない言及び同第二第三項は、不発火薬類を回収することが出来ない場合に採るべき処置について詳細規定している、従つて右各条項を比較検討<要旨第一>すれば、右第一九一条第一項所定の「火薬類の不発」とは、即ち装填された火薬類が点火後全く爆発しないで</要旨第一>その儘残留しているとき、又は爆音その他の状況よりして爆発したのを確認することが困難であるため、装填された火薬類の全部又は一部が爆発しないで残留することにつき相当の蓋然性を有するときと解するを相当とする。ところが所謂「鉢を打つた」場合においては上来説示のごとく発破孔即ち鉢孔は残存しているけれども、装填された火薬類は爆発して孔内に残留しないのを通例とし、極めて稀有の例外的事例として火薬の一部残留することかあるに過ぎ云いのであつて、この場合においては通常一部火薬の残留の蓋然性は極めて微少と謂うべきであるから、所謂「鉢を打つた」場合は同規則第一九一条第一項の「火薬類の不発」に該当するものでなく、従つて同条各項の適用外にあるものと解するのが相当である。尤も発破係員は発破後においては同規則第一九二条第一項第一号に従い危険の有無につき鉢孔を検査すべく、その結果万一火薬の一部が残留し又はこれを推測すべき情況にあることを認めたときは、右不発の場合に準じて同第一九一条各項の規定に従つて処置すべきことは、坑内保安の万全を期するため発破孔内に残留する火薬類の回収等について詳細規定した同条項の趣旨に照らして蓋し疑を容れないところである。ところで、原判決が所謂「鉢を打つた」場合をもなお同条の「火薬類の不発」に該当するものと解し、しかも鉢孔を生ぜしめた当該発破係員でない次番の発破係員たる被告人に対し、鉢孔を検査すべき義務ありとした上、火薬が残 原判決が所謂「鉢を打つた」場合をもなお同条の「火薬類の不発」に該当するものと解し、しかも鉢孔を生ぜしめた当該発破係員でない次番の発破係員たる被告人に対し、鉢孔を検査すべき義務ありとした上、火薬が残留しないと認めた場合においてまでも同条第一項第一号に従つて穿孔すべき業務上の注意義務があるものと認めたのは、判決に影響を及ぼすべき法令の解釈、適用を誤つた違法があるものと謂うべく、原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。 同控訴趣意第二点(ハ)及び第三点(イ)(ロ)(ハ)(ホ)について。 所謂「鉢を打つた」場合については石炭鉱山保安規則に直接規定するところがないことは所論のとおりである。けれども、それだからといつて爾後の発破作業に際し、鉢孔の存在を無視しこれについて何等の注意を要しないものと速断すべきでない。而して原審における鑑定人A、同B作成の各鑑定書、証人C、同E及び同Dの各証言並びに当審受命裁判官の証人Dに対する尋問調書によれば、「鉢を打つた」場合残存する鉢孔には極めて稀有な事例ではあるが火薬の一部残留することがあり、しかも該残留火薬は爾後の検査によりこれを発見することは容易でない場合が多く、且つ若しこれに穿孔ドリルを接触すれば爆発の虞があつて万一の危険なきを保し難い事実を認め得るから、該事実に前記各証拠を参酌して考察<要旨第二>すれば、坑内発破係員は所謂「鉢を打つた」場合には、石炭鉱山保安規則第一九二条第一項第一号に従い適当</要旨第二>な方法を以て危険の有無につき針孔を検査し、一部火薬の残留を認め又はこれを推測すべき情況にあることを認めたときは、同第一九一条各項の規定に従つて火薬回収等の処置を構ずきは勿論であるが、残留火薬がないと認めた場合においても、作業時間の都合により該針孔を残置した儘昇坑したときは、針孔の在る岩盤、鉢孔の箇 ときは、同第一九一条各項の規定に従つて火薬回収等の処置を構ずきは勿論であるが、残留火薬がないと認めた場合においても、作業時間の都合により該針孔を残置した儘昇坑したときは、針孔の在る岩盤、鉢孔の箇数、位置、危険の有無を次番の発破係員に引継ぎ、以て同係員に対し鉢孔につ雪詳細認識を与えてその発破件業を安全且つ容易ならしめ、同係員の右作業に際し鉢孔内に万一残留することのあるべき火薬の爆発す<要旨第三>ることを未然に防止すべき業務上の注意義務があるものと謂うべく、又次番に当る発破係員は右鉢孔の存在す</要旨第三>る岩盤に発破孔を穿撃する場合は、附近に鉢孔の有無を調査し、且つ若し鉢孔を認めたときは該鉢孔(通常深さ約四、五尺)の方向を確かめてこれに発破孔が交錯しない程度の間隔を保つて穿孔し、以て鉢孔内に万一残留することのあるべき火薬に穿孔ドリルが接触して爆発を起すことのないよう注意すべき業務上の義務があるものと謂わねばならない。尤もこの場合次番に当る発破係員が穿孔するに際し、更に自ら残留火薬の有無につき鉢孔を検査することは危険防止のため万全の注意を尽す趣旨において当を得た措置であるけれども、右鉢孔については自らこれを生ぜしめ、しかも爆音その他当時の状況を現認して残留火薬の有無を検査するのに最も適した当該発破係員に対しこれが検査とその引継の義務を認める以上、鉢孔を生ぜしめた者でない、しかも適確なる検査をなすべき資料において当該発破係員に劣つている次番の破発係員に対しでまても、前記検査義務を負わしめることは特別の事情がない限り必要がないものと解するのが相当である。而して原判決挙示の証拠によれば、被告人の前番に当る発破係員Fは昭和二九年一月一三日午後一一時頃より翌一四日午前七時三〇分頃までの間、長崎県西彼杵郡a町J鉱業所一坑口内西卸左先第五ポケツト風道 ある。而して原判決挙示の証拠によれば、被告人の前番に当る発破係員Fは昭和二九年一月一三日午後一一時頃より翌一四日午前七時三〇分頃までの間、長崎県西彼杵郡a町J鉱業所一坑口内西卸左先第五ポケツト風道昇において発破作業に従事中鉢孔を生ぜしめ、しかも担当時間切れにより五個の鉢孔を残置した儘昇坑したが、鉢孔の箇数、位置等につき引継をしなかつたため、次番の発破係員たる被告人は右Fが同所において鉢孔を生せしめたことのみを聞知してその詳細を知らずに入坑し、午前一一時過頃発破作業を開始した事実か認められる。そこで被告人が穿孔に際して施した措置につき検討するに、原審における鑑定人A、同B作成の各鑑定書、証人C、同D、同E、同G、同Hの各証言、当審受命裁判官の証人Dに対する尋問調書、被告人の司法警察員及び検察官に対する各供述調書、司法警察員作成の実況見分調書、原裁判所の検証調書を綜合すれば、被告人は仕操夫(先山)I、同(後山)G、同H、同Kを指揮監督して前記箇所の岩盤に穿孔するに際し、附近に鉢孔の有無を調査し三個の鉢孔を認めたので、何れも孔内を検査した上約一〇糎を隔てた箇所に穿孔せしめて合計一一個を穿孔した事実及び一二個目の穿孔に際しては本件事故発生の鉢孔か落盤に蔽われていたため自らはこれを認め得なかつたが、仕操夫(先山)Iにおいてこれを発見して検査した上約一〇糎の間隔を保つて穿孔作業に従事中、穿孔ドリルが残留火薬に接触して爆発した事実、しかも右火薬は鉢孔附近に生じていた岩盤の亀裂内に流入して残留していたものではないかとの疑が多分に存する事実が認められ、鉢孔内にその儘残留せる火薬に穿孔ドリルか接触した事実は未だ以て確認し難い。以上認め得べき各事実に徴すれば、被告人は鉢孔のある岩盤に穿孔するに際し前叙の如き業務上必要な注意義務を怠つたものとは速断し難く、 その儘残留せる火薬に穿孔ドリルか接触した事実は未だ以て確認し難い。以上認め得べき各事実に徴すれば、被告人は鉢孔のある岩盤に穿孔するに際し前叙の如き業務上必要な注意義務を怠つたものとは速断し難く、記録を精査するも被告人に前記任意義務の懈怠あることを確認すべき資料は存しない。然るに原審が挙示の証拠により原判示事実を認定して被告人に業務上の注意義務を怠つた過失があるものと断定したのは、法令の解釈、適用を誤り、且つ事実認定を誤つた違法があるものと謂うべく、しかも該違法は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。 そこで刑事訴訟法第三九七条第一項に則り原判決を破棄し、同法第四〇〇条但書に従い更に判決する。 本件公訴事実の要旨は、被告人は長崎県西彼杵郡a町所在J鉱業所に発破係員として勤務して居る者なるところ、昭和二九年一月一四日午前一一時一〇分頃担当箇所である同鉱業所一坑口内西卸第五ポケツト風道昇において坑員を指揮監督して発破の業務に従事するに際し、同箇所には被告人の前番の発破係員であるFが不完全な爆破に終つた穿孔があり、危険であることを右鉱業所技師Lから聞知して居たのに拘らず、危険なきものと軽信して同所においてドリルを以て穿孔作業に従事中の坑員に対し指揮監督をなさなかつた業務上の不注意により作業中のドりルの尖端を石不完全爆破に因る残留ダイナマイトに接触せしめて爆発させ、因つて同作業に従事中の坑員Kに対し両眼、前額部に全治四週間を要する爆傷を、Iに対し前額部、右肘部等に全治一三日間を要する挫傷を、Hに対し右前腕部に全治二日間を要する擦過傷を、Gに対し前額部に全治一〇日間を要する挫傷を蒙らしめたと謂うに在るが、論旨第二点(ハ)及び第三点(イ)(ロ)(ハ)(ホ)に対する判断において説明したとおり被告人に過 部に全治二日間を要する擦過傷を、Gに対し前額部に全治一〇日間を要する挫傷を蒙らしめたと謂うに在るが、論旨第二点(ハ)及び第三点(イ)(ロ)(ハ)(ホ)に対する判断において説明したとおり被告人に過失を認むべき確証がなく、結局本件は犯罪の証明がないものとして刑事訴訟法第三三六条に則り無罪の言渡をなすべきものとする。 よつて主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官藤井亮裁判官中村荘十郎裁判官尾崎力男)

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