- 1 -主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 処分行政庁が平成20年2月29日付けで原告に対してした,(1) 原告の平成16年分の所得税に係る更正処分(以下「平成16年分所得税の更正処分」という)のうち,別紙1の「確定申告」欄中の「総所得金。 額」欄及び「納付すべき税額」欄記載の各金額を超える部分(2) 原告の平成17年分の所得税に係る更正処分(以下「平成17年分所得税の更正処分」という)のうち,別紙2の「確定申告」欄中の「総所得金。 額」欄及び「納付すべき税額」欄記載の各金額を超える部分(3) 原告の平成16年分及び平成17年分の所得税に係る過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という)。 をいずれも取り消す。 処分行政庁が平成20年5月19日付けで原告に対してした,原告の平成18年分の所得税に係る更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という)を取り消す。 。 第2事案の概要本件は,①原告が,外国為替証拠金取引により生じた売買差損益金等につき,すべての取引の決済清算が終了するまで損益は未確定であり,課税対象となる所得は生じていないなどとして,平成16年分及び平成17年分の所得税の確定申告においては,これらについて所得として申告せず,平成18年分の所得税の確定申告においては,これらについていったん所得として申告した後に更正の請求をしたのに対し,②処分行政庁が,上記の売買差損益金等について原- 2 -告の雑所得を構成するとして,平成16年分所得税の更正処分及び平成17年分所得税の更正処分(これらを総称して,以下「本件各更正処分」という,。)本件各賦課決定処分並びに本件通知処分(以上の各処 告の雑所得を構成するとして,平成16年分所得税の更正処分及び平成17年分所得税の更正処分(これらを総称して,以下「本件各更正処分」という,。)本件各賦課決定処分並びに本件通知処分(以上の各処分を総称して,以下「本件各処分」という)をしたため,③原告が,本件各処分(ただし,本件各更。 正処分については,原告の確定申告に係る総所得金額及び納付すべき税額を超える部分)の適法性を争い,その取消しを求める事案である。 法令の定め(1) 所得税法の定めア所得税法23条1項は,利子所得につき,公社債及び預貯金の利子並びに合同運用信託,公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得をいう旨定めている。 イ所得税法35条1項は,雑所得につき,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう旨定め,同条2項は,雑所得の金額につき,その年中の公的年金等の収入金額から公的年金等控除額を控除した残額(同項1号)と,その年中の雑所得(公的年金等に係るものを除く)。 に係る総収入金額から必要経費を控除した金額(同項2号)との合計額とする旨定めている。 ウ所得税法36条1項は,その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額につき,別段の定めがあるものを除き,その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には,その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする旨定めている。 (2) 国税通則法の定め国税通則法15条2項1号は,源泉徴収によるものを除く所得税の納税義務につき,暦年の終了の時に成立する旨定めている。 - 3 - 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに文中記 国税通則法の定め国税通則法15条2項1号は,源泉徴収によるものを除く所得税の納税義務につき,暦年の終了の時に成立する旨定めている。 - 3 - 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに文中記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)等(1) 外国為替証拠金取引「P1」の概要P2株式会社の扱う金融商品である外国為替証拠金取引「P1(以下」「本件FX取引」という)は,金融商品取引法2条22項に規定する「店。 頭デリバティブ取引」のうち同項1号に掲げられた「売買の当事者が将来の一定の時期において金融商品…及びその対価の授受を約する売買であって,当該売買の目的となっている金融商品の売戻し又は買戻しその他政令で定める行為をしたときは差金の授受によって決済することができる取引」に該当するものであり,その概要は,次のとおりである。 ア本件FX取引は,P2と顧客との相対取引である。すなわち,顧客は,P2と契約し,口座の開設から注文や報告,金銭の授受,書類の送付などは,すべて顧客とP2との間で行われる。 イ本件FX取引は,証拠金を預託して外国為替の売買を行う取引であり,証拠金が総取引代金に対し非常に低率(約10%程度)となっているため,少ない資金で大きな取引が可能である。すなわち,投資資金に対して大きな利益が狙える反面,大きな損失にもつながり得る取引である(乙1。 )ウ本件FX取引の決済方法には,差金決済(買い建玉については転売,売り建玉については買戻しという反対売買によって建玉を清算し,差金の受払いで取引を終了する方法)と現物の受渡しとがある。 なお,顧客が取引通貨を買って決済を待っている状態(顧客の未決済の買い契約)を買い建玉といい,顧客が取引通貨を売って決済を待っている状態(顧客の未決済の売り契約)を売り建玉という。 エ しとがある。 なお,顧客が取引通貨を買って決済を待っている状態(顧客の未決済の買い契約)を買い建玉といい,顧客が取引通貨を売って決済を待っている状態(顧客の未決済の売り契約)を売り建玉という。 エ本件FX取引は,顧客が決済注文を出さない限り,自動的に取引通貨の受渡しの決済日が延長されていく方式(以下「ロールオーバー方式」という)を採用している。本件FX取引では,本件FX取引に係る2種類の。 - 4 -通貨(本邦通貨又は外国通貨と取引対象の外国通貨)の間において日々発生するとされる「スワップ金利」と称される金利差(以下「スワップ金,利差」という)を調整する額(以下「スワップ金利差調整額」とい。 う)の受払いを行うこととされており,ロールオーバー方式の下におけ。 るスワップ金利差調整額の受払いは,①スワップ金利差に相当する額を暦日単位で計算して蓄積していき,当該蓄積分を,建玉が決済された時に,取引口座において加算又は控除をし(別紙4の「差金決済時,②それ」)以外にも,毎月1回定期的に(具体的には月末に,取引口座において加)算又は控除をすることにより行われる(別紙4の「月末スワップ」及び「外貨建て月末スワップ。本件FX取引においては,上記のように決」)済時又は毎月1回定期的に取引口座において加算若しくは控除がされたスワップ金利差調整額を,実現スワップ金利と称している。 オ顧客は,返還可能額の範囲内で取引口座から出金をすることができる。 (2) 本件契約の締結原告は,平成12年8月25日,P2に対し,外国為替取引口座開設申込書(乙2。これにより開設された原告の取引口座を,以下「本件取引口座」という,外国為替証拠金取引約諾書(乙4)等を提出し,P2との間で,。)同社が定めた「外国為替証拠金取引』取引契約約款(乙6。以下「本 。これにより開設された原告の取引口座を,以下「本件取引口座」という,外国為替証拠金取引約諾書(乙4)等を提出し,P2との間で,。)同社が定めた「外国為替証拠金取引』取引契約約款(乙6。以下「本件『」取引約款」という)及び「外国為替証拠金取引『P1』取扱要綱(甲5。 。 」以下「本件取扱要綱」という)に基づき,本件FX取引を行う旨の契約。 (以下「本件契約」という)を締結した。本件契約においては,次のよう。 な定めがされている。 ア外国為替取引口座の設定(本件取引約款3条)顧客が,外国為替証拠金取引を行う場合は,P2に外国為替取引口座を設定しなければならない。 顧客が,外国為替証拠金取引において,取引証拠金,外貨や代金の受渡- 5 -し,あるいは転売又は買戻しによる最終決済を行った場合に授受する差損益金,金利その他の金銭は,すべて外国為替取引口座で処理するものとする。 イ注文(本件取引約款4条)顧客が売買注文をするときは,次に掲げる事項をその都度P2に指示するものとする。 (ア) 通貨の種類(イ) 取引数量(枚数)(ウ) 売付け又は買付けの区別(エ) 新規又は決済の区別(オ) 決済する建玉を指定する場合,その建玉の約定値段(カ) 指値又は成行の区別(キ) 指値の場合,その値段及び売買注文の有効期限ウ売買レート(本件取引約款5条)売買レートは,P2が提示する各取引通貨の価格とする。 エスワップ金利(本件取引約款6条)P2は,建玉日以降より発生する本邦通貨又は外国通貨と取引対象の外国通貨間における金利差相当額(スワップ金利差相当額)を日々計算し,定期的に毎月1回,顧客に支払い,又は顧客から徴収するものとする。 スワップ金利差相当額は,顧客が本邦通貨又は外国通貨より高い金利の外国通貨を売り付けた場合,その金利差相当 利差相当額)を日々計算し,定期的に毎月1回,顧客に支払い,又は顧客から徴収するものとする。 スワップ金利差相当額は,顧客が本邦通貨又は外国通貨より高い金利の外国通貨を売り付けた場合,その金利差相当額をP2に支払うものとし,買い付けた場合においては,P2からその金利差相当額を受領することができるものとする。また,本邦通貨又は外国通貨より低い金利の外国通貨を売り付けた場合,その金利差相当額を受領することができ,買い付けた場合においては,その金利差相当額を支払うものとする。 スワップ金利差相当額が発生する期間は,建玉が発生した日の翌日から- 6 -建玉が消滅した日までの期間とする。 オ手数料(本件取引約款7条)顧客は,外国為替証拠金取引を行った都度,P2所定の手数料を支払うものとする(ただし,受渡しによる決済の場合の決済時の手数料は必要ない。 。)カ取引証拠金(本件取引約款8条)顧客は,P2と取引を行うに際し,外国為替証拠金取引から生じるP2に対するすべての債務を担保するため,P2に①本証拠金,②追加証拠金及び③臨時増証拠金を預託する。 なお,本件取扱要綱によれば,預託すべき証拠金の最低額は,100万円とされている。 キ返還可能額(本件取引約款11条)返還可能額は,有効証拠金(預託金,帳尻金〔売買差損益金から手数料などのコストを差し引き,実現スワップ金利を加減した額〕及び評価差損益金〔毎営業日の帳入値段で算出される評価上の損益〕の合計額。同約款9条2項)から必要証拠金(建玉を維持するために必要な証拠金。同約款9条4項)を差し引いた金額とする。また,顧客が全部又は一部の返還を請求した日から起算して4営業日以内に別途本件取扱要綱に定める方法により返還するものとする。 ク反対売買による決済(本件取引約款13条)P2は,顧客の指示 とする。また,顧客が全部又は一部の返還を請求した日から起算して4営業日以内に別途本件取扱要綱に定める方法により返還するものとする。 ク反対売買による決済(本件取引約款13条)P2は,顧客の指示によって,建玉を転売又は買戻しにより決済した場合,売買差損益金を計算するものとする。 ケ取引成立の通知(本件取引約款15条)P2は,顧客の売買注文が成立した場合,遅滞なく,書面により次に掲げる事項について顧客に通知するものとする。 (ア) 通貨の種類- 7 -(イ) 売付け又は買付けの区別(ウ) 新規又は決済の区別(エ) 注文成立の年月日(オ) 取引数量(枚数)(カ) 約定値段(キ) 総取引金額(ク) 売買差損益金及びその通算額(ケ) 手数料コ預り証拠金等の利息(本件取引約款28条)P2は,顧客の預り証拠金,売買差益金及びその他一切の預り金について,その利息を付与しない。 (3) 原告による本件FX取引の開始及びその後の取引状況ア原告は,平成12年9月8日,本件取引口座に証拠金110万円を入金して,本件契約に基づく本件FX取引を開始し,その後,同取引を継続した。 イ原告が本件契約に基づいて行った本件FX取引のうち,平成16年中,平成17年中及び平成18年中にそれぞれ決済された取引(上記の各年ごとの取引を,以下「本件平成16年分取引」などといい,これらの取引を総称して「本件取引」という)は,すべて,差金決済の方法(反対売買。 によって建玉を清算し,差金の受払いで取引を終了する方法)により決済がされた。本件取引の決済状況や,売買差損益金(以下「本件差損益金」という,スワップ金利差調整額(以下「本件スワップ金利差調整額」。)という,手数料及び帳尻金(以下「本件帳尻金」という)の額は,そ。)。 れぞれ別紙4に記載されて 益金(以下「本件差損益金」という,スワップ金利差調整額(以下「本件スワップ金利差調整額」。)という,手数料及び帳尻金(以下「本件帳尻金」という)の額は,そ。)。 れぞれ別紙4に記載されているとおりである(甲6,乙5。 )(4) 本件帳尻金が雑所得に当たるものとした場合の原告の平成16年分~平成18年分の所得税に係る納付すべき税額等- 8 -ア本件平成16年分取引に係る本件帳尻金が原告の平成16年分の雑所得に当たるものとした場合の,原告の平成16年分の総所得金額,納付すべき税額等は,別紙1の「更正処分等」欄(ただし,これに対応する「年月日」欄及び「過少申告加算税」欄を除く)に記載されているとおりであ。 る。 イ本件平成17年分取引に係る本件帳尻金が原告の平成17年分の雑所得に当たるものとした場合の,原告の平成17年分の総所得金額,納付すべき税額等は,別紙2の「更正処分等」欄(ただし,これに対応する「年月日」欄及び「過少申告加算税」欄を除く)に記載されているとおりであ。 る。 ウ本件平成18年分取引に係る本件帳尻金が原告の平成18年分の雑所得に当たるものとした場合の,原告の平成18年分の総所得金額,納付すべき税額等は,別紙3の「確定申告」欄(ただし,これに対応する「年月日」欄を除く)に記載されているとおりである。 。 (5) 原告による確定申告等ア原告は,平成16年分及び平成17年分の所得税につき,本件平成16年分取引及び本件平成17年分取引に係る本件帳尻金(別紙4の「平成16年分」及び「平成17年分」の各欄にそれぞれ対応する「本件帳尻金(③-④」欄記載の金額)を所得に含めずに,別紙1及び2の各「確定)申告」欄記載のとおり確定申告をした。 イ原告は,平成18年分の所得税につき,本件平成18年分取引に係る本件帳尻 る「本件帳尻金(③-④」欄記載の金額)を所得に含めずに,別紙1及び2の各「確定)申告」欄記載のとおり確定申告をした。 イ原告は,平成18年分の所得税につき,本件平成18年分取引に係る本件帳尻金(別紙4の「平成18年分」欄に対応する「本件帳尻金(③-④」欄記載の金額)をいったんは所得に含めて,別紙3の「確定申告」)欄記載のとおり確定申告をしたが,その後,上記の本件帳尻金は課税対象となる所得に含まれないとして,上記確定申告につき別紙3の「更正請求」欄記載のとおり更正の請求をした。 - 9 -(6) 本件各処分の経緯等ア処分行政庁は,原告の平成16年分及び平成17年分の所得税につき,別紙1及び2の各「更正処分等」欄記載のとおり本件各更正処分及び本件各賦課決定処分をした。 イ処分行政庁は,原告の平成18年分の所得税につき,別紙3の「通知処分」欄記載のとおり本件通知処分をした。 ウ本件各処分に対する原告の異議申立てとこれに対する処分行政庁の決定,同決定に対する原告の審査請求とこれに対する国税不服審判所長の裁決の経緯は,別紙1~3の各「異議申立て」欄「異議決定」欄「審査請,,求」欄及び「審査裁決」欄記載のとおりである。 エ原告は,平成21年9月14日,本件訴えを提起した(顕著な事実。 )(7) 「P3」と本件FX取引との税制上の取扱いの差異株式会社P4が上場する外国為替証拠金取引である「P3」は,租税特別措置法41条の14第1項2号に掲げる取引に該当するものであり,税制上の特例措置(同法41条の14,41条の15参照)が適用されるため,本件FX取引の損益と「P3」の損益とでは,以下のとおり税制上異なる取扱いがされることになる。 ア「P3」の損益は,申告分離課税の対象となる(税率は所得にかかわらず一律20%)のに対し,本件F ,本件FX取引の損益と「P3」の損益とでは,以下のとおり税制上異なる取扱いがされることになる。 ア「P3」の損益は,申告分離課税の対象となる(税率は所得にかかわらず一律20%)のに対し,本件FX取引の損益は,総合課税の対象となる(平成16年分~平成18年分の所得税に関しては,経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律〔平成18年法律第10号による廃止前のもの〕4条の特例により,最高税率は37%である。 。)イ「P3」の損益は,所得税の計算上,有価証券先物取引や商品先物取引に係る損益と通算することができるのに対し,本件FX取引の損益については,そのような通算はできない。 - 10 -ウ「P3」においては,確定申告を行う年度に控除しきれない損失については,翌年以降3年間にわたり,申告分離課税となる「先物取引に係る雑所得等」の金額から繰越控除することができるのに対し,本件FX取引に係る損失については,そのような繰越控除はできない。 争点 (1) 本件帳尻金が原告の平成16年分,平成17年分及び平成18年分の各所得税の課税対象となる雑所得を構成するか否か(争点1。 )(2) 所得税法35条が憲法30条,84条の租税法律主義に違反し無効であるか否か(争点2。 )(3) 「P3」と本件FX取引との税制上の取扱いの差異が憲法14条1項に違反するか否か(争点3。 ) 争点に関する当事者の主張の要点(1) 本件帳尻金が原告の平成16年分,平成17年分及び平成18年分の各所得税の課税対象となる雑所得を構成するか否か(争点1)についてア原告の主張の要点(ア) 本件帳尻金が課税対象となる所得とはいえないこと①本件FX取引においては,ロールオーバー方式が採用されており,顧客が決済注文を出さない 構成するか否か(争点1)についてア原告の主張の要点(ア) 本件帳尻金が課税対象となる所得とはいえないこと①本件FX取引においては,ロールオーバー方式が採用されており,顧客が決済注文を出さない限り,自動的に決済日が延長される。そして,日々発生するスワップ金利差により,本件契約に基づきあらかじめ決められた方式に従って算定されたスワップ金利差調整額は「決済清算」,(P2に設定した取引口座を解約して取引のすべてを清算すること)がされるまでの間,プラスのときには預り証拠金という計算上の項目に振り替えられ,マイナスとなったときには差し引かれるということを繰り返す。そして,この間のスワップ金利差調整額が加算又は差し引かれ,さらに差金決済による利益又は損失が上乗せ又は差し引かれた上で,「決済清算時」に初めて利益が確定し,なお本件契約に基づき顧客に支- 11 -払われるべき金額が発生した場合に,顧客の収入として現実に支払がされることになる。そのため,本件FX取引においては,全部の「決済清算」がされない限り,顧客の利益が確定することはあり得ず,現実に顧客の手元に利益が還元されることはない。②また,スワップ金利差調整額は,為替差損をカバーするために長期間保有することが前提とされており,引出しを行うことは予定されていない。以上からすれば,本件FX取引における顧客の収益は「手じまい」をし「決済清算」がされ,,るまでの間は未実現・未確定であって,課税すべき所得とはいえない。 本件各処分は,本件取引につき,課税すべき所得がいまだ確定していないにもかかわらず,本件帳尻金を課税すべき所得としてされたものである点において,違法というべきである。 (イ) 本件スワップ金利差調整額が利子所得であることスワップ金利差調整額の実質は,間接的には日本円を外貨に交換 ,本件帳尻金を課税すべき所得としてされたものである点において,違法というべきである。 (イ) 本件スワップ金利差調整額が利子所得であることスワップ金利差調整額の実質は,間接的には日本円を外貨に交換し預金する外貨預金により発生する利子から為替手数料を引いたものと同一であり,所得税法23条の定める利子所得というべきである。したがって,本件スワップ金利差調整額が雑所得であることを前提とする本件各処分は,違法というべきである。 イ被告の主張の要点(ア) 本件帳尻金が雑所得であることa帳尻金は,売買差損益金とスワップ金利差調整額との合計額から支払手数料を控除した残額であり,その収入金額を構成するのは,売買差損益金及びスワップ金利差調整額である。そして,売買差損益金は,本件契約に基づき,原告が,その指定した通貨の新規の売買注文が成立したことにより有することとなった建玉を,反対売買により決済したことによって生じたものであり,スワップ金利差調整額は,上記のとおり原告が有することとなった建玉の決済が自動延長(ロールオー- 12 -バー)されることにより日々生じたものである。 そうすると,本件差損益金と本件スワップ金利差調整額とを収入金額とする本件帳尻金は,所得税法が規定する利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得又は譲渡所得のいずれにも該当しないし,原告が営利を目的として継続的に本件FX取引を行っていたことは明らかであるから,一時所得にも該当しない。 したがって,本件帳尻金は,所得税法が規定する雑所得以外の各種所得のいずれにも該当しないから,雑所得に該当することとなる。 b原告は,本件スワップ金利差調整額が利子所得に該当する旨主張する。しかし,所得税法23条1項の規定は,利子所得を限定列挙したものと解されている れにも該当しないから,雑所得に該当することとなる。 b原告は,本件スワップ金利差調整額が利子所得に該当する旨主張する。しかし,所得税法23条1項の規定は,利子所得を限定列挙したものと解されているところ,本件スワップ金利差調整額は,同項に規定するいずれの所得にも該当しない上,原告は,本件スワップ金利差調整額が同項に規定するいずれの所得に該当するかも明らかにしていないから,原告の上記主張は,失当である。 (イ) 本件帳尻金が課税対象となる所得であることa所得税法36条1項の「収入すべき金額」とは,実現した収益,すなわちまだ収入がなくても「収入すべき権利の確定した金額」を意味する。すなわち,同法は,現実の収入がなくても,その収入の原因たる権利が確定的に発生した場合には,その時点で所得の実現があったものとして,上記権利発生の時期の属する年度の課税所得を計算するという建前(権利確定主義)を採用している。 b本件契約は,原告が,その有する建玉を反対売買によって決済するために,決済の売買注文をP2に対して指示し,当該決済の売買注文が成立すると,当該売買の目的となっている外国通貨の引渡しは行わずに,代金の支払を差金の授受によって清算する内容となっている。 このように,本件FX取引においては,反対売買による決済が行われ- 13 -ることによって差金の授受に係る権利義務が原告とP2との間に生ずることとなる。そうすると,売買差損益金の収入計上時期(収入すべき権利が確定した時期)は,建玉を反対売買により決済したとき(原告が反対売買のためにP2に対して指示した決済の売買注文が成立したとき)であるというべきである。 c本件契約においては,スワップ金利差調整額については,建玉の発生した日の翌日以降,日々発生し,その累積した金額が,毎月末又は建玉を決済し 決済の売買注文が成立したとき)であるというべきである。 c本件契約においては,スワップ金利差調整額については,建玉の発生した日の翌日以降,日々発生し,その累積した金額が,毎月末又は建玉を決済したときに本件取引口座において帳尻金として処理されるものとされており,その処理を行うことが可能となる条件が整ったときに,原告及びP2の双方においてその損益に係る権利義務が確定するものと解される。そうすると,決済がすべて反対売買により行われている本件においては,スワップ金利差調整額の収入計上時期(収入すべき権利が確定した時期)は,毎月末又は建玉を反対売買により決済したとき(原告が反対売買のためにP2に対して指示した決済の売買注文が成立したとき)というべきである。 d以上によれば,本件平成16年分取引,本件平成17年分取引及び本件平成18年分取引に係る本件帳尻金(別紙4の「本件帳尻金(③-④」欄記載の各金額)は,それぞれ,原告の平成16年分,平成)17年分及び平成18年分の所得税の課税対象となる所得である。 (2) 所得税法35条が憲法30条,84条の租税法律主義に違反し無効であるか否か(争点2)についてア原告の主張の要点雑所得の定義は,利子所得,配当所得等,所得税法に定められた9種類の所得以外の所得という極めてあいまいなものであり,どのような所得が雑所得に当たるのか,すなわち,課税要件が何かが不明確であるから,所得税法35条は,憲法30条,84条の租税法律主義に違反し無効である。 - 14 -したがって,所得税法35条を前提とする本件各処分も無効である。 イ被告の主張の要点所得税法35条が,雑所得の意義について,他の種類の所得のように統一的なメルクマールを規定していないとしても,同法が規定する所得の概念は明確であり,同条が規定する,他 である。 イ被告の主張の要点所得税法35条が,雑所得の意義について,他の種類の所得のように統一的なメルクマールを規定していないとしても,同法が規定する所得の概念は明確であり,同条が規定する,他の9種類の所得に該当しない所得との雑所得の意義は何らあいまいなものではないから,原告の主張は失当である。 (3) 「P3」と本件FX取引との税制上の取扱いの差異が憲法14条1項に違反するか否か(争点3)についてア原告の主張の要点(ア) 「P3」に係る税制の特例措置(前記2(7))の目的については,先物取引において詐欺被害にあう顧客が多いことから,金融庁の監督下にあるP4を通じて取引を行わせる必要が高く,そのために,取引所に登録する業者を増やし,正規ルートでの取引を行わせることにあるとの説明がされている(甲3。 )(イ) しかし,①上記特例措置は,P4という営利を目的とする一企業を特別扱いするものというべきこと,②市場の公正確保という目的は,そのような特例措置以外の手段によっても達成することが可能であり,税制の特例措置という手段は,上記目的との関連性が薄いというべきこと,③外国為替証拠金取引は,長期にわたり「決済清算」せずに建玉を持ち続けることで利益を得ることを前提とするものであり,また,手じまいをする時期を誤ると大きな損失を被る危険があることに照らすと「P,3」が登場する以前に外国為替証拠金取引を始めていた投資家が,従来の契約を終了し,改めて「P3」の取扱業者との取引を行うことは不可能であるというべきことに照らすと,前記2(7)のような税制上の不平等な取扱いは,著しく不合理なものであることが明らかであり,憲法1- 15 -4条1項に違反するものである。 (ウ) したがって「P3」の取扱業者との取引を行った者と比べて税制上,不平 上の不平等な取扱いは,著しく不合理なものであることが明らかであり,憲法1- 15 -4条1項に違反するものである。 (ウ) したがって「P3」の取扱業者との取引を行った者と比べて税制上,不平等な取扱いをした本件各処分は,憲法14条1項に違反するものであって,無効である。 イ被告の主張の要点(ア) 租税法の分野における課税上の取扱いの区別について憲法14条1項の適合性を判断する場合には,その立法目的が正当なものであり,かつ,当該立法において具体的に採用された区別の態様が上記目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り,憲法14条1項に違反するものではないというべきである。 (イ) 「P3」に係る税制上の取扱い(前記2(7))は,外国為替証拠金取引に基づく被害の拡大を防止する観点から,外国為替証拠金取引やこれに類似する取引を取り扱う業者を金融先物取引業者の定義に含め規制対象とすること等を内容とする「金融先物取引法の一部を改正する法律(平成16年法律第159号」が制定され,平成17年7月1日から)施行されることを踏まえ,また,金融所得課税の一体化・簡素化に向けて課税方式の均衡化を図るために設けられたものであり(乙7,その)目的は正当であるということができる。 そして,公正な外国為替証拠金取引を確保し,同取引に基づく被害の発生防止を図るとともに,金融所得課税の一体化・簡素化に向けて課税方式の均衡化を図るという観点からすれば「P3」のように,法令等,やP4独自の厳格な基準を満たした業者を通じて市場において行われる取引と,本件FX取引のようにいわゆる店頭において行われる取引とを区分して,前者の方が有利になる場合が生じ得る税制上の取扱いを定めたことには,その目的に照らして著しく不合理なところはないから,これが憲法14条1 X取引のようにいわゆる店頭において行われる取引とを区分して,前者の方が有利になる場合が生じ得る税制上の取扱いを定めたことには,その目的に照らして著しく不合理なところはないから,これが憲法14条1項の規定に違反するものでないことは明らかである。 - 16 -第3当裁判所の判断 本件帳尻金が原告の平成16年分,平成17年分及び平成18年分の各所得税の課税対象となる雑所得を構成するか否か(争点1)について(1) 本件帳尻金が所得に該当するとした場合の所得の種類についてア所得税法は,所得を,その性質によって,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得,一時所得及び雑所得の10種類に分類し(同法23条~35条,上記の利子所得か)ら一時所得までの9種類の所得に該当しないものをすべて雑所得としている(同法35条1項。すなわち,同法の定めによれば,ある所得が上記)の利子所得から一時所得までの9種類の所得のいずれにも該当しない場合には,雑所得に該当するということになる。 イ既に述べたとおり,本件契約における帳尻金は,売買差損益金から手数料等を控除した残額とスワップ金利差調整額(実現スワップ金利)との合計額であるから(前記第2の2(2)キ,その収入金額となるのは,売買)差損益金及びスワップ金利差調整額(実現スワップ金利)である。 そして,売買差損益金は,原告が,P2に対して通貨の種類等を指示して新規の売買注文を行い(同(2)イ,これが成立することにより有する)こととなった買い建玉又は売り建玉(同(1)ウ)を,反対売買により清算して決済したこと(同(1)ウ及び(2)ク)によって生ずるものである。また,スワップ金利差調整額(実現スワップ金利)は,上記のような新規の売買注文の成立によって原告が建玉を有す ,反対売買により清算して決済したこと(同(1)ウ及び(2)ク)によって生ずるものである。また,スワップ金利差調整額(実現スワップ金利)は,上記のような新規の売買注文の成立によって原告が建玉を有することとなった翌日以降,その決済が自動延長されることにより,暦日単位で日々生ずることとなる計算上のスワップ金利差相当額が蓄積され,建玉の決済時又は毎月末に受払いの対象として本件取引口座において加算又は控除がされるものである(同(1)エ及び(2)エ。このような売買差損益金及びスワップ金利差調整額(実)- 17 -現スワップ金利)の内容及び性質に照らせば,本件平成16年分取引,本件平成17年分取引及び本件平成18年分取引に係る本件差損益金及び本件スワップ金利差調整額をそれぞれ収入金額とする上記各取引に係る本件帳尻金は,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得及び譲渡所得(所得税法23条~33条)のいずれにも該当しないというべきである。また,本件FX取引が,累次の売買注文等を通じ,投資資金に対して大きな利益が狙える反面,大きな損失にもつながり得る取引であること(同(1)イ)からすれば,本件帳尻金は,同法34条1項にいう「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」に該当するものであることが明らかであって,一時所得にも該当しない。そうすると,本件帳尻金が課税対象となる所得に該当するとした場合,その所得の種類は,雑所得(同法35条)となるというべきである。 ウ原告は,本件帳尻金の収入金額の一部を構成する本件スワップ金利差調整額は利子所得(所得税法23条)に該当すると主張する。 しかし,利子所得を定義する同条1項の規定は,その文理に照らし,利子所得に該当する所得を限定列挙したものであると解すべきところ,本件スワップ金利 額は利子所得(所得税法23条)に該当すると主張する。 しかし,利子所得を定義する同条1項の規定は,その文理に照らし,利子所得に該当する所得を限定列挙したものであると解すべきところ,本件スワップ金利差調整額は,同項に規定する所得(公社債及び預貯金の利子並びに合同運用信託,公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得)のいずれにも該当しない。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 (2) 本件帳尻金が課税対象となる所得に該当するか否かについてア所得税法36条1項が,その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,その年において「収入すべき金額」とすると定め「収入した金,,額」とするとしていないことからすれば,同法は,現実の収入がなくてもその収入の原因となる権利が確定した場合には,その時点で所得の実現が- 18 -あったものとして,上記権利確定の時期の属する年分の課税所得を計算するという建前(いわゆる権利確定主義)を採用しているものと解される(最高裁昭和39年(あ)第2614号同40年9月8日第二小法廷決定・刑集19巻6号630頁,同昭和43年(オ)第314号同49年3月8日第二小法廷判決・民集28巻2号186頁,同昭和50年(行ツ)第123号同53年2月24日第二小法廷判決・民集32巻1号43頁参照。 )イ本件契約においては,①原告が,その有する建玉を反対売買により清算して決済するために,決済に係る売買注文をP2に対して行い,当該売買注文が成立すると,当該売買の目的となっている外国通貨の受渡し自体は行われず,本件取引口座を用いて行う差金(売買差損益金)の受払いによって当該取引が終了するものとされ(前記第2の2(1)ウ,(2) 注文が成立すると,当該売買の目的となっている外国通貨の受渡し自体は行われず,本件取引口座を用いて行う差金(売買差損益金)の受払いによって当該取引が終了するものとされ(前記第2の2(1)ウ,(2)ア及びク,)②また,スワップ金利差調整額は,建玉の発生した日の翌日以降,計算上日々発生するスワップ金利差相当額の累積した金額が,建玉を決済したとき又は毎月末に受払いの対象たるもの(実現スワップ金利)として本件取引口座において帳尻金の一部として処理されるものとされている(同(1)エ,(2)ア及びエ。③そして,本件契約に基づく本件FX取引によって,原告)から見てプラスの帳尻金が生じている場合には,それは,上記の処理の結果,有効証拠金(預託金,帳尻金及び評価差損金の合計額)の一部を構成し,原告がP2に対して返還を求めることができる金員又は建玉の維持や新たな取引をするための証拠金の一部を成すものとして,本件取引口座に留保されることになる(同(1)オ,(2)ア,カ及びキ。 )以上からすると,本件契約において原告から見てプラスの売買差損益金又はスワップ金利差調整額(実現スワップ金利)が生じた場合,それらは,所得税法36条1項にいう「収入すべき金額」に当たるというべきであり収入の原因となる権利が確定した時期(収入計上時期)は,売買差損益金- 19 -については,建玉を反対売買により清算して決済したときであり,スワップ金利差調整額(実現スワップ金利)については,建玉を反対売買により清算して決済したとき又は毎月末というべきである。 ウ上記イによれば,本件契約における売買差損益金及びスワップ金利差調整額(実現スワップ金利)を収入金額とする帳尻金は,所得税法35条1項が定める雑所得に当たるということになる。そして,国税通則法15条2項1号が,源泉徴収 約における売買差損益金及びスワップ金利差調整額(実現スワップ金利)を収入金額とする帳尻金は,所得税法35条1項が定める雑所得に当たるということになる。そして,国税通則法15条2項1号が,源泉徴収によるものを除く所得税の納税義務につき暦年の終了の時に成立する旨定め,所得税法35条2項が,雑所得の金額につき,,その年中の公的年金等の収入金額から公的年金等控除額を控除した残額とその年中の雑所得(公的年金等に係るものを除く)に係る総収入金額か。 ,ら必要経費を控除した金額との合計額とする旨定めていることからすれば雑所得の計算は,それに係る収入の計上時期の属する年分ごとに暦年で行うことが予定されているということができる。そうすると,本件平成16年分取引,本件平成17年分取引及び本件平成18年分取引に係る本件帳尻金(別紙4の「本件帳尻金(③-④」欄記載の各金額)は,それぞれ,)原告の平成16年分,平成17年分及び平成18年分の所得税の課税対象となる雑所得を構成することになる。 エ原告は,本件FX取引における顧客の収益は「手じまい」をし「決済,清算」がされるまでの間は未実現・未確定であるというべきであり,本件平成16年分取引,本件平成17年分取引及び本件平成18年分取引に係る本件帳尻金は,それぞれ,原告の平成16年分,平成17年分及び平成18年分の所得税の課税対象となる所得とはいえないなどと主張する。 しかし,既に述べたとおり,①所得税法が権利確定主義を採用していると考えられること(なお,原告は,権利確定主義が現実の収入がないにもかかわらず課税をするものであるとし,不合理なものであるとも主張するが,所得税法の現に採用するところを離れた独自の立法論上の見解という- 20 -べきであって,採用し難い,②本件契約における売買差損益金及びス をするものであるとし,不合理なものであるとも主張するが,所得税法の現に採用するところを離れた独自の立法論上の見解という- 20 -べきであって,採用し難い,②本件契約における売買差損益金及びスワ。)ップ金利差調整額(実現スワップ金利)に関する定めの内容,③雑所得の計算は,その年分ごとに暦年で行うことが予定されていると考えられることに照らし,原告の上記主張は,採用することができない。 所得税法35条が憲法30条,84条の租税法律主義に違反し無効であるか否か(争点2)について(1) 原告は,所得税法35条の定める雑所得の定義は,極めてあいまいなものであり,課税要件が不明確であるから,同条は,憲法30条,84条の租税法律主義に違反する旨主張する。 (2) 所得税法は,①所得の種類として,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得及び一時所得(同法23条~34条)という9つの類型を定めることによって,反復的・継続的に生ずる経済的利得だけでなく,一時的・偶発的な経済的利得も一般的に課税の対象とした上で,②これらに該当しない所得をすべて雑所得として課税の対象としている(同法35条1項。このような同法の規定からすれば,同法)が人の担税力を増加させる経済的利得(なお,本件契約における帳尻金が原告から見てプラスである場合に,これがそのような経済的利得に該当することは明らかである)はすべて「所得」を構成するとの考え方を採っている。 ことは明らかというべきである。このようなことからすると,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得という雑所得の定義(同法35条1項)が不明確であるということはできず,雑所得の定義が不明確であること 産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得という雑所得の定義(同法35条1項)が不明確であるということはできず,雑所得の定義が不明確であることを前提に,本件帳尻金が所得に該当するとしてされた本件各処分の違法をいう原告の主張は,採用することができない。 「P3」と本件FX取引との税制上の取扱いの差異が憲法14条1項に違反するか否か(争点3)について- 21 -(1) 憲法14条1項は,国民に対して絶対的な平等を保障したものではなく,合理的理由なくして差別をすることを禁止する趣旨であって,国民各自の事実上の差異に相応して法的取扱いを区別することは,その区別が合理性を有する限り,何ら同項に違反するものではない。そして,租税は,今日では,国家の財政需要を充足するという本来の機能に加え,所得の再分配,資源の適正配分,景気の調整等の諸機能をも有しており,国民の租税負担を定めるについて,財政・経済・社会政策等の国政全般からの総合的な政策判断を必要とするばかりでなく,課税要件等を定めるについて,極めて専門技術的な判断を必要とする。したがって,租税法の定立については,国家財政,社会経済,国民所得,国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的,技術的な判断にゆだねるほかなく,裁判所は,基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ず,租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別は,その立法目的が正当なものであり,かつ,当該立法において具体的に採用された区別の態様が上記目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り,憲法14条1項の規定に違反するものということはできない(最高裁昭和55年(行ツ)第15号同60年3月27日大法廷判決・民集39巻2号247頁参照 の関連で著しく不合理であることが明らかでない限り,憲法14条1項の規定に違反するものということはできない(最高裁昭和55年(行ツ)第15号同60年3月27日大法廷判決・民集39巻2号247頁参照。 )(2) 「P3」に係る税制上の特例措置(前記第2の2(7)。租税特別措置法41条の14,41条の15参照)は,公正な外国為替証拠金取引を確保し,同取引に基づく被害の拡大防止を図るとともに,金融所得課税の一体化・簡素化に向けた取り組みを進める観点から課税方式の均衡化を図る措置として設けられたものであり(乙7,その立法目的は,正当なものであるという)ことができる。 そして,金融商品市場は,認可金融商品取引業協会を除き,内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ開設することができないものとされ(金融商品取引法80条1項,上記の免許については,厳格な審査基準が定められて)- 22 -いる(同法82条。また,金融商品取引所は,金融商品会員制法人(同法)2条15項)又は資本金の額が政令で定める金額以上の株式会社であって,取締役会,監査役会又は委員会及び会計監査人を置くもののみがなることができ(同法2条16項,83条の2,同法及び定款その他の規則に従い,)取引所金融商品市場における有価証券の売買及び市場デリバティブ取引を公正にし,並びに投資者を保護するため,自主規制業務を適切に行わなければならないものとされ(同法84条,その定款において,会員等が法令,法)令に基づいてする行政官庁の処分,当該金融商品取引所の定款,業務規程,受託契約準則その他の規則及び取引の信義則を遵守しなければならない旨並びに法令,法令に基づいてする行政官庁の処分若しくは規則に違反し,又は取引の信義則に背反する行為をした会員等に対し,過怠金を課し,その者の取引所金融商品市 び取引の信義則を遵守しなければならない旨並びに法令,法令に基づいてする行政官庁の処分若しくは規則に違反し,又は取引の信義則に背反する行為をした会員等に対し,過怠金を課し,その者の取引所金融商品市場における有価証券の売買若しくは市場デリバティブ取引若しくはその有価証券等清算取次ぎの委託の停止若しくは制限を命じ,又は除名(取引参加者にあっては,取引資格の取消し)をする旨を定めなければならないものとされている(同法87条。このような金融商品取引市場及)び金融商品取引所の位置付けを前提とすれば,法令等やP4独自の厳格な基準を満たした業者(甲2)を通じて金融商品市場において行われる「P3」のような金融商品の取引と,そのような基準を要しない業者によって店頭において行われる本件FX取引のような金融商品の取引とを区別し,前者につき前記第2の2(7)のような税制上の特例措置を定めることにより,外国為替証拠金取引が,厳格な基準を満たした業者を通じ,市場において行われるよう誘導され,その結果として,同取引に基づく被害の拡大防止や,課税方式の均衡化が図られ得ることは否定できないところである。そうすると,立法府において「P3」のような金融商品の取引につき税制上の特例措置を,定めたことが,上記のような立法目的との関連で著しく不合理であることが明らかであるとまではいえないというべきである。 - 23 -(3) 原告は,前記第2の2(7)のような「P3」に係る損益と本件FX取引に係る損益との税制上の取扱いの差異は,著しく不合理なものであることが明らかであるなどとるる主張するが,租税法の定立が立法府の広範な裁量に属するものであることに照らし,独自の見解を述べるものというほかなく,採用することができない。 本件各処分の適法性について(1) これまで述べたと 主張するが,租税法の定立が立法府の広範な裁量に属するものであることに照らし,独自の見解を述べるものというほかなく,採用することができない。 本件各処分の適法性について(1) これまで述べたところからすると,原告の平成16年分及び平成17年分の納付すべき税額は,本件各更正処分における納付すべき税額といずれも同額となり,また,平成18年分の納付すべき税額は,原告の平成18年分の所得税の確定申告における納付すべき税額と同額となる。したがって,本件各更正処分及び本件通知処分は,いずれも適法である。 (2) そして,本件全証拠によっても,本件各更正処分により新たに納付すべき税額の基礎となった事実のうちに,本件各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて国税通則法65条4項にいう正当な理由があると認められるものがあるとはいい難い。したがって,本件各更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額を基礎として,次のとおり計算して行われた本件各賦課決定処分は,いずれも適法である。 ア平成16年分5万5000円(別紙1の「更正処分等」欄中の「過少申告加算税」欄)平成16年分所得税の更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額(ただし,国税通則法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ)55万円を基礎として,これに同。 法65条1項(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同。 。 じ)の規定に基づき100分の10の割合を乗じて算出した金額であるイ平成17年分150万3500円(別紙1の「更正処分等」欄中の「過少申告加算税」欄)- 24 -平成17年分所得税の更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額1113万円を基礎として,①これに国税通則法65条1項の規定に の「更正処分等」欄中の「過少申告加算税」欄)- 24 -平成17年分所得税の更正処分により原告が新たに納付すべきこととなった税額1113万円を基礎として,①これに国税通則法65条1項の規定に基づき100分の10の割合を乗じて算出した金額111万3000円と,②同条2項の規定に基づき上記1113万円のうち期限内申告税額に相当する金額を超える部分に相当する税額(ただし,国税通則法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)781万円に100分5の割合を乗じて算出した金額39万0500円との合計額である。 結論 以上の次第であって,原告の各請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部八木一洋裁判長裁判官田中一彦裁判官高橋信慶裁判官
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