令和3(ワ)11560 営業秘密使用差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年4月17日 大阪地方裁判所
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判決文本文24,917 文字)

1 令和5年4月17日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官令和3年(ワ)第11560号 営業秘密使用差止等請求事件口頭弁論終結日 令和5年2月14日判 決 5原告株式会社ポイント 同訴訟代理人弁護士佐藤康行同新留治同藏野時光10 被告GTキャピタルファンド株式会社 (以下「被告会社」という。) 15被告P1 被告P2 20被告ら訴訟代理人弁護士古川拓同片田真志同川村遼平同青木克也同三上侑貴25主 文2 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由第1 請求1 被告らは、自ら又は第三者をして、別紙1記載の者に対し、面会を求め、電話5をし、又は郵便物を送付するなどして、営業行為を行ってはならない。 2 被告らは、別紙1記載の住所及び氏名のデータを記録したコンピュータのファイル等の電磁的記録及び印字した紙媒体を廃棄せよ。 3 被告らは、自ら又は第三者をして、原告の自動外貨両替機及びこれの設置場所について契約関係にあり、又は今後契約関係に至る可能性のある相手方に対し、10次の告知又は流布をしてはならない。 (1) 「原告は、家賃も払えないし、機械の仕入れもできない」という内容の告知又は流布(2) 前号の他、原告には自動外貨両替機の設置場所に係る使用料を支払うことができないという債務不履行事由が存在するとの内容の告知又は流布15(3) 第1号の他、原告が顧客に対して自動外貨両替機を販売することができない又は販売する能力がないという内容の告知又は流布4 被告会社は、(1) 別紙2送付先企 内容の告知又は流布15(3) 第1号の他、原告が顧客に対して自動外貨両替機を販売することができない又は販売する能力がないという内容の告知又は流布4 被告会社は、(1) 別紙2送付先企業目録記載の企業に対し、別紙3(1)訂正文①記載の訂正文を、20(2) 綜合警備保障株式会社に対し、別紙3(2)訂正文②記載の訂正文を、それぞれ本判決確定の日から10日以内に送付せよ。 5 被告会社及び被告P1は、原告に対し、連帯して、440万円及びこれに対する令和4年6月4日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 6 被告らは、原告に対し、連帯して、923万3760円及びこれに対する令和254年6月4日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 3 7 被告会社は、(1) 別紙4記載のロゴ(以下「本件ロゴ」という。)及び別紙5記載の図面(以下「本件図面」という。)を、別紙6記載のURL のウェブページから全て削除せよ。 (2) 大阪市〈以下略〉又は被告会社が自動外貨両替事業に係る営業資料の保管5を委託した第三者が保管する自動外貨両替事業に係る幟、ポスター等一切の営業上の備品、広告宣伝物から、本件ロゴ及び本件図面を除去せよ。 (3) 大阪市〈以下略〉又は被告会社が自動外貨両替事業に係る営業資料の保管を委託した第三者が保管する別紙7記載の冊子(以下「本件冊子」という。)及び別紙8記載のチラシ(以下「本件チラシ」という。)を廃棄せよ。 108 被告らは、(1) 本件ロゴを、自己又は第三者をして管理するウェブページにて、自動公衆送信又は送信可能の状態においてはならない。 (2) 自己又は第三者をして、本件ロゴ及び本件図面を掲載した自動外貨両替事業に係る資料を作成し、又は譲渡してはならない。 ウェブページにて、自動公衆送信又は送信可能の状態においてはならない。 (2) 自己又は第三者をして、本件ロゴ及び本件図面を掲載した自動外貨両替事業に係る資料を作成し、又は譲渡してはならない。 15(3) 自己又は第三者をして、本件冊子及び本件チラシを作成し又は第三者に対して譲渡してはならない。 (第5項及び第6項に係る予備的請求)5の2 被告会社及び被告P1は、原告に対し、連帯して、472万1280円及びこれに対する令和4年6月4日から支払済みまで年3%の割合による金員を20支払え。 6の2 被告らは、原告に対し、連帯して、880万円及びこれに対する令和4年6月4日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要1 本件は、原告が、原告の元取締役である被告P1、原告の元従業員である被告25P2及び被告P1が代表取締役を務める被告会社に対し、以下の各請求をする事4 案である。 (1) 被告P2が、令和3年6月29日、同月30日及び同年8月5日、被告P1の指示の下、原告の契約する後記本件クラウドに記録されていた営業秘密である取引先及び取引内容に係る情報(以下「本件情報1」という。)を窃取して被告会社に開示したことが不正競争防止法2条1項4号に、被告会社において本5件情報1が窃取されたものであることを知って取得し、使用したことが同項5号に、それぞれ該当すると主張して、予備的に、被告P2及び被告P1が原告から示された本件情報1を、原告に損害を加える目的で被告会社に開示したことが同項7号に、被告会社において本件情報1の開示が営業秘密不正開示行為に該当することを知って取得し、使用したことが同項8号に、それぞれ該当す10ると主張して、被告らに対し、同法3条1項に基づき、本件情報1のうち、別 において本件情報1の開示が営業秘密不正開示行為に該当することを知って取得し、使用したことが同項8号に、それぞれ該当す10ると主張して、被告らに対し、同法3条1項に基づき、本件情報1のうち、別紙1記載の者に対する営業行為の差止め並びに同条2項に基づき、本件情報1のうち、別紙1記載の者の住所及び氏名を記録した電磁的記録及び紙媒体の廃棄請求(2) 被告P1及び被告P2が、令和3年9月15日、同月16日及び同月1715日に開催された複数の展示会(以下総称して「本件展示会」という。)に出展した原告のブースを訪れた見込顧客に係る情報(以下「本件情報2」という。)を原告に報告せず、被告会社に開示したことが不正競争防止法2条1項4号に、被告会社において本件情報2が不正取得されたものであることを知って取得し、使用したことが同項5号にそれぞれ該当すると主張して、予備的に、被告20P2及び被告P1が原告から示された本件情報2を、原告に損害を加える目的で被告会社に開示したことが同項7号に、被告会社において本件情報2の開示が営業秘密不正開示行為に該当することを知って取得し、使用したことが同項8号に、それぞれ該当すると主張して、被告らに対し、同法3条1項に基づき、本件情報2のうち、別紙1記載の者に対する営業行為の差止め並びに同条2項25に基づき、本件情報2のうち、別紙1記載の者の住所及び氏名を記録した電磁5 的記録及び紙媒体の廃棄請求(3) 被告P2が被告会社の従業員として、原告の取引先に対して、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知又は流布したことが不正競争防止法2条1項21号に該当すると主張し、被告らにおいて同様の行為を行うおそれがあると主張して、被告らに対し、同法3条1項に基づき、当該事実の告知又は流5布の差止め並び は流布したことが不正競争防止法2条1項21号に該当すると主張し、被告らにおいて同様の行為を行うおそれがあると主張して、被告らに対し、同法3条1項に基づき、当該事実の告知又は流5布の差止め並びに被告会社の行為により原告の営業上の信用が害されたと主張して、被告会社に対し、同法14条に基づき、別紙2記載の企業及び綜合警備保障株式会社(以下「ALSOK」という。)に対する訂正文の送付請求(4) 被告会社において原告が著作権を有する本件ロゴを印刷し、本件冊子、本件図面及び本件チラシを作成した行為が原告の複製権を侵害し、本件ロゴを貼10付した自動外貨両替機を販売し、本件冊子、本件図面及び本件チラシを交付したことが原告の譲渡権を侵害し、本件ロゴを貼付した外貨自動両替機及び本件図面を被告会社のウェブページに掲載したことが原告の自動公衆送信権及び送信可能化権を侵害すると主張し、被告らにおいて同様の行為を行うおそれがあると主張して、被告らに対し、著作権法112条1項に基づき、本件ロゴの15自動公衆送信又は送信可能化の差止め、本件ロゴ及び本件図面を掲載した資料の作成又は譲渡の差止め、本件冊子及び本件チラシの作成又は譲渡の差止め並びに被告会社に対し、同条2項に基づき、ウェブページからの本件ロゴ及び本件図面の削除、自動外貨両替事業に係る物品からの本件ロゴ及び本件図面の除去及び本件冊子、本件チラシの廃棄請求20(5) 被告P1が、原告の取締役在任中であった令和3年8月3日までに、大善倉庫株式会社(以下「大善倉庫」という。)との間で、被告会社の代表者として競業取引(会社法365条1項、356条1項1号)を行い、又は契約の申込み、誘引をしたと主張し、被告会社において被告P1と主観的認識を共通し、共同して取引を行ったことにより、共同不法行為責任 として競業取引(会社法365条1項、356条1項1号)を行い、又は契約の申込み、誘引をしたと主張し、被告会社において被告P1と主観的認識を共通し、共同して取引を行ったことにより、共同不法行為責任を負うと主張して、被告25P1及び被告会社に対し、会社法423条1項に基づき、連帯して、損害額86 800万円の一部請求として440万円の損害賠償及びこれに対する請求の拡張申立書送達の日の翌日(令和4年6月4日)から支払済みまでの遅延損害金の支払請求(6) 被告P1及び被告P2が本件情報2を窃取し、被告会社が本件情報2を取得し、使用したことが一連の行為であって、被告らが共同して不正競争行為に5基づく損害賠償責任を負うと主張して、被告らに対し、不正競争防止法4条に基づき、連帯して、得べかりし利益880万円及び調査費用相当額43万3760円の損害賠償並びにこれに対する請求の拡張申立書送達の日の翌日(令和4年6月4日)から支払済みまでの遅延損害金の支払請求(7) 前記(6)の選択的請求として、被告P2が被告会社の従業員として、原告の10取引先に対して、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知又は流布したことにつき、被告らが共同して不正競争行為に基づく損害賠償責任を負うと主張して、被告らに対し、不正競争防止法4条に基づき、連帯して、調査費用相当額43万3760円の損害賠償及びこれに対する請求の拡張申立書送達の日の翌日(令和4年6月4日)から支払済みまでの遅延損害金の支払請求15(8) 前記(6)及び(7)の予備的請求として、被告P1が、原告の取締役在任中に、本件展示会の原告のブースを訪れた顧客に対し被告会社との外貨両替機の売買契約等を締結するよう持ち掛けたことが競業取引(会社法356条1項1号)に当たると主張し、被告 告P1が、原告の取締役在任中に、本件展示会の原告のブースを訪れた顧客に対し被告会社との外貨両替機の売買契約等を締結するよう持ち掛けたことが競業取引(会社法356条1項1号)に当たると主張し、被告会社において被告P1と主観的認識を共通し、共同して取引を行ったことにより、共同不法行為責任を負うと主張して、被告P1及20び被告会社に対し、会社法423条1項に基づき、連帯して、得べかりし利益880万円及び調査費用相当額32万1280円の損害賠償並びにこれに対する請求の拡張申立書送達の日の翌日(令和4年6月4日)から支払済みまでの遅延損害金の支払請求2 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実)25(1) 当事者7 ア 原告原告は、外貨両替事業等を業とする取締役会設置会社である株式会社である。 イ 被告ら被告会社は、令和3年7月15日に設立された外貨両替事業等を業とする5株式会社である。 被告P1は、令和2年8月20日から令和3年9月24日まで、原告の取締役であった者であり、同年7月15日以降、被告会社の代表取締役である(甲1の1、甲2)。 被告P2は、原告を同年9月17日に退職した元従業員である。 10被告P1及び被告P2は、原告在職中、営業部門に属しており、被告P1は、営業部門全般を統括する立場にあった。 (2) 原告の事業内容原告の自動外貨両替事業の内容は、以下のとおりである(甲7、8の1、2、甲32)。 15原告は、訪日外国人向けに外貨を日本円に両替する機能を有する自動外貨両替機(以下「両替機」という。)を保有して手数料収入を得ようとする者(以下「オーナー」という。)及び両替機を設置する場所(以下「設置場所」という。)を提供して賃料 円に両替する機能を有する自動外貨両替機(以下「両替機」という。)を保有して手数料収入を得ようとする者(以下「オーナー」という。)及び両替機を設置する場所(以下「設置場所」という。)を提供して賃料収入や集客効果を得ようとする者(以下「設置場所オーナー」という。)を募り、オーナーに両替機を販売するとともに、設置場所オーナーと20の間で設置場所の賃貸借契約を締結する。 また、原告は、オーナーに販売する両替機を株式会社暁電機製作所(以下「暁電機」という。)から仕入れており、オーナーに両替機を販売するに際して、オーナーから両替機の管理運営を受託しているが、これをALSOKに再委託しており、現実に両替機を保守管理し、現金を輸送、充填、回収しているのはA25LSOKである。 8 原告は、オーナーから初期費用として、両替機の機械代金及び両替準備資金(両替機に充填するための預託金)並びに毎月の業務委託費及び設置場所の賃料を受領し、暁電機、ALSOK及び設置場所オーナーに必要経費を支払う一方、ALSOKから両替手数料に係る収益を受領し、オーナーに支払う。 3 争点5(1) 本件情報1及び2の秘密管理性(争点1)(2) 本件情報1及び2に係る不正競争該当性(争点2)(3) 不正競争防止法2条1項21号該当行為の有無(争点3)(4) 競業避止義務違反の有無(争点4)(5) 損害の発生及び額(争点5)10(6) 著作権侵害のおそれ及び予防の必要性の有無(争点6)なお、争点1に関し、本件情報1及び2の営業秘密該当性のうち、有用性及び非公知性については、争いがない。 第3 争点に関する当事者の主張1 争点1(本件情報1及び2の秘密管理性)について15【原告の主張】(1) 本件情報1及び 該当性のうち、有用性及び非公知性については、争いがない。 第3 争点に関する当事者の主張1 争点1(本件情報1及び2の秘密管理性)について15【原告の主張】(1) 本件情報1及び2の内容本件情報1及び2は、①別紙1記載の者と原告が取引関係にある又は取引関係に至ろうとしている取引先であるという事実そのものに関する情報及び②別紙1記載の者との契約期間、別紙1記載のオーナーとの間の自動外貨両替機20売買基本契約及び個別契約における両替機の売買代金、自動外貨両替機管理運営委託契約における委託費、設置場所利用契約における使用料(地代)、設置場所オーナーとの間の設置承諾契約における使用料(地代)、オーナーと設置場所との紐づけ、設置場所オーナーと設置場所に関する情報からなる。 (2) 秘密管理性25原告は、事業を遂行するために、オーナー、設置場所及び設置場所オーナー9 に関する一覧表を始めとして、契約書のデータ、チラシや営業資料のデータを作成し、インターネット上のクラウドサーバー(以下「本件クラウド」という。)に保存していた。本件情報1は、全て本件クラウドに保存されたファイル(データ)に記録されている。本件クラウドには、原告の従業員のみがアクセス許可を与えられ、従業員が退職した場合はアクセス権限を失う。なお、原告は従5業員が5名から10名程度の小規模な会社であり、全員が自動外貨両替事業に従事しており、営業資料にアクセスする必要があったため、全員がアクセス権限を有していた。 本件クラウド内で管理されている資料は、いずれも業務以外の目的でダウンロードすることが禁止されていた。 10原告においては、情報の取扱い手順等を記載した情報管理に関する通信・運用管理規程が存在しており、従業員に確認を る資料は、いずれも業務以外の目的でダウンロードすることが禁止されていた。 10原告においては、情報の取扱い手順等を記載した情報管理に関する通信・運用管理規程が存在しており、従業員に確認を求めていた。 原告の従業員は、入社時に誓約書を作成しており、機密保持義務の存在を認識しており、本件情報1は、個人情報も含まれる資料であるから、他社に開示されるような情報ではないことが明らかであり、このような情報が原告の「機15密」に該当することは社会人であれば当然認識する事情である。 原告は、被告P1及び被告P2が退職する際に、誓約書を締結するよう求めたが拒絶された。このことは、原告が従業員退社時に情報の管理を行っていることを示している。 本件情報2は、原告に報告されることが予定された情報であり、報告されれ20ば、本件クラウド上で管理される本件情報1に加えられるものであるから、同様に秘密管理性を有する。 【被告らの主張】原告は、本件情報1を含む顧客や取引先に関するデータを本件クラウド上に保存していたにすぎず、アクセス権限がフォルダやデータ内容ごとに付与されてお25らず、パスワード設定もされておらず、全従業員が本件クラウド上の全データに10 アクセス可能であった。 原告においては、一般情報と営業秘密を管理上区分したり、階層制限に基づくアクセス制御をしたりすることなどは全く行われておらず、本件情報1及び2の秘密管理性は認められず、営業秘密に該当しない。 この程度で秘密管理性が認められるならば、社内データをクラウド管理してい5る全ての会社において、そのクラウド内のあらゆるデータに秘密管理性を認めるに等しい。 2 争点2(本件情報1及び2に係る不正競争該当性)について【原告の主張】(1) クラウド管理してい5る全ての会社において、そのクラウド内のあらゆるデータに秘密管理性を認めるに等しい。 2 争点2(本件情報1及び2に係る不正競争該当性)について【原告の主張】(1) 被告らの行為10ア 被告P2は、被告P1の指示を受けて、被告会社の営業に利用する目的で、令和3年6月29日、同月30日及び同年8月5日、本件クラウドから、本件情報1を含む約1400にも上る営業資料のファイル(データ)をダウンロードした。 イ 被告P1及び被告P2は、本件展示会で原告のブースを訪れた見込顧客か15ら得た情報のうち、本件情報2を原告に報告しなかった。 ウ 被告会社は、令和3年8月3日までに、大善倉庫に両替機を売却した。被告P1は、同年9月8日、暁電機に両替機を被告会社に販売するよう働きかけた。被告P2は、同月22日、ALSOKに被告会社との機械警備に関する契約の締結を持ち掛けた。被告P2は、同月27日及び同年10月11日、20設置場所オーナー3社に対し、原告との契約を解消し、被告会社と契約するよう持ち掛けた。被告P1又は被告P2は、同月8日頃、設置場所オーナー1社に対し、原告との契約を解消し、被告会社と契約するよう持ち掛けた。 被告会社は、同年11月11日、展示会において、原告が用いていた本件ロゴや本件チラシを用いて被告会社の事業を紹介した。 25エ 被告P1は、令和3年9月16日、本件展示会で原告のブースを訪れた見11 込顧客に対し、被告会社との契約締結を勧誘するメールを送信した。被告P2は、同月17日、本件展示会で原告のブースを訪れた見込顧客に対し、被告会社との契約締結を勧誘するメールを送信した。 (2) 不正競争該当性被告らの行為のうち、前記ア及びイは、営業秘密の窃取であり、不正競争 、本件展示会で原告のブースを訪れた見込顧客に対し、被告会社との契約締結を勧誘するメールを送信した。 (2) 不正競争該当性被告らの行為のうち、前記ア及びイは、営業秘密の窃取であり、不正競争防5止法2条1項4号に該当する。 被告らの行為のうち、前記ウ及びエは、いずれも本件情報1及び2を用いなければ行うことができない行為であり、被告会社の代表者は被告P1であって、当然に本件情報1及び2が窃取されたものであることを知って取得したといえるから、同項5号に該当する。 10仮に、本件情報1及び2が、窃取されたものといえないとしても、原告から示された情報に該当し、被告P1及び被告P2は、原告の顧客を奪取するという原告に損害を加える目的で被告会社に開示したといえるから、同項7号に該当する。また、その場合、被告会社は、本件情報1及び2が営業秘密不正開示行為に当たることを知って取得し、使用したといえるから、同項8号に該当す15る。 【被告らの主張】(1) 被告らの行為ア 被告P2が本件クラウドからデータをダウンロードしたのは、当時、原告が多数の顧客とトラブルになり、返金を求められたり、賃料を滞納して督促20を受けたりして、原告の事業が崩壊状態になっており、従業員が次々に辞めていく状態であったので、事務員が誰もいなくなりリモートで仕事をする必要があったためであり、被告P1の指示を受けたり、被告会社の営業に利用する目的であったりしたわけではない。 また、本件情報1は、被告P1や被告P2が営業を担当していたことから、25被告P2が本件情報1に係るデータを本件クラウドからダウンロードする12 以前から、被告P1及び被告P2が保有していたものであって、ダウンロードによって取得したのではない。 イ 被告P 5被告P2が本件情報1に係るデータを本件クラウドからダウンロードする12 以前から、被告P1及び被告P2が保有していたものであって、ダウンロードによって取得したのではない。 イ 被告P1及び被告P2は、本件展示会で原告のブースを訪れた見込顧客の情報を全て原告に報告した。 ウ 被告会社が大善倉庫に両替機を販売したことはなく、取引を持ち掛けたこ5ともない。被告P2は、原告に対する苦情の連絡をしてきた設置場所オーナーに対し、賃料の支払は今後もされないと思うので契約を解消した方がいいと伝えただけである。 エ 本件展示会では、被告らは、被告会社として営業活動を行っており、被告P1及び被告P2が勧誘メールを送信したのは、被告会社が取得した情報に10基づくものである。 (2) 不正競争該当性被告P2が、本件クラウドからデータをダウンロードしたのは、原告の営業のためであって何ら違法ではなく、これまで原告に在籍していた営業職従業員が皆それぞれ行っていたことである。 15被告P1は、原告に対し、被告P1の妻からの貸付けも含めて合計4000万円の貸金債権を有していたところ、その弁済方法について原告との間で、令和3年7月27日、展示会で被告P1が原告又は被告会社名義で販売した両替機の代金をもって弁済に充てることを合意したのであり、展示会で被告会社が両替機の販売の営業活動をすることは原告の了解を得ていたことである。 20被告P1が、同年9月8日に暁電機に被告会社名義で両替機を購入することを打診したのは、暁電機から原告が同年2月以降に納品した両替機の売掛金を支払っていないため、原告には販売できないと言われたためであり、原告の了解を得ていたことである。 被告会社が原告と同種事業を行うことは何ら違法ではなく、被告 年2月以降に納品した両替機の売掛金を支払っていないため、原告には販売できないと言われたためであり、原告の了解を得ていたことである。 被告会社が原告と同種事業を行うことは何ら違法ではなく、被告P2が大手25警備会社であるALSOKと契約交渉を行ったのは、本件情報1を使用したも13 のではない。 被告らは、原告が契約する設置場所オーナーに連絡を取ったことはなく、設置場所オーナーから原告に連絡が取れないとして、賃料が支払われていないとの苦情の電話を受けたにすぎず、本件情報1を使用したわけではない。 以上によれば、被告らの行為が、不正競争防止法2条1項4号、5号、7号5及び8号の不正競争のいずれにも該当しないことは明らかである3 争点3(不正競争防止法2条1項21号該当行為の有無)について【原告の主張】(1) 被告らの行為被告P2は、被告P1の指示で、原告と競争関係にある被告会社の従業員と10して以下の行為をした。 ア 被告P2は、令和3年9月22日、ALSOKの担当者と面談して、「設置先などに、ポイントから支払されていない。オーナーから入金があるものの、ALSOKさんなどに入金されていない。」と述べた(以下「本件告知1」という。)。 15イ 被告P2は、同月27日までに、設置場所オーナーである株式会社相鉄ホテルマネジメントの担当者であるP3に架電し、「ポイントは両替機の設置はできない。」と述べた(以下「本件告知2」という。)。 ウ 被告P2は、同年10月11日、設置場所オーナーである株式会社ナスパの運営するセンターホテル成田2R51 の担当者であるP4に架電し、「ポイン20トは家賃も払えないし、機械の仕入れもできない状態なので契約を解除した方がいい。」と述べた(以下「本件告知3 スパの運営するセンターホテル成田2R51 の担当者であるP4に架電し、「ポイン20トは家賃も払えないし、機械の仕入れもできない状態なので契約を解除した方がいい。」と述べた(以下「本件告知3」という。)。 エ 被告P2は、同月11日、設置場所オーナーである株式会社チョイスホテルズジャパンのコンフォートホテル大阪心斎橋の担当者であるP5に架電し、「ポイントは家賃も払えないし、機械の仕入れもできない状態なので契25約を解除した方がいい。」と述べた(以下「本件告知4」という。)。 14 (2) 不正競争該当性本件告知1ないし4の内容は、原告に外貨両替事業の遂行能力がないことや、事業に関して債務不履行状態にあることを述べるものであり、原告の営業上の信用を害する事実を告知するものである。 原告は、暁電機と契約関係を維持しており、両替機の仕入れが可能であり、5ALSOKに対して業務委託料の支払を行っており、設置場所オーナーに対して使用料の支払いを行っているから、本件告知1ないし4で告知された事実は、虚偽である。 したがって、被告P2の行為は、被告会社の行為として不正競争防止法2条1項21号に該当する。 10【被告らの主張】(1) 被告らの行為被告P2は、相鉄グランドフレッサ大阪なんばのP6、センターホテル成田2R51 のP7及び株式会社チョイスホテルズジャパンのP8から携帯電話で、原告の事務所に電話をしたが、応答がないとの苦情の連絡を受けたことがある。 15その際、被告P2が、電話口で、ポイントは賃料を払えていない、顧客に販売した両替機の設置ができていないと告げた可能性はある。 被告P2が、P3、P4及びP5に架電して、本件告知2ないし4をした事実はない。 (2) 不正競争該当性 料を払えていない、顧客に販売した両替機の設置ができていないと告げた可能性はある。 被告P2が、P3、P4及びP5に架電して、本件告知2ないし4をした事実はない。 (2) 不正競争該当性20令和3年9月ないし10月当時、原告の事業は崩壊状態にあり、オーナーから返金を求める内容証明などが次々に届いていた一方、暁電機から仕入れた両替機の売掛金を滞納して、新たに注文を受け付けてもらえない状態であり、設置場所オーナーに対する賃料等のランニングコストの滞納も発生していた。また、原告は事業資金に窮して、被告P1及びその妻から合計4000万円を借25り入れており、同年7月13日から同年8月5日までにオーナーから支払われ15 た両替機の売買代金合計3740万円を返済に充てていたが残額260万円については、返済が遅滞し、同年9月17日にようやく返済された。さらに、原告については、被請求者として顧客との間で複数の訴訟が係属していた。 被告P2に設置場所のホテルが電話を架けてきたのは、原告の従業員が次々に辞めて原告の事務所に電話がつながらないためであり、少なくとも大善倉庫5からは、両替機の代金を受領していたのに、両替機を設置できていない状況であった。 以上によれば、被告P2がホテル担当者に告げた内容は真実であり、また、客観的に見て、当時、原告が取引先に対して契約上の義務に違背する可能性が高かったことは明白であり、被告P2が、そうした状況をホテル担当者との雑10談の中で告げたとしても、虚偽の事実を告知したとはいえない。 4 争点4(競業避止義務違反の有無)について【原告の主張】(1) 被告P1及び被告会社の行為ア 被告P1は、令和3年9月24日まで原告の取締役であったところ、同年158月3日までに、 4 争点4(競業避止義務違反の有無)について【原告の主張】(1) 被告P1及び被告会社の行為ア 被告P1は、令和3年9月24日まで原告の取締役であったところ、同年158月3日までに、被告会社の代表取締役として、大善倉庫との間で、両替機の売買契約を締結した。 仮に、被告会社が大善倉庫との間で売買契約を締結していなかったとしても、被告P1は、被告会社の代表取締役として、大善倉庫に両替機の売買契約の締結を持ち掛けた。 20イ 被告P1は、本件展示会において、原告のブースを訪れた顧客に対して、被告会社の代表取締役として、被告会社との両替機の売買契約の締結を持ち掛けた。 ウ 被告会社は、被告P1の任務懈怠行為を認識し、共同して任務懈怠行為をした。 25(2) 競業避止義務違反該当性16 被告P1は、原告の取締役退任前に、被告会社の代表権限を有する者として大善倉庫に対して、両替機の売買という原告が遂行する事業の部類に属する取引を行ったから、競業取引に当たる。そして、原告は、被告P1による当該取引について、取締役会の承認をしていない。 会社法上の競業取引規制の趣旨が、取締役が会社の利益を犠牲にして自己又5は第三者の利益を図るような行為をすることを防止するというものであることからすれば、被告P1が両替機の売買契約の締結を持ち掛けたこと(契約の申込み又は申込みの誘引)それ自体が、競業取引に該当する。 被告会社は、被告P1と主観的認識が共通し、被告P1が原告の取締役会の承認を得ることなく競業取引を行うことを認識し、共同して取引を行ったとい10えるから、被告P1の任務懈怠行為により原告が被った損害について、共同不法行為責任を負う。 【被告P1及び被告会社の主張】被告会社は、大善倉庫との を認識し、共同して取引を行ったとい10えるから、被告P1の任務懈怠行為により原告が被った損害について、共同不法行為責任を負う。 【被告P1及び被告会社の主張】被告会社は、大善倉庫との間で両替機の売買契約を締結しておらず、両替機の取引を行おうとしたこともない。大善倉庫は、令和3年1月頃には両替機事業か15らの完全撤退の意向を示しており、新たな両替機の購入の意向はなく、被告P1は、大善倉庫に被告会社を設立したことすら伝えていなかった。 被告P1が、本件展示会で被告会社の名前で営業活動をしたのは、原告との合意に基づくものであった上、展示会では被告会社として、両替機を1台も販売できず、その後も展示会を訪れた客との間で両替機の販売は実現しなかった。 205 争点5(損害の発生及び額)について【原告の主張】(1) 大善倉庫との取引に係る競業避止義務違反による損害原告は、大善倉庫との間で、両替機50台を購入する計画を立てており、うち24台については売買代金の支払いがされており、残り26台についても設25置場所について設置承諾契約が締結できた段階で、大善倉庫との売買契約を締17 結することが確実であった。そして、うち20台については、令和3年6月時点で設置場所の準備が完了しており、将来的に大善倉庫から売買代金の支払いを受けることが予定されていたが、被告会社が大善倉庫と両替機の売買契約を締結したため、原告は、大善倉庫と両替機の売買契約の締結ができなくなった。 原告がオーナーに販売する両替機の粗利益は、1台440万円であるから、5原告は、8800万円の利益が得られたはずであり、被告P1の競業避止義務違反により、同額の損害を被った。 (2) 本件情報2の窃取に係る不正競争による損害被告P1及 0万円であるから、5原告は、8800万円の利益が得られたはずであり、被告P1の競業避止義務違反により、同額の損害を被った。 (2) 本件情報2の窃取に係る不正競争による損害被告P1及び被告P2は、本件展示会において、本件情報2を窃取し、原告は、本件情報2の報告を受けられず、契約締結見込みのある顧客と接触できな10かったため、同月以降、顧客との間で両替機の売買基本契約を締結することができなかった。 原告は、平均して1か月2台程度の両替機を販売していたから、少なくとも1か月の間に獲得できたであろう顧客を得られなかったものとして、両替機1台の粗利益が440万円であるから、2台分の粗利益である880万円が原告15の得ることができなかった利益であり、被告らの不正競争による原告の損害となる。 また、原告は、被告P1及び被告P2が被告会社として顧客を奪取するのではないかとの疑いを持ち、調査会社に本件展示会の調査を依頼して、その報告を踏まえて必要な事実確認を行い、被告P1及び被告P2が本件情報2を窃取20した上で、被告会社が取得したことを確認した。原告は、同年11月11日の展示会においても、調査会社に依頼して被告らによる不正競争が行われていないかを調査した。原告は、これらの調査費用として43万3760円を支払ったから、当該費用は、不正競争による損害に該当する。 (3) 本件展示会における被告P1の営業行為に係る競業避止義務違反による損25害(予備的主張)18 被告P1は、本件展示会において、原告のブースで被告会社として営業活動を行い、顧客に対して、両替機の売買契約等を締結するよう持ち掛けた。被告P1の行為により、原告は、契約締結見込みのある顧客と接触できなかったため、同月以降、顧客との間で両替機 被告会社として営業活動を行い、顧客に対して、両替機の売買契約等を締結するよう持ち掛けた。被告P1の行為により、原告は、契約締結見込みのある顧客と接触できなかったため、同月以降、顧客との間で両替機の売買基本契約を締結することができなかった。 5そのため、原告は、前記イの粗利益880万円と同額の損害を被った。 また、原告は、調査会社に依頼して前記イの調査を行い、被告P1が展示会の原告のブースで被告会社として営業活動を行っていた証拠を獲得することができたから、調査費用43万3760円のうち、令和3年9月15日から同月17日までの調査に要した費用32万1280円も、被告P1の行為による10損害に当たる。 【被告らの主張】大善倉庫は、令和3年1月頃から原告との間で取引を解消する意向であったのであり、原告が両替機を販売できる見込みはなかった。 被告P1及び被告P2は、本件情報2を全て原告に報告しており、被告らが原15因で原告が顧客に接触できなかったということはない。原告は、令和3年9月当時、多数の顧客との間で金銭の返還をめぐるトラブルが生じていたのであって、毎月880万円の粗利益を得る見込みはなかった。 原告が調査費用と主張するものは、本件展示会以前に調査を依頼したことにより発生した費用であり、その後の被告らの行為と因果関係がない。 206 争点6(著作権侵害のおそれ及び予防の必要性の有無)について【原告の主張】被告会社は、原告の著作物をそのまま利用して事業を遂行していた。また、被告P1及び被告P2は、別法人を設立し又は個人として事業活動を行うおそれがあり、被告P1及び被告P2は、原告の著作物を保有しており、自ら又は第三者25による著作権侵害行為を行うおそれがある。 19 2は、別法人を設立し又は個人として事業活動を行うおそれがあり、被告P1及び被告P2は、原告の著作物を保有しており、自ら又は第三者25による著作権侵害行為を行うおそれがある。 19 もっとも、原告は、被告会社のウェブページにおいて本件ロゴ及び本件図面が掲載されていないことを確認しており、原告が有する著作権を侵害する被告らの行為が発覚しない限り、著作権侵害に係る請求についてこれ以上の具体的な主張はしない。 【被告らの主張】5被告会社は、原告の指摘を受けて、ロゴ、冊子、図面、チラシの全てを被告会社の広告から削除、変更済みであり、著作権侵害の事実はない。 被告会社は、今後、再び使用する意図はなく、著作権侵害のおそれはない。 被告P1及び被告P2は、個人として原告の著作物を利用したことはなく、将来にわたって利用することもあり得ない。 10第4 判断1 本件情報1及び2の秘密管理性(争点1)について(1) 証拠(甲10、17~20、35~37、乙20、21、被告P2、原告代表者本人(ただし、認定に反する部分を除く)。なお、枝番号のある証拠は、特に示さない限り、全ての枝番号を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれ15ば、被告P1及び被告P2が原告の取締役ないし従業員であった期間に係る本件情報1及び2の管理状況について、以下の事実が認められる。 ア 本件情報1及び本件情報2の保存態様本件情報1は、「オーナー・場所一覧※編集不可閲覧のみ」と題するものを含む各種の一覧表、オーナー及び設置場所オーナー並びにその他の取引先と20の間の基本契約書、個別の契約書、請求書、領収書等の多数のデータファイルに記載された情報であり、それらのファイルは、原告の従業員が業務上作成したその余のファイルと共に、 びにその他の取引先と20の間の基本契約書、個別の契約書、請求書、領収書等の多数のデータファイルに記載された情報であり、それらのファイルは、原告の従業員が業務上作成したその余のファイルと共に、本件クラウドに保存されていた。 本件情報2は、本件展示会において、原告のブースを訪れた者が「訪問カード」や「面談書」に記載し、あるいは被告P1及び被告P2において訪問25者から聴取して記載することが予定されていた情報であり、本件展示会後に、20 本件クラウドに保存された一覧表等に追記されることが予定されていた。 イ 営業秘密であることの表示本件情報1を記録したファイル並びに本件情報2が記載されるべき「訪問カード」及び「面談書」には、それ自体ないしその記載に係る情報が原告の営業秘密である旨の表示はなかった。また、本件情報1を含むファイルとそ5の余のファイルが区分されて管理されていたこともなかった。 ウ データへのアクセス制限本件情報1を記録したファイルは、パスワード等のアクセス制限措置がされることなく、原告の全従業員がアクセス可能な本件クラウドに保存されていた。原告には、関連会社と共通の情報セキュリティに関する「通信・運用10管理規程」が存在したが、本件情報1を記録したファイルに関して、特段のアクセス制限措置は行われていなかった。 エ 原告の秘密保持に関する規定その他の秘密漏洩防止措置原告の通信・運用管理規程には、本件情報1及び本件情報2に係る秘密保持を具体的に義務付ける規定はない。また、原告と被告P1及び被告P2と15の間で本件情報1及び本件情報2に係る秘密保持契約は締結されておらず、原告が被告P1及び被告P2から取り付けた「入社誓約書」には、「営業上その他貴社に関する一切の機密は、在職中はも 告P2と15の間で本件情報1及び本件情報2に係る秘密保持契約は締結されておらず、原告が被告P1及び被告P2から取り付けた「入社誓約書」には、「営業上その他貴社に関する一切の機密は、在職中はもちろん、退職後も決して他に漏洩致しません。」との抽象的な記載があるにとどまる。 原告において、被告P1及び被告P2に対し、本件情報1及び本件情報220が原告の営業秘密であることに関する注意喚起、本件情報1及び本件情報2の取扱いに関する研修等の教育的措置が行われたこともない。 原告は、被告P1及び被告P2から、退職時に、貸与PCや事務所の鍵等の貸与物の返還を受けたが、秘密保持及び競業避止義務に係る誓約書の作成を拒否された。 25(2) 検討21 ア 「営業秘密」(不正競争防止法2条6項)といえるためには、当該情報が秘密として管理されていることを要するところ、秘密として管理されているといえるためには、秘密としての管理方法が適切であって、管理の意思が客観的に認識可能であることを要すると解される。 これを本件情報1及び2について見るに、前記各認定事実のとおり、本件5情報1及び2が記載されたファイルや書面には営業秘密である旨の表示がなく、ファイルにはパスワード等のアクセス制限措置が施されておらず、原告の全従業員がアクセス可能な本件クラウドに保存されていた。本件情報1は、原告が過去に行ってきた外貨両替事業に関して作成された多数の契約書、請求書、領収書等の取引書類のファイルに含まれており、原告の従業員が業10務上作成したその余のファイルと共に本件クラウドに保存されていた。また、原告の通信・運用管理規程において本件情報1及び2を具体的に秘密として指定して秘密保持義務を課す規定はなく、被告P1及び被告P2との間で本件 の余のファイルと共に本件クラウドに保存されていた。また、原告の通信・運用管理規程において本件情報1及び2を具体的に秘密として指定して秘密保持義務を課す規定はなく、被告P1及び被告P2との間で本件情報1及び2に関する秘密保持契約等も締結等していなかった。さらに、原告は、本件情報1及び2が営業秘密であることなどの注意喚起も、その取15扱いに関する研修等の教育的措置も行っていなかった。 このような本件情報1及び2の管理状況に鑑みると、当該情報は、原告において、特別な費用を要さずに容易に採り得る最低限の秘密管理措置すら採られておらず、漫然と原告の全従業員がアクセス可能な本件クラウドに保存されていたにすぎないものであって、適切に秘密として管理されていたとは20いえず、また、秘密として管理されていると客観的に認識可能な状態にあったとはいえない。 したがって、本件情報1及び2は秘密として管理されていたとはいえない。 イ 原告は、前記第3の1【原告の主張】(2)の事情から、秘密管理性が肯定されると主張する。 25しかしながら、①会社が業務上契約して使用するクラウドサーバーに社外22 の第三者が自由にアクセスできないようにしているのは当然のことであり、特定の情報を秘密として管理しているということはできず、②本件クラウドに保存された全ファイルの目的外ダウンロードを禁止していたからといって、本件情報1が営業秘密として管理されていたことにはならず(なお、原告代表者本人は、個々のダウンロード毎に許可をとる態勢をとっていたと陳5述するが、同人はその具体的態様は何ら認識していない上、これを裏付ける具体的・客観的な主張立証はなく、かえってそのような態勢など存在しなかったことが窺われる。)、③通信・運用管理規程や入社時の誓約書に するが、同人はその具体的態様は何ら認識していない上、これを裏付ける具体的・客観的な主張立証はなく、かえってそのような態勢など存在しなかったことが窺われる。)、③通信・運用管理規程や入社時の誓約書には、本件情報1及び2を営業秘密として管理する旨の記載はなく、他人の個人情報をみだりに開示しないことと他人の個人情報が原告の営業秘密であることと10は関係がない。また、④原告が被告P1及び被告P2の退職時に要求した誓約書は、原告の事業に関する価格、取引情報のみならず、商品、サービス、財務、人事等に関する広範な情報を秘密情報とし、理由の如何を問わず、自己又は第三者のために開示、使用することを無期限に禁じ、退職後、2年間もの間、競合企業への就職等を一切禁止する内容であり(甲37)、仮に合意15されたとしても明らかに公序良俗に反し無効なものであり、被告P1及び被告P2がこれを拒否するのは当然であって、むしろ、原告において本件情報1及び2を適切に営業秘密として管理していなかったことを窺わせる事情といえる。 ウ そうすると、その余の要件について検討するまでもなく、本件情報1及び202は、営業秘密に該当しない。 (3) 小括以上によれば、争点2を判断するまでもなく(なお、争点2における不正競争行為(被告らの窃取、開示、使用等)に関する原告の主張は、それ自体失当か又は理由がないと思料されるが、いずれにせよ結論に差はない。)、本件情報251及び2が営業秘密に該当することを前提とする原告の不正競争防止法に基23 づく請求(第2の1の(1)、(2)及び(6))には理由がない。 2 不正競争防止法2条1項21号該当行為の有無(争点3)(1) 本件告知1原告は、ALSOKの担当者からのLINEメッセージ(甲22)を根拠に、 )、(2)及び(6))には理由がない。 2 不正競争防止法2条1項21号該当行為の有無(争点3)(1) 本件告知1原告は、ALSOKの担当者からのLINEメッセージ(甲22)を根拠に、本件告知1があり、これが虚偽の事実を告知するものであると主張する。 5しかしながら、本件告知1のうち、ALSOKに入金されていない旨の発言は、入金の有無を最もよく知る立場にあるALSOKの担当者に対するものであるから、およそ虚偽を述べることは考えられない。原告は、令和3年10月29日を支払期限とするALSOKの請求書(甲31の1)と同日の原告からALSOKへの支払履歴(甲31の2)を根拠に、ALSOKへの支払が行わ10れていたと主張するが、ある特定の費用に対して支払が行われた事実を示すにすぎず、ALSOKに支払うべき費用が全て遅滞なく支払われたこと(かかる事実の立証(後出の支払状況や機械設置等の立証も同様である。)は原告において何ら困難はないが、されていない。)は到底認めるに足りない。 また、本件告知1のうち、設置場所オーナーに原告から賃料が支払われてい15ない旨の発言についても、原告は、同日に、原告から、複数の設置場所オーナーへ支払がされた履歴(甲31の3)を根拠とするのみであり、これが全部の設置場所オーナーであるのか、弁済期に全額が支払われ、滞納がないのかは全く不明であって、本件告知1がされた当時、全設置場所オーナーへの賃料が全額遅滞なく支払われていたことは到底認めるに足りない。そもそも、原告自身20が、令和3年9月頃まで原告の事業が赤字であったとし、必要な支払が全て遅滞なくされていたわけではないことを認めている(P9証人、被告代表者本人)。 しかも、証拠(甲53、62、69、乙2、20、21)及び弁論の全趣旨によ 原告の事業が赤字であったとし、必要な支払が全て遅滞なくされていたわけではないことを認めている(P9証人、被告代表者本人)。 しかも、証拠(甲53、62、69、乙2、20、21)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、令和元年頃以降、多数のオーナー等との間で両替機の売買に係る紛争を抱えており、そのうち、和解が成立したものが複数あることが認め25られるところ、原告は和解金額について開示しないが、原告が支払請求(原告24 の債務不履行に基づく売買代金や預かり金の返還請求と思われる。)を受けている側であることからして、相当額の支払を余儀なくされたことが推認される。 また、原告が被告P1らに対し、債務の弁済として4000万円を支払い、うち3740万円は、令和3年7月から同年8月までの原告に入金された両替機の売上げを原資とするものであったことに争いはなく、そのような支払を行っ5た後である本件告知1当時において、原告の資金繰りが悪化していたことは容易に推認される。 したがって、本件告知1は、虚偽の事実を告知したものとは認められない。 (2) 本件告知2ないし4ア 原告は、被告P2が、設置場所オーナーの担当者に架電して本件告知2な10いし4をしたと主張し、原告の従業員ではないが原告から外貨両替事業の営業を受託していると称するP10も、当該担当者から本件告知2ないし4を聞いた旨を供述する(甲73、証人P10)。 しかしながら、被告P2は、設置場所オーナー側から電話がかかってきて、両替機がいつになっても設置されず、原告と連絡も取れない旨のクレームを15受けたと述べており(乙21、被告P2)、連絡を受けたとする設置場所オーナーの従業員について、原告の主張する担当者とは別人の名前を具体的に挙げている。そうすると、P10が設置場所オ レームを15受けたと述べており(乙21、被告P2)、連絡を受けたとする設置場所オーナーの従業員について、原告の主張する担当者とは別人の名前を具体的に挙げている。そうすると、P10が設置場所オーナーの担当者から本件告知2ないし4があったことを聞いたとしても、当該担当者が被告P2から直接本件告知2ないし4を受けたとまでは認められず、被告P2に電話をかけた別20の従業員からの伝聞であるとすれば、P10が聞いた内容の正確性には疑問があり、原告の主張するとおりに本件告知2ないし4がされた事実は認められない。 もっとも、被告らは、被告P2が設置場所オーナー側から電話を受けて、原告が賃料を払えておらず、オーナーに販売した両替機の設置ができていな25い旨の会話をした限度では発言を認めているから、本件告知2ないし4はか25 かる発言の限度では、被告P2がしたものと認められる。 イ 被告P2の発言のうち、原告が賃料を払えていない旨の発言は、前記(1)のとおり、原告が全設置場所オーナーに対し遅滞なく賃料を支払っていたと認めるに足りる証拠はなく、資金繰りが悪化していたことが推認されることからすれば、虚偽の事実を告知するものとはいえない。 5また、オーナーに販売した両替機の設置ができていない旨の発言について、原告は、暁電機の請求書及び暁電機への支払履歴(甲54、55)を根拠に、暁電機との取引関係が続いており、両替機が設置できたと主張するが、そもそも、当該請求書は、両替機の破損対応、1か月分の遠隔監視システム利用料、回線利用料、故障修理に係るものであり、これを原告が暁電機に支払っ10たからといって、オーナーに新規に販売した両替機が遅滞なく設置されていたことが推認されることにならない。かえって、証拠(甲47、48、乙15) 理に係るものであり、これを原告が暁電機に支払っ10たからといって、オーナーに新規に販売した両替機が遅滞なく設置されていたことが推認されることにならない。かえって、証拠(甲47、48、乙15)によれば、令和3年1 月頃、大善倉庫に販売した両替機の設置が遅滞していたことが認められる。さらに、前記(1)のとおり、原告は、同年7月から同年8月まで、オーナーに販売した両替機の代金を被告P1らへの債務弁済15に充ててしまっていたのであるから、オーナーに販売した両替機の仕入れが困難となり、同年10月頃においても、設置が遅滞することが予想される状態にあったことは明らかである。 したがって、被告P2は、設置場所オーナーに対して、虚偽の事実を告知したとは認められない。 20(3) 以上によれば、被告らが不正競争防止法2条1項21号の不正競争をしたとは認められず、これを前提とする原告の請求(第2の1の(3)及び(7))は、理由がない。 3 競業避止義務違反の有無(争点4)(1) 大善倉庫との取引について25原告は、被告P1が、被告会社の代表者として、大善倉庫に両替機を販売す26 る契約を締結したと主張するが、その根拠としては、被告会社名義の大善倉庫宛の令和3年8月3日付けの「請求書」と題するデータ(甲41、63、71。 以下「本件データ」という。)の存在と、大善倉庫が原告に対し、同年11月22日、令和4年2月24日付けでの契約解除を求めてきたこと(甲49)を挙げるにすぎない。 5このうち、大善倉庫の契約解除は、被告P1が原告の取締役を辞任した2か月以上後のものであって、そもそも競業避止義務違反の取引が取締役在任中に行われたことの根拠となるものではない。 そして、被告会社との取引については、大善倉庫が明確 1が原告の取締役を辞任した2か月以上後のものであって、そもそも競業避止義務違反の取引が取締役在任中に行われたことの根拠となるものではない。 そして、被告会社との取引については、大善倉庫が明確に否定している(乙16)ところ、大善倉庫が同年1月頃から外貨両替事業からの撤退の意向を示10していた(乙14、15)ことからすれば、原告と大善倉庫が両替機の代金や充填資金の返還について紛争になっていることを踏まえても、大善倉庫の回答の信用性を否定すべきものとはいえない。 また、原告の主張によれば、本件データは、原告の事務所において事務員が使用していたコンピュータから令和3年12月21日に発見されたものであ15り、当該コンピュータのデスクトップ領域に保存されていた「請求書(機械代金雛形)」と題するMicrosoft Excel ワークシート(.xlsx)ファイル(以下「本件ファイル」という。)の複数のシートのうちの一つであったというのであるが、原告の外貨両替事業に係る請求書等のデータは、被告P2が本件クラウドからダウンロードすることができ、実際にダウンロードもしていたのに、あえ20て原告の事務所のコンピュータを利用して被告会社名義の請求書を作成し、保存しておく合理的な理由が考え難く、発見が本件訴訟提起後であることも含めて、発見状況自体が不自然というほかない。 さらに、本件データに係る「請求書」の作成日は令和3年8月3日と記載されている(甲41)にもかかわらず、本件データを含む本件ファイルのプロパ25ティ上の作成日は同月27日であり、本件ファイルには複数の原告名義の請求27 書のデータが別シートとして含まれているところ、本件ファイルのプロパティ上の更新日は発見日とされる同年12月21日であり(甲63)、結局、本件 あり、本件ファイルには複数の原告名義の請求27 書のデータが別シートとして含まれているところ、本件ファイルのプロパティ上の更新日は発見日とされる同年12月21日であり(甲63)、結局、本件データがいつ、何者によって作成されたのかを確認することができない。 しかも、本件データに記載された振込先は、被告会社の口座ではなく、被告会社が開設を予定していた銀行の支店でもない(乙9、10)のであるから、5本件データは、およそ現実の取引に用いられるとは考えられない内容である。 また、原告において、被告会社が同年8月3日以前に大善倉庫との間で両替機の売買契約を締結したと主張しているところ、被告P1が暁電機を訪問して被告会社を設立したことを伝えて両替機の販売が可能であるかを聞いたのは、1か月以上後である同年9月8日であって(甲9)、被告会社として両替機の供10給元に接触する相当前から両替機の売買をしていたとも考え難い。 以上によれば、本件データは、被告らにおいて作成されたものとは認められず(このような証拠が裁判所に堂々と提出されること自体、原告の適切な業務執行体制の欠如の一端をうかがわせるものである。)、被告P1の取締役在任中に、被告会社と大善倉庫との間で両替機の売買契約が締結され、あるいは取引15の申出が行われたとは認められない。 (2) 展示会における取引の勧誘について原告は、取締役が競業取引を持ち掛けること(契約の申込み又は申込みの誘引)自体が競業取引に該当すると主張するが、会社法365条1項、356条1項1号違反が問題となるのは、取締役が自己又は第三者のために会社の事業20の部類に属する取引を行ったが、取締役会の承認を得ていなかった場合であって、取締役在任中に取引が行われていなければ、競業避止義務違反には当 となるのは、取締役が自己又は第三者のために会社の事業20の部類に属する取引を行ったが、取締役会の承認を得ていなかった場合であって、取締役在任中に取引が行われていなければ、競業避止義務違反には当たらない。 また、原告の主張によっても、被告P1は、展示会において、原告のブースを訪れた者に被告会社の名刺を渡して被告会社の事業も行っていることを説25明し、展示会後にそのうち何人かに被告会社との取引を勧誘したにすぎず、現28 実に被告会社と原告のブースの訪問者との間で取引が成立したというものではない。 そして、被告P1が原告を退社した後も含めて、被告会社と原告ブースの訪問者との間で取引が成立した事実は認められず、被告P1及び被告P2が展示会後にメールで被告会社との取引を勧誘した者は、原告が依頼した調査会社の5者ないし原告と意を通じた者であって(甲12、13、16、21、原告代表者本人)、意味のある勧誘であったといえないし、外形的に被告会社として勧誘したこと自体についても、被告P1が原告に貸し付けた資金の回収のためにやむなく原告の取締役として本件展示会に関与したが、原告として両替機を販売することは当時の原告の資金繰りの状況下では詐欺になりかねないと認識10していたとの事情のもとでは善管注意義務違反ないし忠実義務違反に当たるものともいえない。 (3) 小括以上によれば、被告P1に競業避止義務違反に該当する行為があったとは認められず、善管注意義務違反ないし忠実義務違反も認められず、これを前提と15する原告の被告P1に対する会社法423条1項に基づく請求及び被告会社に対する共同不法行為に基づく請求(第2の1の(5)及び(8))には、いずれも理由がない。 4 著作権侵害のおそれ及び予防の必要性の有無(争点 P1に対する会社法423条1項に基づく請求及び被告会社に対する共同不法行為に基づく請求(第2の1の(5)及び(8))には、いずれも理由がない。 4 著作権侵害のおそれ及び予防の必要性の有無(争点6)について被告らは、答弁書において、原告が著作権を主張する本件ロゴ、本件冊子、本20件図面及び本件チラシの使用を直ちに止めた旨主張し、被告のウェブページから本件ロゴ及び本件図面が削除されたことは争いがない。また、原告は、被告らが本件ロゴ、本件冊子、本件図面及び本件チラシを現在も使用している旨の具体的な主張をせず、それらが被告らにより現に複製、譲渡、公衆送信等されているとは認められない。 25そして、本件訴訟において、被告らが著作権侵害については当初から争わず、29 直ちに侵害行為を止めたことからすれば、将来、被告らが著作権侵害行為を再開するおそれがあるとは認められず、予防措置の必要性も認められない。 したがって、原告の差止請求(第2の1(4))は理由がない。 第5 結論以上より、原告の請求はいずれも理由がないから、これをいずれも棄却すること5とする。 よって、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 10 裁判長裁判官 松阿彌 隆 15 裁判官 杉浦 一輝 20 裁判官 布目 真利子【別紙省略】25 布目 真利子【別紙省略】25

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