主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 本件控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は控訴人に対し,4592万5267円及びこれに対する平成12年9月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 4 仮執行宣言第2 事案の概要原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるから,これを引用する。 第3 争点に対する判断当裁判所も,控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。 1 和議債権(自働債権)と和議債務者の和議債権者に対する債権(受働債権)とが和議認可決定確定前に既に相殺適状にあった場合には,和議債権者は,和議認可決定の確定により和議債権が和議条件に従って変更された後においても,和議認可決定の影響を受けず,上記変更前の和議債権を自働債権として和議債務者の債権と相殺することができると解するのが相当である(平成11年判決参照)。 すなわち,旧和議法5条は、相殺権の行使に関する破産法98条の規定を準用し、和議開始決定時において和議債権者が和議債務者に対して債務を負担する場合には和議手続によらずに相殺権を行使することができる旨定めているところ、その趣旨は、相殺の有する担保的機能を和議手続においても保障し、互いに債権債務を有する和議債権者と和議債務者との公平を図る点にあると解される。一方、和議認可決定が確定した場合には、和議条件に従って和議債務の免除、弁済期の猶予等の実体法上の効力が和議債権者全員について生じることとなる(旧和議法57条、破産法326条1項)。しかし、前記のとおり和議手 認可決定が確定した場合には、和議条件に従って和議債務の免除、弁済期の猶予等の実体法上の効力が和議債権者全員について生じることとなる(旧和議法57条、破産法326条1項)。しかし、前記のとおり和議手続によらない相殺権の行使が許容され、相殺権に対して別除権に匹敵する保護が与えられていることに加え、和議手続においては、和議債権の確定や和議債務者の財産の清算が行われないため和議手続中に相殺権を行使する機会が十分保障されているとは言い難いことをも考慮すると、和議債権者が和議認可決定の確定前に相殺の意思表示をしなかったからといって、直ちに和議認可決定の効力を優先させ相殺権の行使を制限することは、和議債権者にとって酷であり、和議債権者と和議債務者との公平を欠くものというべきである。したがって、和議債権と和議債務者の和議債権者に対する債権とが和議認可決定確定前に既に相殺適状にあった場合には、和議債権者は、和議認可決定の確定により和議債権が和議条件に従って変更された後においても、和議認可決定の影響を受けず、変更前の和議債権を自働債権として和議債務者の債権と相殺することができると解するのが相当である。 そして,和議認可決定確定前に,自働債権と受働債権とが厳密な意味で相殺適状にない場合であっても,双方の債権が同種のものであり,かつ,和議認可決定確定前に和議債権である自働債権の弁済期が到来しており,受働債権のそれが未到来であったとしてもその期限の利益は専ら債務者である和議債権者にあり,和議認可決定確定前に,和議債権者において,自己の債務につき,期限の利益を放棄して,和議債権を自働債権として相殺することが可能であった場合には,相殺適状にあった場合に準じて,和議認可決定確定後であっても,和議債権者は,自己の債務の期限の利益を放棄して,あるいは自己の債務 棄して,和議債権を自働債権として相殺することが可能であった場合には,相殺適状にあった場合に準じて,和議認可決定確定後であっても,和議債権者は,自己の債務の期限の利益を放棄して,あるいは自己の債務の期限の到来を待って,和議認可決定確定による変更前の和議債権を自働債権として,自己の債務と相殺することができると解することができるというべきである。なぜなら,この場合,和議認可決定確定前に相殺することができた和議債権者の利益を保護すべきことは,平成11年判決の理由付けがそのまま妥当するといえるからである。和議債権者が和議認可決定確定前に自己の債務につき期限の利益を放棄する意思表示をしていたか否かにより,その結論を左右すべき実質的理由も見い出し難いといわなければならない。 2 これを本件についてみるに,前記前提事実によれば,(一)本件貸付債権及び本件預託金返還請求権は,和議開始決定前から,いずれも同種の債権である金銭債権であること,(二)M・N銀行間には,Mは,和議開始申立てがあった時にN銀行に対する一切の債務につき期限の利益を失う旨の本件銀行取引約定があり,Mが和議申立てをした平成11年1月25日の時点で,本件貸付債権の弁済期が到来したこと,(三)本件預託金返還請求権の弁済期は,被控訴人が手形交換所から異議申立提供金の返還を受けたとき(平成12年9月17日から同月20日)に到来したものの,その期限の利益は専ら債務者である被控訴人にあると認められることに照らせば,和議認可決定が確定した平成11年2月22日以前において,被控訴人は,本件預託金返還債務4592万5267円につき期限の利益を放棄して,これを和議債権である本件貸付債権残金1億2972万8753円でもって,対当額で相殺することが可能であったということができる。 そして,本件 592万5267円につき期限の利益を放棄して,これを和議債権である本件貸付債権残金1億2972万8753円でもって,対当額で相殺することが可能であったということができる。 そして,本件においては,被控訴人が相殺権を放棄したと認めるべき事情が存在しないばかりか,被控訴人において,和議手続中,Mに対しあらかじめ反対債権を有するので相殺の予定である旨表明しているのであるから(前提事実(六)),受働債権につき期限が到来して後になされた本件相殺の意思表示はその効力が生じたということができる。 3 したがって,本件相殺は有効であり,本件預託金返還請求権は本件貸付債権残金との相殺により対当額で消滅したというべきであるから,被控訴人の抗弁は理由がある。 第4 結論以上の次第で,上記と同旨の原判決は相当であるから,本件控訴を棄却し,控訴費用は控訴人の負担とすることとして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第2民事部裁判長裁判官浅野正樹裁判官東畑良雄裁判官浅見宣義・
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