- 1 -平成25年3月21日判決言渡平成24年(行ケ)第10363号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成25年2月19日判決 原告株式会社D・F・Sliquor&entertainment 訴訟代理人弁護士三澤隆行 被告オーガスタナショナルインコーポレイテッド 訴訟代理人弁護士中村稔田中伸一郎相良由里子弁理士井滝裕敬 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の求めた判決特許庁が無効2012-890014号事件について平成24年9月14日にした審決を取り消す。 - 2 - 第2 事案の概要本件は,被告の請求に基づき原告の商標登録を無効とした審決の取消訴訟である。 争点は,本件商標が,他人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある商標(商標法4条1項15号)に該当するか,である。 1 特許庁における手続の経緯(1) 原告は,本件商標権者である。 【本件商標】 ・登録第5404022号・出願日:平成21年3月4日・登録査定日:平成22年5月25日・登録日:平成23年4月8日・指定役務第35類:ゴルフに関するフランチャイズ事業の運営及び管理第41類:インドアゴルフ練習場の提供,パターゴルフ場の提供,ゴルフ練習施設の提供,ゴルフに関する知識の教授及びこれに関する情報の提供,ゴルフのマナ ゴルフに関するフランチャイズ事業の運営及び管理第41類:インドアゴルフ練習場の提供,パターゴルフ場の提供,ゴルフ練習施設の提供,ゴルフに関する知識の教授及びこれに関する情報の提供,ゴルフのマナーの関する知識の教授及びこれに関する情報の提供,ゴルフの教授の為のセミナーの企画・運営又は開催,ゴルフを内容とするゲーム機械器具を備えた遊技場の提供に関する情報の提供及び助言,ゴルフ用具 - 3 -の貸与第43類:飲食物の提供(2) 被告は,本件商標の登録無効審判を請求した(無効2012-890014号)。特許庁は,平成24年9月14日,本件商標を無効とする旨の審決をし,その謄本は平成24年9月25日原告に送達された。 (3) 被告は,本件審判において,商標法4条1項15号,19号及び7号該当を主張したが,原告は被告の主張に対し何ら答弁しなかった。 2 審決の理由の要点「Augusta」又は「オーガスタ」の語は,本件商標の登録出願時及び査定時において,被告が経営するゴルフ場である「AugustaNationalGolfClub」(オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ)の略称として,また,被告の業務に係るゴルフ場に関連する役務を表すものとして,我が国の取引者・需要者の間で広く認識されるに至っていたものと認められる。 そして,本件商標は,その構成中,「Augusta」の欧文字部分が独立して着目され得るものであって,本件商標の指定役務と被告の業務に係る役務との関連性及び取引者,需要者の共通性等を勘案すれば,商標権者が本件商標をその指定役務に使用した場合,これに接する者に,該文字部分から,被告の業務に係る「AugustaNationalGolfClub」(オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ)を連 者が本件商標をその指定役務に使用した場合,これに接する者に,該文字部分から,被告の業務に係る「AugustaNationalGolfClub」(オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ)を連想させ,当該役務を請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように,役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものということができる。 したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に違反して登録されたものであるから,他の無効理由について論及するまでもなく,商標法46条1項1号により,その登録を無効とすべきものである。 - 4 -第3 原告主張の審決取消事由以下の理由により,本件商標が商標法4条1項15号に該当するとした審決の判断には誤りがある。 1 「Augusta」は周知著名商標ではない「Augusta」(オーガスタ)は,ゴルフの世界的大会であるMASTERSが開催される土地の名称として周知であった(著名であったとはいえない。)。しかし,以下に理由を述べるとおり,「Augusta」又は「オーガスタ」の語が,本件商標の登録出願時及び査定時において,米国ジョージア州オーガスタに所在し,被告が経営するゴルフ場であって,マスターズ・トーナメントが開催される「AugustaNationalGolfClub」(オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ)の略称として,また,このゴルフ場において提供される被告の業務にかかる役務を指すものとして,我が国のゴルフに関連する商品又は役務の取引者・需要者の間で広く認識されるに至っていた事実はない。 (1) 原告は,被告の名称及び被告経営に係るゴルフ場である「AugustaNationalGolfClub」の名称を知らなかっ 引者・需要者の間で広く認識されるに至っていた事実はない。 (1) 原告は,被告の名称及び被告経営に係るゴルフ場である「AugustaNationalGolfClub」の名称を知らなかった。原告は,「MASTERS」ゴルフ大会が開催される土地の名称である「Augusta」にちなんで本件商標の登録申請をした。 (2) 米国ジョージア州オーガスタには,被告経営のゴルフ場以外に土地の名称である「Augusta」の語を冠したゴルフ場がある。また,オーガスタには「Augusta」の語を冠したゴルフ場以外のゴルフ関連施設建物が多数あり,「Augusta」の語を付した新聞雑誌もある。 (3) 被告の経営する「AugustaNationalGolfClub」は後発のゴルフ場であるため,既設のゴルフ場との差別化のために名称に「National」を付加した名称にしたものである。「AugustaNationalGolfClub」の略称は,頭文字として「ANGC」となるのが通常であるが,本件商標には,頭文字も「National」の文字も使用されてい - 5 -ない。 (4) 株式会社の商号は,商標法4条1項8号の「他人の商号」に該当し,株式会社の商号から株式会社の文字を除いた部分は同号の「他人の名称の略称」に該当するところ,登録を受けようとする商標が他人たる株式会社の商号から株式会社なる文字を除いた略称を含むものである場合には,その商標は,当該略称が他人たる株式会社を表示するものとして著名であるときに限り登録を受けることができない(最高裁昭和57年11月12日判決・民集36巻11号2233頁)。そうすると,被告の商号「オーガスタナショナルインコーポレイテッド」及び被告経営のゴルフ場「AugustaNationa ない(最高裁昭和57年11月12日判決・民集36巻11号2233頁)。そうすると,被告の商号「オーガスタナショナルインコーポレイテッド」及び被告経営のゴルフ場「AugustaNationalGolfClub」の略称は「AugustaNational」である。「Augusta」は「AugustaNationalGolfClub」の略称ではない。 2 「混同のおそれ」はない(1) 上記のとおり,「Augusta」又は「オーガスタ」の語が,本件商標の登録出願時及び査定時において,被告が経営するゴルフ場である「AugustaNationalGolfClub」(オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ)の略称として,また,このゴルフ場において提供される被告の業務にかかる役務を指すものとして,我が国において周知著名な商標であったことはない。また,「混同のおそれ」は,被告が我が国で業務を営んでいる場合に適用されるところ,被告が,我が国において,「AugustaNationalGolfClub」の名称で業務を営んだ事実はない。よって,本件商標は,被告の業務にかかる役務と混同を生ずるおそれはない。 (2) 「Augusta」は,マスターズ・トーナメントが開催される土地の名称であるから,「指定役務等の『提供の場所』を普通に用いられる方法で表示する商標」(商標法26条1項3号),又は「指定役務等の『提供の場所』について慣用されている商標」(商標法26条1項4号)である。すなわち,本件商標の「Augu - 6 -sta」の文字は,ゴルフ大会であるマスターズ等の役務の「提供の場所」として普通に用いられ,又は慣用されている商標であるから,本件商標は被告の業務にかかる役務と混同を生ずるおそれはない。 sta」の文字は,ゴルフ大会であるマスターズ等の役務の「提供の場所」として普通に用いられ,又は慣用されている商標であるから,本件商標は被告の業務にかかる役務と混同を生ずるおそれはない。 3 「Augusta」の商標の効力は本件商標には及ばない上記のとおり,「Augusta」は,マスターズが開催される土地の名称であるから,「指定役務等の『提供の場所』を普通に用いられる方法で表示する商標」(商標法26条1項3号),又は「指定役務等の『提供の場所』について慣用されている商標」(商標法26条1項4号)に該当し,その効力は本件商標には及ばない。 第4 被告の主張 1 周知著名であることにつき(1) 「Augusta」(オーガスタ)は「AugustaNationalGolfClub」(オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ)の略称として周知著名であり,オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブがマスターズ・トーナメントを主催していることも周知著名である。 (2) 現在,世界において4大ゴルフ・トーナメントといわれるゴルフ・トーナメントがあり,「マスターズ・トーナメント」,「全米オープン」,「全英オープン」,「全米プロ選手権」がそれである。「マスターズ・トーナメント」はゴルフに関心を持つ人々の間で知らぬ者がいないほどに周知著名であり,「マスターズ・トーナメント」が「マスターズ」と略称されていることは,原告の主張からみて争いのない事実である。そして,4大ゴルフ・トーナメントのうち,マスターズ・トーナメントだけは毎年「AugustaNationalGolfClub(オーガスタナショナルゴルフクラブ)」で開催されるが,その他の3大ゴルフ・トーナメントは毎年違うゴルフ場で開催される。また,全米オープンが米国ゴルフ taNationalGolfClub(オーガスタナショナルゴルフクラブ)」で開催されるが,その他の3大ゴルフ・トーナメントは毎年違うゴルフ場で開催される。また,全米オープンが米国ゴルフ協会,全英オープンが英国ゴルフ協会,全米プロが全米ゴルフ協会という全国組織の主催 - 7 -であるのに対し,マスターズ・トーナメントはオーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブという一プライベートクラブ主催のトーナメントであり,マスターズ・トーナメントとオーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブは極めて強くて深い,不可分な関係を有している。 「マスターズ・トーナメント」を主催しているのが「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ」であることは周知著名であり,ゴルフないし「マスターズ・トーナメント」に関連して「オーガスタ」というときは必ず「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ」を意味しているのであって,「オーガスタ」は「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ」の略称として広く用いられている。この結果,「オーガスタ」といえば「マスターズ」,「マスターズ」といえば「オーガスタ」という,深く強い結びつきをもってこれら二つの言葉はゴルフに関心を持つ人々の間に浸透している。それ故,「マスターズ」が周知著名であることにより,「オーガスタ」がその主催者として周知著名であり,「オーガスタ」が「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ」の略称であることも周知著名である。ゴルフに関心を持つ人々の間では,「マスターズ・トーナメント」又は「マスターズ」といえば「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ」あるいは「オーガスタ」と結びついて想起され,ときには「マスターズ」と「オーガスタ」が同義語として使用されることさえある。 (3) 週刊誌等で,「オーガスタ・ナシ ショナル・ゴルフ・クラブ」あるいは「オーガスタ」と結びついて想起され,ときには「マスターズ」と「オーガスタ」が同義語として使用されることさえある。 (3) 週刊誌等で,「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ」が「オーガスタ」と略称されていることは,枚挙にいとまがない。ゴルフに関心を持つ人々は,これらの記事に触れ,「オーガスタ」を「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ」の略称として承知している。すなわち,「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ」が「オーガスタ」と略称されていることが周知著名である。 また,昭和47年(1972年)以来,マスターズ・トーナメントはTBSテレビによって我が国で毎年放送されているが,その際,マスターズ・トーナメントが「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ」で行われていることは繰り返しアナウンスされるし,「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ」というフルネームで - 8 -アナウンスすることは冗長なので,「オーガスタ」という略称で呼ぶことが普通である。 (4)① 原告が被告経営に係るゴルフ場の名称「AugustaNationalGolfClub」(オーガスタナショナルゴルフクラブ)を知っているかどうかは,商標法4条1項15号の成否とは関係がない。なお,原告がマスターズ・トーナメントがゴルフの世界的大会であることを知っており,インドアゴルフ練習場を提供する役務等に関し本件商標を登録出願し,ゴルフに関し強い関心を持っている以上,マスターズ・トーナメントをオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブが主催していることを知らなかったはずはない。 ② ジョージア州オーガスタに「AugutaCountryClub」(オーガスタ・カントリー・クラブ)と称するカントリー・クラブが1899 クラブが主催していることを知らなかったはずはない。 ② ジョージア州オーガスタに「AugutaCountryClub」(オーガスタ・カントリー・クラブ)と称するカントリー・クラブが1899年(明治32年)以来存在することは事実である。しかしながら,このクラブの会員はほとんどオーガスタ又はその近傍の在住者であって,このクラブの存在はオーガスタ在住およびその近傍に住居をもつ者以外には全くといってよいほど知られていない。 いわば,オーガスタという特定の地方のローカルなゴルフ・クラブである。それ故,ゴルフに関心を持つ人々は,日本人でも欧米人でも,「オーガスタ」といえば,必ず「マスターズ・トーナメント」を主催する「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ」を想起するのである。このような名称のカントリー・クラブが存在することと本件商標が商標法4条1項15号に該当するかどうかは関係ない。 また,オーガスタが土地の名称である以上,「オーガスタ」を冠したゴルフ関連施設,新聞,雑誌等が存在することも当然であって,それらの事実も本件商標が商標法4条1項15号に該当するかどうかとは関係ない。 ③ オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブは,ボビー・ジョーンズと共同の建設者であったクリフォード・ロバーツがその建設を計画した当初から,オーガスタにおいてゴルフ場建設を支持することが期待された人々は極めて少数であったばかりでなく,ボビー・ジョーンズの理想としてアメリカ全土から選りすぐった - 9 -人々を会員とするクラブを建設することにあったので,「National」という文字を加えることにしたものである。かりに「AugutaCountryClub」(オーガスタ・カントリー・クラブ)が存在していなくても,そのような名称ではいかにもローカ National」という文字を加えることにしたものである。かりに「AugutaCountryClub」(オーガスタ・カントリー・クラブ)が存在していなくても,そのような名称ではいかにもローカルなカントリー・クラブという印象しか与えられないので,このような名称を採用することはありえなかった。 また,「ANGC」という略称は,被告によってもメディア等によっても全く用いられていない。 ④ 原告が引用する裁判例は「株式会社」等法令の規定に沿って付されたものがある場合には,それらが付されたものが商標法4条1項8号所定の「他人の名称」であって,付されていないものは「略称」であるとしているのみで,「略称」がそれに限定されるとは判示していない。我が国のマスコミ等において,被告ないし被告と一体のゴルフ場が「Auguta」あるいは「オーガスタ」と言われている以上,「Auguta」および「オーガスタ」は被告の略称である。 2 「混同のおそれ」があることにつき(1) 「Augusta」ないし「オーガスタ」が「AugustaNationalGolfClub」(オーガスタナショナルゴルフクラブ)の略称として周知著名であることは,上記のとおりである。また,商標法4条1項15号の適用については,「他人」が我が国で事業を営んでいるかどうかは関係ない。本件商標は,被告の経営に係るゴルフ場の略称である「Augusta」ないし「オーガスタ」の名声に便乗しフリーライドし,あるいはあたかも被告と何らかの関係があるように見せかけることによって,被告の事業と広義の混合を生じさせるものである。 (2) 米国ジョージア州オーガスタに所在する企業や個人がその名称に所在地の名称を関することは土地の名称を普通に使用することであり,非難さ って,被告の事業と広義の混合を生じさせるものである。 (2) 米国ジョージア州オーガスタに所在する企業や個人がその名称に所在地の名称を関することは土地の名称を普通に使用することであり,非難されるべきことではない。しかし,「Augusta」ないし「オーガスタ」が「Augusta - 10 -NationalGolfClub」(オーガスタナショナルゴルフクラブ)の略称として周知著名であることは前記のとおりであり,このゴルフクラブの所在地にちなんで「Augusta」ないし「オーガスタ」の語を日本で営業するゴルフ関連の役務に使用するために採用したとしても,それは主観的な意図にすぎず,商標法4条1項15号の適用を免れる理由とはならない。 3 商標法26条1項3号,4号の適用につき日本で本件商標を指定役務に使用することは,役務の提供の場所がジョージア州オーガスタでない以上,本件商標に商標法26条1項3号が適用されることはない。 また,商標法26条1項4号は,指定役務について慣用されている商標について規定しているものであって,「Augusta」ないし「オーガスタ」は指定役務について慣用されている商標ではないから,本件商標に上記規定が適用されることはない。 第5 当裁判所の判断 1 本件商標は,前記のとおり,上部に月桂樹様の装飾図形の内側にゴルフスイングをする人物の上半身をシルエット状に描いた図形を表し,その下部に,「AugustaClub」の欧文字を太く大きく表し,さらにその下に「GOLFBAR・オーガスタクラブ」の文字を「AugustaClub」の欧文字に比べ小さく表した構成から成るものである。そして,本件商標は,その構成中にゴルフスイングをする人物を描いた図形が表示されていること,「Au スタクラブ」の文字を「AugustaClub」の欧文字に比べ小さく表した構成から成るものである。そして,本件商標は,その構成中にゴルフスイングをする人物を描いた図形が表示されていること,「AugustaClub」の欧文字部分が顕著に大きく表されていること,「Club」の語が「政治・社交・娯楽,あるいは学校の課外活動で,共通の目的によって集まった人々の団体。 また,その集合所。(会員制の)バー・娯楽場。」を意味すること(広辞苑第六版),「Club」の語が,上記の意味において,片仮名表記だけでなくアルファベット文字としてもよく知られた英語であって,自他役務の識別機能を有しないか,極め - 11 -て弱いものといえるものであることに照らすと,本件商標は,全体として,看者に対し,「AugustaClub」という名称のゴルフに関する団体又はバーないし娯楽場(ゴルフの関係ではゴルフ場)を想起させるものであり,また,上記のとおり,「AugustaClub」の欧文字部分は顕著に大きく表されていることに照らすと,本件商標は,そのうちの「Club」以外の「Augusta」の文字部分が独立して識別力を有するものである。 2 「AugustaNationalGolfClub」(オーガスタナショナル・ゴルフ・クラブ)が,マスターズ・トーナメントが開催されるゴルフ場であって,「Augusta」(オーガスタ)がオーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブの略称として著名であるかについて判断する。 (1) 証拠(各項目の末尾に掲記〔枝番を含む。〕)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 ① 被告は,米国法人であって,アメリカ合衆国ジョージア州オーガスタに所在するゴルフ場である「AugustaNationalGolf 弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 ① 被告は,米国法人であって,アメリカ合衆国ジョージア州オーガスタに所在するゴルフ場である「AugustaNationalGolfClub」(オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ)を経営している。(弁論の全趣旨)② 現在,世界の男子ゴルフ界においては,「マスターズ・トーナメント」,「全米オープン」,「全英オープン」,「全米プロ選手権」が4大ゴルフ・トーナメントとされている。マスターズ・トーナメントは,毎年,被告の主催により,オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブにおいて開催され,本件商標の出願及び査定当時,世界的なゴルフ大会として日本においても一般に広く知られている。 (乙2~5)③ オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブは,本件商標の出願日前までに,マスターズ・トーナメントの記事と相まって,あるいはそれ自体で,「週刊ゴルフダイジェスト」,「月刊ゴルフダイジェスト」,「ゴルフダイジェストチョイス」,「ALBATROSS-VIEW」といったゴルフ専門誌,「Number」などのスポーツ誌のほか,「週刊ダイヤモンド」,「週刊新潮」,「YomiuriWee - 12 -kly」,「週刊東洋経済」などの一般誌において,例えば,見出しや記事中の文章として,「今年のオーガスタの印象はとにかくグリーンが硬くて早いです。」(乙12の10),「改造されたオーガスタを回ったエルスが・・・とコメントするほどタフなセッティングになった今年のマスターズ」(乙12の14),「世界中のゴルファーが一度はプレーしてみたいと憧れるオーガスタ・ナショナルGC.・・・今から78年前に完成したマッケンジーの理想を重ねたコース。マッケンジーを知れば本当のオーガスタが見えてくる。」,「 中のゴルファーが一度はプレーしてみたいと憧れるオーガスタ・ナショナルGC.・・・今から78年前に完成したマッケンジーの理想を重ねたコース。マッケンジーを知れば本当のオーガスタが見えてくる。」,「オーガスタの完成を見ずに“理想のコース”と断言した遺作」(乙12の37),「クラブとボールの進歩。個人の技術の進歩。肉体の進化等が,オーガスタのコースレイアウトを易しくしていた。」(乙17の5),「オーガスタのグリーンは,テレビでは分からないけど,思いのほか小さく,しかも起伏が激しく波打ってさえいる。」(乙17の8),「一番観たいのはマスターズプレーしたいのはオーガスタ」(乙20の3),「オーガスタの改造は選手への新たな挑戦状」(乙20の6),「オーガスタは少ないメンバーで構成されるクラブだそうだ。」(乙20の13)のように,「オーガスタ」との表示をもって,継続して多数紹介されている。(乙12~20)。 また,マスターズ・トーナメントの模様は,昭和47年(1972年)から録画で,昭和51年(1976年)以降は衛星生中継で,日本において毎年テレビで放映されているところ,そのテレビ放送のパンフレットでは,トーナメントが開催されるオーガスタ・ナショナルゴルフ・クラブを「マスターズ,4月○日から○日までオーガスタにて開催」のように,「オーガスタ」の表示をもって継続的に紹介している。(乙10,21)④ さらに,上記雑誌には,「NEWオーガスタ出場全選手」(乙12の3),「マスターズを見よう! オーガスタTV観戦ガイド」,「マスターズのために調整してきた。・・・オーガスタで勝てるかって。もちろんそのつもりさ!」(乙12の30),「マスターズ特集オーガスタを制したパーシモン図鑑」(乙12の33),「オーガスタは,1978年以来9度目の挑戦 してきた。・・・オーガスタで勝てるかって。もちろんそのつもりさ!」(乙12の30),「マスターズ特集オーガスタを制したパーシモン図鑑」(乙12の33),「オーガスタは,1978年以来9度目の挑戦となる。」(乙17の3),「4月,と - 13 -いえばマスターズだ。・・・観客を味方につけないとオーガスタで勝つのは難しい。」(乙20の8)といった文章が掲載されているが,これらの文脈における「オーガスタ」は「マスターズ・トーナメント」を意味するものとして使用されている。 (2) 上記によれば,「オーガスタ」の語は,本件商標の登録出願時及び査定時において,マスターズ・トーナメントが開催される米国ジョージア州オーガスタ所在の被告が経営するゴルフ場である「オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ」の略称として,また,マスターズ・トーナメントなど,被告経営の上記ゴルフ場において提供される被告の業務に係る役務を表すものとして,日本のゴルフに関連する商品又は役務の取引者・需要者の間で広く認識されるに至っていたものと認めることができる。 原告は,「Augusta」(オーガスタ)はマスターズ・トーナメントが開催される土地の名称であって,オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブの略称として周知著名であったものではないなどと主張する。しかし,「Augusta」(オーガスタ)が土地の名称であること,ジョージア州オーガスタに被告経営のゴルフ場以外に「Augusta」の語を冠したゴルフ場や新聞が存在すること,日本国内及び海外に「Augusta」又は「オーガスタ」の語を含むゴルフ・トーナメント,不動産会社,飲食店,医療クリニック等が存在すること(甲1~42)は上記認定を左右するものではない。原告が援用する判例は,被告の役務が著名でない場合にその適用が問題となりうる ゴルフ・トーナメント,不動産会社,飲食店,医療クリニック等が存在すること(甲1~42)は上記認定を左右するものではない。原告が援用する判例は,被告の役務が著名でない場合にその適用が問題となりうるのであり,被告の役務が著名である以上,その適用は問題外である。 3 本件商標の指定役務と被告の業務に係る役務は,いずれもゴルフに関連する役務であるから,役務の内容,質,用途,提供の用に供する物等を共通にする関連性が高いものであって,かつ,その取引者,需要者を共通にするものと認めることができる。 - 14 -4(1) 前記認定によれば,「オーガスタ」及びその英語表記である「Augusta」の語は,本件商標の登録出願時及び査定時において,被告が経営するゴルフ場であるオーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブの略称として,また,被告の主催するマスターズ・トーナメントを意味するものとして,日本の取引者・需要者の間で広く認識されるに至っていたものと認められる。そして,本件商標は,全体として,「AugustaClub」という名称のゴルフに関する団体又はバーないし娯楽場(ゴルフ場)を想起させるものであって,その構成中,「Augusta」の欧文字部分が独立して着目され得るものであるところ,本件商標の指定役務と被告の業務に係る役務がいずれもゴルフに関するものであるという高い関連性及び取引者,需要者の共通性等に照らせば,商標権者が本件商標をその指定役務に使用した場合,これに接する者に,「Augusta」の文字部分から,被告が経営するオーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブを連想させ,当該役務を被告自身あるいは被告と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように,役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものということがで ゴルフ・クラブを連想させ,当該役務を被告自身あるいは被告と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように,役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものということができる。 (2) 原告は,「混同のおそれ」は,被告が我が国で業務を営んでいる場合に適用されるところ,被告が,我が国において,「AugustaNationalGolfClub」(オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ)の名称で業務を営んだ事実はないなどと主張する。しかし,商標権者が本件商標をその指定役務に使用した場合,被告の業務にかかる役務と混同を生じるおそれがあることは前記のとおりであって,被告が「AugustaNationalGolfClub」(オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ)の名称で日本において業務を営んでいないことは,上記判断を左右するものではない。 なお,原告は,「Augusta」は商標法26条1項3号及び4号に該当するから,「Augusta」の商標の効力は本件商標には及ばないと主張する。しかし,そもそも,審判請求人である被告は,「Augusta」(オーガスタ)が被告の商標であると主張しているものではなく,審決もそのような認定はしていない。原告 - 15 -の上記主張は前提において誤りがあり,採用することができない。 (3) したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に違反して登録されたものであって,これと同旨の審決の判断に誤りはない。 第6 結論以上より,原告の主張する取消事由は理由がない。 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官 主文 原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 理由 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官塩月秀平 裁判官真辺朋子 裁判官田邉
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