平成13特(わ)2993 外国為替及び外国貿易法違反、有印私文書偽造、同行使、関税法違反被告

裁判年月日・裁判所
平成13年11月8日 東京地方裁判所
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判決文本文5,264 文字)

主文 被告人を懲役2年及び罰金50万円に処する。 未決勾留日数中50日をその懲役刑に算入する。 この裁判確定の日から3年間その懲役刑の執行を猶予する。 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 理由 (犯罪事実)被告人は,船舶輸出承認の申請代理等を業とするA会社の代表取締役であるが,船舶の売買,仲介等を業とするB会社の取締役であるBが,C会社の代表取締役C及び同社従業員Dから,朝鮮民主主義人民共和国(以下「北朝鮮」という。)に輸出する冷凍運搬船の売買の仲介を依頼され,Eが同人の妻F名義で所有する,漁ろう設備を有する中型イカ釣り漁船「第三十一博洋丸」をC会社に売却するに当たって,インドネシア共和国を仕向地とする書類を作成して通商産業大臣(以下「通産大臣」という。)から無効の輸出承認を得た上で同船を北朝鮮に密輸出することを企てた際,第1 B及びB会社の社員Gと共謀の上,被告人において,平成12年6月下旬ころ,埼玉県春日部市の被告人方において,行使の目的で,ほしいままにインドネシア共和国運輸省発行の暫定船籍証明書様の用紙及び暫定計測証明書様の用紙に,それぞれ英文タイプでその船名欄に「ATILA-1」等と打ち込んで記入するなどし,作成者の署名欄に黒色ボールペンで「H」等と冒書した上,駐日本国インドネシア共和国大使館の公印様の丸型印を冒捺するなどして,同大使館海事担当官H及び同国マナド港管理者I共同作成名義の暫定船籍証明書1通及び暫定計測証明書1通をそれぞれ偽造した上,同日28日,福島県いわき市所在の横浜税関小名浜税関支署において,「第三十一博洋丸」の船舶資格変更届を提出するに際し,情を知らないJをして,同支署統括監視官Kに対し,これらの文書があたかも真正に成立したもののように装って 所在の横浜税関小名浜税関支署において,「第三十一博洋丸」の船舶資格変更届を提出するに際し,情を知らないJをして,同支署統括監視官Kに対し,これらの文書があたかも真正に成立したもののように装って提示させて行使した第2 B,G,C及びDと共謀の上,「第三十一博洋丸」の輸出通関手続を行うに当たり,真実は北朝鮮を仕向地として同船を輸出するのにインドネシア共和国を仕向地として輸出するように装い,同月27日,上記横浜税関小名浜税関支署において,同支署長に対し,情を知らない通関士Lをして,インドネシア共和国を仕向地とする同船の輸出申告を行わせ,もって,輸出申告に際して偽った申告をした第3 B,G,C,D及び大韓民国釜山市において船舶運航等を業とするD会社を経営するMと共謀の上,通産大臣の承認を受けないで,同年8月6日,「第三十一博洋丸」を同市所在の小名浜港から,大韓民国墨湖港経由で北朝鮮に向けて出港させ,もって,通産大臣の承認を受けないで漁ろう設備を有する船舶を輸出したものである。 (事実認定についての補足説明) 1 弁護人は,判示第3の外国為替及び外国貿易法違反の事実(以下「本件」という。)について,被告人は,Bらとの間で通産大臣の承認を受けないで第三十一博洋丸を北朝鮮に密輸出することを共謀したことはなく,被告人には幇助犯が成立するに過ぎない旨主張するところ,当裁判所は,判示第3のとおり,被告人につき共謀共同正犯としての責任を認めたので,その理由について以下補足して説明する。 2 関係各証拠によれば,Bらが通産大臣の承認を受けないで第三十一博洋丸を北朝鮮に輸出した経緯等は次のとおりである。すなわち,Bは,船舶の売買,仲介等を業とするB会社の取締役として同社の業務を統括していたものであるが,平成12年3月中旬ころ(以下,年を記載しないときは「平成 鮮に輸出した経緯等は次のとおりである。すなわち,Bは,船舶の売買,仲介等を業とするB会社の取締役として同社の業務を統括していたものであるが,平成12年3月中旬ころ(以下,年を記載しないときは「平成12年」を指す。),C会社のDから「100トンから200トンの漁船を冷凍運搬船として北朝鮮に輸出したいので探してくれ」との依頼を受け,そのころEから,同人の妻F名義で入手し売買の仲介を依頼されていた冷凍設備を備える,総トン数130トンの中型イカ釣り漁船第三十一博洋丸をC会社に売却した上で北朝鮮に輸出することにした。しかし,漁ろう設備を有する船舶を輸出するには通産大臣の承認が必要となるところ,国交がなく,国際漁業協定にも加盟しておらず,かつ,漁場が競合することもあり得る北朝鮮への漁船の輸出について通産大臣の承認を得るのは極めて困難な状況にあったことから,Bは,第三十一博洋丸を北朝鮮に輸出する手続等について被告人に相談した上,被告人がレターヘッドを入手していたインドネシア共和国のE会社を仮装輸出先として利用し,通産大臣の輸出承認を受けた上で同船を北朝鮮に密輸出することにし,4月27日,売渡人をB会社,買受人をC会社,引き渡し場所を判示小名浜港とした上で現状有姿のままB会社が同船を鳥取県境港港まで回航してC会社に引き渡す旨の船舶売買契約を締結し,その後同社において北朝鮮から同港に来る船員らに同船を引き渡すことを決めた。そして,Bは,5月1日Fとの間でB会社が同船を同人から買い受ける旨の船舶売買契約を締結した後,被告人に対し,同船の仕向地をインドネシア共和国に仮装する輸出承認手続及びその後の輸出通関手続に関し必要な書類の作成や手続の代理を依頼するとともに,関係書類を送付した。そこで,被告人は,上記レターヘッド等を利用するなどして必要書類を偽造した 国に仮装する輸出承認手続及びその後の輸出通関手続に関し必要な書類の作成や手続の代理を依頼するとともに,関係書類を送付した。そこで,被告人は,上記レターヘッド等を利用するなどして必要書類を偽造した上で通産大臣の輸出承認を受けるための事前協議用の書類を水産庁に提出し6月19日水産庁長官の承認書の交付を受けた後,その翌日である20日に同様の書類を通商産業省に提出して通産大臣の輸出承認書の交付を受けた。その後被告人は,同月下旬ころ,輸出通関手続に使用する目的で,判示第1の暫定船籍証明書や暫定計測証明書を偽造してB会社に送付し,同月27日,同社から輸出通関手続を依頼されていたF会社の通関士Lをして,横浜税関小名浜税関支署長に対し,仕向地をインドネシア共和国とする内容虚偽の輸出申告をさせて判示第2の犯行に及び,翌28日,同社社員Jをして,同支署統括監視官Kに対し,上記偽造の暫定船籍証明書等を添付した第三十一博洋丸の船舶資格変更届を提示させて判示第1の犯行に及んだ。ところが,B会社の社員であるGが北朝鮮に行く旨の発言をしたことから,これを聞きつけた小名浜海上保安庁の係官が税関担当者に通報し,一旦なされた税関の輸出許可が保留処分となったため,当初の予定どおり同船を境港港で北朝鮮の船員らに引き渡すことができなかった。そこで,Bは,Mの口座を利用してあたかもE会社からFに同船の売買代金が入金されたかのように装うなどして上記保留処分を解除してもらうとともに,同船を一旦大韓民国の墨湖港に入港させた後Mが経営する会社の所有する船舶の先導で北朝鮮の金策港に回航することにし,8月6日Bが雇ったNら3名の船員が既に船名を「ATIRAー1」に変更していた同船に乗り込んで小名浜港から出港させた。その後同船は,同月19日墨湖港に入港した後,Mが手配した船員らが乗り込 とにし,8月6日Bが雇ったNら3名の船員が既に船名を「ATIRAー1」に変更していた同船に乗り込んで小名浜港から出港させた。その後同船は,同月19日墨湖港に入港した後,Mが手配した船員らが乗り込むなどして同港を出港し,同月22日ころ金策港に入港して北朝鮮側に引き渡された。 3 以上のように,本件において被告人が果たした役割は,仕向地をインドネシア共和国に仮装して第三十一博洋丸に関する通産大臣の無効の輸出承認を得るとともにその後の通関手続に必要な書類の作成に当たることであったとはいえ,それは,同船を北朝鮮に輸出する旨申請しても通産大臣の承認を得ることができなかったことから,同船を小名浜港から出港させた上北朝鮮に回航して密輸出するためには是非とも必要な手続であったことが明らかである。しかも,被告人は,Bから同船の輸出承認の手続について「漁船を北朝鮮に持って行きたいが,どこかいい国ないか」と電話で相談を受けるや,偽造する必要のある書類に利用できるレターヘッド等を保管していたE会社を仮装輸出先とし,同社の所在するインドネシア共和国を仕向地に仮装するのが良いと考え,Bにその旨の話をし,30万円の報酬を受ける約束でその申請手続の代理を引き受けており,このような被告人の立場からすれば,自ら関わった輸出承認手続等における偽装工作が露見しないためにも,同船が通産大臣の輸出承認手続やその後の輸出通関手続を経た後,無事に北朝鮮に回航されることは,被告人にとっても重要な関心事であったと言うことができる。そして,上述したように,Bを中心に,各共犯者が順次本件の共謀を遂げた上各共犯者がそれぞれの役割を果たした結果,通産大臣の輸出承認を受けることなく第三十一博洋丸が北朝鮮に密輸出されていることからすれば,被告人がB及びG以外の共犯者を知らなかったとしても,その 遂げた上各共犯者がそれぞれの役割を果たした結果,通産大臣の輸出承認を受けることなく第三十一博洋丸が北朝鮮に密輸出されていることからすれば,被告人がB及びG以外の共犯者を知らなかったとしても,そのことが,被告人に共謀共同正犯としての責任を問う妨げになるものではない。 4 このような本件犯行の経緯,被告人が本件において果たした役割,更には被告人が本件によって得た利益等に照らすと,被告人は,自らの犯罪として本件を敢行したものであってその責任は単に幇助犯に止まることなく,共謀共同正犯としての責任を負うと言うべきであり,弁護人の主張は採用できない。 (量刑の理由)本件は,判示のとおり,B会社のBが,C会社のDから,北朝鮮の会社に中古漁船を冷凍運搬船として売却する仲介の依頼を受けた際,そのままでは通産大臣の輸出承認を得ることができない実情にあることから,被告人と図った上で,日本国と漁場競合等の問題の生じないインドネシア共和国を仕向地に仮装し,通産大臣の輸出承認を得ることなく,第三十一博洋丸を北朝鮮に密輸出することを計画し,被告人において判示暫定船籍証明書及び暫定計測証明書を偽造した上で,税関職員に提示させて行使するとともに(第1の事実)輸出通関手続をするに当たって仕向地を偽った輸出の申告をさせ(第2の事実),通産大臣の有効な輸出承認を得ないまま第三十一博洋丸を大韓民国経由で北朝鮮に輸出したという事案であって,計画的かつ巧妙な犯行というだけでなく,その結果,我が国漁業との間で漁場調整上の問題が発生するのを未然に防止し,かつ,国際漁業協定に基づく漁業秩序を維持して有限な漁業資源の保護を図ることを目的とする輸出承認制度をないがしろにした行為であって,悪質な犯行である。しかも,被告人は,第三十一博洋丸をインドネシア共和国に輸出することを仮装して通産 を維持して有限な漁業資源の保護を図ることを目的とする輸出承認制度をないがしろにした行為であって,悪質な犯行である。しかも,被告人は,第三十一博洋丸をインドネシア共和国に輸出することを仮装して通産大臣の輸出承認を得たり,輸出通関手続を行うに当たって必要な書類を偽造したりするなど,本件犯行において必要かつ重要な役割を果たした上で,相当な報酬を得ているのであって,被告人の刑事責任は重いと言わざるを得ない。 他方,被告人は,今では本件に及んだことを反省悔悟し,今回の事件を契機にA会社を閉鎖する覚悟を決め,2度と同じ過ちを繰り返さないことを誓うとともに,今後は得意の語学を生かしたボランティア活動等に携わり周りの人達のお役に立ちたいと述べている。また,本件が新聞等で大きく報道されたことから,被告人のみならず,妻や子供らも種々の苦労を積んでいて,既に一定程度の社会的制裁を受けていると評価できる。さらに,被告人の妻が今後の被告人に対する監督を誓っている上,被告人にはこれまで前科がないことなど被告人のために酌むべき事情も認められる。 そこで,これら諸般の情状を総合考慮し,被告人に対しては,今回に限りその懲役刑の執行を猶予することとし,主文の刑を量定した。 (検察官倉又彰出席)(求刑懲役2年及び罰金50万円)平成13年11月8日東京地方裁判所刑事第1部裁判官川口宰護

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