主文 1 1審被告の本件控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。 (1) 1審被告の1審原告に対する平成8年8月7日付けの文書の非開示決定処分(ただし,平成9年5月6日付けで開示する旨の決定をしたものを除く)のうち、別紙文書目録記載の文書を非開示とした部分を取り消す。 (2) 1審原告のその余の請求を棄却する。 2 1審原告の本件控訴を棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを3分し,その2を1審原告の,その余を1審被告の各負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 1審原告(1) 原判決主文第2項を取り消す。 (2) 1審被告の1審原告に対する平成8年8月7日付けの文書の非開示決定処分(ただし,平成9年5月6日付けで開示する旨の決定をしたものを除く。)を取り消す。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも1審被告の負担とする。 2 1審被告(1) 原判決中,1審被告の敗訴部分を取り消す。 (2) 1審原告の請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも1審原告の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,東京都武蔵野市の住民である1審原告が,1審被告に対し,武蔵野市情報公開条例(平成元年市条例第7号。本件条例)8条に基づき,原判決別紙一記載の各公文書〔「公文書」とは,実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書等で,決裁,供覧その他これに準ずる手続が終了し,当該実施機関が管理しているものをいう(本件条例2条(2))。本件各文書〕の開示を請求をしたところ,1審被告が,①平成8年8月7日付けで,原判決別紙二記載の各文書を非開示とし,原判決別紙三記載の各文書を一部非開示とする旨の決定をし,その後,②平成9年5月6日付けで,原判決別紙四記載の各文書について開示する旨の,上記①の決定を変更する決定(この決定によっ 書を非開示とし,原判決別紙三記載の各文書を一部非開示とする旨の決定をし,その後,②平成9年5月6日付けで,原判決別紙四記載の各文書について開示する旨の,上記①の決定を変更する決定(この決定によって変更された後の非開示決定を「本件非開示決定」という。)をしたため,1審原告が本件非開示決定の取消しを求めた事案である。 (1) 原審は,本件非開示決定のうち,一部(原判決別紙五の「非開示決定を取り消す部分」欄記載の各事項について非開示とした部分)を取り消したので,1審原告及び1審被告が控訴した。 (2) 当審において,1審原告は,原判決別紙一の本件各文書のうち,次のaの各文書についての控訴を取り下げ,bの各文書についての訴えを取り下げた(以下,原判決別紙繊の文書を「文書1」,「文書8イ」などという。)。 a 文書2(ただし同別紙三の一部非開示部分)〔用地取得に関する覚書(市が公社に発したもの)(平成元年度から平成8年度)〕文書3〔用地取得に関する覚書(公社が市に発したもの)(平成元年度から平成8年度)〕文書5①〔公拡法・買取希望申出書(平成元年度から平成8年度)〕文書5②〔公拡法・実施状況報告書(平成元年度から平成8年度)〕文書6〔公拡法・有償譲渡申出書(平成元年度から平成8年度)〕文書8イの折衝記録文書8口ないしホの折衝記録ファイルに編綴された文書のうち,次の文書以外のもの口の「事務連絡写(用地買収について)市企画部長→市都市開発部参事」ハの事務連絡写(用地買収について)」ニの「くじゃくりょう跡地写」ニの「依頼書用地買収について(三井信託銀行より)」ホの「事務連絡写(境界立ち会いについて)」ホの「事務連絡写(測量について)」b 文書8へないしルの折衝記録(3) したがって,本件各文書のうち,当審での審理の対象は以下のとおりであ 銀行より)」ホの「事務連絡写(境界立ち会いについて)」ホの「事務連絡写(測量について)」b 文書8へないしルの折衝記録(3) したがって,本件各文書のうち,当審での審理の対象は以下のとおりである。 文書1文書7文書8のうちイないしヌの売買契約書(ハ,ニ,ホ,チは全部,イ,口,トは売主の住所氏名及び売買代金額,へ,リ,ヌは売買代金額)イないしホの折衝記録(ただし,上記(2)で除外した部分を除く。) 2 「本件条例の定め」,「前提となる事実」,「1審被告の主張する非開示事由」,争点及び争点に関する当事者の主張」当審における双方の主張を次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」第二の一ないし五のうち,前記1(3)に掲記の文書に係る部分のとおりであるから,これを引用する。 (1) 文書1が合議制機関情報であるかについて(1審原告の主張)議事録で非開示とされているのは,個々の委員の具体的発言ではなくその中の数字だけであり,委員の思想信条ではなく土地の評価に関する専門的意見であるから,自由率直な発言が阻害されることはない。したがって,文書1は,合議制機関情報に該当しない。 (2) 文書7への法人格否認法理の適用ついて(1審原告の主張)市と公社とは,直接実質的支配,利害一致,業務運営・財産・会計の混同等のいずれの要件も備えており,法人格が形骸化していることは明らかであるから,法人格否認の法理が適用されるべきである。 自治者及び建設省は,平成11年5月17日,特殊法人情報公開検討委員会において,公社を含む地方三公社につき「現行法は情報公開条例の実施機関とすることを禁じているとは考えない」との見解を表明し(甲58),この見解は,情報公開の関係では公社を市の一機関と認めていることにほかならない。 (3) 文書8イないしヌの売 は情報公開条例の実施機関とすることを禁じているとは考えない」との見解を表明し(甲58),この見解は,情報公開の関係では公社を市の一機関と認めていることにほかならない。 (3) 文書8イないしヌの売買契約書について① 同ハ,ニ,ホ,チの売買契約書が公文書であるか等について(1審被告の主張)アこれらは非実施機関である公社が作成取得し、単独で管理するものであり,本件条例にいう公文書には該当しない。これらは,作成と同時に売主と公社が同時に取得したもので,実施機関である1審被告が現実に取得して市の文書管理規定により決裁供覧その他これらに準ずる手続を経てはおらず,1審被告が各文書を管理する権限を有するものでもない。1審被告は,公社が買収した土地を公社から譲り受けることにより,初めて売買契約書原本を取得し,以後これを管理するに過ぎない。 公社が売主から取得した土地につき,公社から市に売買契約書の写しを交付すべき義務は定められていない。公社が売主から土地を買い取る場合,売買価格は市の財産価格審議会が評価決定する価格によるべきものとされ,同審議会により土地の時価は十分審議されているから,市は当該年度末に公社から送付される「武蔵野市土地開発公社事業資金の借入れについて(依頼)」と題する書面(乙4)の売買代金額の記載に従って公社の借入金につき一括保証すれば足り,公社から売買契約書の写しの交付を受ける必要はない。公社の取得した土地の売買代金額等売買契約の内容は,市の職員として当然了知しているから,公社が管理している売買契約書を特段利用する必要はない。 公社用地課の文書は,市用地課の文書とフォルダーを異にし,截然と区別されている。公社と市の用地課長等の職員が兼任の関係にあり,市の職員として当然に公社の売買契約の内容を知ることができる立場にあることをもっ 地課の文書は,市用地課の文書とフォルダーを異にし,截然と区別されている。公社と市の用地課長等の職員が兼任の関係にあり,市の職員として当然に公社の売買契約の内容を知ることができる立場にあることをもって,売買契約書を市が取得したものと同様に利用することができるとの黙示の合意のもとに,市長と公社が共同で管理していると認定することはできない。実施機関である1審被告は,もともと公社が作成取得した売買契約書を自ら管理する権限を有するものではない。 イ仮に,公社と1審被告が各文書を共同で管理するものであるとしても,同一の文書を共同管理者であり非実施機関である公社の承認なく1審被告が単独で開示できるものではない。 ② 同ハ,ニ,ホ,チの売買契約書の非開示理由について(1審被告の主張)次のとおり非開示理由を追加する。すなわち,同ハ,ニ,ホ,チの売買契約書の住所,氏名及び売買代金額は,いずれも本件条例11条(2)の個人識別情報に該当するので開示することはできない。 (1審原告の主張)ア本件条例9条4項は,開示の請求に係る決定の通知書に非開示の理由を付記しなければならないと規定しているのであり,原処分に示されていなかった非開示理由を追加することを許せば,上記規定の趣旨は没却される。 イ非開示理由を追加することは,時機に後れた攻撃防御方法の提出に当たるから,却下を求める。 ③ 売買代金額が個人識別情報であるかについて(1審被告の主張)売買代金額は,売主にとって個人の資産と所得に関する情報で,通常他人に告知しないことは勿論,家族にさえも明らかにしない場合があるほど,プライバシーの要保護性が強い情報である。 地価公示法による土地公示価格で公示されるのは,抽出された一部の基準地に過ぎず,公示価格がそのまま売買契約代金額になるわけではない。 個人の があるほど,プライバシーの要保護性が強い情報である。 地価公示法による土地公示価格で公示されるのは,抽出された一部の基準地に過ぎず,公示価格がそのまま売買契約代金額になるわけではない。 個人の資産及び所得は,全部であろうと一部であろうと保護されるべきプライバシーに属する。 本件条例11条(2)ハは,個人識別情報といえども,「法令等の規定に基づく許可,届出等の際に実施機関が作成し,又は取得した情報で,開示することが公益上必要であると認められるもの」については開示することができると定めているところ,許可等の行政処分及び法令等の規定による届出,申請その他個人に係る行政手続の際に実施機関が作成又は取得した公文書の中には,個人の生命,身体,財産の保護等公共の安全の確保に必要な情報が記録されていることがあるが,このような手続の場合に限って開示することができることとしているものである。プライバシーの要保護性の強い個人識別情報と認められる土地の売買代金額につき,本件条例11条(2)ハの手続の場合に該当しないのに公益上の必要性を考慮して公開を認めることは,本件条例の文理に反する。 また,プライバシーに関する個人識別情報について,上記の場合に限定せずに一般的に公益の必要性を考慮して公文書の公開の是非を決定するとなると,実施機関が個々の文書についてその都度プライバシー性と公開の公益性の比較考量を行うことになり実施機関の主観により判断が区々になるおそれがあり,法的安定性を欠く。 (4) 文書8イないしホの折衝記録について(1審原告の主張)1審原告が折衝記録の開示を請求したのは,折衝経過を知るためであるから,折衝記録には,土地の売主との間の交渉経過を記録した文書(1審被告のいう狭義の折衝記録)に限定されるものではなく,折衝過程を知るについて有用な文書 の開示を請求したのは,折衝経過を知るためであるから,折衝記録には,土地の売主との間の交渉経過を記録した文書(1審被告のいう狭義の折衝記録)に限定されるものではなく,折衝過程を知るについて有用な文書を含むと解すべきである。 1審被告における現行の情報公開制度では,文書ファイルの表題でしかその文書の内容を推測する手段が与えられてないので,その文書ファイルに含まれるもの全てについて開示の対象とするしかない。 1審原告が情報公開を請求するに際して依拠することができたのは,1審被告によって市民に提供されていたファイル基準表(甲34)及び保存文書一覧表(甲35)だけであり,そこに実施機関たる1審被告の職員である用地課が所持する文書として記載されていた「折衝記録」というファイルの存在が挙げられていたので,これにより,それぞれの土地が購入された経緯を知る手掛かりが得られると判断して折衝記録の開示を請求したのである。 1審被告の「地主と市ないし公社の担当者との交渉の経過を正式に文書で記録に留めたもの」との定義は,1審原告は知る由もない。1審原告の意図は,登記簿謄本や公図などを改めて入手しようと考えていたわけではないが,「折衝記録」と題された文書ファイルに納められた文書から,土地購入の経緯について,有用な資料であれば何でも入手したいというものであった。 (1審被告の主張)① 1審原告は,折衝記録として分類されたファイルは存在するから,そのファイルに綴られた文書の開示を請求すると主張するが,折衝記録と記載されたファイルが存在するとしても,それ自体は公文書ではない。 ② 1審原告は,上記文書ファイルに納められた個々の公文書について特定した上,本件条例8条に定める手続に従って開示請求をしていないから,実施機関たる1審被告は,その開示請求に対して何ら処分を行 い。 ② 1審原告は,上記文書ファイルに納められた個々の公文書について特定した上,本件条例8条に定める手続に従って開示請求をしていないから,実施機関たる1審被告は,その開示請求に対して何ら処分を行っておらず,取消しの対象となる処分は存在しない。 ③ 1審原告が請求した折衝記録は,土地の売主との間の交渉経過を記録した文書(狭義の折衝記録)であり,折衝記録ファイルに含まれる文書全部ではない。このことは,次のことから明らかであるから,実施機関である1審被告は,狭義の折衝記録以外の折衝記録ファイル中の公文書について,条例上何らの処分を行っていないことになる。 ア 1審原告は,平成8年7月11日付け公文書開示請求書において,折衝記録の開示請求をしたところ,1審被告は,同年8月7日,不存在を理由に非開示決定をした。1審原告は,同年9月6日に不服申立をし,その理由中で「折衝記録を残さずに税の適正使用について説明責任を果たすことはできない」などと主張し,これを受けて1審被告は,同年11月7日,折衝記録は折衝担当者の折衝記録,土地建物の登記簿謄本,実測図等がファイルされている総称であること,折衝記録は市に対する要望事項や土地価格の算定の根拠,物件補償の考え方,契約後の物件収去等について相手方と折衝担当者との交渉経過を記録したものであること,土地収用法適用事業は別として,任意買収では,比較的短時間で売買契約が成立するのが殆どでそのような場合折衝記録を折衝担当者は記録しないことを述べ,折衝記録ファイル中の文書と交渉経過を記録した文書(狭義の折衝記録)とを区別し,後者は不存在であると主張した。それにもかかわらず,1審原告は,同月19日,意見書において自ら開示請求した文書は狭義の折衝記録だけでなく折衝記録ファイル中の全文書であるとの主張をせず,「相手方と市ない は不存在であると主張した。それにもかかわらず,1審原告は,同月19日,意見書において自ら開示請求した文書は狭義の折衝記録だけでなく折衝記録ファイル中の全文書であるとの主張をせず,「相手方と市ないし公社職員と交渉が一切持たれずに契約成立にこぎ着けたとは到底考えられない。」として,狭義の折衝記録の存否だけを問題にしている。市公文書開示審査会(審査会)は,平成9年4月14日付け答申書において,異議申立人が開示を請求している折衝記録とは,市が土地を買い取るに際して折衝担当者が登記簿謄本や実測図などとは別に土地の売主との間の交渉経過を記録した文書のことを指すと結論付けた。 イ 1審原告は,平成9年7月15日付けで本件訴訟を提起したが,訴状の中で審査会の上記結論について異議を述べておらず,自ら開示請求した文書が狭義の折衝記録であることを自認していたことを意味する。1審原告は,その後も一貫して狭義の折衝記録のみを問題として開示を求めてきたが,平成11年9月29日付け最終準備書面で突然折衝記録ファイル内の全ての折衝資料を公開すべきであると主張し始めた。 第3 当裁判所の判断当裁判所は,1審原告の本訴請求は,別紙文書目録記載の文書を非開示とした部分を取り消す限度で理由があるので認容すべきであるが,その余は理由がないので,棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」第三(ただし,原判決121頁8行目から122頁2行目までを除く。)の説示のうち当審の審理対象文書に関する部分のとおりであるから,これを引用する。 1 文書1が合議制機関情報であるかについて1審原告の主張するように,非開示とされたものは,土地の価格,減価率等であり,それらの数字自体が出席委員等の思想信条に直接かかわるものであるとは言い難い。 し 1が合議制機関情報であるかについて1審原告の主張するように,非開示とされたものは,土地の価格,減価率等であり,それらの数字自体が出席委員等の思想信条に直接かかわるものであるとは言い難い。 しかし,土地の価格,減価率等を根拠付ける取引事例の選択や当該土地の諸条件の評価などは,客観的・一義的に定まるものではなく,評価を行う者によって異なるものである上,売主等の関係者にとって,大きな利害関係のあるものであるところ,財産価格審議会の委員等は,これに対する率直な意見を述べる必要があるのに,数字までが公開されると,その数字に利害関係を有する者からの批判や非難に晒されるなどして,自由な意見に基づく発言を阻害されるおそれがあると認められる。 そうすると,これらの数字は,公開すれば財産価格審議会の公正又は適正な議事運営が著しく損なわれるおそれがあるもの(本件条例11条(6))に該当するというべきであり,1審原告の主張は,採用することができない。 2 文書7への法人格否認法理の適用ついて1審原告は市と公社との間には,情報公開の関係では法人格否認の法理が適用されるべきものと主張するが,両者間に,法人格否認法理の要件としての形骸論が妥当しないことは,引用した原判決の説示するとおりであるから,1審原告の主張は採用することができない。 3 文書8イないしヌの売買契約書について(1) 同ハ,ニ,ホ,チの売買契約書が公文書であるか等について① 1審被告は,同ハ,ニ,ホ,チの売買契約書は公文書でない旨主張する。 しかし,1審被告の主張を採用することができないのは引用した原判決の説示するとおりである。そして,仮に,1審被告の主張するとおり,市の債務保証につき,売買契約の写の交付を受けることが必要でないとしても,1審被告の主張するところによれば,その理由は,市が た原判決の説示するとおりである。そして,仮に,1審被告の主張するとおり,市の債務保証につき,売買契約の写の交付を受けることが必要でないとしても,1審被告の主張するところによれば,その理由は,市が,売買契約の内容の記載された書面の送付を受けることにより,公社の売買契約の内容を当然了知しているからであるというのであって,このような関係からすれば,公社の売買契約書については,市が取得したのと同様に利用することができることになっているものと評価することができるのであるから,売買契約書についても,1審被告と公社とが共同管理しているものと認めるべきものである。 したがって,1審被告の主張は,採用することができない。 ② 1審被告は,仮に共同管理であっても,公社の承認なく開示できないと主張する。 しかし,文書について,非実施機関と共同管理する場合に,その者の同意を要するとの制限はなく,引用した原判決の説示するとおり,もともと公社は市の委託を受けて市に必要な公有地の取得等をするものであり(乙.9),上記文書は,市が公社から売買契約書の交付を受ける代わりに市において取得したのと同様に利用することができるとの黙示の合意のもとに,1審被告と公社が共同で管理しているものと認められるものであることからすれば,公社は,同文書を公開するかどうかについて独自の利益を有するものとは認められないから,1審被告の主張は採用することができない。 (2) 同ハ,ニ,ホ,チの売買契約書の非開示理由について① 非開示理由の追加についてア理由付記の趣旨を没却するとの主張について本件条例9条4項は,非開示決定をする場合には,その通知書に非開示の理由を付記しなければならない旨規定している。このように非公開決定の通知に併せてその理由を通知すべきものとしているのは,非公開の理由 本件条例9条4項は,非開示決定をする場合には,その通知書に非開示の理由を付記しなければならない旨規定している。このように非公開決定の通知に併せてその理由を通知すべきものとしているのは,非公開の理由の有無について実施機関の判断の慎重と公正妥当とを担保してそのし意を抑制するとともに,非公開の理由を公開請求者に知らせることによって,その不服申立てに便宜を与えることを目的としているものと解され,そのような目的は,非公開の理由を具体的に記載して通知させること自体をもってひとまず実現されるところ,本件条例の規定をみても,上記理由通知の定めが,上記の趣旨を超えて,一たび通知書に理由を付記した以上,実施機関が当該理由以外の理由を非公開決定処分の取消訴訟において主張することを許さないものとする趣旨をも含むと解すべき根拠はないとみるのが相当である(最高裁平成11年11月19日第2小法廷判決・民集53巻8号1862頁参照)。その上,本件においては,1審原告は,同じく売買契約書である文書8イ,口,へ,ト,リ,ヌにつき,同時に開示請求をしており,これについての通知書に理由が付記されているので,仮に公文書として存在が認められるのであれば,同じ理由から非開示決定をすることが予想されるものであって,当審において,同様の非開示理由を追加しても,理由付記を規定した上記条項の趣旨を没却するものとまではいえない。 イ時機に後れた攻撃防御方法について原審において,既に文書8イ,口,へ,ト,リ,ヌの売買契約書について,非開示理由の審理判断がされており,文書8ハ,ニ,ホ,チの売買契約書の住所,氏名及び売買代金額について非開示理由を追加しても,特段審理を遅延させるものとはいえない。 したがって,1審原告の主張は,採用することができない。 ② 非開示が適法であるか否かについて 約書の住所,氏名及び売買代金額について非開示理由を追加しても,特段審理を遅延させるものとはいえない。 したがって,1審原告の主張は,採用することができない。 ② 非開示が適法であるか否かについて本件条例11条(2)の個人識別情報該当性につき,売主の住所及び氏名については肯定すべきであり,売買代金額については否定すべきものである。その理由は,原判決101頁末行から106頁2行目までのとおり(ただし,「文書イないしヌ」を「文書ハ,ニ,ホ,チ」と読み替える。)であるから、これを引用する。 したがって,本件非開示決定のうち,文書8ハ,ニ,ホ,チの売買契約書については,売主の住所及び氏名を非開示とした部分は適法であり,これを除く部分を非開示とした部分は違法である。 (3) 売買代金額が個人識別情報であるかについて1審被告は,売買代金額が個人識別情報に該当する旨主張する。 しかし,市又は公社との売買契約における売買代金額は,地価公示価格を基準とする正常な価格の範囲で決まるものであり,また,公拡法による協議に基づく売渡しの場合に譲渡所得に特別控除が認められるのは,その事業の公益性に着目したものと解されるから,公的性質を帯びることを否定することはできず,その他,引用した原判決の説示するとおり,売買代金額の公開については,本件条例の目的が,個人情報としての要保護性を上回るものというべきである。そして,このように解することが本件条例の文理に反するものということもできない。したがって,1審被告の主張はいずれも採用することができない。 4 文書8イないしホの折衝記録について(1) 請求に係る「折衝記録」の意味1審原告は,1審原告が折衝記録の開示を請求したのは,折衝経過を知るためであるから,折衝記録には,1審被告のいう狭義の折衝記録に限定されるもので 衝記録について(1) 請求に係る「折衝記録」の意味1審原告は,1審原告が折衝記録の開示を請求したのは,折衝経過を知るためであるから,折衝記録には,1審被告のいう狭義の折衝記録に限定されるものではなく,折衝過程を知るについて有用な文書も含むと解すべきである旨,及び1審被告における現行の情報公開制度では,文書ファイルの表題でしかその文書の内容を推測する手段が与えられていないので,その文書ファイルに含まれるもの全てについて開示の対象とするしかない旨主張する。 本件条例8条は,文書の開示を請求しようとするものが実施機関に対して提出する請求書には,「公文書の名称,その他の請求に係る公文書を特定するために必要な事項」を記載すべきものとしているので,開示請求者は,開示を請求する個々の文書を特定して記載することが必要であり,ある「フォルダー内の文書」というように包括的に記載して請求することは許されないが,個々の文書の特定の方法は,必ずしも文書の正式な名称を記載する必要はなく,名称が分からなくても,その文書を特定することができる事項を記載すれば足りるものと解される。 これを本件についてみると,1審原告が「折衝記録」と記載して開示を請求した文書は,本件条例8条の前記の趣旨に照らせば,「折衝記録」という名称が付された文書か,そのような名称の公文書がない場合には,その内容が土地の売主との間の交渉経過を記録した文書(狭義の折衝記録)を意味するものと解されるのであり,「折衝記録」と題したフォルダー(それが存在することについては,争いがない。)に納められたすべての文書の開示を請求した趣旨のものではないと解するのが相当である(ちなみに,仮に控訴人の主張するように,前記フォルダー内のすべての文書の開示を請求した趣旨のものと解すべきものとすれば,控訴人の請求は, 書の開示を請求した趣旨のものではないと解するのが相当である(ちなみに,仮に控訴人の主張するように,前記フォルダー内のすべての文書の開示を請求した趣旨のものと解すべきものとすれば,控訴人の請求は,文書の特定を欠くもので,不適法な請求というほかない。)。 以上のことは,次に説示するように,1審被告の1審原告との従前の応接等からしても明らかというべきである。 ① 証拠(乙3)及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。 ア 1審原告は,平成8年7月11日付け公文書開示請求書において,「折衝記録」の開示請求をしたところ,1審被告は,同年8月7日,不存在を理由に非開示決定をした。 イ 1審原告は,同年9月6日に不服申立をし,その理由中でファイル基準表には折衝記録という表題のファイルが数多く存在し」,「折衝記録を残さずに税の適正使用について説明責任を果たすことはできないものばかりである」などと主張し,これに対し,1審被告は,同年11月7日,「折衝記録ファイルは,折衝担当者の折衝記録,土地や建物の登記簿謄本,実測図等がファイルされている『総称』である。」,「『折衝記録』は,市に対する要望事項や土地価格の算定の根拠,物件補償の考え方,契約後の物件収去等について相手方と折衝担当者との交渉経過を記録したものである。」,「土地所有者から市に土地の買取りを求めてくる任意買収では比較的短時間で売買契約が成立することがほとんどで,このような場合『折衝記録』を折衝担当者は記録しない。」と述べた。 ウ 1審原告は,同月19目付け意見書において,「多額の税金の支出につながる契約である以上,市の職員も公社の職員もどんな出来事であれ,すべて記録にとどめ保管したはずである。」,「たとえ・・・土地所有者からの買い取り請求に基づく任意買収でスムーズに進んだものであったとしても 契約である以上,市の職員も公社の職員もどんな出来事であれ,すべて記録にとどめ保管したはずである。」,「たとえ・・・土地所有者からの買い取り請求に基づく任意買収でスムーズに進んだものであったとしても,相手方と市乃至公社職員と交渉が一切もたれず契約成立にこぎ着けたなどということは到底考えられない。」として,狭義の折衝記録の存否だけを問題にしていた。 エ審査会は,平成9年4月14日付け答申書において,「異議申立人(1審原告)が開示を請求している『折衝記録』とは,本市が土地を買い取るに際して,折衝担当者が登記簿謄本や実測図などとは別に土地の売主との間の交渉経過を記録した文書のことを指すと考えられるが,任意買収の場合には,比較的短期間のうちに売買契約が締結されるため,折衝担当者がこの種の『折衝記録』を作成することはなく,そもそも文書として存在していないことがうかがわれる」とした。 オ 1審原告は,平成9年7月15日,本件訴えを提起したところ,訴状において,土地取得折衝記録が『不存在』であるとは到底信じられない。」,「相手方と市乃至公社職員との交渉が一切もたれず契約成立にこぎ着けたなどということは到底常識では考えられない。」と主張して,「折衝記録」の開示を求め,その後も一貫して「折衝記録」のみの開示を求めてきたが,平成11年9月29日付け最終準備書面で,「仮に1審被告が言うように狭義の『折衝記録』が存在しないとしても,売主との折衝の経過や問題点などをその都度公社(市)側職員が整理した文書を含む『折衝記録』のホルダー内に存するすべての折衝資料を公開すべきである。」と主張するに至った。 ② 以上の事実によれば,武蔵野市におけるファイル基準表及び保存文書一覧表に「折衝記録」という表題のファイルが数多く存在し,1審原告の開示請求書には「折衝記録」としか記 る。」と主張するに至った。 ② 以上の事実によれば,武蔵野市におけるファイル基準表及び保存文書一覧表に「折衝記録」という表題のファイルが数多く存在し,1審原告の開示請求書には「折衝記録」としか記載されていないのであるが,その後の1審原告の主張及び1審被告の意見等の応接経緯からすると,1審原告が開示請求書に「折衝記録」と記載して開示を求めた文書は,丁折衝記録」と題するファイルの中の全文書と解することはできず,土地の売主との間の交渉経過を記録した文書すなわち1審被告のいう狭義の折衝記録であると解するのが相当であり,1審被告が「不存在」を理由に非開示決定をした文書も,狭義の折衝記録についてであると解されるのである。 (2) 狭義の折衝記録は存在するか。 本件全証拠によっても,武蔵野市には,前記のとおり1審原告が開示請求をしたものと認められる狭義の折衝記録が存在するものとは認められない(なお,1審原告が当審において特定した文書も,狭義の折衝記録に当たるものとは認められない。)。 (3) 以上のとおりであるから,1審原告の前記主張は,採用することができない。ちなみに,1審原告としては,当審において特定した文書が本件開示請求の対象に含まれていないものと判断された場合でも,後の新たにその開示を請求することが可能である。 よって,1審被告の控訴に基づき,原判決を上記のとおり変更することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第11民事部裁判長裁判官瀬戸正義裁判官遠山廣直裁判官河野泰義別紙文書目録公文書の件名非開示決定を取り消す部分 8 下記土地の取得に関する売買契約書イ武蔵野市が武蔵野市土地開発公社経由で平成6年3月31日に買収したα2546番317他の土地529.00平方メートル売買代金額ロ 開示決定を取り消す部分 8 下記土地の取得に関する売買契約書イ武蔵野市が武蔵野市土地開発公社経由で平成6年3月31日に買収したα2546番317他の土地529.00平方メートル売買代金額ロ武蔵野市が平成元年12月22月に買収したβ50番3の土地683.63平方メートル売買代金額ハ武蔵野市土地開発行者が平成5年12月10日に買収したγ2103番の土地300.47平方メートル売主の住所及び氏名を除く部分ニ武蔵野市土地開発公社が平成4年12月28日に買収したδ2808番1の土地2409.18平方メートル売主の住所及び氏名を除く部分ホ武蔵野市土地開発公社が平成4年3月13日に買収したε3109番3他の土地3609.09平方メートル売主の住所及び氏名を除く部分へ武蔵野市が市道277号線用地ならびに関前公園用地として武蔵野市土地開発公社経由でζ3―15―11のA氏より買収した土地売買代金額ト武蔵野市が平成元年度に買収したη473番4他の土地969平方メートル売買代金額チ武蔵野市土地開発公社が昭和60年7月29日に買収したθ949番1の土地762.95平方メートル全部リ武蔵野市が市道288号線用地として野村不動産ならびにι2―28―4のB氏より寄付を受けた土地ならびに武蔵野市土地開発公社経由で買収した土地。(ただし、寄付を受けた土地については売買契約書は該当しない) 売買代金額ヌ武蔵野市が武蔵野市土地開発公社経由で平成4年3月31日に買収したκ782番2他の土地1001.37平方メートル売買代金額 金額
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