平成25年1月22日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年第631号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成24年11月13日判決 主文 1 被告は,原告X1に対し,460万7002円及びこれに対する平成21年4月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告X2に対し,230万3501円及びこれに対する平成21年4月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告X3に対し,230万3501円及びこれに対する平成21年4月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,これを50分し,その7を被告の負担とし,その余は原告らの負担とする。 6 この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,原告X1に対し,3247万9951円及びこれに対する平成21年4月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告X2に対し,1623万9975円及びこれに対する平成21年4月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告X3に対し,1623万9975円及びこれに対する平成21年4月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,土木工事の作業員であるX4が道路上に設置されたマンホール内で作業をしていた際,当該道路を走行した被告運転の自動車(以下「被告車」という。) と衝突して死亡した交通事故について,X4の妻及び子である原告らが,前記事故は,被告がマンホールの蓋の異常を認めたにも していた際,当該道路を走行した被告運転の自動車(以下「被告車」という。) と衝突して死亡した交通事故について,X4の妻及び子である原告らが,前記事故は,被告がマンホールの蓋の異常を認めたにもかかわらず,マンホール手前で停止ないし最徐行することなく漫然と走行したことで生じたものであるなどと主張して,被告に対し,不法行為に基づき,合計9346万1487円の損害のうち,自賠責保険として受領した金員を控除した6495万9902円(原告X1につき3247万9951円,原告X2及び同X3につき各1623万9975円)及びこれらに対する前記自賠責保険の支払の翌日である平成21年4月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 前提となる事実(証拠を記載したもの以外は当事者間に争いがない。) 当事者等X4は,昭和40年10月15日生まれの男性で,死亡当時43歳であった。 X4はA建設株式会社(以下「A建設」という。)に勤務しており,道路工事や土木作業に従事していた。 原告X1は,X4の妻であり,原告X2及び同X3は,X4の子である。(弁論の全趣旨) 交通事故の発生平成20年12月12日午前11時15分ころ,山梨県韮崎市b町α番地先路上において,X4は,当該道路に設置されたマンホール(以下「本件マンホール」という。)の蓋を外し,マンホールを開閉するための鉄製の工具(以下「マンホールオープナー」という。)をその蓋に刺したまま路上におき,本件マンホール内に立ち入っていたところ,当該道路を走行した被告車がマンホールの蓋及びマンホールオープナーに接触し,その蓋がX4の頭部に衝突して同人を死亡させる交通事故が発生した(以下「本件事故」という。)(甲1,2の1・2 ていたところ,当該道路を走行した被告車がマンホールの蓋及びマンホールオープナーに接触し,その蓋がX4の頭部に衝突して同人を死亡させる交通事故が発生した(以下「本件事故」という。)(甲1,2の1・2,弁論の全趣旨)。 自賠責保険等の支払原告らは,本件事故に関し,平成21年4月10日,自賠責保険として300 2万4470円の支払を受けた。また,原告らは,平成23年5月25日,労災保険から葬儀費として19万1220円の支払を受けた(乙3の2)。 2 争点及び争点に関する当事者の主張 損害の発生及び数額(原告らの主張)ア治療費 2万1470円イ文書料 3000円ウ逸失利益 5544万0518円(計算式)573万9600円×(1-30パーセント)×13.7990X4は,本件事故の6か月前からA建設に勤務していた。X4は,A建設に月額給与40万円でスカウトされ,転職したものであるが,賞与等を一度も手にすることなく他界したため,確定申告書上のA建設からの給与所得は6か月で240万円である。 しかし,賞与を夏冬1か月としたとしても,年収は560万円となり,概ね平均賃金と同額となる。X4は,型枠支保工の組立作業責任者資格,地山の掘削作業主任者資格,土止支保工資格,下水道排水設備工事責任技術者資格,小型移動式クレーン運転資格,車両系建設機械(整地,運搬,積み込み用及び掘削用)運転資格,安全衛生現場代理人資格,2級土木施工管理技士資格,現場管理者統括管理者資格等多数の資格を有しており,所得増の転職をしたものであるから,X4が平均賃金ないしそれ以上の所得を得られていた蓋然性は十分にある。 したがって,年齢別 技士資格,現場管理者統括管理者資格等多数の資格を有しており,所得増の転職をしたものであるから,X4が平均賃金ないしそれ以上の所得を得られていた蓋然性は十分にある。 したがって,年齢別平均給与額を用いて逸失利益を算定すべきである。 なお,X4は,X家の長男であり,同家の家督相続人である。X4の両親が農業従事者であることから,X4は,将来,家督を継ぐとともに実家の農業に従事することが予定されていた。本件事故により,実家では,X4が担当していた作業を,別途費用をかけて他の者に委託する必要が生じ,そのような負担 が生じたことから農業生産の規模を縮小せざるを得なくなった。X4の農業に対する寄与度及びX4が死亡したことによる収入減が認められることは明らかであるから,かかる事情も考慮の上,逸失利益を算定すべきである。 エ死亡慰謝料 2800万円X4は,本件事故による死亡時43歳であって,原告ら4人家族の経済的生活を支えるのはもちろんのこと,夫として,父親として,精神的にも家族の支えとなっていたものであり,紛れもなく一家の支柱であった。妻との生活,子供の成長を楽しみにしていたにもかかわらず,突如,その生命を無惨にも奪われたのであり,かかる重大な結果に対する慰謝料額としては2800万円を下ることはない。 オ葬儀費用 150万円カ合計 8496万4988円キ弁護士費用 849万6499円原告らの損害合計金額の約1割に相当する弁護士費用は,本件事故と相当因果関係にある損害として認められるべきである。 ク既払金の控除平成21年4月10日時点における遅延損害金の金額は152万2885円であり,自賠責保険として支払を受けた3002万4 関係にある損害として認められるべきである。 ク既払金の控除平成21年4月10日時点における遅延損害金の金額は152万2885円であり,自賠責保険として支払を受けた3002万4470円を上記遅延損害金に充当すると,残額は2850万1585円である。前記損害賠償金合計9346万1487円に同残額を充当すると,6495万9902円となるため,原告らは被告に対し,同額の損害賠償請求権を有する。なお,労災保険から支払われた19万1220円は元本に充当する。 (被告の主張)ア認める。 イ認める。 ウ金額を争う。 逸失利益の算定においては,事故前の現実収入額を基礎収入とするのが原則であり,仮に平均賃金を採用するのであれば,平均賃金を得られていた蓋然性が十分に立証される必要がある。 X4が月額40万円の給与収入を得られたとしても,年収ベースでは480万円であり,平均賃金には及ばない。A建設の賞与の有無及び金額は不明であり,X4が保有していたという多数の資格が所得上昇にいかに結びつくのかも定かではない以上,原告主張の事情をもって平均賃金が得られる蓋然性が立証されていると考えることはできない。 エ金額を争う。 オ認める。 カ合計金額は争う。 キ金額を争う。 過失割合(被告の主張)ア基本過失相殺率本件事故は,四輪車と人との間で発生した事故であるものの,その人が歩行者ではなく,地面の下から上に現れてきたという特殊な形態の事故である。 本件事故の過失相殺率を考えるにあたっては,歩行者対四輪車の事故の事例が参考となり,その中でも,被害者が歩行動作をとっていない点で本件と類似性が高い路 きたという特殊な形態の事故である。 本件事故の過失相殺率を考えるにあたっては,歩行者対四輪車の事故の事例が参考となり,その中でも,被害者が歩行動作をとっていない点で本件と類似性が高い路上横臥者の事例を参考にするのが相当と考えられる。 路上横臥者の基本過失相殺率は,昼間であれば30パーセント,夜間であれば50パーセントであるが,X4はマンホールの内部に入っていて真上からのぞき込まなければ地上からその存在を発見することがおよそ不可能であるという点において,夜間の場合と同様に評価するのがふさわしい。この点に関して,本件事故現場から68.7メートルの地点から路上のマンホールの蓋とマンホールオープナーを確認することができたから,X4の存在を予見すること ができたという反論が考えられるが,物を損壊することと人を死傷させることの予見可能性は質的に異なるものであり,マンホールの蓋等の存在及びその損壊のおそれを予見したからといって,それだけで地下にいる人を死傷させることまで予見できたと論じることはできない。そもそも,前記68.7メートルという実況見分の結果は,歩行中の立会人が視認状況を確認した点で,自動車で走行中であった被告より有利な条件下で観察が行われているし,主観的にも,警察官の指示が観察者の注意の払い方に少なからぬ影響を与えたといえるため,参考にし難いものである。 路上横臥者の事例において,夜間の方が昼間よりも横臥者の過失が大きく評価されるのは,前者の方が車からの発見が困難なためである。本件事故現場近辺は,道路の色が灰色様の場所と黒色様の場所が混在していた上,本件事故現場は本件事故発生時刻ころ道路沿いの民家の影となって視認しづらい状況であった。加えて,マンホールオープナーも被告から見て斜めに刺さっており, が灰色様の場所と黒色様の場所が混在していた上,本件事故現場は本件事故発生時刻ころ道路沿いの民家の影となって視認しづらい状況であった。加えて,マンホールオープナーも被告から見て斜めに刺さっており,発見しづらい状態であった。主観的にも,マンホールの蓋にマンホールオープナーが刺さっていることなど通常の事態ではないのであるから,誤認したとしてもやむを得ない。路上横臥者の場合,身体全体が路上に横たわっているが,マンホール内の人の場合,地表に現れるのはせいぜい頭部か上半身のみであるから,路上横臥者以上に車からの発見は容易でないと考えられる。 これらのことからすれば,本件事故現場を走行中に,マンホール内にいたX4の存在を発見することは不可能であり,その存在を予見することも夜間の路上横臥者を予見するがごとく困難であったといえる。そのような状況を作出したX4の過失は重く,X4の基本過失相殺率を50パーセントと評価するのが相当である。 なお,被告は,本件事故現場近辺で道路工事が行われていることは知っていたものの,具体的にどの地点で行っているかについては知らなかったため,カラーコーン等何らの安全対策も施されていなかった本件事故現場を走行して, 路面が盛り上がっているのを舗装未了のためと勘違いしてしまったことにも無理からぬ面がある。 イ修正要素X4は,本件マンホール内において作業に従事するに際し,マンホール手前のカラーコーン,看板,標識等の設置や交通誘導員の配置,あるいはフェンスの設置といった安全確保を何ら行っていなかった。これらの安全確保を行うことは周辺を通行する者に対し工事の存在を知らせ,しかるべき対応措置をとらせ,作業員及び通行者の安全を確保するために極めて重要な意義を有しており,当然講ずべき準備作 なかった。これらの安全確保を行うことは周辺を通行する者に対し工事の存在を知らせ,しかるべき対応措置をとらせ,作業員及び通行者の安全を確保するために極めて重要な意義を有しており,当然講ずべき準備作業である。そればかりか,本件においては,マンホールオープナーが刺さったマンホールの蓋が路上に放置されたままになっていた。道路上に障害物を放置することは車両側からしても当該障害物に衝突する可能性がある極めて危険な行為であり,このような障害物が放置されていなければ,マンホールの蓋が跳ね上がることもなく,本件事故が発生しなかった可能性も少なからず考えられる。このような道路上の重大な瑕疵と評価できる状態を,工事業者という専門的立場にありながら作出したX4の過失は極めて重大といわざるを得えず,30パーセントの加算修正を行ってもやむを得ないと考えられる。 加えて,X4は本件事故直前までマンホール内にいたものであり,通常であれば人が現れることのない地面から突如頭部を出したのであるから,運転者から発見可能性の乏しい危険性の高い行為として10パーセントの加算修正を行うのが相当である。 したがって,X4の過失相殺率は90パーセントとすべきである。 (原告らの主張)争う。 自賠責保険において満額の支払がなされていることにかんがみて,X4の過失割合が7割未満であることは明らかである。 被告は,本件事故現場周辺において,道路工事が行われていることを認識しており,本件事故現場の30.7メートル手前でマンホールの蓋の異常を認めたのであるから,マンホールの手前で停止,あるいは最徐行して周辺の安全確認を行うべきであったのに,これを怠って漫然とマンホールの蓋をまたいで通過できると判断しており,被告の責任は重大で の異常を認めたのであるから,マンホールの手前で停止,あるいは最徐行して周辺の安全確認を行うべきであったのに,これを怠って漫然とマンホールの蓋をまたいで通過できると判断しており,被告の責任は重大である。仮に被告が通常想定される停止,回避,減速等の運転操作を行っていれば,本件事故も回避,あるいは人の死亡という重大な結果が生じなかった可能性が十分にあった。 被告が,10メートルで停止可能な速度で走行していながら,本件事故後,35.7メートル走行して初めて停止したことからしても,被告が異常事態に適切な対応が取れないほどに漫然と運転していたことは明らかであり,本件事故前からマンホール付近を含む前方を全く注視していないという極めて重大な過失態様による運転を行っていたというべきである。 これらのことからして,本件において過失相殺はなされるべきではない。 被告は路上横臥者の夜間の場合と評価できる旨を主張するが,本件事故が発生したのは午前11時15分ころであったから夜間には該当しない。また,本件事故当時の天候は晴れであり,事故現場付近の道路は極めて見通しが良好であった。 実況見分調書では,被告がマンホールの蓋を認めた30.7メートルの地点における視認性に関して「蓋と差し込まれている縦の鉄棒が確認でき」るとされており,事故現場から68.7メートルの地点において既に「路上のマンホールの蓋と縦の鉄棒が確認でき」たとされている上,被告自動車の停止可能距離である本件事故現場から10メートル手前の地点からは「蓋と差し込まれている横棒の付いた鉄棒が確認でき」たとされている。マンホールオープナー自体,単なる棒状のものではなく,十字型をしていて,横棒の長さも30センチメートル程度はあり,被告自身,実況見分時に,30メートル以上離れた地点からマ が確認でき」たとされている。マンホールオープナー自体,単なる棒状のものではなく,十字型をしていて,横棒の長さも30センチメートル程度はあり,被告自身,実況見分時に,30メートル以上離れた地点からマンホールの蓋及びマンホールオープナーが確認できることを認めているから,マンホールの蓋が開いていることに気付かなかったのがやむを得ないなどとは到底いえない。 マンホールオープナーの形状や前記視認状況からして,被告が主張する路上横臥者の夜間の事例は本件を論じる前提とならず,失当である。 仮に,本件を路上横臥者の事例と考えたとしても,昼間の基本相殺率は20パーセントであり,本件事故現場が住宅地であったこと,被告の著しい過失があったことに基づく修正がなされ,過失相殺率は,X4・10パーセント,被告90パーセントと考えるべきである。被告には最も基礎的な注意義務を怠ったという重大な過失が認められるのであり,仮に,X4が道路で作業をする者として適切な事故予防又は回避の措置を怠っていたとしても,被告の過失割合がX4のそれより大きいことは明らかである。 なお,X4が本件事故直前にマンホールから頭を出した旨の被告の主張は推測にすぎず,X4が頭を出したタイミングは記録上不明である。 第3 当裁判所の判断 1 争点(損害の発生及び数額)について 治療費及び文書料治療費2万1470円及び文書料3000円は当事者間に争いがない。 逸失利益ア基礎収入 480万円X4の平成20年度の確定申告上の収入金額は437万2000円であり,そのうち240万円がA建設からのもので,197万2000円がA建設に転職する前の勤務先からの収入であったところ(甲12の1・2,弁論の全趣旨),本件事故前約6か月 金額は437万2000円であり,そのうち240万円がA建設からのもので,197万2000円がA建設に転職する前の勤務先からの収入であったところ(甲12の1・2,弁論の全趣旨),本件事故前約6か月間のA建設における就労で得た240万円を1年間に換算した480万円を基礎収入とするのが相当といえる。 これに対し,原告らは,X4が平均賃金ないしそれ以上の所得を得られていた蓋然性が十分にある旨を主張するが,A建設のX4に対する賞与支給予定の有無及び金額は証拠上明らかではない上,X4が保有していた型枠支保工の組立作業主任者,地山の掘削作業主任者,土止支保工作業主任者,下水道排水設 備工事責任技術者及び車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転資格等の資格(甲13)と同人の所得上昇との関連性も不明確であるから,これらをもって,X4が平均賃金ないしそれ以上の所得を得られていた蓋然性が十分にあったと認めることはできない。また,X4が実家の農作業の手伝いに従事しており,同人が死亡したことで農業の収入減が生じたとしても,当該事情は,遺族固有の損害を算定する際に考慮する要素とはなり得ても,X4の得べかりし利益とはその性質を異にするものであるから,X4の逸失利益算定において考慮することは相当でなく,原告らの前記主張は採用することができない。 イ生活費控除率 30パーセントX4は,本件事故当時,一家の支柱として原告ら3人の生活を支えていた者であるから,生活費控除率は30パーセントとするのが相当である。 ウライプニッツ係数前記前提となる事実のとおり,X4は死亡時43歳であり,67歳までの24年間就労可能であったと認められるから,ライプニッツ係数は13.7986となる。 エ逸失利益 463 数前記前提となる事実のとおり,X4は死亡時43歳であり,67歳までの24年間就労可能であったと認められるから,ライプニッツ係数は13.7986となる。 エ逸失利益 4636万3296円X4の逸失利益は以下のとおりとなる。 480万円×(1-0.3)×13.7986=4636万3296円 慰謝料X4が原告らの生活を支えていたこと,本件事案の性質等に照らすと,X4の死亡による慰謝料は2800万円と認めるのが相当である。 葬儀費用葬儀費用150万円は当事者間に争いがない。 合計前記ないしを合計すると,原告らの損害額は7588万7766円となる。 2 争点(過失割合)について 前記前提となる事実に後掲の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 ア本件事故現場の状況等本件事故現場である山梨県韮崎市b町α番地先道路は,幅員5.6メートルの片側一車線の道路である。被告車は,当該道路を,韮崎市c町方面から同市b町方面へ向かって進行していた。 本件マンホールは,その中心が,被告車が走行していた車線の道路脇からセンターライン方向へ1.8メートルほどの位置に設置されており,その内径は63センチメートル(底部の内径は90センチメートル),深さは1.2メートルで,マンホール内の韮崎市b町方面側に昇降用ステップが設置されていた。 昇降用ステップは,路面から40センチメートル及び70センチメートルの深さの位置にそれぞれ設置されており,路面から4.5センチメートルの深さの位置に左右2個の取手が設置されていた。マンホールの蓋は直径が63センチメートルで,厚さが7.5センチメートルであっ ートルの深さの位置にそれぞれ設置されており,路面から4.5センチメートルの深さの位置に左右2個の取手が設置されていた。マンホールの蓋は直径が63センチメートルで,厚さが7.5センチメートルであった。(甲2の1・2・6,14の6)イ X4の作業の状況X4を含む作業員らが行っていた工事は,マンホール内の下水管設備にかかわるインバート工事と呼ばれるものであった。X4らは,平成20年12月12日午前9時ころから,山梨県韮崎市b町α番地先道路において,400から500メートル程度の距離内に設置された本件マンホールを含む数個のマンホールについて,韮崎市b町方面に向かって順次作業をしていた。作業を行う際には,マンホールの周囲にカラーコーンを設置し,マンホール内に入らない作業員が外で安全確認をする体制が採られていた。また,同日午前9時30分ころからは,交通誘導の警備員も作業現場に到着し,誘導作業を行っていた。 本件マンホールについては,本件事故が発生する前に既に作業が完了してお り,その蓋も閉じられていた。 X4は,その理由は不明であるが,作業が完了していた本件マンホールの蓋を外し,マンホールオープナーを刺したままその蓋を脇に置いて,マンホール内に立ち入っていた。X4は,他の作業員や警備員に本件マンホール内に立ち入る旨を伝えていなかったため,本件事故が発生した際,本件マンホールの周囲には,カラーコーンや警告板等が設置されておらず,交通誘導の警備員も配置されていなかった。本件マンホールの脇の歩道上には,黒板,デジタルカメラ,設計図,スケール及びバッグが置かれていた。(甲2の2・7・8,弁論の全趣旨)ウ実況見分の結果本件事故現場において,平成21年6月15日午後1時40分から午後2時15分まで 設計図,スケール及びバッグが置かれていた。(甲2の2・7・8,弁論の全趣旨)ウ実況見分の結果本件事故現場において,平成21年6月15日午後1時40分から午後2時15分まで,本件事故現場の見通し状況等を明らかにすることを目的として,警察による実況見分が実施された。その際,本件事故当時の状況を再現するため,本件マンホールの蓋にマンホールオープナーを韮崎市c町方面に向かって斜めに刺し,マンホールの脇に置いて,その視認状況が確認された。なお,マンホールオープナーは,縦の鉄棒に開閉具として横の鉄棒が2本取り付けられた形状をしており,マンホールの蓋に斜めに刺した状態で,路面からの高さは80センチメートルであった。横の鉄棒のうち,下の鉄棒は縦の鉄棒から左右それぞれ10センチメートルの長さであり,上の鉄棒は,片側が24センチメートル,もう一方の片側が10センチメートルの長さであった。 前記実況見分の結果,本件事故現場から68.7メートルの地点において,マンホールの蓋と縦の鉄棒が確認できた。また,同30.7メートルの地点において,蓋と縦の鉄棒に加えて,横棒もうっすらと確認できた。本件事故現場から10メートルの地点においては,横棒もはっきり確認できた。なお,この実況見分は,自動車を使用して運転席からの視認状況を確認したものではなく,立会人が歩行した状況で各々の地点からの視認状況を確認したものである。 また,身長168センチメートルの警察官が本件マンホール内に立ち入って路上への身体の露出状況等を確認したところ,マンホール内のステップ下段に佇立した状態での露出状況は,路面から頭頂部まで94センチメートルであった。ステップ下段に両足を乗せ,取手を掴んで中腰の姿勢になった状態での路面への露出状況は,路面から頭頂部まで13セン ップ下段に佇立した状態での露出状況は,路面から頭頂部まで94センチメートルであった。ステップ下段に両足を乗せ,取手を掴んで中腰の姿勢になった状態での路面への露出状況は,路面から頭頂部まで13センチメートルであり,本件事故現場から30.7メートルの地点から人の頭部が露出していることが確認できた。(甲2の6,14の6) 過失割合について前記イのとおり,本件事故が発生した当時,被告車の進行方向にはマンホールオープナーが刺さった状態のマンホールの蓋が路上に置かれていた。 その際,本件マンホール付近が民家の影になっていたこと(甲14の5)など,その視認状況が極めて良好であったとは言い難い面もあるが,マンホールオープナーは斜めに刺さっていても路面から約80センチメートルの高さがあった上,被告も,本件マンホール付近の道路で工事が行われていることは認識しており,当該道路を走行した際,少なくとも本件マンホールの付近の路面が盛り上がっているという異常を感知したのであるから(甲2の9~2の11),進行方向前方を注視し,本件マンホールの状況を確認して,その手前で停止ないし徐行するなどの慎重な運転をすべきであったといえる。それにもかかわらず,前方の確認を怠ってマンホールの蓋やマンホールオープナーの状況を見落とし,路面が舗装されていないだけでマンホールをまたいで通過できると軽信して,そのまま走行したため本件事故を惹起しており,被告の前方不注視の責任が重大であることは言うまでもない。 他方で,前記イのとおり,本件マンホールの周囲には,カラーコーンや警告板等が設置されていなかった上,X4は同僚作業員に声をかけることなく,単独で本件マンホール内にいたため,交通誘導の警備員も配置されていない状況であったから,本件道路を通行する者からは,一 ーンや警告板等が設置されていなかった上,X4は同僚作業員に声をかけることなく,単独で本件マンホール内にいたため,交通誘導の警備員も配置されていない状況であったから,本件道路を通行する者からは,一見してマンホール内に作業している 者がいると判別できる状態にはなかったと認められる。道路上で作業を行う者は,常に道路を走行する車両等があることを念頭において,自らの生命身体の安全を守るのみならず,当該道路を通行する者の安全を確保するため,作業中であることを明確に示し,危険防止のための措置を採るべき義務があるといえる。殊に,マンホール内などの走行者から一見してその存在を認識し得ない場所で作業する場合には,一層明確な注意喚起が要求されるというべきである。 実況見分における視認状況は前記ウのとおりであり,本件事故現場から68. 7メートルの地点において既にマンホールの蓋と縦の鉄棒が確認できたとされているが,この実況見分はマンホールの蓋に異常があることを事前に立会人に伝えた上で観察状況を確認したものであり,しかも,歩行した状態で観察するなど,本件事故当時の車両で走行した被告の視認状況を忠実に再現したものとはいえない。それに,鉄棒が差し込まれたマンホールの蓋が道路上に放置されている状況をある程度手前から視認できたとしても,カラーコーン等の注意喚起がなされていなければ,よもやマンホール内に作業員がいるとは考えないであろうとみられることからしても,マンホールの蓋及びマンホールオープナーなど本件マンホールの周囲の状況から,その中にいたX4を容易に発見することができたとはいえず,X4の本件道路を走行する者に対する注意喚起は全くなされていなかったといわざるを得ない。 X4が本件マンホールの周囲にカラーコーン等を設置し,あるいは交通誘導の警備員 ができたとはいえず,X4の本件道路を走行する者に対する注意喚起は全くなされていなかったといわざるを得ない。 X4が本件マンホールの周囲にカラーコーン等を設置し,あるいは交通誘導の警備員を配置するなど,道路上において自らの存在を明確に示し,危険が生じないようにするための措置を採っていれば,被告もより確実にX4の存在を認識することができ,慎重な運転をすることが可能であって,本件事故を回避し得たといえる点で,本件事故の発生にX4の上記不注意が寄与した程度についても決して軽視することはできない。 そうすると,本件道路の状況,本件マンホール周囲の状況,被告の運転行為,本件事故態様等に照らせば,前方不注視という被告の過失が認められる一方,X 4においても本件マンホール内に自己がいることを明確に示す措置を採らなかったものであるから,相応の過失があって,その程度は上記のように軽微なものとは評価できず,本件事故について,X4の過失割合を5割とするのが相当である。 3 既払金の控除及び原告らの損害額 損害額前記1のとおり,原告らの損害額は合計7588万7766円であり,過失相殺後の損害額は合計3794万3883円となる。 損害の填補前記前提となる事実のとおり,原告らは,自賠責保険として平成21年4月10日に3002万4470円,労災保険の葬儀費として平成23年5月25日に19万1220円の支払を受けており,これにより,原告らにつき損害の填補がなされたと認められるから,被告はその価格の限度で賠償義務を免れる。 原告らが自賠責保険から受領した3002万4470円を,平成21年4月10日までに生じた遅延損害金62万3450円,元本の順で充当すると,原告らの損害賠償請求権の残額は854万2863 。 原告らが自賠責保険から受領した3002万4470円を,平成21年4月10日までに生じた遅延損害金62万3450円,元本の順で充当すると,原告らの損害賠償請求権の残額は854万2863円となる。 労災保険から葬儀費として受領した19万1220円は原告らの葬儀費用の損害を填補するものであることから,その損害のみから控除をなし得るところ,自賠責保険控除後の葬儀費用の損害残額は16万8859円であるので(なお,自賠責保険については,3002万4470円から遅延損害金62万3450円を控除した2940万1020円を各損害項目の金額に応じて按分して控除した。),16万8859円の限度で損益相殺がなされる。 したがって,これらを控除した損害賠償請求権の額は合計837万4004円となる。 原告らが相続によって取得した損害賠償請求額原告らの法定相続分に応じた損害賠償請求権の額は以下のとおりとなる。 ア原告X1 418万7002円イ原告X2及び同X3 各209万3501円 弁護士費用の加算事案の性質及び本件訴訟の経過並びに損害額等に照らすと,本件と相当因果関係の認められる弁護士費用は,原告X1につき42万円,原告X2及び同X3につき各21万円とするのが相当であるから,前記の金額に弁護士費用を加えた損害賠償請求権の額は以下のとおりとなる。 ア原告X1 460万7002円イ原告X2及び同X3 各230万3501円 4 以上によれば,原告らの請求は前記3記載の金額及びこれらに対する自賠責保険の支払日の翌日である平成21年4月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容することとし,主文の 記載の金額及びこれらに対する自賠責保険の支払日の翌日である平成21年4月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、その限度で認容することとし、主文のとおり判決する。 主文 甲府地方裁判所民事部 裁判長裁判官 林正宏 裁判官 三重野真 裁判官 小川惠輔
▼ クリックして全文を表示