平成15(わ)118 逮捕監禁,営利略取,殺人,死体遺棄被告事件

裁判年月日・裁判所
平成16年7月15日 宇都宮地方裁判所
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判決文本文31,030 文字)

判決 主文 被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中60日をその刑に算入する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は,22歳ころから,暴力団組織の構成員として活動するようになり,昭和43年ころ,所属暴力団組織の会長が病死したことに伴い,一旦はいわゆる堅気となったものの,平成3年ころには,別の暴力団組織の会長から誘われて相談役に就任したが,この間,昭和40年前後ころ,被告人の実兄の家に種々の相談事をするため出入りしていた別の暴力団組織に所属していたAと知り合って付き合い始め,債権回収の仕事を分け合うなどの関係を持つようになり,また,昭和58年ころ,共通の知人を通じ,当時右翼団体の構成員として活動していたBと知り合って交遊するうちに,徐々に被告人がBの兄貴分という関係になった。被告人は,平成10年ころに,揉め事の仲裁を依頼されたのを機に,埼玉県a市内で廃棄物の収集運搬等を業とする会社を経営するCと付き合うようになり,以後,Cの知人の揉め事を解決して謝礼を貰うなどし,Cに対し,困り事があったら相談するよう話していた。Cは,b県c市内で廃棄物の処理業を営むDから会社経営に関する助言を受けるなどして,平成4年ころからDと親密に付き合うようになり,Dに依頼されて廃棄物の収集運搬をするなどしていた。 Dは,昭和62年に廃棄物の処理等を業とする有限会社甲を,平成2年に廃棄物の収集運搬等を業とする有限会社乙を順次設立し,廃棄物の処理業を展開していたところ,同年,c市の焼却施設の老朽化に伴い,新規焼却施設の設置計画が策定されると,同施設稼働までの暫定措置として有限会社甲に一般廃棄物の処理が委ねられることとなり,取り敢えず一般廃棄物の処理業許可と ろ,同年,c市の焼却施設の老朽化に伴い,新規焼却施設の設置計画が策定されると,同施設稼働までの暫定措置として有限会社甲に一般廃棄物の処理が委ねられることとなり,取り敢えず一般廃棄物の処理業許可という形が取られたが,b県からc市への許可期間短縮の示唆も蔑ろにされるなど,同許可は不自然な形でなされた。その後も,有限会社甲は,b県から行政処分を受けたにもかかわらず,前記許可が更新されたり,区域外自治体の廃棄物の処分に関する許可の追加を受けるなどし,さらに,平成6年10月,市全域で収集される一般廃棄物を処理するのに十分な能力を有するc市丙センターが完成し,稼働を開始した後においてすら,許可を受け続けるなど,特別の便宜供与を殊更与えられ続けたとしか考えられない経緯を辿った。また,Dは,前記許可等を与えた当時の所管部長や元清掃事務所長の近親者を有限会社乙の役員に迎え入れるなどしつつ,市長派に属する職員らに取り入る一方,平成7年に大手プラントメーカーの資本参入を受けて有限会社甲を株式会社に鞍替えした上,平成8年には,b県から産業廃棄物及び一般廃棄物の処理施設設置許可を得て焼却処理施設を建設するなど,着々と事業の拡大を図って行った。 そして,Dは,平成9年,有限会社甲の焼却処理施設が完成して稼働を開始したことを受け,積極的な営業活動を展開した結果,他自治体からc市に対し一般廃棄物の持込み方の打診が相次ぐようになり,市も,同年4月にc市丙センター所長に就任した被害者を中心として,他市町村からの一般廃棄物の受入れに関する要綱の作成を検討することとなった。被害者は,上司とともに,平成10年前半までには,他自治体や業者の責任を明確にする厳格な事前協議要綱案を作成し,一旦は上層部の最高責任者の積極的指示を取り付けたが,その後の意見調整の場等においては,案に相 は,上司とともに,平成10年前半までには,他自治体や業者の責任を明確にする厳格な事前協議要綱案を作成し,一旦は上層部の最高責任者の積極的指示を取り付けたが,その後の意見調整の場等においては,案に相違し,廃棄物関連の所管管理職等を歴任した最高幹部が,業者寄りの意見を強く主張し,あるいは,前記最高責任者が明確に業者の便宜を図るように求めるに至り,別の最高幹部からも,こうした態度豹変等の裏にはDとの間で話合いが済んでいる旨告げられて,前記最高責任者の意向に添うよう示唆されたため,やむなく骨抜きの事前協議要綱案を策定せざるを得ない羽目に陥った。しかし,被害者は,挫折することなく,従前は馴れ合いで認められていた事前協議の場への業者の同席を許さない措置を取ったり,同年秋には,千葉県d市からの一般廃棄物の持込みにつき,有限会社甲が収集運搬を行うとの事前の取決めに反し,一般廃棄物収集運搬の許可を受けていない有限会社乙に下請させている問題点を鋭く指摘するなど,あくまでも厳正な廃棄物行政を執行し続けていた。 こうしたなか,平成11年4月,被害者が突如見せしめ的降格人事により廃棄物行政から離れるのを余儀なくされるに至ったところ,Dは,ここぞとばかりに,c市丙センターに頻繁に顔を出し,前記最高幹部の息の掛かった後任者との間で,密接な関係を築き上げ,前記のとおりの被害者指摘に係る有限会社乙の無許可収集運搬行為の黙認,審査らしい審査をしたとは考え難い不備な内容の申請どおりの有限会社乙に対する一般廃棄物処分業等の許可,事前協議における一般廃棄物の収集運搬の有限会社乙へのほぼ独占的委託及び事前協議の形骸化等,様々な便宜供与を受けるようになった。そして,Dは,少なくとも,平成12年4月からは,b県e市からの委託により収集運搬した一般廃棄物に関して,c市内で収集した廃棄 ぼ独占的委託及び事前協議の形骸化等,様々な便宜供与を受けるようになった。そして,Dは,少なくとも,平成12年4月からは,b県e市からの委託により収集運搬した一般廃棄物に関して,c市内で収集した廃棄物である旨偽って,処理費用の低額なc市丙センターで処理する一方,e市に対しては,有限会社甲で処理したように装い,高額な処理代金を請求するとの詐欺的行為により莫大な利益を得ていた。これを察知した部下職員からは,複数の管理職に対し,時日を異にして,不正行為の指摘がなされたが,被害者の前記後任者は,以前,上司の反対で果たせなかったものの,事前協議において他自治体からの一般廃棄物の収集運搬を有限会社乙に限定する旨の改正方を指示したことがあるほど,Dに肩入れしており,当然のことながら,前記部下職員の指摘を黙殺し,前記後任者とは派閥を別にするその上司においても,最高幹部の1人に報告を上げたが,特段の措置を講ずる必要がない旨述べるだけであった上,前記後任者が別の前記最高幹部等の後ろ盾を得ていることへの配慮から,追及是正措置を講ずることなく,放置した。 しかし,同年6月に実施されたc市長選の結果,新たな市長が誕生したことにより,市の体制が刷新され,同年10月には,廃棄物行政に精通する被害者が環境保全担当参事に返り咲いた。これを受けて,被害者は,他自治体による有限会社甲への廃棄物の持込み案件に対する事前協議等につき,書類や内容面の不備を敢然と指摘し,拒否すべきものは拒否するなど,適正な協議に努めるとともに,以前と同様に事前協議の場から業者を締め出すなど,馴れ合い体質等を改めて,厳正な廃棄物行政を執行し始めた。 また,被害者は,着任して間もなく,有限会社乙が同年4月から6月にかけてc市丙センターに搬入した廃棄物の量が異常に多いことから,内通による情報漏洩に留意しつ を改めて,厳正な廃棄物行政を執行し始めた。 また,被害者は,着任して間もなく,有限会社乙が同年4月から6月にかけてc市丙センターに搬入した廃棄物の量が異常に多いことから,内通による情報漏洩に留意しつつ,不正の疑いを抱いて独自に調査を進め,有限会社乙に対し,期限を定めて詳細な実績報告書の提出方を指示するなどして,不正の解明及びその是正措置を講じようとした。 ところが,被害者の指示に係る実績報告書の提出期限が迫った同年11月中旬,有限会社乙の従業員からは実績報告書の提出が困難であるとの電話連絡が入れられ,翌日には,Dが,c市丙センターに怒鳴り込み,e市からの委託により収集運搬した一般廃棄物をc市丙センターに搬入した旨被害者の指摘が図星であることを暗に自認しつつも,c市としてD及び有限会社甲の事業運営への支援協力を確約する旨記載された作成経緯等不詳の平成4年2月10日付けc市長名義の念書なるものを提示し,市には貸しがあるので便宜を図るのは当然として,応対した被害者らを恫喝するなどした。しかし,被害者は,やはり,動じることなく,毅然として廃棄物行政を進め続けた。 かくするうち,Dは,平成13年3月には,有限会社甲の役員留任を画策したが,果たせずに退任を余儀なくされたため,以後,収入源は有限会社乙からの利益に限定されることとなったところ,同年4月,被害者から,c市丙センターに搬入することが許されない破砕ゴミを有限会社乙が持ち込んだことを指摘され,搬入を停止されるなどしたため,Dは,またもや,c市丙センターに怒鳴り込み,被害者に悪態を付き,便宜を図るよう迫るなどした。しかし,被害者は,同年5月には,有限会社乙の作業現場の確認を実施し,c市丙センターに搬入すべき一般廃棄物がないことを認めさせ,一般廃棄物の搬入ができないことを意味する収集運搬車両の計量カ などした。しかし,被害者は,同年5月には,有限会社乙の作業現場の確認を実施し,c市丙センターに搬入すべき一般廃棄物がないことを認めさせ,一般廃棄物の搬入ができないことを意味する収集運搬車両の計量カードの返還方の通告を行い,その後も,従前と変わることなく,他自治体からの有限会社甲への廃棄物の持込み案件に関する事前協議等につき,ダイオキシンの発生を理由に拒否の姿勢を示したり,あるいは,予め取り決めた搬入廃棄物の量と実際の量が違背することを理由に内容の変更を求めるなど,いずれも有限会社乙の実績に響くものではあったが,所管管理職として極めて筋の通った対応を続けていた。にもかかわらず,Dは,前任者等が不当な便宜供与をしていたことをいわば逆手に取り,被害者が返り咲いてからというもの,何かと思いのままに進まないとして,有限会社乙の事業が立ち行かなくなるのではないかと懸念の度を強め,被害者への不満を露わにしていた。さらには,同年9月に翌月末日許可期限が満了する有限会社乙の一般廃棄物処分業の許可の更新申請をしていたが,前回の申請が不備であったことが祟り,被害者としては最終的には許可の腹を固めていたものの,追加資料の提出等を要求せざるを得なかったことから,期限が切迫しても一向に許可が下りない事態を招いていたこととも相俟って,Dは,益々有限会社乙の存亡への危機感を募らせて行き,前後して,被害者を殺害しても飽き足らないなどと,周囲の者に公言して憚らないようにまでなった。 そのような折,同年10月中旬ころ,Dは,開発中の埼玉県f市内の温泉施設にCを呼び出した上,有限会社乙が倒産すればCの会社も連鎖的に潰れるなどとして,業務の障害となっている被害者を殺害等するしかないと打ち明け,報酬と引換えに殺害等を引き受けてくれる口の堅い人物の心当たりの有無を問い質し,Cが取 社乙が倒産すればCの会社も連鎖的に潰れるなどとして,業務の障害となっている被害者を殺害等するしかないと打ち明け,報酬と引換えに殺害等を引き受けてくれる口の堅い人物の心当たりの有無を問い質し,Cが取り敢えず候補に挙げた長らく暴力団組織の構成員であった被告人との交渉方を求めた。Cは,経営する会社の仕事の大半が有限会社乙の下請としての廃棄物の収集運搬であり,これが失われた場合には経営が成り立たない状況にあったことから,当初こそDに翻意を促したが,逆に強く同調を迫られて説得されるに至った。そこで,Cは,以前何度か揉め事を解決して貰ったことがあり,困ったことがあったら相談するよう言われていた被告人に連絡を付け,具体的な報酬額を提示するなどしながら,概括的説明をした上で,市役所の人間を始末することができるかなどと,被害者を拉致するなどして殺害することを打診した。すると,被告人はさすがに即答しなかったものの,結局は,容易に了承し,拉致等を含めた具体的な手段方法については,長らく暴力団組織の構成員であった被告人に委ねられることとなった。Cの話を請け合った被告人は,早速,旧知の間柄の暴力団組織の元構成員であるA及び被告人の舎弟分のBに対し,人を拉致等するだけで300万円もの報酬が得られる仕事がある旨それぞれ持ち掛けたところ,両名ともこれを承諾した。かくして,被告人は,誘いに応じたA及びBとともに,Cを通じて得たDの手配に係る住宅地図のコピー等をも頼りに,c市丙センターや被害者方付近に赴いて下見を重ね,被害者の動向を探りながら,まずは,拉致監禁する機会を窺った。 (罪となるべき事実)第1 被告人は,A,B,C及びDと共謀の上,営利の目的で,被害者(当時57歳)を拉致監禁しようと企て,平成13年10月31日午後5時45分ころ,b県c市g町hi番地所在の水田 (罪となるべき事実)第1 被告人は,A,B,C及びDと共謀の上,営利の目的で,被害者(当時57歳)を拉致監禁しようと企て,平成13年10月31日午後5時45分ころ,b県c市g町hi番地所在の水田北側路上において,Bが運転し,被告人及びAが同乗する普通乗用自動車で,自転車に乗って帰宅途中の被害者を一旦追い越し,降車したAにおいて,道案内を求めるかのように装って被害者を呼び止め,自転車を降りて近付いてきた被害者に対し,その頸部付近に腕を回して被害者の身体を押さえ込んで,前記自動車の後部座席まで引っ張って行き,被告人において,反対側から被害者の身体を車内に引っ張るとともに,Aにおいて,Bと一緒に,被害者を車内に押し込んで,被告人及びAにおいて,両側から被害者の身体を押さえ付けるなどして,被告人らの支配下に置き,もって,被害者を不法に逮捕するとともに,営利の目的で,被害者を略取した上,Bにおいて,同車を発進走行させ,同日午後9時ころ,到着した埼玉県j市大字kL番地のm所在の有限会社丁敷地内において,さらに,被害者に対し,少なくとも,Aにおいて,粘着テープで被害者の目及び口を塞ぐとともに両手足を縛るなどし,被告人及びAにおいて,被害者を別の普通乗用自動車に乗せ替え,Bにおいて,同車を発進走行させ,同年11月1日午前3時ころ,群馬県n市若しくはその周辺の山中又は同県o郡p町若しくはその周辺の山中に至るまでの間,被害者を同車内等から脱出することを不可能にし,もって,被害者をその間約9時間にわたり不法に監禁した。 第2 被告人は,第1のとおり被害者を拉致監禁した後,少なくとも,Aに指示して第1記載の山中で被害者を降車させ,Aに対し,けん銃を差し出して被害者を殺害するよう申し向けたが,拒否されたため,自らロープを被害者の頸部に巻き付けた上,Aに対し, した後,少なくとも,Aに指示して第1記載の山中で被害者を降車させ,Aに対し,けん銃を差し出して被害者を殺害するよう申し向けたが,拒否されたため,自らロープを被害者の頸部に巻き付けた上,Aに対し,その一端を引っ張るよう指示した結果,Aにおいても,被害者殺害を決意し,Bも道中で被告人から被害者を殺害するしかない旨告げられて同様の決意をしていたところより,A,B,C及びDと共謀の上,同日午前3時ころ,第1記載の同県n市若しくはその周辺の山中又は同県o郡p町若しくはその周辺の山中において,被害者に対し,確定的殺意をもって,被告人及びAにおいて,所携のロープでその頸部を絞め付け,被告人において,けん銃で弾丸1発を発射して被害者の身体に命中させ,よって,そのころ,同所において,被害者を死亡させて殺害した。 第3 被告人は,A及びBと共謀の上,第2記載日時ころ,第2記載場所において,A及びBにおいて,被害者の死体を道路脇の断崖から崖下に投棄し,もって,死体を遺棄した。 (事実認定の補足説明) 1 弁護人は,判示第2及び第3の殺人・死体遺棄については,客観的証拠が殆ど存在せず,犯罪事実を立証する依拠し得る証拠とされる共犯者のA及びBの供述も不自然不合理なもので信用性に乏しいから,結局,いずれも犯罪事実の立証がなされておらず,被告人は無罪である旨主張する。しかしながら,関係証拠を総合すれば,判示罪となるべき事実のとおり認めることができるので,以下,補足して説明することとする。 2 まず,共犯者である証人Aの第2回及び第3回公判における供述(以下「変更前の供述」ともいう。)の信用性について検討する。 (1)Aは,被害者を粘着テープで緊縛してから山中へ連行する状況に関しては,大要,次のとおり供述している。 すなわち,有限会社丁に行く目的については分から もいう。)の信用性について検討する。 (1)Aは,被害者を粘着テープで緊縛してから山中へ連行する状況に関しては,大要,次のとおり供述している。 すなわち,有限会社丁に行く目的については分からなかったが,cからずっと車に付けられていると言ってBが一生懸命心配していた。有限会社丁の敷地内に到着すると,被害者を車外に出して,Bがごみの山から取ってきて地面に敷いた断熱材様のマットの上に被害者を降ろした。すると,被告人かBのどちらかが突然Aに粘着テープを差し出したので,被害者が暴れて傷付けることがないようにするためのものと理解し,1人でその粘着テープで目及び口を塞ぎ,両手首及び両足首を縛った。鼻には掛けなかった。傷付けたり跡が残ったりすると引き渡す依頼主に悪いと思ったので,緩く巻いた。被告人やBから指示があった訳ではなく,全員無言だった。その後,被害者をそれまでのセダン車とは別のワゴンタイプの車の後部座席に横たえ,その上から前記マットを掛け,Aが後部座席に,被告人が助手席にそれぞれ乗って,Bの運転で有限会社丁を出た。道中,高架線の駅の下で一旦停車し,その際,被告人が用向きを告げずに10分程度車外に出た。依頼主と連絡を付けたのかと思ったが,被害者に聞こえてしまうため,被告人が車外に出た理由については尋ねることはしなかった。その後,群馬県n市方面の山に行ったが,山中では,特徴的な建造物のある明るい場所で一旦停車した。ここが待ち合わせ場所と思い,被告人及びBに続いてAも車外に出たが,被告人及びBが2人で何か話をした後,被告人の指示で再度乗車して移動することとなり,車で5分以内で行ける距離を移動し,舗装道路を真っ直ぐ進み,途中で左折して砂利道に入り,進行方向右側のあと二,三台車が入れるようなスペースのある造成地様の空き地に頭から車を突っ込んで停 こととなり,車で5分以内で行ける距離を移動し,舗装道路を真っ直ぐ進み,途中で左折して砂利道に入り,進行方向右側のあと二,三台車が入れるようなスペースのある造成地様の空き地に頭から車を突っ込んで停めた。先ほどの停車場所だと明るくて人に見られることが心配だったので,暗い場所に移動したのだと思った。 (2)また,Aは,被害者を殺害し,その死体を遺棄した状況に関し,大要,以下とおり供述している。 すなわち,前記造成地様の空き地に停車し,3人で車外に出た後,被告人が,Aに対し,「降ろせ。」と命じてきた。引き渡す相手が来ていないため訝しく思い,「車が来てないのに何でこんなところに降ろすんだ。」と聞き返したものの,被告人が再度「いいから降ろせ。」と指示してきたので,被害者の体を汚してはいけないと思い,被害者の上に掛けていたマットを車のすぐ脇に車と平行になる形に敷き,その後,Bが頭の方を持ち,Aが足を持つ形で,被害者を前記マットの上に仰向け状態にして降ろした。降ろしたと同時くらいに,自分が顔を上げると,被告人が,突然回転弾倉式でないサイレンサー付きのけん銃を出して,A及びBに対し,「ほら。」と言って渡そうとしたので,全く予想していなかったことから「何。それ。」と言ったところ,被告人が「Aが顔見られちゃったんだからしょうがねえだろう」と言ったので,「やだ。」と言って被害者の足下付近に飛び下がって逃げた。Bも後ろに下がって避けた。この時,被告人の言葉を聞いて被害者の体がびくっとしたのを見た。すると,被告人は,被害者の体を起こすようにして,ねじってあるナイロン入り白色防水ロープで被害者の首を2巻し,「A,引っ張れ。」と言ってロープの片方の端を投げてよこした。この段階になって,被告人がけん銃を持っていて,ここで,引っ張れと言われ,嫌だと,俺は帰るよと逃 入り白色防水ロープで被害者の首を2巻し,「A,引っ張れ。」と言ってロープの片方の端を投げてよこした。この段階になって,被告人がけん銃を持っていて,ここで,引っ張れと言われ,嫌だと,俺は帰るよと逃げる訳にはいかず,もうこれはしょうがない,もうこれで自分も終わりだなと思い,ロープを引っ張ると,被害者が1回がくんとなった。この時,被告人が中腰の姿勢でロープを引っ張ったため,Aは下の方から引っ張る形となり,被害者の顔が見えない形となったが,向かい合う形の被告人を見ると,逆光となって白髪だけ目立ってまるで人間じゃないような顔をしていると思い,首に巻かれたロープを引っ張れば被害者が死ぬことを分かっていながらロープを引っ張っている自分もああいう顔をしているのかと思った。ロープを引いている最中,二重に巻いたロープが1つ浮いたのか,被告人が,ロープの真ん中付近にいたBに対し,「おい。手伝え。」と命じると,Bは,木の棒様の物を入れてロープの浮いた部分をこじるようにして手伝ったが,被告人が癇癪を起こして「おい。邪魔だ。どけ。」と言うと,Bは,それに従ってどいた。その後,ロープを外すと,被告人がけん銃を出して,「取った。」と言ってけん銃を被害者の胸の上から1発発射し,その時,ブシュッという音がした。その際,不思議なことに,被害者が頷いたように見えた。被告人は,もう1発撃とうとしたが,けん銃が弾を噛んだ形となって弾が出なかったので,A及びBに対し,間髪入れずに「捨てろ。」と言って,被害者の死体を崖下に投棄するよう命じた。この時,被害者を縛ってある粘着テープには指紋が付着しているし,粘着テープで縛られた形では余りにも酷い格好であると思い,Bが車から持ってきた切り出しナイフを使って粘着テープを外した。その後,Bが被害者の頭の方のマットの端を持ち,Aが被害者の足の 着しているし,粘着テープで縛られた形では余りにも酷い格好であると思い,Bが車から持ってきた切り出しナイフを使って粘着テープを外した。その後,Bが被害者の頭の方のマットの端を持ち,Aが被害者の足の方に当たるマットの端を持ち上げ,2人で被害者を道路端の崖際まで運び,シートを揺すって反動を付け,崖下に投棄したが,2メートルほど離れた場所にある一番高い木に引っ掛かったため下まで落ちなかった。そこで,そのままにしておく訳にはいかないと思い,付近で木切れを見付け,それを使って被害者を落とそうとしたが,足を滑らせて自分が落ちそうになった。急いで崖から道路に上がると,被告人とBがAを見て笑っていた。自分が落ちないように必死だったので,被害者が落ちる場面は見ていないが,道路に上がった時にはもうそこになかったのでそのまま落ちて行ったものと思う。崖下には平地があってそこから人が立ち入れる状況にあったので,被告人に対し,「埋めた方が良い。」と言ったところ,被告人から「そんなことする必要はない。」と言われた。被告人かBのいずれかが,前記マットを付近の杉林に投棄したのか,木に引っ掛かっているのを見た。そして,帰途,前記外した粘着テープを,車外に投げ捨てた。 (3) Aの変更前の供述は,被害者を粘着テープで緊縛した状況のみならず,ロープで被害者の頸部を絞め,被告人がけん銃で被害者を撃った状況及び被害者を断崖から投棄した状況等につき,他の事項に関する供述と同様に,その態様や用具の性状等を具体的に活写しており,前後の行動や共犯者との遣り取り,特に殺害の際の被害者の印象的な様子等,実際に経験した者でなければ語ることのできないような極めて迫真性に富んだ内容となっていて,刻々のAの心理状態等も含め,全体として自然かつ合理的である。また,直前まで被害者を殺害するのを知らなかっ 等,実際に経験した者でなければ語ることのできないような極めて迫真性に富んだ内容となっていて,刻々のAの心理状態等も含め,全体として自然かつ合理的である。また,直前まで被害者を殺害するのを知らなかったことや,被告人がけん銃を渡そうとしてきたのを拒んだことなど,Aに有利な供述をする一方で,Aが,1人で被害者に粘着テープを巻き付けて緊縛したこと,Aも被告人の指示で被害者の頸部に巻き付けたロープを引いたこと,被害者死亡後,Aが提案し,被害者を緊縛していた粘着テープを外した上,容れられなかったものの,死体の埋没をも提案していること,そして,Aは,被告人の差配により,死体をBとともに断崖から投棄したが,死体が木の枝に引っ掛かったことから,自ら進んで途中まで降りて行き落とそうとしたことなど,Aにとって不利な点を率直に自認する内容となっている。そして,Aの供述経過をみると,逮捕された当初こそ黙秘の対応をしていたものの,数日後には,群馬県p町の山林に被害者を拉致し,被告人の指示で被告人とともにロープで首を絞め,Bもこれに加わり,さらに被告人がけん銃を1発発射して被害者を殺害し,死体を遺棄してきたことを,図面を作成した上で説明し,詳しい場所は案内するので早く被害者の死体を見付けて成仏させてあげたい旨上申しており,以後,捜査段階を通じ一貫して同旨を供述し,変更前の供述とほぼ軌を一にする内容となっているところである。加えて,Aは,逮捕以前に,Bが,被告人とAが度胸がないからBがけん銃を発射して被害者を殺害した旨吹聴して回っていることを認識していたが,それにもかかわらず,敢えてAが実行行為の一部を分担したというAにとって不利な事実を供述するに至った心情について,第3回公判において,被告人が捜査段階でAと異なる供述をしていることにつき,ちゃんとした供述をして貰 ず,敢えてAが実行行為の一部を分担したというAにとって不利な事実を供述するに至った心情について,第3回公判において,被告人が捜査段階でAと異なる供述をしていることにつき,ちゃんとした供述をして貰いたいと苦言を呈するとともに,「以前からの友人である被告人が重罰を受ける可能性がある裁判で,証言することは気が進まないが,やってしまったことはしょうがないし,自分が思ったとおりに言っているだけである。ロープで被害者の頸部を絞めて殺したことは頭にあるので,被害者に対して1人くらいちゃんとしたことを言ってやらなければ浮かばれないと思い,尾生の信ではないけど,警察を信用して,愚かだと思っても,自分のやったことを言ったつもりである。自分の裁判で有利にするため,被告人らに責任をなすりつけていることはない。」旨納得できる理由を述べている。加えて,Aの変更前の供述は,共犯者であるBの捜査段階の供述とも核心部分において合致している上,Bの供述していない事項についても言及している部分も存する。 (4) そうすると,Aの第2回及び第3回公判における供述には高度の信用性が認められるというべきである。 (5) これに対し,弁護人は,Aの変更前の供述について,① 拉致監禁後,殺害現場とされる群馬県内の山中に至るまでの被害者の様子について,黙っていたとか,横たわっていたとかいうだけで,迫真性が感じられない,② 被害者をけん銃で殺害するならロープで首を絞める必要はなく,逆に,ロープで絞殺するならけん銃発射は不要であって,2発目の発射に至っては益々必要がなく,噛んだ状態になって2発目が発射できないのにわざわざ直させる必要もないなど,けん銃発射を巡る遣り取りが不合理である,③ けん銃で止めを刺したとしながら,被害者の出血に関する供述がないのは不自然である,④ Aの供述に基づいて が発射できないのにわざわざ直させる必要もないなど,けん銃発射を巡る遣り取りが不合理である,③ けん銃で止めを刺したとしながら,被害者の出血に関する供述がないのは不自然である,④ Aの供述に基づいて何度も捜索したにもかかわらず,死体が発見されないのは,供述の信用性を根底から疑わしめる重大な事由である,⑤ 被害者殺害行為についての供述は変遷を重ね,捜査段階ではBと口裏合わせした旨供述していることなどからすれば,信用性に乏しい旨主張する。 しかしながら,①については,被害者は,勤務先からの帰途,突如,正体不明の被告人ら3人に拉致監禁され,被告人及びAからは,騒ぐと殺すとの強烈な脅迫をされたばかりか,押さえ付けられたり,途中からは,目と口及び手足を緊縛されるなどもしたとの当該被害状況にかんがみ,被害者が,小用等の申し出もすることなく,黙っていたり,横たわっていたりすることは,特段異とするに足りる対応ではなく,ちなみに,拉致直後の被害者の様子に止まるにせよ,A自身,検察官調書において,被害者が,被害に遭いながら,毅然とした態度に見えたので,驚いた旨の率直な感想を供述しており,いずれにしても,Aの供述が迫真性に欠けることになるものではない。②については,そもそも,被害者の具体的殺害方法は,被告人が指示しているものであるところ,Aも,わざわざ証拠を残すような馬鹿な行動をしていると思った旨指摘し,被告人の行動の不合理性を前提としているくらいであり,当初,被告人は,少なくとも,Aに対し,けん銃で殺害するよう要求し,拒まれるや,方針転換して,自らロープを被害者の頸部に巻き付け,指示を与えたAとともに絞め付けた上で,最後には,自らが当初凶器に予定したけん銃を用いて止めを刺したとの供述内容は,合理性がない訳でなく,なお,Aは,被告人が,被害者に対する2発 の頸部に巻き付け,指示を与えたAとともに絞め付けた上で,最後には,自らが当初凶器に予定したけん銃を用いて止めを刺したとの供述内容は,合理性がない訳でなく,なお,Aは,被告人が,被害者に対する2発目を発射するために,けん銃を直させたとは供述していない。③については,Aは,被告人が被害者をけん銃で撃った際,出血は見ておらず,下に敷いていたシートにもなかったとの供述をするに止まっており,出血の有無を意識的に確認して,出血が見られなかったとまでは断定していないところ,殺害の時間帯及び場所柄は,晩秋の午前3時前後の山中の暗がりで,けん銃を発射したのも,被害者を殺害すべく,被害者の頸部を巻き付けたロープで一定時間絞め付けた後であることなどにも照らせば,Aが,被害者の出血を見ていないことをもって,直ちに不合理とは認められない。④については,Aの殺害等場所に関する供述自体,地名等が必ずしも明らかではないなど,特定に関する決定的な手掛かりまでは含んでおらず,当該候補地は広域にわたる山中であることをも併せ勘案すれば,絞込みが相当困難であることは否定し難く,関係証拠によれば,捜査機関による捜索も,犯行から約1年数か月経過した後に,幾つかの候補地を対象になされているに止まること(ちなみに,Aは,犯行発覚を恐れたCから,被害者の死体の在処等を問い質された際,容易に分からない場所への移動話をしているところである。)などからすれば,現時点に至るまでの死体捜索活動により,被害者の死体が発見されず仕舞いとなっているのも,やむを得ない面があり,Aの変更前の供述の信用性を根底から疑わしめるほどのものではない。 ⑤については,確かに,弁護人指摘のとおり,Aは,自身の公判で罪状認否を大幅に翻したことと符節を合わせる如く,第9回公判においては,有限会社丁で被害者を粘着テー 疑わしめるほどのものではない。 ⑤については,確かに,弁護人指摘のとおり,Aは,自身の公判で罪状認否を大幅に翻したことと符節を合わせる如く,第9回公判においては,有限会社丁で被害者を粘着テープで縛ってはいないし,山中の造成地で,被告人からけん銃を差し出されたことやロープを使って被害者の頸部を絞め付けたことはすべて創作に過ぎず,被告人に言われて降車してシートを捨てていたところ,前後して,被害者が車中から逃げ出し,被告人かBのいずれかがけん銃を撃ち,被害者が崖から落ちたものであり,被害者が死んだか否か,今でも半信半疑で生存している可能性も一定程度あるなどとさえ供述(以下「変更後の供述」ともいう。)している。そして,Aが被害者の頸部に巻き付けられたロープを引いたことなどを認める供述をしていた理由については,当初は自身が事件の背景を詳しく知らず,迂闊に話すと自分が狙われると思い黙秘していたが,取調べ検察官から「やくざの道を取るのか,やくざじゃなくて,人間の道を取るのか。一公務員を前科何犯もある暴力団員が寄ってたかって殺したということは関係がない。あなたを人間と見込んで,人間としての話をしようじゃないか。今,やくざはやっていないんだろう。私の方では,ちゃんとあんたの言い分を聞くから,場所でも何でも言ってくれ。」などと言われ,それなら知っている限りのことを言おうという話になったとした上で,被告人が身柄拘束され,Bが入院しているなか,Aだけが社会にいて,報酬の金員を取っていると周囲に非難されたことに対する反発心があり,また,Bが病気で今にも死んでしまうと思っており,いずれ死体が見付かれば,本当のことが分かるし,何も証拠がないことだから,B死亡後に幾らでも話をひっくり返せるので,自分がけん銃を撃ったなどと周囲の者に吹聴していたBを庇おうと思い, と思っており,いずれ死体が見付かれば,本当のことが分かるし,何も証拠がないことだから,B死亡後に幾らでも話をひっくり返せるので,自分がけん銃を撃ったなどと周囲の者に吹聴していたBを庇おうと思い,Bには逮捕前にAの供述に付いてくるように勧め,早く供述して歯の治療をして貰おうとの思いもあり,さらに,捜査官から被告人がA及びBとともに3人でCから殺害を請け負った旨供述しているのを聞かされて,被告人が嘘を付くなら自分にも考えがあると思い,被告人に対して肉を切らせて骨を断つという気持ちで,嘘の供述をした旨の説明をしている。加えて,供述を変更した理由に関しては,自身の論告求刑公判で,公判担当の検察官が,取調べ検察官の話と相違して,前科多数の暴力団員が金で雇われて公務員を殺害したとの図式を主張するとともに,死体も見付からないままBに対して懲役18年の求刑がなされたのに引き続き,自身にも懲役20年の求刑がなされたことや,いつまでも歯の治療をしてくれないことなどへの不満を縷々供述している。 しかしながら,これらの供述は,全体として,それ自体不自然不合理な点を少なからず含んでいるばかりでなく,供述態度も,訴訟関係人に暴言を吐いたりするなど,極めて不誠実なものであり,到底そのままには信用し難い。すなわち,具体的内容面では,逃げ出した被害者を捕まえようともせずに,いきなりけん銃で撃ったこと自体かなり不自然である上,Aがシートを捨てたことと被害者が逃げ出した先後関係も曖昧で一貫しておらず,A自身,殺人・死体遺棄とも無関係としながら,被害者が崖下の途中で引っ掛かったのを,わざわざ降りて行き,棒切れを探して,被害者を落とそうとしたのも,到底辻褄が合う行動とは思われない。そもそも,Aにおいては,第3回公判で自認するとおり,Bとはさほど親しい交際をしている訳ではな のを,わざわざ降りて行き,棒切れを探して,被害者を落とそうとしたのも,到底辻褄が合う行動とは思われない。そもそも,Aにおいては,第3回公判で自認するとおり,Bとはさほど親しい交際をしている訳ではなく,主張するような庇い立てする関係にあるものとは認められないし,また,被告人を陥れ,Bを庇うためというのであれば,Aが被害者を粘着テープで緊縛したり,被害者の頸部に巻き付けられたロープを引いたりしたなどという,A自身が殺人との大罪を負うことになること必定の供述をするまでの必要は全くなく,被告人が被害者を射殺したとさえ供述すれば済むことである。ちなみに,Cの公判供述によれば,犯行後,暫くした後の段階で,Bが,Cに対し,被害者の頸部を絞めて殺害した旨打ち明けたことが認められ,これは,被害者の絞殺を実行したとの点は創作にほかならないとするAの変更後の供述を一定程度減殺する事実である。そして,いずれ,被害者の死体が発見されさえすれば,本当のことが分かるし,Bが死んでからいつでも供述を覆せるので,一旦は被害者の頸部をロープで絞めた旨虚偽供述をしたというのは,余りに迂遠な話であるばかりか,死体が発見されるかどうかは不確定であり,現段階においてすら,死体が発見されていないことにかんがみ,説得力に欠ける憾みなしとせず,肉を切らせて骨を断つとの供述を考慮しても,余りにも不合理な対応といわざるを得ない。Bの捜査段階における初期の自白自体,逮捕前に吹聴していたように,自らが被害者に対しけん銃を撃ったとされており(ちなみに,Cの公判供述によれば,本件犯行直後,被告人は,Cに対し,自らが被害者をけん銃で撃った旨説明している。),Aが捜査段階途中以降一貫して維持していた自白内容とは顕著に食い違いを見せているばかりでなく,A及びBの捜査段階途中からの大筋では一致している 対し,自らが被害者をけん銃で撃った旨説明している。),Aが捜査段階途中以降一貫して維持していた自白内容とは顕著に食い違いを見せているばかりでなく,A及びBの捜査段階途中からの大筋では一致している各供述内容を比較対照しても,Aらの具体的な行動については,必ずしも一致していない部分もあり,Aにおいて,Bを庇い立てすべく,Aの供述に付いてくるように口裏合わせしたため,BがAの供述に追随して供述したとまでは認め難い。なお,Aは,第3回公判においては,逮捕前の段階で,Bに対し,事実供述せざるを得ない状況になった暁には,自ら被る必要はなく,正直に供述するように勧めたと供述している。もとより,Aにおいて,早く歯の治療をして欲しいと考えていたからといって,嘘の供述をすることに結び付くものではなく,捜査段階で黙秘から自白に至った理由につき,取調べ検察官の言を信用したことを頻りに強調しているのも,まさに真実を供述しようとした動機として理解されこそすれ,虚偽供述をする契機となるものとは考え難いところである。加えて,変更後の供述はそれまでの供述に比し,A自身に有利な内容となっているが,供述を変更した理由として説明するところも,結局は,専ら,B及び自身の公判における論告求刑の内容に対する不満に尽きる如くであり,変更後の供述の信用性を減殺することにはなっても,これを高めるに足る合理性があるものとはいえない。したがって,Aの変更後の供述はそのままには信用できず,変更前の供述の信用性を動揺させるものではない。 以上によれば,Aの第2回及び第3回公判における供述の信用性を論難する弁護人の所論は,いずれも採用し難い。 3 次に,Bの検察官調書における供述の信用性について考察する。 (1) Bは,有限会社丁敷地内で被害者を粘着テープで緊縛し,その後山中に連行した状況につ 難する弁護人の所論は,いずれも採用し難い。 3 次に,Bの検察官調書における供述の信用性について考察する。 (1) Bは,有限会社丁敷地内で被害者を粘着テープで緊縛し,その後山中に連行した状況につき,事務所脇の廃棄物置き場に石綿様のシートを持ってきて,被告人か吉田に渡したこと,また,有限会社丁の事務所か車の中から粘着テープを持ってきて被告人かAに渡したこと,この時,被害者は地面に敷かれたシートの上に座らされていたこと,Bが粘着テープを渡すと,被告人とAの2人で被害者の口や両手足をぐるぐる巻きにして縛ったこと,その後,被告人とAの2人が被害者をワゴン車に乗せて出発し,途中q駅と思われる高架駅の下で停車した際,被告人から被害者を殺害する旨打ち明けられたこと,その後,被告人の指示で,群馬県n市方面に車を走らせ,人工的なきれいに整備された場所に至り,一旦車を停め,3人とも車外に出たものの,被告人の指示で再び車を発進させ,進路左側が崖で右側に車を停めることのできる空き地が見えたので,車を入れて停めたことを供述している。 (2)また,Bは,被害者を殺害し,死体を遺棄した状況に関しては,大略,次のとおり供述している。 すなわち,Bが被告人に指示されて空き地に車を停めると,被告人は,AとBに向かって,被害者を車から降ろすように指示してきた記憶がある。Bが被害者を車から降ろした記憶はなく,被害者がどうやって車の外に出たのかはっきりした記憶がないが,被告人とAが外に被害者を引きずり出したのだと思うし,もしかしたら,AとBの2人で被害者を引きずり出したのかも知れないが,地面にシートが敷かれ,その上に被害者が寝転がらされていたのは見た。その後,被告人がけん銃を持った手をAに差し出しながら,「お前,やれよ。」と言ったのに対し,Aは,「ゲンちゃんやれよ。」な ないが,地面にシートが敷かれ,その上に被害者が寝転がらされていたのは見た。その後,被告人がけん銃を持った手をAに差し出しながら,「お前,やれよ。」と言ったのに対し,Aは,「ゲンちゃんやれよ。」などと言って被害者を殺害することを拒み,被告人が差し出したけん銃を受け取らなかった。被告人から離れて周囲を確認していると,後ろから「引っ張れ。」という被告人の声が耳に入り,声のした方を振り返ると,Aがしゃがんで何かを拾うような素振りをした。その後,被告人とAは,被害者を挟んで前屈みになり,互いの頭がくっつきそうなくらい近付いて,ロープのような物を引っ張っていた。被害者の頸部に巻かれたロープの1巻目と2巻目の間に隙間があるのが分かり,ロープの1巻目と2巻目を重ねようとしたが,うまく重ね合わせることができなかった。その時,被告人かAからどくように言われたので,ロープから手を離し,車の運転席の辺りをうろうろしていた。すると,被害者の方からプシュという音が聞こえ,その前後に被告人の「取った。」という声が聞こえた記憶がある。音のした方を向くと,被告人が,片手でけん銃を持ち,その銃口を被害者の上半身に向けていた。被告人は,その体勢のまま,「あれ,弾が出ねえ。」などと言い,Bにけん銃を渡してきたので,車内でけん銃を直していたところ,車の外から「処分しろ。」などという声が聞こえてきた。 一,二分でけん銃を直して車の外に出て,自動車の後ろの方に歩いて行くと,被告人とAが2人でシートを引きずって被害者の死体を運んでいた。自分も死体を捨てる手伝いをしなければならないと思い,被告人にけん銃を渡し,Aと2人で死体を運んで崖から投げ捨てたが,被害者の死体が木に引っ掛かってしまい,Aが崖の下に降りて行った。 (3)Bの検察官調書は,記憶の曖昧な事項についてはその旨率直に申し 人にけん銃を渡し,Aと2人で死体を運んで崖から投げ捨てたが,被害者の死体が木に引っ掛かってしまい,Aが崖の下に降りて行った。 (3)Bの検察官調書は,記憶の曖昧な事項についてはその旨率直に申し立てた上,被害者を緊縛した状況のみならず,被害者を殺害して死体を遺棄した状況についても,前後の経緯を含め,具体的に言及しており,被告人とAが被害者の頸部に巻かれたロープを引く際にBも2人の力を集中させようとしたことなど,自己に不利な点も有り体に認めている上,兄貴分として遇していた被告人の面前である公判廷における供述も,後記のような理由から,記憶が消失ないし混乱している部分がないではないにせよ,大筋では同旨となっており,また,Aの変更前の供述とも,細部こそ食い違いはあるものの,犯行の核心部分においては符合し,相互に補強し合う関係となっており,基本的に信用性が高いということができる。 (4) これに対し,弁護人は,Aの変更前の供述に対する2(5)①ないし④の主張がAの検察官調書における供述にも当て嵌まるとし,加えて,公判廷での供述態度に照らし,Bは質問者に誘導され易い傾向が顕著であること,捜査段階初期に全く異なる供述をしていたこと,公判廷で非常にあやふやで変遷が激しい供述をしていること,にもかかわらず,取調べ請求された検察官調書だけが主要部分において一貫した供述内容となっているのは,検察官の強烈な誘導による疑いがあることなどを指摘し,その信用性を論難する。 しかしながら,Aの第2回及び第3回公判における供述に関する2(5)①ないし④の主張が採用できないことは,前記のとおりであり,この理は,Bの検察官調書に関しても,次に付加するほかは,同様というべきである。すなわち,被害者の出血の有無に関しては,Bは,公判において,触りもしないし,まだ暗いので分 ことは,前記のとおりであり,この理は,Bの検察官調書に関しても,次に付加するほかは,同様というべきである。すなわち,被害者の出血の有無に関しては,Bは,公判において,触りもしないし,まだ暗いので分からなかった旨供述しているところである。また,けん銃を巡る遣り取りについては,Bは,検察官調書では,被告人が被害者に向け2発目を発射しようとしたが,けん銃が噛んだ状態になったことで,けん銃を直すよう指示された旨供述するところ,被害者が死んだ以上,けん銃を直す必要がないのはそのとおりである旨率直に認めつつ,想像ではあると断りながら,完全に止めを刺すためと思い,兄貴分である被告人から指示があった以上直す必要があると思った旨供述しており,確かに,止めであるから念には念を押すことは有り得るのであるから,けん銃を直すこと自体は特段不合理なものではない。 もっとも,Bが,捜査段階初期,自らが被害者の側頭部を狙ってけん銃を発射した旨重ねて上申ないし供述していたのに,その後,入院して,退院するや,一転して,検察官調書と同旨を供述するに至っていることは,弁護人指摘のとおりである。この経緯につき,Bは,公判で,一旦は兄貴分である被告人を庇って供述したものの,自身,重病であったのに,九死に一生を得たことから,全部供述した方が楽になれるので,きれいに供述するとして,途中からはありのまま供述したが,すると,逮捕前から夢の中に被害者を象徴するものが出て来ていたのに現れなくなった旨,印象的かつ迫真的心情を吐露しており,十分納得できる。ちなみに,Bは,供述経緯の立証趣旨で取り調べた検察官調書においては,捜査段階の初期の供述は,被告人が,やくざ稼業上の兄貴分に当たるため,道義上,兄貴を庇うために,自分で兄貴がやったことの責任も背負って行きたいと思い,特に,自分としては,こ べた検察官調書においては,捜査段階の初期の供述は,被告人が,やくざ稼業上の兄貴分に当たるため,道義上,兄貴を庇うために,自分で兄貴がやったことの責任も背負って行きたいと思い,特に,自分としては,この先長く生きることができないと思っているので,やくざとして,最後に兄貴分のやったこともすべて自分で背負って,華々しい生き方を見せてから墓に収まりたいという気持ちがあったからである旨説明する一方,途中の段階で供述を変更しようと思った理由については,入院して生死を彷徨うような危篤状態に陥った際,これまで親孝行を全くしてこなかった母等が病院に駆け付けてきてくれて,不肖の息子である自分に本当に優しい言葉を掛けてくれたのに比べ,被告人は,兄貴分であるにもかかわらず,兄貴らしいことを全くしてくれず,以前病気で入院した際にも見舞いにも一切来てくれなかったことに思いを致すと,自分としては,被告人を庇うのではなく,正直に事実を話し,身をきれいにした後,もし,刑期を終えて生きていることができるのであれば,親孝行を少しでもしたいと思うようになった旨公判供述と骨子を同じくする,より敷衍した首肯できる理由を明らかにしている。したがって,Bが,捜査段階初期に異なる供述をしていたことは,検察官調書の供述の信用性を妨げる事情になるものではない。 なお,Bは,第4回及び第5回公判において,被害者は,群馬県n市方面に向かう車中で既に死亡していたと思ったなどとする点を始めとして,前記捜査段階の供述と一部異なる供述をし,あるいは,問答がちぐはぐとなったり,ないしは,被害者と共犯者の氏名を混同し,若しくは,被害者の死亡後に被害者の殺害を決意したと矛盾する供述をしている部分がないではなく,併せて,興奮状態に入ったとか,頭の中が混乱してこんがらかって分からないとか,記憶が薄れた,あや を混同し,若しくは,被害者の死亡後に被害者の殺害を決意したと矛盾する供述をしている部分がないではなく,併せて,興奮状態に入ったとか,頭の中が混乱してこんがらかって分からないとか,記憶が薄れた,あやふやになった,頭がぼけて記憶がないとか,頭が錯乱してなどと記憶の減退や混乱を来している旨自認する一方,捜査段階では,体調に十分配慮して貰い,途中からは犯行当時の記憶をありのまま正直に話している旨明言している。これについては,関係証拠によれば,Bは,逮捕前の段階で,健忘症を呈する肝臓癌の末期状態にあり,当然,肝臓癌の悪化に伴い,健忘症も酷くなることが医学的知見とされていることからすれば,Bは,捜査段階時に比べて,一定期間が経過した公判時には病状がより悪化したため,公判時の供述内容に記憶の消失や混乱を来した面が現れているとみられ,前記のとおり,大筋では,捜査段階における供述と同旨となっていることにもかんがみれば,捜査段階における供述内容がより信用性があることは明らかである。また,Bの検察官調書を通覧する限りでも,前記のとおり,記憶の曖昧な点は率直にその旨申し立てていたり,自己の主張を通している箇所も存する上,被告人の検察官調書とはもとより,Aの検察官調書とも細部では食い違いがあることなどからすれば,検察官の強い誘導に基づいて作成されたものとは認められない。 以上から,Bの検察官調書における供述の信用性を論難する弁護人の主張はいずれも採用できない。 4 ところで,被告人は,捜査段階の途中から,役割分担や共謀の有無はともかくとして,CからDの依頼としての話を持ち込まれて了承し,被告人,誘った知人のA及びBの3人で,被害者を拉致監禁し,群馬県内の山中まで連行の上,殺害するとともに,死体を投棄したとの大枠の構図自体は認める供述をしており,第1回公判にお を持ち込まれて了承し,被告人,誘った知人のA及びBの3人で,被害者を拉致監禁し,群馬県内の山中まで連行の上,殺害するとともに,死体を投棄したとの大枠の構図自体は認める供述をしており,第1回公判における罪状認否でも,殺人の点について,自らは被害者に対する殺意は消失していたとしながらも,群馬県内の山中において,Bが被害者に対しけん銃で発射したが,最初の共謀に基づき,A及びBが被害者を殺害した以上は,被告人にも責任はある旨陳述(以下,捜査段階における供述を含め,「変更前の被告人の供述」ともいう。)していたにもかかわらず,第7回公判において,各犯行場所に関する訴因変更がなされた際,突如として従前の主張を翻し,有限会社丁で車を乗り換えた後,被害者を群馬県内の山中に連行してはおらず,fの温泉場にいるDに身柄を預けただけであるから,その後のことは分からず,被害者を殺害したことはもとより,死体遺棄の事実も存しないなどと供述(以下「変更後の被告人の供述」という。)するに至っている。 そこで,最初に,変更後の被告人の供述の信用性をみるに,被告人は,捜査段階で変更前の被告人の供述をした理由につき,Dに被害者を引き渡した際,被告人,A及びBの3人で被害者を殺害等したことにしてくれれば,10億円等をやると言われていたため,3人で口裏合わせをして供述したのであり,また,当初警察官の取調べに対し殺害等していない旨供述しようとしたが,警察官から,A及びBが自白しているので調書を合わせるよう言われ,本当のことを言っても聞いて貰えないと思い,警察官に教えて貰いながら供述調書を作ったものであるし,公判途中の段階で,供述を変更した理由については,金のことをあれこれするのが面倒臭くなったので,いっそのこと正直に話せば自分の気が紛れて納得するし,家族が面会に来て心配してくれる 作ったものであるし,公判途中の段階で,供述を変更した理由については,金のことをあれこれするのが面倒臭くなったので,いっそのこと正直に話せば自分の気が紛れて納得するし,家族が面会に来て心配してくれるので,殺人罪等により刑務所に行くことが耐えられなかったなどと説明している。 しかしながら,変更後の被告人の供述内容自体,被告人は,DからCを介して被害者の殺害等を依頼されたというのに,拉致監禁するや,Dにおいて,突如方針を変更し,被害者の身柄の引渡しを受けたばかりか,10億円等の見返りに,被告人らに殺害等の身代わり犯人となることを依頼したというのは,Dの対応として到底納得し難く,しかも,Cの公判供述によれば,Dは,犯行後,Aからの執拗な報酬の増額要求に苦慮し,Cと善後策を相談するなかで,犯行発覚を危惧し,被害者の死体の在処をCに問い質すなどしていることが明らかであるところ,こうしたDの言動とも整合性がない。また,被告人においても,齢60を数えながら,10億円等を貰うため,謂われのない殺人等の大罪を被り,生存中の出所も危うい長期間と見込まれる刑務所収容を敢えて選択したことになるが,これは通常は考え難い対応である。そして,被告人が,取調官から共犯者の供述に合わせるよう求められたとしながら,後に訂正しているものの,一旦は共犯者の供述の内容は聞かされていなかったとし,あるいは,当初から10億円等を貰うために口裏合わせのとおり虚偽自白するつもりだったとする一方で,警察官が言い分を聞いてくれないため,意に反して虚偽自白したとするなど,供述経緯に関する核心部分が自家撞着を来しているというほかはなく,もとより,A及びBの捜査段階における各供述と対比し,肝心の被害者殺害の実行者を含め,殺害状況等に著しい食い違いが存しており,取調官の意向に従い共犯者の供述に合 自家撞着を来しているというほかはなく,もとより,A及びBの捜査段階における各供述と対比し,肝心の被害者殺害の実行者を含め,殺害状況等に著しい食い違いが存しており,取調官の意向に従い共犯者の供述に合わせたとは到底考えられず,公判途中の段階に至り,気が変わったとする理由も説得力に乏しい。加えて,変更後の被告人の供述が真実であるならば,殺人等の大罪の責任を負わないことに帰する共犯者のA及びBも,同旨を供述しても良さそうに思われるが,両名ともそうした供述を全くしておらず,前記のとおり,種々の不満から従前の供述を翻し,殺人・死体遺棄について自己に有利な主張を縷々展開しているAの変更後の供述ですら,被害者を車で群馬県内の山中に連行の上,被告人かBが被害者にけん銃を発射し,被害者が崖下に転落したこと自体はあくまで維持しているのである。これらの諸事情を総合勘案すれば,変更後の被告人の供述は,為にする見え透いた弁解と評するほかなく,全くもって信用できない。 5(1)進んで,変更前の被告人の供述の信用性をみると,概要は,次のようなものである。 すなわち,被告人は,Cから被害者殺害を依頼されたものの,被害者の素性を聞いておらず,被害者が暴力団関係者の可能性もあると思ったので,使用方法が良く分からなかったが,いざとなったら,AかBに使用させるつもりでけん銃を携行した。A及びBも,当初から拉致の目的が被害者を殺害するためであることを知っていたが,被告人としては,まずは,Cとの間の揉め事について問い質すことを主目的として拉致し,その後,行き先を何ら打ち合わせをすることもないまま,Bが有限会社丁まで車を走らせた。有限会社丁では,誰も被害者を粘着テープで緊縛することもなく,被害者とともに車を乗り換えて発進させた。走行中,被告人は,けん銃に弾丸を装てんの上,サ こともないまま,Bが有限会社丁まで車を走らせた。有限会社丁では,誰も被害者を粘着テープで緊縛することもなく,被害者とともに車を乗り換えて発進させた。走行中,被告人は,けん銃に弾丸を装てんの上,サイレンサーを装着し,後部座席でうとうとしているうちに,Bの運転で山中に着き,山道を上っている間に目を覚ましたが,高所恐怖症から周囲の崖を直視できず,恐怖心を我慢することに専心していた。そのうち,Bが,山道の道幅が広くなった場所に車を停め,Aが,被害者を降車させたが,被害者に対し,ロープ等は使っておらず,被告人が,事によっては,殺害しないで逃がしてやる考えで,事情を聞こうと,銃口を向けながら話し掛けると,Bが,突然被告人からけん銃を奪い取り,被害者の上半身辺りに向けてけん銃を発射した。被害者が動かなくなり,被告人が指示を出した訳ではないのに,Aが被害者の死体を引きずって崖から捨てた。 (2) しかしながら,変更前の被告人の供述自体,被害者を殺害すべく拉致監禁する車中において,居眠りをするなど当該状況とは似つかわしくない対応振りとなっているし,けん銃の使用方法が分からないとしつつ,自ら用意したけん銃にサイレンサーを取り付けているのも辻褄が合わず,ましてや,被害者に事情を聞こうとした被告人から,Bが,けん銃を奪い取ってまでして被害者を撃ったいうのは,余りにも唐突というほかなく,しかも,舎弟分のBが被告人の意に反して被害者を殺害したのに全く咎めようとしていないなど,それ自体不自然不合理な点が少なくなく,また,第1回公判における罪状認否では,A及びBには伝えなかったものの,自らは被害者に対する殺意は消失していた旨到底納得し難い陳述もしているところである。そして,変更前の被告人の供述は,前後の経緯を含め,被害者殺害等の共謀の成立及び殺害・死体遺棄の各状況 ったものの,自らは被害者に対する殺意は消失していた旨到底納得し難い陳述もしているところである。そして,変更前の被告人の供述は,前後の経緯を含め,被害者殺害等の共謀の成立及び殺害・死体遺棄の各状況等における役割分担等の主要な点につき,信用性の高いAの第2回及び第3回公判における供述及びBの検察官調書における各供述と大きく齟齬し,実行犯のなかでは主犯の立場にあるにもかかわらず,不自然なほど被告人に有利な内容となっている上,殺人の実行行為に関しては,前記のとおり,本件犯行の数日後,被告人が,Cに対し,自らが被害者をけん銃で撃った旨自認する説明をしたこととも整合性に欠け,さらには,被告人が,公判段階途中からは,Dに存命の被害者を引き渡したとして,被告人,A及びBを実行犯とする殺人・死体遺棄の構図そのものさえ否定するまでに至るなど,責任転嫁的傾向が明らかに強いことをも勘案すれば,変更前の被告人の供述は,殺人事案に被告人が関与したとの限度では信用できるものの,役割分担や共謀等に関する部分は到底信用できない。 6 以上の次第で,信用に値するAの第2回及び第3回公判における供述並びにBの検察官調書等を総合すれば,判示第2及び第3の各事実を認定するのに十分であるといわなければならない。 (確定裁判)被告人は,平成15年1月10日東京地方裁判所で覚せい剤取締法違反の罪により懲役1年6月に処せられ,その裁判は同月27日に確定したものであって,この事実は検察事務官作成の前科調書によって認める。 (法令の適用)被告人の判示第1の所為のうち,逮捕監禁の点は刑法60条,220条に,営利略取の点は同法60条,225条に,判示第2の所為は同法60条,199条に,判示第3の所為は同法60条,190条にそれぞれ該当するが,判示第1は1個の行為が2個の罪名に触れる 0条,220条に,営利略取の点は同法60条,225条に,判示第2の所為は同法60条,199条に,判示第3の所為は同法60条,190条にそれぞれ該当するが,判示第1は1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,同法54条1項前段,10条により1罪として重い営利略取罪の刑で処断し,判示第2の罪について所定刑中無期懲役刑を選択し,以上の各罪と前記確定裁判があった覚せい剤取締法違反の罪とは同法45条後段により併合罪の関係にあるから,同法50条によりまだ確定裁判を経ていない判示各罪について更に処断することとし,なお,判示各罪もまた同法45条前段により併合罪の関係にあるが,判示第2の罪について無期懲役刑を選択したので,同法46条2項本文により他の刑を科さないで被告人を無期懲役に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中60日をその刑に算入し,訴訟費用は刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,首謀者である黒幕の廃棄物処理等を業とするDにおいて,長年にわたりc市の最高幹部や直接の窓口となる所管管理職に取り入るなどして様々な権益を享受していたが,市長の交代に伴い,廃棄物行政担当参事に返り咲き,再び厳正な職務執行に邁進する被害者が,恫喝等を繰り返しても,意のままにならず,このままでは死活問題と理不尽にも逆恨みした挙げ句,邪魔者は消せとばかりに,力尽くで排除しようと企て,仕事面で運命共同体的立場にあった下請業者のCに対し,被害者の抹殺等案を打ち明けて同調を求め,犯行発覚を免れるための口の堅そうな格好の殺し屋役の選定及びその交渉方を迫り,これを受けたCが,かねてから揉め事の解決の依頼歴を有しており,長らく暴力団組織の構成員であった被告人に白羽の矢を立てて,多額の報酬と引換えによる実行役話を持ち掛け,さし 選定及びその交渉方を迫り,これを受けたCが,かねてから揉め事の解決の依頼歴を有しており,長らく暴力団組織の構成員であった被告人に白羽の矢を立てて,多額の報酬と引換えによる実行役話を持ち掛け,さしたる抵抗なく了承した被告人において,知人の暴力団組織の元構成員であるA及び被告人のいわゆる舎弟分のBを誘い入れて動員し,被告人,A及びBの3人で,帰宅途中の被害者を車両内に無理矢理押し込み,最終的には群馬県内の山中まで強制連行した末,ロープで被害者の頸部を絞め付けるとともに,けん銃で止めを刺して殺害した上,死体を断崖から投棄したという凶悪な逮捕監禁・営利略取・殺人・死体遺棄の事案である。 D及びCは,Dの事業面における不当な権益ひいてはその恩恵に与る立場のCの経済的利益を死守するため,あろうことか,公務員として筋の通った職務執行に努めていた所管管理職の抹殺等を企図し,暴力団組織の構成員等歴を有する者を使って実行したものであり,目的のためには他人の尊い生命さえ奪うことを厭わない言語道断の悪行暴挙というしかなく,被害者とは特段の利害関係がないにもかかわらず,多額の報酬や犯行発覚回避目当て若しくは極めて安易な状況追随思考の下に,実行役を担った被告人,A及びBを含め,その卑劣で身勝手極まりない人命軽視の態度は厳しく糾弾されなければならず,もとより,動機に酌量の余地は皆無である。なお,本件犯行の背景事情に照らす限り,特定の業者に過ぎないDと密接な関係を取り結んでいた市の最高幹部や所管管理職等の中堅以上の幹部において,事もあろうに,Dに種々の不当な便宜を図り,あるいは,不正を黙認放置するなどという,自己の重責を忘れた特定の業者との馴れ合いや癒着体質さらには自己保身による事なかれ主義といった夙に指摘される公務員の悪弊による対応の累積が,Dをして本件の如く悪 るいは,不正を黙認放置するなどという,自己の重責を忘れた特定の業者との馴れ合いや癒着体質さらには自己保身による事なかれ主義といった夙に指摘される公務員の悪弊による対応の累積が,Dをして本件の如く悪辣な大逸れた犯行を発案敢行するまでに増長させた温床となった面があることは到底否定し難く,検察官の指摘を待つまでもなく,犯人達の刑事責任を些かも減じるものではないことは当然ながら,事ここに至るまでDを増長させるのに大なり小なり一役買った関係者においても一定の道義的非難を免れないといわざるを得ない。 犯行の具体的遣り口をみると,まず,逮捕監禁及び営利略取の点は,実行役の被告人,A及びBにおいて,数度にわたって下見を重ね,Cを通じて入手したDからの地図をも頼りに,被害者の勤務先や自宅を探し,被害者の動向を確認するなどの準備を行った後,本件当日夕方,普通乗用自動車に分乗し,帰宅を待ち伏せし,自転車で帰途に就いた被害者を追尾し,人気のない田舎道に入るや,好機到来と考えて,一旦追い越した上で,Aにおいて,道を尋ねるように装って停止させ,被害者が親切心から応じようとしたものの直ぐさま危険を察したと踏むや,いきなり被害者の頸部付近に腕を回して被害者の身体を押さえ込んで,前記自動車の後部座席まで引っ張って行き,大声で助けを求めて激しく抵抗するのも意に介さず,被告人において,反対側から被害者を車内に引っ張り,A及びBにおいて,一緒に車内に押し込み,被告人及びAにおいて,被害者を両脇から押さえ付けて,Bにおいて,同車両を発進走行させ,被告人及びAにおいて,強烈な脅し文句を告げるなどし,途中の段階では,さらに,少なくとも,Aにおいて,粘着テープで被害者の目や口を塞ぐとともに両手足を縛るなど徹底的な拘束状態に置き,尾行を危惧し,別の自動車に乗せ替えて,山中に至るまで合 告げるなどし,途中の段階では,さらに,少なくとも,Aにおいて,粘着テープで被害者の目や口を塞ぐとともに両手足を縛るなど徹底的な拘束状態に置き,尾行を危惧し,別の自動車に乗せ替えて,山中に至るまで合計約9時間もの長時間にわたって被害者の自由を奪い,苦痛と恐怖を植え付けたものであって,これら態様は,計画的で大胆かつ粗暴極まりない。そして,被告人,A及びBは,未明の山中において,確定的殺意の下に,被告人において,既に緊縛等により抵抗の術を奪われていた被害者の頸部にロープを二重に巻き付け,被告人及び被告人の指図を受けたAにおいて,巻き付けたロープの両端を2人掛かりで引いて絞め続けた上,なおも,被告人において,用意していたけん銃で身体の枢要部である被害者の上半身目掛け,至近距離から発砲して止めを刺しているのであって,殺害態様も,一方的で残忍かつ冷酷非情というほかはない。あまつさえ,被害者殺害を遂げるや,被告人が指示し,A及びBにおいて,遺体を道路脇の断崖から崖下に無造作に投棄する仕打ちさえ行っているのであり,被害者に対する哀れみの情や死者に対する畏敬の念を見て取ることができない。 被害者は,市の廃棄物行政を担当する所管管理職として,市民の健康や環境保全に意を尽くし,従前Dと馴れ合いや癒着の関係等を継続してきた担当部局の体質を打破し,適正かつ健全な行政を全うすべく,一部上司同僚の職責に背を向けた対応やDの執拗な恫喝等にも屈せず,身の危険を感じつつも,毅然とした姿勢で法規等に則った行政の執行に当たり,まさにあるべき公務員としての使命や姿を体現していたものにほかならず,公務員の鏡として高く賞賛されこそすれ,本件凶行を甘受しなければならないような落ち度は何一つとしてなく,市長も殉職同然として深い哀悼の意を表明しているところである。そして,被害者は,手堅 かならず,公務員の鏡として高く賞賛されこそすれ,本件凶行を甘受しなければならないような落ち度は何一つとしてなく,市長も殉職同然として深い哀悼の意を表明しているところである。そして,被害者は,手堅い行政手腕を高く評価されていたことはもとより,明るく誠実かつ親切な性格で,家族を思いやり,小学生に熱心にバレーボールを指導するなど,公私にわたり充実した生活を送っていたにもかかわらず,勤務先からの帰途突如襲われ,苦痛と恐怖を与えられた挙げ句,50代後半で非業の死を遂げたばかりか,山中の崖下に遺棄されて今なお遺体が発見されず仕舞いの仕打ちを受けており,犯人達による凶行が到底許し難いことは勿論のことながら,一部上司同僚の恣意的でかつ無責任な職務執行がその一背景にあることにも思いを致すと,被害者の無念さは察するに余りあり,結果は誠に重大である。被害者の家族は,所在不明直後から無事の帰還を祈り,心当たりを探すなどして,1年数か月にわたって,心労の日々を送ってきたが,結局は,被害者殺害等との悲惨な結果に直面するを余儀なくされただけでなく,遺体との対面や引取りすら叶えられておらず,とりわけ,結婚以来,愛情に包まれながら長年連れ添い,被害者退職後の生活を種々思い描いていた妻は,気持ちの整理も付けられない状態を強いられており,残された家族にとっても,惨過ぎる事態を招来し続けているのであり,遺族の悲憤及び処罰感情が甚だ峻烈なことも当然であるが,被告人は格別慰謝の措置を講じていない。 本件犯行の結果,被害者が所在不明となった直後の段階で既に,市の一部関係職員がDの仕業と感付き,明日は我が身と動揺萎縮をするなどの悪影響を引き起こしていた上,時を経て全貌が明らかとなり,事の真相が,行政対応への不満を理由とする担当職員を標的とした暴力脅迫沙汰ないしは監禁沙汰に止まらず 感付き,明日は我が身と動揺萎縮をするなどの悪影響を引き起こしていた上,時を経て全貌が明らかとなり,事の真相が,行政対応への不満を理由とする担当職員を標的とした暴力脅迫沙汰ないしは監禁沙汰に止まらず,その極限的事態というべき類例を見ない殺人等事案であったことが疑う余地のなくなったところより,前記のような背景事情とも相俟ち,心ある市職員を震撼させ,市民に衝撃や不安を与えたことも推測に難くない。ちなみに,本件犯行の発覚を機に,市や市議会において,背景となった一般廃棄物処理許認可事務等に対する調査検討作業が実施され,被害者の尊い犠牲を無駄にせず,二度と本件のような悲劇が繰り返されないためとして,幾つかの具体的方策とともに,市の四役の倫理の確立や職員の資質の向上が提言されるに至っている。 進んで,被告人の個別事情を検討するに,かねてから揉め事の解決を相談するよう告げていたCから,Dを黒幕とする被害者殺害等の陰謀計画における殺し屋役等を依頼されるや,さしたる躊躇もなく,多額の報酬目当てに,自身には何ら特別の利害関係のない被害者殺害等を請け合って実行に及んでおり,余りにも身勝手な人命軽視の利欲的動機に酌量の余地は全くない。また,被告人は,依頼に係る被害者殺害等を首尾良く成し遂げるため,Cから犯行の具体的方法等の一任を取り付けていたこともあり,必要な人員として動員を図るべく,取り敢えずは,殺害等目的は明らかにせず,人の拉致等だけで多額の報酬が得られる旨甘言を弄して,知人のA及びBに拉致監禁を決意させて実行に及び,次いで,被害者を殺害するのもやむなしとの状況を作出し,2人を最終的に狙いとした被害者殺人等事案にまで引き込んだ張本人である。そして,具体的犯行態様をみても,被告人は,まずは,拉致監禁の機会を窺うため,Cから被害者宅等に関する地図を入手し,下見 出し,2人を最終的に狙いとした被害者殺人等事案にまで引き込んだ張本人である。そして,具体的犯行態様をみても,被告人は,まずは,拉致監禁の機会を窺うため,Cから被害者宅等に関する地図を入手し,下見に役立て,拉致監禁用の車両の提供をするとともに,被害者を車両内に押し込めるのにも手を貸し,車両を運転するBに道順を指図の上,殺害等現場まで導き,実際の殺害場面においては,確定的殺意の下,一旦自ら用意していたけん銃で被害者の射殺をAに指示したが,Aが拒否する姿勢を示すと,自ら被害者の頸部にロープを巻き付けた後,片方の端をAに投げ渡し,一緒に引くようにとの指示を与えて,これを了承したAと一緒に,同ロープを強く絞め続け,挙げ句の果てには,止めとして前記けん銃を被害者の身体の枢要部に向けて発射するとの決定的な実行行為を担い,さらに,A及びBに指図して死体遺棄行為をもさせ,事後には,当然のように,Cから約束の報酬を受領するなどしている。このように,被告人は,本件各犯行の具体的手順や方法等の大半を立案するとともに,他の実行犯であるA及びBを指揮し,自らも主要な実行行為を担うなど,犯行を統括推進した中心人物にほかならず,不埒な陰謀を企てた黒幕である首謀者のDに比肩すべき重要な役割を果たしたといわなければならない。にもかかわらず,被告人は,捜査段階でも,殺人の実行行為を担ったことや死体遺棄への関与を認めずに,AやBに責任転嫁する供述に終始し,公判段階においては,罪状認否で,殺人に対する一定の責任は認めるとしながら,自らの殺害意思は消失していた旨の不合理な弁解を弄するとともに,審理の途中からは,本件は被害者に対する殺人等事案ではなく,Dに引き渡しただけの拉致監禁事案であった旨の見え透いた虚構の主張を展開するなど,自己保身に汲々としており,真摯な反省悔悟の情を窺う ともに,審理の途中からは,本件は被害者に対する殺人等事案ではなく,Dに引き渡しただけの拉致監禁事案であった旨の見え透いた虚構の主張を展開するなど,自己保身に汲々としており,真摯な反省悔悟の情を窺うことができない。 加えて,被告人は,昭和37年以降,殺人未遂等の罪で懲役6年及びけん銃所持の罪で懲役1年に各処せられた前科を含めて8度の服役歴を有していたのみならず,本件犯行当時は,前刑による執行猶予期間中の身にもあった上,犯行後僅か8か月足らずで,確定裁判のとおりの覚せい剤取締法違反の罪を惹起して,実刑判決を受けるに至っており,規範意識及び更生意欲の欠如にも甚だしいものがある。 以上によれば,被告人の刑事責任は極めて重大であるといわなければならない。 そうすると,本件陰謀を発案したのは黒幕のDであること,被告人が,捜査段階途中から公判途中までの間は,逮捕監禁及び営利略取事案の大枠の構図を認めるとともに,果たした役割等はさておき,殺人事案に対する責任も否定していなかったこと,本件各犯行は,確定裁判の罪と併合罪の関係に立つこと,そのほか,被告人が既に60歳を過ぎていることなど,被告人にとって酌むべき諸事情を最大限考慮したとしても,被告人の刑事責任はなお余りに重大というほかなく,無期懲役をもって臨むのはやむを得ないと判断し,主文のとおり量定した次第である。 (求刑無期懲役)平成16年7月15日宇都宮地方裁判所刑事部裁判長裁判官飯渕進裁判官岩渕正樹裁判官渡辺一昭

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