昭和39(ネ)416 建物収去土地明渡請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和42年6月13日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決(甲府地方裁判所昭和三一年(ワ)第一五二号)を取消す。      被控訴人の請求を棄却する。      本件訴訟の総費用は、被控訴人の負担とする。          事 

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主文 原判決(甲府地方裁判所昭和三一年(ワ)第一五二号)を取消す。 被控訴人の請求を棄却する。 本件訴訟の総費用は、被控訴人の負担とする。 事実 控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。 (被控訴人の主張)被控訴代理人は請求原因として、一、 被控訴人は甲府市a町b番地宅地一九六坪五合八勺(六四九・八五平方メートル)を所有し、その地上に戦前、建物を所有してその建物を数人の者にそれぞれ賃貸し、控訴人に対しても東方より三軒目の一戸を賃貸していたところ、昭和二〇年七月六日戦災により右建物は焼失した。 二、 昭和二〇年初秋ごろ控訴人のみが右罹災地に復帰し、戦時罹災土地物件令(昭和二〇年七月一二日公布施行。以下「旧物件令」という。)第四条第一項により控訴人の旧居住建物の敷地一五坪の上に暫定的賃借権を取得して、その焼跡にバラックを建て居住するようになつたが、被控訴人が疎開していて土地の管理不充分であるのに乗じ、控訴人は次第に一九六坪五合八勺の全域(以下「本件全域の土地」ともいう。)にわたり不法に占有を始め、西の方には菜園を作り、東の方は焼自動車の車体やスクラップの置場に使用するようになつた。 三、 被控訴人は本件全域の土地を自己使用に供すべく計画していたので、控訴人に対し右土地使用中止方請求したが、控訴人はこれに応ぜずかえつてその貸与方申出たから、やむなく被控訴人は昭和二一年四月、あらためて控訴人に対し、暫定的賃借権のある一五坪を含め本件全域の土地を、期間を一カ年と定めて、バラック設置、自動車修理材料ないしスクラップ等置場、及び菜園として一時使用の目的で賃貸した 一年四月、あらためて控訴人に対し、暫定的賃借権のある一五坪を含め本件全域の土地を、期間を一カ年と定めて、バラック設置、自動車修理材料ないしスクラップ等置場、及び菜園として一時使用の目的で賃貸した。ところが控訴人は一年を過ぎても明渡さず、東の部分に自動車修理工場を建て、被控訴人の要求を無視したのであるが、被控訴人は右土地の利用状況を勘案して昭和二二年八月まで使用を認めた。しかし控訴人は右期間経過後も明渡さなかつたため、被控訴人は昭和二三年二月初め、控訴人を相手方として甲府簡易裁判所に工場建物収去、土地明渡の調停を申立てた。 右昭和二一年四月の賃貸借につき、被控訴人は従来「被控訴人は一九六坪五合八勺の土地を控訴人に対し、建物所有の目的で期間の定めなく賃料一カ月二五〇円、賃料据置期間二カ年の約束で賃貸した。」と主張し、控訴人もこれを認めて争いない事実となつていたけれども、右主張は真実に反しかつ錯誤に出たものであるから、これを撤回して前記のように訂正主張するものである。 四、 昭和二三年六月三日に至り当事者間に次の条項で調停が成立した。 (一) 申立人(被控訴人)は相手方(控訴人)に対し前記土地一九六坪五合八勺のうち道路に面する別紙図面(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(イ)の各点を直線で結ぶ約七九坪(以下「本件土地」という)を昭和二一年四月から引続き昭和三〇年七月まで賃貸すること。 (二) 賃料は一カ月二五〇円とし毎月末日限り申立人方に持参して支払うこと。賃料は二カ年毎に協定の上更新することができる。 (三) 相手方は本件土地の西方に現存する住宅約一四坪六合を昭和二三年一二月末日限り取払つてその敷地を申立人に明渡すこと。 (四) 相手方は右(一)の本件全域の土地のうち「前記契約以前に占有耕作し居る全部の土地」を昭和二三年六月三〇日限り耕作物を収 六合を昭和二三年一二月末日限り取払つてその敷地を申立人に明渡すこと。 (四) 相手方は右(一)の本件全域の土地のうち「前記契約以前に占有耕作し居る全部の土地」を昭和二三年六月三〇日限り耕作物を収去し申立人に明渡すこと。 (五) 相手方が賃料を三カ月以上滞納した場合または本件土地を第三者に転貸した場合は、期限の利益を失い、申立人より直ちに契約を解除されても異議ないこと。 五、 右調停は、本件全域の土地を控訴人が不法占有していたことを前提として(旧物件令にもとづく暫定的賃借権も昭和二一年四月の新規契約により消滅したことは後述のとおり)申立てられたものであり、その趣旨に則つて、右調停においては、本件全域の土地についての昭和二一年四月以降の賃貸借契約を合意解約することとした上、本件土地についてのみ昭和三〇年七月末日まで明渡を猶予し、その余の土地は被控訴人に対し返還するとの趣旨により、前記調停が成立したのである。 六、 ところが控訴人は前記猶予期間を過ぎても本件土地を明渡さず、同地上に別紙目録記載の建物を所有し本件土地を占有している。よつて被控訴人は本件土地の所有権にもとづき、控訴人に対し右建物収去と本件土地の明渡を求めるものである。 と述べ、控訴人の抗弁に対し、一、 昭和二一年四月成立の賃貸借が、控訴人主張のようなものであること、本件調停により新たに通常の賃貸借契約が成立したことは否認する。 二、 控訴人が罹災都市借地借家臨時処理法(以下「臨時処理法」という。)にもとづく賃借申出をしたこと、またその申出権のあつたことは否認する。すなわち控訴人の有していた旧物件令第四条第一項にもとづく旧居住建物の敷地の使用権は、前記昭和二一年四月の新規な一時賃貸借契約の成立により消滅し(臨時処理法第二九条第二項に該当)、しかも右新規契約の期間の経過 訴人の有していた旧物件令第四条第一項にもとづく旧居住建物の敷地の使用権は、前記昭和二一年四月の新規な一時賃貸借契約の成立により消滅し(臨時処理法第二九条第二項に該当)、しかも右新規契約の期間の経過した昭和二二年九月以降は控訴人は全く不法占有していたのであるから、臨時処理法第三二条第一項による同法第二条の準用はない。 と述べた。 (控訴人の主張)控訴代理人は請求原因に対する答弁として、被控訴人がその主張の宅地一九六坪五合八勺を所有すること、被控訴人が戦前その地上に建物を所有し控訴人が他の数名とともにそれぞれ地上建物を賃借して居住していたところ右建物が被控訴人主張の日戦災で焼失したこと、昭和二〇年秋ごろ控訴人のみ罹災前の旧居住建物の敷地に旧物件令第四条第一項による使用権にもとづいてバラックを建築し居住したこと、昭和二一年四月ごろ控訴人が被控訴人から右敷地を含む本件全域の土地を賃借したこと、被控訴人がその主張のころその主張のような調停を申立て、昭和二三年六月三日被控訴人主張の条項による調停が成立したこと、控訴人が本件土地上に別紙目録記載の建物を所有して本件土地を占有すること、はいずれも認めるが、その余の被控訴人主張の事実は否認する。前記調停条項の趣旨を被控訴人主張のように解することは争う。 と述べ、抗弁として、一、 前記調停によつて、昭和二三年六月三日被控訴人と控訴人との間において、本件土地につき、始期を昭和二一年四月とし賃料を一カ月二五〇円として、普通建物所有を目的とする賃貸借契約が成立したものである。 その期間は調停条項によれば昭和三〇年七月末日までとなつているが、右期間の定めは借地法に違反するから同法第一一条により効力なく、期間は同法第二条により三〇年となる。 すなわち、控訴人は前記のように旧居住建物の敷地に旧物件令第 和三〇年七月末日までとなつているが、右期間の定めは借地法に違反するから同法第一一条により効力なく、期間は同法第二条により三〇年となる。 すなわち、控訴人は前記のように旧居住建物の敷地に旧物件令第四条第一項による使用権を有しており、他の罹災建物の旧居住者らは建物滅失後二カ月以内に復帰しなかつたため、地主である被控訴人は旧物件令第四条第四項により、本件全域の土地のうち控訴人が使用権を有する部分以外について自ら使用しまたは他人をして使用させることができたところ、昭和二一年四月ごろ前記控訴人の使用権のある部分を含め本件全域の土地につき、従来のバラック維持のほか、その改築、自動車修理工場ないし材料置場等の新設をも含めた普通建物所有目的の、期間の定めのない賃貸借が当事者間に成立し、少くとも昭和二三年二月分までは争いもなく地代が授受され、控訴人は自動車修理業を営んでいたのである。ところが被控訴人から前記調停を申立てられたので、控訴人の譲歩により調停において、本件土地七九坪のみを改めて賃借し、他の部分は明渡すことになつたものであるが、本件土地上にはすでに修理工場があり、また明渡すべき部分にあつたバラック住居の移築は困難なので本件土地に住居を新築することとして調停が成立したものであり、さらに控訴人は、調停委員や裁判官から調停条項の文言にかかわらず三〇年は賃借できる旨を告げられこれを信じて調停に応じたものである。また条項中には期間経過後の明渡文言も付せられていない。これらの事情を考えれば、被控訴人主張のように本件調停条項は明渡猶予期間を定めたものでもなく、一時賃貸の性質を有しないことも明らかであり、借地法の適用を受けるべき通常の賃貸借契約が成立したものというべきであり、控訴人はこの賃借権にもとづき本件土地を占有するものである。 二、 仮りに右主張に理 賃貸の性質を有しないことも明らかであり、借地法の適用を受けるべき通常の賃貸借契約が成立したものというべきであり、控訴人はこの賃借権にもとづき本件土地を占有するものである。 二、 仮りに右主張に理由がないとすれば、控訴人は旧居住建物の敷地には旧物件令第四条第一項により当然使用権を有し、本件全域の土地中その余の部分については、同令第四条第四項にもとづき昭和二一年四月以降これを賃借して、いずれも建物所有の目的で使用中のところ、昭和二一年九月一五日臨時処理法が施行され、同法第三二条、第二九条により同法第二条の賃借申出権を得、昭和二一年一〇月ないし一一月ごろ被控訴人に対し本件全域の土地について賃借申出をした。仮りに右申出の事実が認められないとすれば、遅くも前記調停中にその申出をした。よつて同法にもとづく賃借権を取得したところ、前記調停において一一七坪余を除き本件土地七九坪につき右賃借権が確認された。そして右期間は同法第五条により一〇年間であるところ、この賃借権についても借地法第六条による法定更新が認められるので、控訴人は右期間経過後も使用を継続し、右賃貸借は更新され、これにもとづき本件土地を占有するものである。 (証拠関係)被控訴代理人は甲第一ないし第一五号証(甲第三号証、第六号証、第七号証は各その一、二、甲第八号証はその一、二、三、甲第九号証はその一ないし四に分れる。甲第一、二号証は写)を提出し、原審における証人A、同B、同Cの各証言、被控訴本人尋問の結果並びに検証(第一回)の結果、差戻前の控訴審における被控訴本人尋問の結果、当審における証人D、同C、同Eの各証言並びに被控訴本人尋問の結果を援用し、乙第一号証中郵便官署作成部分の成立は認める、その余の部分の成立は不知、乙第三号証の成立は否認する、乙第一六号証の一、二は本件建物の写真であ 、同C、同Eの各証言並びに被控訴本人尋問の結果を援用し、乙第一号証中郵便官署作成部分の成立は認める、その余の部分の成立は不知、乙第三号証の成立は否認する、乙第一六号証の一、二は本件建物の写真であることは認め撮影者、撮影年月日は不知、その余の乙号各証(乙第五号証を除く)の成立は認める、と述べ、乙第五号証については、当初成立を認めると述べ、後これを訂正して、Fの署名押印の成立は認めるがその余の部分の成立は否認すると述べた。 控訴代理人は乙第一ないし第一八号証(乙第一六号証はその一、二に分れる)を提出し、原審における証人Gの証言、控訴本人尋問の結果並びに検証(第二回)の結果、差戻前の控訴審における証人Gの証言並びに控訴本人尋問の結果、当審における控訴本人尋問の結果(第一、二回)を援用し、甲第一、第二号証の原本の存在並びに成立は認める、甲第七号証の一が本件建物の写真、同号証の二が控訴人の工場の写真であることは認める、甲第八号証の一、二、三は本件建物の向い側の写真であることは認め撮影者、撮影年月日は不知、甲第一一、第一二、第一四号証の成立は不知、甲第一五号証が本件建物附近の写真であることは認め撮影者、撮影年月日は不知、その余の甲号各証の成立は認める、と述べ、被控訴人の乙第五号証についての認否訂正に異議がある、と述べた。 理由 本件全域の土地一九六坪五合八勺が被控訴人の所有であること、その一部である本件土地上に控訴人が別紙目録記載の建物を所有して本件土地を占有していること、昭和二三年六月三日当事者間に被控訴人主張の条項による調停が甲府簡易裁判所で成立したこと、はいずれも当事者間に争いがない。 被控訴人は、右調停条項第一項(請求原因第四項(一))は本件土地明渡猶予期間を定めたものでそれは昭和三〇年七月末日で満了したから 停が甲府簡易裁判所で成立したこと、はいずれも当事者間に争いがない。 被控訴人は、右調停条項第一項(請求原因第四項(一))は本件土地明渡猶予期間を定めたものでそれは昭和三〇年七月末日で満了したから控訴人はこれを明渡すべき旨主張するに対し、控訴人は右条項は本件土地賃貸借であつて賃借権にもとづいて本件土地を占有するものであると主張するから、本件の争点は右調停条項の趣旨如何に帰着する。 右調停条項は文言上必ずしも明確といえないので、その解釈にあたつては、調停成立前における当事者の権利関係、調停成立の動機目的等を参酌して当事者の意思を客観的に探求するとともに、できる限り法令の規定にも照らして合理的に条項の趣旨を理解すべきことは当然である。 そこで控訴人の抗弁について順次判断する。 一、 まず控訴人は、右調停において本件土地につき普通建物所有を目的とする賃貸借が成立しその期間は調停条項にかかわらず三〇年の法定期間によると主張する。 被控訴人が戦前本件全域の土地上に所有していた一部の建物を、控訴人が賃借して居住していたが、右建物が戦災で焼失したこと、控訴人が昭和二〇年初秋ごろ右旧居住建物の敷地に復帰しバラックを建てて居住を始めたことは当事者間に争いなく、右敷地については、控訴人が旧物件令(昭和二〇年内務、司法省令第一号により甲府市に施行)第四条第一項にもとづく使用権を有していたことは明らかである。 ところで、原審、差戻前の控訴審並びに当審における被控訴本人尋問の各結果によれば、控訴人は右復帰後、被控訴人がなお疎開中である間に同人に無断で前記旧居住建物敷地以外の本件全域の土地にわたり使用を開始し、東方には簡易な自動車修理工場を建てて自動車修理業を営み、西方は主として菜園として使用占有していたので、これを発見した被控訴人は、控訴人の旧居住建物 建物敷地以外の本件全域の土地にわたり使用を開始し、東方には簡易な自動車修理工場を建てて自動車修理業を営み、西方は主として菜園として使用占有していたので、これを発見した被控訴人は、控訴人の旧居住建物敷地部分については使用権を認めながらも、自己において住宅建設の計画もしていたところ本件全域の土地の返還を求めたところ、控訴人は応ぜず、かえつてその貸与方を求めたので、昭和二一年四月ごろに至り、被控訴人は右現状のまま本件全域の土地を控訴人に賃貸することになつたことが認められる(右賃貸の事実自体は当事者間に争いない。)。 二、 右賃貸借の内容につき当事者間に争いがあるが、成立に争いない乙第五号証、Fの署名押印について争いない乙第五号証(同号証中他の部分については被控訴人において一旦成立を認め、後これを否認したが、その自白が真実に反し錯誤に出たものであることについては、これに即する当審における証人Eの証言並びに被控訴本人尋問の結果はにわかに措信できず他にこれを認めるに足りる証拠はないから、結局同号証は全部成立に争いないことになる。)、弁論の全趣旨により真正に成立したと認めるべき甲第一一号証、証人G(原審、差戻前控訴審)の証言、被控訴本人尋問(差戻前控訴審、当審)、控訴本人尋問(原審、差戻前控訴審、当審)の各結果(以上の証言、供述中、後記措信しない部分を除く。)を総合し、また当時は終戦後間もない混乱期であり、しかも本件全域の土地は戦災地であつて前記認定のような経過で控訴人が占有するに至つたものであること、そのうち前記一部は旧物件令による暫定的使用権が控訴人にあり、他の部分は旧居住者が復帰しないため(この事実は差戻前控訴審における控訴本人尋問の結果により認められる。)地主たる被控訴人が同令第四条第四項により自ら使用しまたは他人に使用させ得るに至つた土 あり、他の部分は旧居住者が復帰しないため(この事実は差戻前控訴審における控訴本人尋問の結果により認められる。)地主たる被控訴人が同令第四条第四項により自ら使用しまたは他人に使用させ得るに至つた土地であること、当事者間には前記賃貸借につき契約書もなく賃貸条件について一般に行なわれるような接衝もなされた形跡がないととなどを合わせ考えれば、前記賃貸借は賃料を三カ月分五〇〇円の割合として暫定的に賃貸された性質のもの(法令に照らせば結局旧物件令第四条第四項によるもの、但し同条第一項により控訴人が当然使用権を有する部分については確認的のものとも見られる。)と認めるべきであつて、控訴人主張のように建物所有目的の通常の借地契約であることは到底認めがたいところである(被控訴人は従前右賃貸借につき通常の賃貸借である如く自白したのを撤回したが間接事実であるから右撤回は許される。)。前記Gの各証言、控訴本人尋問の各結果中右認定に反する趣旨の部分は措信しがたい。しかしながら一方、被控訴人主張のように期間を一カ年に限つたかといえば、そこまでは認めるに十分な証拠はなく、右主張に即する被控訴本人尋問(差戻前控訴審、当審)の結果は措信しがたいところである。乙第四号証に「向一ケ年一と記載のあることも期間の定めとするには足りず、乙第五号証、甲第一一号証はかえつて反対の心証を抱かしめるものである。ただ、成立に争いない甲第一号証、第一〇号証によると被控訴人としては一カ年と限つたつもりであつたことがうかがわれないではないが、控訴人との間に期間として約定されたとまでは到底認定できないところである。 三、 以上の経過の後、被控訴人から昭和二三年二月初め本件全域の土地の明渡を求めて調停が申立てられた(この事実は当事者間に争いがない。)のであるが、当時すでに被控訴人は控訴人の不法占 ろである。 三、 以上の経過の後、被控訴人から昭和二三年二月初め本件全域の土地の明渡を求めて調停が申立てられた(この事実は当事者間に争いがない。)のであるが、当時すでに被控訴人は控訴人の不法占有を主張して紛争状態にあり、地代(乙第四、第五号証並びに差戻前控訴審における控訴本人尋問の結果を総合すると昭和二三年二月分までは地代が支払われていたことが認められる。)の供託も始まつていたことが甲第一〇、第一一号証によつてうかがわれ、これらの事実と当審における証人Cの証言、原審、差戻前控訴審並びに当審における被控訴本人尋問の各結果、当審における控訴本人尋問の結果を総合すれば、右調停において、被控訴人は強く本件全域の土地の明渡を要求し控訴人は容易にこれに応ぜず妥協は困難であつたが、調停主任裁判官や調停委員から臨時処理法によれば一〇年間は貸さなければならないのだからと被控訴人を説得した結果、ようやく旧居住建物敷地の東方、道路に面する本件土地のみを昭和二一年四月の契約当時に遡つて昭和三〇年七月まで賃貸することとしその余の部分は控訴人において明渡すことになり、本件調停が成立したものであることが認められる。 以上認定の調停前及び調停成立の経過にかんがみ、また控訴人の従来の占有権原がもともと通常の借地権ではなく、旧居住建物の敷地に旧物件令による暫定的使用権があつたことから出発して昭和二一年四月これも暫定的な本件全域の土地賃貸借に至つたものであることからいつても、右調停において、控訴人主張のような建物所有を目的とする通常の賃貸借が成立したもの、従つて期間が調停条項に拘わらず三〇年となるものと解することはできない。原審における証人Gの証言、原審、差戻前控訴審並びに当審における控訴本人尋問の各結果中右認定に反する趣旨の部分は措信できない(なお一方、右認定のと に拘わらず三〇年となるものと解することはできない。原審における証人Gの証言、原審、差戻前控訴審並びに当審における控訴本人尋問の各結果中右認定に反する趣旨の部分は措信できない(なお一方、右認定のところすれば、被控訴人主張のように調停条項所定の期間が明渡猶予期間の趣旨であると解し得ないことは当然である。)。よつて期間三〇年の賃借権の抗弁は理由がない。 四、 そこで控訴人は第二次に臨時処理法にもとづく賃借権を主張する。 前記認定の一切の経過事実によつてみるに、元来控訴人は本件土地西方の旧居住建物敷地に旧物件令第四条第一項による使用権があり、これにもとづいてこの部分を建物所有の目的で使用していたことは前記のとおりであるから、昭和二一年九月一五日臨時処理法施行後は同法第二九条第一項、第三二条により同法第二条による右敷地優先賃借申出権を有していたわけである。この点について被控訴人は、昭和二一年四月の新規契約により旧物件令による使用権は消滅したから臨時処理法による賃借申出権はないと主張するけれども、臨時処理法は戦災前の居住者を復帰せしめてその保護をはかるとともに戦災地の復興に資する立法趣旨で出来たものであるから、新規契約がなされたからといつて臨時処理法による申出権がないとは到底解し得ない(本件においてはなお、前記のように昭和二一年四月の契約は控訴人の旧物件令による使用権を確認したともみられるのである。)。 五、 次に本件全域の土地中右控訴人の旧居住建物敷地以外の部分についてみると、前記居住者が復帰しなかつたため被控訴人において旧物件令第四条第四項により昭和二一年四月前記のように右部分を控訴人に暫定的に賃貸したのであるが、右土地部分については、東方の一部に控訴人の建てた簡易な自動車修理工場があつたとはいえ、被控訴人としては現状をやむなく黙認した程 昭和二一年四月前記のように右部分を控訴人に暫定的に賃貸したのであるが、右土地部分については、東方の一部に控訴人の建てた簡易な自動車修理工場があつたとはいえ、被控訴人としては現状をやむなく黙認した程度で、自動車修理あるいは家庭菜園のための賃貸とみるべく、建物所有の目的であつたとまでは認められない。従つて控訴人は旧居住建物敷地以外は臨時処理法第二九条第三項、第三二条による建物所有目的の使用権者に該当せず、同法第二条の準用がなく、控訴人には優先賃借申出権はなかつたといわざるを得ない。 <要旨>六、 ところが、前記調停では調停委員会の勧告で結局、控訴人が本来臨時処理法により賃借権を取得し得べき</要旨>旧居住建物敷地部分を明渡して道路に面する本件土地を賃借することになつた。しかも臨時処理法による期間一〇年を勘案して調停条項が定まつたことは前記のととろから明らかである。そこでこの関係を合理的に解釈すれば、まず調停の際の接衝中に本件全域の土地について控訴人から被控訴人に対し臨時処理法にもとづくと認めるべき賃借の申出があつたことは推認に難くなく(控訴人主張の昭和二一年一〇月ないし一一月ごろ賃借申出をしたことはその証拠がない。)、結局昭和二三年六月三日、被控訴人は控訴人の旧居住建物敷地については優先賃借権があることを認めてこれに承諾を与えた上、同時に、被控訴人側の必要と控訴人側の便宜を勘案して、本件全域の土地中東方の本件土地上に右目的土地をふり替え、本件土地を昭和二一年四月からほぼ一〇年に近い期間をもつて賃貸することとして、本件調停が成立したものと認めるのを相当とする。 従つて臨時処理法第二条による賃貸借の性質はそのまま本件土地に維持されたものと認めることができる。控訴人の旧居住建物敷地より本件土地が相当広いことは、前記調停成立に至るまでの一切の経過 相当とする。 従つて臨時処理法第二条による賃貸借の性質はそのまま本件土地に維持されたものと認めることができる。控訴人の旧居住建物敷地より本件土地が相当広いことは、前記調停成立に至るまでの一切の経過からみれば、右判断を左右するものではない。 ところで右調停では、昭和二一年四月の賃貸借があつたことを勘案してか、始期を同月とし、九年余後の昭和三〇年七月を終期と定めたものであるが、(そうだからといつて単に昭和二一年の賃貸借を確認したものとはいえない。)臨時処理法第五条による法定期間一〇年はこれを短縮し得ないものであるから、結局本件土地賃貸借の終期は昭和三三年六月二日と認めるほかはない。 七、 よつて昭和三三年六月三日以後右賃貸借が更新により存続するかどうかについてみる。 臨時処理法の立法趣旨は前記のとおりであり、強制的な賃貸借成立を認めた関係もあつて賃貸借期間は借地法第二条を排除して一〇年と法定したけれども、決していわゆる一時使用のための賃貸借(借地法第九条)ではなく、期間以外の点はすべて借地法の適用があり、期間満了の際も借地法第四条ないし第六条による法定更新が認められる(最高裁判所昭和三六年三月二四日判決)。そこで本件についてみると、本件訴訟が昭和三一年八月二〇日提起され繋属したことは記録上明らかで、前記期間満了時も被控訴人が控訴人の本件土地使用継続に異議を述べていたことになることはその主張自体から明らかであり、本件土地上には本件建物が当時から存在していたのであるから、被控訴人の右異議に正当事由があつたかどうかをみるに、成立に争いない甲第三号証の一、二、第四号証、第五号証、第一三号証と、原審証人Aの証言、原審、差戻前控訴審並びに当審における被控訴本人尋問の各結果を総合してみると、被控訴人は、本件土地全域の一部に自己あるいは長男の住宅を建 の一、二、第四号証、第五号証、第一三号証と、原審証人Aの証言、原審、差戻前控訴審並びに当審における被控訴本人尋問の各結果を総合してみると、被控訴人は、本件土地全域の一部に自己あるいは長男の住宅を建設する計画を立て昭和二三年一一月ごろ建築許可を得たこと、当時から息子の家に居住していることが認められるが、右許可は本件調停成立後間もないことであり、昭和三〇年まで本件土地の明渡を待つた上で建築するためのものではない(甲第三号証の一によれば許可の日より一五日後着工となつており、同号証の二の図面では本件土地の隣地すなわち本件調停で控訴人が明渡すべき土地に建築することになつていたことがうかがわれる。)ことが認められるし、しかも差戻前の控訴審における被控訴本人尋問の結果によると、調停で折角明渡を受けた部分は間もなく被控訴人においてカマボコ工場を建て他人に賃貸していることが認められる。従つて被控訴人が昭和三三年六月当時本件土地の使用を必要とする緊急性があつたとは認めがたく、他にこれを認めるに足りる証拠もなく、さらに成立に争いない乙第六ないし第一三号証によれば被控訴人あるいはその一族においては甲府市内その他に相当の土地建物を所有していることが認められる。一方成立に争いない乙第二号証、本件建物の写真であることに争いない甲第七号証の一、同じく乙第一六号証の一、二、本件建物附近の写真であることに争いない甲第一五号証、原審、差戻前控訴審並びに当審における控訴本人尋問の結果を総合すれば、控訴人は本件調停後調停条項に従い(若干期限に遅れたが)バラック住居を収去して本件土地以外の部分を明渡し、本件土地上に住居を新築し、自動車修理工場も若干ずらして整備し、以後自動車修理業を継続して営み、相当の実績を獲得して来たことが認められ、昭和三三年の期間満了とともに本件土地を明渡 外の部分を明渡し、本件土地上に住居を新築し、自動車修理工場も若干ずらして整備し、以後自動車修理業を継続して営み、相当の実績を獲得して来たことが認められ、昭和三三年の期間満了とともに本件土地を明渡さなければならなかつたとすれば、生活の基盤を失う状況にあつたことが認められる。(成立に争いない甲第九号証の一ないし四、本件土地の向い側の写真であることに争いない甲第八号証の一、二、三を総合すると、控訴人は現在碓井自動車株式会社を主宰し本件土地以外にも同会社名義の土地を所有し自動車修理業も相当発展して来ていることが認められるけれども、成立に争いない甲第九号証の四、乙第一七、第一八号証によると右のように控訴人の事業が発展して来たのは昭和三三年より以後のことであることがうかがわれる。)以上当事者双方の昭和三三年六月当時の資産、生活状況を比較考慮してみると、臨時処理法の性格を考慮に入れても、なお被控訴人の異議に正当事実があると認めるに足りず、借地法第六条によつて本件土地の賃貸借は更新され(更新後の期間については若干問題があり得るが同法五条により二〇年となると認めるほかない。)、控訴人は現に賃借権にもとづき本件土地を占有するものと認めるに足りる。 以上のとおりであるから、被控訴人の控訴人に対する本件建物収去、本件土地明渡の請求は理由がないと認められるから、これと判断を異にする原判決を取消した上、被控訴人の請求を棄却すべく、訴訟費用については民事訴訟法第九六条後段、第八九条により本件訴訟の総費用を被控訴人の負担として、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官近藤完爾裁判官浅賀栄裁判官小堀勇)物件目録一、 甲府市a町b番地宅地一九六坪五合八勺(六四九・八五平方メートル)のうち、別紙図面(イ)(ロ)(ハ)(ニ 近藤完爾裁判官浅賀栄裁判官小堀勇)物件目録一、 甲府市a町b番地宅地一九六坪五合八勺(六四九・八五平方メートル)のうち、別紙図面(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(イ)を順次直線で結んだ部分約七十九坪(約二六一・一五平方メートル)二、 右地上にある(一) 木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建工場一棟建坪一三坪五合(四四・六二平方メートル)(二) 木造瓦葺平家建物置一棟建坪四坪(一三・二二平方メートル)(三) 木造瓦葺二階建居宅一棟建坪一五坪七合五勺(五二・〇六平方メートル)外二階一一坪二合五勺(三七・一九平方メートル)

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