昭和44(あ)1497 業務上過失致死、道路交通法違反

裁判年月日・裁判所
昭和45年12月22日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄自判 福岡高等裁判所 宮崎支部
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【DRY-RUN】主    文      原判決および第一審判決を破棄する。      被告人を懲役三月に処する。      ただし、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。      本件公訴事実中、業務上過

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主文 原判決および第一審判決を破棄する。 被告人を懲役三月に処する。 ただし、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。 本件公訴事実中、業務上過失致死の点につき、被告人は無罪。 理由 弁護人池田惟一の上告趣意第一点のうち、判例違反をいう点は、引用の判例は事案を異にし本件に適切でなく、その余は、単なる法令違反の主張であり、同第二点は、量刑不当の主張であつて、いずれも上告適法の理由にあたらない。 しかし、所論にかんがみ職権によつて調査すると、原判決および第一審判決は、後記のとおり、刑訴法四一一条一号により破棄を免れないものと認められる。 本件業務上過失致死の公訴事実について、原判決および第一審判決が認定した事実関係と、これに対する法律判断は、おおむね次のとおりである。 すなわち、被告人は、自動車運転の業務に従事するものであるが、昭和四三年四月一四日午後九時三〇分ごろ、普通乗用自動車を運転して、鹿児島県川内市a町から同県薩摩郡b町c方面に通ずる幅員九、六メートルの国道二六七号線を、c方面に向け、時速八〇キロメートルで進行中、同市d町e番地先にある右国道と幅員約三メートルの農道とが交差する交通整理の行なわれていない交差点にさしかかり、これを通過しようとしたものである。ところで、被告人は、右交差点の手前七二メートル余の地点に達したときに、右方農道上の交差点の手前四〇メートル余の地点を、点燈した単車に乗つて、交差点に向けて進行中の被害者Aを発見したのであるが、当時は夜間で、視界も十分でなく、被告人の車両と被害者の車両との交差点までの距離関係からみて、交差点における両車の衝突の危険が事前に十分予測されたのであるから、自動車運転者としては、たとい自車の進行する道路の幅員が相 も十分でなく、被告人の車両と被害者の車両との交差点までの距離関係からみて、交差点における両車の衝突の危険が事前に十分予測されたのであるから、自動車運転者としては、たとい自車の進行する道路の幅員が相手方- 1 -のそれよりも広いものであるとしても、いつでも停止できるように法定速度以下に減速して、衝突を避けるべき業務上の注意義務があつたものといわなければならない。しかるに、被告人は、被害者が国道の入口で一時停止をし、自己を優先させてくれるものと軽信して、時速八〇キロメートルの高速のまま進行を続けた過失により、右交差点において、自車前部を被害者の単車に激突させて被害者をはね飛ばし、よつて被害者を頭蓋骨および頭蓋底骨折等により即死させたものである。なお、被害者に国道の入口で一時停止または徐行をしなかつた過失があつたとしても、それは、被告人の右過失責任を免れる事由とはならない、というのである。 たしかに、被告人が、右判示のような注意をしておれば、本件事故は発生しなかつたであろうと思われる。問題は、被告人にそのような注意義務があるかということである。そこで、以上の事実関係を基礎にして、被告人の注意義務に関する原判示の当否について考える。 道路交通法三五条三項によると、「車両は、交通整理の行なわれていない交差点に入ろうとする場合において、左方の道路から同時に当該交差点に入ろうとしている車両があるときは、当該車両の進行を妨げてはならない。」のである。また、同法三六条二項によると、「車両等は、交通整理の行なわれていない交差点に入ろうとする場合において、……その通行している道路(優先道路を除く。)の幅員よりもこれと交差する道路の幅員が明らかに広いものであるときは、徐行しなければならない。」のであり、同条三項によると、「前項の場合において、……幅員が広 その通行している道路(優先道路を除く。)の幅員よりもこれと交差する道路の幅員が明らかに広いものであるときは、徐行しなければならない。」のであり、同条三項によると、「前項の場合において、……幅員が広い道路から当該交差点に入ろうとする車両等があるときは、車両等は、……幅員が広い道路にある当該車両等の進行を妨げてはならない。」のである。これを本件についてみると、被告人は、被害者からみて左方の道路から交差点にはいろうとしていたものであり、また、被告人の通行していた国道は、被害者の通行していた農道の約三、二倍の広さなのであるから、これが明らかに広いものであることは多言を要- 2 -しないところである。しかも、原判示によると、被告人が被害者を発見した当時における被告人の車両と被害者の車両との交差点までの距離関係からみて、交差点における両車の衝突の危険が事前に十分予測されたというのであり、しかも、現に交差点において衝突しているのであるから、被害者が交差点にはいろうとした当時において、被告人の車両は、同法三五条三項にいう「同時に当該交差点に入ろうとしている車両」であり、また、同法三六条三項にいう「当該交差点に入ろうとする車両等」であつたといわなければならない。そうすると、被害者としては、同法三六条二項により国道の入口で徐行し、かつ、同法三五条三項および同法三六条三項により被告人の車両の進行を妨げないように一時停止するなどの措置に出なければならなかつたものといわざるをえない。このようなわけであるから、被告人が、被害者が国道の入口で一時停止をし、自己を優先させてくれるものと思つたのは、自動車運転者として当然のことであり、これを不注意であるということはできない。もつとも、原判決は、被害者の方が被告人より先に交差点に進入していたのであるから、被告人として てくれるものと思つたのは、自動車運転者として当然のことであり、これを不注意であるということはできない。もつとも、原判決は、被害者の方が被告人より先に交差点に進入していたのであるから、被告人としては、自己の方が幅員の広い道路を進行していても、道路交通法三五条一項の明記するところにより、被害者の進行を妨げてはならないのであり、したがつて、被告人が同法三六条三項を根拠にして、被告人に優先通行の順位があると判断したのは軽卒といわねばならず、被告人に過失があることは明らかであるといつているので、この点について付言しておくこととする。同法三五条一項が同法三六条三項に優先する規定であることは、道路における危険を防止し、交通の安全を図ろうとする道路交通法の目的からいつて当然のことといわなければならないが、被告人が前記のように、被害者が国道の入口で一時停止をし、自己を優先させてくれるものと思つたのは自動車運転者として当然のことであつたのであるから、被告人が交差点にはいる直前に被害者が同法三五条三項、三六条三項の規定に違反して一瞬先きに突然交差点に進入してきたために、被告人が同法三五条一項により被害- 3 -者の進行を妨げてはならないことになつたとしても、その一事をもつて被告人が右のように思つたことを軽卒であるということはできないし、また、記録によると、被害者が交差点に進入したのは、衝突の直前であつたのであるから、これを捕えて被告人に不注意があつたともいえないわけである。 以上のような次第であつて、本件では、被害者が一時停止をして被告人に進路を譲るべきものであつたのであるから、被告人が、当時、道路交通法六八条に違反して時速八〇キロメートルの速度で車両を運転していたことは、右の結論に影響を及ぼすものではない。もちろん、被告人が法定速度である時速六〇キロ あつたのであるから、被告人が、当時、道路交通法六八条に違反して時速八〇キロメートルの速度で車両を運転していたことは、右の結論に影響を及ぼすものではない。もちろん、被告人が法定速度である時速六〇キロメートルで運転していたとすれば、あるいは本件のような事故は起こらなかつたかもしれない。 この意味で、右道路交通法違反と被害者の死亡との間には条件的な因果関係はあるが、このような因果関係があるからといつて、ただちに過失があるということができないことは、あえて多言を要しないところである。 これを要するに、本件被告人のように、交差する左方の道路で、しかも、交差する道路(優先道路を除く。)の幅員より明らかに広い幅員の道路から、交通整理の行なわれていない交差点にはいろうとする自動車運転者としては、その時点において、自己が道路交通法六八条に違反して時速八〇キロメートルで運転をしていたとしても、交差する右方の道路から交差点にはいろうとする車両等が交差点の入口で徐行し、かつ、自車の進行を妨げないように一時停止するなどの措置に出るであろうことを信頼して交差点にはいれば足り、本件被害者のように、あえて交通法規に違反して、交差点にはいり、無謀に自車の前を横切る車両のありうることまでも予想して、減速徐行するなどの注意義務はないものと解するのが相当である。 そうとすると、本件業務上過失致死の公訴事実について、被告人に過失責任を認めた原判決および第一審判決は、法令の解釈を誤り、被告事件が罪とならないのに、これを有罪としたものというべく、右は判決に影響を及ぼすことが明らかであり、- 4 -刑訴法四一一条一号により、これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。 よつて、同法四一三条但書、四一四条、四〇四条により、被告事件について更に判決する。 罪となるべき - 4 -刑訴法四一一条一号により、これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。 よつて、同法四一三条但書、四一四条、四〇四条により、被告事件について更に判決する。 罪となるべき事実被告人は、昭和四三年四月一四日午後九時三〇分ごろ、川内市d町e番地先の国道二六七号線において、法定の最高時速六〇キロメートルを越えた時速八〇キロメートルの速度で、普通乗用自動車を運転したものである。 証拠の標目一、被告人の第一審の公判廷における供述二、被告人の検察官に対する供述調書三、Bの司法警察員に対する供述調書法令の適用被告人の判示所為は、道路交通法六八条、一一八条一項三号、二二条一項、同法施行令一一条一号に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、その刑期の範囲内で、被告人を懲役三月に処し、刑法二五条一項により、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予することとする。 無罪部分本件公訴事実中、業務上過失致死の点については、前記の理由により、刑訴法三三六条前段により、無罪の言渡をすることとする。 よつて、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 検察官山根正公判出席昭和四五年一二月二二日最高裁判所第三小法廷- 5 -裁判長裁判官飯村義美裁判官田中二郎裁判官下村三郎裁判官松本正雄裁判官関根小郷- 6 - 裁判官関根小郷

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