主文 1 被告らは、連帯して、原告X1に対し、2750万円、原告X2に対し、1045万円、原告X3及び原告X4に対し、それぞれ1155万円ずつ、原告X5に対し、110万円及びこれらに対する平成28年10月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、これを7分し、その1を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告らは、連帯して、原告X1に対して3120万円、原告X2、原告X3及び原告X4に対して各1250万円、原告X5、原告X6及び原告X7に対して各110万円並びにこれに対する平成28年10月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、統合失調症を発症していた被告Y1が深夜に近隣住民宅に侵入して就寝中の一家4名を短刀で切りつけるなどして亡Aを殺害し、原告X2、原告X3、原告X4を負傷させた殺人及び殺人未遂事件に関し、被害者及びその親族である原告らが、被告Y1には、責任能力があり、被告Y1の母である被告 Y2には、被告Y1の他害行為を防止すべき注意義務に違反した過失があるから、原告ら及び亡Aに対する共同不法行為責任を負う旨主張して、①原告らの被告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求に加え、②亡Aを相続した妻の原告X1及びその子らの原告X2、原告X3及び原告X4については、亡Aの被告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求として、被告らに対し、連帯し て、原告X1につき3120万 亡Aを相続した妻の原告X1及びその子らの原告X2、原告X3及び原告X4については、亡Aの被告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求として、被告らに対し、連帯し て、原告X1につき3120万円、原告X2、原告X3、原告X4につき各1 250万円、原告X5、原告X6、原告X7につき各110万円及びこれらに対する不法行為日である平成28年10月19日からから支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金をそれぞれ請求する事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容 易に認められる事実) 当事者等ア原告X1(昭和48年●月●日生)は、亡A(昭和48年●月●日生)の妻であり、原告X2(平成9年●月●日生)、原告X3(平成10年●月●日生)及び原告X4(平成13年●月●日生)は、それぞれ亡Aと原 告X1との間の長女、二女及び長男であり、原告X5、原告X6及び原告X7は、それぞれ亡Aの母、兄及び姉である。 亡Aは、平成27年4月頃、原告X1、原告X2、原告X3及び原告X4の自宅として、原告X1の肩書住所地にある一戸建て(以下「原告自宅」という。)を新築した。(甲1の1、甲87、弁論の全趣旨) イ被告Y2(昭和44年●月●日生)は、平成4年6月6日、当時の交際相手であったBとの間に被告Y1を儲け、平成7年7月にCと婚姻して、同人との間の長男であるD(平成10年●月●日生)を儲けて4人で生活するようになったが、平成14年頃に夫婦関係が悪化して、Cが単身で別居し、平成20年2月26日に離婚した。被告Y2は、Cとの上記別居後、 被告Y1及びDを単独で監護するようになり、平成21年7月、原告自 なったが、平成14年頃に夫婦関係が悪化して、Cが単身で別居し、平成20年2月26日に離婚した。被告Y2は、Cとの上記別居後、 被告Y1及びDを単独で監護するようになり、平成21年7月、原告自宅から直線距離で約660メートル離れた一戸建て(以下「被告自宅」という。)に居住するようになった。亡A及び原告らと被告Y1及び被告Y2は、何の面識もない。(甲B71、82、90、92、94、108の2、弁論の全趣旨) ウ Cは、被告Y2と婚姻した際、被告Y1と養子縁組をしていたが、平成 30年10月24日、被告Y1と離縁した。(甲5) 被告Y1の通院歴等ア被告Y1は、平成25年6月頃から、アルバイトの帰宅時に多くの人が自分と同じ方向に歩き出すことや道に何台もの自動車が駐車していることに違和感を持つようになり、平成26年夏頃には、警察に付け狙われてい るなどの被害妄想がみられるようになった。(甲B71、94、108の2、弁論の全趣旨)イ被告Y1は、平成26年10月4日、精神科のEクリニックを受診し、妄想状態と診断され、投薬と経過観察を提案されたが、その後の継続的な受診はされなかった。しかし、被告Y1は、その後も近所の女子高生や営 業中のサラリーマンを追いかけるなどの奇行が続いたことから、同年12月27日、被告Y2に連れられて、精神科であるF病院を受診した。F病院の医師は、同日、被告Y1を統合失調症と診断し、薬物療法の必要性を被告Y1に説明したが、被告Y1が服薬を拒否するなどしたため、同日、医療保護入院となった。(甲B71、94、108の2、弁論の全趣旨) ウ被告Y1は、平成27年3月25日、F病院を退院した。 被告Y1は、同退院後、服薬と通院を続け、しばらく症状は安定してい 療保護入院となった。(甲B71、94、108の2、弁論の全趣旨) ウ被告Y1は、平成27年3月25日、F病院を退院した。 被告Y1は、同退院後、服薬と通院を続け、しばらく症状は安定していたものの、平成27年10月頃から怠薬の傾向が顕著になり、同年11月頃からは恥ずかしいという理由で受診時の被告Y2の同伴を拒むなど治療に対し消極的な姿勢が強くなり、平成28年3月28日を最後に、F病院 への通院をしなくなった。(甲B71、94、108の2、弁論の全趣旨)エ被告Y1は、平成28年4月から、自らの意思で、定時制高校に通学するようになり、同年6月からはアルバイトを始めるなどの行動をみせたが、アルバイトは数日でやめ、定時制高校も同年7月14日を最後に通学しなくなった。 被告Y1は、同年8月頃から、自室で怒鳴り声を上げる、被告自宅の洗 面所を水浸しにするなどの統合失調症の症状の悪化を示す兆候が現れ、次第に怒鳴り声や器物損壊等の奇行の頻度が増加していた。(甲B71、94、108の2、弁論の全趣旨) 被告Y1の刃物等の所持の状況ア被告Y1は、平成26年12月27日のF病院への入院時、見えない加 害者から身を守るためとの理由でナイフを所持していた。(甲C1、弁論の全趣旨)イ被告Y2とDは、平成27年3月頃、被告Y1がF病院から退院するに当たり、被告Y1の部屋に置いてある危険な持ち物がないか探索したところ、エアガン数丁のほか、木刀や包丁が発見された。被告Y2とDは、こ のうち、エアガンと包丁を隠匿ないし処分した。(甲B88、弁論の全趣旨)ウ被告Y1は、平成28年3月18日、被告自宅の近くにあるホームセンターで、鉈、のこぎり、ナイフ、手斧を購入した。このうち、鉈につ ンと包丁を隠匿ないし処分した。(甲B88、弁論の全趣旨)ウ被告Y1は、平成28年3月18日、被告自宅の近くにあるホームセンターで、鉈、のこぎり、ナイフ、手斧を購入した。このうち、鉈については、同月27日にDが発見し、被告Y2が被告Y1に対し、鉈を所持して いる理由を問いただすなどしたものの、それ以上の追及はしなかった。(甲B59、弁論の全趣旨)エ被告Y1は、平成28年7月18日、上記ホームセンターでチェーンソーと混合ガソリンを購入した。(甲B59、甲C7、弁論の全趣旨)オ被告Y1は、平成28年8月5日、骨董美術刀剣の専門店で、刃渡り約 30.6センチメートル、全長約46センチメートルの日本刀の短刀を購入した。(甲B10、22、23、弁論の全趣旨)カ被告Y1は、平成28年8月9日頃、上記ホームセンターでガスバーナーを購入した。(甲C2、6、弁論の全趣旨)被告Y1による殺人、殺人未遂事件の発生 原告自宅には、平成28年10月19日当時、亡A、原告X2、原告X3、 原告X4と原告X2の子であるG(平成27年●月●日生)が2階で就寝していたところ、被告Y1は、同日午前3時30分頃から同日午前4時10分頃までの間に、原告自宅1階の腰高窓の施錠を外すなどして内部に侵入し、2階東側の洋室で就寝していた亡Aに対し、胸部や背部を約30回にわたって突き刺すなどして殺害した。そして、被告Y1は、いずれも殺意をもって、 異変に気付いて2階の別の部屋から2階廊下に出てきた原告X2に対し、その顔面に向けて短刀を振り下ろしたが、原告X2が両腕を顔面の前に上げて防御して抵抗するなどしたため、その左前腕部を切りつけて負傷させるにとどまり、さらに、同じく異変に気付いて2階廊下に出てきた原告X3に対 に向けて短刀を振り下ろしたが、原告X2が両腕を顔面の前に上げて防御して抵抗するなどしたため、その左前腕部を切りつけて負傷させるにとどまり、さらに、同じく異変に気付いて2階廊下に出てきた原告X3に対し、頭部や後頚部等を十数回にわたって突き刺すなどしたが、原告X3が被告Y 1を足で蹴るなどして抵抗し、隙をついて逃げ出したため、後頭部等を負傷させるにとどまり、さらに、亡Aの隣で就寝していたが、騒ぎに気付いて起き上がろうとした原告X4に対し、胸部に短刀を突き刺そうとしたが、原告X4が体をひねって防御し、短刀を掴んで抵抗するなどしたため、原告X4の左上腕部を短刀で突き刺し貫通させて負傷させるにとどまった(以下「本 件犯行」という。)。被告Y1は、その後、抵抗した原告X4に取り押さえられ、原告X2の通報を受けて駆け付けた警察官に殺人未遂で現行犯逮捕された。(甲B4、24、25、28、103ないし105、弁論の全趣旨)本件犯行に係る刑事事件の結果大阪地方裁判所は、平成30年4月13日、被告Y1に対し、住居侵入、 殺人、殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反の罪で、懲役30年の刑に処する旨の判決を宣告し、同判決は、後に確定した。(甲A2、3、弁論の全趣旨) 2 争点及びこれに対する当事者の主張 被告Y1について、原告ら及び亡Aに対する不法行為に基づく責任がある か。 【原告らの主張】ア被告Y1による本件犯行は、本来的な人格に基づく殺人願望が基本にあり、統合失調症による妄想及び制御能力の低下が影響して、これらの要因が相まって実行されたものである。被告Y1の本来的な人格に殺人願望があったことは、被告Y1のスマートフォンから、殺人事件や殺害方法、残 虐な死体の映像等を取り扱ったインターネ して、これらの要因が相まって実行されたものである。被告Y1の本来的な人格に殺人願望があったことは、被告Y1のスマートフォンから、殺人事件や殺害方法、残 虐な死体の映像等を取り扱ったインターネットサイトへの過去のアクセス履歴から自明である。 イそして、このことに、本件犯行の準備状況、計画性の高さ、知的能力の高さ、犯行時の機敏な行動、犯行時の状況の記憶も鮮明であることなどの諸事情を併せ考慮すれば、本件犯行当時、被告Y1が責任無能力であった とは到底考えられないが、統合失調症による影響も無視しえないことからすると、被告Y1には、本件犯行当時、限定責任能力があったものとみるべきである。 ウしたがって、被告Y1は、本件犯行について、原告ら及び亡Aに対する不法行為に基づく損害賠償責任を負うというべきである。 【被告Y1の主張】原告らの主張を争う。 被告Y2について、原告ら及び亡Aに対する不法行為に基づく責任があるか。 【原告の主張】 ア注意義務違反の有無について被告Y2と被告Y1の関係性について被告Y2と被告Y1との関係性に関する以下の諸事情を考慮すれば、被告Y2には、被告Y1が服薬及び通院を続けるよう監督・支援し、日々の被告Y1の病状把握、通院の付添いによる医療機関への報告と医療機 関からの指導の反映、被告Y1の病状悪化や他害行為の危険を示す兆候 を認めた場合における医療機関、保健所又は警察等への相談を通じて、適切な治療を受けさせて、被告Y1の他害行為を防止すべき注意義務を負う立場にあったというべきである。 a 被告Y2は、実母として被告Y1の法令上の義務である扶養義務を有するのみならず、現に、被告Y1が高校生のときに被告Y2の交際 相手から受けた家庭内 務を負う立場にあったというべきである。 a 被告Y2は、実母として被告Y1の法令上の義務である扶養義務を有するのみならず、現に、被告Y1が高校生のときに被告Y2の交際 相手から受けた家庭内暴力を契機として引きこもりになって以降、成人前後を通じて生活能力のない被告Y1を監護養育してきた実態があった。 b そして、それゆえに、被告Y2は、被告Y1の統合失調症の発症以降の症状や生活実態を最もよく知る立場にあった。 c 加えて、被告Y1が平成27年3月にF病院から退院して通院治療に切り替わったのは、同年2月に医療保護入院から任意入院に切り替わった後、F病院から高額療養費等の公的助成制度の説明を受けるなどしながら、入院費の滞納を続けた被告Y2が招いたものである。加えて、被告Y2は、通院治療に切り替えるに当たっては、F病院から 精神保健福祉士による退院前の家庭訪問や、退院後の訪問看護の提案を受けたにもかかわらず、自らが経営する店舗への影響やプライバシーへの干渉等を理由にこれらの外部からの干渉を拒絶して、自ら、被告Y1の通院や投薬の管理を引き受けた。 d さらに、医療保護入院等の精神保健福祉法上の手続に同意する権限 を有する家族は、被告Y2のほかにいなかった。 e また、統合失調症は、一般にその発症や悪化があっても、必ずしも犯罪が引き起こされるものではなく、統合失調症の患者が犯行を起こす要因は、本来の人格による部分が大きいところ、被告Y1は、幼少時からの両親の愛情不足や実母が子よりも男性を優先することを繰り 返したことなどの被告Y2の養育態度による心の痛手等が他者への攻 撃性に転じ、このような攻撃性は、従前から猫への残虐行為や弟への暴力として発露されており、その攻撃性は、被告Y2も認識していた。 ことなどの被告Y2の養育態度による心の痛手等が他者への攻 撃性に転じ、このような攻撃性は、従前から猫への残虐行為や弟への暴力として発露されており、その攻撃性は、被告Y2も認識していた。 予見可能性及び予見義務について本件犯行に至るまでの被告Y1の以下の病状や言動等に照らせば、被告Y2は、被告Y1がF病院への通院をやめ、鉈を所持していることが 明らかになった平成28年3月か、遅くとも、被告Y1が自室で怒鳴るなどの奇行が顕著になった同年8月の時点において、被告Y1の統合失調症の症状の悪化と他者への危険性を予見することができたし、これを予見すべきであった。 a 被告Y1は、平成26年頃から、統合失調症を発症して、警察に付 け狙われている等の被害妄想を有し、その被害妄想に基づき、面識のない他人の後をつけるなどの他害行為又は他害に発展する危険のある行為に出ていた。 b 被告Y1は、医療保護入院の直前の時期には、被告自宅内で大声を出し、被告自宅の物を壊したり、洗面所を水浸しにしたりするなどの 異常な行動が顕著になっていた。 c 被告Y1は、同年12月の医療保護入院時には、病院内で抵抗して暴れ、その際に、被告Y1のポケットからナイフが落ちたことなどを被告Y2は現に認識していた。 d 被告Y1は、F病院における薬物治療等により、妄想等の症状は沈 静化していたものの、退院の経緯は被告Y2が入院費の支払を滞らせたことなどが相まったものであって、通院治療に切り替えるに当たり、F病院の医師は、被告Y1の症状について、他害行為の危険があることを前提に治療方針を立てており、当然、被告Y2にもこのことは説明されていたはずである。 e 被告Y1は、平成27年4月以降、通院治療を開始し、しばらくは 他害行為の危険があることを前提に治療方針を立てており、当然、被告Y2にもこのことは説明されていたはずである。 e 被告Y1は、平成27年4月以降、通院治療を開始し、しばらくは 服薬と通院を続けていたが、同年8月以降、怠薬の傾向がみられ、平成28年3月には通院を拒否するようになって、以後、無治療の状態が続いた。 f 被告Y1は、平成28年3月18日、ホームセンターで鉈、鋸、手斧、ナイフを購入しており、被告Y2は、同月27日に、Dからの報 告を受けて、このうち鉈について、被告Y1が所持していることを認識した。 g 被告Y1は、平成28年8月頃からは、自室で「こら、おい、お前なんやねん」と怒鳴る、自宅内を傷つける、洗面所を水浸しにする、などの医療保護入院前と同様の症状の悪化の兆候が見られた。 結果回避可能性及び結果回避義務について一般に、統合失調症は、適切な治療によって改善が可能であり、被告Y1についても投薬治療が効果的であったのであり、被告Y2が、平成28年3月の病状の悪化の兆候がみられた時点で、医療機関や保健所等に相談するなどして、訪問看護の導入や再度の医療保護入院などの適切 な措置が講じられていれば、病状改善及び悪化の防止の実現は可能であった。 少なくとも、被告Y2が、同年8月の時点で、医療機関に相談していれば、被告Y1の生活状況の確認のため、精神保健福祉士が自宅を訪問するなどして、鉈のほか、鋸、手斧、ナイフ、日本刀、チェーンソー、 ガスバーナー等の所持が明らかになっており、本件犯行は防止できた蓋然性は極めて高い。 したがって、被告Y2には、被告Y1による本件犯行の結果回避可能性は十分にあったのであり、これを回避する義務があったというべきである。 イ相当因果 止できた蓋然性は極めて高い。 したがって、被告Y2には、被告Y1による本件犯行の結果回避可能性は十分にあったのであり、これを回避する義務があったというべきである。 イ相当因果関係の有無(結果回避可能性の有無)について 上記アのとおり、被告Y2が医療機関に相談するなどしていれば、本件犯行が防止できた蓋然性は極めて高いのであって、被告Y2がこれらの措置を講じることを怠ったことと被告Y1による本件犯行によって生じた被害結果の間には、相当因果関係があるというべきである。 ウ被告Y2の責任原因について そうすると、被告Y2は、平成28年3月の鉈の発見、同月以降のF病院への通院治療の中断のあった時点で、医療機関、保健所等への相談をするなどし、適切な治療を受けさせ、他害行為を防止すべき注意義務があったというべきであるし、そうでないとしても、遅くとも平成28年8月頃に被告Y1が被告自宅の自室で奇声を上げたりするようになった時点で、 上記注意義務があったのにこれを怠っており、被告Y2には、被告Y1の他害行為を防止するにつき注意義務違反が認められ、かつ、被告Y1の本件犯行についての被害結果との相当因果関係も認められるから、被告Y2は、原告及び亡Aに対する損害賠償責任がある。 【被告Y2の主張】 ア注意義務違反の有無について被告Y2と被告Y1の関係性についてa 被告Y1は、本件犯行当時、24歳の成年男性であるから、被告Y2が被告Y1の母として扶養義務を負っており、かつ、被告Y1と同居して事実上監護養育していたとしても、そのことから直ちに第三者 に対して被告Y1の他害行為を防止する注意義務が生じるものではない。 b 被告Y2は、被告Y1の入院か 被告Y1と同居して事実上監護養育していたとしても、そのことから直ちに第三者 に対して被告Y1の他害行為を防止する注意義務が生じるものではない。 b 被告Y2は、被告Y1の入院から在宅治療への切り替えに当たって、他害の危険があることを知りつつ、経済的な都合を優先して危険を引き受けたりした訳ではない。被告Y1の在宅治療への切り替えは、あ くまで医療機関において、症状の改善が認められることを前提に判断 されたものであり、在宅治療に切り替わったことで、受け入れた被告Y2において、先行行為による危険源の支配があったと評価することは無理がある。また、被告Y2が訪問看護等を断ったのは、訪問看護についての費用負担の過重に加えて、何よりも自宅を訪問されることによって被告Y1の精神的安定が阻害されることを恐れての判断であ って、自らの店舗の経営等の都合を優先したという事実はない。 c 被告Y2の母親としての養育態度が被告Y1の攻撃性の原因であるという原告の主張は、憶測にすぎず、被告Y1は、幼少期から弟と殆ど喧嘩もしたことのない大人しい性格であったのであって、前提が誤っている。 予見可能性及び予見義務についてa 医療保護入院は、他害性を要件としないものであり、被告Y1の医療保護入院前の症状も他害性の危険を惹起させるほどのものと評価することはできない。ナイフの所持は他害のためでなく防衛のためのものにすぎないし、人の後をつけたりしただけで暴力行為には一切至っ ていない。奇声や器物損壊から他害のおそれがあるとするのは論理の飛躍である。 b 被告Y1は、F病院からの退院当時、その症状は顕著に改善されていた。だからこそ在宅看護に切り替わったものである。F病院への入院医療 ら他害のおそれがあるとするのは論理の飛躍である。 b 被告Y1は、F病院からの退院当時、その症状は顕著に改善されていた。だからこそ在宅看護に切り替わったものである。F病院への入院医療費の支払が遅れていたことが原因かは不明であるが、被告Y1 の退院を決めたのはF病院であり、被告Y2があえて在宅看護を選択したわけではない。また、被告Y2は、公的助成制度の説明も受けていない。F病院のカルテには、入院医療費の支払を巡る対立があった被告Y2に対する悪意や思い込みに基づき、内容が歪められている可能性がある。 c 被告Y1についてのF病院の診療記録によれば、平成28年3月に は、「経過観察」、「処方はそのまま」等の記載もあって、被告Y1の症状は必ずしも悪化していた訳ではないし、同年4月4日のデイケアには被告Y1が参加しており、経過良好とされている。 そして、被告Y1は、同年4月から、自らの意思で定時制高校に通学し、アルバイトを開始するなど、症状は改善され安定していた。 また、同年3月の被告Y1の鉈の所持についても、被告Y2は、被告Y1からサバイバルゲームに必要なものと説明され、社会とのつながりのある趣味に関するものであることから、これを許容したにすぎず、他害性の危険を想起させるものではなかった。 したがって、少なくとも被告Y2が、平成28年4月の時点で被告 Y1の症状の悪化を認識することは不可能であった。 d 被告Y1が平成28年8月以降、自室で怒声を上げる等していたことについても、そもそも被告Y1は本件犯行以前に第三者に対して危害を加えたことがなかったのであり、被告Y1の奇行は、家庭内での怒声や器物損壊等にとどまっており、そのことから直ちに第三者への 危害の危険が高まっている 告Y1は本件犯行以前に第三者に対して危害を加えたことがなかったのであり、被告Y1の奇行は、家庭内での怒声や器物損壊等にとどまっており、そのことから直ちに第三者への 危害の危険が高まっていることを示すものということはできない。被告Y2は、被告Y1の様子から、少なくともアルバイトは継続しているものと認識し、その他の凶器の購入については認識していなかったし、認識する機会もなかったのであるから、他害の危険性を予見することは不可能であった。 イ相当因果関係の有無(結果回避可能性の有無)について仮に、原告が主張するような被告Y1の鉈の所持や怒声等の奇行を理由として被告Y2が医療機関に相談したとしても、被告Y1について直ちに入院等に至ったかどうかは不明であり、本件犯行という結果が回避された可能性があったということはできない。したがって、少なくとも被告Y2 の不作為と被告Y1による本件犯行の被害結果との間には、相当因果関係 がない。 ウ被告Y2の責任原因について以上のとおり、被告Y2には、被告Y1の他害行為の防止について注意義務違反とまで評価されるべき事情はなく、相当因果関係もないから、原告らに対する法的責任は負わない。 原告らについての損害の発生の有無及びその額【原告らの主張】ア亡Aの損害について 死亡慰謝料 2800万円亡Aは、一家の支柱であって、その死亡慰謝料は、2800万円を下 らない。 逸失利益 2300万円亡Aの死亡前10か月の平均月額給与額は、61万4050円であり、年額は、736万8600円となるが、原告らは、基礎収入について、控えめに614万円とした上で、生活 利益 2300万円亡Aの死亡前10か月の平均月額給与額は、61万4050円であり、年額は、736万8600円となるが、原告らは、基礎収入について、控えめに614万円とした上で、生活費控除率も50%として、就労可 能年数24年のライプニッツ係数13.799をかけると、合計4236万2930円となるが、原告らは、このうち2300万円を一部請求する。 合計 5100万円したがって、相続される亡Aの損害額の合計は、5100万円となり、 原告X1が2分の1に当たる2550万円、原告X2、原告X3及び原告X4がそれぞれ6分の1に当たる850万円ずつ相続した。 イ原告ら固有の損害について 原告X1の慰謝料 300万円原告X1は、最愛の夫を理不尽に奪われたのであり、その近親者固有 の慰謝料は、300万円を下らない。 原告X2・原告X3・原告X4 各300万円原告X2、原告X3及び原告X4は、自らも本件犯行により傷害を負った被害者であり、現在もなお傷跡が残り、恐怖の経験に苛まれるなどしており、慰謝料は各500万円を下ることはないところ、その内金各200万円を請求する。また、同原告らは、大切な父を理不尽に奪われ たのであり、その近親者固有の慰謝料は、1人当たり各100万円を下らない。 原告X5・原告X6・原告X7 各100万円その余の原告らについても、良好な関係を継続していた親族の生命を奪われたのであり、その近親者固有の慰謝料は、1人当たり100万円 を下らない。 合計 1500万円したがって、原告ら固有の慰謝料の合計額は、1500万円となる。 ウ弁護士費用について上記ア及びイの請求 り100万円 を下らない。 合計 1500万円したがって、原告ら固有の慰謝料の合計額は、1500万円となる。 ウ弁護士費用について上記ア及びイの請求額の合計は6600万円であり、これと相当因果関 係のある弁護士費用として、合計600万円を、原告X1について270万円、原告X2、原告X3及び原告X4について各100万円ずつ、原告X5、原告X6及び原告X7について各10万円ずつとして請求する。 エ各原告の請求額の合計についてしたがって、上記アないしウの各原告の請求の合計額は、原告X1につ いて3120万円、原告X2、原告X3及び原告X4について各1250万円ずつ、原告X5、原告X6及び原告X7について各110万円ずつとなる。 オ犯罪被害者等給付金についてなお、原告らには、他にも原告X2、原告X3及び原告X4の治療費と して合計26万4710円、通院交通費として合計4万5900円、原告 自宅の清掃費及びクロス張替等の工事費用として50万円、葬儀費用285万0952円、精神科専門委への相談費用2万円を要している。他方で、原告らは、犯罪被害者等給付金として合計1914万5400円を受領しているが、これらは、犯罪被害者の損害のうち、死亡逸失利益、治療費等の負担額、治療による休業損害を補填する性質のものであるから、亡Aの 死亡逸失利益4236万2930円、原告X2、原告X3及び原告X4の治療費26万4710円及び通院交通費4万5900円と損益相殺したとしても、上記請求額である亡Aの死亡逸失利益のうちの2300万円並びに亡A及び原告らの慰謝料の請求額を何ら減額させるものではない。 【被告らの主張】 原告らの主張を争う。 としても、上記請求額である亡Aの死亡逸失利益のうちの2300万円並びに亡A及び原告らの慰謝料の請求額を何ら減額させるものではない。 【被告らの主張】 原告らの主張を争う。 原告らに固有の慰謝料が発生しているとしても、亡Aから相続した慰謝料2800万円に包含されているというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 前記前提事実に後掲各証拠及び弁論の全趣旨を併せ考慮すれば、以下の事実 が認められる。 被告Y1の統合失調症の発症までの経緯等(甲B71、90、92、94、108の2、弁論の全趣旨)ア被告Y2は、平成3年当時、出入りしていたスナックで知り合ったBと交際し、同人との間の子である被告Y1を懐妊したが、同人とは妊娠5か 月の頃までに不仲になり、平成4年6月6日、非嫡出子として被告Y1を儲けた。被告Y2は、平成7年7月にCと婚姻して、Cは被告Y1と養子縁組し、平成10年には同人との間の長男であるDを儲けたが、平成14年頃に夫婦関係が悪化して、Cが単身で別居し、以後、被告Y2が被告Y1及びDを単独で監護して、Cとは没交渉になった。 イ被告Y2は、被告Y1が中学校3年生であった平成19年頃から、居酒 屋で知り合い、交際していたHと同居し、被告Y1及びDと4人で生活するようになり、平成20年2月26日に被告Y1とDの親権者をいずれも被告Y2と定めてCと離婚した。 被告Y1は、平成20年4月、高校に進学したが、怠学傾向があったところ、Hは、平成20年6月24日、被告Y1の怠学を注意したことに対 する反抗的な態度に激高して、被告Y1に殴る蹴るなどの暴行を加え、被告Y1は顔面を負傷するなどした。 被告Y2は、同日のうちに、被告Y1及びD 24日、被告Y1の怠学を注意したことに対 する反抗的な態度に激高して、被告Y1に殴る蹴るなどの暴行を加え、被告Y1は顔面を負傷するなどした。 被告Y2は、同日のうちに、被告Y1及びDを連れてHと別居し、Hと生活する前の住所で生活するようになった。 被告Y1は、この頃から完全に不登校になり、自宅の自室内に引きこも るようになった。 ウ被告Y2は、平成20年9月及び平成21年6月、知人の紹介で、子ども家庭センターに被告Y1の引きこもりについて相談し、同センターの職員が家庭訪問をするなどしたが、被告Y1の引きこもりは、改善しなかった。 被告Y2は、同年7月、被告自宅を購入して、被告Y1及びDとともに転居し、平成22年2月には1階で居酒屋を開店し、以後、居酒屋を経営しながら被告Y1及びDを監護養育するようになった。被告Y1の引きこもりは、その後も続き、被告Y1は、自室前での被告Y2との食事の受渡しでも顔を合わせることのない状態が続いた。 被告Y2の知人であったIは、平成22年頃、被告Y2から被告Y1の引きこもりについて相談を受け、被告Y1を、Iの当時の趣味であったサバイバルゲームに誘って、エアガンその他の装備を被告Y1に贈与した。 被告Y1は、一度だけ、Iの誘いに応じて、サバイバルゲームに参加したが、その後は、自宅の自室で引きこもる生活を続けた。 エ被告Y2は、平成24年10月頃、当時の交際相手であったJから、被 告Y1に就業先を紹介することを提案されて、その旨を被告Y1に伝え、被告Y1は、このことが契機となって引きこもりの状態を解消し、平成25年4月からJが紹介した物流関係の会社でアルバイトを始めた。 被告Y1の統合失調症の発症と医療保護入院ま の旨を被告Y1に伝え、被告Y1は、このことが契機となって引きこもりの状態を解消し、平成25年4月からJが紹介した物流関係の会社でアルバイトを始めた。 被告Y1の統合失調症の発症と医療保護入院までの経緯(甲B71、94、108の2、甲C1、弁論の全趣旨) ア被告Y1は、平成25年の夏頃から、上記アルバイトからの帰宅時に同じ方向に人が歩き出すことや、道に何台も自動車が駐車していることに違和感を覚えるようになり、平成26年4月頃から、周囲に対し、ストーカーや付きまとい、誰かに見られている感じがする旨を訴えるようになり、同年5月頃から、警察や地域のパトロールから確実に付けられているとの、 同年6月頃から、インターネット上に被告Y1の情報を流されているとの、同年7月頃から、道行く人々から悪口を言われるようになり、これらの一連の出来事の背後に警察組織がいるといった被害妄想を持つようになった。 被告Y1は、同年8月頃には、「ネットワーク上の誹謗中傷は日常茶飯事で、外に出ると車で執拗に歩道まで乗り上げてきて被告Y1に接触してき たり、見知らぬ男性に『仲良しシール』いらないかなどと声を掛けられたりする」旨の異常な発言をするなどし、被告Y2とJは、同年9月18日、被告Y1を大阪府警察本部に連れて行き、警察官から被告Y1に対し、警察が被告Y1を尾行したりしていない旨の説明をしてもらったが、被告Y1は、その帰り道に、被告Y2に対し、先ほどの警察官は嘘を付いている 旨を訴えるなど、その後も誰かに尾行されたり、見張られたりしている旨の被害妄想が続いた。 イ被告Y2は、被告Y1の奇行が続くことについて、うつ状態になり、被告Y2とJは、平成26年10月4日、被告Y1をEクリニックに受診させた。 Eクリニックの医師 被害妄想が続いた。 イ被告Y2は、被告Y1の奇行が続くことについて、うつ状態になり、被告Y2とJは、平成26年10月4日、被告Y1をEクリニックに受診させた。 Eクリニックの医師は、被告Y1について妄想状態と診断し、投薬治療 を開始して経過観察する方針を提案したが、被告Y2及びJには被告Y1が病気ではないものと伝わったため、その後、Eクリニックへの通院は継続されなかった。 ウしかし、被告Y1は、その後も、被告自宅内で洗面所を水浸しにしたり、独り言をずっと述べていたり、外出先で、自分を付け狙っている組織の人 間であるとして傘をもって通行人を追いかけるようになり、営業中のサラリーマンを「とうとう追い詰めたぞ」と言って追いかけたり、近所の女子高生を追いかけてゆき警察に補導されたりするなどの奇行が続いたことから、平成26年12月27日、F病院を受診した。 F病院における被告Y1の主治医であったK医師は、同日、被告Y1を 統合失調症と診断し、強固な被害妄想・幻想に影響されて自宅内での家財道具や近隣住民を対象とした粗暴行為に発展していることなどから薬物療法の必要性を被告Y1に説明したが、被告Y1が服薬を頑なに拒否するなどため、同日、被告Y2の同意を得た上で、医療保護入院の措置をとることとした。被告Y1は、その際、激しく興奮して職員に対して抵抗し、ポ ケットから、その日護身用に携行していたナイフが発見されるなどし、被告Y2にもその旨は報告された。 その後のF病院での治療の経緯等(甲B71、88、94、108の2、甲C1、10、弁論の全趣旨)ア被告Y1は、上記医療保護入院に係る入院時には、興奮して安静を保て ず、数人がかりで取り押さえる必要がある状態であったため、隔離及び拘束 、108の2、甲C1、10、弁論の全趣旨)ア被告Y1は、上記医療保護入院に係る入院時には、興奮して安静を保て ず、数人がかりで取り押さえる必要がある状態であったため、隔離及び拘束をされ、平成26年12月30日、症状の改善がみられたため、拘束を終了された。 イ被告Y1は、投薬治療や作業療法等により、平成27年1月に入ってから、次第に症状は改善し、医師に対し、外出を希望するようになった。K 医師は、被告Y1及び被告Y2に対し、外出を許可するためには、任意入 院に切り替える必要がある旨を説明した。被告Y2は、当初、被告Y1が外出することへの不安を訴え、K医師は、被告Y2に対し、被告Y1と短時間の外出をしてみて様子を見てみることを提案した。被告Y1は、同年2月5日、被告Y2と短時間の外出を行い、K医師は、被告Y1について、症状は改善しているが依然として被害妄想が残存しているとしつつも、入 院加療の継続の必要性について同意が得られたことなどから、被告Y1について任意入院に切り替えた。 ウ被告Y2は、上記任意入院に切り替わった後、F病院の医療福祉相談室の職員から退院後に利用できる社会資源等について説明を受け、K医師らと退院に向けての協議をするようになり、平成27年3月までに入 院費を長期間滞納したこともあって、同月には退院して通院による治療に切り替えることになった。なお、被告Y2は、F病院から社会福祉協議会の貸付金の案内を受けて申し込み、同月中には貸付けが決定した。 被告Y2は、被告Y1が退院して被告自宅での生活を再開するに当たり、Dとともに被告Y1の部屋に置いてある危険な持ち物がないか探索 したところ、エアガン数丁のほか、木刀や包丁が発見された。被告Y2は、F病院で Y1が退院して被告自宅での生活を再開するに当たり、Dとともに被告Y1の部屋に置いてある危険な持ち物がないか探索 したところ、エアガン数丁のほか、木刀や包丁が発見された。被告Y2は、F病院で被告Y1に面会した際、エアガンの処分を提案したところ、被告Y1が無断で自室に入ったことに激高するなどしたが、最終的には、被告Y1にエアガンを贈与したIに預けることになった。なお、エアガンと同時に発見された上記包丁も別途処分された。 F病院は、被告Y2に対し、通院治療への切り替えに当たり、訪問看護や退院時の精神保健福祉士による家庭訪問等の利用を繰り返し提案したが、被告Y2は、被告自宅に職員が来るのが嫌である、商売をしているのであまり知られたくない部分もあるなどとして、被告自宅への訪問看護等を固辞した。 被告Y1は、同月27日にF病院を退院した。F病院の同日の診療録 には、「退院後、怠薬、暴力の可能性があるが、外来で当院通院希望あり自立支援申請するのであれば当院外来はOK」との記載がある。 エ被告Y1は、平成27年4月以降、被告Y2とともに、2週間に1回の頻度でF病院に通院して投薬治療を続け、同年8月からは、デイケアも利用するようになった。 被告Y1の症状は、同年8月までは、診察時に、いら立ちが強く自閉的で思考障害が強い状態や一見穏やかだが無表情で思考にまとまりがない状態であることが多かったものの、K医師の勧めに応じて同月から上記デイケアへの参加に応じるなどしたが、他方で、被告自宅の自室で叫ぶことが時折あったほか、同年9月には、昼間に玄関で立ち尽くしてい たことがあったりするなど、妄想の症状の悪化の兆候もみられ、一進一退の状態であった。 被告Y1の服薬については、当初から倦 折あったほか、同年9月には、昼間に玄関で立ち尽くしてい たことがあったりするなど、妄想の症状の悪化の兆候もみられ、一進一退の状態であった。 被告Y1の服薬については、当初から倦怠感等の副作用を理由に消極的な態度であり、時折、怠薬もみられたものの、被告Y2の働きかけもあって、少なくとも同年8月頃までは服薬が続けられていたが、F病院 の同年9月7日の診療録には「内服できていない、病状悪化している様子、母が自宅への介入を拒むため家人で内服管理してもらうしかない」との記載があり、同年10月には、実施した血液検査での投与薬剤の血中濃度からみて、怠薬の傾向が顕著になっていった。 被告Y2は、同年11月頃、被告Y1から診察への同席を拒絶された のを契機として、F病院まで被告Y1を送迎するものの、診察への同席その他、被告Y1の病状等についてK医師との意見交換を行わなくなった。 被告Y1は、その後もしばらくF病院への通院を続けたものの、平成28年2月29日以降の診察では、警戒心や猜疑心が強く、意思疎通も 不良な状態になっていた。 被告Y1は、同年3月14日、被告自宅の近くにあるホームセンターで、鉈、のこぎり、ナイフ、手斧を購入した。このうち、鉈については、同月27日にDが発見し、被告Y2が被告Y1に対し、鉈を所持している理由を問いただすなどしたものの、被告Y1は、「必要だから」、「でも、何に必要なのかは絶対に言えない」と答え、被告Y2も、それ以上 の追及はしなかった。 被告Y1は、同年3月28日の診察では、同年4月から高校に進学するのでデイケアについて終了したい意向などを述べて、同月4日のデイケアへの参加を最後に、F病院への通院や通所を全て中断した。被告Y2は、その次の通院 年3月28日の診察では、同年4月から高校に進学するのでデイケアについて終了したい意向などを述べて、同月4日のデイケアへの参加を最後に、F病院への通院や通所を全て中断した。被告Y2は、その次の通院予定の日に通院するよう説得したが、被告Y1は、 F病院で処方された薬物が臓器をボロボロにするなどと述べて、これを頑なに拒絶し、被告Y2は、それ以上の対応はしなかった。 通院拒絶後の被告Y1の状況等(甲63の1ないし4、甲B10、22、23、59、71、85、88、94、108の2、甲C2、6、7、9、弁論の全趣旨) ア被告Y1は、平成28年4月から定時制高校に通学するようになり、同年5月頃から、アルバイト勤務も始めた。 しかし、被告Y1は、アルバイト勤務については、同年6月中旬頃までに勤務しなくなり、定時制高校についても、同年7月中旬頃までに出席しなくなった。なお、被告Y1は、同年4月頃から、被告自宅に居る間は、 自室に引きこもる傾向にあり、被告Y2は、被告Y1の食事を玄関前において、LINEアプリで食事を置いてある旨のメッセージを被告Y1に送信して、被告Y1が食事を受け取る生活が増えていった。 イ被告Y1は、平成28年7月18日、被告自宅の近くにあるホームセンターでチェーンソーと混合ガソリンをコーナンで購入した。 ウ被告Y1は、平成28年8月から同年10月にかけて、スマートフォン で、殺人事件や殺人方法、残虐な死体の映像、家宅への侵入方法等を取り扱ったインターネットサイトに多数回アクセスして、これらを閲覧していた。 エ被告Y1は、平成28年8月5日、骨董美術刀剣の専門店で、刃渡り約30.6センチメートルの日本刀の短刀を、同月9日頃、上記ホームセン サイトに多数回アクセスして、これらを閲覧していた。 エ被告Y1は、平成28年8月5日、骨董美術刀剣の専門店で、刃渡り約30.6センチメートルの日本刀の短刀を、同月9日頃、上記ホームセン ターでガスバーナーをそれぞれ購入した。なお、被告Y1は、同月8日、ガスバーナーを用いて窓ガラスを割って住居侵入する焼き破りという手法を紹介するインターネットサイトを閲覧している。 オ被告Y1は、平成28年8月7日、被告自宅の自室で、「こら、おい、お前なんやねん。ええ加減にせい。」などと怒鳴り声を上げ、それを聞い た被告Y2は、Dに対し、携帯電話のLINEアプリで「Y1多分病気再発。一人、大声で『お前なんやねん!エエ加減にせい!』と叫んでいる。 誰か見えるようだ。」などとメッセージを送り、さらに、同日の居酒屋の営業を終えた同月8日の午前5時頃、玄関先で被告Y1が座り込んでいるのを発見した。被告Y1は、被告Y2からの声掛けには、冷静に反応し、 それ以後も、部屋でぶつぶつ独り言をいうことが時折みられたが、被告Y2が声をかけると、「何でもない」などと応答していた。 カ被告Y1は、平成28年8月20日頃、被告自宅の1階の居酒屋の内装を傷つけるなどし、被告Y2は、携帯電話のLINEアプリで、被告Y1に対し、「出て行くまでになかった傷があります。」、「『暴れない、壊 さない、叫ばない』約束をことごとく守れない場合は同じ場所には居れません。初めの約束を覚えていますか?」などと、Dに対し、「Y1、とうとうお店傷つけた。出てる間に。」、「ナイフでそいだ感じ」などとそれぞれメッセージを送り、同月25日にも被告自宅の1階の居酒屋の内装に傷があったため、被告Y1に対し、「また店に傷が出来てる。」、「もう 我慢ならん。犯人を特定するた フでそいだ感じ」などとそれぞれメッセージを送り、同月25日にも被告自宅の1階の居酒屋の内装に傷があったため、被告Y1に対し、「また店に傷が出来てる。」、「もう 我慢ならん。犯人を特定するためカメラをつけます。」などとメッセージ を送った。 キ被告Y1は、平成28年9月8日、被告自宅の自室で怒鳴り声を上げ、Dは、被告Y2に対し、携帯電話のLINEアプリで、「Y1、また大声出してるから注意して」とメッセージを送った。 ク被告Y2は、平成28年9月29日、被告Y1が在籍していた定時制高 校からの連絡で被告Y1が同年7月から不登校であったことを知り、被告Y1に対し、携帯電話の携帯電話のLINEアプリで、「学校の先生が心配して、ここまで来てくれていたそうです。私的には行った方が良いと思います。だってまた同じ思いを繰り返したいのですか?それに約束していたはずですよ。病気でないならば学校行くか仕事をするか、病気ならば病 院に行って治療を受けるか。」などとメッセージを送った。 ケ被告Y1は、平成28年9月末頃、被告自宅の洗面所を水浸しにし、被告Y2は、被告Y1が医療保護入院をする直前にも同様のことが度々あったことから、被告Y1の精神状態が不安定になっていることを感じていた。 コ被告Y1は、平成28年10月頃になると、「お前誰やねん」、「殺す ぞ」、「何してんねん」、「うるさい」、「しつこい」などと毎日のように大声で叫ぶようになり、被告Y2は、同月10日、携帯電話のLINEアプリで、「また誰かが見えてるの?見えてしんどいんやったらちゃんと言って。近所迷惑やから大声で叫ぶのは控えて下さいね。」などとメッセージを送った。 サ被告Y1は、平成28年10月18日、再度、被告自宅の洗面所を水浸しにするな んどいんやったらちゃんと言って。近所迷惑やから大声で叫ぶのは控えて下さいね。」などとメッセージを送った。 サ被告Y1は、平成28年10月18日、再度、被告自宅の洗面所を水浸しにするなどしたほか、外出して原告自宅を下見した。 シ被告Y1は、平成28年10月19日未明、リュックサックに日本刀の短刀、刺身包丁、鉈、作業靴、雑巾、ハンドタオル、ガスバーナー、瞬間冷却剤、ナイロン袋などを入れて原告自宅に向かい、ガスバーナーを使っ た焼き破りの手法により、原告自宅の1階の腰高窓の施錠を外して内部に 侵入し、本件犯行に及んだ。 本件犯行による被害状況等ア亡Aは、本件犯行により、胸部、背部等を日本刀の短刀で刺突され、同各部位等の刺創・刺切創に基づく失血により死亡した。 亡Aは、死亡当時の年齢は43歳であり、少なくとも年額614万円の 収入があった。(甲22、甲B29、弁論の全趣旨)イ原告X2は、本件犯行により、通院加療14日を要する左前腕部切創の傷害を負った。(甲33、59、甲B30ないし32、弁論の全趣旨) 原告X3は、本件犯行により、入院加療10日、通院加療約4か月半を要する後頭部切創、前頭部刺切創、後頸部刺創、左前腕切創等の傷害 を負った。(甲34、甲B33ないし37、弁論の全趣旨) 原告X4は、本件犯行により、入院加療10日、通院加療約5か月を要する左上腕刺創、左上腕深動脈損傷、左橈側皮静脈損傷、右拇指切創・屈筋腱断裂等の傷害を負った。(甲35、甲B38ないし41、弁論の全趣旨) なお、被告Y1も、本件犯行時、原告X4に抵抗された際に手や顔を負傷している。(甲B5、甲B28、弁論の全趣旨)ウ原告X 甲35、甲B38ないし41、弁論の全趣旨) なお、被告Y1も、本件犯行時、原告X4に抵抗された際に手や顔を負傷している。(甲B5、甲B28、弁論の全趣旨)ウ原告X1は、平成29年9月27日、犯罪被害者等給付金(遺族給付金)として1914万5400円の支給裁定をうけ、同額を受領した。(甲21、弁論の全趣旨) 本件犯行に係る刑事事件の経緯等ア現行犯逮捕時の状況等被告Y1は、本件犯行後、原告X2の通報により原告自宅に駆け付けた警察官により、現行犯逮捕された。被告Y1は、その際、「騙された、分からない。」と言いながら、頭をうなだれて逮捕に応じた。(甲B4) イ取調べ時の供述調書等 被告Y1は、本件犯行後の捜査機関からの取調べに対し、当初は、自分がやったかどうか分からない、自分の怪我もいつどこでしたのか分からない、包丁を持っていたことや原告自宅を訪れたことも覚えていない旨などを供述していたが、平成28年11月6日になって、被告Y1が原告自宅を訪れる直前に3人の男に会い、3人の男のうち1名が被告Y1のリュッ クを奪って原告自宅に侵入した後、玄関の鍵を内側から開けて被告Y1を招き入れ、亡Aを殺害した上で逃亡し、被告Y1が現場に取り残された旨を供述するようになり、その供述を維持するようになった。(甲B71、108の2、弁論の全趣旨)ウ刑事事件での精神鑑定の内容 被告Y1の本件犯行当時の責任能力に関する精神鑑定について、検察官が公訴提起前に嘱託したL医師の鑑定(以下「L鑑定」という。)では、被告Y1は、本件犯行当時、統合失調症に罹患し、症状の程度は非常に悪化していたが、他方で犯行自体は、周到に計画されたものであるし、逮捕後の供述も 嘱託したL医師の鑑定(以下「L鑑定」という。)では、被告Y1は、本件犯行当時、統合失調症に罹患し、症状の程度は非常に悪化していたが、他方で犯行自体は、周到に計画されたものであるし、逮捕後の供述も統合失調症の妄想等の影響下でやむを得ずした犯行 であれば、被告Y1にとっても犯行をせざるを得なかった理由を説明しようとするのが自然であるのに、自己弁護のために手の込んだ虚偽の供述をしていること等の事情を総合的に考慮すると、犯行自体は、統合失調症の影響により判断能力が著しく障害されていたとは考えられず、完全責任能力があるとされた。(甲B71、106) 被告Y1の本件犯行当時の責任能力に関する精神鑑定について、公訴提起後に裁判所が選任したM医師の鑑定(以下「M鑑定」という。)では、被告Y1は、本件犯行当時、統合失調症に罹患し、症状の程度は非常に悪化していたこと、他方で犯行自体は、周到に計画されたものであること、被告Y1の逮捕後の供述は、自己弁護のための虚偽のものであ る点は、L鑑定と同様であるが、現行犯逮捕時に、自らの置かれている 状況を理解していない様子で「だまされた」などと迫害妄想に基づくと考えられる発言をしていること、本件犯行当時、被告Y1の統合失調症の症状が非常に悪化していたことからすると病状の非常な悪化による影響があったと考えざるを得ず、限定責任能力があったにとどまるとされた。(甲B108の1・2) エ判決の内容等大阪地方裁判所は、平成30年4月13日、被告Y1について、M鑑定と同趣旨の判断により、本件犯行当時、限定責任能力であったとした上で、住居侵入、殺人、殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反の罪につき、懲役30年の刑に処する旨の判決を宣告した。 同判決につ と同趣旨の判断により、本件犯行当時、限定責任能力であったとした上で、住居侵入、殺人、殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反の罪につき、懲役30年の刑に処する旨の判決を宣告した。 同判決については、検察官、被告Y1の双方が控訴したが、大阪高等裁判所は、令和元年5月20日、いずれの控訴についても棄却した。(甲A2、3) 被告Y2による訴訟追行の経緯ア原告らは、令和元年10月1日、本件訴訟に係る訴えを提起した。(顕 著な事実)イ被告Y2は、被告Y2代理人弁護士らに本件訴訟について訴訟追行を委任し、令和3年1月頃までは、被告Y2代理人弁護士らと面会して打ち合わせをし、準備書面を提出するなどしていたが、同年3月以降、反復性うつ病と診断されて通院加療を受けるようになり、被告Y2代理人弁護士と も面会ができない状態が続いた。被告Y2は、令和4年4月26日には、被告Y2代理人弁護士宛てのメールでも希死念慮をうかがわせる文面を送信するなどしており、口頭弁論終結時(同年7月19日)までその状況が継続した。(乙1ないし3、弁論の全趣旨) 2 争点について 前記認定事実によれば、被告Y1は、本件犯行当時、統合失調症に罹 患し、妄想等の症状があったと考えられるが、本件犯行自体は、侵入方法の検索、各種道具の準備等、計画的かつ合目的に行われているし、統合失調症の症状のある中でなされた取調べにおいて、被告Y1が自己弁護のため、手の込んだ虚偽の供述をしていることが認められる。そうすると、被告Y1は、本件犯行当時において、なお相当程度の是非善悪の判断能力及び制御能力を有してい たものと認められるが、他方で、現行犯逮捕直後の被告Y1の言動や本件犯行直前の被告Y1の統合失調症の症状の程度が重篤な状態 行当時において、なお相当程度の是非善悪の判断能力及び制御能力を有してい たものと認められるが、他方で、現行犯逮捕直後の被告Y1の言動や本件犯行直前の被告Y1の統合失調症の症状の程度が重篤な状態であったこと等を踏まえれば、限定責任能力の状態にあったとみるのが相当である。 したがって、被告Y1は、本件犯行につき、原告ら及び亡Aに対し、不法行為責任を負うものと認められる。 3 争点について前記2の認定・判断のとおり、被告Y1は、本件犯行当時、統合失調症に罹患して限定責任能力の状態にある成人であったところ、原告らは、被告Y1と同居していた母である被告Y2について、医療機関、保健所等への相談をするなどし、被告Y1に適切な治療を受けさせ、他害行為を防止すべき注 意義務に違反し、本件犯行を惹起した不法行為責任がある旨を主張するので、以下検討する。 ⑵ア統合失調症などの精神疾患を有する者が責任能力を有する場合であっても、当該精神障害者に対して監督義務を負う者の監督義務違反と当該精神障害者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認め得ると きは、監督義務者について、民法709条に基づく不法行為が成立するものと解するのが相当である(最高裁昭和47年(オ)第1067号、同49年3月22日第二小法廷判決・民集28巻2号347頁参照)。 イもっとも、一般に、統合失調症などの精神疾患を有する成人については、同居の親であっても、その行動を監督し、行動の統制等をすることには事 実上、相当な困難を伴うものであり、監督義務者にかかる心身の負担は大 きく、現に、平成11年法律第65号による改正前の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律22条1項において定められていた保護者の精神障害者に対する自傷他害防止監 者にかかる心身の負担は大 きく、現に、平成11年法律第65号による改正前の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律22条1項において定められていた保護者の精神障害者に対する自傷他害防止監督義務は、上記平成11年法律第65号により廃止され、保護者制度そのものが平成25年法律第47号により廃止されていることにも鑑みれば、同居の親が、当然に、統合失調症などの精神 疾患を有する成人に対する監督義務を負うということはできない。 他方で、このような成人の精神障害者の同居の親について、精神障害者の在宅治療の選択及び専門家の排除等の先行行為、精神障害者の心身の状況や日常生活における問題行動の有無・内容等の予見可能性、同居の親の心身の状況及び精神障害者との関わりの実情等の監督可能性(結果回避可 能性)がある場合には、単なる事実上の監督を超えてその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められ、その者に対し、当該精神障害者の行為に係る責任を問うのが相当といえる客観的状況が認められるといえるから、精神障害者の同居の親の監督義務(注意義務)が認められ、さらに、当該監督義務違反と精神障害者の不法行為によって生じた結果との間 に相当因果関係を認め得るときは、その者について、民法709条に基づく不法行為が成立すると解するのが相当である。 ⑶ そこで、本件について、具体的事情に基づき検討する。 ア被告Y1の在宅治療の選択及び専門家の排除等の先行行為について認定事実ウ、同アないしウによれば、被告Y1は、平成26年1 2月に統合失調症と診断されて医療保護入院となった後、薬物療法によって症状は落ち着き、任意入院に切り替えられたものの、平成27年3月、被告Y2による入院費の滞納の問題も相まって退院することとなったこと、同退 失調症と診断されて医療保護入院となった後、薬物療法によって症状は落ち着き、任意入院に切り替えられたものの、平成27年3月、被告Y2による入院費の滞納の問題も相まって退院することとなったこと、同退院に際し、F病院は、被告Y2に対し、訪問看護や精神保健福祉士の関与を何度も提案したにもかかわらず、被告Y2は、これを 拒絶し、被告Y1の通院を前提に在宅治療を選択したことが認められる から、被告Y2は、被告Y1と同居する親として、被告Y1について、F病院への通院を前提に、被告自宅への看護師による訪問や、精神保健福祉士などの専門家の関与を拒否する形で、在宅治療を引き受けたということができる。 そして、前記認定事実エによれば、被告Y1は、平成27年4月に 在宅治療を開始してから、2週間に1回の頻度でF病院に通院し、同年8月からはデイケアも利用するなどし、症状としては一進一退の状態であったのに、約半年後の同年10月頃から怠薬の傾向が顕著になり、約1年後の平成28年4月頃には、医師の指示もないまま治療自体を中断したこと、被告Y2は、F病院に通院するよう説得したが、被告Y1が 薬物が臓器をボロボロにするなどと述べて通院を拒否したため、それ以上の対応をしなかったことが認められる。 以上によれば、被告Y2は、被告Y1につき入院治療に引き続いて統合失調症の通院治療の継続が必要であったにもかかわらず、被告Y1と同居する親として、訪問看護などの専門家の関与を自ら拒絶する一方で、 被告Y1による通院拒否について、状況を改善し得る立場にありながら、そのまま放置していたと言わざるを得ないから、被告Y2において、被告Y1の在宅治療を選択しながら専門家の関与を排除するなどの先行行為があったというべきである。 イ被告Y1の心身 場にありながら、そのまま放置していたと言わざるを得ないから、被告Y2において、被告Y1の在宅治療を選択しながら専門家の関与を排除するなどの先行行為があったというべきである。 イ被告Y1の心身の状況や日常生活における問題行動の内容等の予見可能 性について前記認定事実アないしウ、同イウによれば、被告Y1は、医療保護入院直前の時期には、被害妄想をもって、傘をもって通行人を追い回したり、女子高生を追いかけたりしていたことなどから、主治医は、強固な被害妄想・幻想に影響されて自宅内での家財道具や近隣住民を対象 とした粗暴行為に発展していると評価していたこと、医療保護入院時に は、興奮して激しく暴れていたこと、被告Y1は、医療保護入院時、護身用にナイフを携行していたほか、被告自宅内にも包丁を隠し持っていたこと、被告Y2において、被告Y1について医療保護入院から任意入院に切り替えるに当たり、被告Y1の外出について不安を訴えていたことが認められる。そうすると、被告Y1は、本件犯行以前には、凶器を 用いて他人を襲うことはなかったものの、統合失調症による強固な被害妄想・幻想に影響されて他人に対する粗暴行為に及ぶこと自体はあったことから、病状の悪化によって、他害行為に及ぶ危険性は具体的に想定されるものであったというべきである。 そして、前記認定事実ウ、同エ、同アないしケによれば、被 告Y1は、平成27年3月にF病院を退院し、在宅治療を開始したものの、同年10月頃から怠薬の傾向が顕著になり、平成28年3月頃には、鉈、のこぎり、ナイフ、手斧、チェーンソー、混合ガソリン、日本刀の短刀、ガスバーナーといった護身用とは到底考えられない凶器等を大量に購入して自室に保管するようになっていったこと、被告Y2 月頃には、鉈、のこぎり、ナイフ、手斧、チェーンソー、混合ガソリン、日本刀の短刀、ガスバーナーといった護身用とは到底考えられない凶器等を大量に購入して自室に保管するようになっていったこと、被告Y2も、同月 頃、被告Y1が鉈を自室に保管している事実については認識していたこと、同年8月頃から、被告Y1に「こら、おい、お前なんやねん。ええ加減にせい。」などと大声を上げるなどの奇行が出現したことから、被告Y2においても、被告Y1の統合失調症の症状が再燃し、妄想の症状が出ていることを認識し、ナイフを用いて家財に傷を付けていることも 認識していたこと、被告Y2は、同年9月までに、被告Y1が在籍していた定時制高校からの連絡により、被告Y1が同年7月中旬から欠席していることを知るとともに、洗面所を水浸しにする等、医療保護入院前の奇行と共通点があって被告Y1の病状が悪化していることに懸念を覚えたことがそれぞれ認められる。そうすると、被告Y1については、遅 くとも同年9月末日の時点において、統合失調症の病状が悪化して幻覚 妄想状態が再燃していたというべきであるから、このような被告Y1の病状に照らし、客観的に第三者に危害を加える危険性は切迫していたとみるべきであるし、被告Y2においても、このような被告Y1の病状の悪化を認識していたことに加え、合理的な理由なく鉈を自室に保管し、ナイフを用いて家財に傷をつけていることを認識していたのであるから、 第三者に危害を加える危険性が切迫していることは認識し得たというべきである。 ウ被告Y2の心身の状況及び被告Y1との関わりの実情等の監督可能性(結果回避可能性)について前記前提事実アないしウ、前記認定事実ウ、同ア、カによれば、 被告Y2は、事件当時、自宅の1階で Y2の心身の状況及び被告Y1との関わりの実情等の監督可能性(結果回避可能性)について前記前提事実アないしウ、前記認定事実ウ、同ア、カによれば、 被告Y2は、事件当時、自宅の1階で居酒屋を経営しながら、当時24歳の被告Y1と当時18歳のDと同居して、同人らを扶養ないし監護養育していた一家の支柱であり、他方で、被告Y1は、実父や養父とは長年没交渉であり、高校1年生の頃からの大半の期間について被告自宅での引きこもりの生活を続けていたことが認められるから、被告Y1は、 経済的にも生活面でも被告Y2に依存している状態であったということができる。また、被告Y1は当時24歳の男性で体力的には被告Y2に勝っていたものの、被告Y2は、事件当時47歳と壮年期にあり、自宅で居酒屋を経営し得る健康状態にあったこと、約束を守らない被告Y1に対し、「約束をことごとく守れない場合は同じ場所には居れません。 初めの約束を覚えていますか?」などとLINEアプリでメッセージを送信するなど、精神的にも優位な状態にあったものとみるのが相当である。そうすると、被告Y2は、被告Y1と同居する親として、被告Y1を監督することにつき特段の支障があったものということはできない。 また、前記認定事実アないしウによれば、被告Y1の統合失調症に ついては薬物療法によって症状が改善しているのであるし、治療を再開 することに対する被告Y1の反発等が懸念されるとしても、F病院は、従前から被告Y1の治療に関し、被告Y2に訪問看護や精神健康福祉士の関与を提案していたのであるから、被告Y2が、被告Y1の病状をF病院に伝えて相談をしていれば、同病院における医療保護入院での治療再開を含め、そのような被告Y1の反発を避けて円滑に治療を再開させ るた 提案していたのであるから、被告Y2が、被告Y1の病状をF病院に伝えて相談をしていれば、同病院における医療保護入院での治療再開を含め、そのような被告Y1の反発を避けて円滑に治療を再開させ るために専門家の関与を受けることも容易であったというべきである。 エ小括以上によれば、被告Y2は、被告Y1につき入院治療に引き続いて統合失調症の通院治療の継続が必要であったにもかかわらず、被告Y1と同居する親として、訪問看護などの専門家の関与を自ら拒絶する一方で、被告 Y1による通院拒否について、状況を改善しうる立場にありながら、そのまま放置していたと言わざるを得ず、かつ、平成28年9月末日の時点で、被告Y1の病状が悪化し、第三者に危害を加える危険性が切迫していたことの予見可能性、医療機関による被告Y1に対する治療の再開のための措置を講じることについての監督可能性(結果回避可能性)に欠けることも なかったというべきであるから、被告Y2には、同日の時点において、被告Y1の病状をF病院に伝えて相談をするなどし、被告Y1に適切な治療を受けさせ、他害行為を防止すべき注意義務を負っていたものと認められる。にもかかわらず、被告Y2は、被告Y1の病状の悪化を認識しながらこれを放置していたと言わざるを得ないから、上記注意義務の違反があっ たと認められる。 ⑷ 注意義務違反と他害行為との相当因果関係(結果回避可能性)について前記認定事実⑵ないし⑷によれば、被告Y1は、平成26年12月にF病院において統合失調症との診断を受けて医療措置入院し、約3か月間の入院治療を経て平成27年3月に退院した後も、約1年後の平成28年3月に治 療を自己中断するまでは、同病院において通院治療を受けていたこと、同病 院は、同居する母の被告Y 3か月間の入院治療を経て平成27年3月に退院した後も、約1年後の平成28年3月に治 療を自己中断するまでは、同病院において通院治療を受けていたこと、同病 院は、同居する母の被告Y2に対し、何度も訪問看護や精神保健福祉士らによる訪問を勧めていたが、被告Y2において被告自宅への介入を拒否していたことが認められる。 そうすると、被告Y2において、同年9月末時点で、被告Y1の病状が悪化していることをF病院に伝えて相談していれば、同病院において、再度の 医療保護入院の検討も含めて治療の再開に向けた支援をとり得たというべきであるし、少なくとも、その過程で、被告Y1が自室に保管していた大量の凶器が発見されて、本件犯行は阻止された蓋然性が高いというべきであるから、被告Y1の他害行為の結果発生の回避可能性は高かったと言わざるを得ない。 したがって、被告Y2が、同年9月末日の時点で、被告Y1の病状をF病院に伝えて相談をするなどし、被告Y1に適切な治療を受けさせ、他害行為を防止すべき注意義務に違反したことと、被告Y1の他害行為との間には、相当因果関係が認められる。 ⑸ア被告Y2は、被告Y1の退院に際し、被告自宅への訪問看護等を拒絶し たのは、訪問看護についての費用負担の過重に加えて、自宅を訪問されることによって被告Y1の精神的安定が阻害されることを恐れての判断であって、被告Y1の監護を引き受けたものと評価すべきではない旨を主張する。 しかし、前記認定事実⑶ウによれば、被告Y1の退院までには、社会福 祉協議会の貸付けが決定していたことに加え、被告Y2自身が、訪問看護師等が被告自宅に立ち入ることによる店の経営への影響等を懸念していたこと、F病院は、被告Y1の病状をも考慮して訪問看護師等の関与を繰り返し勧めて けが決定していたことに加え、被告Y2自身が、訪問看護師等が被告自宅に立ち入ることによる店の経営への影響等を懸念していたこと、F病院は、被告Y1の病状をも考慮して訪問看護師等の関与を繰り返し勧めていたことが認められるから、被告Y2が訪問看護師等の訪問を拒絶についてやむを得ない事情があったものと評価することはできず、上 記主張を採用することはできない。なお、被告Y2は、入院費の滞納を巡 る対立があったことから、F病院のカルテの記載は事実が歪められて記載されている可能性がある旨も主張するが、そのことを認めるに足りる的確な証拠はない。 イ被告Y2は、被告Y1の医療保護入院前の症状について、実際に凶器をもって第三者を襲ったような事実は一度もなく、医療保護入院時もナイフ を携行していたもののナイフを用いて暴れたものではなく、第三者に危害を加える危険性の兆候はなかったのであり、本件犯行に至る他害行為の危険性は予見できなかった旨を主張する。 しかし、前記⑶イの認定判断のとおり、被告Y1は、強固な被害妄想・幻想に影響され、実際に通行人に対して傘をもって追い回すなど近隣住民 を対象とした粗暴行為に及んでいたのであるし、被告Y2自身、被告Y1の医療保護入院から任意入院への切り替え時には被告Y1が外出することに不安を訴え、被告Y1が退院するに際しては、自室内に凶器等がないか確認するなどしていたのであって、この点に関する被告Y2の主張は採用することができない。 ウ被告Y2は、平成28年3月に被告Y1が鉈を所持していたことについて、被告Y1から、趣味のサバイバルゲームで使用する旨を説明されて所持を容認したにすぎず、被告Y1の他害の危険性を想起させるものではない旨を主張する。 しかし、上記鉈をサバイバルゲー たことについて、被告Y1から、趣味のサバイバルゲームで使用する旨を説明されて所持を容認したにすぎず、被告Y1の他害の危険性を想起させるものではない旨を主張する。 しかし、上記鉈をサバイバルゲームで使用すると説明されたということ 自体、本件犯行に係る刑事事件記録(甲B71、108の2等)からうかがわれる同刑事事件での被告Y2の供述内容とおよそ異なっているし、前記認定事実ウのとおり、被告Y1は、平成22年にIに誘われてサバイバルゲームに参加したことは認められるものの、その後に屋外でサバイバルゲームに参加していた形跡は全くないのであって、平成28年3月の時 点で鉈を所持している理由として、このような説明を受けて納得したとい うこと自体不自然であり、この点についての被告Y2の主張は採用することができない。 エ被告Y2は、本件犯行直前の時期も、被告Y1がアルバイトを続けているものと認識しており、他害行為の危険性を予見できなかった旨を主張する。 しかし、前記認定事実クのとおり、被告Y2は、平成28年9月29日の時点で、それまで被告Y1が通学していると思っていた定時制高校を同年7月中旬から欠席している事実を上記高校からの連絡で知らされていたのであり、アルバイトだけ続けていると考えた具体的な事情は何ら明らかでなく、この点に関する被告Y2の主張は採用することができない。 オ被告Y2は、本件犯行前に医療機関に相談するなどしても、被告Y1について直ちに医療保護入院になったかどうかは不明であり、本件犯行がされることを回避できなかった旨を主張する。 しかし、被告Y2が本件犯行直前の時期における被告Y1の症状を的確にF病院に伝えて、訪問看護や精神保健福祉士による家庭訪問の受入れを 含め、F病 ることを回避できなかった旨を主張する。 しかし、被告Y2が本件犯行直前の時期における被告Y1の症状を的確にF病院に伝えて、訪問看護や精神保健福祉士による家庭訪問の受入れを 含め、F病院の支援を適切に受ければ、少なくとも被告Y1が自室に保管していた鉈のほか、のこぎり、ナイフ、手斧、チェーンソー、混合ガソリン、日本刀の短刀、ガスバーナー等の凶器の所持が明らかになるなどして、本件犯行が防止されていた可能性も相当程度に考えられ、同病院において、再度の医療保護入院の検討も含めて治療の再開に向けた支援をとり得たと いうべきであるから、この点に関する被告Y2の主張は採用することができない。 その他、被告Y2は、本件において、被告Y1の他人に危害を加える切迫した危険性を認識し得えなかったこと、被告Y1の他害行為の防止のために現実的に取り得る合理的な措置が存在しなかったことを示す具体的な事情に ついて、何らの証拠を提出しない。 以上の諸事情を総合的に考慮すると、被告Y2は、平成28年9月末日の時点において、被告Y1の病状をF病院に伝えて相談するなどし、被告Y1に適切な治療を受けさせ、被告Y1の他害行為を防止すべき注意義務を負っていたにもかかかわらず、何らの対応をせず、上記注意義務に違反したものと認められる。そして、上記注意義務違反と被告Y1の他害行為との間には、 相当因果関係が認められるから、被告Y2は、被告Y1の本件犯行について、共同不法行為責任を負うといわざるを得ない。 4 争点について亡Aの死亡慰謝料及び原告らの近親者慰謝料についてア前記前提事実⑴、前記認定事実⑸アによれば、亡Aは、本件犯行によっ て死亡しているところ、何らの落ち度もなかったにもかかわらず、自宅で就寝中に 死亡慰謝料及び原告らの近親者慰謝料についてア前記前提事実⑴、前記認定事実⑸アによれば、亡Aは、本件犯行によっ て死亡しているところ、何らの落ち度もなかったにもかかわらず、自宅で就寝中に、突然、見知らぬ被告Y1から残虐な行為を受けて死を余儀なくされた無念さは察するに余りあり、その精神的苦痛は甚大であったと認められる。 また、原告X1は亡Aの妻であり、原告X2、原告X3、原告X4は亡 Aの子であり、原告X5は亡Aの母であるところ、近親者である亡Aが上記の態様で命を奪われたことについて、上記原告らの受けた精神的苦痛もまた甚大であったものと認められる。 そして、これらの精神的苦痛を慰謝するに足る慰謝料額は、上記のとおりの本件犯行の経緯、態様、結果の重大性、亡Aと上記原告らとの関係等、 一件記録に現れた全ての事情に照らすと、亡Aについての死亡慰謝料が2500万円、原告X1、原告X2、原告X3、原告X4及び原告X5の近親者としての固有の慰謝料がそれぞれ100万円と認めるのが相当である。 イ他方、亡Aの兄である原告X6及び亡Aの姉である原告X7についてみると、不法行為による生命侵害があった場合、被害者の父母、配偶者及び 子が加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求し得ることは、民法711条 が明文をもって認めるところであるが、同規定はこれを限定的に解すべきものでなく、文言上同条に該当しない者であっても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存在し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうるものと解するのが相当である(最高裁昭和 49年(オ)第212号同年12月17日第3小法廷判決・民集28巻10号2040頁参 は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうるものと解するのが相当である(最高裁昭和 49年(オ)第212号同年12月17日第3小法廷判決・民集28巻10号2040頁参照)。しかし、本件においては、一件記録によっても亡Aと原告X6及び原告X7の間において、被害者の父母、配偶者及び子と実質的に同視し得べき身分関係が存在するということはできない。 したがって、原告X6及び原告X7の固有の慰謝料の請求はいずれも認 めることができない。 亡Aの死亡逸失利益について前記認定事実アのとおり、亡Aは、死亡した当時、43歳で、少なくとも614万円の年収があったところ、死亡時の年齢から65歳までの就労可能年数24年についてのライプニッツ係数は13.799であり、亡Aにつ いての生活費控除率については、原告の主張を考慮して控えめに50%とすると、以下の計算式のとおり、亡Aの死亡逸失利益は、4236万2930円と認められる。 そうすると、原告らがこれまで犯罪被害者等給付金として受領した1914万5400円を考慮しても、補填されない亡Aの死亡逸失利益は、230 0万円を下らない。 6,140,000円×13.799×(1-0.5)=42,362,930円亡Aの損害額の合計と原告らの相続分について前記⑴及び⑵によれば、亡Aの死亡慰謝料と死亡逸失利益に係る損害の合計額は、4800万円となるところ、原告X1は2分の1、原告X2、原告 X3及び原告X4は、各6分の1の相続割合で亡Aを相続したから、上記亡 Aの損害についての相続分は、原告X1が2400万円、原告X2、原告X3及び原告X4が各800万円となる。 原告らの傷害に関する慰謝料について前記認定事実イのとおり、原告X2、原 Aの損害についての相続分は、原告X1が2400万円、原告X2、原告X3及び原告X4が各800万円となる。 原告らの傷害に関する慰謝料について前記認定事実イのとおり、原告X2、原告X3及び原告X4は、本件犯行によって受傷し、それ自体によっても多大な精神的苦痛を受けたことが認 められるところ、その精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は、本件犯行の経緯、態様、上記原告らの受傷の程度等、一件記録に現れた全ての事情に照らして、原告X2について50万円、原告X3及び原告X4については、それぞれ150万円と認めるのが相当である。 弁護士費用について ここまでの原告らの請求権の合計額は、原告X1が2500万円、原告X2が950万円、原告X3及び原告X4が各1050万円、原告X5が100万円であるところ、その弁護士費用は、それぞれの請求権の合計額の1割(原告X1について250万円、原告X2について95万円、原告X3及び原告X4について各105万円、原告X5について10万円)と認めるのが 相当である。 原告らの損害の合計額についてしたがって、原告らの被告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求権の合計額は、原告X1につき2750万円、原告X2につき1045万円、原告X3及び原告X4につき各1155万円、原告X5につき110万円とな る。 5 以上によれば、原告らの請求は、原告X1につき2750万円、原告X2につき1045万円、原告X3及び原告X4につき各1155万円、原告X5につき110万円及びこれらに対する不法行為日である平成28年10月19日からから支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め る限度で理由があるから、その限度でこれらを認容し、その余はいずれも理由 不法行為日である平成28年10月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、その限度でこれらを認容し、その余はいずれも理由がないから、これらを棄却することとして、主文のとおり判決する。 主文 大阪地方裁判所第18民事部 裁判長裁判官 横田典子 裁判官 玉田雅義 裁判官 比舍昌志
▼ クリックして全文を表示