【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。 理 由 本件控訴の趣意は、記録に編綴の弁護人荒木新一提出の控訴趣意書及
主文本件控訴を棄却する。 当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。 理由本件控訴の趣意は、記録に編綴の弁護人荒木新一提出の控訴趣意書及び弁護人和智昂、同和智竜一、同武井正雄連名提出の控訴趣意書に記載のとおりであるから、これを引用する。 弁護人荒木新一の控訴趣意第一点、第五点及び弁護人和智昂外二名の控訴趣意二について。 所論は、電工Aが局部扇風機の防爆型スイッチの蓋を開放して点検操作し同扇風機の連弘を再開したため、三尺払大肩部の天井際に滞留していた約一〇パーセントの可燃性ガスが三尺払風道に流出し、同人がスイッチを操作した際発生した火花が右ガスに引火して爆発を惹起した事実を肯定すべき確証は全く存在しないと主張する。 しかし、原判決挙示の各証拠によれば所論の原判示事実は優に認められ、更にこれを敷衍すれば次のとおりである。 すなわち、挙示の各証拠に当審証人Bの証言を参酌すれば次の各事実が認められる。 一、被告人は昭和三二年九月一五日午後一〇時頃丙方としてC株式会社D礦業所新菅牟田坑に入坑し、翌一六日午前四時五〇分頃自己の担当区域である西卸右一片三尺払を巡回中同払大肩部に設置してある電動局部扇風機(炭坑において単に局扇と呼ばれているので以下局扇と略称する)が停止しているのを発見しまた附近に居た採炭夫Eから局扇のスイッチを操作しても回転しない旨告げられたので、同五時三〇分頃同坑内左零片にある電工詰所に赴き電工Aに対し、「払の局扇のスイッチがはいらないから見てくれ」と言つてその点検修理を依頼し、同人は間もなくやつて来て右一片三尺払風道を通り局扇の設置されている大肩部の方に上つて行つたが、すぐケーブルを調べながら「局扇が回らんから故障だろう」と言つて同風道を下つて行き、それから を依頼し、同人は間もなくやつて来て右一片三尺払風道を通り局扇の設置されている大肩部の方に上つて行つたが、すぐケーブルを調べながら「局扇が回らんから故障だろう」と言つて同風道を下つて行き、それから約二〇分を経過した同五時五〇分頃本件爆発が起つたのである。 二、爆発当時、右大肩部より一四、八米隔てた三尺払風道の木枠に取付けられていた局扇用防爆型スイッチは蓋が取外され、その下方盤上に右蓋と取付用ボールトナット、テープ、導線、電工用スパナ等が整然と置いてあつて、これは一見して電工の仕業であることが明瞭に看取されたのである。 三、三尺払風道内にあつて爆発により遭難した一二名の坑員中電工Aが一番最後に助け出されたことと、同風道内に爆風で吹飛ばされて散乱していた一二名の坑内帽子のうち同人着用の帽子が右スイッチに一番近い箇所に落ちていたこと等よりして、爆発当時同人が最もスイッチの近くに居たことが窺われる。 四、三尺払及び同風道においては、当時防爆型スイッチ以外のケーブル、モーター、エンヂン類、スイッチ等すべての電気施設に異常なく、三尺払炭壁のダイナマイトは装填されたままで発破も行われておらず、またマッチ、たばこ等持込禁止品を携帯して入坑した者も存しないことよりして、他に火源となるべきものが認められなかつたのである。 五、爆発当時電源は遮断されておらず、防爆型スイッチは「切」になつていて、スイッチは「入」の時より「切」の時に多く火花を発するものである。尤も、スイッチが火花を発すれば接触点の金属が溶解して異常を呈するものなるところ、右スイッチにはかかる異常の有無を確認し得なかつたが、それは金属の種類によつては溶解しない場合もあるから、異状の有無が判明しないからといつて火花を発していないとはいわれないのである。 六、電工は防爆型スイッチの かる異常の有無を確認し得なかつたが、それは金属の種類によつては溶解しない場合もあるから、異状の有無が判明しないからといつて火花を発していないとはいわれないのである。 六、電工は防爆型スイッチの修理を完了すれば必ず修理ができたかどうかを試験し確認するのが通例であり、そのためにはスイッチを入れて局扇を試運転する必要があるのである。 七、本件防爆型スイッチの外部左側と内部右側及び取付枠の左側に多くの炭塵が附着し、また右スイッチから九本目乃至一一本目位の坑木に炭塵附着の割合がひどく、爆風は大肩部の方から吹付けて来たものと認められるのである。 八、三尺払風道内は常時毎分風速四九米、容積二〇六立方米の気流いわゆる親風が三尺払、同大肩部を流通している関係上、局扇が停止しても大肩部より一四、八米隔てた三尺払風道内に取付けてある防爆型スイッチ附近に濃厚な可燃性ガスが滞留することはなく、右ガスの含有量は通常僅か〇、二パーセント乃至〇、三パーセントに過ぎないところ、大肩部天井際は右親風の死角に当つているため局扇が停止すれば約一時間後には濃度一〇パーセント以上の可燃性ガスが風道壁沿に約二、六米、三尺払面沿に約一、七米、天井より約〇、四五米の厚さで三角垂状に滞留し、時間の経過と共に濃度は幾分増加するが容積は殆んど拡大しないのである。ところが、エア、ヂエットを使用して右滞留ガスを拡散すれば一分後には濃度三、五パーセントの可燃性ガスが三尺払風道に吹きやられて防爆型スイッチ附近に流出することが爆発直後の実験により認められたが、エア、ヂエットの排気能力は局扇のそれより著るしく劣つており、しかも当時大肩部天井際に滞留していた可燃性ガスの濃度は一層大であり、局扇を使用して右滞留ガスを拡散すればスイッチ附近に流出する可燃性ガスの含有量は更に濃厚であつて、その所要時 り著るしく劣つており、しかも当時大肩部天井際に滞留していた可燃性ガスの濃度は一層大であり、局扇を使用して右滞留ガスを拡散すればスイッチ附近に流出する可燃性ガスの含有量は更に濃厚であつて、その所要時間も減少することが窺われる。 以上一乃至八の各事実に、鑑定人F作成の鑑定書記載の、(1)爆発地点は風道詰(大肩部)から風道出口に向い約一五米の間にあり風道詰附近において強い爆発が生じたものと認められる、(2)爆発原因は風道詰からスイッチ附近までの間に停滞していた五パーセント以上の濃厚なメタンガスにスイッチのスパークが着火し、メタンガスは風道詰の方向に燃焼し次いで風道詰附近で大量の爆発限界内のメタンガスを燃焼させたものと考えられる、(3)局扇が止まつたため爆発限界内である濃度五パーセント以上のメタンガスがスイッチの位置まで停滞していたかまたはスイッチを入れたため局扇が運転を開始して右メタンガスがスイッチの位置に流動し、スイッチを切つた際これに着火したものと推定される、(4)監督部の調査によれば火源と考えられる発破、喫煙、自然発火、コンベヤー、モーター類、検定灯、帽上灯の異常等によるものでなく、爆発の火源は局扇のスイッチと考えられる、スイッチは入れた時より切つた際に火花を発生する頻度が多きいから、試験的にスイッチを入れた後これを切つた際発生した火花によつてメタンガスに着火したのでないかと考えられる、とある点を併せ考察し、更に原判決挙示の各証拠を彼此綜合すれば、三尺払大肩部に設置されていた局扇が約二時間運転を停止していたため、含有量一〇パーセント以上の濃厚な可燃性ガスが大肩部天井際に風道壁沿に約二、六米、三尺払面沿に約一、七米、厚さ約〇、四三米の三角垂状に滞留していたところ、電工Aが大肩部より一四、八米隔てた三尺払風道木枠に取付られた局扇用防爆 厚な可燃性ガスが大肩部天井際に風道壁沿に約二、六米、三尺払面沿に約一、七米、厚さ約〇、四三米の三角垂状に滞留していたところ、電工Aが大肩部より一四、八米隔てた三尺払風道木枠に取付られた局扇用防爆型スイッチの蓋を開放して点検修理した後、試験的に右スイッチを入れて局扇の運転を再開したため、大肩部天井際に滞留していた濃厚な右可燃性ガスが一時に三尺払風道に吹きやられ含有量五パーセント以上の可燃性ガスが右スイッチ附近に流出した折柄、同人がスイッチを切つたため火花を生じこれが右ガスに引火して爆発を惹起した事実を肯認するに十分である。そして、前叙の如き各種認定事実を基礎としこれに他の証拠を参酌して、電工Aが防爆型スイッチの「入」「切」の操作をした事実並びにこれがため火花を生じ流動して来た可燃性ガスに引火して爆発した事実を認定することは結局適法な証拠に基く判断であつて、所論の如く単なる推定の多段的累積とはいい難く毫も違法とはいわれない。記録を精査しても原判決に所論の如き採証法則の誤、事実誤認は存しない。論旨は理由がない。 弁護人荒木新一の控訴趣意第二点、(一)乃至(四)、第三点、(一)乃至(四)の(イ)及び弁護人和智昂外二名の控訴趣意一の(3)のイ、ロ、ハ、ニ並びに四、五について。 所論は、(イ)排気側における防爆機器の開放と坑内における活線作業が法規上厳禁されていること、(ロ)局扇の運転が法規上保安係員の専掌事項とされていること、(ハ)局扇の停止により三尺払大肩部に可燃性ガスが滞留することはいずれも電工Aにおいて十分諒知していたものであり、しかも、(ニ)局扇の運転を再開してこそ滞留ガスが流動し危険発生の虞を生ずるものであるから、被告人が局扇の修理を依頼する際同人に対し(イ)乃至(ニ)の事実を注意する必要がないのは勿論、その修理に立会つて監督する 局扇の運転を再開してこそ滞留ガスが流動し危険発生の虞を生ずるものであるから、被告人が局扇の修理を依頼する際同人に対し(イ)乃至(ニ)の事実を注意する必要がないのは勿論、その修理に立会つて監督する必要はなく、従つて同人の右法規違反行為について被告人に対し過失の責を問うべきものではないと主張する。 被告人が昭和三二年九月一六日午前四時五〇分頃右一片三尺払を巡回中同払大肩部に設置してある局扇が停止しているのを発見し、また採炭夫Eから局扇のスイツチを操作しても回転しない旨告げられたので、同五時三〇分頃左零片にある電工詰所に赴き電工Aに対し「払の局扇のスイツチがはいらないから見てくれ」と言つてその点検修理を依頼した後、同人が右一片三尺払風道を大肩部の方に上つて行くのを見届けて自らは水力充填警戒方監督のため右一片三尺ゲート坑道に赴いたことは前段説示のとおり挙示の証拠によりこれを認めるに十分である。 そして、原審証人G、当審証人B、同Hの各証言によれば、局扇が停止しても、いわゆるリレーが働いた場合、すなわち、過負荷のためスイツチの接点が自動的に切れた場合は釦を押せば接点がつながり運転を始めるから、これが故障、修理に当らないことは勿論であるところ、電工は局扇が停止したためその点検修理を依頼さるれば先ずケーブル、ヂヨイント、親スイツチ等につき外形検査を実施して故障を発見しないとき、更に局扇用防爆型スイツチを開放してこれを点検し修理するものなることが認められる。従つて、坑内保安係員が電工に対し停止した局扇の点検修理を依頼した場合は、防爆型スイツチの開放、点検、修理にまでいたることが右依頼の趣旨に副うものといわねばならない。尤も、防爆型スイツチは坑内においては入気側等安全な場所で坑内保安係員の許可を受けた場合でなければ開放することができないことはD炭礦 修理にまでいたることが右依頼の趣旨に副うものといわねばならない。尤も、防爆型スイツチは坑内においては入気側等安全な場所で坑内保安係員の許可を受けた場合でなければ開放することができないことはD炭礦保安規程第一三二条二号に定められており、有資格者たる電工Aが右規定を諒知していたことは所論のとおり否み難いところである。しかし、坑内保安係員のなす局扇の修理依頼には通常防爆型スイツチの開放、点検、修理もまた包含されており、しかも右スイツチは同係員の許可があれば坑内において開放し得ることは前叙のとおりであるから、坑内保安係員である被告人が電工に対し「局扇のスイツチがはいらぬから見てくれ」と漫然その点検修理を依頼すれば電工は該依頼により右スイツチの開放までも予め許容されたものと速断して同スイツチの開放、点検、修理にかかる危険なきを保し難く、従つて電工に局扇の点検修理を依頼する場合には、防爆型スイツチの開放は特に許可がなければ許されないことを注意し以て万一の危険が発生しないよう努むべきものといわねばならない。 次に、坑内における活線作業は石炭鉱山保安規則第二二七条により厳禁されているところにして有資格者である電工Aがこれを諒知していたことは否み得ないから、同人が防爆型スイツチの開放、点検、修理に際し右規則に違反して電源を遮断しなかつたことは専ら同人の過失というべく、被告人が予め同人にこれを注意しなかつたとしても注意義務懈怠の責があるといわれないことまことに所論のとおりであり、原判決もまたこの点につき被告人に過失があるとは断定していない。 更に、局扇の運転並びに停止は専ら坑内保安係員がこれを操作しなければならないことは石炭鉱山保安規則第一〇四条、D炭礦保安規程第五九条の四に規定されているところにして、それは局扇の用途と機能に照らしその停止、運転が附近 びに停止は専ら坑内保安係員がこれを操作しなければならないことは石炭鉱山保安規則第一〇四条、D炭礦保安規程第五九条の四に規定されているところにして、それは局扇の用途と機能に照らしその停止、運転が附近における可燃性ガスの滞留、移動をもたらし延いては爆発の原因となる危険があるため、これを保安係員の専掌事項としていることが看取される。ところが当審証人Bの証言によれば局扇の修理を依頼された電工は修理手続を終了すれば必ず修理ができたかどうかを試験し確認するのが通例であることを認め得るのみならず、機械修理と終了後の試運転が不可分の関係にあることはまた実験則の示すところであるから坑内保安係員より局扇の修理を依頼された電工は修理に必然的に随伴する試運転が許容されたものと解してこれを行う虞なきを保し難いものといわねばならない。 そしてまた、原判決挙示の各証拠によれば西卸右一片三尺払大肩部天井際は三尺払を常時流通している毎分約二〇六立方米の気流いわゆる親風の死角に当るため多量の濃厚な可燃性ガスが滞留する関係上、局扇を使用してこれを拡散していたのであるから、局扇が運転を停止すれば右天井際に濃厚な可燃性ガスが滞留し、局扇の運転を再開すれば右滞留ガスが一時に三尺払風道に流出し同所に設置してある附爆型スイツチ附近に流動して危険発生の虞があることは坑内保安係員たる被告人においてその職務の性質上最もよく諒知し或は予見し得たものであり、電工Aは右ガスの滞留、移動の原因、状況については極めて知識が乏しかつたことが認められる。 従つて、被告人は坑内において電工に局扇の修理を依頼した場合たとえ電工において局扇の操作が本来保安係員の専掌事項なることを諒知していたとしても、なお局扇の停止、運転による可燃性ガスの滞留、移動の危険を告げて修理後における局扇の試運転すら勝手にしてはな 場合たとえ電工において局扇の操作が本来保安係員の専掌事項なることを諒知していたとしても、なお局扇の停止、運転による可燃性ガスの滞留、移動の危険を告げて修理後における局扇の試運転すら勝手にしてはならないことを注意すべきものといわねばならない。 かように、坑内保安係員は電工に対し局扇の点検修理を依頼した場合、(イ)防爆型スイツチの開放は特別の許可がない限り許されないことを注意すべく、しかも同係員がその開放を許可するためには必ず可燃性ガスの測定その他安全を確認しなければならないこと(D炭礦保安規程第一三二条)、(ロ)局扇の運転は修理に必然的に随伴する試運転と雖法規上電工に許されないことを注意すべく、しかも局扇の試運転をなす場合は係員が予め及び爾後において附近における可燃性ガスを測定して危険のないことを確認しなければならないこと(石炭鉱山保安規則第一〇四条)、(ハ)更に三尺払大肩部に設置されている局扇が停止した後その運転を再開すれば大肩部天井際に滞留している濃厚な可燃性ガスが一時に流出して危険発生の虞があることを告げて試運転を厳禁すべきこと等、保安係員が電工に告知すべき注意事項は多岐多様であつて場合に応じ異つており、予め一時にこれを指示してもその徹底を期し難い状況にあることと、電工が右注意事項を厳守して迅速且つ適正に局扇の修理を完了するためには修理を依頼した係員において可燃性ガスの測定等迅速に履践すべき職務が不可分的関係において存在していることに鑑みれば、直接坑内保安の重責に任ずる保安係員は局扇の修理に立会つて電工を監督し、必要に応じ前示各注意事項を指示し以て万一の危険発生を防止すべきものといわねばならない。保安係員が職務上自己の管理に属し坑内の保安確保に重大な機能を果している局扇の修理を電工に依頼し乍ら、前叙の如き各注意事項を予め指示した を指示し以て万一の危険発生を防止すべきものといわねばならない。保安係員が職務上自己の管理に属し坑内の保安確保に重大な機能を果している局扇の修理を電工に依頼し乍ら、前叙の如き各注意事項を予め指示しただけで自らは他の職務に従事して修理の進捗を挙げて電工に一任し、可燃性ガスの測定、試運転等修理に必要な保安係員固有の職務を要するときは坑内作業場の何処に居るか判らない保安係員を探し出して修理現場に同行した上その指示と処置を仰ぐよう電工に要求することは、修理依頼を受けた電工に対して不当に過重な労力と手数を科するものにして、これがすなわち、局扇修理に際し電工の厳守すべき各種注意事項を怠慢に導く強い誘引であると共に、本来急速を要する局扇の修理と運転再開を遅延せ<要旨>しめ延いては坑内保安に危険をもたらす原因であることを銘記しなければならない。かようなわけで、石炭</要旨>坑内において可燃性ガスを拡散している局扇が運転を停止したため、坑内保安係員が電工にその点検修理を依頼した場合には、自ら修理に立合つて監督し、防爆型スイツチの開放、局扇の試運転等につき必要な指示を与え、以て試運転に基く可燃性ガスの移動による危険の発生を防止すべき業務上の注意義務があるものといわねばならない。 然るに、被告人は電工Aに対し漫然「局扇のスイツチがはいらぬから見てくれ」と言つてその点検修理を依頼したのみで同人を単身修理に当らしめて自らは水力充填の警戒方監督に赴き、修理に立会い監督して前示注意事項を指示することを怠つたのは勿論、予め右注意事項を告げなかつたのみか、却つてE、I、J及び被告人の検察官に対する各供述調書により認め得る如く、局扇が停止した場合における運転再開は保安係員でない坑員が誰でも随時これを行うことを平素許容し指示していたため、電工Aが局扇の停止、運転による可燃 告人の検察官に対する各供述調書により認め得る如く、局扇が停止した場合における運転再開は保安係員でない坑員が誰でも随時これを行うことを平素許容し指示していたため、電工Aが局扇の停止、運転による可燃性ガスの滞留、移動に気付かず、防爆型スイツチの開放までも許容されているものと速断して無断これを開放して点検修理した後、自ら局扇の試運転を行つたため三尺払大肩部天井際に滞留していた濃厚な可燃性ガスが一時に三尺払風道に吹きやられてスイッチ附近に流出し、スイツチを切つた際発生した火花が右ガスに引火して爆発を起したものであるから、電工Aの過失もさることながら、被告人もまた前示業務上の注意義務を怠つた過失の責を免れないものといわねばならない。論旨引用の判例は事案を異にし本件に適切でない。そして、原判決は所論の如く各種の場合を想定して局扇停止時間の確認、ガス滞留状況の確認、送電停止、労働者の待避、可燃性ガスの排除等各種注意義務を挙げており、しかも原判決想定の事情の下においてはかかる注意義務を要するものというべきところ、判文を熟読すれば被告人の過失は右各種注意義務の懈怠にあるのではなく、畢竟前叙の如き指示、監督を怠つたことに帰することを窺うに十分であり、記録を精査しても原判決に所論の如き事実誤認、法律解釈の誤は存しない。 論旨は理由がない。 弁護人荒木新一の控訴趣意第三点、(四)の(ロ)及び弁護人和智昂外二名の控訴趣意三について。 所論は、被告人が局扇の修理を依頼した際、被告人担当の西卸右一片における採炭跡の水力充填が開始されようとしており、これが警戒を怠れば落盤、通気遮断等の重大事故を惹起する危険があるので被告人はその警戒方監督のため三尺ゲート坑道に赴いたものであるから、局扇の修理に立会わなかつたのは已むを得ない措置であつて毫も責むべき点は存しないと主 、通気遮断等の重大事故を惹起する危険があるので被告人はその警戒方監督のため三尺ゲート坑道に赴いたものであるから、局扇の修理に立会わなかつたのは已むを得ない措置であつて毫も責むべき点は存しないと主張する。 なるほど、原判決挙示の証拠に当審証人Kの証言を参酌すれば、被告人が電工Aに局扇の点検修理を依頼した際、時恰も被告人担当の西卸右一片にある採炭跡の吹込式水力充填が開始されようとしており、しかも該水力充填はその方法を誤らんか落盤、通気遮断等重大事故を惹起する万一の危険なきを保し難く、従つてその警戒を厳重にしなければならないこと及び被告人が右修理依頼後水力充填警戒方監督のため三尺ゲート坑道に赴いたことは所論のとおり認められる。 しかし、原判決挙示の証拠によれば右水力充填の警戒にはそれぞれ係員があつて被告人が始終現場に在つて右警戒方を監督しなければならない状況にあつたものとはいわれないのみならず、当時水力充填作業は一刻も猶予できない程緊急を要したものではなく、暫時これを猶予してもさして支障のなかつたことが認められる。従つて仮りに若し被告人が右充填作業現場を離れることに不安を感じたならば、水力充填の開始を暫時それも僅か一〇分か二〇分の短時間延期しておいて先ず局扇修理の現場に赴きこれに立会監督してその修理を完了した後水力充填の開始を指示するのが適切な措置であつたものというべきところ、被告人の検察官に対する各供述調書によれば被告人は不注意にも局扇修理の立会監督が極めて喫緊且つ重大なることに思を致さず漫然これを放任し剰さえ電工Aに前段説示の各注意事項を予め指示することもしないで水力充填の警戒方監督に赴いた事実が認められるから、被告人が右警戒方監督に赴いたことは毫も局扇修理の立会監督を怠つたことを正当化するものではない。論旨は理由がない。 弁護人 指示することもしないで水力充填の警戒方監督に赴いた事実が認められるから、被告人が右警戒方監督に赴いたことは毫も局扇修理の立会監督を怠つたことを正当化するものではない。論旨は理由がない。 弁護人荒木新一の控訴趣意第四点及び弁護人和智昂外二名の控訴趣意一の(4)について、所論は西卸右一片三尺払大肩部の盤上に設置されたエア扇風機が運転を停止してもエンジン附近まで濃厚な可燃性ガスが滞留することはないと主張する。 なるほど、原判決挙示の証拠によれば三尺払には常時毎分二〇六米立方米の気流いわゆる親風が三尺ゲートを経て同払を通り三尺払風道に流れているため、右扇風機が運転を停止しても大肩部盤上に設置されたエンヂン附近に濃厚な可燃性ガスが滞留するものでない事実が認められる。然るに原判決が右エンヂン附近に前示ガスが滞留していたと判示したは事実を誤認したものであるが、この誤は判決に影響を及ぼすものとはいわれないから原判決破棄の理由とはならない。 次に所論は、三尺払大肩部附近の天井際一帯に亘つて可燃性ガスが滞留したことはなく、またそのため同払における発破作業や電気機器の操作ができないことはなかつたと主張する。 なるほど、原判決挙示の証拠によれば濃い可燃性ガスが滞留した箇所は大肩部の風道壁沿に約二、六米、三尺払面沿に約一、七米、天井より厚さ約〇、四五米の三角垂状の範囲であり、そのため発破作業や電気機器の操作ができないのは右三角垂状の下方附近だけであることが認められる。然るに原判決が所論の点を肯定的に判示したのは措辞些か適切を欠く憾があるが、挙示の証拠と対照すれば畢竟右と同趣旨なることが窺われる。論旨は理由がない。 また所論は、採炭作業が進行し三尺払の面が延びても大肩部に滞留する可燃性ガスの量は増加しないと主張する。 しかし、原判決挙示の証拠によれば ば畢竟右と同趣旨なることが窺われる。論旨は理由がない。 また所論は、採炭作業が進行し三尺払の面が延びても大肩部に滞留する可燃性ガスの量は増加しないと主張する。 しかし、原判決挙示の証拠によれば三尺払の長さが増加すれば大肩部に滞留する可燃性ガスの濃度が若干増加することは否み難いところにして、原判決もまたこの趣旨であることが窺われる。論旨は理由がない。 そこで、刑事訴訟法第三九六条に則り本件控訴を棄却し、当審における訴訟費用は同法第一八一条第一項本文により被告人に負担させることとする。 よつて主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官藤井亮裁判官中村荘十郎裁判官臼杵勉)
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