平成25年1月23日判決言渡平成22年(行ウ)第615号損害賠償等(住民訴訟)請求事件主文 1 本件訴えのうち後記「事実及び理由」第1の1記載の請求に係る部分を却下する。 2 被告が,α村を代表して,Aに対し,756万3800円及びこれに対する平成17年11月15日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払の請求を目的とする訴訟を提起することを怠る事実は違法であることを確認する。 3 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。事実及び理由第1 請求 1 被告は,α村を代表して,Aに対し,756万3800円及びこれに対する平成17年11月15日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払の請求を目的とする訴訟を提起せよ。 2 主文第2項と同旨。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要等本件は,原告Bが地方自治法242条の2第1項4号本文の規定に基づき提起した住民訴訟について,α村村長であるA(同人が村長として行為をしたこと等を表す場合には,「A村長」ということがある。)に対してAに損害賠償の請求をすることを命ずる判決が確定したところ,当該判決が確定した日から60日が経過しても損害賠償金が支払われないのに,α村の代表監査委員である被告が同法242条の3第2項及び第5項の規定に基づきα村を代表してAに対し当該損害賠償の請求を目的とする訴訟を提起しないとして,α村の住 民である原告らが,被告に対し,①同法242条の2第1項4号の規定に基づき,α村を代表してAに当該判決に係る損害賠償金の請求を目的とする訴訟を提起することを求めるとともに,②同項3号の規定に基づき,被告がα村を代表して上記の訴訟を提起することをしないことは財産の管理を怠る α村を代表してAに当該判決に係る損害賠償金の請求を目的とする訴訟を提起することを求めるとともに,②同項3号の規定に基づき,被告がα村を代表して上記の訴訟を提起することをしないことは財産の管理を怠る事実に該当し違法であるとして,その旨の確認を求める事案である。 1 法令の定め(1) 地方自治法203条(平成20年法律第69号による改正前のもの。以下同じ。)ア普通地方公共団体は,その議会の議員(中略)その他普通地方公共団体の非常勤の職員(短時間勤務職員を除く。)に対し,報酬を支給しなければならない(1項)。 イ第1項の職員の中議会の議員以外の者に対する報酬は,その勤務日数に応じてこれを支給する。ただし,条例で特別の定めをした場合は,この限りでない。(2項)ウ第1項の者は,職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる(3項)。 エ普通地方公共団体は,条例で,その議会の議員に対し,期末手当を支給することができる(4項)。 オ報酬,費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は,条例でこれを定めなければならない(5項)。 (2) 地方自治法204条(便宜上,平成21年法律第41号による改正前のものを掲げる。以下同じ。)ア普通地方公共団体は,普通地方公共団体の長及びその補助機関たる常勤の職員(中略)その他普通地方公共団体の常勤の職員並びに短時間勤務職員に対し,給料及び旅費を支給しなければならない(1項)。 イ普通地方公共団体は,条例で,第1項の職員に対し,扶養手当,調整手 当,住居手当,初任給調整手当,通勤手当,単身赴任手当,特殊勤務手当,特地勤務手当(これに準ずる手当を含む。),へき地手当(これに準ずる手当を含む。),時間外勤務手当,宿日直手当,管 調整手 当,住居手当,初任給調整手当,通勤手当,単身赴任手当,特殊勤務手当,特地勤務手当(これに準ずる手当を含む。),へき地手当(これに準ずる手当を含む。),時間外勤務手当,宿日直手当,管理職員特別勤務手当,夜間勤務手当,休日勤務手当,管理職手当,期末手当,勤勉手当,期末特別手当,寒冷地手当,特定任期付職員業績手当,任期付研究員業績手当,義務教育等教員特別手当,定時制通信教育手当,産業教育手当,農林漁業普及指導手当,災害派遣手当(武力攻撃災害等派遣手当を含む。)又は退職手当を支給することができる(2項)。 ウ給料,手当及び旅費の額並びにその支給方法は,条例でこれを定めなければならない(3項)。 (3) 地方自治法204条の2(平成20年法律第69号による改正前のもの。 以下同じ。)普通地方公共団体は,いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには,これを第203条第1項の職員及び第204条第1項の職員に支給することができない。 2 前提となる事実(当事者間に争いのない事実,括弧内掲記の証拠又は弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実及び当裁判所に顕著な事実。以下「前提事実」という。)(1) α村の住民である原告Bは,平成17年10月25日,α村の執行機関であるA村長を被告として,α村が同年3月31日に勧奨退職により退職した元職員を同年4月1日付けで非常勤の職員である社会教育嘱託員(以下「本件嘱託員」という。)として雇用したことについて,その賃金の額がその労働の対価として不合理に高額なもので違法である等として,当時のα村村長であったAに対して同月から平成18年12月までの間にα村が本件嘱託員に支払った賃金のうち賃金の額として相当な額である合計525万円を超える1156万6625 ので違法である等として,当時のα村村長であったAに対して同月から平成18年12月までの間にα村が本件嘱託員に支払った賃金のうち賃金の額として相当な額である合計525万円を超える1156万6625円を含む損害1696万6250円及びこれに 対する遅延損害金の賠償の請求をすることを求める住民訴訟(以下「先行訴訟」という。乙5。なお,上記に掲げた主張は,その第一審における口頭弁論の終結当時におけるものである。)を提起した。 東京地方裁判所は,平成19年4月27日,原告Bの請求を棄却する判決(以下「先行訴訟の第一審判決」という。)を言い渡した(乙5)。 (2) 原告Bは,平成19年5月7日,先行訴訟の第一審判決に対して控訴を提起した(弁論の全趣旨)。 控訴審において,控訴人である原告Bは,請求を,平成17年4月から平成19年3月までの間に支払われた賃金のうち賃金の額として相当な額である合計600万円を超える損害1332万0112円及びこれに対する遅延損害金の賠償の請求をすることを求めるものに変更し,新たに,本件嘱託員は非常勤の職員であるから地方自治法203条に従い報酬及び費用弁償以外の手当等を支給することは許されない等の主張を追加した。一方,被控訴人であるA村長は,各種の手当は本件嘱託員に対する賃金の算出における金額明細として例示されているにすぎない等と主張した。 東京高等裁判所は,平成20年12月24日,上記の期間中に本件嘱託員に対して支給された合計1932万0112円のうち各種手当の支給に当たる合計756万3800円は,同法に違反するものであったとして,先行訴訟の第一審判決を変更し,「被控訴人(A村長)は,Aに対し,756万3800円及びこれに対する平成17年11月15日から支払済みまで年5分の割合による金 は,同法に違反するものであったとして,先行訴訟の第一審判決を変更し,「被控訴人(A村長)は,Aに対し,756万3800円及びこれに対する平成17年11月15日から支払済みまで年5分の割合による金員の請求をせよ」との原告Bの請求の一部を認容する判決(以下「先行訴訟の控訴審判決」といい,同判決における認容に係るα村のAに対する損害賠償債権を「本件債権」という。)を言い渡した(甲1)。 (3) A村長は,平成20年12月26日のα村議会の臨時会における議決を経た上で(甲25),同日,先行訴訟の控訴審判決に対して上告受理の申立てをしたところ,α村議会の議員は,平成21年3月27日,α村議会の定例 会において,本件債権を放棄する旨の議案(以下「本件議案」という。)を提出し,α村議会は,同日,同議案を可決する議決(以下「本件議決」という。)をした(甲28,乙1,2,弁論の全趣旨)。 A村長は,同年4月10日,Aに対し,本件債権の放棄を執行する旨を通知し(乙3),同通知は,同月11日,Aに到達した(乙6の1及び2)。 (4) 先行訴訟の控訴審判決については,平成22年2月16日,最高裁判所によって,事件を上告審として受理しないとの決定がされ,確定した(甲2。 確定後の先行訴訟の控訴審判決を,以下「前訴確定判決」という。)。 (5) 被告は,平成22年4月19日,前訴確定判決に係る損害賠償金につき同日までの間にα村側からAに対する請求又はAから同村への支払の事実がないことを確認した上で,地方自治法242条の3第2項及び第5項に基づき同村を代表してAに対し当該損害賠償の請求を目的とする訴訟を提起することはしない旨の判断をした(乙4)。 (6) α村の住民である原告らは,平成22年8月16日,α村監査委員に対し,被告が地方自 村を代表してAに対し当該損害賠償の請求を目的とする訴訟を提起することはしない旨の判断をした(乙4)。 (6) α村の住民である原告らは,平成22年8月16日,α村監査委員に対し,被告が地方自治法242条の3第2項及び第5項に基づき同村を代表してAに対し前記(5)の損害賠償の請求を目的とする訴訟を提起していないことが違法に財産の管理を怠る事実に当たるとして,当該怠る事実を改めて上記の訴訟を提起するために必要な措置を講ずべきことを請求する住民監査請求をし,これについて,α村監査委員は,同年10月12日付けで,本件債権は適法かつ有効に放棄されて消滅しているから,これにつき被告がα村を代表して上記の訴訟を提起していないことが違法に財産の管理を怠ったことにはならない等として,上記の住民監査請求に理由がないと認めるとし,原告らに対し,その旨を通知した(甲3)。 (7) 原告らは,平成22年11月1日,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。 3 争点及び当事者の主張の要点 (1) 本件訴えのうち上記第1の1記載の請求に係る部分(以下「本件義務付けの訴え」という。)が地方自治法242条の2第1項4号の請求(いわゆる4号請求)に係る訴訟類型に該当するかア原告らの主張の要点本件義務付けの訴えは,4号請求に係る訴訟(以下「4号訴訟」という。)として住民訴訟の類型に該当する適法な訴えであるといえる。 先行する4号訴訟で地方公共団体の長個人に対する損害賠償請求等を求める訴えが認容された場合,地方公共団体が長個人を被告としていわゆる2段目の訴訟を提起することになるが,その場合は代表監査委員が地方公共団体を代表するとされている(地方自治法242条の3第5項)。 そして,代表監査委員は, 体が長個人を被告としていわゆる2段目の訴訟を提起することになるが,その場合は代表監査委員が地方公共団体を代表するとされている(地方自治法242条の3第5項)。 そして,代表監査委員は,現行の地方自治法の下においては地方公共団体の住民が地方公共団体に代位して2段目の訴訟を提起することが認められていないこと,2段目の訴訟の提起については議会の議決は不要とされていること(同条3項)などに鑑みると,地方公共団体の長個人に損害賠償等の請求をすることを求める4号訴訟において住民の請求が認容され,同判決が確定した場合において,判決確定の日から60日以内に損害賠償金等が支払われない場合には,速やかに長個人を被告とする2段目の訴訟を提起する義務を負い,当該訴訟に関する限り,地方公共団体を代表して訴訟の提起及び訴訟追行を行う全般的な権限を与えられているというべきである(神戸地方裁判所平成20年10月14日判決(平成20年(行ウ)第30号。以下「神戸地裁平成20年判決」という。)参照)。 そうすると,地方公共団体の長個人に損害賠償等の請求をすることを求める4号訴訟において住民の請求が認容され,同判決が確定したが,60日以内に長個人が損害賠償金等を支払っていないにもかかわらず,地方公共団体が長個人に損害賠償等の請求をしていないとして,地方公共団体の住民が長個人に対する訴えを提起して損害賠償等の請求をすることを求め る4号訴訟を提起する場合には,代表監査委員は執行機関として被告適格を有することになるが,代表監査委員は,訴訟外で損害賠償等の請求をすることまでは認められていないことから,代表監査委員を被告として4号訴訟を提起する場合には,必然的に訴えを提起して請求することを求めていると解するべきである(神戸地裁平成20年判決参照)。 請求をすることまでは認められていないことから,代表監査委員を被告として4号訴訟を提起する場合には,必然的に訴えを提起して請求することを求めていると解するべきである(神戸地裁平成20年判決参照)。 よって,請求方法を訴訟上の請求に限定する4号訴訟も適法と解すべきであることから,代表監査委員を被告として,地方公共団体の長個人に対する損害賠償等の訴えを義務付ける訴訟は,4号訴訟すなわち住民訴訟として適法と解されることになる。 イ被告の主張の要点地方自治法242条の2第1項に規定する住民訴訟は,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)5条に規定する民衆訴訟の1類型であるところ,民衆訴訟は「法律の定める場合」に限り訴えを提起することができるものである(行訴法42条)。 本件義務付けの訴えは,地方自治法242条の2第1項4号に基づくものとして提起されたところ,4号訴訟としてすることが可能な請求は,「当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還請求の返還をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求」である。 それにもかかわらず,本件義務付けの訴えにおいて,原告らは,被告に対し,訴えの提起を義務付けることを求めているのであるから,上記訴えは,住民訴訟の類型に該当しない不適法な訴えである。 ちなみに,4号請求が認容された場合において,同法242条の3により,代表監査委員が損害賠償請求の訴えを提起する義務を負っているにもかかわらず,義務の履行を怠る事態があり得る。このような場合には,代表監査委員の職に就いている当該職員は,地方公共団体に対して遅延損害 金,あるいは場合により請求権が時効で消滅したことによる損害賠償義務を負い, 行を怠る事態があり得る。このような場合には,代表監査委員の職に就いている当該職員は,地方公共団体に対して遅延損害 金,あるいは場合により請求権が時効で消滅したことによる損害賠償義務を負い,この賠償責任自体が4号請求の対象となるものであり,同法242条の3の義務は,機能的にみて間接強制に近い形で履行を強制されるものと理解されている。 また,「新4号訴訟が,地方公共団体の損害賠償請求権の代位請求訴訟である旧4号訴訟に代わるものとして設けられているものであるとしても,住民が地方公共団体に代位して第2段目の訴訟を提起できるという制度について規定がない以上,これを解釈によって認めることは無理であるといわざるを得ない」(「改正住民訴訟執務資料」最高裁事務総局行政局監修(法曹会)35頁)との記述もまた,代表監査委員に対する4号請求ができないことを前提としているものと考えられる。すなわち,代表監査委員に対し,地方公共団体の長の地位にある個人を被告とする損害賠償請求訴訟の提起を義務付ける4号訴訟が可能であれば,あえて,ここで,地方自治法に規定が存在しない代表監査委員に代位して2段目の訴訟を提起できるか否かを検討する必要はないからである。 原告らは,前訴確定判決により確定した損害賠償請求を目的とする訴訟を提起しないことが怠る事実であり,この怠る事実を改めるために必要な措置として,訴えの提起を求める旨を主張する。しかし,長個人に対し損害賠償せよとの前訴確定判決の拘束力は代表監査委員にも及んでいるのであるから,結局は,訴えの提起のみの義務付け訴訟ということとなり,4号訴訟の訴訟類型には該当しない。 (2) 本件義務付けの訴えが狭義の訴えの利益を有するか(争点2)ア原告らの主張の要点先行する4号訴訟で地 義務付け訴訟ということとなり,4号訴訟の訴訟類型には該当しない。 (2) 本件義務付けの訴えが狭義の訴えの利益を有するか(争点2)ア原告らの主張の要点先行する4号訴訟で地方公共団体の長個人に対する損害賠償請求等を求める訴えが認容された場合,判決確定後60日以内に当該損害賠償金の支払がなされない場合には,条文上,代表監査委員が地方公共団体を代表し て2段目の訴訟を提起しなければならないとされているのである(地方自治法242条の3第5項)。 すなわち,前訴確定判決の拘束力や形成力いかんにかかわらず,代表監査委員は2段目の訴訟を提起できるのであるから,この法律上定められた訴訟提起を義務付けようとする本件義務付けの訴えには訴えの利益が認められる。 イ被告の主張の要点(ア) 判決の拘束力地方自治法242条11項は,「第1項の規定による訴訟については,行訴法43条の規定の適用があるものとする。」と規定し,行訴法43条3項は「民衆訴訟又は機関訴訟で,前2項に規定する訴訟以外のものについては,第39条及び第40条第1項の規定を除き,当事者訴訟に関する規定を準用する。」と規定している。そして,当事者訴訟に関する行訴法41条1項は,行訴法33条1項を準用しているから,4号訴訟の判決は「その事件について,処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。」こととなり,4号訴訟では,地方公共団体の執行機関又は職員が被告となるので,当事者たる機関又は職員に対して,4号訴訟の判決の拘束力が及ぶものである。 前訴確定判決の主文は,「被控訴人は,Aに対し,756万3800円及びこれに対する平成17年11月15日から支払済みまで年5分の割合による金員の請求をせよ。」というものであり,この判決 のである。 前訴確定判決の主文は,「被控訴人は,Aに対し,756万3800円及びこれに対する平成17年11月15日から支払済みまで年5分の割合による金員の請求をせよ。」というものであり,この判決における被控訴人はα村村長であるが,当該職員であるAが,前訴確定判決の確定した日から60日以内に損害賠償金を支払わないときは,「当該普通地方公共団体がその長に対し当該損害賠償・・・の請求を目的とする訴訟を提起するときは,当該訴訟については,代表監査委員が当該普通地方公共団体を代表する」(地方自治法242条の3第5項)こととなり, Aに対し,訴えを提起するときの代表者は,当然に,本件訴えにおける被告となり,前訴確定判決の拘束力は当然に被告にも及ぶこととなる。 そして,4号請求に係る訴訟に,請求方法を訴訟上の請求に限定する4号請求も含まれるとすれば,結局,前訴確定判決の拘束力の内容を,重ねて別の判決により,同一内容の拘束力を求めることになる。 したがって,原告らは,前訴確定判決の拘束力を別訴において再度求めようとするものであるから,狭義の訴えの利益を欠き,不適法である。 (イ) 判決の形成力4号訴訟の判決に基づき,執行機関等には,損害賠償請求権等の債権を行使すべき義務が形成され,当該債権を適切に管理しなければならないこととなる。これにより,地方公共団体としては,当該債権の行使義務が存することを前提に適切な措置をとらなければならないこととなるものである。したがって,前訴確定判決により,α村は,Aに対する損害賠償請求があることを前提に適切な措置をとらなければならない義務が既に生じており,α村は,その義務の履行方法は,地方自治法240条,地方自治法施行令171条から171条の7の規定に従って行わなければならない法的地 とを前提に適切な措置をとらなければならない義務が既に生じており,α村は,その義務の履行方法は,地方自治法240条,地方自治法施行令171条から171条の7の規定に従って行わなければならない法的地位に立たされているのである。そうである以上,本件義務付けの訴えは,既に前訴確定判決により形成されている法律関係の形成を再度求めるものであって,狭義の訴えの利益を欠き,不適法である。 (3) 本件議決が効力を有しないか(争点3)ア原告らの主張の要点以下のとおり,本件議決は,α村議会の権限の濫用によるものであり,違法であるから,効力を有さず,これを前提としてされた本件債権の放棄は,無効である。 (ア) 最高裁判所平成22年(行ヒ)第102号同24年4月20日第二 小法廷判決・民集66巻6号2583頁及び最高裁判所平成22年(行ヒ)第136号同24年4月23日第二小法廷判決・民集66巻6号2789頁。以下,これらを併せて「最高裁平成24年判決」という。)は,住民訴訟の対象とされている損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を放棄する旨の議決があった場合,個々の事案ごとに,①当該請求権の発生原因である財務会計行為等の性質,内容,原因,経緯及び影響,②当該議決の趣旨及び経緯,③当該請求権の放棄又は行使の影響,④住民訴訟の係属の有無及び経緯,⑤事後の状況その他の諸般の事情を総合考慮して,これを放棄することが普通地方公共団体の民主的かつ実効的な行政運営の確保を旨とする同法の趣旨等に照らして不合理であって,議会の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められるときは,その議決は違法となり,当該放棄は無効となるものと解するのが相当である旨及び当該公金の支出等の財務会計行為等の性質,内容等については,その違法事由の性格や 脱又はその濫用に当たると認められるときは,その議決は違法となり,当該放棄は無効となるものと解するのが相当である旨及び当該公金の支出等の財務会計行為等の性質,内容等については,その違法事由の性格や当該職員又は当該支出等を受けた者の帰責性等が考慮の対象とされるべきものと解される旨判示した。 本件における以下の事情を総合考慮すれば,最高裁平成24年判決に従っても,本件議決が議会の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められ,違法であることは明らかである。 a 財務会計行為等の性質,内容,原因,経緯及び影響について(a) 明らかに違法な支出本件嘱託員は,地方公務員法3条3項3号に規定されている特別職地方公務員であり,地方自治法203条に基づいて報酬・費用弁償が支払われるものであった。そして,非常勤職員については,常勤職員に対する給与(給料及び諸手当)と区別して,報酬と費用弁償のみしか支出できないことが法定されている(地方自治法203条2項及び3項)。この区別は,公務員制度が試験によって公平に 選別され,重い責任を負担する常勤職員を基本とし,そうでない非常勤職員を例外的・補助的に位置づけたことの表れであり,公務員制度の根幹に関わるものである。 しかしながら,α村は,本件嘱託員に対し,一般職員同様に,扶養手当,管理職手当(主幹(課長補佐)相当),調整手当,住居手当,通勤手当,期末勤勉手当を支払った。 仮に本件嘱託員に対しての「賃金」の支出を根拠付ける条例が遡って効力を発生したとしても,支払うことができない「手当」を支払った瑕疵は治癒されない。 (b) 高額に過ぎる支出上記手当部分を無効としなければ,本件嘱託員の賃金が高額に過ぎることも前訴確定判決で確 力を発生したとしても,支払うことができない「手当」を支払った瑕疵は治癒されない。 (b) 高額に過ぎる支出上記手当部分を無効としなければ,本件嘱託員の賃金が高額に過ぎることも前訴確定判決で確認されている。 本件嘱託員の仕事は,①郷土資料館長としての事務全般,②図書館長代理としての事務全般,③新図書館建設に関する事務全般であり,これらの事務に従事した時間の割合は,おおむね,①が全体の3分の2程度の割合を占め,残りが②及び③に充てられていた。そして,本件嘱託員は,「郷土資料館や図書館の運営に関連する職務である社会教育課主幹としての勤務経験は1年のみであり,本件嘱託員は,社会教育関係の専門家とはいい難」かったのであり(先行訴訟の第一審判決),①の郷土資料館長として行った事務については,「いずれも社会教育に関する高度に専門的な知識を要するものとは考え難く,また,前年度まで行われてきた事務を引き継いだもので,(本件嘱託員)の就任後に新たに担当業務に加えられたものと認めることもできない」ものであり(同上),郷土資料館長の仕事内容はその専門性ゆえに高額の賃金を得る合理的根拠となり得ないものであった。②と③の事務についても,「(本件嘱託員は)社 会教育の専門家ではない上,建築関係の専門的知識を要する職務に就いた経験もないことからすると,図書館関係の事務及び新図書館の建設に関連する事務についても,一般的な行政事務の課長職としての経験を踏まえつつ,教育課長等の下で補助的な事務を行っていたものに過ぎないといわざるを得ない」ものであった(同上)。先行訴訟の控訴審判決も,上記認定を維持している。 これらの業務に2年間で1932万0112円が支払われたことについて,先行訴訟の第一審判決は,「職務内容に加えて, あった(同上)。先行訴訟の控訴審判決も,上記認定を維持している。 これらの業務に2年間で1932万0112円が支払われたことについて,先行訴訟の第一審判決は,「職務内容に加えて,(中略)前任の郷土資料館長である嘱託員及び図書館長代理である嘱託員が支給を受けていた賃金の額がいずれも300万円程度であることを考慮すると,(中略)賃金の額はいささか高額に過ぎるという見方もできなくはない」と判断した。先行訴訟の控訴審判決は,「本件嘱託員に対して支給された金員のうち,手当として支払われた部分については地方自治法に反する違法なものであるから,同部分に係る賃金の定めは同法に違反し無効というべきであって,その部分を控除した賃金額は2年間で合計1175万6312円にとどまることに照らせば,本件嘱託員の賃金の額が不合理に高額であるということはできない」と改めた。すなわち,本件嘱託員に支払われた「賃金」の約4割を削らなければ「不合理に高額である」と認定したのである。そして,「そうした観点からみても,本件嘱託員の雇用及びこれに対する賃金(後記のとおり違法と評価すべき諸手当に係る部分を除く。)の支払が当不当を超えた違法と評価すべきものであるとは認められない」として,違法と評価すべき諸手当に係る部分(2年間で756万3800円)を除かなければ賃金の支払が高額に過ぎ,違法と評価されることも示唆したのである。 (c) 違法な財務会計行為がなされた原因,経緯 本件の違法な「手当」の支給が行われた原因は主にAにある。 Aは,平成16年8月2日,α村の幹部会で,勧奨退職制度を実施する旨発表した。Aは,勧奨退職制度の申出期限である同年11月1日までに申し出た3名のうち,本件嘱託員を社会教育嘱託員として雇用契約を締結した。 成16年8月2日,α村の幹部会で,勧奨退職制度を実施する旨発表した。Aは,勧奨退職制度の申出期限である同年11月1日までに申し出た3名のうち,本件嘱託員を社会教育嘱託員として雇用契約を締結した。そして,Aは,雇用契約上の賃金を決めるに際して,管理職相当の賃金が妥当と決定した。この決定には,①管理職相当の賃金は妥当でなかったのに妥当と判断したこと,②その判断に基づき,手当部分を差し引くことなく違法な賃金を決定したことの2つの点で問題がある。 Aが平成17年3月に議会に提出した同年度の予算案には,「教育費社会教育費図書館費」の目で,賃金の区分で嘱託員賃金1009万5000円が計上された。α村議会予算特別委員会ではその根拠について十分な議論がされないまま賛成多数で承認された。 同年4月1日付けでα村と嘱託職員との間で締結された社会教育嘱託員雇用契約書の別紙には,「1等級27号給を適用する」,「期末勤勉手当6月分/2.0月 12月分/2.2月 3月分/0. 2月」,「扶養手当配偶者 15,500円」,「管理職手当9%(主幹扱い)」とされており,404万5684円もの職員手当が付されていた。 同年10月に住民訴訟(先行訴訟)が提起され,条例を定めず本件嘱託員に報酬を支払ったことが違法だったことに気が付いたα村議会は,平成20年1月9日,Aがα村村長として提出した「特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償支給に関する条例の一部を改正する条例」に関する議案を可決し,同条例を制定した。 この条例は,「特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償支給に関する条例」の改正の形をとり,しかも,その効力を平成10 年4月1日に遡及させたものであって,これによりα村議会は自ら見過ごした違法状態を事後的になかったことにしようとしたのであ 支給に関する条例」の改正の形をとり,しかも,その効力を平成10 年4月1日に遡及させたものであって,これによりα村議会は自ら見過ごした違法状態を事後的になかったことにしようとしたのである。 しかし,この条例によっても,平成17年度及び平成18年度において,法令で許されない手当を支給したことについての違法性は当然治癒されない。 なお,Aは,本件嘱託員の雇用による行政改革効果を喧伝する。 確かに,課長職として1208万2230円の収入があった者を課長補佐級として処遇したことにより,237万2546円下回る結果となった。しかし,人件費が487万2546円減少したというのはまやかしである。実質的にはそれまで250万円の賃金で行っていた郷土資料館長の仕事に対し970万9684円支払うことになったのであり,名目が賃金として物件費から支出されることになったから人件費の数字が減ったに過ぎない。また,大きな意味で言っても,教育費における実質人件費は,本件嘱託員の再雇用が始まった平成17年度で対平成16年度比494万円,平成18年度では664万円も増加しているのである。さらに,課長職が退職したといっても課長職の数自体は変わっていないのであり,人件費総額が減少したとしてもそれは村全体の職員の異動などによるものであって,本件嘱託員の賃金とは関係ない。本件嘱託員の採用による行政改革効果などないのである。 (d) 影響2年間で756万3800円の根拠なき財政支出を行ってしまったことの意味は大きい。これだけの金員があれば職員を2~3人雇用できたはずであったし,他の事業を展開できたはずであった。 この点,被告は,本件嘱託員から労働力の提供を受けており,実 質的には損害がなかったと主張するが,先行訴訟の控訴審判決は手当 雇用できたはずであったし,他の事業を展開できたはずであった。 この点,被告は,本件嘱託員から労働力の提供を受けており,実 質的には損害がなかったと主張するが,先行訴訟の控訴審判決は手当部分が労務の対価ではないことを明確に判示している。また,被告は,行政改革効果が上がったというが,勧奨退職した職員に退職前の手当まで出していたのでは,勧奨退職に伴う退職金の積み増し分593万3121円が多く支払われるだけになる。 (e) A又は当該支出を受けた者の帰責性Aは,行政改革の一環として,自ら積極的に管理職相当の賃金が妥当であるとして手当を支給することを決定した。しかし,この決定には,管理職相当の業務ができないことが明らかなのに管理職相当の高額な賃金額を決定したこと,その高額な賃金額から手当部分を控除しなかったことの2つの誤りがあった。 そして,Aが手当を含む賃金額の支払を約束する雇用契約書を締結し,議会に提案し,執行したのである。 このように,本件はAが主導したものである。そして,首長たるもの,地方自治法の規定について知らなかったと主張することは許されない。したがって,Aに責任があるのは当然である。 b 当該議決の趣旨及び経緯先行訴訟の控訴審判決においては,上記手当支払の違法性が正面から指摘された。したがって,α村議会は,予算や上記条例制定時において行政をチェックできなかったことを反省し,α村に対してAに対する損害賠償をきちんと請求するよう求めるべきであった。 しかし,α村議会は,条例によらないで報酬の支払を認めた過ちだけでなく,裁判所から事後的に制定した条例も地方自治法に違反すると指摘された過ちを認めようとせず,あくまで本件嘱託員への支払を正当化しようと,本件議決を行ったものである。本件議決は,手当部 過ちだけでなく,裁判所から事後的に制定した条例も地方自治法に違反すると指摘された過ちを認めようとせず,あくまで本件嘱託員への支払を正当化しようと,本件議決を行ったものである。本件議決は,手当部分の支払が地方自治法に反する違法なものであることを判示した先行 訴訟の控訴審判決を明確に認識しつつ,それが確定する前にα村の違法な支出行為及びそれに荷担した自らの免責を図ろうとするものであって,極めて悪質なものである。 本来明確な地方自治法違反である本件は,行政改革効果の有無を議論するまでもなく免責されるべきではないが,先に確認したように本件嘱託職員の雇用に伴う行政改革効果もなかったのであるから,本件議決が効力を持つなどということはない。 c 当該請求権の放棄又は行使の影響前訴確定判決に基づき請求がなされていれば,2年間分で756万3800円の収入がα村に入ったはずである。これは,自主財源に乏しく,A自ら行政改革の旗を振って人件費の削減を進めてきた村にとっては,決して小さい額ではない。 他方で,Aにとっては1年間の報酬を下回る額であり,負担が過重ということにはならない。 d 住民訴訟の係属の有無及び経緯本件議決は,先行訴訟の控訴審判決後,α村自らが上告受理申立てをした中でなされている。つまり,そのままでは上記控訴審判決が維持されると考え,それを覆すために本件議決をしたことは明らかである。 e 事後の状況本件議決後に上告審が確定した後,A個人として,命じられた支払をα村にしようとしたが,本件議決後の支払は政治家による寄付になるとして,結局,支払をしなかった。 (イ) 本件のように,長による違法な財務会計行為の内容が地方自治法の規定に して,命じられた支払をα村にしようとしたが,本件議決後の支払は政治家による寄付になるとして,結局,支払をしなかった。 (イ) 本件のように,長による違法な財務会計行為の内容が地方自治法の規定に明白に違反する行為であるときは,以下で述べる理由から,他の事情を考慮するまでもなく,議会が事後的に債権放棄の議決をすること は裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるというべきであって,当該放棄は無効である。 a 住民訴訟制度の趣旨,三権分立制度の趣旨からくる制約(a) 住民訴訟制度が,国民主権の原理,住民自治の原則を具体化する直接請求制度の一つであって,直接公選首長と公選議会の下での多数決原理に対し,少数者市民が司法権の発動を促してこれを法的に是正する機能を有するにもかかわらず,この司法判断を議会の多数決原理で阻止し,覆すことができるとすれば,住民訴訟制度の意義を根底から否定することになる。 (b) 特に,「長による違法な財務会計行為の内容が地方自治法の規定に明白に違反する行為であるとき」について考えると,かかる場面で住民訴訟に基づき違法な財務会計行為を是正することを命じる判決がなされたときには,法の支配の原理に基づき違法な行政行為によってもたらされた状態を回復し正義を実現する観点から,当該判決の実現が強く望まれることは,論をまたない。 したがって,かかる場面で議会の債権放棄議決を有効とすることは,上記住民訴訟制度の趣旨及び三権分立制度を定めた憲法の趣旨に反し許されないというべきである。 b 議会の誠実処理義務,善管注意義務からくる制約(a) 最高裁平成24年判決は,債権放棄議決の適否の実体的判断について,「住民による直接の選挙を通じて選出された議員に 。 b 議会の誠実処理義務,善管注意義務からくる制約(a) 最高裁平成24年判決は,債権放棄議決の適否の実体的判断について,「住民による直接の選挙を通じて選出された議員により構成される普通地方公共団体の議決機関である議会の裁量権に基本的に委ねられているものというべきである。」と判示している。 一般論としてはそのとおりであるが,長も議会の議員も住民の選挙によって選ばれた者である以上は,どちらも地方公共団体(住民)との関係で,いわば法定代理人としての地位に立つ者であることか ら,被代表者である住民の利益を守って行動すべき義務,すなわち誠実処理義務・善管注意義務が導かれる。また,憲法及び地方自治法の関係規定からも,議会が地方公共団体に対し,地方自治法の目的や事務,自治行政の基本原則に従い,誠実に事務や権限を行使し善良な管理者の立場で行動する義務が当然に導かれるところである。 かかる議会の義務を前提にすると,地方自治法によりその権限が定められている議会が,法令に違反する条例を制定したり,法令の趣旨に反する議決をしたりすることが許されるということはあり得ない。 したがって,議会の裁量権の行使が法令の範囲内に限られることは自明である。 (b) 本件のように,「長による違法な財務会計行為の内容が地方自治法の規定に明白に違反する行為」である場合に,裁判所の違法の判断にもかかわらず,長に対する損害賠償請求権を議会が事後的に放棄する議決をなし得るとすれば,地方自治法の趣旨に反するのみならず,議会が債権放棄の議決により事実上法令を改正することを許容するようなものであって,許されるものではない。 したがって,このような場面で議会が債権放棄議決をすることは 自治法の趣旨に反するのみならず,議会が債権放棄の議決により事実上法令を改正することを許容するようなものであって,許されるものではない。 したがって,このような場面で議会が債権放棄議決をすることは,議会の誠実処理義務,善管注意義務から導かれる「法令の範囲内」という議会の裁量権の限界を超えるものであって,許されない。 (c) なお,本件の特徴として,債権放棄議決をした当の議会自身が,違法な手当支給を認める予算案を承認したり,違法な手当支給の適法化を目論む遡及条例を制定するなど,議会が長の違法行為に一貫して荷担してきたという事実が挙げられる。 このように長と共同関係にあった議会が,長に対する損害賠償請 求権を事後的に放棄する議決をすることは,自らが荷担してきた違法行為を糊塗するものであって利益相反的な関係が認められるから,より違法性の強い事案というべきである。 イ被告の主張の要点原告らの上記主張は否認ないし争う。 (ア) 地方自治法96条1項10号は,「法律若しくはこれに基づく政令又は条例に特別の定めがある場合を除くほか,権利を放棄すること」を議会の議決事項としている。したがって,条文の文理上は,権利放棄の議決をすることに関しては,何らの制約も存在しないから,権利を放棄するか否かについては,議会の広い裁量に委ねられている。したがって,4号訴訟における請求認容判決確定後,あるいは,判決が確定することを予定してなされた権利放棄の議決は,財務会計上の行為の違法性の判断とは別に,議会が政治的・政策的な観点から行うことができる。すなわち,損害賠償請求等の放棄等が認められないとすると,少なくとも住民訴訟の提起以前であれば,裁判上確定した債権等であっても放棄等が可能であったものが,住民訴 ・政策的な観点から行うことができる。すなわち,損害賠償請求等の放棄等が認められないとすると,少なくとも住民訴訟の提起以前であれば,裁判上確定した債権等であっても放棄等が可能であったものが,住民訴訟が確定した途端,放棄等ができないこととなり,住民訴訟の前後で著しく均衡を失することとなるものである。 さらに,4号訴訟においては,請求又は賠償命令をすることのみを義務付けていることから,基本的には地方自治法施行令の債権管理の規律等に従って債権を管理すべきである旨を義務付けるにとどまるから,4号訴訟の判決確定後においては債権の放棄や和解を行うことは可能である(「改正住民訴訟制度逐条解説」地方自治制度研究会編集(ぎょうせい)87,88頁)。 (イ) 最高裁平成24年判決の枠組みに従っても本件議決は有効である。 以下のとおり,本件議決には,議会の裁量権の範囲の逸脱又は濫用がないから,有効である。 a 財務会計行為等の性質,内容,原因,経緯及び影響先行訴訟において,違法と判断された財務会計上の行為は,非常勤職員である嘱託職員に対し,地方自治法203条及び204条に違反して手当を支給したという行為である。 しかしながら,本件嘱託員の雇用は,人件費の削減を目指して,現職の課長であった同人を勧奨退職させたことを契機に行われたものである。 まず,本件嘱託員の退職前年の年収は,1208万2230円であり,嘱託職員としての年収は,違法な財務会計行為とされた手当の支給を含めて970万9684円であって,課長職時代の年収を237万2546円下回るものである。そして,本件嘱託員を採用することにより雇用を止めた,郷土資料館嘱託職員の年収250万円の減少を加えると,本件嘱託員が勧奨退職に応じ, あって,課長職時代の年収を237万2546円下回るものである。そして,本件嘱託員を採用することにより雇用を止めた,郷土資料館嘱託職員の年収250万円の減少を加えると,本件嘱託員が勧奨退職に応じ,嘱託職員となったことによる直接の人件費の減少のみで年間487万2546円となるものである。 さらに,先行訴訟の第一審判決が判示するとおり,「この結果,平成17年4月1日の時点におけるα村職員数は,前年度よりもさらに3人減少して63人となり,他の職員と比較すると高額の賃金を支給されていた課長職の者が退職したこともあって,平成17年度における人件費総額見込額も,前年度よりさらに2277万0155円,4. 0パーセント減少して,5億4436万1206円となった」という財政効果をあげているのである。 したがって,嘱託職員に対する手当の支給自体は違法であるが,その支給の原因となった本件嘱託員の退職及び社会教育嘱託職員としての雇用は,α村にとって,財政上,有益な効果をもたらしている。 b 当該議決の趣旨及び経緯 以下のとおり,当該議決の趣旨及び経緯が,最高裁平成24年判決が判示した,「これを放棄することが普通地方公共団体の民主的かつ実効的な行政運営の確保を旨とする同法の趣旨等に照らして不合理であって上記の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められるとき」に当たらないことは明らかである。 (a) 本件議案の提案理由平成21年3月27日,平成21年第1回α村議会定例会において,C議員から,「債権の放棄について」の議案(本件議案)が提出された。その提案理由は,「本件に対する司法判断がいかなるものであったとしても,当該各種手当相当分報酬は,元社会教育嘱託員の勤務に対応する対価とし ら,「債権の放棄について」の議案(本件議案)が提出された。その提案理由は,「本件に対する司法判断がいかなるものであったとしても,当該各種手当相当分報酬は,元社会教育嘱託員の勤務に対応する対価として,支払われたものであり,当該各種手当相当分に対応する労働力の提供を受けている以上,本村に実質上の損害は生じておらず,かかる状況下において本支払を行ったAに,7,563,800円を支払わせるべきとするような実質上の過失を認めることはできないことからすれば,Aに損害賠償請求をすることは相当ではないので,議案のとおり債権放棄を行うものである。」であった。 提案理由においては,「本件に対する司法判断がいかなるものであったとしても」との明文を記載し,司法判断とは別に,政治的及び政策的観点から権利放棄の議案を提出したことを明らかにしたものである。 (b) 議場における本件議案の提案理由の説明平成21年3月27日に開会された第1回α村議会定例会(第3日目)において,議員提出議案として,「債権の放棄について」(本件議案)が議題となった。 議案提出者であるC議員から,議案提出理由の説明が行われた。 同議員は,先行訴訟の控訴審判決の内容について述べた上で,「当該各種手当相当分の報酬は,元社会教育嘱託員の勤務に対する対価の一部として当該各種手当相当分に対する労働力の提供を受け支払われたものであり,α村に実質上の損害は生じておりません。」と述べ,まず,手当の支払は,労働の対価として支払われたもので,経済的側面から見れば,労働に対する正当な対価であったことを,権利放棄の議決を提案する理由として述べた。 その上で,C議員は「元社会教育嘱託員はα村が行政改革の一環として実施した勧奨退職制度による人員削減の一環として雇用されたものであり 価であったことを,権利放棄の議決を提案する理由として述べた。 その上で,C議員は「元社会教育嘱託員はα村が行政改革の一環として実施した勧奨退職制度による人員削減の一環として雇用されたものであり,その結果,村の人件費は削減され,職員の新陳代謝により村行政組織は活性化されつつあります。」と述べ,α村の行政改革に極めて大きな寄与をしたことを,権利放棄の議決を提案する理由として述べた。 そして,C議員は「当該報酬の支払いはA村長がα村における行政改革,組織の活性化という明確な目的意識のもとにα村のために行った行為であり」と述べ,本件嘱託員の雇用が,行政改革,組織の活性化を図るという村長としての責務を果たすためのものであったことを,権利放棄の議決を提案する理由として述べた。 以上のC議員の議案提案理由は,議会の裁量権の範囲内の合理的なものである。 (c) 質疑応答原告Dからの,なぜ今の時期に議案を提出するのかとの質問に対し,C議員は,「債権の放棄議決は住民の代表である我々議員が債権の発生原因,債務者の状況,債権放棄による影響効果等総合的に考慮した上でものと考えてます。また裁判所の判決と議会の意思,議決に差異があってもそれぞれの範囲において効力が発生するもの であると考えております。したがって債権放棄の議決が司法権の軽視につながるとは私は全く思っておりません。」と述べて,上告中であっても権利放棄の議決をすべきと判断した理由を説明し,さらには,村長に賠償責任を負わせることの職員に対する萎縮効果,平成17年度及び平成18年度の決算を承認した議員の責任に言及している。 (d) 討論権利放棄に反対する立場からは,原告Dから,司法の判断を待って,それを甘受すべきとの発言があり,また,原告Bからは,司法 度の決算を承認した議員の責任に言及している。 (d) 討論権利放棄に反対する立場からは,原告Dから,司法の判断を待って,それを甘受すべきとの発言があり,また,原告Bからは,司法判断に背くことには反対するとの発言が行われた。 賛成の立場からは,E議員から,行政改革によって費用の減額を果たし,それは住民の利益となっていること,責任を感じた職員が共同して賠償金の補填を考えていることを理由に,F議員から,行政と議会が二者両輪の中でよく話し合っていけることが第一であることを理由に,G議員から,職員のα村に対する郷土愛と仕事に対するモチベーションを失わせないことを理由に,H議員から,司法判断を尊重することを前提に,村が行っている一連の行政改革関連施策が正しいものであることを村議会が決議という形で責任をもって村内外に表明すべきであることを理由に,それぞれ議案に賛成するとの発言がなされている。 この討論においては,司法判断に無条件に従うべきとする権利放棄に反対する意見と,司法判断は尊重しつつも議会としての判断を示すべきとする権利放棄に賛成する意見とが表明され,真しな議論がなされたものである。そこでは,住民訴訟制度の意義を失わせるためとか,私的な利益を追求するためとか,議会の議決権の逸脱・濫用を推測させるような意見表明は一切なされていない。 (e) 採決上記(b)ないし(d)記載の提案理由の説明,質疑及び討論を経て,権利放棄の議案は賛成多数により議決された。 c 当該請求権の放棄又は行使の影響前訴確定判決において行使を義務付けられた損害賠償請求権を放棄することにより,α村職員の間に司法軽視,遵法精神の欠如といった負の効果は発生していない。すなわち,α村では,先行訴訟の提起を受けて,コンプライアン において行使を義務付けられた損害賠償請求権を放棄することにより,α村職員の間に司法軽視,遵法精神の欠如といった負の効果は発生していない。すなわち,α村では,先行訴訟の提起を受けて,コンプライアンスの徹底を図り,さらに,先行訴訟の控訴審判決により,報酬の支払について,法律上の根拠なく行っているという指摘を受け,改めて,地方自治法に抵触するおそれのある行政運営をしていないかを点検し,本来,条例に基づき設置すべき委員会・付属機関を要綱等により設置していることを確認し,平成24年6月定例会に条例案を提出する準備を進めている。 d 住民訴訟の係属の有無及び経緯元社会教育嘱託職員に対する手当の支給に関しては,先行訴訟において,違法支出であるとの判決が確定したが,α村議会は,確定前の第2審判決(先行訴訟の控訴審判決)を尊重した上で,政治的・政策的合理性に基づき,権利放棄の議決をした。 e 事後の状況権利放棄の議決及びその執行行為の後に,「これを放棄することが普通地方公共団体の民主的かつ実効的な行政運営の確保を旨とする同法の趣旨等に照らして不合理であって上記の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められるとき」に当たるような事情は存在しない。 (ウ) 原告らの主張に対する反論原告らは,本件議決が無効である理由として,①債権放棄をする合理 的理由がないこと,②債権放棄が住民訴訟制度を無にするものであること,③債権放棄によって,債権の存否,範囲に関する司法判断を仰ぐ機会を奪うことは,三権分立の憲法の趣旨に反し,議会の権限濫用である旨を主張するので,この点について以下のとおり反論する。 a 債権放棄の合理性議会による権利放棄の議決は,政治的・政策的観点から行われるものであるから,その 会の権限濫用である旨を主張するので,この点について以下のとおり反論する。 a 債権放棄の合理性議会による権利放棄の議決は,政治的・政策的観点から行われるものであるから,その判断における合理性は政治的・政策的観点からの合理性である。原告らは,「1,000万円という額は,30億弱のα村の一般会計に大きな影響を及ぼす金額である」とミクロ的観点から主張するが,α村議会が行った権利放棄の議決は,前訴確定判決において,本件嘱託員に対し,諸手当であると認定された賃金を支給したことにより実質的な損害はなく,α村の財政健全化のために行われた人件費削減に伴う支出であることを考慮してなされた議決であり,政治的・政策的観点からの合理性を備えた議決である。したがって,この点に関する原告らの主張は,失当である。 b 住民訴訟制度との関係α村議会が行った権利放棄の議決は,司法判断とは別に行われたものである。本件嘱託員に対して諸手当を支給することは違法な財務会計上の行為であるとの司法判断を是認した上で,行われている権利放棄の議決である。 よって,この点に関する原告らの主張は失当である。 c 議会の権限濫用権利放棄の議決により,司法判断を仰ぐ機会を奪ってはいない。現に,原告Bは,前訴確定判決を得ている。よって,議会の権限濫用であるとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件義務付けの訴えが4号請求に係る訴訟類型に該当するか)について地方自治法242条の2の規定による住民訴訟は,民衆訴訟(行訴法5条)の一種であり(地方自治法242条の2第11項,行訴法43条),法律の定める場合において,法律に定める者に限り,これを提起することができるものであるところ(同法42条),地方自治法242 訴法5条)の一種であり(地方自治法242条の2第11項,行訴法43条),法律の定める場合において,法律に定める者に限り,これを提起することができるものであるところ(同法42条),地方自治法242条の2第1項4号本文の規定による住民訴訟について,損害賠償の請求を命ずる判決が確定した場合において,当該判決が確定した日から60日以内に当該請求に係る損害賠償金が支払われないときに,本件の原告らが第1の1で求めているような請求をする住民訴訟を提起することができることを定めた法律の規定は見当たらず,本件義務付けの訴えは,争点2を含むその他の点を判断するまでもなく不適法というべきである。原告らの主張は,地方自治法の規定の文理を離れた見解に立脚するものであって,採用することができない。 2 争点3(本件議決が効力を有しないか)について(1) 事実認定証拠(各認定事実の末尾に掲記する。)等によれば,以下の事実が認められる。 ア(ア) α村は,かねてから行政改革推進本部を設置して,α村行政改革大綱及びα村行政改革計画を策定し,平成9年度から平成16年度(なお,Aは平成15年に村長に就任した。)にかけて,簡素で効率的な行政システムを確立し,健全財政の維持に努めるべき様々な行政改革を推進し,歳出の削減に即効性のある人件費削減につき,収入役の廃止,課長職等の減員,特別職の報酬削減,管理職手当の削減等を含む諸施策を実行し,財政健全化に取り組んできており,このような施策の実行の結果,α村の平成9年度及び平成16年度の人件費総額を比較すると,4871万0643円減少した(乙5,弁論の全趣旨)。 (イ) α村においては,平成16年度において,更なる人件費削減等を目的に,管理職である課長職8名を主な対象として退職勧奨制度の適用を実施す 0643円減少した(乙5,弁論の全趣旨)。 (イ) α村においては,平成16年度において,更なる人件費削減等を目的に,管理職である課長職8名を主な対象として退職勧奨制度の適用を実施することとなった(なお,α村においては,「α村職員の個別的な勧奨退職に関する要綱」(昭和62年4月1日同村告示第42号)が定められており,退職の期日における年齢が55歳以上かつ勤続年数20年以上の者又はこれに準ずる者であって,一定の要件を満たすものについて,退職の勧奨を受けて退職する場合には,東京都市町村職員退職手当組合退職手当支給条例(昭和40年同組合条例第1号)6条の規定を適用することとされ,勧奨退職手当として,通常の退職手当より増額された手当が支給されることとなっていた。)。そして,平成16年8月2日,課長職以上で構成される幹部会が開催され,同月5日,A村長は,行政改革の一環として,55歳以上の職員全員を対象に人件費の削減を目的とする勧奨退職制度の適用を発表した。これを受け,課長職にあった者3名が,同年11月30日,退職を希望した。平成17年1月4日,村長,助役,教育長及び総務課長により構成される政策会議が開催され,上記の3名の申出に伴い課長職が欠員となることから,組織の改正について検討が行われ,併せて,かねて問題となっていた新図書館建設事務の取扱いについても検討が行われた結果,新たに社会教育嘱託員(本件嘱託員)を雇用し,α村郷土資料館(以下「郷土資料館」という。)の館長とα村立図書館(以下「図書館」という。)の館長代理を兼任させ,かつ,新図書館建設事務を執り行わせることが決定された。同年2月28日,同政策会議が開催され,上記の3名のうち1名について,社会教育嘱託員(本件嘱託員)として雇用契約を締結して郷土資料館長及び図書館長代理と 書館建設事務を執り行わせることが決定された。同年2月28日,同政策会議が開催され,上記の3名のうち1名について,社会教育嘱託員(本件嘱託員)として雇用契約を締結して郷土資料館長及び図書館長代理とし,他の2名については,それぞれ社会福祉協議会事務局長及びシルバー人材センター事務局長に就任させることとされ,本件嘱託員の賃金の額については,郷土資料館長と図書館長代理を兼任し,か つ,新図書館建設事務を執り行うという職務の内容と職責から,管理職相当の賃金が妥当であるという結論に達し,最終的にA村長が賃金の額を決定した。ちなみに,後に本件嘱託員として採用された者の平成16年度の年収は,1208万2230円であった。(甲38,乙5,7)(ウ) なお,α村は,郷土資料館及び図書館をいずれも村営の施設として設置している。郷土資料館には,館長その他必要な職員を置くこととされ,従前は,「α村嘱託員の雇用に関する内規」(以下「本件内規」という。)に基づき雇用された嘱託員1名が郷土資料館長として勤務し,他に2名のパート職員が勤務していた。また,図書館には,館長その他の職員を置くこととされ,従前は,本件内規に基づき雇用された嘱託員1名が図書館長代理として勤務し,他に3名のパート職員が勤務しており,これらのパート職員のうち1名は図書館司書の資格を有する者であった。郷土資料館及び図書館に従前勤務していたこれらの嘱託員は,いずれもα村の職員を定年退職した者であった。これらの嘱託員のうち,図書館に勤務する嘱託員は,平成16年3月31日をもって退職し,後任者の補充がなかったため,同年4月1日以後は,教育委員会教育課長(以下「教育課長」という。)及び教育委員会教育課社会教育係長が,その管理運営事務を担当していた。そして,平成13年度から平成16年度までに 充がなかったため,同年4月1日以後は,教育委員会教育課長(以下「教育課長」という。)及び教育委員会教育課社会教育係長が,その管理運営事務を担当していた。そして,平成13年度から平成16年度までにおいて,郷土資料館に勤務していた嘱託員に支払われた賃金の額は年額250万円又は300万円(平成16年度は250万円)であり,図書館に勤務していた嘱託員に支払われた賃金の額は年額200万円又は300万円(同年度は0円)であった。(乙5,弁論の全趣旨)(エ) 本件内規は,平成10年4月1日から施行され,以下のとおり定めていた。(甲8。なお,以下に掲げる条項は,甲8のものである。)a 身分及び職(2条)「嘱託員の身分は,α村の非常勤の職員とし,その職は,次の各号 の一に該当する職のうち,臨時的又は非恒久的な職で,人材を有効に活用できる職とする。 ① 専門的な知識,経験を必要とする職② 相当程度の専門性を有し,かつ,指導,監督を主な業務とする職③ 公的資格を取得しており,かつ,担当程度の判断を必要とする職④ 技能,経験を必要とする職」b 委嘱(3条1項)「嘱託員は,前条に規定する職の業務を遂行するために必要な知識,技能及び経験を有する者のうちから,選考のうえ,村長が委嘱する。」c 委嘱期間(4条)嘱託員の委嘱期間は,1年以内とする。 d 報酬及び費用弁償(7条)嘱託員に対する報酬及び費用弁償は,役場職員に準じて村長が別に定める。 (オ) α村の平成17年度の予算案には,「嘱託員賃金」として1009万5000円が計上され,同年3月9日及び10日の予算特別委員会において,本件嘱託員 償は,役場職員に準じて村長が別に定める。 (オ) α村の平成17年度の予算案には,「嘱託員賃金」として1009万5000円が計上され,同年3月9日及び10日の予算特別委員会において,本件嘱託員の雇用に関しては,教育長等から,「図書館の方に嘱託を置きまして,図書館と郷土資料館両方を見てもらう」,「業務内容につきましては,郷土資料館の仕事と図書館建設に向けての専門的な仕事はお手伝いしてもらう」,「これから設計委託,それから工事等が17年度あるんですが,それにつきまして(中略)図書館に1名ある程度中心になってやっていただける方を考えております」,「今度の嘱託につきましては,図書館の通常の管理運営,また図書館建設に向けての事務的な仕事を手伝ってもらう」等の説明がされたが,本件嘱託員として採用する予定の者として当時のふれあい課長が内定していたことは明らかにされなかった。そして,同月28日,予算案は議決された。(甲 4,5,弁論の全趣旨)イ(ア) 平成17年3月31日,前記ア(イ)の3名の課長職の者は,いずれも勧奨退職した。これらの3名の勧奨退職者に対して支給された手当の増額分(勧奨退職手当超過支給分)の金額は,合計593万3212円であった。(乙5)(イ) 平成17年4月1日,α村の組織の改編により課長職1名が減員され,従前は課長職の者が充てられていたシルバー人材センターへの在職派遣が廃止された(在職派遣とされていた当時は,在職派遣者に対する賃金等は,全てα村が負担していた。)。課長職が1名減員されたことに伴い,上記勧奨退職者3名の補充人事として,係長職2名が課長職(主幹)に昇格し(なお,α村においては,係長職から課長職に昇格させる者については,慣例上,直ちに課長としての発令をするのではなく,まず,主幹としての発令をし 名の補充人事として,係長職2名が課長職(主幹)に昇格し(なお,α村においては,係長職から課長職に昇格させる者については,慣例上,直ちに課長としての発令をするのではなく,まず,主幹としての発令をし,その1年後に課長としての発令をすることとなっていた。),シルバー人材センターへ事務局長として在職派遣されていた者が,I管理事務所長に異動した。 一方,勧奨退職をした3名の課長職の者のうち2名については,同日付けで,シルバー人材センター事務局長及び社会福祉協議会事務局長に,それぞれの理事会の承認を得て就任した。 この結果,同日の時点におけるα村の職員数は,前年度よりも3人減少して63人となり,課長職の者が退職したこともあって,平成17年度における人件費総額見込額も,前年度より2277万0155円(4. 0パーセント)減少して,5億4436万1206円となった。(乙5,弁論の全趣旨)ウ(ア) A村長は,平成17年4月1日,本件内規に基づき,上記イ(ア)の退職者1名との間で,以下のとおりの社会教育嘱託員(本件嘱託員)雇用契約を締結した。(甲1,6,乙5。なお,以下に掲げる条は,甲6 のものである。)a 勤務場所勤務場所は,郷土資料館及び図書館とする(2条)。 b 職務内容本件嘱託員は,α村郷土資料館条例3条及びα村立図書館の管理運営に関する規則2条により職務を遂行する(3条)。 c 雇用期間平成17年4月1日から平成19年3月31日までとする(4条。 ただし,その後,雇用契約を平成17年4月1日から平成18年3月31日までとする旨の内容の契約書(社会教育嘱託員雇用契約書)が新たに取り交わされ,雇用契約の内容が変更された。)。 d 賃金 し,その後,雇用契約を平成17年4月1日から平成18年3月31日までとする旨の内容の契約書(社会教育嘱託員雇用契約書)が新たに取り交わされ,雇用契約の内容が変更された。)。 d 賃金α村職員の給与に関する条例に準ずる(8条)。 「1等級27号給を適用する。 ※ 期末勤勉手当 6月分/2.0月 12月分/2.2月 3月分/0.2月※ 扶養手当配偶者/1万5500円※ 管理職手当 9%(主幹扱い)」他に調整手当,住居手当及び通勤手当を支払う。 (イ) α村は,平成17年4月1日から平成18年3月31日までの間に,本件嘱託員に対し,前記(ア)の約定を前提に,別紙1の「2005年」欄の「4」月欄から「2006年」欄の「3」月欄までに記載のとおり,賃金の支払としての公金の支出をした(甲1)。 (ウ) 本件嘱託員が担当した事務は,①郷土資料館長としての事務全般,②図書館長代理としての事務全般及び③新図書館建設に関する事務全般であったところ,その内容は,後のオに述べる平成18年4月以降の契 約におけるものも同様のもので,上記の①に係る主な事務は,団体来館者に対する説明案内,昆虫・押し花展の開催,写真展の開催,害虫駆除作業の立会い,文化財調査結果の取りまとめ,民話や行事の調査等,文化財関係の会議等への出席などであって,上記の②及び③に係る主な事務は,移動図書館車の管理,新図書館の建設に伴う図書電算化データの入力,新図書館建設地の境界の確定作業,新図書館の設計関連業務,図書館検討委員会の事務局としての事務,図書館関係の会議等への出席などであった(乙5)。 エ原告Bは,平成17年8月1日,α村監査委員に対し,本件嘱託員に対する賃金の ,新図書館の設計関連業務,図書館検討委員会の事務局としての事務,図書館関係の会議等への出席などであった(乙5)。 エ原告Bは,平成17年8月1日,α村監査委員に対し,本件嘱託員に対する賃金の支払としてされた公金の支出につき住民監査請求をし(乙5),その後の同年10月25日,前提事実(1)のとおり先行訴訟を提起した。 オ(ア) A村長は,平成18年4月1日,本件内規に基づき,本件嘱託員との間で,以下のとおりの社会教育嘱託員(本件嘱託員)雇用契約を締結した。(甲1,7,乙5。なお,以下に掲げる条は,甲7のものである。)a 勤務場所及び職務内容については,上記ウ(ア)a及びbに同じ(1条2条)。 b 雇用期間平成18年4月1日から平成19年3月31日までとする(4条)。 c 賃金α村職員の給与に関する条例に準ずる(8条)。 「1等級85号給を適用する。 ※ 期末勤勉手当 6月分/2.05月 12月分/2.2月月分/0.2月※ 扶養手当配偶者/14,500円※ 管理職手当 9%(主幹扱い)」(平成18年4月分ないし平成19年3月分の支払の内訳) (a) 給料 46万9400円/月(年間合計563万2800円)(b) 職員手当 11万8360円/月(年間合計142万0320円)(c) 期末勤勉手当① 平成18年6月分 119万7044円② 平成18年12月分 128万4632円③ 平成19年3月分 11万6784円④ 合計 259万8460円(d) 管理職手当 4万2246円/月(年間合計50万6952円 ② 平成18年12月分 128万4632円③ 平成19年3月分 11万6784円④ 合計 259万8460円(d) 管理職手当 4万2246円/月(年間合計50万6952円)(e) 地域手当 5万2614円/月(年間合計63万1368円)(f) 住居手当 9000円/月(年間合計10万8000円)(g) 手当額年間合計 526万5100円(イ) α村は,平成18年4月1日から平成19年3月31日までの間に,本件嘱託員に対し,前記(ア)の約定を前提に,別紙1の「2006年」欄の「4」月欄から「2007年」欄の「3」月欄までに記載のとおり,賃金の支払としての公金の支出をした(甲1)。 (ウ) 本件嘱託員が担当した事務は,前記ウ(ウ)に述べたものと同様であり,新図書館は,平成19年頃に完成した(乙5,弁論の全趣旨)。 カ前提事実(1)のとおり,東京地方裁判所は,平成19年4月27日,原告Bの請求を棄却する先行訴訟の第一審判決を言い渡した。 本件嘱託員の賃金の額がその労働の対価として不合理に高額なものであるとの原告の主張については,要旨,次のように判断がされた。 本件嘱託員の「担当職務の内容に加えて,(中略)前任の郷土資料館長である嘱託員及び図書館長代理である嘱託員が支給を受けていた賃金の額がいずれも300万円程度であることを考慮すると,(中略)賃金の額はいささか高額にすぎるという見方もできなくはな」く,「嘱託員に対する 賃金は,会計制度上,人件費ではなく物件費として計上されるため(中略),本件嘱託員が雇用されたことにより,同日以降α村が支出する物件費の額は少なくとも一時的には増加することになるが,前記の退職勧奨制度の実 ,会計制度上,人件費ではなく物件費として計上されるため(中略),本件嘱託員が雇用されたことにより,同日以降α村が支出する物件費の額は少なくとも一時的には増加することになるが,前記の退職勧奨制度の実施から本件雇用契約締結に至る経緯,本件雇用契約が短期の雇用期間を定めるものであったこと,『これらの事情を踏まえて,前記のとおり,本件雇用契約8条において,本件嘱託員の賃金はα村職員の給与に関する条例に準ずるものとされていたことなどを考慮すると,本件嘱託員の賃金の額が不合理に高額であるとは認められないというべきである。』(中略)このように,(中略)本件嘱託員として雇用されるに至った背景事情,殊に行政改革の推進や人件費の削減,また,課長職退職前の給与の額との比較などの諸般の事情に加えて,本件嘱託員(中略)が,①郷土資料館長としての事務全般,②図書館長代理としての事務全般及び③新図書館建設に関する事務全般という必ずしも関連性のない3つの職務を担当し,その勤務状況も通常のα村職員とほぼ同様であったことなどを総合すると,(中略)本件嘱託員として支払を受けた賃金をもって,直ちにこれが不当に高額であるということはできない。」(乙5)キ前提事実(2)のとおり,原告Bは,平成19年5月7日,先行訴訟の第一審判決に対して控訴を提起した。 原告Bは,控訴審において,従前の主張に加え,①本件嘱託員に対する賃金の支給は,本件内規に従ったにすぎず,法律及び条例上の根拠を欠くものであるから,地方自治法203条5項及び204条の2の給与条例主義に反し違法である,②本件嘱託員に対しては,賃金のみならず,賞与,期末勤勉手当及び職員手当として支出負担行為がなされ,実際にもその名目での支払がされていたが,かかる報酬とは別の諸手当の支給は,地方自治法203 ある,②本件嘱託員に対しては,賃金のみならず,賞与,期末勤勉手当及び職員手当として支出負担行為がなされ,実際にもその名目での支払がされていたが,かかる報酬とは別の諸手当の支給は,地方自治法203条及び204条の2に違反する違法な公金の支出である等の新たな主張をした(甲1,弁論の全趣旨)。 ク(ア) A村長は,平成19年12月13日,α村議会の定例会において,「特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償支給に関する条例の一部を改正する条例」を議案として提出した(甲10,19)。当該議案は,「特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償支給に関する条例」(昭和35年同村条例第3号)の一部を改正するもので,改正前の1条には,「非常勤の特別職の職員(議会の議員をのぞく。以下「特別職の職員」という。)の報酬は,別表のとおりとする。」と規定され,別表は,別紙2のとおりとされていたところ(甲11),これを別紙3のとおり改めるとするものであった(甲10)。 (イ) 上記(ア)の議案についての平成19年12月13日のα村議会の定例会における会議の次第の概要は,以下のとおりである(なお,α村の議員定数は10名である。)。(甲19)aA村長の提案理由の説明「本条例は地方公務員法第3条の第3項に規定されている特別職のうち,非常勤の特別職の職員の報酬及び費用弁償について定めている条例であります。 今回改正を行いますのは,過去においては嘱託員の報酬を内規により定めて支給をしておりましたが,社会全体における認識が時代が進んだことにより変化し,今後の支出,将来の対応を考えて条例法定主義により定め,今後疑義を招かないように,法整備を行い,嘱託員の報酬額を定めるものであります。 なお,この条例は公布の日 識が時代が進んだことにより変化し,今後の支出,将来の対応を考えて条例法定主義により定め,今後疑義を招かないように,法整備を行い,嘱託員の報酬額を定めるものであります。 なお,この条例は公布の日から施行し,平成10年4月1日から適用するものであります。また平成17年度及び平成18年度において,別表中,特に職務が複雑かつ困難であり,職員と同等程度の責任が求められる嘱託員についても規定するものであります。 原案どおりお認めいただきますよう申し上げまして,提案説明とさ せていただきます。」(甲19・2頁)bJ総務課長の答弁「報酬の内訳でございますけれども,これにつきましては内規を村では平成10年から定めてございますので,内規に基づいて計算をしております。内規の7条に「嘱託員に対する報酬及び費用弁償は役場職員に準じて村長が別に定める」ということで,報酬の内訳としたらいろんな形のものがありますけども,計算の上での内訳だと,算出する根拠ということで職員に準じて計算をさせていただいておりますけども,その支給したものについては賃金,報酬というふうな形で支給をさせていただいております。」(甲19・5頁)「どこが不備だったかという点ですけれども,村においては内規を制定してございますので,内規に基づいてすべて計算をして適用しているということで,今回は条例において制定をするというような形で改善をさせていただくというふうな形を取らせていただきました。」(甲19・6頁)c 原告Dの質疑「この時期に急遽改正する理由なんですけれども,これは社会全体のそういう認識が高まったからではなくて,今係争中の住民訴訟のための条例と私は見ていますが,そういうとらえ方は間違いなのかどうか 「この時期に急遽改正する理由なんですけれども,これは社会全体のそういう認識が高まったからではなくて,今係争中の住民訴訟のための条例と私は見ていますが,そういうとらえ方は間違いなのかどうか1点。(中略)そして常勤の職員と同じような勤務形態ということなら,あえて退職させることはないだろうなと思うんです。同じような仕事をして同じような額の賃金を払ってということだと,どうも住民に説明できないのかなと思っています。私もよくその辺がわかりません。もう一度その辺を説明してほしいなと思います。それから,年額の方なんですけれども,例えばインターネットで私も見ました。村長の報酬が70万円いっていないです。副村長は60万円いっている。 それに比べてこれは970万円というのは月額にすると80万円超えるだろうなと思うんです。一番最高責任者の村長でさえ70万円いっていないのになんで970万円という数字が出てくるのか,もう一度伺いたいと思います。この内訳についてきちんと説明してもらえればいいわけで,内訳は当然報酬と手当はなしだと思いますから,手当を入れたらなるだろうけれども,手当は嘱託員は出してはいけないことに法律でなっていますので,そこをもう一回,もう一度説明をしてほしいなと思います。」(甲19・6頁)dJ総務課長の上記cの質疑に対する答弁「それでは1点目のこの時期にどうしてか。裁判に関係するんではないかというご質問だと思います。これについてはですね,その裁判の中で今回の条例を改正して,その中で条例を整備するという形の村としての襟を正すという意味から今回は条例を整備させていただいて,それに適応するような形のものだということで,今回は条例を改正させていただいております。(中略)そしてあと常任の人と同じであれば 村としての襟を正すという意味から今回は条例を整備させていただいて,それに適応するような形のものだということで,今回は条例を改正させていただいております。(中略)そしてあと常任の人と同じであれば,退職する必要がないんではないかというご質問でございますけれども,これについては村の中の人事の刷新という形で,そういうものでやる気を出すという形のものだとか,いろんな人事に与える影響を考慮して今回は一時退職をして対応したというふうな形になります。あと何で980万円なのかということなんですけども,これにつきましては先ほどから申し上げているとおり内規で運用をしておりました。これについては先ほど私の方から申し上げているとおり,期末勤勉手当だとか,いろんな形のものを内規の中で職員に準じて計算をしておりますので,それを集計したものが報酬という解釈をしておりますので,期末勤勉手当は違法だとか,そういう概念は村では持っておりません。」(甲19・6,7頁) e 原告Dの質疑「3問目の質問なんですが,何か嘱託員職員,手当はだめという法律があって,今の総務課長の答弁,何か苦しいなと思うんですが,手当を実際出しているわけでしょ。これは明らかに違法ではないんですか。」(甲19・7頁)fJ総務課長の上記eの質疑に対する答弁「まず,最初の手当を出しているのは違法ではないかということですけども,この手当を出すと確かに違法かもしれません。村の方のですね,今回出したのはですね,内規に基づいてそこで計算をし,職員に準じて計算をし,賃金として出しているということですので,手当を出しているというそういうもので支出をしているものではございませんので,問題はないかと思われます。」(甲19・8頁)g に準じて計算をし,賃金として出しているということですので,手当を出しているというそういうもので支出をしているものではございませんので,問題はないかと思われます。」(甲19・8頁)g その後,上記(ア)の議案については,これを可決する議決がされた(甲19)。 (ウ) 上記(イ)の定例会においては,原告Bほか1名の提出した上記(ア)の議案に対する修正の動議を議題とすることが否決され,修正案について質疑,討論及び採決が行われなかったところ,α村議会の議長は,上記の手続が地方自治法112条及び115条の2並びにα村議会会議規則に違反し,上記(ア)の議案についての議決は違法なものであるとの見解に同議会として達したとして,平成20年3月4日付けで,A村長に対し,同法176条4項に基づきこれを再議に付すよう依頼し,A村長は,同月21日付けで,同項に基づきこれを再議に付した(甲19ないし22,24)。同議案については,同日のα村議会の定例会において議題とされ,原告Bほか1名は,再議に係る議案は明らかに係争中の事件を救済しようとする個別の目的のためにのみ提案されており,また,附則2項については,管理職手当や期末勤勉手当等を明記して既に会計 処理されており,地方自治法203条の法定事項を全く否定するもので違法な条例といえる等として,附則2項を削除する旨の修正案を提出したが,同修正案については,これを否決する議決がされ,原案については,これを可決する議決がされた(甲20ないし24)。この際,出席議員9名(議長を除く。)のうち,原告Dと原告Bが原案に反対し,その他の議員(E議員,G議員,F議員,H議員,K議員,L議員,C議員)は原案に賛成した(甲24)。 ケ前提事実(2)のとおり,東京高等裁判所は,平成20年12月 Dと原告Bが原案に反対し,その他の議員(E議員,G議員,F議員,H議員,K議員,L議員,C議員)は原案に賛成した(甲24)。 ケ前提事実(2)のとおり,東京高等裁判所は,平成20年12月24日,先行訴訟の第一審判決を変更し原告Bの請求の一部を認容する先行訴訟の控訴審判決を言い渡したところ,同判決においては,要旨,次のような判断がされた。(甲1)(ア) 本件嘱託員の賃金の額の相当性について先行訴訟の控訴審判決は,上記の争点について,前記カに掲げた先行訴訟の第一審判決の理由をそのうち『』を付した部分を次の①のとおり改めた上で引用し,次の②の判断を付加した。 ① 「そして,後記のとおり,本件嘱託員に対して支給された金員のうち,手当として支払われた部分については地方自治法に反する違法なものであるから,同部分に係る賃金の定めは同法に違反し無効というべきであって,その部分を控除した賃金額は2年間で合計1175万6312円にとどまることに照らせば,本件嘱託員の賃金の額が不合理に高額であるということはできない。」② 「以上の点について,控訴人は,名目上の人件費こそ削減されているが,物件費として計上される補助金を加えた実質的人件費をみれば増額となっており,財政効果は発生していないと主張するけれども,会計処理上の人件費の削減が実現し,また,勧奨退職に伴う一連の人事異動による行政組織の活性化が図られたことは明らかであって,そ うした観点からみても,本件嘱託員の雇用及びこれに対する賃金(後記のとおり違法とすべき諸手当に係る部分を除く。)の支払が当不当を超えた違法と評価すべきものであるとはいえない。」(イ) 本件嘱託員に対してされた賃金の支払についての条例上の根拠の有無について すべき諸手当に係る部分を除く。)の支払が当不当を超えた違法と評価すべきものであるとはいえない。」(イ) 本件嘱託員に対してされた賃金の支払についての条例上の根拠の有無について「地方自治法203条5項,204条の2によれば,普通地方公共団体は,法律又は条例によらなければ職員に対していかなる給与その他の給付もしてはならないと定めている。ところが,本件雇用契約は本件内規に基づき締結されたものである(中略)から,同契約は法律又は条例に基づくものではなく,地方自治法上違法とのそしりを免れない。しかし,(中略)その後嘱託員の報酬支給及び費用弁償の支払に関する本件条例が制定され,同条例が平成10年4月1日から適用されることとされた結果,本件雇用契約は遡って本件条例に基づくものとなり,同契約は条例に根拠を有するものとして,その限りにおいて上記の点の違法性は治癒されたものと解することができる。」(ウ) 本件嘱託員に対する手当の支給について地方自治法203条1項及び3項,204条1項及び2項並びに204条の2によれば,「普通地方公共団体は,非常勤職員に対しては,条例で定める報酬の支給及び費用の弁償をすることができるけれども,それ以外の給付については,地方自治法が特に議会の議員について期末手当の支給を,常勤職員に対して各種手当の支給を条例に基づき給付することを認めていることの反対解釈として,地方自治法上これらを非常勤職員(議会の議員を除く。)に対して支給することは許されず,たとえそれが条例に根拠を有するものであっても,その支給は同法に違反する支給として違法と解するのが相当である。」,「証拠(中略)によれば,α村から本件嘱託員に対し実際に別紙一覧表(本判決別紙1)記載のと おりの支給明細を前提として支給決 の支給は同法に違反する支給として違法と解するのが相当である。」,「証拠(中略)によれば,α村から本件嘱託員に対し実際に別紙一覧表(本判決別紙1)記載のと おりの支給明細を前提として支給決定がされその明細の下に金員が支給われていること,これら各種手当名目の支給総額は756万3800円であることが認められる。」,「上記認定に係る本件雇用契約締結の経緯及びその規定,同契約締結の基となった当時の内規の規定並びに支給決定の内容にかんがみれば,本件嘱託員に対する支給は非常勤職員の労務の対価としての報酬に相当する部分のほか,一般職職員と同様に扶養手当,管理職手当,調整手当(地域手当),住居手当,通勤手当及び期末勤勉手当を支給していたものと認められる。被控訴人は,これらは報酬算定の際の例示にすぎないと主張するが,前記認定のとおり,その支給に際しては一般職員に準じて,労務の対価としての給与部分(報酬号俸)を明らかにした上で,それ以外に諸手当それ自体をその費目ごとにそれぞれ別個に算定してこれに加算して算定していたことからみても,その加算部分は上記諸手当そのものであるというほかはない。本件条例は嘱託員に対する報酬の支給についての根拠を与えるものであるが,もとより地方自治法に反する諸手当の支給の瑕疵を治癒しこれを適法なものに転換するものではない。」,「以上のとおりであり,本件嘱託員に対して報酬支給及び費用弁償として支払われたもののうち地方自治法で支給が許されない手当の部分(合計756万3800円)についての支給は,同法に違反し,また,当時の都下の一自治体の行政改革に伴ったであろう困難を考慮しても嘱託員の賃金算定に関する村長の裁量権を明らかに逸脱するものであり,違法というべきである。」コ A村長は,平成20年12月26日のα村議会の臨時会にお 体の行政改革に伴ったであろう困難を考慮しても嘱託員の賃金算定に関する村長の裁量権を明らかに逸脱するものであり,違法というべきである。」コ A村長は,平成20年12月26日のα村議会の臨時会において,先行訴訟の控訴審判決に対して上告の提起及び上告受理の申立てをすることに係る議案を提出し,同日,これを可決する議決がされた(甲25)。 上記の議案についての会議の次第の概要は,以下のとおりである。(甲25) (ア) J総務課長の提案理由の説明等「1審では村の主張がすべて認められた判決でありましたが,2審では本件嘱託員に対する給付に当たっては,その嘱託報酬の算出における金額明細として各種諸手当が例示されているに過ぎず,本件嘱託職員に対して諸手当を支給したものではないと主張してきました。2審においても,訴訟の本質的な争点でもあります,村で行ってきた行政改革の推進や,本件嘱託職員の仕事を兼任した対価としての嘱託職員への報酬額の妥当性については村の主張は認められたが,一部見解の相違であり,報酬の内訳を手当と認定された。このことが適切な評価がなされず遺憾であります。今回の判決は不服であることから,上告及び上告受理の申立ての訴えを行うものであります。」「扶養手当から各種手当についてはうちの方では報酬と,その一部だという解釈をしてますので,その辺の認識が違うと思います。」(甲25・7頁),「あと条例で手当うんぬんという話がありましたけども,先ほどから繰り返しているように,手当の支給という認識はございませんので,報酬という概念の中で話をしておりますので,それが条例の制定に手当を含めたという,そういうふうな認識はございません。」(甲25・7頁)(イ) C議員の賛成の討論「1審の東京地裁では,村側の主張がほとんど認 話をしておりますので,それが条例の制定に手当を含めたという,そういうふうな認識はございません。」(甲25・7頁)(イ) C議員の賛成の討論「1審の東京地裁では,村側の主張がほとんど認められ,世間一般の人たちが十分納得するであろう判決結果が下されました。しかし残念なことに2審へと裁判が続き,今回の村及び私を含めた多くの村民にとって,断固として容認できない判決が下されたのです。α村のことを本当に考え,思うのなら,原告は1審での法の裁きが下された時点で村に対する裁判を終結させるべきであったと私は強く思っております。」(甲25・12頁)(ウ) E議員の賛成の討論 「村長はこの件に関しては全く当たり前のことを当たり前のように僕はしたんだというふうに考えています。この厳しいα村の財政をどうやって自分に自ら託された形として表現していこうかと,さまざまなことを一生懸命やっているのを私も知っています。そして自らも給与削減している。(中略)別に村長が自分の私腹を肥やすためにやったわけではない。だから少なくとも今度の裁判は非常に私は理不尽であり,不条理だと,大変怒っています。(中略)村長は自ら身を削ってまでもそういう結論を出したんだということを私は訴えていきたい。そういう意味でもぜひ上告をしていただきたいと思います。」(甲25・14頁)サ前提事実(3)のとおり,A村長は,平成20年12月26日,先行訴訟の控訴審判決に対して上告受理の申立てをした。 平成21年2月20日付けの上告受理申立理由書には,「α村と本件嘱託員との関係は,雇用契約(条例による遡及適用あり)であり,予算決算上での扱いも,従前は「賃金」と表示されており,支払う側も受領する側も従前の「賃金」としてしか認識していなかった。つまり,支給決定時における 係は,雇用契約(条例による遡及適用あり)であり,予算決算上での扱いも,従前は「賃金」と表示されており,支払う側も受領する側も従前の「賃金」としてしか認識していなかった。つまり,支給決定時における手当明細は,従前の賃金算出における金額の明細でしかなかったのである。よって,本手続において,改めて予算決算上の扱いを示す証拠書類を提出し,原審判決にはこの点の事実認定につき,看過しえない重大な誤りがあることを指摘し,かつその誤りの是正を求めるものである。」と記載されるのに併せて,「被控訴人としては,不法行為債権(手当支給の違法)の存否についての司法判断が,ひとつも示されていない状況下でとりうることは,追認条例の制定でしかなかった。そこで,その追認条例の制定を経由した状態で,原審の判断を伺うこととなったのである。しかし,結果としては被控訴人の不法行為(手当支給の違法)が認定されて一部敗訴となった。その判決書の内容を検討したα村議会議員の1人が,この結論はα村の為には総合的にみて不合理であるとして,前述の通り,所定の 手続を経て議会に債権放棄の議案を提出して,可決承認に努めるとの意向を示したのである。なお被控訴人は,同議員より,上告受理申立理由書の提出期限の最終日までに臨時議会を開催し,その手続を経由することは日程的にみても困難であるとの口頭による報告も受けた。(中略)被控訴人としては,この上告を受理していただき,被控訴人の「債権放棄成立」という追加の主張と立証を受けた上での,適切な司法判断を切望するものである。」と記載されていた。(甲26,弁論の全趣旨)。 シ C議員は,平成21年3月27日,α村議会の定例会において,L議員,F議員,K議員,E議員及びG議員を賛成者として,本件債権の放棄に係る別紙4の内容の本件議案を提出した。本件 論の全趣旨)。 シ C議員は,平成21年3月27日,α村議会の定例会において,L議員,F議員,K議員,E議員及びG議員を賛成者として,本件債権の放棄に係る別紙4の内容の本件議案を提出した。本件議案については,同日午後3時39分から午後4時46分までの間に審査された上で,これを可決する本件議決がされた。(甲28,乙1,2)本件議案についての会議の次第の概要は,以下のとおりである。(乙2)(ア) C議員の提案理由の説明「平成20年12月24日,東京高等裁判所において,α村の元社会教育嘱託員に支払われた報酬に関する損害賠償住民訴訟控訴事件の判決があり,現在は上告中であります。(中略)当該各種手当相当分の報酬は,元社会教育嘱託員の勤務に対する対価の一部として当該各種手当相当分に対する労働力の提供を受け支払われたものであり,α村に実質上の損害は生じておりません。また元社会教育嘱託員はα村が行政改革の一環として実施した勧奨退職制度による人員削減の一環として雇用されたものであり,その結果,村の人件費は削減され,職員の新陳代謝により村行政組織は活性化されつつあります。さらに,当該報酬の支払いはA村長がα村における行政改革,組織の活性化という明確な目的意識のもとにα村のために行った行為であり,正当な勤務に対する対価として一体をなすものであります。したがいまして,私はこのような状況下で, 当該報酬の支払いを行ったA村長に実質上の過失を認めることはできませんし,ましてや損害賠償請求をすることは論外であると考えます。本来ならば村行政として当該損害賠償請求に関する債権の放棄の議決がα村議会へ提出すべきと考えますが,債権者と債務者が同一であることから,行政の透明性の観点に照らし,村行政からの当該議案提出は不適当と思わ らば村行政として当該損害賠償請求に関する債権の放棄の議決がα村議会へ提出すべきと考えますが,債権者と債務者が同一であることから,行政の透明性の観点に照らし,村行政からの当該議案提出は不適当と思われます。そこで前述の事実を鑑み,私はα村議会議員として債権の放棄に関する議員提出議案をこの3月定例会に提出するものでありますので,諸事情を御勘案いただき,御審議くださいますよう申し上げ,私の提案説明といたします。」(乙2・45頁)(イ) 原告Dの質疑「私,きのう実は夕刻にこの電話を受けてびっくりしたのは議員の申し合わせ事項,議員提出案件は3日前までという申し合わせ事項があるのに,何でここで,この時期にぎりぎり出してきたのかな。(中略)そしてCさん,そのほか大勢の方は,多くの方は二審が不当だから徹底的にこれは最高裁まで上告して,白黒はっきりさせる。最後まで戦うんだと,そういうことで上告を決議した本人です。その本人がまだ結論が出ない段階でまたこういうことが出せるのかどうか。とてもね,住民は納得できないだろう。(中略)法的にも本当にこれが有効なのかどうかも私はわからない。ですからもう少し大事な案件ですから,皆さんでね,議員の皆さんで学習会したり勉強したりして,6月議会だっていいじゃないですか。そしていい方法を見出していけばいいのに,なんでぎりぎり,3日前というのはぎりぎりきのうになったのか。なんか無理がある。 その辺を説明してほしい。」(乙2・45,46頁)(ウ) C議員の上記(イ)の質疑に対する答弁等「裁判係争中に債権放棄の決議がなされたとしても,当該裁判は継続され,裁判所は法で条例解釈により裁判を行っております。債権の放棄 議決は住民の代表である我々議員が債権の発生原因,債務者の状況,債権放棄による影響効果等総合的に考 としても,当該裁判は継続され,裁判所は法で条例解釈により裁判を行っております。債権の放棄 議決は住民の代表である我々議員が債権の発生原因,債務者の状況,債権放棄による影響効果等総合的に考慮した上でものと考えてます。また裁判所の判決と議会の意思,議決に差異があってもそれぞれの範囲において効力が発生するものであると考えております。したがって債権放棄の議決が司法権の軽視につながるとは私は全く思っておりません。」,「この時期というふうに考えましたのは,二審の結果は結果として出ているわけですね。高裁の。それによって考えてみますと,責任問題が出るだろうと。責任問題というのは支払いに係わった,印鑑を押した人たちが応分の責任を負うんじゃないかなというふうに思っております。公務員の責任というのはかなりの部分で保護はされていると思いますが,私がいろいろ調べてみた結果ですと,仮にそれ,今のままでいくと,責任が負わされるだろうなと。当然そうなったときに村長の,村長は「いいよ,おれが責任を負うよ」と言っても,我々議会としても何とかしなければならない。そして責任,責任ということになりますと,私もサラリーマンをやっていたからわかりますけど,仕事が手につかなくなります。」,「それで職員が仕事をしなくなるということは表向きは出さないかもしれませんけど,だんだん意識が低下をしていくと,一番困るのは私は住民サービスだ。住民が一番困るだろうなというふうに思っております。ですからここではっきり債権の放棄ということにして,あなた方の責任は対等な,先ほどの理由を述べたとおり,対等な対価として払われているから,問いませんよという,そういうことで提案をしているわけです。」(乙2・46,47頁)(エ) 原告Bの質疑「責任あることに対して報酬が出ています。給料が ,対等な対価として払われているから,問いませんよという,そういうことで提案をしているわけです。」(乙2・46,47頁)(エ) 原告Bの質疑「責任あることに対して報酬が出ています。給料が出ています。それを責任を問われるんじゃないかというのであれば,ここにはルールが存在しません。そのことをどう思うかということですね,1点は。それか らもう一つ,条例を定めた議会の責任,議会はそれを報酬条例という形で定めたんです。手当を支給してはいけないという報酬条例に定めたんです。それを手当を支給していることをきちっと法律上の根拠に基づいて整理しなければならないという条例にしたんです。そのことについて条例を賛成した議員としてどのように思うか。その2点についてお答えください。」(乙2・48頁)(オ) C議員の上記(エ)の質疑に対する答弁「責任が伴うのは私は当たり前だと思います。ただ余り責任責任ということで責めたてるのもいかがなものかということが一つと,今回で今上告している中で,特別職の公務員ですね。ですから嘱託員には手当は出せないというところで,その計算の中で手当というところが確かに私証拠書類を見ましたんで,その部分がまかりなりませんという判決だったと思います。その中で給料の払う条例というのは後で出してもそれは治癒されたとしてもという判例があったかと思います。その部分だけは手当としてみなすから,払いませんと,その分が違法ですということになったのは私もわかっております。手当が,ですから204条だったですかね。手当が出せないというところを計算式の中で出していて,それが証拠書類として採用されてそれが違法ですという結論だったかと思っております。(中略)条例というものがあって,それの部分というのはやっぱり少しずつ直していかなければ必 を計算式の中で出していて,それが証拠書類として採用されてそれが違法ですという結論だったかと思っております。(中略)条例というものがあって,それの部分というのはやっぱり少しずつ直していかなければ必ず違和感というのは出てくると思いますので,それは直していくべきだと思っています。ですから,あの部分に対しては私は賛成をいたしました。」(乙2・48,49頁)(カ) 原告Bの質疑「この住民訴訟というのは一個人,Bの問題ではありません。住民を代表する異議を申し立てて,そして監査請求,そして住民訴訟という権利に基づいて行っているものです。ですから住民に対する説明責任とい う形でこれをきちっと説明できるような形にするのが議会の役割だと思います。そして行政の役割です。その中で,報酬は後から直せばいいんだという,これはちょっと大きな間違いで,この住民訴訟から3年5ヶ月,約4年かかっているわけですね。(中略)その法律違反を曲げてまで解釈していいかということ。今こういう事態に入って,そういう結果が出たところでですね,それは解釈は違う解釈があるということはできないわけですよね。そこで行政が,皆さん職員が仕事が手につかない。 誤りがどうなっていくんだろうということを思うのであればこの提案はまさに出すべきではないと思います。きちっとした手続を踏んで,そして皆さん命にしたがって動いている方たちの仕事というのはそれはそれできちっと説明されるものなんです。それ以外に議員がこの議会でやることは法に照らして正しい行いを行ったかどうかということの判断を待つことなんです。(中略)この私たち議員の責任として,議会のため,行政の職員のため,住民のため,それもし思うんであれば,整理してきちっと説明できる形にするべきだと,そこまで持っていくのが議会の仕事,議員の仕 です。(中略)この私たち議員の責任として,議会のため,行政の職員のため,住民のため,それもし思うんであれば,整理してきちっと説明できる形にするべきだと,そこまで持っていくのが議会の仕事,議員の仕事だと思います。感情でものを考えないでいただきたいと思います。憲法に位置付けられた地方自治法,地方自治法に位置付けられた法律,根拠,それに基づいて行政が動かなかったら行政はメチャメチャになります。」(乙2・49頁)(キ) C議員の上記(カ)の質疑に対する答弁「17年の予算のときに,まずこの嘱託職員に対しての計画が話されたと思うんですね。それでそのあと第1回の定例会があって,そこで上程されて,そこでもまた話があったと。6月に話があったと。その次に住民監査請求が出たかと思うんですけど,責任責任って先ほどから私も言ってましたんですけど,最初はこの方の賃金が余りにも高いというふうな形で動いてきたと私は思っておりました。それで一審の判決が出て 二審になりましたらその払った手当分ということで,先ほども申しましたがそこがまかりならんと。それで印鑑の応分の責任というのは,こういう形で払いなさいというふうにして,トップが決めて,議会もいいですよとやったときに,職員が払っていったときに村長まで決済が回らないでこれ動いていたという,これはもう逃げになるからここまでにしておきますが,そうすると,当然責任を取るのはトップで当たり前なんですけど,こうやって一生懸命行政改革をして,その成果も出て,人心一新が図られ,少ない人数でほんとそれこそ血の汗を流して頑張ってきてもらっておりますので,私は今回先ほど述べた理由書のとおりで,出したいというふうに思っております。」(乙2・50頁)(ク) E議員の賛成の討論「この行政改革によってα村は費用の減額 てきてもらっておりますので,私は今回先ほど述べた理由書のとおりで,出したいというふうに思っております。」(乙2・50頁)(ク) E議員の賛成の討論「この行政改革によってα村は費用の減額を果たしています。だれも損失を受けている人はいません。費用の減額は住民の利益にもかなっていると思います。 また二審で争点となった職員の手当の問題です。改めて予算書,決算書をひもといても嘱託職員の賃金の総額が記載されているだけで,通常の職員のように手当の記載はありません。私たち議員はこの予算書,決算書に基づいて採決をしています。そして可決しています。その意味でも私には二審の判決が納得いきません。 そして行政改革を遂行することは職員の傷みを伴います。職員は人知れず労苦を禁じ得ないだろうと思っています。今回の村長に対する判決により,職員は自らの責任を感じ,共同して賠償金の補てんまで考えているということを仄聞いたしました。村長は職員には払わせない。自分で全額負担するとまで言っております。職務に精励し,多くを語ろうとしない職員は重なる労苦にまさしく忸怩たる思いでこの状況をじっと見守っているのだろうと思います。私たち議員は職員のためにもこの判決 に対して一日でも早く答えを出さなければならないと思っています。」(乙2・51,52頁)(ケ) F議員の賛成の討論「最初の方から考えると,この嘱託職員のこの職として携わってきた経過,この嘱託職員は昭和60年にM中学を立ち上げております。当時係長でございました。やはり当時の金額とすれば5億8000万円という大きな金額でございます。そういった形の中で背負わされてきた当時の課長もそうですが,その中の一員として,経験者として,村としてもこの嘱託職員を図書館の建設管理監督という立場で 5億8000万円という大きな金額でございます。そういった形の中で背負わされてきた当時の課長もそうですが,その中の一員として,経験者として,村としてもこの嘱託職員を図書館の建設管理監督という立場でこの対価を払ってきた。これには人格というものがございます。やはりとにかく人それぞれに,どう言おうとも村としてこの人なら大丈夫だろうという場面があったんだろうと思います。私も大丈夫だと思っておりました。しかしながら建設という,たたき大工じゃないから,やはり図面を見られる。そういった人物であるということは私はこの嘱託職員の身元を保証していきたい。間違えられては困る。そういった経緯がございますので,一部私はここで公表しておきます。 それと同時に,今,村は正直のところ,先ほども審議されましたが,2億4000万円弱という村税の内容でございます。あとは国や東京都からいただかなければ村はよくならないんです。そういった形の中で村をよくしようと,住民のためにやっていこうという,村長をはじめ,我々もそうですが,何とか住民のためにやっていきたい。この一心で私どもも住民のためにならなければならないという思いで議会へ出てきたわけなんです。一人の人ばっかりが議員ではございません。 そういったことの中でやはりα全体を考えると,105.8キロ平方メートルですか。この面積をこれから2800人の人たちが守っていかなければいけない。そういう思いを考えるときに,住民訴訟というこう いうことを起こしたということは,私は非常に怪訝を持つところなんです。もっと真剣にこれからは行政と我々とも二者両輪の中で,よく話し合っていけることがまず第一だと私は考えております。 そういったことの中で,これからも議員,先ほどの議員提出議案でも私は支持していきたい。このように思っております。 我々とも二者両輪の中で,よく話し合っていけることがまず第一だと私は考えております。 そういったことの中で,これからも議員,先ほどの議員提出議案でも私は支持していきたい。このように思っております。」(乙2・53頁)(コ) G議員の賛成の討論「我々議員,議会は皆さんがおっしゃるように,行政に対してチェック機能があるのだと私も思います。今回の一連の裁判事件については,当時の議会で予算上も行政改革の上からも承認された経緯があります。 提出議案理由のとおりです。なぜ裁判事件にまでして賠償責任まで問われているのか,私には理解できません。 村長も職員も行政改革に努力し,その成果を上げ,特に職員は人事考課制度の中で,α村の職員としてこの村をよくするための努力をしています。そんな職員が今回の件で努力しても裁判で訴えられ,賠償責任まで問われてしまうというようなことで,仕事に対するモチベーションがなくなってしまうことを心底私も危惧をしています。 村長をはじめ村職員は村のために努力することは当たり前です。我々議員,議会はその行政に対してのチェック機能と,ストッパー機能と,アドバイス機能を持って,双方が切磋琢磨して村のために議論すべきであり,決してクラッシュ機能であってはならないのだと私は信じております。今後も職員のα村に対する郷土愛と,仕事に対するモチベーションを失わないようにお願いして賛成討論とします。」(乙2・54頁)(サ) H議員の賛成の討論「まず本案における債権が平成17年,18年度の元社会教育嘱託員に村が支払った報酬の一部であり,2年間の正当な勤務に対する労働の対価の一部分であるからです。村と元嘱託員間において締結された契約 により,適正な勤務がなされ,その対価として報酬が支払われた。 村が支払った報酬の一部であり,2年間の正当な勤務に対する労働の対価の一部分であるからです。村と元嘱託員間において締結された契約 により,適正な勤務がなされ,その対価として報酬が支払われた。この厳然たる事実は何人たりとも否定できませんし,ましてやその一部に不適性な部分があるから返還せよなどという論理は少なくとも私が考える限り,社会通念上通用しませんし,あり得ません。 さらに報酬の一部を返還する者,つまり債務者がA村長個人である点も一般常識から照らして明らかに不条理きわまりないものであります。 そこで私は確認したいのです。確かにA村長は報酬の支払行為に関して最高責任者であります。しかし事実行為の観点から,報酬の支払行為を見たらどうでしょうか。A村長が村の行政全般,将来的な方向性を考え,行政改革のために,経費節約のために,村の行く末を考えぬき,さまざまな行革を行った結果として本件の支出行為が行われたわけであります。ましてやA村長が報酬の一部を個人的に流用したわけでも決してありません。このようなA村長の行為に対して過失があり,村に損害額を返せとだれが言えましょう。 確かに司法判断は尊重すべきであり,結果は厳正に受けとめるべきであります。しかし司法判断とは別の問題としてA村長の行った行為の是非に対し,村議会として明確な態度表明,意思表示を行い,村の進めている一連の行政改革関連施策が正しいものであることを,村議会が決議という形で責任をもって村内外に表明すべきであると私は強く思うのです。 村議会はこの問題に対し,いつまでも傍観者であってはならないのです。本議案の可決によって少なくとも金銭的な負担をだれも負うことがなくなります。そもそも村も当該元嘱託員も報酬の支払いによる実質的な損害は生じてないのですから,本議案を可決・成立させるのは ないのです。本議案の可決によって少なくとも金銭的な負担をだれも負うことがなくなります。そもそも村も当該元嘱託員も報酬の支払いによる実質的な損害は生じてないのですから,本議案を可決・成立させるのはα村議会として当然の行為であると私は考えます。また,本議案を可決・成立させることにより,村行政,職員が今後もさまざまな理不尽な言いがか りに萎縮することなく,将来に向け,さらなる村の改革に向け,一丸となって努力する契機となるに違いないと私は確信しております。」(乙2・54,55頁)ス前提事実(3)のとおり,A村長は,平成21年4月10日,Aに対し,本件債権の放棄を執行する旨を通知し,同通知は,同月11日,Aに到達した。 (2) 地方自治法96条1項10号は,普通地方公共団体の議会の議決事項として,「法律若しくはこれに基づく政令又は条例に特別の定めがある場合を除くほか,権利を放棄すること」を定め,この「特別の定め」の例としては,普通地方公共団体の長はその債権に係る債務者が無資力又はこれに近い状態等にあるときはその議会の議決を経ることなくその債権の放棄としての債務の免除をすることができる旨の同法240条3項,地方自治法施行令171条の7の規定等がある。他方,普通地方公共団体の議会の議決を経た上でその長が債権の放棄をする場合におけるその放棄の実体的要件については,同法その他の法令においてこれを制限する規定は存しない。 したがって,地方自治法においては,普通地方公共団体がその債権の放棄をするに当たって,その議会の議決及び長の執行行為(条例による場合は,その公布)という手続的要件を満たしている限り,その適否の実体的判断については,住民による直接の選挙を通じて選出された議員により構成される普通地方公共団体の議決機関である議会 為(条例による場合は,その公布)という手続的要件を満たしている限り,その適否の実体的判断については,住民による直接の選挙を通じて選出された議員により構成される普通地方公共団体の議決機関である議会の裁量権に基本的に委ねられているものというべきである。もっとも,同法において,普通地方公共団体の執行機関又は職員による公金の支出等の財務会計行為又は怠る事実に係る違法事由の有無及びその是正の要否等につき住民の関与する裁判手続による審査等を目的として住民訴訟制度が設けられているところ,住民訴訟の対象とされている損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を放棄する旨の議決がされた場合についてみると,このような請求権が認められる場合は様々であり,個々 の事案ごとに,当該請求権の発生原因である財務会計行為等の性質,内容,原因,経緯及び影響,当該議決の趣旨及び経緯,当該請求権の放棄又は行使の影響,住民訴訟の係属の有無及び経緯,事後の状況その他の諸般の事情を総合考慮して,これを放棄することが普通地方公共団体の民主的かつ実効的な行政運営の確保を旨とする同法の趣旨に照らして不合理であって上記の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められるときは,その議決は違法となり,当該放棄は無効となるものと解するのが相当である。そして,当該公金の支出等の財務会計行為等の性質,内容等については,その違法事由の性格や当該職員又は当該支出等を受けた者の帰責性等が考慮の対象とされるべきものと解される(最高裁平成24年判決参照)。 (3)ア本件についてこれをみるに,まず,本件において問題とされている公金の支出の性質及び内容に関しては,当該支出は,本件嘱託員に対してα村と同人との間で締結された雇用契約に基づく賃金の支払としてされたものであるところ,その違法事由は,①本 において問題とされている公金の支出の性質及び内容に関しては,当該支出は,本件嘱託員に対してα村と同人との間で締結された雇用契約に基づく賃金の支払としてされたものであるところ,その違法事由は,①本件嘱託員に対して賃金の支払の名目で支給された給付中に手当に当たるものが含まれていたかという事実の認定及び②非常勤の職員である本件嘱託員に対して支給される給付に手当を含めることができるかという地方自治法の規定の解釈に係るものであるが,上記の①の点については,先行訴訟の控訴審判決において述べられているとおり,「その支給に際しては一般職員に準じて,労務の対価としての給与部分(報酬号俸)を明らかにした上で,それ以外に諸手当それ自体をその費目ごとに別個に算定してこれに加算して算定していたことからみても,その加算部分は上記諸手当そのものであるというほかはない」というべきであり,本件嘱託員との間で雇用契約を締結するのに先立ってA村長において管理職相当の賃金が妥当であるとの判断の下に自ら賃金の額を決定したこと等にも照らすと,同人においてもその決定に係る事項の内容の一環として上記の事情を認識していたものと推認するのが相当である。 一方,上記の②の点については,上記のような内容による本件嘱託員との間の雇用契約は平成10年に施行された本件内規に基づいて締結されたものであるところ,そもそも,本件内規に基づき締結された雇用契約に係る非常勤の職員に対して賃金の支払をすることは,先行訴訟の控訴審判決において述べられているとおり,地方自治法203条5項及び204条の2に違反するものであったのであり,平成15年に就任したA村長としては,従前の取扱いを踏襲したものと推認されるものの,上記の規定等によるいわゆる給与条例主義は,普通地方公共団体の組織の構成における原則と 違反するものであったのであり,平成15年に就任したA村長としては,従前の取扱いを踏襲したものと推認されるものの,上記の規定等によるいわゆる給与条例主義は,普通地方公共団体の組織の構成における原則として最も基礎的なものであって,普通地方公共団体の長として,非常勤の職員に対する給付の支給が上記の規定又はその趣旨に反するものでないか否かについては,当然にこれに配意すべきものであり,また,本件内規に基づき締結された雇用契約に係る上記のような賃金の支払としての公金の支出についても,相応の配意をすれば,その適法性に問題があるとの認識に容易に至ることができたものとみられる。そして,本件嘱託員の採用については,前記のようにA村長が雇用契約の締結等を主導していたものであって,A村長においては,本件嘱託員との間の雇用契約の締結に係る裁量権の行使に当たり,それに基づく賃金の支払としての公金の支出の適法性について,村長として尽くすべき注意義務を怠った過失があるとの評価を免れないものと考えられる。加えて,本件嘱託員に係る賃金については,非常勤の職員に対しては支給することのできない手当が含まれ,その額は全支給額の約40パーセントに及んでいたというのであって,常勤又は非常勤の別及びこれに伴う賃金等を始めとする処遇の相違は,地方公務員制度の根幹を成す事柄であることに照らすと,上記の過失の程度は,決して小さなものとはいい難いところである。なお,本件嘱託員に対する賃金の支払としてされた公金の支出に係る上記の各違法事由のうち,前者の条例の規定の欠如の点については,先行訴訟の控訴審判決が言い渡されるまで の間にその瑕疵が治ゆされているが,後者の手当の支給の違法の点についてそのような事情があるとはいえないことは,同判決が明瞭に指摘していたところである(前記(1) 訴審判決が言い渡されるまで の間にその瑕疵が治ゆされているが,後者の手当の支給の違法の点についてそのような事情があるとはいえないことは,同判決が明瞭に指摘していたところである(前記(1)ケ(ウ)参照)。 イ次に,本件において問題とされている公金の支出の原因及び経緯に関しては,α村において平成9年度から進められてきた行政改革の一環との位置づけの下に,平成16年度における更なる人件費の削減等を目的として,勧奨退職制度を適用し,これに応じた課長職3名のうち1名について,平成17年4月以降,従前は定年退職をした者を嘱託員として採用してその事務に当たらせていた郷土資料館長及び同じく従前は教育課長等をもってその事務に当たらせていた図書館長代理を兼任させた上で,新図書館の建設に関する事務をも執り行わせることとして,同人との間で嘱託員としての雇用契約を締結したものであるところ,本件嘱託員においては,手当分を含めても勧奨退職に応ずる前に比べて年間に支給される額(勧奨退職に伴って支給された分を除く。)は減少しており,当該額は,A村長が上記のような本件嘱託員の職務の内容と職責から管理職相当のものとするのが妥当であると判断して決定したもので,そのことについては,もとより本件嘱託員につき不法な利得を図るなどの目的によるものではなく,A村長においても,同様に自らの不法な利得を図るなどの目的によるものではなかったものである。 ウ本件において問題とされている公金の支出の影響に関しては,本件嘱託員との間における雇用契約は,従前から郷土資料館及び図書館において住民等に対するサービスの提供に当たっていた嘱託員等の担任する事務に引き続き当たるほか,新図書館の建設に関する事務にも当たる非常勤の職員を確保するために締結されたもので,現に新図書館は平成19年頃 住民等に対するサービスの提供に当たっていた嘱託員等の担任する事務に引き続き当たるほか,新図書館の建設に関する事務にも当たる非常勤の職員を確保するために締結されたもので,現に新図書館は平成19年頃に完成している。そして,本件嘱託員の勤務状況は,α村の常勤の職員とほぼ同様のものであったのであって,その限りのものとしては,先行訴訟の第一 審判決において,手当分を含めても直ちにその支給額が不当なものであるということはできないとされていたものであり,先行訴訟の控訴審判決においても,「会計処理上の人件費の削減が実現し,また,勧奨退職に伴う一連の人事異動による行政組織の活性化が図られたことは明らか」であるとして,少なくとも手当分を除く賃金の支払としての公金の支出が違法と評価すべきものであるとはいえないとされていたところである。もっとも,手当分については,既に述べたとおり,労務の対価としての部分とは別のものとして算定されていたもので,先行訴訟の控訴審判決においては,当該部分の支給は,地方自治法「に違反し,また,当時の都下の一自治体の行政改革に伴ったであろう困難を考慮しても嘱託員の賃金算定に関する村長の裁量権を明らかに逸脱するもの」と評価されていたのであり,α村の職員の数が平成17年度の当時において60名余りであり,本件嘱託員が勧奨退職に応ずる前の年収が1200万円余りであって,α村の財政の規模が,一般会計の予算の額において,平成22年度にあっては29億円,平成23年度にあっては30億1500万円(甲35)で,歳入中の村税の額は,平成22年度において2億4000万円弱であったこと(乙2・53頁)にも照らすと,本件嘱託員に対する合計750万円余りの手当分の公金の支出がα村の財政に及ぼす影響は,やはりこれを否定することはできない程度のもので いて2億4000万円弱であったこと(乙2・53頁)にも照らすと,本件嘱託員に対する合計750万円余りの手当分の公金の支出がα村の財政に及ぼす影響は,やはりこれを否定することはできない程度のものであったというべきであり,前記ア及びイに述べたところにも鑑みると,上記の支出に係るA村長の帰責性は,小さくないものというほかはない。 エそして,以上を前提として,本件議決の趣旨及び経緯についてみるに,本件議決に係る本件議案の内容は,別紙4のとおりであり,①先行訴訟の控訴審判決に対して上告受理の申立てがされていることを踏まえつつ,②本件嘱託員に対して支給された給付のうち各種手当相当分は,勤務に対する対価として支給されたものであり,それに対応する労働力の提供を受け ている以上,α村に実質的な損害は生じていないとの事実関係に係る認識を前提に,③かかる状況下においてそれに係る公金の支出をしたAにその賠償をさせるべきとするような実質上の過失を認めることはできないとの評価をした上で,④「本件に対する司法判断がいかなるものであったとしても」,Aに対して損害賠償の請求をすることは相当ではないから,本件債権を放棄するものとするとの判断を示すものであった。そして,本件議案に賛成した議員の発言においても,前提となる事実関係につき基本的に本件議案におけるのと同一の認識に立ちつつ,上記の支出が行政改革の一環としてされ,その成果が上がっていること,当該行政改革の実施にAが村長として貢献したこと,本件債権を行使することによるα村の職員の意欲等への影響が懸念されること,上記の支出に係るα村議会の関与の経緯等を指摘して,本件議案と同様の評価及び判断をすべき旨の考えが示されていたところである。一方,前記(1)ケ(ウ)のとおり,先行訴訟の控訴審判決は,本件嘱託員に対 上記の支出に係るα村議会の関与の経緯等を指摘して,本件議案と同様の評価及び判断をすべき旨の考えが示されていたところである。一方,前記(1)ケ(ウ)のとおり,先行訴訟の控訴審判決は,本件嘱託員に対する賃金の支払としてされた公金の支出の根拠となった雇用契約の定めの内容等の客観的な事情を基礎としつつ,「その支給に際しては一般職員に準じて,労務の対価としての給与部分(報酬号俸)を明らかにした上で,それ以外に諸手当それ自体をその費目ごとに別個に算定してこれに加算して算定していたことからみても,その加算部分は上記諸手当そのものであるというほかはない」と認定した上で,当該部分の支給は,地方自治法「に違反し,また,当時の都下の一自治体の行政改革に伴ったであろう困難を考慮しても嘱託員の賃金算定に関する村長の裁量権を明らかに逸脱するもの」との法的評価をしていたものである。そして,仮に先行訴訟の控訴審判決において認定されたような事実関係を前提とした場合には,Aの村長としての過失の存在及びα村の財政への影響を否定し難いことは,既に述べたとおりであるところ,本件嘱託員に対して賃金の支払の名目で支給された給付の内訳に係る事実認定の当否は,先行訴訟 の控訴審判決に対してされた上告受理の申立てにおける不服の理由として中心的なものとされていたのであり,上記のような本件議決に至る経緯等,殊に,本件議案における「本件に対する司法判断がいかなるものであったとしても」との文言については,α村のAに対する損害賠償債権が成立する可能性があることを含意するものではあるものの,他の部分の記載においては,先行訴訟の控訴審判決とは異なる事実関係に係る認識及びこれを前提とする評価に立脚するものであることが明らかである。 加えて,α村議会においては,議員による議案の提出は議会運 の部分の記載においては,先行訴訟の控訴審判決とは異なる事実関係に係る認識及びこれを前提とする評価に立脚するものであることが明らかである。 加えて,α村議会においては,議員による議案の提出は議会運営委員会の開催日の3日前までに議長に対してするという申合せがされており(甲13,33),また,遅くとも平成21年2月12日にはC議員において本件議案の提出の意向が示されていた(甲27)ところ,本件議案は,平成21年第1回α村議会定例会の最終日である当日に提出されており,質疑において,大事な案件であるから議員で学習会などをして6月議会で審査していいのではないかとの意見が述べられていたにもかかわらず,1時間余りの審査の後に本件議決がされたこと(甲13,乙1,2)が認められるが,α村議会にとって上記の上告受理の申立てに対する最高裁判所の判断を待った上で対応を検討することに問題が伴うような事情が存在したことをうかがわせる格別の証拠も見当たらないことも考慮すると,本件議案については,先行訴訟の控訴審判決における事実認定等を不服とし,又は少なくともこれを尊重する趣旨に出たものとはいい難いものと解されてもやむを得ないというべきであり,このことは,本件議決についても同様というべきである。 オその上で,本件債権の放棄又は行使の影響に関しては,本件嘱託員に対する賃金の支払としてされた公金の支出のうち手当分に係るものについては,先行訴訟の控訴審判決における事実認定及び法的評価を前提とすれば,地方自治法に違反するものとしてそれを正当化することは困難であったも ので,それによるα村の財政への影響を否定し難いことは既に述べたとおりである。その額は,個人として負担するものとしては決して小さからぬものであるものの,本件議案の審査の経過に照らすと,Aとしては応 ので,それによるα村の財政への影響を否定し難いことは既に述べたとおりである。その額は,個人として負担するものとしては決して小さからぬものであるものの,本件議案の審査の経過に照らすと,Aとしては応分の負担に応ずる意向を有していたものとうかがわれる。そうすると,地方公共団体の職員の職務の遂行の過程における行為による賠償責任につき,その者に一定の酌むべき事情が存するのであれば,議会の議決を経てその全部又は一部の免責がされることは,著しく重い負担を負わせることによって職務の遂行に萎縮的な影響を及ぼすなどの状況を回避することに資する面もあるといえることや,もとより本件に関しα村議会においてAに不法な利益を得させるなどの不当な目的で賠償責任を免れさせたといった事情の存在は認め難いことを考慮しても,α村議会が本件議決をそれがされた時点でしたことについては,少なくとも十分に合理的な理由があったとまではいい難いところである。 カ住民訴訟の係属の有無及び経緯に関しては,本件議決は,先行訴訟が係属中であって,原告Bの請求の一部を認容する先行訴訟の控訴審判決が言い渡され,A村長がα村議会の議決を経た上で先行訴訟の控訴審判決に対して上告受理の申立てをし,本件議決の成立という追加の主張及び立証を受けた上での司法判断がされるよう求めるとの記載を含む上告受理申立理由書を提出した後に,されたものであるところ,本件においては,先行訴訟の控訴審判決がその後に確定したのであって,前訴確定判決における事実認定及び法的評価に照らすと,本件議決については,その基礎とされた重要な事実に誤認があったというのが相当であり,これにより重要な事実の基礎を欠くこととなったものというべきである。そして,既に述べたような諸般の事情を総合考慮すると,先行訴訟の係属中にされた本件議決につ 事実に誤認があったというのが相当であり,これにより重要な事実の基礎を欠くこととなったものというべきである。そして,既に述べたような諸般の事情を総合考慮すると,先行訴訟の係属中にされた本件議決については,本件全証拠によっても,主として住民訴訟制度における当該財務会計行為等の審査を回避して制度の機能を否定する目的でされたなど住 民訴訟制度の趣旨を没却する濫用的なものに当たるとまでいうべき事情の存在は直ちには認め難く,事後の状況等に関しては,本件において問題とされている公金の支出をその一環とする行政改革には一定の成果がみられ,当該支出がされた後に本件内規に関する問題点を解消すべく条例の改正がされたほか,先行訴訟の提起後にα村においてはA村長の主導の下にいわゆるコンプライアンスの徹底に係る各種の措置が講じられてきていること(乙8)を考慮しても,なお,前記(2)に述べたところに照らし,本件議決は違法というのが相当であり,本件債権の放棄は無効となるものと解するのが相当である。 (4) したがって,被告がα村を代表して前訴確定判決に係る訴訟を提起することをしないことは財産の管理を怠る事実に該当し違法である。 第4 以上の次第で,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官八木一洋 裁判官藤井秀樹 裁判官横井靖世
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