主文 本件上告を棄却する。 当審における未決勾留日数中140日を第1審判決の懲役3年6月の刑に算入する。 理由 弁護人野島正,同藤田城治の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。 なお,所論にかんがみ,本件の罪数関係につき職権で判断する。 1 所論は,出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの。以下「出資法」という。)5条2項に定める利率を超える利息を受領する行為を反復した場合には全体が包括一罪となるとし,仮にこれが認められないとしても,上記各行為は貸金業の規制等に関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの。以下「貸金業法」という。)47条2号,11条1項,3条1項に違反して登録を受けないで貸金業を営む行為と刑法54条1項後段の牽連犯の関係にあるから,全体として一罪になるという。 しかし,出資法5条1項に違反する行為が反復累行された場合には,特段の事情のない限り,個々の契約又は受領ごとに一罪が成立し,併合罪として処断すべきところ(最高裁昭和52年(あ)第1271号同53年7月7日第三小法廷判決・刑集32巻5号1011頁),同条2項は,金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合の制限利率を同条1項の場合よりも低く定めたものにすぎないことが,各規定の文言や法定刑の対比によって明らかであり,【要旨1】同条2項に違反する行為が反復累行された場合も,特段の事情のない限り,個々の契約又は受領ごとに一罪が成立し,併合罪として処断すべきものと解される。 - 1 - 刑の対比によって明らかであり,【要旨1】同条2項に違反する行為が反復累行された場合も,特段の事情のない限り,個々の契約又は受領ごとに一罪が成立し,併合罪として処断すべきものと解される。 - 1 -また,貸金業法47条2号,11条1項は同法3条1項の登録を受けない者が「貸金業」を営むこと(以下「無登録貸金業」という。)を処罰するものであるところ,ここにいう「貸金業」とは,金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介で業として,すなわち反復継続の意思の下に行うものをいい(同法2条1項),【要旨2】無登録貸金業の行為と,業として金銭の貸付けを行う中で個別的に出資法5条2項に定める利率を超える利息を受領する行為(以下「制限超過利息の受領行為」という。)とは,社会的見解上1個のものと評価することができず,犯罪の通常の形態として,一方が他方の手段又は結果であるともいえないから,刑法54条1項の観念的競合又は牽連犯とはならず,併合罪として処断すべきものと解するのが相当である。 2 次に,所論は,架空人名義の銀行預金口座に振り込ませる方法で制限超過利息の受領行為をするとともに,犯罪収益等の取得につき事実を仮装した本件においては,制限超過利息の受領行為と,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織的犯罪処罰法」という。)10条1項に違反する行為とは,刑法54条1項前段の観念的競合となるという。 しかし,【要旨3】無登録貸金業の営業による貸付けの元金及び利息並びに出資法5条2項違反の利息の取得につき継続的に事実を仮装する意図で,架空人名義の銀行預金口座を入手し,同口座に上記元金及び利息を振り込ませることにより,上記架空人が犯罪収益等を取得したものであるように仮装したという本件の事実関係の下においては,組織的犯罪処罰法10条1項に違反する上記行 座を入手し,同口座に上記元金及び利息を振り込ませることにより,上記架空人が犯罪収益等を取得したものであるように仮装したという本件の事実関係の下においては,組織的犯罪処罰法10条1項に違反する上記行為と,個別的な制限超過利息の受領行為とは,社会的見解上1個のものと評価することができず,併合罪として処断すべきものと解するのが相当である。 以上と同旨の原判断は正当である。 よって,刑訴法414条,386条1項3号,刑法21条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。 - 2 -(裁判長裁判官泉徳治裁判官横尾和子裁判官甲斐中辰夫裁判官島田仁郎裁判官才口千晴)- 3 -
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