- 1 -令和元年11月27日判決言渡令和元年(行コ)第186号源泉所得税納税告知処分取消等,更正すべき理由がない旨の通知処分取消等,源泉所得税納税告知処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成28年(行ウ)第434号(第1事件),同435号(第2事件),同436号(第3事件)) 主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は第1審被告の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人ら(以下「第1審原告ら」という。)の請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要(略称は,原判決の例による。) 1 Aグループは,被控訴人B(以下「第1審原告B」という。)を除く被控訴 人ら(本店所在地は日本)及びC(本店所在地はシンガポール)などから構成され,世界各地でラジエーターの製造販売等を行う企業グループである。 Aグループ各社の代表者を務めていた第1審原告Bは,所得税法2条1項5号の「非居住者」に該当するとして,平成21年分から平成24年分まで所得税の申告をしなかった。しかし,第1審原告Bは,所轄税務署長から,同項3 号の「居住者」に該当するとして,期限後申告を勧奨されたため,期限後申告を行った上で更正の請求等をしたが,本件各通知処分,第2事件各賦課決定処分を受けた。 また,第1審原告ら(第1審原告Bを除く。)は,第1審原告Bに支払った役員報酬について,平成21年11月分から平成24年12月分まで第1審原 告Bが「非居住者」に該当するとの前提で所得税を源泉徴収し,納付していた- 2 -が,所轄税務署長から,第1審原告Bは「居住者」に該当するとして本件各納税告知処分,第1・3事件各賦課決定処分を受けた。 「非居住者」に該当するとの前提で所得税を源泉徴収し,納付していた- 2 -が,所轄税務署長から,第1審原告Bは「居住者」に該当するとして本件各納税告知処分,第1・3事件各賦課決定処分を受けた。 本件は,第1審原告らが,第1審原告Bは所得税法2条1項3号の「居住者」に該当しないとして,それぞれ上記各処分の取消しを求めた事案である。 原判決は,第1審原告らの請求をいずれも認容した。これを不服とする第1 審被告が控訴した。 2 関係法令の定め,前提事実,税額等に関する当事者の主張,争点,争点に対する当事者の主張の要旨は,次のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」中の第2の1から5までに記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決8頁15行目の「同法165条1項2号」を「同法185条1項2 号」に改める。 ⑵ 原判決9頁17行目の「同法165条1項2号」を「同法185条1項2号」に改める。 ⑶ 原判決80頁5行目(原判決10頁10行目に引用されている原判決別紙8)の「第1事件各賦課決定処分の根拠」を「第2事件各賦課決定処分の根 拠」に改める。 ⑷ 原判決82頁15行目(原判決10頁10行目に引用されている原判決別紙8)の「第3処分各賦課決定処分の根拠」を「第3事件各賦課決定処分の根拠」に改める。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,第1審原告Bは所得税法2条1項3号の「居住者」に該当するとは認められないから,「居住者」であることを前提になされた本件各処分は違法であると判断する。その理由は,後記のとおり当裁判所の補足的判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」中の第3に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 当裁判所の補足的判断- 3 -⑴ 第1審被告は,従前の第1審原 り当裁判所の補足的判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」中の第3に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 当裁判所の補足的判断- 3 -⑴ 第1審被告は,従前の第1審原告Bの生活の本拠は日本にあったところ,精緻に時系列的に検討しても,過去にあった生活の本拠たる実体が日本から移転したと認めるべき事情は存しないと主張する。 第1審原告Bは,経営する会社の活動を日本から海外に広げ,日本と海外に複数の居所を有し,海外滞在日数が徐々に増加していったのであるから, 通常の引越しのように,特定の日又は期間に目に見える形で生活の本拠が日本から海外に移転するというイベント的なものが存在しないのは当たり前のことである。このような者に対して,過去に日本にあった生活の本拠たる実体が時系列的にみて日本から海外に移転したかどうかを精緻に時系列的に検討することは,検討手法として時代遅れである。第1審被告の主張を採用す るには無理がある。 ⑵ 第1審被告は,シンガポールの滞在日数にインドネシア等の滞在日数を合算して,日本の滞在日数と比較するのは誤りであると主張する。 しかし,第1審原告Bは,インドネシア等への渡航の利便性をも考慮して,定住できる態勢の整った居宅をシンガポールに構えていたから,シンガポー ルをハブ(拠点)とする他国への短期渡航はシンガポール滞在と実質的に同一視する方が経済社会の実態に適合する。第1審被告の主張を採用するには無理がある。 ⑶ 第1審被告は,金額だけでなく,その質からも,第1審原告Bは資産の多くを日本国内に保有しており,本件各年に日本国内の資産を増加させ,シン ガポール国内の資産を減少させていたと主張する。 第1審原告Bは日本国籍を有し,生計を一にする妻らの生活の本拠も日本であったか 本国内に保有しており,本件各年に日本国内の資産を増加させ,シン ガポール国内の資産を減少させていたと主張する。 第1審原告Bは日本国籍を有し,生計を一にする妻らの生活の本拠も日本であったから,金額及びその質の面から日本国内の保有資産が大きくなるのは自然なことである。しかし,資産の所在は,それだけで居住者判定に大きな影響力を与える要素ではない。資産の大半をカリブ海の国又は地域で保有 していても,主に日本に滞在し,主に日本で経済活動をしている者は,居住- 4 -者である。本件各海外法人の業務への従事状況,シンガポールを中心とする日本国外滞在日数を考慮するとき,資産の所在を理由に日本国内の居住者と判定するには無理がある。 第4 結論以上によれば,第1審原告らの請求はいずれも理由があるからこれを認容す べきであり,これと同旨の原判決は相当である。よって,本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第11民事部 裁判長裁判官野山 宏 裁判官橋本英史 裁判官片瀬 亮
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