昭和46(う)421 暴力行為等処罰に関する法律違反等被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和48年1月22日 福岡高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      1、 原判決中被告人Aに関する部分を破棄する。      2、 被告人Aを懲役三月に処する。      3、 ただし、この裁判確定の日から一年間右刑の執行を猶予する。     

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判決文本文18,830 文字)

主文 1、 原判決中被告人Aに関する部分を破棄する。 2、 被告人Aを懲役三月に処する。 3、 ただし、この裁判確定の日から一年間右刑の執行を猶予する。 4、 原審における訴訟費用中証人B、同C、同Dの第一五回公判出廷分、同E、同Fに各支給した分の三分の一、同Dの第一六回公判出廷分、同G、同H、同Iの第二〇回公判出廷分に各支給した分の二分の一、同Jに支給した分の四分の一、同Kに支給した分の六分の一、同L、同Mに支給した各全部は、被告人Aの負担とする。 5、 検察官の控訴中被告人Nおよび同Oに関する部分を棄却する。 6、 被告人N、同Oの各控訴を棄却する。 理由 本件控訴の趣意は、福岡高等検察庁検察官検事森崎猛提出にかかる福岡地方検察庁検察官検事大野正作成の控訴趣意書ならびに弁護人木梨芳繁、同小野山裕治作成の控訴趣意書およびこれに対する答弁は右検察官森崎猛作成の答弁書に各記載のとおりであるから、いずれもこれを引用し、これに対し、当裁判所は、本件訴訟記録ならびに原審において取り調べた証拠および当審における事実調査の結果にもとづき、次のとおり判断する。 以下においてP株式会社を会社とQ労働組合P分会を組合とそれぞれ略称する。 検察官の控訴趣意第一点事実誤認、法令適用の誤の主張について一公訴事実第一関係所論は要するに、原判決は、被告人Aの行為が、外形的には暴力行為等処罰に関する法律一条一項所定の構成要件に該当するようであるけれども、法益侵害の程度が極めて軽微であるばかりでなく、会社側が従前と異なつた争議対策をとつたため発生したもので、会社側およびC側にも一半の責任があり、被告人らの行為は承諾なくして撮影された写真の恣意的利用を防止するた が極めて軽微であるばかりでなく、会社側が従前と異なつた争議対策をとつたため発生したもので、会社側およびC側にも一半の責任があり、被告人らの行為は承諾なくして撮影された写真の恣意的利用を防止するためにとつた行為であつて、その動機目的において相当なもので、行為の可罰的違法性を欠ぎ、前記構成要件への該当性は否定されるべきものである、との判断を示しているが、以下の諸点において誤りがあるものである。すなわち、会社が争議中の組合員に対し会社構内への立入を禁止した措置は、会社の下請の従業員の作業遂行上組合側と紛争を生ぜしめないためにする正当な目的のもとに予防措置をとつたものであり、かつ本来会社は組合のストライキに対応して事業所を閉鎖し、組合員の入構を拒み得る権能を有し、施設管理権にもとづき、組合員が就労以外の目的で会社の施設を利用することを拒み得るものというべく、会社の右立入禁止の措置は組合の団結権を侵害しまたは団体行動を不当に制圧する意思はなく、専ら防禦的適法なロツクアウトであつて何等不当なものではない。Cの写真撮影行為は、同人が会社総務部長Mから立入禁止中組合員がみだりに会社構内に立ち入らないよう監視し、万一不法な行為を行なう者があつたときは写真撮影するよう命じられていたところ、デモ隊がC等の警告を無視しその制止を排してあおり止めを破壊するなどして門扉を開き会社構内に乱入したうえ、構内をデモ行進し、再び通用門付近に来たところを、約四メートルの距離からデモの状況を一回写真撮影したものであつて、その行為は正当な行為であり、また会社に写真を不当に利用しようとする目的は無かつたのである。本件ストライキ以前の団体交渉において会社側に不誠実な態度があつたり、警察官を会社構内に出入させて組合に対し無用の緊張を招来させたことはない。被告人Aは両手でCの左腕 とする目的は無かつたのである。本件ストライキ以前の団体交渉において会社側に不誠実な態度があつたり、警察官を会社構内に出入させて組合に対し無用の緊張を招来させたことはない。被告人Aは両手でCの左腕を捻じ上げて写真機を奪取したのであつて、暴行の程度が可罰的違法性を欠ぐほど軽微なものではない。 右の諸点につき原判決は証拠の取捨選択を誤り、事実を誤認した違法があり、ひいては法令の解釈適用を誤つた違法があり、原判決は破棄を免れ難い。 二公訴事実第四関係所論は要するに、原判決はN同Oが他の組合員約三〇名と共謀のうえ、進水式場に立ち並んで、シユプレヒコールを繰り返したり労働歌の合唱を行ない、進水要員が配置につくのを妨げ、デモ行進を行なうなどして、威力を用いて会社の行なう進水式の業務を妨げた行為を、刑法二三四条の構成要件に該当すると認めながらも、会社が正当な理由がないのにRとの団体交渉を拒否したり、さきに行なつた組合のストライキ実施を理由に賃上げ回答を撤回してその回答内容を下回る新たな回答を示すなどの会社の不当な態度を改めさせ労働条件の改善による経済的地位の向上をめざした争議行為として行なつたもので、目的が正当であり、その手段方法も相当であつて、結果たる業務妨害の程度も軽微なものに過ぎないから、正当な争議行為であり労働組合法一条二項刑法三五条により違法性を阻却されるべき場合で犯罪を構成しないとして、無罪の判決を言い渡したが、しかし、組合から賃上げなど四項目の要求が出されるや、会社は一〇数回にわたつて団体交渉を続け、しかも組合の代表者との交渉により自主的な解決を図り、Rには側面からの協力を要望したに過ぎないのであつて、会社の措置は相当である。しかも会社は昭和三八年五月二五日の団体交渉にRの参加を認め、定期昇給を含めて二、八〇〇円の賃上げ回答をし 的な解決を図り、Rには側面からの協力を要望したに過ぎないのであつて、会社の措置は相当である。しかも会社は昭和三八年五月二五日の団体交渉にRの参加を認め、定期昇給を含めて二、八〇〇円の賃上げ回答をし、交渉は殆んど妥結に近かつたが、組合が会社を誹謗する行為をしたため、交渉の成果を失わしめるに至つたのである。原判決がかかる事情を考慮せず、ひとり会社のみを不当とし、それとの関連で被告人両名の行為が正当な争議行為の範囲内にあると判断したのは、事実の認定を誤つたものというほかはない。仮りに会社に団体交渉拒否の事実があつたとしても、本来的に違法な争議行為が正当化されるものではない。さらに会社が同年三月三一日組合に対し賃上げ回答を示し、その後これを撤回したのは、組合が撤回に同意したのと、ストライキを実施し会社が回答に付した撤回の条件を成就させたからにほかならない、会社のとつた措置は正当である。進水式は会社と船主とが一体となつて行う儀式で、船主にとつて極めて重大な意義を有するものである。被告人らは会社の業務を妨害したに止まらず、第三者たる船主の業務をも阻害しかつこれに回復し難い重大な損害を与えたのであるから本件争議行為は違法となるものである。しかも会社に組合の団結権を侵害するような不当な行為はなかつたのであるから、進水式挙行に際しては、労働争議行為として行ない得るのはストライキにより労務の提供を拒否し得るに止まり、積極的に威力を用いることは許されないのである。 組合のとつた争議手段は悪質であつて、正当な争議行為の範囲を遥かに逸脱したもので、違法たるを免れ難い。 以上のごとく、原判決の公訴事実第一および第四に対する判断は、重要な事実を誤認した違法があり、ひいては法令の解釈適用を誤つた違法があるので、これらの違法は判決に影響をおよぼすことが明らかであつ 。 以上のごとく、原判決の公訴事実第一および第四に対する判断は、重要な事実を誤認した違法があり、ひいては法令の解釈適用を誤つた違法があるので、これらの違法は判決に影響をおよぼすことが明らかであつて、破棄を免れ難い。 というのである。 案ずるに一公訴事実第一関係被告人Aが、昭和三八年四月一二日午後四時一五分頃、組合所属の他の組合員約四〇名とともに会社工場構内をデモ行進した際、会社の保安要員Cが工場入口正門付近の守衛室内からデモの状況を写真撮影したことに立腹し、他の組合員らと共に撮影を中止させかつネガフイルムの引渡を求めるべく、右守衛室に殺到して口々に「写真機をやれ」「写真機をとれ」と怒号し、組合員等は守衛室の腰板を蹴りカウンターを激しく叩くなどし、組合員Eから胸を押されたCが、カメラを奪取されまいとしてこれを左手にしつかりと握つて後手に隠しているのを、被告人Aがその左横からカメラを握つて強く横上方に引き上げて右カメラを取り上げたため、カメラを握つていたCの左腕を左上方に不自然な状態で捻じるように引き上げたことになり、これにより同人の左肩付根付近に激痛を与えかつ同人を畏怖させた事実を認めることができる。右行為が、暴力行為等処罰に関する法律一条一項の罪の構成要件に該当することは否むべくもない。 ところで、被告人Aら組合員が行なつたデモ行進に対しCが写真撮影を行なうに至つた経過を考察すると、組合が、会社のとつているRを団体交渉に出席させることを拒否し続けたり賃上げの回答に組合がストライキをしないことを条件とした不当な態度に抗議の趣旨を含めて組合の要求を承認させるため、同日午後三時からストライキを実施する旨会社に通告するとともに、同日午後三時から翌一三日午前八時までストライキを実施したが、右ストライキの通告を受けた会社は、組合に対 めて組合の要求を承認させるため、同日午後三時からストライキを実施する旨会社に通告するとともに、同日午後三時から翌一三日午前八時までストライキを実施したが、右ストライキの通告を受けた会社は、組合に対してストライキ実施中は組合員が会社構内に立入ることを禁止する旨の通告書を手交するとともに、会社正門横に同旨の掲示を貼り出し、会社総務部長MはCに命じて正門を閉鎖させ、さらに同人に対し、ストライキ中は組合員を構内に立入らせないこと、万一不法な行為をする組合員がいるときは写真撮影をすることを命じて写真機を手渡していたところ、被告人Aら組合員約四〇名位がデモの隊列を組んでワツシヨイワツシヨイとかけ声をかげながら前記正門付近に進んで来たが、前記のように立入り禁止の掲示があり、かつ正門は閉鎖されていたうえ、通用門も閉されてあおり止めがかけてあり、Cおよび会社守衛Sの両名がデモ隊に対し入構できない旨を告げ、通用門を両手で押えて組合員の入構を制止していたが、被告人A等はC等の制止を肯ぜず、通用門を激しく揺すつて、無理にあおり止めの金具を外して通用門の扉を外側に引つ張り開け、構内に乱入し、デモの隊列を整えて会社構内を一巡し、再び守衛室前に戻つて来て同所で渦巻き状に二、三周しているところを、Cが証拠保全の目的をもつて、Mから命じられたとおりに前叙のように写真撮影したものであることが認められる。思うに、使用者は労働組合の団結権ないし団体の行動を不当に侵害または制限するものでない限り、作業に従事中の他の従業員との摩擦による紛争を生じそのため作業場を混乱に陥れるおそれがあるときは、労働組合のストライキ実施中、これに対応して経営権ないし事業施設の管理権に基づき組合員の立入りを禁止し得るものというべく、会社が前叙のごとく組合に対し立入り禁止を通告し、かつ出入の門等を閉 ときは、労働組合のストライキ実施中、これに対応して経営権ないし事業施設の管理権に基づき組合員の立入りを禁止し得るものというべく、会社が前叙のごとく組合に対し立入り禁止を通告し、かつ出入の門等を閉鎖した後は、組合員はデモの目的をもつてしても会社の承認がない限り会社構内に立入ることは許されないものと解するのが相当であり、不法に侵入した違法状態下において行ななわれたデモ行進もまた違法な行動となるものと断ずべきである。蓋し当時組合事務所は会社構内にはなかつたので、立入を禁止しても組合ないし組合員の団結権ないし団体行動権を制限するおそれがなく、組合が会社構内をデモ行進するときは下請の従業員との間に紛争を生じ作業場を混乱におとしいれるおそれがないとは言えない状態にあつたのであり、その他にも右立入り禁止の措置を違法不当ならしめる事由は認められないからである。もつとも会社は前記のごとく、組合から団体交渉の代理権の授与を受けていたRが団体交渉に出席することを拒否していた不当な態度をとつていた点があるが、これとてもそのために右立入り禁止の措置が違法ないし不当となるものとは認められない。 しかして会社のなした立入り禁止の禁を犯して不法に事業場内(会社構内)に侵入する者があるとき、現に行なわれている違法行為の状態を、会社が証拠保全の目的をもつて写真撮影することは、正当な行為として許容されねばならない。これを違法と評価することは相当ではない。従つて会社の総務部長Mが守衛Cに対し不法に構内に侵入する者の写真撮影を命じたことは適法であり、Cが前記のごとく写真撮影を行なつたことは、被告人A等組合員の会社構内に不法侵入した違法状態を撮影したもので、もとより会社の業務命令に誠実に従つた正当な業務行為である。被告人A等組合員がCの意思に反して撮影に用いたガメラの奪取を図る ことは、被告人A等組合員の会社構内に不法侵入した違法状態を撮影したもので、もとより会社の業務命令に誠実に従つた正当な業務行為である。被告人A等組合員がCの意思に反して撮影に用いたガメラの奪取を図ることは到底許されるべきことではない。しかも行為の態様は、CおよびSの二名に対し組合員約四〇名の圧倒的多数をもつて口口に怒号しながらカメラの引き渡しを迫り、守衛所の腰板を蹴り、カウンターを叩き、EはCの胸を押し、被告人AはCの握つているカメラを掴んで同人が肩に激痛を感じるまでに同人の左手を無理に横に上げる暴行を加え、CおよびSを恐怖に陥れたのであつて、かような有形力の行使の態様、程度は決して軽微なものということはできない。右行為が組合の行なつている争議行為の一環として窮極的には労働者の経済的地位の向上を図るための団体行動たるストライキを有効有利に導こうとしたものであるとはいえ、その行為の直接の目的および手段方法が、ともに社会的に相当とする範囲を遥かに逸脱したもので、労働組合法一条二項但書に規定する暴力の行使に該当し、到底正当なものと認めることはできない。原判決が右認定と異なり暴力行為等処罰に関する法律一条一項ばかりでなく刑法二〇八条の予定する可罰的違法性をも欠ぐとして、右両罪のいずれの構成要件該当性をも否定し無罪を言い渡したことは、法の正当な解釈を誤つたか、または事実を誤認したもので、この違法は判決に影響をおよぼすことが明らかであり、破棄を免れ難い。論旨は理由がある。 <要旨>二公訴事実第四関係</要旨>組合は、同年五月二八日午前一一時から午後〇時一〇分まで時限ストライキに入り、当日午前一一時三八分から行なわれるべきT丸の進水式の就労を拒否したが、会社は課長等の管理職や臨時工等からなる代替要員を準備して予定を繰り上げ、同日午前一一時過頃 時一〇分まで時限ストライキに入り、当日午前一一時三八分から行なわれるべきT丸の進水式の就労を拒否したが、会社は課長等の管理職や臨時工等からなる代替要員を準備して予定を繰り上げ、同日午前一一時過頃から工場内第三船台で右T丸の進水式を挙行しようとした。そこで被告人N、同O等組合員約三〇名は同日午前一一時一〇分頃から同船台とT丸との間のレールの両側に立ち竝んだため、代替要員が進水のための定位置に就き得ない状態であつた。その様を見た会社造船部長U等が妨害をやめるよう説得にかかつたが組合員等はこれを聴き入れず前近代的労務管理をやめよ等とシユプレヒコールを繰り返し、船主Vや来賓等が船台に上るや、被告人N、同O等組合員は同様のシユプレヒコールを反覆したり、労働歌を歌つたりして船台周辺をデモ行進した後漸く木工場の方へ立ち去つたので、会社は急遽進水要員を所定の位置に配置して君ケ代の斉唱を行なつているとき、再び被告人N、同O等組合員約三〇名がデモ行進しながら進水式場に現れ、赤旗を振るなどして式場周辺を二、三周し、同様のシユプレヒコールを繰り返したり労働歌を歌つたりして式場一帯を騒然たらしめ、進水式を満足に進行することは望めない状態にして、同日午前一一時三〇分頃式場から立ち去つた。会社はやむなく一時中断した式典を再開して当初の予定時刻より余り遅れることもなく進水式を終了した事実を認めることができる。被告人N同O等の右行為が刑法二三四条所定の威力業務妨害罪の構成要件的特徴を或程度具えた行為であることは否むべくもない。 ところで右進水式は会社と船主が共同主催して行なうものであるが、式次第のうち、船主が行なうべき事項は、船名の命名と挨拶がその主たる内容をなし、その他の事項や労務の提供は全て会社側が行なうのであつて、しかも船主の行う事項と会社の行なう事項とは一 うものであるが、式次第のうち、船主が行なうべき事項は、船名の命名と挨拶がその主たる内容をなし、その他の事項や労務の提供は全て会社側が行なうのであつて、しかも船主の行う事項と会社の行なう事項とは一体となり不可分な関係で進水式を進行させるものであり、かつ船主の行なう部分よりも会社の行なう部分が圧倒的に大部を占めているのである。かような場合は、組合の行なう争議行為の結果が直接船主に及びその行なう業務を妨害するに至るとしても、組合の行なう争議行為が会社との関係で正当なものとして是認される限り、船主との関係においても正当なものとして犯罪を構成しないと解するのが相当である。蓋しかく解しないときは、第三者の業務が僅少でありながらも使用者の業務と不可分に関係する場合、労働者がその経済的地位の向上を図るため、使用者との交渉において対等な立場を保持する必要から労働者の行なう重要な団体行動の一たる争議行為を行ない得ない場合を生じ、憲法二八条、労働組合法一条二項、八条等において保障する団体行動権を不当に制限する結果を生ずることとなるからである。 そこで被告人N、同O等の行なつた前記行為が、使用者たる会社との関係において、果して正当なものであつたか否かを検討することとする。組合が前記進水式の際時限ストライキを行なうに至つた経緯をみてみると、組合は、昭和三八年の春闘において同年二月一三日会社に対し、基本賃金額の引き上げ、作業人員の増加、作業時間の七時間制、割増賃金の増額等四項目の要求を掲げて団体交渉を申し入れたが、会社は本社が大分県臼杵市の臼杵鉄工所にあつた特殊事情があつたとはいえ、兎角解決を遷延する風が見え、過去積年に亘り組合の切り崩しや支配介入に類する行為があつて、組合員に対し極めて深い不信感を与えていたうえ、右団体交渉の申し入れに対し同年三月七日以降数 あつたとはいえ、兎角解決を遷延する風が見え、過去積年に亘り組合の切り崩しや支配介入に類する行為があつて、組合員に対し極めて深い不信感を与えていたうえ、右団体交渉の申し入れに対し同年三月七日以降数回の団体交渉を重ねたが、会社は団体交渉を開いてもその席上で問題の解決を図ろうとはせず、非公式に組合三役とのみの話し合い(これを関係者は小委員会と呼んでいる)で解決を図り、同月三一日に至り漸く組合三役との話し合いの席で、組合がストライキをしないことの条件を付して基本賃金引き上げの要求事項についてのみ、定期昇給を含めて月額二八〇〇円の増額、その実施期日を同月二一日とする回答を示したが、その他の要求事項については、時期尚早等の理由で事実上要求を拒否する態度を示したので、組合はこれを不満とし、交渉の行き詰り打開のため本部ヘRの派遣を要請し、これにより派遣されて来たQ労働組合の中央執行委員Rが組合から会社との団体交渉の依頼を受け、団体交渉の場に出席しようとしたが、会社は正当な理由もなくRの参加を拒否したばかりでなく、組合三役との話し合いによる解決を固執するので、組合はこれら会社の不当な態度に抗議するとともに、前記回答に付した条件を撤回させかつRの団体交渉への出席を承認させるため、同年四月一二日午後三時から翌一三日午前八時までのストライキを決行したこと、会社は同月二二日の団体交渉において組合がストライキを行なつたことを理由にさきに示した賃上げの回答を撤回する旨を告げ、その後もRの団体交渉への参加を拒否し続けるので、組合はさらにQ労働組合P分会闘争委員長名義の団体交渉権をRに授与した旨の会社社長W宛文書で通知したが、会社は右分会名義の文書は受け取れぬとその受領を拒否して、暗に組合が上部団体に加入したことを非難嫌忌した態度を示し、一向にその不当な態度を改めよ 交渉権をRに授与した旨の会社社長W宛文書で通知したが、会社は右分会名義の文書は受け取れぬとその受領を拒否して、暗に組合が上部団体に加入したことを非難嫌忌した態度を示し、一向にその不当な態度を改めようとしないので、組合は同年五月二二日頃福岡地方労働委員会に会社の不当労働行為を訴えて救済を求めるに至つたこと、会社は依然としてRの団体交渉への出席を肯じなかつたが、同月二五日頃に至り、さきに撤回したと同様の、定期昇給を含めて月額二八〇〇円の賃上げ、その実施期日を同年四月二一日からとする回答を示した。右回答は実施時期を遅らせた点で前回に劣る内容のものであつたが、組合はこれを不満としつつも、金額については最早やこれ以上の増額は望めないとして諦めるが、その実施時期は前回同様とすることと、Rの団体交渉参加の承認を求めて五月二七日団体交渉を開催すべきことを会社に申し入れたが、会社は同月二八日進水式の予定があつたところがら二七日の開催を拒否し進水式におけるストライキを回避するため同月三〇日に開催を回答して譲らないところがら、それまでも会社が進水式のストライキを極力避けるため団体交渉の開催時期を進水式終了後に引き延ばす戦術をとり続け、他方組合は、組合員総数五〇名に達しない少数であるのに対し、会社の下請け工員は約四五〇名の多数に上り、進水式以外の業務のストライキでは会社の蒙る打撃は比較的軽いのに対し、組合員の招く損失は決して軽いものではなく、従来とつて来たストライキの効果が少かつたところがら、組合としては戦術の転換を迫られていた折ではあり、組合は事ここに至れば最早や進水式のストライキもやむなしとして、会社の不当な態度に抗議し、Rの団体交渉参加の承認、賃上げ実施の時期を同年三月二一日に遡らせることの承認を目的として同年五月二八日午前一一時より午後〇時一〇分ま 進水式のストライキもやむなしとして、会社の不当な態度に抗議し、Rの団体交渉参加の承認、賃上げ実施の時期を同年三月二一日に遡らせることの承認を目的として同年五月二八日午前一一時より午後〇時一〇分まで、当日行なわれる進水式の業務に就労することを拒否してストライキ実施に踏みきつた等の一連の経緯事実を認めることができる。 使用者が、組合が正当に委任した者との団体交渉を正当な理由もなく拒否し、その不当労働行為を改めないときは、組合は労働委員会に対しその旨を申立て、救済を求める道が開かれていることはいうまでもないが、しかし組合がかかる救済手段に依るほか、争議手段に訴えて、直接使用者の反省と理解を求めこれにより団体交渉に対する使用者の不当な拒否的態度を排除し、団体交渉において労働者が使用者と対等の立場に立つことを保持し、その経済的地位の向上を図ることも、労働者に保障された団体行動権の正当な行使の範囲に属するものとして、許容されるものと解しなければならない。本件時限ストライキはまさにかかる趣旨目的のもとに行なわれたもので、前叙のごとき本件ストライキの経緯に明らかなように、会社がとり続けて来た一連の不当な態度と対比するとき、右ストライキに不当労働行為に対する抗議の趣旨が含まれているからといつて、一概に不当視することは妥当とはいい難く、正当な争議行為と認めざるを得ないところである。 被告人N、同O等組合員が進水式に際して行なつた前記デモ行進や、進水式場に立ち竝んだり、シユプレヒコールを反覆したり、労働歌を高唱したりした行為は、多数の者によつて行なわれた点において威力的要素を具有することは否めないが、その行為の目的は、本件時限ストライキにおいて会社の不当労働行為に対する抗議の趣旨を鮮明にするとともに、進水式に列席したり参観している船主や海上運送関係者、 て威力的要素を具有することは否めないが、その行為の目的は、本件時限ストライキにおいて会社の不当労働行為に対する抗議の趣旨を鮮明にするとともに、進水式に列席したり参観している船主や海上運送関係者、造船関係者その他の一般市民に労働者の窮状を訴えて、使用者たる会社の反省と理解を求める趣旨の徹底を図つたものであり、行為の態様も、時間的には僅かに二〇分間程度のものであつて、進水式場に一時的に立ち塞がつたり、デモ行進したり、シユプレヒコールを反覆したり、労働歌を歌つた比較的消極的性格の強いもので、積極的に他人の身体や工場施設に対する直接的有形力を行使したものとは根本的に性質を異にするものである。しかも組合をしてかような抗議行動にまで駈り立てたのは、前叙のごとき会社が不当労働行為を反覆して顧みるところのなかつた不当な態度に非難されるべき大半の原因があつたものといい得るところであり、行為の結果についても、被告人N、同O等組合員の右抗議行動の終つた後、会社は中断した進水式を続行して間もなくこれを終了していたのであつて、業務妨害の程度は極めて軽微であつたと見得るところである。右のごとき、行為の動機、目的、態様、結果を総合して考察すると、前記行為は結局、労働者たる被告人N、同O等組合員が、自らの経済的地位の向上を図るために、使用者たる会社との団体交渉を進める上に、対等な立場を保持することを目的とした行為であつて、社会的に相当な範囲を逸脱したものではなく、正当なものというべきであるから、未だ会社の行なう業務を違法に妨害したものということはできない。またかように会社との関係において正当なものである以上、船主Vとの関係においても前記説示するところに照らして、正当な行為たる性質を失わないのである。結局被告人Nおよび同Oの前記行為は犯罪を構成しないので、これと同旨 の関係において正当なものである以上、船主Vとの関係においても前記説示するところに照らして、正当な行為たる性質を失わないのである。結局被告人Nおよび同Oの前記行為は犯罪を構成しないので、これと同旨の原判決には事実の誤認ないし法令の解釈適用の誤りはなく、論旨は理由がない。 検察官の控訴趣意第二点量刑不当の主張について所論は要するに、本件事犯は典型的集団犯罪で犯行の動機、原因において酌量の余地がなく、改悛の情も認められないので厳重な処罰が必要であるのに、原判決が本件有罪部分につき、執行猶予の期間を僅かに一年としたのは、科刑著しく軽きに失し不当であるので、破棄を免れ難い、というのである。 案ずるに、被告人Aについては、前叙のごとく原判決には事実誤認があり、破棄を免れ難いので、当然新たな見地から量刑を行うべきものであるから、同被告人に関しては、右控訴趣意に対する判断を省略することとする。 被告人N、同O両名については、本件事犯がいずれも集団的に行なわれた犯罪であることは相違ないが、労使関係における紛争に端を発する犯罪は往々にして集団化するものであり、唯単に集団的であるという理由だけから悪質と断ずるのは相当ではない。本件各犯行の動機形成過程には、会社の不当な責めらるべき態度が重要な原因をなしており、犯行の態様、被害の程度、被告人等の年令、職業、境遇等諸般の情状を総合して考察すると、憫諒すべきものがあり、原判決の定めた刑は相当であり、執行猶予一年の期間も決して軽きに失するものではない。論旨はいずれも理由がない。 弁護人木梨芳繁同小野山裕治の控訴趣意第一点事実誤認の主張および第二点法令適用の誤について一公訴事実第二関係所論は要するに、原判決が認定したXがCに加えた暴行の内容は、鉄管置場付近に倒れたCの右横腹を手拳で突いた行為を指すも 第一点事実誤認の主張および第二点法令適用の誤について一公訴事実第二関係所論は要するに、原判決が認定したXがCに加えた暴行の内容は、鉄管置場付近に倒れたCの右横腹を手拳で突いた行為を指すものと考えられるが、Cがデモ隊に押されて転倒した事実はなく、倒れたところをXに横腹を突かれたと供述するCの証言は措信し難い。Xは入構を阻止しようとするCの手を払いのけたに過ぎないもので、暴行というに価しないばかりでなく、Cの行為は正当な団体行動を妨害するもので、これを排除したXの行為は正当な反撃行為である。Cがわざわざクレーン車の所まで移動して来たことは、Xならびに他の組合員の団体行動に対する侵害意思があつたのであり、かかる侵害意思をもつてデモ隊の行進を妨害したのである。 しかも被告人NはCに対し暴行を加えた事実はない。原判決は証拠の取捨選択を誤り事実を誤認したのであり、破棄を免れ難い。 仮りに、原判決に右主張のごとき事実誤認がなかつたとしても、被告人Nの行為は可罰的違法性を欠ぎ犯罪を構成しないものである。すなわち、被告人Nの行為は、Cがデモ隊の構内立入りを制止したことに端を発したものであるが、組合のデモは正当なものであり、Cの右制止行為は、会社総務部長Mの指示にもとづく組合の組織を破壊する意図によるもので違法な行為である。そのうえCは、デモ隊が正門付近に引き返して来た機会をとらえてデモ隊員のXに不当な言いがかりをつけ、再び挑発を行なつたのである。右違法な挑発行為に対し被告人N等デモ隊員がこれを制止するため暴行に及んだとしても、その目的、態様から考察すると社会的に相当な範囲にあるもので可罰的違法性を欠くものである。 また仮りに、Cの行為が違法でないとしても、組合員は会社から度重なる組織を破壊する侵害を受けていたのであつて、Cはその挑発行為に対す と社会的に相当な範囲にあるもので可罰的違法性を欠くものである。 また仮りに、Cの行為が違法でないとしても、組合員は会社から度重なる組織を破壊する侵害を受けていたのであつて、Cはその挑発行為に対する組合員の反撃を予想すべきであり、かつそれを受忍すべきであるから、被告人Nの行為は可罰的違法性を欠くものである。しかるに原判決は会社が組合の組織を破壊する違法な事態を看過して、被告人Nの行為に違法性を肯定したのは、法令の解釈適用を誤つた違法がある。 二公訴事実第三関係原判決は、被告人A、同N、同Oが、同年四月一三日午前七時五〇分頃、組合員約四〇名位とともに就労のため会社通用門から入構しようとしたが、会社総務部長Mから入構を拒否されたため、被告人等三名は他の組合員とともに会社構内に乱入し、右Mを取り囲み数回駈け回つて同人を渦巻の中に巻き込み、同人の身体を肘で突いたり、押しまくつたりし、倒れた組合員の上にMが折り重なつて倒れさらに同人の上に他の組合員が倒れかかるなどして、Mに対し加療一週間を要する右中指、環指、右足関節、左大腿部打僕傷を負わせた、旨の事実を認定したが、被告人等組合員は、入構しながら二列縦隊に隊列を整えて行進したもので、通用門から一気に構内に乱入した事実はなく、また組合員がMを取り囲んで洗濯デモや渦巻きデモを行なつて同人に傷害を負わせた事実もない。しかるに原判決がこれと異る事実を認定したのは、採証方法を誤り事実を誤認した違法があり、破棄を免れ難い。 仮りに、原判決に事実誤認がなかつたとしても、被告人等三名の行為は、可罰的違法性を欠くもので犯罪を構成しない。すなわち、被告人等の行為は、当日のストライキ行動を終了し就労のため午前七時五〇分頃会社通用門から入構しようとしたとき、前記Mから入構を阻止されたのが発端をなしているが、右入 もので犯罪を構成しない。すなわち、被告人等の行為は、当日のストライキ行動を終了し就労のため午前七時五〇分頃会社通用門から入構しようとしたとき、前記Mから入構を阻止されたのが発端をなしているが、右入構阻止は、会社が違法な争議対抗行為の一環として行なつた違法な阻止行為であつて、組合員の入構は正当な行為であることはいうまでもない。組合員等は右不当な阻止に抗議してデモ行動に出たが、これは団体行動権の行使として正当な行為である。原判決はこのデモは正当な抗議行動ではないと判断しているが、原判決のこの判断はMの阻止行為の本質を見誤つたのであり、組合員のデモ行動が、手段方法において多少行き過ぎがあつたとしても、社会的相当性の範囲を逸脱したものではない。デモ隊の正面に立ち塞がればデモ隊から押されるのは必定で、Mはこのことを容認していたのである。同人の受傷はデモ隊員の予期しない結果から生じたものであるから、被告人等の行為による法益侵害の程度は、現実に生じた傷害の結果より相当軽減して評価されるべきで、ヂモ隊員等の行為は可罰的違法性を帯びたものではない。 しかるに、原判決が被告人N同A、同O等の行為に違法性を肯定したのは、会社が組合の組織を破壊する行為の実体を誤認し、ひいては法令の解釈適用を誤つた違法があり、破棄を免れ難い。 というのである。 案ずるに、一公訴事実第二関係原判決挙示の証拠(原判決摘示証拠のうち、判示第二の一および二について、と挙示する証拠)を総合すると、昭和三八年四月一三日午前七時三〇分頃、被告人N等組合員約四〇名位が赤旗を先頭に二列縦隊で会社構内をデモ行進するため、通用門に押しかけ、会社保安係Cおよび同Dが通用門を内側から押えてデモ隊の入構を阻止したが、デモ隊員多数の力で無理に通用門を引き開けて構内に入り、Cが右組合員多数に押 で会社構内をデモ行進するため、通用門に押しかけ、会社保安係Cおよび同Dが通用門を内側から押えてデモ隊の入構を阻止したが、デモ隊員多数の力で無理に通用門を引き開けて構内に入り、Cが右組合員多数に押されて後方に退り転倒した際、組合員の一人Xが手でCの横腹付近を殴打した事実が認められ、原審証人Dの供述には右事実を否定し得るものがなく、また原審証人Jの供述は、組合員等が通用門から入構しようとしたとき、Cが通用門に駈け寄つて来てXの腕を掴まえたので、同人がこれを払いのけた旨を述べているが、これは通用門において生起した事実に関するものであつて、CがXから右暴行を受けたのは通用門を過ぎ構内に入つた後鉄パイプが置いてあつた付近まで進んだ(移動した)時の出来事であるから、場所的に異なり、同証人の供述をもつてXの暴行の事実を否定する論拠とはなし難い。さらに、会社構内をデモ行進して引き返して来たデモ隊列中のXに対しCがさきにXから受けた暴行について抗議した事実が認められるが、会社がその前日組合のストライキ実施期間中これに対応して組合員の工場構内への立入りを禁止し、この措置が適法なものであることは、さきに公訴事実第一について説示するところにより既に明らかであつて、C等が、この禁止を犯して構内に入ろうとする組合員の入構を阻止しようとした行為は正当といわねばならない。C等のこの阻止を排除して無理に会社構内に入つた組合員の行為は、違法な侵入行為であつて、この違法状態において行なわれた会社構内デモもまた違法なものとなることも否めないところである。従つて、違法な立入りに続くXの暴行に対しCが抗議をした行為が組合ないし組合員の有する団体行動権を違法に侵害したというのは当らない非難というほかはない。さらに前掲証拠によれば、クレーン車の横付近でXに抗議するCに対し、被告人 の暴行に対しCが抗議をした行為が組合ないし組合員の有する団体行動権を違法に侵害したというのは当らない非難というほかはない。さらに前掲証拠によれば、クレーン車の横付近でXに抗議するCに対し、被告人Nが「何をぐずぐず言うか」と言つて他の組合員等と共にCを取り囲み、被告人Nが持つていた旗竿をCの身体に押しつけ、組合員多数もCの身体をクレーン車に押しつけて暴力を加えた事実が認められ、原審証人Cの第九回公判における供述は、クレーン車に押しつけられた状況について、明確に被告人Nが旗竿で押し、周囲の他の組合員もCを取り巻いた状態で押しつけて来た旨を述べており、結局右暴行の事実を否定し得る証拠はない。 Cの右抗議に激昂して被告人N等が多数の威力を示して暴力を加えた行為の目的は、組合員等自身の構内不法侵入等の違法状態を顧みることなく、Cに対する報復を主たる目的としたものであり、その行為の態様も老齢のCを血気盛んな組合員多数て押しつけ威力を示し暴行を加えたものであつて、行使した有形力の程度は決して軽いものとはいい難いものである。会社が従来とり来つた労務管理の実態や、本件ストライキに至らしめた会社の不当た態度を参酌して、これらとの対比において被告人N等組合員の右行為の目的や態様を考察しても、未だ社会的に相当な範囲を逸脱しない正当な行為と断ずることはできない。Cがかかる違法な攻撃を受忍しなければならない義務はなく、また論旨主張のごときCが前記抗議を行なうについて、組合員等の反撃を予想し、これを容認していたと認め得る証拠はないので、右行為の違法性を阻却し得るものではない。原判決には論旨主張のごとき事実誤認はなく、また被告人N等の行為の違法性を肯定した原判決は正当で、法令の解釈適用を誤つた違法はない。論旨はいずれも理由がない。 二公訴事実第三関係原判決 ない。原判決には論旨主張のごとき事実誤認はなく、また被告人N等の行為の違法性を肯定した原判決は正当で、法令の解釈適用を誤つた違法はない。論旨はいずれも理由がない。 二公訴事実第三関係原判決挙示の証拠(原判決摘示証拠のうち、判示第二の一および二の各事実につき、判示第二の二の事実につき、と挙示する各証拠)を総合すると、原判示第二の二の事実を肯認することができる。右証拠中特に証人D、同C、同M等の供述は、自己の職務に直接関係する事項について、自ら体験または目撃した事実について供述しているのであつて、事態の推移、その状況について各供述するところは、重要な部分においてよく合致しており、単なる傍観者が目撃したのと異なり、その経験内容は印象が深くかつ正確に記憶に留めていることが窺われるので、信憑性の高いものである。論旨の指摘する原審証人Iの供述は、記憶の消失部分が多く、観察しているところも印象が浅いせいか記憶が大ざつぱであつて、前記証人M、同D、同C等の供述の信用性に比肩し得べくもなく、十分の信を措くに足りるものではない。また証人Mの供述について、同人が被害者であるとの一事から偏見にとらわれ或は悪感情から誇張した供述をなしていると感じさせる部分はなく、その他証人の信用性を疑わしめるものはないので、同証人の供述の証明力を否定し得るものはない。 会社は昭和三八年四月一三日午前八時まで、組合のストライキに対応して組合員の会社構内への立入りを禁止し、右立入り禁止の措置が適法なものであつたことは公訴事実第一に関して既に説示したとおりである。 同日年前七時四五分頃構内デモの終了を機に、組合委員長Yがストライキ終了を組合員に告げ、これにより組合の内部関係においてストライキを終了したことが認められる。しかし、組合は未だ会社に対しその旨を通報した訳ではなか 五分頃構内デモの終了を機に、組合委員長Yがストライキ終了を組合員に告げ、これにより組合の内部関係においてストライキを終了したことが認められる。しかし、組合は未だ会社に対しその旨を通報した訳ではなかつたので、さきになした会社に対するストライキ実施の通告は同日午前八時までストライキを行なうことになつており、同時刻到来前にストライキを終了せしめた一事をもつて、会社の立入り禁止解除の措置を待たずに、直ちに右立入り禁止を解放せしめる効力を有するものとは認め難い。従つて同日午前七時五〇分頃会社の承認なく、しかも保安係CやD等の制止があるにもかかわらずこれを排して無理に通用門から入構した被告人A、同N、同O等を含む組合員約四〇名の行動は、違法な構内侵入と断ずるほかはない。、被告人等の入構を拒否した総務部長Mの措置は正当な行為であることは言うまでもない。被告人等組合員等がこの違法状態下において、さらにMを取り囲み同人の周囲を数回駈け回り、肘で突いたり、押しまくつたりして暴行を加え、その場に倒れた同人の上に組合員等が折り重なつて倒れ、右暴行によりMに対し加療一週間を要する傷害の結果を発生せしめた事実について、被告人等を始め組合員等において、多数の威力を示しかつ暴行を加える認識ないし意図を有していたことは、通用門の外で副委員長Zが、会社はまだもみ足らんと言つている、もう一もみしてやれ、と叫び、被告人Oがこれに合せて、やれやれ、と気勢を上げて全員一気に通用門から構内に侵入し、両手を拡げてこれを阻止しようとするMを後退させて取り囲み、同人の周囲を駈け回つた行動に照らして、明らかに認め得るところであつて、Mが倒れ、その上に組合員が折り重なつて倒れた行為も、右のような状況下に生じたものであるから継続して行なつた一連の暴行に包含される行為と見て差し支えないもので して、明らかに認め得るところであつて、Mが倒れ、その上に組合員が折り重なつて倒れた行為も、右のような状況下に生じたものであるから継続して行なつた一連の暴行に包含される行為と見て差し支えないものであり、かかる暴行の結果生じた傷害について、被告人等がたとえ傷害の認識を有していなかつたとしても責任を免れないことは、結果的加重犯として当然のことといわねばならない。被告人等の右行為は、会社に対する不満と、総務部長Mに対する抑え難い憤懣に駈られて行なつたものであつたにしても、立入り禁止の措置を破り、行為の態様は前記の如く激しいもので、その傷害の結果も決して軽微とは言い難いものであつて、会社が従来とり来つた労務管理や正業な理由もなく組合の委任した者との団体交渉を拒否した不当な態度を考慮に入れても、右行為が社会的相当な範囲を逸脱しない正当な行為であるとは到底認め得ないものである。さらにMがデモ隊に押されることを予期し、これを承知の上で容認していたと認め得る証拠はないので、承諾を前提とする違法性阻却事由も存在しない。 これを要するに、原判決には所論主張のごとき事実誤認や法令の解釈適用の誤りはなく、論旨はいずれも理由がない。 よつて、本件各控訴のうち、検察官の被告人Aに対する控訴は理由があるので、刑事訴訟法三九七条一項三八二条により原判決中被告人Aに関する部分を破棄し、同法四〇〇条但書によりさらに判決することとし、検察官の被告人N、同Oに対する各控訴ならびに被告人A、同N、同Oの各控訴はいずれも理由がなく、同法三九六条により検察官の被告人N、同Oに対する各控訴および同N、同Oの各控訴を棄却することとし、当審における訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項但書により被告人等三名に負担させないこととする。 被告人A関係につき(罪となるべき事実)被告人A 訴および同N、同Oの各控訴を棄却することとし、当審における訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項但書により被告人等三名に負担させないこととする。 被告人A関係につき(罪となるべき事実)被告人Aは、昭和三八年四月一二日午後四時一五分頃、組合員約四〇名とともに、福岡市a区bc丁目d番e号所在の会社工場内をデモ行進した際、同会社の保安係C(当時満六五年)がデモの状況を写真撮影したのを見て立腹し、会社守衛室に居る同人の所へ他の組合員とともに殺到し、口口に「写真機をやれ」「写真機をとれ」と怒号し、Cが写真機を奪われまいとして左手に握り後手に隠しているのを、同人の左側から写真機を掴んで同人の左腕とともに強く左横に持ち上げ激痛を与えて右写真機を取り上げ、もつて多数の威力を示して暴行を加えたものである。 (証拠の標目)(省略)(法令の適用)法律に照らすに、被告人Aの本件公訴にかかる各所為のうち、前記多衆の威力を示してCに対し暴行を加えた点は昭和三九年法律一一四号付則二項により改正前の暴力行為等処罰に関する法律一条、昭和四七年法律第六一号による改正前の罰金等臨時措置法三条一項二号に、原判決が適法に確定した傷害の点は裁判時において刑法六〇条二〇四条罰金等臨時措置法三条一項一号に、行為時において刑法六〇条二〇四条右改正前の罰金等臨時措置法三条一項一号に各該当するが、後者の罪については刑法六〇条一〇条により軽い行為時の刑により処断することとし、以上は同法四五条前段の併合罪に当るので、いずれも所定刑中懲役を選択したうえ同法四七条但書一〇条により重い傷害罪の刑に併合罪の加重をした刑期範囲内において同被告人を懲役三月に処し、同法二五条一項により本裁判確定の日から一年間右刑の執行を猶予することとし原審における訴訟費用中主文四項掲記の分は刑事訴訟法一八一条 に併合罪の加重をした刑期範囲内において同被告人を懲役三月に処し、同法二五条一項により本裁判確定の日から一年間右刑の執行を猶予することとし原審における訴訟費用中主文四項掲記の分は刑事訴訟法一八一条一項本文により同被告人の負担すべきものとし、その余の部分は同条一項但書により同被告人に負担させないこととする。 よつて、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官中村荘十郎裁判官真庭春夫裁判官仲江利政)

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