- 1 -令和2年(行ヒ)第323号 固定資産評価決定取消請求事件令和4年3月3日 第一小法廷判決主 文原判決を破棄する。 本件を広島高等裁判所に差し戻す。 理 由上告代理人沖本浩,同山本直の上告受理申立て理由について1 本件は,ゴルフ場の用に供されている山口県下松市所在の一団の土地(第1審判決別紙物件目録記載1~89。以下「本件各土地」という。)に係る固定資産税の納税義務者である被上告人が,土地課税台帳に登録された本件各土地の平成27年度の価格を不服として下松市固定資産評価審査委員会に審査の申出をしたところ,これを棄却する旨の決定(以下「本件決定」という。)を受けたため,上告人を相手に,本件決定のうち被上告人が適正な時価と主張する価格を超える部分の取消しを求める事案である。 2 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。 ア 地方税法349条1項は,土地に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は,当該土地の基準年度に係る賦課期日における価格で土地課税台帳又は土地補充課税台帳に登録されたもの(以下,これらの台帳に登録された価格を「登録価格」という。)とする旨規定し,同法403条1項は,市町村長は,同法388条1項の固定資産評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならない旨規定する。平成27年度は上記の基準年度であり,これに係る賦課期日は平成27年1月1日である。 イ 固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号。以下「評価基準」という。)は,ゴルフ場の用に供する一団の土地(以下「ゴルフ場用地」という。)の評価について,大要,① 当該ゴルフ場を開設するに当たり要した当該ゴルフ場用地の取得価額に当該ゴルフ場 以下「評価基準」という。)は,ゴルフ場の用に供する一団の土地(以下「ゴルフ場用地」という。)の評価について,大要,① 当該ゴルフ場を開設するに当たり要した当該ゴルフ場用地の取得価額に当該ゴルフ場用地の造成費を加算した価額を基準とし,当該ゴル- 2 -フ場の位置,利用状況等を考慮してその価額を求める方法によるものとするとし,② この場合において,取得価額及び造成費は,当該ゴルフ場用地の取得後若しくは造成後において価格事情に変動があるとき,又はその取得価額若しくは造成費が不明のときは,附近の土地の価額又は最近における造成費から評定した価額によるものとすると定めている(第1章第10節二。以下,上記②の定めを「本件定め」という。)。 自治省税務局資産評価室長は,平成11年法律第87号による改正前の地方自治法245条4項(現行法の245条の4第1項参照)の技術的な助言として,各道府県総務部長等宛てに「ゴルフ場の用に供する土地の評価の取扱いについて」(同年9月1日付け自治評第37号。以下「ゴルフ場通知」という。)を発出した。ゴルフ場通知は,評価基準における本件定め等の具体的な取扱いについて参考までに一例を示すなどとした上で,周辺地域の大半が宅地化されているゴルフ場に係る取得価額の評定に関し,大要,当該ゴルフ場の近傍の宅地に比準しつつ山林としての価額を評定する方法を挙げている。 ア 本件各土地及びその周辺の土地は,古くは塩田跡地であったところ,本件各土地は,その後造成され,遅くとも昭和60年頃からゴルフ場用地となっている一方,その周辺の土地は,工場等の敷地(宅地)となっている。 イ 下松市長は,平成26年,本件各土地の価格について,本件定めによることを前提に,ゴルフ場用地として開発することを目的とする素地として評価するとの条件により, 工場等の敷地(宅地)となっている。 イ 下松市長は,平成26年,本件各土地の価格について,本件定めによることを前提に,ゴルフ場用地として開発することを目的とする素地として評価するとの条件により,不動産鑑定士による鑑定(以下「本件鑑定」という。)を実施した。 下松市長は,本件鑑定の結果に基づき,附近の工場用地に比準する方法により工場用地としての取得価額を評定し,造成費の加算をせずに本件各土地の平成27年1月1日における価格を合計32億0933万8607円と決定し,土地課税台帳に登録した(以下,この価格を「本件登録価格」という。)。 3 原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断し,本件決定の全部を取り消すべきものとした。 - 3 -本件各土地について本件定めにより評定されるべき取得価額は,ゴルフ場用地に造成される前の塩田跡地の基準年度における客観的時価をいうものと解すべきであるが,本件鑑定によってはこれを求めることができない。したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件登録価格は評価基準の定める評価方法に従って算定されたものということはできず,本件登録価格は評価基準によって決定される価格を上回らないとはいえない。 4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 本件決定は,本件登録価格の決定に違法はないとして,これに係る被上告人の審査の申出を棄却したものであるところ,土地の基準年度に係る賦課期日における登録価格が評価基準によって決定される価格を上回る場合には,同期日における当該土地の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るか否かにかかわらず,その登録価格の決定は違法となるものというべきである(最高裁平成24年(行ヒ)第79号同25年7月12日第二小法廷判決・ ける当該土地の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るか否かにかかわらず,その登録価格の決定は違法となるものというべきである(最高裁平成24年(行ヒ)第79号同25年7月12日第二小法廷判決・民集67巻6号1255頁)。 そこで,本件登録価格が評価基準の定める評価方法に従って算定されたものということができるか否かが問題となる。 前記2イによれば,下松市長は,本件各土地の価格について,本件定めにより,附近の工場用地に比準する方法により工場用地としての取得価額を評定したものであって,塩田跡地としての取得価額を評定したものではない。 しかしながら,土地に係る固定資産税の課税標準となる登録価格は,当該土地の基準年度に係る賦課期日を基準として定めるべきものであるところ(地方税法349条1項),平成27年度の固定資産税の賦課期日である平成27年1月1日において,本件各土地の周辺の土地は工場等の敷地となっていたものである。また,本件定めを含む評価基準は,ゴルフ場用地の評価に際し附近の土地に比準して取得価額を評定する方法として,特定の具体的な方法を挙げているものではないし,造成から長期間が経過するなどの事情により,当該ゴルフ場用地の造成前の状態を前提- 4 -とした取得価額を正確に把握できない場合も想定される。 そうすると,本件各土地の価格の算定に当たり,その造成前の状態である塩田跡地としての取得価額を評定していないことをもって,評価基準の定める評価方法に従っていないと解すべき理由は見当たらない。 以上に関し,下松市長が本件各土地の取得価額を評定する際に用いた方法は,ゴルフ場通知の挙げる方法,すなわち,近傍の宅地に比準しつつ山林としての価額を評定するという方法とは異なるものであり,この方法に準じたものともいい難い。 しかしながら,ゴルフ 定する際に用いた方法は,ゴルフ場通知の挙げる方法,すなわち,近傍の宅地に比準しつつ山林としての価額を評定するという方法とは異なるものであり,この方法に準じたものともいい難い。 しかしながら,ゴルフ場通知は,基本的には山林を造成したゴルフ場用地の評価を念頭に置くものと解される上,技術的な助言として本件定め等の具体的な取扱いを参考までに例示するにとどまり,事例に応じて他の評価方法によることを排除する趣旨と解することはできないこと等からすれば,ゴルフ場通知の内容により,上記の判断が左右されるものではない。 したがって,本件登録価格について,塩田跡地としての取得価額を評定していないことを理由として評価基準の定める評価方法に従って算定されたものということができないとした原審の判断には,固定資産の評価に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。 5 以上によれば,原審の上記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,本件登録価格が評価基準の定める評価方法に従って算定されたものといえるか否か等について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官 安浪亮介 裁判官 山口 厚 裁判官 深山卓也 裁判官岡 正晶 裁判官 堺 徹)
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