平成24年9月27日判決言渡平成24年(行ケ)第10128号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成24年9月6日判決原告カースル株式会社訴訟代理人弁理士安倍逸郎被告特許庁長官指定代理人豊永茂弘同松本 貢同中澤 登同瀬良聡機同田村正明 主文 1 特許庁が訂正2011-390120号事件について平成24年3月6日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は,被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨主文同旨第2 争いのない事実 1 特許庁における手続の概要(1) 原告は,発明の名称を「通気口用フィルター部材」とする特許(特許第2791553号。以下「本件特許」という。)の特許権者である。 (2) 東洋アルミエコープロダクツ株式会社は,平成22年10月10日,本件特許について無効審判請求(無効2010-800183)をした。これに対し,原告は,平成22年12月24日付けで訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)を した。特許庁は,この無効審判請求について,平成23年7月8日,訂正を認め,特許第2791553号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする旨の審決をした。これに対して,原告は,当庁に,審決取消訴訟(当庁平成23年(行ケ)第10258号事件)を提起した。 (3) 原告は,本件特許について訂正審判請求(訂正2011-390120。以下「本 決をした。これに対して,原告は,当庁に,審決取消訴訟(当庁平成23年(行ケ)第10258号事件)を提起した。 (3) 原告は,本件特許について訂正審判請求(訂正2011-390120。以下「本件訂正審判請求」という。)をし,特許庁は,これに対して,平成24年3月6日付けで後記3のとおりの審決(以下「審決」という。)をした。 2 特許請求の範囲の記載本件訂正審判請求による訂正後の本件特許の特許請求の範囲(請求項は1項のみ。)は,次のとおりである(以下,この発明を「本件訂正発明」という。)。 「幅広の不織布を取り付けようとするレンジフードの角形の通気口に合わせて切断し,切断した不織布の周囲を前記通気口に仮固定してこの通気口を不織布で直接覆って使用する通気口用フィルター部材であって,前記不織布として,一軸方向にのみ非伸縮性で,かつ該一軸方向とは直交する方向へ伸ばした状態で仮固定して使用したとき,120~140%まで自由に伸びて縮み,難燃処理された合成樹脂繊維からなるものを使用し,前記不織布を前記一軸方向とは直交する方向へ伸ばして,この不織布により前記通気口を覆うことを可能としたことを特徴とする通気口用フィルター部材。」 3 審決の内容(1) 審決の内容は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,本件訂正発明は,甲1(特開平3-229608号公報)記載の発明(以下「甲1発明」という。)及び本件出願前周知の事項に基づいて当業者であれば容易に発明をすることができたものであるから,独立特許要件を満たさないとするものである。 (2) 審決が認定した甲1発明の内容ア幅広の不織布を取り付けようとするレンジフード12の角形の排気口に合わせて切断し,切断した不織布の周囲を前記排気口に固定してこの排気口を不織布で (2) 審決が認定した甲1発明の内容ア幅広の不織布を取り付けようとするレンジフード12の角形の排気口に合わせて切断し,切断した不織布の周囲を前記排気口に固定してこの排気口を不織布で 直接覆って使用する排気口用フィルターであって,イ不織布として,難燃性のものを使用しウこの不織布により前記排気口を覆うことを可能とした排気口用フィルター。 (3) 審決が認定した本件訂正発明と甲1発明との一致点「幅広の不織布を取り付けようとするレンジフードの角形の通気口に合わせて切断し,切断した不織布の周囲を前記通気口に固定してこの通気口を不織布で直接覆って使用する通気口用フィルター部材であって,不織布として,難燃性のものを使用し,この不織布により前記通気口を覆うことを可能とした通気口用フィルター部材。」(4) 審決が認定した本件訂正発明と甲1発明との相違点本件訂正発明では,不織布を「仮固定」すると共に,「不織布として,一軸方向にのみ非伸縮性で,かつ該一軸方向とは直交する方向へ伸ばした状態で仮固定して使用したとき,120~140%まで自由に伸びて縮み,難燃処理された合成樹脂繊維からなるものを使用し,不織布を一軸方向とは直交する方向へ伸ばして」通気口を覆うのに対して,甲1発明では,「不織布として,難燃性のものを使用し」て通気口を覆うものの,上記のようにしていない点。 第3 審決取消事由に関する当事者の主張 1 原告の主張(1) 取消事由1(周知の事項の認定の誤り)ア審決は,周知の事項の認定に際し,甲4,甲5には「幅広の不織布として,伸びる(伸縮する)と共に合成樹脂繊維からなるものを使用するとき,一方向に伸ばすことによる直交する方向の縮みができる限り抑制されたものをフィルター部材として伸ばし 4,甲5には「幅広の不織布として,伸びる(伸縮する)と共に合成樹脂繊維からなるものを使用するとき,一方向に伸ばすことによる直交する方向の縮みができる限り抑制されたものをフィルター部材として伸ばして使用する」こと(一般的な概念:A)が示されていると認定し,甲18,甲21,甲22には,「幅広の不織布として,伸縮すると共に合成樹脂繊維からなるものを使用するとき,一軸方向の伸縮性が抑制されて,かつ該一軸方向とは直交する方向へ伸縮するものを使用する」こと(一般的な概念:B)が示されてい ると認定した。そして,これらの認定事項から,「幅広の不織布として,伸縮する(自由に伸びて縮む)と共に合成樹脂繊維からなるものを使用するとき,一軸方向の伸縮性が抑制されて(一軸方向の伸縮性が僅かで),かつ,該一軸方向とは直交する方向へ伸縮するものをフィルター部材として伸ばして使用する」こと(一般的な概念:C)は,本件出願前周知の事項であると判断した。 しかし,甲4,甲5に示されている一般的な概念Aと,甲18,甲21,甲22(以下,これらを併せて「甲18等」という。)に示されている一般的な概念Bとを組み合わせた一般的な概念(C=A+B)を周知の事項と認定することには,誤りがある。 イまた,ある技術が,当該発明と異なる技術分野において一般的に知られていたとしても,当該発明の技術分野において一般的に知られているとはいえない。本件訂正発明は,レンジフード用フィルター部材に関する技術分野に属するのに対し,甲18はメルトブロー不織布,甲21は衣料用伸縮性不織布,甲22は布帛用不織布にそれぞれ関する技術分野に属し,その技術分野が異なる。したがって,「一般的な概念:C」が,本件訂正発明の属する技術分野において本件出願前周知の事項であるとはいえない。審決には,当該 は布帛用不織布にそれぞれ関する技術分野に属し,その技術分野が異なる。したがって,「一般的な概念:C」が,本件訂正発明の属する技術分野において本件出願前周知の事項であるとはいえない。審決には,当該事項を周知の事項と認定した点にも誤りがある。 (2) 取消事由2(技術分野の同一性の認定についての誤り)本件訂正発明,甲4及び甲5は,レンジフード用又は換気扇用フィルター部材の分野に関するものであり,通気口用フィルター装置のセットメーカーの技術者が従事している技術に関するのに対して,甲18等は,不織布に関するものであり,本件訂正発明,甲4及び甲5と甲18等とは,発明の属する技術分野において相違する。したがって,審決は,両者を同一の技術分野に属するとして,本件訂正発明の容易想到性判断の前提とした点で誤りがある。 (3) 取消事由3(甲1発明に周知の事項を適用することの容易想到性判断の誤り)甲1の出願当時(平成2年1月28日),不織布を切断して,レンジフードに直接 取り付けてフィルター部材として使用することは知られていない。また,甲1の出願時において,レンジフード用のフィルター部材には,縦方向及び横方向の何れの方向にも伸縮しない不織布,つまり,非伸縮性の不織布のみが採用されており,多方向伸縮性の不織布や一軸方向のみ非伸縮性の不織布は利用されていない。非伸縮性の不織布を採用した場合において,不織布の大きさを通気口よりも小さく切断したときは,伸ばして取り付けようとすると,不織布が破断するという不都合があるので,通常,使用者は,伸ばして取り付けようと試みることはない。したがって,「不織布を伸ばして取り付けようとすること自体,使用者であれば当然試行する」とはいえない。 また,審決は,甲1には,使用する不織布が技術的に非伸縮性でなけ 付けようと試みることはない。したがって,「不織布を伸ばして取り付けようとすること自体,使用者であれば当然試行する」とはいえない。 また,審決は,甲1には,使用する不織布が技術的に非伸縮性でなければならないことを示す記載がないため,甲1発明は,伸縮性を有する不織布(フィルター部材)の使用を考慮するものであるというべきであると認定した。しかし,甲2の記載から,換気扇フィルターには,不織布の緩みがあってはならず,伸縮性の不織布は換気扇フィルターに使用されることはないと理解される。さらに,甲1には,火災発生を防止する観点から「難燃性の不織布」を用いることが記載されているところ,通常,不織布に難燃性を付与するということは,不織布が伸び難くなることを意味するから,甲1の不織布は,非伸縮性に限定されることの合理的理由が存する。 以上のとおり,審決には,甲1発明について,周知の事項を適用する際に,甲1に記載の不織布について,不織布の大きさが通気口よりも小さく切断した場合に,これを無駄にしないように伸ばして取り付けようとすることは,使用者であれば当然試行することであると判断した点に誤りがある。また,審決には,甲1発明は,伸縮性を有する不織布(フィルター部材)の使用を考慮するものであるというべきであると判断した点にも誤りがある。 以上のとおり,甲1発明について,周知の事項を適用することが容易であるとした審決の判断には誤りがある。 2 被告の反論 (1) 取消事由1(周知の事項の認定の誤り)に対してア本件訂正発明は,不織布というフィルター部材として周知慣用材料を用いてサイズを調節しながら通気口を覆うという,日常的に遭遇し,実行する作業に関連した発明である。このような技術分野における発明の容易想到性の有無を判断する前提としての ター部材として周知慣用材料を用いてサイズを調節しながら通気口を覆うという,日常的に遭遇し,実行する作業に関連した発明である。このような技術分野における発明の容易想到性の有無を判断する前提としての公知技術の内容を把握するに当たって,個々の文献の具体的な記載を過度に要求することは適切を欠く。 甲4,甲5には,幅広の不織布として,伸びると共に合成樹脂繊維からなるものを使用するとき,一方向に伸ばすことにより,フィルター部材として使用するという一般的な概念が示されている。また,甲18等には,幅広の不織布として,伸縮すると共に合成樹脂繊維からなるものを使用するとき,一軸方向の伸縮性が抑制されて,かつ該一軸方向とは直交する方向へ伸縮するものを使用するという一般的な概念が示されている。これら2つの「一般的概念」は,実質的に「幅広の不織布として,伸びると共に合成樹脂繊維からなるものを使用するとき,一方向に伸ばすものを使用する」点において共通する。本件において,「一方向に伸ばす」,「合成樹脂繊維からなる」,「幅広の不織布」を上位概念として抽出することが許されないとはいえない。 審決において,2つの一般的な概念を区別したのは,用途が異なるという理由によるものであって,用途以外では共通するから,これらを組み合わせることは,許される。 イ本件訂正発明の属する技術分野は「レンジフードフィルター部材」に関するものであるが,本件訂正発明の特徴点は,通気口を覆うフィルター部材として,「一軸方向にのみ非伸縮性で」「合成樹脂繊維からなる」「幅広の不織布」という「特定の不織布」に関するものである。他方,甲18等の属する技術分野は,幅広の不織布として,伸縮すると共に合成樹脂繊維からなるものを使用するとき,一軸方向の伸縮性が抑制されて,かつ該一軸方向とは直交する方 の不織布」に関するものである。他方,甲18等の属する技術分野は,幅広の不織布として,伸縮すると共に合成樹脂繊維からなるものを使用するとき,一軸方向の伸縮性が抑制されて,かつ該一軸方向とは直交する方向へ伸縮する「特定の不織布」に関するものであるから,「レンジフードフィルター部材」という用途についての記 載がない場合であっても,甲1,甲4,甲5と組み合わせることにより,本件訂正発明が容易想到であると判断することは許される。 (2) 取消事由2(技術分野の同一性の認定についての誤り)に対して甲4,甲5及び甲18等は,実質的に「幅広の不織布として,伸びると共に合成樹脂繊維からなるものを使用するとき,一方向に伸ばすものを使用する」点において共通する。技術分野に相違があるからといって,これらの文献記載の技術を組み合わせて,本件訂正発明の容易想到性の有無を判断することが許されないわけではない。 (3) 取消事由3(甲1発明に周知の事項を適用することの容易想到性判断の誤り)に対して甲1には,不織布を切断して,レンジフードに直接取り付けてフィルター部材として使用することが示されている。また,甲1の第2図の「レンジフード12と不織布(フィルター部材)10が図示された右側の図」には,格子状の部材が図示されており,支持部材であるとみることができる。甲1の出願当時(平成2年)において,柔軟な(伸縮性の)難燃性不織布からなるレンジフード用フィルター部材を支持部材で支持して用いることが当業者において認知されていたとみることができ,格子状の部材(支持部材)で支持されることで,換気扇による吸込みが起きない伸縮性の難燃性合成繊維不織布からなるレンジフード用フィルター部材である場合を想定することができる。 甲1において,不織布を切断したとき,大き 材)で支持されることで,換気扇による吸込みが起きない伸縮性の難燃性合成繊維不織布からなるレンジフード用フィルター部材である場合を想定することができる。 甲1において,不織布を切断したとき,大きさが通気口よりも小さければ,不織布を無駄にしないように,伸ばして取り付けようとすることは,使用者であれば当然に試行する。そして,本件出願時において,伸縮性の不織布自体は周知慣用の材料(甲4,甲18,乙2,乙3等)であり,一軸方向の伸縮が抑制されたものも周知の材料であるから,甲1において,切断した不織布の大きさが通気口の大きさと合致しないという日常的に遭遇する課題に接した場合,当業者であれば,周知の材料を検討することに困難性はない。 第4 当裁判所の判断当裁判所は,本件訂正発明の甲1発明との相違点に係る構成,すなわち「不織布を『仮固定』すると共に,『不織布として,一軸方向にのみ非伸縮性で,かつ該一軸方向とは直交する方向へ伸ばした状態で仮固定して使用したとき,120~140%まで自由に伸びて縮み,難燃処理された合成樹脂繊維からなるものを使用し,不織布を一軸方向とは直交する方向へ伸ばして』通気口を覆う」との構成は,甲1発明に甲4,甲5及び甲18等に記載の発明を適用することにより,容易に想到することができたとはいえないものと判断する(取消事由1ないし取消事由3)。 その理由は,以下のとおりである。 1 認定事実(1) 本件訂正発明について本件訂正発明の特許請求の範囲は,第2の2記載のとおりである。また,本件訂正審判請求に添付の訂正明細書の発明の詳細な説明には,次のとおりの記載がある。 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,レンジフードの通気口を覆って使用する通気口用フイルター部材に関する。」「【0003 正明細書の発明の詳細な説明には,次のとおりの記載がある。 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,レンジフードの通気口を覆って使用する通気口用フイルター部材に関する。」「【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,公報記載の排気口へのフィルター取付け方法に使用されている不織布には平面方向に伸びない不織布を使用しているので,取付けようとする通気口に合わせて不織布を切断する必要があり,所定の幅より短い場合にはフィルターとして使用することができず,長い場合には再度切断し直す必要があり,極めて面倒であるという問題があった。本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので,比較的簡便に取付けが可能な通気口用フイルター部材を提供することを目的とする。」「【0005】請求項1記載の通気口用フイルター部材においては,一軸方向にのみ非伸縮性の不織布を使用しているので,角形の通気口の一方の幅aにのみ長さを合わせて不織布を切断し,通気口の他 方の幅bについては,概略長さで不織布を切断してフィルター部材を用意する。次に,フィルター部材となる不織布の所定の幅aで切断した側の端部を,通気口の幅aの部分に合わせて固定し,該不織布の反対側の端部を,幅aの通気口の反対側の端部に固定する。この場合,概略長さで切断した不織布が幅bより短い場合には,不織布を少し引っ張って伸ばすことにより通気口全体を覆い,概略長さで切断した不織布が幅bより長い場合には,一旦不織布の端部を固定した後,そのはみ出し部分を切断する(なお,余剰部分を折り曲げてもよい)。」「【0010】不織布13が弛んだ状態で取付けられている場合には,伸縮性のないA方向に不織布13を引っ張った状態で固定することによって,見栄えが良く不織布13を通気口12に固定できる。 また,不織布 【0010】不織布13が弛んだ状態で取付けられている場合には,伸縮性のないA方向に不織布13を引っ張った状態で固定することによって,見栄えが良く不織布13を通気口12に固定できる。 また,不織布13の幅dが通気口12の幅bより長い場合には,再度切断して適当な長さにするか,あるいは不織布13の余分な端部を内側に折り曲げた状態で取っ手付き磁石15によって固定する。なお,取っ手付き磁石15の内面側には鉄板が設けられているものとする。 【0011】ここで,図3(A),(B)に示すように,比較実験のために,A,B何れの方向にも自由に伸びる不織布16を使用し,その周囲を取っ手付き磁石15で固定した状態でフィルター部材として使用したところ,時間の経過と共に油等の汚れが不織布16に付着し,通気口12の下方に垂れ下がることが確認された(図3(A)参照)。また,レンジフード11のファンの風力が強い場合には,ファンによって内側に吹き寄せられる(図3(B)参照)。従って,自由に伸びる不織布16の場合には,中央部分が上下に弛み易いという欠点が判明した。 【0012】一方,直交する何れの方向にも伸びない不織布を使用して通気口12を覆った場合には,図3(A),(B)のようには中弛みはしないが,所定の寸法に切断しないと通気口12に収まらず,収まっても丁度に取付けることは難しく,特に,幅が短い場合には全く使用できないという欠点があった。」(2) 甲1の記載甲1には,次のとおりの記載がある。 「2 特許請求の範囲(1) 所定広さのフィルターで排気口を覆い,周囲をマグネットホルダーによって押さえた排気口カバーの取り付け方法」「第1図,第2図に示すように第1の実施例に係る排気口カバーの取付け方法においては,まず第2図に示すようにフィルターの を覆い,周囲をマグネットホルダーによって押さえた排気口カバーの取り付け方法」「第1図,第2図に示すように第1の実施例に係る排気口カバーの取付け方法においては,まず第2図に示すようにフィルターの一例である難燃性の不織布10を鋏11等で所定長に切断し,排気口の一例であるレンジフード12の周囲に被せ,第1図に示すように周囲を適当数のマグネットホルダー13によって固定する。」(2頁左下欄18行目から右下欄4行目)(3) 甲4の記載甲4(特開平8-196843号公報)には,次のとおりの記載がある。 「【特許請求の範囲】【請求項1】 換気扇等の吸気側開口全体を覆い,着脱自在に装着される四角形状の換気扇用フィルターにおいて,該フィルターはフィルター部材の少なくとも両端にホルダー部が設けられているとともに,該フィルター部材は中央部が端部に比べ幅広く形成されていることを特徴とする換気扇用フィルター。」「【発明の詳細な説明】【0001】【産業上の利用分野】本発明は台所用換気扇やレンジフードなどのフィルターの装着を必要とする換気扇本体や換気扇本体の前面全体を覆うフィルターカバーの吸気側開口全体を覆い,着脱自在に取り付け可能とした換気扇用フィルターに関するものである。」「【0005】しかしながら,フィルターカバー20 にフィルター21 が装着された状態では図6に示すように両方向に引張られたような状態で装着されている。よって,図5に示すような形状のフィルター21 では中央部分の幅が両端に比べて片側でA寸法だけ狭くなる。特にフィルター部材22 として不織布を用いた場合は上記現象がより顕著である。」「【0014】フィルター部材9は図1に示すように中央部分が両端に比べて片側でA寸法だけ幅広く形成されているために,装着において左右に引張った として不織布を用いた場合は上記現象がより顕著である。」「【0014】フィルター部材9は図1に示すように中央部分が両端に比べて片側でA寸法だけ幅広く形成されているために,装着において左右に引張った状態でも従来のように中央部分が狭くなり,開口2全体を防ぐことができないということはない。またフィルター部材として不 織布を用いた場合は,図6に示すような現象が顕著であることから本発明のような形状はより効果的である。」図1 図6 (4) 甲5の記載甲5(実願平3-31109号(実開平4-118119号)のCD-ROM)には,次のとおりの記載がある。 「【0012】【実施例】本考案の実施例を図面に従って説明すると,図1,図2は本考案のレンジフード用フィルター装置Aの一実施例を示し,ポリエステル繊維あるいはポリプロピレン繊維を適宜結合剤で3次元の網目構造に結合させた厚さが約0.3mmの不織布1を縦寸法および横寸法が42×27cmの短形体とし,その上端部を折り返すとともに折り返し部の両端を接着もしくは融着によって接合して深さが5cmの袋状端部2aを形成したシート状フィルター2と,上記不織布1と同じ材料で深さが約5cmで開口幅が27cmの浅い袋体3aよりなる係止部材3とから構成してあり,レンジフードの吸気口に配設された金網等からなるフィルター部材4に,前記シート状フィルターの袋状端部2aを被せるとともに,フィルター部材4の他端部にシート状フィルター2の他方の自由端部2bを巻き込み,この巻き込み状態のままで袋体よりなる係止 部材3を装着してある。」「【0016】この変形例によれば,係止部材3が環状体3bで形成してあるので,シート状フィルター2の自由端部2bを内側に引っ張る 態のままで袋体よりなる係止 部材3を装着してある。」「【0016】この変形例によれば,係止部材3が環状体3bで形成してあるので,シート状フィルター2の自由端部2bを内側に引っ張ると,シート状フィルターの弛みが防止されて,フィルター部材4に容易に密着させて取り付けることができる。 【0017】図4は,本考案の第2変形例に係るレンジフード用フィルター装置を示し,前記変形例が係止部材3として環状体3bを用いたのに対して,このものは,フィルター部材にマジックテープ(商品名)などの係止爪を植設させたテープ材3c,3c,が貼着してあり,このテープ材3cの係止爪にシート状のフィルター2の自由端部2bを巻き込み状態に係止してある。 【0018】この変形例によれば,テープ材3cの係止爪がシート状フィルターに食い込み状態で係止されるので,該シート状フィルター2が油煙の吸着で重くなっても,シート状フィルターに弛みや垂れ下がりが発生し難いものとなる。」「【0022】また,不織布は繊維の結合によって適度の伸縮性を有しているので,既存の深型レンジフードのフィルター部材のサイズに完全に合致していなくても,若干小さいシート状フィルターを伸ばした状態で取り付けできるものであり,既存のフィルター部材のサイズが多少異なったものに対しても取り付けが容易である。」(5) 甲18の記載甲18(特開平8-60515号公報)には,次のとおりの記載がある。 「【発明の詳細な説明】【0001】【産業上の利用分野】本発明は,メルトブロー不織布およびその製造方法に関する。さらに詳しくは,高強力,細繊度,低目付,良好な均一性等の特徴を有することから,産業資材用途,特に感熱性孔版印刷用原紙の支持体用途に適するメルトブロー不織布およびその製 布およびその製造方法に関する。さらに詳しくは,高強力,細繊度,低目付,良好な均一性等の特徴を有することから,産業資材用途,特に感熱性孔版印刷用原紙の支持体用途に適するメルトブロー不織布およびその製造方法に関 する。」「【0020】本発明において,不織布の巻取方向(縦方向)の最大引張強力と巻取方向に垂直な方向(横方向)の最大引張強力の比とは,不織布の巻取方向(縦方向)の最大引張強力を不織布の巻取方向に垂直な方向(横方向)の最大引張強力で除した値をいう。この強力比が4より大きい場合,横方向の強力が不足し本発明の目的を満たさない。(中略)不織布の巻取方向の最大引張強力と不織布の巻取方向に垂直な方向の最大引張強力の比は0.5~4である必要がある。全方向により均一な強力を示すためには,強力比は0.8から2であることが好ましく,0.9~1.5であることがさらに好ましい。」「【0071】比較例2は縦方向の強力は高いものになったが横方向の強力が低く,縦横の強力比が6.0と本発明の範囲を外れるものであった。繊維の複屈折率は0~0.152の範囲で大きくばらついていた。」(【0085】項の表1には,比較例2の伸度が,縦20パーセント,横153パーセント,強力比6.0と記載されている。)「【0078】実施例5の繊維径分布のCV値は43.7であった。実施例5は非常に細繊度の繊維でありながら従来に無い高い強力を示し,フィルター用途,ワイパー用途等のの産業資材用途に適したものである。」(【0085】項の表1には,実施例5の伸度が,縦14パーセント,横17パーセントと記載されている。)(6) 甲21の記載甲21(特開平7-300752号公報)には,次のとおりの記載がある。 「【要約】【目的】 この出願発明は,タテの伸縮性が制限されている ーセントと記載されている。)(6) 甲21の記載甲21(特開平7-300752号公報)には,次のとおりの記載がある。 「【要約】【目的】 この出願発明は,タテの伸縮性が制限されている伸縮性不織布により,着用時の伸縮性不織布のタテ方向への伸長をおさえ,安価であって簡単に取り付けることができ,しかも容易に着用することができる締めつけ材及びそれらの製造方法を提供することを目的とするものである。 【構成】 この出願発明は,タテ方向の伸縮性が抑制されている伸縮性不織布,とくに,ループ状捲縮繊維によりタテ方向の伸縮性が抑制されている伸縮性不織布,その伸縮性不織布からなる締めつけ材及びそれらの製造方法に関する。」 「【発明の詳細な説明】【0001】【産業上の利用分野】この出願発明は,伸縮性不織布,衣料用締めつけ材及びそれらの製造方法に関するものである。」「【0004】【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため,この出願発明は,タテ方向の伸縮性が抑制された,伸縮性および伸長後の弾性回復性が高い不織布(中略)である。(中略)この出願発明の伸縮性不織布は衣料用締めつけ材として好適であり,衣料の袖,裾,襟または帽子,手袋等の締めつけ部分に於いて使用するのがとくに好適である。」(7) 甲22の記載甲22(特開平1-266260号公報)には,次のとおりの記載がある。 「本発明は,かかるポリアミド,ポリエステルを主体とする極細繊維からなる不織布で構成された吸水性布帛である。」(2頁右上欄16行目から18行目)「かかる一軸配向不織布は,たて方向に対するよこ方向の伸度が1.5~8.0倍の範囲にある程度の配向のものが吸水性,布帛強度ならびに風合の3つのバランスがとれていて好ましい。」(2頁右下欄18行目 「かかる一軸配向不織布は,たて方向に対するよこ方向の伸度が1.5~8.0倍の範囲にある程度の配向のものが吸水性,布帛強度ならびに風合の3つのバランスがとれていて好ましい。」(2頁右下欄18行目から3頁左上欄1行目)「[発明の効果]本発明の吸水性布帛は,極めて吸水特性に優れた布帛であって,さらに柔軟で,しかも布帛強度の高い性質を有するものであるので,水の吸収を必要とする各種用途,たとえば肌着やスポーツ衣料などの衣料用,ワイピングクロスなどのクリーナー用,モップなどの掃除用,壁材,床材などの建装用,シーツ,マットなどの寝装用,ガーゼ,包帯,オムツ,ナプキンなどの医療衛生用,カバー類,各種敷物類などに極めて好適な素材である。」(4頁右上欄7行目から16行目) 2 判断(1) 甲18等に基づく容易想到性の有無審決は,甲18等から,「幅広の不織布として,伸縮すると共に合成樹脂繊維から なるものを使用するとき,一軸方向の伸縮性が抑制されて,かつ該一軸方向とは直交する方向へ伸縮するものを伸ばして使用する」との事項が示され,甲4及び甲5から認定される事項と併せると,「幅広の不織布として,伸縮する(自由に伸びて縮む)と共に合成樹脂繊維からなるものを使用するとき,一軸方向の伸縮性が抑制されて(一軸方向の伸縮性が僅かで),かつ該一軸方向とは直交する方向へ伸縮するものをフィルター部材として伸ばして使用する」ことは周知であると判断する。しかし,当裁判所は,甲18等には,それぞれに記載の不織布をフィルター部材として用いることは示されておらず,甲4及び甲5によって認定される事項と組み合わせることによって,本件訂正発明の相違点に係る構成に至ることが容易であるとはいえないと判断する。その理由は次のとおりである。 ア甲18甲1 ず,甲4及び甲5によって認定される事項と組み合わせることによって,本件訂正発明の相違点に係る構成に至ることが容易であるとはいえないと判断する。その理由は次のとおりである。 ア甲18甲18に記載された発明は,「特に感熱性孔版印刷用原紙の支持体用途に適するメルトブロー不織布およびその製造方法に関する」発明であって,フィルター部材として使用することは開示されていない。 なお,甲18の段落【0078】には,実施例5の不織布について,「フィルター用途,ワイパー用途等の産業資材用途に適したものである」と記載がされているが,実施例5の不織布は,伸度が縦14パーセント,横17パーセントであって,一軸方向の伸縮性が抑制されてかつこれと直交する方向へ伸縮するものとはいえない。 また,甲18の比較例2は,伸度が縦20パーセント,横153パーセントで,一軸方向への伸縮性が大きい不織布ではある。しかし,比較例2の強力比は6.0とされており,段落【0020】には,強力比について,「0.5~4である必要がある」とされていることからすれば,甲18には比較例2の不織布について何らかの用途に用いることは示されていない。 イ甲21甲21に記載された発明は,衣類の締めつけ材及びそれらの製造方法に関する発明であって,この不織布をフィルター用途に用いることについての言及はない。 ウ甲22甲22に記載された発明は,「不織布で構成された吸水性布帛」に関する発明である。その「[発明の効果]」の項目には,「水の吸収を必要とする各種用途,たとえば肌着やスポーツ衣料などの衣料用,ワイピングクロスなどのクリーナー用,モップなどの掃除用,壁材,床材などの建装用,シーツ,マットなどの寝装用,ガーゼ,包帯,オムツ,ナプキンなどの医療衛生用,カバー類,各種 スポーツ衣料などの衣料用,ワイピングクロスなどのクリーナー用,モップなどの掃除用,壁材,床材などの建装用,シーツ,マットなどの寝装用,ガーゼ,包帯,オムツ,ナプキンなどの医療衛生用,カバー類,各種敷物類などに極めて好適な素材である」(前記1(7))との記載があるものの,フィルター部材として使用することについての言及はなく,フィルター部材に吸水性が必要となると認めるべき事情もない。 エ小括以上によれば,甲18等には,フィルター部材として用いることは示されておらず,甲4及び甲5によって認定される事項と組み合わせることによって,本件訂正発明の相違点に係る構成に至ることが容易であるとはいえない。 (2) 甲4及び甲5の記載に基づく容易想到性の判断について審決は,甲4及び甲5から,「幅広の不織布として,伸びる(伸縮する)と共に合成樹脂繊維からなるものを使用するとき,伸ばすことによる縮みができる限り抑制されたものをフィルター部材として伸ばして使用する」との事項が示されていると認定,判断する。 しかし,当裁判所は,以下のとおり,甲4及び甲5には,「伸ばすことによる縮みができる限り抑制されたものを」使用することが記載又は示唆されておらず,したがって,甲1発明に甲4及び甲5に記載の技術を適用しても,本件訂正発明の相違点に係る構成に到達することはないと判断する。念のため,付加的にその理由を述べることとする。 ア甲4について(ア) 甲4に記載された「換気扇用フィルター部材」は,直交する2つの軸方向ともに伸縮性を有した不織布を用いており,張った状態では,フィルター部材の中央 部分は狭くなるから,甲4に基づいて,伸ばした方向と直交する方向の縮みを抑制する技術思想を読み取ることはできない。甲4には「図5に示すような形状のフ り,張った状態では,フィルター部材の中央 部分は狭くなるから,甲4に基づいて,伸ばした方向と直交する方向の縮みを抑制する技術思想を読み取ることはできない。甲4には「図5に示すような形状のフィルター21では中央部分の幅が両端に比べて片側でA寸法だけ狭くなる。」,「フィルター部材9は図1に示すように中央部分が両端に比べて片側でA寸法だけ幅広く形成されているために,装着において左右に引張った状態でも従来のように中央部分が狭くなり,開口2全体を防ぐことができないということはない。」と記載されている(前記1(3))。同記載からすると,甲4の「換気扇用フィルター部材」は,左右に引っ張った状態でも従来のように中央部分が狭くなり,開口全体を防ぐことができないことが生じないように,予め中央部分が両端に比べて片側でA寸法だけ幅広く形成しておくものであるから,使用する不織布は直交する2つの軸方向ともに伸縮性を有した不織布を用いることを前提としていると理解できる。そうすると,甲4に記載された「換気扇用フィルター」は張った状態では,中央部分が狭くなるフィルター部材であるから,甲4には,縮みを抑制する技術は記載されていないと解される。 (イ) この点,審決では,不織布をフィルター部材として伸ばして使用する際,伸ばすことによる縮みができる限り抑制されるべきであることは,甲4の段落【0014】の記載からしても当然であるとする。しかし,甲4に記載されているのは,上記(ア)のとおり,直交する2つの軸方向ともに伸縮性を有した換気扇用フィルター部材であって,甲4は,伸ばした方向と直交する方向で縮みが生じることを前提として,予め直交する方向で幅広に不織布を形成する点に特徴があり,甲4には,伸ばした際の縮みを抑制することに関する記載及び示唆はない。 イ甲5に ばした方向と直交する方向で縮みが生じることを前提として,予め直交する方向で幅広に不織布を形成する点に特徴があり,甲4には,伸ばした際の縮みを抑制することに関する記載及び示唆はない。 イ甲5について甲5には,その段落【0022】に「若干小さいシート状フィルターを伸ばした状態で取り付けできる」との記載があり(前記1(4)), 当該フィルターは少なくとも一軸方向への伸縮性を有していることが見て取れるが,これを超えて,この軸と直交する方向についての伸縮性についての記載はない。なお,甲5の段落【001 8】には,シート状フィルター2が油煙の吸着で重くなっても,シート状フィルターに弛みや垂れ下がりが発生し難いものとなることが記載されている(前記1(4))。 同記載に係る弛みや垂れ下がりは,テープ材3cの係止爪がシート状フィルターに食い込み状態で係止されることに関連して生じるものであって,シート状フィルターが油煙の吸着で重くなったために,その自由端部がずれて発生する弛みや垂れ下がりを防止していると解される。よって,弛みや垂れ下がりが防止されるとの効果は,シート状フィルターの伸縮性の有無あるいは,伸縮の方向性により得られるものではない。 ウ小括以上によれば,甲4及び甲5には,「伸ばすことによる縮みができる限り抑制されたものを」使用することは,記載又は示唆されているものではないから,甲1に甲4及び甲5を適用しても,本件訂正発明の相違点に係る構成に到達することはない。 被告は,その他縷々主張するが,いずれも採用の限りでない。 3 結論上記のとおり,本件訂正発明における甲1発明との相違点に係る構成は,甲1発明に,甲4,甲5及び甲18等に記載の発明を組み合わせることにより容易に想到することはできないから,これと異なる認定 結論 上記のとおり,本件訂正発明における甲1発明との相違点に係る構成は,甲1発明に,甲4,甲5及び甲18等に記載の発明を組み合わせることにより容易に想到することはできないから,これと異なる認定,判断をした審決には,その余の点を判断するまでもなく,誤りがある。よって,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官飯村敏明 裁判官八木貴美子 裁判官小田真治
▼ クリックして全文を表示