令和7年3月13日宣告令和6年(わ)第3号、第6号、第11号、第17号 主文 被告人を懲役10年に処する。 未決勾留日数中280日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、A株式会社の経理責任者として経理業務全般を統括し、同社名義の預金管理等の業務に従事していたものであるが、長男である分離前相被告人Bと共謀 の上、長野県駒ヶ根市(以下省略)株式会社C銀行D支店に開設されたA株式会社名義の普通預金口座(口座番号▲▲▲▲▲▲)の預金を被告人が同社のために業務上預り保管中、別表(別表省略、以下同じ)第1ないし第7記載のとおり合計8回にわたり、別表「日時」欄記載の年月日時刻に、同支店において、別表「目的」欄記載の目的で、同普通預金口座から別表「振替先口座」欄記載の口座に、別表「金 額」欄記載の金員(合計9億0490万3115円)を振替入金し、もって横領したものである。 (法令の適用) 1 罰条判示各所為それぞれ刑法60条、253条(判示第6の所為について は包括して適用) 2 併合罪の処理刑法45条前段、47条本文、10条(犯情の最も重い判示第6の罪の刑に法定の加重) 3 未決勾留日数算入刑法21条(量刑の理由) 1 被告人は、経理責任者として被害会社の預金を管理する重要な地位にありな がら、数年間にわたって被害会社から9億円を超える巨額な金銭を横領した。この間、被告人は、総勘定元帳に虚偽の記載をするなどして巧妙に犯行の発覚を免れていた。このように、被害会社に与えた被害が甚大であることや、被害会社 って被害会社から9億円を超える巨額な金銭を横領した。この間、被告人は、総勘定元帳に虚偽の記載をするなどして巧妙に犯行の発覚を免れていた。このように、被害会社に与えた被害が甚大であることや、被害会社との間の委託信任関係が著しく破壊されたことは、量刑判断において最も重視されるべきである。 確かに、被告人は、本件犯行により経済的な利得を全く得ておらず、利欲的な態度は認められない。しかしながら、被告人は、長男からの度重なる懇請を毅然と拒絶すべき職責を有していながら、唯々諾々と長男の要求に応じ、被害会社の経理責任者であるという本件犯行の実現に不可欠な地位にあったことを利用して、長男に不正な利益を得させた。したがって、被告人は、長男に主導されながらも、長男と 共に重要な役割を果たしたというべきである。 弁護人は、被告人が長男に金銭を貸し付けるに当たって、長男から騙されて返済を受けることができると誤信しており、被害者としての一面があると主張する。しかしながら、そもそも被告人には被害会社の金銭を貸し付ける権限がなかったことを措いても、被告人は上場企業の経理責任者でもあったのであるから、財務状況を 把握するために確認すべき客観的な資料を熟知していたと考えられるにもかかわらず、長男からそのような資料を何ら徴求していない。そのため、被告人が長男から騙されたと見ることはできず、唯々諾々と長男の要求に応じたとの評価は揺らがない。 このように、本件の犯情は相当悪く、被告人に対しては強い非難が妥当するとい うべきであり、被告人の刑事責任は重い。本件では、処断刑の範囲の中でも重い部類に位置付けられるものとして量刑すべきであり、長期の実刑はやむを得ない。 2 このような量刑の幅を踏まえた上で、被害額と比較して極めて少額ではあるものの長男に 本件では、処断刑の範囲の中でも重い部類に位置付けられるものとして量刑すべきであり、長期の実刑はやむを得ない。 2 このような量刑の幅を踏まえた上で、被害額と比較して極めて少額ではあるものの長男による被害の一部の回復がされたこと、被告人の財産が仮差押えされており多少の被害回復が期待できること、被害会社から懲戒解雇されたこと、前科前 歴がないことなどの被告人に有利な事情のほか、罪体の重要部分について不合理な 弁解をして真摯な謝罪や反省の態度を示していないことといった被告人に不利な事情を、一般情状として若干考慮すべきである。 以上の検討を踏まえ、主文のとおり、刑を定めた。 (求刑・懲役13年)令和7年3月13日 長野地方裁判所伊那支部 裁判官五味亮一
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