【DRY-RUN】○ 主文 一 被告が原告に対し昭和四八年一二月二一日付でモーテル営業の廃止を命じた行 政処分はこれを取消す。 二 訴訟費用は被告の負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求めた裁判 一 原告 主文同旨
○ 主文一被告が原告に対し昭和四八年一二月二一日付でモーテル営業の廃止を命じた行政処分はこれを取消す。 二訴訟費用は被告の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一原告主文同旨二被告(一) 原告の請求を棄却する。 (二) 訴訟費用は原告の負担とする。 第二当事者の主張一原告主張の請求原因(一) 原告は、昭和四七年六月以来熊本県知事の旅館営業の許可を受けて、肩書地においてホテルエヤポートという屋号を用いて旅館を営業中である。 (二) 被告は、昭和四八年一二月二三日原告に対して、風俗営業等取締法施行条例第三二条の二により定められた地域においてはモーテル営業を営んではならないのにかかわらず、前記営業所の客室である二階の個室に自動車の車庫が個々に接統する施設において車庫の出入口をカーテンでしやへいできるようにしてモーテル営業を営んだという理由をもつて、モーテル営業の廃止を命ずる行政処分をなした。 (三) しかしながら、右行政処分は違法であり取消されるべきである。 何故ならモーテル営業の規制をしている風俗営業等取締法およびモーテル営業の施設を定める総理府令は、いわゆるモーテル営業のうち、特に密室性、秘匿性の強い「個室に自動車の車庫が個個に接続する」形態の営業を規制するものであり、原告は右規制の対象となるべき営業形態をとつていないもので、被告のなした行政処分は前記法令の誤つた解釈に基づくものである。 (四) 原告は昭和四九年一月二一日被告に対し右行政処分を不服として異議申立をしたが、被告は同年三月八日右異議申立を棄却した。 (五) そこで、被告のなしたモーテル営業廃止命令処分は違法であるから、その取消を求めるため本訴に及ぶ。 二被告の主張(一) 請求原因事実中、(一)項は認める、たゞし熊本県知事の旅館営業の許可年月日は昭和 こで、被告のなしたモーテル営業廃止命令処分は違法であるから、その取消を求めるため本訴に及ぶ。 二被告の主張(一) 請求原因事実中、(一)項は認める、たゞし熊本県知事の旅館営業の許可年月日は昭和四八年七月一八日である、同(二)項は認める、たゞしモーテル営業の廃止命令は昭和四八年一二月二一日付でなしたものである、同(三)項は争う、同(四)項は認める、たゞし異議申立年月日は昭和四八年一二月二五日である。 (二) 事案の概要 1 原告は、昭和四八年七月一八日熊本県知事の旅館営業の許可(熊本県指令衛二六二号)を受けて、肩書地において旅館営業中のところ、風俗営業等取締法(以下「法」という)四条の六第一項の規定によれば、風俗営業等取締法施行条例(昭和三四年三月二六日熊本県条例第五号(以下「条例」という))で定める地域においては、モーテル営業の施設を定める総理府令(昭和四七年七月五日総理府令五三号(以下「総理府令」という))の各号に該当する構造、設備を有する施設で異性を同伴する客の宿泊(休憩を含む)に利用させる営業(以下「モーテル営業」という)を営んではならないものであるにもかかわらず、モーテル営業規制地域である前記営業所において、客室である二階の個室に自動車の車庫が階下に個々に接続する施設をもうけ、車庫の出入口をカーテンによつてしやへいできるようにして総理府令一号に該当する設備としたうえ、異性を同伴する客の宿泊等に利用させ、もつてモーテル営業規制地域においてモーテル営業を営んだものである。 2 そこで、熊本県熊本東警察署長から昭和四八年一〇月二〇日被告宛に原告に対するモーテル営業廃止命令の上申がなされ、被告は右上申に基づき、同年一二月七日聴聞を実施し、同年一二月二一日付で原告に対し法四条の六第三項の規定によりモーテル営業の廃止命令処分をなした。 告に対するモーテル営業廃止命令の上申がなされ、被告は右上申に基づき、同年一二月七日聴聞を実施し、同年一二月二一日付で原告に対し法四条の六第三項の規定によりモーテル営業の廃止命令処分をなした。 3 原告はこれを不服として同年一二月二五日被告に対し異議を申立てたが、被告は審査の結果昭和四九年三月八日右申立を棄却する旨の決定をした。 (三) 本件モーテル営業廃止命令の適法性について 1 本件施設の構造設備について原告が営業している本件建物の構造は、鉄骨造、亜鉛メツキ、鋼板ぶき二階建であつて、一階に自動車の車庫、二階に客室を有するものであり、二階の客室である個室一三室に、一階の自動車の車庫一三個が上下の関係で、一部は若干不整形ながら個々に接続しており、しかも各車庫の建物の外側からの出入口はカーテンで、また、建物の内側からの出入口にはシヤツターで、しやへいできるようになつている。 二階には、客室一三室のほかに車庫と接続しない客室二および従業員室一、自家用の部屋一があり、一階には前記客用の車庫一三個のほか自家用のものと思われる車庫(その真上が自家用の部屋となつている)一個がある。 車庫から個室に行くには、共同通路を経て、建物中央付近の階段二個所(共同)のいずれかを上ることとなる。 2 法四条の六第一項および総理府令の解釈について(1) 法四条の六第一項で規制の対象とするモーテル営業は、個室に自動車の車庫が個々に接続する施設であつて、総理府令で定めるものを設け、当該施設を異性を同伴する客の宿泊(休憩を含む。)に利用させる営業である。しかして、総理府令は次の各号のいずれかに該当する構造設備のものをもつて法四条の六第一項の施設であるとしている。 イ個室に接続する車庫(二以上の側壁(カーテン、ついたて等を含む。)及び屋根を有するものに限る。以下同じ。)の 号のいずれかに該当する構造設備のものをもつて法四条の六第一項の施設であるとしている。 イ個室に接続する車庫(二以上の側壁(カーテン、ついたて等を含む。)及び屋根を有するものに限る。以下同じ。)の出入口がとびら等によつてしやへいできるものロ車庫の内部から個室に通ずる専用の人の出入口又は階段若しくは昇降機が設けられているものハ個室と車庫とが専用の通路によつて接続しているものにあつては、当該通路の内側が外部からみえないもの(2) 法四条の六第一項にいう「個室に自動車の車庫が個個に接続する施設」とは、個室ごとにそれに対応する車庫が物理的に接続していることをいうと解されるのであるが、右にいう接続とは平面的横の関係だけでなく、立体的な上下の関係においても認められるものであり(このことは総理府令二号に「階段若しくは昇降機が設けられているもの」とあるところからしても疑問の余地がない。)、さらに個室の一部と車庫の一部とが重なりあつているいわゆる不整形の個室と車庫の接続形態も含むものであり、さらに右接続が施設の全部に及ぶ必要はなく一部でも該当すれば規制の対象となるものである。 原告は、一階の各車庫と二階の各客室間には接着した専用関係が存在しない旨主張する。右の「接着した専用関係」の意味するところは必らずしも明らかでないが、一応「物理的な接続」と同時に当該車庫を利用した人は必らずそれに接続する個室を利用するという「利用上の一体性」を要するという趣旨であると解される。しかし、法はかかる利用上の一体性までも要求しているとは考えられない。なんとなれば、総理府令二号および三号の場合は、その構造からして利用上の一体性は必然的にもたらされるといつてよいが、総理府令一号の場合は、ある車庫を利用した客にそれと接続する個室を利用させず、他の個室を利用させるようにす 二号および三号の場合は、その構造からして利用上の一体性は必然的にもたらされるといつてよいが、総理府令一号の場合は、ある車庫を利用した客にそれと接続する個室を利用させず、他の個室を利用させるようにすることが人為的に可能だからである。本件の場合、利用客は従業員の応接や案内を受けることはないのであるから、利用客の心理としては車庫と同番号の個室を選択するか、車庫の真上の個室に入るのがごく自然のことであり、各個室の浴室等の構造設備が異なるからといつて、客がそれを比較し、好みにより個室を選ぶということは通常考えられないことである。 なお、原告は一階車庫の番号を書きなおし、ことさらに車庫と個室の番号を上下一致しないよう修正しているが、これは車庫と個室の上下の接続関係を否定する意図のもとに行なわれたものであり、これは原告が車庫と個室の専用の利用関係がないと主張しながら、それが存在することを意識し、それを糊塗せんがための脱法手段にほかならない。 (3) 次に、総理府令の解釈であるが、一号ないし三号がいずれも独立の要件として規定されていることに留意しつつこれを全体として矛盾なく解釈するときは次のように解せられる。 すなわち、一号は「個室と車庫の物理的接続」と「車庫自体の秘匿性(車庫の内部が外部からみえないこと)」があれば足り、車庫から個室へ行く途中(過程)での秘匿性は必要としないのに対し、二号および三号では「個室と車庫の物理的接続」および「車庫から個室にいたる過程における秘匿性」があれば足り、「車庫自体の秘匿性」は要件とされていない。つまり一号では、二号および三号の要件である「車庫から個室にいたる過程における秘匿性」が不要とされている反面「車庫自体の秘匿性」の要件が加重されているのである。換言すれば一号の場合は車庫自体の秘匿性(車とくにナンバーの秘匿性お の要件である「車庫から個室にいたる過程における秘匿性」が不要とされている反面「車庫自体の秘匿性」の要件が加重されているのである。換言すれば一号の場合は車庫自体の秘匿性(車とくにナンバーの秘匿性および車庫内部における行動の秘匿性)に着目するのに対し、二号および三号は車庫から個室に至る過程の秘匿性(その間の行動の秘匿性)に着目するのである。 そして、右のように解すべきことは、次に述べることからもいい得るところである。 イ原告のいうように、車庫から個室へ行く途中で人目につく可能性のある構造のものは規制の対象外であるとするならば、二号および三号を置くだけで十分であつて、一号を独立の要件として設ける必要は全くないこと、一号を設けた趣旨は、共同の通路や階段を経由するものであつても、車庫の出入口がしやへいできるものについては規制の対象とするためであると解されることロ車庫の出入口がしやへいされると、前述したように車とくにナンバーが外部から見えなくなるとともに、車庫内における行動も人の目に触れなくなり、このことが犯罪を誘発する原因となることハ車庫から個室へ行くのに共同の通路や階段を利用するといつても、車庫と個室に物理的な接続関係が要求される以上、その間の距離は自ら制約されてわずかなものとなり、それに要する時間も分秒を出ない程度であろうから、全体的にみて秘匿性の強い施設であると考えられること(4) なお、本件建物は、一階車庫の通路、フロント、二ヶ所の階段および二階客室の通路を経て個室に入るものであるが、この階段や通路は外部からみえないものであり、従業員は集音器、赤外線探知器およびシヤツター開閉の電動装置を操作し、利用客の用件は電話を用い、従業員と客とは面接することのないよう工夫されている。 また、フロントの構造もカウンターのガラス張りの内側はカ は集音器、赤外線探知器およびシヤツター開閉の電動装置を操作し、利用客の用件は電話を用い、従業員と客とは面接することのないよう工夫されている。 また、フロントの構造もカウンターのガラス張りの内側はカーテンを閉ざし、宿泊料の授受は個室出入口とびらの小窓を通して行なわれているので、フロントにおいて客と面接することはない。まれに利用客相互に薄暗い通路で顔を合わせることはあり得ても、本件建物内部の通路や階段は一般の旅館、ホテルのそれと異なり他人と顔を合わせる機会は極めて少なく、行動の秘匿を欲する利用客に対し満足を与え得るもので、外部との秘匿性が充分確保されるよう工夫されている。 3 以上要するに、本件建物の構造設備は、法四条の六第一項、総理府令一号に該当し、これに対し熊本県公安委員会が本件営業の廃止を命じた行政処分に何らの瑕疵はない。 三被告の主張に対する原告の反論(一) 法四条の六第一項および総理府令一号の規定するモーテル営業の施設とは個室と車庫とが「個個に接続するもの」でなければならない。 「個室と車庫が個個に接続する」とは如何なる構造を指すかは立法目的、法案提出の背景等から考慮解釈すべきものである。モーテル営業の規制は、個室に鍵をかければ密室になること、モーテル従業員等に接する機会が極めて少ないことなどから犯罪が発生し易いのでこれを防止しようとしたものである。第六八国会における風俗営業等取締法の一部を改正する法律案の内容について「改正案ではモーテルの密室性に着目して、個室と車庫が個個に接続するというように規定することによりその範囲を限定したものである」と述べられており、「個室に自動車の車庫が個々に接続する施設であつて総理府令で定めるもの」とは「ワンルームワンガレージ」といわれるものであると説明されている。この説明によれば規制を受けるのは「 ある」と述べられており、「個室に自動車の車庫が個々に接続する施設であつて総理府令で定めるもの」とは「ワンルームワンガレージ」といわれるものであると説明されている。この説明によれば規制を受けるのは「個室ごとに」「専用の」車庫が接続した「車庫付個室」という特殊の構造を有するものに限定されるものと考えるべきである。 したがつて、「個室に車庫が個個に接続する」とは被告が主張する如く、たゞ単に個室ごとにそれに対応する車庫が物理的に接続していれば足るという趣旨に解すべきではなく、特定の個室にそれに特定した専用の車庫が物理的に付属設置されている場合、言いかえると特定の個室と特定の車庫との間に「車庫付個室」といつた、排他的な専用の利用関係の存する場合を指すものと解すべきである。 このことは法四条の六第一項がわざわざ「個個に」という文言を規定していることや、また総理府令二号、三号がいずれも「専用の」という文言を規定していて、物理的接続のみでなく、個室と車庫の排他的な専用の利用関係を予定していることとの均衡上からも明らかである。 (二) 本件建物は、その車庫の出入口がとびら等によつてしやへいできるものであることは認めるが、一階に車庫一四個、二階に個室一五室があり、一階と二階であるから当然にこれらが床を隔てて接続している訳であるが、車庫と個室の数は一致せず、しかも上下の重なり方は不整形であつて、特定の個室にそれに専用した車庫が物理的に付属しているわけではないし、特定の個室と特定の車庫との間に排他的な専用の利用関係があるわけでもない。一階の車庫を利用した客は、車庫の真上にある個室ないしその利用した車庫と対応する番号の個室を利用しなければならないわけではなく、その客の好みに合せて(各個室によつて浴室等設備構造が異なる)、二階の一五の個室のどれを利用してもかまわな にある個室ないしその利用した車庫と対応する番号の個室を利用しなければならないわけではなく、その客の好みに合せて(各個室によつて浴室等設備構造が異なる)、二階の一五の個室のどれを利用してもかまわないのである。 (三) さらに、本件建物につき防犯上の見地から述べると、利用客は一階の車庫から共同通路、階段上り口にあるフロントを経て二階共同通路を通つて各個室へ行くのであるが、右過程において従業員、他の利用客に接する機会は常に存するわけである。加えて、各車庫内の助手席に対応する壁に非常ベル、階段上り口に集音器、階段最上部に赤外線探知器が設置されており、従業員は利用客に異常があるか否かを常に確認できるようになつている。 第三証拠(省略)○ 理由一請求原因事実(一)項のうち旅館営業の許可年月日を除き、同(二)項のうちモーテル営業の廃止命令の年月日を除き、同(四)項のうち異議申立の年月日を除き、右各項記載事実は当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第三、第四号証および原告代表者尋問の結果によれば原告に対する旅館営業の許可年月日は昭和四八年七月一八日、モーテル営業の廃止命令のなされたのは同年一二月二一日、これに対する原告の異議申立年月日は同月二五日であつて、それぞれ被告主張の年月日であることが認められる。 二そこで、本件モーテル営業廃止命令処分(以下本件処分という)の適法性について検討する。 (一) まず、本件建物の設備、構造についてみるに、成立に争いのない乙第一一号証の一、二、原告本人尋問の結果、検証の結果によれば、次の事実が認められる。 (1) 原告が営業をなしているホテルエヤポートの本件処分時の建物の構造(間取り)は別紙図面のとおりであつて、一階に自動車の車庫が番号1ないし3、5ないし8、11ないし13、15ないし18まで計一四室あり、 原告が営業をなしているホテルエヤポートの本件処分時の建物の構造(間取り)は別紙図面のとおりであつて、一階に自動車の車庫が番号1ないし3、5ないし8、11ないし13、15ないし18まで計一四室あり、二階に客用の個室が番号1ないし3、5ないし8、9ないし13、15ないし18まで計一五室あり、一階中央に建物を縦に通つている共同通路があり、二階中央にも同様に建物を縦に通つている共同通路があるが、二階は右通路の中央が防火扉でしきられている。一階から二階へ上るには、同図面表示の東階段と西階段の二つの階段のいずれかを利用するが、東階段から上つた場合は番号5ないし8、15ないし18の八室の個室のいずれかに入ることができ、西階段から上つた場合は番号1ないし3、9、11ないし13の七室の個室のいずれかに入ることができる。西階段の下にフロントが存するが、窓ガラスが閉まつていてレースのカーテンがかけられている。 車庫と個室は右の如く一階と二階にわかれて存し床を隔てて接しているが、車庫は一四個、個室は一五室でその数は一致せず、その番号は別紙図面のとおり付されていて、番号が対応する車庫と個室で上下の関係で重なり合うものは(不整形な重なり方を含めて)一つもない。 車庫に自動車が入つた場合は、従業員室に存するコントロール盤によりこれを察知した従業員が出ていつて、車庫入口にある高さ約一・八メートルの不透明なビニールのカーテンを閉じ、地上約四〇センチメートルのところにある鎖をかけ施錠するようになつている。車庫から共同通路へ出るには利用客用のとびらと、利用客の自動車のためのシヤツター戸があり、右シヤツターの開閉は右コントロール盤により従業員が電動式に行なう。 (2) 本件建物の利用客は、まず入口の力ーテンの開いている車庫に自動車を入れ、利用客用のとびらを通つて一階共同通路に ー戸があり、右シヤツターの開閉は右コントロール盤により従業員が電動式に行なう。 (2) 本件建物の利用客は、まず入口の力ーテンの開いている車庫に自動車を入れ、利用客用のとびらを通つて一階共同通路に出て、東階段か西階段を上がり、二階共同通路を通つて、個室の上部に「サウナ」等その部屋の浴場設備の相違の表示が出ているのでこれを任意に選択し、かつ上部に「空室」とランプ表示のある個室に入室するのであるが、もし自分の上つた階段から通じている個室すべてが満室である場合は、一旦一階へ下りて別の階段より上りなおして二階共同通路を経て右同様「空室」のランプのついている個室に入室する。 利用客が帰る際は、個室より電話連絡して、個室出入口とびらの地上約一・四五メートルの位置に存する小窓越しに従業員と料金授受をなすか、あるいは一階フロントにおいてこれをなし、車庫に戻り、車庫の自動車用のシヤツター戸を前記のとおり従業員が開けるので、ここから自動車で共同通路を経て外部に出るようになつている。 (二) ところで、法四条の六第一項によれば、「個室に自動車の車庫が個個に接続する施設であつて総理府令で定めるものを設け当該施設を異性を同伴する客の宿泊(休憩を含む。)に利用させる営業(以下「モーテル営業」という。)は、モーテル営業が営まれることにより清浄な風俗環境が害されることを防止する必要のあるものとして都道府県の条例で定める地域においては、営むことができない。」旨の規定があり、成立に争いない乙第六号証によれば風俗営業等取締法施行条例(昭和三四年三月二六日熊本県条例第五号)三二条の二により本件建物の所在地はモーテル営業を営むことができない地域内であることが認められる。 そこで、法四条の六第一項にいう「個室に自動車の車庫が個個に接続する施設」とは如何なるものを指すかを検討するに により本件建物の所在地はモーテル営業を営むことができない地域内であることが認められる。 そこで、法四条の六第一項にいう「個室に自動車の車庫が個個に接続する施設」とは如何なるものを指すかを検討するに、成立に争いない乙第八、第九号証、証人Aの証言によれば、法四条の六は昭和四七年の法改正により加えられたものであるが、当時異性同伴客に宿泊あるいは休憩のための施設を提供するいわゆるモーテル営業が全国的に増加し、住宅地域、健全行楽地域等においてその清浄な風俗環境がそこなわれ、また右モーテル営業の施設が構造上秘匿性に富んでいるため性犯罪その他の犯罪が多発する傾向になつたことから右法改正が行なわれたもので、法四条の六第一項でモーテル営業を定義し、条例で定められた地域での同営業を禁止し、同第二項で既にモーテル営業を営んでいる者に対して改造等のため一年の猶予期間を与え、同第三項で第一項の規定に違反する者に対し公安委員会が営業の廃止を命じ得るものとしたものであること、右法律制定の際の衆参両院の地方行政委員会の審議によれば右規制の対象となるモーテル営業の施設とは車庫と個室が直結していて利用客の行動の秘匿性の極めて高いいわゆるワンルーム・ワンガレージ形式の施設が該当するものとされていたことが認められる。 このような法律制度の経過、立法趣旨、右条文が「個室に自動車の車庫が個個に接続する」と定めている文言ならびに右法律が引用する総理府令の文言、証人Aの証言により真正に成立したものと認められる乙第一〇号証(警察庁風俗係作成にかかる「総理府令で定めるモーテル営業の施設の図解」と題する書面)を綜合して考えると、「個室に自動車の車庫が個個に接続する施設」とは、いわゆるワンルーム・ワンガレージ形式のものもしくは社会通念上これと同視し得るもの、すなわち特定の車庫と特定の個室が 題する書面)を綜合して考えると、「個室に自動車の車庫が個個に接続する施設」とは、いわゆるワンルーム・ワンガレージ形式のものもしくは社会通念上これと同視し得るもの、すなわち特定の車庫と特定の個室が平面的、立体的に接着しているかもしくは専用の出入口、通路、階段、昇降機等により接続している構造設備であつて、利用客の行動の秘匿性の高いものを指すというべきである。 本件建物についてこれをみるに、一階の車庫に入つた利用客は二階個室の空室のものを選んで任意に入室することができるのであるから、特定の車庫と特定の個室が接着もしくは接続しているとはいえないし、利用客は車庫から個室に至るまでの間、一階二階の各共同通路を使用しかつフロントの前を通過するのであるから、従業員ないし他の利用客と面接する機会があるのであつて、利用客の行動の秘匿性が高いといえず、このような施設は法四条の六第一項にいう「個室に自動車の車庫が個個に接続する施設」には該当しないものである。 被告は、総理府令一号が独立の規定として設けられている趣旨は、共同の通路や階段が設けられている施設であつても、車庫の入口がしやへいされ、車庫内部の自動車の秘匿性、利用客の行動の秘匿性が解除されていないものは規制の対象とするものである旨主張するが、総理府令一号は法四条の六第一項による法律の委任を受けて規定されているものであるから、同法律の規定する範囲を超えて規制の対象となるべき施設を定めることはできないのであつて、当該施設が法四条の六第一項の「個室に自動車の車庫が個個に接続する施設」に該当しない以上、総理府令一号の定める要件に合致するからといつて、これをモ-テル営業の施設ということはできない。 なお、被告は、原告が車庫の番号を書き換えて、同一番号の車庫と個室が上下の関係で重なり合わないように修正した旨主張す 定める要件に合致するからといつて、これをモ-テル営業の施設ということはできない。 なお、被告は、原告が車庫の番号を書き換えて、同一番号の車庫と個室が上下の関係で重なり合わないように修正した旨主張するが、原告本人尋問の結果によれば、原告が車庫の番号を書き換えたのは本件建物完成(昭和四八年六月末頃)後約一ヶ月後のことであつて、原告が本件処分に関連した警察の指導を受けるようになる以前であることが認められ、特に右認定を覆すような証拠はないので、右書換の事実は本件処分と関係はない。 以上のとおりであるので、原告が営業をなしている本件建物がさらに総理府令一号に該当するか否かを判断するまでもなく、原告のなしている営業は法四条の六第一項が規制の対象としているモーテル営業ではないことになる。 三したがつて、被告が原告に対しモーテル営業の廃止を命じた本件処分は、その理由を欠くから違法であつて、取消を免れない。 よつて、本件処分の取消を求める原告の本訴請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官松田冨士也関野杜滋子西島幸夫)
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