昭和28(ネ)82 定期貯金払戻請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和28年8月20日 名古屋高等裁判所 棄却
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【DRY-RUN】主    文      本件控訴を棄却する。      控訴費用は控訴人の負担とする。          事    実  控訴代理人は原判決を取消す被控訴人は控訴人に対し金百万円及之に対する昭和 二十

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判決文本文4,456 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 控訴代理人は原判決を取消す被控訴人は控訴人に対し金百万円及之に対する昭和二十五年二月二十八日以降完済迄百円に付き一ケ年三円八十銭の割合による金員を支払え、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とするとの判決並仮執行の宣言を求め、被控訴人は口頭弁論期日に出頭しなかつたが被控訴代理人提出の答弁書に基き控訴棄却の判決を求めたものと看做す。 当事者雙方の事実上の陳述は出頭した控訴代理人の陳述によれば控訴代理人に於て原判決二枚目表四行目「被告であつたが」とあるを「組合理事Hであつたが」と訂正し、原判決二枚目表九行目「昭和二十五年三月二十九日」とあるを「昭和二十五年二月二十九日」と訂正して陳述した外原判決事実摘示と同一であるから之を引用する。 証拠として控訴代理人は甲第一乃至六号証を提出し原審に於ける証人A、Bの各証言及控訴本人訊問の結果を援用した。被控訴人は原審に於て乙第一号証を提出し甲第一号証の表面の成立を否認し同号証の裏面は印刷部分の成立を認め其の余の部分の成立を否認し甲第二乃至五号証の成立を認め同第六号証の成立は不知と述べ原審証人C、D、E、F、Gの各証言を援用している。 理由 本件定期貯金証書(甲第一号証)の作成日附なる昭和二十五年二月二十八日当時被控訴組合の組合長理事はHであつたこと及訴外Cが当時被控訴組合の専務理事であつて組合定款第三十七条により組合長の職務代行の権限を有していたことは当事者間争がない、そして原審に於ける証人D、E、F、Gの各証言及証人A、B、Cの証言の一部、控訴本人訊問の結果中一部並成立に争なき甲第四号証を綜合すれば(一)訴外Dは金員の必要に迫られ訴外Fに其の金策を相談し ない、そして原審に於ける証人D、E、F、Gの各証言及証人A、B、Cの証言の一部、控訴本人訊問の結果中一部並成立に争なき甲第四号証を綜合すれば(一)訴外Dは金員の必要に迫られ訴外Fに其の金策を相談した結果同人の世話で被控訴組合専務理事Cから被控訴組合の定期貯金証書用紙を借受け之を用いて被控訴組合定期貯金名下に控訴人或は訴外A等から金員を受取つて自己の用途に供しようと企て右Fを通じて右定期貯金証書用紙を借りたい旨をCに申出でたこと、(二)訴外Cも亦前記Dに対しては予てから恩義を受けていた関係上其の要望を断りかねてDが第三者をして被控訴組合に定期貯金を為さしむるが如く仕做して受取つた金員を自己の用途に充つるものなる情を知り乍ら被控訴組合定期貯金証書用紙数通に被控訴組合で当時は使用していなかつた被控訴組合の印章を押捺して之をDに貸し与えたこと、(三)Dは昭和二十四年十二月末頃訴外B方で控訴人から被控訴組合に対する定期貯金百万円の内の半額五十万円なりと称して利息一ケ月分十万円を差引いた現金四十万円を受取り之と引換に前記借受けた定期貯金証書一通に金額及被控訴組合長の氏名等を記入して之を控訴人に差入れ、(四)昭和二十五年一月中控訴人と訴外AはD方に至り前記百万円の定期貯金の残りの半分なりとしてAが携えて来た現金五十万円をDに渡し、Dは其の時Cを控訴人及Aの面前に呼寄せて貯金のお礼を述べしめ恰も被控訴組合が百万円の定期貯金を了承しているかの如く仕做したこと、(五)Dは右(三)(四)の如く受取つた金員は凡て自己の用途に充て之を被控訴組合に差出したことはないこと、(六)昭和二十五年二月二十日頃Dは訴外水谷産業株式会社社長G個人振出名義の小切手を同人から借受けて之を控訴人方に於て控訴人に交付し之と同時に先に控訴人に差入れてあつた百万円の被控訴組合名義の定 、(六)昭和二十五年二月二十日頃Dは訴外水谷産業株式会社社長G個人振出名義の小切手を同人から借受けて之を控訴人方に於て控訴人に交付し之と同時に先に控訴人に差入れてあつた百万円の被控訴組合名義の定期貯金証書の返還を受け其の際一ケ月分の利息金として十万円を支払つたこと、(七)Dは昭和二十五年二月二十八日前記(二)の如く借受けた定期貯金証書一通に年月日及百万円の金額、被控訴組合長Hの氏名、名宛人Aの氏名等を記入して(甲第一号証)之を控訴人方に於て控訴人に交付し之と引換に前記(六)の小切手の返還を受け其の際一ケ月分の利息十万円を支払い且其の後も同年三月中利息の一部として金四万円を控訴人に支払つたことを夫々認定することが出来る。原審に於ける証人A、B、Cの証言中及控訴本人訊問の結果中以上の認定に反する部分は措信し難い、以上の事実から見て昭和二十五年二月二十八目訴外Aと被控訴組合との間には現金百万円の授受はなかつたことは明かであるが、Dが前記(三)の如く控訴人から受取つた利息差引の四十万円及(四)の如くAから受取つた五十万円を消費寄託の目的として昭和二十五年二月二十八日Aが被控訴組合に百万円の定期貯金を為したことにA及控訴人とDが合意したこと及右合意はDが被控訴組合の名に於て為したものであることをあらまし認め得るのである、従つてCが右の如き消費寄託契約を為すことに付て被控訴組合の代表権限があり且同人はDに右の如き契約に付て被控訴組合の代理権を授受し寄託金員受領の権限を与えたものと謂うべきであるから他に特段の事由なき限り右の如き合意は授受せられた金員の限度に於て有効なる消費寄託契約として被控訴組合に対して効力を有するものと謂はなければならぬ、詳言すれば控訴人Aは被控訴組合の組合員ではないけれども成立に争なき甲第三号証によれば被控訴組合定款第五十一 度に於て有効なる消費寄託契約として被控訴組合に対して効力を有するものと謂はなければならぬ、詳言すれば控訴人Aは被控訴組合の組合員ではないけれども成立に争なき甲第三号証によれば被控訴組合定款第五十一条第二条第二号により被控訴組合は組合員以外の者からも貯金の受入を為すことが出来る旨を定めているから本件の如き定期貯金は被控訴組合の目的の範囲内に属する行為でありCが被控訴組合の組合長代行者として代表権のあることは前示の如く被控訴組合の争はざるところであるからCは本件の如き定期貯金に関し被控訴組合の名に於て消費寄託契約を為すことは其の代表権の行使そのものであつて仮令Cが貯金者が差出す金員を自己の用途に費消し又は第三者をして領得せしむる背信の意思を以て為しても貯金者が善意なる限り其の代表行為の効果が被控訴組合に帰することに変りはない。又Cは前記(二)の如く被控訴組合の定期貯金証書用紙に被控訴組合の印章を押捺して之をDに交付したのであるから仮令該印章が当時被控訴組合で使用しているものではなかつたにせよCに前記の代表権がある以上右証書は偽造ではない、又Cが定期預金上の法律行為を為す代表権がある以上其の代理権を他人に授与することは代表権の行使そのものであるからDに右の証書を前記(二)の如く交付したことはDをして其の欲する者との間に其の欲する金額に付き被控訴組合の名に於て定期貯金に付き消費寄託契約を為すこと及貯金者から貯金を受領する代理権を有効に与えたものであり従つてDが被控訴組合の名に於て第三者との間に定期貯金に付て消費寄託契約を為し寄託金員を受領した以上其の受領した金員の限度に於て消費寄託契約上の効果は有効に被控訴組合に生ずるものと謂うべくDが被控訴組合の利益の為めではなく当初から該金員を自己の用途に使用する背信の意思であつたからと言つて其の代理行 受領した金員の限度に於て消費寄託契約上の効果は有効に被控訴組合に生ずるものと謂うべくDが被控訴組合の利益の為めではなく当初から該金員を自己の用途に使用する背信の意思であつたからと言つて其の代理行為の効果に影響あるものではない。 <要旨>然し乍ら右の如く代表者又は代理人の法律行為の効果が本人に生ずるのは行為の相手方を保護し取引の安全</要旨>を図るにあるから代表者又は代理人の行為の相手方が代表者又は代理人に前記の如き背信の意思あるを知り乍ら或は知り得べきであり乍ら取引を為したものであるときはかかる相手方を保護する必要はなく此の場合は本人に法律効果は生じないと解するのを相当とする、このことは民法第九十三条の法意を類推適用して明かである、本件定期貯金に付ての消費寄託契約は前記の如くDが有効なる代理権に基き被控訴組合の名に於て之を為し且現金九十万円を受領しているけれどもA及控訴人はDが前記の如き背信の意思を以て為すものであることを知り乍ら又は知り得べきであるに拘らず本件契約を為したものと認め得ることは次に説明する通りであるから被控訴組合に其の効果を生じていない、蓋し被控訴組合は農業協同組合法による組合であつて甲第三号証定款によれば貯金の受入及組合員に対する貸付は其の重要なる事業であり原審証人Eの証言によれば現金の出納は出納係によつて組合事務所に於て行はれるのに反し前記認定の如く本件定期貯金に付ては現金の授受も証書の授受も被控訴組合とは何等の関係のない訴外B、D、控訴人I方で行はれ又甲第一号証によれば定期貯金の利息は一ケ年三分八厘なることを認め得るのであるが本件に於ては百万円に対し一ケ月毎に全く高利の貸借に見る如く月一割なる十万円の利息を控訴人方に於て授受していて而も其の利息の持参人は常にDであり且甲第一号証裏面には被控訴組合に対する貯金は被 であるが本件に於ては百万円に対し一ケ月毎に全く高利の貸借に見る如く月一割なる十万円の利息を控訴人方に於て授受していて而も其の利息の持参人は常にDであり且甲第一号証裏面には被控訴組合に対する貯金は被控訴組合の承諾がなければ譲渡することが出来ない旨の記載があるのに拘らず成立に争なき甲第五号証原審に於ける証人A、Cの証言、控訴本人訊問の結果等によればAは本件債権の譲渡に付き被控訴組合の承諾を得ていないことが窺えるのであつて斯様な状況と前記(一)乃至(七)の説明に挙示した証拠を綜合すれば控訴人及Aは本件定期貯金が全く被控訴組合の業務とは浮き離れていてそれはただDが自己の事務として自己の利益の為めに被控訴組合の名を弄して定期貯金名下に自ら高利を払つてAや控訴人の金員を利用するものであることを知り乍ら契約を為し金員を交付していたものと認むるに難くなく若し知つていなかつたとしても前記の事情から見て少くとも之を知り得べき場合であつたと認め得る、以上の如く控訴人の主張する本件定期貯金債権は被控訴組合に法律効果を生じていないから被控訴組合は其の支払義務がないのであつて控訴人の本訴請求は失当であり之を棄却した原判決は正当である。 仍て本件控訴を棄却すべく民事訴訟法第三百八十四条第一項第九十五条第八十九条を適用し主文の如く判決する。 (裁判長裁判官中島奨裁判官白木伸裁判官県宏)

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