平成25年12月5日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成25年(行ケ)第10012号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成25年11月14日判決原告X訴訟代理人弁理士加藤朝道同内田潔人同青木充被告特許庁長官指定代理人久島弘太郎同藤原直欣同窪田治彦同中村達之同山田和彦 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求特許庁が不服2011-20325号事件について平成24年9月3日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は,発明の名称を「内燃機関」とする発明について,平成18年(2006年)9月1日(優先権主張日平成17年(2005年)9月5日,優先権主張国ドイツ)を国際出願日とする特許出願(特願2008-529516号。以下「本願」という。)をした。 原告は,平成22年12月15 月1日(優先権主張日平成17年(2005年)9月5日,優先権主張国ドイツ)を国際出願日とする特許出願(特願2008-529516号。以下「本願」という。)をした。 原告は,平成22年12月15日付けの拒絶理由通知を受けたため,平成23年3月18日付けで本願の願書に添付した特許請求の範囲及び明細書(甲8)を変更する手続補正(甲10)をしたが,同年5月24日付けの拒絶査定を受けた。 原告は,同年9月20日,拒絶査定不服審判を請求するとともに,同日付けで本願の願書に添付した特許請求の範囲及び明細書を変更する手続補正(甲14)(以下「本件補正」といい,本件補正後の明細書を,図面と併せて「本願明細書」という。)をした。 (2) 特許庁は,上記請求を不服2011-20325号事件として審理を行い,平成24年9月3日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,同月18日,その謄本が原告に送達された。 (3) 原告は,平成25年1月12日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(甲14。以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。 「【請求項1】シリンダヘッドを有する少なくとも一のシリンダと,少なくとも一のカム軸と,加圧循環潤滑系と備え,過給機を備えていても過給機を備えていなくてもよく,付設するシリンダヘッドを有する少なくとも一のシリンダを備える小圧縮機が空気を供給し且つ少なくとも一のカム制御による過給バルブと協働する,4- 3 -サイクル内燃機関であって,内燃機関の他の吸入路とは分離される少なくとも一の過給路(14)が,内燃機関の吸入の終了後に,内燃機関のシリンダヘッド(16) よる過給バルブと協働する,4- 3 -サイクル内燃機関であって,内燃機関の他の吸入路とは分離される少なくとも一の過給路(14)が,内燃機関の吸入の終了後に,内燃機関のシリンダヘッド(16)に構成されている行程の短い少なくとも一の過給バルブ(15)によって,4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているようにサイクルに合わせて開かれること,小圧縮機は専らカム制御され,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸(2)の回転数をもって作動するか,または,小圧縮機は専らクランク制御され,吸入行程或いは過給行程が過給路(14)からの過給流れの重なりで乱されないために過給気を前制御し,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸(2)の回転数をもってまたはカム軸(2)の回転数に比べて各シリンダに対してサイクルに合った上昇回転数をもって作動することを特徴とする4サイクル内燃機関。」 3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,本願発明は,本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2002-303144号公報(甲1。以下「引用文献」という。)に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。 (2) 本件審決が認定した引用文献に記載された発明(以下「引用発明」という。),本願発明と引用発明の一致点及び相違点は,以下のとおりである。 ア引用発明「シリンダヘッド13を有するシリンダブロック12と,カムシャフト27とを備え,- 4 -エンジンEのシリン ,本願発明と引用発明の一致点及び相違点は,以下のとおりである。 ア引用発明「シリンダヘッド13を有するシリンダブロック12と,カムシャフト27とを備え,- 4 -エンジンEのシリンダヘッド13に支持したカムシャフト27の一端側の側面を覆うカバー51に支持され,かつ第1,第2シリンダヘッド60U,60Lを有するシリンダブロック54を備える過給機Cが,空気を供給し且つカムシャフト27に設けた過給カム41により開閉駆動する過給バルブ26と協働する,単気筒4サイクルエンジンEであって,エンジンEの吸気ポート21とは分離される過給パイプ75,過給ポート23が,エンジンEの吸気行程の末期に,エンジンEのシリンダヘッド13に構成され,かつカムシャフト27に設けた過給カム41により開閉駆動される過給バルブ26によって,短期間だけ開かれること,過給機Cはクランクシャフト52が回転するとコネクティングロッド65を介して第1,第2ピストン62U,62Lがシリンダ54a内を上下動するものであり,クランシャフト52はカムシャフト27の一端に同軸スプライン結合されている単気筒4サイクルエンジンE。」イ本願発明と引用発明の一致点「シリンダヘッドを有する少なくとも一のシリンダと,少なくとも一のカム軸とを備え,付設するシリンダヘッドを有する少なくとも一のシリンダを備える小圧縮機が空気を供給し且つ少なくとも一のカム制御による過給バルブと協働する,4サイクル内燃機関であって,内燃機関の他の吸入路とは分離される少なくとも一の過給路が,内燃機関のシリンダヘッドに構成されている行程の短い少なくとも一の過給バルブによって,4サイクル工程のサイクルに合わせて開かれること,小圧縮機は専らクランク制御され,内燃機関の少なくとも一 が,内燃機関のシリンダヘッドに構成されている行程の短い少なくとも一の過給バルブによって,4サイクル工程のサイクルに合わせて開かれること,小圧縮機は専らクランク制御され,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸の回転数をもって作動する4サイクル内燃機関。」である点。 - 5 -ウ本願発明と引用発明の相違点(相違点1)本願発明においては,内燃機関が,加圧循環潤滑系を備え,過給機を備えていても過給機を備えていなくてもよいのに対し,引用発明においては,内燃機関が,加圧循環潤滑系を備えているのか否か明らかでなく,過給機を備えているのか否かも明らかでない点。 (相違点2)本願発明においては,「内燃機関の過給路が,内燃機関の吸入の終了後に,4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているようにサイクルに合わせて開かれる」のに対し,引用発明においては,「内燃機関の過給路が,内燃機関の吸入の末期に,4サイクル工程のサイクルに合わせて開かれる」点。 (相違点3)本願発明においては,(i)小圧縮機は専らカム制御され,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸の回転数をもって作動するか,または,(ii)小圧縮機は専らクランク制御され,吸入行程或いは過給行程が過給路からの過給流れの重なりで乱されないために過給気を前制御し,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸の回転数をもってまたはカム軸の回転数に比べて各シリンダに対してサイクルに合った上昇回転数をもって作動するのに対し,引用発明においては,小圧縮機は専らクランク制御され,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のため に比べて各シリンダに対してサイクルに合った上昇回転数をもって作動するのに対し,引用発明においては,小圧縮機は専らクランク制御され,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸の回転数をもって作動する点。 第3 当事者の主張- 6 - 1 原告の主張(1) 取消事由1(一致点の認定,相違点2及び3の認定の誤り)本件審決が認定した本願発明と引用発明との一致点のうち,「内燃機関の他の吸入路とは分離される少なくとも一の過給路が,内燃機関のシリンダヘッドに構成されている行程の短い少なくとも一の過給バルブによって,4サイクル工程のサイクルに合わせて開かれる」との部分(以下「A部分」という場合がある。)及び「小圧縮機は専らクランク制御され,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸の回転数をもって作動する」との部分(以下「B部分」という場合がある。)は,本願発明の解決原理ないし基本的技術思想を無視し,本願発明の必須の構成要件の一部を恣意的に抽出して一致点と認定したものであるから,誤りである。 すなわち,本願発明の解決原理ないし基本的技術思想は,オットーサイクル,ディーゼルサイクル又はミラーサイクル(吸入行程の途中でバルブを閉じ,混合気の流入を制限して圧縮比を上げないようにしたもの)の4サイクル内燃機関において,内燃機関の吸入の終了後(終了直後)に小圧縮機による過給(後過給)を正確なタイミングで行うことを可能とする手段として,「少なくとも一の過給路が,内燃機関の吸入の終了後に,…少なくとも一の過給バルブ(15)によって,4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているようにサイクルに合わせて開かれる」構成を採用するとともに,小圧縮機がカム くとも一の過給バルブ(15)によって,4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているようにサイクルに合わせて開かれる」構成を採用するとともに,小圧縮機がカム制御式の場合には,「小圧縮機は専らカム制御され,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸(2)の回転数をもって作動する」構成を,小圧縮機がクランク制御式の場合には,「小圧縮機は専らクランク制御され,吸入行程或いは過給行程が過給路(14)からの過給流れの重なりで乱されないために過給気を前制御し,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸(2)の回転数をもって- 7 -またはカム軸(2)の回転数に比べて各シリンダに対してサイクルに合った上昇回転数をもって作動する」構成を採用し,これにより小圧縮機によって過給される高速回転可能な4サイクル内燃機関を提供したものである。 しかるところ,本願発明の「少なくとも一の過給路が,内燃機関の吸入の終了後に,…少なくとも一の過給バルブ(15)によって,4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているようにサイクルに合わせて開かれる」構成のうち,「内燃機関の吸入の終了後に」,「4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているように」との部分は必要不可欠な構成であるにもかかわらず,この構成を省いて,A部分のみを一致点として抽出することは,本願発明の解決原理ないし基本的技術思想を無視するものといえるから,誤りである。 また,同様に,小圧縮機がクランク制御式の場合には,「吸入行程或いは過給行程が過給路(14)からの過給流れの重なりで乱されないために過給気を前制御」する構成が本願発明 いえるから,誤りである。 また,同様に,小圧縮機がクランク制御式の場合には,「吸入行程或いは過給行程が過給路(14)からの過給流れの重なりで乱されないために過給気を前制御」する構成が本願発明の必要不可欠な構成であるにもかかわらず,この構成を省いて,B部分のみを一致点として抽出することは,本願発明の解決原理ないし基本的技術思想を無視するものといえるから,誤りである。 そして,本件審決が認定した本願発明と引用発明との相違点2及び3は,その前提とする一致点の認定に上記のとおりの誤りがあり,その誤りに依拠して認定したものであるから,不適切であって失当である。 (2) 取消事由2(相違点2の容易想到性の判断の誤り)本件審決は,「圧縮機などの過給装置付き内燃機関において,内燃機関の他の吸入路とは分離される少なくとも一の過給路が,内燃機関の吸入の終了後に,4サイクル行程の吸入行程或いは過給行程が行程として維持されているようにサイクルに合わせて開かれる」ことが周知技術(以下「周知技術1」という。)であると認定した上で,引用発明において,周知技術1を適用し,- 8 -相違点2に係る本願発明のように特定することは,当業者が格別困難なく想到し得るものである旨判断した。 しかしながら,本件審決には,引用発明に周知技術1を適用することの動機付けが示されていない。 また,周知技術1には,相違点2に係る本願発明の構成のうち,「全体的にまたは部分的に維持」との部分が含まれていないから,引用発明に周知技術1を適用したからといって,相違点2に係る本願発明の構成となるわけではない。すなわち,「全体的にまたは部分的に維持」については,「全体的に維持」とは,オットーサイクルあるいはディーゼルサイクルの場合を,「部分的に維持」とは,ミラーサイクルの場合を 構成となるわけではない。すなわち,「全体的にまたは部分的に維持」については,「全体的に維持」とは,オットーサイクルあるいはディーゼルサイクルの場合を,「部分的に維持」とは,ミラーサイクルの場合をそれぞれ意味し,「全体的にまたは部分的に維持」との記載により,オットーサイクルあるいはディーゼルサイクルとミラーサイクルとの間のカム軸調整装置を用いたサイクル変換が可能であることも意味するが,引用文献及び周知技術1には,それらのサイクルに関する言及が一切ない。このため,「全体的にまたは部分的に維持」と,小圧縮機を介した後過給とを組み合わせるという本願発明の解決原理ないし基本的技術思想は,引用文献及び周知技術1から導き出すことはできない。 さらに,本願発明は,相違点2に係る構成だけで構成されているのではなく,総合的な構成により把握されるべきものであるから,そもそも相違点2を孤立的に取り上げて判断すること自体が誤りである。たとえ,引用発明に周知技術1を適用したとしても,それに基づくクランク制御される小圧縮機では,時間に関して厳密な後過給のための前制御機構(前制御用のバルブ)が本願発明に必要不可欠であるのに,本件審決においては,このことが全く触れられていない。 したがって,本件審決の上記判断は誤りである。 (3) 取消事由3(相違点3の容易想到性の判断の誤り)- 9 -本件審決は,「圧縮機の駆動形態として,カムを用いた駆動形態(カム制御)或いはクランク機構を用いた駆動形態(クランク制御)」が周知技術(例えば,甲7の第3ないし8図記載の実施例,別紙6参照。以下「周知技術2」という。)であると認定した上で,周知技術2で例示した甲7(実願昭55-38324号(実開昭56-139828号)のマイクロフィルム)の第3図及び第4図にクランク制 ,別紙6参照。以下「周知技術2」という。)であると認定した上で,周知技術2で例示した甲7(実願昭55-38324号(実開昭56-139828号)のマイクロフィルム)の第3図及び第4図にクランク制御を採用した駆動形態が,第4ないし8図にカム制御を採用した駆動形態が示されているように,どちらの駆動形態を採用するかは,当業者が適宜選択し得る設計的事項であるから,引用発明において,小圧縮機の駆動形態として,クランク制御による駆動形態に代えてカム制御による駆動形態を採用し,「小圧縮機は専らカム制御され,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸の回転数をもって作動する」ように構成(相違点3に係る本願発明の構成)することは,当業者が格別困難なく想到し得るものである旨判断した。 しかしながら,甲7は,本願発明にいう「カム制御」される小圧縮機を開示するものではなく,本件審決の周知技術2の認定は誤りである。 すなわち,本願発明の特許請求の範囲(請求項1)においては,「カム制御」の用語について,「カム制御による過給バルブ」,「小圧縮機は専らカム制御され」と記載され,この「カム制御」の記載は「または,小圧縮機は専らクランク制御され」と対比した形式での記載となっているから,「カム制御」が「クランク制御」とは異なる意義で用いられているといえる。本願発明において,小圧縮機が「カム制御」される場合は,小圧縮機を制御するカムの急峻勾配の制御曲線と,行程の短い過給バルブを操作するカムの急峻勾配の制御曲線とは一致し,過給路が開いているときには過給気も流れ,過給路が閉まっているときには過給気は流れないのに対し,小圧縮機が「クランク制御」される場合は,小圧縮機を制御するクランクの緩勾配のサイン形状の制御曲線と,行程の短い過給バルブを操作す 給気も流れ,過給路が閉まっているときには過給気は流れないのに対し,小圧縮機が「クランク制御」される場合は,小圧縮機を制御するクランクの緩勾配のサイン形状の制御曲線と,行程の短い過給バルブを操作するカムの急峻勾配の制御曲- 10 -線とは一致せず,小圧縮機と内燃機関との間において時間に関して厳密な協働は不可能である。つまり,小圧縮機が「クランク制御」される場合は,避けられない誤った時点における過給路内の圧力上昇に伴い,過給バルブのバルブクリアランスに基づいて発生する過給路からの過給流れの重なりが吸入行程を乱すことになり,このことを防止するための前制御(前制御用のバルブ)が必要不可欠である。 そして,4サイクル内燃機関に関する技術分野では,「カム」とは,基本的に4サイクルの吸排気バルブを作動させるものであって,これらのバルブの厳密な制御のために,ピストンの往復サイクルに対し,所定のタイミングをもって弁開閉を行うよう,所定のリフト量を有するカム山が所定の位相(角度位置)をもってシャフトに設けられているものをいうことが,技術常識であり(甲18),本願発明にいう「カム」は,このようなカムを意味する。 被告は,この点に関し,乙1及び2を根拠として挙げて,カムには,円板を偏心させて回転させるものが含まれることは技術常識である旨主張するが,この主張は,機械の一般用語としてのみ妥当するにすぎず,4サイクル内燃機関に関する技術分野には妥当しないから,失当である。 しかるところ,甲7の第5図及び第6図における実施例では,「偏心円カム28」がクランク軸1に設けられており,第7図における実施例では,「円形の溝カム30」がクランク軸1に対して偏心して設けられており,第8図における実施例では,「偏心円(真円)カム32」がクランク軸1に設けられており 1に設けられており,第7図における実施例では,「円形の溝カム30」がクランク軸1に対して偏心して設けられており,第8図における実施例では,「偏心円(真円)カム32」がクランク軸1に設けられており,これらの「偏心円カム」あるいは「溝カム」は,「偏心機構」である。このような偏心機構は,単にクランクを小さなアーム径としたものにすぎず,「偏心機構制御」の制御曲線は緩勾配のサイン形状の制御曲線となり,クランク制御の場合と同じであるから,小圧縮機が「偏心機構制御」される場合は,内燃機関の後過給をサイクルに合わせて(時間に関して厳密に)実行することはできない。 - 11 -したがって,甲7記載の「偏心円カム」あるいは「溝カム」による制御は,本願発明にいう「カム制御」に含まれず,甲7は,本願発明にいう「カム制御」される小圧縮機を開示するものではない。 そうすると,本件審決の周知技術2の認定は誤りであるから,相違点3に係る本願発明の構成が容易想到であるとした本件審決の上記判断は,誤りである。 (4) 手続違背審査官作成の平成23年11月29日付けの前置報告書(甲15)では,平成23年5月24日付けの拒絶査定において周知例として引用された特開平11-44289号公報(甲2)の引用が撤回されており,その周知例の引用に基づく拒絶査定の見解が妥当ではなかったことを審査官が自認したものと解される。その上で,上記前置報告書において,新たな周知例(特開昭55-137315号公報(甲3),実願昭59-75685号(実開昭60-187331号)のマイクロフィルム(甲4))が引用されて反論が行われているが,周知技術を認定するための周知例といえども,新たな文献の引用であるため,前置審査において審判請求時の補正後の出願について拒絶査定の理由と異なる理由を発 ム(甲4))が引用されて反論が行われているが,周知技術を認定するための周知例といえども,新たな文献の引用であるため,前置審査において審判請求時の補正後の出願について拒絶査定の理由と異なる理由を発見した場合に当たり,拒絶理由通知をすべき必要性があったものといえる。 本件審決においては,相違点2について,甲4のほか,追加して引用した甲5ないし7に基づいて認定した周知技術1を適用して容易想到である旨を判断し,また,相違点3について,初めて引用した甲7に基づいて認定した周知技術2を適用して容易想到である旨を判断した。このように追加して引用された甲5ないし7は,周知技術を認定するための周知例といえども,新たな文献の引用であるため,拒絶査定不服審判において拒絶査定の理由と異なる理由を発見した場合に当たり,拒絶理由通知をすべき必要性があったものといえる。 - 12 -しかるところ,本件の前置審査及び本件審判手続において拒絶理由通知がされなかったから,本件審決には,特許法163条2項において準用する同法50条及び同法159条2項において準用する同法50条の規定に違反する手続違背がある。 (5) まとめ以上のとおり,本件審決には,本願発明と引用発明との一致点の認定,相違点2及び3の認定の誤り,相違点2及び3の容易想到性の判断の誤り並びに手続違背があり,本件審決は,違法であるから,取り消されるべきである。 2 被告の主張(1) 取消事由1に対しア本件審決は,引用発明における「カムシャフト27に設けた過給カム41により開閉駆動される」は,本願発明における「4サイクル工程のサイクルに合わせて」に相当すると認定した上で,本願発明においては,内燃機関の過給路が,内燃機関の吸入の終了後に,4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程 は,本願発明における「4サイクル工程のサイクルに合わせて」に相当すると認定した上で,本願発明においては,内燃機関の過給路が,内燃機関の吸入の終了後に,4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているようにサイクルに合わせて開かれるのに対し,引用発明においては,内燃機関の過給路が,内燃機関の吸入の末期に,4サイクル工程のサイクルに合わせて開かれる点を相違点2と認定したものである。 このように原告が主張する本願発明の「内燃機関の吸入の終了後に,…吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているように」という発明特定事項は,相違点2として認定しているから,この点に関する一致点の認定及び相違点2の認定の誤りをいう原告の主張は理由がない。 イ本件審決は,引用発明における「クランクシャフト52はカムシャフト27の一端に同軸スプライン結合されている」は,本願発明における「内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸- 13 -(2)の回転数をもって作動する」に相当すると認定した上で,本願発明は,小圧縮機は専らカム制御され,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸の回転数をもって作動するか,又は小圧縮機は専らクランク制御され,吸入行程或いは過給行程が過給路からの過給流れの重なりで乱されないために過給気を前制御し,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸の回転数をもってまたはカム軸の回転数に比べて各シリンダに対してサイクルに合った上昇回転数をもって作動するかを選択的な発明特定事項として有するのに対し,引用発明は,本願発明の上記発明特定事項のうち,「小圧縮機は専らクランク制御され,内燃機関の少なくとも一 してサイクルに合った上昇回転数をもって作動するかを選択的な発明特定事項として有するのに対し,引用発明は,本願発明の上記発明特定事項のうち,「小圧縮機は専らクランク制御され,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸の回転数を持って作動する」という発明特定事項しか有していない点を相違点3として認定したものである。 このように原告が主張する小圧縮機がクランク制御式の場合における「吸入行程或いは過給行程が過給路(14)からの過給流れの重なりで乱されないために過給気を前制御」する構成を本願発明の発明特定事項として認定し,引用発明がその構成を有しない点を相違点3として認定しているから,この点に関する一致点の認定及び相違点3の認定の誤りをいう原告の主張は理由がない。 ウ以上によれば,原告主張の取消事由1は理由がない。 (2) 取消事由2に対し本件審決は,本願発明の特許請求の範囲(請求項1)の「少なくとも一の過給路(14)が,内燃機関の吸入の終了後に,…少なくとも一の過給バルブ(15)によって,4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているようにサイクルに合わせて開かれる」との記載を「少なくとも一の過給路が,内燃機関の他の吸入路が閉じられた後に,少なくとも一の過給バルブによって,過給機による過給を伴う場- 14 -合を含む4サイクル工程の吸入行程が行程としてクランク角度が0度ないし180度の間において全体的に維持されるように開かれるか,または,クランク角度が0度ないし180度の間において部分的に維持されるように開かれる」と解釈した。 また,本件審決は,「内燃機関の他の吸入路とは分離される少なくとも一の過給路が,内燃機関の吸入の終了後に,4サイクル行程の吸入行程或 度の間において部分的に維持されるように開かれる」と解釈した。 また,本件審決は,「内燃機関の他の吸入路とは分離される少なくとも一の過給路が,内燃機関の吸入の終了後に,4サイクル行程の吸入行程或いは過給行程が行程として維持されているようにサイクルに合わせて開かれる」ことは周知技術(周知技術1)であると認定した。 そして,引用発明のような圧縮機などの過給装置付き内燃機関において,内燃機関の他の吸入路とは分離される少なくとも一の過給路を,吸入行程末期,すなわち,吸気行程から圧縮行程へ切り替わるクランク角度が180度付近となるタイミングにおいて開く場合,過給路から吸入路へ過給気が吹き返して過給効果が低減することを防止することは,当業者にとって技術常識であるから,引用発明において,周知技術1を適用し,内燃機関の吸入の終了後に過給路を開くような構成とすることは当業者にとって容易であり,その結果,引用発明は,少なくともクランク角度が0度ないし180度の間において吸入を行うエンジンである以上,4サイクル工程の吸入行程は行程としてクランク角度が0度ないし180度の間において全体的に又は部分的に維持されることになるため,相違点2に係る本願発明のように特定することは,当業者が格別困難なく想到し得るものである。 したがって,相違点2の容易想到性に関する本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由2は,理由がない。 (3) 取消事由3に対しアカムには,円板を偏心させて回転させるものが含まれることは技術常識である(例えば,乙1,2)。また,甲7(7頁19行~9頁12行)においても,「カム」という用語の通常の解釈のもとに,原告が「偏心機構」- 15 -であると主張する機構が「カム機構」と表現されている。 上記技術常識に照らせば,本願発 7頁19行~9頁12行)においても,「カム」という用語の通常の解釈のもとに,原告が「偏心機構」- 15 -であると主張する機構が「カム機構」と表現されている。 上記技術常識に照らせば,本願発明における「カム制御」から「偏心機構制御」を除外すべき理由はないから,本件審決における周知技術2の認定に誤りはない。 原告は,この点に関し,甲18を根拠として挙げて,4サイクル内燃機関に関する技術分野では,上記技術常識は妥当せず,むしろ「カム制御」には,「偏心機構制御」を含まないのが技術常識であるなどと主張する。 しかしながら,甲18記載の「カム」は,その説明のとおり吸排気バルブを開閉するためのカム及びカム形状についてであって,本願明細書の図1及び3に示された圧縮機を駆動する「カム4」についてのものではない。 甲18は,吸排気バルブを作動させるカムが4サイクル内燃機関の代表的な部品であることを述べているのであって,その他の部位にカムが用いられる場合において,そのようなカムが吸排気バルブ用のカムと同じものであると述べているのではないから,圧縮機を駆動する「カム4」について,カム形状を限定して理解すべきとの技術常識は存在しない。 また,本願発明の特許請求の範囲(請求項1)は,上記圧縮機カムが急峻勾配の制御曲線を有すること及びその制御曲線が過給バルブ(15)用のカム(19)の急峻勾配の制御曲線と一致することをそれぞれ発明特定事項として記載するものではなく,原告の上記主張は,本願発明の発明特定事項に基づくものではない。 さらに,本願の出願当初の明細書,特許請求の範囲及び図面(以下,これらを併せて「当初明細書等」という。)の記載を参照しても,小圧縮機を制御するカムを,原告主張のカムと限定して理解するための事項は明記されてないし,当初明細 明細書,特許請求の範囲及び図面(以下,これらを併せて「当初明細書等」という。)の記載を参照しても,小圧縮機を制御するカムを,原告主張のカムと限定して理解するための事項は明記されてないし,当初明細書等の記載から自明ともいえないから,上記原告の主張は失当である。 - 16 -以上によれば,本願発明における「小圧縮機は専らカム制御され」とは,通常の用語の意味において理解すべきである。 イ本願発明におけるカム制御による小圧縮機の駆動形態と引用発明における小圧縮機の駆動形態を整理すると,両者は,カム軸の回転運動を往復動へと運動変換して小圧縮機を駆動することで互いに駆動形態が共通しており,その共通する回転運動を往復動へと運動変換する手段として,本願発明は,カムを用いるのに対し,引用発明は,クランクシャフトを用いるものである。してみると,回転運動を往復動に運動変換する機構として,カム機構及びクランク機構は,広く種々の技術分野で用いられる慣用技術であり,両慣用技術を適宜選択して技術を具体化することに,当業者の格別の創意は要しないといえる。 このように運動変換機構の相違については,一般的に慣用技術であることをもって容易に想到し得るものであるといえるが,本件審決では,圧縮機(圧縮機過給を含む。)に関する技術として甲7を周知例として提示し,圧縮機の駆動形態として,カムを用いた駆動形態(カム制御)あるいはクランク機構を用いた駆動形態(クランク制御)は周知技術であり,どちらの駆動形態を採用するかは,当業者が適宜選択し得る設計的事項であると認定したものである。 特に,甲7には,第3及び4図において,回転運動をクランク制御により圧縮機の往復動に変換することに加え,第5ないし8図において,回転運動をカム制御により圧縮機の往復動に変換することが記載 ある。 特に,甲7には,第3及び4図において,回転運動をクランク制御により圧縮機の往復動に変換することに加え,第5ないし8図において,回転運動をカム制御により圧縮機の往復動に変換することが記載されているのであるから,圧縮機の技術分野において,クランク制御(クランク機構)をカム制御(カム機構)へと変更することが示唆されているといえる。 そして,周知・慣用技術であるカム制御(カム機構)におけるカムが,種々の形状を備えるものであることは当業者にとって周知の知見であるから(例えば,乙2),種々のカム形状を適宜考慮してカム制御を具体化す- 17 -ることは,当業者の通常の創作能力の発揮であって,そこに進歩性はないというべきである。 そうすると,引用発明のカム軸の回転運動を往復動へと運動変換して小圧縮機を作動させる手段を,周知の種々のカム制御により具体化することは,当業者が容易になし得ることであるから,引用発明において,小圧縮機をクランク制御により駆動する形態に代えて,周知のカム制御により駆動する形態とすることによって,本願発明における小圧縮機の制御に係る選択的な構成のうち,「小圧縮機は専らカム制御され,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸の回転数をもって作動する」構成とすることは当業者が格別困難なく想到し得るものである。 ウ以上によれば,相違点3の容易想到性に関する本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由3は,理由がない。 (4) 取消事由4に対し拒絶査定(甲12)の対象となった平成23年3月18日付け手続補正書(甲10)によって補正された本願の請求項1には,過給路(14)に関して,「内燃機関の他の吸入路とは分離される少なくとも一の過給路(14)が,…過給バルブ(15)によって 年3月18日付け手続補正書(甲10)によって補正された本願の請求項1には,過給路(14)に関して,「内燃機関の他の吸入路とは分離される少なくとも一の過給路(14)が,…過給バルブ(15)によって内燃機関の吸入の終了後,4サイクル工程の吸入/過給行程が全体的にまたは部分的に維持されているように,サイクルに合わせて制御される」と記載されていた。この記載によれば,過給路(14)が過給バルブ(15)によって内燃機関の吸入の終了後に「制御」されることは特定されているものの,当該「制御」の内容は明確に特定されておらず,過給路(14)を開くタイミングと内燃機関の吸入の終了との前後関係が特定されていたとはいえない。これに対し拒絶査定では,請求項1に係る発明は,拒絶査定で「引用文献」として引用された甲1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に想到し得ると判断した。併せて,上記手続- 18 -補正書と同日付けで提出された意見書(甲11)の「(4.2)」において,引用文献に記載された発明について,「圧縮された空気の燃焼室20への供給は,本願発明1におけるように吸気行程の終了後ではなく,文字通り「吸気行程の末期」(下記に記す初期開口の問題もあるので恐らくはこの時期よりも早期)であるため,引用発明1では吸気行程が圧縮された空気により邪魔されることになります。」と原告が主張したのに対し,当該主張は請求項1に記載された事項に基づくものとはいえないものの,原告における補正等の検討に資するべく,原告が撤回したと主張する甲2を,過給弁が開く時期が記載された文献を予め示す趣旨で拒絶査定において例示したものである。 その後,拒絶査定に対する審判請求と同時に行った本件補正(甲14)によって,「内燃機関の他の吸入路とは分離される少なくとも一の過給路(14)が,内燃機関の 趣旨で拒絶査定において例示したものである。 その後,拒絶査定に対する審判請求と同時に行った本件補正(甲14)によって,「内燃機関の他の吸入路とは分離される少なくとも一の過給路(14)が,内燃機関の吸入の終了後に,…過給バルブ(15)によって,4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているようにサイクルに合わせて開かれる」(下線は,補正箇所を示すために審判請求人(原告)が付したものである。)と補正し,初めて「制御」の内容が明確化された経緯に鑑みれば,審尋(甲15)において甲2を用いなかったことをもって,原告主張のように「撤回」というべきではない。 また,原告は,審判請求書(甲13)の「(3.2.1.1.3)」において,本件補正は「過給路(14)が,内燃機関の吸入の終了後に,過給バルブ(15)によって開かれる」ことを明確化するものと主張するとともに,「(3.4.1.4)」において,「内燃機関の吸入の終了後」に関し,「内燃機関の吸入バルブがまだ部分的に開いていると給気損失が生じますが,その理由は,小圧縮機により供給される圧縮空気が,開いている内燃機関の吸入バルブを通じて阻止されずに漏れ出してしまうためです。」と主張した。 そこで,新たに明確化され,かつ,特定された請求項1に係る発明に対し,審尋において,吸入行程の後に過給行程を実施することは周知技術にすぎな- 19 -いことを指摘し,当該周知技術を示す例として,主吸気ポートが全閉する直前において,過給ポートから主吸気ポートへの吹き返しが生じないタイミングで過給ポートを開弁する技術が記載された甲3と,吸気弁が閉弁した直後に過給用の高圧空気を燃焼室に供給する第3弁を開弁する技術が記載された甲4とを示し,原告に意見を求めた。これに対し,原告は,審尋に対す 過給ポートを開弁する技術が記載された甲3と,吸気弁が閉弁した直後に過給用の高圧空気を燃焼室に供給する第3弁を開弁する技術が記載された甲4とを示し,原告に意見を求めた。これに対し,原告は,審尋に対する回答書(甲16)の「(5.5)」において,「引用発明2(被告注:甲3に記載された技術内容)では,…主吸気ポート6が…吸気下死点B.D.C以降全閉される直前において過給バルブ17が開作動され,…吸気行程と過給行程とは期間的にオーバーラップするものとなっています。」と主張するとともに参考図を示し,「吸入の終了後」とは,吸気行程末期であって過給ポートからの吹き返しを生じない時期を含まず,吸入路が閉じられた後の意味であることを明確にした。 そこで,本件審決では,相違点2の判断に際し,引用文献(甲1)に記載された発明と甲4によって示される周知技術とに基づく容易想到性判断の枠組は維持しつつ,甲5ないし7を当該周知技術を示す例として付加した。なるほど,審尋で示した周知文献と本件審決で示した周知文献とは一部異なっているが,過給路(14)が開かれるとされる「内燃機関の終了後」における「終了」時点が,審尋とそれに対する回答書とによって具体化され,それでもなお引用発明と甲4によって示される周知技術とに基づく容易想到性判断の枠組は維持されるという経緯や,回答書の「(5.5)」において,「引用考案3(被告注:甲4に記載された技術内容)では,確かにその第7図を見ると「吸気弁開」の直後に「第3弁開」とあります」と記載していることに鑑みると,原告は回答書を提出する段階において,甲4によって示される周知技術を十分に認識していたといえることから,原告にとって反論の機会が奪われたということはできないといえる。 したがって,本件審決の審理手続に手続違背があったとすること て,甲4によって示される周知技術を十分に認識していたといえることから,原告にとって反論の機会が奪われたということはできないといえる。 したがって,本件審決の審理手続に手続違背があったとすることはできな- 20 -いから,原告主張の取消事由4は理由がない。 (5) まとめ以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本願発明は,引用発明及び周知技術(周知技術1及び2)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした本件審決の判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(一致点の認定,相違点2及び3の認定の誤り)について(1) 本願明細書の記載事項等についてア本願発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載は,前記第2の2のとおりである。 イ本願明細書(甲8,10,14)の「発明の詳細な説明」には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図1及び2については,別紙1を参照)。 (ア) 「本発明は,小圧縮機によって過給される4サイクル内燃機関に関するものである。ここで小圧縮機とは,その排気量が内燃機関の一シリンダの排気量よりも小さいことを意味するものとする。」(段落【0002】)(イ) 「【背景技術】 乗用車のエンジンでは高性能域で過給機を利用することが技術水準(従来技術)であるのに対し,二輪車部門では送給(給気)特性と生産コストの理由から高回転数のコンセプトが優先される。」「WO 02/20958 A1[特許文献1]からメンブラン式バルブによって前制御される吸入路を備え,該吸入路にばね付勢されるバルブによって制御される過給路が連結される内燃機関が公知である。内燃機関のシリンダヘッドは吸入バルブを備える。」- メンブラン式バルブによって前制御される吸入路を備え,該吸入路にばね付勢されるバルブによって制御される過給路が連結される内燃機関が公知である。内燃機関のシリンダヘッドは吸入バルブを備える。」- 21 -「WO 02/084089 A1[特許文献2]は圧縮機によって過給される内燃圧縮機関を提示する。圧縮(過給)機と内燃機関は過給路で直接連結される。その結果,過給の際圧縮機の排気量は内燃機関の排気量より大きく設計される。このタイプの構成では小圧縮機の場合よりも往復動圧縮容量の大きい圧縮機となる。」「DE 27 46 022 A1[特許文献3]は,過給機付き多気筒4サイクル内燃機関を提示し,ここではクランクで制御される小圧縮機が,分離して配設される過給路(複数)を通って空気を供給する。過給路(複数)は分離しては制御されない。」「US 5,785,015 A[特許文献4]からは,クランクで制御される圧縮機を備える内燃機関が公知である。これは2サイクル内燃機関において混合気形成のために採用され,主たる(ないし第一義的,primaer)過給機能を有するものではない。」「CH 539 198 A[特許文献5]はすべり弁(Schieber)式制御によって過給される内燃機関を提示する。この構成は主たる(ないし一義的,primaer)過給機能を有するものではない。」「US 4,106,445 A[特許文献6]はクランクで制御される補助的吸入系を備える内燃機関を提示する。制御するクランクは主たる過給機能を有するものではない。」「GB 1 549 969 A[特許文献7]はシリンダヘッド内に非常に小さなピストンを備える内燃機関を提示する。これは主たる過給機能を有するものではない。」「US 6,295,965 B1[特許 B 1 549 969 A[特許文献7]はシリンダヘッド内に非常に小さなピストンを備える内燃機関を提示する。これは主たる過給機能を有するものではない。」「US 6,295,965 B1[特許文献8]では,吸入路と排出路を備える内燃機関が提示される。内燃機関の他の経路(複数)はスリットで制御される。」「US 1,555,454[特許文献9]は補助のピストンおよびバ- 22 -ルブの装置を備える内燃機関を明示する。このシステムは主たる過給機能を有するものではない。さらに,下記の特許文献10が公知である。 …」(以上,段落【0003】~【0012】)(ウ) 「【発明が解決しようとする課題】 これらの技術水準をもとに,本発明は,小圧縮機によって過給され高回転可能な4サイクル内燃機関を提供することを,その課題とするものである。」(段落【0013】)(エ) 「【課題を解決するための手段】 本発明の一視点により以下の4サイクル内燃機関が提供される。該4サイクル内燃機関は,シリンダヘッドを有する少なくとも一のシリンダと,少なくとも一のカム軸と,加圧循環潤滑系と備え,過給機を備えていても過給機を備えていなくてもよく,付設するシリンダヘッドを有する少なくとも一のシリンダを備える小圧縮機が空気を供給し且つ少なくとも一のカム制御による過給バルブと協働する,4サイクル内燃機関である。該4サイクル内燃機関において,内燃機関の他の吸入路(複数)とは分離される少なくとも一の過給路が,内燃機関の吸入の終了後に,内燃機関のシリンダヘッドに構成されている(往復動)行程の短い(kurzhubig)少なくとも一の過給バルブによって,4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているようにサイクルに合わせて開かれること, 動)行程の短い(kurzhubig)少なくとも一の過給バルブによって,4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているようにサイクルに合わせて開かれること,小圧縮機は専らカム制御され,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸の回転数をもって作動するか,または,小圧縮機は専らクランク制御され,吸入行程或いは過給行程が過給路からの過給流れの重なりで乱されないために過給気を前制御し,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸の回転数をもってまたはカム軸の回転数に比べて各シリンダに対してサイクルに合った上昇回転数をもって作動すること。(形態1:基本構成)」(段落【0014】)- 23 -(オ) 「[作用] 内燃機関のカム軸によって制御さればね付勢されるピストンシステムは小圧縮機の往復動要素を形成する。小圧縮機の排気量は,内燃機関の排気量の例えば五分の一である。内燃機関は(小)圧縮機によって,例えば給気(Ladung)のうちの一部分のみが,内燃機関の作業サイクル用に前圧縮され,カム軸によって制御され行程の短い(往復動の小さい:kurzhubig)バルブの補助によって,分離した過給路を通って,内燃機関の吸入(行程)の終了後供給されるように過給される。 従来の内燃機関の吸入路はその際保持(維持)される。分離して制御される過給路を有する圧縮機は良い作用効率で良い送給特性を有する。提案した過給システムは過給過程の際乱流によってより良い混合気形成に寄与する。さらには燃焼および素(粗ないし1次)エミッション(排ガスエミッション,Rohemissionen)に好ましい作用が生じる。」(段落【0015】)「提案された機関では,リットル性能(リットル当り は燃焼および素(粗ないし1次)エミッション(排ガスエミッション,Rohemissionen)に好ましい作用が生じる。」(段落【0015】)「提案された機関では,リットル性能(リットル当り走行距離)回転モーメント,作用効率,素(粗ないし1次)エミッション(排ガス排出物,Rohemmissionen)およびキロワット当りのコストについて競争力のある特性値が期待される。」(段落【0021】)(カ) 「【実施例】 ここで本発明の実施例について添付の図を参照して詳しく説明する。しかしこれはあくまでも実施例であり,発明のコンセプトを特定の構成に限定するべきものではない。」(段落【0024】)「図1は圧縮機のピストン3を制御するための内燃機関の圧縮機ケース1とカム軸2を示す。このピストンは公知のように圧縮リング(図示せず)と油かきリング(図示せず)を備える。ピストン3はカム4,タ- 24 -ペット5,ピストンロッド6,楕円状の回転防止部材(Drehsicherung)7およびばね8の補助によって作動する。圧縮機ピストン3と回転防止部材7は確保(脱落防止)されたねじ(固定)部材9でもって結合される。ピストンシステムを過剰な回転(数)から保護するために,圧縮機のシリンダヘッド11に支承(受け)部材10が備えられる。」(段落【0026】)「圧縮機の吸入は圧縮機シリンダ13の吸入孔12を介して成される。 排出は過給路(ないしチャンネル)14を介して成される。」(段落【0027】)「4サイクル内燃機関はシリンダヘッド16を有する少なくとも一のシリンダおよび少なくとも一のカム軸2を備え,公知の方法で加圧循環潤滑および場合によっては過給機と共に稼動される。図1に示される小圧縮機は内燃機関内へ空気を送り込み,カム制御され する少なくとも一のシリンダおよび少なくとも一のカム軸2を備え,公知の方法で加圧循環潤滑および場合によっては過給機と共に稼動される。図1に示される小圧縮機は内燃機関内へ空気を送り込み,カム制御される過給バルブ15とサイクルに合わせて連携作動(協動)する。内燃機関のシリンダヘッド16に構成される行程の短い(往復動の小さい:kurzhubig)過給バルブ15の他の吸入路とは分離された少なくとも一の過給路14は吸入の終了後,4サイクル工程の吸入/過給行程が全体的または部分的に維持されるように制御される。」(段落【0028】)(キ) 「図2に従った内燃機関および圧縮機は,スロットルバルブ(図示せず)によって制御される吸入路(複数)を介して過給気を吸入する。 …」(段落【0030】)「圧縮機は吸入孔12を通って内燃機関(の排気容量)に比べて少量の過給気を吸入し,圧縮機シリンダの中でそれを圧縮し,内燃機関の過給路14と行程(ストローク)の短い分離した吸入(過給)バルブ15を介してそれを送給する。こうして始まる作業サイクルは公知の仕方で進行する。」(段落【0033】)- 25 -「上述の実施例は往復動容量(ないし排気量,oszilierendenMassen)の小さい機関に関するものである。そのカム制御の小圧縮機は直接,すなわち小圧縮機のシリンダヘッド11に追加バルブなしで,サイクルに合わせて(taktgerecht)内燃機関と協動することができ,特に小機関に適する。」(段落【0034】)(ク) 「排気量がより大きい場合には小圧縮機の排気量や往復動容量に依存してクランク制御される圧縮機が備えられる。例えば単気筒内燃機関は過給気の前制御用に圧縮機のシリンダヘッド11に好ましくはばね付勢によるバルブを備える。このバルブのカム制御は 気量や往復動容量に依存してクランク制御される圧縮機が備えられる。例えば単気筒内燃機関は過給気の前制御用に圧縮機のシリンダヘッド11に好ましくはばね付勢によるバルブを備える。このバルブのカム制御は必要とされない。しかしながらこのバルブを制御するための別の可能性があることは専門家には既知である。そこで小圧縮機の駆動は好ましくはカム軸との組合せで好ましくは同一の回転数において,達成されるが,ここで他の回転数でも可能であり,また,それが必要とされることもある。」(段落【0035】)「この実施例の種類において吸入過程を過給路からの重なった過給流れによって乱されないようにせんがために,小圧縮機のシリンダヘッドにばね付勢によるバルブが備えられる。このバルブはサイクルに合った過給過程を導く。その後,カム制御され行程の短い過給バルブ15が内燃機関のシリンダヘッド16内に開口する。機関のクランクケースの排気はこの形式の構成の場合,小圧縮機によって達成される。」(段落【0036】)「多気筒内燃機関は単気筒または多気筒の圧縮機によって過給される。 この場合サイクルに合った回転数の適合/回転数の上昇が必要となる。 その場合過給気の前制御は圧縮機のシリンダヘッド11内のバルブによって達成される。このバルブは内燃機関のカム軸,または圧縮機の回転する機械部分に備えられるカムのカム軸によってサイクルに合わせて作- 26 -動され,またばね付勢されることもできる。このバルブを要求に応じて発明に従って制御する別の可能性があることも専門家には既知である。」(段落【0037】)(ケ) 「上述した構成の仕方で提示した本過給システムは,乱流形成により,過給過程においてより良い混合気形成に寄与する。その結果,燃焼や素(粗)エミッション(排ガス排出物,Rohemi 037】)(ケ) 「上述した構成の仕方で提示した本過給システムは,乱流形成により,過給過程においてより良い混合気形成に寄与する。その結果,燃焼や素(粗)エミッション(排ガス排出物,Rohemissionen)に対する有利な作用(効果)が得られる。」(段落【0038】)「機関は吸入,過給,圧縮,作業(膨張仕事:Arbeit)および排出のサイクル行程(Takt)を有する。正確に言うと,過給行程(Ladetakt)とは,後過給行程(Nachladetakt)である。これに対して,従来の過給の場合吸入行程は過給行程によって置き換えられる。」(段落【0044】)(2) 引用文献の記載事項について引用文献(特開2002-303144号公報)(甲1)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図1ないし5,11については別紙2を参照)。 ア 「【発明の属する技術分野】本発明は,一体に作動する一対のピストンをシリンダブロックに形成した共通のシリンダに摺動自在に支持し,そのシリンダの両端に形成した一対の圧縮室を蓄圧室および過給バルブを介してエンジンの燃焼室に接続した複動式ピストン過給機に関する。」(段落【0001】)イ 「【従来の技術】かかる複動式ピストン過給機は,特開2000-87754号公報により公知である。またエアクリーナと吸気弁とを接続する吸気通路にスクリューポンプ式の過給機を備えたエンジンにおいて,過給機と吸気ポートとの間に蓄圧室(リザーバ)を配置するとにより過給圧の脈動を防止するものが,特公昭56-10451号公報により公知であ- 27 -る。」(段落【0002】)ウ 「【発明が解決しようとする課題】ところで,上記特開2000-87754号公報に記載されたものは,過給機のシリンダブロックの両端に形成した一 公知であ- 27 -る。」(段落【0002】)ウ 「【発明が解決しようとする課題】ところで,上記特開2000-87754号公報に記載されたものは,過給機のシリンダブロックの両端に形成した一対の圧縮室を,該シリンダブロックの外部に設けた吸入用のパイプおよび排出用のパイプで相互に連通させているので,それらパイプ自体によって部品点数が増加するだけでなく,パイプの接続部のシール部材によって更に部品点数が増加する問題があった。また上記特公昭56-10451号公報に記載されたものは,過給機のケーシングと蓄圧室とが別部材で構成されているため,部品点数が増加して吸気系をコンパクトに構成するのが難しくなるという問題があった。」(段落【0003】)「本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので,蓄圧室を備えた複動式ピストン過給機の部品点数をできるだけ削減することを目的とする。」(段落【0004】)エ 「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために,請求項1に記載された発明によれば,一体に作動する一対のピストンをシリンダブロックに形成した共通のシリンダに摺動自在に支持し,そのシリンダの両端に形成した一対の圧縮室を蓄圧室および過給バルブを介してエンジンの燃焼室に接続した複動式ピストン過給機において,前記蓄圧室を前記シリンダブロックに一体に形成したことを特徴とする複動式ピストン過給機が提案される。」(段落【0005】)「上記構成によれば,複動式ピストン過給機のシリンダブロックに蓄圧室を一体に形成したので,シリンダブロックに対して蓄圧室を別部材で構成する場合に比べて部品点数の削減および寸法の小型化が可能になるだけでなく,圧縮室および蓄圧室をシリンダブロックの外部に配置したパイプで連通させる必要がなくなるため,パイプそのものと該パイプの で構成する場合に比べて部品点数の削減および寸法の小型化が可能になるだけでなく,圧縮室および蓄圧室をシリンダブロックの外部に配置したパイプで連通させる必要がなくなるため,パイプそのものと該パイプのシール部材とが不要になって部品点数や組付工数が更に削減される。」(段落【0- 28 -006】)オ 「図1および図2に示すように,単気筒4サイクルエンジンEの外郭は,クランクケース11と,シリンダブロック12と,シリンダヘッド13と,ヘッドカバー14とで構成されており,クランクケース11に一対のボールベアリング15,15で支持したクランクシャフト16と,シリンダスリーブ17に摺動自在に嵌合するピストン18とが,コネクティングロッド19を介して相互に連結される。シリンダヘッド12に燃焼室20に連通する吸気ポート21,排気ポート22および過給ポート23が形成されており,それら吸気ポート21,排気ポート22および過給ポート23がそれぞれ吸気バルブ24,排気バルブ25および過給バルブ26により開閉される。」(段落【0018】)「シリンダヘッド13の中央部には1本のカムシャフト27が一対のボールベアリング28,28を介して支持されており,そのカムシャフト27の一端に固定した従動スプロケット29と,クランクシャフト16に固定した駆動スプロケット30とがタイミングチェーン31を介して接続される。…また過給バルブ26は,カムシャフト27に設けた過給カム41により直接的に駆動される。」(段落【0019】)「而して,クランクシャフト16の回転が駆動スプロケット30,タイミングチェーン31および従動スプロケット29を介して伝達されるカムシャフト27がクランクシャフト16の2分の1の回転数で回転すると,カムシャフト27に設けた吸気カム37により吸 ロケット30,タイミングチェーン31および従動スプロケット29を介して伝達されるカムシャフト27がクランクシャフト16の2分の1の回転数で回転すると,カムシャフト27に設けた吸気カム37により吸気ロッカーアーム35を介して吸気バルブ24が開閉駆動されるとともに,カムシャフト27に設けた排気カム39により排気ロッカーアーム36を介して排気バルブ25が開閉駆動され,更にカムシャフト27に設けた過給カム41により過給バルブ26が開閉駆動される。過給バルブ26は例えば吸気行程の末期に短期間だけ開弁し,圧縮された空気を燃焼室20の供給してエンジンEの- 29 -出力を向上させる。」(段落【0020】)カ 「過給機CはエンジンEのシリンダヘッド13に支持したカムシャフト27の一端側の側面(従動スプロケット29と反対側の側面)を覆うカバー51(図2参照)に支持されるもので,カムシャフト27の一端に同軸にスプライン結合されたクランクシャフト52を備える。クランクシャフト52を一対のボールベアリング53,53を介して支持するシリンダブロック54は,クランクシャフト52の軸線を含む平面で上側の第1シリンダブロック半体55Uと,下側の第2シリンダブロック半体55Lとに分割されており,カムシャフト27寄りのボールベアリング53の外側にシール部材56(図4参照)が挟持される。」(段落【0022】)「第1シリンダブロック半体55Uの上面に,薄い金属板で形成された第1吸入リードバルブ57Uと,金属板よりなる第1弁板58Uと,薄い金属板で形成された第1排出リードバルブ59Uと,第1シリンダヘッド60Uとが積層され,第2シリンダブロック半体55Lの下面に,薄い金属板で形成された第2吸入リードバルブ57Lと,金属板よりなる第2弁板58Lと,薄い金属板で形 ドバルブ59Uと,第1シリンダヘッド60Uとが積層され,第2シリンダブロック半体55Lの下面に,薄い金属板で形成された第2吸入リードバルブ57Lと,金属板よりなる第2弁板58Lと,薄い金属板で形成された第2排出リードバルブ59Lと,第2シリンダヘッド60Lとが積層される。そして上方から挿入される4本のボルト61…で,…共締めされる。」(段落【0023】)「シリンダブロック54に形成したシリンダ54a内部に,上側の第1ピストン62Uおよび下側の第2ピストン62Lが摺動自在に嵌合する。 クランクシャフト52に設けたクランクピン63と第1ピストン62Uに支持したピストンピン64とがコネクティングロッド65を介して連結されており,第2ピストン62Lから上方に長く延びるスカート部62aが前記ピストンピン64に連結される。…」(段落【0024】)キ 「エンジンEの運転に伴ってクランクシャフト16によりタイミングチェーン31を介してカムシャフト27が駆動されると,カムシャフト27- 30 -に直結した過給機Cのクランクシャフト52が回転する。クランクシャフト52が回転するとコネクティングロッド65を介して第1,第2ピストン62U,62Lがシリンダ54a内を一体に上下動する。図5に示すように,第1,第2ピストン62U,62Lが上動するとき,第1ピストン62Uにより第1圧縮室69Uの容積が減少して圧力が上昇するため,第1排出リードバルブ59Uの排出リード59dが上方に撓み,第1圧縮室69U内の空気が第1排出室71Uを経て蓄圧室73に供給される。これと同時に第2ピストン62Lにより第2圧縮室69Lの容積が増加して圧力が低下するため,第2吸入リードバルブ57Lの吸入リード57dが上方に撓み,第2吸入室70L内の空気が第2圧縮室69Lに供給される と同時に第2ピストン62Lにより第2圧縮室69Lの容積が増加して圧力が低下するため,第2吸入リードバルブ57Lの吸入リード57dが上方に撓み,第2吸入室70L内の空気が第2圧縮室69Lに供給される。」(段落【0034】)「クランクシャフト52が更に回転して第1,第2ピストン62U,62Lがシリンダ54a内を一体に下動するとき,図11に示すように,第1ピストン62Uにより第1圧縮室69Uの容積が増加して圧力が低下するため,第1吸入リードバルブ57Uの吸入リード57dが下方に撓み,第2吸入室70L内の空気が吸入ポート72および第1吸入室70Uを経て第1圧縮室69Uに供給される。これと同時に第2ピストン62Lにより第2圧縮室69Lの容積が減少して圧力が増加するため,第2排出リードバルブ59Lの排出リード59dが下方に撓んで第2圧縮室69L内の空気が蓄圧室73に供給される。」(段落【0035】)「このようにして,第1,第2ピストン62U,62Lの往復動に伴って吸入パイプ74から吸入された空気は第1,第2圧縮室69U,69Lで交互に圧縮されて蓄圧室73に蓄圧される。そして過給バルブ26が開弁した瞬間に,蓄圧室73の高圧の空気は過給パイプ75,過給ポート23および過給バルブ26を経て燃焼室20に供給され,エンジンEの出力を増加させる。第1,第2ピストン62U,62Lの位相が180°ずれ- 31 -ているため,吐出圧の脈動を減少させることができ,更に蓄圧室73が圧力緩衝作用を発揮することで,過給圧の脈動を更に効果的に減少させることができる。」(段落【0036】)「以上,本発明の実施例を詳述したが,本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。」(段落【0043】)ク 「【発明の効果】以上のように請求 」(段落【0036】)「以上,本発明の実施例を詳述したが,本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。」(段落【0043】)ク 「【発明の効果】以上のように請求項1に記載された発明によれば,複動式ピストン過給機のシリンダブロックに蓄圧室を一体に形成したので,シリンダブロックに対して蓄圧室を別部材で構成する場合に比べて部品点数の削減および寸法の小型化が可能になるだけでなく,圧縮室および蓄圧室をシリンダブロックの外部に配置したパイプで連通させる必要がなくなるため,パイプそのものと該パイプのシール部材とが不要になって部品点数や組付工数が更に削減される。」(段落【0044】)(3) 一致点の認定等の誤りの有無について原告は,本件審決が認定した本願発明と引用発明との一致点のうち,「内燃機関の他の吸入路とは分離される少なくとも一の過給路が,内燃機関のシリンダヘッドに構成されている行程の短い少なくとも一の過給バルブによって,4サイクル工程のサイクルに合わせて開かれる」との部分(A部分)及び「小圧縮機は専らクランク制御され,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸の回転数をもって作動する」との部分(B部分)は,本願発明の解決原理ないし基本的技術思想を無視し,本願発明の必須の構成要件の一部を恣意的に抽出して一致点と認定したものであるから,誤りであり,さらには,本件審決が認定した本願発明と引用発明との相違点2及び3は,誤った一致点の認定に依拠して認定したものであるから,不適切であって失当である旨主張する。 ア A部分について前記(2)認定の引用文献の記載事項によれば,引用文献には,本件審決認- 32 -定のとおり,「シリンダヘッド13を有するシリンダブロック12と,カムシ ある旨主張する。 ア A部分について前記(2)認定の引用文献の記載事項によれば,引用文献には,本件審決認- 32 -定のとおり,「シリンダヘッド13を有するシリンダブロック12と,カムシャフト27とを備え,エンジンEのシリンダヘッド13に支持したカムシャフト27の一端側の側面を覆うカバー51に支持され,かつ第1,第2シリンダヘッド60U,60Lを有するシリンダブロック54を備える過給機Cが,空気を供給し且つカムシャフト27に設けた過給カム41により開閉駆動する過給バルブ26と協働する,単気筒4サイクルエンジンEであって,エンジンEの吸気ポート21とは分離される過給パイプ75,過給ポート23が,エンジンEの吸気行程の末期に,エンジンEのシリンダヘッド13に構成され,かつカムシャフト27に設けた過給カム41により開閉駆動される過給バルブ26によって,短期間だけ開かれること,過給機Cはクランクシャフト52が回転するとコネクティングロッド65を介して第1,第2ピストン62U,62Lがシリンダ54a内を上下動するものであり,クランシャフト52はカムシャフト27の一端に同軸スプライン結合されている単気筒4サイクルエンジンE。」(引用発明)が記載されていることが認められる。 そして,引用文献の単気筒4サイクルエンジンEの吸気ポート21とは分離される過給パイプ75,過給ポート23が「エンジンEの吸気行程の末期」に「カムシャフト27に設けた過給カム41により開閉駆動される過給バルブ26によって,短期間だけ開かれる」ことは,過給パイプ75,過給ポート23が4サイクル行程(吸気行程,圧縮行程,燃焼行程及び排気行程)のサイクルに合わせて開かれ,かつ,その具体的態様が「吸気行程の末期」に「短時間だけ」開かれることを意味するものと理解できる。 ート23が4サイクル行程(吸気行程,圧縮行程,燃焼行程及び排気行程)のサイクルに合わせて開かれ,かつ,その具体的態様が「吸気行程の末期」に「短時間だけ」開かれることを意味するものと理解できる。 他方で,本願発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,本願発明は,「内燃機関の他の吸入路とは分離される少なくとも一の過給路(14)が,内燃機関の吸入の終了後に,内燃機関のシリンダヘッド(16)に構成されている行程の短い少なくとも一の過給バルブ(15)によって,- 33 -4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているようにサイクルに合わせて開かれる」構成を有するものである。この構成は,一の過給路が一の過給バルブ(15)によって4サイクル工程のサイクルに合わせて開かれ,かつ,その具体的態様が「内燃機関の吸入の終了後」に「吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているように」開かれることを意味するものと理解できる。 そして,引用文献の単気筒4サイクルエンジンEの「吸気ポート21とは分離される過給パイプ75」及び「過給バルブ26」は,本願発明の「少なくとも一の過給路」及び「行程の短い少なくとも一の過給バルブ」に相当するから(争いがない。),引用文献の単気筒4サイクルエンジンEと本願発明とは,一の過給路が一の過給バルブによって4サイクル工程のサイクルに合わせて開かれる点で共通し,その具体的態様が,引用文献の単気筒4サイクルエンジンEにおいては,「吸気行程の末期」に「短時間だけ」開かれるのに対し,本願発明においては,「内燃機関の吸入の終了後」に「吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているように」開かれる点で異なるものといえる。 そうすると,本 かれるのに対し,本願発明においては,「内燃機関の吸入の終了後」に「吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているように」開かれる点で異なるものといえる。 そうすると,本件審決が,「内燃機関の他の吸入路とは分離される少なくとも一の過給路が,内燃機関のシリンダヘッドに構成されている行程の短い少なくとも一の過給バルブによって,4サイクル工程のサイクルに合わせて開かれる」点(A部分)を引用文献の単気筒4サイクルエンジンE(引用発明)と本願発明との一致点として認定したことに誤りはない。 また,本件審決は,上記具体的態様の相違を相違点2として認定しており,その認定に誤りはない。 イ B部分について前記(2)認定の引用文献の記載事項によれば,引用文献の単気筒4サイク- 34 -ルエンジンEの過給機Cは,「エンジンEのシリンダヘッド13に支持したカムシャフト27の一に同軸にスプライン結合されたクランクシャフト52」を備え,エンジンEの運転に伴ってクランクシャフト16によりタイミングチェーン31を介してカムシャフト27が駆動されると,カムシャフト27に直結したクランクシャフト52が回転し,クランクシャフト52が回転するとコネクティングロッド65を介して第1,第2ピストン62U,62Lがシリンダ54a内を一体に上下動する(段落【0022】,【0034】)から,カムシャフト27の回転数をもって作動するものであり,過給機Cは,「専らクランク制御され,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸の回転数をもって作動する」ものと理解できる。この過給機Cが本願発明の「小圧縮機」に相当することは争いがない。 他方で,本願発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,本願発明は,「小圧縮機」が「専 もって作動する」ものと理解できる。この過給機Cが本願発明の「小圧縮機」に相当することは争いがない。 他方で,本願発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,本願発明は,「小圧縮機」が「専らカム制御」される場合と「専らクランク制御」される場合があり,「小圧縮機」が「専らクランク制御」される場合には,「吸入行程或いは過給行程が過給路(14)からの過給流れの重なりで乱されないために過給気を前制御し,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸(2)の回転数をもってまたはカム軸(2)の回転数に比べて各シリンダに対してサイクルに合った上昇回転数をもって作動する」構成を有するものである。この構成によれば,本願発明において「小圧縮機」が「専らクランク制御」される場合,「吸入行程或いは過給行程が過給路からの過給流れの重なりで乱されないために過給気」を「前制御」することが必須の要件となっていることを理解できる。これに対し引用文献には,かかる「前制御」についての記載がないから,引用文献の単気筒4サイクルエンジンEにおいては「前制御」を行っていないものと理解できる。 - 35 -そして,本願発明において「小圧縮機」が「専らカム制御」される場合と「専らクランク制御」される場合とは選択的構成であり,いずれか一方の制御をする構成のものも本願発明に含まれ得るから,「小圧縮機は専らクランク制御され,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸の回転数をもって作動する」点(B部分)を引用文献の単気筒4サイクルエンジンE(引用発明)と本願発明との一致点として認定したことに誤りはない。 また,本件審決が認定した相違点3は,「本願発明においては,(i)小圧縮機は専らカム制御され,内燃機関の少なくとも一のシ ンジンE(引用発明)と本願発明との一致点として認定したことに誤りはない。 また,本件審決が認定した相違点3は,「本願発明においては,(i)小圧縮機は専らカム制御され,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸の回転数をもって作動するか,または,(ii)小圧縮機は専らクランク制御され,吸入行程或いは過給行程が過給路からの過給流れの重なりで乱されないために過給気を前制御し,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸の回転数をもってまたはカム軸の回転数に比べて各シリンダに対してサイクルに合った上昇回転数をもって作動するのに対し,引用発明においては,小圧縮機は専らクランク制御され,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸の回転数をもって作動する点」というものであり,本願発明において「小圧縮機」が「専らクランク制御」される場合に「前制御」が必須の要件であるのに対し,引用文献の単気筒4サイクルエンジンEにおいては「前制御」を行っていない点については,この相違点3の中で認定しているものと理解できる。したがって,本件審決における相違点3の認定にも誤りはない。 ウ原告の主張について原告は,本願発明の「少なくとも一の過給路が,内燃機関の吸入の終了後に,…少なくとも一の過給バルブ(15)によって,4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されて- 36 -いるようにサイクルに合わせて開かれる」構成のうち,「内燃機関の吸入の終了後に」,「4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているように」との部分は必要不可欠な構成であるにもかかわらず,本件審決が,この構成を省いてA部分のみを一致点とし 「4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているように」との部分は必要不可欠な構成であるにもかかわらず,本件審決が,この構成を省いてA部分のみを一致点として抽出し,また,小圧縮機がクランク制御式の場合には,「吸入行程或いは過給行程が過給路(14)からの過給流れの重なりで乱されないために過給気を前制御」する構成が本願発明の必要不可欠な構成であるにもかかわらず,本件審決が,この構成を省いてB部分のみを一致点として抽出することは,本願発明の解決原理ないし基本的技術思想を無視するものといえるから,誤りである旨主張する。 しかしながら,前記ア及びイのとおり,本件審決がA部分及びB部分を一致点と認定したことに誤りはなく,また,本件審決は,本願発明が原告主張の本願発明の必要不可欠な構成を有しているのに対し,引用発明がこれを有していない点を相違点2及び3として認定しているのであるから,本願発明の解決原理ないし基本的技術思想を無視するものとはいえない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (4) 小括以上によれば,本件審決における一致点の認定に原告主張の誤りはなく,本件審決における相違点2及び3の誤りをいう原告の主張も,その前提を欠くものであるから,原告主張の取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(相違点2の容易想到性の判断の誤り)について(1) 原告は,本件審決には,引用発明に本件審決認定の周知技術1(「圧縮機などの過給装置付き内燃機関において,内燃機関の他の吸入路とは分離される少なくとも一の過給路が,内燃機関の吸入の終了後に,4サイクル行程の吸入行程或いは過給行程が行程として維持されているようにサイクルに合わせて開かれる」こと)を適用することの動機付けが示されておらず,また,- 過給路が,内燃機関の吸入の終了後に,4サイクル行程の吸入行程或いは過給行程が行程として維持されているようにサイクルに合わせて開かれる」こと)を適用することの動機付けが示されておらず,また,- 37 -周知技術1には,相違点2に係る本願発明の構成のうち,「全体的にまたは部分的に維持」との部分が含まれていないから,引用発明に周知技術1を適用したからといって,相違点2に係る本願発明の構成となるわけではないなどとして,引用発明において,周知技術1を適用し,相違点2に係る本願発明のように特定することは,当業者が格別困難なく想到し得るものである旨の本件審決の判断は誤りである旨主張する。 ア周知技術1に係る周知例の記載事項本件審決が,周知技術1が周知であることの例示として挙げた文献(甲4ないし7)には,次のような記載がある。 (ア) 甲4の記載事項実願昭59-75685号(実開昭60-187331号)のマイクロフィルム(甲4)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する第4図及び第7図については別紙3を参照)。 a 「(考案の目的)この考案はこのような問題点に着目しなされたもので,コンプレッションブレーキ装置を採用した内燃機関に,第3弁を介して燃焼室から逃げ出す圧縮空気を高圧タンクに蓄え,過給用の高圧空気として再利用することにより,コンプレッサの駆動力を節約するようにした内燃機関の過給装置を提供することを目的とする。」(明細書の5頁6行~13行)b 「(考案の構成及び作用)そのため,この考案は,燃焼室に吸排気弁とともに第3弁を設け,燃焼室と高圧空気源を第3弁を介し接続する高圧通路を形成する一方,機関運転状態を検出する手段を設け,機関低速高負荷時に第3弁を圧縮行程初期に所定期間だけ開弁させる制御手段と,機関減速 第3弁を設け,燃焼室と高圧空気源を第3弁を介し接続する高圧通路を形成する一方,機関運転状態を検出する手段を設け,機関低速高負荷時に第3弁を圧縮行程初期に所定期間だけ開弁させる制御手段と,機関減速時に同じく第3弁を圧縮行程初期と終期にそれぞれ所定期間だけ開弁させ- 38 -る制御手段とを備える。 即ち,エンジンブレーキ作動時(減速時)に,第3弁が圧縮行程上死点付近で開くと,第3弁を介して燃焼室から逃げ出す圧縮空気は高圧空気源に蓄えられる。 そして,この圧縮空気は加速走行に移行すると,この時には圧縮行程初期で開く第3弁を介し過給用の高圧空気として燃焼室に供給される。」(明細書の5頁14行~6頁9行)「(実施例)…第4図において、13は機関本体1の燃焼室、15はその吸気弁、16は排気弁、2は高速型のターボ過給機を示す。」(同6頁10行~16行)c 「次に作用を説明する。 例えば低速走行から加速走行に移行すると,コントロール装置27は電磁弁44を介しリリーフ弁40を閉じる。 これに伴って,ピストンポンプ33からの圧油が油室29へと供給され,第3弁26は第7図実線で示すように,機関回転に同期して圧縮行程下死点付近で所定期間開く。 これにより,高圧空気タンク6から第3弁26を介し高圧空気が直接的に燃焼室13に供給され,従って燃焼室内の空気量はターボ過給機2の過給気量に加えて,低回転から急速に増加するため,ターボ過給の応答遅れ(ターボラグ)が改善される。 この場合,高圧空気タンク6からの高圧空気は直接,燃焼室13に供給されるため,従来(第1図)のように吸気マニホールド3を介し供給する場合と違って吸排気系に逃げることがなく,このため,燃焼室13の空気量の立ち上がりが急速で,ターボラグの更に一段の改善が図れる 供給されるため,従来(第1図)のように吸気マニホールド3を介し供給する場合と違って吸排気系に逃げることがなく,このため,燃焼室13の空気量の立ち上がりが急速で,ターボラグの更に一段の改善が図れる。」(明細書の9頁7行~10頁6行)- 39 -d 「以上本考案をターボ過給ディーゼル機関に適用した例を用い説明したが本考案はターボ過給の有無を問わず内燃機関一般に適用できることは明らかである。」(明細書の11頁15行~18行)(イ) 甲5の記載事項実願昭55-45221号(実開昭56-147313号)のマイクロフィルム(甲5)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する第2図及び第3図については別紙4を参照)。 a 「本出願人により分離過給システムとして,吸気通路とは別の過給通路を設け,吸入行程が終了してから過給通路の第3弁を開いてシリンダ内へ高圧空気を追加導入することにより,小容量の過給機で実質的な吸気充填効率を高められるようにした装置が提案されている。」(明細書の2頁4行~9行)b 「この第3弁9は吸入行程の終了付近から圧縮行程初期にかけて開き,燃焼室10内へ過給通路8からの加圧混合気を追加導入するようになつている。…第2図は吸入行程であって,吸気弁4が開いてピストン11の下降に伴い,吸気通路2からの混合気が吸入される(・・・)。 このとき第3弁9は閉じており,過給通路8には過給機1からの吐出過給気が待機している。第3図のように吸入行程が終了して吸気弁4が閉じると,第3弁9が開く。 このため,過給通路8から瞬時のうちに加圧空気が燃焼室10へ追加導入される。そして第3弁9は,ピストン11の上昇に伴いシリンダ内圧が高まり内部ガスが過給通路8に逆流する前に閉弁して過給を終了するのである。」(明細書の3頁10行~4 に加圧空気が燃焼室10へ追加導入される。そして第3弁9は,ピストン11の上昇に伴いシリンダ内圧が高まり内部ガスが過給通路8に逆流する前に閉弁して過給を終了するのである。」(明細書の3頁10行~4頁7行)(ウ) 甲6の記載事項実願昭55-39977号(実開昭56-142225号)のマイクロフィルム(甲6)には,次のような記載がある(下記記載中に引用す- 40 -る第3図については別紙5を参照)。 a 「本出願人により分離過給システムとして,吸気通路とは別の過給通路を設け,吸入行程が終了してから過給通路の第3弁を開いてシリンダ内へ高圧空気を追加導入することにより,小容量の過給機で実質的な吸気充填効率を高められるようにした装置が提案されている。」(明細書の2頁10行~15行)b 「この第3弁9は吸入行程の終了付近から圧縮行程初期にかけて開き,燃焼室10内へ過給通路8からの加圧混合気を追加導入するようになつている。…第2図は吸入行程であって,吸気弁4が開いてピストン11の下降に伴い,吸気通路2からの混合気が吸入される(・・・)。」(明細書の3頁16行~4頁4行)c 「このとき第3弁9は閉じており,過給通路8には過給機1からの吐出過給気が待機している。第3図のように吸入行程が終了して吸気弁4が閉じると,第3弁9が開く。 このため,過給通路8から瞬時のうちに加圧空気が燃焼室10へ追加導入される。」(明細書の4頁5行~10行)(エ) 甲7の記載事項実願昭55-38324号(実開昭56-139828号)のマイクロフィルム(甲7)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する第3図ないし第8図については別紙6を参照)。 a 「分離過給エンジンとして,多気筒を持つエンジンの一つの気筒をコンプレッサとして作動させ,その 7)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する第3図ないし第8図については別紙6を参照)。 a 「分離過給エンジンとして,多気筒を持つエンジンの一つの気筒をコンプレッサとして作動させ,その吐出混合気を吸気通路とは別の過給通路を介して動力気筒へ過給するようにしたエンジンが本出願人により提案されている。 これは,クランク軸を介して動力気筒とともに往復動するコンプレッサがクランク1回転につき1回の吐出作用をなし,吸入行程が終了- 41 -してから過給通路の第3弁を開いて,その加圧混合気をシリンダ内へ追加導入するので,小容量のコンプレッサで実質的な吸気充填効率を高めることができるだけでなく,低速域でも充分な過給率が得られるという利点がある。」(明細書の2頁5行~17行)b 「第1図~第4図は,4つの動力気筒♯1~♯4がクランク軸1を介して1つのコンプレッサ(ポンプ気筒)2を駆動するようにした分離過給装置の実施例である。 コンプレッサ2は,…シリンダ部4と,シリンダ部4に摺動自由に収められたコンプレッサピストン5と,クランク軸1の回転運動をリンク6を介してピストン5の往復直線運動に変換するロッド7とを備える。」(明細書の3頁15行~4頁4行)c 「次に作用について説明する。 第3図は,クランク軸1の回転につれてリンク6がロッド7を引張り,ピストン5を下降させつつある状態を表し…」(明細書の5頁14行~17行)「第4図は,リンク6が下死点を通過して後,ピストン5を上昇させつつある状態を示す…」(同6頁13行~14行)「第5図,第6図は本考案の第2の実施例であり,ピストンロッド7の下端部に形成したタペット部27をクランク軸1に設けた偏心円カム28を介して上下動させるようにした例である。 …タペット部27は 「第5図,第6図は本考案の第2の実施例であり,ピストンロッド7の下端部に形成したタペット部27をクランク軸1に設けた偏心円カム28を介して上下動させるようにした例である。 …タペット部27は常時カム28に弾接している。 このため,ピストン5は,カム28の回動に応じたリフトの変化に追従して上下動し,第1図~第4図の装置と全く同様の作用をなす。」(同7頁19行~8頁9行)d 「第7図(a),(b)に示した実施例では,一組の円板29a,29bの対向する面に形成した円形の溝カム30と,この溝カム30と係合- 42 -するT字状の従動端部31を設けたロッド7とでカム機構を構成し,クランク軸1に対して偏心して設けた溝カム30の回転に応じて従動端部31が上下し,コンプレッサピストン5を駆動する。」(明細書の8頁13行~19行)「第8図に示した実施例では,クランク軸1に設けた偏心円(真円)カム32と,ロッド7の下端部に設けたコの字型のヨーク部33とでカム機構を形成し,カム32の平行接線で常時接触するヨーク部33を介してカム32のリフト変化をピストン5に伝え,これを強制的に往復道させる。」(同8頁末行~9頁5行)イ相違点2の容易想到性の有無について(ア) 本願発明の特許請求の範囲(請求項1)には,本願発明の「内燃機関の他の吸入路とは分離される少なくとも一の過給路(14)が,内燃機関の吸入の終了後に,内燃機関のシリンダヘッド(16)に構成されている行程の短い少なくとも一の過給バルブ(15)によって,4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているようにサイクルに合わせて開かれる」との構成のうち,「4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているよう 行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているようにサイクルに合わせて開かれる」との構成のうち,「4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているように」の意義について具体的に規定した記載はない。 また,本願明細書には,「4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているように」の意義について直接的に説明した記載はないが,一方で,「内燃機関は(小)圧縮機によって,例えば給気(Ladung)のうちの一部分のみが,内燃機関の作業サイクル用に前圧縮され,カム軸によって制御され行程の短い(往復動の小さい:kurzhubig)バルブの補助によって,分離した過給路を通って,内燃機関の吸入(行程)の終了後供給されるように過給される。 - 43 -従来の内燃機関の吸入路はその際保持(維持)される。」(段落【0015】),「4サイクル内燃機関はシリンダヘッド16を有する少なくとも一のシリンダおよび少なくとも一のカム軸2を備え,公知の方法で加圧循環潤滑および場合によっては過給機と共に稼動される。図1に示される小圧縮機は内燃機関内へ空気を送り込み,カム制御される過給バルブ15とサイクルに合わせて連携作動(協動)する。内燃機関のシリンダヘッド16に構成される行程の短い(往復動の小さい:kurzhubig)過給バルブ15の他の吸入路とは分離された少なくとも一の過給路14は吸入の終了後,4サイクル工程の吸入/過給行程が全体的または部分的に維持されるように制御される。」(段落【0028】),「この実施例の種類において吸入過程を過給路からの重なった過給流れによって乱されないようにせんがために,小圧縮機のシリンダヘッドにばね付勢によるバルブが備えられる。このバルブはサイクルに合っ 】),「この実施例の種類において吸入過程を過給路からの重なった過給流れによって乱されないようにせんがために,小圧縮機のシリンダヘッドにばね付勢によるバルブが備えられる。このバルブはサイクルに合った過給過程を導く。」(段落【0036】),「機関は吸入,過給,圧縮,作業(膨張仕事:Arbeit)および排出のサイクル行程(Takt)を有する。正確に言うと,過給行程(Ladetakt)とは,後過給行程(Nachladetakt)である。これに対して,従来の過給の場合吸入行程は過給行程によって置き換えられる。」(段落【0044】)との記載がある。 請求項1の文言と本願明細書の上記記載を総合すると,本願発明の「4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているように」とは,シリンダ内をピストンが上死点から下降しながら下死点に達するまでの間に,吸入バルブが開閉して吸気(吸入)する吸入行程あるいはその吸入の際に過給機による過給気の吸入が併せて行われる過給行程が,その吸入中に,小圧縮機の駆動による過給路からの過給気の供給と重なって乱されることのないように行程として維持されることを意味し,「全体的にまたは部分的に」とは,ピ- 44 -ストンが上死点から下死点に達するまでの間の行程全体又はその間の部分的な行程を意味するものと理解できる。 そして,本願発明は,吸入行程あるいは過給行程における「吸入の終了後に」,小圧縮機の駆動による過給を行うことによって,「4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているように」したものといえる。 しかるところ,前記アによれば,甲4ないし7には,過給装置付き内燃機関において,吸排気弁とは別の第3弁を吸気行程の終了後に所定期間開弁させて, 部分的に維持されているように」したものといえる。 しかるところ,前記アによれば,甲4ないし7には,過給装置付き内燃機関において,吸排気弁とは別の第3弁を吸気行程の終了後に所定期間開弁させて,吸気通路とは別の過給通路を介してシリンダ内に過給する構成が開示されていることが認められる。この構成は,内燃機関の吸入行程における吸入の終了後に,過給装置の駆動により第3弁を開いて過給路から過給を開始するものであって,吸入行程における吸入と過給装置の駆動による過給気の供給とが重なることはないから,過給路が過給バルブ(第3弁)によって,「4サイクル工程の吸入行程が行程として全体的に維持されているように」サイクルに合わせて開かれることを開示するものといえる。 また,本件出願の優先権主張日(平成17年9月5日)当時,内燃機関の吸入行程において,スーパーチャージャーなどの過給機により吸入と併せて過給を行うことは普通に行われていたものと認められる。 以上によれば,本件審決が周知技術1として認定したとおり,本件出願の優先権主張日当時,「圧縮機などの過給装置付き内燃機関において,内燃機関の他の吸入路とは分離される少なくとも一の過給路が,内燃機関の吸入の終了後に,4サイクル行程の吸入行程或いは過給行程が行程として維持されているようにサイクルに合わせて開かれる」ことは周知であったことが認められる。 このように内燃機関の吸入の終了後に過給バルブによって過給路が開- 45 -かれて過給を開始する技術的意義は,吸入バルブと過給バルブが同時に開かれていると,高圧の過給気が吸入バルブによって開かれた低圧の吸入路へ逆流して吸気重点効率ないし過給効果が低減することを防止することにあるものと理解できる。 (イ) 引用文献には,「過給バルブ26は例えば吸気行程の末 過給気が吸入バルブによって開かれた低圧の吸入路へ逆流して吸気重点効率ないし過給効果が低減することを防止することにあるものと理解できる。 (イ) 引用文献には,「過給バルブ26は例えば吸気行程の末期に短期間だけ開弁し,圧縮された空気を燃焼室20の供給してエンジンEの出力を向上させる。」(段落【0020】),「以上,本発明の実施例を詳述したが,本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。」(段落【0043】)との記載がある。この記載によれば,引用文献の単気筒4サイクルエンジンEにおいて,過給バルブ26が「吸気行程の末期に」開かれることは例示であって,「エンジンEの出力を向上させる」ために過給バルブ26が別のタイミングで開かれ得ること示唆するものといえる。 そして,吸入バルブと過給バルブが同時に開かれていると,高圧の過給気が吸入バルブによって開かれた低圧の吸入路へ逆流することがあることは技術常識であるといえるから,引用文献の単気筒4サイクルエンジンEにおいて,このような逆流により吸気充填効率ないし過給効果が低減することを防止するため,周知技術1を適用する動機付けがあるものと認められる。 そうすると,引用文献に接した当業者は,引用文献の単気筒4サイクルエンジンEにおいて周知技術1を適用して内燃機関の吸入の終了後に過給路を開くような構成とすることを容易に想到することができたものと認められる。また,内燃機関の吸入行程においてピストンが上死点から下死点に達するまでの間吸入を行い,下死点に到達した時点で吸入を終了し,又はその間の途中で吸入を終了することは,当該内燃機関に必要とされる吸気充填効率等を勘案して適宜選択される設計的事項である- 46 -ものと認められる。 したがって,引用文献に接した当業者は, 又はその間の途中で吸入を終了することは,当該内燃機関に必要とされる吸気充填効率等を勘案して適宜選択される設計的事項である- 46 -ものと認められる。 したがって,引用文献に接した当業者は,引用文献の単気筒4サイクルエンジンEにおいて周知技術1を適用して,「内燃機関の過給路が,内燃機関の吸入の終了後に,4サイクル工程の吸入行程或いは過給行程が行程として全体的にまたは部分的に維持されているようにサイクルに合わせて開かれる」構成を採用することを容易に想到することができたものと認められる。 ウ原告の主張について(ア) 原告は,引用発明に本件審決認定の周知技術1を適用することの動機付けが示されておらず,また,周知技術1には,相違点2に係る本願発明の構成のうち,「全体的にまたは部分的に維持」との部分が含まれていないから,引用発明に周知技術1を適用したからといって,相違点2に係る本願発明の構成となるわけではないなどとして,当業者が引用発明に周知技術1を適用し,相違点2に係る本願発明の構成に想到することは容易ではない旨主張する。 しかしながら,引用発明に周知技術1を適用する動機付けがあることは,前記イ(イ)で述べたとおりである。また,前記イ(イ)のとおり,内燃機関の吸入行程においてピストンが上死点から下死点に達するまでの間吸入を行い,下死点に到達した時点で吸入を終了し,又はその間の途中で吸入を終了することは当該内燃機関に必要とされる吸気充填効率等を勘案して適宜選択される設計的事項であるから,周知技術1には,相違点2に係る本願発明の構成のうち,「全体的にまたは部分的に維持」との部分が含まれていないことは,相違点2に係る本願発明の構成の容易想到性を否定する根拠にはならないというべきである。 したがって,原告の上記主張は理由がない うち,「全体的にまたは部分的に維持」との部分が含まれていないことは,相違点2に係る本願発明の構成の容易想到性を否定する根拠にはならないというべきである。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (イ) 次に,原告は,本願発明は,相違点2に係る構成だけで構成されて- 47 -いるのではなく,総合的な構成により把握されるべきものであるから,そもそも相違点2を孤立的に取り上げて判断すること自体が誤りであり,たとえ,引用発明に周知技術1を適用したとしても,それに基づくクランク制御される小圧縮機では,時間に関して厳密な後過給のための前制御機構(前制御用のバルブ)が本願発明に必要不可欠であるのに,本件審決においては,このことが全く触れられていない旨主張する。 しかしながら,原告が指摘する本願発明と引用発明との小圧縮機の駆動制御の形態(駆動形態)の相違については,本件審決は,相違点3として認定及び判断している。そして,内燃機関の過給路が開かれるタイミングの相違に係る相違点2と小圧縮機の駆動形態の相違に係る相違点3とは,技術内容としては別個のものであるから,本件審決が相違点2及び3を一括して判断せずに,個別的に判断したことが本願発明の進歩性の判断手法として不適切であるとはいえない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (2) 以上によれば,相違点2の容易想到性についての本件審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由2は理由がない。 3 取消事由3(相違点3の容易想到性の判断の誤り)について(1) 原告は,本件審決は,甲7を周知例として挙げて,「圧縮機の駆動形態として,カムを用いた駆動形態(カム制御)或いはクランク機構を用いた駆動形態(クランク制御)」は周知技術(周知技術2)であると認定した上で,甲7にクランク制御を採用した て挙げて,「圧縮機の駆動形態として,カムを用いた駆動形態(カム制御)或いはクランク機構を用いた駆動形態(クランク制御)」は周知技術(周知技術2)であると認定した上で,甲7にクランク制御を採用した駆動形態とカム制御を採用した駆動形態が示されているように,どちらの駆動形態を採用するかは,当業者が適宜選択し得る設計的事項であり,引用発明において,小圧縮機の駆動形態として,クランク制御による駆動形態に代えて,カム制御による駆動形態を採用し,「小圧縮機は専らカム制御され,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸の回転数をもって作動する」ように構成(相- 48 -違点3に係る本願発明の構成)することは,当業者が格別困難なく想到し得るものである旨判断したが,甲7記載の「偏心円カム」あるいは「溝カム」による制御は,偏心機構による制御であって,本願発明にいう「カム制御」に含まれず,甲7は,本願発明にいう「カム制御」される小圧縮機を開示するものではないから,本件審決における周知技術2の認定に誤りがあり,本件審決の上記判断も誤りである旨主張する。 ア周知技術2の認定の誤りの有無について(ア) 前記2(1)ア(エ)によれば,甲7には,①シリンダ部4と,シリンダ部4に摺動自由に収められたコンプレッサピストン5と,クランク軸1の回転運動をリンク6を介してピストン5の往復直線運動に変換するロッド7とを備えるコンプレッサ2(第3図及び第4図),②ピストンロッド7の下端部に形成したタペット部27をクランク軸1に設けた偏心円カム28の回動に応じたリフト量の変化に追従してピストン5を上下動させるようにしたコンプレッサ2(第5図及び第6図),③一組の円板29a,29bの対向する面に形成した円形の溝カム30と,この溝カム30と係合する に応じたリフト量の変化に追従してピストン5を上下動させるようにしたコンプレッサ2(第5図及び第6図),③一組の円板29a,29bの対向する面に形成した円形の溝カム30と,この溝カム30と係合するT字状の従動端部31を設けたロッド7とでカム機構を構成し,クランク軸1に対して偏心して設けた溝カム30の回転に応じて従動端部31が上下してピストン5を駆動するコンプレッサ2(第7図(a),(b)),④クランク軸1に設けた偏心円(真円)カム32と,ロッド7の下端部に設けたコの字型のヨーク部33とでカム機構を形成し,カム32の平行接線で常時接触するヨーク部33を介してカム32のリフト変化をピストン5に伝えてピストン5を駆動するコンプレッサ2(第8図)が開示されており,上記①ないし④のコンプレッサ2は,いずれも本願発明の「小圧縮機」に該当する。 そうすると,上記①のコンプレッサ2は,クランク制御を採用した駆動形態の小圧縮に当たるといえる。 - 49 -次に,乙1(「機械設計便覧(新版)」昭和61年3月25日新版9刷発行)には,「【4】円板カム(1)」の欄に,「円板カムは円板を偏心させて回転させるもので,偏心円カムとも呼ばれ,円弧カムのもっとも簡単な形のものである。直動アームと揺動アームとをそれぞれ円板カムに組合わせた直動平面座円板カム装置(図23・23)と揺動平面座円板カム装置(図23・24)とがある。」との記載があり,「図23・23」及び「図23・24」が図示されている。また,乙2(「よくわかる機構学」平成8年3月15日発行)には,「カム機構とは,滑りまたは転がり接触する対偶によって,カムと呼ばれる原動節と従動節の二つの機素を結合し,構成されたものである。」,「カム機構あるいはカムは,カムの形(平面形状や立体形状),従動節の形,原動節 は,滑りまたは転がり接触する対偶によって,カムと呼ばれる原動節と従動節の二つの機素を結合し,構成されたものである。」,「カム機構あるいはカムは,カムの形(平面形状や立体形状),従動節の形,原動節と従動節の組合せ方など,種々の方法で分類が可能である。」との記載があり,「図7・2 板カムの種類」中に,「(d) 円板カム」が図示されている。乙1及び2の上記記載事項によれば,本件出願の優先権主張日当時,「カム」には,円板を偏心させて回転させる円板カムないし偏心円カムが含まれることは技術常識であったものと認められる。 そうすると,上記②ないし④のコンプレッサ2の「偏心円カム28」,円形の溝カム30及び偏心円(真円)カム32は,いずれも「カム」に当たり,上記②ないし④のコンプレッサ2は,カム制御を採用した駆動形態の小圧縮に当たるといえる。 以上のとおり,甲7には,クランク制御を採用した駆動形態の小圧縮とカム制御を採用した駆動形態の小圧縮が開示されていることが認められる。 これによれば,本件審決が周知技術2として認定したとおり,本件出願の優先権主張日当時,「圧縮機の駆動形態として,カムを用いた駆動形態(カム制御)或いはクランク機構を用いた駆動形態(クランク制御)」)- 50 -は周知であったことが認められる。 (イ) 原告は,これに対し,「カム」に円板を偏心させて回転させるものが含まれるというのは,機械の一般用語としてのみ妥当するにすぎないものであり,4サイクル内燃機関に関する技術分野では妥当せず,同技術分野では「カム」とは,基本的に4サイクルの吸排気バルブを作動させるものであって,これらのバルブの厳密な制御のために,ピストンの往復サイクルに対し,所定のタイミングをもって弁開閉を行うよう,所定のリフト量を有するカム山が所定の位 イクルの吸排気バルブを作動させるものであって,これらのバルブの厳密な制御のために,ピストンの往復サイクルに対し,所定のタイミングをもって弁開閉を行うよう,所定のリフト量を有するカム山が所定の位相(角度位置)をもってシャフトに設けられているものをいうことが,技術常識であるから(甲18),本願発明にいう「カム」は,このようなカムを意味するものであり,甲7記載の「偏心円カム」あるいは「溝カム」は,本願発明にいう「カム」に含まれず,「偏心円カム」あるいは「溝カム」による制御は,偏心機構による制御(偏心制御)であって,本願発明にいう「カム制御」に含まれないから,甲7は,本願発明にいう「カム制御」される小圧縮機を開示するものではない旨主張する。 そこで検討するに,本願発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載中には,「小圧縮機」の「カム制御」に用いられる「カム」の具体的形状等を特定した記載は存在しない。また,本願明細書には,「カム」の形状を特定のものに限定したり,あるいは特定の形状を除外する旨の記載は存在しない。 次に,原告が指摘する甲18(「バイクのメカ入門」)には,「回転する軸に,その軸とは中心がずれた円や凸凹形状が設けられたものをカムシャフトという。軸が回転すると,カム部の外径が変化するから,そこにロッド類を当てておけば,規則正しい往復運動などを取り出せる。 これは様々な機械に使われている。しかしエンジン関係でカムシャフト,- 51 -あるいは単にカムといえば,たいていは4ストの吸排気バルブを作動させるもののこと。カムの形状次第で,ピストンがどの位置にあるときに,どんなタイミングでどのくらい,吸排気バルブが開くか,あるいは閉じるかが決まる。エンジンの性格を決定付ける部品だ。」,「吸排気バルブの開閉は,カム部の断面形状で決まる。そ ンがどの位置にあるときに,どんなタイミングでどのくらい,吸排気バルブが開くか,あるいは閉じるかが決まる。エンジンの性格を決定付ける部品だ。」,「吸排気バルブの開閉は,カム部の断面形状で決まる。その作動の様子を,右ページの直動式のバルブ機構で考えてみよう。・・・バルブが開き始める,あるいは閉じ終えるタイミング=バルブタイミングは,カム部の断面形状で決まる。バルブが最も押し下げられ大きく開く量=最大リフト量は,カム部断面の出っ張り量で決まる。」(以上,60頁),「カム山が右側のように高いほど,バルブのリフト量は多くなるが,回転は上げにくくなる。急激に動かすからだ。」(61頁)との記載があり,カム山を有する形状のカムが図示(61頁)されている。この記載は,カム山を有する形状のカムが吸排気バルブを作動させる4サイクル内燃機関の代表的な部品であることを述べるものではあるが,吸排気バルブ以外の他の部位にカムが用いられる場合について言及するものではなく,圧縮機を駆動する「カム」の形状を吸排気バルブ用のカムと同じ形状のものに限定して理解すべきであることを示唆する記載はない。 そうすると,甲18の上記記載に基づいて,4サイクル内燃機関に関する技術分野において,圧縮機の駆動を制御するカムは,吸排気バルブ用のカムと同じ形状のものに限定され,円板を偏心させて回転させる円板カムないし偏心円カムを含まないとする技術常識があったものと認めることはできない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。 さらに,原告は,小圧縮機が「偏心円カム」あるいは「溝カム」により制御される場合の制御曲線は緩勾配のサイン形状の制御曲線となり,クランク制御の場合と同じであり,内燃機関の後過給をサイクルに合わせて(時間に関して厳密に)制御を実行することはできないこ- 52 -と される場合の制御曲線は緩勾配のサイン形状の制御曲線となり,クランク制御の場合と同じであり,内燃機関の後過給をサイクルに合わせて(時間に関して厳密に)制御を実行することはできないこ- 52 -とを「偏心円カム」あるいは「溝カム」による制御が本願発明にいう「カム制御」に含まれないことの理由として挙げるが,前記のとおり,カム部の断面形状はその制御目的によって決まるのであり,制御曲線がサイン形状の制御曲線になるからといって直ちに内燃機関の後過給を4サイクル行程のサイクルに合わせて制御を実行することができないものとは認めることはできない。 以上によれば,甲7記載の「偏心円カム」あるいは「溝カム」による制御が本願発明にいう「カム制御」から除外すべき理由はないというべきであるから,甲7は,本願発明にいう「カム制御」される小圧縮機を開示するものではないとの原告の上記主張は,理由がない。 (ウ) したがって,本件審決における周知技術2の認定の誤りをいう原告の主張は,理由がない。 イ相違点3の容易想到性の有無について前記ア(ア)認定のとおり,本件出願の優先権主張日当時,「圧縮機の駆動形態として,カムを用いた駆動形態(カム制御)或いはクランク機構を用いた駆動形態(クランク制御)」(周知技術2)は周知であったものである。 そして,回転運動を往復運動に変換する機構としてカム機構及びクランク機構は慣用技術であって,圧縮機において,「カムを用いた駆動形態(カム制御)」又は「クランク機構を用いた駆動形態(クランク制御)」のいずれかを採用し,それを具体的に適用することは当業者が適宜選択し得る設計的事項であるというべきであるから,引用文献に接した当業者は,引用発明において,小圧縮機の駆動形態として,クランク制御による駆動形態に代えて,周知のカム制 に適用することは当業者が適宜選択し得る設計的事項であるというべきであるから,引用文献に接した当業者は,引用発明において,小圧縮機の駆動形態として,クランク制御による駆動形態に代えて,周知のカム制御による駆動形態を採用し,「小圧縮機は専らカム制御され,内燃機関の少なくとも一のシリンダのサイクルに合った過給のためにカム軸の回転数をもって作動する」ように構成(相違点3に- 53 -係る本願発明の構成)することを容易に想到することができたものと認められる。 (2) 以上によれば,相違点3の容易想到性についての本件審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由3は理由がない。 4 取消事由4(手続違背)について(1) 原告は,①審査官作成の平成23年11月29日付けの前置報告書(甲15)では,平成23年5月24日付けの拒絶査定において周知例として引用された特開平11-44289号公報(甲2)の引用が撤回された上で,上記前置報告書において,新たな周知例として特開昭55-137315号公報(甲3),甲4が引用されて反論が行われているが,周知技術を認定するための周知例といえども,新たな文献の引用であるため,前置審査において審判請求時の補正後の出願について拒絶査定の理由と異なる理由を発見した場合に当たり,拒絶理由通知をすべき必要性があった,②本件審決は,甲4のほか,追加して引用した甲5ないし7に基づ周知技術1を,初めて引用した甲7に基づいて周知技術2を認定した上で,相違点2及び3の容易想到性の判断を行っているが,周知例といえども,新たな文献の引用であるため,拒絶査定不服審判において拒絶査定の理由と異なる理由を発見した場合に当たり,拒絶理由通知をすべき必要性があったにもかかわらず,本件の前置審査及び本件審判手続において拒絶理由通知がされなかったか め,拒絶査定不服審判において拒絶査定の理由と異なる理由を発見した場合に当たり,拒絶理由通知をすべき必要性があったにもかかわらず,本件の前置審査及び本件審判手続において拒絶理由通知がされなかったから,本件審決には,特許法163条2項において準用する同法50条及び同法159条2項において準用する同法50条の規定に違反する手続違背がある旨主張する。 しかしながら,周知技術1は,「圧縮機などの過給装置付き内燃機関において,内燃機関の他の吸入路とは分離される少なくとも一の過給路が,内燃機関の吸入の終了後に,4サイクル行程の吸入行程或いは過給行程が行程として維持されているようにサイクルに合わせて開かれる」というものであり,周知技術2は,「圧縮機の駆動形態として,カムを用いた駆動形態(カム制- 54 -御)或いはクランク機構を用いた駆動形態(クランク制御)」というものであって,いずれも4サイクル内燃機関に関する技術分野の当業者にとって基礎的な事項として周知性が高いものということができる。 そうすると,本件の前置審査及び本件審判手続において改めて追加した周知例を示して拒絶理由を通知しなかったからといって,原告にとって不意打ちとなるものではなく,原告の意見書の提出や補正の機会を奪われたということもできない。 したがって,本件の前置審査及び本件審判手続において周知例の追加に関して改めて拒絶理由を通知する必要性があったものとは認められないから,原告の上記主張は,採用することができない。 (2) 以上によれば,本件の前置審査及び本件審判手続において原告主張の手続違背があったものとは認められないから,原告主張の取消事由4は理由がない。 5 結論以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法 主文 主張の手続違背があったものとは認められないから,原告主張の取消事由4は理由がない。 結論以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。 したがって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官富田善範 裁判官大鷹一郎 裁判官齋藤巌 (別紙4) (別紙5) (別紙6)
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