昭和51(う)1065 道路交通法違反、枉法収賄、受託収賄、贈賄、自転車競技法違反、賭博開張図利、傷害被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和52年4月6日 東京高等裁判所
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判決文本文21,850 文字)

主文 原判決中被告人両名に関する部分を破棄する。被告人Aを懲役四年に、同Bを懲役三年六月に各処する。原審における未決勾留日数中被告人Aにつき一五〇日を、同Bにつき一八〇日を、それぞれ右各刑に算入する。押収してあるゴルフクラブ一三本(東京高裁昭和五一年押第四四九号の一)、ゴルフバツグ一個(同号の二)、クラブカバー、ウツド用四個(同号の三)、同パター用一個(同号の四)を、被告人Aから没収する。被告人Aから金一〇四万一、七六四円を追徴する。理由 本件各控訴の趣意は、被告人Aについては同被告人の弁護人箕山保男、同溝口節夫連名作成名義の控訴趣意書に、被告人Bについては同被告人の弁護人山田有宏、同伊藤眞連名作成名義の控訴趣意書および弁論再開申請書にそれぞれ記載されたとおりであり、これらに対する答弁は、東京高等検察庁検察官検事三野昌伸作成名義の答弁書に記載されたとおりであるから、これらをここに引用し、これに対して、当裁判所は、次のとおり判断する。被告人Aの弁護人らの控訴趣意第一点(刑事訴訟法三七八条三号に該当する違反ないし訴訟手続の法令違反)について所論は要するに、「検察官は当初、別紙第一の一ないし七記載の事実を、被告人Aに対する枉法収賄の訴因(以下「本位的訴因」ということがある。)として公訴を提起したが、その後原審第一八回公判期日において(横浜地裁昭和四八年(わ)第五六〇号事件については、さらに同第二〇回、第二一回公判期日において)、右本位的訴因を別紙第二の一ないし七記載の事実(以下「予備的訴因」ということがある。)のとおりに予備的に変更する旨請求して許可され、原判決は、右予備的訴因に基づき、これとほぼ同一の事実を認定した。しかしながら、右本位的訴因と、 いし七記載の事実(以下「予備的訴因」ということがある。)のとおりに予備的に変更する旨請求して許可され、原判決は、右予備的訴因に基づき、これとほぼ同一の事実を認定した。 いて)、右本位的訴因を別紙第二の一ないし七記載の事実(以下「予備的訴因」ということがある。)のとおりに予備的に変更する旨請求して許可され、原判決は、右予備的訴因に基づき、これとほぼ同一の事実を認定した。しかしながら、右本位的訴因と、 いし七記載の事実(以下「予備的訴因」ということがある。)のとおりに予備的に変更する旨請求して許可され、原判決は、右予備的訴因に基づき、これとほぼ同一の事実を認定した。しかしながら、右本位的訴因と、これに対応する予備的訴因とでは、犯罪の日時、場所、賄賂の内容、収賄共犯者の全面撤回、贈賄共犯者の異動、現金の多寡等訴因としての重要な事項の殆ど大部分が相違しており、このような場合には、右両訴因間に公訴事実の同一性を認めることができないから、前記訴因の変更は、刑事訴訟法三一二条二項に違反し許されないというべきであり、したがつて被告人Aに対し前記本位的訴因について無罪の言い渡しをせず、これと公訴事実の同一性ありと認めることのできない予備的訴因に基づき、これとほぼ同一の事実を認定し、有罪の言い渡しをした原判決には、審判の対象である公訴事案について審判の結果の判断を下さず、逆に審判の対象外である事実を認定した同法三七八条三号に該当する違反ないし判決の影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反があり、この違反はひいては憲法三九条、三一条にも違反する結果となる。」というのである。よつて検討するに、原審において被告人Aに対する別紙第一の一ないし七記載の訴因について別紙第二の一ないし七記載のとおりに訴因の予備的変更の請求がなされて、これが許可されたことは所論のとおりであり、このことは記録上明らかである。そこで、右本位的訴因と予備的訴因との間に公訴事実の同一性が認められるか否かについて考えるに、記録を検討すると、まず本位的訴因における免許証取得者らと、予備的訴因における免許証取得者らとは、いずれも同一であり、右の者らに運転免許証を得させるために施した不正の行為の内容、その日時、場所はすべて同一であるところ、本件においては右免許証取得者らが、それぞれ被告人 における免許証取得者らとは、いずれも同一であり、右の者らに運転免許証を得させるために施した不正の行為の内容、その日時、場所はすべて同一であるところ、本件においては右免許証取得者らが、それぞれ被告人Aを含む自動車運転免許試験の試験官(以下「試験官」ということがある。 免許証を得させるために施した不正の行為の内容、その日時、場所はすべて同一であるところ、本件においては右免許証取得者らが、それぞれ被告人 における免許証取得者らとは、いずれも同一であり、右の者らに運転免許証を得させるために施した不正の行為の内容、その日時、場所はすべて同一であるところ、本件においては右免許証取得者らが、それぞれ被告人Aを含む自動車運転免許試験の試験官(以下「試験官」ということがある。)らに賄賂を供与する目的で金員を支出したこと、被告人Aが右金員の一部またはその変形物により職務上不正の利益を得ていること、C(別紙第一および第二の各一ないし三につき)およびB(別紙第一および第二の各四ないし七につき)が右免許証取得者と被告人Aとの間の右賄賂の供与、受供与に関与していることは、両訴因間においていずれも共通しているのであつて、検察官は、当初C、Bを被告人Aの収賄の共犯者とみて起訴したところ、審理の結果、右両名は免許証取得者らからそれぞれ金員を受取り、その一部を試験官である被告人Aに交付し、あるいはその金員で同被告人に饗応接待したもので、むしろ被告人Aに対する贈賄の罪責を負うべきものと<要旨>評価すべきことが判明したというに過ぎないのであつて、なるほど本件両訴因間に受供与の日時、場所、共犯</要旨>者、賄賂の額、内容等について相違あることは所論が指摘するとおりであるけれども、前記のような事実関係に鑑みれば、両訴因は結局一連の同一事実関係を対象としながら、法廷に提出された証拠に対する評価を異にする結果、犯罪の日時、場所、共犯者の有無、賄賂の額、内容等犯罪の形態を異にしているに過ぎないとみるべきであり、したがつて右のような事実関係においては、両訴因が同時に併立する関係にはない(即ち一方の犯罪の成立が認められるときは、他方の犯罪の成立を認め得ない関係にある)と解せられ、右両訴因は公訴事実の同一性の範囲内にあるものというべきである(所論がその主張の根拠として引用する判例ー 即ち一方の犯罪の成立が認められるときは、他方の犯罪の成立を認め得ない関係にある)と解せられ、右両訴因は公訴事実の同一性の範囲内にあるものというべきである(所論がその主張の根拠として引用する判例ー特に東京高裁昭和三〇年(う)第一、八八三号同三一年七月一八日判決、高裁刑裁特報三巻一六号七七九頁―は、本件とは事実関係を異にするものであつて、本件に引用するのは適切でないというべきである。 て引用する判例ー 即ち一方の犯罪の成立が認められるときは、他方の犯罪の成立を認め得ない関係にある)と解せられ、右両訴因は公訴事実の同一性の範囲内にあるものというべきである(所論がその主張の根拠として引用する判例ー特に東京高裁昭和三〇年(う)第一、八八三号同三一年七月一八日判決、高裁刑裁特報三巻一六号七七九頁―は、本件とは事実関係を異にするものであつて、本件に引用するのは適切でないというべきである。)。また右予備的訴因と、これに対応する原判決認定にかかる各事実(原判示第四の別表第二、番号1、3、5、7、9、11、12の事実、同第五の別表第三、番号10ないし16、18、20の事実)との間に、犯行回数、賄賂の額、賄賂者の数等について若干相違があり、原審において訴因変更の手続きを経由していないことが認められるけれども、両者はもとより公訴事実の同一性の範囲内にあり、かつ、右の程度の相違については特に訴因を変更しなければならないものとはいえない。してみると、本件における訴因の予備的変更および右予備的訴因に基づいてなした原判決の事実認定には、所論が指摘するような違法はなく、この点に関する論旨は理由がない。被告人Aの弁護人らの控訴趣意第二点(法令の適用の誤り)について所論は要するに、「(一)、被告人Aに対する枉法収賄の公訴事実のうち、収賄の刑の加重をすべき原由たる不正行為事実とこれに対応する各道路交通法違反被告事件の事実(即ち横浜地裁昭和四七年(わ)第一、九四二号、同四八年(わ)五〇号、一八九号、四四〇号、五五八号、五六〇号ないし五六三号、八〇五号、一、一七九号、一、三二四号、一、八四三号事件各起訴状の被告人Aに対する各枉法収賄の公訴事実中収賄の刑の加重をすべき原由たる不正行為事実と各道路交通法違反の事実、ただし同四八年(わ)五六三号事件の公訴事実第一、別表番号 二四号、一、八四三号事件各起訴状の被告人Aに対する各枉法収賄の公訴事実中収賄の刑の加重をすべき原由たる不正行為事実と各道路交通法違反の事実、ただし同四八年(わ)五六三号事件の公訴事実第一、別表番号10を除く。)とは、同一の事実であり、ただその行為が同時に数個の罪名に触れる場合であるから、いずれも刑法五四条一項前段の一所為数法の関係にあると解すべく、また(二)、同地裁昭和四八年(わ)五六三号事件起訴状公訴事実第一別表番号10の道路交通法違反の事実と、これに対応する同年(わ)七八九号事件起訴状公訴事実第一の枉法収賄の事実も前記(一)と同様一所為数法の関係にあると解すべきところ、検察官は、右(一)、(二)の各道路交通法違反の所為と、これに基因する各枉法収賄の所為を併合罪として、同時に(前記(一)につき)、または起訴日を変えて(前記(二)につき)二重起訴した違法を犯した。 八年(わ)五六三号事件起訴状公訴事実第一別表番号10の道路交通法違反の事実と、これに対応する同年(わ)七八九号事件起訴状公訴事実第一の枉法収賄の事実も前記(一)と同様一所為数法の関係にあると解すべきところ、検察官は、右(一)、(二)の各道路交通法違反の所為と、これに基因する各枉法収賄の所為を併合罪として、同時に(前記(一)につき)、または起訴日を変えて(前記(二)につき)二重起訴した違法を犯した。即ち、起訴状の公訴事案、罪名、罰条の通常の記載例からすれば、検察官は右両罪をいずれも併合罪の関係にあるものとして起訴したことが明瞭である。したがつて右二重に起訴された道路交通法違反被告事件は、すべて公訴棄却されるべきであつたのに、これを棄却せず、検察官の起訴には二重起訴の違法はないと判示した原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の適用の誤りがあり、右誤りはひいては憲法三一条三九条にも違反するというべきである。また特に前記(二)の事件については、当初枉法収賄で起訴した場合に、当該道路交通法違反被告事件を追起訴せずに、枉法収賄を訴因変更することは許されるが、本件のように、まず道路交通法違反で起訴し、その後追起訴によることなく、訴因変更手続により枉法収賄を審判の対象とすることは、右二個の訴因の間に同一性が認められないから許されないというべきであり、この点につき、訴因変更 路交通法違反で起訴し、その後追起訴によることなく、訴因変更手続により枉法収賄を審判の対象とすることは、右二個の訴因の間に同一性が認められないから許されないというべきであり、この点につき、訴因変更の手続で足りるとする原判決の考え方も誤りである。」というのである。そこで検討するに、同一の起訴状に数個の訴因を記載するにあたり、それが科刑上一罪の関係にある場合には、これを一つにまとめて記載し、併合罪の関係にある場合にはこれに別個の番号を付して記載するのが実務の一般例ではあるけれども、理論的には右のような記載方法は訴因の明示上本質的なことではないというべきであり、記録によれば、検察官は原審第一一回公判期日において、所論指摘の各道路交通法違反の事実と、これらに対応する各枉法収賄の事実が一所為数法の関係に立つものである旨明瞭に釈明していることが認められ、これによつても、検察官が右両罪を一所為数法の関係にあるものとして起訴したものであることが明らかであるから、単に起訴状の記載形式のみから、検察官は、一所為数法の関係にある右両罪を併合罪として起訴したものであつて、これには二重起訴の違法があるとする所論は採用することができない。 道路交通法違反の事実と、これらに対応する各枉法収賄の事実が一所為数法の関係に立つものである旨明瞭に釈明していることが認められ、これによつても、検察官が右両罪を一所為数法の関係にあるものとして起訴したものであることが明らかであるから、単に起訴状の記載形式のみから、検察官は、一所為数法の関係にある右両罪を併合罪として起訴したものであつて、これには二重起訴の違法があるとする所論は採用することができない。また所論は前記(二)の事件につき、当初道路交通法違反で起訴された事件について追起訴によることなく、訴因変更手続により、枉法収賄を審判の対象とすることは両者の間に訴因の同一性がないから許されない旨主張するけれども、所論指摘の道路交通法違反の事実は、それに対応する枉法収賄の事実のうち収賄の刑の加重をすべき原由たる不正行為事実と同一の事実であつて、右両罪が一所為数法の関係にあることは原判決が判示するとおりであるから、右道路交通法違反の訴因と枉法収賄の訴因との間に公訴事実の同一性のあることが明らかであつて、原判決が、検察官のなした追 あつて、右両罪が一所為数法の関係にあることは原判決が判示するとおりであるから、右道路交通法違反の訴因と枉法収賄の訴因との間に公訴事実の同一性のあることが明らかであつて、原判決が、検察官のなした追起訴を訴因変更の請求とみて、右両訴因をともに審判の対象としたことに何ら違法はなく、この点に関する所論も採用することができない。論旨は理由がない。被告人Aの弁護人らの控訴趣意第三点(事実誤認、法令の適用の誤り)について所論は要するに、「(一)、原判決は、その(罪となるべき事実)第三において、被告人AがDから、Bに不正の手段で自動車運転免許証を取得させてもらいたい旨請託を受け、自己の職務に関し現金三万円の賄賂を収受した旨認定したが、右事実認定は誤りである。即ち被告人Aは、原判示第三の日時ごろ同判示場所において、その当時親しく交際していたDから、同人の勤務先の横浜地方裁判所の名が印刷された封筒を受取つたことがあるが、その際その中にはビール券か映画券でもはいつていると思つていたところ、後日その中をのぞいてみると、一万円札が何枚かはいつているのが見えたので、すぐ返還しようと思い、その数日後Dの職場の同僚を介して同人にこれを返還したものであつて、被告人Aには賄賂領得の犯意は全くなかつたから、右事実について同被告人は無罪である。 際していたDから、同人の勤務先の横浜地方裁判所の名が印刷された封筒を受取つたことがあるが、その際その中にはビール券か映画券でもはいつていると思つていたところ、後日その中をのぞいてみると、一万円札が何枚かはいつているのが見えたので、すぐ返還しようと思い、その数日後Dの職場の同僚を介して同人にこれを返還したものであつて、被告人Aには賄賂領得の犯意は全くなかつたから、右事実について同被告人は無罪である。(二)、原判決は、その(罪となるべき事実)第五、同別表第三、番号10ないし16の事実(被告人Aに対するCからの饗応接待による枉法収賄の事実)を認定したが、右事実認定は誤りである。即ち被告人Aは、Cとは昭和二八年ごろから二年間ぐらい交際があつたところ、同四四年自己が勤務する自動車運転免許試験場で同人と偶然再会し、以後しばしば飲食店等で同人から御馳走になる程親しく付合つていたものであり、本件の前記飲食の接待も、同人から、同人経営の あつたところ、同四四年自己が勤務する自動車運転免許試験場で同人と偶然再会し、以後しばしば飲食店等で同人から御馳走になる程親しく付合つていたものであり、本件の前記飲食の接待も、同人から、同人経営の会社の慰安会、忘年会、暑気払いや、当時Cが同僚のEから請負つていた建物建築の打ち合せに来てほしいということで誘われ、自分もそのつもりで参加したものであり、これが自動車免許証不正取得に対する報酬であるとは寸毫も考えていなかつたのであつて、被告人Aは自己の職務に関し饗応接待を受けたものではないから、右事実についても、同被告人は無罪である。(三)、原判決は、前記(一)のとおりの経緯でDに返還された現金三万円について、被告人Aに対し追徴を言い渡したが、右三万円の追徴はDに対して言い渡しをすべきであるから、原判決には刑法一九条の二の適用を誤つた違法がある。」というのである。そこで記録を調査し、当審における事実取調の結果をも加えて所論(一)ないし(三)について順次検討する。(一)、 (所論(一)について)原判決が同判示第三の事実につき掲げる各証拠(ただし原審第二回公判調書中の被告人Aの供述記載部分ならびに同被告人の検察官に対する昭和四八年二月九日付供述調書については、後記信用しない部分を除く。)を総合すれば、所論の賄賂領得の犯意の点を含め、原判示第三の事実を優に認めることができ、原判決の認定に事実誤認があるものとは考えられない。 一)ないし(三)について順次検討する。(一)、 (所論(一)について)原判決が同判示第三の事実につき掲げる各証拠(ただし原審第二回公判調書中の被告人Aの供述記載部分ならびに同被告人の検察官に対する昭和四八年二月九日付供述調書については、後記信用しない部分を除く。)を総合すれば、所論の賄賂領得の犯意の点を含め、原判示第三の事実を優に認めることができ、原判決の認定に事実誤認があるものとは考えられない。すなわち、原審第二回、同第八回各公判調書中の被告人Aの供述記載部分および当審公判廷における同被告人の供述中には所論(一)の主張に添う部分があるけれども、前記各証拠を総合すると、被告人Aは、昭和四八年三月ころ、以前から親交のあつた横浜地方裁判所書記官Dを介し、そのころ同人と交際していたFから同人経営の料亭「G」の落成祝の名 う部分があるけれども、前記各証拠を総合すると、被告人Aは、昭和四八年三月ころ、以前から親交のあつた横浜地方裁判所書記官Dを介し、そのころ同人と交際していたFから同人経営の料亭「G」の落成祝の名目で招待を受け、自己の職場の同僚で自動車運転免許試験試験官のHも連れて出席したところ、その席上DからFの知合いのIについて不正の手段により自動車運転免許試験に合格させてもらいたい旨頼まれてこれを引受け、同人が不正に運転免許証を取得した(原判示第一、同別表第一番号26)後の同年五月、同人から合格祝という名目で、同人の自動車免許試験の技能試験を担当した前記Hとともに飲食の接待を受けたうえ、その際Dを介してIから現金五万円の謝礼を受け取り、そのうち二、三万円を封筒に入れ、これをDを介してHに渡していること、BはFの知合いであつたところから右Iの合格祝に出席し、被告人AやHとも同席したが、その席でFから金を出せばDの世話で運転免許証を取得できる旨聞いたところがら、同年六月中旬ごろFに対し謝礼金一〇万円を渡して免許証の不正取得の世話をしてもらいたい旨申し入れ、Fはその旨をDに伝え、右一〇万円を同人に渡し、同人は同年六月二三日ごろ被告人Aに対し電話でその旨を申し入れたうえ、その日Bを伴い、右一〇万円のうちの三万円を封筒に入れて持ち、被告人Aの勤務先である運転免許試験場に赴き、まずBを被告人Aに引き合わせたあと、自分だけ同被告人の執務机のところに行き、前記三万円在中の封筒を中身の説明をせずに同被告人に渡したこと、Bはその日同被告人に勧められて運転免許試験の学科試験を特段の不正行為なしに受験してみたが、法令試験には合格したものの、構造試験には合格できなかつたところから、被告人AはBに同月二五日に再び受験するように指示し、再受験によつても合格点に達しないとき 試験場に赴き、まずBを被告人Aに引き合わせたあと、自分だけ同被告人の執務机のところに行き、前記三万円在中の封筒を中身の説明をせずに同被告人に渡したこと、Bはその日同被告人に勧められて運転免許試験の学科試験を特段の不正行為なしに受験してみたが、法令試験には合格したものの、構造試験には合格できなかつたところから、被告人AはBに同月二五日に再び受験するように指示し、再受験によつても合格点に達しないとき を特段の不正行為なしに受験してみたが、法令試験には合格したものの、構造試験には合格できなかつたところから、被告人AはBに同月二五日に再び受験するように指示し、再受験によつても合格点に達しないときは不正の取扱いをして同人を合格させようと考えていたところ、同人はその当日原判示第七の五の傷害事件で逮捕され、その後勾留されてしまつたため受験できなかつたこと、被告人Aは同月二五日ころ前記封筒に一万円札が三枚くらい在中していることを確認したこと、被告人Aは、Bが再受験に出て来なかつたことから、翌二六日ころB宅に電話したが、不在で連絡かとれず、その二、三日後再び電話したところ、同人の妻から「夫(B)は店の若い者のけんかのことで警察に呼ばれている。新聞にも出ている。」と言われたところから、自己の警察官としての経験から、同人がけんかの事件で警察の取調を受けているものと考え、直ちにDに電話をかけ、「Bがけんかで警察によばれているらしい。まずいし、まだ試験も終つていないんだから、あの金は返すよ。」と伝え、同人からその必要はないと言われたものの、その数日後Dの勤務先の知人を通じて右三万円を返還したこと、Bはその後同年八月六日ころ保釈になつたが、間もなくFに対し自分の免許証の不正取得の話を持ち出し、同人は同月一六日ころDを介し被告人A、E、Hら試験官らを前記「G」に招待して飲食させ、Bも同席してその費用の一部として三万円ぐらいを負担したこと、Bはその後希望どおり運転免許証を不正取得した(原判示第一、同別表第一、番号27)が、同年一〇月初めごろ被告人Aら前記試験官らを飲食店に招待して合格祝をしたこと、以上の事実が認められ、右事実によれば、被告人Aは、Dから頼まれて、まずIに運転免許証を不正取得させ、その際同人からその謝礼の趣旨で飲食の招待を受けたり現金を受取つ 飲食店に招待して合格祝をしたこと、以上の事実が認められ、右事実によれば、被告人Aは、Dから頼まれて、まずIに運転免許証を不正取得させ、その際同人からその謝礼の趣旨で飲食の招待を受けたり現金を受取つており、その後一か月も経たないうちに、再びDから前と同じようにBについての運転免許証の不正取得を頼まれてこれを了承し、Dから前記封筒を受け取つたものであつて、被告人Aは、右封筒を受取つた際Iのときの経験から、右封筒の中にはBの運転免許証の不正取得に関する謝礼として、現金ないしこれに相当するものが同封されているものと考えていたと認めるのが相当であり、同被告人において、その後同封されているものが現金三万円であることを確認したことは前認定のとおりであるから、被告人Aに収賄の故意があつたと認めるに十分であり、被告人Aが原判示第三のとおり、Dから被告人Bについて免許証不正取得の請託を受け、その謝礼として賄賂三万円を収受した事実は明らかであるといわなければならない。 て、現金ないしこれに相当するものが同封されているものと考えていたと認めるのが相当であり、同被告人において、その後同封されているものが現金三万円であることを確認したことは前認定のとおりであるから、被告人Aに収賄の故意があつたと認めるに十分であり、被告人Aが原判示第三のとおり、Dから被告人Bについて免許証不正取得の請託を受け、その謝礼として賄賂三万円を収受した事実は明らかであるといわなければならない。前記原審第二回、第八回各公判調書中被告人Aの供述記載部分、当審公判廷における同被告人の供述、ならびに被告人Aの検察官に対する昭和四八年二月九日付供述調書中、前記認定に反する部分は、いずれも他の関係証拠に照らして信用することができない。所論は、被告人AはDから封筒を受取つた翌日その中に現金がはいつていることを知つたので、直ちにこれをDに返還したものであり、これは同被告人に賄賂領得の犯意が全然なかつたことの証左であるというのであるが、同被告人が封筒の中に現金三万円が在中していることを確認したのは六月二五日ごろであり、これを返還しようと決意したのはその二、三日後であり、その理由も、Bが法令試験の再受験に出頭せず、刑事事件で警察の取調をうけていて、連絡がとれないところから、受け取つた金は一旦同人に返 ごろであり、これを返還しようと決意したのはその二、三日後であり、その理由も、Bが法令試験の再受験に出頭せず、刑事事件で警察の取調をうけていて、連絡がとれないところから、受け取つた金は一旦同人に返しておいた方がよいと判断したためであつて、Dから受領したものが現金だから収賄の罪にふれることを恐れてこれを返還したものとは認められないことは、前記認定事実によつて明らかであるから、所論は採用できない。その他記録を調査し、当審における事実取調の結果を参酌しても、右認定を左右するに足りる証拠は存しない。この点に関する論旨は理由がない。(二)、 (所論(二)について)原判決が、同判示第五、同別表第三、番号10ないし16の事実につき掲げる各証拠を総合すれば、所論の枉法収賄の犯意の点を含め、原判示第五、同別表第三、番号10ないし16の事実を優に認めることができ、原判決の認定に事実誤認があるものとは考えられない。原審第六回、第七回、第一八回各公判調書中の被告人Aの供述記載部分、原審第一二回、第一六回各公判調書中のCの供述記載部分、被告人Aの当審公判廷における供述中には所論(二)に添う部分があるけれども、前記各証拠を総合すると、被告人Aは、昭和二八年ころから二年間戸塚警察署管内の交番に勤務していたところ、Cと知合い、その後一時交際は中断したが、同四四年ころ自動車運転免許試験場で同人と偶然再会したことから交際が復活し、以後時折同人から誘われて、横浜市内の寿司屋などで飲食させてもらう間柄になつていたものであるところ、同人から頼まれ、同四五年二月ころ同人の知合いのJに運転免許証を不正取得させた(原判示第一、同別表第一、番号12)こと、その後Cは、Jから「試験官に渡してくれ。 内の交番に勤務していたところ、Cと知合い、その後一時交際は中断したが、同四四年ころ自動車運転免許試験場で同人と偶然再会したことから交際が復活し、以後時折同人から誘われて、横浜市内の寿司屋などで飲食させてもらう間柄になつていたものであるところ、同人から頼まれ、同四五年二月ころ同人の知合いのJに運転免許証を不正取得させた(原判示第一、同別表第一、番号12)こと、その後Cは、Jから「試験官に渡してくれ。」と言われ現金を受取つたので、その旨を被告人Aに伝えたところ、同被告人からその受領を拒否 運転免許証を不正取得させた(原判示第一、同別表第一、番号12)こと、その後Cは、Jから「試験官に渡してくれ。」と言われ現金を受取つたので、その旨を被告人Aに伝えたところ、同被告人からその受領を拒否されたので、「俺が金を預つておくから、Aさんが飲みたくなつたら、いつでも声をかけて下さい。」と言つて右金員を預かり、その後右金員を使つて被告人Aと飲食遊興したこと、Cは右Jの免許証の不正取得が成功して以来、自己の親族、仕事の取引相手などに対する免許証の不正取得をしばしば被告人Aに依頼するようになり、免許証取得希望者から不正取得の申込みを受けた都度、被告人Aら試験官をキヤバレー、寿司屋などに誘い、その席で免許証取得希望者を同被告人ら試験官に引き合わせていたこと、Cは昭和四五年一〇月ころ被告人Aら試験官を横浜市内の料亭に泊りがけで招待したのを初めとして、その後も原判示第五、同別表第三、番号10ないし16の事実(以下「本件饗応接待」という)を含め、同人らを熱海の旅館等に前後七、八回ぐらいにわたり招待したほか、横浜市内のキヤバレーなどにもしばしば誘い、遊興させていたこと、本件饗応接待は、多くの場合Cが免許証不正取得者らから謝礼金を受取つたあと、自ら熱海の旅館での宴会などを計画設営したうえ、被告人Aに対し電話で、「免許証をとつた人も出るから、出て下さい。」とか、「免許がおかげでとれたことでもあるので、これで(謝礼金で)一緒に遊びに行こう。」などと言つて誘い(原判決別表第三、番号10、11、16)、あるいは被告人Aの都合を聞いたうえ宴会の日取を決め(同番号12、15)、時には当該免許証取得者が試験に合格したあと、被告人AからCに対し、「熱海に行くか。E、Kも行くと言つているから。」と暗に饗応接待を求めることもあつた(同番号13)こと、本件饗応接待の宴席 、「免許がおかげでとれたことでもあるので、これで(謝礼金で)一緒に遊びに行こう。」などと言つて誘い(原判決別表第三、番号10、11、16)、あるいは被告人Aの都合を聞いたうえ宴会の日取を決め(同番号12、15)、時には当該免許証取得者が試験に合格したあと、被告人AからCに対し、「熱海に行くか。E、Kも行くと言つているから。」と暗に饗応接待を求めることもあつた(同番号13)こと、本件饗応接待の宴席 15)、時には当該免許証取得者が試験に合格したあと、被告人AからCに対し、「熱海に行くか。E、Kも行くと言つているから。」と暗に饗応接待を求めることもあつた(同番号13)こと、本件饗応接待の宴席にはC、L(C方に出入りし、白ら運転免許証を不正取得するとともに、他の免許証取得希望者をCに紹介する立場にあつた。)、被告人A、E、K、Hら(いずれも試験官)が多数回出席し、たまに当該免許証不正取得者らも同席することがあり、その場合同人らは宴席で被告人AやEらに対し、「お世話になりました。」とお礼を言い、被告人Aらも「事故を起さないように気をつけてやれ。」などと答えていること、旅館に対する支払いは、宿泊代、宴会費、芸者を呼んだ費用(被告人Aら試験官は宴会のあと、殆ど例外なく芸者などと同表していた。)を合わせ、一回あたり総額一〇万円ないし一五万円のことが多く、二〇万円をこえることもあつたが、その支払いはCが主に免許証不正取得者らから受取つた謝礼金から支出し、被告人Aら試験官が費用の一部を負担したことは一度もなく、同人らもそれを当然のこととして了解していたこと、被告人AはCを通じて本件饗応接待を受けていたとほぼ同じ時期に、Bの依頼により多数の免許証取得希望者を不正に試験に合格させ、その謝礼として同人を介して多額の賄賂(現金)を収受していたこと(原判示第四、同別表第二の各事実)、以上の事実が認められ、右事実によれば、Aは、当該運転免許証取得者から試験官に対する謝礼金がCのもとに交付されており、同人がその金員をもつて被告人Aら試験官を饗応接待したものであることを認識していたこと、即ち被告人Aには収賄の故意があつたと認めるに十分であり、同被告人が原判示第五、同別表第三、番号10ないし16のとおり饗応接待を受け、自己の職務に関して賄賂を収受したものである とを認識していたこと、即ち被告人Aには収賄の故意があつたと認めるに十分であり、同被告人が原判示第五、同別表第三、番号10ないし16のとおり饗応接待を受け、自己の職務に関して賄賂を収受したものであることは明白であるといわなければならない。 には収賄の故意があつたと認めるに十分であり、同被告人が原判示第五、同別表第三、番号10ないし16のとおり饗応接待を受け、自己の職務に関して賄賂を収受したものである とを認識していたこと、即ち被告人Aには収賄の故意があつたと認めるに十分であり、同被告人が原判示第五、同別表第三、番号10ないし16のとおり饗応接待を受け、自己の職務に関して賄賂を収受したものであることは明白であるといわなければならない。前掲各証拠(原審第六回、第七回、第一八回各公判調書中の被告人Aの供述記載部分、原審第一二、第一六回各公判調書中のCの供述記載部分、被告人Aの当審公判廷における供述)中前記認定に反する部分はいずれも他の関係証拠に照らして信用することができない。所論は、本件は被告人AがCから同人経営の会社の慰安会、忘年会、暑気払いということで個人的に誘われ、自分もそのつもりで同会社の者大勢とマイクロバスに乗るなどして参加したもので、これが免許証不正取得に対する報酬であるとは全く考えていなかつた旨強調するのであるが、前記各証拠によれば、マイクロバスで熱海に出かけたのは昭和四六年の二月か三月ころのことであり、また同年八月末ごろにはCから慰安旅行ということで熱海に誘われて参加したことがあるけれども、これらはいずれも本件饗応接待とは別の事案であることが認められるのみならず、本件の饗応接待の宴会には、被告人AのほかにそれまでCとは特段の付合いのなかつたE、K、Hら運転免許証の不正取得に関与した他の試験官も出席し、同人らが宴会終了後芸者と同衾した費用までCから支払われていること、その他饗応接待への誘い方、その回数等の前記認定事実に照らすと、所論はとうてい採用できない。その他記録を調査し、当審における事実取調の結果を参酌しても、右認定を左右するに足りる証拠は存しない。この点に関する論旨も理由がない。(三)、 (所論(三)について)被告人AがDから収受した賄賂現金三万円を同人に返還したことは前記(一)で認定したとおりであつて、このよう に足りる証拠は存しない。この点に関する論旨も理由がない。(三)、 (所論(三)について)被告人AがDから収受した賄賂現金三万円を同人に返還したことは前記(一)で認定したとおりであつて、このような場合追徴の言い渡しは収賄者に対してなすべきでなく、返還を受けた贈賄者に対してなすべきである(最高裁判所昭和二九年七月五日決定、刑集八巻七号一〇三五頁参照。 ことは前記(一)で認定したとおりであつて、このよう に足りる証拠は存しない。この点に関する論旨も理由がない。(三)、 (所論(三)について)被告人AがDから収受した賄賂現金三万円を同人に返還したことは前記(一)で認定したとおりであつて、このような場合追徴の言い渡しは収賄者に対してなすべきでなく、返還を受けた贈賄者に対してなすべきである(最高裁判所昭和二九年七月五日決定、刑集八巻七号一〇三五頁参照。)から、原判決が被告人Aに対し原判示第三の賄賂三万円相当額の追徴を言い渡したのは、刑法一九七条の五の適用を誤つたものであり、右誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決のうち被告人Aに関する部分は破棄を免れない。この点に関する論旨は理由がある。被告人Bの弁護人らの控訴趣意第一(訴訟手続の法令違反)について所論は要するに、被告人Bに対する横浜地裁昭和四八年(わ)五六〇号、五六二号、一、一七九号、一、三二四号、一、八四三号各被告事件における当初の訴因は、いずれも共謀による枉法収賄であつたところ、検察官は、原審第一八回公判期日において右各訴因をいずれも共謀による贈賄に予備的に変更する旨の請求をなし、原裁判所は同期日に右請求を許可する決定をしたが、検察官は関係証拠によつては、とうてい認定することのできない共謀による枉法収賄の訴因を審理の最後まで維持し続けたあげく、証拠調が実質的に終了した原審第一八回公判期日において、極めて恣意的に右訴因を共謀による贈賄の訴因に予備的に変更する旨請求したものであつて、このような身勝手な検察官の態度は、被告人の防禦を尽させるためのものである訴因制度を根底から破壊するものであり、そのため被告人Bは、予備的訴因に対する実質的防禦活動を全くなしえなかつたものである。したがつて、右のような訴因の予備的変更の請求は許されないものであるのに、原裁判所がこれを許 破壊するものであり、そのため被告人Bは、予備的訴因に対する実質的防禦活動を全くなしえなかつたものである。したがつて、右のような訴因の予備的変更の請求は許されないものであるのに、原裁判所がこれを許可したのは違法であるところ、原判決は右許可決定をした予備的訴因を認定しているので、右違法な許可決定が原判決に影響を及ぼすことは明らかであり、原判決は当然破棄されるべきであるというのである。そこで検討するに、検察官が検察官側の立証活動が殆ど終了した原審第一八回公判期日に予備的訴因の変更請求をして許可され、原判決が右予備的訴因を認定し、被告人Bに対し有罪判決をしたことは、所論のとおりである。 がこれを許可したのは違法であるところ、原判決は右許可決定をした予備的訴因を認定しているので、右違法な許可決定が原判決に影響を及ぼすことは明らかであり、原判決は当然破棄されるべきであるというのである。そこで検討するに、検察官が検察官側の立証活動が殆ど終了した原審第一八回公判期日に予備的訴因の変更請求をして許可され、原判決が右予備的訴因を認定し、被告人Bに対し有罪判決をしたことは、所論のとおりである。しかしながら、刑事訴訟法三一二条によれば、訴因の追加、変更をなすべき時期については格別の制限がないものと解すべきところ、記録を調査するに、原裁判所はその第一八回公判期日において所論の如き検察官の予備的訴因の変更請求に対し、被告人Bの弁護人より「右請求に異議はない。」旨の意見を徴したうえ、右請求に対する許可決定をなし、直ちに被告人Bに対し、右予備的訴因に対する認否を求め、同被告人は「すべて事実は認めます。」と陳述していることが認められるのであつて、検察官の右訴因の変更請求が実質的証拠調が終了した段階で行なわれたものであり、それまでの間に検察官において訴因の変更請求をなしうる機会があつたとしても、右予備的訴因と本位的訴因とは、被告人BをAの収賄についての共同正犯とみるべきか、同人に対する贈賄としての刑事責任を負わせるべきかの差異にすぎず、その点の判断となる証拠は全く同一であつて、右訴因変更請求の段階ですべて取調べ済みであつたこと(なお本件は訴因変更の前と後で公訴事実が同一であることはいうまでもなく、変更前の訴因についての証拠を、変更後の訴因についての証拠として用 であつて、右訴因変更請求の段階ですべて取調べ済みであつたこと(なお本件は訴因変更の前と後で公訴事実が同一であることはいうまでもなく、変更前の訴因についての証拠を、変更後の訴因についての証拠として用いることは、当該証拠が、特に立証趣旨を制限して採用した証拠であるなど特段の事情が認められない本件においては、なんら違法ではない。)、前記のような訴因の変更請求に対する弁護人の態度、変更後の訴因に対する被告人の意見陳述の内容に鑑みれば、被告人の防禦活動に支障があつたものとは認められず、検察官の予備的訴因の変更請求を許可した原裁判所の決定は、適法かつ相当であることが明らかである。論旨は理由がない。職権をもつて調査すると、原判決は、被告人Bの原判示所為に法令を適用するに当り、原判示第七の五の傷害罪の刑(懲役刑を選択のうえ、三犯の加重を施したもの。 因の変更請求に対する弁護人の態度、変更後の訴因に対する被告人の意見陳述の内容に鑑みれば、被告人の防禦活動に支障があつたものとは認められず、検察官の予備的訴因の変更請求を許可した原裁判所の決定は、適法かつ相当であることが明らかである。論旨は理由がない。職権をもつて調査すると、原判決は、被告人Bの原判示所為に法令を適用するに当り、原判示第七の五の傷害罪の刑(懲役刑を選択のうえ、三犯の加重を施したもの。)に併合罪加重をする際、刑法一四条を適用していない(共同被告人A、Eらに対しては同条を適用している。)ことが認められ、右は法令の適用を誤つたものであつて、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らがである。原判決のうち被告人Bに関する部分も、この点において破棄を免れない。よつて、被告人Aの弁護人らの控訴趣意第四点(量刑不当)および被告人Bの弁護人らの控訴趣意第二(量刑不当)に対する判断はいずれも後に自判する際に譲り、刑事訴訟法三九七条一項、三八〇条により、原判決中、被告人両名に関する部分を破棄したうえ、同法四〇〇条但書に従い、当裁判所において、次のとおり自判する。原判決が認定した事実(ただし(イ)、原判決四丁表終りから二行目に「66ないし69、71」とあるのは「66ないし71」の誤記であり、(ロ)、同別表第一、番号70、(五)技能欄の(2)年月日欄および(3)方法欄に記載がないのは、(2)の欄に「四 表終りから二行目に「66ないし69、71」とあるのは「66ないし71」の誤記であり、(ロ)、同別表第一、番号70、(五)技能欄の(2)年月日欄および(3)方法欄に記載がないのは、(2)の欄に「四七・六・一四」と、(3)の欄に「別紙二の1」と各記載すべきところ、これの記載洩れであり、したがつて右箇所に右のように記入して訂正すべきものと認める。)に原判決が適用した法令を適用し(被告人両名につき科刑上一罪の処理、刑種の選択、併合罪加重の処理を含むほか、被告人Bにつき累犯加重の処理を含む。ただし同被告人に対する併合罪加重にあたつては、前記説示のとおり、原判示第七の五の傷害罪の刑((懲役刑を選択のうえ、三犯の加重を施したもの))に併合罪加重をするにあたり、刑法一四条の制限内で加重すべきである。また原判決八三丁裏一行目に「1ないし5」とあるのは、「2ないし5」の、同八六丁裏七行目に「判示第七の一ないし四の罪」とあるのは、「判示第七の一ないし四(ただし第七の二の1ないし3を除く)の各罪」の各誤記と認める。 する併合罪加重にあたつては、前記説示のとおり、原判示第七の五の傷害罪の刑((懲役刑を選択のうえ、三犯の加重を施したもの))に併合罪加重をするにあたり、刑法一四条の制限内で加重すべきである。また原判決八三丁裏一行目に「1ないし5」とあるのは、「2ないし5」の、同八六丁裏七行目に「判示第七の一ないし四の罪」とあるのは、「判示第七の一ないし四(ただし第七の二の1ないし3を除く)の各罪」の各誤記と認める。)、その所定刑期の範囲内において被告人両名を処断すべきものである。そこで被告人両名の犯情について考察する。(一) 被告人Aについて同被告人に対する事実関係は、原判決が認定判示するとおり、神奈川県警察本部運転免許課自動車運転免許試験場の学科試験の試験官であつた同被告人が、昭和四五年一月ごろから同四七年一〇月ごろまでの間に、古くからの飲み友達であつたC、同人の紹介で運転免許を不正に取得させ、その後付合うようになつたL、通称横浜西交通裁判所に出張勤務していたころ交通事件即決裁判手続の仕事を通じて知り合つた裁判所書記官D、同人の紹介で運転免許証を不正に取得させ、その後付合うようになつたB、マージヤン遊びの仲間であつたMらを介して、自動車運転免許証の たころ交通事件即決裁判手続の仕事を通じて知り合つた裁判所書記官D、同人の紹介で運転免許証を不正に取得させ、その後付合うようになつたB、マージヤン遊びの仲間であつたMらを介して、自動車運転免許証の不正取得を希望してきた延べ九一名の者を、原判示第一のように不正な方法により適性試験に、そのうち七八名を学科試験にそれぞれ合格させ、三三名についてさらに技能試験官らに働きかけ、同試験にも合格させたうえ、合格者らのうち三〇名をこえる者から不正行為をしたことに対する謝礼として前記C、D、B、Lらを介して多額の現金を受取り、あるいは多数回にわたり饗応接待を受けた(合計二六回。饗応接待分を含め、その利得額は一〇〇万円をこえる。)というのであつて、被告人Aの右一連の犯行は公務員たる試験官の地位、権限を最大限に悪用したものであり、腐敗、乱脈を極めた悪質なものであるというほかなく、また原判示第一の各犯行は自動車運転の資格のない者の無免許運転を形式上合法化させ、その結果多数の無資格者をして公道等で自動車の運転をさせ、事故発生の危険を実質的に生ぜしめたものであること、および本件一連の犯行が発覚し新聞等に報道されたことにより一般社会人に与えた自動車運転免許制度に対する不信感等、本件各犯行がもたらした結果も重大であるといわなければならない。 脈を極めた悪質なものであるというほかなく、また原判示第一の各犯行は自動車運転の資格のない者の無免許運転を形式上合法化させ、その結果多数の無資格者をして公道等で自動車の運転をさせ、事故発生の危険を実質的に生ぜしめたものであること、および本件一連の犯行が発覚し新聞等に報道されたことにより一般社会人に与えた自動車運転免許制度に対する不信感等、本件各犯行がもたらした結果も重大であるといわなければならない。さらにまた、本件各犯行の動機は、もつぱら自己の遊興飲食等の利益を得ることを目的としたものであつて、そこには酌量すべき余地は些かもなく、そのほか被告人Aは本件各犯行のすべてに主犯格として加担しており、その点で本件免許証に関する犯罪に関連した他の共犯者に比して犯情は重いものがあること等の諸点を考慮すると、同被告人の罪責は重大である。しかしその反面、本件認定にかかる同被告人の収賄額は主位的訴因のそれの四分の一程度にすぎないこと、同被告人 他の共犯者に比して犯情は重いものがあること等の諸点を考慮すると、同被告人の罪責は重大である。しかしその反面、本件認定にかかる同被告人の収賄額は主位的訴因のそれの四分の一程度にすぎないこと、同被告人が本件犯行に至つたきつかけは前記のような親密な関係にあつたCからJに対し免許証を不正取得させてもらいたい旨頼まれ、これを断り切れなかつたためであり、同被告人には当初から職務上不正の利益を得る目的はなかつたこと、同被告人は昭和一七年神奈川県巡査を拝命して以来、本件犯行に至るまで約三〇年間もの長期間まじめに警察官として勤務し、その間六回以上各種の表彰を受け、職場の同僚等の信頼も得ていたこと、その他同被告人の保釈後の生活態度、家庭の状況、反省悔悟の状況等同被告人に有利な諸点も認められるので、これらいつさいの情状を考慮したうえ、前記刑期の範囲内で、同被告人を懲役四年に処する。(二) 被告人Bについて同被告人に対する事実関係は、原判決が認定判示するとおりであつて、同被告人が、(1)、原判示第一、同別表第一、番号27のとおり、昭和四五年一〇月自ら運転免許証を不正に取得したほか、同表番号8、9、29ないし33、51ないし56、72、86ないし91記載のとおり、同年一〇月ごろから同四七年六月ごろまでの間に前後二〇回にわたり、免許証取得希望者をAに紹介し、同人らと共謀のうえ、いずれも免許証を不正に取得させ、原判示第七の一および二、同別表第五のとおり、前後一六回にわたり、AおよびEに免許証不正取得に関し賄賂を供与し、(2)、原判示第七の三、(一)ないし(三)のとおり、昭和四七年七月および八月中三回にわたり昭和四七年度第四回千葉競輪等に関し、申し込み金額合計七二七万六、〇〇〇円のいわゆる「呑み行為」をし、(3)、原判示第七の四のとおり、同判示日時、場所において 謀のうえ、いずれも免許証を不正に取得させ、原判示第七の一および二、同別表第五のとおり、前後一六回にわたり、AおよびEに免許証不正取得に関し賄賂を供与し、(2)、原判示第七の三、(一)ないし(三)のとおり、昭和四七年七月および八月中三回にわたり昭和四七年度第四回千葉競輪等に関し、申し込み金額合計七二七万六、〇〇〇円のいわゆる「呑み行為」をし、(3)、原判示第七の四のとおり、同判示日時、場所において 、昭和四七年七月および八月中三回にわたり昭和四七年度第四回千葉競輪等に関し、申し込み金額合計七二七万六、〇〇〇円のいわゆる「呑み行為」をし、(3)、原判示第七の四のとおり、同判示日時、場所において賭場を開設し、十数名の賭客を集めて花札賭博をさせ、その勝者などから寺銭名下に金銭を徴して利を図り、(4)、原判示第七の五のとおり、同判示の日時、場所において、暴力団構成員ら多数と共謀のうえ、同組員の一名が組の統制を乱したとして同人に同判示のような暴行を加えて同判示のような傷害を負わせ、(5)、原判示第七の六のとおり、同判示日時、場所において無免許で普通乗用車を運転したというのである。関係証拠によれば、前記(1)の各犯行につき、被告人Bはまず、F、Dを介してAに免許証の不正取得を申込み、自ら十数万円を支出(うち三万円がDよりAに賄賂として供与された。)して免許証を取得したが、その体験を通してAを中心とする免許証不正取得の仕組みを知るや、自らもこれに介入して利益を得ようと考え、その後間もなく同人に会い、「免許証取得希望者を募つてくるので、よろしく頼む。」旨申し入れて同人の承諾を得たうえ、自己の輩下の者などに捜させた免許証取得希望者を次々とAのもとに送り込み、当該希望者が不正取得に成功すると、その都度謝礼金として一五万円ないし二五万円を受け取り、その一部をAに供与し、残りを自ら取得し、少なからぬ利益を得ていたものであり、犯行の動機につき斟酌すべき点はなく、その手口、態様は大胆、悪質であり、供与された賄賂も巨額であること、被告人Bは本件犯行当時暴力団N組O一家B派の組長の地位にあつたものであり、前記(2)、(3)の犯行は、一般に暴力団の資金集めと目される犯行であり、(4)の犯行は暴力団の組織統制を誇示するために敢行されたものであること、被告人Bには 家B派の組長の地位にあつたものであり、前記(2)、(3)の犯行は、一般に暴力団の資金集めと目される犯行であり、(4)の犯行は暴力団の組織統制を誇示するために敢行されたものであること、被告人Bには、古い罰金刑の前科は別としても、原判決累犯前科欄記載のとおり、昭和三九年四月以降本件犯行までの間に暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、賭博開張図利、強盗幇助等の罪による懲役刑の累犯前科が三件あることなどの事実が認められ、これと相被告人Aの犯情について説示した本件道路交通法違反とこれに対応する贈収賄等の各犯行の罪質、態様、それらが社会に与えた影響等を合わせ考えると、被告人Bの罪責は重大であるといわなければならない。 の前科は別としても、原判決累犯前科欄記載のとおり、昭和三九年四月以降本件犯行までの間に暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、賭博開張図利、強盗幇助等の罪による懲役刑の累犯前科が三件あることなどの事実が認められ、これと相被告人Aの犯情について説示した本件道路交通法違反とこれに対応する贈収賄等の各犯行の罪質、態様、それらが社会に与えた影響等を合わせ考えると、被告人Bの罪責は重大であるといわなければならない。しかし、その反面同被告人は、前記(1)の各犯行が発覚した後、前記暴力団O一家から破門されて、暴力団関係者との交際もなくなつたこと、本件で保釈された後は川崎市所在の不動産会社に勤め平穏に暮しており、本件各犯行を深く反省悔悟していること等同被告人に有利な諸点も認められるので、これらいつさいの情状を考慮したうえ、前記刑期の範囲内で同被告人を懲役三年六月に処する。未決勾留日数の算入(原審における未決勾留日数中被告人Aにつき一五〇日を、同Bにつき一八〇日をそれぞれ右本刑に算入。)につき刑法二一条を、没収(被告人Aが収受した主文掲記のゴルフ道具。)の言い渡しにつき、同法一九七条の五前段を、追徴(被告人Aにつき主文掲記の一〇四万一、七六四円。)の言い渡しにつき、同条後段を、訴訟費用の負担(被告人Bにつき、原審における訴訟費用を負担させない。)につき刑事訴訟法一八一条一項但書を各適用することとする。よつて、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官石橋浩二裁判官藤野豊裁判官鈴木勝利)〔別紙第一〕<記載内容は末尾1添付>〔別紙第二〕<記載 一八一条一項但書を各適用することとする。よつて、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官石橋浩二裁判官藤野豊裁判官鈴木勝利)〔別紙第一〕<記載内容は末尾1添付>〔別紙第二〕<記載内容は末尾2添付><記載内容は末尾1添付><記載内容は末尾2添付><記載内容は末尾3添付>別紙一<記載内容は末尾4添付>別紙二<記載内容は末尾5添付>

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