昭和57(う)799 収賄被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和60年2月19日 大阪高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      被告人を懲役一年六月に処する。      但し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。      被告人から金一一七万九、一〇〇円を追徴

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判決文本文18,873 文字)

主文 原判決を破棄する。 被告人を懲役一年六月に処する。 但し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。 被告人から金一一七万九、一〇〇円を追徴する。 原審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。 本件各公訴事実中、昭和四二年一〇月一九日付起訴状記載公訴事実第一の(一)及び同年一一月二二日付追起訴状記載公訴事実第一の(五)については、被告人は無罪。 理由 本件控訴の趣意は、弁護人三木今二及び同前堀政幸の共同作成にかかる昭和五七年七月三一日付及び同年八月四日付各控訴趣意書並びに控訴趣意補充書記載のとおりであり、これに対する答弁は、大阪高等検察庁検察官検事大谷晴次作成の答弁書記載のとおりであるから、これらを引用する。 控訴趣意中、原判示第一の事実に関する不告不理の原則違反の主張について。 論旨は、原判示第一の事実について、原判決は、原判示五〇万円の賄賂たる趣旨を、「A1とBらとの同区a町b番地等所在の田合計約一万三、六二〇平方メートルについての転用目的のための売買に関する京都府知事宛許可申請に対するC農業委員会の意見進達について、右許可申請を一旦取下げて該土地を二分し二口に分けて再申請するよう指導を受ける等有利かつ便宜な取扱いを受けたことの謝礼及び将来も同様に有利かつ便宜な取扱いを受けたい趣旨」であつたと認定判示しているが、検察官が主張する本件賄賂の趣旨は、原審検察官作成の冒頭陳述書記載のとおり、「A1は、番号2(Bほか四名所有のa町b乃至c番地所在の田六、九六七平方メートル)、3(Dほか四名所有のa町d乃至eのf番地所在の田六、六五五平方メートル)については当初これらを一括し、A1一名の申請書をもつて昭和四〇年九月三〇日申請したが、該農地 の田六、九六七平方メートル)、3(Dほか四名所有のa町d乃至eのf番地所在の田六、六五五平方メートル)については当初これらを一括し、A1一名の申請書をもつて昭和四〇年九月三〇日申請したが、該農地は転用許可が原則として認められない第一級農地であること、三千坪以上の住宅地造成については、住宅地造成事業に関する法律(以下住造法と略す。)の適用があり、右認可の見透しがないと農地法第五条の許可もできないことの事情があつたので、同年一〇月五日の右農業委員会の本会議において許可相当の意見進達の決議がなされず、地元の農業委員において再検討することとなつた。その後被告人はA1に右申請書を取下げ、同年一〇月三〇日番号2、3に分割し夫々三千坪以下となし、形式上住造法の適用がないようにした申請をなすことの指導をなしたこと、同年一一月一一日同農業委員会の本会議において、右農地を第一級農地から転用の許される第二級農地に認定替をなし、同会事務局において、関係官庁と右認定替をなすについて打合せを遂げた上で、許可相当の意見進達をなす旨の決議をなしたこと等で特に尽力したことから、破格の五〇万円という大金の供与を受けるに至つたものである。」というものであるから、原判決は、検察官の主張とは異なる賄賂の趣旨を認定判示したものであり、この点で原判決には、刑事訴訟法三七八条三号後段にいう審判の請求を受けない事件について判決をした違法がある、というのである。 そこで、所論にかんがみ考察するに、本件賄賂の趣旨について、原判決が認定判示するところ及び原審検察官が冒頭陳述において主張するところは、所論の指摘するとおりであるが、そもそも本件に関する公訴事実(追起訴状記載公訴事実第一の(一))は、「被告人は、昭和四〇年一一月中旬頃京都市g区h町i番地の自宅において、A1から、A2を介し、 は、所論の指摘するとおりであるが、そもそも本件に関する公訴事実(追起訴状記載公訴事実第一の(一))は、「被告人は、昭和四〇年一一月中旬頃京都市g区h町i番地の自宅において、A1から、A2を介し、A1らとBらとの同区山田六の坪町b番地等所在の田合計一三、六一九・九平方米についての転用目的のための売買に関する京都府知事宛許可申請に対する前記農業委員会の意見進達等について有利かつ便宜な取扱を受けたことの謝礼及び将来も同様有利かつ便宜な取扱を受けたい趣旨で供与されるものであることを諒知しながら、現金五〇万円の供与を受けたものである。」というのであり、これによつてみると、原審検察官の冒頭陳述における前記主張は、右公訴事実にいう「有利かつ便宜な取扱を受けたこと」に該当するものとして二つの具体的事実を主張しているものであるところ、原判決は、冒頭陳述で主張されているその二つの具体的事実のうち一つを採用し、これによつて本件金員が公訴事実にいうとおり「有利かつ便宜な取扱いを受けたことの謝礼」でもあつた旨認定判示しているものであり、決して公訴事実と異なる賄賂の趣旨を認定判示しているものでないことは、全く疑問の余地がない。したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は理由がない。 控訴趣意中、原判示第九の事実に関する不告不理の原則違反の主張について。 論旨は、原判示第九の事実について、原判決は、原判示の二〇万円の賄賂たる趣旨として、「A1が代表者であるE株式会社とF他九名との同区j町kのo等所在の田合計一万三六七三平方メートルについての転用目的のための売買に関する京都府知事宛許可申請に対するC農業委員会の意見進達について、その申請の方式として住造法の適用を受けることにするかどうかの検討、京都市役所住造法担当係員に対する農業委員会としての意見陳述等有利かつ便 都府知事宛許可申請に対するC農業委員会の意見進達について、その申請の方式として住造法の適用を受けることにするかどうかの検討、京都市役所住造法担当係員に対する農業委員会としての意見陳述等有利かつ便宜な取扱いを受けたことの謝礼」の趣旨をも含んでいた旨認定判示しているが、本件金員がこのような趣旨で供与されたことは起訴状に全く書かれていないから、原判決には、審判の請求を受けない事件について判決をした違法がある、というのである。 そこで、所論にかんがみ考察するに、原判示第九の事実に関する公訴事実(昭和四二年一〇月一九日付起訴状記載公訴事実第一の(三))には、賄賂の趣旨として、「A1とGの同区mnのl番地所在の田一、三七八平方米等についての転用目的のための売買に関する京都府知事宛許可申請に対する意見進達等について、有利かつ便宜な取扱を受けたことの謝礼及び将来同様有利かつ便宜な取扱を受けたい趣旨」と記載してあるだけで、原判示のような趣旨を具体的に記載していないことは所論のとおりである。しかしながら、右のように公訴事実が「・・・・意見進達等について」と記載していることに徴すると、公訴事実も、本件賄賂の趣旨を公訴事実中に具体的に記載している点に限定していないことが明らかであり、しかも、公訴事実が右の「等」という言葉で示した事柄の具体的内容が前記原判示のとおりであることは、原審検察官が冒頭陳述において具体的に明示しているところである。 したがつて、原判決は、公訴事実の範囲内で認定判示しているものであつて、これを公訴事実から逸脱しているとして非難する所論は全く当たらない。原判決に所論の違法はなく、論旨は理由がない。 控訴趣意中、理由不備ないし理由齟齬の主張について。 論旨は、原判示第三、第六、第七及び第九の各事実について、要するに、原判決の挙示する関係 らない。原判決に所論の違法はなく、論旨は理由がない。 控訴趣意中、理由不備ないし理由齟齬の主張について。 論旨は、原判示第三、第六、第七及び第九の各事実について、要するに、原判決の挙示する関係証拠によつては、原判示事実を認定するに十分でないから、原判決には理由不備ないし理由齟齬の違法がある、というにあると解される(なお、所論のうち、原判決の挙示しない証拠を含めて、証拠と原判決の認定事実との間にくいちがいがあるという部分は、結局事実誤認の主張に帰するから、ここでは判断を加えない。)。 そこで、所論にかんがみ、記録及び原審証拠を調査し、当審における事実取調の結果をも参照して考察するに、原判決は、右の各事実について、それぞれ、原判示事実全体についてこれに沿う証拠を挙示しており、これらの証拠によつて原判示事実を認定したものであると解されるから、原判決に所論のような違法はない。したがつて、論旨は理由がない。 控訴趣意中、事実誤認の主張について。 論旨は、原判示全事実について、それぞれ原判決の事実誤認を主張するので、所論にかんがみ、記録及び原審証拠を調査し、当審における事実取調の結果をも参酌して、次のとおり判断する。 (一) 原判示第一の事実について。 論旨は、被告人は、A1に対し職務上原判示のような指導をした事実はなく、また、同人から原判示のように現金五〇万円を受領したこともない、というのである。 しかしながら、原判示のころ、同判示の趣旨のもとに被告人に供与すべく、現金五〇万円をA2に預け、後日同人から被告人に渡したという報告を受けた旨の原審証人A1の証言は、その内容が自然で具体性に富み、入念な反対尋問によつても崩れることなく維持されていることなどに徴し、また、A1の検察官に対する昭和四二年一一月一日付供述調書並びにA2の検察官に対 証人A1の証言は、その内容が自然で具体性に富み、入念な反対尋問によつても崩れることなく維持されていることなどに徴し、また、A1の検察官に対する昭和四二年一一月一日付供述調書並びにA2の検察官に対する同年一〇月一二日付及び同年一一月一〇日付各供述調書は、いずれも右証言に沿うもので、相互間でもよく合致していることなどに徴し、所論にかかわらずいずれも信用性を認めるに十分であり、これらを含め原判決の挙示する関係証拠によれば、所論の点に関する原判示の事実認定は優にこれを肯認することができる。そして、本事実に関する原審証人A2の証言は、明らかに言い逃がれに終始している内容のもので到底措信できるものではなく、また、被告人の原審及び当審各公判廷における各供述のうち右認定に反する部分は、前記各証拠と対比して措信できず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。所論にかんがみ付言するに、所論は、「A1が本件農地についての許可申請を原判示のように一旦取下げたのち二口に分けて再申請したのは、一口が三千坪を超える場合には、住造法により、農業委員会を通じて転用目的売買についての知事の許可を取得する以外に、市長から宅地造成の許可を得なければ宅地造成に着手できないので、右住造法の適用を免れるためにしたものであり、被告人は、右A1にそのような住造法の適用関係を教えたことはあるけれども、それは親しい友人として私的な立場でしたものにすぎず、そもそも、右往造法の関係は、農業委員会委員としての被告人の職務とは何ら関わりのないことである。」旨主張する。しかしながら、関係証拠によれば、A1は、宅地造成事業を行なうため、昭和四〇年六月下旬ころ本件農地を所有者から買取り、手付金を支払うとともに、転用申請のため農業委員会へ出す計画書や申請書の準備にとりかかり、同年九月下旬C農業委員会事 は、宅地造成事業を行なうため、昭和四〇年六月下旬ころ本件農地を所有者から買取り、手付金を支払うとともに、転用申請のため農業委員会へ出す計画書や申請書の準備にとりかかり、同年九月下旬C農業委員会事務局に赴いて事前指導も受けたが、許可が早期におりるか否かが、事業が軌道にのるか否かに関わる重大事であつたことから、そのころ、右農業委員会の会長である被告人に会い、早く許可が出るよう委員会で図らつてほしい旨依頼し、被告人から「一応努力してみましよう、申請を出しておきなさい。」と言われ、同月三〇日付で農地法五条の規定による許可申請書を提出したこと、及び、同年一〇月中旬ころに至り、被告人から呼び出しを受け、C農業委員会の会長室において、被告人から、「本件の田は四、二〇〇坪あり、三、〇〇〇坪を超える場合は、宅造法の適用を受けることになり、市の宅造課の検査を受けなければならず、面倒になるので、この申請を二つに分けて二人の名義人にし、三、〇〇〇坪以下になるようにして申請をしなおすように。」との指導を受け、これに従つて先きの申請を取下げたのち、二口に分けて再申請をしたことなどの事実が認められるところ、住造法の適用がある場合に、同法に基づく宅地造成の許可に関する手続は農業委員会の直接関わるところでないことは、所論のとおりであるにしても、被告人は、右認定のとおり、A1をして住造法の適用を免れさせるため、農業委員会に対する農地法五条の定める許可申請の方法自体について指導しているのであつて、かかる指導は、まさしく農業委員会の委員あるいは同会の会長としての被告人の職務に関する事項にほかならず、被告人がA1に対し右のような指導をした動機が、同人と個人的に親しかつたことにあつたとしても、それは何ら右の点に消長を来たすものではない。所論は到底採用することができない。したが 事項にほかならず、被告人がA1に対し右のような指導をした動機が、同人と個人的に親しかつたことにあつたとしても、それは何ら右の点に消長を来たすものではない。所論は到底採用することができない。したがって、原判決に所論の事実誤認はなく、論旨は理由がない。 (二) 原判示第二の事実について。 論旨は、被告人は、原判示の日時場所において、同判示のA3から菓子を貰ったが、その日の夕方になつてその菓子箱に金封が入つているのに気付き、右金封はそのまま返還するつもりで同人と会う機会を待つているうち、背広の内ポケツトに入れたまま失念してしまい、本件で保釈後、思い出して探してみると、当時着ていた背広の内ポケツトに元のままあつたので、原審第八回公判期日にそれを裁判所に提出しており、したがつて、被告人には、収賄の犯意がなかつたことはもとより、本件金員を自己のものとして取得してもいない、というのである。 そこで、検討するに、原判決挙示の関係証拠中被告人の捜査官に対する各供述調書及び原審第八回公判調書中の原審証人A3の供述部分は、いずれも一応原判示に沿うものであるが、被告人は、原審及び当審各公判廷において、一貫して所論に沿う供述をしているところ、原審証人A3は、被告人方に午前九時半ころ菓子折を持つて行つた際、金封は包み紙の間にはさんであつたが、端は出ていたので、菓子折だけではないことは被告人も見ていたと思う旨証言しているけれども、右証言も、夕方まで金封に気付かなかつたという被告人の供述を虚偽であると断定するには十分でなく、また、被告人の捜査官に対する供述調書には、受取つた金をその後どうしたかについては、「返戻するつもりで持つていましたところ、何かの時に使つたのかもしれません。」(司法警察員に対する昭和四二年一〇月一一日付供述調書)とか、「この金をどうしたか全 つた金をその後どうしたかについては、「返戻するつもりで持つていましたところ、何かの時に使つたのかもしれません。」(司法警察員に対する昭和四二年一〇月一一日付供述調書)とか、「この金をどうしたか全くわからない。従つて私がこれを使つてしまったと思われてもしかたのない状態である。」(検察官に対する同月一六日付供述調書)とか述べていて、この点はむしろ被告人の公判段階での供述の真実性を窺わせるものであり、してみると前記の自供も必ずしも信用し難いものといわなければならず、他に被告人が本件の三万円を自己のものとして取得したこと及び被告人に収賄の犯意があつたことを認めるべき証拠は存しない。しかも、原審で取調べた金封一袋(当裁判所昭和五七年押第二五六号の一)、原審が行なつた右金封の検証結果及び原審証人A4の証言によれば、右の金封は、前記A3が本件の現金三万円を入れて被告人方に菓子箱と共に持つて行つた物に相違なく、被告人が原審第八回公判期日に提出した際、それは未開封のままであり、右検証において開封したところ、中に折り目のない新札の一万円札が三枚入つていたことが認められ、右認定の事実は被告人の前記供述を強く裏付けるものであるといわなければならない。以上を総合すると、原判示第二事実については、本件全証拠をもつてしても、被告人の公判段階での弁解を排斥して収賄罪の成立を認めるには十分でないから、その成立を認めた原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるといわなければならない。 論旨は理由がある。 (三) 原判示第三の事実について。 論旨は、被告人は、原判示のころ、原判示のA1及びHの両名からIで酒食の提供を受けたことはあるが、それは、原判示のような趣旨ではなく、右両名がそれぞれ経営する建設会社の行なつていた建設工事が完成したので、それを祝う 、原判示のころ、原判示のA1及びHの両名からIで酒食の提供を受けたことはあるが、それは、原判示のような趣旨ではなく、右両名がそれぞれ経営する建設会社の行なつていた建設工事が完成したので、それを祝う「足洗い式」なる行事に招かれ、あるいは少なくともその行事に招かれたと信じて、これに応じただけであり、したがつて、収賄の犯意はなかつたのであり、また、一人当りの饗応額も、原判示の約一万二、一〇〇円ではなく、約六、〇〇〇円である、というのである。 しかしながら、原判決の挙示する原審証人A1の証言並びに同人、A5、A2及びHの検察官に対する各供述調書は、所論にかかわらず信用性を認めるに十分であり、これらを含め原判決の挙示する関係証拠によれば、所論の点に関する原判示の事実認定は優にこれを肯認することができ、原審証人A2の証言並びに被告人の原審及び当審各公判廷における各供述のうち右認定に反する部分は措信し難く、他に右認定を動かすに足る証拠はない。所論にかんがみ付言すれば、本件Iでの饗応接待が所論のような「足洗い式」の行事としてなされたものではなく、また、被告人においてそのような行事であると信じるような状況もなかつたことは、原審証人A1の証言及び前掲各供述調書によつてまことに明白である(右A1に対する原審での証人尋問において、被告人の側からこの点を問い質すことさえされていない。)。また、饗応額については、原判決の挙示する関係証拠によれば、要した費用がIでの飲食等の代金二万九、一四六円と、芸妓花代三万一、四六五円を合わせた六万〇、六一一円であること、出席者は、被告人、A1、H、A2、A5のほか、「J」が派遣した芸妓四名と被告人が給仕をさせるために同伴したバーのホステス一名の合計一〇名であることが認められるが、右の芸妓とホステスは給仕のために来ていたもの 告人、A1、H、A2、A5のほか、「J」が派遣した芸妓四名と被告人が給仕をさせるために同伴したバーのホステス一名の合計一〇名であることが認められるが、右の芸妓とホステスは給仕のために来ていたものにすぎないから、一人当りの饗応金額は、前記の六万〇、六一一円を給仕者を除いた五名に按分した金額、すなわち原判示のとおり約一万二、一〇〇円であると認定するのが相当であり、この点の所論も当たらない。したがつて、原判決に所論の事実誤認はなく、論旨は理由がない。 (四) 原判示第四の事実について。 論旨は、被告人は、原判示の日時場所において、Hから、A2を介して、現金二〇万円を受取つたことはあるが、それは、原判示のような趣旨でではなく、HがK百貨店に支払うべきダイヤモンドの代金として預つたものにすぎない、というのである。 しかしながら、原判決の挙示する関係証拠によれば、所論の点に関する原判示の事実認定は優にこれを肯認することができ、被告人の原審及び当審各公判廷における各供述のうち右認定に反する部分は措信できず、原審証人A2の証言も右認定を動かすに足らず、他に右の認定に反する証拠はない。所論にかんがみ付言すると、被告人は、原審及び当審各公判廷において所論に沿う供述をし、また原審証人A6の証言によれば、昭和四一年五月か六月ころ、当時K百貨店の店員であつた右A6が、被告人に対し、やがてK百貨店が政府から引受けて売出す予定になつていた接収ダイヤについて、買わないかと勧誘したこと、及びその後それらダイヤが売出された際被告人もこれを購入した事実が認められるが、他方、原審で取調べた大蔵省理財局国有財産審査課長作成の照会回答書謄本(検甲一五六号証)及び物品売買契約書四通(検乙三九ないし四二号証)によれば、K百貨店が右接収ダイヤを売り出したのは昭和四一年一一月四日 審で取調べた大蔵省理財局国有財産審査課長作成の照会回答書謄本(検甲一五六号証)及び物品売買契約書四通(検乙三九ないし四二号証)によれば、K百貨店が右接収ダイヤを売り出したのは昭和四一年一一月四日以降であることも明らかであり、これらの事実によつてみると、同年六月二七日ころである本件当時は、いまだダイヤの売り出しが将来に予定されているにすぎない段階であり、もとより買うべきダイヤも定まらず、その代金額も分からなかつたはずであるから、他に格別の事情も認められないのに、このような時点で被告人がHからダイヤの代金を預かるなどというのは、まことに不自然であり、このことと、被告人が、原審における冒頭手続では本件二〇万円の受領自体を否定し、原審における審理の後半に至つてはじめて所論に沿う弁解供述をしたものであることなどを併わせて考えると、被告人のかかる供述は信用し難く、これに基づく所論は到底採用することができない。したがつて、原判決に所論の事実誤認はなく、論旨は理由がない。 (五) 原判示第五の事実について。 論旨は、被告人が、原判示の日時場所において、A1から、A2を介して現金二〇万円を受取つたことはあるが、これは、原判示のような趣旨でではなく、被告人のA1の経営するE株式会社に対する融資の利息ないし謝礼金及び被告人が同会社の相談役顧問として常々尽力貢献していたことに対する中元時における儀礼的挨拶のしるしの趣旨で受取つたものにすぎず、したがつて、被告人に収賄の犯意はなかつた、というのである。 しかしながら、原判決の挙示する関係証拠によれば、所論の点に関する原判示の事実認定は優にこれを肯認することができ、被告人の原審及び当審各公判廷における各供述のうち右認定に反する部分は措信できず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。所論にかんがみ付言すれば、 る原判示の事実認定は優にこれを肯認することができ、被告人の原審及び当審各公判廷における各供述のうち右認定に反する部分は措信できず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。所論にかんがみ付言すれば、原判決の挙示する関係証拠及び原審で取調べたE株式会社の帳簿類(検乙第一九ないし第二二号証、同第二五ないし第二七号証)によれば、被告人が右会社に融資したことのあるのは所論のとおりであるが、その融資状況は、遠い以前のものを除くと昭和四一年三月三一日に一、〇〇〇万円、同年九月二七日に一、五〇〇万円、昭和四二年三月二九日に一、五〇〇万円の三回だけであつて、これらについてはその都度右会社が被告人の要求どおりの金利を支払つてあり、本件当時である昭和四一年六、七月当時には、新たに融資を受けたことはなく、また利息等として被告人に支払うべきものは何もなかつたことが認められるから、本件の金員が融資に対する利息等であつたという所論は採用できず、また、関係証拠によれば、被告人は右会社の相談役とか顧問にはなっていなかつたことが明らかであるから、そういう地位にあつたことを前提とする所論も採用することは困難である。したがつて、原判決に所論の事実誤認はなく、論旨は理由がない。 (六) 原判示第六の事実について。 論旨は、本件の五万円は、本件に先立つ昭和四一年七月九日に、原判示のA7が被告人に贈賄しようとしたが、被告人において受領を拒否して返却したところ、原判示のA8が、右A7の妻の弟A9からこれを貰い受けたうえ、企画中のLシヨツピングセンターの建設に被告人が尽力したことに対する謝礼として被告人に贈つたものであり、したがつて、原判示のようなM株式会社からの金ではなく、もとより賄賂ではない、というのである。 しかしながら、原判示の認定に沿う原審証人A9、同A7及び同A8の各 礼として被告人に贈つたものであり、したがつて、原判示のようなM株式会社からの金ではなく、もとより賄賂ではない、というのである。 しかしながら、原判示の認定に沿う原審証人A9、同A7及び同A8の各証言は、いずれも所論にかかわらず信用性を認めるに十分であり、これらの各証言を含め原判決の挙示する関係証拠によれば、所論の点に関する原判決の事実認定は優にこれを肯認することができる。所論にかんがみ付言すると、本件の五万円が、本件より少し前に一度被告人に原判示と同様の賄賂の趣旨で贈られようとされたが、被告人において受領を拒否して返却したことは所論のとおりである。しかし、右返却された五万円が、右A7、A9及びA8の協議の結果、原判示の日時場所において、右A7から右A8を介し、原判示の趣旨で再度被告人に渡され、被告人も右趣旨を諒知して受領したものであることもまた前記関係証拠によつて明らかであり、できるだけ被告人に有利な証言をしようとする態度の窺える原審証人A8でさえ、本件の五万円が所論のシヨツピングセンターに関して渡した金であることは全く述べていないことに徴すると、所論に沿う被告人の原審及び当審各公判廷における各供述は到底措信できるものではなく、他に前記の認定を動かすに足る証拠は存しないから、原判決に所論の事実誤認はなく、論旨は理由がない。 (七) 原判示第七の事実について。 論旨は、被告人が、原判示の日時場所において、同判示のA10から現金五万円を受取つたことはあるけれども、原判示のような趣旨で受取つたのではなく、右の金は、右A10が原判示のNら開墾団の者から贈られたもので、右A10自身の金であり、それを被告人が、A10に頼まれ、同人の旅行費用の一部として預つたものにすぎない、というのである。 そこで、検討するに、原判決の挙示するA10、O及ビ 者から贈られたもので、右A10自身の金であり、それを被告人が、A10に頼まれ、同人の旅行費用の一部として預つたものにすぎない、というのである。 そこで、検討するに、原判決の挙示するA10、O及ビNの検察官に対する各供述調書の内容は、いずれも原判示に沿うものであり、また、右Nら原判示の開墾者十数名が、開墾団を解散するにあたり、原判示の趣旨で被告人に五万円を贈ることを取決め、その五万円を、被告人に渡してもらうべく、右A8を介して右A10に預けたことは証拠上疑問の余地がなく、これらによつてみると、原判示の事実認定は、これを肯認すべきもののように思われないではない。しかしながら、当裁判所は、以下に述べる理由により、被告人に収賄の犯意があつたと認めるのを躊躇せざるをえない。すなわち、被告人は、捜査段階以来、一貫して論旨に沿う供述をするとともに、本件で受け取つた現金五万円の処置について、「A10からは、旅行費用のへそくりとして、本件以前の昭和四〇年九月ころにも二〇万円、同年一二月ころにも五万円を預つており、最初の二〇万円を預つた際、裏に私の住所と名前が印刷してある白い封筒に右二〇万円を入れ、封筒の表の右肩部分に赤いボールペンで『A10費用預り』と書いたうえ、これを財布に入れ、その財布を私の家の洋服箪笥の中の、ふだんは着ない一番上等の服の内ポケツトに入れて置き、次の五万円及び本件の五万円も受け取る都度その封筒に入れておいた。」旨供述していたものであるところ、原審で取調べた司法巡査作成の昭和四二年一一月一一日付捜索差押調書(記録三、六一四丁)、現場写真二通(同三、六一六丁、三、七七七丁)などによれば、被告人の右のような供述に基づき、昭和四二年一一月一一日太秦警察署の警察官が被告人宅を捜索してみると、離れ六帖の間の洋服箪笥内の背広上衣内ポケツトから (同三、六一六丁、三、七七七丁)などによれば、被告人の右のような供述に基づき、昭和四二年一一月一一日太秦警察署の警察官が被告人宅を捜索してみると、離れ六帖の間の洋服箪笥内の背広上衣内ポケツトから、ワニ皮製二つ折りの財布が発見され、その財布の中に、御守りなどを入れた封筒と、それとは別になつた一万円札三〇枚が、また、右財布を二つに折つた間に別の一万円札二〇枚が、それぞれあつた事実が認められ、この事実は被告人の供述の真実性を裏付けるかの如くである。ただ、右捜索によつて発見された現金三〇万円の状態は、封筒の中に入つていなかつた点で被告人の供述と合致せず、また、原審で取調べたP銀行発券局長作成の照会回答書(検甲七〇号証)によれば、右三〇万円の中の一万円札二枚は本件より約一か月後の昭和四二年六月二一日以降に発行されたものであることが認められるから、この点でも、右三〇万円全部が果して被告人の供述するような経過でA10から預つた金であるかは疑問であり、被告人の供述をたやすく信用する訳にはいかないが、他方、被告人の妻Qは、右捜索の当日に作成された司法警察員に対する供述調書において、「かなり以前のことで日時の点は思い出せませんが、何かの折に財布と裸銭と別にしてある金を見たことがあり、私が不審に思つてその訳を主人に尋ねたところ、『友達の旅行費を預つておるので一緒にしてはいかんのや』と言つておつたことがありましたが、今日発見されて差押を受けたお金が、只今申し上げたお金だろうと思いますが、はつきりしたことは判りません。」と供述し、更には、右A10も、その供述は捜査段階以来二転三転していて、にわかに信用性を見定め難いけれども、原審証人として被告人の供述に沿う証言をしており、これらに照らすと、被告人の供述を軽々に虚偽と断定することもまたできないといわなければなら 以来二転三転していて、にわかに信用性を見定め難いけれども、原審証人として被告人の供述に沿う証言をしており、これらに照らすと、被告人の供述を軽々に虚偽と断定することもまたできないといわなければならない。ところで、被告人の供述の信ぴよう性を判断するについて有力な手がかりであると思われるのは、前記捜索の際に発見された封筒であり、もしそれに被告人が述べているとおり、「A10費用預り」という記入があれば、被告人の供述は相当信用すべきものであるといわなければならない反面、かかる記入がなければ右の信用性を認めることは困難であると思われるところ、前記の現場写真には、ワニ皮財布及び現金三〇万円と一緒に右の封筒も写されてはいるが、写されているのは被告人の住所及び通称名を印刷してある裏面だけであつて、肝心の表面は写されておらず、しかも、右の封筒は、重要な証拠物件であるのに、捜索差押調書の押収品目録に記載されておらず、以後その所在は不明である。そして、右捜索差押に際し、証拠品の写真撮影を行なつた警察官A11は、原審証人として、右封筒を差押えたかどうかは覚えていない旨証言しているが、被告人の供述に基づいて行なつた証拠品の捜索において、その供述に表われている現金を発見し、その現金の入つていた財布及びその財布の中に右現金と一緒にあつた封筒を写真にまで撮つていながら、封筒のみ押収しないでおくということは、甚だ不自然であり、被告人が、右捜索に先立つ取調においては、A10から預つた現金三〇万円は、洋服箪笥の中の背広上衣の内ポケツトに入れて保管してあると供述するにとどまり、財布や封筒については触れていなかつた(被告人の司法警察員に対する昭和四二年一〇月二四日付供述調書)ことを考慮しても、捜査官として大きな手落ちといわなければならず、所論が、捜査官は実際は右封筒を被告人方 や封筒については触れていなかつた(被告人の司法警察員に対する昭和四二年一〇月二四日付供述調書)ことを考慮しても、捜査官として大きな手落ちといわなければならず、所論が、捜査官は実際は右封筒を被告人方から持ち帰つていながら、それが捜査官側にとつて好ましい証拠ではなかつたため、故意に消失させた疑いがあるというのも無理からぬところがあり、少なくとも、捜査官側の不手際によつて、被告人にとつてその弁解を立証する有力な証拠となつたかもしれない物的証拠が、現在使えななくなつている以上、この点を被告人に不利益に扱うことはできないというべきである。以上のとおりであつて、収賄の犯意を否定する被告人の供述は、その信用性をにわかに否定し難いものであり、少なくとも、原判決の挙示する関係全証拠をもつてしても、いまだ被告人の右供述を排斥して被告人に収賄の犯意があつたものと認めるには十分でなく、他にこれを認めるに足る証拠はないから、収賄罪の成立を認めた原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるといわなければならない。論旨は理由がある。 (八) 原判示第八の事実について。 論旨は、被告人が、原判示の日時場所において、同判示のRからフランス製ブランデイコニヤツク「ナポレオン」一本を受け取つたことはあるが、これは、原判示のような趣旨で渡されたものではなく、右Rが、被告人の所有地を無償で使用していたこともあつて、被告人に耕作証明の手続について相談するため訪問するに際し、社交的儀礼として持参したものであり、その価格も原判示の約一万七、〇〇〇円ではなくて四、〇〇〇円程度であり、社交的儀礼として許容される範囲内にとどまるほか、そもそも右Rの耕作証明については、その耕地がいまだ農地台帳に登載されておらず、したがつて、農業委員会が、耕作証明の願書を受理したり、証明手 度であり、社交的儀礼として許容される範囲内にとどまるほか、そもそも右Rの耕作証明については、その耕地がいまだ農地台帳に登載されておらず、したがつて、農業委員会が、耕作証明の願書を受理したり、証明手続をする段階に至つていなかつたから、被告人の職務との関係は生じていなかつたものである、というのである。 しかしながら、原判決の挙示する関係証拠によれば、所論の点に関する原判決の事実認定は優にこれを肯認することができ、被告人の原審及び当審各公判廷における各供述のうち右認定に反する部分は措信できず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。所論にかんがみ付言すれば、関係証拠によると、本件の洋酒は、本件当時原判示のとおり時価約一万七、〇〇〇円であつたことが明らかであり、右の価格に徴すると、Rが被告人の所有地を無償で使用していた(但し、Rだけではなく、近隣住民もそうであつた)という所論の事情を考慮しても、社会的儀礼として許容される範囲内にとどまるとは認め難いから、この点の所論は採用できない。また、およそ耕作証明を発行することは、農業委員会会長たる被告人の職務権限であり、所論のような事情があつて耕作証明を受ける資格がない者にその証明を発行する場合でも、右職務との関わりが失われる性質のものではないから、この点の所論も当たらない。したがつて、原判決に所論の事実誤認はなく、論旨は理由がない。 (九) 原判示第九の事実について。 論旨は、被告人が、原判示の場所で、A1から、A5を介して現金二〇万円を受け取つたことはあるが、その受け取つた日は原判示の昭和四二年六月下旬ころではなく、同月一八日であり、また、右二〇万円は、原判示の趣旨による賄賂ではなく、A1の経営するE株式会社が、被告人の娘婿A12らが経営する不動産仲介業S商事に対して支払うべき不動産売買手数料の内 ではなく、同月一八日であり、また、右二〇万円は、原判示の趣旨による賄賂ではなく、A1の経営するE株式会社が、被告人の娘婿A12らが経営する不動産仲介業S商事に対して支払うべき不動産売買手数料の内払金として受け取つたものである、というのである。 しかしながら、原判決の挙示するA1の検察官に対する昭和四二年一〇月一七日付及び同年一一月二日付各供述調書抄本、A5の検察官に対する同年一〇月六日付(抄本)及び同年一一月一〇日付各供述調書は、所論にかかわらずいずれも信用性を認めるに十分であり、これらを含め原判決の挙示する関係証拠によれば、所論の点に関する原判決の事実認定は優にこれを肯認することができる。そして、原審証人A1及び同A5は概ね所論に沿う証言をしているけれども、全般的に本件当時の出来事について明確な記憶を失つているうえ、所論のように本件の二〇万円がS商事に支払うべき金であるなら、それをなぜ被告人宅へ持つて行つて被告人に渡したのか疑問であるのに、右各証人(証人A5は、S商事を経営するA12が、被告人宅から二〇〇ないし三〇〇メートルほど離れた処に住んでいることを知つていたと証言している。)はその点について何らの説明もしていないことなどに徴してにわかに措信し難く、また、原審証人A12も所論に沿う証言をしているが、その証言内容は、原審第五四回公判では直接右A5から本件の二〇万円を受け取り、その場でS商事名義の預り証を同人に渡した旨証言しながら、第五五回公判では、右二〇万円は被告人からもらつたもので、その時は右A5はいなかつたと証言するなど、不自然に変遷し、被告人の主張に殊更合わせようとする態度が窺われて、これまた措信し難く、被告人の原審及び当審各公判廷における各供述のうち前記認定に反する部分も、前記の各積極証拠と対比して信用できず、他に前記 変遷し、被告人の主張に殊更合わせようとする態度が窺われて、これまた措信し難く、被告人の原審及び当審各公判廷における各供述のうち前記認定に反する部分も、前記の各積極証拠と対比して信用できず、他に前記認定を動かすに足る証拠はない。なお、所論にかんがみ付言すると、原審で取調べたS商事の不動産取引台帳(弁甲一号証の一、弁乙六号証)や如上の各証言によると、E株式会社がS商事に対し、昭和四二年六月一八日に不動産売買の手数料として二〇万円を支払つている事実が認められるところ、所論は、この二〇万円が本件の金員であると主張するのであるが、関係証拠を対比検討すると、右六月一八日に支払われた二〇万円は、本件の二〇万円とは別個の金であると認めるのが相当であるから、所論は採用することができない。したがつて、原判決に所論の事実誤認はなく、論旨は理由がたい。 <要旨>控訴趣意中、法令解釈適用の誤りの主張について。</要旨>論旨は、原判示第一、第三乃至第六、第八(本件の職務が農地法第四条又は第五条による知事の許可権限と関係があると認められるとして)及び第九の各事実について、昭和四五年一〇月一日施行の都市計画法附則第四項の規定によつて、農地法第四条及び第五条が改正された結果、都道府県知事、農業委員会及び農業委員は、いわゆる市街化区域内にある農地の他目的への転用についての許可及び許可手続に関与する各職務権限を廃絶されたから、その廃絶までの間にそれらの公務員がそれらの職務に関して賄賂を収受などしたときに科せられるいわゆる収賄罪の刑は、犯罪後の法令である前記都市計画法附則第四項の規定によつて廃止されたと解されるところ、前記各原判示事実において被告人が、農業委員として京都府知事のいわゆる転用許可手続に関与する職務に関して、賄賂を収受したとされている転用目的の農地は、すべ の規定によつて廃止されたと解されるところ、前記各原判示事実において被告人が、農業委員として京都府知事のいわゆる転用許可手続に関与する職務に関して、賄賂を収受したとされている転用目的の農地は、すべてが昭和四六年一二月二八日に京都府知事が市街化区域に指定した区域内に存在するから、前記各原判示事実については、すでにその刑が廃止されているとして被告人に対し免訴の判決が言渡されるべきであるのに、これをしなかつた原判決は法令の解釈適用を誤つている、というのである。 そこで、所論にかんがみ考察するに、所論の法改正によつて、いわゆる市街化区域内にある農地については、農林水産省令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出た場合には、農地の転用(農地法四条)または転用目的のための権利の取得(同法五条)に関する都道府県知事等の許可を要しないものとされたことは所論のとおりであり、右の法改正は、右許可を要しないものとされた事項に関する限り、従前、都道府県知事等に許可権限、農業委員会及び農業委員に許可に関する意見進達等の職務権限があることを定めていた法規(農地法四条、五条)が廃止されたことを意味しよう。そして、これを収賄罪とのかかわりでいえば、収賄罪の構成要件である公務員の「職務」の内容(どういう公務員がどういう職務を有するか)を定めていた他の法規が廃止されたことになるわけである。ところで、免訴制度の趣旨に照らして考えると、このように、ある刑罰法条の構成要件の具体的内容を他の法規で定めているとき、右構成要件に該当する行為が、右の他の法規の廃止により右構成要件に該当しなくなつた場合に、それが、刑事訴訟法三三七条二号にいう「刑の廃止」に当たるというためには、右法規の廃止が、右構成要件該当行為の可罰性に関する法的評価が変わつたことを理由としてなされ、右構成要件 当しなくなつた場合に、それが、刑事訴訟法三三七条二号にいう「刑の廃止」に当たるというためには、右法規の廃止が、右構成要件該当行為の可罰性に関する法的評価が変わつたことを理由としてなされ、右構成要件それ自体を実質的に変更するものである場合でなければならず、右の可罰性に関する法的評価とは直接かかわりのない他の法政策上の必要から法規が廃止され、その結果構成要件の内容たる事実の面で変更を生じたにすぎない場合は「刑の廃止」には当たらないと解するのが相当である。そして、本件についてこれをみるに、前記のように都市計画法附則b項によつて農地法四条及び五条が改正されたのは、近時における都市及びその周辺での宅地、工業用地の需要の増大と米作地減反の必要等に対応して、土地利用の計画化を促進するためであつて、決して職務である農地法四条あるいは五条の許可や意見進達にからむ農業委員らの収賄行為の可罰性に対する評価が変わつたためではなく、右改正により収賄罪の構成要件それ自体が実質的に変更されたものではないと解されるから、右の法改正により、刑事訴訟法三三七条二号にいう「刑の廃止」があつたということはできないといわなければならない。したがつて、本件につき免訴の判決を言渡さなかつた原判決に所論の誤りはなく、論旨は理由がない。 右のほか、論旨は、原判示第二の事実について右と同一の法令解釈適用の誤りの主張をし、また、原判示第七の事実についても原判決に法令解釈適用の誤りがある旨主張するもののようであるが、これら各事実は、前記のとおり事実誤認により破棄すべきものであるから、右各主張についての判断は省略する。(なお、職権で調査するに、原判決は、本件の追徴について刑法一九条ノ二を適用しているが、本件の追徴は同法一九七条ノ五後段によるべきものであり、この点で原判決は法令の適用を誤つ いての判断は省略する。(なお、職権で調査するに、原判決は、本件の追徴について刑法一九条ノ二を適用しているが、本件の追徴は同法一九七条ノ五後段によるべきものであり、この点で原判決は法令の適用を誤つているといわなければならないが、右の誤りは判決に影響を及ぼすものとはいえないから、破棄の理由としない。)以上のとおりであつて、原判決は原判示第二及び第七の各事実につき破棄を免れないところ、原判決は、右の各事実にかかる罪と原判示のその余の各罪とを併合罪の関係にあるものとして一個の刑を言渡したものであるから、全部につき破棄を免れない。 そこで、刑事訴訟法三九七条一項、三八二条により原判決を破棄したうえ、同法四〇〇条但書に従い更に次のとおり判決することとする。 原判決の確定した被告人の原判示第一、第四ないし第六、第八及び第九の各所為は、いずれも昭和五五年法律三〇号による改正前の刑法一九七条一項前段に、原判示第三の所為は右改正前の同法一九七条一項後段にそれぞれ該当するところ、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により最も重い原判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年六月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予し、被告人が前記各犯行により収受した賄賂はいずれも没収することができないので、同法一九七条ノ五後段によりその価額合計一一七万九、一〇〇円を被告人から追徴することとし、原審における訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文により全部これを被告人に負担させることとする。 本件公訴事実中、昭和四二年一〇月一九日付起訴状記載公訴事実第一の(一)は原判示第二の事実と同様であり、同年一一月二二日付追起訴状記載公訴事実第一の(五)は原判示第七の事実と同様であ こととする。 本件公訴事実中、昭和四二年一〇月一九日付起訴状記載公訴事実第一の(一)は原判示第二の事実と同様であり、同年一一月二二日付追起訴状記載公訴事実第一の(五)は原判示第七の事実と同様であるが、、前記説示のとおり、これらについては、いずれも犯罪の証明がないから、刑事訴訟法四〇四条、三三六条により無罪の言渡をする。 よつて、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官環直彌裁判官高橋通延裁判官青野平)

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