平成21年(ワ)第14726号特許権侵害差止請求事件判決名古屋市〈以下略〉原告株式会社ミキ同訴訟代理人弁護士乾てい子同補佐人弁理士宇佐見忠男同岩田康利愛知県北名古屋市〈以下略〉被告日進医療器株式会社同訴訟代理人弁護士田嶋好博同訴訟代理人弁理士山本文夫同関根由布同津国肇同柳橋泰雄同生川芳徳 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は別紙イ号物件目録記載の車椅子を製造し,販売し,又は販売のために展示してはならない。 2 被告は,前項記載の製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,5430万2916円及びこれに対する平成21年5月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告に対し,3146万1976円及びこれに対する平成22年1 1月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告は,原告に対し,627万7920円及びこれに対する平成23年7月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,発明の名称を「車椅子」とする特許権を有する原告が,別紙イ号物件目録記載の車椅子(以下「被告製品」という。)が同特許権に係る発明の技術的範囲に属すると主 払え。 第2 事案の概要 1 本件は,発明の名称を「車椅子」とする特許権を有する原告が,別紙イ号物件目録記載の車椅子(以下「被告製品」という。)が同特許権に係る発明の技術的範囲に属すると主張して,被告に対し,特許法100条1項及び2項に基づき,被告製品の製造・販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに,同法65条1項に基づく補償金として348万8971円及びこれに対する平成21年5月21日(訴状送達日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,並びに,特許権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償金として8855万3841円及びうち5081万3945円に対する前同日から,うち3146万1976円に対する平成22年11月8日(同年10月29日付け訴えの変更申立書送達日)から,うち627万7920円に対する平成23年7月20日(同年6月30日付け訴えの変更申立書送達日の翌日)から各支払済みまで上記割合による遅延損害金の各支払を求める事案である。 2 争いのない事実等(証拠等〈略〉を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告は,車椅子及び福祉用具・医療用具の製造・卸販売等を業とする株式会社である。 イ被告は,車椅子の製造販売等を業とする株式会社である。 (2) 原告の有する特許権ア原告は,次の内容の特許(請求項の数3。以下,この特許を「本件特許」といい,同特許に係る特許権を「本件特許権」という。)の特許権者である。 特許番号第3993996号発明の名称車椅子出願日平成13年10月23日公開日平成15年5月7日登録日平成19年8月3日イ本件特許の特許公報の記載 称車椅子出願日平成13年10月23日公開日平成15年5月7日登録日平成19年8月3日イ本件特許の特許公報の記載は別紙1特許公報写し〈略〉のとおりであるが,本件特許については,その登録後に数次の訂正が行われ,平成25年8月16日付け審決(訂正2013-390103号)により認容された訂正の結果,本件特許の特許請求の範囲及び明細書の記載は,別紙2「明細書」写し〈略〉記載のとおりとなっている(以下,上記訂正後の本件特許に係る明細書と本件特許に係る図面とを併せて,「本件明細書等」という。)。 (3) 本件特許に係る特許請求の範囲本件特許の特許請求の範囲請求項1の記載は,別紙2「明細書」写しの該当項記載のとおりであり(以下,請求項1記載の特許発明を「本件発明」という。),これを構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記号に従い「構成要件A」などという。なお,本件特許の特許請求の範囲及び本件明細書等の中では「巾」の字が用いられているが,本判決では,「巾」及び「幅」を同義として用いる。)。 A 左右側枠を一個または二個以上のX枠で連結した構造であって,B 該X枠は中央で相互回動可能に結合され,下端部を該左右側枠下部に枢着した一対の回動杆からなり,C 該一対の回動杆の各上端には上側杆がそれぞれ取り付けられ,D 各下端には下側杆がそれぞれ取り付けられ,E 該上側杆は上記左右側枠に具備されている座梁部に取り付けられている杆受けにそれぞれ支持されるように設定されており, F 該回動杆の下側杆は左右側枠に沿った方向に配設されている枢軸を介して該左右側枠下部に枢着されており,G 該左右側枠下部には前後一対の下側杆取付部が取 されるように設定されており, F 該回動杆の下側杆は左右側枠に沿った方向に配設されている枢軸を介して該左右側枠下部に枢着されており,G 該左右側枠下部には前後一対の下側杆取付部が取り付けられており,該下側杆取付部には,該左右側枠に沿う方向を向き,かつ該枢軸を支持するための軸穴がそれぞれ複数個上下に相対して配列して設けられており,H 該回動杆下端の下側杆を該前後一対の下側杆取付部間に位置させて,該車椅子の使用者の体形に応じて調節される巾に対応して該下側杆取付部の複数個の軸穴のうちの一つを選択して該軸穴に該枢軸を引き抜き可能に挿通支持させることによって,該X枠の上端部は該左右側枠に対して上下位置を変えることなく,かつ該X枠の長さを変えることなく該車椅子の巾を調節可能にしたことを特徴とするI 車椅子(4) 被告の行為被告は,業として,被告製品を製造,販売及び販売の申出をしている。 (5) 被告製品の構成被告製品の構成は,別紙図面に示されるとおりであるが,この構成を本件発明の構成要件に対応して分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記号に従い「構成a」などといい,構成f1ないしf3については,「構成f」と総称することがある。なお,分説中に記載された符号は,別紙図面〈略〉中の符号に対応する。)。 a 左右一対の側枠(3,3)を前後一対のX枠(11,12)で連結した構造であって,b 該X枠(11,12)は中央で相互回動可能に結合され,下端部を該左右側枠下部に枢着した一対の回動杆(14,14)からなり,c 該一対の回動杆(14,14)の各上端には上側杆(17,17)がそれぞれ取り付けられ, d 該一対の回動杆(14,14)の各下端には下側杆(18,18)がそれぞれ取り付け なり,c 該一対の回動杆(14,14)の各上端には上側杆(17,17)がそれぞれ取り付けられ, d 該一対の回動杆(14,14)の各下端には下側杆(18,18)がそれぞれ取り付けられ,e 該上側杆(17,17)は上記左右側枠(3,3)に具備されている座梁部に取り付けられている杆受け(16,16)にそれぞれ支持されるように設定されており,f1 回動杆の下側杆(18,18)の前後両端には,円筒状の軸部(29a,29a)を備えたU字状のスライダ(29,29)が下側杆(18,18)に対して回転可能に挿入されている。スライダ(29,29)を左右側枠(3,3)の前後一対の中間柱部(6A,6A)及び後脚柱部(6,6)の下部に嵌合させることにより,X枠(11,12)の下端部を左右側枠(3,3)に対して上下方向にスライド可能に連結されている。 f2 スライダ(29,29)の軸部(29a,29a)の内部には,ばね(27,27)により外向きに弾発されたスライドピン(26,26)が収納されている。これらばね(27,27)に付勢されて,スライドピン(26,26)の先端が,スライダ(29,29)の先端から僅かに突出する。スライドピン(26,26)は,その後端に螺合された操作ノブ(28,28)を操作することにより,後退させることができる。 f3 操作ノブ(28,28)は,回動杆の下側杆(18,18)に形成した長孔を介して,スライドピン(26,26)に螺合されており,これら下側杆(18,18)とスライドピン(26,26)とは,スライダ(29,29)の軸部(29a,29a)を支点にして一体で回動する。 g 左右側枠の前後一対の中間柱部(6A,6A)及び後脚柱部(6,6)の下部には,それぞれ複数個の軸穴(13A,13B,13C)が上下に相対 )の軸部(29a,29a)を支点にして一体で回動する。 g 左右側枠の前後一対の中間柱部(6A,6A)及び後脚柱部(6,6)の下部には,それぞれ複数個の軸穴(13A,13B,13C)が上下に相対して設けられている。 h 該回動杆(14,14)下端の下側杆(18,18)を該中間柱部(6A,6A)と該後脚柱部(6,6)の間に位置させて,該車椅子(1) の使用者の体形に応じて調節される巾に対応して該中間柱部(6A,6A)と該後脚柱部(6,6)の複数個の軸穴(13A,13B,13C)のうちの一つを選択して該軸穴(13A,13B,13C)に該スライドピン(26,26)を支持させることによって,該X枠(11,12)の上端部は該左右側枠(3,3)に対して上下位置を変えることなく,かつ該X枠(11,12)の長さを変えることなく該車椅子(1)の巾を調節可能にしたi 車椅子(1)。 (6) 構成要件充足性被告製品の構成aないしe 及びiは,それぞれ本件発明の構成要件AないしE及びIを充足する。 3 争点(1) 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(2) 本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものか(3) 補償金請求権及び損害賠償請求権の存否及び額第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)(被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか)について〔原告の主張〕(1) 被告製品の構成要件充足性被告製品は,以下のとおり,本件発明の構成要件F,G及びHを充足する。 よって,被告製品は,本件発明の構成要件を全て充足するから,本件発明の技術的範囲に属する。 (2) 構成要件Fについてア被告製品の「スライドピン」は,本件発明の構成要件Fの「枢軸」に該当するから,被告製品の下側杆がスライ 件を全て充足するから,本件発明の技術的範囲に属する。 (2) 構成要件Fについてア被告製品の「スライドピン」は,本件発明の構成要件Fの「枢軸」に該当するから,被告製品の下側杆がスライドピン(枢軸)を介して左右側枠下部に回動可能に枢着されている構成は,本件発明の構成要件Fを充足す ることは明らかである。 イこの点に関して被告は,構成要件Fの「枢軸」が,一方の軸穴から他方の軸穴に達する長さを有する1本の軸であり,下側杆の内径とほぼ同様の外径を有するものに限定されると解釈して,被告製品におけるスライドピンは下側杆の両側に一つずつ,合計二つ設けられたものであり,しかも,スライドピンの外径は,下側杆の内径と比べて小さく,ガイド機能を奏しないから,構成要件Fの「枢軸」には該当しないと主張する。 しかし,被告製品の下側杆の両端にはスライダの軸部を介してスライドピンが装着されており,該両端のスライドピンは相互に軸が一致しており,中間柱部と後脚柱部とにそれぞれ設けられている複数個の軸穴のうちの一つにそれぞれ引き抜き可能に挿通支持されるものであるから,スライドピンは,前後に分割されているものの,実質的に本件発明の「枢軸」と同一機能を有し,同一部材とみることができる。 また,被告製品のスライダの軸部の内径は,スライドピンの外径とおおむね等しく,上記スライダの軸部は下側杆内に挿入されて下側杆の内筒として機能しているから,スライドピンの外径は,下側杆の内径とおおむね等しいといえる。そうすると,被告製品にあっても,車椅子の幅調節において下側杆を適切な軸穴の位置に合わせ,その下側杆の両端からスライドピンを軸穴に挿通することができるので,その下側杆は本件発明の「下側杆」と同様に,ガイド機能を有している。 このほか,被告は,仮に被告製 側杆を適切な軸穴の位置に合わせ,その下側杆の両端からスライドピンを軸穴に挿通することができるので,その下側杆は本件発明の「下側杆」と同様に,ガイド機能を有している。 このほか,被告は,仮に被告製品のスライドピンが「枢軸」に当たるとしても,そのスライドピンと下側杆との間に,スライダが介在してしまうから,構成要件Fの「枢軸を介して」を充足しないと主張する。 しかし,被告製品では,「枢軸」であるスライドピンは,直接下側杆内に挿通されて,直接軸穴に引き抜き可能に挿通支持されているのであるから,下側杆の前後両端に円筒状の軸部を備えたU字状のスライダが挿入さ れているとしても,実質的には,下側杆は軸穴のうちの一つに枢軸を引き抜き可能に挿通支持させるという構成要件Fに相当する構成を採用している。 (3) 構成要件Gについてア被告製品の「中間柱部」と「後脚柱部」は,左右側枠の下部(座梁部と下梁との間)において,前後に並んで取り付けられたものであり,また,その中間柱部と後脚柱部には,左右側枠に沿う方向を向き,かつ前後一対の軸を支持するための軸穴がそれぞれ複数個(3個)上下に相対して配列して設けられているから,被告製品の「中間柱部」と「後脚柱部」は,本件発明の構成要件Gの「前後一対の下側杆取付部」に相当する。 よって,被告製品の構成gは,本件発明の構成要件Gを充足する。 イこれに関して被告は,構成要件Gの「下側杆取付部」は,「該左右側枠下部」に取り付けられた,「該左右側枠」とは別個独立の部材でなければならないと主張する。 しかし,本件発明の「下側杆取付部」は,左右側枠に前後一対設けられており,左右側枠に沿う方向を向き,かつ該枢軸を支持するための軸穴がそれぞれ複数個上下に相対して設けられているものであり,その前後一対の下側杆 件発明の「下側杆取付部」は,左右側枠に前後一対設けられており,左右側枠に沿う方向を向き,かつ該枢軸を支持するための軸穴がそれぞれ複数個上下に相対して設けられているものであり,その前後一対の下側杆取付部の間に下側杆が枢軸を介して枢着されているものである。 一方,被告製品にあっては,左右側枠の前後一対の中間柱部及び後脚柱部には左右側枠に沿う方向を向き,かつスライドピン(枢軸)を支持するための軸穴がそれぞれ複数個相対して配列して設けられており,その間に下側杆がスライドピン(枢軸)を介し枢着されている。そうすると,被告製品の中間柱部と後脚柱部が,本件発明の下側杆取付部と同一の機能を有することは明白である。 したがって,被告製品において,中間柱部と後脚柱部が左右側枠の構成部材であったとしても,その中間柱部及び後脚柱部が,本件発明の「前後 一対の下側杆取付部」と同一部材であることは疑う余地がない。 また,被告は,構成要件Gの「軸穴」に関して,構成要件Hの「引き抜き可能」との文言に照らすと,「枢軸」が1本の軸であり,これを軸穴に「引き抜き可能」に挿通するために,対向する一対の「軸穴」のうち少なくとも一方の軸穴は貫通穴でなければならないと主張する。 しかし,本件発明の構成要件G及びHにおいて,枢軸は前後の下側杆取付部の複数個の軸穴の一つに引き抜き可能に挿通支持されており,車椅子の幅を変更する場合に,上記枢軸を上記軸穴から引き抜いて,別の所定の軸穴に該枢軸を挿通支持させることになる。このような,本件発明の構成要件G及びHの機能を果すためには,軸穴が貫通している必要は全くない。 実際,軸穴が貫通していない被告製品においても,スライドピン(枢軸)が前後の中間柱部及び後脚柱部の複数個の軸穴の一つに挿通支持されており,車椅子の幅を変更する場合には が貫通している必要は全くない。 実際,軸穴が貫通していない被告製品においても,スライドピン(枢軸)が前後の中間柱部及び後脚柱部の複数個の軸穴の一つに挿通支持されており,車椅子の幅を変更する場合には上記スライドピンを上記軸穴から引き抜いて,別の軸穴に該スライドピンを挿通支持させている。 (4) 構成要件Hについて被告製品においては,前記のとおり,中間柱部と後脚柱部が本件発明の「下側杆取付部」に相当し,その間に下側杆を位置させており,また,スライドピン(枢軸)が前後の中間柱部及び後脚柱部の複数個の軸穴の一つに挿通支持されており,車椅子の幅を変更する場合に上記スライドピンを上記軸穴から引き抜いて,別の所定の軸穴に該スライドピンを挿通支持させているのであるから,このような被告製品の構成は,本件発明の構成要件Hを充足する。 〔被告の主張〕(1) 被告製品の構成要件充足性につき被告製品が本件発明の構成要件F,G及びHを充足することは否認する。 ア構成要件Fについて被告製品は,構成要件Fの「枢軸」及び「枢軸を介して」を充足しない。 (ア) 「枢軸」の非充足原告が,本件特許に係る訂正審判において,枢軸が1本であり,この1本の枢軸を円筒状の下側杆に挿通すると,両者の軸線が互いに一致し,これらの軸線と一対の軸穴の中心とを一致させることで,下側杆がガイドとして機能すると主張していること,及び,本件明細書等には一貫して1本の「枢軸」を用いた構成のみが記載されており,本件明細書等の【図6】には,下側杆の内径と枢軸の外径とがほぼ同様の寸法で記載されていることを参酌すると,構成要件Fの「枢軸」は,一方の軸穴から他方の軸穴に達する長さを有する1本の軸であり,下側杆の内径とほぼ同様の外径を有するものに限定解釈 軸の外径とがほぼ同様の寸法で記載されていることを参酌すると,構成要件Fの「枢軸」は,一方の軸穴から他方の軸穴に達する長さを有する1本の軸であり,下側杆の内径とほぼ同様の外径を有するものに限定解釈されるべきである。そもそも本件発明において「枢軸」を2本にした場合,どのような構成であれば原告の主張するガイド機能が奏されるのか,本件明細書等及び出願時の技術常識を参酌しても,そのような構成を導き出すことはできない。 これに対し,被告製品におけるスライドピンは,下側杆の両側に一つずつ,合計二つ設けられたものであるから,構成要件Fの1本の「枢軸」には該当しない。特にスライドピンの外径は,下側杆の内径と比べて小さく,下側杆との関係において,原告の主張するガイド機能は奏されない。 したがって,2本のスライドピンを有する被告製品の構成が本件発明の技術的範囲に属するはずがない。 (イ) 「枢軸を介して」の非充足「枢軸を介して」の構造については,構成要件Hに「該下側杆取付部の複数個の軸穴のうちの一つを選択して該軸穴に該枢軸を引き抜き可能に挿通支持させる」との記載があるところ,原告は,本件特許に係る訂正審判において,構成要件Hの「引き抜き可能」とは,枢軸が下側杆及び軸穴との関係でそれぞれ引き抜き可能であることであり,下側杆,軸 穴及び枢軸とが密接かつ直接的に関係していてはじめて「引き抜き可能」といえ,下側杆,軸穴及び枢軸とがそれぞれの間に何かを介在させるような間接的な結合であれば「引き抜き可能」という用語を用いることはできず,「介して」という用語も間接的な結合の意味では使用されていない,と主張した。 また,本件明細書等の【発明の実施の形態】及び図面には,一貫して,下側杆と軸穴と枢軸との間に何も介在させない構成が記 ず,「介して」という用語も間接的な結合の意味では使用されていない,と主張した。 また,本件明細書等の【発明の実施の形態】及び図面には,一貫して,下側杆と軸穴と枢軸との間に何も介在させない構成が記載されている。 このような訂正審判における原告の主張及び本件明細書等の記載を参酌すると,構成要件Fの「介して」は,「下側杆」と「軸穴」と「枢軸」との間に何も介在させていないという限定を含んでいるものと解される。 これに対し,被告製品の下側杆には,U字上のスライダが回転可能に挿入されており,このスライダの軸部の内部にスライドピンが収納されている。このような被告製品の構成において,仮にスライドピンが構成要件Fの「枢軸」に当たるとすれば,下側杆とスライドピンとの間にスライダが介在してしまうため,構成要件Fの「枢軸を介して」を充足しない。 イ構成要件Gについて被告製品は,構成要件Gの「下側杆取付部」及び「軸穴」を充足しない。 (ア) 「下側杆取付部」の非充足「該左右側枠下部には前後一対の下側杆取付部が取り付けられており」との構成要件Gをその文言どおり解釈すれば,「下側杆取付部」とは,「左右側枠下部」に取り付けられた,「左右側枠」とは別個独立の部材と解される。また,本件明細書等の段落【0013】,【図2】,【図6】及び【図8】には,該左右側枠の下梁に,これとは別個独立の部材である「下側杆取付部」を溶接した構成が記載されている。さらに,原告は,本件特許に係る訂正審判における平成24年9月14日提出の意 見書でも,「『下側杆取付部』とは,上記『枢軸』が引き抜き可能に挿通支持される『軸穴』を複数個上下に配列して設けられている部材であって,左右側枠下部に前後一対が,互いの該『軸穴』を相対させるようにして取り付け 『下側杆取付部』とは,上記『枢軸』が引き抜き可能に挿通支持される『軸穴』を複数個上下に配列して設けられている部材であって,左右側枠下部に前後一対が,互いの該『軸穴』を相対させるようにして取り付けられている部材である。」と定義している。さらに,平成24年7月6日付け訂正審判請求書では,原告自身が,左右側枠の下部に前後一対の下側杆取付部が取り付けられている構成は本件明細書等の段落【0013】及び【図6】から自明であると主張しているのであるから,本件発明における「下側杆取付部」は,そこに記載されている,左右側枠の下部に別個独立の下側杆取付部が溶接で取り付けられている実施形態に限定されたものと解すべきである。 よって,構成要件Gの「下側杆取付部」は,「左右側枠」に取り付けられる別個独立の部材である。 そして,この「左右側枠下部には,前後一対の下側杆取付部が取り付けられており」との構成は,無効理由を回避するために,訂正によって追加されたものであるから,左右側枠下部に軸穴を直接設けた構成を意識的に排除しているといえる。 これに対し,被告製品の構成では,左右側枠の中間柱部及び後脚柱部の下部に複数個の穴が直接設けられているから,構成要件Gの「下側杆取付部」に相当する部材は存在しない。 なお,本件特許に係る無効審判(無効2011-800069号)の審決では,「回動杆下端部の枢軸が左右側枠下部に設けられた穴に直接支持される構造は・・・本件の出願前周知の技術事項である。」と判断されているから,上記被告製品の構成は,何人も自由に実施できる,いわゆる自由技術である。 (イ) 「軸穴」の非充足構成要件Gの「軸穴」の解釈は,構成要件Fの「枢軸」及び構成要件 Hの「該軸穴に該枢軸を引き抜き可能に挿通支持させる」との文言との関係に る自由技術である。 (イ) 「軸穴」の非充足構成要件Gの「軸穴」の解釈は,構成要件Fの「枢軸」及び構成要件 Hの「該軸穴に該枢軸を引き抜き可能に挿通支持させる」との文言との関係に基づいて行われるべきである。 前記アのとおり,構成要件Fの「枢軸」は1本の軸であり,これが軸穴に引き抜き可能に挿通支持されている(構成要件H)のであるから,枢軸を引き抜き可能に挿通するために,対向する一対の「軸穴」のうち少なくとも一方の軸穴は,貫通穴でなければならないことになる。 本件明細書等の【図6】のほか,原告が特許庁に提出した平成24年7月6日付け訂正審判請求書の「参考図2」,同年9月14日付け意見書の「参考図2」及び同月27日付け上申書の「技術説明参考資料」などの各図面でも明らかなように,前後一対の軸穴の全てが貫通しない穴ならば,枢軸を引き抜き可能に挿通させることは不可能である。 これに対し,被告製品における複数個の軸穴は,いずれも貫通していないので,これらの軸穴に1本の枢軸を引き抜き可能に挿通させることはできない。 よって,被告製品は,構成要件Gの「軸穴」を充足しない。 ウ構成要件Hについて被告製品は,構成要件Hの「下側杆を・・・下側杆取付部間に位置させて」及び「引き抜き可能」を充足しない。 (ア) 「下側杆を・・・下側杆取付部間に位置させて」の非充足前記イのとおり,被告製品には「下側杆取付部」に相当する別個独立の部材が存在しないから,「下側杆を・・・下側杆取付部間に位置させて」を充足していない。 (イ) 「引き抜き可能」の非充足前記アのとおり,「引き抜き可能」とは,下側杆,軸穴及び枢軸とが密接かつ直接的に関係していることを意味し,下側杆,軸穴及び枢軸 足していない。 (イ) 「引き抜き可能」の非充足前記アのとおり,「引き抜き可能」とは,下側杆,軸穴及び枢軸とが密接かつ直接的に関係していることを意味し,下側杆,軸穴及び枢軸とがそれぞれの間に何かを介在させるような間接的な結合であれば「引き 抜き可能」という用語を用いることはできない。 これに対し,被告製品では,下側杆には,U字状のスライダが回転可能に挿入されており,このスライダの軸部の内部にスライドピンが収納されている。そうすると,仮にスライドピンが「枢軸」に当たるとすると,下側杆とスライドピン(枢軸)との間に,スライダが介在してしまい,「引き抜き可能」を充足しない。 また,原告は,本件特許に係る訂正審判における平成24年9月27日提出の上申書で,構成要件Fの「下側杆」が枢軸の軸線を一対の軸穴の中心と一致させるガイドとして機能すると主張しているから,構成要件Hの枢軸は,下側杆からも「引き抜き可能」でなければならない。しかし,被告製品のスライドピンは,下側杆から引き抜けないような構成となっているので,「引き抜き可能」ではない。 さらに,原告が主張する被告製品の構成hには,スライドピンが「引き抜き可能」であることが記載されていないから,構成要件Hを充足していない。 (2) 被告製品に係る特許発明の進歩性について被告製品は,被告が有する特許第3844354号(以下「被告特許」という。)の実施品である。この被告特許は,本件特許の公開特許公報(特開2003-126168公報)を主引例として,特許無効が争われたことがあるが,最終的に,被告特許に係る発明は,上記公開特許公報に記載された発明と比較して,特許法29条2項の進歩性を有するものと判断され(知的財産高等裁判所平成23年( として,特許無効が争われたことがあるが,最終的に,被告特許に係る発明は,上記公開特許公報に記載された発明と比較して,特許法29条2項の進歩性を有するものと判断され(知的財産高等裁判所平成23年(行ケ)第10290号),この判断は確定した。 つまり,被告特許に係る発明が,本件特許の公開特許公報に記載された発明とは別発明であり,かつさらにそれを超えて進歩性を有する発明である以上,その実施品である被告製品の構成及び作用効果は,いずれも本件発明の構成及び作用効果と相違するものである。 このことからも,被告製品が本件発明の技術的範囲に属することはない。 (3) 小括以上のとおり,被告製品は,本件発明の構成要件F,G及びHを充足しないから,本件発明の技術的範囲に属さない。 2 争点(2)(本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものか)について〔被告の主張〕(1) 無効理由本件発明は,本件特許の出願前に頒布された独国実用新案第29721699号明細書(以下,この明細書を「乙46明細書」といい,そこに記載された発明を「引用発明」という。)を主引例として,特開平11-192266号の公開特許公報(以下,この公報を「乙68公報」といい,そこに記載された発明を「乙68発明」という。),特開平11-318988号の公開特許公報(以下,この公報を「乙67公報」といい,そこに記載された発明を「乙67発明」という。),特開2001-245935号の公開特許公報(以下,この公報を「乙61公報」といい,そこに記載された発明を「乙61発明」という。)及び米国特許第6227559号明細書(以下,この明細書を「乙69明細書」といい,そこに記載された発明を「乙69発明」という。)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明するこ 1発明」という。)及び米国特許第6227559号明細書(以下,この明細書を「乙69明細書」といい,そこに記載された発明を「乙69発明」という。)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができず,特許無効審判により無効にされるべきものである(同法123条1項2号)。 よって,原告は,本件特許権に基づく権利行使をすることができない(同法104条の3第1項)。 (2) 一致点及び相違点乙46明細書に記載された引用発明は,以下の点で,本件発明と一致し,又は相違する。 ア引用発明の「サイドフレーム部材」及び「クロスバー」は,それぞれ本件発明の「左右側枠」及び「X枠」に相当するところ,引用発明の二つのサイドフレーム部材をクロスバーで連結した構造は,本件発明の構成要件A「左右側枠を一個または二個以上のX枠で連結した構造であって,」に相当する。 イ引用発明のクロスバーが互いに交差するパイプ又はリンクからなり,これらのパイプ又はリンクが交差点に関節状に互いに接続されている構成は,構成要件Bのうち「該X枠は中央で相互回動可能に結合され,」に相当する。 また,引用発明の「ダブルリンク」及び「シングルリンク」は,本件発明の「一対の回動杆」に相当し,引用発明では,クロスバーを構成するダブルリンク及びシングルリンクの下端部は軸受パイプに接続され,軸受パイプは軸受ブロックに固定された軸を中心に回動可能に支承されており,その軸受ブロックは,サイドフレーム部材に取り付けられた保持コンソールに固定されている。このような,引用発明のダブルリンク及びシングルリンクの下端部が軸受パイプ,軸受ブロック及び保持コンソールを介してサイドフレーム部材に枢着され ム部材に取り付けられた保持コンソールに固定されている。このような,引用発明のダブルリンク及びシングルリンクの下端部が軸受パイプ,軸受ブロック及び保持コンソールを介してサイドフレーム部材に枢着されている構造は,構成要件Bのうち「下端部を該左右側枠下部に枢着した一対の回動杆からなり,」に相当する。 ウ引用発明の「シートパイプ」は本件発明の「上側杆」に相当し,ダブルリンク及びシングルリンクの他端(上端部)にシートパイプが接続されている構成は,本件発明の構成要件C「該一対の回動杆の各上端には上側杆がそれぞれ取り付けられ,」に相当する。 エ引用発明のダブルリンク及びシングルリンクの下端部が軸受パイプに接続されている構成は,本件発明の構成要件D「各下端には下側杆がそれぞれ取り付けられ,」に相当する。 オ引用発明の「上側フレームパイプ」及び「係止部」がそれぞれ本件発明 の「座梁部」及び「杆受」に相当するから,引用発明の「クロスバーリンクはそれぞれ上端部に,上側フレームパイプに固く取り付けられた係止部と形状結合的に係合するためのシートパイプを備えている」との構成は,本件発明の構成要件E「該上側杆は上記左右側枠に具備されている座梁部に取り付けられている杆受けにそれぞれ支持されるように設定されており,」に相当する。 カ引用発明の「軸受パイプ」の「軸」は,本件発明の「枢軸」に相当し,軸受パイプが軸受ブロックに固定された軸を中心に回動可能に支承されている点は,「下側杆は・・・該左右側枠・・・に枢着されており」に相当する。また,この軸受パイプはサイドフレームに沿った方向に配設されているので,この軸受パイプが受けている「軸」(枢軸)も,サイドフレーム部材に沿った方向に配設されている。そして,保持コンソールの穴のうち下から数えて四つは プはサイドフレームに沿った方向に配設されているので,この軸受パイプが受けている「軸」(枢軸)も,サイドフレーム部材に沿った方向に配設されている。そして,保持コンソールの穴のうち下から数えて四つは,いずれも保持コンソールの中央よりも下側に設けられているので,軸受パイプが枢着されている位置は,サイドフレームの下側になる。 そうすると,引用発明の上記構成は,本件発明の構成要件F「該回動杆の下側杆は左右側枠に沿った方向に配設されている枢軸を介して該左右側枠下部に枢着されており,」に相当する。 もっとも,前記1〔被告の主張〕(1)アのとおり,構成要件Fの「枢軸を介して」は,下側杆,軸穴及び枢軸の間に他の部材を何も介在させていないという意味に限定解釈されるところ,引用発明は,軸受パイプの軸と保持コンソールとの間に軸受ブロックを介在させた構成となっている点で,本件発明の構成要件Fと相違する(相違点1)。 キ引用発明の「保持コンソール」は,本件発明の「下側杆取付部」に相当するところ,この保持コンソールはサイドフレーム部材の上側フレームパイプと下側フレームパイプとに取り付けられているから,この構成は,構 成要件Gのうち「該左右側枠下部には前後一対の下側杆取付部が取り付けられており,」 に相当する。また,保持コンソールには,軸受パイプの軸を支持するための複数個の穴が上下に配列して設けられているから,この構成は,構成要件Gのうち「該下側杆取付部には,・・・該枢軸を支持するための軸穴がそれぞれ複数個上下に・・・配列して設けられており,」に相当する。 もっとも,上記保持コンソールの穴は,サイドフレーム部材に沿う方向ではなく,これと直交する方向に向いているから,この点で,構成要件Gの「軸穴」が「該左右側枠に沿う方向を向き,かつ・・・ る。 もっとも,上記保持コンソールの穴は,サイドフレーム部材に沿う方向ではなく,これと直交する方向に向いているから,この点で,構成要件Gの「軸穴」が「該左右側枠に沿う方向を向き,かつ・・・相対して」とは相違する(相違点2)。 ク引用発明では,軸受パイプが前後一対の保持コンソールの間に位置した構成となっているから,構成要件Hのうち「該回動杆下端の下側杆を該前後一対の下側杆取付部間に位置させて,」と一致する。また,引用発明には,「潜在的ユーザの体格の違いといった種々の要求に適応」,「車台フレームを異なった幅の少なくとも2つの使用位置に調整する」との記載があり,保持コンソールの複数個の穴のうちの一つを選択して軸受ブロックを固定し,車椅子の座幅を調整する構成となっているから,構成要件Hのうち「該車椅子の使用者の体形に応じて調節される巾に対応して該下側杆取付部の複数個の軸穴のうちの一つを選択して・・・」に相当する。さらに,引用発明のクロスバーの上端部がサイドフレーム部材に対して上下位置を変えることなく,かつクロスバーの長さを変えることなく,車椅子の座幅を調整可能な構成となっている点は,構成要件Hのうち「該X枠の上端部は該左右側枠に対して上下位置を変えることなく,かつ該X枠の長さを変えることなく該車椅子の巾を調節可能にした」に相当する。 もっとも,引用発明の軸受パイプの軸(枢軸)が軸受ブロックに固定されていて,引き抜き可能な構成となっておらず,また,保持コンソールの 複数個の穴に「挿通支持」される構成となっていないため,構成要件Hの「該軸穴に該枢軸を引き抜き可能に挿通支持させることによって,」との構成とは相違する(相違点3)。 ケ引用発明は,車椅子に関する考案であり,この点において,本件発明の構成要件I「車椅 Hの「該軸穴に該枢軸を引き抜き可能に挿通支持させることによって,」との構成とは相違する(相違点3)。 ケ引用発明は,車椅子に関する考案であり,この点において,本件発明の構成要件I「車椅子」に相当する。 (3) 各相違点の容易想到性ア前記(2)のとおり,本件発明は,引用発明との比較において,三つの相違点を有する。しかし,これらの相違点は,いずれも本件特許の出願前から当業者に周知の構造にすぎず,容易に想到することができる。 イ相違点1(間に何も介在させないで「枢軸」を「軸穴」に挿通させていること)について乙61公報には,支持ロッドを,間に何も介在させないで調整孔のいずれかと支持孔とに挿通させる構造が,乙67公報には,ピンボルトを,間に何も介在させないで座受板の通孔に挿通させる構造が,乙68公報には,Xリンクフレームの回動部を回動させるための軸枠を,間に何も介在させないで下側杆部の中に挿通させる構造が,それぞれ記載されている。 したがって,相違点1は,本件特許の出願前から当業者に周知の接続構造にすぎず,容易に想到することができる。 ウ相違点2(下側杆取付部に設けた「軸穴」が左右側枠に沿う方向を向き,かつ相対していること)について乙69発明の「下側サイドレール」,前後一対の「下側グロータブ」及び三つの「孔」は,それぞれ本件発明の「左右側枠」,前後一対の「下側杆取付部」及び「軸穴」に相当するところ,乙69発明では,前後一対の下側グロータブが,下側サイドレールに沿う方向に間隔を空けて対向配置されており,タブの板面が下側サイドレールに沿う方向と直角となるように取り付けられていることにより,前の下側グロータブの孔と後ろの下側 グロータブの孔とが,下側サイドレールに沿う方向を向き,かつ相対する構 面が下側サイドレールに沿う方向と直角となるように取り付けられていることにより,前の下側グロータブの孔と後ろの下側 グロータブの孔とが,下側サイドレールに沿う方向を向き,かつ相対する構成となっているから,相違点2に係る構造が開示されている。 そして,引用発明及び乙69発明が有する構成は,いずれも車椅子の「回動杆(リンク)を左右側枠(サイドフレーム部材)に接続する構造」に関するものであるから,これらの二つの発明に接した車椅子に関連する技術分野の当業者が,引用発明の接続構造を簡略化するために,「軸受ブロック」及び「保持コンソール」を排除して,乙69発明の下側グロータブを採用することは極めて容易である。 したがって,相違点2は,容易想到ということができる。 エ相違点3(軸穴に枢軸が引き抜き可能に挿通支持されていること)について相違点3の「枢軸」の挿通態様は,請求項1の記載において,抜け止め手段を排除していないので,本件発明の技術的範囲には,抜け止め手段により「枢軸」が固定された構成も含まれることになる。 この点,乙61公報に記載された支持ロッドは,抜け止め手段であるナットを外すことにより,調整孔及び支持孔から引き抜き可能となっており,乙67公報に記載されたピンボルトは,抜け止め手段であるナットを外すことにより,通孔から引き抜き可能となっており,乙69公報に記載されたファスナーも,抜け止め手段であるナットを外すことにより,孔から引き抜き可能となっている。 そして,これらの発明に記載されているような,軸穴に枢軸を引き抜き可能に挿通支持される構成が周知技術であることは明らかである。 したがって,相違点3は,本件特許の出願前から当業者に周知の接続構造にすぎないから,容易に想到することができる。 (4) き抜き可能に挿通支持される構成が周知技術であることは明らかである。 したがって,相違点3は,本件特許の出願前から当業者に周知の接続構造にすぎないから,容易に想到することができる。 (4) 原告の主張に対する反論ア原告は,「下側杆」の枢支構造について,引用発明では軸受パイプが軸 受ブロックに支承されていると主張する。 しかし,引用発明に係る乙46明細書によれば,「軸受パイプ」は,その両端から突出する長さの「軸」を受けており,この「軸」の両端をそれぞれ「軸受ブロック」が受けていると認定できる。このことは,「軸受パイプ」及び「軸受ブロック」が,いずれもその名称のとおり,「軸」を受ける「軸受」であること,乙46明細書にも「軸受パイプの端部は,軸受ブロックに軸が固定されているが,回動可能に支承されている」と明記されていること,乙46明細書の図3(原文の「Fig.3」を指す。以下,同様。)及び図4には,「軸受パイプ」及び「軸受ブロック」を受けている軸がはっきりと図示されており,図2a及びbでも,軸受パイプ及び軸受ブロックとがほぼ同一の直径で記載されており,軸受ブロックが同径の軸受パイプを枢支できない構成となっていることから明らかである。 イ原告は,「下側杆」が引用発明を含む引用例のいずれにも存在しないと主張する。 しかし,引用発明の「軸受パイプ」は,ダブルリンク及びシングルリンクの各下端に接続されており,これは,本件発明の「下側杆」にほかならない。 ウ原告は,引用発明の「保持コンソール」について,本件発明の「下側杆取付部」とは機能,作用効果,ひいては技術的意義が全く異なる部材であると主張する。 しかし,引用発明の「保持コンソール」は,本件発明の「下側杆取付部」と比較して,サイドフレーム部材への取 側杆取付部」とは機能,作用効果,ひいては技術的意義が全く異なる部材であると主張する。 しかし,引用発明の「保持コンソール」は,本件発明の「下側杆取付部」と比較して,サイドフレーム部材への取付け向きが90°相違するだけであり,取付け向きを90°変更する点は,乙69発明の「グロータブ」を参照すれば容易に想到することができる。 〔原告の主張〕(1) 本件発明が進歩性を有すること 乙46明細書に開示された引用発明の構成が,本件発明の構成要件A,B及びCと共通し,また構成要件Eとおおむね共通することは認める。しかし,以下のとおり,本件発明の構成要件D,F,G及びHは,引用発明には具備されておらず,しかも,それらの相違点は,他の引用例によっても,容易想到ではないから,本件発明が進歩性を欠くとはいえない。 (2) 「下側杆」,「枢軸」及び「軸穴」についてア本件発明は,「回動杆の下端部の下側杆」が「枢軸」を介して「左右側枠下部」に枢着され,複数個の軸穴のうち一つに引き抜き可能に挿通支持されるところに特徴的部分がある。 ここで,本件発明の「下側杆」は,枢軸を介して,左右側枠に枢着されている。すなわち,「下側杆」とは,左右側枠に枢着するための枢軸に,回動可能に接続している部分である。また,本件発明の「枢軸」は,「下側杆」が回動可能に接続される部分であり,そして,左右側枠下部に設けられた複数個の軸穴のうちの一つに引き抜き可能に挿通支持される部材である。 一方,引用発明では,回動杆に相当する「リンク」の下端部には,「軸受パイプ」が固く接続されており,その「軸受パイプ」は,軸受ブロックに回動可能に支承されているから,「枢軸」に回動可能に接続している本件発明の「下側杆」とは機能,作用効果,ひいては技術的意義が全く異な パイプ」が固く接続されており,その「軸受パイプ」は,軸受ブロックに回動可能に支承されているから,「枢軸」に回動可能に接続している本件発明の「下側杆」とは機能,作用効果,ひいては技術的意義が全く異なった部材であり,「枢軸」を介することなく軸受ブロックに接続している部材である。また,その「軸受パイプ」は,サイドフレーム部材の下部の軸穴のうち一つに引き抜き可能に挿通支持されるものでもないから,本件発明の「枢軸」とも,構成,作用効果,機能,ひいては技術的意義が全く相違する。 さらに,本件発明の「軸穴」は,上記「枢軸」が引き抜き可能に挿通支持される穴であり,左右側枠に沿う方向を向いているが,引用発明の「穴」 は,「軸受ブロック」を穴に固定するためのねじを挿通する「穴」であり,したがって,左右側枠に沿う方向に直交する方向を向いているから,本件発明の「軸穴」とは,構成,作用効果,機能,ひいては技術的意義が全く相違する。 なお,被告は,引用発明について,その「軸受パイプ」の中に「軸」が存在し,その「軸」の両端をそれぞれ「軸受ブロック」が受けていると認定できると主張する。 しかし,引用発明における軸受パイプは,その両端が軸受ブロックによって支承されているのであるから,被告の主張は誤りである。 以上のとおり,引用発明は,本件発明の「下側杆」,「枢軸」及び「軸穴」という主要な構成,部材を具備していないから,引用発明には本件発明の特徴的部分に当たる構成が存在しない。 イ引用発明の支持構造を変更して本件発明の支持構造とするためには,引用発明の支持構造から,軸受ブロックを廃さなければならず,軸受ブロックを廃すると,軸受パイプの枢着構造が失われるので,軸受パイプ自体も廃して,本件発明の下側杆と枢軸による枢着構造に変更しな には,引用発明の支持構造から,軸受ブロックを廃さなければならず,軸受ブロックを廃すると,軸受パイプの枢着構造が失われるので,軸受パイプ自体も廃して,本件発明の下側杆と枢軸による枢着構造に変更しなければならない。当該枢着構造にすると,枢軸を直接支持するための軸穴を,対向する下側杆取付部に設けなければならない。 しかしながら,引用発明にも,その他の発明にも,上記のような改変を行うことについての記載や示唆はない。このような改変の記載や示唆がない以上,当業者が引用発明から本件発明に容易に想到することはできない。 ウまた,引用発明には,上記のような意味での「下側杆」が存在しないところ,被告が指摘するその他の発明にも,「下側杆」に相当する部材は存在しない。 すなわち,乙61発明では,交差フレームが円筒部材に直接取り付けられていないので,この「円筒部材」は,本件発明の下側杆とは機能,作用 効果,ひいては技術的意義が全く異なった部材である。乙67発明は,リンクの枢着端に円筒状の枢軸を固定し,その枢軸にピンボルトを差し込んで,その螺軸端にナットをねじ込んだ構成を有するが,上記構成は座受板の昇降機構であり,枢着位置を変更するものではないので,枢軸は位置合わせの機能を有しない。したがって,乙67発明には,下側杆を具備させると枢軸と軸穴との位置合わせが容易になるという本件発明の着想は全く示唆されていない。さらに,乙68発明における下側杆部の回動部は,軸枠に回動自在に外嵌されているが,その軸枠は下側杆部間に上下位置を固定して差し渡されているから,軸枠は前後に設けられた複数個の軸穴のうちの一つを選択して軸穴に引き抜き可能に挿通支持されるものではない。 したがって,この「回動部」は,位置合わせの機能は全く有しておらず,本件発明の「下側杆」とは 軸枠は前後に設けられた複数個の軸穴のうちの一つを選択して軸穴に引き抜き可能に挿通支持されるものではない。 したがって,この「回動部」は,位置合わせの機能は全く有しておらず,本件発明の「下側杆」とは機能,作用効果,ひいては技術的意義が全く異なる部材である。 そして,乙69発明では,クロスブレイスメンバの下端の孔に枢軸であるファスナーが直接嵌挿されており,「下側杆」は取り付けられていない。 以上のように,本件発明における「下側杆」の意義を有する構造は,上記各発明に示される周知技術を参照しても,引用発明から容易に導き出せる構成要素とはいえない。 (3) 「下側杆取付部」についてア本件発明の下側杆取付部の「軸穴」は,左右側枠に沿う方向を向き,かつ複数個上下に相対して設けられ,枢軸が引き抜き可能に挿通支持されるものであるが,引用発明の保持コンソールの「穴」は,左右側枠に沿う方向と直交する方向を向き,かつその穴は,軸受ブロックを固定するためのねじが挿通される穴であるから,本件発明の「下側杆取付部」と引用発明の「保持コンソール」は,機能,作用効果,ひいては技術的意義が全く異なる部材である。 イ乙69発明に関していえば,クロスブレイスのクロスブレイスメンバの下端は前後のグロータブの孔の一つにボルトであるファスナーによって連結されているのであって,そのファスナーはナットによって固定されている。したがって,乙69発明では,クロスブレイスメンバの下端には,下側杆が取り付けられておらず,そのクロスブレイスメンバの孔に枢軸であるファスナーが直接嵌挿されている。また,この下側グロータブの孔は横一列に配置されているから,クロスブレイスメンバの下端の左右側枠(サイドレール)に対する取付位置は,上下方向ではなく,左右方向に調節 るファスナーが直接嵌挿されている。また,この下側グロータブの孔は横一列に配置されているから,クロスブレイスメンバの下端の左右側枠(サイドレール)に対する取付位置は,上下方向ではなく,左右方向に調節可能とされている。よって,乙69発明の「下側グロータブ」は,本件発明の「下側杆取付部」に当たらない。 ウよって,乙69発明を参照しても,下側杆の存在しない引用発明から本件発明の要素を容易に想到できるものとはいえない。 また,前記のとおり,引用発明及びその他の発明のいずれにも「下側杆」が存在しないのであるから,本件発明が有する下側杆の位置合わせ効果を,これらの発明から想到することは,全く不可能である。 (4) 格別の効果について本件特許の最大の特徴点は,「メーカーにとっては巾の異なる多種類の製品を製造しなくて済む」(本件明細書等・段落【0022】)こと,すなわち,モジュール化したことにある。具体的には,本件発明の場合は,枢軸を適当な軸穴の一つに支持させた同一車種の車椅子をメーカーあるいはレンタル業者に大量に在庫として備え置き,それらを使用者に引き渡す際に使用者の体形に応じて所定の軸穴を選んで枢軸を支持することにより,同一車種を大量生産して保管しておくことができ,「メーカーにとっては巾の異なる多種類の製品を製造しなくて済む」という格別な効果が奏されるのである。 一方,引用発明では,サイドフレーム部材をクロスバーによって連結するために36個の部品が必要である上,車椅子の幅によって使用する部品の数 も種類も異なるから,クロスバーとサイドフレーム部材とは接続せずに別々に保管しておき,それらを使用者に引き渡す際に使用者の体形に応じて所定の幅に設定した車椅子を組み立てるのであるから,「メーカーにとっては巾の異な ら,クロスバーとサイドフレーム部材とは接続せずに別々に保管しておき,それらを使用者に引き渡す際に使用者の体形に応じて所定の幅に設定した車椅子を組み立てるのであるから,「メーカーにとっては巾の異なる多種類の製品を製造しなくて済む」という効果を奏することができない。 また,車椅子の幅を調節する作業についても,本件発明は,回動杆下端の下側杆を前後一対の下側杆取付部間に位置させるから,位置合わせが簡単であり,しかも,下側杆取付部の軸穴のうちの一つに枢軸を引き抜き可能に挿通支持させるから,工具を用いたねじの締め付け作業を必要とせず,枢軸を軸穴に挿通するだけの熟練を必要としない作業で可能になる。このような作業は,メーカーではなく,販売業者,レンタルあるいはリース業者,又は使用者においても可能である。 一方,引用発明のようにねじを使用して部材を締結することが必要な場合,ねじ締め作業は,スパナ,レンチ等の工具が必要である上,ねじを締め付けすぎるとねじの破壊に繋がり,ねじの締め付けが不十分だとねじのゆるみに繋がるため,熟練を要する作業であり,ねじ締めに熟練した作業員が確保できるメーカーにおいて,所定幅の車椅子を組み立てなければならない。 さらに,本件発明は,荷重の伝達において,垂直荷重が枢軸(軸穴)を経由して直ちに左右側枠下部に伝達される構成を採用しているので,枢軸,左右側枠下部の強度に関して構造上の格別の配慮をする必要がない。 一方,引用発明は,軸受ブロックと保持コンソールとがねじで固定されているため,垂直荷重の代わりに曲げ荷重(モーメント)及び剪断荷重が発生するので,ねじ自体が破損したり,ねじが軸受ブロックから抜けたりしないように,軸受ブロック,ねじ及び保持コンソールに構造上の格別の配慮をする必要がある。 (5) 小括 び剪断荷重が発生するので,ねじ自体が破損したり,ねじが軸受ブロックから抜けたりしないように,軸受ブロック,ねじ及び保持コンソールに構造上の格別の配慮をする必要がある。 (5) 小括 以上のとおり,左右側枠をX枠で連結した構成を有する車椅子において,X枠の回動杆の下端に下側杆を取り付け,その下側杆の前後端を前後一対の下側杆取付部の複数個の軸穴のうちの一つに軸穴に引き抜き可能に挿通される枢軸によって支持するという本件発明の構成は,被告が提出した引用発明及び乙61,乙67ないし乙69発明のいずれにも全く開示されていない。 しかも,上記構成によって車椅子の幅調節が極めて簡単になり,「メーカーにとって巾の異なる多種類の製品を製造しなくて済む」と云う卓越した効果が奏せられるものであるから,当業者が上記各発明の開示から本件発明を容易に想到できたものとはいえない。 よって,本件発明が,引用発明を主引例として,乙61,乙67ないし乙69発明の開示から,当業者が容易に想到できたという被告の主張は失当である。 3 争点(3)(補償金請求権及び損害賠償請求権の存否及び額)について〔原告の主張〕(1) 補償金請求(特許法65条1項) 348万8971円ア被告の悪意原告は,被告に対し,本件特許出願の公開日(平成15年5月7日)より後である平成18年2月6日に,被告製品が本件特許出願に係る発明に類似する旨を電子メールにより通知し,被告は,同月20日に,電子メールで,本件特許出願が特許された段階で誠意を持って話し合う旨を回答した。 したがって,被告は,遅くとも同日頃から,被告製品の構成が出願公開された本件特許出願に係る発明であることを知りながら,これを製造・販売している。 また,被告は,平成15年 したがって,被告は,遅くとも同日頃から,被告製品の構成が出願公開された本件特許出願に係る発明であることを知りながら,これを製造・販売している。 また,被告は,平成15年12月2日に被告特許(特許第3844354号)を出願しているところ,その特許公報には,【背景技術】の中で, 本件特許出願が引用されているから,被告は,同日には既に本件特許出願の内容を知っていたはずである。 なお,補償金の請求に当たっては,被告が,被告製品が出願公開された本件特許出願に係るものであることを知って実施していれば足りるのであり,最終的に出願に係る発明がどのような権利範囲で特許されるかが明らかであることは要件ではない。 イ補償金の額(ア) 販売台数平成18年2月20日から平成19年8月3日までの17か月15日間における被告製品の販売台数は,被告の平成19年8月以降の販売台数が1か月平均67台であることからすると,1171台となる。 (イ) 販売単価被告製品の販売単価は,9万9316円であった。 (ウ) 実施料率社団法人発明協会の発行する技術契約のためのデータブック(甲6)の技術分野別のデータである輸送用機械の料率分布のデータによれば,本件特許の実施料率は,3%を下ることはない。 (エ) 補償金額販売台数に販売単価を乗じた販売総額は,1億1629万9036円となるところ,これに実施料率3%を乗じると,補償金の額は,348万8971円となる。 (2) 損害賠償請求(特許法102条2項) 計7955万3841円ア国内生産品(ア) 平成19年8月4日から平成21年4月4日まで同期間の被告製品の販売台数は,1355台であり,そ ) 損害賠償請求(特許法102条2項) 計7955万3841円ア国内生産品(ア) 平成19年8月4日から平成21年4月4日まで同期間の被告製品の販売台数は,1355台であり,その単位利益は,販売単価9万9316円から直接費6万8457円を控除した3万08 59円であるから,被告の販売利益は,4181万3945円となる。 (イ) 平成21年4月5日から平成22年6月29日まで同期間の被告製品の販売台数は,768台であり,その単位利益は,販売単価9万9316円から直接費7万3200円を控除した2万6116円であるから,被告の販売利益は,2005万7088円となる。 (ウ) その他の控除額について特許法102条2項により回復すべき権利者の損害としては,当該売上げを得るために必要な変動経費のみを控除した残額を権利者の得べかりし利益とするのが合理的であり,いわゆる限界利益説が通説・判例である。 この点,被告が間接費配賦表において間接費として計上する費用は,いずれも被告製品の製造に直接的な関連を有しない製造固定費であり,被告製品を販売しなかった場合に支払を免れた費用ではない。また,被告の主張に係る販売管理費係数は,総売上げにかかる一般管理費に基づくものであり,被告製品の製造販売に直接的な関連を有しないものである。したがって,これらを被告製品の売上げのために追加的に要した費用として控除することはできない。 イ輸入製品(ア) 平成22年3月3日から同年10月4日まで同期間の被告製品の販売台数は,218台であり,その単位利益は,販売単価9万9316円から直接費4万7000円を控除した5万2316円であるから,被告の販売利益は,1140万4888円となる。 ( の被告製品の販売台数は,218台であり,その単位利益は,販売単価9万9316円から直接費4万7000円を控除した5万2316円であるから,被告の販売利益は,1140万4888円となる。 (イ) 平成22年10月5日から平成23年3月22日まで被告が平成22年10月までは月々少なくとも20台の被告製品を輸入しているから,同年10月5日から平成23年3月22日までの間の被告製品の販売台数は,少なくとも120台である。そして,その単位 利益は,販売単価9万9316円から直接費4万7000円を控除した5万2316円であるから,被告の販売利益は,627万7920円となる。 (ウ) その他の控除額について被告は,輸入品に関しても,販売管理費等の間接費の控除を主張するが,販売管理費については,前記ア(ウ)のとおり,合理的でないので認められず,座シート修正部品単価として計上されるものは,不良品として売主が負担すべき費用であると考えられるので,差し引くべき間接費とは認められない。また,検査・交換・梱包工賃については,交換の内容は不明であるものの,検査・梱包は合理的な範囲で間接費になると考えるが,被告の主張する1時間4140円(1分当たり69円)の工賃は,平均的な作業員の給料に比べてはるかに高額にすぎ,1時間1321円が相当である。 (3) 寄与率被告製品は,本件発明の特徴の全てを具備する車椅子であり,被告製品全体が本件発明の技術的範囲に属する侵害品であるから,被告製品の製造販売の利益についての本件発明の寄与率は100%である。 すなわち,本件発明の特徴的構成は,「該左右側枠下部には,上下に配列している複数個の軸穴が設けられており,該車椅子の所望の巾に対応して該複数個の軸穴のうちの一つを選択して該軸穴に該軸を支 である。 すなわち,本件発明の特徴的構成は,「該左右側枠下部には,上下に配列している複数個の軸穴が設けられており,該車椅子の所望の巾に対応して該複数個の軸穴のうちの一つを選択して該軸穴に該軸を支持させることによって,該X枠の上端部は該左右側枠に対して上下位置を変えることなく,かつ該X枠の長さを変えることなく該車椅子の巾を調節可能にした」ことにあるところ,被告製品の構成は,該複数個の軸穴のうちの一つを選択し該軸穴に該軸を支持させる手段であるから,本件発明の特徴的構成と何ら変わるところはない。被告製品は,上記特徴的構成を本件特許と同じくし,上記特徴的構成がセールスポイントであるから,被告製品における本件発明の寄与率は 100%である。 また,本件発明の実施品や被告製品のようなモジュール車椅子は,高さを変えずに幅調節が可能であることから,メーカーにとって幅の異なる多種類の製品を製造しなくて済み,業者にとっても一種類の製品を在庫しておくことができるという,著しい合理化のメリットがあり,被告製品もまさにこの利点を特徴として販売されている。このようにモジュール化は,本件発明において初めて実現化された顕著な効果であり,被告製品もこれを模倣してセールスポイントとしているのであるから,この点からも,本件発明の被告製品に対する寄与率は100%である。 (4) 弁護士・弁理士費用弁護士費用・弁理士費用に係る損害額は,前記の補償金及び損害金の額に照らして,900万円が相当である。 (5) 小括以上のとおり,本件訴訟において原告が被告に支払を求める額は,特許法65条1項による補償金が348万8971円,特許法102条2項による損害額が7955万3841円及び弁護士費用が900万円である。 〔被告の主張〕(1) 補 被告に支払を求める額は,特許法65条1項による補償金が348万8971円,特許法102条2項による損害額が7955万3841円及び弁護士費用が900万円である。 〔被告の主張〕(1) 補償金請求につきア特許法65条1項では,「警告」は特許出願に係る「発明の内容」を記載した書面によって行うものとされているところ,この「発明の内容」は,単に出願番号,出願公願番号,発明の名称を記載しただけでは足りないとされている。原告が平成18年2月6日に被告の「開発責任者」宛てに送った電子メールには,本件特許に関して単に公開番号だけが記載されていた。したがって,この電子メールは,「発明の内容」の記載が不十分であり,「警告」の要件を具備していないことが明らかである。 また,上記電子メールの通知人は,原告の従業員である「技術本部特許 管理室 ○A」とされているが,この「○A」が原告を代理する権利を有するか不明であるから,原告の意思表示とすることもできない。したがって,この電子メールは単なる私信であると評価すべきである。 イ原告は,被告が遅くとも平成18年2月20日頃から被告製品の構成が本件特許出願に係る発明であることを知りながら,これを製造・販売したと主張している。 しかし,被告の従業員の○Bは,平成18年2月20日付け電子メールで,原告の本件特許出願が未だ審査に着手されておらず,同出願がどのような権利範囲で特許されるものか不明であると回答した。その後,本件特許出願については,同年12月12日に拒絶理由通知書が出され,手続補正書が提出された後の平成19年3月30日に拒絶査定がなされた経過をたどった。そうすると,被告は,本件特許が登録された同年8月3日以前には,本件特許出願がどのような権利範囲で特許されるか知り得なかっ 書が提出された後の平成19年3月30日に拒絶査定がなされた経過をたどった。そうすると,被告は,本件特許が登録された同年8月3日以前には,本件特許出願がどのような権利範囲で特許されるか知り得なかったのであるから,その発明の実施について善意であった。 (2) 損害賠償請求につきア国内製造品(ア) 平成19年8月4日から平成21年4月4日まで同期間における被告製品のうち国内製造品に関する被告の利益は,次のとおり,880万4790円である。 販売台数 1355台販売単価 9万9316円/台直接費 6万8457円/台販売管理費 1万9377円/台製造間接費 4984円/台1,355×{99,316-(68,457+19,377+4,984)}= 8,804,790 円(イ) 平成21年4月5日から平成22年6月29日まで 同期間における被告製品のうち国内製造品に関する被告の利益は,次のとおり,108万2880円である。 販売台数 768台販売単価 9万9316円/台直接費 7万3200円/台販売管理費 1万9377円/台製造間接費 5329円/台768×{99,316-(73,200+19,377+5,329)}= 1,082,880 円(ウ) 間接費について原告は,特許法102条2項に基づき損害賠償を請求するところ,被告の利益の額は,販売金額から売上原価だけでなく,販売費及び一般管理費のうち被告製品の製造・販売に寄与した部分を控除したものと考えるべきである。 そうすると,被告製品の販売額の増減に応じて ろ,被告の利益の額は,販売金額から売上原価だけでなく,販売費及び一般管理費のうち被告製品の製造・販売に寄与した部分を控除したものと考えるべきである。 そうすると,被告製品の販売額の増減に応じて変動する経費を控除すべきであるが,そこには販売費及び一般管理費のうち営業社員給与,旅費交通費,広告宣伝費,荷造包装費,修繕費,動力燃料費,通信費などが含まれる。本件では,販売費及び一般管理費が一括計上されているため,上記(ア)及び(イ)のとおり,被告製品の製造に関連した販売管理費及び製造間接費を,総売上額と被告製品の売上額の比率に応じて計算して控除することになる。 イ輸入品(ア) 平成22年3月3日から同年10月4日まで同期間における被告製品のうち輸入品に関する被告の利益は,次のとおり,657万2918円である。 販売台数 218台販売単価 9万9316円/台 直接費 4万7000円/台(輸入業者(株)ケイ・メディックスからの仕入価格)販売管理費 1万9377円/台検査・交換・梱包費 1380円/台交換部品費(座シート)1408円/台218×{99,316-(47,000+19,377+1,380+1,408)}= 6,572,918 円(イ) 平成22年10月5日から平成23年3月22日まで否認ないし争う。 (ウ) 間接費について前記ア(ウ)のとおり,本件では,被告製品の販売額の増減に応じて変動する経費を控除すべきであるから,上記(ア)のとおり,被告製品の製造に関連した販売管理費,製造間接費,検査・交換・梱包費及び交換部品費を,総売上額と被告製品の は,被告製品の販売額の増減に応じて変動する経費を控除すべきであるから,上記(ア)のとおり,被告製品の製造に関連した販売管理費,製造間接費,検査・交換・梱包費及び交換部品費を,総売上額と被告製品の売上額の比率に応じて計算して控除すべきである。 (3) 寄与率につきア被告ブランドに対する顧客の信用被告は,国内シェア30%を超える車椅子業界のトップ企業であり,日常使いから競技用まで幅広い品揃えが自慢であり,特に強度,使い易さが重要なスポーツ用車椅子や競技用車椅子では他社を寄せ付けない販売実績を有している。被告は,年間約8万台を生産し,そのうちオーダーメイドによる注文生産が約1万2千台に及ぶなど,車椅子市場において「日進医療器」のブランドに対する顧客の信用は絶大である。また,被告製品は,市場において「工具不要で,座巾の調整が簡単にできます」を売り物として販売されていて好評を博している。 このような被告のブランド及び操作の容易性が被告製品の売上げに大きく寄与していることが明らかである。 イ軸の原価車椅子はシート,バックレスト,アームレスト(アームレストパッド),レッグサポート(フットレスト,レッグレスト,レッグパイプ),ハンドリム,ブレーキ,車輪(駆動輪,主輪,キャスタ,リムスポーク,タイヤ,チューブ,タイヤバルブ,ハブ,ハブ軸),本件フレーム(アームパイプ,フロントパイプ,バックパイプ)の八つの構成からなっているが,本件の「軸」の部分は,本件フレームの一部品にすぎず,平成22年9月14日付け「証明書」のとおり,スライドピン及びばね各4個で構成されており,その原価は僅か700円である。 ウ顧客の購買動機本件特許に係る原告の製品は,組立てを専門業者が行 付け「証明書」のとおり,スライドピン及びばね各4個で構成されており,その原価は僅か700円である。 ウ顧客の購買動機本件特許に係る原告の製品は,組立てを専門業者が行うほど操作は困難であるのに対して,被告製品はスライダをスライドさせて位置決めピンを差し替えるだけで,素人でも容易に片手の操作で幅調節が可能である。被告製品は,市場において,「工具不要で,座巾の調整が簡単にできます」を売り物として販売されて好評を博しており,仮に購入当初は専門業者が組み立てたとしても,その後使用方法に応じて自在に調節するなど,ユーザーに扱いやすい車椅子であるとの印象を与える目的で宣伝・広告しており,この点が,被告製品の販売における重要なセールスポイントとなっている。 エ被告の独自技術被告は,被告特許(特許第3844354号。発明の名称「座幅調節可能な車椅子」)に基づいて,被告製品を実施しており,被告の独自技術を用いている。 なお,原告は,平成22年12月8日に被告特許に対して特許無効審判を請求したが,平成23年8月9日に請求不成立の審決がなされた。 オまとめ以上のとおり,被告製品の売上げには,被告のブランドや操作の利便性 などが大きく寄与していることが明らかであり,これらの事情を考慮すると,補償金及び損害賠償金を算定する上では,本件発明の寄与率を5%とするのが相当である。 (4) 弁護士・弁理士費用につき否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点(2)(本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものか)について本件の事案に鑑み,まず,本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものか否かについて検討する。 (1) 本件発明の内容 件特許が特許無効審判により無効にされるべきものか)について本件の事案に鑑み,まず,本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものか否かについて検討する。 (1) 本件発明の内容ア本件明細書等の記載平成25年8月16日付け審決(訂正2013-390103号)による訂正後の本件明細書等には,次の記載がある。 【産業上の利用分野】・「本発明は巾調節できる車いすに関するものである。」(段落【0001】【従来の技術】・「従来巾調節可能な車椅子は提供されていない。」(段落【0002】)【発明が解決しようとする課題】・「・・・車椅子(9)を介助者によらず使用者自身が移動させるには主車輪(91)あるいは主車輪に取り付けられたハンドリムを手で掴んで回すので,使用者の体形に応じて車椅子(9)の巾を調節しなければ,車椅子(9)に乗った人が車輪(91)を手で回す時,車輪(91)の巾が広すぎたり狭すぎたりして車輪(91)を回し易い位置に手をおくことが出来ないという問題点があった。」(段落【0003】)【課題を解決するための手段】 ・「本発明は・・・,左右側枠(3,3)を一個または二個以上のX枠(11,12)で連結した構造であって,該X枠(11,12)は中央で相互回動可能に結合され,下端部を該左右側枠下部に枢着した一対の回動杆(11A,11A,12A,12A)からなり,該一対の回動杆(11A,11A,12A,12A)の各上端には上側杆(17,17)がそれぞれ取り付けられ,各下端には下側杆(18,18)がそれぞれ取り付けられ,該上側杆(17,17)は上記左右側枠(3,3)に具備されている座梁部(4,4)に取り付けられている杆受け(16,16)にそれぞれ支持されるように設定されており, 8,18)がそれぞれ取り付けられ,該上側杆(17,17)は上記左右側枠(3,3)に具備されている座梁部(4,4)に取り付けられている杆受け(16,16)にそれぞれ支持されるように設定されており,該回動杆の下側杆(18,18)は左右側枠(3,3)に沿った方向に配設されている枢軸(26)を介して該側枠下部に枢着されており,該左右側枠下部には前後一対の下側杆取付部(13,13)が取り付けられており,該下側杆取付部(13,13)には,該左右側枠(3,3)に沿う方向を向き,かつ該枢軸(26)を支持するための軸穴(13A,13B,13C)がそれぞれ複数個上下に相対して配列して設けられており,該回動杆(11A,11A,12A,12A)下端の下側杆(18,18)を該前後一対の下側杆取付部(13,13)間に位置させて,該車椅子(1)の使用者の体形に応じて調節される巾に対応して該下側杆取付部(13,13)の複数個の軸穴(13A,13B,13C)のうちの一つを選択して該軸穴(13A,13B,13C)に該枢軸(26)を引き抜き可能に挿通支持させることによって,該X枠(11,12)の上端部は該左右側枠(3,3)に対して上下位置を変えることなく,かつ該X枠(11,12)の長さを変えることなく該車椅子(1)の巾を調節可能にした車椅子(1)を提供するものである。」(段落【0004】)【作用】・「本発明では車椅子(1)の左右側枠(3,3)は前後一対のX枠(1 1,12)により連結され,該X枠(11,12)の回動杆(11A,11A,12A,12A)を中心Cを支点に回動させれば,図8に示すようにX枠(11,12)の巾,すなわち左右側枠(3,3)間の巾を調節することができる。このとき該X枠(11,12)は縦巾も変化するが,該回動杆(11 2A)を中心Cを支点に回動させれば,図8に示すようにX枠(11,12)の巾,すなわち左右側枠(3,3)間の巾を調節することができる。このとき該X枠(11,12)は縦巾も変化するが,該回動杆(11A,11A,12A,12A)下端部の該左右側枠下部取付け位置が車椅子の所望の巾に対応して上下調節可能にされているので,縦巾が変化してもそれに対応して該左右側枠(3,3)を連結でき,該回動杆の上端部の上下位置,即ち座の上下位置は変化しない。」(段落【0005】)・「具体的には該回動杆(11A,11A,12A,12A)下端部は,枢軸(26)を介して該側枠(3,3)下部に取り付けられており,該枢軸(26)は該側枠(3,3)下部に設けられた上下に配列している複数個の軸穴(13A,13B,13C)のうちの一つに支持されるのであるが,該回動杆(11A,11A,12A,12A)下端部を複数個の該軸穴(13A,13B,13C)のうちの一つを選び該軸穴に合わせて該枢軸(26)を挿通することによって枢着して座の高さを変えることなく該側枠(3,3)間の巾すなわち車椅子(1)の巾を段階的に調節できる。」(段落【0006】)【発明の効果】・「本発明では,座の高さを変えることなく車椅子の巾を調節できるので,使用者が最も操作しやすい巾に調節できる。あるいはメーカーにとっては巾の異なる多種類の製品を製造しなくて済む。」(段落【0022】)イ本件明細書等の上記記載によれば,車椅子においては,車椅子の使用者が車輪を回しやすい位置に手を置くためには,使用者の体形に応じて車椅子の幅を調節しなければならないとの課題があるところ,本件発明は,かかる課題を解決するために,左右側枠を前後一対のX枠により連結した車 椅子において,該X枠の回動杆 者の体形に応じて車椅子の幅を調節しなければならないとの課題があるところ,本件発明は,かかる課題を解決するために,左右側枠を前後一対のX枠により連結した車 椅子において,該X枠の回動杆をその中心を支点に回動させて,X枠の幅,すなわち左右側枠間の幅を調節するが,このとき該X枠の縦幅も変化するため,該回動杆下端部の該左右側枠下部に対する取付位置を車椅子の所望の幅に対応して上下調節可能にすることで,縦幅が変化してもそれに対応して該左右側枠を連結でき,該回動杆の上端部の上下位置,すなわち座の上下位置を変化させないような構造とすることとし,具体的には,請求項1記載の本件発明の構成を具備することによって,座の高さを変えることなく車椅子の幅を調節できるという効果を奏する発明である,と認めることができる。 (2) 引用発明の内容ア乙46明細書の記載乙46明細書には,以下の記載がある。 ・「本考案は,車台フレームを備え,該車台フレームが下側フレームパイプと上側フレームパイプとをそれぞれ有する二つのサイドフレーム部材を具備し,該フレーム部材には走行方向に隔離して駆動輪とキャスタとが一つずつ支承されており,フレーム部材は,該フレーム部材に枢着され角度をなして互いに調整可能な支柱によって,離隔した使用位置と近接した折りたたみ位置との間で互いに向かって移動可能であり,かつ少なくとも使用位置において固定可能になっており,フレーム部材と接続された側方部材とバックレストとによって画成される座部をさらに備えた,折りたたみ式車椅子に関する。」・「同種の折りたたみ式車椅子が公知であり,例えば本出願人によるDE9314883U1に記載されている。」・「・・・この車椅子では,クロスバーが,互いに交差するパイプまたはリンクからなり,これらのパイ 種の折りたたみ式車椅子が公知であり,例えば本出願人によるDE9314883U1に記載されている。」・「・・・この車椅子では,クロスバーが,互いに交差するパイプまたはリンクからなり,これらのパイプまたはリンクは,交差点で関節状に互いに接続されており,下端部がサイドフレーム部材の下側フレームパイ プにそれぞれ枢着されている。クロスバーをなすパイプまたはリンクのそれぞれの他端とシートパイプとが固く接続されており,このシートパイプには,通常,丈夫な帆布からなる座部の長手方向縁部が固定されており,使用位置において,サイドフレーム部材の上側フレームパイプと係止可能である。 この車椅子では,例えば潜在的ユーザの体格の違いといった種々の要求に適応できないか,または少なくとも非常に適応し難いため不十分である。したがって,本考案の基礎となる課題は,種々の要求に対する適応性を改善した折りたたみ式車椅子を提供することである。 上記課題は,車台フレームを異なった幅の少なくとも二つの使用位置に調整するために,サイドフレーム部材がそれらの間隔に関して互いに調節可能であり,それぞれ一つの使用位置に対応する調整ポジションでロック可能であることによって解決される。 したがって,本考案は,車台フレームの両サイドフレーム部材の間隔を変更することによって車椅子の使用位置をユーザのそれぞれの要求に適応させることであり,その場合に,フレーム部材を少なくとも二つの異なった間隔に調整することができる。・・・」・「サイドフレーム部材をクロスバーによって互いに接続した車台フレームでは,本考案の一展開形態により,リンクの下端部とサイドフレーム部材との枢着点の高さが変更可能であるように形成することが合目的的であることが明らかになった。車台フレームの幅調節は, した車台フレームでは,本考案の一展開形態により,リンクの下端部とサイドフレーム部材との枢着点の高さが変更可能であるように形成することが合目的的であることが明らかになった。車台フレームの幅調節は,クロスバーリンクの下端部をどの高さポジションで車台フレームのサイドフレーム部材に枢着するかに依存して行われる。この場合,それぞれの使用位置での係止は,例えば,使用位置において,サイドフレーム部材の上側フレームパイプから突出する係止部が形状結合的に係合する,リンクの上端部と接続されたシートパイプによってそのまま変わらない。 車台フレームの幅の調整と,ひいては座幅調整は,この展開形態では,それぞれの使用位置において,互いに交差するクロスバーのリンクがなす角度が変更されることによって行われる。その場合,座部の高さは変わらない。 他の有意義な展開形態では,リンクの下端部が,異なった高さ位置でサイドフレーム部材に固定可能な軸受ブロックによってサイドフレーム部材に枢着されている。この軸受ブロックは,サイドフレーム部材の上側フレームパイプと下側フレームパイプとの間に延在する保持コンソールに収容され,かつ垂直方向に互いに離隔した所定の調整ポジションで保持コンソールに固定可能であり得る。 この展開形態では,リンクの下端部に,軸受パイプがそれぞれ固く接続されており,該軸受パイプは,サイドフレーム部材の上側フレームパイプおよび下側フレームパイプに対して平行位置に延在し,かつそれぞれのリンクから両側に突出するならば,そしてリンクの両側で,サイドフレーム部材の上側フレームパイプ及び下側フレームパイプと接続されたそれぞれ一つの保持コンソールが設けられ,該保持コンソールには軸受パイプの一端をそれぞれ支承するための軸受ブロックが収容されているならば合 部材の上側フレームパイプ及び下側フレームパイプと接続されたそれぞれ一つの保持コンソールが設けられ,該保持コンソールには軸受パイプの一端をそれぞれ支承するための軸受ブロックが収容されているならば合目的的であることも判明した。 さらに,保持コンソールが所定の垂直方向の間隔を離間させて配置された,リンクを枢着するために利用される軸受ブロックを固定するための穴を備えているならば,保持コンソールでの軸受ブロックの特に簡単な高さ調整が可能である。」・「図2ないし図4に示された本考案に係る車台フレーム20は,・・・二つのサイドフレーム部材21を有し,これらのサイドフレーム部材は,それぞれ一つの上側フレームパイプ及び下側フレームパイプ22,23と,これらを互いに接続する前側フレームパイプ及び後側フレームパイ プとからなる。 サイドフレーム部材21はクロスバー28によって互いに接続されており,クロスバーは,交差点で回転ジョイントによって互いに接続された二つのリンクと,ダブルのリンク29,29’と,これらと交差するシングルのリンク30とからなる。クロスバーリンクは,それぞれの上端部に,上側フレームパイプ22に固く取り付けられた係止部33と形状結合的に係合するためのシートパイプ32を備えている。 ・・・車台フレーム20は,車椅子のそれぞれの使用位置において両フレーム部材21間の間隔と,ひいては座幅を調節するための装置を備えている。 この目的で,両サイドフレーム部材21には,クロスバー28の両側に,ダブルリンク29,29’及びシングルリンク30のそれぞれの下端部を枢着するためのそれぞれ同様に形成された保持コンソール36が二つずつ,走行方向に離隔して配置されている。金属形材として形成された保持コンソール36は,垂直方向に延在し,それぞ 0のそれぞれの下端部を枢着するためのそれぞれ同様に形成された保持コンソール36が二つずつ,走行方向に離隔して配置されている。金属形材として形成された保持コンソール36は,垂直方向に延在し,それぞれの両端部で止め輪37により,それぞれのサイドフレーム部材21の上側フレームパイプ22と下側フレームパイプ23とに固定されている。保持コンソール36の各々は,同じ数の穴38を備えており,これらの穴は,保持コンソール36の取付け位置において垂直方向に離隔して配置されており,車台フレーム20に配置された全保持コンソール36のそれぞれ対応する穴38が水平面上に延びる。 ダブルリンク29,29’及びシングルリンク30は,それらの下端部に軸受パイプ41をそれぞれ備えており,この軸受パイプは,それぞれのリンクの長手方向に対して垂直に,かつ取り付けられた状態で,上側もしくは下側フレームパイプ22,23に対して平行に延びる。軸受パイプ41の端部は,軸受ブロック42で軸方向に固定されているが, 回動可能に支承されている。軸受ブロック42は,保持コンソール36から車椅子内側に突出し,かつこれらの保持コンソールと公知の態様で固く,しかし,例えば穴38を貫通し軸受ブロック42のねじ孔に螺入されるねじによって着脱可能に接続されている。 図3及び図4に示されるように,それぞれの軸受ブロック42を固定するために設けられた穴38は,それぞれの使用位置においてサイドフレーム部材21間の間隔を決定する。図3において,軸受ブロック42は,下側フレームパイプ23の領域に直接配置された穴38に固定されている。このことにより,使用位置において,ダブルリンク29,29’およびシングルリンク30と水平線との角度が略30°になり,したがって比較的狭い座幅になる。 これに 接配置された穴38に固定されている。このことにより,使用位置において,ダブルリンク29,29’およびシングルリンク30と水平線との角度が略30°になり,したがって比較的狭い座幅になる。 これに対して図4に示された調整位置では,ダブルリンク29,29’及びシングルリンク30を保持コンソール36の穴38に枢着するために軸受ブロック42が固定されており,穴は,それぞれの上側フレームパイプ22と下側フレームパイプ23との間の略中央に配置されている。 使用位置においてリンク29及び29’もしくは30と水平線とがなす角度は,図3に示される例よりもはるかに平坦であり,略15°である。 したがって,この調整位置では,両サイドフレーム部材21間の間隔と,ひいては座幅が図3の調整位置での場合よりも大きい。」・「【請求項1】車台フレーム(19)を備え,該車台フレームが下側フレームパイプと上側フレームパイプ(22,23)とをそれぞれ有する二つのサイドフレーム部材(21)を具備し,該フレーム部材には走行方向に離隔して駆動輪とキャスタとが一つずつ支承されており,前記フレーム部材は,該フレーム部材(21)に枢着され角度をなして互いに調整可能なリンク(29,29’,30)によって,離隔した使用位置と近接した折り たたみ位置との間で互いに向かって移動可能であり,かつ少なくとも前記使用位置において固定可能になっており,前記フレーム部材(21)と接続されたサイド部材とバックレストによって画成される座部をさらに備えた,折りたたみ式車椅子であって,前記車台フレーム(20)を異なった幅の少なくとも二つの使用位置に調整するために,前記サイドフレーム部材(21)がそれらの間隔に対して互いに調節可能であり,前記それぞれ一つの使用位置に対応する調節ポジションでロッ (20)を異なった幅の少なくとも二つの使用位置に調整するために,前記サイドフレーム部材(21)がそれらの間隔に対して互いに調節可能であり,前記それぞれ一つの使用位置に対応する調節ポジションでロック可能であることを特徴とする,折りたたみ式車椅子。 【請求項2】サイドフレーム部材(21)がクロスバー(28)によって互いに接続されている車台フレーム(20)において,前記リンク(29,29’,30)の下端部と前記サイドフレーム部材(21)との枢着点の高さが可変であることを特徴とする,請求項1に記載の折りたたみ式車椅子。 【請求項3】前記クロスバーリンク(29,29’,30)の下端部は,異なった高さ位置で前記サイドフレーム部材(21)に固定可能な軸受ブロック(42)によって前記サイドフレーム部材(21)に枢着されていることを特徴とする,請求項2に記載の折りたたみ式車椅子。 【請求項4】前記軸受ブロック(42)は,前記サイドフレーム部材(21)の上側フレームパイプと下側フレームパイプ(22,23)との間に延在する保持コンソール(36)に収容され,かつそれぞれ垂直方向に離隔した所定の調整ポジションで固定可能であることを特徴とする,請求項3に記載の折りたたみ式車椅子。 【請求項5】前記リンク(29,29’,30)の下端部に,軸受パイプ(41) がそれぞれ固く接続されており,該軸受パイプは,前記サイドフレーム部材(21)の上側フレームパイプ及び下側フレームパイプ(22,23)に対して平行位置に延在し,かつ前記それぞれのリンクから両側に突出することと,前記クロスバー(28)の両側で,前記サイドフレーム部材(21)の上側フレームパイプ及び下側フレームパイプ(21)と接続されたそれぞれ一つの保持コンソール(36)が設け クから両側に突出することと,前記クロスバー(28)の両側で,前記サイドフレーム部材(21)の上側フレームパイプ及び下側フレームパイプ(21)と接続されたそれぞれ一つの保持コンソール(36)が設けられ,該保持コンソールには軸受パイプ(41)の一端をそれぞれ支承するための軸受ブロック(42)が収容されていることを特徴とする,請求項4に記載の折りたたみ式車椅子。 【請求項6】前記保持コンソール(36)は,所定の垂直方向の間隔を離間させて配置された,前記リンク(29,29’,30)を枢着するために利用される軸受ブロック(42)を固定するための穴(38)を備えていることを特徴とする,請求項4または5に記載の折りたたみ式車椅子。」イ乙46明細書の図面乙46明細書の図2a及び図3において,保持コンソールの「穴38」は,保持コンソールの中央から下方の部分に複数個設けられており,また,これらの「穴38」は,サイドフレーム部材に沿う方向ではなく,これと直交する方向に向いていることが認められる。 ウ軸受パイプにおける「軸」の存否乙46明細書に記載された引用発明の構成について,被告は,軸受パイプは,その両端から突出する長さの「軸」を受けており,この「軸」の両端をそれぞれ軸受ブロックが受けていると認定できると主張する。 この点,被告は,乙46明細書の「DieEndenderLagerrohre 41 sindinLagerböcken 42 axialfest,・・・」とのドイツ語原文が,「軸受パイプ41の端部は,軸受ブロック42に軸が固定されているが,・・・」との意 味であるとして,軸受パイプの中に「軸」が存在すると主張するが,証拠〈略〉によれば,上記記載は,前記アのとおり,「軸受パ の端部は,軸受ブロック42に軸が固定されているが,・・・」との意 味であるとして,軸受パイプの中に「軸」が存在すると主張するが,証拠〈略〉によれば,上記記載は,前記アのとおり,「軸受パイプ41の端部は,軸受ブロック42で軸方向に固定されているが,・・・」との意味であると認められるから,同記載からは,軸受パイプの中の「軸」の存在が開示されているということはできない。 もっとも,乙46明細書の図2a及び図2bでは,軸受ブロックによって支承される軸受パイプの両端部の外径は,これと接する軸受ブロックの断面円形の部分の外径と等しく描かれているところ,このような軸受ブロックに,等しい外径を有する軸受パイプを挿入するための軸穴を設けることは構造上不可能と考えられる。また,車台フレームを正面視した場合の端面の図(隠れ線が実線で描かれている。)である図3及び4では,軸受ブロック及び軸受パイプの断面に相当する部分には三重の円が描かれているところ,上記のとおり軸受パイプの外径が軸受ブロックの外径と一致すること,すなわち正面視ではそれらの外周線が同一の円で描かれるはずであることを考慮すれば,上記三重の円のうち,大きな円は軸受パイプの外周線を,中間の円は軸受パイプの内周線を,小さな円は軸受パイプの内部に挿入された部材を表す線とみることが可能であるから,上記図面には,軸受パイプに中空が設けられており,そこに断面円形の別の部材である軸が存在することが示唆されているといえる。さらに,証拠〈略〉によれば,上記で「軸受パイプ」の訳が当てられている「Lagerrohre」の語は,軸受又は支承のためのパイプ(pipe)又はチューブ(tube)を意味するドイツ語であると認められるところ,パイプ及びチューブがいずれも中空を有する「管」を指すものである gerrohre」の語は,軸受又は支承のためのパイプ(pipe)又はチューブ(tube)を意味するドイツ語であると認められるところ,パイプ及びチューブがいずれも中空を有する「管」を指すものであることは明らかである。 そうすると,当業者は,乙46明細書の記載から,軸受パイプが,その中に挿通された「軸」を介して,軸受ブロックに枢着されている構成を読み取るものということができる。 エ引用発明の構成乙46明細書の記載によれば,引用発明は,クロスバーリンクの下端部とサイドフレーム部材との枢着点の上下位置を変更することによって,その上下位置に依存して,サイドフレーム部材の間隔,ひいては,座幅を調節することを可能にした折りたたみ式車椅子であることが認められ,その構成は,次のとおりである。 (ア) それぞれ一つの上側フレームパイプ22及び下側フレームパイプ23と,これらを互いに接続する前側フレームパイプ及び後側フレームパイプとからなるサイドフレーム部材21であって,二つのサイドフレーム部材21がクロスバー28によって互いに接続されており,(イ) クロスバー28は,交差点で回転ジョイントによって互いに接続された二つのリンクである,ダブルリンク29,29’とシングルリンク30とからなり,それらの互いに交差する二つのリンクがなす角度は変更可能であって,それら二つのリンクの下端部は,それぞれサイドフレーム部材21下部に枢着されており,(ウ) それら二つのリンクは,それぞれの上端部に,シートパイプ32を備えており,(エ) また,それら二つのリンクは,それぞれの下端部に,サイドフレーム部材21の下側フレームパイプ23に沿った方向に,固く接続された軸受パイプ41を備えており,(オ) シートパイプ32は,上側フ エ) また,それら二つのリンクは,それぞれの下端部に,サイドフレーム部材21の下側フレームパイプ23に沿った方向に,固く接続された軸受パイプ41を備えており,(オ) シートパイプ32は,上側フレームパイプ22に固く取り付けられた係止部33と形状結合的に係合するためのものであり,(カ) 各サイドフレーム部材21に前後一対で配置された保持コンソール36の中央から下方の部分に,サイドフレーム部材に沿う方向と直交する方向に向いて,上下に配列して設けられた複数の穴38が設けられ,軸受パイプに挿通される軸を支持するための前後一対の軸受ブロック42 が,前記穴38を貫通し軸受ブロック42のねじ孔に螺入されるねじによって,保持コンソール36に固く着脱可能に接続されており,(キ) 各リンクの下端部に接続された軸受パイプ41は,前後一対の軸受ブロック42の相対する軸穴に挿通される軸によって支持され,当該軸受ブロック42が保持コンソール36に設けられた高さの異なる複数個の穴の一つに接続されることにより,座部の高さを変えることなく,かつ,クロスバー28の長さを変えることなく,車台フレームの幅を調整してユーザの体格に適応可能とした(ク) 車椅子。 (3) 本件発明と引用発明の対比ア引用発明及び本件発明は,いずれも「車椅子」(構成要件I)の発明であるところ,引用発明の「サイドフレーム部材」及び「クロスバー」は,それぞれ本件発明の「左右側枠」及び「X枠」に相当し,引用発明の「ダブルリンク」及び「シングルリンク」は,本件発明の「回動杆」に相当し,引用発明の「シートパイプ」は,本件発明の「上側杆」に相当し,引用発明のシートパイプが上側フレームパイプに固く取り付けられた係止部と形状結合的に係合する構成は,本件発明の構成要件Eの 杆」に相当し,引用発明の「シートパイプ」は,本件発明の「上側杆」に相当し,引用発明のシートパイプが上側フレームパイプに固く取り付けられた係止部と形状結合的に係合する構成は,本件発明の構成要件Eの構成に相当すると認められ,これらの構成を含む本件発明の構成要件A,B,C及びEが,引用発明が有する各構成と一致することは,当事者間に争いがない。 このほか,引用発明において,リンクの下端部に,サイドフレーム部材の下側フレームパイプに沿った方向に,固く接続されている「軸受パイプ」は,本件発明の回動杆の下端に取り付けられた「下側杆」に一致し,その軸受パイプの中に挿通された「軸」及びこの軸を介して軸受パイプを支持する「軸受ブロック」は,それぞれ本件発明の「枢軸」及び「下側杆取付部」に相当する。 また,引用発明において,保持コンソール下部に設けられた複数の穴の うちの一つに接続される軸受ブロックによって軸受パイプが支持されて,車台フレームの幅を調整してユーザの体格に適応可能とする構造と,本件発明において,車椅子の使用者の体形に応じて調節される巾に対応して左右側枠下部に設けられた複数個の軸穴のうちの一つで下側杆を支持する構造とは,車椅子の使用者の体形に応じて調節される巾に対応して,左右側枠下部に複数個上下に設けた下側杆の支持部のうちの一つを選択するという点で一致している。 イ以上によれば,引用発明の構成は,以下のとおり,本件発明の構成と一致し,又は,相違する。 (一致点)左右側枠を一個または二個以上のX枠で連結した構造であって,該X枠は中央で相互回動可能に結合され,下端部を該左右側枠下部に枢着した一対の回動杆からなり,該一対の回動杆の各上端には上側杆がそれぞれ取り付けられ,各下端には下側杆がそれぞれ取り た構造であって,該X枠は中央で相互回動可能に結合され,下端部を該左右側枠下部に枢着した一対の回動杆からなり,該一対の回動杆の各上端には上側杆がそれぞれ取り付けられ,各下端には下側杆がそれぞれ取り付けられ,該上側杆は上記左右側枠に具備されている座梁部に取り付けられている杆受けにそれぞれ支持されるように設定されており,該回動杆の下側杆は,左右側枠に沿った方向に配設されている枢軸を介して該左右側枠下部に枢着されており,該左右側枠下部には前後一対の下側杆取付部が取り付けられており,該下側杆取付部には,該枢軸を支持するための軸穴が相対して設けられており,該回動杆下端の下側杆を前後一対の下側杆取付部間に位置させて,該車椅子の使用者の体形に応じて調節される巾に対応して,左右側枠下部に複数個上下に設けた下側杆の支持部のうちの一つを選択し,該下側杆取付部の該軸穴に該枢軸を挿通支持させることによって,該X枠の上端部は該左右側枠に対して上下位置を変えることなく,かつ該X枠の長さを変えることなく該車椅子の巾を調節可能にした車椅子。 (相違点)左右側枠下部に複数個上下に設けられた下側杆の支持部において,下側杆取付部に枢軸を支持するための相対する軸穴が設けられ,下側杆を下側杆取付部間に位置させて,該軸穴に枢軸を挿通支持する構造について,本件発明は,左右側枠下部に取り付けられた前後一対の下側杆取付部に該左右側枠に沿う方向を向いてそれぞれ複数個上下に相対して軸穴が設けられており,その相対する軸穴に枢軸を引き抜き可能に挿通して,下側杆を支持するものであるのに対し,引用発明は,各サイドフレーム部材に配置された前後一対の保持コンソールの下部に,サイドフレーム部材に沿う方向と直交する方向を向いてそれぞれ複数個上下に配列して設けられた穴のう るものであるのに対し,引用発明は,各サイドフレーム部材に配置された前後一対の保持コンソールの下部に,サイドフレーム部材に沿う方向と直交する方向を向いてそれぞれ複数個上下に配列して設けられた穴のうちの一つに軸受ブロックがねじで固く着脱可能に接続されており,その軸受ブロックの該左右側枠に沿う方向を向いて相対する軸穴に軸を挿通して(この軸が引き抜き可能であるかは不明である。),軸受パイプを支持するものである点。 ウこれに関して原告は,本件発明の「下側杆」は,枢軸に回動可能に接続されており,その枢軸を介して左右側枠に枢着されている部分であるから,枢軸を介することなく軸受ブロックに接続している引用発明の「軸受パイプ」は,本件発明の「下側杆」には当たらないと主張する。 しかし,前記(2)ウのとおり,引用発明の軸受パイプは,軸を介して,サイドフレーム部材下部に接続された軸受ブロックに回動可能に枢着されていると認められるのであるから,引用発明の「軸受パイプ」は,本件発明の「下側杆」に相当する部材であると認めるのが相当である。 また,原告は,本件発明の「枢軸」は,「下側杆」が回動可能に接続される部分であり,そして,左右側枠下部に設けられた複数個の軸穴のうちの一つに引き抜き可能に挿通支持される部材であるとして,引用発明には,これに対応する部材がないと主張する。 しかし,引用発明に,軸受パイプ(下側杆)を挿通支持する「軸」が存在することは上記のとおりであるところ,この「軸」は,「下側杆」に相当する軸受パイプを,サイドフレーム部材下部に接続された軸受ブロックに回動可能に挿通支持する部材であるから,本件発明の「枢軸」に該当するものと認められる。原告の主張する,「枢軸」が複数個の軸穴のうちの一つに引き抜 を,サイドフレーム部材下部に接続された軸受ブロックに回動可能に挿通支持する部材であるから,本件発明の「枢軸」に該当するものと認められる。原告の主張する,「枢軸」が複数個の軸穴のうちの一つに引き抜き可能に挿通されるか否かという点については,前記イのとおり,枢軸の支持態様に関する相違点として把握すれば足りるというべきである。 (4) 相違点の容易想到性についてア本件特許出願当時の周知技術(ア) 乙69明細書によれば,乙69発明は,左右のサイドフレームがX状のクロスブレイスメンバによって接合される車椅子において,下側サイドレールに取り付けられた前後一対の下部グロータブに,サイドフレームに沿う方向を向き,ファスナーを支持するための孔をそれぞれ複数個相対して配列して設け,その複数個の孔から一つを選択し,その相対する孔に,下部グロータブ間に位置するクロスブレイスメンバ下端部の前後の孔を縦貫するファスナーを挿通して,支持する構造(同ファスナーの先端はナットによって固定される。)を有している,と認めることができる。 (イ) また,乙61公報によれば,乙61発明は,左右のサイドフレームが一対のX状の交差フレームによって連結される車椅子において,サイドフレーム下部に一体形成され,その前蓋及び後蓋にそれぞれ上下に相対して複数個の調整孔を穿設された円筒部材が,各交差フレーム下端の間に位置し,その調整孔の一つを選択して挿通された支持ロッドを介して,各交差フレーム下端の貫通孔に支持される構造(同支持ロッドの前後端はナットによって固定される。)を有している,と認めることができる。 (ウ) さらに,乙67公報によれば,乙67発明は,車椅子の座受板の両側片に相対して形成された通孔の間に,リンクに連結した円筒状の枢軸を を有している,と認めることができる。 (ウ) さらに,乙67公報によれば,乙67発明は,車椅子の座受板の両側片に相対して形成された通孔の間に,リンクに連結した円筒状の枢軸を回動自在に挿入し,これにピンボルトを差し込んで,その螺軸端にナットをねじ込み固定する構造を有している,と認めることができる。 (エ) 上記各公報によれば,車椅子の技術分野において,両端部に穴を穿設された部材を,一対の支持部材の間に位置させて回動可能に枢着する構造として,支持部材に相対する軸穴を設け,それらの軸穴とその間に位置する部材の穴とに着脱可能な枢軸を挿通させて支持することは,本件特許出願当時における周知の技術であったと認めることができる。 イ引用発明と上記周知技術の組合せの可否乙46明細書においては,引用発明について,「サイドフレーム部材をクロスバーによって互いに接続した車台フレームでは,本考案の一展開形態により,リンクの下端部とサイドフレーム部材との枢着点の高さが変更可能であるように形成することが合目的的であることが明らかになった。 車台フレームの幅調節は,クロスバーリンクの下端部をどの高さポジションで車台フレームのサイドフレーム部材に枢着するかに依存して行われる。」との引用発明の基本的な技術思想が示された上で,さらに「他の有意義な展開形態では,リンクの下端部が,異なった高さ位置でサイドフレーム部材に固定可能な軸受ブロックによってサイドフレーム部材に枢着されている。この軸受ブロックは,サイドフレーム部材の上側フレームパイプと下側フレームパイプとの間に延在する保持コンソールに収容され,かつ垂直方向に互いに離隔した所定の調整ポジションで保持コンソールに固定可能であり得る。この展開形態では,リンクの下端部に,軸受パイプが 下側フレームパイプとの間に延在する保持コンソールに収容され,かつ垂直方向に互いに離隔した所定の調整ポジションで保持コンソールに固定可能であり得る。この展開形態では,リンクの下端部に,軸受パイプがそれぞれ固く接続されており,該軸受パイプは,サイドフレーム部材の上側フレームパイプ及び下側フレームパイプに対して平行位置に延在し,かつそれぞれのリンクから両側に突出するならば,そしてリンクの両側で,サイド フレーム部材の上側フレームパイプ及び下側フレームパイプと接続されたそれぞれ一つの保持コンソールが設けられ,該保持コンソールには軸受パイプの一端をそれぞれ支承するための軸受ブロックが収容されているならば合目的的であることも判明した。さらに,保持コンソールが所定の垂直方向の間隔を離間させて配置された,リンクを枢着するために利用される軸受ブロックを固定するための穴を備えているならば,保持コンソールでの軸受ブロックの特に簡単な高さ調整が可能である。」との具体的な構成が記載されているところ,このような記載に対応して,その請求項1及びそれに従属する請求項2においては,リンクの下端部をサイドフレーム部材に枢着点の高さを変更可能に取り付けて,サイドフレーム部材の間隔を調節できる車椅子という,より基本的な技術思想に係る発明が開示され,これに順次従属する請求項3ないし6においては,それぞれ軸受パイプ,軸受ブロック,保持コンソール及びその穴等を用いた,リンクの下端部とサイドフレーム部材との枢着点の高さを調整可能とする支持構造が,より具体的に特定して開示されている。 乙46明細書のこれらの記載からすれば,引用発明において,リンクの下端部を,軸を介してサイドフレーム部材に取り付けるための支持構造として示された態様は,上記請求項1及び2の基本的な技術 れている。 乙46明細書のこれらの記載からすれば,引用発明において,リンクの下端部を,軸を介してサイドフレーム部材に取り付けるための支持構造として示された態様は,上記請求項1及び2の基本的な技術思想を実現するための一具体例であると解するのが相当である。したがって,乙46明細書には,サイドフレーム部材に対するリンク下端部の枢着位置を調節可能に取り付ける構造として,種々のものを採用できることが示唆されているということができる。 そうすると,当業者にとって,引用発明において一具体例として示された,保持コンソールの穴に着脱可能に固定された軸受ブロックに,軸受パイプを軸を介して枢着するという支持構造に代えて,支持部材に相対する軸穴を設け,それらの軸穴とその間に位置する部材の穴とに着脱可能な枢 軸を挿通して支持するという,より簡略な前記周知技術を適用して,前記相違点に係る本件発明の支持構造に至ることは,容易であったということができる。 したがって,本件発明は,引用発明を主引例とし,それに前記ア記載の周知技術を組み合わせることによって,容易に想到されるものであると認めるのが相当である。 (5) 原告の主張に対する判断ア原告は,引用発明に,本件発明の「下側杆」に相当する部材が存在しないことを前提としつつ,乙61発明の「円筒部材」は,交差フレームに取り付けられたものではないから,本件発明の「下側杆」に当たらず,また,乙69発明には「下側杆」が存在しないなどとして,「下側杆」を持たない引用発明に,同様に「下側杆」を持たない他の発明を組み合わせても本件発明に至ることはできないと主張する。 しかし,引用発明の「軸受パイプ」が本件発明の「下側杆」に相当すると解されることは,前記(3)ウのとおりであるから,これと異なる解 組み合わせても本件発明に至ることはできないと主張する。 しかし,引用発明の「軸受パイプ」が本件発明の「下側杆」に相当すると解されることは,前記(3)ウのとおりであるから,これと異なる解釈を前提とする原告の上記主張は採用できない。 イ原告は,引用発明の支持構造を変更して本件発明の支持構造とするためには,引用発明の支持構造から,軸受ブロックを廃し,下側杆と枢軸による枢着構造にした上,枢軸を支持するための軸穴を対向する下側杆取付部に設けなければならないが,引用発明にもその他の発明にも,このような改変を行うことについての記載や示唆はないと主張する。 しかし,引用発明には,下側杆(軸受パイプ)と枢軸(軸)を用いた枢着構造が既に開示されているところ,これを保持コンソールに接続された軸受ブロックによって支持する引用発明の支持構造に代えて,乙61,乙67及び乙69発明に見られる周知の支持構造を採用する示唆が存することは前記のとおりである。そして,その場合には,引用発明の軸受ブロッ クは廃されることになるが,それに代えて,周知技術のとおり,左右側枠又はそれに配設された保持コンソールに相対する軸穴が設けられて,該軸穴に下側杆が枢軸を介して支持されることになり,本件発明における下側杆の支持構造に至ることになるのであるから,原告の上記主張は採用できない。 なお,原告が構成要件Gについて主張するとおり,本件発明の「下側杆取付部」は,左右側枠と別個の部材である必要はなく,左右側枠の構成部材に直接軸穴が設けられる構成を含むと解されるから,引用発明の軸受ブロックを廃した結果,保持コンソールに相対する軸穴が設けられ,あるいは,サイドフレーム部材自体に相対する軸穴が設けられ,その軸穴に軸受パイプ(下側杆)が軸を介して枢着 解されるから,引用発明の軸受ブロックを廃した結果,保持コンソールに相対する軸穴が設けられ,あるいは,サイドフレーム部材自体に相対する軸穴が設けられ,その軸穴に軸受パイプ(下側杆)が軸を介して枢着される構造となるとしても,「下側杆取付部」を備える本件発明の構成ということができる。 ウ原告は,本件発明においては,枢軸が「引き抜き可能に」挿通されており(構成要件H),これは枢軸がねじの締め付け等によって固定されていないことを意味し,その結果,熟練を必要としない作業が可能になると主張する。 しかし,「引き抜き可能」との用語から,ねじの締め付け等によって固定されていないとの限定を読み取ることはできず,むしろ,本件明細書等には,本件発明における枢軸を軸穴及び下側杆の内部に挿通した後,抜き止め軸を枢軸に設けられている抜き止め軸孔に挿通すること(本件明細書等・段落【0015】及び【0016】)が記載されており,車椅子の使用中に枢軸が抜けないように,他の部材で枢軸を固定することが示されていることからすれば,枢軸が「引き抜き可能に」挿通されていることは,枢軸を挿通した後に,それを何らかの手段で抜けないように固定する構成を排除するものでないと解される。 したがって,乙61,乙67及び乙69発明において,それぞれピンボ ルト,支持ロッド又はファスナーがナットによって着脱可能に固定される周知技術の構成は,いずれも本件発明と同様に,枢軸が「引き抜き可能に」挿通される構成であるというべきである。 エ原告は,本件発明における支持構造は,引用発明における支持構造と比べて,車椅子の幅によって使用する部品の数や種類が異ならない点及びその調節作業において,工具を用いるねじ締め作業が不要である点で,「メーカーにとっては巾の異なる多種類の 引用発明における支持構造と比べて,車椅子の幅によって使用する部品の数や種類が異ならない点及びその調節作業において,工具を用いるねじ締め作業が不要である点で,「メーカーにとっては巾の異なる多種類の製品を製造しなくて済む」という格別の効果があり,また,荷重の伝達の点でも,垂直荷重が枢軸(軸穴)を経由して直ちに左右側枠下部に伝達される本件発明の構成は,軸受ブロックと保持コンソールをねじで固定する引用発明の構成と比べて,強度面での格別の配慮が不要となる効果があるから,当業者が引用発明から本件発明を容易に想到することはできないと主張する。 しかし,そもそも引用発明の車椅子において,幅の違いによって使用する部品の数や種類が異なるか否か,あるいは,軸受ブロックと保持コンソールをねじで固定する構成が強度面で格別の配慮を要するか否かは,いずれも明らかではないから,原告の上記主張は採用することができない。 仮にそれらの点を本件発明と引用発明との相違点ということができるとしても,車椅子の幅によって使用する部品の数や種類が異ならないこと及び下側杆に掛かる垂直荷重が枢軸(軸穴)を介して直接左右側枠下部に伝達されることは,いずれも引用発明における下側杆の支持構造に代えて,前記の周知技術における支持構造を採用することによって,当然に導かれるものであるから,その効果が,引用発明に周知技術を組み合わせることにより得られると予想される効果以上の格別のものであるということはできない。 また,本件発明の構造では,幅を調節する際に工具を用いるねじ締め付け作業が不要であるとの点については,本件明細書等の記載からは,本件 発明が,挿通された枢軸を何らかの手段で固定する構成を排除していないと解されることは,前記ウ記載のとおりであり,しかも,本 業が不要であるとの点については,本件明細書等の記載からは,本件 発明が,挿通された枢軸を何らかの手段で固定する構成を排除していないと解されることは,前記ウ記載のとおりであり,しかも,本件特許の特許請求の範囲及び明細書等を精査しても,車椅子の座幅の調節に当たって工具を用いないことの利点や技術的意義を明らかにする記載を見いだすことはできない。かえって,本件明細書等の実施例の記載では,車椅子の幅を調整する過程で,X枠を左右側枠に固定した後に,回動杆上部とリンクアーム取付部との間にリンクアームを差し渡し,それぞれをねじで固定するとされていること(本件明細書等・段落【0017】及び【0020】)に鑑みれば,本件発明においては,工具を用いずに座幅の調節作業を行うことが前提とされているものではないと解される。そうすると,工具を用いるねじ締め作業が不要であることが本件発明の作用効果であるとは認められないから,この点が,引用発明との比較において,本件発明の格別の効果であるとする原告の上記主張は採用することができない。 (6) 小括以上のとおり,本件発明は,引用発明に前記周知技術を組み合わせることによって,容易に想到できたものと認められる。 したがって,本件特許は,特許法29条2項,123条1項により特許無効審判により無効にされるべきものであるから,特許法104条の3第1項により,原告は,本件特許権を行使することができない。 2 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官東海林保 裁判官実本滋 裁判官足立 主文 のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 実本滋 裁判官 足立拓人 別紙イ号物件目録 モジューラー式車椅子EX-M
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