平成14(わ)83 詐欺

裁判年月日・裁判所
平成14年9月11日 神戸地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-7137.txt

判決文本文4,433 文字)

判決平成14年9月11日神戸地方裁判所平成14年(わ)第83号詐欺被告事件 主文 被告人を懲役1年4月に処する。 未決勾留日数中130日をその刑に算入する。 訴訟費用は全部被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,A及びBと共謀の上,C発行にかかるA名義のD提携クレジットカードを利用し,E株式会社の加盟店でD提携カードが使用可能なBが経営するスナック「F」での飲食を仮装してクレジットカードシステムに基づく立替金請求名下に金員を詐取しようと企て,平成13年12月13日午前2時58分ころから同日午前3時14分ころまでの間,神戸市a区bc丁目d番e号fビル3階所在のスナック「F」において,Aが同店で飲食した事実がないのに,これあるかのように装い,前後8回にわたり,Bが同店に設置された売上げデータギャザリング対応型クレジットオーソリゼーションターミナル端末機にA名義の前記クレジットカードを挿入して同機を作動させ,各回5万円ずつの合計40万円の架空の売上げを入力して,大阪市g区hi丁目j番k号所在のE大阪本社のコンピューターに上記架空の売上データを送信し,上記送信を受けた同社信用管理部部長代理Gをして,上記売上げが正当な取引によるものであって架空売上げ等の不正な取引によるものではなく,クレジットカードシステム所定の方法に基づいて立替金の支払いをなす義務があるものと誤信させ,よって,Gをして上記立替金の支払手続を行わせ,同月28日,Bの経営するスナック「F」の指定口座である神戸市a区lm丁目n番o号H信用金庫I支店の「FB」名義の普通預金口座に上記40万円から手数 せ,よって,Gをして上記立替金の支払手続を行わせ,同月28日,Bの経営するスナック「F」の指定口座である神戸市a区lm丁目n番o号H信用金庫I支店の「FB」名義の普通預金口座に上記40万円から手数料を差し引いた立替金37万2000円を振込入金させ,もって,人を欺いて財物を交付させたものである。 (証拠の標目)(省略)(争点に対する判断) 1 弁護人は,本件では,人に対する欺罔行為が存在せず,それによって財産的処分行為がなされたわけではないから,詐欺罪は成立しない旨主張する。 なるほど,前掲各証拠によると,本件は,売上げデータギャザリング対応型クレジットオーソリゼーションターミナル端末機(以下,「G-CAT」という。)の設置されたE株式会社の加盟店において,D提携カードが利用された事案であるところ,被告人らは,判示のとおり,前後8回にわたり,本件クレジットカードをG-CATに挿入し,合計40万円の架空の売上げデータをEのコンピューターに送信したこと,同コンピューターから上記売上げデータの送信を受けた本件クレジットカードの発行会社であるCのコンピューターは,本件クレジットカードの有効性等を審査してその承認を与えたこと,Eのコンピューターは,上記承認がなされたことから,売上げデータを保存し,締め日である平成13年12月15日までの売上げデータに基づいて,加盟店であるスナック「F」への計算書の作成,振込の手配等の支払手続を行い,判示のとおり,同月28日,「FB」名義の普通預金口座に37万2000円を振込入金したことが認められ,これだけをみれば,被告人らがG-CATを通じて送信した架空の売上げデータは,立替金の振込がなされるまですべてコンピューター上で処理され,その間に人が介在していないのであるから,弁護人の主張するように,人に対する欺 被告人らがG-CATを通じて送信した架空の売上げデータは,立替金の振込がなされるまですべてコンピューター上で処理され,その間に人が介在していないのであるから,弁護人の主張するように,人に対する欺罔行為が存在しないといえなくもなく,本件は,詐欺罪ではなく,刑法246条の2の電子計算機使用詐欺罪に該当するもののように思われる。 しかしながら,前掲各証拠によると,G-CATを通じて架空の売上げデータが送信され,クレジットカードの発行会社が承認を与えたものについて,すべてそのまま自動的に加盟店に対する立替金の振込がなされるわけではなく,承認後振込までの間に,架空売上げ等のクレジットカードの不正使用の疑いが出てきたときは,Eにおいては,振込を保留するなどの措置を取って,調査をした上で振り込むかどうかを決定することになっていること,本件において,Eが「FB」名義の普通預金口座に前記のとおり立替金を振り込んだのは,送信された売上げデータどおりの売上げが実際にあったことを前提にしたためであって,それが架空売上げによるものであることを担当者が知らなかったためであることもまた認められるのであって,コンピューターを用いて大量の売上げデータを処理しているため,Eの担当者が個々の売上げデータを全部確認して,それが正当な取引によるものかどうかを判断することはないけれども,Eの担当者は,振込までの間に架空売上げ等のクレジットカードの不正使用の疑いが出てこなかったものについては,すべて正当な取引によるものであって,架空売上げ等の不正な取引によるものではなく,クレジットカードシステム所定の方法に基づいて立替金の支払いをなす義務があるものと信じて,それまでのデータに基づき,コンピューターを用いて立替金の支払手続を行ったものとみることができるのであるから,やは ットカードシステム所定の方法に基づいて立替金の支払いをなす義務があるものと信じて,それまでのデータに基づき,コンピューターを用いて立替金の支払手続を行ったものとみることができるのであるから,やはり人に対する欺罔行為が存在し,それによって財産的処分行為がなされたということができる。 本件においては,電子計算機使用詐欺罪ではなく,詐欺罪が成立すると認められ,弁護人の主張は採用できない。 2 弁護人は,被告人らが飲食の事実がない架空売上げにクレジットカードを使用したことは,欺罔行為に該当しないから,詐欺罪は成立しない旨主張する。 しかしながら,E信用管理部長J作成の捜査関係事項照会回答書(甲3)によると,EDカードの加盟店規約4条3項は,「売上票に記載できる金額は,当該販売代金並びにサービス提供代金(いずれも税金,送料等を含む)のみとし,現金の立替,過去の売掛金の精算等は行わないものとします。」と定めていて,本件のように架空売上げについて立替金の支払いを求めることは認められていないのであるから,クレジットカードの名義人において,後日支払に応じる意思があると否とにかかわらず,飲食の事実を仮装して架空売上げをし,それについて立替金の支払いを求めることが欺罔行為に該当することは明らかであって,弁護人の主張は採用できない。 3 弁護人は,A名義の本件クレジットカードの発行会社であるCは,被告人らの欺罔行為がなされてからEによる立替金の振込入金がなされるまでの間に,本件がクレジットカードの不正使用によるものであることを知っていたのであるから,欺罔行為と振込入金との間には因果関係がなく,詐欺未遂罪が成立するにすぎない旨主張する。 なるほど,C作成の捜査関係事項回答書(甲9)によると,Cは,Aから,平成13年12月18日午前10時44分こ 為と振込入金との間には因果関係がなく,詐欺未遂罪が成立するにすぎない旨主張する。 なるほど,C作成の捜査関係事項回答書(甲9)によると,Cは,Aから,平成13年12月18日午前10時44分ころ,「ぼったくりの店で脅されてサインしたもので自分の利用の事実はない。何とか支払わない方法はないか。」との連絡を受け,同月21日午前9時52分ころ,兵庫警察に対して被害届を提出した旨の連絡を受け,その後,同月25日午前11時8分ころ,被害届受理番号が104832であるとの連絡を受けていたことが認められるが,上記捜査関係事項回答書及び証人Gの当公判廷における供述によれば,CがEに対して,上記事情を告げて調査を依頼したのは,平成14年1月8日午前9時ころであって,Eにおいては,振込入金日である平成13年12月28日以前には,本件がクレジットカードの不正使用によるものであることを全く知らなかったことが認められるのであるから,被告人らの欺罔行為とEの振込入金との間の因果関係に欠けるところはない。 本件では,詐欺未遂罪ではなく,詐欺罪が成立することが明らかであり,弁護人の主張は失当である。 (累犯前科)被告人は,平成7年3月3日神戸地方裁判所で恐喝,傷害罪により懲役4年6月に処せられ,平成10年11月6日その刑の執行を受け終わったものであって,この事実は検察事務官作成の前科調書(乙10)及びその裁判の判決書謄本(乙11)によって認める。 (法令の適用)被告人の判示所為は包括して刑法60条,246条1項に該当するところ,被告人には前記の前科があるので同法56条1項,57条により再犯の加重をした刑期の範囲内で,被告人を懲役1年4月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中130日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項本文により全部 法56条1項,57条により再犯の加重をした刑期の範囲内で,被告人を懲役1年4月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中130日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項本文により全部被告人に負担させることとする。 (量刑の事情)本件は,暴力団構成員である被告人が,麻雀賭博の勝ち金を取り立てるため,麻雀賭博で負けた男及び知人のスナックの女性経営者と共謀の上,この負けた男がスナックで飲食しクレジットカードで代金を支払ったように仮装してクレジットカード会社を欺き,立替金37万2000円を詐取したという事犯であるが,上記のような犯行の動機原因に酌むべき点はないこと,クレジットカードの加盟店の経営者をも巻き込んでクレジットカードシステムを悪用した犯行の態様は悪質なものであること,被害額も上記のとおり少ない額ではないことなどを併せ考えると,犯情は悪く,被告人の刑事責任は軽くないといわざるを得ない。 しかしながら,クレジットカード会社間の連絡が速やかになされていれば,本件は未遂に終わっていた可能性が高いこと,被告人らからクレジットカード会社に対する被害弁償は本件起訴前に既に完了していたこと,被告人も一応は反省の態度を示していること,被告人の健康状態がよくないことなどの,被告人のために酌むべき事情も認められる。 (検察官の科刑意見・懲役2年)よって,主文のとおり判決する。 平成14年9月11日神戸地方裁判所第12刑事係甲 裁判官森岡安廣 安廣

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る