主文 被告人を懲役6年6月に処する。 未決勾留日数中330日をその刑に算入する。 理由 【罪となるべき事実】被告人は、金品を強奪する目的で、A、B及びCと共謀の上、Dとは住居侵入、窃盗の限度で共謀を遂げ、令和5年4月29日午前6時頃から同日午前6時32分頃までの間に、奈良県五條市(住所省略)E方に、無施錠の玄関から侵入し、その頃、同所において、同人(当時69歳)に対し、その両手、両足等をそれぞれ布製粘着テープで緊縛するなどの暴行を加えるとともに、「おとなしくしろ。」「殺すぞ。」「金庫あるやろ。」「2億あるやろ。」などと言って脅迫し、その反抗を抑圧した上、同人所有の現金4万円等在中の財布1個等2点(時価合計約11万円相当)を奪い、その際、前記暴行により、同人に全治約3週間を要する左顔面打撲症の傷害を負わせたものである。 【事実認定の補足説明】第1 争点本件の争点は、被告人と共犯者の一人であるCとの間に判示記載の犯行(以下「本件犯行」という。)について共謀が認められるかである。当裁判所は被告人とCの共謀が認められると判断し、判示の事実を認定したので、以下、補足説明する。 第2 判断 1 Aは、本件犯行前に、岐阜県内においてC、被告人、A及びBとで顔合わせを行った上で、本件犯行で使用するために盗難可能な車両を探した旨供述し、Dは、被告人がCから本件犯行の運転手役及び見張り役(共犯者らの監視役)を依頼された旨を言っていたと供述し、Fは、本件犯行後、F、C、被告人の3名が集まって、本件犯行に使用した車両(以下「犯行使用車両」という。) の拭き掃除をし、同車内のごみを処分した旨供述している。 2 A、D及びFは、本件犯行以前に互いに面識がないか、顔見知り程度の関係であ 本件犯行に使用した車両(以下「犯行使用車両」という。) の拭き掃除をし、同車内のごみを処分した旨供述している。 2 A、D及びFは、本件犯行以前に互いに面識がないか、顔見知り程度の関係であり、被告人との関係においても同様である。上記3名が供述する本件犯行及びその前後の状況並びに共犯者らの関与状況等については、同人ら全員と交友関係を有するCの計画や指示等がなければ、およそ成り立ち得ないものと認められる。そして、被告人とCとの関係性に鑑みれば、被告人がCと関係なく本件犯行に関与したとは想定し難い。加えて、被告人の関与状況等について、A、D及びFがあえて口裏合わせを行ってまで被告人の本件犯行への関与の程度を高めさせるために虚偽の供述を行う理由も何ら見当たらない。 3⑴ また、Aについては、既に本件犯行に関して自身の刑が確定したことで虚偽供述の動機は乏しい上に、その供述内容等に照らしても、被告人に対しては殊更不利益な供述を行っているものでもなく、自身の経験した事実をありのままに説明しているものと認められる。 ⑵ Dについては、本件犯行に関する自身の裁判はなお進行中ではあるものの、同人の供述する上記裁判の進行状況等も踏まえると、虚偽供述の動機が大きいとまでは認められない。また、その供述内容に特段不自然、不合理な点はなく、殊更に被告人にとって不利益な内容を含んでいるとも認められない。 ⑶ Fについては、そもそも本件犯行の共犯者ですらなく、被告人との個人的関係においても虚偽供述の動機を形成するような事情は何ら見当たらない。 捜査初期段階において、被告人の関与状況について記載された供述調書が作成されていない点についても、Fの供述する当時の聴取状況等に照らせば、不自然なものとまではいえない。 4 なお、弁護人は、上記3名の供述内容の変遷や不自 告人の関与状況について記載された供述調書が作成されていない点についても、Fの供述する当時の聴取状況等に照らせば、不自然なものとまではいえない。 4 なお、弁護人は、上記3名の供述内容の変遷や不自然性・不合理性に関して様々な主張を行っているものの、いずれも供述の核心以外の部分や些細な点を指摘するものにとどまるというべきである。上記3名の供述内容は、本件犯行及びその前後の状況や、被告人やCを含む関係者の言動等の中心的内容につい ては、概ね一貫したものであって、かつ互いによく整合するものと認められる。 よって、これらの点に関する弁護人の主張内容はいずれも採用できない。 5 上記検討によれば、A、D及びFの供述内容は、いずれも信用できる。 6 被告人供述について⑴ これに対して、被告人は、①令和5年4月27日の夜、不審な車両に乗車した見知らぬ3人に声を掛けられ、同車両内で刃物を突き付けられるなどして借金の取り立てに行くための運転手を依頼され、恐怖心から引き受けた、②翌日、前日の男らのうちの一人に連れていかれた場所に、犯行使用車両が置いてあり、その後、AとB、Dと順次合流した、③同月28日の夜、本件犯行現場付近の病院の駐車場で待機していたところ、共犯者らの会話内容から、強盗に及ぶのではないかと気づいたものの、そのまま本件犯行に関与した、④本件犯行後に岐阜県内まで犯行使用車両を運転したものの、同車両の清掃等には関与していない、⑤捜査機関に逮捕されるまで、Cが本件犯行に関与していたとは気付かなかったため、同人との間に共謀はない旨供述している。 ⑵ しかしながら、とりわけ本件犯行に関与するに至った契機等に関する被告人の供述内容は、それ自体がおよそ起こるとは考え難い内容である。また、仮に被告人の供述どおりのことがあったならば、被告人は相 ⑵ しかしながら、とりわけ本件犯行に関与するに至った契機等に関する被告人の供述内容は、それ自体がおよそ起こるとは考え難い内容である。また、仮に被告人の供述どおりのことがあったならば、被告人は相当な恐怖を感じる立場に置かれたはずであるが、被告人は、不審な人物らの特徴について詳細に記憶していたり、同日の夜に交際相手と会った際にも特段変わった様子も見受けられない上に、警察等にも相談しておらず、恐怖を感じた人間の行動として不自然、不合理な点が多い。さらに、他の共犯者らとの合流後の状況等についても、客観的証拠から優に認められる事実関係と、Cとの共謀関係を否定する自身の主張内容とを整合させようとした結果、全体として不自然、不合理な内容となっていることがうかがわれるといわざるを得ない。 以上の事情等に照らせば、被告人の供述内容は信用できない。 第3 結論 以上の検討によれば、①Cが、本件犯行を計画し、被告人を含む共犯者らを誘い入れた上、本件犯行前後において共犯者らと連絡を取り合うなどして本件犯行を遂行した事実や、②被告人が、Cの指示の下で、本件犯行に運転手役として関与し、Cらと一緒に、本件犯行前に盗難可能な車両を探し、犯行使用車両の清掃等を行った事実が優に認められる。よって、本件犯行に関し、被告人とCの共謀が認められる。 【証拠の標目】(省略)【法令の適用】(省略)【量刑の理由】本件犯行は、凶器を用いていないとはいえ、成人男性である共犯者ら2名が早朝に被害者宅に押し入り、高齢の被害者の手足を布製粘着テープで緊縛した上で強盗に及んだというもので、その手口は粗暴であり、その結果、被害者は、人体の枢要部である顔面に、全治約3週間の打撲症という軽くない傷害を負わされた上に、殺されるかもしれないと恐怖しており、精神 上で強盗に及んだというもので、その手口は粗暴であり、その結果、被害者は、人体の枢要部である顔面に、全治約3週間の打撲症という軽くない傷害を負わされた上に、殺されるかもしれないと恐怖しており、精神的苦痛も大きい。財産的被害額も結果として合計約15万円にとどまったものにすぎないもので、被害結果は全体として重い。 被告人らは、前もって犯行使用車両や連絡用の携帯電話機等を準備しており、犯行自体は計画的といえ、Cを指示役として複数人で本件犯行に及んでいることから一定の組織性も認められる。もっとも、上記車両の入手や被害者宅への侵入時期等に関しては場当たり的な言動がうかがわれるなど、計画内容は綿密なものとまではいえず、共犯者間の人的関係や指揮命令系統は比較的緩やかであるから、組織性が高度なものともいえない。上記事情等を総合すると、本件犯行は同種事案の中では、やや重い部類に位置付けられる。 被告人は実行犯ではなく、実行犯役の共犯者らとの関係においても別段上位者で あるとはうかがえないものの、単なる運転手役にとどまらず、盗難可能な車両の探索や共犯者らの監視役、実行行為時における被害者方周辺の見張り役に加えて、犯行使用車両の清掃等といった罪証隠滅行為も行っており、本件犯行の全般に関わったもので、本件犯行において果たした役割は一定程度大きい。 被告人は、令和4年4月に建造物侵入・窃盗罪により懲役2年・3年間執行猶予の判決を受け、本件犯行時には執行猶予中であったことなどに照らせば、その規範意識には大きな問題があるといわざるを得ない。また、被告人は、本件犯行に関与したことについて反省の言葉を述べているものの、Cとの共謀について不合理な説明に終始しており、真摯な反省の態度はうかがえない。 さらに、共犯者の家族が、被害者に対し、被害弁償として11万円を に関与したことについて反省の言葉を述べているものの、Cとの共謀について不合理な説明に終始しており、真摯な反省の態度はうかがえない。 さらに、共犯者の家族が、被害者に対し、被害弁償として11万円を支払った点も、被害回復として十分でないことに加え、被告人自身の行動によるものでもなく、大きく考慮することはできない。 以上の検討に照らせば、被告人について酌量減軽を行うべき事情は認められない。 そこで、上記事情等を総合考慮した上で、同種事案の量刑傾向等も踏まえて、主文のとおりの量刑とした。 (求刑:懲役7年)令和6年11月8日奈良地方裁判所刑事部 裁判長裁判官澤田正彦 裁判官岡田卓 裁判官林香穂
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