平成6(オ)363 約束手形金

裁判年月日・裁判所
平成9年2月27日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄自判 大阪高等裁判所 平成5(ネ)741
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判決文本文2,147 文字)

主文 原判決を破棄する。 被上告人の控訴を棄却する。 控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。 理由 上告代理人小寺一矢、同小濱意三の上告理由について一本件は、第一審判決別紙手形目録記載一ないし三の約束手形三通(以下「本件各手形」という。)の所持人である被上告人が、本件各手形の振出人である上告人に対し、手形金の支払を求めている事件である。原審の確定した事実関係の概要は、次のとおりである。 1 上告人は、平成三年一〇月二四日、株式会社D商工(以下「D商工」という。)に対し、いずれも満期を同年一一月二二日、振出日欄及び受取人欄を白地とした本件各手形を振り出した。 2 上告人は、本件各手形を満期に決済することができず、その延期を求めるため、平成三年一一月二二日、D商工に対し、第一審判決別紙手形目録記載四ないし六の約束手形三通を振り出すとともに、延期分の利息を支払い、先に交付した本件各手形の返還を求めたが、D商工が「後で返す。」と言うので、その受戻しをしなかった。 3 D商工は、本件各手形の満期をいずれも平成四年六月二二日と変造した上、同三年一一月二五日、有限会社E商店に対し、本件各手形を割引のため裏書譲渡した。 4 被上告人は、いずれも振出日が平成三年一一月二五日と補充された裏書の連続する本件各手形を所持している。 二上告人は、本件各手形の振出日を白地のまま振り出したところ、満期が変造- 1 -されるとともに、振出日が補充された結果、本件各手形は、変造前の満期として記載されている日が補充された振出日より前である不合理な手形となったもので、無効であると主張している。これに対して、原審は、右の事実関係の下において、手形が変造されたときは、振出人は変造前の文言に従っ 載されている日が補充された振出日より前である不合理な手形となったもので、無効であると主張している。これに対して、原審は、右の事実関係の下において、手形が変造されたときは、振出人は変造前の文言に従って責任を負うところ、本件各手形の満期が変造され、振出日が補充された結果、本件各手形の変造前の満期は振出日より前になるけれども、本件各手形の変造前の満期である平成三年一一月二二日の翌日は祝日(勤労感謝の日)、その翌日は日曜日であって、本件各手形の変造前の満期による支払呈示期間は同月二六日までであるから、本件各手形の振出日である同月二五日の後にも変造前の満期による支払呈示期間内に支払呈示することが可能であり、そうであれば、本件各手形が不合理な権利関係を表章しているものとはいえず、本件各手形を無効とするいわれはないとして、被上告人の本件各手形金請求を棄却した第一審判決を取り消し、被上告人の請求を全部認容すべきものと判断した。 三しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。 手形要件は、基本手形の成立要件として手形行為の内容を成すものであるところ、手形の文言証券としての性質上、手形要件の成否ないし適式性については、手形上の記載のみによって判断すべきものであり、その結果手形要件の記載がそれ自体として不能なものであるかあるいは各手形要件相互の関係において矛盾するものであることが明白な場合には、そのような手形は無効であると解するのが相当である。 そして、確定日払の約束手形における振出日についても、これを手形要件と解すべきものである以上(最高裁昭和三九年(オ)第九六〇号同四一年一〇月一三日第一小法廷判決・民集二〇巻八号一六三二頁参照)、満期の日として振出日より前の日が記載されている確定日払の約束手形は、手形要件の記載 のである以上(最高裁昭和三九年(オ)第九六〇号同四一年一〇月一三日第一小法廷判決・民集二〇巻八号一六三二頁参照)、満期の日として振出日より前の日が記載されている確定日払の約束手形は、手形要件の記載が相互に矛盾するものと- 2 -して無効であると解すべきである。これを本件についてみるに、本件各手形は、満期が変造され、振出日が補充された結果、変造前の満期が振出日より前の日となるものであるから、たとえ補充された振出日を基準として変造前の満期による支払呈示期間内に支払呈示することが可能であったとしても、変造前の文言に従って責任を負うべき振出人である上告人との関係においては、無効というべきである。 四そうすると、本件各手形を有効とした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるというべきであり、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。この点の違法をいう論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、以上に述べたところからすれば、本件各手形金の支払を求める被上告人の本訴請求は理由がなく、これを棄却した第一審判決は結論において正当であるから、被上告人の控訴を棄却すべきである。 よって、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官井嶋一友裁判官小野幹雄裁判官高橋久子裁判官遠藤光男裁判官藤井正雄- 3 - 遠藤光男裁判官 藤井正雄

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