令和1(ワ)14218 発信者情報開示請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年12月11日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-89308.txt

判決文本文20,546 文字)

令和元年12月11日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和元年(ワ)第14218号発信者情報開示請求事件口頭弁論終結日令和元年10月9日判決主文 1 被告は,原告らに対し,別紙1発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 主文同旨第2 事案の概要 1 事案の骨子本件は,インターネット上の投稿サイトに氏名不詳者がした投稿によって権利を侵害されたと主張する原告らが,当該投稿をした者に対する不法 行為に基づく損害賠償請求権等を行使するため,当該投稿の発信者がその発信のために利用した経由プロバイダである被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,当該投稿の発信者に係る情報の開示を求めた事案である。 なお,原告らが開示を求める発信者情報には,別紙1発信者情報目録記載のとおり,SMS用電子メールアドレスが含まれる。SMS(ShortMessageService)とは,携帯電話やPHS同士で文章をやり取りするサービスであり,SMSの送受信においては,電話番号が送受信先の電子メールアドレスとして機能することとなる。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣 旨により容易に認められる事実。特に断りのない限り,証拠番号には枝番号も含む。)当事者等ア原告株式会社A(以下「原告A」という。)は,東京都千代田区内で不動産事業等を営む株式会社であり,原告Bは,原告Aの代表取締 役を務める者である(甲5,弁論の全趣旨)。 イ被告は,プロバイダ責任制限法2 A(以下「原告A」という。)は,東京都千代田区内で不動産事業等を営む株式会社であり,原告Bは,原告Aの代表取締 役を務める者である(甲5,弁論の全趣旨)。 イ被告は,プロバイダ責任制限法2条3号の「特定電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し,その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者」(特定電気通信役務提供者)に該当する者である。 なお,別紙2投稿記事目録記載の投稿記事(以下「本件記事」とい う。)は,プロバイダ責任制限法2条1号の「特定電気通信」に該当し,被告の提供するインターネット接続サービスを経由して投稿されたものであるから,被告は,本件記事につき,プロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に該当する。(弁論の全趣旨)本件記事の存在 氏名不詳者は,ミクル株式会社が運営するインターネット上の投稿サイトである「マンションコミュニティ」(以下「本件サイト」という。)に,本件記事を投稿した(甲1)。 関係法令等の定めアプロバイダ責任制限法 3条の2(公職の候補者等に係る特例)前条第2項の場合のほか,特定電気通信役務提供者は,特定電気通信による情報(選挙運動の期間中に頒布された文書図画に係る情報に限る。以下この条において同じ。)の送信を防止する措置を講じた場合において,当該措置により送信を防止された情報の発信者 に生じた損害については,当該措置が当該情報の不特定の者に対す る送信を防止するために必要な限度において行われたものである場合であって,次の各号のいずれかに該当するときは,賠償の責めに任じない。 一略二特定電気通信による情報であって,特定文書図画に係るものの 流通によって自己の名誉を侵害されたとする公職の候補者等から,名誉 のいずれかに該当するときは,賠償の責めに任じない。 一略二特定電気通信による情報であって,特定文書図画に係るものの 流通によって自己の名誉を侵害されたとする公職の候補者等から,名誉侵害情報等及び名誉侵害情報の発信者の電子メールアドレス等(公職選挙法第142条の3第3項に規定する電子メールアドレス等をいう。以下同じ。)が同項又は同法第142条の5第1項の規定に違反して表示されていない旨を示して当該特定電気通 信役務提供者に対し名誉侵害情報送信防止措置を講ずるよう申出があった場合であって,当該情報の発信者の電子メールアドレス等が当該情報に係る特定電気通信の受信をする者が使用する通信端末機器(入出力装置を含む。)の映像面に正しく表示されていないとき。 4条1項(発信者情報の開示請求等)特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は,次の各号のいずれにも該当するときに限り,当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し,当該開 示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名,住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の開示を請求することができる。 一侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害 されたことが明らかであるとき。 二当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。 イ公職選挙法142条の3(ウェブサイト等を利用する方法による文書図画の頒布) 第1項第142条第1項及び第4項の 場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。 イ公職選挙法142条の3(ウェブサイト等を利用する方法による文書図画の頒布) 第1項第142条第1項及び第4項の規定にかかわらず,選挙運動のために使用する文書図画は,ウェブサイト等を利用する方法(インターネット等を利用する方法(電気通信(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第1号に規定する電気通信をいう。以下同 じ。)の送信(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信を除く。)により,文書図画をその受信をする者が使用する通信端末機器(入出力装置を含む。以下同じ。)の映像面に表示させる方法をいう。以下同じ。)のうち電子メール(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(平成14年法律第26号)第 2条第1号に規定する電子メールをいう。以下同じ。)を利用する方法を除いたものをいう。以下同じ。)により,頒布することができる。 第2項選挙運動のために使用する文書図画であってウェブサイト等を利 用する方法により選挙の期日の前日までに頒布されたものは,第129条の規定にかかわらず,選挙の当日においても,その受信をする者が使用する通信端末機器の映像面に表示させることができる状態に置いたままにすることができる。 第3項 ウェブサイト等を利用する方法により選挙運動のために使用する 文書図画を頒布する者は,その者の電子メールアドレス(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第2条第3号に規定する電子メールアドレスをいう。以下同じ。)その他のインターネット等を利用する方法によりその者に連絡をする際に必要となる情報(以下「電子メールアドレス等」という。)が,当該文書図画に係る電気 通信 子メールアドレスをいう。以下同じ。)その他のインターネット等を利用する方法によりその者に連絡をする際に必要となる情報(以下「電子メールアドレス等」という。)が,当該文書図画に係る電気 通信の受信をする者が使用する通信端末機器の映像面に正しく表示されるようにしなければならない。 ウ特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(以下「特定電子メール法」という。)2条(定義)この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定 めるところによる。 一電子メール特定の者に対し通信文その他の情報をその使用する通信端末機器(入出力装置を含む。以下同じ。)の映像面に表示されるようにすることにより伝達するための電気通信(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第1号に規定する電気通信を いう。)であって,総務省令で定める通信方式を用いるものをいう。 二略三電子メールアドレス電子メールの利用者を識別するための文字,番号,記号その他の符号をいう。 四及び五略 エ特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第四条第一項の発信者情報を定める省令〔平成14年総務省令第57号〕(以下「平成14年総務省令」という。)特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第4条第1項に規定する侵害情報の発信者の特定に資 する情報であって総務省令で定めるものは,次のとおりとする。 一発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名又は名称二発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所三発信者の電子メールアドレス(電子メールの利用者を識別するための文字,番号,記号その他の符号をいう。)四~七略 オ特定電子メールの送 二発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所三発信者の電子メールアドレス(電子メールの利用者を識別するための文字,番号,記号その他の符号をいう。)四~七略 オ特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第二条第一号の通信方式を定める省令〔平成21年総務省令第85号〕(以下「平成21年総務省令」という。)特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第2条第1号の総務省令で定める通信方式は,次に掲げるものとする。 一その全部又は一部においてシンプルメールトランスファープロトコルが用いられる通信方式二携帯して使用する通信端末機器に,電話番号を送受信のために用いて通信文その他の情報を伝達する通信方式 3 争点及び争点に関する当事者の主張 争点①(本件記事が原告らのことを指すと認められるか否か)について【原告らの主張】別紙3権利侵害の説明の「第1 同定可能性」に記載のとおり,本件記事は,原告らに関する投稿であることは明白であって,同定可能性が 認められる。 【被告の主張】本件記事には,原告らの氏名又は名称等,原告らを示唆するような情報は一切記載されていない。また,本件記事が掲載されたスレッドのタイトルに含まれる「A」が,実在する株式会社の名称を指すかは必ずし も明らかでなく,仮に実在する株式会社の名称を指しているとしても, 原告Aのことを指していることが明らかとはいえない(原告Aの他にも同一の名称の株式会社が存在する可能性も考えられる)し,そもそもスレッド内にはスレッドのタイトルとは無関係な投稿がされる可能性も考えられる。 さらに,本件記事中の「トップ二人」との記載についても,その具体 的な意味内容及び当該記載と原告Bとの関係性がいずれも明ら はスレッドのタイトルとは無関係な投稿がされる可能性も考えられる。 さらに,本件記事中の「トップ二人」との記載についても,その具体 的な意味内容及び当該記載と原告Bとの関係性がいずれも明らかではない。 したがって,一般閲覧者の通常の注意と読み方を基準とすれば,本件記事が原告らを対象とするものであることが明らかであるとはいえない。 争点②(権利侵害の明白性の有無)について 【原告らの主張】別紙3権利侵害の説明の「第2 名誉権侵害」及び「第3 名誉感情侵害」に記載のとおり,本件記事が原告らの社会的評価を低下させ,かつ,原告Bの名誉感情をも侵害しているものであることは明らかであり,違法性阻却事由も不存在であることから,本件記事が原告らの権利を侵 害することは明白である。 【被告の主張】ア仮に本件記事が原告らに関する記事であるとしても,本件記事は,単に,投稿者の個人的な意見,感想又は疑問を述べたものとしか読み取ることができず,具体的な事実を摘示するものとはいえない。 原告らは,本件記事により,原告Aの経営状態が悪化してイベントを行う余裕すらないとの印象を閲覧者に与え,顧客に根拠のない不安を与えることにより取引継続や新規契約にも支障を来したなどと主張するようであるが,単にクリスマス会というイベントが開催されないという事実のみでは直ちに原告Aの経営状態がいかなるものかを判断 することはできず,本件記事は原告Aの社会的評価・信用を低下させ るものであるとはいえない。 イまた,侮辱による名誉感情の侵害は,社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると評価されて初めて人格権侵害として不法行為を構成するところ,本件記事の記載内容や記載態様からすれば,本件記事は,殊更に原告Bの による名誉感情の侵害は,社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると評価されて初めて人格権侵害として不法行為を構成するところ,本件記事の記載内容や記載態様からすれば,本件記事は,殊更に原告Bの人格自体を否定するような攻撃的なものではな い(なお,原告らは,「ぶくぶくと太っている」との記載が原告Bの容姿を揶揄するものであると主張するが,かかる記載の意味内容自体必ずしも明確とはいえない)から,本件記事が,社会通念上許される限度を超えて原告Bを侮辱するものとはいえない。 したがって,一般閲覧者の注意と読み方を基準とすれば,本件記事 が,原告らの社会的評価を低下させ,原告Bの名誉感情を侵害するものとはいえない。 ウ仮に本件記事が原告らの社会的評価を低下させ,原告Bの名誉感情を侵害するものであるとしても,本件記事は,その記載内容及び投稿態様等からすれば,公共の利害に関するものでないこと,公益を図る 目的でされたものではないこと,記載内容が真実でないことがそれぞれ明らかであるとはいえない。なお,原告らは,原告Aが従業員を増員したとの事実を主張し,これにより原告Aが人員不足の状態でないこと及び経営状態が悪化していないことが裏付けられる旨主張するようであるが,増員の事実のみをもってこれらが裏付けられるとはいえ ない。 したがって,本件記事について違法性阻却事由が存在しないとはいえない。 争点③(情報の開示を受けるべき正当な理由の有無)について【原告らの主張】 ア原告らは,本件記事の発信者に対し,人格権侵害等を理由とする不 法行為に基づく損害賠償請求をする予定であるが,原告らがこの権利を行使するためには,被告が保有する本件記事に係る別紙1発信者情報目録記載の各情報の開示を受ける必要が 権侵害等を理由とする不 法行為に基づく損害賠償請求をする予定であるが,原告らがこの権利を行使するためには,被告が保有する本件記事に係る別紙1発信者情報目録記載の各情報の開示を受ける必要がある。 被告は,電子メールアドレスの開示について,氏名又は名称及び住所の開示があれば十分であり,その余の開示を受けるべき正当な理由 がないと主張する。 しかし,実際に氏名又は名称及び住所の開示を受けてみないことには,それらの情報のみで損害賠償請求権の行使に十分かは判断できない。また,当該開示された住所に居住しておらず連絡が取れなくなるということも十分に想定できるため,損害賠償請求等を発信者に対し て行うためには電子メールアドレスも開示を受ける必要がある。さらに,法解釈の観点からも,プロバイダ責任制限法4条1項は,発信者情報の具体的内容を総務省令で定めるものとし,これを受けた平成14年総務省令が各号においてその内容を列挙しているという法令の建付けからすると,プロバイダ責任制限法は,発信者情報の具体的内容 ごとに正当な理由の有無を判断することを想定していないというべきである。 よって,原告らには,電子メールアドレスの開示を受ける正当な理由がある。 イ別紙1発信者情報目録記載の「SMS用電子メールアドレス」とは, 被告が契約者に対して付与したSMS送受信が可能な電話番号である。 別紙3権利侵害の説明の「第4 別紙発信者情報目録記載の④についての補足」及び次に補足するとおり,プロバイダ責任制限法4条1項により委任を受けた平成14年総務省令3号に規定する,発信者情報としての「電子メールアドレス」には,SMTP電子メールアドレス 及びSMS用電子メールアドレスが含まれる。 法文上の用語は統 受けた平成14年総務省令3号に規定する,発信者情報としての「電子メールアドレス」には,SMTP電子メールアドレス 及びSMS用電子メールアドレスが含まれる。 法文上の用語は統一的に解釈されるべきことプロバイダ責任制限法3条の2第2号は,公職選挙法142条の3第3項の定義を引用することで,プロバイダ責任制限法における「電子メール」を定義したものである。そして,法文において明示的に定義された用語は,特段の留保がない限り,統一的に当該定義 に従って解釈されなければ,法解釈の予測可能性・安定性を欠くことになり不当である。 限定列挙の趣旨に反しないことプロバイダ責任制限法3条の2第2号の定義により,平成14年総務省令3号に限定列挙された「電子メールアドレス」にSMS用 電子メールアドレスが含まれることが明確化されたのであり,限定列挙の趣旨には何ら反しない。 発信者情報は,発信者側のプライバシーや通信の秘密に配慮して,発信者が情報開示を甘受すべきものを限定列挙したものであるが,SMS用電子メールアドレスは,法文の解釈上甘受すべき情報とし て限定列挙されている情報にほかならない。 後法優先の原則プロバイダ責任制限法の施行は平成14年,平成21年総務省令の施行は平成21年9月1日である。そして,プロバイダ責任制限法3条の2が施行されたのは平成25年5月26日である。 よって,仮にプロバイダ責任制限法制定当時において「電子メールアドレス」にSMS用電子メールアドレスすなわち電話番号が発信者情報から除外されていたとしても,その後の平成25年改正において,平成21年総務省令の規定を引用する形で「電子メール」の定義がされたのであるから,後法優先の原則に従い,プロバイダ 話番号が発信者情報から除外されていたとしても,その後の平成25年改正において,平成21年総務省令の規定を引用する形で「電子メール」の定義がされたのであるから,後法優先の原則に従い,プロバイダ 責任制限法制定当時の想定は改められたのであり,現時点において SMS用電子メールアドレスが発信者情報に含まれることに何ら問題はない。 SMS用電子メールアドレスは発信者の特定に資すること発信者情報開示請求において氏名及び住所が開示される場合,被告との契約者の氏名等が開示されることになる。そうすると,例え ば家族で同じ通信事業者を利用し,同一契約者が複数の端末を契約して,配偶者や子供などそれぞれに個別の端末を使用させるケースがあるため,そのような場合には,氏名及び住所の開示だけでは当該家族の中で誰が発信者であるのか分からないという場合がある。 そのような場合,SMTP電子メールアドレスだけでなく,SM S用電子メールアドレスも開示されれば,より確実に,どの端末からの発信であったかを特定でき,情報の発信者を特定することができる。そうすれば,発信者以外の家族への無用な責任追及を避けることも可能となる。 したがって,SMS用電子メールアドレスは,発信者の特定に資 する重要な情報であって,開示される必要性が高い情報である。 立法者意思及び制定経緯等についてプロバイダ責任制限法3条の2制定の際の立案担当者が,公職選挙法の規定を引用することで電話番号が電子メールアドレスに含まれてしまうことに思い至らなかったことは確かであろう。端的にい えば立案担当者のミスとも思える。しかしながら,そもそもプロバイダ責任制限法及び平成14年総務省令は,立法的に非常に不備の多い法文であり,実際のインターネ かったことは確かであろう。端的にい えば立案担当者のミスとも思える。しかしながら,そもそもプロバイダ責任制限法及び平成14年総務省令は,立法的に非常に不備の多い法文であり,実際のインターネット通信と適合していない部分も多い。また,立案担当者の意思は,法解釈においてそれほど重視される要素ではなく,特に明文の規定からの解釈に反してまで重視 されるべきではない。明文規定の解釈を立案担当者の意思によって 反対に解釈することは,法的安定性を欠き不当である。 SMS用電子メールアドレスは,SMS用電子メールアドレスとして開示対象となるのであり,例えばSMSとは無関係に電話番号の開示を認めるものではなく,一般の電子メールアドレス(SMTP電子メールアドレス)の開示と同一の位置づけであって,立法者 意思に反すると言い切れるのかも疑問がある。 以上より,現行のプロバイダ責任制限法の法解釈において,「電子メールアドレス」にはSMS用電子メールアドレスが含まれると解するべきである。 【被告の主張】 ア正当理由の存在については不知ないし争う。 被告の保有する発信者情報のうち,氏名又は名称及び住所の開示があれば損害賠償請求を行うことは可能であるから,これに加えて,電子メールアドレス及びSMS用電子メールアドレスなるものの開示を受けるべき正当な理由は存在しない。 イ SMS用電子メールアドレスの開示について原告はSMS用電子メールアドレスの開示を求めているが,これが電話番号のことを指しているのであれば,電話番号は電話番号であって電子メールアドレスではない。プロバイダ責任制限法4条1項及びこれを受けて発信者情報を限定列挙する平成14年総務省令 は,発信者のSMS用電子メールアドレスなるも ,電話番号は電話番号であって電子メールアドレスではない。プロバイダ責任制限法4条1項及びこれを受けて発信者情報を限定列挙する平成14年総務省令 は,発信者のSMS用電子メールアドレスなるものや電話番号を開示の対象となる情報として定めていないため,発信者のSMS用電子メールアドレスの開示に係る原告らの請求に基づき電話番号の開示が認められる余地はない。 原告らは,プロバイダ責任制限法3条の2第2号及び公職選挙法 142条の3第3項等の定めを根拠として,SMS用電子メールア ドレスなるものが平成14年総務省令3号にいう「電子メールアドレス」に含まれると主張する。 しかしながら,プロバイダ責任制限法3条の2第2号は,公職選挙法142条の3第3項にある「電子メールアドレス等」の定義を引用するにすぎず,同項に含まれる「電子メールアドレス(特定電 子メールの送信の適正化等に関する法律第2条第3号に規定する電子メールアドレスをいう。以下同じ。)」との記載をもってプロバイダ責任制限法における「電子メールアドレス」の定義とすることを規定するものではない。 そもそも,発信者情報開示請求の開示対象としての電子メールア ドレスをどのように定義するかという問題と,プロバイダ責任制限法3条の2ないし公職選挙法142条の3が選挙運動用文書図画について送信防止措置を講じる場合の免責要件をどのように定めるか(選挙運動用文書図画に表示されるべき頒布者の連絡先情報をどのように画するか)という問題とは,別の問題であって,発信者情報 開示請求における開示対象に「SMS用電子メールアドレス」なるもの(すなわち電話番号)を含まないことと,プロバイダ責任制限法3条の2ないし公職選挙法142条の3が選挙運動用文書図画に表示さ 開示請求における開示対象に「SMS用電子メールアドレス」なるもの(すなわち電話番号)を含まないことと,プロバイダ責任制限法3条の2ないし公職選挙法142条の3が選挙運動用文書図画に表示されるべきとする頒布者の連絡先にSMSの宛先(電話番号)を含むことは矛盾していない。 実質的にも,プロバイダ責任制限法4条1項及び平成14年総務省令は,発信者情報が個人のプライバシーに深く関わる情報であって,場合によっては通信の秘密として保護される事項であることに鑑みて,開示対象とすべき情報を限定列挙したものである。他方で,プロバイダ責任制限法3条の2第2号が言及する公職選挙法142 条の3第3項及び同法142条の5第1項は,選挙運動のために使 用する文書図画を頒布する者に身元情報を表示させるために規定されたものである。 このように,両者の趣旨が大きく異なることに照らしても,総務省令の定める「電子メールアドレス」にSMS用電子メールアドレスが含まれると解釈できないことは明らかである。 総務省は,平成14年総務省令制定時の意見募集において,電話番号等の開示に関し,「発信者情報の開示は通信の秘密や表現の自由という重大な権利利益に関する問題である上,一たび開示されてしまうと原状回復は不可能であるという性質を有していることから,開示請求の対象となる発信者情報は,訴訟による権利回復を可能に するという制度趣旨に照らして必要最小限の範囲に予め限定するのが相当である。」,「相手方を特定し,法的な権利回復措置を可能とするためには,氏名及び住所を開示させれば足り,あえて電話番号やファックス番号まで開示させる必要性は低いと考えられる。」と回答している。 また,平成14年総務省令の平成27年改正時に とするためには,氏名及び住所を開示させれば足り,あえて電話番号やファックス番号まで開示させる必要性は低いと考えられる。」と回答している。 また,平成14年総務省令の平成27年改正時に募集されたパブリックコメントには,「電話番号が平成14年総務省令に追加されていない」等の意見が寄せられた。これに対して,総務省からは,「発信者情報は個人のプライバシーに深く関わる情報であって,通信の秘密として保護される事項であることに鑑み,省令において開 示対象は相手方を特定し,連絡を行うのに合理的に有用と認められる情報を限定列挙することとしております。」などとの回答がされ,平成14年総務省令への電話番号の追加もされなかったほか,平成14年総務省令の「電子メール」に原告らのいう「SMS用電子メールアドレス」,すなわち電話番号が含まれるとの解釈も示されな かったところである(なお,上記回答が公示された平成27年11 月は,プロバイダ責任制限法3条の2の施行よりも後である。)。 加えて,平成14年総務省令は,他の法令における用語と定義を同一にする場合には,具体的に当該法令の条項を引用して定義しているところ,「電子メールアドレス」については,参照先として特定電子メール法2条3号は明示されていない。このことからすれば, 立案担当者は,平成14年総務省令における「電子メールアドレス」の定義について,特定電子メール法を参照する意図を有していなかったというべきである。 したがって,プロバイダ責任制限法を所管する総務省としても,「SMS用電子メールアドレス」すなわち電話番号については,プ ライバシー及び通信の秘密の保護の観点から,発信者情報に含めないとする意図を有していたのであって,平成14年総務省令の制定及 ,「SMS用電子メールアドレス」すなわち電話番号については,プ ライバシー及び通信の秘密の保護の観点から,発信者情報に含めないとする意図を有していたのであって,平成14年総務省令の制定及び改正の経緯に照らしても,原告の主張は誤りである。 平成14年総務省令は,プロバイダ責任制限法4条が規定する侵害情報の発信者の特定に資する情報として,「発信者の電子メール アドレス」(3号)を定める一方,プロバイダ責任制限法3条の2第2号は,「電子メールアドレス等」という文言について公職選挙法142条の3第3項の定義を引用しているにすぎない。このように,立案担当者は,平成14年総務省令3号の対象(「電子メールアドレス」)とプロバイダ責任制限法3条の2第2号の対象(「電 子メールアドレス等」)を明示的に書き分けているのであるから,平成14年総務省令3号の定める「電子メールアドレス」について公職選挙法142条の3第3項の定義が当てはまるということはできない。 プロバイダ責任制限法は,実務のニーズに応じて開示対象となる 発信者情報の範囲を適切に画することができるよう,あえてプロバ イダ責任制限法ではなく平成14年総務省令においてこれを列挙することとしたものである。したがって,仮に今後,電話番号の開示が有用であり,かつ,発信者情報開示の対象とすることが相当であると認められるに至った場合には,平成14年総務省令においてこれを規定することによって解決されるべき事柄であるといえる。 全ての携帯電話・スマートフォンに電話番号宛にメッセージを送信するSMS機能が存在するため,SMS用電子メールアドレスを開示せよとの原告主張は,携帯電話・スマートフォン契約者については全て電話番号を開示せよと主張することと同義である 番号宛にメッセージを送信するSMS機能が存在するため,SMS用電子メールアドレスを開示せよとの原告主張は,携帯電話・スマートフォン契約者については全て電話番号を開示せよと主張することと同義である。現在,携帯電話・スマートフォンの契約数は,1億7773万件(平成3 0年度第4四半期)に達する一方,固定電話の契約数は5437万件である。したがって,仮に「SMS用電子メールアドレス」なる概念によって電話番号の開示を認めるとすれば,それは,おおむね,国内に存在する電話番号の約76%について,これを発信者情報に含めることを意味する。 かかる主張及び解釈が,電話番号はおろかファックス番号ですら発信者情報とすべきでないとされてきた経緯及び立法者意思に反する上,被害者救済と発信者の権利利益保護のバランスを失わせるものであって,法解釈として妥当でないことは明らかである。 よって,原告の主張する「SMS用電子メールアドレス」なるも の,すなわち電話番号が,発信者情報開示請求における開示対象として認められる余地はない。 第3 当裁判所の判断 1 争点①(本件記事が原告らのことを指すと認められるか否か)前記前提事実及び証拠(甲1,5)によれば,本件記事は,「マンショ ンコミュニティ」という掲示板の「不動産投資 Aってどうよ?」とのタ イトルが付されたスレッド内に投稿されており,本件記事以前の投稿には原告Aの事業内容に沿った記載が存在することなどが認められる。また,本件記事には,「トップ二人」との記載があり,少なくともそのうち一人は代表取締役のことを指しているものと認められる。 これらの事実に照らせば,本件記事の閲覧者において,本件記事が原告 A及びその代表取締役である原告Bに関する記事である なくともそのうち一人は代表取締役のことを指しているものと認められる。 これらの事実に照らせば,本件記事の閲覧者において,本件記事が原告 A及びその代表取締役である原告Bに関する記事であると容易に推知することが可能であり,本件記事の内容は原告らについて記載されたものであると認められる。 2 争点②(権利侵害の明白性の有無)についてプロバイダ責任制限法4条1項1号が定める権利侵害の明白性とは, 権利侵害の事実があること及び違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情が存在しないことを指すものと解される。 そうであるところ,本件記事の記載内容のうち,「クリスマス会,やるとおもってるんですか。社員もお金もないんですよ。やる余裕なんてありません(笑)」とある部分は,一般の読者の普通の注意と読み方を 基準とすれば,原告Aが,社員もお金もなく,クリスマス会などのイベントをやる余裕すらないとの事実を摘示するものであり,原告Aが経営に窮しているとの印象を抱かせるものであるから,原告Aの社会的評価を低下させるというべきである。 そして,本件記事が匿名で投稿されていることや,具体的な根拠が示 されていないことなどの事情を併せ考慮すれば,本件記事に公益目的があるとも考え難く,違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情は存在しない。 また,本件記事の記載内容のうち,「そのくせ,なぜトップ二人はぶくぶくと太ってるんでしょうね。」とある部分は,前段の記載内容を受 けて,原告Aには余裕がないのに,原告Bを含む役員らは私腹を肥やし ているとの印象を与えるものであり,かつ,殊更に原告Bを含むトップ二人の容姿を揶揄する内容となっている。このような本件記事の記載内容自体に加え,本件サイトの性質や,本件記事が匿名で やし ているとの印象を与えるものであり,かつ,殊更に原告Bを含むトップ二人の容姿を揶揄する内容となっている。このような本件記事の記載内容自体に加え,本件サイトの性質や,本件記事が匿名で投稿されていることなどの事情を併せ考慮すれば,本件記事は,社会通念上許容される限度を超えて,原告Bの名誉感情を侵害するものと認められる。 以上によれば,本件記事について,権利侵害の明白性があると認められる。 3 争点③(情報の開示を受けるべき正当な理由の有無)についてSMS用電子メールアドレスが発信者情報開示請求の対象に含まれるか否かについて アプロバイダ責任制限法4条1項柱書は,開示請求の対象となる発信者情報について「氏名,住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。」と定め,これを受けて平成14年総務省令3号は,発信者の特定に資する情報の一つとして「発信者の電子メールアドレス(電子メールの利用者を 識別するための文字,番号,記号その他の符号をいう。)」を定めている。SMSは,SMTPを用いた通常の電子メールと同様に,特定の者に対し通信文その他の情報を通信端末機器の映像面に表示されるようにすることにより伝達するための電気通信であり,送受信先の電子メールアドレスとしてその電話番号を使用するものであ るから,SMS用電子メールアドレスについても,平成14年総務省令3号の定める「電子メールアドレス」に当たると解することができるものといえる。もっとも,平成14年総務省令は「電子メール」の定義規定を設けておらず,プロバイダ責任制限法4条1項及び平成14年総務省令3号の規定からは,平成14年総務省令3号 の「電子メールアドレス」にSMS用電子メールアドレスが含まれ 子メール」の定義規定を設けておらず,プロバイダ責任制限法4条1項及び平成14年総務省令3号の規定からは,平成14年総務省令3号 の「電子メールアドレス」にSMS用電子メールアドレスが含まれ るのか否かが必ずしも明確であるとはいえない。 ところで,プロバイダ責任制限法3条の2第2号は,「電子メールアドレス等」について,公職選挙法142条の3第3項に規定する電子メールアドレス等をいうと定義し,公職選挙法142条の3第3項は,「電子メールアドレス等」について,特定電子メール法 2条3号に規定する電子メールアドレスその他のインターネット等を利用する方法によりその者に連絡をする際に必要となる情報をいうと定義しており,さらに,特定電子メール法2条3号は,「電子メールアドレス」を「電子メールの利用者を識別するための文字,番号,記号その他の符号をいう。」と定義し,同条1号は,「電子 メール」を「特定の者に対し通信文その他の情報をその使用する通信端末機器の映像面に表示されるようにすることにより伝達するための電気通信であって,総務省令で定める通信方式を用いるものをいう。」と定義している。そこで,特定電子メール法2条1号の規定を受けて制定された平成21年総務省令をみるに,同令2号では, 電子メールに該当する通信方式の一つとして「携帯して使用する通信端末機器に,電話番号を送受信のために用いて通信文その他の情報を伝達する通信方式」が規定されている。 したがって,文理解釈上,SMSで用いられる電話番号は,特定電子メール法が定義する「電子メールアドレス」に該当することか ら,これを引用する公職選挙法142条の3及びプロバイダ責任制限法3条の2においては,「電子メールアドレス」に該当するとの結論が導かれる。 定義する「電子メールアドレス」に該当することか ら,これを引用する公職選挙法142条の3及びプロバイダ責任制限法3条の2においては,「電子メールアドレス」に該当するとの結論が導かれる。 プロバイダ責任制限法3条の2は,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任につき公職の候補者等に係る特例を定めた規定であり, 特定電気通信役務提供者が,特定電気通信により選挙運動の期間中 に頒布された文書図画に係る情報の送信を防止する措置を講じた場合において,一定の要件を満たすときは,当該措置により生じた損害について発信者に対する損害賠償責任を負わない旨を規定するものであり,発信者情報の開示請求に係る要件等を規定するプロバイダ責任制限法4条1項とはその趣旨を異にする。このことからすれ ば,プロバイダ責任制限法3条の2における「電子メールアドレス」の意義は広く,プロバイダ責任制限法4条1項及び平成14年総務省令3号における「電子メールアドレス」の意義は狭く解するべきとの見解も成り立ち得ないとはいえない。 しかしながら,法解釈の予測可能性や法的安定性等の観点に照ら せば,同一の法律内における同一の用語の意義は,別段の定めがない限り,統一的に解釈するのが原則というべきである。そうすると,プロバイダ責任制限法3条の2における電子メールアドレスの定義をプロバイダ責任制限法4条1項には適用しない旨の明文の規定が存在しない以上,同項及びこれを受けた平成14年総務省令3号に おいても,プロバイダ責任制限法3条の2におけると同様,SMSで用いられる電話番号は「電子メールアドレス」に該当すると解するのが相当である。 なお,平成14年総務省令が1号から7号までに掲げる発信者情報は,限定列挙であると解されるところ,平成14 MSで用いられる電話番号は「電子メールアドレス」に該当すると解するのが相当である。 なお,平成14年総務省令が1号から7号までに掲げる発信者情報は,限定列挙であると解されるところ,平成14年総務省令にお いて,電話番号自体は開示の対象となる情報に含まれていないが,電話番号が電子メールアドレスとしても機能する場合には,電話番号そのものが平成14年総務省令3号の規定する「電子メールの利用者を識別するための文字,番号,記号その他の符号」に該当することとなる。すなわち,電話番号が発信者情報として開示の対象と なるのは,あくまでもSMS用電子メールアドレスとして利用され る限りにおいてであって,電話番号が一般的に開示の対象となると解釈されるわけではないことからすれば,SMS用電子メールアドレスの開示を認めることが限定列挙の趣旨に反するとはいえない。 イ被告は,平成14年総務省令の制定及び改正の経緯に照らし,プロバイダ責任制限法を所管する総務省が,プライバシー及び通信の秘密 の保護の観点から,SMS用電子メールアドレスについては発信者情報に含めないとする意図を有していた旨主張する。 確かに,証拠(乙3,5,6)によれば,平成14年総務省令の制定時及び平成27年改正時において,総務省は,プライバシー及び通信の秘密の保護の観点から電話番号を開示対象となる発信者情報に含 めるべきでないとの見解を有していたことがうかがわれる。すなわち,平成14年総務省令の制定時におけるパブリックコメントに関し,総務省は,「電話番号やファックス番号を保有している特定電気通信役務提供者は,通常は氏名及び住所も保有しているものと想定される。 法的な権利回復のためには,請求の相手方となるべき者を特定するこ とが必要である 番号やファックス番号を保有している特定電気通信役務提供者は,通常は氏名及び住所も保有しているものと想定される。 法的な権利回復のためには,請求の相手方となるべき者を特定するこ とが必要であるが,相手方を特定し,法的な権利回復措置を可能とするためには,氏名及び住所を開示させれば足り,あえて電話番号やファックス番号まで開示させる必要性は低いと考えられる。他方,特定電気通信役務提供者の中には,無料の電子掲示板の設置者等,氏名や住所を通常は保有していない者も存在する。このような場合であって も,電子メールアドレスは記録されていることがあるものと考えられ,これらの情報も発信者を特定するための手掛かりになり得るものであるので,電子メールアドレスも開示請求の対象に含めるのが適当である。」との考え方を示し,また,平成27年における平成14年総務省令の改正に伴うパブリックコメントに関し,「なお一般的な規定と すべき,という御意見についてですが,発信者情報は個人のプライバ シーに深く関わる情報であって,通信の秘密として保護される事項であることに鑑み,省令において開示対象は相手方を特定し,連絡を行うのに合理的に有用と認められる情報を限定列挙することとしております。」との考え方を示した。また,総務省総合通信基盤局消費者行政第二課『プロバイダ責任制限法』102頁(第一法規,改訂増補第 2版,平成30年)には,「なお,電話番号については,本省令の制定時に,開示の対象となる発信者情報は被害者の被害回復に必要な最小限度の情報とするべきとの観点から,一般的に,開示関係役務提供者において発信者の電話番号を把握している場合には,その氏名及び住所等も把握していると考えられるため,開示の対象としないことと した。」と記載されている。 観点から,一般的に,開示関係役務提供者において発信者の電話番号を把握している場合には,その氏名及び住所等も把握していると考えられるため,開示の対象としないことと した。」と記載されている。 発信者情報は,通信の秘密や表現の自由という重大な権利利益に関する問題である上,一たび開示されてしまうと原状回復は不可能であるという性質を有するものであることからすれば,なるべく開示の範囲を必要最小限にすべきであるとの総務省の考え方は合理性を有する といえる。しかしながら,そもそも,プロバイダ責任制限法4条1項にいう「発信者の特定に資する情報」とは,開示請求をする者の損害賠償請求等を可能とするという観点から,その相手方を特定し,何らかの連絡を行うのに合理的に有用と認められる情報をいうと解されるのであって,同項の規定及び解釈から,訴訟による権利回復を可能に するための必要最小限の情報に限定されるという結論が当然に導かれるものではない。また,訴訟による権利回復を可能にするという制度の趣旨に照らして必要最小限の範囲に限定するということであれば,氏名又は名称及び住所が開示されれば通常は十分とも思われ,これに加えて電子メールアドレスの開示まで認めることは必要最小限の範囲 を超えるのではないかとも考えられるが,平成14年総務省令は,氏 名又は名称及び住所に加えて電子メールアドレスの開示をも認めており,上記の考え方と必ずしも整合しているとはいい難い(この点につき,総務省は,特定電気通信役務提供者が氏名や住所を通常保有していない発信者について電子メールアドレスの開示を認めるべきとの考え方を有していることがうかがわれるが,そうであれば,氏名又は名 称及び住所の開示がない場合に初めて電子メールアドレスの開示を認めるとの 発信者について電子メールアドレスの開示を認めるべきとの考え方を有していることがうかがわれるが,そうであれば,氏名又は名 称及び住所の開示がない場合に初めて電子メールアドレスの開示を認めるとの限定が設けられてしかるべきであるところ,平成14年総務省令においてそのような限定は設けられていない。)。 このように,総務省の考え方によっても,開示の対象となる発信者情報の範囲をどのように画するかは一義的に明確とはいえないのであ って,通常の電子メールアドレス(SMTP電子メールアドレス)は開示の対象となるが,SMS用電子メールアドレスとして利用され得る電話番号について開示対象外であるとする実質的な根拠は乏しいというほかなく,SMS用電子メールアドレスとして利用され得る電話番号に関しては通常の電子メールアドレス(SMTP電子メールアド レス)よりもプライバシー及び通信の秘密の保護の要請が高いということもできない。 以上のように考えると,被告の指摘する平成14年総務省令の制定及び改正の経緯等を踏まえても,前記のような条文の文理解釈に反して,SMS用電子メールアドレスのみを「電子メールアドレス」の定 義から除外する十分な合理性は見いだし難い。少なくとも,現行のプロバイダ責任制限法及び平成14年総務省令の解釈としては,「電子メールアドレス」にはSMS用電子メールアドレスが含まれると解さざるを得ない。 ウさらに,被告は,平成14年総務省令3号の対象(「電子メールア ドレス」)とプロバイダ責任制限法3条の2第2号の対象(「電子メ ールアドレス等」)とは明示的に書き分けられており,平成14年総務省令3号の定める「電子メールアドレス」について公職選挙法142条の3第3項の定義が当てはまるとはいえない旨主張 「電子メ ールアドレス等」)とは明示的に書き分けられており,平成14年総務省令3号の定める「電子メールアドレス」について公職選挙法142条の3第3項の定義が当てはまるとはいえない旨主張する。 しかしながら,プロバイダ責任制限法3条の2第2号が引用する公職選挙法142条の3第3項は,「電子メールアドレス」(特定電子 メール法2条3号に規定する電子メールアドレスと同義)及び「その他のインターネット等を利用する方法によりその者に連絡をする際に必要となる情報」を併せて「電子メールアドレス等」と定義していることからすれば,これらの規定中の「電子メールアドレス等」は「電子メールアドレス」を含む用語であると解するのが自然であって,平 成14年総務省令3号の「電子メールアドレス」とプロバイダ責任制限法3条の2第2号の「電子メールアドレス等」とが明示的に書き分けられたもの,すなわち,平成14年総務省令3号の「電子メールアドレス」とプロバイダ責任制限法3条の2第2号の「電子メールアドレス等」のうちの「電子メールアドレス」の部分とがその対象を別異 にするものとして,これらの規定が設けられたとは解し難い。したがって,平成14年総務省令3号の定める「電子メールアドレス」について公職選挙法142条の3第3項の「電子メールアドレス等」の定義が当てはまらないとの被告の主張は採用することができない。 エ以上のとおり,平成14年総務省令3号の「電子メールアドレス」 にはSMS用電子メールアドレスも含まれると解されることから,SMS用電子メールアドレスも発信者情報として開示請求の対象となる。 正当な理由の有無についてア前記2において説示したとおり,本件記事については原告Aに対する名誉毀損及び原告Bに対する名誉感情侵害が 電子メールアドレスも発信者情報として開示請求の対象となる。 正当な理由の有無についてア前記2において説示したとおり,本件記事については原告Aに対する名誉毀損及び原告Bに対する名誉感情侵害が成立し得るところ,証 拠(甲7)及び弁論の全趣旨によれば,原告らは,本件記事の発信者 に対し,不法行為に基づく損害賠償請求権等を行使しようとしており,原告らがその請求を行うためには,被告が保有する本件記事に係る発信者情報が必要であることが認められる。 したがって,原告らにおいて,被告が保有する本件記事に係る発信者情報の開示を求める正当な理由があるといえる。 イ被告は,氏名又は名称及び住所に加えて,電子メールアドレス及びSMS用電子メールアドレスの開示を受けるべき正当な理由は存在しない旨主張する。 しかしながら,不法行為に基づく損害賠償請求権等を行使するためには,最終的には民事訴訟の提起が必要であるとしても,これに先立 って,裁判外で任意の履行請求することは,ごく通常のことであって,電子メールアドレスの開示はこれに資するといえる。平成14年総務省令が,氏名又は名称及び住所に加えて電子メールアドレスも発信者情報に掲げていることからすれば,電子メールを利用しての損害賠償請求等の方法があり得ることは,当然の前提とされているというべき であり,氏名又は名称及び住所によっては特定できないような限定的な場面のみに限定して電子メールアドレスの開示を許容したものとは解されない。 また,SMS用電子メールアドレスについても,前記示したとおり「電子メールアドレス」に含まれると解される上,発信 者を特定あるいは識別するのに資する情報であるといえるし,損害賠償請求等の相手方に対する連絡手段としても合理的に ついても,前記示したとおり「電子メールアドレス」に含まれると解される上,発信 者を特定あるいは識別するのに資する情報であるといえるし,損害賠償請求等の相手方に対する連絡手段としても合理的に有用と認められる。 したがって,電子メールアドレス及びSMS用電子メールアドレスについても,それらの開示を受けるべき正当な理由があると認められ る。 4 結論以上によれば,原告らの請求にはいずれも理由があるからこれらを認容することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第24部 裁判長裁判官市原義孝 裁判官内藤和道 裁判官中根佑一朗

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る