主文 1 大阪市東淀川区福祉事務所長が原告に対し平成13年8月15日付け保護決定通知書を同月24日に送付して通知した,原告に対する同年9月分の保護費の支給額を変更する旨の決定を取り消す。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その7を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 大阪市東淀川区福祉事務所長が原告に対し平成13年8月1日付け保護申請却下通知書をもって通知した,原告が同年7月16日付け移送費支給申請書により同月18日に申請した保護申請を却下する旨の決定を取り消す。 2 大阪市東淀川区福祉事務所長が原告に対し同年8月16日付け保護申請却下通知書をもって通知した,原告が同月10日付け移送費支給申請書により同日申請した保護申請を却下する旨の決定を取り消す。 3 主文1項同旨第2 事案の概要本件は,生活保護を受けている原告が,大阪市東淀川区福祉事務所長に対し,タイ国のバンコクにおいて求職活動等をしたとして,交通費及び宿泊料の支給を申請し,また,和歌山県田辺市において参議院議員選挙の投票をしたとして,交通費の支給を申請したのに対し,同所長が,上記各申請をそれぞれ却下する旨の決定をし,さらに,原告に支給する保護費から原告がバンコクに滞在したとしていた期間分の保護費相当額を減額する旨の保護変更決定をしたため,原告が,上記各決定はいずれも違法であると主張して,それらの取消しを求めている事案である。 1 前提事実(争いのない事実及び証拠〔書証番号は特記しない限り枝番を含む。 以下同じ。〕等により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア原告は,平成13年5月14日,大阪市東淀川区福祉事務所長(以下「福祉事務所長」という。)から,保護開始日を同年4月16日とす 含む。 以下同じ。〕等により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア原告は,平成13年5月14日,大阪市東淀川区福祉事務所長(以下「福祉事務所長」という。)から,保護開始日を同年4月16日とする生活保護開始決定を受けた者である。同年6月ないし7月ころの原告の住民票上の住所は和歌山県田辺市内にあったが,その当時,原告は,実際には大阪市α3番73-103号(以下「本件居住地」という。)に居住していた。また,その当時,原告は就労していなかった(甲1,3,弁論の全趣旨)。 イ福祉事務所長は,平成15年3月31日まで,生活保護法(以下「法」という。)19条4項,職制改正に伴う関係規則の整備に関する規則(平成15年大阪市規則第73号)による改正前の大阪市生活保護法施行細則(昭和31年大阪市規則第63号)2条1項に基づき,大阪市長から委任を受けて,同福祉事務所の所管区域である大阪市β(大阪市保健福祉センター条例〔平成15年大阪市条例第7号〕による廃止前の大阪市福祉事務所条例〔昭和26年大阪市条例第52号〕1条1項,別表)において,法24条から28条まで,30条から37条まで,48条4項,62条,63条,76条,77条2項,80条及び81条の規定による保護の決定及び実施に関する事務等を行う権限を有していた者である。 ウ被告は,職制改正に伴う関係規則の整備に関する規則による改正後の大阪市生活保護法施行細則2条1項が平成15年4月1日に施行されたこと(同附則)により,大阪市長の委任を受けて,東淀川区保健福祉センターの所管区域である大阪市β(大阪市保健福祉センター条例1条2項,別表第1)において,法の前記各規定による保護の決定及び実施に関する事務等を行う権限を福祉事務所長から承継した者である。 (2) 本件却下決定①原告は,平成13年7月18日, ンター条例1条2項,別表第1)において,法の前記各規定による保護の決定及び実施に関する事務等を行う権限を福祉事務所長から承継した者である。 (2) 本件却下決定①原告は,平成13年7月18日,福祉事務所長に対し,同月16日付け移送費支給申請書を提出し,同年6月14日から同月25日までの11日間,バンコクにおいて求職活動及び生活環境の調査(以下「本件求職活動」という。)をしたことを理由に(なお,原告がタイ国を出国した日が同月25日であるか否か及び原告が同国滞在中に本件求職活動をしたか否かについては、当事者間に争いがある。),本件居住地とバンコクとの往復に要した交通費及びバンコクにおける宿泊料として,合計7万0920円の支給の申請(以下「本件申請①」という。)をした(甲1)。 これに対し,福祉事務所長は,同年8月1日,本件申請①を却下する旨の決定(以下「本件却下決定①」という。)をし,同月10日,原告に対し,その旨記載した同月1日付け保護申請却下通知書を交付して,これを通知した(甲2)。 (3) 本件却下決定②原告は,平成13年8月10日,福祉事務所長に対し,同日付け移送費支給申請書を提出し,同年7月29日に,和歌山県田辺市において参議院議員選挙の投票(以下「本件投票」という。)をしたことを理由に(なお,原告が,同日,同市において本件投票をしたか否かについては,当事者間に争いがある。),本件居住地と同市との往復に要した交通費として,合計6780円の支給の申請(以下「本件申請②」という。)をした(甲3)。 これに対し,福祉事務所長は,同年8月16日,本件申請②を却下する旨の決定(以下「本件却下決定②」という。)をし,同月18日,原告に対し,その旨記載した同月16日付け保護申請却下通知書を交付して,これを通知した(甲4,乙4)。 ( 月16日,本件申請②を却下する旨の決定(以下「本件却下決定②」という。)をし,同月18日,原告に対し,その旨記載した同月16日付け保護申請却下通知書を交付して,これを通知した(甲4,乙4)。 (4) 本件変更決定福祉事務所長は,同年7月31日,原告に支給した同年6月分の保護費のうち原告が海外滞在中であったとしている同月14日から同月25日までの11日間相当分の生活扶助費3万3728円を減額して返還させることとし,法25条2項の規定に基づき,原告に対する同年9月分の保護費のうち生活扶助費から上記減額分の3万3728円を差し引いて支給する旨の保護変更決定(以下「本件変更決定」という。)をし,同年8月24日,原告に対し,その旨記載した同月15日付け保護決定通知書を発送したところ,原告は,同年9月3日,これを受領した(乙1ないし3)。 (5) 審査請求等ア原告は,大阪府知事に対し,同年9月6日付けで,本件却下決定①及び本件変更決定について審査請求をするとともに,同日付けで,本件却下決定②についても審査請求をした(乙1,4)。 イ大阪府知事は,同年11月13日付けで,本件却下決定①及び本件変更決定についての審査請求を棄却する旨の裁決をした(乙3)。 ウ原告は,厚生労働大臣に対し,同年12月13日付けで,本件却下決定①及び本件変更決定についての再審査請求をした。 エ大阪府知事は,平成14年2月14日付けで,本件却下決定②についての審査請求を棄却する旨の裁決をした(乙6)。 オ原告は,上記ウの再審査請求に対する裁決はいまだなく,上記エの裁決があったことを知った日から起算して3か月以内である同年5月15日,本件訴えを提起した(弁論の全趣旨)。 2 争点及び当事者の主張(1) 本件却下決定①の適法性(原告の主張)ア原告は,生活保護開始 たことを知った日から起算して3か月以内である同年5月15日,本件訴えを提起した(弁論の全趣旨)。 2 争点及び当事者の主張(1) 本件却下決定①の適法性(原告の主張)ア原告は,生活保護開始決定を受ける1年以上前から国内において求職活動を積極的に行っていたが,就職できないでいたため,海外にも目を向け,過去に夏休みを利用して子供と共に行ったことがあり,子供にとっても印象が良かったタイ国において求職活動を行うこととし,平成13年6月14日から同月25日までの11日間,バンコクにおいて本件求職活動を行った。なお,タイ国への出国便は,本件申請①に係る申請書の記載と異なり,実際にはタイ国際航空機であったが,同機は,出国当日のストライキのため大韓航空機から代替機として振り替えられたものであるところ,原告が領収書として福祉事務所長に提出しようとしていたチケット上は大韓航空機となっており,一見すると矛盾が生じるので,便宜上そのように記載したまでである。 したがって,原告に対しては,本件申請①のとおり,移送費として本件求職活動に要した交通費及び宿泊費が支給されるべきであり,これを却下した本件却下決定①は違法である。また,仮に上記交通費及び宿泊費が移送費に該当しないとしても,原告は,移送費に該当することのみを根拠として本件申請①をしたのではなく,福祉事務所長に対し,広く柔軟な姿勢で適宜に該当する根拠法条を模索するよう求めていたのであるから,福祉事務所長がこれを怠り,移送費に該当しないことのみを理由に本件却下決定①をしたのはやはり違法である。 イまた,福祉事務所長は,原告が本件求職活動について福祉事務所長の指示及び要請に基づきいつでも資料を提出する用意があることを示していたにもかかわらず,その受取りを拒否し,本件求職活動を行った事実を十分に調査確認 事務所長は,原告が本件求職活動について福祉事務所長の指示及び要請に基づきいつでも資料を提出する用意があることを示していたにもかかわらず,その受取りを拒否し,本件求職活動を行った事実を十分に調査確認しないまま,実態を把握せずに本件却下決定①を行った。本件却下決定①はこの点においても違法である。 ウさらに,本件却下決定①は不利益処分であり,行政手続法13条に基づく弁明の機会の付与が必要であるところ,福祉事務所長は,本件却下決定①に先立ち,原告に対し弁明の機会を付与しておらず,本件却下決定①は同条に反し違法である。 (被告の主張)ア原告が本件求職活動を行ったとの事実は知らない。原告は,その事実を裏付ける資料を提出していない上,原告の帰国日は,原告が平成13年7月16日付け移送費支給申請書に記載した同年6月25日ではなく,これよりも18日後の同年7月13日であり,タイ国への出国便の利用航空機についても,同申請書の「大韓航空」との記載内容とは異なり,実際はタイ国際航空機を利用しており,原告はこれらの点について全く虚偽の申請を行っているから,そもそも本件求職活動を行ったとの事実自体が極めて疑わしい。 また,仮に,原告が本件求職活動を行ったことが事実であるとしても,次のとおり,原告の主張は失当である。すなわち,生活扶助として支給される移送費(法11条1項1号,12条2号)は,当該要保護者の状態に即し,最低限度の生活の保障又は自立の助長のためにその支給が必要と認められる場合に限り支給がされるものである(法1条,5条)ところ,「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日厚生省社会局長通知。以下「本件局長通知」という。)第6-2(8)ア(キ)は,移送費を支給すべき場合として,「被保護者が実施機関の指示又は指導を受けて求職又は施設利 領について」(昭和38年4月1日厚生省社会局長通知。以下「本件局長通知」という。)第6-2(8)ア(キ)は,移送費を支給すべき場合として,「被保護者が実施機関の指示又は指導を受けて求職又は施設利用のため熱心かつ誠実に努力した場合」を掲げている。本件において,原告が指導を受けて平成13年6月14日までに国内で行った求職活動は,同年5月21日に行った職業安定所での活動1回のみであり,原告は,その後何らの求職活動も行わず,福祉事務所長が原告に対し海外で求職活動を行うよう指示又は指導した事実もないのに,同年6月14日に突然出国し,バンコクにおいて求職活動をしたとして本件申請①を行った。このような状況下においては,原告が国内において熱心に求職活動を行ったとは到底認めることはできず,また,原告がもはや国内においては職に就くことが不可能であるためタイ国に職を求めざるを得なかったという状況も認められず,さらに,原告がタイ国において就職することができる蓋然性が高かったと認めることもできないから,本件求職活動に要した交通費及び宿泊費を最低限度の生活の維持又は自立の助長のために必要な費用と認めることはできない。したがって,本件求職活動に要した交通費及び宿泊費の支給は認められない。 イ原告は,福祉事務所長が,本件求職活動についての資料の受取りを拒否し,本件求職活動を行った事実を十分に調査確認しないまま,実態を把握せずに本件却下決定①を行ったのは違法である旨主張する。しかし,福祉事務所長は,前記のとおり,仮に原告が本件求職活動を行ったことが事実であったとしても,本件申請①に係る交通費及び宿泊費の支給は認められないことから,本件求職活動についての資料の提出を求めなかったにすぎず,原告の上記主張は失当である。 ウまた,原告は,福祉事務所長が本件却下決定①を行う 申請①に係る交通費及び宿泊費の支給は認められないことから,本件求職活動についての資料の提出を求めなかったにすぎず,原告の上記主張は失当である。 ウまた,原告は,福祉事務所長が本件却下決定①を行うに当たって,原告に対し行政手続法13条の規定に基づく弁明の機会を付与しなかったことが違法である旨主張するが,前記のとおり,移送費は法12条の規定による生活扶助費の1つであり,本件申請①は,「移送」という一時的な要因により生活費が余分に必要になった場合に,法24条1項の規定により既に決定を受けた「保護の程度及び方法」(生活扶助費の額)の変更を求める申請であるから,「保護の変更の申請」に該当し(同条5項),本件却下決定①は,同項の規定により準用される同条1項の規定に基づく処分である。したがって,行政手続法13条の規定は適用されず(法29条の2),この点における原告の主張も失当である。 (2) 本件却下決定②の適法性(原告の主張)ア原告は,平成13年7月29日,住民票上の住所があった和歌山県田辺市において,本件投票をした。したがって,原告に対しては,本件申請②のとおり,移送費として本件投票に要した交通費が支給されるべきであり,これを却下した本件却下決定②は違法である。 イまた,福祉事務所長は,原告が本件投票について福祉事務所長の指示及び要請に基づきいつでも資料を提出する用意があることを示していたにもかかわらず,その受取りを拒否し,本件投票を行った事実を十分に調査確認しないまま,実態を把握せずに本件却下決定②を行った。本件却下決定②はこの点においても違法である。 ウさらに,本件却下決定②は不利益処分であり,行政手続法13条に基づく弁明の機会の付与が必要であるところ,福祉事務所長は,本件却下決定②に先立ち,原告に対し弁明の機会を付与しておらず, である。 ウさらに,本件却下決定②は不利益処分であり,行政手続法13条に基づく弁明の機会の付与が必要であるところ,福祉事務所長は,本件却下決定②に先立ち,原告に対し弁明の機会を付与しておらず,本件却下決定②は同条に反し違法である。 (被告の主張)ア原告が本件投票を行ったとの事実は知らない。原告はその事実を裏付ける資料を提出していない。 また,仮に原告が本件投票を行ったことが事実であるとしても,原告の主張は失当である。すなわち,まず,本件局長通知第6-2(8)ア(ア)ないし(セ)には,選挙の投票のための移送費は掲げられていない。そして,確かに,選挙権は国民の重要な基本権であり保障されなければならないが,前記のとおり,生活扶助として支給される移送費は,当該要保護者の状態に即し,最低限度の生活の保障又は自立の助長のためにその支給が必要と認められる場合に限り支給がされるものであるところ,原告の場合,大阪市内で不在者投票を行うこともできたのである(平成15年法律第69号による改正前の公職選挙法〔以下「公選法」という。〕49条1項5号,平成15年政令第317号による改正前の公職選挙法施行令〔以下「公選法施行令」という。〕57条1項)から,参議院議員選挙の投票をするために本件居住地を離れ,和歌山県田辺市まで自ら移動する必要はなかったのであり,本件投票に要した交通費を最低限度の生活を維持するため又は自立を助長するために必要な費用であったと認めることはできない。したがって,本件投票に要した交通費の支給は認められない。 イ原告は,福祉事務所長が,本件投票についての資料の受取りを拒否し,本件投票を行った事実を十分に調査確認しないまま,実態を把握せずに本件却下決定②を行ったのは違法である旨主張する。しかし,福祉事務所長は,前記のとおり,仮に原告が本 についての資料の受取りを拒否し,本件投票を行った事実を十分に調査確認しないまま,実態を把握せずに本件却下決定②を行ったのは違法である旨主張する。しかし,福祉事務所長は,前記のとおり,仮に原告が本件投票を行ったことが事実であったとしても,本件投票に要した交通費の支給は認められないことから,本件投票についての資料の提出を求めなかったにすぎず,原告の上記主張は失当である。 ウまた,原告は,福祉事務所長が本件却下決定②を行うに当たって,原告に対し行政手続法13条の規定に基づく弁明の機会を付与しなかったことが違法である旨主張するが,前記のとおり,移送費は法12条の規定による生活扶助費の1つであり,本件申請②は,「移送」という一時的な要因により生活費が余分に必要になった場合に,法24条1項の規定により既に決定を受けた「保護の程度及び方法」(生活扶助費の額)の変更を求める申請であるから,「保護の変更の申請」に該当し(同条5項),本件却下決定②は,同項の規定により準用される同条1項の規定に基づく処分である。したがって,行政手続法13条の規定は適用されず(法29条の2),この点における原告の主張も失当である。 (3) 本件変更決定の適法性(被告の主張)ア次のとおり,法は,国内に現在する生活困窮者の国内での生活の保障を対象としているから,国外に滞在している者は法による保護の対象とならない。よって,福祉事務所長は,原告がタイ国に滞在したとする期間(平成13年6月14日から同月24日までの間)の保護費を支給し得ず,法25条2項の規定に基づき,本件変更決定を行ったものであり,本件変更決定は適法である。 (ア) 法8条は,最低生活の需要の客観性を担保するために保護基準を設定するものであるところ,その保護基準の考慮事由として,要保護者の所在地域別の事情を考慮 たものであり,本件変更決定は適法である。 (ア) 法8条は,最低生活の需要の客観性を担保するために保護基準を設定するものであるところ,その保護基準の考慮事由として,要保護者の所在地域別の事情を考慮して決する旨規定しているが,これは,所在地域によって物価や光熱費が異なることを考慮するものであり,当然日本国内における所在を前提としているものである。また,同条の規定に基づき厚生労働大臣が定めた基準である告示は,国外の地域においての最低生活費について何ら規定していない。 (イ) 法19条1項も,保護の実施機関として「都道府県知事,市長又は福祉事務所を管理する町村長」と規定しており,国外において保護を行う実施機関を定めていない。 (ウ) 保護の実施機関は,保護の開始の申請があったときは原則として14日以内に保護の要否,種類,程度及び方法を決定しなければならず(法24条),被保護者が保護を必要としなくなったときは,すみやかに保護の停止又は廃止を決定し,書面をもってこれを被保護者に通知しなければならないとされており(法26条),法は,実施機関が,被保護者について,短期間に要保護性の有無を判断し,絶えず支給の要否を確認しつつ,必要な給付のみを行うという考え方をとっており,被保護者が海外に滞在することなどおよそ想定していない。 (エ) 法は,被保護者の資産状況に応じた適正な保護の実施がされるよう,28条において,保護の実施機関が,保護の決定又は実施のため必要があるときは,要保護者の資産状況を調査できることを定め,その調査権を実効あらしめるため,要保護者が立入調査を拒むなどした場合には,保護の開始若しくは変更の申請を却下し,又は保護の変更,停止若しくは廃止をすることができる旨規定しており,そもそも資産調査が不可能な法執行区域外(国外)での生活を保障の対象とし 拒むなどした場合には,保護の開始若しくは変更の申請を却下し,又は保護の変更,停止若しくは廃止をすることができる旨規定しており,そもそも資産調査が不可能な法執行区域外(国外)での生活を保障の対象としていないことは明らかである。 (オ) 法は,60条において,要保護者に生活上の義務を課し,27条1項において,実施機関が,要保護者に対し,生活の維持,向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示ができる旨を規定しているところ,これらの規定の趣旨は,保護の実施機関が,要保護者の日常生活の中に接近して有益な助言,勧告を与え、生活状態を規制するための指導,指示を具体的に適切に行うことにより初めて「自立の助長」という法の根幹をなす目的(1条)が実現可能になるという点にあるが,上記の指示及び指導が不可能である国外の生活について保護金品を給付することは,「自立の助長」を放棄することに等しいから,法は,国外での生活についてはそもそも保護の対象としていないとみるほかない。 (カ) 以上のような法の規定ぶりは,例えば,平成14年政令第282号による改正前の国家公務員共済組合法施行令38条が,外国における移送費を支払う場合の特則として対外支払手段の規定を用意していることとの比較においても,法が,すべて国内での生活を前提として整備されていることを示すものである。 (キ) さらに,仮に,本件のような場合に,海外における滞在期間についても生活保護費を受給できるものとすれば,いったん生活保護受給者となった者は,日本国に比して物価水準の著しく低い国において長期間生活するというような極端な場合においても,その期間中,当該外国においては裕福な生活を送ることが可能な金額の生活保護費を受け続けることができるという極めて不合理かつ不自然な状況が許容されることになるが,「最低限度の生活 端な場合においても,その期間中,当該外国においては裕福な生活を送ることが可能な金額の生活保護費を受け続けることができるという極めて不合理かつ不自然な状況が許容されることになるが,「最低限度の生活を保障する」ことを目的とする法が,かかる状況を想定,許容しているとは到底考えられない。 (ク) なお,昭和55年法律第108号による改正前の健康保険法62条は,給付制限事由として,被保険者等が「本法施行区域外ニ在ルトキ」を定めていた(同条1項1号)が,上記改正により,平成14年法律第102号による改正前の同法44条ノ2に基づき,海外滞在期間中の保険事故に対して保険給付が行われ,療養についても,療養費が支給されることとなった。しかし,健康保険制度は,その費用が,各被保険者により拠出される保険料によって賄われる典型的な拠出性の社会保険制度であるから,創設規定がなくとも,明文の制限規定がない限り,同条を解釈適用することにより,海外滞在期間中の事故,療養につき保険給付を行うことに何らの支障も認められなかったのは当然の帰結である。これに対し,典型的な非拠出性の公的扶助制度である生活保護制度においては,前記のとおり,国外の生活は本来的に保護の対象とならないと解さざるを得ないから,国外の生活に対する保護に関する規定が存在しないのは,あえて明文の規定を設ける必要もないことによるものと思料される。よって,健康保険制度と異なり,国外での生活につき保護を認める規定がない以上,法の解釈上,その保護を実施することは不可能である。 イ原告の主張イ,ウは争う。 (原告の主張)ア被告の主張のうち,生活基盤を国外に置く者は生活保護の対象外であるという点は争わない。しかし,原告は国外における自立という目的に到達するため,その途中の段階で,生活基盤を従前どおり国内に残したまま, 被告の主張のうち,生活基盤を国外に置く者は生活保護の対象外であるという点は争わない。しかし,原告は国外における自立という目的に到達するため,その途中の段階で,生活基盤を従前どおり国内に残したまま,国外において本件求職活動を行ったにすぎないのであるから,国外へ生活基盤が移っていたのでないことは明らかであり,例えば,原告が,本件求職活動のためにバンコクに滞在していた期間中も,家賃や光熱費等の固定費はかかっていた。したがって,原告が上記期間中国内にいなかったという理由のみをもって行われた本件変更決定は違法である。 イまた,本件変更決定は不利益処分であり,行政手続法13条に基づく弁明の機会の付与が必要であるところ,福祉事務所長は,本件変更決定に先立ち,原告に対し弁明の機会を付与しておらず,本件変更決定は同条に反し違法である。 ウさらに,本件変更決定は,原告の最低限度の生活を脅かし,生存権(憲法13条,25条)を侵害するものであるから,違法である。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件却下決定①の適法性)について(1) 原告は,本件申請①に対しては本件求職活動に要した交通費及び宿泊費が支給されるべきであり,本件却下決定①は違法である旨主張するので,まずこの点について判断する。 ア証拠(甲1)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件申請①において,本件求職活動に要した交通費及び宿泊費の支出によって臨時的に最低生活費が不足したことを理由に,上記交通費及び宿泊費の支給を求めていたものと認められるから,本件申請①は,本件居住地とバンコクとの往復及びバンコクにおける宿泊が,生活扶助の対象となる「移送」(法11条1項1号,12条2号)に該当することを根拠に,法7条,24条5項,同条1項に基づき,同項の規定によって既に決定を受けていた生活扶助費の増額変 における宿泊が,生活扶助の対象となる「移送」(法11条1項1号,12条2号)に該当することを根拠に,法7条,24条5項,同条1項に基づき,同項の規定によって既に決定を受けていた生活扶助費の増額変更を求めるものと解される。したがって,本件においては,原告が本件求職活動に要したとする本件居住地とバンコクとの往復及びバンコクにおける宿泊が移送に該当し,生活扶助の対象となるか否かが問題となる。 この点,原告は,移送費に該当することのみを根拠として本件申請①をしたのではなく,福祉事務所長に対し,広く柔軟な姿勢で適宜に該当する根拠法条を模索するよう求めていたなどと主張する。しかし,そもそも保護費の支給の根拠法条はこれを申請している原告において自ら特定すべきである上,生活扶助の対象としての移送を規定する法11条1項1号,12条2号以外に原告が本件求職活動に要したとする交通費及び宿泊費の支給を求め得る規定は見当たらない(なお,法11条1項7号,17条3号に規定する生業扶助の対象としての「就労のために必要なもの」とは,就職の確定した要保護者が就職のため直接必要とする洋服類,履き物等の物品をいうものと解されるから,本件求職活動に要したとする本件居住地とバンコクとの往復及びバンコクにおける宿泊がこれに当たらないことは明らかである。)。原告の上記主張は失当である。 また,原告は,本件却下決定①の適法要件は被告に主張立証責任がある旨主張するが,原告は,本件申請①において本件求職活動に要したとする交通費及び宿泊費の支給を求めている以上,その支給要件に該当する事実は原告において主張立証すべきであるから,上記主張を採用することはできない。 イ保護の種類の1つである生活扶助は,困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対し,「衣食その他日常生活の需要を満 において主張立証すべきであるから,上記主張を採用することはできない。 イ保護の種類の1つである生活扶助は,困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対し,「衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの」及び「移送」の範囲内において行われる(法11条1項1号,12条)。この点,法は,憲法25条に規定する理念に基づき,国が生活に困窮するすべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長することを目的とし(法1条),法1条ないし4条に規定するところは,法の基本原理であって,法の解釈及び運用は,すべてこの原理に基づいてされなければならないとしている(法5条)から,生活扶助の対象としての移送とは,要保護者の最低限度の生活の保障及び自立の助長に必要な移動及びこれに伴って必要となる宿泊等をいうものと解される。そして,現に就労していない要保護者が真摯にかつ適切な方法で求職活動を行うことは,当該要保護者の最低限度の生活の保障及び自立の助長に必要なものということができるから,そのような求職活動に要する移動及びこれに伴って必要となる宿泊等については,移送に当たるものとして,生活扶助が行われるべきこととなる。なお,移送費を支給する場合について,「被保護者が実施機関の指示又は指導をうけて求職又は施設利用のため熱心かつ誠実に努力した場合」を例示する本件局長通知第6-2(8)ア(キ)も,この趣旨をいうものと解される。 ウそこで,本件申請①及び本件却下決定①の当時現に就労していなかった原告が,真摯にかつ適切な方法で求職活動を行ったと認められるか否かを以下検討する。 (ア) 原告は,平成13年6月14日から同月25日までの11日間,タイ国のバンコクにおいて本件求職活動を行った旨主張するとこ 摯にかつ適切な方法で求職活動を行ったと認められるか否かを以下検討する。 (ア) 原告は,平成13年6月14日から同月25日までの11日間,タイ国のバンコクにおいて本件求職活動を行った旨主張するところ,証拠(乙7,8)によれば,原告が福祉事務所長に提出した同年7月16日付け求職活動状況申告書及び「バンコクにおける就職活動の概要」と題する書面には,原告が上記期間中タイ国のバンコクに滞在し,人材紹介会社4社を訪問して企業の紹介を依頼をしたこと,うち1社から企業2社の紹介を受けたこと,現地の生活環境の調査等をしたこと,上記期間中にはその他の企業の紹介はなく,紹介された企業2社からの連絡もなかったことなどの記載があることが認められる。しかしながら,原告は上記の他に本件求職活動を行ったことを具体的に主張立証しないから,上記各書面の記載のみをもって原告が本件求職活動を行った事実を認定することは躊躇せざるを得ない。 (イ) また,仮に原告が本件求職活動を行った事実が認められるとしても,次のとおり,本件求職活動が真摯にかつ適切な方法で行われたと認めることはできない。 すなわち,前記前提事実,証拠(甲1,乙7,8,12)及び弁論の全趣旨によれば,<ア>原告は,生活保護開始決定を受けてから同年6月14日にバンコクを訪れるまでの間,同年5月21日に淀川公共職業安定所において求職活動を行った旨記載した同月31日付け移送費支給申請書及び2社に対して求職活動を行ったが,うち1社については会社説明を受けたのみである旨記載した求職活動状況申告書(5月分)を提出したこと,<イ>その間,原告が上記の他に具体的な求職活動を行った形跡はないこと,<ウ>前記「バンコクにおける就職活動の概要」と題する書面には,原告が,バンコクに到着した翌日の同年6月15日に人材紹介会社の「IVY その間,原告が上記の他に具体的な求職活動を行った形跡はないこと,<ウ>前記「バンコクにおける就職活動の概要」と題する書面には,原告が,バンコクに到着した翌日の同年6月15日に人材紹介会社の「IVYRecruitmentCo.,Ltd」を探したが見つけることができず,他の人材紹介会社を現地の新聞やフリーペーパー等で探して情報収集をした旨の記載があり,そのような記載からすると,原告は,出国前の時点において,バンコクで就職することができる具体的な見込みはもちろん,バンコクにおける求職活動の具体的手順,訪問先等についての詳細な計画も有しておらず,むしろバンコクに到着してから場当たり的に求職活動等を試みようとしていたにすぎないことがうかがわれること,<エ>原告は,タイ国を出国したのは同月25日であると主張し,上記書面にもこれに沿う記載があるが,原告が日本に帰国したのは同年7月13日であり,その間の原告の所在及び行動は全く不明であることが認められる。このような本件の事実関係に照らせば,原告が本件求職活動を行ったことが仮に事実であるとしても,それが真摯にかつ適切な方法で行われたとは認め難く,原告が本件求職活動に要したとする本件居住地とバンコクとの往復及びバンコクにおける宿泊は,原告の最低限度の生活の保障及び自立の助長に必要なものであったとは認められない。 エしたがって,原告が本件求職活動を行ったとの事実はにわかには認められず,また,仮に同事実が認められるとしても,原告が本件求職活動に要したとする本件居住地とバンコクとの往復及びバンコクにおける宿泊は,移送に該当せず,生活扶助の対象とならないから,本件申請①を却下した本件却下決定①に所論の違法はない。この点に関する原告の主張は理由がない。 (2) 次に,原告は,福祉事務所長が本件求職活動について原 送に該当せず,生活扶助の対象とならないから,本件申請①を却下した本件却下決定①に所論の違法はない。この点に関する原告の主張は理由がない。 (2) 次に,原告は,福祉事務所長が本件求職活動について原告が提出しようとしていた資料の受取りを拒否し,十分な調査確認をしないまま実態を把握せずに本件却下決定①を行ったのは違法である旨主張する。しかしながら,前記のとおり,仮に原告が主張するとおりの本件求職活動をした事実が認められるとしても,原告が本件求職活動に要したとする本件居住地とバンコクとの往復及びバンコクにおける宿泊は,そもそも移送に該当せず,生活扶助の対象とならないのであるから,福祉事務所長に本件求職活動の有無を更に調査確認すべき法的義務があったと解することはできないし,仮に更に調査確認を尽くしたとしても結論に影響を与えなかったのであるから,原告主張のような調査確認をしなかったことが本件却下決定①の適法性を左右するものではない。したがって,福祉事務所長が同義務を怠ったまま行った本件却下決定①は違法である旨の原告の主張は失当である。 (3) さらに,原告は,福祉事務所長が本件却下決定①に先立って原告に対し弁明の機会を付与しなかったのは行政手続法13条に反し違法である旨主張する。しかし,前記のとおり,本件申請①は,行政庁である福祉事務所長に対し,法7条,24条5項,同条1項に基づき,同項の規定によって既に決定を受けていた生活扶助費の増額変更を求める申請であり,これに対しては福祉事務所長が諾否の応答をすべきこととされているのであるから(同条5項,1項),行政手続法2条3号に規定する「申請」に該当するところ,本件却下決定①は,本件申請①により求められた生活扶助費の増額変更を拒否する処分であるから,同条4号に規定する「不利益処分」に該当しないことは明 政手続法2条3号に規定する「申請」に該当するところ,本件却下決定①は,本件申請①により求められた生活扶助費の増額変更を拒否する処分であるから,同条4号に規定する「不利益処分」に該当しないことは明らかである(同号ただし書ロ)。したがって,法29条の2の規定による適用の除外を指摘するまでもなく,本件却下決定①に不利益処分をしようとする場合の事前手続について規定した行政手続法13条が適用される余地はないから,原告の上記主張は失当である。 (4) よって,本件却下決定①は適法である。 2 争点(2)(本件却下決定②の適法性)について(1) 原告は,本件申請②において申請した本件投票に係る交通費が支給されるべきであり,本件却下決定②は違法である旨主張するので,まずこの点について判断する。 ア証拠(甲3)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,本件申請②において,本件投票に要した交通費によって臨時的に最低生活費が不足したことを理由に,上記交通費の支給を求めていたものと認められるから,本件申請②は,本件居住地と和歌山県田辺市との往復が,生活扶助の対象となる移送に該当することを根拠に,法7条,24条5項,同条1項に基づき,同項の規定によって既に決定を受けていた生活扶助費の増額変更を求めるものと解される。したがって,本件においては,原告が本件投票に要したとする本件居住地と同市との往復が移送に該当し,生活扶助の対象となるか否かが問題となる。 なお,原告は,本件却下決定②の適法要件は被告に主張立証責任がある旨主張するが,原告は,本件申請②において本件投票に要したとする交通費の支給を求めている以上,その支給要件に該当する事実は原告において主張立証すべきであるから,上記主張を採用することはできない。 イ前記のとおり,生活扶助の対象となる移送とは,要保護者の最低限 交通費の支給を求めている以上,その支給要件に該当する事実は原告において主張立証すべきであるから,上記主張を採用することはできない。 イ前記のとおり,生活扶助の対象となる移送とは,要保護者の最低限度の生活の保障及び自立の助長に必要な移動及びこれに伴って必要となる宿泊等をいうものと解されるところ,選挙権の行使に要する移動等が直ちに要保護者の最低限度の生活の保障及び自立の助長に必要とはいえないが,選挙権の保障の重要性にかんがみ,選挙権を有する要保護者が,その行使のために最低限度の生活を保障されない事態が生ずるのは望ましくないから,選挙権を行使する上で真に必要と認められる移動等については,移送に当たるものとして,生活扶助の対象となると解する余地がないわけではない。 しかし,本件においては,原告は和歌山県田辺市において本件投票を行ったことについて何ら具体的な主張立証をしておらず,そもそも原告が平成15年7月29日に本件居住地と同市とを往復した事実及び同市において本件投票を行った事実を認めるに足りる証拠はない。 また,仮に上記各事実が認められるとしても,前記前提事実のとおり,原告は,福祉事務所長から,同年5月14日に保護開始日を同年4月16日とする生活保護開始決定を受けていることから,遅くとも参議院議員選挙が行われた同年7月29日から3か月前のころ以降は引き続き大阪市γ内に居住していたものと推認されるところ,原告は,同区内に住居を定めるに際し,大阪市東淀川区長に対して転入届を提出しておれば,同区の選挙人名簿への登録を受け,同区において同年7月29日の参議院議員選挙の投票を行うことができたのであるし(住民基本台帳法22条1項,15条1項,公選法21条1項),公選法49条1項5号の規定によれば,選挙人で,選挙の当日にその属する投票区のある市町村 の参議院議員選挙の投票を行うことができたのであるし(住民基本台帳法22条1項,15条1項,公選法21条1項),公選法49条1項5号の規定によれば,選挙人で,選挙の当日にその属する投票区のある市町村の区域外の住所に居住していることが見込まれるものは,公選法施行令57条1項の定めるところにより,当該選挙人が登録されている選挙人名簿の属する市町村以外の市町村において,不在者投票の方法で投票を行うことができるのであるから,原告は,不在者投票の方法により,大阪市内において当該参議院議員選挙の投票を行うことも可能であった。 そうすると,原告が本件投票のために本件居住地と同市とを往復した事実が仮に認められるとしても,それが原告が選挙権を行使する上で真に必要なものであったとは認められず,原告の最低限度の生活の保障及び自立の助長のために必要なものであったとも認められない。 ウしたがって,原告が本件投票に要したとする本件居住地と同市との往復は,移送には該当せず,生活扶助の対象とならないから,本件申請②を却下した本件却下決定②に所論の違法はない。この点に関する原告の主張は理由がない。 (2) 次に,原告は,福祉事務所長が本件投票について原告が提出しようとしていた資料の受取りを拒否し,十分な調査確認をしないまま実態を把握せずに本件却下決定②を行ったのは違法である旨主張する。しかしながら,前記のとおり,仮に原告が本件投票をした事実が認められるとしても,原告が本件投票に要したとする本件居住地と和歌山県田辺市との往復は,そもそも移送に該当せず,生活扶助の対象とならないのであるから,福祉事務所長に本件投票の有無を調査確認すべき法的義務があったと解することはできないし,仮に調査確認を尽くしていたとしても結論に影響を与えなかったのであるから,原告主張のような調査確認をしな るから,福祉事務所長に本件投票の有無を調査確認すべき法的義務があったと解することはできないし,仮に調査確認を尽くしていたとしても結論に影響を与えなかったのであるから,原告主張のような調査確認をしなかったことが本件却下決定②の適法性を左右するものではない。したがって,福祉事務所長が同義務を怠ったまま行った本件却下決定②は違法である旨の原告の主張は失当である。 (3) さらに,原告は,福祉事務所長が本件却下決定②に先立って原告に対し弁明の機会を付与しなかったのは行政手続法13条に反し違法である旨主張する。しかし,前記のとおり,本件申請②は,行政庁である福祉事務所長に対し,法7条,24条5項,同条1項に基づき,同項の規定によって既に決定を受けていた生活扶助費の増額変更を求めるものであり,これに対しては福祉事務所長が諾否の応答をすべきこととされているのであるから(同条5項,1項),行政手続法2条3号に規定する「申請」に該当するところ,本件却下決定②は,本件申請②により求められた生活扶助費の増額変更を拒否する処分であるから,同条4号に規定する「不利益処分」に該当しないことは明らかである(同号ただし書ロ)。したがって,法29条の2の規定による適用の除外を指摘するまでもなく,本件却下決定②に不利益処分をしようとする場合の事前手続について規定した行政手続法13条が適用される余地はないから,原告の上記主張は失当である。 (4) よって,本件却下決定②は適法である。 3 争点(3)(本件変更決定の適法性)について(1) 前記前提事実のとおり,本件変更決定は,福祉事務所長が,法25条2項の規定に基づき,原告に対する同年9月分の保護費のうち生活扶助費を3万3728円減額して支給する旨の処分であり,既に決定された保護を不利益に変更する場合に当たるから,法56条 務所長が,法25条2項の規定に基づき,原告に対する同年9月分の保護費のうち生活扶助費を3万3728円減額して支給する旨の処分であり,既に決定された保護を不利益に変更する場合に当たるから,法56条の規定によれば,正当な理由がない限り,これをすることが許されないものである。この点,被告は,法は国内に現在する要保護者の国内での生活を保障しており,原告の国外滞在期間中の生活は保護の対象とならないから、法25条2項の規定に基づいてした本件変更決定は適法である旨主張する。そこで,以下,本件変更決定について,同項に規定する保護の変更の必要があり,法56条に規定する正当な理由があると認められるか否かを検討する。 ア法19条1項は,保護の実施機関(同条4項)である都道府県知事,市長及び福祉事務所を管理する町村長は,①その管理に属する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する要保護者(同条1項1号)及び②居住地がないか,又は明らかでない要保護者であって,その管理に属する福祉事務所の所管区域内に現在地を有するもの(同項2号)に対し,保護を決定し,かつ,実施しなければならない旨規定し,要保護者の居住地又は現在地を所管する実施機関に保護の決定及び実施を行わせることとしている。そうすると,国外に居住地を有し,かつ,国外に現在する者については,居住地又は現在地を所管する実施機関が存在しない以上,法による保護の決定及び実施を受けることができないことにならざるを得ない。しかしながら,国外に現在している要保護者であっても,旅行等国外に滞在していることが一時的かつ短期のものであって,国内における居住場所がそのまま確保されており,一定期限の到来とともに国内の従前の居住場所に戻って生活を継続していくことが予定されている場合等には,生活の本拠は依然として国内の居住地にあるものと解 ,国内における居住場所がそのまま確保されており,一定期限の到来とともに国内の従前の居住場所に戻って生活を継続していくことが予定されている場合等には,生活の本拠は依然として国内の居住地にあるものと解されるから,同項1号の規定によれば,当該居住地を所管する福祉事務所を管理する実施機関が存するのであり,当該実施機関は,同項柱書の規定により,当該要保護者に対し,保護の決定及び実施を行う責任を負うものと解するほかない。 また,法2条は,すべて国民は,法の定める要件を満たす限り,法による保護を,無差別平等に受けることができる旨規定しているところ,要保護者が国内に現在していることを保護の要件とする規定は存在しない。 したがって,国外に現在している要保護者がおよそ法による保護の対象とならないと解することはできない。 この点,例えば,国外に現在し,又は国外に在った被保護者が旅費,滞在費等を自ら支弁していることを1つの徴表として,当該被保護者に対する保護が,その最低限度の生活の維持のために必要な範囲を超えており,保護の不利益変更を必要とする正当な理由があると認められる場合には,実施機関は,法25条2項の規定に基づき,すみやかに,職権をもって保護の変更決定を行うべきである。また,更に進んで,当該被保護者がもはや保護を必要としなくなったと認められる場合や,被保護者が長期間当初の居住地を離れて国外に滞在し続けた結果,もはや当該居住地における起居の再開及び継続の期待性が希薄となり,又は全く認められなくなったような場合には,実施機関は,これらの事情を理由として,法26条の規定に基づき,すみやかに,当該被保護者に対する保護の停止又は廃止を決定すべきであることはもちろんである。しかし,上記各例示のような場合に当たるか否かが明らかでないのに,国内に居住地を有する要保 の規定に基づき,すみやかに,当該被保護者に対する保護の停止又は廃止を決定すべきであることはもちろんである。しかし,上記各例示のような場合に当たるか否かが明らかでないのに,国内に居住地を有する要保護者が国外に滞在しているからといって,およそ一律に法による保護の対象とならないということはできない。 イ被告は,法8条2項が,厚生労働大臣が同条1項に基づいて要保護者の需要を測定するための基準を定めるに当たり,要保護者の「所在地域別」に応じて必要な事情を考慮すべきことを規定していること,国外において生活している要保護者に対する資産状況等の調査(法28条1項)や実施機関による指導及び指示(法27条1項)が不可能であることなどを挙げ,法は国外での生活を保護の対象としていない旨主張する。この点,前記のとおり,国外に生活の本拠となる居住地を有し,かつ,国外に現在している者が法による保護の決定及び実施を受けることができないのは,法19条1項の規定上明らかである。しかしながら,これと異なり,いまだ国内に居住地を置いたまま,一時的かつ短期に国外に滞在しているにすぎない要保護者についてまで,およそ一律に国外滞在中は法による保護の対象にならないと解する法律上の根拠はないといわざるを得ない。国内に生活の本拠を有し,国外に一時的かつ短期に滞在している要保護者は,国内における家賃等の固定的必要経費の支出を免れるものではない。被告の上記主張は,結局のところ,国外に現在し,国外の居住地において生活している者に対しては法による保護の決定及び実施をすることができないという,法19条1項の規定上明らかであることを角度を変えて述べているにすぎず,居住地を国内に置いたまま,一時的かつ短期に国外に滞在する者に対しても法による保護が一切及ばないと解すべき根拠とはなり得ないものである 1項の規定上明らかであることを角度を変えて述べているにすぎず,居住地を国内に置いたまま,一時的かつ短期に国外に滞在する者に対しても法による保護が一切及ばないと解すべき根拠とはなり得ないものである。国際化が進展し,国外との人的物的交流がますます盛んになり,国民の国外への旅行も一般化・大衆化しつつある今日の我が国社会において,国内に居住地を有する要保護者といえども,国外に一時滞在する必要が生じるのは,必ずしもまれなことではない。国内に居住地を有する要保護者であっても,近しい親族等が国外に居住しているなど,国外に自己の生活と密接な関係にある場所を有している場合も十分あり得るところである。そのような要保護者が,例えば冠婚葬祭等のために国外に一時滞在する必要が生じることも容易に想定できるところであって,そのようなときにまで,一律に国外滞在中は法による保護の対象としないということは,すべての国民に対し,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障した憲法25条1項及び法の趣旨に沿わないものといわなければならない。 また,被告は,法24条,26条,28条等の規定を挙げて,法は,実施機関が被保護者について短期間に要保護性の有無を判断し,絶えず支給の要否を確認しつつ,必要な給付のみを行うという考え方を採っているから,被保護者が国外に滞在することなどおよそ想定していない旨主張する。確かに,法24条1項,2項は,保護の実施機関は,保護の開始の申請があったときは,保護の要否,種類,程度及び方法を決定し,原則として申請のあった日から14日以内に,申請者に対して,書面をもって,これを通知しなければならない旨規定しており,法25条2項及び26条も,保護の実施機関は,常に,被保護者の生活状態を調査し,保護の変更を必要とすると認めるときは,すみやかに,職権をもってそ をもって,これを通知しなければならない旨規定しており,法25条2項及び26条も,保護の実施機関は,常に,被保護者の生活状態を調査し,保護の変更を必要とすると認めるときは,すみやかに,職権をもってその決定を行い,被保護者が保護を必要としなくなったときは,すみやかに,保護の停止又は廃止を決定し,書面をもって,これらの決定を被保護者に通知しなければない旨規定しているところ,申請者が国外に滞在している場合には,上記各決定の判断及びその通知に困難を来す場合のあることは想定することができる。また,国外に滞在する被保護者に対しては,その国外滞在期間中,法27条1項に規定する指導及び指示や法28条1項に規定する資産状況等の調査をすることが不可能ないし困難となる場合もあり得ると考えられる。しかしながら,上記のような支障が生じ得るのは,現在地が国外にある者のみならず,国内にある者であっても,例えば,実施機関の所在地と異なる地域に滞在していたり,現在地が一時的に不明となっている者についても同様なのであるから,国外に滞在する要保護者に限って,法による保護の対象としない理由となるものではない。被告の上記主張は,明文の規定がないにもかかわらず,法による保護に「現在地が国内にあること」という新たな要件を創設するに等しく,法の定める要件を満たす限り,無差別平等に法による保護を受けることができる旨規定した法2条の趣旨に反するというべきである。 なお,被告は,拠出制の社会保険制度である健康保険制度との対比において,法が要保護者が国外において生活している場合を想定した規定を置いていないことを指摘し,生活保護制度が典型的な非拠出制の公的扶助制度であることなどからすれば,法はその執行区域外の生活を保護の対象としていない旨主張している。しかし,生活保護制度が社会構成員の相互扶 いないことを指摘し,生活保護制度が典型的な非拠出制の公的扶助制度であることなどからすれば,法はその執行区域外の生活を保護の対象としていない旨主張している。しかし,生活保護制度が社会構成員の相互扶助の観念を基礎とする非拠出制の公的扶助制度であり,その適用の対象となるのは原則として我が国社会の構成員に限られるとしても,そのことから直ちに国内に居住地を置いたまま,一時的かつ短期に国外に滞在しているにすぎない要保護者について,およそ一律に国外滞在中は法による保護の対象にならないということはできない。たとい国外に一時的・短期的に滞在していたとしても,国内に居住地を有する以上,国内で生活する基盤はそのまま維持されているのであり,国外に生活の基盤がない以上,国外社会の構成員というよりは,むしろ我が国社会の構成員というべきものであって,国外滞在中という一事をもって直ちに公的扶助の対象となる資格を否定する理由とはならないと解される。また,要保護者が国外に滞在している場合に関する規定がないために,国外に滞在している要保護者に対する保護の決定及び実施に上記のような支障が生じ得るとしても,それは当該要保護者が保護の決定及び実施を受けるに際して事実上一定の制約を受けることを意味するにとどまるのであり,国外に滞在している要保護者に法による保護が一切及ばないと解する根拠となるものではない。 上記説示は,国外滞在中の要保護者につき,当該滞在国における生活水準に応じた最低限度の生活需要を満たす保護を行うことを求めているものではないから,外国における生活保護基準の策定の困難をいう被告の主張も理由がない。 したがって,被告の上記各主張を採用することはできない。 ウこれを本件についてみると,被告は,本件変更決定の理由として,国外に滞在する要保護者はおよそ法による保護の対 いう被告の主張も理由がない。 したがって,被告の上記各主張を採用することはできない。 ウこれを本件についてみると,被告は,本件変更決定の理由として,国外に滞在する要保護者はおよそ法による保護の対象とはならないとの解釈を前提に,単に原告が平成13年6月12日から同月25日までの間国外にいた事実を主張するのみであり,上記期間中,原告に対する保護が,その最低限度の生活の維持のために必要な範囲を超えており,保護の変更を必要としていたことを基礎づける事情を具体的に主張立証しない。したがって,本件変更決定について,法25条2項に規定する保護の変更の必要があったとは認められず,ひいては法56条に規定する正当な理由があったとも認められない。 (2) よって,その余の点について判断するまでもなく,原告が上記期間国外にいたことのみを理由に上記期間分の生活扶助費を減額した本件変更決定は法25条2項,56条に反し違法であり,取消しを免れない。 4 結論以上によれば,原告の請求は本件変更決定の取消しを求める限度で理由があるからその限度でこれを認容し,その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官川神裕裁判官山田明裁判官一原友彦
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