平成22(ネ)422 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成23年4月7日 広島高等裁判所 その他 広島地方裁判所 尾道支部 平成21(ワ)309
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判決文本文11,086 文字)

主文 1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人Gは,控訴人Aに対し,276万7501円及びこれに対する平成15年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人Gは,控訴人Bに対し,118万6071円及びこれに対する平成15年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被控訴人H,同I及び同Jは,控訴人Cに対し,それぞれ77万7393円及びこれに対する平成15年5月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被控訴人H,同I及び同Jは,控訴人Dに対し,それぞれ62万1914円及びこれに対する平成15年5月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被控訴人H,同I及び同Jは,控訴人Eに対し,それぞれ15万5478円及びこれに対する平成15年5月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7 被控訴人H,同I及び同Jは,控訴人Fに対し,それぞれ87万0748円及びこれに対する平成15年1月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 8 控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。 9 被控訴人Gと控訴人Aとの間の訴訟費用,被控訴人Gと控訴人Bの間の訴訟費用,被控訴人H,同I及び同Jと控訴人Cの間,同被控訴人らと控訴人Dの間,同被控訴人らと控訴人Eの間,同被控訴人らと控訴人Fとの間の各訴訟費用は,第1,2審を通じて,上記各被控訴人らの負担とする。 10 この判決第2ないし第7項は仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 附帯金の起算日をいずれも平成14年11月29日からとするほか,主文第2,3項に同じ。 とができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 附帯金の起算日をいずれも平成14年11月29日からとするほか,主文第2,3項に同じ。 3 被控訴人H,同I及び同Jは,控訴人Cに対し,連帯して233万2181円及びこれに対する平成14年11月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被控訴人H,同I及び同Jは,控訴人Dに対し,連帯して186万5744円及びこれに対する平成14年11月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被控訴人H,同I及び同Jは,控訴人Eに対し,連帯して46万6436円及びこれに対する平成14年11月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被控訴人H,同I及び同Jは,控訴人Fに対し,連帯して261万2246円及びこれに対する平成14年11月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(略称は,特記しない限り,原判決の呼称に従う。)本件は,控訴人(一審原告)らが,被控訴人(一審被告)らに対し,平成9年ないし平成10年に被控訴人らからそれぞれ購入し(本件各売買),引渡しを受けた土地(原判決別紙物件目録記載1ないし3の土地。本件各土地)について,これらは土地区画整理事業の対象地であるのに,被控訴人らは,賦課金(土地区画整理法40条)の発生可能性についての説明を怠ったなどと主張して,①債務不履行に基づく損害賠償,②不当利得に基づく利得金返還,ないしは,③瑕疵担保による損害賠償として,賦課金相当額(附帯金はいずれも遅延損害金)の各支払を求めた事案にかかる控訴事件である。 1 前提事実は,原判決「事実及び理由」第2の1(原判決3頁14行目から5頁13行目まで る損害賠償として,賦課金相当額(附帯金はいずれも遅延損害金)の各支払を求めた事案にかかる控訴事件である。 1 前提事実は,原判決「事実及び理由」第2の1(原判決3頁14行目から5頁13行目まで)のとおりであり,争点及び争点に関する当事者の主張は,後 記3に付加するほかは,原判決「事実及び理由」第2の2及び3(原判決5頁14行目から12頁9行目まで)に摘示のとおりであるから,それぞれこれを引用する。 2 原審は,説明義務違反(争点1),錯誤(争点2)はいずれも認められないとし,瑕疵担保による損害賠償については,賦課金発生の可能性は本件各土地の隠れた瑕疵に当たり,その損害は控訴人らに賦課された賦課金(本件各賦課金)相当額であるとした(争点3)が,控訴人らは,本件各土地の引渡しを受けた時から10年以上経過した後に本件訴訟を提起したから,瑕疵担保による損害賠償請求権は時効消滅した(争点4)とし,被控訴人らの消滅時効の援用が権利濫用に当たるとはいえない(争点5)として,控訴人らの請求をいずれも棄却したところ,控訴人らが控訴した。 3 当審における当事者の主張(原審での主張敷衍を含む。)(1) 隠れた瑕疵の有無(争点3)について(被控訴人ら)瑕疵は,売買契約の当事者間において予定されていた品質,性能を欠く場合をいうのであり,かかる品質,性能については,売買契約締結当時の取引観念を斟酌して判断されるべきである。本件各土地については,控訴人らに賦課金が課せられないことが当事者間で予定されていたとはいえない。 すなわち,控訴人C,同D及び同E(以下「控訴人Cら」という。)と被控訴人H,同I及び同J(以下「被控訴人Hら」という。)間の売買契約書によれば,売買代金支払,所有権移転登記がなされれば,不動産に課され わち,控訴人C,同D及び同E(以下「控訴人Cら」という。)と被控訴人H,同I及び同J(以下「被控訴人Hら」という。)間の売買契約書によれば,売買代金支払,所有権移転登記がなされれば,不動産に課される金銭的負担(賦課金を含む。)については買主が負うことになっており,売買当事者の意思も同様であった。また,一般に市販されている不動産売買契約書等においても同様の記載がなされており,これが一般的な売買契約当事者の合理的意思(取引観念)であるといえる。このことは控訴人Fと被控訴人Hらとの間の売買においても同様である。 また,被控訴人Gと控訴人A及び同B(以下「控訴人Aら」という。)との売買においては,契約後は,甲土地区画整理組合(甲組合)の規約に従うものとするとされ,契約後の組合との関わり(金銭的負担を含む。)は組合員となる買主が引き受ける旨示されている。 したがって,本件各売買の契約締結当時の取引観念,当事者の意思からして,本件各土地につき,控訴人らに賦課金が課せられないことは当事者間で予定されていたとはいえず,本件各土地に瑕疵は存しない。 さらに,控訴人らは,本件各土地が土地区画整理法に基づく事業計画施工地区(以下「施工地区」という。)内の宅地であることにつき,十分な認識があり,賦課金が組合員に課されることは法定されているものである。控訴人らは,宅地建物取引主任者を擁する業者を仲介に立てており,契約締結当時,甲組合から賦課金が課される一般的抽象的可能性を容易に認識可能であった。控訴人らには過失があり,本件において隠れた瑕疵は存在しない。 (2) 瑕疵担保による損害賠償請求権の消滅時効の成否(争点4)について(控訴人ら)本件においては,平成14年11月29日付けの賦課金を課する旨の通知書( 瑕疵は存在しない。 (2) 瑕疵担保による損害賠償請求権の消滅時効の成否(争点4)について(控訴人ら)本件においては,平成14年11月29日付けの賦課金を課する旨の通知書(以下「本件各通知書」という。)が買主である控訴人らに到着したときに初めて瑕疵担保による損害賠償請求権の行使が可能になるのであって,控訴人らが売買契約を締結した当時は,瑕疵が内在するにすぎず,権利行使は不可能であった。すなわち,民法167条1項の「権利を行使することができるとき」には該当しなかった。 そうでなくとも,平成15年4月の賦課金債務者変更願をもって控訴人らの損害賠償請求権は保存され,その時点から消滅時効が起算されるべきである。 (被控訴人ら)本件における瑕疵は,賦課金発生の可能性であり,控訴人らは,施工地区 内の宅地であることを認識して本件各土地を購入したのであるから,引渡時から10年以内に賦課金発生の可能性を認識することができた。賦課金発生の可能性について気付くことができれば,担保責任の追及(賦課金発生可能性を考慮した売買代金と実際の売買代金との差額について損害賠償請求権を行使すること)は可能になるのであり,控訴人らは,引渡時点から権利行使が可能であった。 したがって,消滅時効の起算点は,本件各土地の引渡時とすべきである。 また,瑕疵担保による損害賠償請求権は,形成権行使の結果新たに発生するものではないから,賦課金債務者変更願をもって消滅時効の起算点とすることはできない。 (3) 消滅時効の援用についての権利濫用の有無(争点5)について(控訴人ら)本件では,瑕疵の発見が本件各通知書が送付される平成14年11月29日までは絶対に不可能であり,買主救済の必要性が高い。 の援用についての権利濫用の有無(争点5)について(控訴人ら)本件では,瑕疵の発見が本件各通知書が送付される平成14年11月29日までは絶対に不可能であり,買主救済の必要性が高い。また,本件各通知書送付まで,買主である控訴人らは組合員として扱われたことは1度もなく,甲組合の総代の選任選挙に関与する機会も与えられておらず(したがって,賦課金決定の総代会で反対の意思を表明する機会も与えられていない。),組合便りなども配布されていないから,賦課金の認識可能性すらなかった。 さらに,本来であれば,組合員全員に課されるはずの供託金も控訴人らには課されていないもので,控訴人らは,他の組合員とは異なった扱いを受けてきたから,自ら組合員であるという認識も有していなかった。そして,平成14年に本件各通知書が送付されて間もなく,賦課金債務者変更願を送付したこと,土地の価格高騰による利益を享受しているのは売主である被控訴人らであるから,賦課金を負担すべきであるのは被控訴人らとするのが公平であることなどを併せ考慮すれば,被控訴人らの消滅時効の援用は権利の濫用として許されない。 (被控訴人ら)控訴人らは,施工地区内の宅地であることを認識して本件各土地を購入したのであるから,本件各土地の瑕疵である賦課金発生可能性の発見が絶対に不可能ということはできない。控訴人らには,訴えを提起して消滅時効を中断する時間的余裕が十分にあった。また,総代の選任可能性などは,甲組合の事情であって被控訴人らは関与しえない。そして,賦課金の負担は売買契約の内容の問題であって,売買契約書に賦課金負担についての定めがない以上,土地区画整理法,甲組合の定款及び甲組合総代会の決議によって,組合員が賦課金を負担するのは致し方ないことであり,一義的に売主である被 容の問題であって,売買契約書に賦課金負担についての定めがない以上,土地区画整理法,甲組合の定款及び甲組合総代会の決議によって,組合員が賦課金を負担するのは致し方ないことであり,一義的に売主である被控訴人らが賦課金を負担すべき根拠は見出せない。被控訴人らが消滅時効により賦課金相当額の利益を得るとしても,それは消滅時効の効果であってやむを得ないものである。 第3 当裁判所の判断当裁判所は,被控訴人らに説明義務違反はなく,控訴人らの錯誤の主張も理由がないと判断するが,被控訴人らには瑕疵担保による損害賠償責任があり,その消滅時効は成立していないと判断する。その理由は以下のとおりである。 1 説明義務違反の有無(争点1)及び錯誤の有無(争点2)について当裁判所も,被控訴人らにおいて説明義務違反はなく,控訴人らの錯誤の主張も理由がないと判断する。その理由は,以下のとおり付加するほかは,原判決「事実及び理由」第3の1及び2(原判決12頁11行目から15頁17行目まで)に説示のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決12頁18行目「その後,甲組合は,平成12年」に続けて,「7月ころ,広報誌を発行し,その中には,保留地の販売が芳しくなく,最悪の事態がきたときには,組合員より負担をお願いすることになる旨の記載があった。そして,同年」を加える。 (2) 同頁21行目末尾を改行して以下を加える。 「被控訴人Hは,平成12年に締結した別の仮換地の売買契約において,賦課金を売主(被控訴人H)の負担とする旨合意した。 また,平成12年に甲組合は,仮換地を譲渡した者に対し,売買代金の一部を賦課金支払のため甲組合に預託させることにしており,他方で,甲組合は,仮換地を譲り受けた者に対しては,土地区画整理事業や また,平成12年に甲組合は,仮換地を譲渡した者に対し,売買代金の一部を賦課金支払のため甲組合に預託させることにしており,他方で,甲組合は,仮換地を譲り受けた者に対しては,土地区画整理事業や甲組合の状況を知らせるための上記広報誌を配付していなかった。」(3) 同頁22行目「(甲21,」を「(甲13,21,22,25の1,」に改める。 2 隠れた瑕疵の有無(争点3)について当裁判所も,賦課金発生の可能性は,隠れた瑕疵にあたると判断する。その理由は,以下のとおり付加訂正するほかは,原判決「事実及び理由」第3の3(原判決15頁18行目から18頁7行目まで)に説示のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決15頁23行目「可能性があり」を「可能性は,抽象的な域(一般抽象的なレベルにとどまる限りは,瑕疵とは評しがたい。)を超え具体性を帯びていたといえる状況にあり」に改め,同頁25行目「可能性は」の次に「,本件各売買の契約締結当時,」を加える。 (2) 同16頁14行目「と規定する。」に続けて「そして,賦課金の額及び賦課徴収方法は,総会(総代会が設けられたときは総代会〈土地区画整理法36条3号〉)の決議事項とされており,当該決議がなされたときは,組合員について賦課金の具体的支払義務が発生する。」を加え,同頁17行目冒頭「であって」を「で」に改める。 (3) 同17頁4行目「しかしながら,」から8行目末尾までを以下のとおり改める。 「しかしながら,土地区画整理事業においては,一般に,事業に要する費用は,公共施設管理者負担金や補助金等を除いて保留地の売却収入により回収 するものとされており,清算金と異なり,賦課金の発生可能性が高いともいえず,このような実情は,控訴人Cらの売買において,清算 は,公共施設管理者負担金や補助金等を除いて保留地の売却収入により回収 するものとされており,清算金と異なり,賦課金の発生可能性が高いともいえず,このような実情は,控訴人Cらの売買において,清算金の帰属について特約が結ばれているのに対し,賦課金については何らの定めもされていないこと,控訴人Aらに交付された重要事項説明書には不動文字による清算金の記載欄はあるが賦課金のものはないことからも明らかである。これに対し,控訴人らには,甲組合から本件各土地の購入価格の1割を超える本件各賦課金が課されたものである。 したがって,本件各契約締結当時の当事者の意思解釈としても,本件各土地にこのような負担が課されることは想定されていなかったというべきであり,被控訴人らの主張は理由がない。 なお,証拠(甲9,11)によれば,控訴人Cら及び同Fが締結した売買の契約書には,不動文字で,不動産に課される公租公課及び各種負担金については,売買代金支払,所有権移転登記が完了した日を境として,それ以後は買主の負担する旨の記載があるが,他方で,これらは,広島県宅地建物取引業協会がその会員用に作成した不動産売買一般に通用する書式であることがそれぞれ認められ,そうすると,これは一般的な不動産売買を前提とするものであって,賦課金を予定して記載されたものとはいえない。 そして,土地区画整理事業は,施工地区内の土地について,土地の区画形質の変更及び公共施設の新設又は変更に関する事業を行うものであり,当該事業によって,施工地区内の公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進が図られ,施行地区内の宅地や借地権についてはその価値が増加するものであり,その利益は,施工地区内に従前地を所有ないし借地してきた者に属するから,その事業の経費の負担についても,これらの者 用の増進が図られ,施行地区内の宅地や借地権についてはその価値が増加するものであり,その利益は,施工地区内に従前地を所有ないし借地してきた者に属するから,その事業の経費の負担についても,これらの者に帰属させるとするのが合理的である。 さらに,仮換地にかかる土地の売買契約の当事者においては,特段の事情がない限りは,もっぱら仮換地自体の位置,地目,面積に着目し,売買代金も仮換地の面積と不動産市況に照らした単位面積あたりの価格によって定められるも のであって,このような場合,売却価額を決定するにあたり考慮されなかった賦課金については,その性質が上記のとおり売主にとっての取得費ともいえるものであることからして,売主の負担とするのが,売買契約の当事者の意思に合致するというべきである。前記のとおり,被控訴人Hが平成12年に締結した別の仮換地の売買契約において,賦課金を売主の負担とする合意をしたことは,かかる意思の存在を裏付けるものである。 そうすると,本件各売買の契約当事者の合理的意思として,賦課金の存在及び負担を予定して上記書式に則って売買契約を締結したともいえず,かかる記載は前記認定を左右するものではない。 また,証拠(甲6)によれば,被控訴人Gと控訴人Aらとの売買においては,契約後は,甲組合の規約に従うものとするとの特約が締結されたことが認められるが,かかる文言のみからでは,これが契約当事者間の対内的関係までも定めたとはいえないから,前記認定を左右するものではない。」(4) 同17頁13行目「可能性については」を「可能性は,前記説示のとおり具体性を帯びていたとはいえ」に,同頁25行目「可能性をもって,」を「可能性があったからといって,当時,具体化していた」にそれぞれ改める。 (5) 同18頁1行目「認識可能とい 前記説示のとおり具体性を帯びていたとはいえ」に,同頁25行目「可能性をもって,」を「可能性があったからといって,当時,具体化していた」にそれぞれ改める。 (5) 同18頁1行目「認識可能といえるのは,」に続けて「本件各売買の契約締結後,すなわち,」を,同頁4行目「したがって,」に続けて「本件各売買の契約締結当時,」をそれぞれ加える。 3 瑕疵担保による損害賠償請求権の消滅時効の成否(争点4)について(1) 消滅時効について買主の売主に対する瑕疵担保による損害賠償請求権は,売買契約に基づき法律上生じる金銭支払請求権であるから,消滅時効の規定の適用があることは,原判決説示(同18頁9行目から13行目までを引用する。)のとおりである。 そして,その消滅時効の起算点については,単にその権利の行使について 法律上の障害がないというだけでなく,さらに,権利の性質上,その権利行使が現実に期待できるものといえることが必要である。そして,瑕疵担保による損害賠償請求権の権利行使をするについては,具体的な瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求権を認識し,請求する損害額の算定根拠を把握できることが前提となる(裁判外の権利行使においても,こうした請求根拠を示すことが求められる。)。この観点から本件につき検討するに,賦課金は,保留地の処分が奏効せず,その処分によっては,組合が負う事業経費の負担を賄うことができないという状況を踏まえた総会ないし総代会の決議により具体的な義務が発生するものであるところ,前記引用中の認定事実のとおり,甲組合は,保留地の処分を進めながらも,金融機関との協議に資金繰りの活路を求め,その交渉が思うに任せなかった結果,賦課金徴収の方針を決め,総代会決議に至ったものである。その過程には,甲組合の理事のほか 組合は,保留地の処分を進めながらも,金融機関との協議に資金繰りの活路を求め,その交渉が思うに任せなかった結果,賦課金徴収の方針を決め,総代会決議に至ったものである。その過程には,甲組合の理事のほか,総代会を構成する各総代の状況判断,先行きの見通しに対する思惑といった不確定要素があったものと推認され,このことは,甲組合の総代会において,平成13年1月に賦課金徴収の決議がされた(ただし,具体的な賦課金額,納付時期等の決議はなかった。)ものの,同年10月には賦課金総額34億円の議案が否決され,その後,同年11月に同24億円の決議がなされたこと,そして,平成14年4月の金融機関との特定調停を経て本件各賦課金の請求に至ったこと(前記引用の事実に加え,同掲記の証拠及び弁論の全趣旨)からも裏付けられる。この間,平成11年12月に工事業者が留置権を主張してバリケードを設置したが,甲組合は,仮換地の譲受人である控訴人らに対して,土地区画整理事業や甲組合の状況について,以上のような情報を随時,的確に周知してはいなかったものと認められる(甲21,22,弁論の全趣旨)。 そうすると,甲組合における賦課金発生の可能性及びその額等については,不確定要素が多く介在していたとみるべきであるが,控訴人らに対しては, その状況が随時,的確に伝えられてはいなかったのであり,本件各賦課金が売買目的物の土地の瑕疵といえるかについては,通常人にとって容易に判断し難い法律問題を含んでもいたのであるから,控訴人らにおいて,その権利行使が現実に可能ないし期待できることになったのは,早くても,本件各通知書が到達した平成14年11月というべきである。 そして,控訴人Cら及び同Aらは平成15年4月ころ,控訴人Fは賦課金額通知書の到達後間もなく,被控訴人らに対し,上 のは,早くても,本件各通知書が到達した平成14年11月というべきである。 そして,控訴人Cら及び同Aらは平成15年4月ころ,控訴人Fは賦課金額通知書の到達後間もなく,被控訴人らに対し,上記損害賠償を請求した旨主張し,被控訴人らは,このことを明らかに争わない。そうすると,被控訴人らは,上記通知書到達から1年以内に損害賠償を請求したものであり,控訴人らが本件訴訟を提起したのは本件各通知書受領から10年以内の平成21年11月16日であることは当裁判所に顕著であるから,被控訴人らの消滅時効の主張は理由がないというべきである。 (2) 被控訴人らの主張について被控訴人らは,賦課金発生の可能性を認識すれば,賦課金発生可能性を考慮した売買代金と実際の売買代金との差額について瑕疵担保による損害賠償請求権を行使することは可能であると主張し,証拠(甲13,21)によれば,賦課金の一部を買主負担とする売買契約も存在する。しかし,同証拠によれば,上記売買は,平成12年7月に締結されたことが認められ,これは,上記バリケードが設置された後であり,具体的な損害額を確定して,瑕疵担保による損害賠償請求権を行使するのは,賦課金の発生可能性を考慮して売買の価格や条件を交渉するのとは異なるから,上記事実は,上記認定を左右するものではない。 また,被控訴人らは,買主が売買の目的物の引渡しを受けたときから消滅時効が進行するとも主張するが,前記のとおり,土地区画整理組合においては,一般に,事業に要する費用は,公共施設管理者負担金や補助金等を除いて保留地の売却収入により回収するものとされており,争いのない事実並び に証拠(甲6,9,11,21)によれば,甲組合が保留地の売却を開始したのは平成10年10月であるのに対し,控訴人らが本件各土地 留地の売却収入により回収するものとされており,争いのない事実並び に証拠(甲6,9,11,21)によれば,甲組合が保留地の売却を開始したのは平成10年10月であるのに対し,控訴人らが本件各土地の引渡しを受けたのは,控訴人Aらが平成10年11月10日ころ,同Cらが同年7月31日ころ,同Fが平成9年8月1日ころであるから,この時期の点のみをみても,控訴人らが本件各土地の引渡しを受けたからといって,直ちに保留地の処分が奏効しなかったことによる賦課金の具体的発生可能性を認識し,被控訴人らに対し担保責任を行使することを現実的に期待することはできないから,被控訴人らの主張は,理由がない(瑕疵担保による損害賠償請求権の消滅時効についての最高裁平成10年(オ)第773号,平成13年11月27日第三小法廷判決は,瑕疵の認識可能性の点において,本件と事案を異にするというべきである。)。 4 被控訴人らの支払うべき金額について控訴人らの損害は,賦課金相当額というべきであり,その額は,控訴人A276万7501円,同B118万6071円,同C233万2181円,同D186万5744円,同E46万6436円,同F261万2246円である。 したがって,売主である被控訴人らは同額の損害賠償義務を負うべきところ,控訴人Cら及び同Fに不動産を売却した被控訴人H,同I,同Jは,上記不動産を共有していたから,同被控訴人らは,その持分割合に応じて,控訴人Cら及び同Fにその損害を賠償すべきである。 証拠(甲10の1)によれば被控訴人Hらの持分割合は均等であるから,被控訴人Hらの損害賠償債務は,各3分の1の分割債務になるというべきである。 したがって,控訴人D,同E,同Fの請求のうち各被控訴人に対する1円未満の端数にわたる請求は理由がない。 あるから,被控訴人Hらの損害賠償債務は,各3分の1の分割債務になるというべきである。 したがって,控訴人D,同E,同Fの請求のうち各被控訴人に対する1円未満の端数にわたる請求は理由がない。 そして,前記のとおり,控訴人Fは平成14年11月29日付け賦課金額通知書の到達後間もなく,控訴人Cら及び同Aらは平成15年4月ころ,被控訴人らに対し上記損害賠償の請求をしたから,控訴人らの附帯金請求のうち,相 当期間経過後である控訴人Fについては平成15年1月1日から,控訴人Cら及び同Aらについては平成15年5月1日から,民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるものについては理由がある。 5 結論よって,その余の点を判断するまでもなく,4に記載したとおり,控訴人らの請求は一部理由があるから,その限りで認容すべきであり,原判決はその限度で相当でないから,これを上記の限度で変更して,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第4部 裁判官近下秀明 裁判官松葉佐隆之 裁判長裁判官田聰は,退官につき署名押印することができない。 裁判官近下秀明

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