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平成10(オ)780 損害賠償請求事件

裁判所

平成14年1月29日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄差戻 東京高等裁判所 平成9(ネ)2110

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3,569 文字

主文 原判決を破棄する。本件を東京高等裁判所に差し戻す。理由 上告人の上告理由について 1 本件は,被上告人の発行する新聞紙に掲載された記事が上告人の名誉を毀損するものであるとして,上告人が被上告人に対して不法行為に基づく損害賠償を請求する訴訟である。原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。(1) 被上告人は,株式会社D新聞東京本社(以下「東京本社」という。)の関連会社であり,九州地方を中心に日刊紙「D」を発行している新聞社である。(2) 被上告人は,昭和60年9月18日付けの「D」紙に第1審判決別紙記載の記事(以下「本件記事」という。)を掲載した。東京本社が発行する同日付けの「D」紙にも本件記事と記事本文の内容をほぼ同一にする記事(以下「東京本社記事」という。)が掲載された。本件記事は,被上告人が東京本社から記事の提供を受けて掲載したものである。(3) 上告人は,昭和60年9月11日,元妻に対する殺人未遂事件の被疑者として逮捕されたが,その前後には,上告人に関するおびただしい数の報道が全国でされており,上告人もこれを了知していた。(4) 上告人は,平成2年10月ころ,「D」紙は東京本社,大阪本社及び西部本社を通じ,同一名称で全国的に頒布されている新聞であると認識していた。しかし,その発行主体が別法人であるかどうかについては,上告人には不明な点又は誤解があった。(5) 上告人は,自ら提起した別件の訴訟において,東京本社記事が東京本社発行の「D」紙に掲載されたことを知ったのは平成4年2月ころであると主張して- 1 -いた。(6) 上告人は,平成4年11月ころまでに,「D」紙を発行している新聞社は全国に3社あり,九州地方において同紙を発行するのは被上 とを知ったのは平成4年2月ころであると主張して- 1 -いた。(6) 上告人は,平成4年11月ころまでに,「D」紙を発行している新聞社は全国に3社あり,九州地方において同紙を発行するのは被上告人であることを知った。 ったのは平成4年2月ころであると主張して- 1 -いた。(6) 上告人は,平成4年11月ころまでに,「D」紙を発行している新聞社は全国に3社あり,九州地方において同紙を発行するのは被上 とを知ったのは平成4年2月ころであると主張して- 1 -いた。(6) 上告人は,平成4年11月ころまでに,「D」紙を発行している新聞社は全国に3社あり,九州地方において同紙を発行するのは被上告人であることを知った。(7) 本件訴えが提起されたのは,平成8年5月28日であるが,被上告人は,上告人の被上告人に対する本件名誉毀損に基づく損害賠償請求権について,平成4年11月を起算点とする消滅時効を援用した。2 原審は,次のように判断して,上告人の請求を棄却すべきものとした。(1) 昭和60年当時上告人に関する記事が全国的な規模で報道されていたことを上告人において了知していたことを前提とすれば,上告人は,平成4年2月ころ本件記事と記事本文の内容をほぼ同一にする東京本社記事が東京本社発行の「D」紙に掲載されたことを知った時に,九州地方で発行されている「D」紙にも本件記事が掲載されているとの認識を得たというべきである。(2) また,上告人は,平成4年11月ころ,九州地方において「D」紙を発行しているのは被上告人であることを知ったから,これによって,本件記事による名誉毀損に関し,損害のみならず加害者をも了知したものというべきである。(3) したがって,上告人は,遅くとも平成4年11月ころまでに,被上告人が本件記事を掲載した新聞紙を発行したことを知ったことになるから,上告人の被上告人に対する本件名誉毀損に基づく損害賠償請求権は,時効により消滅した。3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。民法724条にいう被害者が損害を知った時とは,被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解すべきである(最高裁平成8年(オ)第2607号同14年1月29日第三小法廷判決〔編注:民集56巻1号2 民法724条にいう被害者が損害を知った時とは,被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解すべきである(最高裁平成8年(オ)第2607号同14年1月29日第三小法廷判決〔編注:民集56巻1号218頁に登載〕)。- 2 -原審は,この解釈を前提としつつ,本件記事は,上告人が元妻に対する殺人未遂事件の被疑者として逮捕され全国的な関心の的になっていたという上告人も了知している社会状況の下において掲載されたものであることから,本件においては,東京本社が東京本社記事を掲載した「D」紙を発行したこと及び九州地方では被上告人が「D」紙を発行していることを上告人が知ったという事実さえあれば,被上告人が本件記事を掲載して上告人の名誉を毀損したことによる損害の発生を現実に認識したことになるというのである。 件の被疑者として逮捕され全国的な関心の的になっていたという上告人も了知している社会状況の下において掲載されたものであることから,本件においては,東京本社が東京本社記事を掲載した「D」紙を発行したこと及び九州地方では被上告人が「D」紙を発行していることを上告人が知ったという事実さえあれば,被上告人が本件記事を掲載して上告人の名誉を毀損したことによる損害の発生を現実に認識したことになるというのである。しかしながら,本件記事と東京本社記事(乙第2号証)を比較すると,① その紙面構成が一見して明らかに異なっており,② 本件記事の見出しが「自宅に大麻A」,「二番目の妻目撃」,「『見つかればトイレに流せ』と指示」,「単なる末端吸飲者ではない」,「背後に大きな組織?特捜本部が注目」,「冷蔵庫に隠し持つ」,「売人の可能性も!?」であるのに対し,東京本社記事の見出しは,「A,大麻を所持(52年)」,「2番目の妻が証言」,「変死したBさんに接近した時期と一致」,「入手経路追及へ」となっており,③ 本件記事には東京本社記事にはない,警視庁特捜本部が上告人が単なる大麻の末端吸飲者ではなく売人であるとの情報を重視し,背後関係を追及する構えである旨及び逮捕された上告人が動揺を始めたなどという記載が加えられ,一般読者が本件記事を読んだ際に上告人が悪質であるとの印象をより強めるような変更が加えられているという相違点があることが明らかである。また,東京本社が発行する 動揺を始めたなどという記載が加えられ,一般読者が本件記事を読んだ際に上告人が悪質であるとの印象をより強めるような変更が加えられているという相違点があることが明らかである。また,東京本社が発行する「D」紙に掲載された記事であっても,被上告人が発行する「D」紙に掲載されない場合があることについては,当事者間に争いがない。【要旨】本件において,上告人が本件記事に接する機会があった,又は上告人が他者から東京本社記事と同じ記事が被上告人の発行する新聞にも掲載されたことを知らされた等の具体的事実についての立証はされていないところ,上記のような事情- 3 -の下においては,これら具体的事実の立証がないのに,上告人が本件記事の掲載を知り,名誉毀損による損害の発生を現実に認識したと認定することはできないといわなければならない。したがって,上告人は平成4年11月ころ被上告人の発行する新聞紙に本件記事が掲載されたことを認識したと認定した原審の判断過程は経験則に反する違法なものであるといわざるを得ず,上告人の被上告人に対する損害賠償請求権が時効により消滅したということはできない。 ら具体的事実の立証がないのに,上告人が本件記事の掲載を知り,名誉毀損による損害の発生を現実に認識したと認定することはできないといわなければならない。したがって,上告人は平成4年11月ころ被上告人の発行する新聞紙に本件記事が掲載されたことを認識したと認定した原審の判断過程は経験則に反する違法なものであるといわざるを得ず,上告人の被上告人に対する損害賠償請求権が時効により消滅したということはできない。4 以上によれば,原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,上告人の被上告人に対する請求について更に審理判断させるため,本件を原審に差し戻すべきである。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。最高裁判所第三小法廷(裁判長裁判官奥田昌道裁判官千種秀夫裁判官金谷利廣裁判官濱田邦夫)- 4 - 濱田邦夫

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