- 1 -平成18年2月15日宣告裁判所書記官○○○○平成16年刑(わ)第4238号,第4562号収賄被告事件判決本籍東京都α区a丁目b番地住居東京都α区a丁目b番c号職業元α区長被告人A昭和○年○月○日生主文被告人を懲役2年6月に処する。 この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予する。 被告人から金150万円を追徴する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (犯罪事実)被告人は,平成13年5月28日から平成16年9月27日までの間,α区長として,同区の事務を管理し,予算を執行し,同区の財産を管理するとともに,自らあるいは部下職員を指揮監督して,同区が発注する建物管理業務委託契約等に関し,指名競争入札参加者の指名,契約の締結等の職務に従事していたものであるが,第1平成13年10月1日,東京都港区d丁目e番f号所在の飲食店甲において,同都文京区g丁目h番i号に本店を置き(登記簿上の本店所在地は同都台東区j丁目k番l号。ただし,平成14年4月30日に同都台東区m丁目n番o号に登記変更),建物・スポーツ施設の総合管理等を目的とするB株式会社の代表取締役を務めていたCから,α区が発注する予定の同区役所本庁舎管理業務及びα総合スポーツセンター管理運営業務などの同区発注に係る建物管理業務等委託契約につき,B株式会社がこれらを受注できるよう有利な取り計らいを受けたい趣旨で供与され- 2 -るものであることを知りながら,現金50万円の供与を受け,第2平成14年5月24日,同都α区p丁目q番r号所在のα区役所4階応接室において,Cから,同区が発注した平成14年度同区役所本庁舎管理業務委託契約及び同α総合スポーツセンター管理運営等委託契約につき,B株式会社が受注できたことに対する謝礼及び同区発注に係る 4階応接室において,Cから,同区が発注した平成14年度同区役所本庁舎管理業務委託契約及び同α総合スポーツセンター管理運営等委託契約につき,B株式会社が受注できたことに対する謝礼及び同区発注に係る建物管理業務委託契約等につき,今後も同様の有利な取り計らいを受けたい趣旨で供与されるものであることを知りながら,現金100万円の供与を受け,もって自己の前記職務に関して賄賂を収受したものである。 (証拠)省略(争点に対する判断)第1 争点 弁護人は,判示第1の事実について,被告人が判示第1記載の日時場所においてCと会食をしたことはあるが,現金50万円を収受したことはない,判示第2の事実について,被告人が判示第2記載の日時場所においてCと面会をしたことはあるが,現金100万円を収受した事実はない旨主張し,被告人も上記主張に沿う供述をしている。 しかし,当裁判所は,判示のとおり認定したので,以下,補足して説明する。 第2判断の前提となるべき事実関係関係証拠によれば,動かし難い事実として,以下の事実を認めることができる。 当事者等(1)被告人の経歴等被告人は,昭和50年にα区の区議会議員として初当選し,昭和54年まで同区議を2期務め,同年から平成元年まで東京都議会議員を3期連続して務め,同年に行われた同都議会選挙に落選した後,平成5年から平成13年5月20日まで同議員を更に2期務めた。そして,被告人は,平成13年5月27日に- 3 -行われたα区長選挙(以下「本件選挙」という。)に当選し,同月28日に同区長に就任した。被告人は,平成16年9月18日に収賄容疑で警視庁に逮捕され,その後,被告人から辞職届がα区議会議長に提出され,同月27日,同区議会の同意を経て,同日,同区長を退職した。 (2)B株式会社(以下「B」という。)の概要等 18日に収賄容疑で警視庁に逮捕され,その後,被告人から辞職届がα区議会議長に提出され,同月27日,同区議会の同意を経て,同日,同区長を退職した。 (2)B株式会社(以下「B」という。)の概要等Bは,昭和35年,個人でビル清掃業を始めたDによって創業され,昭和37年に有限会社Bサービス,昭和43年にBサービス株式会社,昭和61年に現社名へとそれぞれ社名を変更した。Bは,ビル総合管理事業,広域ビル群管理システム,スポーツ施設管理事業等を主な業務とし,東京都文京区(登記簿上は台東区)に本店を置き,全国に支店を持つ株式会社であった。そして,Cは,平成10年6月,Bの代表取締役社長(Dらとの共同代表)に就任し,平成13年6月,Dが退任したため,名実ともに同社のトップとなったが,本件発覚後の平成16年9月,同社代表取締役の職を辞した。 (3)被告人とBとの従前の関係Bは,被告人の後援会(以下「後援会」という。)に加入し,年12万円の会費(以下「後援会費」という。)を,遅くとも平成10年以降平成16年まで,毎年5月末ころ支払っていた。また,Bは,被告人主催の政治団体であるD1が発行する新聞E1(以下「被告人の新聞」という。)に広告を出し,平成10年に2回,合計60万円,平成11年に30万円,平成12年に30万円それぞれ支払っていた。 区長の契約事務に関する権限等(1)区長の権限東京都特別区の区長(以下「区長」という。)は,地方公共団体を統轄・代表する権限が与えられており,地方公共団体の事務を管理・執行するほか,予算を調整・執行し,財産を管理・処分する権限が与えられている(地方自治法147条ないし149条)。また,区長は,その事務の一部を区の職員に委任- 4 -することができ,その場合,区長は当該職員に対して指揮監督権限を有する(同 処分する権限が与えられている(地方自治法147条ないし149条)。また,区長は,その事務の一部を区の職員に委任- 4 -することができ,その場合,区長は当該職員に対して指揮監督権限を有する(同法153条,154条)。 地方公共団体における契約事務は,予算の執行という性格を有するため,区長の権限に属する事項であり(同法149条2号),また契約の際に指名競争入札を行う場合,指名業者の選定も,区長の権限に属する事項であった(同法施行令167条の12第1項)。 (2)本庁舎管理業務委託についてα区では,同区役所本庁舎(以下「本庁舎」という。)の清掃等の維持・管理業務を民間に委託していたが(以下,この契約を「本庁舎管理契約」という。),本庁舎の管理及びこれに関する契約事務については,それぞれ地方公共団体の財産の管理,予算の執行にあたり,区長の権限に属していた(同法149条6号,2号)。そして,本庁舎管理契約については,同区の内部規程により,同区の総務部長が契約締結の補助執行者として指定され,また,同区の助役が契約方法の決定・入札業者の選定等に関する事務の補助執行者として指定されていた。 (3)α総合スポーツセンター(以下「スポーツセンター」という。)についてα区では,スポーツセンターにおいて実施している種々の教室などの運営を民間に委託していたが(以下,この契約を「スポーツセンター管理契約」という。),この契約に関する事務については,予算の執行にあたり,区長の権限に属していた(同法180条の6第1号,149条6号)。また,スポーツセンター管理契約は,同区の内部規程により,同区の教育委員会の事務局次長が契約締結の補助執行者として指定されており,契約方法の決定・入札業者の選定等の事務については,区長の専権事項となり,補助執行者は指定されていな は,同区の内部規程により,同区の教育委員会の事務局次長が契約締結の補助執行者として指定されており,契約方法の決定・入札業者の選定等の事務については,区長の専権事項となり,補助執行者は指定されていなかった。 本件の背景となる事情(1)Bとα区との従前の関係- 5 -Bは,昭和43年に現在の本庁舎が竣工した当初から,ほぼ毎年,本庁舎管理契約を受注していた。本庁舎管理契約については,少なくとも平成11年度以降は,毎年度指名競争入札が行われ,契約締結金額は,毎年9000万円前後であった。本庁舎管理契約は,Dが創業後早い段階で獲得した官公庁関係としては初めての仕事であり,Bにとっては会社の歴史であり,重要な案件であった。 また,スポーツセンター管理契約については,スポーツセンターがオープンした昭和60年以降平成13年度まで株式会社E(以下「E」という。)が特命随意契約により受注していた。しかし,スポーツセンターに関しては,その運営が年間数億円という多額の赤字を計上していたため,平成11年ころから経費削減の必要性が論じられるようになり,その中で,スポーツセンターの契約案件に競争性を導入することやスポーツセンターの施設の一部ないしは全部を民間企業に貸し付け,その運営をゆだねるとともに,その民間企業から施設使用料を得て赤字を削減するなどの方策が議論されていた。 Cは,平成11年ころからα区が発注する業務に関連して,α区の当時助役であったFと親交を深め,同人に対し飲食接待をするなどしていたが,平成12年4月ころ,Fはα区の当時教育長であったGに,Bにスポーツセンターの管理業務を任せたらどうかなどと提案し,Gも競争性を導入した際は,Bに受注させようと考えるようになった。F及びGは,平成12年夏以降,Cに対し,スポーツセンター管理契約について, スポーツセンターの管理業務を任せたらどうかなどと提案し,Gも競争性を導入した際は,Bに受注させようと考えるようになった。F及びGは,平成12年夏以降,Cに対し,スポーツセンター管理契約について,将来競争性が導入されるなどという情報を伝えていた。 (2)本件選挙とBの対応平成13年5月27日に実施された本件選挙には,被告人及び前助役のFらが立候補し,被告人が当選した。 本件選挙の期間中,Cは,懇意にしていたFを応援するため,選挙要員としてBの従業員1名を派遣し,またα区内に居住するBの従業員名簿を提供する- 6 -とともに,選挙資金として現金500万円を提供した。他方,Cは,Bの顧問で,被告人が懇意にしていた当時の衆議院議員Hの秘書官であったIから,被告人の方が優勢である旨聞かされ,被告人が当選しても不都合が生じないようにと考え,Iを通じて,被告人に対し,現金30万円を提供した。 (3)平成13年10月1日(以下「10月1日」という。)の飲食接待までの状況ア前記(1)のような経緯で,Cは,Gらから,スポーツセンター管理契約をBが受注するよう勧められていたものの,同契約を競争に出すについては区議会議員が絡んでいるという話を聞いていたため,当初は受注にあまり乗り気ではなかった。しかし,平成13年6月ころ,Gから施設の一部を民間に貸し付けるなどの話を聞き,同契約をBが受注したいと考えるようになり,Bの専務取締役であったJに同契約の受注に向けた営業活動をするよう指示した。 イCは,同年7月17日,前日付けでα区助役に就任したGを訪ねてα区役所に赴き,Gに助役就任祝いのあいさつをし,10万円の商品券を渡した。 Gは,翌18日,被告人に対し,Cがあいさつに来たことを報告した。 ウJは,同年7月以降,Gを介し,社会体育課課長の紹介を受けた 所に赴き,Gに助役就任祝いのあいさつをし,10万円の商品券を渡した。 Gは,翌18日,被告人に対し,Cがあいさつに来たことを報告した。 ウJは,同年7月以降,Gを介し,社会体育課課長の紹介を受けたり,実際にBの技術系職員にスポーツセンターを視察させるなどして,同契約の受注に向けて営業活動を進めていった。 エCは,同年8月下旬,Gの仲介によって,被告人と面会できることとなり,Jとともに,α区役所4階応接室(以下「応接室」という。)で被告人と面会した(以下,この面会を「8月の面会」という。)。 オCは,同年9月ころ,被告人に電話をし,食事を一緒にする機会を設けたい旨要請し,10月1日午後6時から会食をすることとなった。 カ10月1日の飲食接待について被告人は,10月1日午後6時ころ,東京都港区所在の飲食店甲の客室乙- 7 -において,C,Jとともに酒食をともにした。Cは,宴席終了間際,被告人に対し,二次会を誘い,被告人もこれを了承した。被告人らは,タクシーに乗り,被告人がしばしば利用していたクラブ丙に行き,飲酒,歌唱するなどした。被告人は,丙には1時間程度いた後,Bのタクシーチケットを使用してタクシーで帰宅した。 甲,丙における各飲食代金は,Bが負担をした。 (4)Bが平成14年度本庁舎管理契約及び同スポーツセンター管理契約(以下,年度を問わず,上記各契約を併せて「本庁舎及びスポーツセンター管理契約」ともいう。)を受注するまでの状況ア被告人は,平成13年12月13日,応接室において,C,Jと面会した。 被告人は,Cらに対し,K党のL議員連盟のパーティー券を20枚購入してほしいと依頼し,Cらはこれを了承した。 イまた,被告人は,平成14年1月18日,区長室の前の廊下で,C,Jと会った。 ウ平成14年2月26日,スポーツセンター管 盟のパーティー券を20枚購入してほしいと依頼し,Cらはこれを了承した。 イまた,被告人は,平成14年1月18日,区長室の前の廊下で,C,Jと会った。 ウ平成14年2月26日,スポーツセンター管理契約の固定経費部分に関し,Bを含む4社による見積競争が行われたが,同契約が入札ではなく見積競争で行われることになったのは,Bが見積書を提出する前に,Gにおいて他社の見積金額をBに教示するためでもあった。そして,Gは,同日午後,Bを除く3社の見積金額をα区の当時総務部長であったMに指示して調べさせ,これをJに暗に教示した。その後,Bは,見積金額を7880万円とする見積書を提出し,上記4社の中で最低金額を提示し,同契約を受注することとなった。そして,Bは,同契約を随意契約により,上記見積金額に変動経費,消費税を加えた約1億6264万円で受注した。 エまた,平成14年度本庁舎管理契約については,同年3月,Bを含む12社による指名競争入札が実施された結果,Bが同契約を落札し,約8893万円でこれを受注した。 - 8 -(5)平成14年5月24日(以下「5月24日」という。)の面会までの状況アBによるスポーツセンターの運営に関しては,当初,スポーツセンターのプールの監視員の数が少なく管理体制に不安があるとか,水泳教室の指導員に子供たちがなじみにくいなどと,利用者から区役所に苦情が殺到し,この問題がα区議会文教委員会で取り上げられるなどした。被告人は,平成14年4月24日,区民の声を聞くため,スポーツセンターにおいて,○○と称する区民集会を開催した。Cは,同年5月ころ,Gから電話を受け,赤字になっても,お金をかけ,きちんとした仕事をしてほしいなどと言われた。 イ被告人は,5月24日,応接室において,Cと面会した。Cは,スポーツセンター管理契約 は,同年5月ころ,Gから電話を受け,赤字になっても,お金をかけ,きちんとした仕事をしてほしいなどと言われた。 イ被告人は,5月24日,応接室において,Cと面会した。Cは,スポーツセンター管理契約をBが受注できたことのお礼及びスポーツセンターで出た苦情についての謝罪を被告人に伝えた。被告人は,業者が変われば苦情は多少出る,苦情については被告人も区民集会を開いたなどと述べた。 (6)平成15年度以降の本庁舎及びスポーツセンター管理契約の受注状況ア本庁舎管理契約は,平成15年度については,指名競争入札の結果,約8893万円で,また,平成16年度については,指名競争入札の不調を経た上,随意契約により約8899万円で,いずれもBが受注した。 イスポーツセンター管理契約については,平成15年度,平成16年度のいずれについても,特命随意契約により,Bがこれを受注した。両年度とも,平成14年度の同契約に含まれていなかったスポーツセンターの清掃委託業務も一括して受注契約することとなり,受注金額は,約1億8000万円台であった。 (7)指名業者選定における被告人の関与アα区においては,指名競争入札等を行うに際し,予定価額の金額が2000万円以上の契約については,指名業者選定委員会への付議を要することとされており,同委員会の委員長は助役が務め,企画部長,総務部長,主管部長等が同委員会委員を務めていた。 - 9 -イ被告人は,平成14年2月21日,G及びMから,翌22日に開催される指名業者選定委員会に付議する案件,すなわち,①α区立小・中学校機械警備委託,②スポーツセンター清掃業務委託,③α区立αふるさと文化館・α区立β図書館建物維持管理業務委託,④本庁舎管理契約に関する指名業者の選定案について説明を受けた(以下,この説明を「2月の事前説明」と 託,②スポーツセンター清掃業務委託,③α区立αふるさと文化館・α区立β図書館建物維持管理業務委託,④本庁舎管理契約に関する指名業者の選定案について説明を受けた(以下,この説明を「2月の事前説明」という。)。 (ア)被告人は,かねて,株式会社N(以下「N」という。)のOから同社を指名業者に入れてほしいと頼まれていたところ,上記事前説明において,Gから,前記③④の選定案に含まれている業者のうち,悪いうわさがあるP株式会社及び最近営業活動に来ていないQ株式会社の両社については,指名から外したいとの相談を受けたことから,これを了承するとともに,その代わりにNを前記④の指名業者に入れるよう指示した。 (イ)Mは,平成13年夏ころ,被告人から株式会社R(以下「R」という。)の役員らを紹介され,Rがα区の仕事ができるよう検討してほしいと指示されていた。α区立小・中学校の機械警備については,S株式会社(以下「S」という。)の独占状態にあったが,Mは,平成13年9月,新設2校舎に関し,Rを含めた3社による指名競争入札を実施したほか,平成14年度のα区立小・中学校の機械警備に関する前記①についても,上記3社による指名競争入札を実施するとの案を策定した。 しかし,被告人は,2月の事前説明において,Mの提案に満足せず,既に初期投資を行っているSとでは競争にならないとし,分割発注を検討してほしいと述べたが,Mは,日程的にも迫っているので今年度はこれでやらせてほしい,平成15年度は分割に向けて検討したいなどと答えた。 (ウ)また,被告人は,かねて,Mに対し,株式会社T(以下「T」という。)について,その経営者が自己と政治的に対立する区議会議員の息子であったため,これを指名から外すよう指示していたが,2月の事前説明- 10 -においても,前記②のスポーツセ T(以下「T」という。)について,その経営者が自己と政治的に対立する区議会議員の息子であったため,これを指名から外すよう指示していたが,2月の事前説明- 10 -においても,前記②のスポーツセンター清掃業務委託契約の指名業者案にTが入っていることを発見し,Mらにこれを指名から外すよう指示した。 第3争点に対する判断 C証言について(1)C証言の概要と本件争点における位置付けC証言の概要は次のとおりである。 すなわち,本件選挙でFを応援したことなどから,本庁舎管理契約の指名から外されるのではないか,また,新規の仕事についても指名を受けられないのではないかと不安を覚え,被告人にあいさつをしなければならないと感じていた。そのような中,8月の面会で,被告人からBが本件選挙で反対派を応援していた旨指摘されるなど嫌みを言われ,また,同業者からBは反対派を推したので来年は危ないなどという話を聞き,賄賂を贈る必要があると考えた。そこで,10月1日,甲で被告人を飲食接待した機会に50万円を渡した。その後,平成14年度本庁舎及びスポーツセンター管理契約を受注できたが,同年4月以降,スポーツセンターの運営でトラブルが相次ぎ,Gからきちんと仕事をしてくれという電話を受けるなどし,大変まずい,1年で契約を切られては困るなどと思った。そこで,会社としての苦情処理の報告書をα区に提出した翌日である5月24日,同区役所に赴いて応接室で被告人と会い,上記契約を受注できたことやこれから先のこと,更にはスポーツセンターにおける苦情に対するおわびの気持ちを込めて,現金100万円を被告人に渡した。 Cは,本件贈賄者であるところ,現金授受に関する客観的証拠やその場面を目撃した第三者がおらず,しかも,被告人の自白もない本件においては,C証言はこの点に関する唯一の直接証 00万円を被告人に渡した。 Cは,本件贈賄者であるところ,現金授受に関する客観的証拠やその場面を目撃した第三者がおらず,しかも,被告人の自白もない本件においては,C証言はこの点に関する唯一の直接証拠であるから,その信用性は慎重に判断する必要がある。 (2)C証言の信用性とこれによって認定できる事実関係アまず,Cは,公判廷において,本件選挙に至るまでの被告人との関係に関- 11 -し,次のとおり証言する。 すなわち,被告人とは,都議時代からの後援会を通じての付き合いで,年間12万円の寄附を平成12年度まで支払い続けていた。また,被告人の新聞に毎年広告を出し,毎年数十万円を支払っていた。しかし,平成13年3月,経理の担当者である当時の副社長U(以下「U」という。)又は経理部長のV(以下「V」という。)とともに,経費の見直しのため,各種団体の一覧表の中から,4月からここをやめようなどと決め,後援会費の支払をやめるよう指示した。本件選挙の際は,以前から親交のあった前助役のFを応援し,Bの社員の1人を応援要員として派遣し,B社員でα区内に在住する者の名簿を提供するとともに,選挙資金として500万円を提供した。選挙の最中に,被告人側が優勢であるという話を聞き,被告人が当選しても話に行けるようにと思い,Iを通じて被告人に30万円の提供をした。BがFを応援していたことにつき,あれだけの町だから,当然どこかから情報は漏れ,被告人に伝わるだろうと思っていた。 上記証言部分のうち,本件選挙でFを応援した内容は,Fの捜査段階の供述と符合し(証拠略),また,本件選挙に至るまでの後援会等に対する支払についても,後援会及び被告人主催の政治団体名義の通帳の記載と整合的である(証拠略。なお,後援会費の支払をやめたとCが述べている点と後援会の通帳の記載との関係に 選挙に至るまでの後援会等に対する支払についても,後援会及び被告人主催の政治団体名義の通帳の記載と整合的である(証拠略。なお,後援会費の支払をやめたとCが述べている点と後援会の通帳の記載との関係については,後記(4)エ(ア)のとおりである。)。 イまた,Cは,公判廷において,平成13年7月17日にGにあいさつをするまでの状況に関し,次のとおり証言する。 すなわち,本件選挙後,被告人が当選したので後援会費の支払を復活させた。被告人は,α区のトップなので,指名業者選定の権限を持っていると思っていた。Bは,本件選挙で反対派を応援したので,本庁舎管理契約の指名から外されるのではないか,新規の仕事も難しいのではと思っていた。本庁舎管理契約は,Bの創業者であるDがかなり早い段階で獲得した官公庁の仕- 12 -事であり,特別な思い入れがあった。平成13年5月下旬か6月初旬ころ,Gが助役になるということを聞き,以前から親交のあったGを通じて被告人へのあいさつの取次ぎや仲介などをしてもらえると思った。助役就任の前に,Gと面会をしたことがあるが,助役就任が正式に決定した段階ではなかったので,そんなに負担をかけてはいけない,翌年度の契約までまだ時間があると思い,被告人へのあいさつの取次ぎは頼まなかった。Gが助役に就任した翌日に,同人にお祝いのあいさつに行った。その際,Gに対し,選挙のときにFを応援したので,被告人へあいさつに行ける状態ではなく,いまだに行っていない,被告人へあいさつをしたいので,セットしてほしいと話した。 そして,すぐにGに被告人へ連絡をしてもらったところ,来客中か不在で,被告人には会えなかった。この日,Gに商品券を10枚渡した。 上記証言部分のうち,Gが助役に就任した翌日である平成13年7月17日にCと面会したことについては,区長と助役の たところ,来客中か不在で,被告人には会えなかった。この日,Gに商品券を10枚渡した。 上記証言部分のうち,Gが助役に就任した翌日である平成13年7月17日にCと面会したことについては,区長と助役の予定が記載されていたダイアリー(以下「ダイアリー」という。)の記載からも裏付けられており(証拠略),また,本件選挙の結果を受けて後援会費の支払を復活させたということに関しても,本件選挙の結果が出た後に後援会費の支払が行われているという客観的証拠(証拠略)と整合的である。また,Jは,公判廷において,本件選挙後,Cが本庁舎の入札等で指名から外されるなどと心配していた,CがFを応援していた関係で被告人にあいさつに行きづらいという発言をしていた,CはGに対し被告人へのあいさつの仲介を依頼していた,平成13年7月16日か17日に,Cから,Gと面会をするということで商品券の準備を指示された,その日Cが区役所から帰ってきた際,被告人と会えなかったと言っていたなどと証言し,Cが本件選挙後,指名から外されるなどと心配していたことや,Gを通じて被告人と面会をしようとしていたことなどに関し,Cの上記証言部分と一致する内容の証言をしている。さらに,Gは,公判廷において,助役に就任した翌日にCと面会し,Cは,区長さんが替わ- 13 -られたけれども,本庁舎及びスポーツセンター管理契約については大丈夫であろうかなどと言った後,被告人へのあいさつが終わっていないと言ったので,随分遅いではないかと聞くと,Cは,Fを応援したので,非常に行きづらいと言っていた,私は,区長の所にあいさつをした方がよいと言い,秘書と連絡をとったところ,その日は予定が詰まっており面会はできなかった,この日Cから助役就任のお祝いとして商品券10万円をもらったなどと証言しており,Cが本件選挙で反対 さつをした方がよいと言い,秘書と連絡をとったところ,その日は予定が詰まっており面会はできなかった,この日Cから助役就任のお祝いとして商品券10万円をもらったなどと証言しており,Cが本件選挙で反対派を応援したことから,本庁舎及びスポーツセンター管理契約についての不安を抱いていたこと,被告人へのあいさつができずにいたことなどに関し,Cの上記証言部分と一致する内容の証言をしている。 ウ次に,Cは,公判廷において,8月の面会に至るまでの状況に関し,次のとおり証言する。 すなわち,Gに被告人とのあいさつの機会を設けてもらうため,Gをゴルフに誘った。ゴルフの際,Gに,被告人と会えるようにしてほしい,食事でもできないかとお願いした。Gは,その場では,時間を下さいと答えるだけだった。その後,しばらくGから連絡はなく,8月のお盆を過ぎ,焦りのような気持ちも感じてGに再度電話をかけ,被告人へあいさつをしたいと伝えた。Gに被告人の予定等を確認の上,面会の時間等を知らせてもらい,被告人と面会するためJとともに区役所に赴いた。そして,まず,Gの所に行き,被告人へあいさつをすると伝え,その後,応接室で被告人と面会した。被告人に対し,本件選挙当選以来,あいさつが遅れて誠に申し訳ございませんなどと言うと,被告人から,「あなたのところが反対派を応援したんだね。」といきなり言われた。私は,とんでもないことになってしまったなどと思い,どちらも応援せずに動きませんでしたと言ったものの,被告人から,「僕は何でも知ってるんだよ。」と言われた。その際の被告人の様子は,顔は笑っていたが,目は笑っておらず,冷たく感じられた。そのほか被告人から区長- 14 -になって以来1日も休んでいないと言われ,あいさつが遅れたことに対する痛烈な嫌みであると感じた。私はひたすらおわびするしか が,目は笑っておらず,冷たく感じられた。そのほか被告人から区長- 14 -になって以来1日も休んでいないと言われ,あいさつが遅れたことに対する痛烈な嫌みであると感じた。私はひたすらおわびするしかなく,早く引き上げたいという気持ちでいっぱいだった。私は,被告人に相当悪い印象を持たれていると感じ,指名から間違いなく外される,スポーツセンターでの新規の仕事も呼んでもらえないと思った。面会時間は全部で10分か15分くらいであった。被告人との面会後,Gの所に行き,被告人から選挙のことで痛烈に嫌みを言われてしまった,このままでは先行きはないので,是非,区長と食事ができるような時間をとってもらえないかと頼んだ。Gには,「まあ,少し時間をかけるしかないね。」と言われた。また,Jに対しても,まずいことになった,被告人に飲食接待をする必要があると話した。 上記証言部分に関し,Jは,公判廷において,平成13年7月22日,G,Cらとゴルフに行った際,はっきりとは覚えていないが,Cが,Gに対して被告人への仲立ちをお願いしていたように思う,8月の面会の際も,当日,Cから区長にあいさつに行くから一緒に来てくれと言われ,応接室で被告人と面会をした,Cがまずあいさつをしたところ,被告人からBさんは向こうを応援したんだよねということを言われ,Cが,私どもはどちらでもなく中間の立場でいたつもりですというようなことを言うと,被告人は,ああ,分かっているよというようなことを言った,私は,被告人はBがFを応援したことを知っているよとの趣旨であると理解した,その後,被告人から区長に就任して以来1度も休んでいないなどと言われた,面会の時間は5分か10分ぐらいでその際の雰囲気は終始気まずかった,この面会を受けて入札時の指名等に影響があると思い不安になった,その後,CとともにGと面 任して以来1度も休んでいないなどと言われた,面会の時間は5分か10分ぐらいでその際の雰囲気は終始気まずかった,この面会を受けて入札時の指名等に影響があると思い不安になった,その後,CとともにGと面会し,その際,正確な文言はよく覚えていないが,CがGに被告人との仲を取りもってもらうようなことを言っていた,そして,区役所から出た後,Cと話をし,Cが指名や新規物件の受注について悪影響があるかもしれない,被告人と会食か何かしなきゃ駄目かなと話していたなどと証言し,8月の面会の前- 15 -後にCがGに被告人との仲立ちを依頼していたことや,8月の面会の際の会話の内容や雰囲気,この面会後Cが指名から外されるなどと心配し,会食の設定を考えたことなどにつき,Cの上記証言と一致する内容の証言をしている。また,Gも,公判廷において,平成13年7月22日にCらとゴルフに行った際,Cから早く被告人にあいさつできる機会を作ってほしいと頼まれ,また,食事にでもお誘いしたらいいかなと聞かれた,私は,それはそういう形でもいいんじゃないと答えた,同年8月11日から16日まで夏休みをとっていたところ,夏休み明けに,Cから電話があり,被告人とお会いできないかと聞かれ,被告人に確認をしたところ,いいよというような返事だったので,Cに面会ができる旨連絡した,Cらは被告人と面会する前に助役室に寄り,その後多分応接室で被告人と面会した,その後,Cらは助役室に立ち寄ったが,戻ってくるまでの時間は10分程度だった,助役室に戻ってきたCは,意気消沈しており,困ったという感じで,選挙でFを応援したことを自分は知っているぞというようなことで嫌みを言われ,そのほかの言いたいことが言えなかったと話していた,私は,前からの知り合いだとCから聞いており,あいさつに行けば関係は改善すると思って 援したことを自分は知っているぞというようなことで嫌みを言われ,そのほかの言いたいことが言えなかったと話していた,私は,前からの知り合いだとCから聞いており,あいさつに行けば関係は改善すると思っていたので,意外であった,私は,被告人がBに対して否定的感情を持っており,本庁舎及びスポーツセンター管理契約からBが排除されることもあり得るのかなと思った,Cが帰る際,きちんと被告人と話ができる機会を作ってほしいと言われた,この際であったかどうか記憶は定かではないが,Cから被告人と会食をしたいという話を聞いたかもしれないなどと証言し,8月の面会の前後にCがGに被告人への仲立ちを希望していたこと,8月の面会後,Cが被告人から本件選挙のことを指摘され,困惑していたこと,本庁舎及びスポーツセンター管理契約への影響も考えたことなどにつき,Cの上記証言部分と一致する内容の証言をしている。 エまた,Cは,公判廷において,10月1日に被告人と会食するまでの経緯- 16 -に関し,次のとおり証言する。 すなわち,8月の面会後,Gとゴルフをする機会があり,その際にも,是非被告人との食事の機会をお願いしますと話したが,Gは,ちょっと待ってと言うだけで,具体的なことは決まらなかった。ゴルフが終わって間もなくのころ,Gに電話をし,被告人との食事の機会を設けてほしいと再度お願いをすると,Gは,直接電話をしてもいいんじゃないか,今ならいるよと答えた。そこで,私は,被告人に電話をし,お食事の時間をちょうだいできないかと話し,10月1日午後6時に会食をすることになった。電話をする際,電話に出てもらえない,出てもらえても食事の誘いを断られるということも考えており,その場合,来年度の仕事の保証はないと思っていた。この時点では,被告人に賄賂を贈ることは考えていなかった。その後 際,電話に出てもらえない,出てもらえても食事の誘いを断られるということも考えており,その場合,来年度の仕事の保証はないと思っていた。この時点では,被告人に賄賂を贈ることは考えていなかった。その後,NのW社長及びO東京支店長と赤坂のクラブで一緒に飲食する機会があり,その際,Oから,Bは選挙で反対派を推したので来年は危ないという話を聞いた。Oは古くから後援会に加入しており,被告人は自分の言うことを聞いてくれると話しているのをよく耳にしていたので,被告人とそのような関係にあるOの上記発言は,相当真実みがあると思っていた。また,XのY社長(以下「Y」という。)からもBは駄目だという話を聞いたことがあった。私は,このままでは本当に駄目になる,ただ飲食接待するだけではどうにもならない,お金を渡さなければ駄目だと思った。賄賂を贈るのは当然いけないことだと分かっていたが,本庁舎管理契約の指名から外されたくない,スポーツセンター管理契約も受注したいと思い,現金を贈ることとした。甲の予約はJにさせ,また,二次会として,被告人の行きつけの店であると聞いていた丙を予約した。丙には,J及びもう1人の社員とともに下見に行った。 上記証言のうち,CがJらとともに,丙を下見したことについては,丙の領収書の存在(証拠略)という客観的な証拠からも裏付けられている(丙が発行したB宛ての領収書は2通存在するところ,そのうち代金が11万円の- 17 -方は,後述するように10月1日の際の飲食に係るものと認められ,また,代金が4万円の方は,作成日が記載されていないため,いつ発行されたものかを正確に知ることはできないものの,同月2日付けでB経理部の印が押されていることからすると,10月1日に近接する日時に丙で発行されたものと考えられ,また,同領収書の右わきに「C」「J」等の たものかを正確に知ることはできないものの,同月2日付けでB経理部の印が押されていることからすると,10月1日に近接する日時に丙で発行されたものと考えられ,また,同領収書の右わきに「C」「J」等の記載があることからすると,少なくともCとJが10月1日に近接する日時に丙に行ったものと認められ,上記下見の際の飲食に係るものと考えられる。)。また,Jは,公判廷において,9月中旬ころに,Cから,被告人との会食が10月1日の6時に決まり,被告人がよく行く店が赤坂にあるのでその近くの店を予約してほしいと言われた,丙で二次会を予定し,CとBの社員がもう1人いるかいないかで丙に下見に行ったなどと証言し,Cから10月1日の際の会場の手配を頼まれた状況や,丙に下見に行ったことなどにつき,Cの上記証言と一致する内容の証言をしている。また,Gは,公判廷において,Cから電話があり,被告人と早く会いたい,会食できるようにしてほしいと依頼された,会食の設定を私がするわけにはいかないと思い,直接被告人に電話をしてもいいのではないかと伝え,また,被告人の在室,予定等を確認した上で,今電話してみてくださいと伝えた,しかし実際にCから会食の予定がとれたという話は聞いていないなどと証言し,Cから,被告人との面会,会食の設定を依頼されたが,自ら被告人と交渉するよう答えたことなどにつき,Cの上記証言と一致する内容の証言をしている。 オそして,Cは,公判廷において,10月1日の状況に関し,次のとおり証言する。 すなわち,10月1日は午後4時半ころに会社を出たので,その直前に,社長室の金庫を開けて100万円の束を取り出し,そこから帯封を外して50万円を取り分けた。50万円という金額は2度数えた。いすの後ろにある書棚から白封筒を取り出し,50万円をその中に入れ,背広の内ポケットに 金庫を開けて100万円の束を取り出し,そこから帯封を外して50万円を取り分けた。50万円という金額は2度数えた。いすの後ろにある書棚から白封筒を取り出し,50万円をその中に入れ,背広の内ポケットに- 18 -入れた。金庫の中には,会社からもらう特別手当,株式配当等の個人的現金のほか,会社から仮払いとして渡されている現金を入れており,当時は300万円から500万円くらいは入っていたと思う。50万円という金額が多額であるという認識はあったが,あまり少なくてもどうかなというのと,それ以上のものは出せないということから,ちょうど区切りがよいところと思い,決めた。食事の誘いを受けてもらったので,賄賂を受け取ってもらえると思っていた。甲には午後5時30分ないし40分ころに着き,被告人は,午後6時ころに来た。乙に通され,私が,選挙の折には,この前にも申し上げましたけど失礼いたしましたと話すと,被告人から,「僕は根に持つ方じゃないんだよ。」と言われ,少し気持ちが楽になった。そのほか,本庁舎の件よろしくお願いしますとか,スポーツセンターの件,新しく出るようですが,是非何とかよろしくお願いしますと話したところ,被告人は,「いや,それは僕に言われても困るんだよ,G君とやってちょうだい。」と答えた。 被告人の機嫌は,8月の面会の時とは全然印象が違い,柔らかい感じで接してもらった。被告人に,もう1軒いかがでしょうかと二次会に誘い,被告人の承諾をもらった。二次会に行く車の準備と,代金の精算にJを立たせた後,Jやほかの人が来ないうちにお金を早く渡さなければと思い,5分前後の間をおいた後,お互い席を立ち,部屋の出口の方に向かったときに,出口の所で被告人を迎え入れるような感じで,これをお使いくださいと言いながら,白封筒入りの現金を渡した。被告人は,「ああ,どうも。 後の間をおいた後,お互い席を立ち,部屋の出口の方に向かったときに,出口の所で被告人を迎え入れるような感じで,これをお使いくださいと言いながら,白封筒入りの現金を渡した。被告人は,「ああ,どうも。」と言い,封筒を受け取り,背広の内ポケットに入れた。被告人が封筒を受け取った際,中身を確認するような言葉,動作はなかった。Jがいない場で賄賂を渡したのは,当時,Jは営業をしていたので,そういう場面を見せるのはどうかなと思ったからである。賄賂を渡すことを,事前にだれかに話したり,相談したことはなく,自分で決めた。その後,丙に行き,被告人はエレクトーンで何曲か歌うなどしたが,すこぶる機嫌はよかった。丙に1時間ほどいた後,被告人- 19 -は,Bのタクシーチケットを使って帰宅した。甲,丙での飲食代金は,すべてBが負担した。二,三日してから,Gに,電話で,10月1日の会食の報告をし,被告人に機嫌をよくしていただいたと話した。しかし,賄賂を渡したことは話していない。また,それから四,五日の間に,Jに対しても,この前は御苦労さん,「ちゃんとしてあるからな。」と伝えた。Jは,最初は「えっ」という顔をしたが,すぐに理解したような表情をした。お金については,言うのはどうかなと思っていたので,はっきり現金を渡したとか,50万円を渡したとは伝えなかった。 上記証言のうち,10月1日,甲でC,Jが被告人と飲食をしたことは,10月1日の日付が記載されている甲の領収書の存在(証拠略),ダイアリーの10月1日欄の記載(証拠略),被告人の公用車利用状況が記載された運転日誌の10月1日欄の記載(証拠略)といった客観的な証拠によって裏付けられている(なお,甲の上記領収書の左わきに「社長」「J」のほか「Z」という記載があるのは,参加者の氏名として被告人の名前を書くのははばか 月1日欄の記載(証拠略)といった客観的な証拠によって裏付けられている(なお,甲の上記領収書の左わきに「社長」「J」のほか「Z」という記載があるのは,参加者の氏名として被告人の名前を書くのははばかりがあると考え,架空の人物名を記載したものと認められる。)。また,甲の後に被告人が丙に行ったことも,丙における領収書に「社長」「J」のほか「Z」との記載がなされていることや(証拠略),Bのタクシーチケットが10月1日に,赤坂から被告人居住のα区sまで使用されているという事実(証拠略)によって裏付けられている。また,Jは,公判廷において,10月1日,甲には午後5時30分くらいに到着した,玄関の外で被告人の到着を待っていたところ,午後6時ころ被告人が一人で来た,乙において,Cが,あいさつをした後,本件選挙においてFを応援したことなどにつき謝罪をした,被告人は,「根に持つようなタイプじゃないんで。」などと答え,さらにCが,本庁舎の管理等も数十年やらせてもらっています,スポーツセンターの方も今営業活動中です,よろしくお願いしますと言うと,被告人は,スポーツセンターについてはG助役とやってくださいというよう- 20 -なことを言った,被告人の雰囲気は終始にこやかであった,甲での飲食が終わりかけたころ,Cが被告人を二次会に誘い,被告人がこれを了承したところ,私は,二次会に行くためのタクシーを呼びに甲の外に出た,その後丙に行き,カラオケをするなどした,その後被告人はBのタクシーチケットで帰宅した,10月1日から一,二週間後に,Cから,来年度の入札等の話をしていたとき,本庁舎は大丈夫かなという会話の中で,Cが「あのときちゃんとやったから大丈夫だよ。」というようなことを言い,Cにはどういう意味なのかということは尋ねなかったが,10月1日に飲食接待をしたこと たとき,本庁舎は大丈夫かなという会話の中で,Cが「あのときちゃんとやったから大丈夫だよ。」というようなことを言い,Cにはどういう意味なのかということは尋ねなかったが,10月1日に飲食接待をしたことに加えて,現金を渡したという趣旨もあるのではないかと思った,Cから事前に賄賂を渡すことは聞いていなかったなどと証言し,甲における会話の内容や雰囲気,会食後にCが,ちゃんとやったからという発言をしたことなどにつき,Cの上記証言と一致する内容の証言をしている。また,Gは,公判廷において,何かのときに,Cに対し,区長との関係がどういうふうになったかと聞いたところ,Cは「いや,うまくいきましたよ。」と言ったなどと証言し,C,Gのいずれから話を切りだしたかについては齟齬があるものの,Cから被告人への接待がうまくいったという話を聞いたという点では,Cの上記証言と一致している。 カまた,Cは,公判廷において,平成14年4月までの状況に関し,次のとおり証言する。 すなわち,平成13年12月中旬ころ,Jとともに被告人に対し暮れのあいさつに行ったところ,被告人からパーティー券の購入を頼まれた。また,平成14年1月17日,Gから電話があり,業者の選定のことについて話したいので,翌日区役所の方に来てほしい,午後も区長に会ってもらいたいので時間をあけておいてほしいと言われ,翌18日午前10時過ぎころ,Gと面会した。Gからスポーツセンターの契約は,Bと同社の関連会社であるA1のどちらでいくのかと聞かれ,私は,長年同契約を受注してきたEの規模- 21 -と実績を考えると,A1では無理であろうと考え,Bでお願いしますと答えた。この機会に,Gに,競争条件として,遠隔監視システムの導入をお願いできないかと話し,Gは,分かったと答えた。昼休みにJと待ち合わせをし,午後1時 1では無理であろうと考え,Bでお願いしますと答えた。この機会に,Gに,競争条件として,遠隔監視システムの導入をお願いできないかと話し,Gは,分かったと答えた。昼休みにJと待ち合わせをし,午後1時過ぎころ,Jとともに応接室に入る手前の廊下で被告人と面会をした。そして,「αスポーツセンターの件,Bでいかせていただくことになりました,よろしくお願いします。」と言ったところ,被告人は,「頑張ってね。」と言った。その後,スポーツセンター管理契約をBで受注することができたが,赤字となるような安い価格で受注してしまった。 上記証言のうち,平成13年12月13日,平成14年1月18日に,Cが被告人と面会していることは,ダイアリーの上記両日欄の記載によって裏付けられている(証拠略)。また,Jは,公判廷において,平成13年12月中旬に,Cとともに被告人と面会し,その際被告人からγ党関係のパーティー券の購入を依頼された,平成14年1月中旬にも,Cとともに,応接室の前の廊下で,被告人と会い,その際,当時スポーツセンターの関係については,Bと関連会社のA1の双方が営業活動をしていたところ,Cが,被告人に対し,Bでいくと伝えた,その後,Bがスポーツセンター管理契約を受注したなどと証言し,平成13年12月13日,平成14年1月18日の際のCと被告人の面会の内容につき,Cの上記証言と一致する内容の証言をしている。また,Gは,公判廷において,平成14年1月半ばを過ぎて,被告人にBとして社長自らスポーツセンターの受注をしたいということのお願いを最終確認の意味でしたほうがいいとCに言い,被告人の日程も見て会う日を決めた,同月18日,Cに区役所に来てもらい,私がまずCと会い,BとA1のいずれがスポーツセンター管理契約を受注するのかを聞き,Bでいくということを確認し,その Cに言い,被告人の日程も見て会う日を決めた,同月18日,Cに区役所に来てもらい,私がまずCと会い,BとA1のいずれがスポーツセンター管理契約を受注するのかを聞き,Bでいくということを確認し,その後被告人との面会の際にも同席をする予定であったが,別件があったため,Cに,「私は出られないけれども,ちゃんとお願いしなさい。」と言って別れた,その後,スポーツセンター管理契約はBが- 22 -受注したなどと証言し,平成14年1月18日のCとGとの面会経緯,内容につき,Cの上記証言と一致する内容の証言をしている。 キCは,公判廷において,平成14年4月以降の状況に関し,次のとおり証言する。 すなわち,平成14年4月以降,スポーツセンターの運営に関し,子供が指導員にいじめられた,お金の収支が合わない,水質が悪いなどとたくさんのクレームが発生した。同月19日から30日まで中国にBの役員らと一緒に旅行に行っていたが,その最中,当時のα区教育長であったB1にUらが呼ばれて,来年の指名はしない,年度の途中でも契約を切るというようなおしかりを受けたという話を聞いたが,代表者が行っての謝罪で何とか収めてもらわなければ仕方ないと思い,旅行はそのまま続けた。4月末に帰国し,5月の連休明けに出社したところ,Uから報告を受け,B1に,翌年は指名に入れない,仕事もないというような乱暴なことを言われたという話を聞いた。本当はすぐにでもB1の所におわびに行かなければと思ったが,改善をした上で行かないと,それこそ来年の指名もしないということに言及されるのではないかと思った。そのほか,区議会の何かの委員会の方で,スポーツセンターの業者を変えたため,仕事がちゃんとできていないというおしかりを受けたという報告があったほか,Gからも電話を受け,お金をかけて赤字にしても,きちん ほか,区議会の何かの委員会の方で,スポーツセンターの業者を変えたため,仕事がちゃんとできていないというおしかりを受けたという報告があったほか,Gからも電話を受け,お金をかけて赤字にしても,きちんとした仕事をやってくれと言われた。業者が変わって多少のクレームが出るということは認識していたが,そこまでのおしかりを受けるとは思わなかった。せっかく安い価格でスポーツセンターの契約を受注したのに,それを1年で切られるのは大変まずいと思った。 上記証言に関し,Jは,公判廷において,平成14年4月1日からスポーツセンターの運営を行っていた,しかし,同日から1週間くらい水泳教室の管理費のお金が合わないというトラブルが発生し,α区の社会体育課に謝罪に行くなどした,その後,私は,Cらとともに旅行に行ったが,その際にも,- 23 -スポーツセンターにおいて,プールの水をBの技術員が濁らせた,子供たちの親からクレームが入るなどというトラブルが発生し,私は,U及び常務のC1から,B1からすごいけんまくで怒られたという話を聞いていたが,旅行中にはCに報告しなかった,旅行から帰った後,Cに報告をしようと思ったら,Cは既に知っており,Cは近いうちにあいさつに行かなくてはと言っていた,区議会でもこの問題が取り上げられたことをCは知っており,やはりまずいなと言っていた,Cは,あまりにもクレームが多いようであれば,この1年で契約を切られるかもしれないと言っていたなどと証言し,同年4月以降スポーツセンターで発生したトラブルの状況や旅行後Cがスポーツセンター管理契約を翌年度以降も受注できるか心配をしていたことなどにつき,Cの上記証言と一致する内容の証言をしている。さらに,Gは,公判廷において,平成14年4月にBがスポーツセンターの管理業務を開始した当初,プールについて, 受注できるか心配をしていたことなどにつき,Cの上記証言と一致する内容の証言をしている。さらに,Gは,公判廷において,平成14年4月にBがスポーツセンターの管理業務を開始した当初,プールについて,監視員の数が少ない,指導員に子供がなじめない,水質が悪いなどといった苦情が相次ぎ,区議会の文教委員会の方でもこの問題が取り上げられた,苦情が出てすぐのころに,Jに対し,受けてすぐの苦情は,会社にとって大きなイメージダウンだ,お金をかけてでも何とかすぐに対応するようにと改善を指示し,また,5月の後半になってCに対しても同様の話をし,Cは大変申し訳ないと言っていたなどと証言し,スポーツセンターの苦情発生を受けてCに問題改善を指示したことにつき,Cの上記証言と一致する内容の証言をしている。 クCは,公判廷において,5月24日の状況に関し,次のとおり証言する。 すなわち,平成14年5月23日にスポーツセンターで発生した苦情処理に関する報告書を区役所に提出すると聞き,翌24日に被告人へあいさつに行こうと思い電話をした。被告人は区の責任者であり,まず区長にお話をしてという気持ちがあったのと,同年4月1日から本庁舎,スポーツセンターの管理運営をさせていただくことに対し,お礼のあいさつに行かなければと- 24 -思っていたが,スポーツセンターの運営につきクレームがあってなかなか行けずにいたところ,苦情処理につきやっと見通しがたち,5月24日はちょうど会社の40周年だったので,夕刻でも時間があればと思い,被告人の所にあいさつに行くことにした。現金を被告人に渡そうと最終的に判断したのは,報告書を出すということを決めて,被告人に電話をする直前である,本庁舎の指名も外されずに契約を受注することができ,また,スポーツセンターの受注もさせてもらったこと,そしてスポー 終的に判断したのは,報告書を出すということを決めて,被告人に電話をする直前である,本庁舎の指名も外されずに契約を受注することができ,また,スポーツセンターの受注もさせてもらったこと,そしてスポーツセンターでクレームがあったことに対して大変申し訳ないという気持ちと,これから先もということをいろいろと考え,前回とは同じわけにはいかないと思い,切りのいいところで100万円を贈ることにした。5月24日は午前9時半くらいに出社し,社長室のいすの後ろの書棚から封筒を取り出し,その後,現金100万円を金庫から取り出して封筒に入れた。100万円には帯封がついており,帯封は外さずに封筒に入れた。現金を入れた封筒は背広の内ポケットに入れて持っていった。そのほか,Jに,区役所に行くということで,10万円分と30万円分の商品券を用意するように指示した。10万円分についてはGに渡すため背広の内ポケットに入れ,30万円分については,その後自分の交際していた女性に渡した。午前11時から午後3時まで,上野でBの40周年記念パーティーが行われ,これに参加し,パーティー終了後,区役所に行った。まずGの所に行き,いろいろと契約をちょうだいしまして,ありがとうございますとか,あいさつが遅れたことのわびなどを述べ,今後ともよろしくお願いしますと言いながら,用意しておいた商品券を渡した。その後,被告人と応接室で面会をし,被告人に対し,本庁舎,スポーツセンターの契約をちょうだいしてありがとうございました,ごあいさつが遅れ,また,クレームを出しまして大変御迷惑をおかけしましたと言った。被告人は,スポーツセンターのことに関しては,業者が変われば多少のことがあるから仕方がない,クレームについては区民集会を開いて被告人自身が対応したなどと答- 25 -えた。私はこの話を聞き,大変 被告人は,スポーツセンターのことに関しては,業者が変われば多少のことがあるから仕方がない,クレームについては区民集会を開いて被告人自身が対応したなどと答- 25 -えた。私はこの話を聞き,大変申し訳ないと思った。その際の被告人の雰囲気は,いつもの顔で,普通であった。私は,おわびをしつつ,今後ともよろしくお願いします,どうぞお使いくださいと言いながら,内ポケットから封筒入りの現金を取り出し,テーブルの上に置いて,机の上を滑らすような感じで,少し前に差し出した。被告人は,「ああ,どうも。」と言い,すぐ手で封筒を取り背広の内ポケットに入れた。受け取るのをためらったり,断ったりするような素振りはなく,中身を確認するような発言,動作はなかった。 また,帰り際に被告人からまたパーティー券付き合ってくださいねと頼まれた。 上記証言のうち,5月24日に,Cが被告人と面会している事実は,ダイアリーの記載によって裏付けられており(証拠略),また,同日,被告人からパーティー券を付き合ってくれと言われた事実も,同日に近接する日時に,Bが実際に被告人主催の政治団体からパーティー券を購入している事実(証拠略)によって裏付けられている。また,Jは,公判廷において,5月24日,Cから,区役所に行くにあたって商品券を30万円分と10万円分用意してくれと言われた,10万円分についてはGに,30万円分については被告人に渡すのかなと思った,具体的にだれに何を渡すという話はCからはされなかったなどと証言し,Cから具体的な使用先を伝えられずに商品券の準備を頼まれた状況,被告人に金品を渡すことに違和感を覚えなかったことなどにつき,Cの上記証言と一致する内容の証言をしている。さらに,Gは,公判廷において,5月24日,Cから,おわびということで,商品券10万円をもらったなどと証 を渡すことに違和感を覚えなかったことなどにつき,Cの上記証言と一致する内容の証言をしている。さらに,Gは,公判廷において,5月24日,Cから,おわびということで,商品券10万円をもらったなどと証言し,この点に関してもCの上記証言と一致する。 以上のとおり,Cの前記アないしクの各証言は,被告人に現金を供与した点も含めて,全体として,極めて具体的かつ詳細なものであり,実際に体験をした者でなければ語り得ない迫真性も備えている。公判廷において,弁護人の様々な角度からの質問に対しても,当初の証言を概ね維持し,Gに対する2回に- 26 -わたる商品券の供与という起訴外の不利益事実や,交際していた女性にBの負担で用意した商品券を渡したなどの不名誉な事実も正直に述べている上,被告人に対して本件の合計150万円の現金を供与した贈賄被告事件の有罪判決確定後も同趣旨の証言を維持している。さらに,C証言は,前記第2の動かし難い事実関係ともよく整合し,事態の流れに自然に沿った内容といえる。また,捜査段階の当初,被告人に対する金銭供与を否認し,その後自白に転じた経緯についても,Cは,自分以外に被告人に賄賂を贈ったことを知っている人物はいなかったのに,Bの役員が警察から厳しい事情聴取を受け,苦しんでいるのを見るうちに良心の呵責に耐えられなくなり,真実を話すことにし,取調官からは追及されていない5月24日の贈賄の件も含めて話した旨の合理的な説明もしている上,自白に転じた後は一貫した供述をしている。したがって,Cの前記証言は,全体として,信用性が高い。 しかも,Cの前記アないしクの各証言部分は,個別に見ても,その具体性,詳細さ,自然さに欠けるところはなく,被告人に現金を供与した場面以外の各局面のうち,各出来事があったこと自体(その場でやり取りされた会話の内容,雰囲 いしクの各証言部分は,個別に見ても,その具体性,詳細さ,自然さに欠けるところはなく,被告人に現金を供与した場面以外の各局面のうち,各出来事があったこと自体(その場でやり取りされた会話の内容,雰囲気は別として。)については,ダイアリーの記載や領収書の存在などといった客観的証拠によって裏付けられており,上記会話の内容,雰囲気,Cの心情についても,その重要部分は,JやGの証言によって裏付けられ,相互に信用性を補強し合っているから(J,Gの各証言が信用できることについては,後述のとおりである。),信用性は極めて高いといえる。 そうすると,前記アないしクで検討したCの各証言部分のうち,被告人に現金を供与した場面については直接の裏付けがないものの,それ以外の各場面については,信用性が極めて高く,その供述するとおりの経緯,状況であったものと認定することができる。 なお,被告人は,公判廷において,前記ウに関し,平成13年5月以降もCとの関係は良好であり,8月の面会に際しても,反対派を応援したんだねとか,- 27 -僕は何でも知っているんだよと言ったことはなく,かえって,Cから食事に誘われ,前向きの返答をしたなどと供述しているが,被告人自身が捜査段階で,「C社長は,F候補を応援していたようでしたが,私が当選してα区のトップとなったことから,区の本庁舎管理業務などを長年,受注しているBの社長としての立場上,私との関係を修復して,本庁舎管理業務等を継続受注したい,Bをよくみてもらいたいという気持ちで接待したものと思います。」(証拠略)と述べたことを指摘するまでもなく,上記検討のとおり,この点についてのC証言の信用性は極めて高く,その経緯,状況の認定は動かない。 (3)本件各公訴事実の認定そこで,前記の検討を前提として,Cが被告人に現金を供与した場面につ なく,上記検討のとおり,この点についてのC証言の信用性は極めて高く,その経緯,状況の認定は動かない。 (3)本件各公訴事実の認定そこで,前記の検討を前提として,Cが被告人に現金を供与した場面について,Cの証言部分の信用性を検討する。 まず,Cが,被告人に対し,10月1日に現金50万円を供与した旨の証言部分について,検討する。前記検討のとおり,①Cは,本件選挙に先立ち,後援会費の支払を見直すとともに,被告人の対立候補を強力に応援したこと,②本件選挙において対立候補を応援したことから,当選した被告人から敵視されるなどして,Bが本庁舎及びスポーツセンター管理契約の受注等に際して不利益を受ける旨の懸念を抱くに至ったこと,③上記懸念は,区長の権限に照らし,根拠のないものではなかったこと,④Cは,平成13年6月に創業者であるDが会長職を退いたため,名実ともにBのトップとなり,その真価が問われることとなったところ,本庁舎管理契約は,Bの創業者が獲得し,ほぼ途切れることなく受注を続けてきた重要案件であり,また,スポーツセンター管理契約についても魅力を感じ,同年6月ころ,その受注に向けて積極的に営業活動を行うようJに指示するなどしていたこと,⑤CとJは,8月の面会において,被告人に挨拶をしたにもかかわらず,本件選挙に際して対立候補を応援した旨の指摘をされるとともに冷淡な応対を受け,Bが本庁舎及びスポーツセンター管理契約の受注等に際して不利益を受ける旨の懸念を一層深刻にしたこと,⑥C- 28 -は,被告人に対し,関係修復のために飲食接待する旨を申し入れて,約束を取り付けたものの,それまで自分が抱いていた懸念に加えて,OやYからBが本庁舎管理契約を受注できない旨の噂を聞かされ,その旨の危機感を一層強めたことが認められるから,Cには,被告人に対し,飲食 束を取り付けたものの,それまで自分が抱いていた懸念に加えて,OやYからBが本庁舎管理契約を受注できない旨の噂を聞かされ,その旨の危機感を一層強めたことが認められるから,Cには,被告人に対し,飲食接待のみならず,現金を供与するまでの十分な動機が認められる。そして,⑦10月1日の面会において,CとJが,被告人に対して,甲と丙で飲食接待をしたが,甲において,Jが席を外し,Cと被告人の二人だけになった時間があったのであるから,被告人に現金を供与する機会があったことも認められる。さらに,⑧10月1日の面会の後,Cは,JやGに対して,Bと被告人との関係が好転した旨の認識を示しており,⑨現に,Cは,平成13年12月には,被告人からパーティー券の購入を頼まれ,平成14年1月には,被告人に対してスポーツセンター管理契約をBで受注したい旨発言すると,被告人は肯定的に応答し,その後,Bは,平成14年度の本庁舎及びスポーツセンター管理契約を受注するなど,Bと被告人の関係は良好となったことが認められるから,現金の供与により,被告人との関係が好転したという点で,犯行後の状況も自然である。また,⑩Cは,Bからもらう特別手当,株式配当のほか,数百万円単位で預けられる仮払金を社長室の金庫で保管していたというのであるから,金50万円の賄賂を用意するのは造作のないことであったと認められる。前記検討のとおり,Cの証言が全体として信用性が高いことに加えて,これらの点も考慮すれば,本庁舎及びスポーツセンター管理契約の受注につき有利な取り計らいを受けたい趣旨で被告人に現金50万円を供与した旨のCの証言部分は,これを直接裏付ける証拠はないとしても,十分に信用することができる。 次に,5月24日に現金100万円を供与した旨の証言部分について,検討する。⑪Cは,平成13年12月には 与した旨のCの証言部分は,これを直接裏付ける証拠はないとしても,十分に信用することができる。 次に,5月24日に現金100万円を供与した旨の証言部分について,検討する。⑪Cは,平成13年12月には,被告人からパーティー券の購入を頼まれ,平成14年1月には,被告人に対してスポーツセンター管理契約をBで受注したい旨発言すると,被告人は肯定的に応答し,その後,Bは,平成14年- 29 -度の本庁舎及びスポーツセンター管理契約を受注するなど,Bと被告人の関係は良好であったこと,ところが,⑫Bは,スポーツセンター管理契約を新規に受注したものの,同年4月の業務開始後,利用者から苦情が殺到し,区役所の幹部からBの役員が厳しい叱責を受けるなどしたことから,次年度におけるスポーツセンター管理契約の受注ができない旨の懸念を抱いたことが認められるから,Cには,改めて被告人に現金を供与する十分な動機が認められる。しかも,⑬Cは,5月24日,スポーツセンター管理業務に関し苦情処理の見通しがたったことの報告と謝罪の趣旨で区役所を訪問し,被告人に対して現金を供与する機会があった上,同じ機会にGに対して10万円の商品券を供与しているから,被告人に対し,上記のとおり10月1日に現金50万円を供与したことも考慮すると,改めて金品を供与するのは自然な成り行きといえる。さらに,⑭スポーツセンターの問題の発生にもかかわらず,前記第2のとおり,これに続く平成15年度,平成16年度ともBが本庁舎及びスポーツセンター管理契約を受注しており,金品を供与した結果としての犯行後の推移も自然である。 加えて,⑮金100万円の賄賂は,Cにとっては容易に準備できる金額と認められる。前記検討のとおり,Cの証言が全体として信用性が高いことに,これらの点も考慮すれば,本庁舎及びスポーツセンター管理 る。 加えて,⑮金100万円の賄賂は,Cにとっては容易に準備できる金額と認められる。前記検討のとおり,Cの証言が全体として信用性が高いことに,これらの点も考慮すれば,本庁舎及びスポーツセンター管理契約を受注したことの謝礼並びに今後も有利な取り計らいを受けたい趣旨で5月24日に被告人に対して現金100万円を供与した旨のCの証言部分は,これを直接裏付ける証拠はないとしても,十分に信用することができる。 (4)C証言の信用性を弾劾する弁護人の主張に対する判断ところで,弁護人は,縷々主張をして,C証言の信用性を弾劾する。そこで,以下,弁護人の主張について検討を加える。 ア虚偽の証言をする動機が存在するとの主張について弁護人は,C,Jらは,捜査段階において,捜査官からBが談合を行っていた事実を指摘され,被告人に対する贈賄の事実を認めなければ競売入札妨- 30 -害罪等で立件するなどとして圧力をかけられた,捜査官からの任意の事情聴取後,Cらは会社に集まり対策を協議し(以下「本件対策協議」という。),談合の問題で立件されるよりは贈賄の事実を認めた方が会社に影響が少ないなどとして,Cが被告人に対する金銭供与を認める虚偽の自白を行うことにしたなどと主張する。 たしかに,本件対策協議に関するC,Jの各証言をみると,まず,Cは,そこでどのような話をしたかという質問に対し,「特別,事件に関することは話してはおりません。」(証拠略)と述べ,また,本件対策協議の場において,Jから捜査官に入札妨害の件でも起訴すると言われたと聞いたか,この点につき情報交換をしたかという質問に対しては,「話はしましたけども,入札のことまでは,そのとき言ったかどうか,ちょっと記憶にないですけど,まあ,言われているだろうとは思いますけども。」(証拠略)などと述べている。また,Jは う質問に対しては,「話はしましたけども,入札のことまでは,そのとき言ったかどうか,ちょっと記憶にないですけど,まあ,言われているだろうとは思いますけども。」(証拠略)などと述べている。また,Jは,本件対策協議の場で,談合の問題に捜査の手が伸びると大変な問題になるということを話し合ったとは述べるものの,それを防ぐための対策を話し合ったか,贈賄を認めなければ談合の問題で立件するという話を捜査官からされたことをCから聞いたかなどという質問に対しては,口ごもり明確な答えをしていない。以上の事実からすると,本件対策協議の場で,談合の問題に捜査が及ぶことを防ぐための対策についてCらが協議したことが推測され,Cが,Bが入札妨害で起訴された場合は,贈賄の比ではないダメージを受けると思っていた(証拠略),「価格調整の問題で担当役員が言われていましたんで」(証拠略)などと述べていることをも併せ考えると,少なくともCの気持ちの中では,被告人に対する金銭供与の事実を認めれば,談合の問題については捜査が回避できるかもしれないという考えを有していた可能性は考えられなくはない。 しかしながら,仮に,贈賄の事実につき自白をすれば談合の問題についての捜査を回避できるのではないかとCが考えていたとしても,贈賄と談合の- 31 -問題は別の事実であり,仮に贈賄の事実を認めたとしても直ちに談合の問題につき捜査が行われないという保証はない。そして,贈賄の事実は,Cの刑事責任の追及や社会的地位の喪失だけでなく,Bの損失にも直結する極めて重大な事実であるから,捜査官から,贈賄の事実につき自供をすれば,談合の問題については捜査は行わないといった明示ないし暗黙の条件提示でもない以上は,実際にはなかった贈賄の事実を創作してまで,虚偽の自白という極めて危険な行動をとるとは考え難い。 つき自供をすれば,談合の問題については捜査は行わないといった明示ないし暗黙の条件提示でもない以上は,実際にはなかった贈賄の事実を創作してまで,虚偽の自白という極めて危険な行動をとるとは考え難い。 そこで,捜査官による取調べに関するCらの証言について検討する。Cは,被告人に対する金銭供与を否認している間,捜査官から,大声を出されるなどして連日相当長時間の厳しい取調べを受け,価格調整についても,同業者に捜査の手が伸び逮捕されることになるかもしれないと言われ,同業者に迷惑をかけると商売できなくなるなどと思ったものと認められる。しかし,贈賄の事実を認めた後に捜査官から競売入札妨害は許してやると言われてはいない。また,Cは,腎臓の片方を摘出していた関係で水を常時飲む必要があったところ,毎日捜査官から水を買って飲ませてもらい,体調が悪いときは休ませてもらうなどし,Cの体調にもそれなりに配慮した取調べが行われていたものと認められ,C自身も現在では捜査官に対し不満や恨みはないなどと述べている。また,Jに対する取調べ状況をみても,連日捜査官から机をたたかれたり大声で怒鳴られるなど厳しい取調べが続いたものと認められるが,競売入札妨害では立件しないから贈賄を認めろとは捜査官からは言われておらず,また,Cが被告人に対する金銭供与を認めた後も,談合に関する取調べが行われたものと認められる。そうすると,捜査官が談合の問題と引き換えに,CやJらに被告人に対する金銭供与の自供を迫っていたとは認められない。 また,仮に被告人に対する金銭供与が虚偽の事実であったとすると,Cとしては,できるだけ傷を少なくする方向のストーリー,すなわち,贈賄は飲- 32 -食接待をした機会に行った1回だけであり,α区役所で勤務中の被告人に対し贈賄をしたことはないとするのが自然と思われ しては,できるだけ傷を少なくする方向のストーリー,すなわち,贈賄は飲- 32 -食接待をした機会に行った1回だけであり,α区役所で勤務中の被告人に対し贈賄をしたことはないとするのが自然と思われるのに,Cは,平成16年9月15日に判示第1の事実だけでなく,自発的に判示第2の事実まで自供したというのである。さらに,虚偽の自白をしようとする場合,Cは,JやGなどの関係者と金銭供与の背景事情等の事実関係につき供述をすり合わせる必要がある。すなわち,まず,Jに対しては,本件選挙後CがFを応援したことから被告人の所へあいさつに行きづらく,Gに被告人への仲介を依頼していたこと,8月の面会の際に被告人から嫌みを言われ,指名から外されることをCとともに心配したこと,10月1日の金銭供与の際に,Cが賄賂を渡した現場はJに見せず,後日それとなく暗示する発言をしたこと,5月24日の金銭供与の際に,Cは賄賂を渡すことはJに伝えなかったことなど多数の事実関係につき,虚偽の事実を創作するとともにJと供述をすり合わせる必要があるところ,平成16年9月18日にCが逮捕されるまでは,Cが同月15日に自白してからわずか3日間,任意の事情聴取が開始されてからであっても1週間しか期間がなく,本件対策協議も警察での事情聴取終了後に行われ,この際Bの顧問弁護士が立ち会うこともあったこと,また,警察での事情聴取はほぼ連日夜遅くまで行われていたことなどからすると,上記のような口裏合わせは困難であったものと考えられる。そして,Gとの間でも,本件選挙後,Cが反対派を応援したことから,本庁舎及びスポーツセンター管理契約の受注に不安を抱いていたこと,被告人にあいさつに行きづらかったこと,Gを通じて被告人にあいさつをする機会を設けてほしがっていたこと,また,8月の面会における会話の内容 及びスポーツセンター管理契約の受注に不安を抱いていたこと,被告人にあいさつに行きづらかったこと,Gを通じて被告人にあいさつをする機会を設けてほしがっていたこと,また,8月の面会における会話の内容,その直後にCが意気消沈していたことなどの事実につき,創作をし,口裏を合わせる必要があるところ,Gが被告人に隠れてBから供応接待等を受けていたとはいえ,当時G自身も別件の収賄事件で逮捕,起訴されており,関係者と自由に連絡を取り合うことがはばかられていた中で,自らと直接関係がない事件に関して,自ら- 33 -の上司であった被告人をことさら陥れるための虚偽のねつ造に協力するとは考えられない(現に,Gは保釈された後もCやJとは1度も会ってない旨証言している。)。また,上記のようなCらに対する捜査官の取調べ態様に加え,捜査官は,10月1日の甲での飲食接待の予定が記載されたダイアリー(証拠略)を押収していたにもかかわらず,当初はその内容をCやJに告げずに事情聴取をしたため,Cは数日間にわたって会食の事実すら否認していたなどの事情にも照らすならば,捜査官が,Cに対し,虚偽でもいいから自白するようにとの態度に出ていたとは認められず,Cの供述に合わせて,J,Gに対して供述のすり合わせを行ったとも認められない。 以上検討してきたことから明らかなように,Cが談合の問題について捜査が及ばないよう,被告人に対する金銭供与に関して虚偽をねつ造し,これを自供したとは認められず,この点に関する上記弁護人の主張は採用できない。 イ金銭供与を行う動機がないとの主張についてまた,弁護人は,以下の各事実を指摘して,Cには,10月1日の際にも,5月24日の際にも,被告人に対して,金銭を供与するような動機はなかったとの主張をする。そこで,以下,この主張について検討を加える。 (ア 護人は,以下の各事実を指摘して,Cには,10月1日の際にも,5月24日の際にも,被告人に対して,金銭を供与するような動機はなかったとの主張をする。そこで,以下,この主張について検討を加える。 (ア)まず,弁護人は,本件選挙の際,Cは被告人に対してもIを通じた30万円の献金によって,いわゆる保険をかけており,また,選挙後Iを通じて被告人との関係修復をしていないことからすると,指名から外されるなどと危機感を抱いていたはずがないと主張する。 しかしながら,Cは本件選挙の際,Fに対して500万円を寄附し,また選挙要員やBの名簿も供出するなどし,被告人に対する寄附との間には顕著な差をつけていたのであって,選挙戦において被告人と敵対的立場にあったことは明白であり,たとえ被告人に対して保険をかけていたとしても,本件選挙後,被告人に負い目を感じていたことは当然である。このことは,前記のとおり,Cから反対派を応援したことで被告人にあいさつに- 34 -行きづらいという話を聞いたというJ,Gの各証言によっても裏付けられている。そして,Iを通じて関係修復を図っていないという点も,Gに対して,あいさつや会食をする機会を設けてほしいなどとCが直接ないしは電話で再三依頼をしていることからすると,Iよりも被告人に近いGを通じて関係修復を図ろうとしていたといえ,Cが危機感を感じていなかったということにはならない。 (イ)次に,弁護人は,BとGは親密な関係にあり,また,助役であるGが業者選定における実質的な権限を有していることからすると,Bが本庁舎及びスポーツセンター管理契約の入札参加者の指名,受注に関する不利益を心配するような状況にはなかった,また,平成14年度本庁舎及びスポーツセンター管理契約の受注に関してBのために助力をしていたのは,Gであって,被告人で 理契約の入札参加者の指名,受注に関する不利益を心配するような状況にはなかった,また,平成14年度本庁舎及びスポーツセンター管理契約の受注に関してBのために助力をしていたのは,Gであって,被告人ではないなどと主張する。 たしかに,BはGに対し供応接待等をし,Gも本庁舎及びスポーツセンター管理契約に関してBに有利な取り計らいをしたと認められるし,Gは指名業者選定委員会の長の地位にあり,特にスポーツセンター管理契約への指名競争入札の導入について,主導的立場にあったことも認められるから,Bによる平成14年度本庁舎及びスポーツセンター管理契約の受注にGが果たした役割は大きかったものと認められる。 しかし,たとえ指名業者選定において実質的に大きな権限を有しているGとBが親密な関係にあるとCが認識していたとしても,同業者のOから自分の言うことは被告人は何でも聞いてくれるという話を聞いたことがあるCにとってみれば,GがBに対し有利に取り計ろうとしても,最終的な決定権限を有している被告人がこれに反対の意向を示したならば,Gも当然それに従わざるを得ないなどと考え,被告人との関係修復を図る必要があると考えたのは誠に自然である。そして,被告人は,本庁舎及びスポーツセンター管理契約の最終的な決裁権者であることに加え,平成14年度- 35 -本庁舎管理契約の指名業者選定について,選定委員会開催前に事前の説明を受けて,Bを含めた指名業者の選定に了承を与え,前記のとおり,実際に指名業者の選定に関し,少なくともR,T,Nの件について,Gらに対し,これらの業者を指名に入れるよう検討を要請し,あるいは指名から外すように指示を出すなどしており,現実にも権限を行使していた。 (ウ)また,弁護人は,Bは,後援会への寄附や,被告人の新聞に広告費を継続的に出しており,本件選挙 よう検討を要請し,あるいは指名から外すように指示を出すなどしており,現実にも権限を行使していた。 (ウ)また,弁護人は,Bは,後援会への寄附や,被告人の新聞に広告費を継続的に出しており,本件選挙前後における被告人とBの関係は良好であったなどと主張する。 しかし,これらの額は決して高額なものではなく,本件選挙の際,Fに対して500万円の金銭を提供していたことと比較すれば,被告人との付き合いは形式的なものであったと考えられ,この点をもって,被告人に対する金銭供与の動機がなかったということはできない。 (エ)また,弁護人は,Cは,8月の面会以降に,同業者であるO及びYからBは来年は危ないという発言を聞いて危機感を強めたと証言するが,O及びYはBにとってライバル業者であり,そのような者の発言をCがうのみにするはずがないなどと主張する。 しかし,O,YがCにとってライバル業者であり,信用していない部分があるとしても,本件選挙で反対派を応援して被告人に対し負い目を感じており,実際に8月の面会の際,被告人から冷たい態度をとられ嫌みを言われたことから,指名等に対する不安をますます強めていたところに,そのような話を聞かされれば,これを信じて,本当に来年の指名は危ないかもしれないと危機感を強めたことは決して不自然ではない。 (オ)また,弁護人は,Cは,平成14年4月にスポーツセンターで利用者からの苦情が発生した後に,Bの役員らと中国へ旅行に行き,また,同旅行中に,UがB1から強く叱責されたことを知りながら旅行を続け,さらに,中国から帰国した後も,5月24日に至るまでα区役所に謝罪に行く- 36 -などの対策をとっていないことなどからすると,スポーツセンターにおける苦情は,Cにとって,被告人に対し賄賂を贈るほどの深刻な問題ではなかったはずであるなど 至るまでα区役所に謝罪に行く- 36 -などの対策をとっていないことなどからすると,スポーツセンターにおける苦情は,Cにとって,被告人に対し賄賂を贈るほどの深刻な問題ではなかったはずであるなどと主張する。 しかし,J証言によれば,Cらが旅行に行く前にスポーツセンターで発生した問題に関しては,1週間ぐらいで落ち着き,平成14年4月10日ころにはJらがα区の社会体育課の方に今後の対策を報告し,謝罪をしていた状況にあり,Cが,予定していた旅行をキャンセルしてまで,スポーツセンターのトラブルに対応しなければならないような状況にはなかったといえる。また,Cは,旅行中に発生した問題につきUがB1から叱責を受けていたにもかかわらず,Cらが旅行を続けた理由については,会社を代表して副社長であるUが行って謝罪している以上,これで何とか収めてもらわなければ仕方がないなどと思い旅行を続けたという趣旨の説明をし,また,帰国後すぐに区役所の方に謝りに行かなかった理由についても,旅行から帰ってきた後はUからの報告を聞いたり,Gから直接叱責の電話を受け,事の大きさにつき認識をし,苦情処理の問題につき一段落ついた翌日にあいさつに行こうと思ったなどと説明をしているところ,旅行中はUらからCに対し早期の帰国が要求されていたわけではなく,また,Uから直接報告を受けたわけではなかったCにとってみれば緊迫感が低かったともいえ,その後,Uから直接報告を受け,Gから直接叱責されるなどして問題の大きさに気づいたというCの上記説明は,それなりに自然で合理的といえる。 (カ)まとめ以上に加え,弁護人が主張するそのほかの点を詳細に検討しても,C証言の信用性に疑いを差し挟むような事情は認められない。 ウ賄賂を用意,授受した状況等に関するCの証言は不自然であるなどの主張について 上に加え,弁護人が主張するそのほかの点を詳細に検討しても,C証言の信用性に疑いを差し挟むような事情は認められない。 ウ賄賂を用意,授受した状況等に関するCの証言は不自然であるなどの主張について- 37 -また,弁護人は,以下の各事実を指摘して,賄賂を用意,授受した状況に関するCの証言は不自然であるなどと主張する。そこで,以下,この点に関する弁護人の主張について検討を加える。 (ア)まず,弁護人は,Cは,10月1日の甲における会食の際,タクシーが来ているかどうか分からないうちに被告人とともに席を立ったと証言するが,これは接待の常識からして不自然であるなどと主張する。 しかし,Cは,被告人に,用意しておいた賄賂を渡そうと思っていたのであり,その後に行く予定であった丙には個室が存在しないことをCが下見をして知っていたことからすれば,Jが席を立ち,個室内で二人きりになった状況というのは,賄賂を渡す絶好かつ唯一の機会であったといえ,Jが戻る前に,自ら席を立ち,個室を出る際にさりげなく金を渡そうと考えたというのは自然かつ合理的な行動といえるから,繁華街において,タクシーの配車にさほど時間を要しないと考えて,これを確認せずに席を立ったとしても,不自然であるなどとはいえない。 (イ)次に,弁護人は,Cが10月1日に金銭供与したと述べる甲の客室内の状況は,いつJが戻るか分からず,またいつ仲居が出入りするか分からないような状況であり,また,Cが5月24日に金銭供与したと述べる応接室の状況も,同室の廊下側のドアが開かれており,区長室長がすぐ外に控えているような状況であり,いずれも賄賂を提供するような場としては不自然であるなどと主張する。 しかし,たとえ第三者が出入りする可能性がある部屋であったとしても,Cが被告人に手渡した現金は,10月1日の際も, うな状況であり,いずれも賄賂を提供するような場としては不自然であるなどと主張する。 しかし,たとえ第三者が出入りする可能性がある部屋であったとしても,Cが被告人に手渡した現金は,10月1日の際も,5月24日の際もいずれも封筒に入れられ,その中身が1万円札50枚と100枚であったことからすれば,一見して封筒内に現金が入っていることなどは第三者に分からない状態であったといえ,その授受も短時間で行われたことからすれば,現金授受が上記のような状態の甲の客室内や応接室内で行われたとしても- 38 -何ら不自然ではない。 (ウ)また,弁護人は,本庁舎管理契約の指名から外されるのではないかとの危機感が大きかった10月1日の際の賄賂の額が50万円で,危機感がはるかに小さかった5月24日の際の賄賂の額が100万円であることにつき,Cは合理的な説明をしていないなどと主張する。 賄賂の金額が1回目が50万円で,2回目が100万円であることにつき,Cは,前記のとおり,特段理由はないが,本庁舎の指名を外されなかったことやスポーツセンターの新規の仕事をもらったこと,またスポーツセンターでクレームがたくさんあったことから前回とは同じにいかない,区切りのいいところで100万円にしたと,それなりに明確な証言をしているところ,一般に危機感が大きかった機会の方が高額の賄賂でないと不自然であるとまでいえず,むしろ,以前の仕事に加えて,新規の仕事を受注できたにもかかわらず,その仕事で問題を起こしたことから,前回より多めに金を渡そうと考えたというのは,自然な心理状況であるといえる。 (エ)また,弁護人は,会社のために賄賂を供与するにもかかわらず,その金をC自身が出し,後日精算すらしないというのは不自然である,また,10月1日の賄賂を準備する際に社長室の金庫の中に入っていた (エ)また,弁護人は,会社のために賄賂を供与するにもかかわらず,その金をC自身が出し,後日精算すらしないというのは不自然である,また,10月1日の賄賂を準備する際に社長室の金庫の中に入っていた金の総額に関し,Cは,検察官による尋問では300万円から400万円と答え,弁護人に捜査段階では480万円と答えていたのではないかと矛盾を追及されると,300万円から500万円ぐらいと答え,曖昧な証言に終始しているなどと主張する。 しかし,本件賄賂の金額は合計150万円と,Bの株の配当金だけでも年に1600万円の収入があったCにとってみれば,大金とまではいえない額である上,これを自己の負担で供出したCが,賄賂という違法な出費を経費として会社に請求して正規の経理処理を行うことなど考えられないのであり,何ら不自然な行為とはいえない。なお,弁護人は,Cが交際し- 39 -ていた女性のために会社の商品券を使用した事実を指摘し,違法な出費であっても,会社の経費として精算するはずであるなどと主張するが,商品券を交際女性のために流用することと比べ,現金を賄賂として供与することはある意味で格段に違法性の高い犯罪であるから,その現金を事後又は事前に経理の担当者を介して精算することは極めて大きな心理的抵抗が伴うことといえ,この点の弁護人の主張は採用できない。また,10月1日の賄賂の原資に関する供述の変遷については,社長室の金庫内にはC個人の金も入っていたことからすると,捜査段階では,関係資料を示されながら説明を求められ,一応の供述をしたとはいえ,正確な管理はされていなかったものと認められ,金庫内の金の総額につき,Cは,正確に把握していなかったと認められるから,この程度の供述の変遷は何ら不自然ではない。 (オ)また,弁護人は,仮にCが被告人に金銭を供与したと かったものと認められ,金庫内の金の総額につき,Cは,正確に把握していなかったと認められるから,この程度の供述の変遷は何ら不自然ではない。 (オ)また,弁護人は,仮にCが被告人に金銭を供与したというのであれば,政治献金という合法的な手段があるのであるから,賄賂という手段をとるはずがないなどと主張する。 たしかに,Bにとって,被告人に対し金銭を供与する方法として政治献金という方法も十分考えられるが,政治献金であることと賄賂であることとは,当然のことながら,何ら互いに排斥し合う関係に立つものではないし,Cが賄賂といういわば特殊な方法をとることで,被告人に対しアピールをしたかったとも十分に考えられ,政治献金という手段をとらずに賄賂を渡したことが不自然であるとまではいえない。 (カ)また,弁護人は,仮に賄賂を渡したのであれば,C,被告人ともそれなりの行動をとるはずであるが,Cは賄賂が効いたかどうか確かめたり,契約受注後に被告人にあいさつするなどの行動はとっておらず,また,被告人もBに対して便宜を図るような行動をとっていないなどと主張する。 しかし,10月1日の会食の際,Cが反対派を応援したことにつき謝罪- 40 -をすると,被告人は,「僕は根に持つ方ではない。」,本庁舎及びスポーツセンター管理契約のことは「G君とやってちょうだい。」などと答え,終始上機嫌であったというのであるから,Cにおいて,被告人が機嫌を直してくれたと思い,被告人との関係は修復されたと理解するのは自然である。そして,本庁舎管理契約については,長年Bが受注をし,仕事ぶりについても特段問題がなかったこと,また,スポーツセンター管理契約についてはGがBに受注を勧めていたことからすれば,被告人が特段Bを指名から外すような行動をとらない限り,Bが翌年度の上記各契約の指名に入る も特段問題がなかったこと,また,スポーツセンター管理契約についてはGがBに受注を勧めていたことからすれば,被告人が特段Bを指名から外すような行動をとらない限り,Bが翌年度の上記各契約の指名に入ることは,ほぼ確実な状態にあったといえ,被告人が10月1日の会食で機嫌を直してくれたことが確認できた以上は,被告人がBに上記各契約を受注させるべく協力してくれるか確認をする必要はなかったといえる。また,上記各契約受注後にCが被告人の所へあいさつに行っていない点については,Cは自身の業務怠慢であると述べているが,平成14年4月中旬から海外旅行に出かけ,その間に生じたスポーツセンターのトラブルに対応するなどのため,Gに対しても,上記各契約受注後5月24日に至るまであいさつに訪れていないこと(証拠略)からすると,特段不自然な行動ともいえない。また,5月24日の面会の際も,Cがスポーツセンターの運営で苦情が出たことなどにつき謝罪をすると,被告人は,業者が変わればクレームがあるものだよと答え,Cを詰問するような雰囲気もなかったのであるから,上記同様に,賄賂が効いたかどうか,Cの方から確かめる必然性はなかったといえる。 また,被告人にとってみても,賄賂をもらったからといって,区長としての立場に照らせば,あからさまにBを優遇するような態度を取るわけにはいかないはずであり,積極的にBを利するような行動をとっていないことが不自然であるとはいえない。 (キ)さらに,弁護人は,贈収賄事件において賄賂の使途は重要な間接事実- 41 -となるところ,本件においてはこの使途について何らの立証もされていないなどと主張する。 賄賂の使途については,その授受した金銭の額が多額であれば,金の動き等を分析するという捜査も十分あり得たところであるが,授受した金員が50万円及び1 ついて何らの立証もされていないなどと主張する。 賄賂の使途については,その授受した金銭の額が多額であれば,金の動き等を分析するという捜査も十分あり得たところであるが,授受した金員が50万円及び100万円であり,個人的に費消することが十分可能な額であることからすると,その使途について明らかにできないことが,C証言の信用性に影響を及ぼすものではない。 (ク)まとめ以上に加え,賄賂の収受の状況等に関して弁護人が主張するそのほかの点を詳細に検討しても,C証言の信用性に疑いを差し挟むような事情は認められない。 エC証言には種々の矛盾点,変遷が存在するとの主張についてまた,弁護人は,Cの証言には,以下のような矛盾点,供述の変遷が存在するとして,C証言の信用性を弾劾するので,この点について検討を加える。 (ア)弁護人は,Cは,後援会費の支払につき,検察官による主尋問では,平成13年度は支払をとめていたことから被告人との仲が疎遠になっていたと証言していたのに,弁護人から平成13年度にも年会費を支払っていたという客観的な証拠を示されるや,社内的には私がとめていた,だれに指示したかよく覚えていないなどと曖昧な証言に変わったなどと主張する。 しかし,Cは,主尋問においても,検察官から資料を見せられて,被告人が区長になったことを知ってすぐに後援会費の支払を復活させたと証言しており(証拠略),また,平成13年3月,U又はVとともに,経費の見直しのため,各種団体の一覧表の中から,4月からここをやめようなどと決め,後援会費の支払をやめるよう指示したと,一応は指示したであろうと思われる担当者の名前や検討の具体的方法も挙げながら証言をしている。そして,後援会費の納入という具体的な事務は,Cではなく,部下の- 42 -職員が行うものと考えられるところ,Cにおい であろうと思われる担当者の名前や検討の具体的方法も挙げながら証言をしている。そして,後援会費の納入という具体的な事務は,Cではなく,部下の- 42 -職員が行うものと考えられるところ,Cにおいて,後援会費の支払が本件選挙が行われた5月27日以前に毎年行っているものと誤信し,被告人との仲が疎遠になっていたと思っていた可能性も十分にあるといえる。 (イ)また,弁護人は,Cは,本件選挙後,Fを応援していたので,指名から外されるのではないかと危機感を抱いていたと証言していたにもかかわらず,Iに相談や被告人へのあいさつの取次ぎを依頼しておらず,この事実を弁護人に指摘されると「自分自身,時間があるとまだ思っていました。」と,危機感を有していたとの証言と完全に矛盾する証言をしているなどと主張する。 しかし,Cが,IよりもGを通じて関係修復を図ろうとしていたことは,前記イ(ア)のとおりであり,また,時間がまだあると思っていたとの点も,指名競争入札が行われるのは翌年の2月,3月であることからすると,時間的に期限が迫っている状況にはなく,指名から外されるのではないかとの危機感を有していたことと決して矛盾する心理状況ではない。 (ウ)さらに,弁護人は,平成12年秋ころ,Cが,F,G,Yと焼肉屋丁で会合した際に,YがFからスポーツセンター管理契約の受注を断念させられ,Yと組んだ議員が上記契約から手を引き,議員の絡みがなくなれば,この契約を受注する方向に動いてもいいという期待を持ったとの供述を検察官に対して行っているにもかかわらず,公判廷ではこれと全く異なる内容の証言をしているなどと主張する。 たしかに,Cは,弁護人による反対尋問の中では,議員が絡んでいるから受注を避けたいと思っていたかどうかということに関し,若干曖昧な証言をしてはいるものの,検察官に 容の証言をしているなどと主張する。 たしかに,Cは,弁護人による反対尋問の中では,議員が絡んでいるから受注を避けたいと思っていたかどうかということに関し,若干曖昧な証言をしてはいるものの,検察官による主尋問では,誘導という形ではあるが,以前は議員が絡んでいるからあまりやりたくないという気持ちがあったと証言し,また,その後の弁護人による尋問の中でも,仮にスポーツセンター管理契約をBが受注したとしても,議員との関係でXが下請に入っ- 43 -てくることも想定され,これはあまり楽しいことではないなどと,議員とスポーツセンターとの関係についてもそれなりに明確な証言をしている。 そして,Bの元社長であるCにとってみれば,公判廷で議員の関与やそれに対する考えを明確に述べることを避けたいと考え,当初の弁護人の質問に対する答えが曖昧になってしまったとも考えられ,この点について変遷や曖昧な点が認められるとしても,C証言全体の信用性に影響を及ぼすものではない。 (エ)まとめそのほかCが本件以前に被告人の誕生パーティーに出席したことがあるかなどといった点も含めて,Cの証言には矛盾,変遷があるとして弁護人が主張する点を仔細に検討しても,変遷,矛盾と評価できないものや,本件の争点とは直接関連しないものであって,結局,C証言の信用性に影響を及ぼすものではない。 (5)まとめ以上検討してきたことから明らかなように,弁護人が詳細に主張する点を仔細に検討しても,Cが被告人に対し,10月1日,甲において,現金50万円を供与し,また,5月24日,応接室において,現金100万円を供与したというCの証言は,十分に信用することができる。 J証言の信用性について(1)Jは,前記1(2)のとおり,Cが本件選挙でFを応援したことなどから,本庁舎等の指名を外されるのでは 万円を供与したというCの証言は,十分に信用することができる。 J証言の信用性について(1)Jは,前記1(2)のとおり,Cが本件選挙でFを応援したことなどから,本庁舎等の指名を外されるのではないかと心配し,また,被告人へ直接あいさつに行きづらかったため,Gを介して被告人との仲を取りもってもらおうとしていたこと,8月の面会の際に,被告人から本件選挙で反対派を応援したことを指摘されるなどし,指名等に悪影響があるとCとともに心配したこと,10月1日の甲における冒頭の会話内容や全体の雰囲気,平成14年4月以降スポーツセンターにおいてトラブルが多発し,Cが翌年度のスポーツセンター管理契- 44 -約の受注を打ち切られるのではないかと心配していたことなどについて,具体的かつ詳細な証言をしている。他方,被告人に金を渡す場面は見ていない,被告人に金を渡すという話は事前にCから聞いていない,また事後にもはっきりとした形ではCに金を渡したという話は聞いていないなど,自己の体験した事実とそうでない事実を区別し,被告人にとって有利と思える事項の証言も行っている。さらに,Gに対して,タイ旅行の招待をし,現地での費用として10万円を渡したなど,被告人以外の関係者や自己に不利益な事実を認める証言も行っている。さらに,J証言の大部分は,CやGの各証言と一致しているところ,前記1(4)アのとおり,Jも,CやGと供述をすり合わせるような時間的,精神的余裕はなかったといえ,その証言の信用性は高いといえる。 (2)弁護人の主張に対する判断ところで,弁護人は,縷々主張をして,J証言の信用性を弾劾する。そこで,以下,弁護人の主張について,検討を加える。 ア弁護人は,Jは,10月1日の甲での会食が終盤にさしかかったころに,自ら二次会に向かうタクシーを探しに外に行ったな ,J証言の信用性を弾劾する。そこで,以下,弁護人の主張について,検討を加える。 ア弁護人は,Jは,10月1日の甲での会食が終盤にさしかかったころに,自ら二次会に向かうタクシーを探しに外に行ったなどと証言しているが,甲のような高級料亭において,タクシーを自ら探しに行くというのは不自然である,また,Jは,通りで拾ったタクシーの運転手に話をして甲に来てもらった,その際タクシーに同乗はしなかったと証言するが,甲の前の通りは一方通行であることから,タクシーは大きくう回する必要があり,甲の名前すら知らないタクシーの運転手が,Jの同乗なく甲にまで来ることはできないはずであり,結局,Jの説明は不自然であるなどと主張する。 しかし,甲は大通りを入ってわずか数十メートルのところにあり(証拠略),店の人にタクシーを呼んでもらうより,大通りまで行って流しのタクシーを拾う方が早いということは十分あり得るのであって,Jが,自分でタクシーを拾いに行ったとしても何ら不自然ではない。また,甲の前の通りが一方通行であり,タクシーがう回する必要があったとしても,甲の大体の場- 45 -所を大通りで説明して,タクシーに来てもらうことも十分可能であったといえ,甲にまでタクシーに来てもらったというJの説明が不自然であるとはいえない。 イまた,弁護人は,甲での飲食代金を精算し,タクシーを呼びに行くまでの間に,Jが1回部屋に戻っているかに関し,JはCと矛盾する証言をしているなどと主張する。 たしかに,この点に関するJとCの各証言には食い違いがあるが,いずれにしても,タクシーを呼びにJが席を立ったことは一致しており,この間にCは被告人に金銭を供与したというのであるから,1度部屋に戻ったか否かは本件争点との関係では重要な事実とはいえず,この一事をもってJ証言やC証言の信用性に影 が席を立ったことは一致しており,この間にCは被告人に金銭を供与したというのであるから,1度部屋に戻ったか否かは本件争点との関係では重要な事実とはいえず,この一事をもってJ証言やC証言の信用性に影響を及ぼすものとはいえない。 ウまた,弁護人は,Jが,甲での飲食接待後,Cから「あのときちゃんとやったから大丈夫だよ。」などという発言を聞いたということに関し,Cが当時営業をやっていたJに賄賂を渡す場面を見せるのはどうかと思い,Jが席を外している場面で金銭を供与したというのであれば,Cが賄賂の供与を暗示するような発言をするとは考えられないことや,また,このような発言を聞いたことを思い出した経緯に関するJの証言は不自然であるなどと主張する。 しかし,現金供与の生々しい場面をJに見せたくなかった気持ちがあったことと,後でJと来年度の本庁舎管理契約について話し合う中で,はっきりと金を渡したと言うことをはばかりつつ,金を渡したことをぼかした表現で伝えることは,決して矛盾する行動とはいえない。また,思い出した経緯についても,最初は忘れていたが,調べられていく最中に何度も自分で一生懸命考え,恐らくこんなことをCが言ったと思い出したが,Cが被告人とは何もないと言っている間は捜査官に対して話さず,Cが実は被告人に金を渡したという話を聞いて,「ああ,やっぱりな。」と思ったなどと述べるなど,- 46 -具体的に得心のいく説明をしており,思い出した経緯に関するJの証言が不自然であるとはいえない。 エまとめそのほか,本件以前に被告人の誕生パーティーの関係で丙に行ったことがあるかどうかという事実を含め,弁護人の主張を仔細に検討しても,J証言の信用性に疑問を差し挟むような事実は認められない。 (3)まとめそうすると,Cの前記証言を裏付けるJの証言についても,こ とがあるかどうかという事実を含め,弁護人の主張を仔細に検討しても,J証言の信用性に疑問を差し挟むような事実は認められない。 (3)まとめそうすると,Cの前記証言を裏付けるJの証言についても,これを十分に信用することができる。 G証言の信用性についてGは,前記1(2)のとおり,公判廷において,Cが反対派を応援していたので,被告人に対し負い目を感じあいさつに行きづらかったこと,Cが被告人と早くあいさつをしたいと思いGに取次ぎを頼んでいたこと,8月の面会の際,Cが本件選挙で反対派を応援したことを指摘され,がっくりきていたこと,その後Cから被告人との会食の設定を頼まれたこと,平成14年4月以降スポーツセンターで発生した問題に関し,JのみならずCに対しても改善等を指示する電話をしたことなど具体的かつ詳細な証言をしている。そして,その証言内容の大部分は,C及びJの各証言と一致しているところ,前記1(4)アのとおり,Gが,本件事件と直接利害関係を持たず,また自ら別の収賄事件で起訴され,その処分が決しない中で,CやJらと本件事件の背景事情に関し,供述のすり合わせをするような余裕や動機があったとは考えられない。このような事情に加え,Gは自身がCから商品券の供与を受けたこと,スポーツセンター管理契約の見積競争の際,他社の見積額をBに暗に教示したこと,タイ旅行の際にBから金員の供与を受けたことなど,自己に不利なことも正直に証言していることも併せ考えれば,Gの証言も十分に信用することができる。 なお,弁護人は,Gの証言に関しても,変遷しているとか,不自然な部分があ- 47 -るなどとして,その信用性を弾劾する主張を縷々している。しかし,それは,変遷とまでは評価できなかったり,弁護人の尋問に対して言葉を濁した部分も,弁護人の尋問が,本件との関係が明 分があ- 47 -るなどとして,その信用性を弾劾する主張を縷々している。しかし,それは,変遷とまでは評価できなかったり,弁護人の尋問に対して言葉を濁した部分も,弁護人の尋問が,本件との関係が明確でない一方,自己や第三者の名誉,プライバシーにかかわる微妙なものであるために困惑し,公判廷では明確に証言できなかったものと認められるなど,いずれもG証言全体の信用性を損なうものではない。 むしろ,本件の争点と直接関連する10月1日や5月24日の面会に至るまでのCの行動,様子に関しては,弁護人の厳しい反対尋問に対してもその証言に動揺はない。 そうすると,Cの前記証言を裏付けるGの証言も,十分に信用することができる。 被告人の供述について(1)被告人の公判供述の概要被告人は,公判廷において,本件選挙当時,CがFを応援していたことは知らなかった,8月の面会の際の雰囲気はなごやかなものでCに対し嫌みを言ったことはない,10月1日,CとJとともに甲で会食をしたが,その際,Cから金銭を受け取ったことはない,5月24日,Cと応接室において面会をしたが,その際,Cから金銭を受け取ったことはないなどと供述している。 (2)被告人の公判供述の信用性しかし,被告人の前記公判供述は,信用性の高いCやJの前記各証言に反する上,10月1日にCらと甲で会食をしたか否か,また,5月24日にCと応接室で面会をしたか否かという,金銭授受の前提となる重要な事実に関し,以下のとおり,供述の変遷が認められ,その理由も合理的なものとは認められず,結局,信用することができない。 ア10月1日の会食に関する供述の変遷被告人は,10月1日の会食に関する事実につき,逮捕の翌日の警察官に対する取調べでは,Cから甲で飲食接待を受けたことを認めていたが(証拠- 48 -略),その翌日 0月1日の会食に関する供述の変遷被告人は,10月1日の会食に関する事実につき,逮捕の翌日の警察官に対する取調べでは,Cから甲で飲食接待を受けたことを認めていたが(証拠- 48 -略),その翌日以降の取調べでは,Cと甲で会食をしたことはない,Cと飲食をともにしたことはないなどと述べ(証拠略),第1回公判における罪状認否においても,Cと甲で飲食した記憶はないと述べていた。しかし,検察官請求の証人の取調べ終了後である第10回公判において,Cと甲で面会した事実を認め,その後の被告人質問においても,Cらと甲で飲食した事実を認め,丙に二次会に行った際の状況も含め,10月1日にCらから飲食接待を受けた状況につき詳細な供述を行っている。 そして,被告人は,公判廷において,このような供述の変遷が生じた理由につき,平成17年3月に弁護人から差し入れられた妻の手帳の記載から,10月1日の朝,妻が旅行に出かけている事実を思い出し,妻が出かけた後区役所に出かけたが,家の戸締まりをしたかどうか心配になったため,区役所から家に立ち寄って,戸締まりを確認した上で,公用車で甲に行ったことを思い出したなどと説明する。 しかし,被告人は,捜査段階において,業者の人と飲食をすることは滅多になく,その場合でも飲食費は渡すようにしていたと述べているところ(証拠略),10月1日の甲での飲食接待は被告人の当選祝いということで被告人は自分の分の飲食費を事前に用意していかなかったというのであるから,10月1日の会食は被告人にとってかなり珍しい出来事であったと考えられる。そうすると,被告人が,捜査官から様々な角度で質問された際に,甲での飲食接待の状況を思い出さなかったというのは不自然というほかない。また,被告人は,公判廷において,当日の飲食接待の状況やそれに至る経緯につき,平成13 ,捜査官から様々な角度で質問された際に,甲での飲食接待の状況を思い出さなかったというのは不自然というほかない。また,被告人は,公判廷において,当日の飲食接待の状況やそれに至る経緯につき,平成13年9月ころ,Cから一席を持ちたいので時間をとってほしいという電話を受けた,区長に当選以来Bの関係者からそのような申出をされたのは初めてだったので当選祝いを兼ねて会食をしたいという趣旨だと理解した,10月1日は公用車で区役所から一度自宅に戻って戸締まりを確認してから甲に行った,接待が終わった後銀座にでも行こうと思っていたので公- 49 -用車はその場で帰らせた,甲では乙で会食をし,あらかわ遊園の話をするなどした,会食の終盤になりJが席を立ち,その後タクシーが来ていると呼びに来た,丙では,ママのエレクトーンの伴奏で「ロシアより愛をこめて」を歌った,CやJは演歌を歌っていた,丙から帰る際,タクシーに乗る時にJがお土産を渡してくれたなどと具体的かつ詳細な供述をしているが,捜査官から様々な角度で甲でCらから飲食接待を受けた事実の追及を受けていたにもかかわらず,捜査段階では甲に行ったという事実すら思い出せなかったのに,被告人の妻が旅行に行ったという事実しか記載されていない妻の手帳の記載をきっかけに,上記のような当日の状況やそれに至る経緯の詳細にまで記憶喚起することができたというのは不自然,不合理というほかはない。また,被告人は,捜査段階の当初に,逮捕されたときには業者からの接待は一切受けたことがないと話したが,よく考えると,Cから1度だけ,平成13年10月ころ飲食接待を受けた,この接待場所には,Bの男性社員と思われる人が同席していたなどと供述し(証拠略),単に甲で飲食接待を受けたという事実のみならず,その場に同席をしていた人物の存在まで記憶喚起して ろ飲食接待を受けた,この接待場所には,Bの男性社員と思われる人が同席していたなどと供述し(証拠略),単に甲で飲食接待を受けたという事実のみならず,その場に同席をしていた人物の存在まで記憶喚起していたといえ,逮捕直後に弁護人が付き,弁護人から記憶にあることをきちんと話すように,読み聞けの際には間違っている点がないかきちんと確認をしてから署名指印するようにとのアドバイスを受けていた点も併せ考えると,このような調書を作成した記憶はないが,逮捕翌日に捜査官に対し,甲に行っているかもしれないという話をしたことはある,これは甲という名前については記憶があり,捜査官から甲で接待を受けただろうと強く言われたことから,具体的な記憶はなかったが,行っているかもしれないという話をしてしまったなどと説明する被告人の供述は,不自然,不合理というほかない。 そうすると,上記のような供述の変遷につき,被告人は,合理的な説明をしているとは到底認められない。 イ5月24日の面会に関する供述の変遷- 50 -また,被告人は,5月24日の面会に関する事実につき,当初は,区長室,応接室でCらと会った記憶はない(証拠略),平成14年5月下旬ころ,応接室でCと会った記憶はない(証拠略)と答えていたものの,その後,Cと応接室で会ったことはないと当初言っていたが,実は会ったことを思い出した,その場には,Jもいた,CとJが親戚関係であるということを聞いた,ただし,日時,用件は思い出せない,平成13年12月と平成14年5月にも行事予定表にCとの面会が記載されている以上,Cと会った可能性は高いかもしれないが,Cと二人きりで応接室で会ったことは思い出せない,そのころCが何の目的で私を訪ねてきたか思い当たることはないし,どのような話をしたかも思い出せないと供述し(証拠略),第1回公判に いかもしれないが,Cと二人きりで応接室で会ったことは思い出せない,そのころCが何の目的で私を訪ねてきたか思い当たることはないし,どのような話をしたかも思い出せないと供述し(証拠略),第1回公判における罪状認否においても,5月24日にCと応接室で面会した記憶はないと述べていた。 しかし,第10回公判において,5月24日,Cと応接室で面会をした事実を認めると述べ,その後の被告人質問においても,5月24日にCと二人きりで面会し,Cからスポーツセンターの運営で苦情を出したことにつき謝罪を受けたことなどを思い出したとの供述をしている。 そして,被告人は,公判廷において,このような供述の変遷が生じた理由につき,①平成14年度の後援会主催の海外旅行にBの社員が参加しているのが確認され,同旅行の説明会が平成14年6月28日に開催されていることが判明したことから,同日に近接する5月24日にCと面会し,同旅行を勧めたことを思い出した,②捜査段階において,Cと面会した際,スポーツセンターで対話集会を実施したという話をした記憶はあったことから,区長及び助役の平成13年度及び平成14年度分の行動予定表を捜査官から見せられて,同集会を開催した日を探していたところ,同集会を同年4月24日に開催したという記載を見落とし,同年9月21日に開催したという記載しか目にとまらず,自分の中で記憶が混乱していたが,検察官から開示されたダイアリーの記載をもう一度確認したところ同集会を同年4月24日に開催- 51 -したということが確認され,その少し後である5月24日にCと面会し,スポーツセンターの話をしたことを思い出したなどと供述する。 しかしながら,被告人は,捜査段階において,上記のように,Cが何の目的で尋ねてきたか,どのような話をしたか思い出せないと供述していたのであるか ーツセンターの話をしたことを思い出したなどと供述する。 しかしながら,被告人は,捜査段階において,上記のように,Cが何の目的で尋ねてきたか,どのような話をしたか思い出せないと供述していたのであるから(証拠略),捜査段階で,Cと面会した際に,スポーツセンターにおいて対話集会を実施した話をした記憶があったという公判廷における被告人の説明は,これに矛盾するといえる。また,被告人は,捜査段階において,同年4月にスポーツセンターの管理運営業務を行う業者がBに変わったことから苦情が殺到したことは記憶しており(証拠略),また,捜査官から見せられた予定表に同年5月にCと会ったという記載があるということも確認しているのであるから(証拠略),それに近い時期に被告人がスポーツセンターで対話集会を実施したということも当然記憶喚起することができたはずであり,同年4月24日の記載を見落とし,同年9月21日の記載と誤解して混乱していたという被告人の説明は不自然であるといえる。 そうすると,この点に関する供述の変遷についても,被告人は合理的な説明をしているとはいえない。 結論 以上検討してきたことから明らかなように,Cが被告人に対し,10月1日,甲において,50万円の現金を供与したこと,また,5月24日,応接室において,100万円の現金を供与したことは,いずれも合理的な疑いを超えて認めることができる。 (法令の適用)省略(量刑事情)本件は,α区長の職にあった被告人が,その職務に関し,α区発注の契約を受注していたBの代表取締役であったCから,前後2回にわたり,現金合計150万円を収- 52 -受したという収賄の事案である。 被告人は,全体の奉仕者として,中立,公正であるべき公務員の立場を忘れ,α区発注の契約に際して有利な取り計らいを受けたいとの趣旨であることを 50万円を収- 52 -受したという収賄の事案である。 被告人は,全体の奉仕者として,中立,公正であるべき公務員の立場を忘れ,α区発注の契約に際して有利な取り計らいを受けたいとの趣旨であることを認識しながら,一業者から現金を受け取ったものであって,公務員の廉潔性を著しく害している。被告人が,収受した賄賂は,現金合計150万円と多額であり,わずか8か月の間に,2回にわたって,何らのためらいもなく賄賂を収受しており,殊に1回目に賄賂を収受した際には,高級料亭等で贈賄業者の負担で飲食接待も受けているというのであるから,規範意識の鈍麻は明らかである。また,その後の被告人の行為によって帰趨が決したわけではないものの,現実に,Bが平成14年度以降の本庁舎及びスポーツセンター管理契約の指名,受注に成功していることに照らすと,本件各犯行は,α区民を始め,公務員全体に対する国民の信頼を損ねた。殊に,被告人は,従前のα区政について,職員と業者との間に癒着があったことを批判し,区長就任後には様々な改革を進めるモデル地方自治体のリーダーとして振る舞っていただけに,社会一般に与えた影響も無視できない。しかるに,被告人は,捜査段階から一貫して,Cから賄賂を収受したことはないなどと不合理な弁解に終始しており,本件犯行の重さや社会的責任から目を背ける姿勢は非難を免れない。 以上によれば,被告人の刑事責任は重い。 しかしながら,他方,本件で収受した賄賂は,いずれも被告人から要求したものではなく,贈賄側からの積極的働き掛けによるものであること,被告人がこれまで東京都議,α区長などとして公務に励み,その仕事ぶりも社会から評価されていたものとうかがえること,本件発覚後,被告人がα区長の職を自ら辞していること,本件がマスコミで報道され,本件により相当期間身柄を拘束されるなどし どとして公務に励み,その仕事ぶりも社会から評価されていたものとうかがえること,本件発覚後,被告人がα区長の職を自ら辞していること,本件がマスコミで報道され,本件により相当期間身柄を拘束されるなどして既に一定の社会的制裁を受けていること,学生運動に関連した古い前歴を除き前科前歴がないことなど,被告人のために酌むべき事情も認められる。 そこで,これらの諸事情を総合考慮し,被告人に対し,主文の刑を量定した上,特に今回に限りその刑の執行を猶予するのが相当と判断した。 - 53 -よって,主文のとおり判決する。 (求刑-懲役2年6月,追徴)平成18年2月15日東京地方裁判所刑事第17部大熊一之裁判長裁判官井下田英樹裁判官神吉康二裁判官
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