判決平成13年11月15日神戸地方裁判所平成13年(わ)第393号道路交通法違反被告事件 主文 被告人を罰金7万円に処する。 その罰金を完納することができないときは、金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 訴訟費用中,証人A及び同Bに支給した分は被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,平成11年7月1日午後3時19分ころ,兵庫県三田市Ca丁目b番地付近道路において,法定の最高速度(60キロメートル毎時)を38キロメートル超える98キロメートル毎時の速度で普通乗用自動車を運転して進行したものである。 (証拠の標目)-かっこ内は検察官請求証拠甲乙の番号省略(事実認定の補足説明) 1 弁護人は,被告人が本件当時走行していた速度は98キロメートル毎時ではなく,80キロメートル毎時程度であったとして,本件速度測定の正確性を争っているので,当裁判所が前示のとおり認定した理由について,以下補足して説明する。 2 前掲各証拠によれば,以下の事実が間違いのないものとして認められる。 ① 兵庫県三田警察署の警察官Bらは,平成11年7月1日午後1時29分ころから,兵庫県三田市Ca丁目b番地付近道路において,日本無線JMA-230形レーダスピードメーター(以下「本件速度測定装置」という。)を使用して,北方から南方に向け進行してくる自動車について,速度違反の取締りを行っていたこと② 本件速度測定装置は,ドップラー効果を応用して,送信した電波ビーム内を走行する自動車に反射した電波を受信し,その周波数の変化から自動車の速度を測定する装置であること③ 本件速度測定装置については,本件前の平成11年6月18日と本件後 用して,送信した電波ビーム内を走行する自動車に反射した電波を受信し,その周波数の変化から自動車の速度を測定する装置であること③ 本件速度測定装置については,本件前の平成11年6月18日と本件後の同年12月6日にD株式会社及び株式会社Eの担当者により定期点検が行われ,精度が保持され正常に作動することが確認されており,また,本件当日の速度違反の取締りの前後においても,マニュアルどおり,道路に対して電波の投射角度が27度になるように設置された上,校正テスト及び音叉テストを行い正常に作動することが確認されていること④ 被告人は,本件当日の午後3時19分ころ,普通乗用自動車を運転して,本件現場付近道路を北方から南方に向け進行し,本件速度測定装置による速度測定の結果,98キロメートル毎時の速度であったとして検挙されたこと以上の事実が認められる。 3 上記認定の事実によれば,何らかの誤測定があったとの合理的な疑いを容れる余地のない限り,被告人が本件速度違反の罪を犯したことは間違いがないというべきであるから,そのような誤測定の可能性について,次に検討する。 (1)他車両の速度測定の可能性について本件速度測定装置は,発信した電波が走行する自動車のうちどれに反射したものを受信したのか識別する機能を有するものではないから,複数の自動車が前後や左右等接近して走行している場合には,他車両の速度を測定する可能性のあることを否定できない。 しかしながら,証人B(本件速度違反取締りの速度測定係)の当公判廷における供述(以下「B証言」という。)は,並進車両がある場合には測定しないし,並進に近い車両がある場合にも測定をしない場合が多く,また,速度取締用通報記録紙(甲5の原本)は,違反車両を現認した直後に,その車種や塗色,登録番号,走行状況,走行車線 がある場合には測定しないし,並進に近い車両がある場合にも測定をしない場合が多く,また,速度取締用通報記録紙(甲5の原本)は,違反車両を現認した直後に,その車種や塗色,登録番号,走行状況,走行車線,測定速度等について現認したところをそのまま記載し,後続車両がある場合には,走行状況欄や備考欄にその旨記載をしたものである旨いうところ,速度取締用通報記録紙謄本(甲5)には,番号6,16などに違反車両の現認状況として,違反車両と後続車両との距離や後続車両の台数等の記載があるが,被告人車両の現認状況についての記載である番号15には,走行状況欄に「1台のみ」,走行車線欄に「2」と書かれているだけであって,後続車両の存在を窺わせるような記載は全くなされていないのであるから,被告人車両の速度が測定された際,被告人車両は第2車線を単独で走行していて,近くに他車両がなかったことは間違いがないものと認められる。 なお,被告人の当公判廷における供述(以下「被告人の公判供述」という。)は,被告人車両の前に何台か車両が走行していたというのであるが,自車と先行車両との距離や位置関係などの具体的な状況についての説明はなく,また,どの地点で前方に車両を認めたかについても曖昧であって,前記のような速度取締用通報記録紙謄本(甲5)の記載に比して信用性が乏しい上,被告人は普段から車間距離を長めにとっており,本件時もそのように心がけていたというのであって,比較的見通しのいい本件道路付近においては,時速98キロメートルで走行していればもちろん,仮に被告人が主張するとおり時速80キロメートル程度で走行していたとしても,相当長い車間距離を保っていたと考えられるのであるから,被告人車両の前方において,本件速度測定の際に被告人車両と間違って速度を測定されるような近接した距離に他の メートル程度で走行していたとしても,相当長い車間距離を保っていたと考えられるのであるから,被告人車両の前方において,本件速度測定の際に被告人車両と間違って速度を測定されるような近接した距離に他の車両があったとの疑いを容れる余地は存しない。 以上のとおりであるから,本件速度測定装置が被告人車両以外の他車両の速度を測定した可能性はなかった(多重反射によるものについては次項で述べる。)と認められる。 (2)多重反射によるプラス誤差発生等の可能性について本件のような速度測定装置の送受信装置が,走行する自動車に反射した電波を受信するだけでなく,対向車両や道路際の建物等と走行する自動車との間で多重に反射した電波をも受信すると,ドップラー効果が複数回作用することになって,プラス誤差が発生する可能性があることや,道路際の建物等に反射した後対向車両に反射した電波を受信して,対向車両の速度を測定してしまう可能性のあることも原理的には否定できない。 しかし,本件当日に速度違反の取締りが行われた場所では,対向車線は本件道路と並行して走っているF電鉄の線路によって隔てられている(なお,電車の走行中は速度測定はなされていない。)のであるから,対向車両と被告人車両との間に多重反射が生じてプラス誤差が発生したり,多重反射により対向車両の速度を測定したりする可能性があったとは考えられない。 また,本件速度測定装置の送受信装置の近くに看板があったことから,これと被告人車両との間に多重反射を生じる可能性も一応は考慮に入れるべきであるが,反射角度や距離の2乗に反比例して衰退するという電波の性質をも考え併せると,この看板と被告人車両との間に多重反射が生じてプラス誤差が発生した可能性も実際にはなかったと認めるのが相当である。 以上のとおり,多重反射に 反比例して衰退するという電波の性質をも考え併せると,この看板と被告人車両との間に多重反射が生じてプラス誤差が発生した可能性も実際にはなかったと認めるのが相当である。 以上のとおり,多重反射によるプラス誤差発生等の可能性もなかったと認められる。 (3)コサインエラーによるプラス誤差発生の可能性について本件速度測定装置は,道路に対して電波の投射角度が27度になるように設置されていて,電波のビーム幅を考慮し,コサイン23度で補正して速度を算出するものであるが,被告人車両が左側に斜行するなどして,電波の投射角度が23度よりも小さくなってしまった場合には,プラス誤差が生じる可能性があるけれども,本件速度違反の取締りが行われた場所は直線道路であり,また被告人車両が車線変更するなどのため左側に斜行したような形跡は窺えないから,コサインエラーによるプラス誤差発生の可能性もないと考えられる。 (4)その他の誤測定の可能性について前述したように,本件速度測定装置は,ドップラー効果を応用して車両の速度を測定する精密機器であるから,当該装置がマニュアルどおりに設置,操作され,対象物を的確に捉えていたとしても,何らかの要因によって誤測定をする可能性もないとはいえず,特に,本件速度違反取締りが行われた道路には並行してF電鉄の線路が敷設されており,高圧電線が通っているため,それによる影響の有無について考えるべきであるが,捜査復命書(甲19)によれば,上記高圧電線は,被測定車両に向けて照射された電波の伝播を阻害する位置にはなく,速度測定に影響を及ぼさないというのであるから,本件速度測定装置が上記高圧電線等の影響により,被告人車両の速度を誤測定したとの疑いを容れるには至らない。 なお,被告人車両の速度測定時に,F電鉄の電車が走行していた場合には, いうのであるから,本件速度測定装置が上記高圧電線等の影響により,被告人車両の速度を誤測定したとの疑いを容れるには至らない。 なお,被告人車両の速度測定時に,F電鉄の電車が走行していた場合には,前記の多重反射その他誤測定の可能性を検討する余地が出てくるが,B証言によれば,電車走行時には測定しない取り扱いになっており,実際,被告人車両の速度測定時に電車が走行していたことを窺わせる証跡は存しないのであるから,F電鉄の電車走行による被告人車両の速度誤測定の可能性もなかったものと認められる。 (5)これまでみてきたところによれば,被告人車両の本件速度測定に際し,何らかの誤測定があったとの合理的な疑いを容れる余地は存しない。 4 なお,被告人の公判供述及び検察官調書(乙1)によれば,被告人は,本件速度違反取締りが行われた場所付近でよく取締りが行われているのを知っており,20キロメートル毎時以上超過の速度で走行している場合には検挙されることが大体分っていたので,それに引っかからないように,本件当時スピードが出過ぎていないかスピードメーターをちらちら見ながら走行していて,そのメーターの針が時速80キロメートル付近を指していたことを確認しているというのである。 しかしながら,被告人が,被告人車両の速度が80キロメートル毎時くらいであったことを確認していたのであれば,検挙時において何らかの異議を述べて然るべきであると思われるのに,被告人は,何ら異議を述べず,98キロメートル毎時の速度で走行したことを認める供述書に署名するなどしているのである。この点に関して,被告人は,検挙時は動揺して異議を述べることができなかったというのであるが,測定値よりも約20キロメートル毎時も低い速度を確認し,それに自信を持っていたのであれば,たとえ動揺があったとしても当然何ら 被告人は,検挙時は動揺して異議を述べることができなかったというのであるが,測定値よりも約20キロメートル毎時も低い速度を確認し,それに自信を持っていたのであれば,たとえ動揺があったとしても当然何らかの異議を述べているはずであるし,被告人は,本件の6日前の通行禁止違反を含め,これまで何度か道路交通法違反で検挙された経験があり,その手続や処分については熟知していたであろうと考えられるから,動揺していたために異議を申立てることができなかったというのは,そのままには納得し難いところである。 また,被告人が本件速度違反取締りが行われた場所付近でよく取締りが行われていることを知っており,20キロメートル毎時以上超過している場合によく検挙されることを知っていて,引っかからないようにしていたといいながら,検挙される可能性のある80キロメートル毎時くらいの速度で走行していたというのも,にわかに理解できないところである。 被告人の上記の供述から,本件速度測定に何らかの誤測定があったとの疑いを容れるには至らない。 5 以上のとおりであるから,被告人が,判示のとおり,本件速度違反の罪を犯したことは間違いがないと認めることができる。 (法令の適用)被告人の判示所為は道路交通法118条1項2号,22条1項,同法施行令11条に該当するところ,所定刑中罰金刑を選択し,その所定金額の範囲内で,被告人を罰金7万円に処し,その罰金を完納することができないときは,刑法18条により金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置し,訴訟費用のうち証人A及び同Bに支給した分は,刑事訴訟法181条1項本文によりこれを被告人に負担させることとする。 (量刑の事情)本件は,被告人が,普通乗用自動車を運転中,法定速度に違反する速度で進行したという事案であるが,一般 た分は,刑事訴訟法181条1項本文によりこれを被告人に負担させることとする。 (量刑の事情)本件は,被告人が,普通乗用自動車を運転中,法定速度に違反する速度で進行したという事案であるが,一般道路において,何ら緊急性がないにもかかわらず,法定速度を約40キロメートル毎時近くも超過して運転した行為の危険性は低くないこと,被告人は,本件までに道路交通法違反罪による2度の罰金前科のほか,平成7年以降本件までに6度の交通違反歴及び2度の運転免許停止処分歴を有していて,交通法規に対する規範意識が低いといわざるを得ないこと(なお,被告人は,本件後にも酒気帯び運転の罪を犯し罰金刑に処せられている。)などからすると,被告人の刑事責任を決して軽視することはできない。 しかしながら,本件速度違反の程度は低くないとはいえ,40キロメートル毎時未満にとどまっていること,被告人にはこれまで禁錮以上の刑に処せられた前科はないことなどの,被告人のために酌むべき事情もある。 (検察官の科刑意見罰金7万円)よって,主文のとおり判決する。 平成13年11月15日神戸地方裁判所第12刑事係甲裁判官森岡安廣
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