【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事 実 控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴銀行は控訴人に対し、金八十万円及びこ れに
主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴銀行は控訴人に対し、金八十万円及びこれに対する昭和二十四年五月二十日から支払済みに至るまで、年六分の割合による金員を支払うべし。訴訟費用は第一・二審とも、被控訴銀行の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。 当事者双方の事実上の主張は、控訴代理人において、一、 被控訴銀行A支店は、その振出にかゝる額面金二十万円の線引小切手五通のうち三通(乙第二号証の一から三)の小切手金六十万円を、訴外BことCに支払い、そのうち一通(乙第二号証の四)の小切手金二十万円を、訴外DことEに支払つたが、右訴外人等とは取引関係を有しなかつたものである。 二、 控訴人は右訴外人等のために前記小切手四通を詐取せられたものであるから、訴外DことEに対しては昭和二十三年十二月七日午前九時に、訴外BことCに対しては同日午前十一時半に、それぞれ詐欺による本件小切手の交付を取消す旨の意思表示をした。 三、 原判決の事実中、被告の抗弁に対する原告の再抗弁として摘示せられている部分、すなわち原判決の三枚目表の第三行目「かりに許されるとしても」以下、第七行目の「損害金を支払うべき義務がある」までの部分を撤回すると述べ、被控訴代理人において、一、 被控訴銀行A支店が昭和二十三年十二月七日、控訴人が前記一において主張するように、訴外BことC、並びに訴外DことEに対し、控訴人主張の線引小切手四通の小切手金八十万円を支払つたこと、当時右訴外人等との間に銀行取引を有しなかつたことは認めるが、控訴人において右訴外人等に対する小切手交付行為を取消したことは知らない。 二、 被控訴銀行の抗弁としては、 手金八十万円を支払つたこと、当時右訴外人等との間に銀行取引を有しなかつたことは認めるが、控訴人において右訴外人等に対する小切手交付行為を取消したことは知らない。 二、 被控訴銀行の抗弁としては、本件小切手(乙第二号証の一から四)の支払について、控訴人との間にその小切手の持参人に対し、小切手金の支払いをする旨の特約があつたので、被控訴銀行A支店は、その特約にもとずいて、前記訴外人等に小切手金の支払いをしたものであるから、被控訴銀行に損害賠償の義務はないという一点を主張するだけであると述べた外は、原判決の事実摘示と同一であるから、ここにその摘示を引用する。 証拠として控訴代理人は、原審証人F(一・二回)、G、当審証人H、原審並びに当審証人Iの各証言、原審並びに当審における控訴本人訊問の結果を援用。乙号証に対しては、いずれもその成立を認めると述べ、被控訴代理人は乙第一号証の一から三、第二号証の一から四、第三号証を提出し、原審証人G、I、J、当審証人K、原審並びに当審証人F(原審は一・二回)の各証言を援用した。 理由 一 (1)控訴人が昭和二十三年十二月四日、被控訴銀行L町支店へ、金百五十万円を払込み、同支店から「振出地」埼玉県L町「支払地」東京都中央区「支払人」被控訴銀行A支店「金額」(イ)金百万円(ロ)金三十万円(八)金二十万円とせる持参人払式の小切手各一通の交付を受けたこと。 (2) 控訴人が同月六日前記小切手三通を、被控訴銀行A支店に呈示して、内金五十万円については現金で支払いを受けたが、残金百万円については、右銀行においてその支払に代えて「金額」二十万円「振出地」「支払地」共に東京都中央区「支払人」被控訴銀行A支店とせる持参人払式小切手五通に、それぞれの表面に二条の平行線を引き、その線内に「銀行」と 右銀行においてその支払に代えて「金額」二十万円「振出地」「支払地」共に東京都中央区「支払人」被控訴銀行A支店とせる持参人払式小切手五通に、それぞれの表面に二条の平行線を引き、その線内に「銀行」と記載した一般線引小切手を振出し、これを控訴人に交付したこと(3)被控訴銀行A支店が同月七日、前記小切手五通のうち三通(乙第二号証の一、二、三の小切手)の小切手を呈示した訴外BことCに対し、その小切手金合計金六十万円を支払い、更にそのうち一通(乙第二号証の四の小切手)の小切手を呈示した訴外DことEに対し、その小切手金二十万円を支払つたが、右訴外人等被控訴銀行A支店との間には銀行取引がなかつたこと。 以上の事実はいずれも当事者間に争いがない。 二ところで小切手が一般線引小切手として振出された以上、その支払人は銀行に対してか、それとも支払人の取引先に対してでなけば、小切手金の支払ができないことは、小切手法第三八条第一項の規定に徴し明瞭であるが、被控訴銀行はこの点につき、控訴人との間に本件小切手については、その所持人に支払われたい旨の申入があり、被控訴銀行A支店もこれを承諾し、その特約にもとずいてその支払をしたものであると抗弁するので、この点について判断するに、成立に争いのない乙第一号証の一から三、第二号証の一から四、第三号証と、原審証人G、J、I、当審証人K、原審並びに当審証人F(原審は一・二回)の各証言を綜合すれば、控訴人は前記のように昭和二十三年十二月四日被控訴銀行L町支店から、金額(イ)金百万円、(ロ)金三十万円、(ハ)金二十万円の持参人払式の小切手各一通の交付を受け、同月六日右小切手を被控訴銀行A支店に呈示し、内金五十万円については、現金で支払いを受けたが、残金百万円については、支払準備金が不足したため、同支店の支店長代理Fは、同支店を 手各一通の交付を受け、同月六日右小切手を被控訴銀行A支店に呈示し、内金五十万円については、現金で支払いを受けたが、残金百万円については、支払準備金が不足したため、同支店の支店長代理Fは、同支店を支払人とせる金額二十万円の持参人払式小切手五通を、一般線引小切手にして振出し、これを控訴人に交付しようとしたこと。そして右小切手を一般線引としたのは控訴人の要求に基いたものでなく、Fが自発的にしたものであること。 然るに控訴人は現金でないと繊維の取引ができないから、即時現金で支払われたいと強硬な態度で迫り、小切手の受領を拒否したので、右Fは同僚の支店長代理Gを通じ、被控訴銀行東京支店に現金の逓送方を手配したが、午後二時過ぎになつても現金が到着しないため、控訴人は待ちきれなくなつたものか、右Fに対し前記小切手五通(乙第二号証の一から四を含む)を受取ることにするが、取引の都合上どうしても現金を必要とするものであるから、後刻この小切手を持参した者に対しては、必ず現金を支払つて貰いたいと要求し、右Fもこれを承諾したこと。而して右一般線引小切手に代えて、新たな小切手を振出交付することもなく、かゝる特約のもとに前記一般線引小切手が交付せられた事実。そして翌七日午前中右小切手のうち三通(乙第二号証の一、二、三)を訴外BことCから、又同日午後右小切手のうち一通(乙第二号証の四)を訴外DことEから、その支払人となつている被控訴銀行A支店にそれぞれ呈示せられた際も、支店長代理のFは右訴外人等と面接し、同人等が控訴人との間の前記特約にもとずいて、小切手金の支払を請求する者なることを確認した上、小切手金の支払をした事実を認めることができ、原審証人I、当審証人Hの各証言及び原審並びに当審における控訴本人の供述中、右認定に副わない部分は採用し難く、その他の証拠によるも なることを確認した上、小切手金の支払をした事実を認めることができ、原審証人I、当審証人Hの各証言及び原審並びに当審における控訴本人の供述中、右認定に副わない部分は採用し難く、その他の証拠によるも右の認定を動かし得ない。 惟うに小切手法第三十八条第一項によれば、一般線引小切手は支払人において、銀行に対し又は支払人の取引先に対してのみ支払を為すことを得、それ以外の者に対して支払を為すことを得ないものであるが、これに違反して支払が為されたときと雖も、支払そのものは無効となることなく、支払人は損害賠償の責任を負担す<要旨>るものと解すべきである。しかしながら、銀行が持参人払式にて自己宛小切手を一般線引と為して受取人に交</要旨>付し、受取人が尚これを所持する場合、受取人との合意によつて、何人たりとも該小切手を持参した者に対して、その支払を為すべき旨の特約が成立したときは、該合意によつて、その当事者間においては、一般線引の効力は排除され、従つて支払人において銀行又はその取引先に非ざるところの、小切手の持参人に対して、その支払を為したときと雖も、右特約の当事者たりし受取人は、支払人に対し右小切手法の法条の違反を理由として、損害賠償の請求を為し得ざるものというべきである。 蓋し小切手は支払の具として授受される以上、その支払の安全を確保するために、線引の抹消を許さず、これを為しても、為さざるものとみなされるが、当事者の合意を以て、当事者間のみにおいて、線引の効力を排除することは、何等これを禁ずべき必要は見ないからである。而して前示認定の如く、控訴人は本件小切手の振出人にして、且つ支払人たる被控訴銀行との特約に基き、線引小切手の効力を排除した以上、被控訴銀行A支店が、銀行又は被控訴銀行の取引先でないところの、その小切手の所持人に、小切手金を支払つた 切手の振出人にして、且つ支払人たる被控訴銀行との特約に基き、線引小切手の効力を排除した以上、被控訴銀行A支店が、銀行又は被控訴銀行の取引先でないところの、その小切手の所持人に、小切手金を支払つたことによつて、控訴人が損害を蒙つたとしても、控訴人は被控訴銀行に対し、その損害の賠償を求め得ないものといわなければならない。 従つて控訴人の本訴請求は既にこの点において失当たるを免れないから、その請求を排斥した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がない。 よつて民事訴訟法第三八四条・第九五条・第八九条を適用して、主文の通り判決する。 (裁判長判事松田二郎判事河合清六判事岡崎隆)
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