平成28(行ケ)10061 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年4月12日 知的財産高等裁判所 3部 判決 審決取消
ファイル
hanrei-pdf-86763.txt

キーワード

判決文本文32,038 文字)

平成29年4月12日判決言渡平成28年(行ケ)第10061号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成29年1月25日判決 原告X訴訟代理人弁理士中塚雅也同鳥居和久 被告株式会社マトリックス 訴訟代理人弁護士福 田 あやこ訴訟代理人弁理士森下八郎主文 1 特許庁が無効2015-800019号事件について平成28年1月29日にした審決のうち,「本件審判の請求は,成り立たない。」との部分を取り消す。 2 訴訟費用は,被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文同旨第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等(1) 被告は,発明の名称を「入退室管理システム,受信器および入退室管理方法」(ただし,後記(3)の本件訂正前の名称は「動態管理システム,受信器および動態管理方法」)とする特許第4763982号(平成16年8月5日 出願,平成23年6月17日設定登録,請求項の数7。以下「本件特許」という。)の特許権者である。 (2) 原告は,平成27年1月30日,特許庁に対し,本件特許について無効審判を請求した(無効2015-800019号事件)。 (3) 被告は,平成27年11月11日,特許庁に対し,本件特許に係る明細書及び特許請求の範囲の訂正を請求した(甲10。以下「本件訂正」といい,本件訂正前の明細書を「当初明細書」,本件訂正後の明細書を「本件訂正明細書」という。)。 (4) 特許庁は,平成28年1月29日,本件訂正を認めた上,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をした(以下「本件審決」という。)。 (5) 原告は,平成28年3月5日,本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載(1) 本件 正を認めた上,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をした(以下「本件審決」という。)。 (5) 原告は,平成28年3月5日,本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載(1) 本件訂正前の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(以下「訂正前発明」といい,個別に特定するときは,請求項の数字に従って「訂正前発明1」などという。なお,文中の「/」は原文における改行箇所を示す。以下同じ。)。 【請求項1】第1の位置に設けられ,第1特性を有し,IDタグを起動するトリガ信号を出力する,第1トリガ信号発信器と,/第2の位置に設けられ,前記第1と異なる第2特性を有するトリガ信号を出力する,第2トリガ信号発信器と,/前記第1および第2トリガ信号発信器からのトリガ信号に応答して,ID番号を出力するIDタグとを含み,/前記IDタグは,受信したトリガ信号を特定する情報とともに前記ID番号を出力し,/前記IDタグが出力した,トリガ信号を特定する情報およびID番号を受信する受信器とを含む,動態管理システム。 【請求項2】前記IDタグは,前記トリガ信号ごとの異なる特性を記憶する記憶手段を含む,請求項1に記載の動態管理システム。 【請求項3】前記トリガ信号発信器の相互に異なる特性は,トリガ信号のIDによって区別される,請求項1または2に記載の動態管理システム。 【請求項4】さらに,現在時刻を検出する現在時刻検出器を含み,前記受信器の受信したID番号を前記現在時刻とともに記憶する,請求項1から3のいずれかに記載の動態管理システム。 【請求項5】前記受信器は複数のトリガ信号発信器に対して1個設けられる,請求項1から4のいずれかに記載の動態管理システム。 【請求項6】IDタグを起動するトリガ信号に応答して,ID番号を出力するIDタグが出力 前記受信器は複数のトリガ信号発信器に対して1個設けられる,請求項1から4のいずれかに記載の動態管理システム。 【請求項6】IDタグを起動するトリガ信号に応答して,ID番号を出力するIDタグが出力したID番号を受信する受信器であって,/前記トリガ信号は,それぞれが異なる位置に設けられ,相互に異なる特性を有するトリガ信号を出力する,複数のトリガ信号発信器から出力され,/前記IDタグは,受信したトリガ信号を特定する情報とともに前記ID番号を出力し,/前記IDタグが出力した,トリガ信号を特定する情報と,前記ID番号とを受信する,受信器。 【請求項7】異なる位置に設けられたトリガ信号発信器から,IDタグに対して相互に異なる特性を有し,IDタグを起動する複数のトリガ信号を出力するステップと,/トリガ信号発信器からのトリガ信号に応答して,受信したトリガ信号を特定する情報とともにID番号を出力するIDタグを,前記異なる位置を通過させるステップと,/受信器によって,IDタグが出力した,トリガ信号を特定する情報およびID番号を受信するステップとを含む,動態管理方法。 (2) 本件訂正後の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(以下「本件訂正発明」といい,個別に特定するときは,請求項の数字に従って「本件訂正発明1」などという。下線部分は訂正箇所を示す。)。 【請求項1】出入口の一方側である第1の位置に設けられ,第1特性を有し,IDタグを起動するトリガ信号を出力する,第1トリガ信号発信器と,/前 記出入口の他方側である第2の位置に設けられ,前記第1と異なる第2特性を有するトリガ信号を出力する,第2トリガ信号発信器とを含み,/前記第1および第2トリガ信号発信器からのトリガ信号に応答して,ID番号を出力するIDタグとを含み,/前記IDタグは,受信 なる第2特性を有するトリガ信号を出力する,第2トリガ信号発信器とを含み,/前記第1および第2トリガ信号発信器からのトリガ信号に応答して,ID番号を出力するIDタグとを含み,/前記IDタグは,受信したトリガ信号を特定する情報とともに前記ID番号を出力し,/前記IDタグが出力した,トリガ信号を特定する情報およびID番号を受信する受信器とを含む,入退室管理システム。 【請求項2】前記IDタグは,前記トリガ信号ごとの異なる特性を記憶する記憶手段を含む,請求項1に記載の入退室管理システム。 【請求項3】前記トリガ信号発信器の相互に異なる特性は,トリガ信号のIDによって区別される,請求項1または2に記載の入退室管理システム。 【請求項4】さらに,現在時刻を検出する現在時刻検出器を含み,前記受信器の受信したID番号を前記現在時刻とともに記憶する,請求項1から3のいずれかに記載の入退室管理システム。 【請求項5】前記受信器は複数のトリガ信号発信器に対して1個設けられる,請求項1から4のいずれかに記載の入退室管理システム。 【請求項6】IDタグを起動するトリガ信号に応答して,ID番号を出力するIDタグが出力したID番号を受信する受信器であって,/前記トリガ信号は,出入口を挟んで,それぞれが異なる位置に設けられ,相互に異なる特性を有するトリガ信号を出力する,複数のトリガ信号発信器から出力され,/前記IDタグは,受信したトリガ信号を特定する情報とともに前記ID番号を出力し,/前記IDタグが出力した,トリガ信号を特定する情報と,前記ID番号とを受信する,受信器。 【請求項7】出入口を挟んで,異なる位置に設けられたトリガ信号発信器から,IDタグに対して相互に異なる特性を有し,IDタグを起動する複数のトリガ信号を出力するステップと,/トリガ信号発信器か 器。 【請求項7】出入口を挟んで,異なる位置に設けられたトリガ信号発信器から,IDタグに対して相互に異なる特性を有し,IDタグを起動する複数のトリガ信号を出力するステップと,/トリガ信号発信器からのトリガ信号に 応答して,受信したトリガ信号を特定する情報とともにID番号を出力するIDタグを,前記異なる位置を通過させるステップと,/受信器によって,IDタグが出力した,トリガ信号を特定する情報およびID番号を受信するステップとを含む,入退室管理方法。 3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,本件訂正を認めた上,本件訂正発明は,いずれも次の刊行物1ないし3に記載された発明(以下,刊行物1記載の発明を「刊行物1発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明することができたものではなく,同様に,請求人(原告)が提出した甲1-1(特開昭62-38040号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものでもない,というものである。 ア刊行物1:特公平5-35935号公報(甲1-2)(判決注:請求人が提出した上記甲1-1に対応する公告公報である。)イ刊行物2:特開2004-94891号公報(甲3)ウ刊行物3:特開平8-57104号公報(甲5)(2) 本件審決が認定した引用発明(刊行物1発明)は,次のとおりである。 ア引用発明A施設に設けられる信号の処理装置と,/該処理装置に接続され,ポーリング信号と位置信号とを同期をとって送信する送信部及び信号を受信する受信部を具備する施設の各部屋などに設置される複数の固定無線機と,/移動体に取り付けられ,かつ該固定無線機から送信される位置信号のうち電波の強い方の位置信号を受信して記憶するメモリを具備 受信する受信部を具備する施設の各部屋などに設置される複数の固定無線機と,/移動体に取り付けられ,かつ該固定無線機から送信される位置信号のうち電波の強い方の位置信号を受信して記憶するメモリを具備するトランスポンデイングカードとを設け,/該トランスポンデイングカードはポーリング信号の受信に応答して自己を特定する信号及び前記メモリに記憶された位置信号を送信し,該信号を固定無線機で受信し,該固定無線機で受信し た信号に基づいて前記処理装置にて移動体の位置を検出するトランスポンデイングカードによる位置検出システム。 イ引用発明B(引用発明Aを固定無線機の観点から把握したもの。本件訂正発明6に対応。)ポーリング信号と位置信号とを同期をとって送信する送信部及び信号を受信する受信部を具備する施設の各部屋などに設置される複数の固定無線機であって,/移動体に取り付けられ,かつ,該固定無線機から送信される位置信号のうち電波の強い方の位置信号を受信して記憶するメモリを具備するトランスポンデイングカードは,ポーリング信号の受信に応答して自己を特定する信号及び前記メモリに記憶された位置信号を送信し,該信号を固定無線機で受信する,固定無線機。 ウ引用発明C(引用発明Aを位置検出方法の観点から把握したもの。本件訂正発明7に対応。)送信部がポーリング信号と位置信号とを送信するステップと,/ポーリング信号の受信に応答して自己を特定する信号及び前記メモリに記憶された位置信号を送信するトランスポンデイングカードを,各部屋へ移動させるステップと,/トランスポンデイングカードはポーリング信号の受信に応答して自己を特定する信号及び前記メモリに記憶された位置信号を送信するステップと,/該信号を固定無線機で受信するステップと,/該固定無線機で受信した信 スポンデイングカードはポーリング信号の受信に応答して自己を特定する信号及び前記メモリに記憶された位置信号を送信するステップと,/該信号を固定無線機で受信するステップと,/該固定無線機で受信した信号に基づいて移動体の位置を検出するステップとを含む,/トランスポンデイングカードによる位置検出方法であって,/固定無線機は,ポーリング信号と位置信号とを同期をとって送信する送信部及び信号を受信する受信部を具備する施設の各部屋などに設置される複数の固定無線機であり,/トランスポンデイングカードは,移動体に取り付けられ,かつ該固定無線機から送信される位置信号のうち電波の強い方の位置信号を受信して記憶するメモリを具備するトランスポンデイングカード である,/トランスポンデイングカードによる位置検出方法。 (3) 本件訂正発明1と引用発明Aとの対比本件審決が認定した本件訂正発明1と引用発明Aとの一致点,相違点は次のとおりである。 ア一致点第1の位置に設けられ,第1特性を有し,起動信号を出力する,第1起動信号発信器と,/第2の位置に設けられ,前記第1と異なる第2特性を有する起動信号を出力する,第2起動信号発信器と,/前記第1および第2起動信号発信器からの起動信号に応答して,ID番号を出力するIDタグとを含み,/前記IDタグは,受信した起動信号を特定する情報とともに前記ID番号を出力し,/前記IDタグが出力した,起動信号を特定する情報およびID番号を受信する受信器とを含む,IDタグの位置を把握するシステム。 イ相違点(ア) 第1起動信号発信器が設けられる「第1の位置」及び第2起動信号発信器が設けられる「第2の位置」に関し,本件訂正発明1では,「第1の位置」が「出入口の一方側である第1の位置」であり,また,「第2の位置」が「出 号発信器が設けられる「第1の位置」及び第2起動信号発信器が設けられる「第2の位置」に関し,本件訂正発明1では,「第1の位置」が「出入口の一方側である第1の位置」であり,また,「第2の位置」が「出入口の他方側である第2の位置」であるのに対し,引用発明Aでは,「第1の位置」,「第2の位置」の各位置が施設の各部屋に対応する位置である点(相違点1)。 (イ) 第1起動信号発信器又は第2起動信号発信器の出力する起動信号に関し,本件訂正発明1では,起動信号が「IDタグを起動するトリガ信号」であるのに対し,引用発明Aでは,起動信号に応答してIDタグがID番号の出力動作はするものの,起動信号がIDタグを起動させた上で,IDタグにID番号の出力動作を行わせているのか否かは,不明な点(相違点2)。 (ウ) 本件訂正発明1では,第1起動信号発信器により起動信号を出力するタイミングと第2起動信号発信器により起動信号を出力するタイミングとの関係について特段の特定がなく,また,受信器が受信する起動信号の選択についても特定がないのに対し,引用発明Aでは,第1起動信号発信器による起動信号と第2起動信号発信器による起動信号とは同期をとって出力され,また,受信器は,電波の強い方の起動信号を選択して受信する点(相違点3)。 (エ) IDタグの位置を把握するシステムに関し,本件訂正発明1では,そのシステムが「入退室管理システム」であるのに対し,引用発明Aでは,「入退室管理」を行うシステムとまでは特定のない点(相違点4)。 (4) 本件訂正発明6と引用発明Bとの対比本件審決が認定した本件訂正発明6と引用発明Bとの一致点,相違点は次のとおりである。 ア一致点起動信号に応答して,ID番号を出力するIDタグが出力したID番号を受信する受信器であって, 本件審決が認定した本件訂正発明6と引用発明Bとの一致点,相違点は次のとおりである。 ア一致点起動信号に応答して,ID番号を出力するIDタグが出力したID番号を受信する受信器であって,/前記起動信号は,それぞれ異なる位置に設けられ,相互に異なる特性を有する起動信号を出力する,複数の起動信号発信器から出力され,/前記IDタグは,受信した起動信号を特定する情報とともに前記ID番号を出力し,/前記IDタグが出力した,起動信号を特定する情報と,前記ID番号とを受信する,受信器。 イ相違点(ア) 複数の起動信号発信器が設けられる位置に関し,本件訂正発明6では,その位置が「出入口を挟んで,それぞれが異なる位置」であるのに対し,引用発明Bでは,単に「それぞれが異なる位置」である点(相違点5)。 (イ) 起動信号発信器の出力する起動信号に関し,本件訂正発明6では,起動信号が「IDタグを起動するトリガ信号」であるのに対し,引用発明 Bでは,起動信号に応答してIDタグがID番号の出力動作はするものの,起動信号がIDタグを起動させた上で,IDタグにID番号の出力動作を行わせているのか否かは,不明な点(相違点6)。 (ウ) 本件訂正発明6では,複数の起動信号発信器により起動信号を出力するタイミングについて特段の特定がなく,また,受信器が受信する起動信号の選択についても特定がないのに対し,引用発明Bでは,複数の起動信号発信器による起動信号は同期をとって出力され,また,受信器は,電波の強い方の起動信号を選択して受信する点(相違点7)。 (5) 本件訂正発明7と引用発明Cとの対比本件審決が認定した本件訂正発明7と引用発明Cとの一致点,相違点は次のとおりである。 ア一致点異なる位置に設けられた起動信号発信器から,IDタグに対 本件訂正発明7と引用発明Cとの対比本件審決が認定した本件訂正発明7と引用発明Cとの一致点,相違点は次のとおりである。 ア一致点異なる位置に設けられた起動信号発信器から,IDタグに対して相互に異なる特性を有し,複数の起動信号を出力するステップと,/起動信号発信器からの起動信号に応答して,受信した起動信号を特定する情報とともにID番号を出力するIDタグを,前記異なる位置を通過させるステップと,/受信器によって,IDタグが出力した,起動信号を特定する情報およびID番号を受信するステップとを含む,IDタグの位置を把握する方法。 イ相違点(ア) 起動信号発信器が設けられる位置に関し,本件訂正発明7では,その位置が「出入口を挟んで,異なる位置」であるのに対し,引用発明Cでは,単に「異なる位置」である点(相違点8)。 (イ) 起動信号発信器の出力する起動信号に関し,本件訂正発明7では,起動信号が「IDタグを起動する複数のトリガ信号」であるのに対し,引用発明Cでは,起動信号に応答してIDタグがID番号の出力動作はす るものの,起動信号がIDタグを起動させた上で,IDタグにID番号の出力動作を行わせているのか否かは,不明な点(相違点9)。 (ウ) 本件訂正発明7では,複数の起動信号発信器により起動信号を出力するタイミングについて特段の特定がなく,また,受信器が受信する起動信号の選択についても特定がないのに対し,引用発明Cでは,複数の起動信号発信器による起動信号は同期をとって出力され,また,受信器は,電波の強い方の起動信号を選択して受信する点(相違点10)。 (エ) IDタグの位置を把握する方法に関し,本件訂正発明7では,その方法が「入退室管理方法」であるのに対し,引用発明Cでは,「入退室管理」を行う方法とまでは特定の して受信する点(相違点10)。 (エ) IDタグの位置を把握する方法に関し,本件訂正発明7では,その方法が「入退室管理方法」であるのに対し,引用発明Cでは,「入退室管理」を行う方法とまでは特定のない点(相違点11)。 (6) 容易想到性についての判断ア本件訂正発明1について本件審決は,相違点1に係る本件訂正発明1の発明特定事項を想到することが容易ではないから,その余の相違点について検討するまでもなく,想到容易とはいえないと判断した。 イ本件訂正発明2ないし5について本件審決は,本件訂正発明2ないし5は,いずれも本件訂正発明1の発明特定事項を全て含み,更に他の発明特定事項を付加したものであるから,本件訂正発明1について示した理由と同様の理由により,想到容易とはいえないと判断した。 ウ本件訂正発明6について本件審決は,相違点5は相違点1と実質的に差異はないから,その余の相違点について検討するまでもなく,想到容易とはいえないと判断した。 エ本件訂正発明7について本件審決は,相違点8は相違点1と実質的に差異はないから,その余の相違点について検討するまでもなく,想到容易とはいえないと判断した。 4 取消事由(1) 引用発明認定の誤り(2) 相違点1の認定の誤り(3) 相違点に係る容易想到性の判断の誤り第3 取消事由に関する原告の主張 1 取消事由1(引用発明認定の誤り)について本件審決は,引用発明Aの「複数の固定無線機」について,「施設の各部屋などに設置される」と認定しながら,本件訂正発明1との対比においては,それぞれの「固定無線機」は,「施設の各部屋」に設置されると共に,「施設の各部屋」に応じた「位置信号」を送信するものであると判断した。これは,刊行物1発明(引用発明A)の構成 1との対比においては,それぞれの「固定無線機」は,「施設の各部屋」に設置されると共に,「施設の各部屋」に応じた「位置信号」を送信するものであると判断した。これは,刊行物1発明(引用発明A)の構成を刊行物1の第1図の構成に限定し,同構成に基づいて,「位置信号」は各部屋に一つの固定無線機の位置,すなわち,「施設の各部屋」に応じた位置信号であると解釈したものである。 しかし,刊行物1発明(引用発明A)のシステムが検出するのは,移動体の位置であって,正確には,移動体が所持するトランスポンデイングカードが,どの固定無線機からポーリング信号及び位置信号を受信して応答信号を出力したかである。そして,背景技術及び構成に基づけば,刊行物1発明(引用発明A)に係る移動体の位置検出システムは,システムの設置が構造的に可能であって,移動体の位置を検出したい場所に固定無線機を設置すれば良いことを含むものであるから,固定無線機の設置位置は,必ずしも施設の各部屋(部屋の内部)に限定されるものではなく,ましてや,各部屋に一つずつしか固定無線機を設けないなどと限定的に解釈される理由もない(固定無線機の取り付け位置に関する「施設の各部屋などに設置される」という特定は,施設の各部屋に設置されなければならないという必須の構成ではなく,施設の各部屋などに取り付けても良いという意味に解釈されるべきである。)。 以上のとおり,それぞれの「固定無線機」は,「施設の各部屋」に設置され ると共に,「施設の各部屋」に応じた「位置信号」を送信するものであるとした本件審決の判断は,刊行物1発明(引用発明A)の構成を刊行物1の第1図の構成に限定して不当に狭く認定したものであるから,本件審決における引用発明の認定には誤りがある。 2 取消事由2(相違点1の認定の誤り)について 物1発明(引用発明A)の構成を刊行物1の第1図の構成に限定して不当に狭く認定したものであるから,本件審決における引用発明の認定には誤りがある。 2 取消事由2(相違点1の認定の誤り)について本件審決は,相違点1として,「第1起動信号発信器が設けられる『第1の位置』及び第2起動信号発信器が設けられる『第2の位置』に関し,本件訂正発明1では,『第1の位置』が『出入口の一方側である第1の位置』であり,また,『第2の位置』が『出入口の他方側である第2の位置』であるのに対し,引用発明Aでは,『第1の位置』,『第2の位置』の各位置が施設の各部屋に対応する位置である」と認定した。また,その前提として,本件審決は,引用発明Aにおける「当該『施設の各部屋』は,それぞれ,“第1の位置”,“第2の位置”,…といい得るものであり,また,『位置信号』は,『施設の各部屋』に対応した信号であるから,引用発明Aの『ポーリング信号と位置信号』は,『施設の各部屋』に対応した異なる特性を有するものであって,“第1の特性を有する第1の信号”,“第2の特性を有する第2の信号”,…といい得るものである。」と判断した。 しかし,引用発明Aにおいて,「第1の位置」,「第2の位置」に相当するのは,刊行物1の固定無線機の取り付け位置(第1の取り付け位置,第2の取り付け位置)そのものであって,「施設の各部屋」ではない。 すなわち,刊行物1においては,首尾一貫して「(トランスポンデイングカードを携帯した)移動体の位置を検出する」と記載されており,当該システムが「部屋(の位置)を検出する」とは一切記載されていない。刊行物1発明の構成は,移動体が所持するトランスポンデイングカードが,どの固定無線機からポーリング信号(POL)及び位置信号(AD1,AD2)を受信して応答したかによ る」とは一切記載されていない。刊行物1発明の構成は,移動体が所持するトランスポンデイングカードが,どの固定無線機からポーリング信号(POL)及び位置信号(AD1,AD2)を受信して応答したかによって移動体の位置を検出するものであり,その構成上,送信部及び 受信部を含む固定無線機が部屋内に単一で配置されなければならないとはされていない。刊行物1発明において,位置信号が特定するものは,飽くまで固定無線機の取り付け位置であって,各部屋に単一の固定無線機を示す第1図の構成は例示的なものにすぎない。 したがって,「施設の各部屋」がそれぞれ「第1の位置」,「第2の位置」といい得るとした本件審決の認定判断は誤りである。 3 取消事由3(相違点に係る容易想到性の判断の誤り)について(1) 相違点1に関し,本件審決が想到容易ではないとする根拠は次の3点であるが,後記(2)ないし(4)のとおり,その判断は誤りである。 ア引用発明Aによる移動体の位置の把握は,ビルの各部屋単位での把握にとどまる。刊行物1には,移動体の位置の把握を各部屋の出入口単位で行うこと,すなわち,相違点1における本件訂正発明1に係る事項である,第1起動信号発信器が設けられる第1の位置を「出入口の一方側」とし,第2起動信号発信器が設けられる第2の位置を「出入口の他方側」とする点については,記載も示唆もない。 イ仮に,引用発明Aにおいて,施設の各部屋が,各部屋に共通の出入口や各部屋に個別となる出入口を備えていたとしても,刊行物1には,それらの各出入口毎に固定無線機を配置することも,各出入口に一方側と他方側とで一対となる固定無線機を配置することも記載がない。 ウ各部屋毎に一個ずつ設置される刊行物1の固定無線機と室の出入口に一対設けられる本件訂正発明1の第1及び第2トリ も,各出入口に一方側と他方側とで一対となる固定無線機を配置することも記載がない。 ウ各部屋毎に一個ずつ設置される刊行物1の固定無線機と室の出入口に一対設けられる本件訂正発明1の第1及び第2トリガ信号発信器とは,起動信号発信器という点で共通するにしても,起動信号発信器を設ける目的も位置も個数も相違する(から両者を同一視することはできない。)。 (2) 作用効果の観点からの検討訂正前発明については,無効審判手続において,刊行物1発明等に基づいて想到容易であり,進歩性を有しないことを理由とする無効理由が通知され ており,かかる無効理由通知を受けて,被告は本件訂正を行った。その訂正事項は,本件訂正発明1に関していえば,第1及び第2トリガ信号発信器が設けられる位置の限定(訂正事項1)と,システムの管理の対象を「動態」から,動態の一例である「入退室」への限定(訂正事項2)の2点である。 ここで,本件訂正発明の構成及び効果を考慮すると,訂正事項1は,単なる取り付け位置の変更にすぎず,また,第1及び第2のトリガ信号発信器を出入口の一方側と他方側に取り付けるための具体的な構成については,請求項中はおろか明細書中にも開示も示唆もされていない。さらに,当該位置を限定したことによって,他の構成要素が行う処理についても,取り扱う信号に「出入口」という取り付け位置を含むことが解釈上限定されただけであり,実質的な処理については何ら限定が加えられていない。 また,訂正事項2は,システムの管理の対象を「動態」から「入退室」に限定することを目的とするものであるが,訂正事項1との整合性確保のために,「(部屋の)出入り口」という変更後の取り付け位置が当然に有する「入退室」という機能を踏まえて,管理対象を「動態」から「入退室」へ表記を変更したにすぎな であるが,訂正事項1との整合性確保のために,「(部屋の)出入り口」という変更後の取り付け位置が当然に有する「入退室」という機能を踏まえて,管理対象を「動態」から「入退室」へ表記を変更したにすぎない。 したがって,各訂正事項はいずれも形式的な表現の相違にすぎない。 そして,作用効果の観点からみれば,限定されたトリガ信号発信器の取り付け位置である「出入口」の機能に基づいて,単なる「動態管理」から「出入口を通過する入退室管理」に管理対象が変更されたにすぎず,発明の本質自体は訂正前発明と実質的に何ら変化がない。 よって,本件訂正発明1における訂正事項は,当業者が想到容易な範囲内の事項であり,進歩性が否定された訂正前発明との比較において,本件訂正発明の進歩性も当然否定されるべきである。 (3) 本件訂正発明1と引用発明Aの管理対象ア管理対象の共通性 本件訂正明細書及び本件訂正後の特許請求の範囲の記載に基づけば,本件訂正発明の管理対象は,使用した出入口の場所であって,実質的な発明の効果としては,動態管理は含まれないと解釈されるべきであるから,本件訂正発明と引用発明Aの管理対象は,いずれもIDタグを携帯する移動体の位置であるという点で共通する。そして,起動信号発信器,IDタグ,受信器の各交信において,各信号の交信手段は共通し,無効審判手続において,その進歩性は否定されている。 また,起動信号発信器については,その性質上,位置を検出したい場所に取り付ければ位置検出が実現できる。それが,部屋内の任意の箇所であろうと部屋の一部である出入口であろうと,その差は設計事項にすぎない。 したがって,本件訂正発明1と引用発明Aの管理対象は共通であり,本件訂正発明1が,IDタグがどのように移動したかを管理でき,使用した出入口を特定し管 出入口であろうと,その差は設計事項にすぎない。 したがって,本件訂正発明1と引用発明Aの管理対象は共通であり,本件訂正発明1が,IDタグがどのように移動したかを管理でき,使用した出入口を特定し管理することができることを理由として,本件訂正発明1が想到容易ではないとするのは誤りである。 イ管理対象の相違性(位置管理と動態管理)仮に本件訂正発明について,入退室管理を含むとの解釈が許容されるとすれば,刊行物1には移動体の動態(どのように移動したか)を管理対象とすることについて直接的な記載がなく,入退室管理のためのシステムとはいえない点で両者は一見すると相違するが(相違点4),本件訂正発明の構成要素(二つのトリガ信号発信器,IDタグ,受信器)には,いずれも時間的な情報が含まれておらず,移動体の動態管理を行うには,二つの信号から先後関係を導くための「二つのID信号を比較する手段」を補完することが必要となる。この手段は請求項中に特定されておらず,どのようなものであっても良いから,出願時における周知慣用技術も含むことになる。 他方,刊行物1発明においても,移動体の位置を検知することが可能で あることは明らかであるところ,本件訂正発明1と同様に周知慣用技術である信号の先後関係を比較することができる手段,例えばトランスポンデイングカードから出力された信号を受信した順に先後関係を特定する手段などを補完することで,二つの信号の先後関係を特定して動態管理を実現することが可能である。 したがって,本件訂正発明はIDタグがどの出入口をどのように移動したかを管理できる一方,刊行物1には,移動体が取り付けられた人や動物の動態(どのように移動したか)を管理対象とすることの直接的な記載がないから入退室の管理が不可能であるということは,本件訂正発明1の たかを管理できる一方,刊行物1には,移動体が取り付けられた人や動物の動態(どのように移動したか)を管理対象とすることの直接的な記載がないから入退室の管理が不可能であるということは,本件訂正発明1の進歩性を肯定する理由とはならないというべきである。 (4) トリガ信号発信器の設置態様(位置,個数など)アトリガ信号発信器の取り付け位置及び個数本件審決は,刊行物1には,「各出入口毎に固定無線機を配置することも,各出入口に一方側と他方側とで一対となる固定無線機を配置することも記載がない」とする。 しかし,そもそも,本件訂正発明1は,「出入口の一方側と他方側に,第1及び第2の起動信号発信器を取り付ける」という構成であって,各出入口毎に起動信号発信器を取り付けるという発明特定事項自体がないのであるから,これがあることを前提とする対比自体が不当である。 また,仮にこの対比を許容したとしても,トリガ信号発信器の取り付け位置及び個数については,当初明細書の段落【0002】に特許文献として記載されている特開2003-178381号公報(甲12)に,部屋の各出入口にIDタグと交信する二つの信号発信装置(アンテナ)が出入口の通過方向に沿って配列されている構成(図4)や,各信号発信装置を独立させた構成(図6)が記載されている(甲12は,当初明細書に特許文献として記載されているものであるから,その性質上,進歩性判断にお いては,当然参酌されるべきものである。)。 また,甲12に記載された発明は,発明の名称を「入退出監視システム及びこれを用いた入退出移動監視システム」というものであり,本件訂正発明1と同様に,IDタグの位置を検出して部屋の入退出を監視するシステムである。 したがって,IDタグを用いた位置検出において,二つの通信装置を 入退出移動監視システム」というものであり,本件訂正発明1と同様に,IDタグの位置を検出して部屋の入退出を監視するシステムである。 したがって,IDタグを用いた位置検出において,二つの通信装置を各出入口の通過方向に沿って配置すること自体は,被告が認識していた事項であり,起動信号発信器を各部屋の出入口にその移動方向に沿って複数設けること自体は,格別の技術的意義を有するものではない。 なお,被告は,たった一つの文献をもって当業者の技術常識を論じること自体意味がないと指摘するが,この点に関する公知文献としては,ほかにも,甲13(実開平5-71955号公報),甲14(特開2001-216547号公報)及び甲15(特開2004-334546号公報)が存在し,技術常識の認定は十分に可能である。 イトリガ信号発信器の目的本件審決は,出入口を挟んで設けられる第1及び第2のトリガ信号発信器が一対であることを前提として引用発明Aと対比判断しているが,本件訂正明細書を考慮すれば,「一対」とは,同じ出入口を挟んで設けられているという「取り付け位置が表裏一対」という意味に解釈されるべきであって,各出入口に設けられた二つのトリガ信号発信器を入退室の検出のために紐づける「一対として管理すること」という解釈は認められない。 また,仮にかかる解釈が許容されたとしても,その構成は甲12に記載されている。 よって,一対として管理するというトリガ発信器の設置目的によって進歩性を認めた本件審決の判断は,本件訂正発明の請求項に記載がない構成に基づく効果を斟酌したものである。また,二つの発信器を(一つの出入 口に)一対として配置することは,出願前からの周知技術にすぎず,格別の技術的意義を有するものではない。 (5) 小括以上のとおり,本件訂正発明1は る。また,二つの発信器を(一つの出入 口に)一対として配置することは,出願前からの周知技術にすぎず,格別の技術的意義を有するものではない。 (5) 小括以上のとおり,本件訂正発明1は,無効理由を有する訂正前発明1との比較においても進歩性を有さない。また,トリガ信号発信器の取り付け位置などを特定する相違点1は,請求項の記載に基づかないものであると同時に引用発明A及び公知技術によって想到容易というべきである。 したがって,引用発明Aとの相違点1に係る本件訂正発明1の発明特定事項を想到することが当業者によって容易になし得たものとすることができないとする本件審決の判断は誤りである。 4 他の請求項に係る発明についての判断上記のとおり,相違点1に係る判断が誤りである以上,これと同様の理由により(すなわち,本件訂正発明2ないし5については,本件訂正発明1の発明特定事項を全て含むことを理由に,本件訂正発明6及び7については,相違点1と実質的に差異がない相違点を含むことを理由に)容易想到性を否定した本件訂正発明2ないし7についての判断も誤りである。 第4 被告の反論 1 取消事由1(引用発明認定の誤り)について刊行物1においては,固定無線機が施設の各部屋に設置される場合のみが記載されており(第3欄8行以下,第4欄36行以下,第1図など),それ以外にどのような応用が可能かについては記載も示唆もない。 そもそも,刊行物1発明は,移動体の位置検出が不正確になるのを防ぐために,施設の壁面のシールドを完全にしたり,固定無線機の位置を細かく調整することも考えられるが,技術的に難しく,しかも費用がかさむといった問題があったことを課題とし(第3欄26行~35行),施設における各部屋のシールドの強化や固定無線機の位置の細かい調整を行う く調整することも考えられるが,技術的に難しく,しかも費用がかさむといった問題があったことを課題とし(第3欄26行~35行),施設における各部屋のシールドの強化や固定無線機の位置の細かい調整を行うことなく移動体の位置を正 確にしかも容易に把握することができる,という効果を奏するものである(第4欄26行~29行,第6欄21行~24行)。すなわち,刊行物1発明は基本的に壁で仕切られた部屋に人がいるかいないかという,壁で仕切られた部屋単位での位置検出しか考慮していない。 仮に,施設の各部屋「など」という表現が用いられていることをもって,固定無線機が施設の各部屋に設置される場合以外の何らかの応用例を想定し得るとしても,刊行物1発明は移動体の位置を検出するために固定無線機を移動体の壁で仕切られた各立ち寄り先に一つずつ配置するシステムである以上,そこで想定され得る応用例は,せいぜい「同室内の壁で仕切られた各所定領域(ブース等)」程度である。 すなわち,刊行物1には,固定無線機を出入口の「一方側」と「他方側」に設置することについて,何らの記載も示唆もないし,刊行物1に接した当業者がその応用例として固定無線機を出入口の「一方側」と「他方側」に設置することを想起することはない。 したがって,原告の主張は理由がない。 2 取消事由2(相違点1の認定の誤り)について原告が主張するように,刊行物1発明において,位置信号が特定するものが固定無線機の取り付け位置そのものであるとしても,実施例(第1図)において固定無線機が「施設の各部屋」に1個ずつ設置されていることや,同発明によって実現される作用効果からすれば,同発明が実現を意図しているのは,移動体がどの「部屋」(あるいは固定無線機の設置箇所を含む一定領域)に所在するのかを把握することであ 置されていることや,同発明によって実現される作用効果からすれば,同発明が実現を意図しているのは,移動体がどの「部屋」(あるいは固定無線機の設置箇所を含む一定領域)に所在するのかを把握することである。 言い換えれば,刊行物1発明は,「固定無線機からの電波受信可能領域」(検知エリア)と「その固定無線機が置かれた部屋の領域」とが,ほぼイコールであるという認識を前提とした発明である。 しかし,両者は決してイコールではない。すなわち,ある部屋において,固 定無線機からの電波が部屋全体に到達するように設定しようとすれば,どうしても,①隣接する部屋同士の各固定無線機からの電波が重複する領域が発生し,また,②固定無線機からの電波受信可能領域が当該部屋の外(例えばビルの外や廊下)にも生じてしまうのである。 かかる測定誤差が生じたとしても,移動体ないしトランスポンデイングカードの大まかな位置を知るというためであれば問題ないかもしれないが,入退室管理の観点からは致命的な機能的欠陥になり得る。 刊行物1発明は,上記①の問題(電波の重複問題)に対処するために,複数の固定無線機から発信される信号を同期させ,トランスポンデイングカードに「固定無線機から送信される位置信号のうち電波の強い方の位置信号を受信して記憶するメモリを具備する」という方法を採用している。しかし,このような方法を用いても,二つの信号の強さが同じ場合には,位置が検出できないか誤検知の可能性がある。また,現実には,障害物の存在や壁での反射等によって,固定無線機からの距離と電波の強さとが完全な正比例になることはないため,誤検知の可能性が高い方法であるといわざるを得ない。しかも,刊行物1発明は,上記②の問題(域外検出問題)については何らの対応策も示していない。 これに対し,本件 全な正比例になることはないため,誤検知の可能性が高い方法であるといわざるを得ない。しかも,刊行物1発明は,上記②の問題(域外検出問題)については何らの対応策も示していない。 これに対し,本件訂正発明1は,「固定無線機からの電波受信可能領域」と「その固定無線機が置かれた部屋の領域」とは概ね一致するという前提(擬制)を採用せず,固定無線機を部屋の出入口の「一方側」と「他方側」に設置し,部屋全体ではなく,出入口の両側の検知エリアを2点計測することによって,上記①や②の問題をクリアしたものであり,正確な入退室管理を実現したものである。 このように,刊行物1発明と本件訂正発明1とは,よって立つ前提が異なるのみならず,それによって実現される作用効果も全く異なるものである(刊行物1発明においては,固定無線機を出入口の「一方側」と「他方側」に設置す ることについて,何らの記載も示唆もないことは明らかであって,かかる点は相違点を構成する。)。 よって,原告の主張は理由がない。 3 取消事由3(相違点に係る容易想到性の判断の誤り)について(1) 作用効果の観点からの検討について原告は,本件訂正に係る訂正事項は,形式的な表現の相違にすぎず,進歩性が否定された訂正前発明との比較において,本件訂正発明の進歩性も当然に否定されるべきであるなどと主張する。 しかしながら,「第1の位置」,「第2の位置」をそれぞれ「出入口の一方側である第1の位置」,「前記出入口の他方側である第2の位置」とする訂正及び「動態管理システム」を「入退室管理システム」とする訂正によって,本件訂正発明が「固定無線機からの電波受信可能領域」と「その固定無線機が置かれた部屋の領域」とは概ね一致するとの認識を前提とする刊行物1発明とは本質的に異なる構成を採用していることが 訂正によって,本件訂正発明が「固定無線機からの電波受信可能領域」と「その固定無線機が置かれた部屋の領域」とは概ね一致するとの認識を前提とする刊行物1発明とは本質的に異なる構成を採用していることが,より一層明確になったものであって,単なる形式的な表現の相違にとどまるものではない。 また,そもそも訂正前発明が進歩性を欠くとの職権審理結果通知書に記載された判断は,上記のような訂正前発明と刊行物1発明との本質的な構成上の差異を看過し,相違点2や相違点3を不当に軽視したものであって,誤っているから,原告の主張はその前提を欠く。 (2) 本件訂正発明1と引用発明Aの管理対象についてア管理対象の共通性について本件訂正発明は,引用発明Aのように,部屋全体を検知エリアとするのではなく,出入口の一方側と他方側に検知エリアを絞った上で,2点計測を行うことによって入退室管理を行うものである。これにより入退室が正確に把握できることは明らかであり,発明の効果として動態管理が含まれないとする原告の主張は理由がない。 また,部屋全体を覆うように固定無線機の検知エリアを設定する刊行物1発明は,大まかな移動体の所在を把握することは可能であっても,出入口の一方側と他方側に検知エリアを設定する本件訂正発明のように,正確に入退室管理を行うことは不可能である。このように,両者の管理対象は異なるものであり,実現される作用効果も異なる以上,かかる差異を無視して,単なる設計事項にすぎないなどと矮小化することは認められない。 イ管理対象の相違性(位置管理と動態管理)について本件訂正発明においては,発信器を「出入口の一方側である第1の位置」と「出入口の他方側である第2の位置」に設けることによって入退室管理をすることが発明特定事項として記載されているのであ について本件訂正発明においては,発信器を「出入口の一方側である第1の位置」と「出入口の他方側である第2の位置」に設けることによって入退室管理をすることが発明特定事項として記載されているのであるから,本件訂正発明のシステムが出入口を挟む2点を経時的に計測した結果に基づいて入退室を判断する(例えば,出入口の外側がIDタグを検知し,次いで内側が同一ID番号のIDタグを検知すれば「入室」と判断する。)ことは,当業者であれば容易に理解できる。 他方,刊行物1発明においては,部屋全体を覆うように広く検知エリアを設定することから,同発明のみによって部屋の内外を正確に区別することは不可能であって,同発明によって入退室管理を行うことはできない。 したがって,原告の主張は理由がない。 (3) トリガ信号発信器の設置態様(位置,個数など)についてアトリガ信号発信器の取り付け位置及び個数について原告は,刊行物1には,「各出入口毎に固定無線機を配置することも,各出入口に一方側と他方側とで一対となる固定無線機を配置することも記載がない」との本件審決の認定に関し,本件訂正発明1には,各出入口毎に起動信号発信器を取り付けるという発明特定事項自体がないなどと主張する。 しかし,本件訂正発明1は,出入口の一方側と他方側に一対の発信器を 配置するものである以上,複数の出入口がある部屋に本件訂正発明1を当てはめれば発信器を各出入口毎に取り付けることになるのは自明であり,本件審決の認定に何ら誤りはない。 また,原告は,甲12に基づいて,IDタグを用いた位置検出において,二つの通信装置を各出入口の通過方向に沿って配置すること自体は,被告が認識していた事項であり,起動信号発信器を各部屋の出入口にその移動方向に沿って複数設けること自体は,格別の いた位置検出において,二つの通信装置を各出入口の通過方向に沿って配置すること自体は,被告が認識していた事項であり,起動信号発信器を各部屋の出入口にその移動方向に沿って複数設けること自体は,格別の技術的意義を有するものではないなどと主張する。 しかし,甲12については,新たな公知文献として提出する趣旨であれば,そのような証拠提出は許されないというべきであるし,技術常識の立証のために提出する趣旨であれば,たった一つの文献をもって当業者の技術常識を論じること自体意味がない。 また,原告が主張するように,甲12と本件訂正発明が,「部屋の各出入口にIDタグと交信する二つの信号発信装置(アンテナ)が出入口の通過方向に沿って配列されている」という構成において共通するとしても,甲12は,アンテナを時分割で切り替える方式によって入退出管理を行うものであって,本件訂正発明とは基本的な構成が全く異なる。そうであるからこそ,本件訂正発明は,甲12が引用文献とされつつも進歩性が認められて特許されたのであり,原告の主張は理由がない。 なお,原告は,ほかにも公知文献が存在するとして甲13ないし15を提出するが,いずれも本件訂正発明とは構成等が異なっている。 イトリガ信号発信器の目的について原告は,本件訂正明細書を考慮すれば,「一対」とは,同じ出入口を挟んで設けられているという「取り付け位置が表裏一対」という意味に解釈されるべきであって,各出入口に設けられた二つのトリガ信号発信器を入退室の検出のために紐づける「一対として管理すること」という解釈は認 められないなどと主張する。 確かに,本件訂正発明の請求項には二つのトリガ信号発信器を一対として管理するということは記載されていないが,発明特定事項として,同じ出入口を挟んで二つのトリガ信号発信 められないなどと主張する。 確かに,本件訂正発明の請求項には二つのトリガ信号発信器を一対として管理するということは記載されていないが,発明特定事項として,同じ出入口を挟んで二つのトリガ信号発信器を設けることに加え,IDタグが,それぞれのトリガ信号発信器からのトリガ信号に応答して,受信したトリガ信号を特定する情報と共に自らのID番号を出力すること,入退室管理システムであることが明記されている以上,同システムにおいて,二つのトリガ信号発信器からの各トリガ信号に含まれるトリガ信号を特定する情報を入退室の検出のために紐づけるべきことは,当業者であれば容易に理解できるというべきである。 また,原告は,仮に上記解釈が許容されたとしても,その構成は甲12に記載されているから,二つの発信器を(一つの出入口に)一対として配置することについては,出願前からの周知技術にすぎず,格別の技術的意義を有するものではないなどとも主張するが,審決取消訴訟において新たな公知文献に基づく無効主張が許されないこと,たった一つの文献をもって技術常識を論じるのは無意味であることは前記のとおりであるし,仮に二つの発信器を一対として配置することが周知技術であったとしても,発明の課題が全く異なる刊行物1発明(前記のとおり,同発明は大まかな範囲で対象者〔物〕の所在を把握することを目的とするものである。)に,原告の主張する周知技術を組み合わせる動機付けがない。 (4) 以上のとおり,取消事由3に係る原告の主張は,いずれも根拠を欠いており,理由がないというべきである。 第5 当裁判所の判断 1 取消事由1(引用発明認定の誤り)について(1) 原告は,引用発明Aの認定に誤りがあると主張するので,まず刊行物1の記載内容と,その記載内容から認識できる刊行物1発明の内容について検討 判断 1 取消事由1(引用発明認定の誤り)について(1) 原告は,引用発明Aの認定に誤りがあると主張するので,まず刊行物1の記載内容と,その記載内容から認識できる刊行物1発明の内容について検討 する。 ア刊行物1の記載内容刊行物1には,次の記載が認められる(甲1の2)。 (ア) 特許請求の範囲「1(a) 施設に設けられる信号の処理装置と,/(b) 該処理装置に接続され,ポーリング信号と位置信号とを同期をとつて送信する送信部及び信号を受信する受信部を具備する複数の固定無線機と,/(c) 移動体に取り付けられ,かつ該固定無線機から送信される位置信号のうち電波の強い方の位置信号を受信して記憶するメモリを具備するトランスポンデイングカードとを設け,/(d) 該トランスポンデイングカードはポーリング信号の受信に応答して自己を特定する信号及び前記メモリに記憶された位置信号を送信し,該信号を固定無線機で受信し,該固定無線機で受信した信号に基づいて前記処理装置にて移動体の位置を検出するトランスポンデイングカードによる位置検出システム。」(第1欄2行~末行)(イ) 発明の詳細な説明a 産業上の利用分野「本発明は,IC(集積回路)カードに蓄積されたID(個別認識)コードやデータを無線により収集することのできる無線応答方式における移動体の位置検出システムに関するものである。」(第2欄3行~6行)b 従来の技術「従来,移動無線通信を行う場合は,例えば,以下のような方式によっている。即ち,第5図は車両などの移動体の位置検出に用いられるAVMシステム分散受信方式を示す構成図,第6図はその通信信号のタイムチャートである。 これらの図に示されるように,無線送信機1から電波として送出されたポーリング信号(POL) いられるAVMシステム分散受信方式を示す構成図,第6図はその通信信号のタイムチャートである。 これらの図に示されるように,無線送信機1から電波として送出されたポーリング信号(POL)に対して各移動体a~bに取り付けられる携帯無線機が個別認識(ID)信号を受信機2に返すとその信号の受信されたゾーンにその移動体が存在することで位置の判別ができるようになっている。 ポーリング信号に対して予め付与されたID信号を含む応答信号が移動体の携帯無線機から受信機2に受信される。この応答信号がどの受信機2で受信されたか分かれば,処理装置3で処理することによりデイスプレイ4に移動体の位置を表示させることができる。 高度な情報通信機能とビル管理機能を併せ持つインテリジエントビルにこの通信システムを採用すると,例えば,第7図に示されるようになる。即ち,ビルの各部屋などに固定無線機(TRX)5,6を設置し,この固定無線機5,6からアンテナを介してポーリング信号(POL)が発信されると,移動体7~9の携帯無線機からIDコードを含む応答信号が戻り,その応答信号が固定無線機5,6によつて受信され,処理装置3に送られる。 第8図はその通信信号のタイムチヤートであり,第5図に示されるものと同様に移動体の携帯無線機からのID信号を含む応答信号がどの固定無線機によつて受信されたかが分かれば,移動体7~9の位置が認識できるため,移動体の行先が分かり各種の応用システムを構成することができる。」(第2欄8行~第3欄24行)c 発明が解決しようとする問題点「しかしながら,上記システムの場合,第9図及び第10図に示されるように,移動体10の携帯無線機からの電波が複数の固定無線機5,6に受信される可能性があり,固定無線機5と固定無線機6の両方の位置信号が処 しながら,上記システムの場合,第9図及び第10図に示されるように,移動体10の携帯無線機からの電波が複数の固定無線機5,6に受信される可能性があり,固定無線機5と固定無線機6の両方の位置信号が処理装置3に送信されるために,移動体の位置検出が不正 確になる。これを防ぐために施設の壁面のシールドを完全にしたり,固定無線機の位置を細かく調整することも考えられるが,技術的に難しく,しかも費用がかさむといつた問題があつた。 また,移動体はIDコードを発信するためには携帯無線機を必要とし,持ち運びが煩わしいと共にその取扱いも面倒であつた。 本発明は,上記問題点を除去し,移動体の位置を正確に,しかも容易に検出することができるトランスポンデイングカードによる位置検出システムを提供することを目的とする。」(第3欄26行~42行)d 問題点を解決するための手段「本発明は,上記問題点を解決するために,移動体の位置を検出するトランスポンデイングカードによる位置検出システムであつて,施設に設けられる信号の処理装置と,該処理装置に接続され,ポーリング信号と位置信号とを同期をとつて送信する送信部及び信号を受信する受信部を具備する複数の固定無線機と,移動体に取り付けられ,かつ該固定無線機から送信される位置信号のうち電波の強い方の位置信号を受信して記憶するメモリを具備するトランスポンデイングカードとを設け,該トランスポンデイングカードはポーリング信号の受信に応答して自己を特定する信号及び前記メモリに記憶された位置信号を送信し,該信号を固定無線機で受信し,該固定無線機で受信した信号に基づいて前記処理装置にて移動体の位置を検出するようにしたものである。」(第3欄末行~第4欄15行)e 作用「本発明によれば,上記したように,固定無線機から送信さ 該固定無線機で受信した信号に基づいて前記処理装置にて移動体の位置を検出するようにしたものである。」(第3欄末行~第4欄15行)e 作用「本発明によれば,上記したように,固定無線機から送信される位置信号のうち電波の強い方の位置信号を受信して記憶するメモリを具備するトランスポンデイングカードを設け,このトランスポンデイングカードはポーリング信号の受信に応答して自己を特定する信号及び前 記メモリに記憶された位置信号を送信し,該信号を固定無線機で受信し,該固定無線機で受信した信号に基づいて処理装置にて移動体の位置を検出する。 したがつて,施設における各部屋のシールドの強化や固定無線局の位置の細かい調整を行うことなく,移動体の位置を正確に,しかも容易に把握することができる。」(第4欄17行~29行)f 実施例「以下,本発明の実施例について図面に基づいて詳細に説明する。 なお,ここでトランスポンデイングカード(以下,TRCという)とは,ICカードに無線通信機能を付加したものをいう。 第1図は本発明に係るTRCによる位置検出システム構成図であり,第2図はその位置検出システムにおける通信信号のタイムチヤート,第3図はTRCの構成図である。 図中,11,12は施設の部屋などに設置される固定無線機,13,14は固定無線機11,12にそれぞれ接続されるアンテナ,15は人や動物などの移動体に取り付けられるTRC,16は施設のセンタなどに設けられる処理装置であり,各固定無線機11,12から送信される信号を処理する。 ここで,まず,TRCの構成について説明する。 第3図において,15-1はTRC全体の管理・制御を行う制御部,15-2は無線通信の制御手順やTRC自体のIDコード及び位置情報を記憶するメモリ,15-3は固定 ,TRCの構成について説明する。 第3図において,15-1はTRC全体の管理・制御を行う制御部,15-2は無線通信の制御手順やTRC自体のIDコード及び位置情報を記憶するメモリ,15-3は固定無線機との無線送受信を行う無線送受信部,15-4はIDコードなどのデータを入力するためのキー入力部,15-5はTRC内の各部に電力を供給する電源部である。 なお,図示されていないが,各種の情報を表示する表示部,時刻信号を発生させる時計部などを設けることもできる。 また,このTRCは軽薄短小なカード状に構成され簡単に身に付けることができる。 次に,このTRCによる位置検出システムについて説明する。 施設の所定の部屋などに設けられる固定無線機(TRX)11,12からポーリング信号(POL)と共に各々の固定無線機の位置を示すアドレス信号(AD1,AD2)を付加して送信する。この場合,各固定無線機TRXからの送信信号は全て同じタイミングで送出する。従つて,TRC15には複数のポーリング信号とアドレス信号,つまり,POL+AD1とPOL+AD2のどちらでも到達することがあるが,電波の強い方の信号POL+AD1が電波の弱い方の信号POL+AD2をマスクするため,TRC15にはアドレスAD1のみが蓄積されることになる。その後,TRC15は応答信号としてID信号と位置信号ID+AD1を送出する。この応答信号は各固定無線機で受信され,その受信された信号は処理装置16によつて処理されTRC15の位置が検出される。この場合,ID+AD1の信号が固定無線機11と12に同時に受信された場合にも,受信信号内に位置信号を含んでいるため,処理装置16は位置を誤つて判定することはない。 第4図は本発明の他の実施例を示す通信信号のタイムチヤートであ 無線機11と12に同時に受信された場合にも,受信信号内に位置信号を含んでいるため,処理装置16は位置を誤つて判定することはない。 第4図は本発明の他の実施例を示す通信信号のタイムチヤートであり,常時は一定時間毎に位置信号(AD1,AD2)が送出され,必要な時にのみポーリング信号(POL)が送出されるようにしている。」(第4欄31行~第5欄43行)g 発明の効果「以上,詳細に説明したように本発明によれば…(1) 施設における各部屋のシールドの強化や固定無線機の位置の細かい調整を行うことなく,移動体の位置を正確に,しかも容易に把握 することができる。 (2) また,そのシステム構成が従来のものに比して,極めて簡素化されている。 (3) 更に,本発明に係るTRCによる位置検出をインテリジエントビルのコントロールシステムのサブシステムとして用いる時は,そのビルの一層の機能向上を図ることができる。また,このシステムを採用するにあたり施設側に格別の改造を加える必要がないため,既設ビルへの適用も極めて容易に行うことができる。」(第6欄5行~33行)(ウ) 図面a 第1図 b 第2図 c 第5図 d 第7図 イ刊行物1の記載内容から認識できる刊行物1発明の内容上記アの記載内容からすれば,刊行物1には次の従来技術とその課題,課題解決手段としての発明の内容が記載されているものと認識することができる。 (ア) 刊行物1発明は,IC(集積回路)カードに蓄積されたID(個別認識)コードやデータを無線により収集することのできる無線応答方式における移動体の位置検出システムに関するものである(上記ア(イ)a)。 (イ) 従来の移動体の位置検出に用いられる方式(AVMシステム分散受信 方 無線により収集することのできる無線応答方式における移動体の位置検出システムに関するものである(上記ア(イ)a)。 (イ) 従来の移動体の位置検出に用いられる方式(AVMシステム分散受信 方式・第5図)では,無線送信機から電波として送出されたポーリング信号(POL)に対して各移動体に取り付けられる携帯無線機が個別認識(ID)信号を受信機に返すとその信号の受信されたゾーンにその移動体が存在することで位置の判別ができるようになっている。 これを,高度な情報通信機能とビル管理機能を併せ持つインテリジエントビルに採用した場合(第7図),ビルの各部屋などに固定無線機(TRX)を設置し,この固定無線機からアンテナを介してポーリング信号(POL)が発信されると,移動体の携帯無線機からIDコードを含む応答信号が戻り,その応答信号が固定無線機によって受信され処理装置に送られることとなる。 しかし,このシステムの場合,移動体の携帯無線機からの電波が複数の固定無線機に受信される可能性があり,この場合,両方の固定無線機の位置信号が処理装置に送信されるために,移動体の位置検出が不正確になる。(特に上記インテリジエントビルに従来の位置検出方式を採用した場合には)これを防ぐために施設の壁面のシールドを完全にしたり,固定無線機の位置を細かく調整することも考えられるが,技術的に難しく,しかも費用がかさむといった問題があった。また,移動体はIDコードを発信するためには携帯無線機を必要とし,持ち運びが煩わしいと共にその取扱いも面倒であるという課題があった。 そこで,刊行物1発明は,上記問題点を除去し,移動体の位置を正確に,しかも容易に検出することができるトランスポンデイングカードによる位置検出システムを提供することを目的とするものである(上記ア(イ)b,c) 行物1発明は,上記問題点を除去し,移動体の位置を正確に,しかも容易に検出することができるトランスポンデイングカードによる位置検出システムを提供することを目的とするものである(上記ア(イ)b,c)。 (ウ) そして,上記課題を解決するために,刊行物1発明(引用発明A)は,施設に設けられる信号の処理装置と,該処理装置に接続され,ポーリング信号と位置信号とを同期をとって送信する送信部及び信号を受信する 受信部を具備する複数の固定無線機と,移動体に取り付けられ,かつ該固定無線機から送信される位置信号のうち電波の強い方の位置信号を受信して記憶するメモリを具備するトランスポンデイングカードとを設け,該トランスポンデイングカードはポーリング信号の受信に応答して自己を特定する信号及び前記メモリに記憶された位置信号を送信し,該信号を固定無線機で受信し,該固定無線機で受信した信号に基づいて前記処理装置にて移動体の位置を検出するトランスポンデイングカードによる位置検出システムという構成を採用することにより,(特に上記インテリジエントビルに従来位置検出方式を採用した場合に)施設における各部屋のシールドの強化や固定無線局の位置の細かい調整を行うことなく,移動体の位置を正確にしかも容易に把握することができると共に,システム構成が従来のものに比して極めて簡素化されており,また,インテリジエントビルのコントロールシステムのサブシステムとして用いるときは,そのビルの一層の機能向上が図られ,そして,施設側に格別の改造を加える必要がないため,既設ビルへの適用も極めて容易に行うことができるという作用効果を奏するものである(上記ア(ア),同(イ)d,e,g)。 (2) 以上に基づいて検討するに,本件審決が認定した引用発明Aは前記第2の3(2)アのとおりであり, 易に行うことができるという作用効果を奏するものである(上記ア(ア),同(イ)d,e,g)。 (2) 以上に基づいて検討するに,本件審決が認定した引用発明Aは前記第2の3(2)アのとおりであり,要するに,入退室管理システムである本件訂正発明1との対比を前提に,前記(1)ア(ア)の特許請求の範囲における「複数の固定無線機」の前に「施設の各部屋などに設置される」なる文言を付加したものであると認められる。 ここで,刊行物1の(実施例)の項における,「本発明の実施例…トランスポンデイングカード(以下,TRCという)…このTRCによる位置検出システムについて説明する。施設の所定の部屋などに設けられる固定無線機(TRX)11,12…」との記載(前記(1)ア(イ)f)及び第1図(同(ウ)a) によれば,刊行物1には,実施例として,複数の固定無線機が施設の所定の各部屋にそれぞれ設けられる構成が示されているといえることから,その実施例に係る技術内容を明細書に記載されている発明として扱うこと自体は相当である。しかしながら,他方で,刊行物1における発明の目的に関する記載(前記(1)ア(イ)c)や,課題解決手段としての特許請求の範囲の記載(同(ア))及び(問題を解決するための手段)の項の記載(同(イ)d)などを踏まえると,同発明の要点は,(移動体に取り付けられる)トランスポンデイングカードが固定無線機から送信される位置信号のうち電波の強い方の位置信号を受信して記憶するという点と,同カードが自己を特定する信号と共に記憶された位置信号を送信する(送り返す)という点にあり,これにより(施設内における)移動体の正確かつ容易な位置検出を実現しようとするものであるから,要は受信された電波の強弱が識別できれば足りるのであって,複数の固定無線機が「施設の各部 という点にあり,これにより(施設内における)移動体の正確かつ容易な位置検出を実現しようとするものであるから,要は受信された電波の強弱が識別できれば足りるのであって,複数の固定無線機が「施設の各部屋」に設置されていることは必ずしも要求されておらず,ましてや,当然に部屋単位での位置検出が前提にされているわけでもない。すなわち,複数の固定無線機の設置位置を「施設の各部屋」に限定することと課題解決手段との間に特に技術的関連性があるとは認められず,また,そのような限定がなくとも,刊行物1発明の課題を解決し作用効果を奏することは可能であると認められるから,同発明を上記実施例に係る技術内容に限定してしまうことは相当でない(上記実施例の記載は,飽くまで発明の一実施態様を示したものにすぎず,そのことにより刊行物1から他の態様による実施が読み取れないとはいえない。)。 したがって,引用発明Aについても,上記実施例に係る技術内容を含むものとして認定することは差し支えないが,かかる技術内容に限定することは相当でなく,本件訂正発明1との対比は,飽くまで複数の固定無線機の設置位置が「施設の各部屋」を含むがこれに限定されないものとして認定した引用発明Aをもってなされるのが相当である。 かかる観点から改めて本件審決が認定した引用発明Aを検討するに,「施設の各部屋などに設置される」の「など」は飽くまで例示であって,文言上は,複数の固定無線機の設置位置が「施設の各部屋」に限定されるものとは解されないから,その限りにおいて本件審決の認定は相当である。 これに対し,原告は,本件審決が,本件訂正発明1との対比において,引用発明Aの構成を刊行物1の第1図の構成に限定して不当に狭く認定していると主張するが,上記のとおり引用発明Aの認定自体に誤りはないというべ 対し,原告は,本件審決が,本件訂正発明1との対比において,引用発明Aの構成を刊行物1の第1図の構成に限定して不当に狭く認定していると主張するが,上記のとおり引用発明Aの認定自体に誤りはないというべきであり,原告の主張の当否については,対比の相当性,すなわち,相違点の認定や容易想到性の判断に誤りがないかどうかという観点から別途検討されるべきものというのが相当である。 (3) 以上の次第であるから,原告が主張する取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(相違点1の認定の誤り)について(1) 前記のとおり,刊行物1における発明の目的に関する記載(前記1(1)ア(イ)c)や,課題解決手段としての特許請求の範囲の記載(同(ア))及び(問題を解決するための手段)の項の記載(同(イ)d)を踏まえると,複数の固定無線機の設置位置を「施設の各部屋」に限定することと課題解決手段との間に特に技術的関連性があるとは認められず,また,そのような限定がなくとも,刊行物1発明の課題を解決し,その作用効果を奏することは可能であると認められるから,同発明を上記実施例に係る技術内容に限定してしまうことは相当でなく,本件訂正発明1との対比は,飽くまで複数の固定無線機の設置位置が「施設の各部屋」を含むがこれに限定されないものとして認定した引用発明Aをもってなされるのが相当である(したがって,引用発明Aにおける「施設の各部屋などに設置される」の文言は,飽くまで設置位置を例示するものにすぎず,発明の構成上,設置位置はこれに限られないものと解することになる。)。 そのような観点からすると,本件訂正発明1と引用発明Aとを対比して認 定されるべき相違点のうち,第1起動信号発信器が設けられる「第1の位置」及び第2起動信号発信器が設けられる「第2の位置」に関するもの(本 点からすると,本件訂正発明1と引用発明Aとを対比して認 定されるべき相違点のうち,第1起動信号発信器が設けられる「第1の位置」及び第2起動信号発信器が設けられる「第2の位置」に関するもの(本件審決における相違点1に相当する。)については,本来, 下記のとおり認定されるべきである。 「第1起動信号発信器が設けられる『第1の位置』及び第2起動信号発信器が設けられる『第2の位置』に関し,本件訂正発明1では,『第1の位置』が『出入口の一方側である第1の位置』であり,また,『第2の位置』が『出入口の他方側である第2の位置』であるのに対し,引用発明Aでは,『第1の位置』,『第2の位置』の各位置が特定(限定)されていない点」(以下「相違点1´」という。なお,下線は相違点1との対比のために便宜上付したものである。)(2) そして,上記のように相違点1´を認定した場合,仮に同相違点に係る構成(移動体の位置検出を行うために複数の起動信号発信器を出入口の一方側と他方側に設置する構成)が本件特許の出願時において周知であったとすれば,引用発明Aとかかる周知技術とは,移動体の位置検出を目的とする点において,関連した技術分野に属し,かつ,共通の課題を有するものと認められ,また,引用発明Aは,複数の固定無線機の設置位置を特定(限定)しないものである以上,前記の周知技術を適用する上で阻害要因となるべき事情も特に存しないことになる(前記のとおり,第1図に関連する「施設の所定の部屋」を固定無線機の設置位置とする実施例の記載は,飽くまで発明の一実施態様を示したものにすぎず,そのことにより刊行物1から「施設の各部屋」を設置位置とする以外の他の態様による実施が読み取れないとはいえない。)。 したがって,以上の相違点の認定(相違点1´)を前提とすれば,上記技術 ぎず,そのことにより刊行物1から「施設の各部屋」を設置位置とする以外の他の態様による実施が読み取れないとはいえない。)。 したがって,以上の相違点の認定(相違点1´)を前提とすれば,上記技術分野の関連性及び課題の共通性を動機付けとして,引用発明Aに対し前記の周知技術を適用し,相違点1´に係る本件訂正発明1の構成を採ることは, 当業者であれば容易に想到し得るとの結論に至ることも十分にあり得ることというべきである。 (3) ところが,本件審決は,かかる相違点を,前記第2の3(3)イ(ア)のとおり,「第1起動信号発信器が設けられる『第1の位置』及び第2起動信号発信器が設けられる『第2の位置』に関し,本件訂正発明1では,『第1の位置』が『出入口の一方側である第1の位置』であり,また,『第2の位置』が『出入口の他方側である第2の位置』であるのに対し,引用発明Aでは,『第1の位置』,『第2の位置』の各位置が施設の各部屋に対応する位置である点」(相違点1。なお,下線は相違点1´との対比のために便宜上付したものである。)と認定した上,「引用発明Aによる移動体の位置の把握は,ビルの各部屋単位での把握に留まる」と断定し,「刊行物1には,移動体の位置の把握を各部屋の出入口単位で行うこと,即ち,相違点1における本件訂正発明1に係る事項である,第1起動信号発信器が設けられる第1の位置を『出入口の一方側』とし,第2起動信号発信器が設けられる第2の位置を『出入口の他方側』とする点については,記載も示唆もない」から,他の相違点について検討するまでもなく,本件訂正発明1が刊行物1発明(引用発明A)から想到容易ではないと結論付けたものである。 これは,本来,複数の固定無線機の設置位置を特定(限定)しない(「施設の各部屋」は飽くまで例示にすぎない)もの 正発明1が刊行物1発明(引用発明A)から想到容易ではないと結論付けたものである。 これは,本来,複数の固定無線機の設置位置を特定(限定)しない(「施設の各部屋」は飽くまで例示にすぎない)ものとして認定したはずの引用発明Aを,本件訂正発明1との対比においては,その設置位置が「施設の各部屋」に限定されるものと解した上で相違点1を認定したものであるから,その認定に誤りがあることは明らかである。 また,本件審決は,上記のように相違点1の認定を誤った結果,引用発明Aによる移動体の位置の把握が「ビルの各部屋単位での把握に留まる」などと断定的に誤った解釈を採用した上(刊行物1にはそのような記載も示唆もない。),刊行物1には相違点1に係る構成を適用する動機付けについて記 載も示唆もない(から想到容易とはいえない)との結論に至ったのであるから,かかる相違点の認定の誤りが本件審決の結論に影響を及ぼしていることも明らかである。 (4) 以上によれば,原告が主張する取消事由2は理由がある。 (5) 被告の主張についてこれに対し,被告は,刊行物1発明によって実現される作用効果からすれば,同発明が実現を意図しているのは,移動体がどの「部屋」(あるいは固定無線機の設置箇所を含む一定領域)に所在するのかを把握することであり,言い換えれば,同発明は,「固定無線機からの電波受信可能領域」(検知エリア)と「その固定無線機が置かれた部屋の領域」とが,ほぼイコールであるという認識を前提とした発明である(取消事由2に関し)とか,刊行物1発明は大まかな範囲で対象者(物)の所在を把握することを目的とするものである(取消事由3に関し)などと指摘して,本件訂正発明と刊行物1発明の違いを強調し,本件審決の認定判断に誤りがない旨を主張する。 しかし,いずれの指摘も刊 物)の所在を把握することを目的とするものである(取消事由3に関し)などと指摘して,本件訂正発明と刊行物1発明の違いを強調し,本件審決の認定判断に誤りがない旨を主張する。 しかし,いずれの指摘も刊行物1の記載に基づかないものであり,その前提が誤っていることは,これまで説示したところに照らして明らかであるから,上記被告の主張はその前提を欠くものであって採用できない。 3 以上のとおり,本件審決は,本件訂正発明1に係る相違点1の認定を誤って同発明が想到容易ではないとの結論を導いているところ,本件審決は,本件訂正発明2ないし7についても,実質的に同じ理由に基づいて(すなわち,本件訂正発明2ないし5については,本件訂正発明1の発明特定事項を全て含むことを理由に,本件訂正発明6及び7については,相違点1と実質的に差異がない相違点が認定できることを理由に),本件訂正発明1におけるのと同じ結論を導いているのであるから,結局のところ,本件訂正発明全部について本件審決の判断に取り消すべき違法が認められることは明らかである。 4 結論 以上の次第であるから,その余の取消事由について検討するまでもなく,原告の請求は全部理由がある。 よって,本件審決を取り消すこととし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官鶴岡稔彦 裁判官大西勝滋 裁判官寺田利彦 寺田利彦

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る