主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用及び補助参加人の補助参加によって生じた費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求める裁判 1 請求の趣旨(1) 被告は,被告補助参加人に対し,金380万3400円及びこれに対する平成12年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。 2 請求の趣旨に対する答弁(1) 原告の請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 第2 事案の概要本件は,A市の住民である原告が,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,A市の上下水道事業管理者である被告に対し,平成12年9月11日の集中豪雨によりa川が溢水し,bポンプ場やc地区に浸水被害が生じたのは,A市からa川河口のポンプ場の管理を請け負っている被告補助参加人(以下「補助参加人」という。)が人員配置を誤ってbポンプ場を無人にし,また同ポンプ場の樋門及びポンプの操作を誤った債務不履行があったためであると主張して,補助参加人にbポンプ場設備の復旧費等380万3400円及びこれに対する債務不履行があった前同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の損害賠償を請求するように求めた事案である。 1 前提事実(証拠を掲記しない事実は当事者間に争いがない。)(1) 原告は,A市の住民であり,A市議会議員でもある。 (2) A市は,補助参加人に対し,A市内のbポンプ場ほか8か所のポンプ場の運転管理業務を年度ごとに委託しており,平成12年4月1日に,同日から平成13年3月31日までを期間とする運転管理業務委託契約を締結した(甲5)。同契約においては,受託者が,契約の履行に当たって第三者に及ぼした損害のために生じた費用は受託者が負担すること(11条),受託 3年3月31日までを期間とする運転管理業務委託契約を締結した(甲5)。同契約においては,受託者が,契約の履行に当たって第三者に及ぼした損害のために生じた費用は受託者が負担すること(11条),受託者は,台風時や集中豪雨など緊急にポンプの運転をしなければならないときは,直ちに必要な措置をとり,適切に対応すること(12条)が規定されている。各ポンプ場の位置は,別紙1のとおりである。 また,A市は,受託者に対して,ポンプ場運転管理操作要領を定めている(甲6)。同要領には,大雨注意報,警報等が発令された場合,その他気象の状況等によりA市が指示したときは,直ちにポンプ場を適切に管理することができる要員を確保し,後記(3)のポンプ,補機類の運転操作を行うこと(9条)が規定されている。 (3) bポンプ場には,平成12年9月11日当時,樋門と次の6基の排水ポンプが設置されていた。 ア 1号ポンプ口径1300ミリメートルエンジンポンプ(排水能力,毎分220立方メートル)d港管理組合(以下「管理組合」という。)設置,手動式イ 2号ポンプ口径500ミリメートル水中モーターポンプ(同,毎分40立方メートル)A市設置,水位による自動始動・停止式ウ 3号ないし6号ポンプ口径800ミリメートル水中モーターポンプ(同,毎分80立方メートル)管理組合設置,水位による自動始動・停止式(4) e消防署(以下「e消防署」という。)付近では,平成12年9月11日,次のとおりの降雨があった(以下「本件豪雨」という。)。 午後1時から午後2時まで 51.0ミリメートル午後2時から午後3時まで 52.5ミリメートル午後3時から午後4時まで 85.0ミリメートル午後4時から午後5時まで 90.5ミリメートル(5) bポンプ場では,2号ないし6号ポンプが水位の上昇に伴っ 時から午後3時まで 52.5ミリメートル午後3時から午後4時まで 85.0ミリメートル午後4時から午後5時まで 90.5ミリメートル(5) bポンプ場では,2号ないし6号ポンプが水位の上昇に伴って自動的に始動していたが,排水が追い付かず,1号ポンプを手動で始動させないまま,午後2時45分ころ,本件豪雨によりポンプ室が浸水しポンプが冠水したため,その機能を停止した。 (6) bポンプ場では,ポンプの停止のために内水位が上昇し,午後3時ころ,防潮堤の開閉扉の開口部より内水が流出し始めた(甲7)。 A市c地区では,本件豪雨によりa川が氾濫し,浸水被害が発生した。 (7) 本件豪雨により,A市は,次の費用を支出した(以下「本件支出」という。)。 ア bポンプ場の災害復旧費198万4500円イ c地区住民に対する市民税等の減免費用 87万7900円ウ c地区消毒費用38万4000円エ c地区水害ごみ処分費用55万7000円オ合計380万3400円(8)ア原告は,平成14年9月30日,A市監査委員に対して,A市が補助参加人に対して,上記(7)の損害について賠償請求するよう求める住民監査請求を行った(甲45)。 イ A市監査委員B,C及びDは,平成14年11月28日,原告の監査請求を棄却した(甲16)。 (9) 原告は,平成14年12月4日,A市長を被告として本件訴訟を当裁判所に提起した。 (10) A市では,「A市水道事業の設置等に関する条例の一部を改正する条例」が平成16年10月8日に公布され,平成17年4月1日から施行された。同条例によって,A市の上下水道事業に地方公営企業法全部が適用されることとなり,上下水道事業管理者が置かれたため,A市ではポンプ場に関する事項について損害賠償の請求権限は,A市長から,上下水道事業 同条例によって,A市の上下水道事業に地方公営企業法全部が適用されることとなり,上下水道事業管理者が置かれたため,A市ではポンプ場に関する事項について損害賠償の請求権限は,A市長から,上下水道事業管理者の事務として被告に承継されたので,当裁判所は平成17年5月19日その旨の決定をした。 2 争点(1) 本件豪雨の際のbポンプ場の管理において,補助参加人には運転管理業務委託契約上の善管注意義務違反にあたる次の過失があったか。 ア補助参加人は,平成12年9月11日,終日,樋門を開けておくべきであったのに,同日午前11時ころ,樋門を閉めた。 イ補助参加人は,平成12年9月11日,bポンプ場に職員を配置して同日午後2時に樋門を開けるべきであったのに,適切な職員配置をせず,樋門を開けなかった。 ウ補助参加人は,平成12年9月11日午後0時30分ころ以降,2号ないし6号ポンプの自動運転を手動運転に切り替え,a川の水位をT.P(東京湾の平均潮位を基準とした地表面の標高を表す記号。以下「TP」と表記する。)-0.3メートル以下に保つよう,1号ないし6号ポンプを手動で操作すべきであったのに,これを怠った。 (2) 補助参加人の過失とA市が被った損害との因果関係の有無 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(運転管理業務委託契約上の善管注意義務違反にあたる過失の有無)について(原告の主張)ア補助参加人が平成12年9月11日午前11時ころ樋門を閉めた過失(ア) b樋門の排水能力樋門の自然排水能力は毎分1140立方メートル(毎秒19立方メートル)である。bポンプ場の各排水ポンプと樋門のa川流域の時間当たり雨量に対応する排水能力を水理合理式(ラショナル方式。計算式は下記のとおり)を用いて計算すると下記のとおりとなる。 記水理合理式(ラショ である。bポンプ場の各排水ポンプと樋門のa川流域の時間当たり雨量に対応する排水能力を水理合理式(ラショナル方式。計算式は下記のとおり)を用いて計算すると下記のとおりとなる。 記水理合理式(ラショナル方式):Q=1/360×C×I×AQ:雨水流出量(立方メートル/秒)C:流出計数(a川改修事業設計値は0.74)I:降雨強度(ミリメートル/時)A:排水面積(a川改修事業設計値は140ヘクタール)① 1号ポンプ(手動運転式ポンプ)220/60×360/0.74/140 = 12.74② 2号ないし6号ポンプ(自動運転式ポンプ合計)360/60×360/0.74/140 = 20.84③ 樋門(自然排水能力)1140/60×360/0.74/140=66.02このように,bポンプ場の1号ないし6号ポンプすべてを稼働しても1時間当たり33.59ミリメートルの雨量にしか対応できない(2号ないし6号ポンプはあわせて時間当たり20.84ミリメートルの雨量にしか対応できず,1号ポンプは時間当たり12.74ミリメートルの雨量にしか対応できない。)のに対し,b樋門の自然排水能力は毎分1140立方メートル(毎秒19立方メートル)であり,樋門を開扉しておけば1時間当たり66.02ミリメートルの雨量が自然流下したはずである。 (イ) 樋門を閉めた過失樋門は,高潮時の防潮を目的として閉じられるものであり,通常時には開けておくべきものである。このことは,管理組合とA市との間の管理委託契約書において樋門を高潮時の防潮のため以外に使用してはならない旨が明記されていることや,A市の準用河川a川調整池建設計画(甲23)において樋門が開けられていることを前提に計画が立てられていることから,明らかである。 平成12年9月11日は,高潮注意報も高潮警報も発令 れていることや,A市の準用河川a川調整池建設計画(甲23)において樋門が開けられていることを前提に計画が立てられていることから,明らかである。 平成12年9月11日は,高潮注意報も高潮警報も発令されておらず,樋門の両隣にある管理組合が管理する高潮対策のための防潮扉も開かれたままであった。もとより,当日は大雨洪水警報が発令中であったのだから,樋門は終日開けておかなければ危険であり,同日の干潮時である午前10時42分の直後の午前11時ころに樋門を閉じる必然性は全くなかった。それにもかかわらず,同日午前11時ころ樋門を閉めた補助参加人の行為には,運転管理業務委託契約上の善管注意義務に違反する過失がある。 (ウ) 被告・被告補助参加人の主張に対する反論被告らは,高潮時,上げ潮に向かう中で樋門を開けることは,海水逆流の危険をはらむと主張する。 しかし,当日の潮位は,いずれもY.P(d港の平均潮位基準面を表し,TPとの差は1.38メートルである。以下「YP」と表記する。)で午後2時に1.32メートル,午後3時に1.71メートル,午後4時に2.02メートル,午後5時に2.18メートルであったところ,a川の水位は,午後2時に1.50メートル,午後2時5分に1.80メートル,午後2時20分に2.30メートルであったのであるから,午後2時以降,a川の水位は,潮位よりかなり高くなっていた。 a川の水位が潮位より高い間は,海水逆流の危険はない。 また,当日波浪注意報が発令されていたことは,樋門の外側が,入り江の中の入り江となっていて,波浪注意報が出ていても波のたたない海上であることからすれば,上記義務を否定するものではない。被告や補助参加人は,波浪注意報の発令ばかりを強調するが,一方で大雨洪水警報の発令には全く意を払っていないのである。また,排水した河 たない海上であることからすれば,上記義務を否定するものではない。被告や補助参加人は,波浪注意報の発令ばかりを強調するが,一方で大雨洪水警報の発令には全く意を払っていないのである。また,排水した河水が戻ったり海水が逆流する恐れについては,b樋門には,スルースゲートのほかにフラップゲート(逆流防止や海水の流入を防止するためのゲート)も設置されていたのであるから,フラップゲートにより対処可能であった。 イ補助参加人が適切な職員を配置せず,同日午後2時に樋門を開けなかった過失(ア) 人員配置の不適切さ大雨洪水警報発令中に樋門を閉じるのであれば,いつでも樋門を開けることができるような人員配置は不可欠である。 それにもかかわらず,補助参加人は,大雨洪水警報を無視して防災計画上何らの位置付けもない株式会社E(以下「E社」という。)の発表した予測最高雨量(午後1時から2時の1時間当たり30ミリメートル)に依拠して,2号ないし6号ポンプの運転で十分対応できるものと勝手に判断し,3名の要員をfポンプ場に配置してbポンプ場は無人にした。同日午後2時にgポンプ場の集中管理室でbポンプ場からの高水位警報が鳴った時には,gポンプ場の集中管理室も10分以上無人であったし,bポンプ場も無人であったから,同時点において樋門を開ける措置をとることができず,その結果,a川の溢水を招いたものである。 補助参加人がE社の情報に依拠したことも間違いであったが,同社の降雨予測である1時間あたり30ミリメートル(毎秒8.63立方メートルの流入水量)を前提としても,前記のとおり自動運転の2号ないし6号ポンプはあわせて時間当たり20.84ミリメートルの雨量にしか対応できないから,自動運転では排水(毎秒6立方メートルの排水量)がおいつかずに手動の1号ポンプを運転しなくてはな 動運転の2号ないし6号ポンプはあわせて時間当たり20.84ミリメートルの雨量にしか対応できないから,自動運転では排水(毎秒6立方メートルの排水量)がおいつかずに手動の1号ポンプを運転しなくてはならない事態が想定された。したがって,bポンプ場に職員を配置しておかなかったことは明らかな誤りである。また,大雨洪水警報発令中に,現場責任者が拠点ポンプ場である新富州原ポンプ場の集中管理室を空けて,ほかの作業をしなくてはならないような人員配置は誤っている。 (イ) 被告・補助参加人の主張に対する反論補助参加人は,午後1時からfポンプ場の雨水1号ポンプのグリスアップ作業を行ったために,bポンプ場を無人にしたというが,大雨洪水警報が発令中であり,グリスアップ作業は2名でもできるのであるから,bポンプ場に1名を残し,2名をfポンプ場に派遣すれば足りた。また,「東海集中豪雨時におけるbポンプ場運転関係資料」(甲7)中には,午前11時30分から午後1時までの間fポンプ場に5名の職員が配置されていた旨の記載があることから,午後1時の時点ではグリスアップのやり替え作業は終了していたものと思われ,補助参加人の上記主張内容には疑問も存する。 また,補助参加人は,従前1時間当たり30ミリメートルを超える降雨について2号ないし6号ポンプの自動運転で対応できていたというが,これは,降り始めの雨は一定の降雨量(a川の流域の場合には130ミリメートルから150ミリメートルくらいまで)に達するまでは地面に浸透したり田畑に貯水され,流出計数どおりに流れてこないからにすぎない。当日は既に午前中に100ミリメートル以上の降雨があり,a川の流域に十分保水や貯水がなされていたため,1時間当たり30ミリメートルの降雨に対し2号ないし6号ポンプの自動運転では対応できない状態であった は既に午前中に100ミリメートル以上の降雨があり,a川の流域に十分保水や貯水がなされていたため,1時間当たり30ミリメートルの降雨に対し2号ないし6号ポンプの自動運転では対応できない状態であった。 (ウ) 補助参加人の上記のような人員配置及びその結果同日午後2時に樋門を開けなかったことは,運転管理業務委託契約上の善管注意義務に違反する過失である。 ウ補助参加人が同日午後0時30分ころ以降,1号ないし6号ポンプを手動で操作しa川の水位をTP-0.3メートル以下に保たなかった過失管理組合による「(b樋門)排水ポンプ容量の検討」(甲2)には,bポンプ場の最大時の排水ポンプ容量(毎秒9.6立方メートル)は,小さな河道貯留を最大限に利用するためピーク流出量,約1時間前に河川側水位をTP-0.3メートル以下にする必要があり,現実にはピーク時間を予測することは困難であるから常にa川の水位をTP-0.3メートル以下となるように刻々と変化する流入に対して微妙なポンプ制御が必要であることが記載されている。 したがって,当日午後0時30分ころ以降は,補助参加人は1号ないし6号ポンプを手動で操作し,a川の水位をTP-0.3メートル以下に保つことが必要であった。 (被告・補助参加人の主張)ア樋門を閉めたことについて(ア) 原告は,a川の自然排水能力は1時間あたり66.02ミリメートルであり,樋門を開けていればその降雨量に対応できると主張する。 しかし,a川の自然排水能力が1時間あたり66.02ミリメートルであるとの主張は,樋門の外側の海面高が0である場合にだけ該当するのであるから,現実の自然排水能力とは異なる。しかも,bポンプ場は,ポンプの排水管と樋門とが隣接して設置されており,排水管からの戻りを考慮する必要があるため,原告の計算には合理性がない。 該当するのであるから,現実の自然排水能力とは異なる。しかも,bポンプ場は,ポンプの排水管と樋門とが隣接して設置されており,排水管からの戻りを考慮する必要があるため,原告の計算には合理性がない。 (イ) a川には河川としての遊水機能がなく,降雨時には河川での貯留がほとんどできず,満潮時には自然流下の能力が全くないため,河川の水位をポンプ排水によって低水位に保つ必要がある。 bポンプ場周辺の住民にとって海水逆流による溢水被害の危険は切実な問題であり,補助参加人としては高潮時で潮位が上昇に向かうときには,樋門を閉めた上で降雨による水位の上昇に対してはポンプによる強制排水を行うこととしてきた。A市と管理組合との管理委託契約において樋門の使用が許される「高潮時」とは,「通常の満潮位よりも潮位が高くなる場合,つまり高潮や波浪の警報・注意報が発令されているか,発令されていなくても低気圧の接近等による潮位の上昇による影響でa川へ海水が逆流し,溢水あるいは溢水しないまでも川岸高の直下まで水が押し寄せる可能性があり,周辺地域に浸水の被害を及ぼすおそれがある場合」のことをいうのである。 当日は,低気圧下で午前11時からは上げ潮になり,波浪注意報が発令されて潮位が通常より高くなることが予想されたため,午前11時ころに樋門を閉めてポンプによる排水を実施したものであり,補助参加人の管理方法に何ら問題はなく,過失は存しない。 なお,フラップゲートの管理者は樋門と同じく管理組合であるところ,A市は同組合から管理委託を受けておらず使用の指示を一切受けていないから,A市が補助参加人に対しフラップゲートの使用を委託する余地はなく,現に委託していない。そうである以上,フラップゲートの不使用について補助参加人の過失を問うことはできない。加えて,フラップゲートは,長年に が補助参加人に対しフラップゲートの使用を委託する余地はなく,現に委託していない。そうである以上,フラップゲートの不使用について補助参加人の過失を問うことはできない。加えて,フラップゲートは,長年にわたって開閉の措置が取られておらず,実際上の使用に適応するかどうか多大な疑問が存在するし,あくまでスルースゲートの補助的な役割を担うもので,内外の水位差が小さいときにフラップゲートを使用するとその弁が支障となって内水がスムーズに排水されないおそれもあり,機能面での信頼性が低い。 イ人員配置,樋門を開けなかったことについて(ア) 原告は,当日午後2時ころに樋門を開けるべきであったというが,高潮時,上げ潮に向かう中で樋門を開けることは海水逆流の危険をはらみ,設置者さえも想定しない危険な行為である。補助参加人が当日午前11時に樋門を閉めてその後はポンプによる強制排水をし,午後2時ころに樋門を開けなかったことについて過失は何ら存在しない。 (イ) 補助参加人が管理するポンプ場施設は,gポンプ場を拠点として9か所ある。補助参加人は,平成12年9月当時,ポンプ場施設を管理点検する職員として16名を交代勤務制で雇用し,本件豪雨当日の通常勤務時間帯(午前8時以降)には11名が出勤していた。9か所のポンプ場施設の大半の設備は,自動運転により管理されており,11名の職員を巡回させ,必要に応じて特定の施設に常駐させることにより,対応することは可能であった。ただし,本件豪雨当日には,突発的な集中豪雨にみまわれたため,対応能力を超えてしまったのである。 補助参加人は,午後0時50分ころ,A市から,E社が午後0時30分に発表した降雨予想最高雨量は1時間当たり30ミリメートルであるとの情報を受けており,その時点では,午後1時30分から午後2時30分まで59ミリメート 0時50分ころ,A市から,E社が午後0時30分に発表した降雨予想最高雨量は1時間当たり30ミリメートルであるとの情報を受けており,その時点では,午後1時30分から午後2時30分まで59ミリメートル,午後2時30分から午後3時30分まで69ミリメートル,午後3時30分から午後4時30分まで120.5ミリメートルという局地的で,記録的な集中豪雨を予見することができなかった。なお,気象専門業者による,発表時刻午後0時30分の当日の予測最高雨量は1時間当たり30ミリメートル(午後1時から午後2時)という降雨予測を前提として,補助参加人が行動したことは,何ら大雨洪水警報を無視したことにはならない。原告の主張する大雨洪水警報は,三重県北部のどこかで1時間雨量40ミリメートル,もしくは総雨量120ミリメートル以上の降雨が予想されるというものであるが,そのことは,A市域において1時間雨量40ミリメートル,もしくは総雨量120ミリメートル以上の降雨が予想されたことを意味するものではない。A市域に関しては,E社の「市役所防災対策課(市全域)向防災業務支援情報」の方を採用するのは当然であり,これを採用せずに,他の情報に依拠すべきとはいえない。 (ウ) 補助参加人は,大雨洪水警報が発令されるまでは,gポンプ場及びjポンプ場に宿直者を1名ずつ配置していた。しかし,補助参加人は,午前2時30分,A市から大雨洪水警報が午前2時18分に発令されたとの連絡を受け,直ちに宿直者2名を宿直体制(仮眠可)から夜勤体制に切り替えるとともに,他の職員の非常呼出しを行った。そして,午前3時50分ころには4名の職員が出勤し,2班に分かれてbポンプ場その他の各ポンプ場を巡回点検した。その後,さらに2名の職員が出勤した。e消防署管内の午前5時30分から午前6時30分までの雨量は44 3時50分ころには4名の職員が出勤し,2班に分かれてbポンプ場その他の各ポンプ場を巡回点検した。その後,さらに2名の職員が出勤した。e消防署管内の午前5時30分から午前6時30分までの雨量は44.5ミリメートルであったが,bポンプ場では,問題なく対応できていた。午前9時から午前11時までの職員2名による巡回点検作業の際にも,bポンプ場に全く問題は発生していなかった。 当日午前の人員配置は,各ポンプ場の巡回点検の報告結果をもとにして,各ポンプ場ごとのごみの量,自動運転できるポンプの台数,その時点の降雨量を考慮して,kポンプ場に1名,lポンプ場に1名,mポンプ場に2名,jポンプ場とnポンプ場をあわせて巡回点検する職員を2名,bポンプ場と雨水一号幹線除塵機をあわせて巡回点検する職員を2名,fポンプ場と特にごみの量の多いi排水機場をあわせて巡回点検する職員を3名,それぞれ配置した。bポンプ場と雨水一号幹線除塵機をあわせて管理する職員を2名配置したのは,両ポンプ場の位置的な問題と,予想される作業量を考慮して最適と判断したものである。そもそも当日午前中は,大雨洪水警報が発令中であったもののbポンプ場に職員を1名固定しておく必要性はない。 午後の人員配置は,降雨量,午前中に実施した巡回点検・作業の結果をもとにして,hポンプ場とi排水機場に予想を上回る量のゴミが流入しており,午前中に除塵作業ができなかったことを考慮し,あわせて巡回する職員を4名配置した。また,午前中にfポンプ場1号ポンプに重故障の不具合が2回発生していたこと,bポンプ場とfポンプ場が比較的近距離で雨水一号幹線除塵機は午前中に一応の作業を完了していたことを考慮し,両ポンプ場をあわせて巡回点検する職員を3名配置した。 そして,fポンプ場1号ポンプについては不具合の再発が懸念され,グリ 的近距離で雨水一号幹線除塵機は午前中に一応の作業を完了していたことを考慮し,両ポンプ場をあわせて巡回点検する職員を3名配置した。 そして,fポンプ場1号ポンプについては不具合の再発が懸念され,グリスアップのやり替え作業を行うため,3名の職員をまずfポンプ場に向かわせた。その作業内容に鑑みると3名が必要であったし,bポンプ場は,午後の打ち合わせの時点では降雨がわずかで,降雨の激しかった午前5時30分から午前6時30分までの間もポンプの自動運転で対応できていたことからひとまずfポンプ場の作業を優先させたものである。bポンプ場にはfポンプ場での作業を終えたあとに向かう予定であった。前記E社による午後0時30分の当日の予測最高雨量1時間当たり30ミリメートル(午後1時から午後2時)という降雨予測を前提とする限り,bポンプ場につき当面2号ないし6号ポンプの自動運転で対処すればいいと判断したことに過失はない。原告は,2号ないし6号ポンプでは時間あたり20.84ミリメートルの降雨にしか対応できないと主張するが,同数値は計算上求められたものにすぎず,常に実体と合致しているものではない。現実にも,当日午前5時30分から午前6時30分までの間,1時間あたり44.5ミリメートルの降雨があったが,2号ないし6号ポンプの自動運転で対応できていたし,補助参加人がA市からbポンプ場の管理を受託して以降の集中豪雨時のポンプの稼働状況をみても,1時間あたり30ミリメートルを上回る降雨に自動運転で対応できていた。 (エ) その後,予想を上回る降雨があり,午後2時ころ,bポンプ場の水位が1. 7メートルを越えたため,高水位警報がgポンプ場へ送信された。しかし,当時,gポンプ場に配置された1名の職員は除塵作業に従事していたため,高水位警報に気付くのが約10分遅れたが,これ 場の水位が1. 7メートルを越えたため,高水位警報がgポンプ場へ送信された。しかし,当時,gポンプ場に配置された1名の職員は除塵作業に従事していたため,高水位警報に気付くのが約10分遅れたが,これはやむを得ないもので,落ち度はない。 そして,「東海集中豪雨におけるbポンプ場運転関係資料」(甲7)の記載によると,fポンプ場にいた補助参加人の職員は,kポンプ場の職員から連絡を受けるまでもなく,午後2時にはbポンプ場に急行する必要があるとの認識を有していたことが分かる。したがって,kポンプ場の職員が高水位警報に気付くのが約10分遅れたことによる影響は全く生じていない。 ウ 1号ないし6号ポンプを手動としTP-0.3メートル以下に保つべき義務が存在しないこと原告は,管理組合の「(b樋門)排水ポンプ容量の検討」(甲2)の記載から,水位を常にTP-0.3メートル(YP1.08メートル)以下に保つべきであったと主張するが,この数値はあくまで排水ポンプの容量計算にすぎず,被告ないし補助参加人のポンプ運転の指針となるものではない。 bポンプ場の排水ポンプは,水位がTP-0.48メートル(YP0.9メートル)以上でないと起動しないように設定されており,各ポンプの自動運転方法は,水位がTP+0.22メートル(YP1.6メートル)で1台目(3号ポンプ)が起動し,TP+0.42メートル(YP1.8メートル)で2台目(4号ポンプ)及び3台目(5号ポンプ)が起動し,さらに,TP+0.92メートル(YP2.3メートル)で4台目(6号ポンプ)及び5台目(2号ポンプ)が起動するというものである。このように自動運転ではTP+0.22メートル(YP1.6メートル)で1台目起動と設定されているが,手動運転を実施してもポンプの据付位置からして,ポンプの起動水位はTP+0. するというものである。このように自動運転ではTP+0.22メートル(YP1.6メートル)で1台目起動と設定されているが,手動運転を実施してもポンプの据付位置からして,ポンプの起動水位はTP+0.12メートル(YP1.5メートル)以上であることが必要であり,これより水位が低い場合にポンプを起動させることは排水ポンプの継続運転の役割を果たさず,かえって故障の多発を惹起させる。また,手動運転を実施しても,停止水位をTP-0.48メートル(YP0.9メートル)以下とすることはできない。したがって,仮に起動水位をTP-0.3メートル(YP1.08メートル)として手動運転すると,運転水位の間隔がわずか0.18メートルとなり,ポンプの入り切りを極めて頻繁に行わなければならずモーターの空回りなどによりモーターを損傷し,最悪の場合には運転完全停止の事態を引き起こす恐れがある。したがって,水位を常にTP-0.3メートル(YP1.08メートル)以下に保つことは非現実的であって,そのような義務は全くない。 エ以上のとおり,補助参加人は,A市から大雨洪水警報の通知を受けた後,必要な措置をとり,適切に対応していたものであって,運転管理業務委託契約における善管注意義務違反の事実はない。 (2) 争点(2)(因果関係)について(原告の主張)ア樋門を開扉すれば,氾濫を避けることができた。 b樋門の自然排水能力は毎分1140立方メートル(毎秒19立方メートル)であり,樋門を開扉しておけば時間当たり66.02ミリメートルの雨量が自然流下した。 当時のa川全体の排水能力をみると,ネック点で溢水する流量が毎秒16. 143立方メートルから毎秒16.242立方メートルであり,その場合のb樋門での流量は毎秒17.184立方メートルから17.294立方メートルである。平成12年 ,ネック点で溢水する流量が毎秒16. 143立方メートルから毎秒16.242立方メートルであり,その場合のb樋門での流量は毎秒17.184立方メートルから17.294立方メートルである。平成12年9月11日はネック点で溢水していないのであるから,bポンプ場の樋門への流量はこれ以下であったことになる。そして,自動運転の2号ないし6号ポンプをあわせた排水能力は毎分360立方メートル(毎秒6立方メートル)であるから,同日のbポンプ場の樋門への流量は,毎秒6立方メートル以上毎秒17.184ないし17.294立方メートル以下となる。 したがって,毎秒19立方メートルの排水能力を持つ樋門を開けておけばbポンプ場は浸水しなかったし,a川は溢水しなかった。 イ c地区の詳細な浸水現象を再現した調査結果(乙16)及びc地区の浸水状況を想定した調査結果(乙17)で使用されたa川上流域(大矢知地区)の雨量についてe消防署降雨データ(c地区の降雨量)をそのまま使用するのは誤っている。平成12年9月11日午後の降雨量は海岸から離れるほど降雨量が少なく,a川上流域(大矢知地区)はc地区と保々地区の間に所在するから,a川流域(大矢知地区)の降雨量は富田・保々両地区の降雨量の間の数値になる。同日午後2時10分すぎから午後5時35分までのc地区と保々地区の降雨量は,c地区の降雨量が保々地区の降雨量より大幅に多かったのであって,e消防署降雨データ(c地区の降雨量)をo地区の降雨量としている乙16,17におけるa川の水位量は現実よりも高い数値となっている。 また,乙17における溢水状況をみても,JR関西線から国道1号線間の溢水量は下水に流れて処理できる水量であって浸水被害がおこるようなものではないし,b樋門付近の溢水は堤防の低い右岸川であり溢水した水は海へ流れていき付近 水状況をみても,JR関西線から国道1号線間の溢水量は下水に流れて処理できる水量であって浸水被害がおこるようなものではないし,b樋門付近の溢水は堤防の低い右岸川であり溢水した水は海へ流れていき付近には浸水被害をもたらさないと考えられる。乙17のbポンプ場地点水位でも,最高2.92メートル程度であり,実際のポンプ停止水位3.2メートルよりも低い水位であるので,ポンプ場の全機能が廃することはなかった。そして,乙17は開扉した樋門の管水路の自然排水だけの検証結果であるところ,潮位よりもa川の内水位が高くなればポンプによる強制排水によってその水位よりも下げることができる。 以上の点からすれば,樋門を終日あるいは午後2時に開扉すればa川の溢水による浸水被害は生じなかった。 ウ補助参加人が樋門の操作を誤ったことによりa川が溢水しc地区に浸水被害をもたらしたのであるから,これによりA市が被った損害について,補助参加人は損害賠償責任を負う。 bポンプ場の修理費用は,補助参加人の操作の誤りで修理の必要が生じたものであるし,c地区住民に対する市税等の減免金もc地区の浸水被害に対するものであるから,補助参加人に損害賠償責任がある。また,c地区消毒費用とc地区水害ごみ処分費用の支出は,浸水被害を受けた地区住民に対する最低限の救済措置であり,A市として最低限必要不可欠な措置であった。 (被告・補助参加人の主張)ア JR関西線と国道1号線の間でa川が溢水し,p町と東c地区が冠水したのは平成12年9月11日午後2時20分ころである。同日のc地区の詳細な浸水現象を再現した調査結果(乙16)によれば,c地区の浸水は,bポンプ場が機能を停止した午後2時45分より前の午後2時20分ころbポンプ場から離れたq駅周辺で発生し始め,時間の経過に伴い,c地区全域に広がったこと た調査結果(乙16)によれば,c地区の浸水は,bポンプ場が機能を停止した午後2時45分より前の午後2時20分ころbポンプ場から離れたq駅周辺で発生し始め,時間の経過に伴い,c地区全域に広がったことが明らかとされた。 c地区の浸水被害は,原告の主張するbポンプ場の機能の廃止が原因ではなく,当日の局地的,記録的豪雨により,河川及び下水道からの溢水など複合的な原因によるものである。 イまた,同日仮に樋門を開いておいたとしても,c地区の冠水被害はさけられなかったから,因果関係は存在しない。 樋門を終日開扉していた場合と同日午後2時20分に開扉した場合のc地区の浸水状況を想定した調査結果(乙17)によれば,いずれの場合においても,午後4時50分には,bポンプ場付近において溢水が発生することが明らかとなった。同結果では,JR関西線の上流域で溢水が発生することも示されており,また,JR関西線と国道1号線の間においても,溢水発生の可能性が否定できないとされている。 ウ本件集中豪雨の結果,A市内では,c地区のa川流域に限らず,全域において多大な災害が発生した(丙5)。 そこで,A市は,被害の甚大さにかんがみ,災害復旧に要する費用につき,私的財産にかかる部分を除き,公費で負担するという地域住民に対する福祉政策的見地から,被害を受けた地域全般の災害復旧という行政目的を達成するために,本件支出をしたものである。特に,bポンプ場の災害復旧費を除く支出は,本件豪雨に伴い,c地区に限定せず災害を受けた地域全般にわたって同一の条件で災害復旧費用として政策的に支出した損害であり,そもそもA市の被った損害とは把握できない性質のものである。 第3 当裁判所の判断 1 事実経過前提事実と当事者間に争いがない事実,甲3,5ないし7,10,13,27,42,乙2ないし 害であり,そもそもA市の被った損害とは把握できない性質のものである。 第3 当裁判所の判断 1 事実経過前提事実と当事者間に争いがない事実,甲3,5ないし7,10,13,27,42,乙2ないし4,9ないし11,15,丙1,5ないし7,14ないし16,証人F,同G及び後記各証拠並びに弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 (1) bポンプ場は,a川河口域を浸水被害から守る目的で,伊勢湾台風後,昭和38年にd港高潮対策事業として三重県が建設した。bポンプ場の管理は,昭和39年10月1日に三重県知事とA市長との間で樋門及びその付属物の管理について委託契約が締結され,管理組合が設立されてからは管理組合とA市長との間で同旨の委託契約が締結されることとなり,以後,更新されてきている(甲7,13,乙9ないし11)。 bポンプ場に設置された排水ポンプのうち,1号,3号ないし6号ポンプは管理組合の設置にかかるものであるが,2号ポンプはA市が設置したものである。A市は,上記委託契約により1号,3号ないし6号ポンプ及び樋門の管理(操作維持及び修理)を管理組合から受託しており,さらに,補助参加人に対し,1号,3号ないし6号ポンプ及び樋門の運転管理操作業務を再委託し,2号ポンプの運転管理操作業務(場内及び場外の補機類に関し,操作及び点検)を委託している(甲3)。 (2) 契約の規定管理組合とA市の上記管理委託契約においては,A市は樋門を高潮時の防潮のため以外に使用してはならないことが規定されている(甲13,乙10)。 A市と補助参加人の運転管理業務委託契約においては,受託者が,契約の履行に当たって第三者に及ぼした損害のために生じた費用は受託者が負担すること(11条),受託者は,台風時や集中豪雨など緊急にポンプの運転をしなければならないときは,直ち においては,受託者が,契約の履行に当たって第三者に及ぼした損害のために生じた費用は受託者が負担すること(11条),受託者は,台風時や集中豪雨など緊急にポンプの運転をしなければならないときは,直ちに必要な措置をとり,適切に対応すること(12条)が規定されている。 また,A市が定めるポンプ場運転管理操作要領には,受託者は,大雨注意報,警報等が発令された場合,その他気象の状況等によりA市が指示したときは,直ちにポンプ場を適切に管理することができる要員を確保し,排水ポンプ,補機類の運転操作を行うこと(9条)が規定されている。 (3) bポンプ場の設備ア bポンプ場には,平成12年9月当時,樋門と6基の排水ポンプが設置されていた。 排水ポンプは,1号ポンプが手動運転によるもので,2号ないし6号ポンプが自動運転によるものであった。2号ないし6号ポンプは,常時運転しているものではなく,水位計目盛りで計測される水位により自動運転をする構造となっている。2号ないし6号ポンプの自動運転の範囲は次のとおりであった(乙2,15)。 運転停止水位 YP0.9メートル1基目の運転開始水位 YP1.6メートル高水位警報発信水位 YP1.7メートル2基目,3基目の運転開始水位 YP1.8メートル4基目,5基目の運転開始水位 YP2.3メートルまた,2号ないし6号ポンプは,自動運転でも手動運転でも水位がYP0.6メートルになると非常停止する。1号ポンプは,水位がYP0.9メートルになると,ポンプが空回りし運転できない構造となっていた(乙15)。 bポンプ場の計画H.W.L(降雨時等に上流部に浸水被害を生じさせないための基準水位)は,YP2.36メートルであった(乙2)。 イ b樋門には,スルースゲートのほか,フラップゲート( (乙15)。 bポンプ場の計画H.W.L(降雨時等に上流部に浸水被害を生じさせないための基準水位)は,YP2.36メートルであった(乙2)。 イ b樋門には,スルースゲートのほか,フラップゲート(逆流防止ゲート)も設置されていたが,長年にわたって開けたままとされ,開閉の措置はとられていなかった。 三重県知事とA市長との間で締結された昭和39年10月1日付け委託契約書においては,樋門の付属物としてフラップゲートが記載されているが,管理組合副管理者とA市長との間で締結された昭和60年4月1日付け委託契約書においては,管理委託対象として定められた同委託契約書添付の施設台帳にはフラップゲートは記載されていない(乙9,10)。 (4) 補助参加人によるポンプ場の管理ア補助参加人が管理するポンプ場は,北部地域では,kポンプ場を拠点として9か所存在する。kポンプ場のほか,hポンプ場,lポンプ場,jポンプ場,nポンプ場,雨水一号幹線除塵機,bポンプ場,fポンプ場,i排水機場であり,各ポンプ場の位置は別紙1のとおりである(甲5,6,丙10)。 補助参加人は,平成12年9月当時,ポンプ場施設を運転管理する職員として16名を交代勤務制で雇用しており,平常時の勤務は10名から12名が出勤していた。通常時には,kポンプ場に8名,lポンプ場に1名,jポンプ場に1名をおき,そのほかのポンプ場は巡回点検とされていた。上記ポンプ場施設の大半は自動運転により管理されていることから,職員は巡回点検によりポンプ場設備機器の稼働状況の確認等の作業を行っていたものである(乙2)。 イ補助参加人では,bポンプ場の樋門(スルースゲート)は通常全閉としており,干潮で明らかに外水位が低い場合には樋門を開けてa川の河川水を排水するが,満潮に向かう時点で樋門を閉めることとしていた。ま イ補助参加人では,bポンプ場の樋門(スルースゲート)は通常全閉としており,干潮で明らかに外水位が低い場合には樋門を開けてa川の河川水を排水するが,満潮に向かう時点で樋門を閉めることとしていた。また,非常時においても,排水ポンプ運転時に樋門を開けておくと,ポンプにより海に排水した水がゲートから逆流して内水側へ入ってしまい,水が循環することとなるため,全閉としており,大潮の干潮時で明らかに外水位が低い場合に限って全開として自然流下で対処していた(乙2)。 ウ補助参加人がA市からbポンプ場の運転管理を受託して以降,本件豪雨以前に,e消防署で1時間降雨量が30ミリメートルを超えた降雨は,8回観測されている。そのうち,平成11年8月16日午後11時から同月17日午前0時までの1時間42ミリメートルの降雨時には1号ないし6号ポンプが全て稼働したが,それ以外の降雨時(1時間当たり降雨量は32ミリメートルから50.5ミリメートル)には自動運転の2号ないし6号ポンプ(うち最大で4台が稼働)で対応できており,いずれも浸水被害は生じなかった(丙7)。 (5) 平成12年9月11日の降雨量等とbポンプ場の運転状況ア本件豪雨は,三重県北部をはじめ愛知県に大きな被害をもたらした。A市における24時間の総雨量は500ミリメートルを超え,臨海部を中心に平成12年9月11日午後1時から午後6時まで(以下,特に日付を付記せずに時間を表記する場合には,平成12年9月11日のものである。)の5時間で約300ミリメートルの降雨があった。A市では昭和49年7月25日の集中豪雨において市内の河川堤防の決壊等の被害が発生したが,このときの連続降雨量は304.5ミリメートルで1時間あたりの最大降雨量は71.5ミリメートルであったところ,本件豪雨はこれをはるかに上回るものであった て市内の河川堤防の決壊等の被害が発生したが,このときの連続降雨量は304.5ミリメートルで1時間あたりの最大降雨量は71.5ミリメートルであったところ,本件豪雨はこれをはるかに上回るものであった(丙5)。 イ A市を含む三重県北部には,平成12年9月11日午前0時15分,大雨洪水注意報が発令され,午前2時18分,大雨洪水警報発令へと切り替わった。三重県における大雨洪水警報の発令基準は,1時間あたり40ミリメートル以上,もしくは3時間あたり80ミリメートル以上,もしくは24時間あたり170ミリメートル以上の降雨が予測される場合である(甲10,27,丙5)。 また,同日におけるe消防署で観測された降雨量は,別紙2のとおりである(甲27)。これによると,e消防署付近では,午前3時から4時までに1時間あたり36.5ミリメートル,午前5時30分から6時30分までに1時間あたり44. 5ミリメートルの降雨があり,その後は1時間あたり1ミリメートルから7ミリメートル程度の降雨であったが,午後1時以降に次のとおり1時間あたり50ミリメートルを超える降雨があった。 午後1時 ~1時30分 20.5ミリメートル午後1時30分~2時 30.5ミリメートル午後2時 ~2時30分 28.5ミリメートル午後2時30分~3時 24.0ミリメートル午後3時 ~3時30分 45.0ミリメートル午後3時30分~4時 40.0ミリメートル午後4時 ~4時30分 80.5ミリメートル午後4時30分~5時 10.0ミリメートルウ三重県北部には,平成12年9月10日午後8時20分に波浪注意報が発令された。三重県北部における波浪注意報の基準は,内海で有義波高が1.5メートル以上である。波浪注意報は,風浪・うねりなどによ ウ三重県北部には,平成12年9月10日午後8時20分に波浪注意報が発令された。三重県北部における波浪注意報の基準は,内海で有義波高が1.5メートル以上である。波浪注意報は,風浪・うねりなどにより災害のおきるおそれがあることを示す(甲10,丙6)。 また,d港の潮汐月表による同月11日の予測潮位は,午前10時40分の干潮時においてYP0.6メートルであり,その後は上げ潮となり,午後5時40分の満潮時はYP2.4メートルであって,同月平均の潮位よりも高めの潮位となることが予測されていた。また,実際にd港検潮所において測定された水位は,終日,潮汐表による予測水位を上回るものであった(乙3)。 エ bポンプ場における平成12年9月11日の排水ポンプの稼働状況は別紙3のとおりであり,具体的には次のとおりであった(乙4)。 同日午前3時から4時までの1時間あたり36.0ミリメートル,午前5時30分から6時30分までの1時間あたり54.5ミリメートルの降雨に対しては,3ないし5号ポンプの3基による自動運転で対応した。 午後0時から午後0時30分ころまでの間,3号ポンプが稼働した。 その後,午後1時10分に河川側水位がYP1.6メートルを超えたため3号ポンプが再度運転を開始し,午後2時に河川側水位がYP1.7メートルを超えたため高水位警報がbポンプ場から拠点ポンプ場であるkポンプ場へ発信された。 午後2時05分に河川側水位がYP1.8メートルを超えたため4号及び5号ポンプが運転を開始し,午後2時20分に河川側水位がYP2.3メートルを超えたため2号及び6号ポンプが運転を開始した。 午後2時30分には河川側水位が計画H.W.LであるYP2.36メートルを超え,午後2時45分にはポンプ室が浸水したことによって全ての排水ポンプが運転を停止した。な び6号ポンプが運転を開始した。 午後2時30分には河川側水位が計画H.W.LであるYP2.36メートルを超え,午後2時45分にはポンプ室が浸水したことによって全ての排水ポンプが運転を停止した。なお,bポンプ場のポンプ室の床面高さはYP2.87メートルであり,床面高さから33センチメートルのYP3.2メートルに水位が達した時点でポンプが停止した(乙5)。 bポンプ場における測定水位は,午後1時50分以降急激に上昇し,順次排水ポンプが運転を開始しているにもかかわらず,午後2時45分の運転停止まで減少することはなかった(乙3)。 (6) 補助参加人の職員配置状況等ア平成12年9月11日午前0時35分ころ,A市役所の宿直者がkポンプ場へ三重県北部に大雨洪水注意報が発令された旨の連絡をし,その後,午前2時30分ころ,A市下水道部の職員がkポンプ場へ三重県北部に大雨洪水警報が発令された旨の連絡を入れた。 kポンプ場の宿直者は,直ちに当時補助参加人の北部ポンプ場勤務職員を統括するチームリーダーの立場にあったFに電話連絡を入れ,Fは職員を順次緊急呼出するように指示した。その結果,午前3時50分ころ4名の職員が出勤し,うち2名がfポンプ場,bポンプ場,雨水一号幹線除塵機,hポンプ場を巡回点検し,残り2名が従前からごみの流入量の多かったi排水機場におけるごみ除去作業に従事した。また午前6時までにはもう1名の職員が出勤し,lポンプ場の配置についた(乙2,丙15)。 イ午前6時44分にfポンプ場の1号雨水ポンプに重故障が発生し,Fが対応した。同ポンプの現場盤には重故障の内容が「軸受温度上昇」と表示されていたが,軸受温度計では警報設定温度よりも低い温度が表示されており,復帰操作を行ったところ異音もなく軸受温度が異常な上昇を示すことはなかった。 Fは,重 には重故障の内容が「軸受温度上昇」と表示されていたが,軸受温度計では警報設定温度よりも低い温度が表示されており,復帰操作を行ったところ異音もなく軸受温度が異常な上昇を示すことはなかった。 Fは,重故障が一応解消されたため,kポンプ場に向かった(丙14,15)。 Fは,午前8時ころからkポンプ場において,11名の職員につき午前中の巡回点検・作業の割振りを行った。各ポンプ場の巡回点検の状況報告,ゴミの量,自動運転できるポンプの台数を考慮して,kポンプ場に1名,lポンプ場に1名,hポンプ場に2名,jポンプ場とnポンプ場をあわせて巡回点検する職員が2名,bポンプ場と雨水一号幹線除塵機をあわせて巡回点検する職員が2名,fポンプ場と特にごみの量の多いi排水機場をあわせて巡回点検する職員が3名,それぞれ配置された(丙1,15)。 ウ午前9時25分ころfポンプ場の1号雨水ポンプに再度重故障が発生した。fポンプ場とi排水機場にはあわせて3名の職員が配置されていたが,i排水機場のごみの除去作業に忙殺されていたため,hポンプ場にいたFがこれに対応することとした。同1号雨水ポンプの状況は1回目の重故障のときと同様であったことから,Fは,根本的な大きな故障ではなく,軸受グリスの量が多すぎるため軸受けの温度が上昇しているものであると推察し,グリスをかき出す応急措置をとった(丙14,15)。 一方,bポンプ場と雨水一号幹線除塵機の2か所は,HとGが担当しており,雨水一号幹線除塵機での作業を終えてからbポンプ場に向かい,bポンプ場では,除塵機の稼働具合とごみの量を確認して,干潮の午前9時45分から10分ほどの時間をかけて樋門を全開とした。その後,両名は,bポンプ場内の機器等の点検やごみの除去作業を行い,午前10時50分ころ,a川と海側がほぼ同水位になったことから ,干潮の午前9時45分から10分ほどの時間をかけて樋門を全開とした。その後,両名は,bポンプ場内の機器等の点検やごみの除去作業を行い,午前10時50分ころ,a川と海側がほぼ同水位になったことから樋門を閉じた。なお,両名がbポンプ場で作業している際には,ほとんど降雨はなく,雨合羽を着用する必要がない程度であった(丙16)。 エ平成12年9月11日午後0時から0時30分ころまでの間,kポンプ場において,午後の巡回点検・作業の割振りが行われた。Fは,午前中は降雨量がそれほどなく各ポンプ場とも自動運転で対応できていたことから,午前中に実施した巡回点検・作業の結果をもとにして,配置を決めた。hポンプ場とi排水機場に予想を上回る量のゴミが流入しており,午前中に除塵作業ができなかったことを考慮し,両所をあわせて巡回する職員を4名配置した。gポンプ場に1名,lポンプ場に1名,jポンプ場に2名,nポンプ場に1名をそれぞれ配置し,午前中にfポンプ場の雨水1号ポンプに重故障の不具合が2回発生し応急措置はとったものの再発が懸念されていたこと,bポンプ場とfポンプ場が比較的近距離で雨水一号幹線除塵機は午前中に一応の作業を完了していたことを考慮し,両ポンプ場をあわせて巡回点検する職員を3名配置した。そして,Fは,比較的そのとき雨が小降りであったので,上司のIの指示を受けて,bポンプ場とfポンプ場に配置した3名については,まずfポンプ場の雨水1号ポンプの不具合の解消のためにグリスアップのやり替え作業を行わせることとし,上記3名の職員をfポンプ場に向かわせ,bポンプ場はその間無人として,上記作業終了後に巡回させることとした(丙15)。 オ A市は,平成12年9月11日当時,E社との間で防災気象情報提供の業務委託契約を締結しており,同社からA市域の降雨予測の情報提 その間無人として,上記作業終了後に巡回させることとした(丙15)。 オ A市は,平成12年9月11日当時,E社との間で防災気象情報提供の業務委託契約を締結しており,同社からA市域の降雨予測の情報提供を受けていた。同社によるA市を対象とする防災業務支援情報(甲7)では,同日午後0時30分発表時において,午後1時から2時の1時間予測降水量は30ミリメートルであり,午後2時から3時の1時間予測降水量は23ミリメートルであり,気象庁から三重北部に大雨洪水警報が発表中であること,防災コメントとして,「三重県A市では,これから夕方前にかけて時間30㎜前後の強雨が予想されており,監視ライン(時間20㎜)を越える恐れがあります。今後の雨雲の動向に警戒して下さい。また,明日未明から明日朝の内にかけて監視ラインに近いやや強い雨が降ると予想しています。最新の情報にご注意下さい。」との記載があった。 Fは,午後1時ころ,A市から今後1時間あたりの降雨量は30ミリメートルくらいの予想であるとの情報が入った旨の連絡を受けたが,特に上記人員配置を変更する必要はないと判断した(丙15)。そして,Fは,緊急連絡情報は,チームリーダーであるFのもとに入ってくるシステムがとってあるので,kポンプ場に残ることなく,上記作業の打合せ後,hポンプ場に行って作業に従事した。 カ bポンプ場とfポンプ場を担当することになったH,G,東條健の3名は,午後0時50分ころfポンプ場に到着し,重故障の内容が「軸受温度上昇」と表示されていた1号ポンプを点検確認したところ,ポンプは稼働しておらず軸受温度計は故障警報設定温度以下になっていた。しかし,グリスかき出し口にあるかき出し棒を引き抜いたところ,グリスが付いていて古いグリスがはみ出ていることが確認できたので,Fリーダーの指示に従い,それか 度計は故障警報設定温度以下になっていた。しかし,グリスかき出し口にあるかき出し棒を引き抜いたところ,グリスが付いていて古いグリスがはみ出ていることが確認できたので,Fリーダーの指示に従い,それから1時間ほどを要してグリスアップのやり替え作業を行った。グリスアップのやり替え作業は,ポンプを運転させながら新しいグリスを注入することによって押し出された古いグリスを取り除くものであり,水位を確認しながらポンプを運転させる作業,古いグリスをかき出す作業,及び新しいグリスを注入する作業を3人で分担した。同作業は,通常3名で担当することとされていた。3名は,グリスアップのやり替え作業を終えた午後2時前ころ,ポンプ室の窓ガラス越しに,雨が大降りになってきているのが確認できたため,早急にbポンプ場に向かった方がいいと判断し,急いで片づけ作業に着手したところ,午後2時10分過ぎに,FリーダーからGの携帯電話に後記のとおりbポンプ場に急いで行くようにとの指示があった。 キ平成12年9月11日午後2時にbポンプ場からkポンプ場へ高水位警報の発信があったが,gポンプ場に配置されていた1名の職員はごみ除去作業をしていたため,発信に気付くのが10分程度遅れ,午後2時10分ころ,同職員から,hポンプ場で作業に従事していたFに高水位警報発信の電話連絡があった。連絡を受けたFは,直ちに携帯電話で,fポンプ場にいたGに対し,bポンプ場の高水位警報が鳴っているためbポンプ場に急いで行くように指示した。 午後2時15分ころ,GとHが車でbポンプ場に向かった。通常であればfポンプ場からbポンプ場までは車で10分ほどであるが,道路の冠水による車両のエンジントラブルと激しい降雨の影響で,bポンプ場に到着したのは午後2時40分ころであった。到着当時,ポンプ場内の通路は,Gの脛ま 場からbポンプ場までは車で10分ほどであるが,道路の冠水による車両のエンジントラブルと激しい降雨の影響で,bポンプ場に到着したのは午後2時40分ころであった。到着当時,ポンプ場内の通路は,Gの脛まで浸水していた(甲36)。 GとHは,直ちにポンプ室のドアを開けようとしたが水圧で開けることができず,午後2時50分ころドアを蹴破って室内に入った。そのときには,既に室内は浸水し,電気がショートして停電していて,bポンプ場の全ポンプが運転を停止していたが,Gらは復旧させることができず,また,1号ポンプを手動で運転開始することができず,樋門を開閉する電動操作ボタンを押しても全く作動しなかった。そのため,Gらは,午後3時ころ,ポンプ室内での作業を断念し,ポンプ室を出たところ,南側通路にたまっていた水が海側の防潮扉の方向に向かって流れていたことから,樋門を開ければ良いのではないかと考え,ポンプ室外の樋門操作場所に向かい,手動で樋門のハンドルを回し,樋門を開けようと試みたが,水圧が重く開けることができなかった。そこで,Gは,bポンプ場の現状を電話でFリーダーに連絡したところ,所長のIが向かっているとのことであったので,その後も樋門を開ける作業を試みながらIの到着を待ったが,結局樋門を開けることはできなかった。その後,Iが3時10分ころbポンプ場に到着し,関連業者やA市の担当者らが到着して,復旧のための対応に従事したが,bポンプ場では混乱状態が続いた(甲7,丙16)。 クなお,原告は,グリスアップのやり替え作業につき,「東海集中豪雨時におけるbポンプ場運転関係資料」(甲7)中に,午前11時30分から午後1時までの間fポンプ場に5名の職員が配置されていた旨の記載があることから,午後1時の時点ではグリスアップのやり替え作業は終了していたのではないかと主 関係資料」(甲7)中に,午前11時30分から午後1時までの間fポンプ場に5名の職員が配置されていた旨の記載があることから,午後1時の時点ではグリスアップのやり替え作業は終了していたのではないかと主張する。確かに,同記載部分の内容は,F及びGの上記陳述(丙15,16)ないし証言の内容と整合しないものであるが,グリスアップのやり替え作業が午後1時の時点で終了していたことに直接結びつくものではないから,同記載部分をもってグリスアップのやり替え作業に関するF及びGの陳述ないし証言の信用性が否定されるものではない。 (7) c地区における浸水被害A市c地区では,本件豪雨により同日午後2時20分ころ,JR関西線と国道1号線の間でa川が溢水し,p町,東c地区が冠水した。その後,国道1号線のオーバーフローもあり,国道1号線から海側の地域を冠水した。そのため,同日午後5時20分には,c地区全域に避難勧告が発令された。c地区における,床下浸水は428戸,床上浸水は90戸に上った(甲3,42)。 2 争点(1)ア(樋門を閉めたことにおける過失の有無)について(1) 原告は,補助参加人には,bポンプ場の運転管理業務の受託者の善管注意義務として,平成12年9月11日は終日樋門を開けておくべき義務があったのであり,それにもかかわらず同日午前11時ころ樋門を閉めたことが同義務に違反する過失であると主張する。 (2) 樋門を閉めることは,a川の水位が海側の水位よりも低い場合の高潮対策となる一方,a川の水位が海側の水位よりも高い場合には排水能力を減少させることとなるから,補助参加人が同日午前11時ころ(正確には10時50分ころ)に樋門を閉めたことが過失となるかについては,樋門の閉扉により生じる危険についての予見可能性を前提に,樋門の閉扉の必要性,開扉すべき必要性の 補助参加人が同日午前11時ころ(正確には10時50分ころ)に樋門を閉めたことが過失となるかについては,樋門の閉扉により生じる危険についての予見可能性を前提に,樋門の閉扉の必要性,開扉すべき必要性の程度等を総合考慮して,同時点において樋門を開けておくべき義務が存したか否かにより判断されるものと解される。 アこの点,樋門の閉扉の必要性について検討するに,前記第3の1(2)のとおり,管理組合とA市との間の管理委託契約書では樋門を高潮時の防潮のため以外に使用してはならないと規定されており,乙12,13によれば,A市と管理組合との間では,上記「高潮時」とは,通常の満潮位よりも潮位が高くなる場合,つまり高潮や波浪の警報・注意報が発令されているか,発令されていなくても低気圧の接近等による潮位の上昇による影響でa川へ海水が逆流し,溢水あるいは溢水しないまでも川岸高の直下まで水が押し寄せる可能性があり,周辺地域に浸水の被害を及ぼすおそれがある場合としていることが認められる。補助参加人は,上記契約当事者ではないものの,A市から樋門の管理の再委託を受けているものであるから,当日の樋門の閉扉の必要性についても,上記解釈に即して検討するのが妥当である。 これを前記1(5)(6)の事実を踏まえ検討すると,三重県北部には,前日の平成12年9月10日午後8時20分に波浪注意報が発令されていたこと,d港の潮汐月表による同月11日の予測潮位は,午前10時40分の干潮時においてYP0.6メートルであり,その後は上げ潮となり,午後5時40分の満潮時はYP2.4メートルとされていたこと,同日は高めの潮位となることが予測されていたこと,補助参加人の職員らは,午前10時50分ころa川と海側がほぼ同水位になった時点で樋門を閉めたことからすれば,同人らが樋門を閉めた時点において たこと,同日は高めの潮位となることが予測されていたこと,補助参加人の職員らは,午前10時50分ころa川と海側がほぼ同水位になった時点で樋門を閉めたことからすれば,同人らが樋門を閉めた時点において,以後潮位がa川の水位を上回り,樋門を開けておくと潮位の上昇による影響でa川へ海水が逆流する事態が生じうることは,容易に想像しうるものである。 イ一方,前記1(5)のとおり,三重県北部には同日午前2時18分に大雨洪水警報が発令されていたことから,降雨によりa川の水位が上昇する可能性も存しており,事後的に見て,原告主張のように,潮位がa川の水位より低かったことが認められ,海水逆流の危険はなかったかのようにみえる。 しかしながら,前記1(5)(6)のとおり,午前6時30分以降午前11時までの降雨量は1時間あたり1ミリメートルから3.5ミリメートル程度であったこと,補助参加人の職員らが午前9時30分からbポンプ場で作業していた際にはほとんど降雨がなかったことからすれば,同人らが午前10時50分ころに樋門を閉めた時点において,今後の降雨によって常にa川の水位が潮位を上回ることが想定し得る状況にあったとはいえず,午前10時50分当時,樋門を開扉すべき必要性があったとは認められない。 ウ以上のとおり,補助参加人の職員らが樋門を閉めた同年9月11日午前10時50分時点において,樋門を閉めるべき相当程度の必要性を認められること,本件のような激しい降雨によりa川の水位が上昇することは予見できず,上記時点において,樋門を開扉すべき必要性があったとは認められないことからすれば,補助参加人が同日午前11時ころ樋門を開扉しておくべき善管注意義務を負っていたとはいえない。 (3)アこれに対し,原告は,平成12年9月11日当日は高潮注意報も高潮警報も発令されておらず, すれば,補助参加人が同日午前11時ころ樋門を開扉しておくべき善管注意義務を負っていたとはいえない。 (3)アこれに対し,原告は,平成12年9月11日当日は高潮注意報も高潮警報も発令されておらず,樋門の両隣にある管理組合が管理する高潮対策のための防潮扉も開かれたままであって,波浪注意報が発令されていたとしても樋門を閉める必要性はなかったとか,大雨洪水警報ではなく波浪注意報のみを重視した被告・補助参加人の主張は不当である旨主張する。 しかしながら,高潮注意報や高潮警報が発令されていなくても,潮位の上昇による影響でa川へ海水が逆流する事態が生じる蓋然性が相当程度存すれば,樋門を閉めたことをもって不必要な操作であったということはできない。 イまた,原告は,海水が逆流するおそれについてはフラップゲートで対処可能であり,大雨洪水警報が発令されているなか樋門を閉める必要性はなかった旨主張するので,この点につき検討する。 前記1(3)のとおり,b樋門にはスルースゲートのほかフラップゲートも設置されていたが,同ゲートは長年にわたって開けたままとされ,補助参加人において開閉の措置はとられていなかったこと,管理組合副管理者とA市長との間で締結された昭和60年4月1日付け委託契約書においては,管理委託対象として定められた同委託契約書添付の施設台帳にはフラップゲートは記載されていないことが認められる。 これらの事実からすれば,フラップゲートにつき管理組合からA市が管理委託を受けているかについても疑義の残るところであって,当然にA市から補助参加人がフラップゲートの運転管理につき再委託を受けているとみることはできないし,また,長年にわたり使用されていなかった当該フラップゲートの性能も定かではないから,b樋門にフラップゲートが設置されていたことをもって,樋門 運転管理につき再委託を受けているとみることはできないし,また,長年にわたり使用されていなかった当該フラップゲートの性能も定かではないから,b樋門にフラップゲートが設置されていたことをもって,樋門を閉めるべき必要性を否定することはできないものである。 (4) 以上からすれば,補助参加人の職員らが午前10時50分の時点に樋門を閉めたことをもって,運転管理業務委託契約上の善管注意義務違反をいう原告の主張は採用できない。 3 争点(1)イ(不適切な人員配置の結果,平成12年9月11日午後2時に樋門を開けなかった過失の有無)について(1) 原告は,補助参加人が午後2時においてb樋門を開けるべき義務を負っていたにもかかわらず,適切な職員配置をしなかったために樋門を開けることができず,同義務を怠った過失があると主張し,具体的には,①補助参加人による午後の人員配置において,bポンプ場とfポンプ場をあわせて巡回点検する職員3名全員をまずfポンプ場のグリスアップ作業に従事させ,同作業が終わるまでbポンプ場を無人にしたこと,②gポンプ場に配置された1名の職員がごみの除去作業に従事していて,bポンプ場からgポンプ場に午後2時に発信された高水位警報にすみやかに対応できなかったことをそれぞれ問題とする。 そこで,上記の2点について順次検討する。 (2) bポンプ場に職員を固定配置しなかったことについて補助参加人が管理するポンプ場は北部地域に9か所あり,その施設の大半は自動運転により管理されていて,通常時には,職員は巡回点検によりポンプ場設備機器の稼働状況の確認等を行っていたことは前記第3の1(4)のとおりである。このように,ポンプ場施設の大半が自動運転により管理されていたことからすれば,大雨洪水警報が発令中であったとしても,補助参加人においてbポンプ場に職 っていたことは前記第3の1(4)のとおりである。このように,ポンプ場施設の大半が自動運転により管理されていたことからすれば,大雨洪水警報が発令中であったとしても,補助参加人においてbポンプ場に職員を固定配置すべき義務が当然に存するとみることは相当でなく,補助参加人がbポンプ場に職員を固定配置しなかったことが善管注意義務に違反するかについては,bポンプ場のポンプの設置状況を前提とした上で,同ポンプ場に職員の固定配置が必要となる程の降雨があることの予見可能性があることを前提に,3名の職員をfポンプ場での作業に従事させることの必要性とbポンプ場を無人のままで放置することの危険性の程度を勘案して判断すべきと解される。 そこで,第2の1(3),第3の1(3)ア,第3の1(6),甲27,33,48,丙15,16,証人F,同G及び後記各証拠によると,次のとおり認められる。 ア bポンプ場のポンプの設置状況等(ア) bポンプ場に設置された6台の排水ポンプの総排水能力は毎分580立方メートルである。そのうち,1号ポンプは排水能力毎分220立方メートルで,同ポンプ場の上記総排水能力の37.9パーセントを担当するが,補助参加人の職員において手動運転する必要がある。一方,2号ないし6号ポンプは,水位計目盛りで計測される水位により自動運転をする構造となっていて,各ポンプの自動運転の範囲は次のとおりであった。なお2号ないし6号ポンプは手動運転することも可能である。 運転停止水位 YP0.9メートル1基目(3号ポンプ,排水能力毎分80立方メートル)の運転開始水位YP1.6メートル高水位警報発信水位 YP1.7メートル2基目,3基目(4号,5号ポンプ,排水能力合計毎分160立方メートル) 運転開始水位YP1.6メートル高水位警報発信水位 YP1.7メートル2基目,3基目(4号,5号ポンプ,排水能力合計毎分160立方メートル)の運転開始水位 YP1.8メートル4基目,5基目(6号,2号ポンプ,排水能力合計毎分120立方メートル)の運転開始水位 YP2.3メートル(イ) 1号ポンプは,2号ないし6号ポンプの5台の自動運転ポンプで対処できない場合に手動で運転する。 (ウ) bポンプ場の計画H.W.L(降雨時等に上流部に浸水被害を生じさせないための基準水位)は,YP2.36メートルであった。そして,bポンプ場の床面はYP2.87メートルであり,a川の水位がYP3.2メートルに達すると,ポンプ室が浸水し,停電となるため,2号ないし6号ポンプが自動運転をしていたとしても停止してしまい,また,1号ポンプを手動で運転開始することも,全閉となっているスルースゲートを電動で全開とすることも不可能となる。 (エ) 補助参加人では,平成12年9月当時,bポンプ場を含む9つのポンプ場施設を運転管理する職員として16名を交代勤務制で雇用していた。 以上によると,補助参加人としては,a川の水位が計画H.W.LのYP2.36メートルに達した場合には,特段の事情がない限り,直ちに1号ポンプを手動で運転開始する必要があり,それに配慮した人員配置を行う必要があるものと解せられる。 イ降雨の予見可能性等(ア) 平成12年9月11日午前0時15分にA市を含む三重県北部に大雨洪水注意報が発令され,同日午前2時18分三重県北部に大雨洪水警報が発令されて,午前2時30分A市からその旨の連絡を受けた補助参加人は,宿直体制から夜勤体制に切り替えるとともに,他の職員の非常呼出 洪水注意報が発令され,同日午前2時18分三重県北部に大雨洪水警報が発令されて,午前2時30分A市からその旨の連絡を受けた補助参加人は,宿直体制から夜勤体制に切り替えるとともに,他の職員の非常呼出しを行ない,午前9時には10名の職員が,午後1時以降は11名の職員が配置された。 三重県における大雨洪水警報の発令基準は,1時間あたり40ミリメートル以上,もしくは3時間あたり80ミリメートル以上,もしくは24時間あたり170ミリメートル以上の降雨が予測される場合である。 e消防署付近の1時間あたりの雨量は,大雨洪水警報発令後の同日午前3時から4時までに36.5ミリメートル,午前4時から5時までに6ミリメートル,午前5時から6時までに38ミリメートル,午前6時から7時までに15ミリメートル,午前7時から8時までに3.5ミリメートル,午前8時から9時までに2ミリメートル,午前9時から10時までに1.5ミリメートル,午前10時から11時までに1ミリメートル,午前11時から12時までに2.5ミリメートル,午後0時から1時までに7ミリメートル,午後1時から2時までに51ミリメートル(午後1時から1時30分までは20.5ミリメートル,1時30分から2時までは30.5ミリメートル),午後2時から3時までに52.5ミリメートル,午後3時から4時までに85ミリメートル,午後4時から5時までに90.5ミリメートル,午後5時から6時までに21ミリメートル,午後6時から7時までに11ミリメートル,午後7時から8時までに17ミリメートル,午後8時から9時までに8ミリメートル,午後9時から10時までに13.5ミリメートル,午後10時から11時までに5ミリメートル,午後11時から12時までに22ミリメートルであった。そして,累計雨量は,午前7時に112ミリメートル ートル,午後9時から10時までに13.5ミリメートル,午後10時から11時までに5ミリメートル,午後11時から12時までに22ミリメートルであった。そして,累計雨量は,午前7時に112ミリメートル,9時に117.5ミリメートル,11時に120ミリメートル,午後1時に129.5ミリメートル,2時に180.5ミリメートルであった。 (イ) 補助参加人のチームリーダーであるFは,平成3年3月に補助参加人に入社してポンプ場勤務を命ぜられ,平成9年4月1日から北部ポンプ場勤務の職員を統括する現場責任者であるチームリーダーに就任していた。 Fは,平成12年9月11日の午前中は降雨量がそれほどでなく,各ポンプ場とも自動運転で対応できていたことから,同日午前2時18分以降三重県北部には大雨洪水警報が発令中であったが,午前中に実施した巡回点検・作業の結果をもとにして,同日午後0時30分過ぎころ,各ポンプ場の担当を割り振った。その際,Fは,午後1時から3時の間にbポンプ場の1号ポンプを手動で運転開始する必要が生ずるような降雨はないものと予測し,補助参加人の上司であるIの了解を得て,bポンプ場とfポンプ場に配置した3名について,fポンプ場の雨水1号ポンプの不具合の解消のためグリスアップのやり替え作業を行うためにまずfポンプ場に向かわせ,その間,bポンプ場は無人にすることとした。 なお,fポンプ場とbポンプ場は,直線距離として約1キロメートル離れていて,降雨等の影響がない通常の場合は車で約10分の距離であるが,海岸に近い道路を通行するため,激しい降雨の際には車両の渋滞やエンジントラブル,道路の冠水などで到着に時間を要する可能性があった。 (ウ) E社によるA市を対象とする防災業務支援情報では,午後0時30分発表時において,午後1時から2時の1時間予測降水 の渋滞やエンジントラブル,道路の冠水などで到着に時間を要する可能性があった。 (ウ) E社によるA市を対象とする防災業務支援情報では,午後0時30分発表時において,午後1時から2時の1時間予測降水量は30ミリメートル,午後2時から3時の1時間予測降水量は23ミリメートルであり,Fは,平成12年9月11日午後1時ころ,A市から,今後1時間あたりの降雨量は30ミリメートルくらいの予想であるとの情報が入った旨の連絡を受けたが,特に上記人員配置を変更する必要はないと判断した。 しかしながら,e消防署付近では,大雨洪水警報発令後の午前3時から4時までに36.5ミリメートルの降雨があったが,午前4時から5時までは6ミリメートルしかないのに,午前5時から6時までに38ミリメートル,午前6時から7時までに15ミリメートルの降雨があり,その後,午前7時から12時までは1時間あたり1ミリメートルないし3.5ミリメートルの降雨しかなかったが,大雨洪水警報は解除されていなかったことからすると,同日午後1時の時点においても,今後,断続的な強雨の可能性があることは否定できず,今後の雨雲の動向に警戒し,最新の情報に注意する必要があったもので,そのことは,E社の上記防災業務支援情報(甲7)でも,防災コメントとして指摘されていた。そしてe消防署付近の現実の降雨量は,午後0時30分から1時まで5ミリメートルだが,午後1時から1時30分まで20.5ミリメートルの激しい雨であり,午後1時30分の時点で,今後降雨量が減少するような状況は認められず,かえって,午後1時30分から2時までの現実の降雨量が30.5ミリメートルの非常に激しい雨であった。 上記のような客観的状況からすると,A市から洪水防止を目的としたポンプ場運転管理業務の委託を受けていた補助参加人のチームリーダーF での現実の降雨量が30.5ミリメートルの非常に激しい雨であった。 上記のような客観的状況からすると,A市から洪水防止を目的としたポンプ場運転管理業務の委託を受けていた補助参加人のチームリーダーFとしては,同日午後1時30分の時点で,午後1時から2時までの降雨量が大雨洪水警報の発令基準である1時間あたり40ミリメートルに達する恐れがあることを予測認識すべき義務があったというべきであり,また,そのような激しい雨がある場合には,累積雨量が150ミリメートルに達していることから,bポンプ場の総排水能力の37.9パーセントを担当する1号ポンプを手動で運転する必要が生じる可能性のあることを十分に予見できたものと認められる。 ウ 3名の職員をfポンプ場での作業に従事させることの必要性(ア) fポンプ場の雨水1号ポンプには,平成12年9月11日午前6時44分ころと午前9時25分ころの2回にわたり重故障の不具合が発生したこと,その原因は軸受グリスの量が多すぎるために軸受けの温度が上昇しているものと推察されたこと,午前中の作業においてグリスをかき出す応急措置をとったものの再発が懸念される状態にあったこと,午後,bポンプ場とfポンプ場に配置した3名は,fポンプ場の雨水1号ポンプの不具合の解消のためグリスアップのやり替え作業を行うために,まず同ポンプ場に向かったことは前記1(6)のとおりである。 このように,fポンプ場の雨水1号ポンプには午前中に2回にわたる重故障の不具合が発生しており,再発が懸念されたことからすれば,fポンプ場におけるグリスアップのやり替え作業に職員を従事させる必要性は存していたといえる。 (イ) そして,同日午後0時30分の時点で,補助参加人の職員Fが,bポンプ場とfポンプ場に配置した3名全員を同作業に従事させたことについては,前 業に職員を従事させる必要性は存していたといえる。 (イ) そして,同日午後0時30分の時点で,補助参加人の職員Fが,bポンプ場とfポンプ場に配置した3名全員を同作業に従事させたことについては,前記1(6)のとおり,グリスアップのやり替え作業の内容は,ポンプを運転させながら新しいグリスを注入することによって押し出された古いグリスを取り除くものであって,水位を確認しながらポンプを運転させる作業,古いグリスをかき出す作業,及び新しいグリスを注入する作業があり,通常3名で担当していたことからして,緊急事態が予測されない状況下においては,過剰な人員配置とまではいえない。 しかしながら,Fの指示を受けた補助参加人の職員Gら3名が午後0時50分ころfポンプ場に到着した時点では,作業対象の1号ポンプは稼働しておらず,軸受温度計は故障警報設定温度以下になっていたもので,午後1時から1時30分までの降雨量が20.5ミリメートルで,その後も同様の激しい雨が続く可能性が認められた午後1時30分過ぎの時点では,Gら3名全員をfポンプ場で1号ポンプのグリスアップのやり替え作業に従事させ続け,その間,bポンプ場を無人のまま放置しなければならないまでの緊急の必要性は認められない。仮に,一旦3人で開始した上記やり替え作業を途中から2人で続行することが困難な場合には,他のポンプ場に配置されていた残り8名の補助参加人の職員のうちから1名をbポンプ場に急行させるような措置をとることも十分に可能であったと考えられる。 エ平成12年9月11日午後2時に樋門を開扉する必要性(ア) 同日午後2時20分には,本件豪雨によりbポンプ場におけるa川の水位がYP2.3メートルに達し,2号ないし6号ポンプは全て自動運転し,その排水能力は合計毎分360立方メートルであった。そして,1号ポ 同日午後2時20分には,本件豪雨によりbポンプ場におけるa川の水位がYP2.3メートルに達し,2号ないし6号ポンプは全て自動運転し,その排水能力は合計毎分360立方メートルであった。そして,1号ポンプの排水能力は毎分220立方メートル,b樋門を開扉した場合のa川の自然排水能力は毎分1140立方メートルである。 (イ) 前記1(6)キのとおり,補助参加人の職員Gらは,午後2時50分ころbポンプ場のポンプ室内に入ったが,既に午後2時45分にa川の水位はYP3.2メートルに達して,ポンプ室が浸水して全ての排水ポンプは運転を停止していた。Gらは,ポンプ室内に到着後,1号ポンプを手動運転しようと試みたが停電のため始動させることができず,また,a川の洪水を海へ流下させるため,樋門を電動で開扉しようと試みたが失敗し,最終的には手動で開扉することを試みたが,水圧が重く開けることができなかった。Gらが同日午後2時20分の時点で1号ポンプの運転を開始していれば,全ポンプの停止時間を15分程度遅らせることができた可能性があり,また,樋門を開扉できていれば,さらに,a川の溢水の開始を遅らせることができる可能性があった(甲3,乙16,17)。 (ウ) したがって,a川の水位が計画H.W.LのYP2.36メートルに達した平成12年9月11日午後2時20分過ぎころには,補助参加人には,a川の水位を下げ,bポンプ場からのa川の溢水を防ぐため,1号ポンプを手動運転し,b樋門を開扉する必要性があった。補助参加人のチームリーダーFが,遅くとも,午後1時からの1時間降雨量が51ミリメートルに達した同日午後2時時点で,その旨を認識して適切にbポンプ場への人員配置を行えば,午後2時20分過ぎにbポンプ場の1号ポンプを手動運転し,b樋門を開扉することは可能であったと考えられる。 メートルに達した同日午後2時時点で,その旨を認識して適切にbポンプ場への人員配置を行えば,午後2時20分過ぎにbポンプ場の1号ポンプを手動運転し,b樋門を開扉することは可能であったと考えられる。そして,Fが午後2時時点でそのように認識判断することは,長年に亘り洪水防止のためポンプ場運転管理業務に係わっているFとしては十分に可能であったと認められる。 オまとめ以上によると,補助参加人の職員Fとしては,平成12年9月11日午後1時30分の時点で,午後1時から1時30分までの降雨量が20.5ミリメートルあり,今後も同様の激しい雨が予想されたのであるから,fポンプ場に派遣した3名の職員に携帯電話等で緊急連絡を取り,そのうち1名を直ちにbポンプ場に赴かせ,必要に応じて1号ポンプを手動で運転開始し,場合によりa川の河口に設置されたb樋門を電動操作ボタンにより開けるように指示する注意義務があったと認められる。また,遅くとも,同日午後2時に1時間降雨量が51ミリメートルに達した時点では,無人であったbポンプ場に少なくとも作業員1名を配置しなければならない明白な注意義務があったと認められる。しかし,チームリーダーとして3年以上の経験を有するFは,そのような必要性を認識するに至らず,上記の注意義務に違反している。したがって,補助参加人には,履行補助者Fの上記行為に関し,ポンプ場運転管理業務委託契約について善管注意義務違反の過失があったといわざるを得ない。 確かに,bポンプ場の自動運転による2号ないし6号ポンプの排水能力は毎分360立方メートルであり,補助参加人がA市からbポンプ場の運転管理を受託して以降,本件豪雨以前に,e消防署において1時間当たり降雨量が30ミリメートルを超えた降雨は8回観測されているが,そのうち,平成11年8月18日午後8時 参加人がA市からbポンプ場の運転管理を受託して以降,本件豪雨以前に,e消防署において1時間当たり降雨量が30ミリメートルを超えた降雨は8回観測されているが,そのうち,平成11年8月18日午後8時から午後9時までの1時間42ミリメートルの降雨時を除き,1時間当たり降雨量32ミリメートルから48ミリメートルの降雨については,いずれも自動運転の2号ないし6号ポンプ(うち最大で4台が稼働)で対応できていたこと(前記1(4)),当日,午前3時から4時までの1時間あたり36.0ミリメートルの降雨と,既に総降雨量が58.5ミリメートルに達した後の午前5時30分から6時30分までの1時間あたり54.5ミリメートルの降雨にも,2ないし4号ポンプの3基による自動運転で対応できていたこと(前記1(5))からすれば,E社の降雨予測(午後1時から2時の1時間予測降水量は30ミリメートル,午後2時から3時の1時間予測降水量は23ミリメートル)を前提とする限り,Fが,同日午後0時30分の時点で,当面2号ないし6号ポンプの自動運転で対応できる程度の降雨と判断したことが誤りであるとはいえない。しかしながら,その後,e消防署付近では午後1時から1時30分まで20.5ミリメートルの降雨があり,その降雨量が今後減少するような状況はなく,かえって,午後1時30分から2時までの現実の降雨量が30.5ミリメートルであったことからすると,同日午後1時30分の時点で,補助参加人の職員Fは,午後1時から2時までの降雨量が大雨洪水警報の発令基準である1時間あたり40ミリメートルに達する恐れがあり,bポンプ場の総排水能力の37.9パーセントを担当する1号ポンプを手動で運転開始する必要が生じる可能性のあることを十分に予見できたものであって,遅くとも同日午後2時の時点では,無人のbポンプ場に り,bポンプ場の総排水能力の37.9パーセントを担当する1号ポンプを手動で運転開始する必要が生じる可能性のあることを十分に予見できたものであって,遅くとも同日午後2時の時点では,無人のbポンプ場に作業員を早急に配置すべき注意義務があったと認められる。したがって,上記認定に反する被告らの主張はいずれも採用できない。 (3) gポンプ場の職員配置状況について原告は,gポンプ場はその他の8か所のポンプ場の拠点ポンプ場であるのに,gポンプ場に配置された1名の職員が緊急連絡等を集約する立場に徹することなく他の作業に従事していたため,bポンプ場からの高水位警報に気付くのが遅れたことは,補助参加人における不適切な人員配置の結果であると主張する。 確かに,gポンプ場に配置されていた1名の職員はごみ除去作業をしていたため,bポンプ場からの高水位警報に気付くのが10分程度遅れ,チームリーダーであるFに対して高水位警報発信の連絡をしたのは午後2時10分ころであったことは前記1(6)のとおりである。 しかしながら,bポンプ場とfポンプ場にあわせて配置された3名の職員は,Fから連絡を受ける前の午後2時ころには,早急にbポンプ場に向かわなくてはならないと自ら判断していたのであって,同事実からすれば,gポンプ場の職員が高水位警報に10分程度気付くのが遅れたことは結果に影響を及ぼしていないものと評価できるから,これをもって補助参加人の過失を基礎付けることはできない。 したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。 (4) 以上の次第であって,補助参加人の担当者が平成12年9月11日午後1時30分ないし2時の時点で,bポンプ場に職員を配置する行動に着手せず,bポンプ場を無人にした結果,同日午後2時20分の時点で,bポンプ場の1号ポンプを手動運転できず,そのころ,b 9月11日午後1時30分ないし2時の時点で,bポンプ場に職員を配置する行動に着手せず,bポンプ場を無人にした結果,同日午後2時20分の時点で,bポンプ場の1号ポンプを手動運転できず,そのころ,b樋門を電動で開けることができなかったことについて,補助参加人には,ポンプ場運転管理業務委託契約上の善管注意義務違反の過失があったと認められる。したがって,争点(1)イについての原告の主張は,この限度で理由がある。 4 争点(1)ウ(手動運転により水位をTP-0.3メートル以下に保つことを怠った過失の有無)について(1) 原告は,平成12年9月11日午後0時30分ころ以降は,補助参加人は1号ないし6号ポンプを手動で操作したり,a川の流入量や外潮位とa川の水位の差によって樋門を開くなどして,a川の水位をTP-0.3メートル(YP+1.08メートル)以下を保つように操作することが必要であったにもかかわらず,これを怠ったことは善管注意義務に違反する過失である旨主張し,上記義務の根拠として,管理組合が作成した「(b樋門)排水ポンプ容量の検討」(甲2)において,bポンプ場の最大時の排水ポンプ容量(毎秒9.6立方メートル)は,小さな河道貯留を最大限に利用するためピーク流出量,約1時間前に河川側水位をTP-0.3メートル以下にする必要があり,現実にはピーク時間を予測することは困難であるから常にa川の水位をTP-0.3メートル以下となるように刻々と変化する流入に対して微妙なポンプ制御が必要である旨記載されていることをあげる。 (2) しかしながら,「(b樋門)排水ポンプ容量の検討」(甲2)は,その表題及び内容をみても,排水ポンプの容量について計算し検討しているもので,上記記載部分が直ちに運転操作の指針としての性質を有するものとみることはできないし,乙 ポンプ容量の検討」(甲2)は,その表題及び内容をみても,排水ポンプの容量について計算し検討しているもので,上記記載部分が直ちに運転操作の指針としての性質を有するものとみることはできないし,乙12,13によれば,作成者である管理組合も同文書が運転マニュアルではないとしていることが認められる。 そして,前記1(3)のとおり,bポンプ場の2号ないし6号ポンプの自動運転の範囲は,水位がYP1.6メートルの時点で1基目が運転を開始し,水位がYP0.9メートル以下になるといずれも運転を停止するものであること,手動の1号ポンプは水位がYP0.9メートル以下になるとポンプが空回りして運転できない構造となっていることからすれば,ポンプの運転によりTP-0.3メートル(YP1.08メートル)以下に水位を保とうとすると,2号ないし6号ポンプの自動運転での運転開始水位よりも約50センチメートル低い水位でポンプを起動することになるし,1号ポンプについては,わずか0.18メートルの幅の中で頻繁にポンプを停止させたり起動させたりしなければならないこととなる。確かに2号ないし6号ポンプは,非常停止水位はYP0.6メートルであり,1号ポンプのように0.18メートルの幅の中で運転することにはならないが,自動運転時の運転停止水位がYP0. 9メートルであるのに,同水位をわずか0.18メートル上回るだけのYP1.08メートルでポンプを起動すべき合理性は認め難い。 (3) 原告は,三重県建設技術センターによる「(b樋門)排水ポンプ容量の検討」(甲2)の分析結果(甲27)において,前記記載部分は,降雨による河川への流出量,ピーク時間の予測は困難であることから,降雨時にはTP-0.3メートル以下になるようポンプ運転を行う必要があることを説明しているとされることから,これに従うべき義 部分は,降雨による河川への流出量,ピーク時間の予測は困難であることから,降雨時にはTP-0.3メートル以下になるようポンプ運転を行う必要があることを説明しているとされることから,これに従うべき義務があったと主張する。しかし,甲27を正確にみれば,同記載部分はポンプ容量を最大限に効率よく稼働させるための仮定条件を述べたものとされているのであって,現実のポンプの運転操作を義務づけるものと説明しているものでないことは明らかであるから,原告の上記主張は採用できない。 (4) 以上によれば,a川の水位を常にTP-0.3メートル(YP1.08メートル)以下に保つことを常に求めることは,bポンプ場に設置されたポンプの仕様に照らし合理性を欠くというべきであって,補助参加人においてかかる善管注意義務があったとみることはできない。 したがって,TP-0.3メートル以下に水位を保つように運転操作をしなかったことをもって過失をいう原告の主張は,採用できない。 5 争点(2)(因果関係)について(1) 原告は,b樋門を開扉すれば,平成12年9月11日の本件豪雨によるa川の氾濫を避けることができたと主張する。そこで検討するに,前提事実と甲7,29,30,31の①②,32ないし34,乙3,16,17,丙5,11の①ないし⑨及び弁論の全趣旨によると,次のとおり認められる。 ア本件豪雨の降雨量e消防署付近では,平成12年9月11日,本件豪雨により,次のとおりの降雨があり,これは,三重県における大雨洪水警報の発令基準である,1時間あたり40ミリメートル以上,もしくは3時間あたり80ミリメートル以上,もしくは24時間あたり170ミリメートル以上の降雨が予測される場合を大幅に超えるものである(降雨量の詳細は別紙2のとおり)。 午後1時から午後2時まで 51.0ミリメ あたり80ミリメートル以上,もしくは24時間あたり170ミリメートル以上の降雨が予測される場合を大幅に超えるものである(降雨量の詳細は別紙2のとおり)。 午後1時から午後2時まで 51.0ミリメートル午後2時から午後3時まで 52.5ミリメートル午後3時から午後4時まで 85.0ミリメートル午後4時から午後5時まで 90.5ミリメートルイ本件豪雨は,三重県北部をはじめ愛知県に大きな被害をもたらした。A市における24時間の総雨量は500ミリメートルを超え,臨海部を中心に平成12年9月11日午後1時から午後6時までの5時間で約300ミリメートルの降雨があった。A市では昭和49年7月25日の集中豪雨において市内の河川堤防の決壊等の被害が発生したが,このときの連続降雨量は304.5ミリメートルで1時間あたりの最大降雨量は71.5ミリメートルであったところ,本件豪雨はこれをはるかに上回るものであった。 ウ bポンプ場における測定水位は,平成12年9月11日午後1時50分以降急激に上昇し,順次排水ポンプが運転を開始しているにもかかわらず,午後2時45分の運転停止まで減少することはなかった。 bポンプ場では,2号ないし6号ポンプが水位の上昇に伴って自動的に始動していたが,排水が追い付かず,1号ポンプを手動で始動させないまま,午後2時45分ころ,本件豪雨によりポンプ室が浸水しポンプが冠水したため,その機能を停止した。bポンプ場では,ポンプの停止のために内水位が上昇し,午後3時ころ,防潮堤の開閉扉の開口部より内水が流出し始めた。 エ平成12年9月11日午後2時20分ころ,JR関西線と国道1号線の間でa川が溢水し,p町と東c地区が冠水した。A市長がJ株式会社に依頼した当日のc地区の詳細な浸水現象を再現した調査結果(乙16)によると,同日午後 11日午後2時20分ころ,JR関西線と国道1号線の間でa川が溢水し,p町と東c地区が冠水した。A市長がJ株式会社に依頼した当日のc地区の詳細な浸水現象を再現した調査結果(乙16)によると,同日午後2時20分から5時までの再現計算の結果は別紙4のとおりであり,これによると,c地区の浸水は,bポンプ場が機能を停止した午後2時45分より前の午後2時20分ころbポンプ場から離れたq駅周辺で発生し始め,時間の経過に伴い,c地区全域に広がっている。 オ本件豪雨の結果,A市内では,c地区のa川流域に限らず,全域において多大な災害が発生した。そのため,A市は,被害の甚大さにかんがみ,災害復旧に要する費用につき,私的財産にかかる部分を除き,公費で負担するという地域住民に対する福祉政策的見地から,被害を受けた地域全般の災害復旧という行政目的を達成するために,本件支出を行った。特に,bポンプ場の災害復旧費を除く支出は,本件豪雨に伴い,c地区に限定せず災害を受けた地域全般にわたって同一の条件で災害復旧費用として政策的に支出した。 (2) 以上によると,c地区の浸水被害は,原告が主張する補助参加人の管理業務委託契約上の過失によるbポンプ場の機能の廃止が原因ではなく,平成12年9月11日午後に発生した通常の予測に反する記録的,局地的な本件豪雨により,河川及び下水道からの溢水など複合的な原因によるものであると認められる。そして,同日,仮に樋門を開いておいたとしても,後記のとおり,c地区の冠水被害は避けられなかったと認められるから,補助参加人のポンプ場運転管理業務委託契約における上記過失とc地区の浸水被害ないしA市による本件支出との間に因果関係が存するとはいえない。 (3)ア原告は,b樋門の自然排水能力は毎分1140立方メートル(毎秒19立方メートル)であり,樋 における上記過失とc地区の浸水被害ないしA市による本件支出との間に因果関係が存するとはいえない。 (3)ア原告は,b樋門の自然排水能力は毎分1140立方メートル(毎秒19立方メートル)であり,樋門を開扉しておけば時間当たり66.02ミリメートルの雨量が自然流下したから,毎秒19立方メートルの排水能力を持つ樋門を開けておけばbポンプ場は浸水しなかったし,a川は溢水しなかったと主張し,甲2,3,7,12,18,20ないし25,44,46等を提出する。 しかしながら,A市長がJ株式会社に依頼した「集中豪雨(東海豪雨)によるc地区の浸水状況予測に関する調査業務」(乙17)によると,b樋門を終日開扉していた場合と平成12年9月11日午後2時20分に開扉した場合について,管渠からの溢水量を算出し,溢水が地表面をどのように流れるかの解析を行い,浸水現象を時系列で予測し比較した結果は,別紙5のとおりであり,これによると,a川は,b樋門を終日開扉していた場合と同日午後2時20分に樋門を開扉した場合のいずれの条件でも,d港潮位が最も上昇する同日午後5時ころには最高水位に達し,いずれの場合においても,午後2時20分以降,JR関西線の上流域で溢水が発生し,また,JR関西線と国道1号線の間において溢水発生の可能性が否定できず,午後4時50分には,bポンプ場付近において溢水が発生したものと予測される。そして,浸水状況についても,上記各条件において両者に取り立てて差はないものと予測される。原告は甲49の①②等に基づき上記認定に反する主張をするが,甲49の①②は上記認定に反するものではない。 イ原告は,乙16,17で使用されたa川上流域(o地区)の雨量についてe消防署降雨データ(c地区の降雨量)を使用するのは誤りであり,平成12年9月11日午後の降雨量は海岸か 反するものではない。 イ原告は,乙16,17で使用されたa川上流域(o地区)の雨量についてe消防署降雨データ(c地区の降雨量)を使用するのは誤りであり,平成12年9月11日午後の降雨量は海岸から離れるほど降雨量が少なく,同日午後2時10分すぎから午後5時35分までのc地区と保々地区の降雨量は,前者が後者より大幅に多かったから,e消防署降雨データをo地区の降雨量としている乙16,17におけるa川の水位量は現実よりも高い数値となっていると主張する。しかしながら,各観測データーや本件豪雨の被害状況等からみて,e消防署降雨データをo地区の降雨量とすることが不合理とはいえず,J株式会社による乙16,17の各計算の内容及び方式は合理的なものであって,十分に信用できると認められるから,原告の主張は理由がない。 次に,原告は,乙17における溢水状況をみても,JR関西線から国道1号線間の溢水量は下水に流れて処理できる水量であり浸水被害がおこるようなものではないし,b樋門付近の溢水は堤防の低い右岸川であり溢水した水は海へ流れていき付近に浸水被害をもたらさないと考えられると主張する。しかしながら,丙5,11の①ないし⑨により認められる本件豪雨によるA市の甚大な被害状況からすると,原告の上記主張はいずれも採用できない。 さらに原告は,乙17のbポンプ場地点水位は最高2.92メートル程度であり,実際のポンプ停止水位3.2メートルよりも低い水位であるので,ポンプ場の全機能が廃することはなく,乙17は開扉した樋門の管水路の自然排水だけの検証結果であるところ,潮位よりもa川の内水位が高くなればポンプによる強制排水によってその水位よりも下げることができるから,樋門を終日あるいは同日午後2時に開扉すればa川の溢水による浸水被害は生じなかったと主張する。しかしなが もa川の内水位が高くなればポンプによる強制排水によってその水位よりも下げることができるから,樋門を終日あるいは同日午後2時に開扉すればa川の溢水による浸水被害は生じなかったと主張する。しかしながら,甲3によると,1号ポンプを同日午後2時20分に始動していても,bポンプ場の全ポンプの停止時間を15分程度遅らせる可能性があったに過ぎず,同日午後3時にはbポンプ場の全ポンプが停止したものと考えられる。そして,本件豪雨のその後の降雨量からすると,乙17で予測するとおり,樋門が同日開扉されていたとしても,浸水状況に差はないものと考えられるから,原告の上記主張も採用できない。 (4) 以上によると,補助参加人がb樋門の操作を誤ったことによりa川が溢水しc地区に浸水被害をもたらしたとの因果関係を認めることはできないから,a川の溢水によりA市が被った損害について補助参加人が債務不履行など法律上の損害賠償責任を負うとすることはできない。 第4 結論以上の次第であって,補助参加人には,bポンプ場の管理業務を遂行するに際し,平成12年9月11日午後1時30分ないし2時の時点で,bポンプ場に職員を配置させる措置をとらず,bポンプ場を無人にした結果,同日午後2時20分の時点で,bポンプ場の1号ポンプを手動運転できず,そのころ,b樋門を開扉できなかったことについて,bポンプ場の運転管理業務委託契約における善管注意義務違反は認められるが,同日午後の本件豪雨は,通常の予想外の猛烈なもので,それにより生じた洪水は,想定外の自然現象による不可抗力によるものであったといわざるを得ない。したがって,補助参加人の運転管理業務委託契約上の上記善管注意義務違反の事実と,同日bポンプ場が浸水し,a川が溢水して,A市が本件支出を行った事実との間に因果関係を認めることはできない。 得ない。したがって,補助参加人の運転管理業務委託契約上の上記善管注意義務違反の事実と,同日bポンプ場が浸水し,a川が溢水して,A市が本件支出を行った事実との間に因果関係を認めることはできない。 よって,原告の本件請求は,その余の点につき判断するまでもなく,理由がないから棄却することとし,訴訟費用及び補助参加費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,66条を適用して,主文のとおり判決する。 津地方裁判所民事第1部裁判長裁判官水谷正俊裁判官本 山賢太郎裁判官薄 井真由子
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