令和3(ワ)12806 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年12月5日 東京地方裁判所
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判決文本文21,497 文字)

1 令和5年12月5日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官令和3年(ワ)第12806号 損害賠償請求事件口頭弁論終結日 令和5年9月19日判 決主 文51 被告は、原告Aに対し、610万4993円及びうち605万円に対する令和2年7月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告Bに対し、242万円及びこれに対する平成31年1月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は、原告Cに対し、1815万円及びこれに対する平成31年1月2910日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は被告の負担とする。 5 この判決は、第1項から第3項までに限り、仮に執行することができる。 事実及び理由第1 請求の趣旨15主文同旨第2 事案の概要等1 事案の概要本件は、原告らが、指定暴力団の代表者である被告に対し、原告らは同暴力団に所属する指定暴力団員を含む者らによるいわゆる特殊詐欺によって金員を20詐取されたとして、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴対法」という。)31条の2に基づき、以下の請求をする事案である。 ⑴ 原告A605万円(詐取された500万円、慰謝料50万円、弁護士費用55万円)及びこれに対する不法行為の日である平成31年1月8日から一部弁済25があった令和2年7月10日までに生じた民法404条(平成29年法律第2 44号による改正前のもの。以下同じ)所定の年5分の割合による確定遅延損害金45万4993円から弁済額である40万円を控除した残額5万4993円の合計610万4993円並びにうち605万円に対する同月11日から支払済みまで同条所定の年5分の割合 の割合による確定遅延損害金45万4993円から弁済額である40万円を控除した残額5万4993円の合計610万4993円並びにうち605万円に対する同月11日から支払済みまで同条所定の年5分の割合による遅延損害金⑵ 原告B5242万円(詐取された200万円、慰謝料20万円、弁護士費用22万円)及びこれに対する不法行為の日である平成31年1月17日から支払済みまで民法404条所定の年5分の割合による遅延損害金⑶ 原告C1815万円(詐取された1500万円、慰謝料150万円、弁護士費用10165万円)及びこれに対する不法行為の日である平成31年1月29日から支払済みまで民法404条所定の年5分の割合による遅延損害金2 前提事実(争いのない事実及び後掲の書証〔同一の証拠が重ねて提出されている場合には、その一つのみを記載することとする。以下同じ。〕により認められる事実)15⑴ 当事者等ア 原告らは、いずれも、平成31年1月にD(以下「D」という。)らが行った3件の特殊詐欺事件(以下、3件の特殊詐欺事件に係る不法行為を併せて「本件各不法行為」という。)の被害者である。 イ 被告は、指定暴力団であるP組(以下「P組」という。)の代表者である。 20ウ D(平成▲年▲月▲日生)は、平成26年頃(21歳頃)、P組傘下の4次組織であるS(P組Q会R連合S)の構成員(指定暴力団員)になった者であり、本件各不法行為を含む一連の特殊詐欺事件(以下「本件特殊詐欺事件」という。)の犯人のうちの一人である(以下、本件特殊詐欺事件を行った犯人らのことを「本件詐欺グループ」という。)。なお、Dが本件各25不法行為当時にSの構成員であったと認められるかについては、後記のと3 おり争いがある。 エ S及び同じくP組 った犯人らのことを「本件詐欺グループ」という。)。なお、Dが本件各25不法行為当時にSの構成員であったと認められるかについては、後記のと3 おり争いがある。 エ S及び同じくP組傘下の4次組織であるT(P組Q会R連合T)は、共同して、東京都新宿区a町b丁目c番d号eビル4階の事務所(以下「東京連絡所」という。)を使用していた。なお、東京連絡所が暴力団の事務所と評価できるかについては、後記のとおり争いがある。 5⑵ 本件各不法行為ア 本件各不法行為の概要Dは、E(以下「E」という。)、F(以下「F」という。)、G(以下「G」という。)及び氏名不詳者らと共謀の上、他人の親族等になりすまし、その親族等が現金を必要としているかのように装って現金をだまし10取ろうと考え、平成31年1月8日、氏名不詳者が、原告A方に電話を架け、原告Aに対し、電話の相手が原告Aの息子であり、同息子が現金を至急必要としているので、同息子のため代わりに行く同僚のナカムラに現金を渡してもらいたい旨嘘を言い、さらに、同日、Gが、同ナカムラになりすまして、原告Aから現金500万円の交付を受け、もって人15を欺いて財物を交付させた。 Dは、E、F、G及び氏名不詳者らと共謀の上、役所職員になりすましてキャッシュカードをだまし取ろうと考え、平成31年1月17日、氏名不詳者らが原告B方に電話を架け、原告Bに対し、電話の相手が役所職員であり、還付金受領の手続のためにキャッシュカードを回収に行20く旨嘘を言い、同日、Gが原告B方において、キャッシュカードの交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた。 Dは、E、F、G及び氏名不詳者らと共謀の上、原告Bから詐取したキャッシュカードを使用して現金を窃取しようと考え、同日、Gが、同キャッシ ュカードの交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた。 Dは、E、F、G及び氏名不詳者らと共謀の上、原告Bから詐取したキャッシュカードを使用して現金を窃取しようと考え、同日、Gが、同キャッシュカードを使用して、コンビニエンスストアの現金自動預払機25を作動させ、現金合計200万円を窃取した。 4 Dは、E、F、G及び氏名不詳者らと共謀の上、他人の親族等になりすまし、その親族等が現金を必要としているかのように装って現金をだまし取ろうと考え、平成31年1月29日、氏名不詳者らが、原告C方に電話を架け、原告Cに対し、電話の相手が原告Cの息子であり、同息子が現金を至急必要としているので、同息子のため代わりに行く部下の5キムラに現金を渡してもらいたい旨嘘を言い、さらに、同日、Gが、同キムラになりすまして、原告Cから、現金1500万円の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた。 (甲2~6)イ 本件特殊詐欺事件における本件詐欺グループ内の役割等10Dは、主として受け子をあっせんする役割を担っていた(甲2)。 Eは、受け子のあっせん役であったDから紹介を受けた受け子等を指示役に紹介する役割を担っていた者であり、本件特殊詐欺事件に関わっていた当時、指定暴力団U会系の組織に所属していた(甲4)。 Fは、受け子を勧誘して本件詐欺グループに紹介するというリクルー15ターの役割を担っていたほか、勧誘した受け子と連絡を取り、受け子の犯行状況を共犯者に報告するなど、受け子を管理する役割も担っていた(甲5)。 G及びH(以下「H」という。)は、受け子の役割(現金を受け取ったり、カードを受け取って現金を引き出したりする役割)を担っていた20(甲6、23)。 3 争点及びこれに関する当事者の主張⑴ Dは、 (以下「H」という。)は、受け子の役割(現金を受け取ったり、カードを受け取って現金を引き出したりする役割)を担っていた20(甲6、23)。 3 争点及びこれに関する当事者の主張⑴ Dは、本件各不法行為当時、Sの構成員(指定暴力団員)であったか(争点1)(原告らの主張)25ア Dが指定暴力団員に当たるか否かは、Dの活動内容や暴力団との具体的5 関わりといった実質的・客観的事情によって判断する必要がある。そして、指定暴力団員が偽装脱退を行うことがあることに鑑みれば、指定暴力団員であった者の脱退の認定に当たっては、それが真の脱退であることの立証責任は脱退を援用する側にあるというべきである。 イ Dは、①Sの構成員であったI(以下「I」という。)を慕ってSに出入5りをするようになり、その後、Sの構成員になった、②平成28年頃(23歳頃)に、Sの代表者であるJ組長(以下「J組長」という。)の了解をもらってSを内輪破門となり、Sから離脱した、③その後、東京連絡所に出入りするようになった旨証言するが、Dは、刑事事件の段階では、同証言の内容(特に内輪破門となった経緯)を供述しておらず、本件訴訟に10至って初めて述べるようになったものである。その供述の経緯は不自然であるし、その内容も、破門されたにもかかわらず、その後、特段の制裁もなく、再度、Sに出入りするようになったというもので、信用できない。 Dは、単に、兄貴分であるIから逃亡していたにすぎない。 ウ 東京連絡所は、P組の綱領等が掲げられていたこと、監視カメラで周囲15を監視していること、24時間体制の当番制度が整えられていたことなど、東京におけるR連合又はSの活動拠点(暴力団の事務所)であることは明らかであって、Dはそのような暴力団事務所の当番を自ら申し出 を監視していること、24時間体制の当番制度が整えられていたことなど、東京におけるR連合又はSの活動拠点(暴力団の事務所)であることは明らかであって、Dはそのような暴力団事務所の当番を自ら申し出て積極的にSに関与していたものである。その他、Dがキャッチ業務をしていたなどの暴力団と関わりのあることを示す諸般の事実を考慮すれば、Dが本件20各不法行為当時にSの構成員であったことは明らかである。 (被告の主張)ア 暴対法31条の2は、民法の個人責任主義・過失責任主義の特異な例外であって、その適用範囲は厳密に確定されなければならず、また、暴対法において暴力団の構成員と非構成員(準構成員を含む)は峻別されている。 25そして、暴力団の構成員とは、「その団体に所属する者であると客観的に6 認められるもの」と解すべきであること、また、同条新設の際に、民法の個人責任主義・過失責任主義を緩和して例外的に拡大する根拠として、予見可能性、回避可能性、利益の享受が挙げられていたことからすれば、かかる3つの要件に当てはまる場合でなければ、指定暴力団の代表者等が同条による損害賠償責任を負うことはない。たとえ、暴力団の構成員らと交5友があり、その事務所に出入りしていたとしても、暴力団の行事や会合に出席せず、暴力団の指揮命令系統に服しておらず、暴力団に会費を支払っていなければ、上記3つの要件を満たすことはないから、「その団体に所属すべき者」であるとは客観的に認められない。 イ 本件において、Dが暴力団の構成員であることを示す客観的な証拠は存10在しない。また、Dは、本件訴訟において、本件各不法行為当時にSの構成員であったことを否定し、後記の本件上京時に構成員を辞めた詳細な経過を証言しており、同証言は信用できるものである。 また、D 在しない。また、Dは、本件訴訟において、本件各不法行為当時にSの構成員であったことを否定し、後記の本件上京時に構成員を辞めた詳細な経過を証言しており、同証言は信用できるものである。 また、Dは、刑事事件においても、一貫して、平成28年頃(23歳頃)にSを離脱した旨を供述しており、検察官も、本件各不法行為当時にDが15Sの構成員であったことを主張しておらず、刑事事件の判決においても、本件各不法行為当時にDがSの構成員であったと認定していない。なお、Dの身上調書(甲26)には、Dが25歳の時(平成30年)に、Sに戻った旨が記載されているところ、これは本件上京時にSを離脱したことを前提とする記載であり、また、「戻った」というのは、単に、東京連絡所20に出入りするようになったことを意味するにすぎず、Sに復帰したことを意味するものではない(仮に、Sに復帰したことを調書に記載するのであれば「Sに入り直した」と記載されるはずである。)。 ウ Dは、本件各不法行為当時、Sの構成員であれば参加しているR連合本部のある札幌の事務所当番や「公用」と呼ばれる雑用への参加はしていな25かったもので、P組の指揮命令に服しているとはいえず、被告はDらの本7 件各不法行為につき予見可能性も回避可能性もなかったといえる。また、Dが、本件各不法行為当時、会費又は上納金をS又はR連合に納めていた事実はないから、被告は本件各不法行為により利益を享受しているわけでもない。Dは、東京連絡所の当番をしていたが、これは、Dが、J組長に対し、自主的に協力を申し出ていたものにすぎない。 5エ 警察は、被害者が暴対法31条の2に基づく請求をする場合には、威力利用資金獲得行為を行ったとされる者に係る暴力団構成員該当性について積極的な情報提供をすることとされて たものにすぎない。 5エ 警察は、被害者が暴対法31条の2に基づく請求をする場合には、威力利用資金獲得行為を行ったとされる者に係る暴力団構成員該当性について積極的な情報提供をすることとされているにもかかわらず、本件においては、そのような警察からの情報が証拠提出されていない。すなわち、警察においても、Dは、本件各不法行為当時にはSの構成員ではなかったと認10識されていたといえる。 ⑵ 本件各不法行為が威力利用資金獲得行為を行うについてされたものか(争点2)(原告らの主張)ア Dは、本件詐欺グループに所属し、架け子、受け子及び出し子らを統括15する指示役となって、反復継続的に本件各不法行為を含む一連の特殊詐欺行為に及び、原告らを含む多くの被害者から多額の金銭を詐取したのであるから、Dの関与した本件各不法行為は資金獲得行為に当たる。 イ 暴対法32条の2本文にいう「威力を利用して」とは、指定暴力団員が、当該指定暴力団に所属していることにより、資金獲得活動を効果的に行う20ための影響力又は便益を利用することをいい、当該指定暴力団の指定暴力団員としての地位と資金獲得活動が結びついている一切の場合をいう趣旨であって、資金の獲得のために威力を利用するのであれば、威力資金獲得活動に含まれ、被害者に対して威力が示されることは必要ではなく、指定暴力団の指定暴力団員が、資金獲得行為それ自体に威力を利用する場合の25みならず、威力を利用して共犯者を集める場合など、資金獲得行為の実行8 に至る過程において威力を利用する場合も、威力利用資金獲得行為に含まれる。 本件において、F、G及びHは、Dが暴力団関係者であることを認識した上で、Dの勧誘や指示に背いたり勝手に詐欺を止めたりすれば危害を加えられたり周囲に迷惑がかかったり 利用資金獲得行為に含まれる。 本件において、F、G及びHは、Dが暴力団関係者であることを認識した上で、Dの勧誘や指示に背いたり勝手に詐欺を止めたりすれば危害を加えられたり周囲に迷惑がかかったりすると思っていたのであり、Dは、暴5力団という組織を背景にした恐怖や威力を利用して、F、G及びHら共犯者をして本件各不法行為に関与させたのであるから、DによるF、G及びHを受け子としてあっせんする行為は威力を利用するものといえる。 ウ 本件各不法行為は、Dによる威力利用資金獲得行為の一環としてされたものであるから、威力利用資金獲得行為を「行うについて」されたもので10あることは明らかである。 (被告の主張)ア 暴対法31条の2は、「威力利用資金獲得行為……を行うについて」と規定しており、当該「威力」は当然に権利等を侵害された他人に対して示されるか、他人が認識できる形態で利用されることが必要である。また、同15条の立法当時、威力利用資金獲得行為としては、みかじめ料の請求等、相手方との関係で威力が示される場合が想定されており、共犯者間での内部統制としての威力利用は想定されていなかった。 イ 本件特殊詐欺事件の報酬の取り分は、GとFが17%、Dが3%と差が大きいこと、暴力を用いない特殊詐欺は参加する際の心理的障害が低く、20暴力団の威力を背景としなくても地域の不良仲間等の人脈を使って人材確保をすることが容易であること、Fの方からDに割のいい受け子の仕事の紹介を求めていることなどからすれば、本件特殊詐欺事件において、F及びGは、Dが暴力団員であるからこれに従っていたとはいえず、Dが共犯者の獲得に暴力団の威力を利用したことはない。なお、Hは直接接してい25たFに対して恐怖を感じていたのであり、Dに対して威力を感じていたわ9 力団員であるからこれに従っていたとはいえず、Dが共犯者の獲得に暴力団の威力を利用したことはない。なお、Hは直接接してい25たFに対して恐怖を感じていたのであり、Dに対して威力を感じていたわ9 けではない。 ウ 本件特殊詐欺事件における報酬の取り分は、Dが3%、Eが20%であったこと、EがU会系の暴力団員であったことなどから、中心的役割を果たしていたのはEであり、DはEから指示を受ける立場にあったといえる。 そうすると、そもそも、本件特殊詐欺事件はU会の構成員を中核とする資5金獲得行為であって、被告による資金獲得行為ではない。 ⑶ 本件各不法行為と相当因果関係のある損害の発生及びその額(争点3)(原告の主張)ア 財産的損害本件各不法行為により、原告Aは500万円、原告Bは200万円、原10告Cは1500万円の財産的損害を被った。 イ 精神的損害本件各不法行為が、組織的かつ用意周到な手口を計画・準備した極めて悪質で反社会性の高い犯行態様で実施されたものであること、原告らの息子に対する親心や役所職員への信頼感に付け込んで財産をだまし取り、原15告らの心情を踏みにじるという巧妙かつ卑劣なものであること、原告らは老後の生計の資金を詐取され、また、激しい自責の念に苦しんでいることなどからすれば、原告らが本件各不法行為によって多大な精神的苦痛を被ったことは明らかであり、原告らの精神的苦痛は財産的損害が全て回復することによって慰謝され得るものであるとは評価できない。そうすると、20別途相当額の精神的損害が生じたと認めるべきであり、その額は、原告Aについて50万円、原告Bについて20万円、原告Cについて150万円を下らない。 ウ 弁護士費用本件における弁護士費用は、原告Aについて55万円、原告Bについて めるべきであり、その額は、原告Aについて50万円、原告Bについて20万円、原告Cについて150万円を下らない。 ウ 弁護士費用本件における弁護士費用は、原告Aについて55万円、原告Bについて2522万円、原告Cについて165万円を下らない。 10 (被告の主張)仮に本件各不法行為において原告らが精神的な被害を受けたとしても、生命・身体に対する加害行為とは異なるから、経済的な被害が回復されることによって十分に慰謝されるというべきであり、精神的損害に対する慰謝料請求権は認められない。 5第3 当裁判所の判断1 争点1(Dは、本件各不法行為当時、Sの構成員〔指定暴力団員〕であったか)について⑴ 認定事実ア Dの身上経歴等について10Dは、平成26年頃(21歳頃)、札幌においてSの構成員となった(前提事実⑴ウ)。 Dは、平成28年頃(23歳頃)、Sの事務所のある札幌を離れ、関東地方を転々とするようになった(以下「本件上京」という。)。なお、Dは、平成29年5月31日(24歳)、その住民票を札幌市から埼玉県15川越市に移した。(甲21、26、29、乙16の1、19の1、28の1、証人D、証人G、弁論の全趣旨)Dは、平成29年夏頃(24歳)、J組長と再会したことがきっかけで、東京連絡所の当番を担うようになった。Dは、平成30年3月頃から同年10月末頃まで(25歳)は仙台で生活していたが、その際も東20京連絡所の当番は続けていた。(甲26、乙2、16の1、証人D)。 Dは、平成30年12月30日(25歳)、東京から京都に移り住んだ(甲26、29、証人D)。 イ 東京連絡所について東京連絡所はSとTとが共同使用しており、東京連絡所には、J組長25と、TのK組長(以下「K組 30日(25歳)、東京から京都に移り住んだ(甲26、29、証人D)。 イ 東京連絡所について東京連絡所はSとTとが共同使用しており、東京連絡所には、J組長25と、TのK組長(以下「K組長」という。)が1日1回程度顔を出してい11 た。なお、東京連絡所のあるビルの5階にはK組長の付き人が、6階にはJ組長の運転手が、それぞれ居住していた。(前提事実⑴エ、証人D)東京連絡所には、P組の綱領や、P組組長の写真、Q会の代紋が入ったカレンダー等が掲げられていた(証人D、証人G)。 東京連絡所のあるビルには、東京連絡所内部からモニターを見ること5ができる監視カメラが6台ほど設置されていた。そのうち、周辺道路を映すものが3台あり、エレベーターホール、5階の部屋の入口前及び4階の東京連絡所の入口前を映すものがそれぞれ1台あった。(証人D)東京連絡所には24時間体制の当番制度(毎日午前11時半が交代時間)があり、当番の担当者は、1日1回程度、東京連絡所に定時連絡を10入れることになっており、これは、当番の欠員を防ぐため、自分が予定どおり当番に入れるかの事前連絡の意味も有していた。当番の予定は、Sの舎弟頭(J組長に次ぐ地位)であるL(以下「L」という。)が管理しており、各人からの希望日の申告を踏まえて調整していた。(証人D)Lは、当番の担当者に対し、当番をしている際に警察の捜索が入るよ15うな場合には、自分が来るまで待ってくれと言って対応するようにと指示していた(証人D)。 Dは、本件上京後の平成29年夏頃(24歳頃)から京都に移り住む前の平成30年12月末頃(25歳)まで、定期的かつ継続的に東京連絡所の当番をしていたところ、その頻度は、関東地方に住んでいた時は20毎月2~3回程度、仙台に住んでいた時 頃)から京都に移り住む前の平成30年12月末頃(25歳)まで、定期的かつ継続的に東京連絡所の当番をしていたところ、その頻度は、関東地方に住んでいた時は20毎月2~3回程度、仙台に住んでいた時は毎月1回2~3日程度であった。当番は無償であり、交通費等の支給もなかった。(証人D)ウ Dの暴力団構成員該当性に関して捜査機関等が把握していた状況について警視庁は、令和元年6月28日、詐欺容疑(本件特殊詐欺事件への関25与)でD及びEを逮捕したところ、当時、警視庁は、DをP組系の構成12 員であると把握していた(甲28の1~3)。 Dの本件特殊詐欺事件の刑事事件(東京地方裁判所令和元年刑(わ)第2103号ほか)においては、専ら量刑が問題となっていたところ、その第1審判決においては、Dが暴力団の構成員であるかに関しては何らの言及もされておらず、量刑の理由としては、本件特殊詐欺事件につ5いて、役割分担(被害者に電話を架けてだます役、受け子への指示役、受け子等のあっせん役、受け子役等)、手口の悪質さ(高齢者に狙いをつけ、電話で巧妙な言葉を弄して被害者を信じ込ませた上で現金をだまし取るなど)、犯行件数(1か月余りの間に15名の被害者)、被害結果(合計3700万円超)を踏まえ、大規模かつ組織的と評価した上で、Dが10果たした役割が大きいこと、犯行に加担した経緯が相応に積極的であること、報酬目当てに加担し続けたことなどの犯情がある一方、Dが本件詐欺グループ内で中枢を担う立場ではなかったことや反省の態度を示していることなどの酌むべき事情があることが挙げられている(甲2)。 Dの本件特殊詐欺事件の刑事事件の控訴審判決(東京高等裁判所令和152年(う)第887号ほか)においては、Dが暴力団の構成員であるかに関し、第1審 き事情があることが挙げられている(甲2)。 Dの本件特殊詐欺事件の刑事事件の控訴審判決(東京高等裁判所令和152年(う)第887号ほか)においては、Dが暴力団の構成員であるかに関し、第1審判決後に暴力団からの脱退届を作成するなどして更生の意欲を強めている旨の言及がされている(甲3)。 警視庁は、暴力団犯罪の被害者の被害回復訴訟において、組長等の使用者責任を追及する等の場合には特に積極的な情報提供をすることなど20を定める通達を発出しており(平成31年3月20日付け警視庁丙組組企発第105号、丙組暴発第7号)、同通達においては、暴力団による犯罪、暴力的要求行為等による被害の防止又は回復に資する場合には、相談等に係る者の暴力団員等への該当性に関する情報を提供することを検討するとされている(乙27)。 25⑵ 判断13 ア 暴力団員とは、暴力団の構成員をいうところ(暴対法2条6号)、暴力団の構成員とは、暴力団に所属する者であると客観的に認められる者をいい、単に当該暴力団の名簿に構成員として登録されている者や当該暴力団の内部に名札が掲げられている者だけを指すものではないと解すべきである。 イ Dが本件各不法行為当時にSの構成員であったかを判断するに当たり、5まず、Dが平成29年夏頃から当番をしていた東京連絡所(認定事実イ)が、暴力団の事務所、すなわち暴力団の活動の拠点となっている施設又は施設の区画された部分(暴対法15条1項)に該当するかを検討する。 東京連絡所には少なくとも6台の監視カメラが設置され、周辺道路やエレベーターホール、東京連絡所の入口等を映しており(認定事実イ)、10また、24時間体制の当番制度があり、欠員が出ることがないように管理、調整されていたことからすれば(同)、東京連絡所は エレベーターホール、東京連絡所の入口等を映しており(認定事実イ)、10また、24時間体制の当番制度があり、欠員が出ることがないように管理、調整されていたことからすれば(同)、東京連絡所は、その周辺の状況を24時間体制で監視する機能を有していたと認められ、このことは、東京連絡所を使用するSが、東京連絡所につき、24時間周囲を監視する体制が必要な施設であり、そのような体制を敷くほどに重要な施15設であると認識していたことを示すものであるといえる。また、東京連絡所に警察の捜索が入るような事態になった場合の対応についても、SにおいてJ組長に次ぐ地位にあるLに連絡するように決められていたというのであるから(同)、Sとして、東京連絡所が捜査機関による捜索の対象になる可能性がある施設であると認識していたといえる。 20以上のような東京連絡所の体制等に加え、東京連絡所にはJ組長とK組長が1日1回という頻度で顔を出していたところ(同イ)、毎日、各組長が顔を出すことによって、東京連絡所に出入りするSの構成員その他の者に対し、各組長の統制力を示すことができていたといえる。また、東京連絡所には、P組の綱領やP組組長の写真、Q会の代紋が入ったカ25レンダー等が掲げられていたところ(同)、東京連絡所に出入りするS14 の構成員にあっては、その都度、自身がP組系の暴力団の構成員であることを認識するような状況にあったといえる。これらのことからすると、東京連絡所は、Sの構成員を統制する機能を果たす施設と評価でき、暴力団の活動の拠点となっている施設であって、暴力団の事務所に該当すると認められる。 5この点につき、被告は、東京連絡所は、J組長とK組長という個人が合同で利用する連絡所(いわば2人の周辺者のたまり場・ラウンジ)に いる施設であって、暴力団の事務所に該当すると認められる。 5この点につき、被告は、東京連絡所は、J組長とK組長という個人が合同で利用する連絡所(いわば2人の周辺者のたまり場・ラウンジ)にすぎず、Q会に正式な事務所として届けられておらず、Q会の指揮系統・連絡体制の下にない旨主張し、Dも、監視カメラは組長らの訪問を事前に知って事務所を片付ける程度の用でしか使用していなかったなどと証10言をする(証人D)。 しかしながら、上記で認定説示したとおり、東京連絡所は少なくとも6台もの監視カメラが設置され、警察による捜索も想定された24時間の監視体制を敷いている場所であって、仮に上部団体において正式に事務所として登録されていなかったとしても、単にJ組長やK組長の周15辺者のたまり場やラウンジの機能にとどまる施設とは認め難く、この点に関する被告の主張は採用することができない。 また、被告は、「組員」以外の者も多数出入りするような場所であることから、東京連絡所は暴力団の事務所ではないとも主張するが、上記のとおり、暴力団の事務所とは、暴力団の活動の拠点となっている施設等20をいうのであって、被告のいうところの「組員」以外の者が出入りをするかどうかによって、当該暴力団の活動の拠点であるか否かが左右されるものではないというべきであるから、この点に関する被告の主張も採用することはできない。 ウ 上記イからすれば、Dは、暴力団の事務所である東京連絡所の当番を担25っていたと認められるところ、Dは、平成29年夏頃から平成30年1215 月末頃までの約1年半にわたり、東京連絡所の当番の担当者として、定期的に連絡を入れるというルール下に置かれ、希望日を申告した上で、Lの管理、調整に従って、月に2~3日は24時間体制の当番を担い、 月末頃までの約1年半にわたり、東京連絡所の当番の担当者として、定期的に連絡を入れるというルール下に置かれ、希望日を申告した上で、Lの管理、調整に従って、月に2~3日は24時間体制の当番を担い、警察の捜索といった不測の事態が生じたときはLに連絡するとの指示を受けていたものであり(認定事実イ~)、Dは、Sの舎弟頭であるLの指揮5下にあったと認められる。また、Dは、交通費等の支給すら受けることなく、無償で、関東地方に住んでいたときのみならず、仙台で生活していた間も、継続的かつ定期的に当番を務めていたというのであり(同ア、イ)、その負担を考慮すると、完全な自由意思の下、自主的かつ自発的に当番を担当していたとは考えにくく、Lの支配下にあったからこそ、Dは10当番の希望日を申告し、当番を担当していたと考えるのが合理的である。 そして、S側において東京事務所を運営していたのはLではなく、J組長であることからすれば、Sが、Dを指揮下又は支配下に置いていたということができる。 この点につき、Dは、本件上京時にSを内輪破門となったとして、その15状況を詳細に証言しており、その内容の具体性等に照らせば、その内容が一概に虚偽であるとは断じ難いところではある。しかしながら、Dが本件上京時にSを離脱したか否かにかかわらず、少なくとも、平成29年夏頃に東京事務所の当番をするようになってからは、上記のとおり、Dは、Sの指揮に服しているのであって、Sに所属していたと客観的に認められる。 20そして、Dは、平成30年12月末、東京から京都に移り住んでいるところ(同ア)、DはJ組長やLに何ら告げることなく京都に移転したものであり(証人D)、DがSからの離脱を表明したとも、J組長やLがSからの離脱や組当番からの離脱を承認したともいえないから、 いるところ(同ア)、DはJ組長やLに何ら告げることなく京都に移転したものであり(証人D)、DがSからの離脱を表明したとも、J組長やLがSからの離脱や組当番からの離脱を承認したともいえないから、少なくとも、その直後である平成31年1月時点(本件各不法行為当時)においては、25Dは、いまだSの指揮に服すべき者のままであったというべきで、この時16 点においても、DはSに所属していたと客観的に認められる。 エ被告は、Dの刑事事件において、検察官及び裁判所が、本件各不法行為当時にDが暴力団の構成員であったとは評価していなかったと主張する。 この点、Dの刑事事件においては、専ら量刑が問題となっていたとこ5ろ、第1審判決においては、本件特殊詐欺事件の犯情面において、役割分担、手口の悪質さ、犯行件数等から大規模かつ組織的なものと評価されており(認定事実ウ)、この点が大きく量刑に影響を与えたものといえ、本件特殊詐欺事件当時にDが暴力団の構成員であったか否かが主要な争点として争点化された形跡はない。また、一般情状という面にお10いては、本件特殊詐欺事件当時ではなく現時点でDが暴力団の構成員であるか否かが問題となり得るところではあるが、この点については、第1審判決においても控訴審判決においても、Dが(暴力団を離脱しており)構成員ではなくなっているという認定はされていない(同)。 以上からすれば、検察官及び裁判所において、本件各不法行為当時に15Dが暴力団の構成員であったと評価していなかったとまでは認めることができない。 また、被告は、Dが平成30年末に東京連絡所に突然来なくなり、京都に移っているところ、J組長はDの所在を探していないこと、定時連絡も急な予定変更等に対応できるようにするための方策にすぎず、当番2 また、被告は、Dが平成30年末に東京連絡所に突然来なくなり、京都に移っているところ、J組長はDの所在を探していないこと、定時連絡も急な予定変更等に対応できるようにするための方策にすぎず、当番20の役割が限定的であることなどからすれば、東京連絡所の当番は義務ではなかったと主張する。 しかしながら、J組長がDの所在を探したか否かについては不明である。また、当番の役割が限定的であったとしても、一般に権限が与えられていない下位者の役割が権限のある上位者への必要事項の伝達等に限25られるのは当然であるし、24時間体制かつ欠員が出ないような当番制17 度が置かれていたこと(上記イ、ウ)に照らしても、この点に関する被告の主張は採用することができない。 さらに、被告は、DがSの構成員であれば行っているR連合本部の札幌の事務所当番や組の雑用を行っていなかったこと、Dが本件各不法行為当時に会費又は上納金をS又はR連合に納めていた事実はない点を指5摘し、Dもこれに沿う証言をする。 しかしながら、仮に、DがSの上部団体であるR連合本部の事務所当番等を行っていなかったり、会費又は上納金を払っていなかったりしたとしても、Sの指揮下又は支配下にあれば、Sに客観的に所属しているといえることは、上記ウで認定説示したとおりである。被告の上記主張10は、結局のところ、S及びDにとっての構成員の基準(R連合で新人紹介がされ、R連合本部の当番等を行い、R連合に会費を納める者が構成員であるという基準)によるものであって、この点に関する被告の主張は採用することができない。 なお、被告は、暴力団の構成員と準構成員は、暴対法上、峻別されて15いるとも指摘する。この点、準構成員とは、暴力団構成員以外の暴力団と関係を有する者であって、暴力団の威力を ることができない。 なお、被告は、暴力団の構成員と準構成員は、暴対法上、峻別されて15いるとも指摘する。この点、準構成員とは、暴力団構成員以外の暴力団と関係を有する者であって、暴力団の威力を背景に暴力的不法行為等を行うおそれがある者、又は、暴力団若しくは暴力団構成員に対し資金等の供給を行うなど暴力団の維持若しくは運営に協力し、若しくは関与する者であり、暴力団の外部で活動する者がその対象となるものと解され20るところ(甲13、41、乙4の2)、上記ウで認定説示したとおり、DはSの指揮下又は支配下にある者であって、暴力団の外部で活動する者とはいえない。 加えて、被告は、警察当局は、被害者保護の観点から、暴力団による犯罪、暴力的要求行為等による被害の防止又は回復に資する場合には、25警察当局が対象者を暴力団員として認識・把握しているかどうかの情報18 の開示に応じるとされているところ(認定事実イ)、原告側からそれらの情報が証拠として提出されていないという事実は、Dが暴力団員として警察当局に認識・把握されていないからであると主張する。 原告らが上記の情報開示を求めたかは不明であるものの、仮にこれを求め、Dを暴力団員であると認識・把握しているとの回答が得られなか5ったとしても、警視庁は、本件特殊詐欺事件でDを逮捕した当初、Dを暴力団員であると把握していたものの(同)、その取調べ段階及び公判廷において、Dが既に暴力団からは脱退している旨供述し、刑事事件の第1審判決を受けた後にも、北海道方面札幌北警察署長宛ての脱退届(平成28年3月頃に暴力団を辞めているが、改めて正式に離脱する旨)を10作成して提出していること(乙1の2、2、10、15の2)から、捜査機関として、現時点でDがなお暴力団員であるとすることに疑義 成28年3月頃に暴力団を辞めているが、改めて正式に離脱する旨)を10作成して提出していること(乙1の2、2、10、15の2)から、捜査機関として、現時点でDがなお暴力団員であるとすることに疑義を覚え、Dを暴力団員であると認識・把握している旨の回答をしなかったとも考え得るから、被告の上記主張は、本件各不法行為当時のDの暴力団構成員該当性を左右するものではない。 15オ 以上によれば、Dは、本件各不法行為当時、Sの構成員(指定暴力団員)であったと認められる。 2 争点2(本件各不法行為が威力利用資金獲得行為を行うについてされたものか)について⑴ 認定事実20ア P組についてP組は、暴対法3条に基づく指定を受けた指定暴力団であり、平成30年末時点の構成員数は約4400人(準構成員を含めると約9500人)に及び、ほぼ日本全国に勢力範囲を及ぼす日本最大の暴力団組織である(甲1、7、13)。 25イ 暴力団及びその資金獲得行為について19 暴力団は、一般に首領を頂点とした封建的家父長制を模した擬制的血縁関係により構成されており、また、暴力団の各首領が互いに擬制的血縁関係を結び、下部団体の首領が上部団体の首領の子分となることによって、重層的な大規模団体を構成することが多い。 暴力団においては、親分・子分の上下関係は絶対的なものであり、親分5の命令に従うのが子分の当然の義務であり、このような義務に反し、親分の支配や集団の一体性を乱す者に対しては、厳しい制裁を加える一方、親分の命令等に従い組織に貢献する者に対しては、組織内の高い地位をはじめ相応の報酬を与えるなどして内部秩序を保っている。 暴力団は、暴力と組織の威力を最大限に活用しつつ、より巧妙かつ効率10的に経済的利益を得るため、経済・社会の ては、組織内の高い地位をはじめ相応の報酬を与えるなどして内部秩序を保っている。 暴力団は、暴力と組織の威力を最大限に活用しつつ、より巧妙かつ効率10的に経済的利益を得るため、経済・社会の発展等に対応して、その資金獲得活動を変化させ続けているところ、近年においては、実態を隠蔽しながら各種の事業活動に進出するなどし、一般社会での不透明な資金獲得活動を活発化させているほか、各種公的給付制度等を悪用した詐欺、振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺等への関与を深めるなど、その活動分野を更15に拡大している状況がうかがえる。その背景としては、数次にわたる暴対法の改正による規制強化や社会における暴力団排除活動の進展により、暴力団の威力をあからさまに示してする資金獲得活動が困難になったことなどが考えられるところであって、平成17年と平成26年とで暴力団構成員等の罪種別検挙人員の状況を比較すると、被害者に対して暴力団の威力20を示す必要のない詐欺罪による検挙人員の占める割合が大きく増加している(5.8%から10.4%に増加)。 (甲13、41)ウ 特殊詐欺について特殊詐欺(被害者に電話を架けるなどして対面することなく信頼させ、25指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から20 現金をだまし取る犯罪の総称)にあっては、犯行グループが構成され、リーダー、中核メンバーを中心として、電話をかけて被害者をだます「架け子」、自宅等に現金を受け取りに行く「受け子」等が役割を分担し、組織的に犯罪を敢行している。 上記のような特殊詐欺を敢行するためには、犯罪である特殊詐欺に加担5する者を勧誘し、実際に加担させることが、困難であるものの必要不可欠であり、場当たり的にかき集められた共犯者(犯罪によって金 上記のような特殊詐欺を敢行するためには、犯罪である特殊詐欺に加担5する者を勧誘し、実際に加担させることが、困難であるものの必要不可欠であり、場当たり的にかき集められた共犯者(犯罪によって金銭を得ようとする者)による詐取金の持ち逃げ、被害者となるべき者の名簿の持ち逃げ、犯行グループからの離脱等を防ぐために、犯行グループ内部への強い統制力が必要になる。 10(甲7、13、14)エ 本件各不法行為を含む本件特殊詐欺事件に加担した本件詐欺グループに属する者の役割や共犯者に対する認識等について本件詐欺グループにおいては、EがDからあっせんされた受け子等を指示役に紹介する役割を、Dが主としてEに受け子をあっせんする役割15を、FがDに受け子をあっせんする役割等を、G及びHが受け子の役割を、それぞれ担っており、Dは、平成30年8月又は同年9月頃から本件詐欺グループに属するようになった(前提事実イ、甲20、21、27、証人D)。 Dは、本件特殊詐欺事件に係る連絡をしたり、受け子が詐取した金員20等を受領したりするために、複数回、F、G及びHを東京連絡所に呼んだことがあり、その際、Dは、Gに対し、被害者から現金を受け取る前後に犯行の遂行状況について報告を受けたり、同日に複数の被害者から現金を詐取する際の待機中の現金の保管方法について指示したりするなどした。(甲17、18、証人D、証人G)25Dは、F及びGに対し、北海道にいたときに暴力団員になったという21 話をしたことがあり、Fはその話を聞いた平成30年夏頃もDが暴力団員であると認識していた。 Gにおいては、東京連絡所を訪れた際、そこが北海道のR連合関係の組の事務所であると認識し、また、Q会の代紋が入ったカレンダーや、設置されている監視カメラやその Dが暴力団員であると認識していた。 Gにおいては、東京連絡所を訪れた際、そこが北海道のR連合関係の組の事務所であると認識し、また、Q会の代紋が入ったカレンダーや、設置されている監視カメラやそのモニターの存在も認識した。これらの5ことから、Gは、東京連絡所に出入りするDを暴力団の構成員であると認識していた。そして、Gは、FがDに対して敬語を使用していたことからDがFの上位者であると認識していたところ、Gは、Fから、本件詐欺グループを抜けるのであれば、何百万円というペナルティを払え、家族がどうなるか分からないぞなどと言われていたため、グループを離10脱すれば、自分だけではなく家族にも危害が加えられるかもしれないと感じていた。 Hにおいても、Fから、上記同様のことを言われており、Fの背後に暴力団員(D等)がいることが分かっていたため、恐怖でグループから逃げることができないと感じていた。 15(甲16~18、20~23、証人D、証人G)⑵ 判断ア 暴対法31条の2は、指定暴力団の代表者等は、当該指定暴力団の指定暴力団員が「当該指定暴力団の威力を利用して生計の維持、財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得、又は当該資金を得るために必要な地20位を得る行為」、すなわち「威力利用資金獲得行為」を行うについて他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、一定の場合を除き、これによって生じた損害を賠償する責任を負う旨を定めており、民法715条の規定を適用して代表者等の損害賠償責任を追及する場合において生ずる被害者側の主張立証責任の負担の軽減を図ることを趣旨とする規定であると解され25る。そして、暴対法31条の2は、「威力利用資金獲得行為」の定義につき22 「当該指定暴力団の威力を利用して」と規定し、同法9条が指 の負担の軽減を図ることを趣旨とする規定であると解され25る。そして、暴対法31条の2は、「威力利用資金獲得行為」の定義につき22 「当該指定暴力団の威力を利用して」と規定し、同法9条が指定暴力団員による暴力的要求行為の禁止について相手方に「威力を示して」要求することを要件としているのと異なり、「威力を利用」するとの文言を用いており、相手方に「威力を示」すことを要件としていないことに照らせば、ここにいう「当該指定暴力団の威力を利用して」とは、指定暴力団員が、当5該指定暴力団に所属していることにより、資金獲得活動を効果的に行うための影響力又は便益を利用することをいい、当該指定暴力団の指定暴力団員としての地位と資金獲得活動とが結び付いている一切の場合をいう趣旨であって、必ずしも当該暴力団の威力が被害者に対して直接示されることを要しないものと解するのが相当である。 10イ暴力団は、暴力と組織の威力を最大限に活用しつつ、より巧妙かつ効率的に経済的利益を得るため、経済・社会の発展等に対応して、その資金獲得活動を変化させ続けており、近年における暴力団の資金獲得活動は、被害者に対して暴力団の威力を示す必要がない詐欺によるものが拡大しているところ、グループを構成し、役割分担をしつつ敢行する特殊15詐欺に指定暴力団員が関与する場合においては、指定暴力団の威力は、グループ内部への統制に利用されることになると認められる(認定事実イ、ウ)。 Dは、本件特殊詐欺事件を行うに当たり、その下位にあるF、G及びHを東京連絡所に呼び、指示をしたり、報告を受けたり、詐取金等を受20領したりしていたところ、F、G及びHはいずれも、Dが暴力団員であると認識しており、そのために恐怖を抱いていたと認められるから(同エ。なお、G及びHが本件詐欺 、報告を受けたり、詐取金等を受20領したりしていたところ、F、G及びHはいずれも、Dが暴力団員であると認識しており、そのために恐怖を抱いていたと認められるから(同エ。なお、G及びHが本件詐欺グループから離脱することがないよう直接的に脅迫的言辞を用いていたのはFであると認められるが、Fが上位者であるDの意と全く無関係にそのようなことを述べるとは考えにくく、25Dに統制されていたFが、これを受けてG及びHを統制しているという23 構造であったと認められる。また、F、G及びHは、東京連絡所においてQ会の代紋が入ったカレンダーを目にすることで、日本最大の暴力団であるP組〔同ア〕傘下の組織の事務所であり、Dがそこに所属していると認識したと認められる。)、Dは、暴力団の威力を利用して、受け子らを統制し、本件特殊詐欺事件を行っていたと認められる。 5被告は、Dの本件特殊詐欺事件における取り分(報酬)につき、その分配割合が低かった旨を指摘するところ、仮にDの報酬がGやH等より少ない割合であったとしても、特殊詐欺においては、末端で動く受け子よりも、受け子を統括する立場にある者の方がより多くの犯罪に関与することが当然に想定され、その分報酬も多くなると考えられるから、一10つの事件に係る報酬の割合が低かったとしても、そのことから直ちに本件詐欺グループ内におけるDの影響力が小さかったとか、Dが暴力団の威力を利用していなかったと評価することはできないばかりか、受け子らに本件特殊詐欺事件によって得た金銭を相応に分け与えることにより、経済的な恩義から受け子らが犯行を継続せざるを得ない状況を作り出し15ていたともいえる。 また、被告は、U会系の暴力団員であるEへの分配割合が高かったことから、本件特殊詐欺事件はU会の資金獲得活動であ 恩義から受け子らが犯行を継続せざるを得ない状況を作り出し15ていたともいえる。 また、被告は、U会系の暴力団員であるEへの分配割合が高かったことから、本件特殊詐欺事件はU会の資金獲得活動であるとも主張するが、U会の資金獲得活動であることとP組の資金獲得活動であることは両立し得るから、この点に関する被告の主張は採用することができない。 20ウ 以上によれば、本件各不法行為は、指定暴力団であるP組傘下のSの構成員であったDが、当該指定暴力団に所属していることにより資金獲得活動を効果的に行うための影響力又は便益を利用して行われたものと認められ、当該指定暴力団の指定暴力団員としての地位と資金獲得行為が密接に結びついているものといえるから、「当該指定暴力団の威力を利用して」行25われたものであって、暴対法31条の2の「威力利用資金獲得行為」を行24 うについてされたものと認められる。 3 争点3(本件各不法行為と相当因果関係のある損害の発生及びその額)について⑴ 財産的損害Dを含む本件詐欺グループが行った本件各不法行為によって、原告Aは5500万円、原告Bは200万円、原告Cは1500万円を詐取されたのであるから(前提事実⑵ア)、原告らには、それぞれ同額の財産的損害が発生したと認められる。 ⑵ 精神的損害原告らは、それぞれ本件詐欺グループによる組織的犯罪により多額の金銭10を奪われ、生活の平穏を害されたのみならず、特殊詐欺被害に遭わないよう広く注意喚起がされているにもかかわらず、不注意にもその被害に遭ってしまったという自責の念に駆られており、財産的損害が回復されたとしても、それでは補いきれない精神的苦痛を被っていると認められるところ(甲3638、51、53、弁論の全趣旨)、その精神的苦痛を慰謝するには ったという自責の念に駆られており、財産的損害が回復されたとしても、それでは補いきれない精神的苦痛を被っていると認められるところ(甲3638、51、53、弁論の全趣旨)、その精神的苦痛を慰謝するには、詐取さ15れた金員の1割をもって相当と認める(原告Aについては50万円、原告Bについては20万円、原告Cについては150万円)。 ⑶ 弁護士費用原告らが本件訴訟を追行するべく、弁護士に委任したことは当裁判所に顕著であるところ、その弁護士費用としては、上記⑴及び⑵の合計額の1割を20もって相当と認める(原告Aについては55万円、原告Bについては22万円、原告Cについては165万円)。 ⑷ 損害額以上によれば、各原告が被った損害の合計額は以下のとおりである。 ア 原告Aについて、605万円(なお、Dは、令和2年7月10日、原告25Aに対し、本件に係る被害の一部として40万円を弁済した〔争いなし〕。 25 原告Aに対する不法行為の日(平成31年1月8日)から上記弁済日までの確定遅延損害金は45万4993円であり、上記弁済金はこれに充当される(法定充当)。上記元本に確定遅延損害金の残金を加えた金額は610万4993円であり、遅延損害金の起算日は上記弁済日の翌日である令和2年7月11日となる。)5イ 原告Bについて、242万円(なお、遅延損害金の起算日は不法行為の日である平成31年1月17日となる。)ウ 原告Cについて、1815万円(なお、遅延損害金の起算日は不法行為の日である同月29日となる。)4 結論10以上によれば、原告らの請求はいずれも理由があるから、これらをいずれも認容することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第23部 裁判長裁判官 上によれば、原告らの請求はいずれも理由があるから、これらをいずれも認容することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第23部 裁判長裁判官 武 部 知 子15 裁判官 竹 中 輝 順 20 裁判官 川 口 碧

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