平成30(ワ)25914 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年4月20日 東京地方裁判所
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判決文本文59,243 文字)

令和4年4月20日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成30年(ワ)第25914号損害賠償請求事件口頭弁論終結の日令和4年1月13日判決 主文 1 被告は、原告に対し、4億8096万3681円及びこれに対する平成30年8月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、これを2分し、その1を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求の趣旨被告は、原告に対し、9億6054万4899円及びこのうち別紙(損害額一覧)の「支払額」欄記載の各金員に対する「支払日」欄記載の各日の翌日から各 支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要原告は、主として日本及び韓国において菓子製造、ホテル経営等の各種事業を行うロッテグループに属する株式会社であり、被告は、平成18年9月21 日から平成26年12月26日までの間、原告の唯一の取締役かつ代表取締役であった者である。 本件は、原告が、被告が原告の代表取締役として実施した事業(以下「本件事業」という。その具体的な内容には争いがある。)は、明示的に写真撮影を禁止する小売店舗に組織的かつ継続的に無断撮影目的で立ち入り、隠し撮りを して画像を収集する違法行為を必然的に伴うものであったこと等から、もとよ り実施してはならなかったにも関わらず、これを実施したことが取締役としての任務懈怠(法令違反及び善管注意義務違反)にあたり、これにより、本件事業に要した費用9億6054万4899円に相当する損害を原告に与えたとして、会社法423 らず、これを実施したことが取締役としての任務懈怠(法令違反及び善管注意義務違反)にあたり、これにより、本件事業に要した費用9億6054万4899円に相当する損害を原告に与えたとして、会社法423条1項に基づき、被告に対し、同額の損害金及びこのうち別紙1「支払額」欄記載の各金員に対する「支払日」欄記載の各日(損害発生日) の翌日から各支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求めるのに対し、被告が、本件事業が違法行為を必然的に伴うものであったことを否認するなどして原告の請求を争う事案である(なお、原告は、遅延損害金の起算点が主文のとおりであることを認めている。)。 2 前提事実(争いがないか、後掲証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)(1) 当事者等ア原告は、主として日本及び韓国において菓子製造、ホテル経営等の各種事業を行うロッテグループに属する株式会社である。ロッテグループは、日本国内においては、持株会社である株式会社ロッテホールディングス (以下「ロッテHD」という。)の傘下に中核事業子会社である株式会社ロッテ(以下「ロッテ社」という。)を始めとして、原告やロッテ商事株式会社(以下「ロッテ商事」という。)等の多数の事業子会社を有し、グループ全体が一体として事業活動を行っている。各事業子会社は、生産、営業、サービス等の機能や取り扱う製品の種類等により区分され、実態と しては、大企業における社内部門に近いものとして機能している。原告は、その中で、ロッテグループ各社の依頼に基づき、その営業部門や生産部門で種々のサポートを行ってきた(甲1の1)。 なお、原告は、ロッテHDの完全子会社であるロッテ社の完全子会社であったが、平 の中で、ロッテグループ各社の依頼に基づき、その営業部門や生産部門で種々のサポートを行ってきた(甲1の1)。 なお、原告は、ロッテHDの完全子会社であるロッテ社の完全子会社であったが、平成30年3月15日付けで、ロッテHDの完全子会社となっ た。 イ被告(A)は、ロッテグループの創業者であるBの長男であり、平成18年9月21日に原告の取締役に就任して以降、平成26年12月26日までの間、原告の唯一の取締役かつ代表取締役の地位にあったが、同日付けで原告の取締役から解任された(甲1の1、甲1の2)。 ウ株式会社POOLIK(以下「プーリカ」という。)は、Cが代表取締 役を務めるパナソニック株式会社の子会社である(甲2)。プーリカは、本件事業において使用された画像をテキストデータ化するエンジン(piXserve)の日本におけるライセンスを有しており、本件事業に関わった。 (2) 本件事業の概要 原告は、小売店舗において収集した商品陳列棚の画像をマーケティングに有用な情報にデータ化した上で販売することを含む本件事業(なお、被告は、本件事業の内容に画像収集及び販売が含まれることを争う。)を実施した。 本件事業では、piXserveと呼ばれる画像をテキストデータ化するエンジン(処理装置。以下では「画像認識エンジン」ともいう。)を使用した 技術を開発した上、これを用いて小売店舗における商品の陳列の状況が撮影され画像を処理し、撮影された陳列棚における商品の位置、商品別個数、商品販売価格及び商品一覧等の情報をデータ化することが予定されていた。 (3) 本件事業の経緯等ア本件事業は、平成22年頃から、原告における新規事業として検討が開 始され、その後、日本におい 格及び商品一覧等の情報をデータ化することが予定されていた。 (3) 本件事業の経緯等ア本件事業は、平成22年頃から、原告における新規事業として検討が開 始され、その後、日本においてpiXserveのライセンスを受けていたプーリカと共同して本格的な検討が行われるようになった。原告では、本件事業に係るプロジェクトチームが設置され、原告の従業員であったDがチームのリーダーとして本件事業を担当した。本件事業は、Dがロッテグループ内の新規事業提案制度(以下「社内ベンチャー」という。)に応 募したことに端を発して検討が開始されたが、最終的には社内ベンチャー の対象となる事業としては採用されず、別の形で事業として進められることとなった。 イロッテグループの事業子会社が新規事業を開始する際は、ロッテグループの創業者でありロッテHDの代表取締役会長であったBの承認を得ることがロッテグループ内の共通認識であったところ、被告及びDは、平成2 3年10月11日、原告において本件事業を実施することの了承を求めるため、Bに対し、本件事業の説明を行い、本件事業実施に係るBの承認を得た(甲8)。 ウ平成23年12月21日、ロッテHDの取締役会(以下「本件取締役会」という。)が開催され、被告その他のロッテHDの取締役や原告における 本件事業の担当課長であったDが出席した上で本件事業の検討を行い、最終的に、事業開始後3年度終了時点で事業継続についてレビューすることを前提として、全会一致で本件事業の実施を承認する決議(以下「本件取締役会決議」という。)がされた(甲10の1、甲10の2)。 また、原告においては、同日付けで、本件事業のための約4億7000 万円の概算稟議が承認された(甲9の1)。 エ本件事業におい 締役会決議」という。)がされた(甲10の1、甲10の2)。 また、原告においては、同日付けで、本件事業のための約4億7000 万円の概算稟議が承認された(甲9の1)。 エ本件事業においては、プーリカに対するシステム、撮影機器等の開発や運用実験のための委託料等の支払が積み重なり、平成25年7月時点で上記の予算約4億7000万円をほぼ費消した。そこで、原告は、ロッテHDに対し、本件事業に係る追加投資の稟議を行い、同年8月21日付けで これが承認された(以下「本件追加投資承認」という。)。(甲22の1)オ本件追加投資承認により拠出された3億6750万円は平成26年5月までに本件事業のために全て費消され、本件事業を継続するためには、更に追加投資が必要となった。そこで、同年9月頃、本件事業継続のために追加投資の承認申請がされたが、追加投資やロッテグループによる事業の 引継ぎ等の支援が行われなかったため、本件事業は終了した。 (4) 被告の解任被告は、平成26年12月26日、ロッテHDの取締役会において、被告以外の出席取締役全員の賛成によりロッテHD取締役副会長の地位を解職された。また、被告は、原告を含むロッテHDの事業子会社各社について、いずれも取締役から解任された。 上記各解任に際し、被告は、①被告が原告の代表取締役として実行したプーリカに対する支払方法等が不適切であり、②ロッテグループ役員としての職務についても不適切な点があることが解任理由であるとの説明を受けた。 3 争点及び争点に関する当事者の主張本件の訴訟物は、原告の被告に対する会社法423条1項に基づく損害賠償 請求権であり、争点は、被告が、本件事業を実施したことが、原告の取締役としての任務懈怠(法令違反又 する当事者の主張本件の訴訟物は、原告の被告に対する会社法423条1項に基づく損害賠償 請求権であり、争点は、被告が、本件事業を実施したことが、原告の取締役としての任務懈怠(法令違反又は善管注意義務違反)といえるか(争点1)、任務懈怠にあたる場合、原告が本件事業のためにした支出9億6054万4899円が当該任務懈怠と因果関係のある損害といえるか(争点2)である。 (1)(争点1)被告の任務懈怠(法令違反、善管注意義務違反)の有無 (原告の主張)ア取締役は、業務を執行するに当たり法令を遵守する義務を負い、法令違反行為を行う裁量は与えられていない。本件事業は小売店舗内での無断撮影を伴わざるを得ない事業であるところ、写真撮影を禁止する小売店舗に無断撮影目的で立ち入る行為は、建造物侵入罪(刑法130条前段)が成 立する犯罪行為である。被告は、犯罪行為を伴わざるを得ない本件事業を避止すべき義務を負っていたにもかかわらず、あえて避止せずに準備・実施を推し進めたのであるから、この点について直ちに任務懈怠責任を負う。 イ仮に経営判断原則に照らしても、被告が本件事業を避止せずに準備・実施を推し進めた行為は、意思決定の内容及び過程のいずれも著しく不合理 な経営判断であるから、善管注意義務違反が成立し、被告はこの点におい ても任務懈怠責任を負う。 すなわち、本件事業は、①小売店舗への無断撮影目的の立入りという犯罪行為を伴わざるを得ない点、②適法に画像を収集している旨の虚偽の説明・保証を顧客に行う犯罪行為(詐欺行為)も伴わざるを得ない点、③ロッテグループにとって重要な取引先である小売業者との信頼関係を破壊す るおそれがある点、④ロッテグループが犯罪事業に関与しているとしてグループ全体のレピュテーショ 為)も伴わざるを得ない点、③ロッテグループにとって重要な取引先である小売業者との信頼関係を破壊す るおそれがある点、④ロッテグループが犯罪事業に関与しているとしてグループ全体のレピュテーションを毀損するおそれがある点、⑤一度無断撮影が露見すれば事業自体継続不能となるおそれがある点などにおいて、重大なリスクを抱えており、それを避止せずに準備・実施した意思決定の内容は著しく不合理である。さらに、被告は、自己に不都合な指摘や反対意 見を意図的に無視し、虚偽説明を繰り返し行ってまで、「ばれなければよい」という発想で本件事業を推し進めたのであり、その意思決定の過程も著しく不合理である。 ウ事業内容が無断撮影を伴わざるを得ないことが明確でありながら行われた準備・実施行為は、法令違反及び善管注意義務違反のいずれの意味にお いても、被告の任務懈怠を構成する。本件事業は当初から一貫して無断撮影を伴わざるを得ない「店頭調査事業」であったが、被告がロッテグループの関係者に虚偽説明を行ってまで本件事業の準備を推し進めた平成23年10月以降は、無断撮影を伴わざるを得ないことが完全に明確になっており、被告は、遅くとも同月以降に行った準備・実施行為について任務懈 怠責任を負う。 エなお、被告は、本件事業が、「データ処理事業」であって「店頭調査事業」ではなく、画像収集は事業の非本質的部分であり、無断撮影を伴わない他の適法な事業形態に修正可能であったと主張する。 しかし、本件事業は当初から一貫して「店頭調査事業」として準備・実 施が進められたのであるから、画像収集はその本質的部分であった。 また、被告は、現に、無断撮影を伴わざるを得ない本件事業を避止せずに準備・実施しており、そのこと自体により任務懈怠責任を負うのである られたのであるから、画像収集はその本質的部分であった。 また、被告は、現に、無断撮影を伴わざるを得ない本件事業を避止せずに準備・実施しており、そのこと自体により任務懈怠責任を負うのであるから、抽象的に本件事業の形態を他の適法な事業形態に修正可能であったとしても任務懈怠責任の成否に何ら影響しない。 (被告の主張) ア原告の主張の前提とする原告の検討事業内容及びそれに対する被告の主観について誤りがあり、法的構成についても理由がないこと本件事業は、データ処理事業であり、原告が違法と主張する店頭調査行為は原告の事業に含まれない。また、被告が違法な事業と認識しつつ敢えて推し進めたということもない。そもそも、個々の客観的な行為自体の問 題の有無を問わず、それを行った取締役の主観に問題があればすべて任務懈怠となるとする点も法的根拠を欠く。 イ個別具体的な行為の特定性を欠くこと原告は、被告が小売店舗内での無断撮影を伴わざるを得ない事業を避止すべき義務をあえて避止せずに準備・実施を推し進めたとして善管注意義 務違反を主張するが、被告の具体的な作為・不作為を特定しておらず、個別具体的な注意義務違反としての任務懈怠行為の特定性を欠く。 ウ別法人の責任を原告(ひいては被告)が負う理由がないこと原告と資本関係がない外部の法人(甲27及び甲28のとおり紛争も生じている。)である調査会社の調査員の立入行為について原告(さらには 被告)が責任を負う理由がない(乙4の2・6頁)。調査会社の調査員の立入行為が違法とならないようにすべき責任があるのは調査会社である。 調査行為は調査専門の「調査リスクを取れる」調査会社を選定し(甲15の2・50頁)、プーリカとKICとの間の業務委託契約書(乙19)では調査会社の業務につ ようにすべき責任があるのは調査会社である。 調査行為は調査専門の「調査リスクを取れる」調査会社を選定し(甲15の2・50頁)、プーリカとKICとの間の業務委託契約書(乙19)では調査会社の業務については調査会社が責任を負うべきこととされた。事 業の仕組みと関わる企業の役割分担等を工夫し、法的リスクの軽減を図っ ている(乙4の2・7頁参照)。 エ無断撮影は直ちに法令違反行為となるわけではなく、被告もそのように認識していたこと無断撮影が違法となるという解釈が一般に存在するものではなく、実際に本件において刑事上も民事上も無断撮影が違法とはされていない。被告 自身も弁護士の意見書を踏まえ同様の認識を有していた。 オ 「小売店舗内での無断撮影を伴わざるを得ない事業」ではなく、事業内容は修正可能であるし、被告もそのように認識していたこと本件事業は、データ処理事業であり、店頭での撮影方法は事業の非本質的部分である。万一店頭調査において無断撮影が行われ、これが違法とな るような場合であっても、被告が違法な無断撮影を事業内容に含めることに固執しているはずもないから、①適法な調査が行える他の調査会社に委託する、②画像データの収集を調査会社が行うものとはせずに、顧客が取得する形態とする(受託処理型事業)、③データ処理システムを利用した他の事業形態に変更するなど、事業内容を修正することはいくらでも可能 であり、被告もそれを排除していない。 カ経営判断原則により判断されるべきであること被告による事業の検討については、経営判断原則に従い被告の任務懈怠責任の有無が判断されるべきである。 Dは、E・F弁護士の各意見書(甲5及び甲6)を取得したが、違法と 断ずるものではなく、被告に対し、撮影行為が違法と評価される可 断原則に従い被告の任務懈怠責任の有無が判断されるべきである。 Dは、E・F弁護士の各意見書(甲5及び甲6)を取得したが、違法と 断ずるものではなく、被告に対し、撮影行為が違法と評価される可能性は低い旨の報告を行った。これを受け、被告は、重大な法的リスクはないと判断し、本件事業の準備を進めたのであり、その判断過程に著しく不合理な点はない。被告は、ロッテ社の総務部法務担当部長であり社内ベンチャーの選考委員を務めていたGが取得したH弁護士らの意見書(甲4)も受 領したが、かかる判断を覆すだけの法的リスクは提示されなかった。 被告がDから受けた報告内容を踏まえれば、本件事業を進める法的リスクは低く、原告と小売業者との信頼関係が破壊されるかもしれない点も現実的なリスクではなかった。他方、本件事業は、「売られ方」を正確・高速・低コストでデータ化できる点で画期的であり、「piXserve」を他社に先駆けて利用できるという点で事業上の優位性があった。さらに は、商品陳列棚の画像解析以外の分野においてシステムを活用するなど原告が大きな先行者利益を獲得する潜在的可能性も内包していた。 また、Dも被告も、本件事業の計画・検討段階において、その時点における検討状況を踏まえた説明を行っており、虚偽説明など行っていない。 本件事業の検討段階における説明は、Dが行っており、被告が行ったもの ではない。ロッテグループ内においては、新規事業に対する明確なルールはなく、原告がロッテHDの取締役会に対して本件事業に関する説明をしなければならないとはされていなかったから、Dによる本件事業に関する説明が、原告に対する被告の任務懈怠とされる理由はない。本件事業は、平成26年9月頃の追加出資検討の際、ロッテ社の事業として継続が検討 され とはされていなかったから、Dによる本件事業に関する説明が、原告に対する被告の任務懈怠とされる理由はない。本件事業は、平成26年9月頃の追加出資検討の際、ロッテ社の事業として継続が検討 されるほどであり、ロッテグループ全体において、原告が主張するリスクが問題視されていたものでもなかった。 以上から、被告が本件事業の検討を進めたことに著しく不合理な点はない。 キ本件訴訟は嫌がらせ目的に他ならないこと 本件事業において行われた撮影行為が、犯罪行為か否かについては司法判断を得られていない。他方で、原告を含むロッテグループは、横領背任事件や贈賄事件という悪質な経済犯罪により有罪判決を受けたI(Bの二男)に対して、何ら責任追及を行っておらず、それどころか、Iはロッテグループの頂点に位置するロッテホールディングスの代表取締役に復帰し ている。本件訴訟は、被告をロッテグループから追い出そうとする嫌がら せ目的の一環に他ならない。 (2)(争点2)被告の任務懈怠と因果関係のある損害(原告の主張)本件事業のための支出は、①本件ソフトウェアの開発のための支出、②本件カメラシステムの開発・量産のための支出、③本件サーバー環境の構築の ための支出、④実際に開始された本件事業の運用のための支出に大別される。 これらはいずれも、被告が任務懈怠責任を負うことが明らかな平成23年10月以降の支出であり、被告が本件事業の準備・実施を避止していれば発生しなかったから、その全てが被告の任務懈怠行為と相当因果関係のある原告の損害である。 仮に、本件事業のための支出が、他の適法な事業形態にも転用ないし活用できたとしても、被告が本件事業の準備・実施を避止していれば、その支出が発生しなかったことが明らかである以上、 害である。 仮に、本件事業のための支出が、他の適法な事業形態にも転用ないし活用できたとしても、被告が本件事業の準備・実施を避止していれば、その支出が発生しなかったことが明らかである以上、被告の任務懈怠と原告の損害との間の「あれなければこれなし」の関係は否定されない。現に、本件事業のための支出は、他の事業形態に転用ないし活用されることなく、全てそのま ま原告の損害となっており、因果関係が否定される理由はない。 (被告の主張)ア起点となる任務懈怠行為の特定性に欠けること原告は、被告の任務懈怠行為として、被告の具体的な作為・不作為を特定していないため、損害との間の因果関係の起点が定まらず、因果関係の ある損害は認められない。 イ事実的因果関係が認められないこと本件事業のための支出は、いずれも、商品棚の画像データが店舗に「無断で」取得されるか否かという点とは関係がなく、「小売店舗の管理責任者から個別の承諾を取得するなどして小売店舗の管理権者の意思に反しな いことを明確にしたうえで商品陳列棚画像を取得する形態」であっても、 「受託処理型事業」であっても必要な支出である。また、本件事業のための支出はそのまま「他分野事業」における設備投資としての側面も有する。 すなわち、画像データの取得が店舗に「無断で」行われるか否かに関わらず、本件事業のための支出はなされたのであるから、「あれなければこれなし」の関係が成り立たず、原告が主張する被告の任務懈怠と本件事業の ための支出との間に事実的因果関係が認められない。 ウ本件事業のための支出は原告の損害とはいえないこと仮に任務懈怠行為があり、当該行為との因果関係が認められるとしても、本件事業のための支出は、データ処理システムの開発費用であり、また、 ない。 ウ本件事業のための支出は原告の損害とはいえないこと仮に任務懈怠行為があり、当該行為との因果関係が認められるとしても、本件事業のための支出は、データ処理システムの開発費用であり、また、原告は当該支出に見合う反対給付を受けているのであるから損害ではない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実本件紛争に至る経緯について、前提事実、証拠(後掲証拠、甲23、甲24、甲48~甲53、甲71、甲83、甲84、甲92、甲93、甲126、乙9、乙27、乙28の1、乙28の2、乙30、証人G、被告本人)及び弁論の全 趣旨によれば、次の事実が認められる。 (1) 本件事業の提案Dは、営業担当として勤務した経験から、店頭陳列棚における配置や個数が商品の販売実情に影響することを実感していたところ、平成20年7月頃、店頭での「売られ方」を店頭調査によりデータ化して有益なマーケティング データとして提供する事業のアイディアを思いつき、当初は人海戦術で店頭の情報を取得しようと考えていたが、コストがかかることから、ソフトウェアを用いて店頭調査をする必要があるとの考えに至り、オフィスイズミのJや株式会社アドバンスコミュニケーションのKとともに、調査会社が撮影した小売店舗の店頭写真の画像データから、ソフトウェアを用いて商品の位置 情報等を抽出し、顧客である消費財メーカー等に対し提供するアイディアを 検討していた。Dは、平成22年2月頃、紹介を受けたプーリカに対し、画像をテキストデータ化する画像認識エンジンの開発を依頼し、プーリカと共に本件事業を企画することとなった。(甲23、乙12、乙30))プーリカは、平成22年8月26日付け「店頭調査事業に関するご提案書」と題する書面(甲3)を作成し、その頃まで 頼し、プーリカと共に本件事業を企画することとなった。(甲23、乙12、乙30))プーリカは、平成22年8月26日付け「店頭調査事業に関するご提案書」と題する書面(甲3)を作成し、その頃までには、Dに対し、本件事業の提 案を行った。同書面は、小売店舗(スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア)を対象とした商品店頭調査事業の基本情報となる商品棚情報を得るための、画像認識エンジン開発から商品棚データ出力までの技術開発内容とコストを明確にし、提案することを目的として作成されたものであり、商品陳列棚の撮影手段として、隠し撮りカメラと呼ぶカメラを使 用した動画撮影が前提とされていた。なお、Dは、本件事業について、被告に説明し、相談しながら進めていた(乙30・3頁、被告本人・調書1頁)。 (2) 社内ベンチャーへの応募及び審査ア Dは、プーリカの上記提案を受けて、平成22年11月頃、本件事業をロッテグループ内の新規事業提案制度(以下「社内ベンチャー」という。) に応募した。 その際に説明された本件事業の内容は、原告又は原告が出資したジョイントベンチャー企業が、調査会社に対して店頭陳列棚の画像の取得を委託し、取得された画像を画像認識エンジンで解析したデータ(修正前処理データ)、人の手で処理した上(修正後処理データ)、さらに、マーケティン グ上有用なデータに加工して(完全データ)、最終的に消費財メーカーや小売業者等に対して販売するというものであった(乙30・11頁~13頁)。 Dは、本件事業について、店頭映像から商品棚をデータベース化することができる画像認識エンジンと人的インフラ構築を武器に、店頭実測調査 をシステム化するとし、具体的には、調査インフラ構築のエキスパート企 業と協 映像から商品棚をデータベース化することができる画像認識エンジンと人的インフラ構築を武器に、店頭実測調査 をシステム化するとし、具体的には、調査インフラ構築のエキスパート企 業と協業することにより、調査人員のリクルーティングから教育までの調査方法をシステム化し、全国へ配置、これにより店頭実測調査の基盤を築くと説明し、また、店頭における画像取得後の商品棚再生と量的解析までのシステム開発は、現状においては、他に類を見ない唯一のシステムであり、このシステムを前提とすることで合理的かつ安価に店頭実測調査が可 能となると説明した(甲54・15頁)。 Dは、本件事業の顧客となるメーカーが、店頭販促策検討のため、定点での陳列、販売状況、店頭販促データを欲しがっていること、日本コカ・コーラ株式会社では、自社の店頭の状況は把握できているが、競合も含めた全国規模の定点情報は持っておらず、興味を持っていること、テスト調 査において、小売店舗の商品陳列棚の種々の情報をまとめた一覧表をメーカーに納品され、メーカーから、多くの店舗での定点情報があれば、インテージ社が提供するPOSとの相関が分析でき、仮説が立てやすいとのコメントがあったこと等を説明した(甲54・10頁~14頁)。 イ Dは、社内ベンチャーの審査過程において、平成23年1月頃、ロッテ 社の総務部法務担当部長であり社内ベンチャーの選考委員であったG等から、本件事業において無断撮影を行うことは、違法性の点やロッテグループと小売業者との信頼関係を破壊しかねない点でリスクがある旨指摘された(甲52・3頁、乙30・5頁、証人G・調書4頁)。 (3) 本件各意見書の取得 ア法律意見書取得の指示被告及びロッテHDの総務担当部長のLは、DとGに対し、費用が る旨指摘された(甲52・3頁、乙30・5頁、証人G・調書4頁)。 (3) 本件各意見書の取得 ア法律意見書取得の指示被告及びロッテHDの総務担当部長のLは、DとGに対し、費用が掛かってもよいので本件事業の違法性の有無について弁護士が作成する法律意見書を取得するよう指示した(甲12、乙30・6頁)。 Dは、法律意見書の取得に際し、平成23年1月11日、被告と打ち合 わせをした。被告は、この打合せにおいて、Dに対し、本件事業について、 違法性等の点がグレーならゴーする、piXlogic社に対しても1月の早い段階で返答をする旨を言って来ているので対応を急ぎたい、弁護士費用については別途ロッテで支払う方法を総務と打ち合わせるようにと指示し、また、法務の本来の仕事は、事業に係わる事案に対し、事業性が高いのであれば、ブラックを濃いグレーに、濃いグレーを薄いグレーにする ことだ、自社の中で保身みたいな事を言っているようでは新しいことは難しい、法的にグレーとなるなら、経営会議もしくは役員会で白黒を判断するという意向なので頑張るようになどと述べた(甲12)。 イ Hら意見書の取得Gは、ロッテグループの顧問弁護士である森・濱田松本法律事務所のH 弁護士らに対し、小売店の商品陳列状況を、当該小売店の承諾を得ずに写真・ビデオ等で撮影し、商品陳列状況に関する情報を第三者に販売する事業に関して、どのような法的問題点があるかを照会し、平成23年1月21日頃、H弁護士ら作成の意見書(以下「Hら意見書」という。)を取得した。Hら意見書は、明示的に撮影禁止が表示されている小売店舗に関し て本件事業を行うことは、民事刑事の両面において法的リスクが高く、明示的に撮影禁止が表示されていない小売店舗の場合であっても した。Hら意見書は、明示的に撮影禁止が表示されている小売店舗に関し て本件事業を行うことは、民事刑事の両面において法的リスクが高く、明示的に撮影禁止が表示されていない小売店舗の場合であっても、法的リスクが完全に無くなるわけではない、将来的に明示がなされる可能性があるからそれ以降の法的リスクを十分に考慮する必要があるとする。(甲4)ウ F意見書の取得 Dは、F弁護士に対し、本件事業に関し、小売店舗内において商品陳列棚などの写真撮影を当該店舗の承諾なしに行うことを前提として、①商品陳列棚を写真撮影すること自体の問題及び②商品陳列棚を写真撮影する目的による小売店舗への立入りに関する問題について照会し、平成23年1月23日頃、F弁護士作成の意見書(以下「F意見書」という。甲5)を 取得した。F意見書には、上記①については、大量生産された商品が陳列 されている状態を写真撮影する行為自体の違法性が問われ、損害賠償義務を負うなどの可能性は極端に低いと考えられ、この点は、具体的損害の主張・立証可能性の観点から考えれば、当該店舗管理者によって明確に写真撮影が禁止されている場合も同様であると考えられる、上記②については、調査対象となる店舗が明確に店舗内における写真撮影を禁止しており、そ れが店舗内に立ち入る者に周知されうる状態にある場合を除けば、建造物侵入罪に問擬される可能性は比較的低いものと考えられるが、判例理論を文字通り理解する限り、管理権者が明確に写真撮影を禁止し、立ち入り者がそれを容易に認識しうる状態である場合についてまでも、建造物侵入罪が成立する可能性が低いと結論づけることは出来ないとする。 また、Dは、同月、F弁護士から、F意見書の建造物侵入の説明について、裁判例は、不特定多数の者が出 についてまでも、建造物侵入罪が成立する可能性が低いと結論づけることは出来ないとする。 また、Dは、同月、F弁護士から、F意見書の建造物侵入の説明について、裁判例は、不特定多数の者が出入りできる場所についても、それほど不穏当とはいえない立ち入りについて処罰する方向にあり、他の有効な方法で法的責任を追及することが困難な場合を想定すると、店舗側としては、建造物侵入罪を根拠として、刑事告訴するなどの手段を執ることは十分に 考えられる、未知の分野であるが、最高裁が処罰範囲を広げていると考えられる分野なのでリスクはあると判断した旨の補足説明を受けた(甲74)。 エ E意見書の取得Dは、E弁護士に対し、明示的に撮影を禁止している小売店があるとい う状況を伝えた上で、店舗実測調査を行う際に小売店舗内の商品陳列状況を写真撮影したりメモを取るなどの行為の違法性について照会し、平成23年1月31日頃、E弁護士作成の意見書(以下「E意見書」という。甲6)を取得した(乙30・7頁)。 E意見書は、店舗内の立入行為の問題点について、一般的に見て、店舗 内への立入りは、明らかに平穏を害するような目的(例えば、他の買い物 客等に危害を加えたり、店内の営業を妨害するような目的)での立入りでない限り、店舗管理者の意思に反するものとはいえず、店舗内の商品の陳列状況の写真撮影を目的として店舗内へ立ち入ることが店舗管理者の意思に反するとまではいえないし、かかる目的での店舗の立入りについて建造物侵入罪が成立する可能性はほとんどないと考えられ、店舗管理者の管理 権の侵害にも該当しない、店舗内や商品の撮影等を明示的に禁止する表示がなされていた場合といえども、禁止されているのはあくまで店舗内や商品の撮影であって、それを目的と 考えられ、店舗管理者の管理 権の侵害にも該当しない、店舗内や商品の撮影等を明示的に禁止する表示がなされていた場合といえども、禁止されているのはあくまで店舗内や商品の撮影であって、それを目的とした立入そのものではないから、店舗内への立入りそのものが店舗管理者の管理権の侵害に該当することにはならず、住居侵入罪も直ちには成立しないと考える、即時の退去を求められた 場合には、不退去罪(刑法130条後段)が成立することは免れないが、速やかに店舗管理者の指示に従った行動を取るのであれば、不退去罪は結局成立しないものと考えるとする。 また、E意見書は、写真撮影行為やメモ等を取る行為の問題点について、その是非に関する道徳上倫理上の問題はともかく、仮に店舗管理者の明示 の承諾を得ていなかったとしても、市場調査という目的において正当なものと考えられ、その手段も相当性の範囲にとどまるものであり、撮影された写真やメモ等の資料について適正な管理がなされるのであれば、そのこと自体が直ちに違法となる根拠はないが、当該行為を禁止する旨が小売店舗内に明示されている場合には、店舗管理者の明示の意思に反することか ら、これを違法でないというのはかなり困難であり、特に、写真撮影については、店舗管理者が撮影禁止を明示している以上、撮影されたくないという期待は法的にも保護されるのが相当であり、それを知って店舗内に立ち入ることは、禁止行為に該当することを了解していると解され、店舗管理者の法的利益を侵害し、違法になる場合があると考えるとする。 オ本件各意見書(Hら意見書、F意見書及びE意見書をいう。)取得後の 被告ないしロッテグループの対応被告は、本件各意見書の内容を確認するとともに、Dから、F意見書及びE意見書に記載された意 意見書(Hら意見書、F意見書及びE意見書をいう。)取得後の 被告ないしロッテグループの対応被告は、本件各意見書の内容を確認するとともに、Dから、F意見書及びE意見書に記載された意見の内容が整理された書面も受け取った(乙7)。被告は、本件事業においては小売店舗に無断で商品陳列棚の撮影を行うことは認識していたが、本件各意見書やDの説明により、明示的に撮 影を禁止している小売店舗であっても、店頭調査のために小売店舗に立ち入り、商品陳列状況を写真撮影するなどの行為が必ずしも違法となるものではなく、相当な方法であれば撮影可能であろうと理解した(被告本人・調書7頁、8頁)。 Dは、平成23年5月頃、ロッテHDの代表取締役社長のMに対し、2 回にわたり、本件事業に関する説明を行った。Mは、Dに対し、店舗内の撮影をすることに関し、小売業との軋轢が生じるのではないかとの懸念を示した。(乙30・10頁)被告は、平成23年6月末頃、Mに対し、本件事業について進めることを認めるよう掛け合った(被告本人・調書35頁)。Mは、売上げ、利益 ともに大きなものではないにもかかわらず、小売業の知識、ノウハウを無断で撮影、分析、販売することは小売業者と大きなトラブルになる可能性があることなどとして、本件事業に強く反対した。これに対し、被告は、商品陳列は公知の事実であり、問題がないことは弁護士に確認済みである旨説明し、撮影は別会社が行うため問題がないとも説明した。Mは、弁護 士の意見は当てにならないし、いずれロッテグループとのつながりがあることが小売業者に分かってしまうなどと反論したが、最終的に、小売業の賛同が得られるならば本件事業を進めてもよいと述べた。Mがこのように述べたのは、被告との話を終わらせるため、小売業が賛同 がりがあることが小売業者に分かってしまうなどと反論したが、最終的に、小売業の賛同が得られるならば本件事業を進めてもよいと述べた。Mがこのように述べたのは、被告との話を終わらせるため、小売業が賛同するわけがないので、やれるならやってみろという意味合いであった(甲53・6頁)。 なお、その後、原告において、本件事業における店頭調査の検討の中で、 小売業の了承を得た上で店舗内の商品の陳列状況の写真撮影を行うスキームが検討されることはなかった。 被告は、同年7月1日、Dに対し、Mが上記のとおり本件事業に強く反対していることを伝えた。これに対し、Dは、現時点では、小売業の賛同は一部からは得られる可能性があるが、店頭情報として一番分析しなけれ ばならない大手量販、CVS(コンビニエンスストアの略称である。)の賛同は不可能と思う、しかし、この段階で本件事業を断念することは、他社に先んじている状況からも適切はないと考える旨を進言し、被告及びDは、引き続き本件事業を進めることとした。 本件事業は、結局、社内ベンチャーで採用されるに至らなかったが、被 告及びDは、本件事業を原告の新規事業として進めていくこととした。 (甲7)(4) Bの承認アロッテグループの事業子会社が新規事業を開始する際は、ロッテグループの創業者でありロッテHDの代表取締役会長であったBの承認を得るこ とがロッテグループ内の共通認識であったところ、被告及びDの働きかけで、平成23年10月11日、本件事業を進めることにつき、Bから承認を得るための会長会議が行われた。 同会議では、被告らから、本件事業が原告の新規事業として展開するものであり、ビジュアルデータを機械的に認識する新システムを開発取得し、 当該システムを販促関連企業及 めの会長会議が行われた。 同会議では、被告らから、本件事業が原告の新規事業として展開するものであり、ビジュアルデータを機械的に認識する新システムを開発取得し、 当該システムを販促関連企業及び調査企業へ賃貸し、その賃貸料等を売上げとする事業である旨の説明がされた。B会長からは、店頭調査にも活用可能かと質問がされ、これに対し、被告らは、調査会社などが活用することは考えられるが、各調査会社が独自で検討することであり、システムをデータ処理技術として使用することは可能である旨述べ、原告が店頭調査 に関わらないことを前提とする回答をした。その結果、B会長は、本件事 業を原告の事業として進め、これに投資することを承認した。 (甲8、乙30・21頁)イロッテHD及びロッテ社の取締役等であったNは、平成23年10月27日、Dに対し、Mとともに本件事業はリスクがあり過ぎるのでやめるよう言ったはずだが、何故、会長会議になったのかを尋ね、その経緯の説明 を求めた。 これに対し、Dは、今回の事業スキームは社内ベンチャーのスキームとは異なり、システムを賃貸する内容であり、調査会社や広告代理店、製造メーカー等がそのシステムをどう使うかは借り先が決めることであること、今回の事業スキームは、調査データの販売ではないので投資額も少なくな っているが、売上げも小さくなっていること、システム賃貸の事業であれば原告の事業として展開した方がよく、額は小さいが継続的に売上げが上がること、この事業に関しては被告に相談し、投資額がかかるのであれば会長の承認をいただくべきとの指示があり実施することとなったこと等を回答した。 Dは、Nとの上記やり取りについて被告に報告した。 (甲51、55)(5) ソフトウェア開発委託基本契約の締 長の承認をいただくべきとの指示があり実施することとなったこと等を回答した。 Dは、Nとの上記やり取りについて被告に報告した。 (甲51、55)(5) ソフトウェア開発委託基本契約の締結原告とプーリカは、平成23年10月28日、本件事業に関し、本件事業に使用するコンピュータプログラム及びこれに関するドキュメントの開発を 目的として、原告がプーリカに対して委託する個別具体的な契約の基本条件を定める契約(以下「本件基本契約」という。)及び本件基本契約に基づく個別契約1をそれぞれ締結した(甲30の1、甲30の2)。これらの契約締結については、事前にロッテHDの取締役会の承認を経ていなかった。 上記個別契約1では、支払条件として、開発の対価の総額が65万ドルと 定められ、着手時(同年11月1日)に50%、中間時(同年12月30日) に30%、納品時(平成24年2月29日)に20%が支払われるものとされた。プーリカは、本件基本契約及びこれに基づく個別契約1に基づき、本件事業に使用するシステム・ソフトウェアの開発業務及びこれにより開発されたシステム・ソフトウェア等の事業化に向けて本件システム等を運用する業務を受託した。 (6) 本件事業の概算稟議ア概算稟議に至る経緯ロッテグループの事業子会社がグループ外の第三者に対して支払いを行う場合、原則として各事業会社の決裁・権限区分に従って稟議を経る必要があった。稟議の方法は、①支払い毎に稟議を行う個別稟議のほか、②設 備投資等の具体的な金額が確定していない支払については、概算額での稟議(概算稟議)を行い、実際の金額が決まって支払が必要になるたびに稟議を行う(確定稟議)という方法も用いられた。但し、契約等により毎月の支払が予め決まっているよう いない支払については、概算額での稟議(概算稟議)を行い、実際の金額が決まって支払が必要になるたびに稟議を行う(確定稟議)という方法も用いられた。但し、契約等により毎月の支払が予め決まっているような場合には、月度毎の稟議は不要であり、当該契約等の締結について稟議が行われていれば足りた。 本件事業についても、具体的・確定的な投資額を算出することは困難であったため、概算稟議(以下「本件概算稟議」という。)を経ることとなった。 イ概算稟議の申請Dは、平成23年11月7日、原告の新規事業としての本件事業の予算 を確保するために約4億7000万円(支払先プーリカ他)の本件概算稟議の申請(件名:ビジュアル検索及び解析データ処理システム開発及び関連費用概算稟議申請)を行った(甲9の1)。 Dは、本件概算稟議の過程で、G等に対し、本件事業において現地調査を行うのはデータ購入企業(総合卸売業等の「棚割りシステム提供企業」、 印刷会社や広告代理店等の「販促企業」、官公庁及びインテージやベルシ ステム等の「調査会社」を想定)であり、原告は解析システムを保持し、データ購入企業から数値、画像等の処理の委託を受けるのみで、調査及び配信データの再販売を行わず、データ購入企業が店頭調査や消費財メーカー等への完全データの販売を行うため、コンプライアンス上の問題は生じないと説明した(甲9の2)。すなわち、Dは、本件事業において、店頭 調査を行うのは顧客であり、原告が店頭調査に関与することはない旨の説明を行った(乙30・15頁)。 この説明に対し、G等から本件事業のスキームの詳細な説明を求められたDは、同月17日付けの補足説明資料(甲9の3)を作成し、これに基づいて説明をした。Dは、従前のスキームは、小売業店頭情報を依頼した の説明に対し、G等から本件事業のスキームの詳細な説明を求められたDは、同月17日付けの補足説明資料(甲9の3)を作成し、これに基づいて説明をした。Dは、従前のスキームは、小売業店頭情報を依頼した 調査会社(原告とは無関係の企業)から取得して、原告又はプーリカが「完全データ」(店頭映像等のデータを解析して得られた処理データ(修正後処理データ)は数字や文字の羅列状態であるが、これを、顧客のニーズに応じて整理し、マーケティング上有用な形にしたデータのこと。以下に同じ。乙30・13頁)にした上で、ロッテ名とは別法人名の会社にて、 消費財メーカー等へ販売するというものであったが、それでは法的課題はクリアできるとしても、ロッテグループの得意先である小売業者との摩擦リスクが大きくなる可能性が払拭できていないことに鑑み、新たなスキームでは、完全データ化したものを販売するのではなく、提供された情報を、今回開発するシステムで処理可能な範囲のものに関し、統計処理可能なデ ータ(数値・文字)までデータ化し(修正後処理データ)、処理費用を受け取って、依頼を受けた企業に渡すこととし、購入した企業において完全データ化をお願いすることとしたため、法的問題はなく、ロッテグループの得意先との摩擦リスクもない旨、また、商品情報以外の情報処理にも対応し、広く情報処理システムの貸借を企図している(例・山林における樹 木の種類別・年代別本数の高速処理等)旨を説明した。すなわち、この説 明によれば、原告(新たに設立するとされた会社を含む。)やプーリカは店頭調査に関わらず、店頭調査に関わり消費財メーカーに完全データを販売するのは、データ購入企業(すなわち、インテージ、ソフトブレーン、ベルシステム等の市場調査会社)ということになる。また、原告は、 店頭調査に関わらず、店頭調査に関わり消費財メーカーに完全データを販売するのは、データ購入企業(すなわち、インテージ、ソフトブレーン、ベルシステム等の市場調査会社)ということになる。また、原告は、データ解析のためのシステムを保有するだけであって、これを、データ処理を 担当する別会社(プーリカ又は新会社)に賃貸し、原告が受け取るのはデータ処理を担当する会社からの賃貸料とされていた。(乙30・14頁~21頁)ウ個別稟議に基づく支払等本件概算稟議は、平成23年11月18日、本件事業実施に関するロッ テHDの取締役会承認まで保留とされたが、本件概算稟議の金額のうち、初期開発費用65万ドルは契約済み(甲30の2の個別契約1による)のため、別途個別稟議処理を行うこととされ(甲9の1)、同月29日、原告からプーリカに対し、個別契約1に基づく着手時報酬34万1250ドルが支払われた(ただし、出金されたのは、これに銀行手数料4500円 を合わせた2672万7787円。甲31の1、乙15)。さらに、個別契約1に基づいて、原告は、プーリカに対し、平成24年2月1日に中間時報酬1561万4640円(甲31の2)、同年6月4日に納品時報酬1068万5625円(甲31の5)を支払った。以上の個別契約1に基づく原告の支払額は合計5302万8052円であった。 なお、原告は、平成23年12月15日付けで、本件事業に関し、プーリカとの間で、本件基本契約に基づき、個別の業務委託契約を締結した(甲30の3)。同業務委託契約に基づき、原告は、プーリカに対し、平成24年3月5日(甲31の3の3)、同年4月27日(甲31の4の1)、同月27日(甲31の4の3)に各210万円、同年6月11日(甲31 の6の1)、同月29日(甲31の9の リカに対し、平成24年3月5日(甲31の3の3)、同年4月27日(甲31の4の1)、同月27日(甲31の4の3)に各210万円、同年6月11日(甲31 の6の1)、同月29日(甲31の9の2)に各105万円、同年7月3 1日に34万2400円(甲31の11の1)、同日(甲31の11の2)、同年8月31日(甲31の12の2)、同年9月28日(甲31の13の1)、同年10月31日(甲31の14の1)、同年11月30日(甲31の15の2)、同年12月26日(甲31の16の1)、平成25年1月31日(甲31の18の1)に各105万円、同日に68万8270円(甲 31の18の2)、同年2月28日(甲31の21の1)、同年3月29日(甲31の23の1)、同年4月30日(甲31の26の1)に各105万円を支払った(合計1993万0670円)。 (7) プーリカによる撮像機器等の提案プーリカは、平成23年12月7日頃、原告に対し、「画像認識エンジン を含む総合システムおよび撮像デバイス要件定義書(Ver.1)」と題する書面(甲32)を交付し、商品棚等を撮影するために必要となる撮像機器(デバイス)の仕様概要等の提案を行った。同書面においては、店頭調査の委託や消費財メーカー等への完全データの販売を顧客であるデータ購入企業が行うこととはされず、プーリカが、本件事業における撮像デバイスの開発を担 当し、食品メーカー、飲料メーカー、日用品メーカー等の消費財メーカーの顧客に対し、商品の陳列位置、売価、POP(販売促進用の広告)設置の有無等に関する情報を提供することが想定されており、本件概算稟議におけるDの説明とは異なるものであった。 (8) 本件概算稟議に係る本件取締役会の承認等 ロッテHDの本件取締役会が、 有無等に関する情報を提供することが想定されており、本件概算稟議におけるDの説明とは異なるものであった。 (8) 本件概算稟議に係る本件取締役会の承認等 ロッテHDの本件取締役会が、平成23年12月21日に開催され(出席取締役は、被告、M、O、P、N、L)、本件事業の実施について審議された。 Dは、本件取締役会に出席し、資料(甲10の2。なお、被告は、甲10の2が本件取締役会で配布されたものであることを否認するが、その体裁及 び内容から本件取締役会で配布されたものと認めるのが相当である。)を用 いて、本件事業のスキームにつき、顧客であるデータ購入企業が調査会社(店頭調査を行う調査会社)に店頭調査を委託して店頭の画像を収集し、原告はデータ購入企業から提供された画像の解析処理のみを行い、データ購入企業が解析処理後のデータ(修正後処理データ)を完全データ化した上で消費財メーカー等に販売するものである旨の説明をした。これに対し、出席取 締役から事業の適法性や企業倫理に関する質問があったが、Dは、原告は顧客から提供を受けた画像を解析するだけであり、自ら店頭撮影を行うものではないため、適法性に問題はなく、企業倫理にも反しない旨の回答を行った。 本件取締役会決議において、事業開始後3年度終了時点で事業継続についてレビューすることを前提に、本件事業の実施が全会一致で承認された。こ れにより、ロッテHDの取締役会承認まで留保されていた本件概算稟議も、同日、承認された。 Dは、同日、被告に対し、本件取締役会について、大変心配をかけたことを謝罪し、本件事業の承認を得たことについて感謝を述べる旨のメールをした。被告は、Dに対し、本件事業の実現に向け頑張るよう返信した。 (甲9の1、甲9の2、甲10の1、甲 変心配をかけたことを謝罪し、本件事業の承認を得たことについて感謝を述べる旨のメールをした。被告は、Dに対し、本件事業の実現に向け頑張るよう返信した。 (甲9の1、甲9の2、甲10の1、甲10の2、甲11、甲51)(9) 本件取締役会決議後の関係者間の検討状況等アプーリカとの調査業務委託契約の締結原告は、平成23年12月26日、プーリカとの間で、本件事業に関する調査業務委託契約を締結した(甲30の4)。同契約に基づき、原告は、 プーリカに対し、平成24年3月5日(甲31の3の1)に220万5000円、同年4月24日(甲31の4の2)に157万5000円、同月27日(甲31の4の4)に252万円、同年6月11日(甲31の6の2)、同月29日(甲31の9の3)に各78万7500円を支払った(合計787万5000円)。 イ平成24年2月頃における本件事業の検討状況プーリカは、平成24年1月24日付け「ユーザーインターフェイス仕様打合せ用資料Ver0.1」と題する書面(甲33)を作成し、これをDに示した。同資料においては、平成23年12月7日にプーリカが原告に説明した際の「画像認識エンジンを含む総合システムおよび撮像デバイス 要件定義書(Ver.1)」と題する書面(甲32)に添付されているものと同一のスキーム図が添付されており、本件事業の顧客として、食品メーカー、飲料メーカー、日用品メーカー等の消費財メーカーが想定されていた。 原告及びプーリカから委託を受けて本件事業の営業活動を代行していたJは、平成24年2月28日、店頭調査の委託先候補の調査会社から、店 頭調査について、店舗経営の本体企業からのフォローがある調査か又は完全な隠密調査かを問われたので、Dに確認したところ、Dは Jは、平成24年2月28日、店頭調査の委託先候補の調査会社から、店 頭調査について、店舗経営の本体企業からのフォローがある調査か又は完全な隠密調査かを問われたので、Dに確認したところ、Dは、Jに対し、隠密調査と回答するよう指示するとともに、「秘密保持契約等保守を完全にする必要がありますので、十分その点を留意をお願いします」と指示した(甲34)。 ウプーリカとの個別契約2(1)等の締結等(ア) 原告は、平成24年4月27日、本件事業に関し、プーリカとの間で、本件基本契約に基づく個別契約2(1)、プロトタイプ用サーバ環境構築・運用契約を締結した(甲30の5、甲30の6)。 個別契約2(1)に基づき、原告は、プーリカに対し、同年6月21日 に1003万0320円(甲31の8)、同月29日に630万円(甲31の9の4)、同年11月30日に2730万円(甲31の15の1)を支払った(合計4363万0320円)。 プロトタイプ用サーバ環境構築・運用契約に基づき、原告は、プーリカに対し、平成24年6月18日に151万0793円(甲31の7の 1)、同月29日(甲31の9の1)、同年7月31日(甲31の11の 3)、同年8月31日(甲31の12の3)、同年9月28日(甲31の13の2)、同年10月31日(甲31の14の2)、同年11月30日(甲31の15の3)、同年12月26日(甲31の16の2)、平成25年1月31日(甲31の18の3)、同年2月28日(甲31の21の2)、同年5月30日(甲31の28の1)に各22万0500円を 支払った(合計額371万5793円)。 (イ) 原告は、どの個別契約に基づく支出であるのかは不明であるが、本件事業に関する費用として、プーリカに対し、平成 1)に各22万0500円を 支払った(合計額371万5793円)。 (イ) 原告は、どの個別契約に基づく支出であるのかは不明であるが、本件事業に関する費用として、プーリカに対し、平成24年3月5日に782万2500円(甲31の3の2)、同年6月18日に108万5380円(甲31の7の2)、同年8月31日に747万4109円(甲 31の12の1)、平成25年1月31日に8万8380円(甲31の18の5)、同年4月15日に336万7815円(甲31の24)、同年8月30日に8万9075円(甲31の33の1)を支払った(合計1992万7259円)。 エ平成24年4月から6月頃における本件事業の検討状況 平成24年4月27日から同年6月28日にかけて、D、プーリカの代表者であるCら関係者が出席したミーティングや事業検討会等が複数回開催され、調査会社の選定、小売店舗調査のスケジュール(50店舗トライアル(トライアルとは、システムの不具合改修や運用上の課題点の抽出等を目的として行われる試行的な店舗調査のこと。以下同じ。)、500店舗 トライアル、1000店舗プリサービス開始、3000店舗本サービス開始)、調査に要する費用や人員等の検討、同年7月11日に予定されていた被告への報告会に向けた準備等が行われた。これらのミーティング等においては、クライアント候補として消費財メーカー(ロッテ、花王、P&G、ライオン、明治、森永、グリコ、コカ・コーラ、アサヒ、キリン、サ ントリー、味の素、キューピー、ハウス)を念頭においた議論がされ、調 査会社をクライアントとすることを念頭に置いた議論はなされておらず、調査会社については株式会社ダイレクト・コンシューマ・サービス(以下「DCS」という。)及び株式会社K た議論がされ、調 査会社をクライアントとすることを念頭に置いた議論はなされておらず、調査会社については株式会社ダイレクト・コンシューマ・サービス(以下「DCS」という。)及び株式会社K.Iコミュニケーション(以下「KIC」という。)が候補として挙げられており、今後の課題として、データ販売のための新会社の設立と営業活動が挙げられていた。(甲14、甲 36、甲57~甲59、甲94~甲96、甲100)オ Dの本件事業に関する被告への報告状況Dは、平成24年5月17日から同年10月9日にかけて、被告に対し、本件事業に関するDの週間外出スケジュール表を添付した上、調査会社、調査対象店舗、調査人員等の検討状況を報告する電子メールを頻繁に送信 し、本件事業に関する進捗状況を報告していた(甲97の1~甲99の2、甲101~甲105の2、甲107の1~甲108の2、甲111の1、2、甲113の1~甲115の2、甲117の1、2、甲122の1、2)。 同年5月17日のメール(甲97の1)では、Dは、被告に対し、調査 会社の選定状況として、現在、調査員教育担当の専任者を決めた上で、調査会社を決定する方向で考えていること、調査員の教育専任者として、ベルシステムから独立したQという者を考えていること、実際の調査会社としては、ミステリーショッパー調査及び覆面調査の実績があり、秘密保持及び財務上の信用性が高い企業を考えていることを報告した。 同年6月8日の電子メール(甲35)において、Dは、被告に対し、プーリカの代表者であるCが韓国(ソウル)へ隠し撮り用カメラの製品に関する実情を調査するために出張する旨報告した。 また、Dは、同月25日の電子メール(甲13)において、被告に対し、調査会社の選定の検討状 の代表者であるCが韓国(ソウル)へ隠し撮り用カメラの製品に関する実情を調査するために出張する旨報告した。 また、Dは、同月25日の電子メール(甲13)において、被告に対し、調査会社の選定の検討状況を報告したが、その中で、本件事業における調 査会社の立場は、全てのリスクを一番負うものであり、ロッテや調査依頼 企業(新会社)との関係も秘匿となること、但し、機材を使用した調査ノウハウは全て調査会社が持つことになるので、単年で契約終了するような企業は選択できないこと、本件事業は、リスクは最大限ヘッジしても、入口から出口までを有形無形にコントロールする必要があるので、調査会社も一定程度、本件事業の意味を理解し、お付き合いできるところを基準に 選定するつもりであることを述べた。 カプーリカとの間の個別契約2(2)の締結原告は、平成24年7月1日、本件事業に関し、プーリカとの間で、本件基本契約に基づく個別契約2(2)(データサービス事業ソフトウェア開発)を締結した(甲30の7)。同契約に基づき、原告は、プーリカに対 し、同月25日に350万8313円(甲31の10)、同年9月28日に701万6625円(甲31の13の3)、同年12月26日に1052万4938円(甲31の16の3)、平成25年2月28日に701万6625円(甲31の21の4)を支払った(合計2806万6501円)。 キ DCSのDに対する店頭調査の概算見積提出Dは、平成24年7月4日、DCSから、店頭調査の概算見積りの提出を受けたが、当該見積りでは、50店舗トライアルの見積りのほか、サービス開始後も商品陳列棚の画像収集を毎週定点で継続的かつ定期的に行うことを前提に、「店舗調査ランニングコスト概算お見積り」として、31 見積りでは、50店舗トライアルの見積りのほか、サービス開始後も商品陳列棚の画像収集を毎週定点で継続的かつ定期的に行うことを前提に、「店舗調査ランニングコスト概算お見積り」として、31 50店舗を月4回調査した場合の年間の概算費用が記載されていた(甲60の1、甲60の2)。 ク平成24年7月11日に開催された本件事業に係る被告への報告会平成24年7月11日に開催された被告への報告会において、DやCらは、被告に対し、同日付け「店頭実測調査データ提供サービス事業~進捗 ご報告~」と題する資料等(甲15の2)に基づき、本件事業の進捗状況 について報告した(甲15の1)。 同報告では、①データ作成システムについて、②撮像デバイスの方向性、③店頭調査について(調査会社選定と概要)、④データ処理するためのオペレーションセンター検討概要、⑤営業開拓の可能性、⑥現状と今後の投資金額という項目について説明がされた。 ①の説明の中では、調査員が、毎週、全国のスーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストアの店頭調査を撮像デバイス(カメラ)により店頭棚を撮影してローデータをアップロードする方法により行い、ローデータを画像認識エンジンにより処理した修正前処理データを人的データ修正した修正後処理データをマーケティング上有用なデータに加工してクライア ント(食品メーカー、飲料メーカー、日用品メーカーなど)にデータ配信することが想定されていた。 ②の説明の中では、店舗調査で使用する撮像デバイス(カメラ及びその付属品)の現状の方向性として、帽子の前頭部分に隠して装着し、カバーで見えなくする仕組みにするものや、メガネ、カチューシャ、カツラ等に 仕込む仕組みが紹介され、また、同年12月頃から50店舗トライアル 現状の方向性として、帽子の前頭部分に隠して装着し、カバーで見えなくする仕組みにするものや、メガネ、カチューシャ、カツラ等に 仕込む仕組みが紹介され、また、同年12月頃から50店舗トライアル(調査、システム、オペレーションを実態に即して実施することで不具合の改修、運用上の課題点を抽出すること等が目的とされた。)、平成25年4月頃から500店舗トライアル(本サービスに近い状態での実施により、ボリュームに耐え得る運用システム構築を目指すことが目的とされた。) をそれぞれ実施することとし、その調査担当はDCS、オペレーション担当はプーリカ、総合監督はDとされ、同年7月頃からプリサービス1000店舗の開始、同年9月頃から本サービス3000店舗の開始の予定とされた。 ③の説明の中では、調査会社の選定基準はランニング費用のコストパフ ォーマンスが良いことなどとされ、その候補としてDCS及びKICが挙 げられ、顧客としては、食品メーカー、飲料メーカー、日用品メーカー等の消費財メーカーが想定され、それ以外への販売は、本来の目的を阻害しない範囲、かつ情報漏えいがない範疇で検討することとされた。KICは、ラウンダー業務(各店舗の店頭で自社製品がどのように展示され、いくらで販売されているか、他社との違いはどうか等を調査、報告する業務。販 売員指導も行う。)を事業内容としており、覆面調査そのものではないが、近時の業務の実施経験があるとされていた。 ④の説明の中では、データ処理するためのオペレーションセンターの人的場所的態勢の検討状況が説明され、場所としては札幌、旭川、沖縄を比較した結果、旭川が有力であるとされた。 ⑤の説明の中では、クライアント候補として消費財メーカー(花王、ライオン、サンデン)からの聞き取り状況 況が説明され、場所としては札幌、旭川、沖縄を比較した結果、旭川が有力であるとされた。 ⑤の説明の中では、クライアント候補として消費財メーカー(花王、ライオン、サンデン)からの聞き取り状況が説明され、営業先ターゲットとしても消費財メーカーのみが挙げられており、今後の営業体制の課題として、現状はデータ販売のための新会社が存立していないこと、営業開拓時の社名等も検討しなければならないことが挙げられるなど、原告やプーリ カが新たに設立する会社においてデータを消費財メーカーに販売することが想定されていた。 ⑥の説明の中では、店舗実測に伴う小売業との取り組みとして、小売業のチェーン本部が顧客となることを想定したデータ利用も挙げられ、小売業におけるソリューションも示されていたが、具体的なクライアント候補 とするまでには至っていなかった。 Dらからの上記報告を受け、被告は、調査店舗数が1人10店舗では少ない旨の指摘をしたほか、店頭調査を行う調査会社候補をDCSとすること等を承認した。また、被告は、本件事業の販売データの最初の客としてロッテグループに購入させることを了承した。 ケ店頭調査の実施に向けた検討状況上記報告会の後も、D、Cらが出席の上、ミーティングや事業検討会等が複数回開催され、調査会社の選定、トライアルの実施店舗、そのスケジュール等の検討が行われた(甲38、甲65、甲81・1頁~3頁、甲106、甲109、甲110、甲112、甲116、甲118)。 コ KICの店頭調査に係る見積書の提出Dは、平成24年9月12日、店頭調査に係るKICの見積書(甲62の2)の提出を受けたが(甲62の1)、提出先は原告宛となっており、店舗数は合計3138店舗とされ、店舗調査は「基本稼働日を の提出Dは、平成24年9月12日、店頭調査に係るKICの見積書(甲62の2)の提出を受けたが(甲62の1)、提出先は原告宛となっており、店舗数は合計3138店舗とされ、店舗調査は「基本稼働日を火~土」・「年間(52週)」にて行うこととされていた。また、Dは、同月、DC SやKICとの間で、店頭調査に関する委託費用の減額に向けた交渉を行った(甲63)。 (10) 本件事業のリリース文公表及びそれ以降の状況ア本件事業のリリース文公表の経緯本件事業においては、当初、ロッテグループが関連することを疑われな いよう新会社を設立し、当該新会社が調査会社への店頭調査の委託主体及びデータの販売主体となることが予定されていた(甲13、甲48・5頁)。 しかし、平成24年8月末、他社(アクセンチュア)が本件事業と同様の事業内容に係るリリース(発表)を出したことから、被告は、Dに対し、 内容が分からず契約をする企業が出ては年間契約なのでクライアント獲得に邪魔になるなどとして、今週中に我々のサービス内容と開始時期をリリースせよとの指示をし、早急に本件事業のリリースを出すことになった(甲16)。もっとも、その時点で、調査会社への店頭調査の委託主体及びデータの販売主体となる新会社が設立されておらず、本件事業の主体と してロッテ名ではできないので、プーリカを本件事業の主体としてリリー スを行うこととされた(甲17、甲18)。それ以降、プーリカが、調査会社への店舗調査の委託主体及びデータの販売主体の役割を担うこととされた(甲23・3頁~5頁)。 Dは、同年9月4日、被告に対し、本件事業のリリースの主体をプーリカとしたリリース文案の骨子を添付した電子メールを送信したところ、同 日中に被告から同骨子に添削を加 甲23・3頁~5頁)。 Dは、同年9月4日、被告に対し、本件事業のリリースの主体をプーリカとしたリリース文案の骨子を添付した電子メールを送信したところ、同 日中に被告から同骨子に添削を加えたものが返信された(甲17の1、2)。Dは、同年10月5日、原告に対し、同日時点の本件事業のリリースの文案や送付先のリスト等を添付した電子メールを送信した。同リストには、主として消費財メーカーが送付先として挙げられており、データ購入企業として想定されていた企業は挙げられていなかった。(甲119の 1~3)D、Cらは、同月9日、本件事業のリリース内容に関する打合せを行い、リリース文内容、リリース送付先の選定等について話し合った(甲120、甲121)。 Dは、プーリカの代表者であるCに対し、同月11日には本件事業に係 る同日時点のリリース文案を、同月12日にはリリース文送付先のリストを添付した電子メールをそれぞれ送信した。同リストにも、主として消費財メーカーが送付先として挙げられており、本件事業の主体となるプーリカが消費財メーカーに完全データを販売することが前提とされ、プーリカからデータ購入企業にデータが販売され、データ購入企業が消費財メーカ ー等に完成データを販売するような記載はなかった。(甲123の1、2、甲124の1、2)プーリカは、同月15日、ホームページ上に本件事業に係るリリース文を公表した。同リリース文においては、本件事業は、プーリカが毎週3000店舗、15000商品の店頭陳列状況を「見える化」し、データ配信 するものである旨説明された。(甲19) イ店頭調査に関する見積書提出KICは、平成24年10月3日、Dに対し、宛名を原告とする店頭調査に係る最終の見積書を提出し ータ配信 するものである旨説明された。(甲19) イ店頭調査に関する見積書提出KICは、平成24年10月3日、Dに対し、宛名を原告とする店頭調査に係る最終の見積書を提出した(甲64の1、甲64の2)。 ウプーリカとの店頭調査に係る契約等の締結等原告は、平成24年11月1日、本件事業に関し、プーリカとの間で、 本件基本契約に基づいて開発されたソフトウェアに最適な画像を提供するための撮影条件に関する調査業務として、50店舗における店頭調査及び500店舗における拡大店頭調査を委託する旨の店頭実査業務委託契約(甲30の8)、本件事業のためのカメラの開発、試作及び量産等の業務をプーリカに委託する旨の契約(甲30の9)、データ処理及びデータ運 用管理業務委託契約(甲30の10)を締結した。店頭実査業務委託契約では、プーリカが、委託を受けた店頭調査をKICに再委託することを原告が予め承諾することとされていた。(甲30の8)。 店頭実査業務委託契約に基づき、原告は、プーリカに対し、同年12月26日に1108万0650円(甲31の16の4)、平成25年1月3 1日(甲31の18の4)、同年2月28日(甲31の21の3)、同年3月29日(甲31の23の3)に各378万円、同年4月30日に535万5000円(甲31の26の2)、同年5月23日に1705万7000円(甲31の27)、同年6月27日に2050万9000円(甲31の29の2)、同年7月29日に1460万7000円(甲31の31の 1)、同年8月27日に1619万9000円(甲31の32)を支払った(合計9614万7650円)。 本件事業のためのカメラの開発、試作及び量産等の業務をプーリカに委託する旨の契約に基づき、原告は、プーリカ 27日に1619万9000円(甲31の32)を支払った(合計9614万7650円)。 本件事業のためのカメラの開発、試作及び量産等の業務をプーリカに委託する旨の契約に基づき、原告は、プーリカに対し、平成24年12月26日に3741万7958円(甲31の16の5)、平成25年3月29 日に4937万3363円(甲31の23の2)、同年6月28日に50 50万8535円(甲31の30)を支払った(合計1億3729万9856円)。 データ処理及びデータ運用管理業務委託契約に基づき、原告は、プーリカに対し、同年5月30日に1709万8000円(甲31の28の2、甲78の6)、同年6月27日に956万円(甲31の29の1、甲78 の7)、同年7月29日に384万6000円(甲31の31の2、甲78の10)、同年8月30日に1154万3000円(甲31の33の2)を支払った(合計4204万7000円)。 エ平成24年11月21日開催の本件事業に係る被告への報告会平成24年11月21日に開催された被告への報告会において、DやC らは、原告に対して、同日付け「店頭実測調査データ提供サービス事業~進捗ご報告~」と題する資料(甲20の2)に基づき、本件事業の進捗状況について報告した。同資料においては、同年12月頃から50店舗トライアル、平成25年6月頃から500店舗トライアル、同年9月頃から1000店舗プリサービス、同年10月頃から3000店舗本サービスを実 施する予定とされた。また、コストダウンの観点等から、従前候補とされていたDCSからKICに調査会社を変更するとされた。さらに、店舗調査で使用するカメラの例として、ショルダーやウィッグに装着するものが紹介された。Dらからの報告を受け、被告は、店舗内で撮影 補とされていたDCSからKICに調査会社を変更するとされた。さらに、店舗調査で使用するカメラの例として、ショルダーやウィッグに装着するものが紹介された。Dらからの報告を受け、被告は、店舗内で撮影するに当たって不自然な動きにならないように連写速度を数秒にすること、アウトプッ トデータは地域別のものが必要であることなどの指摘をした。(甲20の1、2)オ原告と被告との間の個別契約2(2)の締結原告は、平成24年12月1日、本件事業に関し、プーリカとの間で、本件基本契約に基づく個別契約2(2)(甲30の11)、サーバ貸与契約を 締結した(甲30の12)。 個別契約2(2)に基づき、原告は、プーリカに対し、平成25年1月30日に1050万円(甲31の17)、同年2月15日に635万5162円(甲31の19)、同月27日に357万円(甲31の20)、同年3月28日に27万3000円(甲31の22)、同年4月26日に210万円(甲31の25)、同年10月31日に649万7418円(甲31 の35の3、甲78の13)を支払った(合計2929万5580円)。 カプーリカとKICとの間の店舗調査再委託契約締結前記ウの店頭実査業務委託契約締結後、原告から委託を受けたプーリカが調査会社であるKICに対して店舗調査業務について再委託を行うこととされ、平成24年12月1日、プーリカとKICとの間で店舗調査委託 契約が締結された。プーリカは、同月頃、店頭調査に使用するためのウェアラブルカメラ725台、ノートパソコン300台及びその他のデバイス310台を原告から借り受け、これをKICに交付した。(甲24、甲47、甲126)KICは、平成25年1月7日から同カメラを用いて50店舗トライア ル対象店舗の 00台及びその他のデバイス310台を原告から借り受け、これをKICに交付した。(甲24、甲47、甲126)KICは、平成25年1月7日から同カメラを用いて50店舗トライア ル対象店舗の店舗調査を開始したが、調査業務においては、小売店舗の了解を得ることなく商品陳列棚を撮影することが前提となっていた。なお、KICの調査開始以前、遅くとも平成24年10月23日までには、既にDCSによる50店舗トライアル調査が実施済みであったところ、対象店舗には明示的に写真撮影等を禁じている店舗が含まれており、対象店舗の 承諾を得ずに店舗内撮影が行われ、調査員が小売店舗の従業員に見とがめられて調査することができなかった事態が複数生じていた。(甲24、甲25、甲39の2、甲46、甲48・33頁、甲126)被告は、平成25年1月頃、Dに対し、「店舗実測で捕まらないようにね。ドラッグは値段調査に敏感だから。コスモスとかセガミとか店内での 他店の方立ち入りは遠慮してくれとか貼ってあるよね。でも、他店の方じ ゃないから、調査しても平気だよ。特にD君に声をかけるのは怪しい店の人位だろ。ドラッグは怪しい店じゃないから」と冗談を述べるなどしており、50店舗トライアル調査においては店舗に無断で調査を行うことが前提であるものと認識していた(甲45)。 キ平成25年7月1日開催の本件事業に係る被告への報告会 本件事業に関する被告への報告会が、平成25年7月1日、DやプーリカのCらが出席し、プーリカの会議室で行われた(甲125)。Dらは、被告に対して、同日付け「店頭実測調査データ提供サービス事業~進捗ご報告~」と題する資料(甲21)に基づき、本件事業の進捗状況について報告した。 同報告においては、同年9月から615店舗、同年 に対して、同日付け「店頭実測調査データ提供サービス事業~進捗ご報告~」と題する資料(甲21)に基づき、本件事業の進捗状況について報告した。 同報告においては、同年9月から615店舗、同年12月から900店舗、平成26年1月から1000店舗の調査を実施する予定とされ、1調査員当たり最も高い効率で調査することを前提に人員を確保し、調査コストの圧縮、低減を図ることとされていた。営業対象会社としては、消費財メーカーが挙げられ、データ購入企業は挙げられていなかった。また、挙 げられていた消費財メーカーのうち、花王カスタマーマーケティング株式会社(以下「花王CMK」という。)は、店頭画像を自ら取得することができるため、その分析を委託することのみを想定していたが(甲21・78頁)、本件事業では、そのような委託に係る分析はオプションとして位置づけられ、店頭実測調査データサービスが本業として位置づけられてい た(甲21・50頁、55頁)。また、店舗調査で使用するカメラの例としてバックパックに装着するなどカメラの存在が隠される仕様になっているものが紹介された(甲21・7頁)。 被告は、具体的な質問や指摘を行ったが、その中で、花王CMKのようなオプション事業は、本業のデータに遅れや支障が出ないように行うよう 指示をした(甲125)。 (11) 本件追加投資承認ア本件追加投資承認の経緯本件事業においては、プーリカに対するシステムや撮影機器等の開発や運用実験のための委託料等の支払が積み重なり、平成25年7月時点で約4億7000万円の当初予算をほぼ費消した。そこで、原告は、平成25 年夏頃、以下の稟議書の作成及びDの説明を前提に、ロッテHDに対し、本件事業に対する3億5000万円の追加投資の稟議を行い、同 4億7000万円の当初予算をほぼ費消した。そこで、原告は、平成25 年夏頃、以下の稟議書の作成及びDの説明を前提に、ロッテHDに対し、本件事業に対する3億5000万円の追加投資の稟議を行い、同年8月21日付けで承認された。(甲22の1、乙30・38頁)なお、Dが平成25年7月7日頃起案した本件追加投資承認の稟議書(甲22の1)には、あらかじめ「社長」印欄には被告の押印がされ、添 付資料には、ロッテHDの「A副会長ご指示事項」として、「投資金額詳細内容については、各担当(企業含む)より事前確認済み。当該稟議申請に問題及び内容相違はないと判断し、申請内容を承認する。」と記載され、その横に被告の押印がされた状態で提出された。 イ Dによる説明内容 Dは、本件追加投資承認の稟議の過程において、次の説明を行った。 (ア) 本件事業の売上げ見込みに関し、Dは、平成25年7月初旬現在、本件事業に係るデータの購入見込企業は合計22社(いずれも消費財メーカー。ただし、説明資料には、本件事業のビジネススキームにおけるデータの購入先として、消費財メーカー、販促提供企業、コンサルティン グ企業、数量調査企業等が記載されていた。)、95カテゴリーであり、1カテゴリー当たりの販売額は1100万円から1300万円を計画していること、平成26年4月ないし5月より本件事業についてプーリカの売上計上が開始し、同年度の売上げは6億1000万円、平成27年度の売上げは7億9000万円と計画されていること、本件事業への投 資は今回の3億6750万円が最終となることなどを説明した(甲22 の1、2)。 (イ) 本件事業の投資回収見込みに関し、Dは、原告がプーリカからシステム賃料(システム仕様処理料)として収受するのは、当初、プ 万円が最終となることなどを説明した(甲22 の1、2)。 (イ) 本件事業の投資回収見込みに関し、Dは、原告がプーリカからシステム賃料(システム仕様処理料)として収受するのは、当初、プーリカの売上げの10%であったが、追加投資により少なくとも30から40%とすることができ、投資額の回収期間も当初予定していた8年から5年 に短縮することができると説明した(甲22の1、2)。 (ウ) 追加投資の資金使途に関し、Dは、プーリカがデータのテスト販売を行ったところ、顧客からデータの詳細化について要望があったため、それに応えるためにオペレーションセンターの人員を80名から160名に増員するなどの体制整備をする必要があり、増員に伴う人件費として 平成25年8月から平成26年5月までで2億7056万円を要するほか、臨時雇用のための費用、設備投資資金、システム改修費、オペレーションセンターの賃料を確保するために追加投資が必要であるとした(甲22の1、3)。 (エ) 画像取得の方法に関し、Dは、画像データはプーリカが店舗調査会社 や協力店舗から取得するが、店舗調査会社はプーリカが直接契約し、ロッテはデータ処理限定で店舗調査会社との関連はなく、コンプライアンス上の問題は発生しない、また、処理データも保持しない旨を説明した(甲22の1)。 (12) 本件追加投資承認後の本件事業の状況 アロッテHDの本件事業への関与等Gは、平成25年夏の本件追加投資の稟議の頃、ロッテHDの経営陣から、本件事業に関与するよう指示を受け、原告とプーリカとの間の契約締結に関わることとなった。Gは、甲30の1~甲30の12の各契約書を確認し、同年10月10日、プーリカのCとも打合せを行った上、本件事 業に関する原告とプーリカとの 告とプーリカとの間の契約締結に関わることとなった。Gは、甲30の1~甲30の12の各契約書を確認し、同年10月10日、プーリカのCとも打合せを行った上、本件事 業に関する原告とプーリカとの関係の実態に即した契約内容のものとして、 同年7月31日付け業務委託契約書のドラフトを作成した(甲30の13)。同契約書では、原告がプーリカに委託する業務の内容として、500店舗における撮影条件基礎調査、拡大調査による本調査条件整備(1000店舗拡大含む。)も含まれていた。原告とプーリカとは、本件事業に関し、その頃、同契約書を交わし、業務委託料を月額3500万円とする 業務委託契約を締結した。(以下「新業務委託契約」という。甲30の13、乙28の1~乙29、証人G・調書14頁~17頁)イロッテHDの関与後の支払状況新業務委託契約に基づき、原告は、プーリカに対し、平成25年9月27日に3491万4000円(甲31の34)、同年10月31日に36 75万円(甲31の35の1)、同日に183万5400円(甲31の35の2)、同年11月29日(甲31の36)、同年12月26日(甲31の37)、平成26年1月31日(甲31の38)、同年2月28日(甲31の39)、同年3月31日(甲31の40)、同年4月30日(甲31の41)、に各3675万円、同年5月29日(甲31の42)、同年6月2 7日(甲31の43)に各3780万円(合計3億6959万9400円)。 なお、プーリカは、新業務委託契約の有効期間とされていた平成26年5月31日より後も本件事業に係る業務を継続して行ったが、別件訴訟の控訴審が当該業務についてプーリカの事務管理該当性を認めて商法512 条に基づく報酬請求権の成立を認めたことを受け 平成26年5月31日より後も本件事業に係る業務を継続して行ったが、別件訴訟の控訴審が当該業務についてプーリカの事務管理該当性を認めて商法512 条に基づく報酬請求権の成立を認めたことを受け、原告とプーリカとの合意が成立したことに基づき、原告は、1億0998万1818円を支払っており(甲27~甲29)、これも本件事業の実施に関する新業務委託契約により原告が支出した金員である。 ウ本件事業の予算の使途 本件追加投資承認後も本件事業の予算は逼迫していたところ、プーリカ は、平成26年1月14日付けで「今後のProj.収支計画」(以下「本件収支計画」という。)と題する書面(甲79)を作成した。本件収支計画においては、同月以降、月額費用が予算を超過し、本件追加投資承認された予算も同年3月に使い切る見込みであること、平成25年8月時点でのオペレーションセンターの人員は20名であり、同月から平成26年5月ま での人件費は1億2780万円程と計画されていること、本件追加投資承認により投資された資金は、プーリカが平成25年8月から委託する外部の調査業者への業務委託料等の支払に使用されていることなどが記載された。 エデータ販売の開始 本件追加投資承認後、本件事業の調査対象店舗数は徐々に増加し、平成25年10月に約500店舗、平成26年2月には約1000店舗になったため(甲24)、目標とされた3000店舗には到達しないものの、限定的な範囲でデータ販売を行うことになった。 プーリカは、平成26年3月12日にモンデリーズ・ジャパン株式会社 と、同年8月1日に日本コカ・コーラ株式会社との間で、本件事業のデータ提供等に係る契約を締結した。プーリカは、前者の契約においては、同年3月3日から同年10月31日まで ズ・ジャパン株式会社 と、同年8月1日に日本コカ・コーラ株式会社との間で、本件事業のデータ提供等に係る契約を締結した。プーリカは、前者の契約においては、同年3月3日から同年10月31日までは調査店舗数を1000店舗とし、2カテゴリーのデータを提供して、月額約70万円(同期間の合計約560万円)を受領することになっており、後者の契約においては、契約期間 は同年8月1日から同年12月31日まで、調査対象店舗数を約300店舗とし、7カテゴリーのデータを提供して、約450万円を受領することとなっていた。本件事業における顧客はこの2社のみであり、いずれも消費財メーカーであった。(甲43、44)オロッテ商事におけるデータ購入検討の状況 ロッテ商事では、平成26年5月2日、プーリカから本件事業の販売デ ータを4400万円(税抜)で購入する(データ購入期間は同年4月から平成27年3月まで)旨の稟議書(甲90)が起案されたが、ロッテ商事の取締役であったRは、すぐにはこれを決裁せず、保留する扱いとした。 その後、Rは、Gの同席の下、Dに対し、店頭映像の取得に関する小売業者との間の契約書等の客観的な証拠の提示を求めた。Dは、平成26年 6月1日頃、被告に対し、Rから、小売店舗の許可なく撮影した画像を元にしたデータを購入しているとなれば会社や被告に迷惑がかかることが心配との話があったこと、S部長とT部長がプーリカを呼びデータ取得について聞き取ることになったこと、データ取得は合法的かつ安全であり、購入メーカーに問題が及ぶことはなく、同時に店頭情報取得内容は秘匿とプ ーリカに回答させるつもりであること等を電子メールで伝えた。Dは、同月10日、プーリカのCに対し、ロッテ商事に対する回答案を添付した上で、「昨日、商 はなく、同時に店頭情報取得内容は秘匿とプ ーリカに回答させるつもりであること等を電子メールで伝えた。Dは、同月10日、プーリカのCに対し、ロッテ商事に対する回答案を添付した上で、「昨日、商事取締役(ここまで捺印済み)にAから『しのごの言ってないでとっとと稟議を回しなさい』(S部長が聞いてしまった、そうです)と言ったそうです。また、本日、最大の邪魔者には、稟議が回った瞬間、 『私が言う』と言う事でした。」などと電子メールで伝えた。(甲84~甲86)また、Dは、同月11日、ロッテ商事から、小売業者との契約に基づき店舗内撮影を行っていることを示す書面を求められたことを受け、Cがロッテ商事に対する2度目の回答案として作成した「㈱POOLIKロッテデー タ購入契約に関しての確認事項Ⅱ」と題する書面(甲88の2)に添削を加え、同月18日、これをCに送付した。同書面には、契約という意味では、文章化している小売業者もあれば、単に口頭で許可を得ている小売業者もある、許可を得ている先としては本部のところもあれば個店のところもある、いずれにしても、小売業者には個店情報(場所はもちろん、チェ ーン名も)を一切分からなくするという条件の下に特別に許可を得ている などと記載されていた。(甲87、甲88の1、2)プーリカは、同月24日付けで「㈱プーリカデータ購入契約に関しての確認事項」と題する書面(甲89)を作成し、ロッテ商事に提示した。 同書面には、小売業者とは厳密な秘密保持契約を含む契約書を締結していること、契約の基本事項については情報提供先の個店情報(場所はもちろ ん、チェーン名も)を一切分からなくすることを条件に特別の許可を得ていることなどが記載されていた。(甲84)以上を受けて、Rは、同年7月30日、 については情報提供先の個店情報(場所はもちろ ん、チェーン名も)を一切分からなくすることを条件に特別の許可を得ていることなどが記載されていた。(甲84)以上を受けて、Rは、同年7月30日、保留していた前記稟議書(甲90)を回議に回したが、最終的にこれは承認されなかった。その後、ロッテ商事においては、同年9月1日、プーリカから本件事業の販売データを 1830万円(税抜)で購入する(データ購入期間は同年9月から平成27年3月まで)旨の稟議書が起案され、平成26年9月17日にこれが承認された(甲91)。ただし、最終的には、ロッテ商事とプーリカとの間でデータ購入に係る契約は締結されなかった(甲84)。 (13) ロッテグループ内での本件事業に関する打合せ ア被告、U取締役、G、D等は、平成26年9月18日、本件事業に関する打合せを行った。Dは、本件事業の継続のためには、調査会社及びデータ処理センターの運営資金として、3億8000万円が必要である旨を説明した。参加者からは、被告に対し、本件事業について、現在プーリカが行っている事業を、引継ぎまでの債権債務をプーリカが負担することを条 件として、ロッテグループ内で行う旨の提案がされ、監査法人と協議の上で、検討されることとなった。この際、被告は、本件事業における必要な写真撮影は第三者が行っておりまた、法的に問題がないように承諾を得た店舗のみで写真撮影を実施している旨の説明を行った。また、被告からは、調査会社(KIC)及び旭川のデータ処理センターでは、習熟した調査 員・作業者を保持しており、これらはロッテが投資して得られた無形資産 の一部であるから、調査会社及び旭川データ処理センターについて維持することを検討してほしい旨の指示があった。(甲69) ・作業者を保持しており、これらはロッテが投資して得られた無形資産 の一部であるから、調査会社及び旭川データ処理センターについて維持することを検討してほしい旨の指示があった。(甲69)イ M、U取締役、Gらは、平成26年9月22日、本件事業に関する今後の対応について打合せを行い、ロッテグループが、会社として本件事業への対応を行うために、組織として専門家(経理担当、マーケティング統括 部、情報システム部、法務担当他)を含むチーム編成を行い、当該チームにおいて今後の方針を作成すること、当該チームは経営戦略室の所属とすることとされた。その席で、ロッテ商事の担当者から、プーリカのデータは有用であると判断しており、プーリカと適切な契約を結びデータを購入する予定であることの報告があった。Mは、本件事業についてロッテ側に 法的責任がないか、棚割りに係るノウハウは、セブン・イレブン等の無体財産権ではないのか、本件事業でロッテとコンビニエンスストア本社との係争は生じないのか等の質問をしたが、これは、写真撮影についてコンビニエンスストアの承諾を得ていることが前提であればされるはずのない質問であり、無断撮影が行われることが前提の質問であった。これに対し、 担当者は、法的責任について、原告は、プーリカに対して業務委託を行っているのみであるから、プーリカの事業及び第三者に対する債権債務について責任を負うものではないこと、棚割りについて無体財産権が成立するかはケースバイケースであること、本件事業を行うことでコンビニエンスストア本社との係争が生じる可能性について、他社(花王)で自社におい て社内用に本件事業と同様のデータを蓄積し活用しているとのことで、ロッテが菓子について自社用として同様のことを行うことも可能と考えていると回 が生じる可能性について、他社(花王)で自社におい て社内用に本件事業と同様のデータを蓄積し活用しているとのことで、ロッテが菓子について自社用として同様のことを行うことも可能と考えていると回答した。Mは、合法性についての担保を行うと共に、コンビニエンスストア本社への対応等、ロッテとしてのリスクヘッジを含めて再レビューを行うべきと述べた。(乙16) (14) 本件事業の終了本件事業においては、本件追加投資承認後も予期せぬ開発の遅れ等が生じ、平成26年5月の段階で予算を使い切り、更に追加で出資を受けなければ本件事業の運用を開始することができない状況であった。そこで、Dは、被告の承諾の下、本件事業継続のために更に3億8000万円の追加投資を申請 したものの、これが承認されず、ロッテグループによる事業の引継ぎ等の支援も行われなかったため、本件事業は、事実上、終了することになった。 (15) ロッテHDの取締役会ロッテHDの取締役会が、平成26年11月19日に開催され、原告の監査結果が報告された。これは、平成23年12月21日の取締役会において 本件事業が承認された際に付された付帯決議(事業開始後3年度終了時点において事業継続についてレビューするというもの)に基づくものであった。 監査結果では、原告が、プーリカからの支払請求に対してその内容を吟味して支払を行ったとはいえないこと等が問題点として挙げられた。議長からは、プーリカ社との関係を解消する交渉のための対応チームを立ち上げるこ と、今回の件はガバナンス上大きな問題であり、権限規程の見直し等対応策を講じるため、関係部署と打合せを行う旨の提案がされた。監査役からは、本件事業の実務担当者であるDに責任がないとはいい難い経緯があるため、 件はガバナンス上大きな問題であり、権限規程の見直し等対応策を講じるため、関係部署と打合せを行う旨の提案がされた。監査役からは、本件事業の実務担当者であるDに責任がないとはいい難い経緯があるため、処分が検討されるべきとの提案があった。出席者から、今までの決裁権限において、本件事業の進め方に問題があったわけではないと理解してよいかと の質問があり、これに対し、U専務は、今までの決裁権限には新規事業に対する明確なルールがなかったから、今後の新規事業に対する新しいルールを作る旨述べた。被告は、会社が了解して始めた新規事業がうまく進まないからといって実務担当者を処分するというのはおかしいのではないかと述べたが、これに対して、U専務は、新規事業を進めることに対してではなく、正 常とは考えられない対応を行ったことが確認できた場合には処分を行うとい うことである旨を述べた。(乙1)(16) 被告の原告取締役からの解任被告は、平成26年12月26日、原告を含むロッテグループ各社の取締役を解任された。解任の理由としては、現行のプーリカに対する支払方法(社内手続)等が不適切であったことが挙げられた。 2(争点1)被告の任務懈怠(法令違反、善管注意義務違反)の有無について(1) 本件事業実施における法令違反の主張についてア原告は、本件事業は小売店舗内での無断撮影を伴わざるを得ない事業であるところ、写真撮影を禁止する小売店舗に無断撮影目的で立ち入る行為は、建造物侵入罪(刑法130条前段)が成立する犯罪行為であるから、 被告は、そのような犯罪行為を伴わざるを得ない本件事業を避止すべき義務を負っていたにもかかわらず、あえて避止せずに準備・実施を推し進めたのであるから、この点について直ちに任務懈怠責任を負う 被告は、そのような犯罪行為を伴わざるを得ない本件事業を避止すべき義務を負っていたにもかかわらず、あえて避止せずに準備・実施を推し進めたのであるから、この点について直ちに任務懈怠責任を負う旨主張するので検討する。 イ会社が法令を遵守すべきことは当然であるところ、取締役が、会社の業 務執行を決定し、その執行に当たる立場にあるものであることからすれば、取締役を名あて人としてその職務執行に際して遵守すべき義務を定める法令の規定を遵守する職務上の義務があることはもちろんのこと、会社をして法令に違反させることのないようにするため、その職務執行に際して会社を名あて人とする法令の規定を遵守することもまた、取締役の会社 に対する職務上の義務に属する(最高裁平成12年7月7日第二小法廷判決・民集54巻6号1767頁参照)。そこで、取締役が当該義務に違反し、会社をして上記規定に違反させることとなる行為をしたときには、そのこと自体により、直ちに取締役の任務懈怠が成立することになるものと解される。 しかし、刑法130条前段(建造物侵入罪)は、取締役を名あて人とし てその職務執行に際して遵守すべき義務を定める法令の規定ではなく、また、自然人を名あて人とする規定であって会社を名あて人とする規定ではないから、会社の活動や取締役としての本来的な職務内容と直ちに関わりがあるとはいえないものである。そうすると、取締役が、私生活上ないし職務執行の際に建造物侵入罪に該当する行為を行うなどしたとしても、こ れが直ちに取締役としての任務懈怠(旧商法266条1項5号にいう法令違反)に当たるといえるものではなく、任務懈怠に当たるというには、具体的な職務との関係等の下で当該事実が取締役としての善管注意義務に違反するものとい しての任務懈怠(旧商法266条1項5号にいう法令違反)に当たるといえるものではなく、任務懈怠に当たるというには、具体的な職務との関係等の下で当該事実が取締役としての善管注意義務に違反するものといえる必要があるものと解される。 ウ上記イを前提としても、建造物侵入罪のような反社会性の強い刑法上の 犯罪が会社の営業上の行為として行われることが許されないのは当然であるから、取締役が、その職務執行として、会社の従業員等に対し、敢えて建造物侵入罪に該当する法令違反行為を会社の営業上の行為として行うよう命じたような場合には、取締役としての善管注意義務に違反するものというべきである。 そこで、取締役が、その職務執行として、会社と委託関係にある調査会社の従業員等に敢えて建造物侵入罪を行わせたと評価できるような場合には、取締役の善管注意義務に違反する任務懈怠に該当することになるものと考えられ、その場合において建造物侵入罪を実行させるために会社から費用を支出したときには、これが任務懈怠により生じた会社の損害という ことになろう。 エそして、建造物への立入りについて、管理権者が予め立入り拒否の意思を積極的に明示していない場合であっても、該建造物の性質、使用目的、管理状況、管理権者の態度、立入りの目的などからみて、現に行われた立入り行為を管理権者が容認していないと合理的に判断されるときは、建造 物侵入罪(刑法130条前段)の構成要件に該当するところ(最高裁昭和 58年4月8日第二小法廷判決・刑集37巻3号215頁参照)、小売店舗の商品陳列棚の無断撮影目的で小売店舗に立ち入った行為の建造物侵入罪の構成要件該当性が肯定された裁判例等は存在せず、本件事業においても、調査会社に属する調査員が小売店舗の商品陳列棚の撮 )、小売店舗の商品陳列棚の無断撮影目的で小売店舗に立ち入った行為の建造物侵入罪の構成要件該当性が肯定された裁判例等は存在せず、本件事業においても、調査会社に属する調査員が小売店舗の商品陳列棚の撮影を行うに際し、少なくとも建造物侵入罪に問われた具体的事実は窺われない。 また、店舗内や商品の撮影等を明示的に禁止する表示がなされていた場合の店舗内への立入りが、建造物侵入罪に該当するかどうかについての弁護士の意見書を見ても、①E意見書は、店舗内や商品の撮影等を明示的に禁止する表示がなされていた場合といえども、禁止されているのはあくまで店舗内や商品の撮影であって、それを目的とした立入りそのものではな いから、店舗内への立入りそのものが店舗管理者の管理権の侵害に該当することにはならず、住居侵入罪も直ちには成立しないと考える、即時の退去を求められた場合には、不退去罪(刑法130条後段)が成立することは免れないが、速やかに店舗管理者の指示に従った行動を取るのであれば、不退去罪は結局成立しないものと考えるとし、建造物侵入罪の構成要 件該当性を否定する。原告が依拠する弁護士の意見書も、②F意見書は、判例理論を文字通り理解する限り、管理権者が明確に写真撮影を禁止し、立ち入り者がそれを容易に認識しうる状態である場合についてまでも、建造物侵入罪が成立する可能性が低いと結論づけることは出来ないとし、③Hら意見書は、明示的に撮影禁止が表示されている小売店舗に関して本件 事業を行うことは、民事刑事の両面において法的リスクが高いとするが、いずれもそれらの行為が建造物侵入罪に該当すると断言するものではなく、違法となるリスクを指摘するにとどまるものである。 そうすると、本件事業が小売店舗内での無断撮影を伴う事業であるとしても、実際に行わ れもそれらの行為が建造物侵入罪に該当すると断言するものではなく、違法となるリスクを指摘するにとどまるものである。 そうすると、本件事業が小売店舗内での無断撮影を伴う事業であるとしても、実際に行われた調査員の小売店舗への具体的な立入行為に係る事実 関係(該建造物の性質、使用目的、管理状況、管理権者の態度、立入りの 目的など)の検討を離れ、写真撮影を禁止する小売店舗に無断撮影目的で立ち入る行為一般について、一律に直ちに建造物侵入罪(刑法130条前段)が成立すると断言できるものではなく、その可能性があるというにとどまり、不法行為の成立についても同様である。 したがって、被告について、本件事業における具体的な立入行為が建造 物侵入罪に問われた場合に原告に発生した損害に係る取締役としての法令違反の任務懈怠が問われているわけではない本件において、直ちに本件事業の実施に係る法令違反の任務懈怠があったと認めることはできないし、本件事業において建造物侵入罪に該当する行為を必然的に伴わざるを得ないと断定することも困難であるから、建造物侵入罪に該当する行為が必然 的に伴われるものであることを理由とする善管注意義務違反の任務懈怠があったということもできない。 オ以上によれば、原告の上記アの主張は採用することができない。 (2) 本件事業実施における被告の善管注意義務違反の主張についてア取締役の経営判断に善管注意義務違反が認められるかどうかについて は、その判断の過程・内容が著しく不合理なものであったか否かによって判断されるべきものと解されるところ、原告は、被告が本件事業を避止せずに準備・実施を推し進めた経営判断について、本件事業が、①小売店舗への無断撮影目的の立入りという犯罪行為を伴わざるを得ない点、②適法に れるべきものと解されるところ、原告は、被告が本件事業を避止せずに準備・実施を推し進めた経営判断について、本件事業が、①小売店舗への無断撮影目的の立入りという犯罪行為を伴わざるを得ない点、②適法に画像を収集している旨の虚偽の説明・保証を顧客に行う犯罪行為(詐欺 行為)も伴わざるを得ない点、③ロッテグループにとって重要な取引先である小売業者との信頼関係を破壊するおそれがある点、④ロッテグループが犯罪事業に関与しているとしてグループ全体のレピュテーションを毀損するおそれがある点、⑤一度無断撮影が露見すれば事業自体継続不能となるおそれがある点などにおいて、重大なリスクを抱えていたのに、それを 避止せずに準備・実施した意思決定の内容は著しく不合理であり、また、 自己に不都合な指摘や反対意見を意図的に無視し、虚偽説明を繰り返し行ってまで、「ばれなければよい」という発想で本件事業を推し進めており、その意思決定の過程も著しく不合理であるから、善管注意義務違反が成立し、被告は取締役の任務懈怠責任を負う旨主張する。 なお、既に判示したとおり、小売店舗の無断撮影目的の立入りを直ちに 違法と断定することはできないが、本件各意見書のいずれにおいても、明示的に撮影禁止が表示されている小売店舗における無断撮影目的の立入りが、民事刑事の両面において違法となる場合があるとされていることを踏まえ、被告の上記主張は、本件事業に伴う行為が違法とされるリスクがある旨をいうものとして検討することとする。 イ(ア) まず、前提として、被告は、本件事業が、小売業者の承諾を得ずに小売店舗内撮影を行うことを前提として計画、実施されたものであったことを否認し争うので、検討する。 (イ) 本件事業における小売店舗内の撮影方法について、前 件事業が、小売業者の承諾を得ずに小売店舗内撮影を行うことを前提として計画、実施されたものであったことを否認し争うので、検討する。 (イ) 本件事業における小売店舗内の撮影方法について、前記認定事実によれば、次の各事実を指摘することができる。 ① 本件事業における小売店舗内の撮影方法について、Bに対する説明及びその承認(平成23年10月11日)並びに本件取締役会(同年12月21日)前、プーリカが原告宛に作成した本件事業に関する平成22年8月26日付け提案書では、商品陳列棚の撮影手段は隠し撮りカメラを使用することが前提とされ、本件各意見書を取得する際も (平成23年1月頃)、小売店舗の承諾を得ずに商品陳列状況を写真、ビデオ等で撮影することを前提として意見照会がされている。 ② 被告も、同月11日に本件事業について違法性等の点がグレーならゴーすると述べており、承諾を得て撮影するのであれば違法性が問題となることはないから、無断撮影が前提とされていたものということ ができる。 ③ 本件取締役会後も、Dは、平成24年2月28日、店頭調査の委託先候補の調査会社から、店頭調査について店舗経営の本体企業からのフォローがある調査か又は完全な隠密調査かを問われ、本件事業の営業活動を代行していたJを通じ、隠密調査である旨を回答したものであった。 ④ Dは、平成24年6月8日、被告に対し、プーリカの代表者であるCが韓国へ隠し撮り用カメラの製品に関する実情調査のために出張する旨報告し、同年7月11日、同年11月21日及び平成25年7月1日に開催された本件事業に関する被告への報告会でも、店舗調査で使用するカメラの例として、帽子の前頭部分に装着し、カバーで見え なくなる仕組みのもの、メガネ、カチ 1月21日及び平成25年7月1日に開催された本件事業に関する被告への報告会でも、店舗調査で使用するカメラの例として、帽子の前頭部分に装着し、カバーで見え なくなる仕組みのもの、メガネ、カチューシャ、カツラ等に仕込む仕組み、ショルダー、ウィッグ、バックパックに装着するなどカメラの存在が隠される仕様になっているものを紹介した。 ⑤ 平成24年10月23日までに実施された50店舗トライアル調査においては、明示的に撮影を禁止する小売店舗でも無断で店舗内撮影 が行われ、調査員が小売店舗の従業員に見とがめられて調査することができなかった事態が複数生じていた。 上記①~⑤の各事実によれば、本件事業は、小売業者の承諾を得ずに小売店舗内撮影を行うことを当然の前提として計画されたものであり、そのために必要なカメラ等の検討、開発等を経て、実際に実施される際 も、明示的に撮影を禁止する小売店舗であるか否かを問わず、小売業者の承諾を得ずに小売店舗内での撮影が行われたものといえる。 (ウ) これに対し、被告は、原告が自らの事業として企図していたのはデータ処理事業であり、原告自らが店頭調査を行うことは当初から想定されてなかったから、本件事業には、店頭調査行為は含まれていない旨を主 張する。 しかし、前記認定事実のとおり、本件事業は、Dが店頭調査データを有益なマーケティングデータとして提供する事業として発想され、店頭情報の取得手段として、撮影された画像を処理をして用いるという形で進められたものであった。Dは、社内ベンチャーに応募した際、本件事業の内容を、原告又は原告が出資したジョイントベンチャー企業が、調 査会社に対して店頭陳列棚の画像の取得を委託し、取得された画像を画像認識エンジンで解析したデータ(修 チャーに応募した際、本件事業の内容を、原告又は原告が出資したジョイントベンチャー企業が、調 査会社に対して店頭陳列棚の画像の取得を委託し、取得された画像を画像認識エンジンで解析したデータ(修正前処理データ)、人の手で処理した上(修正後処理データ)、さらに、マーケティング上有用なデータに加工して(完全データ)、最終的に消費財メーカーや小売業者等に対して販売すると説明しており、その後、被告とDとが原告の新規事業と して進めていく際も、プーリカとともに店頭調査を行わせる調査会社の選定を進め、当初は、データを販売する新会社を設立して同社に調査会社への委託をさせることが前提とされ、平成24年9月以降は、プーリカが調査会社への店舗調査の委託主体及びデータの販売主体の役割を担うこととされたものであった。また、本件事業は、その発想時から終了 時まで、原告、プーリカ及びKICその他の調査会社との間では、終始一貫して、事業内容の主たる部分の決定はDや被告によってなされており、資金も原告が支出していたものであった。 これらの事実に照らせば、本件事業は、社内ベンチャー応募から原告の事業として実施された後まで、調査会社に店頭陳列棚の画像の取得を 委託し、取得したデータをマーケティング上有用なデータに加工して、顧客である消費財メーカーや小売業者等に販売するという内容の事業であること、すなわち事業主体側が画像取得に関わることでは一貫しており、ただ、調査会社に委託する役割、データの販売主体の役割等を事業主体側の誰が行うのかという点においては明確に決まっていなかったり 時期によって変更されたりし、これを原告が直接担うとはされていなか ったというに過ぎず、本件事業には店頭調査行為ないし画像取得行為も含まれていたものというべき 決まっていなかったり 時期によって変更されたりし、これを原告が直接担うとはされていなか ったというに過ぎず、本件事業には店頭調査行為ないし画像取得行為も含まれていたものというべきである。 以上によれば、被告の上記主張は採用することができない。 ウ(ア) 次に、被告が本件事業を実施した判断の内容が著しく不合理といえるか、原告は、本件事業が、①小売店舗への無断撮影目的の立入りを伴わ ざるを得ず犯罪行為に該当する可能性がある点、②適法に画像を収集している旨の説明・保証が結果的に虚偽となる可能性がある点、③ロッテグループにとって重要な取引先である小売業者との信頼関係を破壊するおそれがある点、④ロッテグループが犯罪事業に関与しているとしてグループ全体のレピュテーションを毀損するおそれがある点、⑤一度無断 撮影が露見すれば事業自体継続不能となるおそれがある点などにおいて、重大なリスクを抱えていたのに、それを避止せずに準備・実施したという点において、その判断の内容が著しく不合理である旨を主張するので検討する。 (イ) 前記のとおり、本件事業は、小売業者の承諾を得ずに小売店舗内撮影 を行うことを当然の前提として計画され、実際に実施される際も、明示的に撮影を禁止する小売店舗であるか否かを問わず、小売業者の承諾を得ずに小売店舗内での撮影が行われたものであるところ、刑法130条前段にいう「侵入し」とは、他人の看守する邸宅等に管理権者の意思に反して立ち入ることをいうものであるから(最高裁昭和51年3月4日 第一小法廷判決・刑集30巻2号79頁参照)、明示的に撮影を禁止する小売店舗においてその管理権者の承諾を得ずに撮影目的で立ち入る行為が、状況によっては同条の構成要件に該当する可能性が低いとはいい切れず、 法廷判決・刑集30巻2号79頁参照)、明示的に撮影を禁止する小売店舗においてその管理権者の承諾を得ずに撮影目的で立ち入る行為が、状況によっては同条の構成要件に該当する可能性が低いとはいい切れず、原告が取得した弁護士による本件各意見書でも、明示的に撮影禁止が表示されている小売店舗において無断で商品陳列状況を撮影して その情報を販売することは、民事上刑事上違法となるリスクがある旨が 指摘されていたものであった。 そこで、本件事業には、その実施に伴う小売店舗への無断撮影目的の立入りが民事上刑事上違法と判断され、少なくとも原告が民事上不法行為等の責任を負うリスク(以下「違法リスク」という。)、また、これと原告との関係が明らかとなった場合における、原告のみならず、原告 が属するロッテグループ全体のレピュテーションを毀損するリスク(以下「レピュテーション毀損リスク」という。)があったものといえる。 なお、前提事実によれば、ロッテグループは、持株会社であるロッテHDの傘下に中核事業子会社であるロッテ社を始めとする原告その他の事業子会社が一体として事業活動を行っており、その中で、原告は、グ ループ各社の依頼に基づき、その営業部門や生産部門で種々のサポートを行うことを主たる事業としていたものであるから、原告の取締役である被告としても、その経営判断において原告のみならずロッテグループ全体の利益にも配慮すべき、原告に対する善管注意義務を負っていたといえる。 (ウ) また、菓子製造等の各種事業を行うロッテグループにとって、菓子等を販売する小売店舗は取引先であり、小売店舗との信頼関係を維持することの重要性は明らかであるところ、本件事業において小売業者の承諾を得ずに小売店舗内撮影を行い、原告がこれをさせていたことが発覚 子等を販売する小売店舗は取引先であり、小売店舗との信頼関係を維持することの重要性は明らかであるところ、本件事業において小売業者の承諾を得ずに小売店舗内撮影を行い、原告がこれをさせていたことが発覚した場合には、原告ないしロッテグループと小売業者との信頼関係が破壊 されるリスク(以下「信頼関係破壊リスク」という。)があったというべきである。 (エ) さらに、本件事業の実施に伴う小売店舗への無断撮影目的の立入りが民事上刑事上違法と判断され、これと原告との関係が明らかとなった場合には、本件事業自体が継続できなくなるリスク(以下「事業中止リス ク」という。)も抱えていたものといえる。 (オ) しかし、他方で、本件事業においては、原告が、小売店舗の調査を直接行うことは予定されておらず、小売店舗の調査を行う調査会社との間で直接の委託契約を締結することも予定されておらず、上記(イ)~(エ)の違法リスク、レピュテーション毀損リスク、信頼関係破壊リスク、事業中止リスク(以下、これらを「本件事業リスク」という。)を一定程度 低減させる仕組みが用いられることが予定されており、そのような仕組みの工夫によって本件事業リスクを軽減することが可能であったものといい得る。 また、本件事業は、他社が本件事業と同様の事業内容に係るリリースをしたことに照らしても、消費財メーカー等において一定のニーズが存 在したといえ、事業としての価値がおよそなかったとまではいえない。 そうすると、本件事業には、本件事業リスクという相当に大きなマイナスのリスクがあったということはできるものの、それを踏まえても、被告が、本件事業を実施すると決断したことについて、その判断内容自体に著しい不合理な点があるとまでいう 業リスクという相当に大きなマイナスのリスクがあったということはできるものの、それを踏まえても、被告が、本件事業を実施すると決断したことについて、その判断内容自体に著しい不合理な点があるとまでいうことはできない。 (カ) 以上によれば、原告の上記(ア)の主張は採用することができない。 エ(ア) 被告が、本件事業を実施した判断の過程に著しい不合理な点があったといえるか、原告は、被告が自己に不都合な指摘や反対意見を意図的に無視し、虚偽説明を繰り返し行ってまで、「ばれなければよい」という発想で本件事業を推し進めており、その判断の過程も著しく不合理であ るから、善管注意義務違反が成立し、被告は取締役の任務懈怠責任を負う旨主張するので検討する。 (イ) 前記認定事実によれば、原告が本件事業を実施するまでの過程について、次の諸点を指摘することができる。 ① Dは、ロッテHDの社内ベンチャーの審査の過程で、G等から、本 件事業において無断撮影を行うことは、違法性の点やロッテグループ と小売業者との信頼関係を破壊しかねない点でリスクがある旨指摘された。 また、Mは、平成23年6月末頃、被告に対し、売上げ、利益ともに大きなものではないにもかかわらず、小売業の知識、ノウハウを無断で撮影、分析、販売することは小売業者と大きなトラブルになる可 能性があることなどとして、本件事業に強く反対した。これに対し、被告が、商品陳列は公知の事実であり、問題がないことは弁護士に確認済みであり、撮影は別会社が行うため問題がないとも述べたが、Mは、弁護士の意見は当てにならないし、いずれロッテグループとのつながりがあることが小売業者に分かってしまうなどと反論し、小売業 の賛同が得られるならば本件事業 うため問題がないとも述べたが、Mは、弁護士の意見は当てにならないし、いずれロッテグループとのつながりがあることが小売業者に分かってしまうなどと反論し、小売業 の賛同が得られるならば本件事業を進めてもよいと述べた。このほか、ロッテHD及びロッテ社の取締役等であったNも本件事業はリスクがあり過ぎるのでやめるよう指摘していた。 このように、ロッテグループ内では、ロッテHDの代表取締役社長であったMを始めとする取締役が、小売店舗内の無断撮影により小売 業者と大きなトラブルになる可能性を理由として本件事業に強く反対しており、原告の関与において、調査会社に店頭陳列棚の画像の取得を委託し、取得したデータをマーケティング上有用なデータに加工して、顧客である消費財メーカーや小売業者等に販売するという内容である本件事業については、小売業者の賛同が得られない限り、グルー プ内の反対によって実施することが困難な状況にあったものということができる。 ② ロッテグループの事業子会社が新規事業を開始する際は、ロッテグループの創業者でありロッテHDの代表取締役会長であったBの承認を得ることがロッテグループ内の共通認識であったところ、被告及び Dは、平成23年10月11日、本件事業を進めることにつき、Bか ら承認を得るため、本件事業が原告の新規事業として展開するものであり、ビジュアルデータを機械的に認識する新システムを開発取得し、当該システムを販促関連企業及び調査企業へ賃貸し、その賃貸料等を売上げとする事業である旨の説明を行い、店頭調査については、調査会社などが活用することは考えられるが、各調査会社が独自で検討す ることであるなどとして、原告が店頭調査に関わらない旨を述べた結果、Bの承認が得られたことが認められる。 頭調査については、調査会社などが活用することは考えられるが、各調査会社が独自で検討す ることであるなどとして、原告が店頭調査に関わらない旨を述べた結果、Bの承認が得られたことが認められる。 また、本件事業を実施するための本件概算稟議の過程で、Dは、G等に対し、従前のスキームは、原告の関与において小売業店頭情報を依頼した調査会社(原告とは無関係の企業)から取得して、原告又は プーリカがマーケティング上有用な形にした上で、ロッテ名とは別法人名の会社にて、消費財メーカー等へ販売するというものであったが、それでは小売業者との摩擦リスクが大きくなる可能性が払拭できていないことに鑑み、新たなスキームでは、完全データ化したものを販売するのではなく、提供された情報を、今回開発するシステムで処理可 能な範囲のものに関し、統計処理可能なデータとし、処理費用を受け取って、依頼を受けた企業に渡すこととし、購入した企業において完全データ化をお願いすることとしたため、法的問題はなく、ロッテグループの得意先との摩擦リスクもない旨を説明した。すなわち、この説明によれば、原告(新たに設立するとされたデータ販売のための会 社を含む。)やプーリカは店頭調査に関わらず、店頭調査に関わり消費財メーカーに完全データを販売するのは、顧客であるデータ購入企業ということになる。 さらに、本件事業を実施するための予算の概算稟議に関するロッテHDの本件取締役会が、平成23年12月21日に被告出席の下で開 催され、Dは、本件事業のスキームにつき、顧客であるデータ購入企 業が店頭調査を行う調査会社に店頭調査を委託して店頭の画像を収集し、原告はデータ購入企業から提供された画像の解析処理のみを行い、データ購入企業が解析処理後のデータ(修正後処理デー 購入企 業が店頭調査を行う調査会社に店頭調査を委託して店頭の画像を収集し、原告はデータ購入企業から提供された画像の解析処理のみを行い、データ購入企業が解析処理後のデータ(修正後処理データ)を完全データ化した上で消費財メーカー等に販売するものである旨の説明をしたところ、本件事業の実施が承認されたことが認められる。 しかし、前記のとおり、本件事業は、社内ベンチャー応募から実施後に至るまで、原告の関与において調査会社に店頭陳列棚の画像の取得を委託し、取得したデータをマーケティング上有用なデータに加工して、顧客である消費財メーカーや小売業者等に販売するという内容で一貫しており、上記のような、Bに対する説明、概算稟議における 説明、本件取締役会における説明は、いずれも、店頭調査を行うのは顧客側であり、原告が店頭調査に関わることはなくデータ処理のみを行うとするもので虚偽であったというほかはないが、これは、ロッテHDの代表取締役社長であったM等のロッテグループ経営陣からの反対に鑑み、原告が店頭調査に関与することを糊塗し、本件事業の実施 に関する了承を得るためになされたものであると認めるのが相当である。 そして、前記認定事実のとおり、被告は、本件各意見書取得の際、本件事業について違法性等の点がグレーならゴーすると述べていたこと、その後も、Dからは、適宜、検討状況等の電子メールによる報告 も受け、プーリカのCも含めた被告に対する報告会で詳細な報告も受けており、50店舗トライアルにおいて店舗に無断で調査を行うことが前提であったことも認識していたこと、本件事業において消費財メーカーが自ら取得した店頭画像の分析委託を受けることがオプション事業として位置づけられることの報告を受け、これについて、本業の データ であったことも認識していたこと、本件事業において消費財メーカーが自ら取得した店頭画像の分析委託を受けることがオプション事業として位置づけられることの報告を受け、これについて、本業の データに遅れや支障が出ないように行うよう指示していたこと等に照 らせば、DのBへの説明、本件概算稟議における説明及び本件取締役会説明の時点においても、Dの説明内容が虚偽であることを認識していたものと認められ、Dが被告の了承なく独断で虚偽説明をするとは考え難いことから、当該虚偽説明は、被告の指示ないし承認に基づくものであったと認めるのが相当であり、これは、被告自身により虚偽 説明がなされたものと同視し得るというべきである。 (ウ) 上記(イ)で指摘した諸点によれば、ロッテグループ内では、ロッテHDの代表取締役社長であったMを始めとする取締役が、小売店舗内の無断撮影により小売業者と大きなトラブルになる可能性を理由として本件事業に強く反対しており、本件事業については、店舗内の撮影について 小売業者の賛同が得られない限り、グループ内の反対によって実施することが困難な状況にあったところ、被告は、原告が無断撮影を伴う店頭調査に関わるというロッテグループ内における反対理由の重要なポイントの部分について、虚偽説明によりグループ内の了承を取り付け、本件事業を実施したということができる。 このような被告による虚偽説明は、大きなマイナスの本件事業リスクを抱えた本件事業の実施の可否について、ロッテグループの経営陣による検討を経た上での承認を踏まえた上で判断されることが予定されていたのにもかかわらず、これがなされる機会を失わせるものであり、かつ、虚偽説明がなければ、BやロッテHD取締役会の承認がされること はなく、本件事業が実 踏まえた上で判断されることが予定されていたのにもかかわらず、これがなされる機会を失わせるものであり、かつ、虚偽説明がなければ、BやロッテHD取締役会の承認がされること はなく、本件事業が実施されることはなかったものと認めるのが相当であるから、被告が本件事業を実施するとの判断をするに至った過程には著しく不合理な点があったものというべきである。 オ以上によれば、被告は、その本件事業を実施した判断の過程に著しい不合理な点があったといえ、本件事業を実施すべきではなかったのにこれを 実施したものとして善管注意義務違反が認められ、取締役の任務懈怠とな るから、これにより生じた損害について任務懈怠責任を負うことになる。 3(争点2)被告の任務懈怠と因果関係のある損害について(1) 被告が本件事業を実施すべきではなかったのにこれを実施したことが任務懈怠であるから、基本的には、本件事業のための支出はこれによる損害ということができる(なお、本件事業は結果的に失敗に終わり、原告は、本件事 業から何らの利益も得ていないから、本件事業のための支出自体を損害とすることに障害はない。)。 (2)アそして、前記認定事実によれば、原告が本件事業の開始から本件追加承認までに本件事業のためにした契約に基づく支出は次のとおりであったものと認められる(合計4億8096万3681円)。 (ア) 原告は、本件事業に係るBの承認(平成23年10月11日)の後、同月28日にプーリカとの間で本件基本契約を締結し、これに基づく同日付け個別契約1に基づき、同年11月29日から平成24年6月4日までに合計5302万8052円を支払った。 (イ) 原告は、本件基本契約に基づき、プーリカとの間で平成23年12月 15日付けの業務 別契約1に基づき、同年11月29日から平成24年6月4日までに合計5302万8052円を支払った。 (イ) 原告は、本件基本契約に基づき、プーリカとの間で平成23年12月 15日付けの業務委託契約を締結し、これに基づき、平成24年3月5日から平成25年4月30日までに合計1993万0670円を支払った。 (ウ) 原告は、本件取締役会及び本件概算稟議の各承認(平成23年12月21日)の後、同月26日、プーリカとの間で調査業務委託契約を締結 し、これに基づき、平成24年3月5日から同年6月29日までに合計787万5000円を支払った。 (エ) 原告は、平成24年4月27日、プーリカとの間で、基本契約に基づく個別契約2(1)を締結し、これに基づき、同年6月21日から同年11月30日までに合計4363万0320円を支払った。 (オ) 原告は、平成24年4月27日、プーリカとの間で、プロトタイプ用 サーバ環境構築・運用契約を締結し、これに基づき、同年6月18日から平成25年5月30日までに合計371万5793円を支払った。 (カ) 原告は、どの個別契約に基づくかは不明であるが、プーリカに対し、本件事業費用として、平成24年3月5日から平成25年8月30日までに合計1992万7259円を支払った。 (キ) 原告は、平成24年7月1日、プーリカとの間で、本件基本契約に基づく個別契約2(2)(データサービス事業ソフトウェア開発)を締結し、これに基づき、同月25日から平成25年2月28日までに合計2806万6501円を支払った。 (ク) 原告は、平成24年11月1日、プーリカとの間で、本件基本契約に 基づいて開発されたソフトウェアに最適な画像を提供するための撮影条件に関する調査業務として、50店舗にお を支払った。 (ク) 原告は、平成24年11月1日、プーリカとの間で、本件基本契約に 基づいて開発されたソフトウェアに最適な画像を提供するための撮影条件に関する調査業務として、50店舗における店頭調査及び500店舗における拡大店頭調査を委託する旨の店頭実査業務委託契約を締結し、これに基づき、同年12月26日から平成25年8月27日までに合計9614万7650円を支払った。 (ケ) 原告は、平成24年11月1日、プーリカとの間で、本件事業のためのカメラの開発、試作及び量産等の業務をプーリカに委託する旨の契約を締結し、これに基づき、同年12月26日から平成25年6月28日までに合計1億3729万9856円を支払った。 (コ) 原告は、平成24年11月1日、プーリカとの間で、データ処理及び データ運用管理業務委託契約を締結し、これに基づき、平成25年5月30日から同年8月30日までに合計4204万7000円を支払った。 (サ) 原告は、平成24年12月1日、プーリカとの間で、本件基本契約に基づく個別契約2(2)を締結し、これに基づき、平成25年1月30日から同年10月31日までに合計2929万5580円を支払った。 イ上記アのとおりの、原告が本件事業の開始から本件追加承認までに締結 し契約に基づく支出である4億8096万3681円は、被告が実施すべきではなかった本件事業の実施により生じた費用であるから、被告の任務懈怠により原告に生じた損害ということができる。 (3)ア次に、前記認定事実によれば、原告が本件追加承認後、本件事業のためにした新業務委託契約による支出は次のとおりであったものと認められる (合計4億7958万1218円)。 (ア) 原告は、プーリカとの間で、平成25年7月 告が本件追加承認後、本件事業のためにした新業務委託契約による支出は次のとおりであったものと認められる (合計4億7958万1218円)。 (ア) 原告は、プーリカとの間で、平成25年7月31日付けの新業務委託契約を締結し(契約の効力発生日を同日に遡らせたものと解される。)、これに基づき、同年9月27日から平成26年6月27日までの間に合計3億6959万9400円を支払った。 (イ) 原告は、プーリカが、新業務委託契約の有効期間とされていた平成26年5月31日より後に本件事業に係る業務を継続して行ったことに係る事務管理及び商法512条に基づく報酬請求権として、1億0998万1818円を支払っており、これは新業務委託契約により生じたものであった。 イしかし、ロッテHDの取締役等のロッテグループの経営陣は、本件事業について、無断撮影を伴う店頭調査が小売業者とのトラブルになる可能性を主に懸念していたものと考えられるところ、本件追加承認及び新業務委託契約の締結については、次の諸点を指摘することができる。 ① Gは、平成25年夏の本件追加投資のロッテHDの経営陣から、本件 事業に関与するよう指示を受け、原告とプーリカとの契約締結に関わることになり、本件事業に関する原告とプーリカとの間の各契約書(甲30の1~甲30の12)を確認し、プーリカとのCとも打合せを行った上、本件事業に関する原告とプーリカとの関係の実態に即した契約内容のものとして、同年7月31日付け業務委託契約書のドラフトを作成し たものであった。そこで、Gは、本件事業において、プーリカが調査会 社に店頭調査を委託しており、また、原告が、プーリカに対し、プーリカが調査会社に店頭調査を委託することを前提とする契約を締結 ものであった。そこで、Gは、本件事業において、プーリカが調査会 社に店頭調査を委託しており、また、原告が、プーリカに対し、プーリカが調査会社に店頭調査を委託することを前提とする契約を締結していること、すなわち、被告が、Bに対する説明、概算稟議における説明、本件取締役会における説明において、店頭調査を行うのは顧客側であり、原告が店頭調査に関わることはなくデータ処理のみを行うとしてい たことが虚偽説明であったことを明確に認識したものということができ、Gがロッテグループの経営陣の指示を受けていたことに照らせば、そのことはロッテグループの経営陣にも伝えられていたものと認めるのが相当である。 ② Dは、本件追加投資承認の稟議の過程で、本件事業について、プーリ カがデータの販売主体になることを説明しており、この点に関するDがした本件取締役会での説明(店頭調査に関わり消費財メーカーに完全データを販売するのはデータ購入企業であるというもの)が虚偽であったことについて、ロッテグループの経営陣は認識できたということができる。 ③ Dは、本件追加投資承認の稟議の過程において、本件事業における画像取得の方法に関し、画像データはプーリカが店舗調査会社や協力店舗から取得するが、店舗調査会社はプーリカが直接契約し、ロッテはデータ処理限定で店舗調査会社との関連はなく、コンプライアンス上の問題は発生しない、また、処理データも保持しない旨を説明した旨説明して いた。このような説明は、協力店舗からの画像取得があるとしていたこと等の点において、なお虚偽が含まれていたものの、店頭調査を行うのが顧客側ではなく事業主体側であるプーリカであるという重要な点において真実を明らかにしており、この時点では、店舗調査会社による調査において 点において、なお虚偽が含まれていたものの、店頭調査を行うのが顧客側ではなく事業主体側であるプーリカであるという重要な点において真実を明らかにしており、この時点では、店舗調査会社による調査において小売店舗の了承を受けているとも述べてはいなかったのであ る。そこで、遅くとも当該説明により、ロッテグループの経営陣も、本 件事業では原告が無断撮影を伴う店頭調査に関与していること、Dによる本件取締役会での説明(本件事業では店頭調査を行うのは顧客側であり、原告が店頭調査に関わることはなくデータ処理のみを行うというもの)が虚偽であったことを認識できたということができる。また、店頭調査において小売店の承諾を得ているとの説明もなく、無断で店頭調査 を行う場合が含まれることは明らかであったといえる。 ウ上記イで指摘した①~③の諸点によれば、Mらロッテグループの経営陣は、被告の従前の説明(店頭調査を行うのは顧客側であり、原告が店頭調査に関わることはなくデータ処理のみを行うとしていたこと)が虚偽であり、実際には、顧客側ではなく原告ら事業主体側が無断撮影を伴う店頭調 査を行うことを認識したにも関わらず、平成25年8月21日付けで本件追加投資承認を行い、また、その後、同年7月31日付け業務委託契約書に係る新業務委託契約を締結したもの(前述のとおり、効力発生日を同日に遡らせたものである。)ということができる。 そして、被告が本件事業を実施したことが任務懈怠となる理由は、本件 事業の実施の可否について、ロッテグループの経営陣による本件事業リスクの検討を経た承認を踏まえた上で判断されるべきであったのに、虚偽説明によりこれがされることがないままに本件事業の実施を判断したという点にあるところ、ロッテグループの経営陣は 営陣による本件事業リスクの検討を経た承認を踏まえた上で判断されるべきであったのに、虚偽説明によりこれがされることがないままに本件事業の実施を判断したという点にあるところ、ロッテグループの経営陣は、顧客側ではなく原告ら事業主体側が無断撮影を伴う店頭調査を行うことに係る本件事業リスクの検討 を経た本件追加投資承認をしており、ロッテHDが関与した上で作成されたドラフトに基づき、被告が原告を代表して新業務委託契約を締結しているのであるから、新業務委託契約による支払については、被告の任務懈怠との相当因果関係を欠くに至ったものというべきである。 したがって、原告が本件追加投資承認後、本件事業のためにした新業務 委託契約による支出(合計4億7958万1218円)が、被告の任務懈 怠により生じた損害ということはできない。 エこれに対し、原告は、被告が、平成26年9月頃、本件事業に対し更に追加投資をするようロッテグループの経営陣に求めた際、「法的に問題がないように、承諾を得た店舗のみで写真撮影を実施している」と説明していたこと等から、ロッテグループの経営陣においては、本件事業の適法性 に疑問を持ちながらも、その事業内容の全部を正確には把握できていなかった旨を主張する。 しかし、平成25年夏の本件追加投資承認の稟議の際、承諾を得た店舗のみで写真撮影を実施している旨の説明はなされておらず、承諾を得た店舗における写真撮影であるのかどうかが議論された事実は窺われない。 また、ロッテグループ内では、少なくとも大手量販店やコンビニエンスストアが店舗内の写真撮影を承諾することは不可能と考えられており(甲7、甲84、証人G・調書3頁)、ロッテHDの社長であったMも、小売店舗内の撮影について では、少なくとも大手量販店やコンビニエンスストアが店舗内の写真撮影を承諾することは不可能と考えられており(甲7、甲84、証人G・調書3頁)、ロッテHDの社長であったMも、小売店舗内の撮影についての小売業の賛同が得られるわけはないと思っていたというのであり、M、U取締役、Gらが、平成26年9月22日に行った 本件事業に関する今後の対応についての打合せでも、本件事業に無断撮影が伴うことを前提とする議論がされていたこと等に照らしても、本件事業実施ないし継続の可否に関しては、当初から事業の終了まで一貫して無断撮影が伴うことを前提とした議論、すなわち、小売店舗内の撮影行為と原告の事業との関係(事業主体側による撮影か否か、事業主体側による撮影 であるとしても切り離しの程度)が論点となっていたものといえるのである。 なお、前記認定事実によれば、ロッテ商事の取締役のRは、平成26年5月頃、ロッテ商事が本件事業に係るデータの購入を求められたことに際し、Dに対して店頭映像の取得に関する小売業者との間の契約書等の客観 的な証拠の提示を求めているが、Rは、小売業者が店舗内の写真撮影を許 さないのは業界の常識であると認識していたのであり(甲84)、そのような客観的な証拠がないことを分かりつつ、購入を拒絶するために要求したものと認めるのが相当である。 そうすると、ロッテグループの経営陣において、本件事業の内容の全部を正確には把握できていなかったとしても、その核心部分、すなわち顧客 側ではなく原告ら事業主体側が無断撮影を伴う店頭調査を行うこと(原告が委託契約をしたプーリカにおいて調査会社に調査を委託しており、調査会社の調査において無断撮影が行われていること等)を認識した上で、本件追加承認をしたものというこ 撮影を伴う店頭調査を行うこと(原告が委託契約をしたプーリカにおいて調査会社に調査を委託しており、調査会社の調査において無断撮影が行われていること等)を認識した上で、本件追加承認をしたものということができる(なお、平成26年9月頃に被告は、「法的に問題がないように、承諾を得た店舗のみで写真撮影を実施 している」と述べているが、ロッテグループの経営陣はこれを信じていなかったものと認めるのが相当である(証人G・調書32頁)。)。 以上によれば、原告の上記主張は採用することができない。 (4) 以上によれば、被告の任務懈怠により生じた原告の損害は、原告が主張する支出9億6054万4899円のうち、4億8096万3681円の限度 で認められ、その余の支出については損害とは認められない。 4 遅延損害金について原告は、本件において、会社法423条に基づく損害賠償に係る遅延損害金について、被告に対する履行の請求をした事実を何ら主張することなく、損害に係る金員の支出日の翌日を起算点として遅延損害金の支払を請求する。 しかし、会社法423条1項に基づく取締役の会社に対する損害賠償債務は、期限の定めのない債務であって、履行の請求を受けた時に遅滞に陥ると解されるから(最高裁平成26年1月30日第一小法廷判決・集民246号69頁参照)、原告の遅延損害金請求のうち、訴状送達の日の翌日(平成20年8月24日)以降に係る請求は理由があるが、訴状送達日以前に係る請求は理由 がない。 5 結論以上によれば、原告の請求は、被告に対し、4億8096万3681円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年8月24日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を 被告に対し、4億8096万3681円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年8月24日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余の請求は理由がない。 よって、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第8部 裁判官丹下将克

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