令和6年7月8日判決言渡令和6年(行ケ)第10011号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和6年6月5日判決 原告株式会社グリーンメディック 同訴訟代理人弁護士藤沼光太同訴訟代理人弁理士植田吉伸 被告特許庁長官同指定代理人白鳥幹周同豊 瀬 京太郎同須田亮一主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が不服2023-7242号事件について令和6年1月11日にした 審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経過等(当事者間に争いがない。)(1) 原告は、令和4年2月9日、「デジタル医療モール」の文字を標準文字で表してなる商標(本願商標)について登録出願した。その指定商品及び指 定役務は、第9類「電子応用機械器具及びその部品、コンピュータプログラ ム及びコンピュータソフトウェア、アプリケーションソフトウェア、記録された又はダウンロード可能なコンピュータソフトウェアプラットフォーム」、第35類「医師の紹介、市場調査又は分析、商品の販売に関する情報の提供、経営の診断又は経営に関する助言、事業の管理、コンピュータデータベースへの情報編集、消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提 供」及び第44類「医療に関する相談、医療に関する相談の媒介、医療に関する情報の提供、医療に関するコンサルティング、インターネットによる医療に関する情報の提供、調剤、服薬指導、健康診断、健 提 供」及び第44類「医療に関する相談、医療に関する相談の媒介、医療に関する情報の提供、医療に関するコンサルティング、インターネットによる医療に関する情報の提供、調剤、服薬指導、健康診断、健康管理、ダイエット・栄養摂取又は健康管理に関する情報の提供、栄養の指導、ダイエット・健康管理に関する助言・指導・診断」である。 (2) 原告は、令和5年2月1日付けで、本願商標が商標法3条1項6号に該当することを理由に拒絶査定を受けたため、同年5月2日、拒絶査定不服審判を請求した。 特許庁は、上記請求を不服2023-7242号事件として審理を行い、令和6年1月11日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(本件 審決)をし、その謄本は同月23日原告に送達された。 (3) 原告は、令和6年2月13日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨本願商標「デジタル医療モール」の文字は、商標の構成やその指定役務に係 る取引の実情を踏まえると、これを「デジタル医療」の語と「モール」の語からなるもの(「デジタル医療」の「モール」)と理解した場合には、「デジタル技術を利活用した医療機関が、商店街のごとく1つの場所に集合している場所(施設)」ほどの意味合いが想起できるものである。 また、同文字を「デジタル」の語と「医療モール」の語からなるもの(「デ ジタル」の「医療モール」)と理解した場合には、「デジタル技術を利活用した、 診療科が異なる複数の医療機関が1つの場所に集合しているもの」ほどの意味合いが想起できるものである。 そうすると、本願商標をその指定商品及び指定役務に使用したときは、それに接する需要者において、それが上述の2通り(「デジタル」の「医療モール」、及び、「デジタル医 味合いが想起できるものである。 そうすると、本願商標をその指定商品及び指定役務に使用したときは、それに接する需要者において、それが上述の2通り(「デジタル」の「医療モール」、及び、「デジタル医療」の「モール」)のうちのいずれと理解されるにしても、 上述のごとき場所(施設)ないしデジタル技術を用いたサービスに関する商品又は役務であることを表現するための語句であると理解、認識するにとどまり、自他商品役務の識別標識としては認識しないものというのが相当である。 したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標というべきであるから、商標法第3条第1 項第6号に該当する。 3 取消事由商標法3条1項6号該当性の判断の誤り第3 取消事由に関する当事者の主張 1 原告の主張 (1) 甲1の音楽マンション事件の判決(知財高裁平成28年(行ケ)第10191号・同29年5月17日判決)を踏まえると、本願商標も複数の意味合いを生じ、特定の役務等を表示するものではないから、商標法3条1項6号には該当しない。本願商標は、そもそも「デジタル医療」 と「モール」との言葉の結合であるのか、「デジタル」と「医療モール」との言葉の結合 であるのか、需要者によって認識が異なる言葉の結合からなる商標であり、音楽マンション事件裁判例と同様に、特定の観念を生じさせる商標ではない。 他にも、本願商標からは複数の意味が生じるのであり、特定の観念を生じさせるものではないから、本願商標には識別性が認められるべきである。 (2) 本願商標を「デジタル医療」と「モール」との言葉の結合と考えた場合、 本願商標に触れた需要者は、本願商標を造語と理解すると考えるのが自然で あり、本願商標の特定の きである。 (2) 本願商標を「デジタル医療」と「モール」との言葉の結合と考えた場合、 本願商標に触れた需要者は、本願商標を造語と理解すると考えるのが自然で あり、本願商標の特定の指定商品役務を示すものとはいえないから、本願商標に識別性が認められる。すなわち、甲17にあるとおり、「デジタル医療」という定義には統一的な見解はなく、直接的な病気を治すもののほかに、医療関係者のワークフローを改善するもの、患者やその家族の利便性を高めるもの、健康な人が病気になることを防ぐものがあるとされている。本願商標 を「デジタル医療」と「モール」であると理解したとしても、「デジタル医療」という言葉自体に複数の意味があることからすると、甲17に具体例として記載されたことに限定して解釈したとしても、本願商標からは、「離れた場所から医師が患者を診療できる遠隔医療システム」が利用できる大きな商店街のような場所、「蓄えられた大量の医療データを人工知能が解析し、 医師の診療を補助するソフトウェア」が販売されている大きな商店街、「スマートフォンやスマートウォッチから患者の健康状態や病気の兆候を予測するサービス」が利用できる大きな商店街、「音や光、映像によって脳に刺激を与えて精神状態を癒すデバイス」が販売されている大きな商店街などの様々な意味合いが生じるのであって、上記裁判例を考慮すると、本願商標か ら特定の観念は生じないというべきである。 (3) 仮に本願商標を「デジタル」と「医療モール」の結合と理解した場合に、「デジタル技術」(甲30)というものは様々に活用されており、一義的な技術ではない。具体的には、IoT(InternetofThings。家電のような日常生活で活用するものにセンサーを装着することでネッ トワークを通 うものは様々に活用されており、一義的な技術ではない。具体的には、IoT(InternetofThings。家電のような日常生活で活用するものにセンサーを装着することでネッ トワークを通じて様々な情報が得られる技術)、ビッグデータ、AI(人口知能)、ICT(InformationandCommunicationTechnology)などがデジタル技術を活用したものの代表例となっている。したがって、本願商標は、いずれの技術を利用した「診療科が異なる複数の医療機関が、商店街のごとく1つの建物内や場所に集合し ている場所(施設)」を意味するか明らかでない。それ故、本願商標からは 特定の観念が生じず、本願商標の特定の指定商品役務を示すものでないため、本願商標には識別性が認められる。 (4) 指定商品役務に関し、本願商標と同一の標章が使用されているか否かについては、正に当該指定商品役務に関する「取引の実情」であり、識別性の判断の際には考慮されるべき事項である。本願商標である「デジタル医療 モール」という語が、本願商標の指定商品役務に関し、他で一般的に使用されているという実例がないことから、本願商標は造語であり、指定商品役務との関係で識別性を有するものである。 2 被告の主張後記第4の1~3と同趣旨である。 第4 当裁判所の判断 1 原告は、本願商標は、複数の意味合いを生じ、特定の観念を生じさせるものではないから、識別性が認められるべきであると主張するので、まず、本願商標に接した需要者がどのような意味合いのものとして理解・認識するかについて検討する。 (1) 本願商標は、「デジタル医療モール」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、本願商標の構成中、「デジタル」の文字は「情報や命 いのものとして理解・認識するかについて検討する。 (1) 本願商標は、「デジタル医療モール」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、本願商標の構成中、「デジタル」の文字は「情報や命令を、0と1〔=スイッチオフとスイッチオン〕の信号の集まりで表現する<こと/もの>」、「コンピュータを(めいっぱい)使うようす」(以上、乙1)を、「医療」が「医師・看護師が患者の治療やせわをすること」(乙2)、 「モール」が「(屋根つきの)大きな商店街」など(乙3)を意味する平易な語であるから、本願商標の構成を元に観察すれば、「デジタル」の語と「医療モール」の語からなると理解することも、あるいは「デジタル医療」の語と「モール」の語からなると理解することも不可能ではない。 しかしながら、証拠(甲17、18、25~29、乙8~15)によれ ば、「デジタル」の文字は、他の語と結合した「デジタル〇〇」の態様で 「デジタル技術を用いた〇〇」ほどの意味合いで汎用的に広く用いられていることが認められ、デジタル技術を利活用した医療や治療に関して、「デジタルセラピー」(甲17)、「デジタル医療」(甲18、26~29、乙8~11、14、15)、「デジタル治療」(甲25、乙8、12、13)、「デジタルヘルス」(乙8)と称されている実情があることが認められる。 また、証拠(甲20~22、乙16~23)によれば、「医療モール」の文字は、「診療科が異なるいくつかのクリニックが1カ所に集まっている運営形態」(甲20)といった語として広く使用されていることも認められる。 (2) 以上のような実情を踏まえると、本願商標は、「デジタル」技術を利活 用して行われる仮想的な「医療モール」、すなわち「様々な医療機関に係るサービスを、デジタル技術を とも認められる。 (2) 以上のような実情を踏まえると、本願商標は、「デジタル」技術を利活 用して行われる仮想的な「医療モール」、すなわち「様々な医療機関に係るサービスを、デジタル技術を用いて構築した1 か所のプラットフォーム上で提供又は利用できる仕組み」といった意味合いを容易に理解・認識させるものと認められる。そして、本願商標に接し、上記意味合いを理解・認識した需要者は、本願商標について上記の仕組みの下で提供される商品又は役務で あることを表現するための語句であると理解、認識するにとどまり、自他商品役務の識別標識としては認識しないといえる。 (3) これに対し、原告は、本願商標について、「デジタル医療」 と「モール」との言葉の結合であるのか、「デジタル」と「医療モール」との言葉の結合であるのか、需要者によって認識が異なる言葉の結合からなる商標であると する主張する。 しかし、上記(1)のとおり、「デジタル〇〇」の語が、「デジタル技術を用いた〇〇」という意味で、汎用的に広く用いられているのに対し、「〇〇モール」の語については、ショッピングモール、医療モールといった定型的な用法を超えて広範囲な用い方をされているとまでは認められない。そうす ると、本願商標に接した需要者の一般的な理解としては、上記(2)のとおり、 「デジタル」技術を利活用して行われる仮想的な「医療モール」という意味合いで認識するのが自然であると解され、これと異なる前提に立つ原告の上記主張は採用できない。なお、原告が引用する知財高裁の裁判例は、本件と事案を異にし適切でない。 2 次に、原告は、仮に本願商標を「デジタル」と「医療モール」の結合と理 解し、上記1(2)における意味合いが想起されるとしても、「デジタル技術」というものは 本件と事案を異にし適切でない。 2 次に、原告は、仮に本願商標を「デジタル」と「医療モール」の結合と理 解し、上記1(2)における意味合いが想起されるとしても、「デジタル技術」というものは様々に活用されており、一義的な技術ではなく、本願商標もいずれの技術を利用したのか明らかでないから、本願商標からは特定の観念が生じないと主張する。 この点、デジタル技術を用いて提供されるものには原告が指摘するようなI oT、ビッグデータ、AI、ICTなどの様々な技術が考えられるが、デジタル技術が様々に活用されているからといって、上記1(2)の認定判断が左右されるものではない。原告の上記主張は、本願商標を造語と理解すべき根拠となるものではない。 3 さらに原告は、本願商標である「デジタル医療モール」という語が、本願 商標の指定商品役務に関し、他で一般的に使用されているという実例がないことから、本願商標は造語であり、指定商品役務との関係で識別性を有すると主張する。 しかし、商標法3条1項6号は、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標につき、商標登録を受けることがで きないとしたものであり、同号の適用において当該商標が現実に使用されていることを要求するものではない。本願商標に関して他の使用例がないことは、上記2の認定判断を妨げるものではない。 4 以上によれば、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標であるといえ、商標法3条1項6号 に該当する。 結局、原告主張の取消事由は採用できず、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官 主文 結局、原告主張の取消事由は採用できず、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 理由 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官 宮坂昌利 裁判官 本吉弘行 裁判官 岩井直幸
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