- 1 -主 文1 被告は、原告A株式会社に対し、328万0473円及びこれに対する令和2年12月16日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告Bに対し、384万8141円及びこれに対する令和2年4月6日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 3 原告Bのその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は、原告Bに生じた費用の3分の1及び被告に生じた費用の4分の1を原告Bの、原告A株式会社に生じた費用の全部、原告Bに生じた費用の3分の2及び被告に生じた費用の4分の3を被告の負担とする。 5 この判決は、本判決が被告に送達された日から7日を経過したときは、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。ただし、被告が、原告A株式会社のために320万円の担保を供するときは第1項について、原告Bのために360万円の担保を供するときは第2項について、それぞれ、各仮執行を免れることができる。 事実及び理由第1 請求の趣旨1 甲事件について主文第1項同旨2 乙事件について被告は、原告Bに対し、1221万9594円及びこれに対する令和2年4月6日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、令和2年4月6日午後11時50分頃、名古屋市a区bc丁目d番地(その他名古屋市道)において、被告に属する愛知県警察本部に勤務する警察官であるCが、その職務の執行として運転するパトカーと、原告Bが運転する自家用普通貨物自動車が衝突する事故が生じ、原告Bに、弁護士費用を除き、 - 2 -1104万2007円の人身損害及び345万8058円の物的損害(ただし、同原告B運転自動車のスクラップ代15万円を控除した後の金額)が生じ、原告A株式会社が、原告B を除き、 - 2 -1104万2007円の人身損害及び345万8058円の物的損害(ただし、同原告B運転自動車のスクラップ代15万円を控除した後の金額)が生じ、原告A株式会社が、原告Bとの間で締結された人身傷害保険及び車両保険契約に基づき、令和2年12月15日までに、原告Bの各損害に対し、83万7303円の人身傷害保険金及び244万3170円の車両保険金を支払い、保険法25条1項に基づき、支払保険金額の合計額である328万0473円分の、原告Bの被告に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権を代位取得したとして、原告A株式会社が、被告に対し、同額及び保険金支払の最終日の翌日である令和2年12月16日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求め(甲事件)、原告Bが、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、保険金控除後の残額に弁護士費用相当額100万円を加えた合計1221万9594円及び同額に対する不法行為の日である令和2年4月6日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める(乙事件)事案である。 1 前提となる事実以下の事実は、当事者間に争いがないか、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認定することができる。 (1) 当事者等ア 原告Bは、昭和55年7月27日生まれの男性で、本件事故当時、株式会社Dに10トントラックの運転手として勤務していた。なお、原告Bの令和元年度の給与収入は527万2920円、令和2年度の給与収入は448万6661円であり、本件事故前90日分の給与は、合計109万2660円であった。(甲1、13、16の1・2、丙14)イ Cは、本件事故当時、被告に所属する愛知県警察本部に勤務していた警察官で、警察官の職務の執行として、後述する被告パ 給与は、合計109万2660円であった。(甲1、13、16の1・2、丙14)イ Cは、本件事故当時、被告に所属する愛知県警察本部に勤務していた警察官で、警察官の職務の執行として、後述する被告パトカーを運転していた。 - 3 -(2) 事故の態様等令和2年4月6日午後11時50分頃、以下の態様等の交通事故が発生した(甲1、2、15、乙1、11。以下「本件事故」という。)。 ア 日時 令和2年4月6日午後11時50分頃イ 場所 名古屋市a区bc丁目d番地先路線上(その他名古屋市道)ウ C運転パトカー(以下「被告パトカー」という。)(ア) 車 種 自家用普通乗用自動車(パトカー)(イ) 車両番号 ●●●●エ 原告B運転自動車(以下「原告車両」という。)(ア) 車 種 自家用普通貨物自動車(イ) 車両番号 ●●●●オ 態様本件事故現場は、双方片側1車線の道路が交差する信号機により交通整理されている交差点であるところ、同所において、西から東方向へ対面信号青色で交差点に進入した原告車両と、南から北方向へ対面信号赤色で交差点に進入した被告パトカーが出合い頭に衝突した。 (3) 本件事故当時、被告パトカーは、赤色灯を点灯させていたが、サイレンを吹聴させていなかった(争いがない)。 (4) Cは、緊急自動車として必要なサイレンの吹聴をしない状態で、対面信号が赤信号であるにもかかわらず、被告パトカーを同交差点に進入させ、青信号に従って交差点に進入した原告車両と出合い頭に衝突させたものであり、被告は、国家賠償法1条1項に基づき、本件事故によって原告Bに生じた損害を賠償する義務を負い、かつ、原告Bには、過失相殺をすべき過失は認められない(争いがない)。 (5) 原告Bは、令和元年10月13日 、国家賠償法1条1項に基づき、本件事故によって原告Bに生じた損害を賠償する義務を負い、かつ、原告Bには、過失相殺をすべき過失は認められない(争いがない)。 (5) 原告Bは、令和元年10月13日、原告A株式会社との間で、同年11月7日から1年間を保険期間とし、上限保険金額を250万円、代車費日額上 - 4 -限5000円とする車両保険特約付き、及び、上限保険金3000万円とする人身傷害保険付きの自動車損害保険契約を締結した(丙2)。 (6) 原告Bは、令和2年7月31日、本件事故時における原告車両の所有者であったE株式会社に対し、自動車ローンを完済し、同車両の所有権とともに、被告に対する損害賠償請求権の一切を取得した(甲7、8)。 (7) 原告A株式会社は、令和2年12月15日までに、(5)の保険契約に基づき、原告Bに対し、人身傷害保険金83万7303円及び車両保険金244万3170円を支払った(丙18、19、21)。 (8) 原告Bは、本件事故による傷害について、自動車損害賠償責任保険の後遺障害等級認定を申請したところ、同認定機関は、令和3年6月11日、要旨、下記の理由で、原告Bには後遺障害に該当する障害が認められないと判断した(甲10)。 記ア 頚部挫傷後の頚部痛については、提出された画像上、本件事故による骨折等の異常所見が認められず、診断書等からも自覚症状を裏付ける医学的所見に乏しいことに加え、症状経過、治療状況等も勘案すると、後遺障害に該当しない。 イ 右第8肋骨骨折後の右胸部痛については、提出された画像上、右第8肋骨骨折が判然としないことに加え、後遺障害診断書上も、肋骨骨折に伴う疼痛は消失したものとされていることからすると、後遺障害には該当しない。 2 争点(1) 原告Bの後遺障害の有無及び程度( 肋骨骨折が判然としないことに加え、後遺障害診断書上も、肋骨骨折に伴う疼痛は消失したものとされていることからすると、後遺障害には該当しない。 2 争点(1) 原告Bの後遺障害の有無及び程度(争点1)【原告Bの主張】ア 原告Bは、本件事故によって頚部挫傷、頭部挫傷、右肩挫傷、右背部挫傷及び右第8肋骨骨折の傷害を負い、令和2年10月30日に症状固定に至 - 5 -った。 しかし、原告Bには、頚部挫傷後の頚部痛がなお残った。 イ 本件事故は、被告パトカーが勢いよく原告車両の運転席側に衝突してきたものであり、その衝撃で、原告車両は、衝突地点から8.6m先に180度回転して停止し、被告パトカーも、進行方向先30.6mの地点で停止した。原告Bは、原告車両を運転していたところ、このような強い衝撃のため、頭部及び頚部が大きく揺さぶられ、右側頭部を車内に強く強打し、腫脹が生じ、合わせて、右第8肋骨も骨折した。 ウ 原告Bは、本件事故直後から頚部痛を訴えたが、本件事故が深夜に生じたものであったことから、翌日、Fクリニックを受診し、以後、症状固定日まで通院を重ねたが、本件事故時から、50~60%程度にまでしか疼痛が緩和されることはなかった。 そして、原告Bは、令和2年9月18日、頚椎MRI画像の撮影が行われたが、この画像からは、T2強調水平断像で、右C4/5、左C5/6、左C6/7の椎間孔狭窄が認められ、これらの狭窄によって右C5、左C6、左C7の各神経根症状である頚部痛が惹起された。 エ 以上のとおり、原告Bに残った頚部痛は、頚椎MRI画像によっても裏付けられたものであり、本件事故態様や治療経緯等に鑑みても、局部に頑強な神経症状を残したものというべきである。 よって、原告Bには、自動車損害賠償保障法施行令別表2記載の1 MRI画像によっても裏付けられたものであり、本件事故態様や治療経緯等に鑑みても、局部に頑強な神経症状を残したものというべきである。 よって、原告Bには、自動車損害賠償保障法施行令別表2記載の12級13号に相当する後遺障害が生じた(以下、後遺障害等級については、同別表の等級を用い、「●級」又は「●級●号」というようにいう。)。 【被告の主張】原告Bの令和2年9月18日付の頚椎MRI画像には、右C4/5、左C5/6、左C6/7の椎間孔狭窄が認められるが、これらは、いずれも、経年性の既往症であり、本件事故によって生じたものではない。 - 6 -原告Bの診療録を検討しても、一時期、左手指の痺れを訴えたものの、令和2年9月18日時点では改善しており、運転の仕事もできている。また、頚部痛も、夕方に出現するもので、常時痛ではない。その他、CTやX線写真からも外傷性所見が認められないことに鑑みれば、原告Bに、本件事故によって、12級13号又は14級9号のいずれかに相当するような神経症状が生じたものとは認められない。 (2) 素因減額又は既往症減額の可否【被告の主張】原告Bには、本件事故時、右C4/5、左C5/6、左C6/7の椎間孔狭窄があり、外傷による局所的な神経症状を誘発しやすい状態にあった。 そのため、原告Bの人身損害額が拡大したものであるから、原告Bの人身損害額の50%について、素因減額又は既往症減額をすることが相当である。 【原告らの主張】原告Bの右C4/5、左C5/6、左C6/7の椎間孔狭窄は、本件事故によって生じたものであるか、本件事故時にあったとしても、その程度は一般的な経年性変性の程度を超えるようなものではなく、本件事故を契機として神経症状が現れたものである。 そうすると、原告Bに、素因 よって生じたものであるか、本件事故時にあったとしても、その程度は一般的な経年性変性の程度を超えるようなものではなく、本件事故を契機として神経症状が現れたものである。 そうすると、原告Bに、素因減額をしなければ公平を欠くような、特別な素因があったものとは認められない。 (3) 原告Bの損害及び原告A株式会社の求償可能額(争点3)争点1及び2に関するもののほか、原告Bの損害及び原告A株式会社の求償可能額に関する当事者の主張は別紙「損害額一覧表」記載のとおりである。 第3 当裁判所の判断1 争点1(原告Bの後遺障害の有無及び程度)について(1) 本件事故後に撮影された原告Bの令和2年9月18日付の頚椎MRI画像には、右C4/5、左C5/6、左C6/7の椎間孔狭窄が認められること - 7 -については当事者に争いがない。 しかし、本件事故翌日の原告BのX線写真には、頚部痛の直接的な原因となる外傷性の骨折や脱臼などがなく、同MRI画像を判読した第三者医師であるG医師も、これらの狭窄によって、頚部痛を発症するものと考えられるものの、本件事故前からあったものであり、本件事故によって発症に至ったとの見解を示している(甲12)。また、原告Bのこれら椎間孔狭窄の程度が比較的軽度であることに鑑みれば(乙12)、これら椎間孔狭窄が、本件事故によって生じた外傷性所見であり、かつ、これによって、12級13号相当の後遺障害が生じたものとも認められない。 (2) 一方、原告B本人並びにFクリニックの医師が作成した診断書、後遺障害診断書及びH記念病院の診療録(甲11、乙12、丙7の1ないし7)からは、原告Bの手の痺れが軽快することがあっても、頚部痛については本件事故後から症状固定時まで一貫して訴えていたこと、症状固定時においても、主観的 病院の診療録(甲11、乙12、丙7の1ないし7)からは、原告Bの手の痺れが軽快することがあっても、頚部痛については本件事故後から症状固定時まで一貫して訴えていたこと、症状固定時においても、主観的には本件事故時から50~60%程度の痛みを残していたと訴えていたことが認められる。この点、被告は、原告Bの診療録上、ADLには支障がないとされていることや、多忙なときには痛みが生じるとの記載がある点を指摘するが、これらは、疼痛が継続していたことを否定するものではないし、ADLに支障がなくとも、10トントラックの運転手という、身体的負担を伴う職務の性質に鑑みれば、労働能力を喪失させる程度の神経症状が存在していたことを否定するものともいえない。 また、本件事故は、緊急配備のため、赤信号であってもあえてこれを超えようとしていた被告パトカーが、青色信号に従って、通常の走行方法で走行していた原告車両の運転席側に衝突してきたものであり、運転席に座っていた原告Bには相当強い衝撃が加えられたものと認められる。現に、本件事故後、原告車両は、衝突地点から8.6m先に180度回転して停止し、被告パトカーも、進行方向先30.6mの地点で停止しており(乙1)、原告Bに - 8 -は、不意に原告車両全体から、捻じれ又は押し戻しの力が加えられたものと認められる。 これらの点に加え、本件事故によって、原告車両に、右センターピラー及び右フロントピラーが大きく歪むほどの損傷が生じたことも併せ考えると、原告Bに、本件事故による衝撃により、前記椎間孔狭窄と相まって、頚部痛を残すに至ったものと説明することは十分可能である。 なお、自動車損害賠償責任保険の後遺障害等級認定においては、後遺障害非該当とされているが、上記事故態様も併せ考えると、同認定は採用できない。 を残すに至ったものと説明することは十分可能である。 なお、自動車損害賠償責任保険の後遺障害等級認定においては、後遺障害非該当とされているが、上記事故態様も併せ考えると、同認定は採用できない。 (3) よって、原告Bには、14級9号相当の神経症状と評価されるべき頚部痛が後遺障害として残ったものと認められる。 2 争点2(素因減額又は既往症減額)について被告は、原告Bの右C4/5、左C5/6、左C6/7の椎間孔狭窄が既往症であり、かつ、これによって、原告Bは、本件事故時、外傷性の神経症状を誘発しやすい状態であったと主張する。 しかし、原告Bの年齢及び大型ダンプの運転手という、固定された姿勢と振動にさらされ、かつ、力仕事が求められる職業に従事していたこと及び同椎間孔狭窄の大きさに鑑みれば、原告Bの同椎間孔狭窄が、一般的な経年性変性を超え、これによって、原告Bの人身損害が、特別に拡大したものとまではいえない。 また、後遺障害の点については、上記のとおり、14級9号にとどまるものであること、原告Bが本件事故で受けた衝撃が相当強かったものと認められることに鑑みれば、上記椎間孔狭窄があったために後遺障害と評価されるほどに重篤化したものとはいえないし、当該等級を前提とするならば、損害額が増えたともいえない。 よって、原告Bには、素因減額を適用すべき事由は認められず、被告の主張 - 9 -は採用できない。 3 争点3(原告Bの損害及び原告A株式会社の求償可能額)について以上検討した点のほか、原告Bの損害及び原告A株式会社の求償可能額に関する当裁判所の認定は、4で検討する点を踏まえ、傷害慰謝料を定めるほか、別紙「損害額一覧表」の「裁判所認定額」欄記載のとおりであり、原告Bには384万8141円の損害が認められ、原告A 償可能額に関する当裁判所の認定は、4で検討する点を踏まえ、傷害慰謝料を定めるほか、別紙「損害額一覧表」の「裁判所認定額」欄記載のとおりであり、原告Bには384万8141円の損害が認められ、原告A株式会社の求償可能額は328万0473円であると認められる。 なお、被告は、原告Bが、乙事件の訴え提起時、休業損害について、令和2年4月7日に欠勤した分の給与に相当する1万2141円であると主張し、被告がこれを認めた後に、請求額を拡張した点について、自白の撤回であり、認められないと主張する。しかし、自白をすることができるのは、休業損害について主張立証責任を負わない被告であり、当然、原告Bは、自白をすることもその自白を撤回することもできない。そして、原告Bが、令和2年4月7日の欠勤分の休業損害についての主張を撤回したとまでは認められないから、原告Bが行ったのは、自白が成立した主張の拡張である。そうすると、被告の自白の撤回に関する主張は採用できない。 4 傷害慰謝料及び訴訟費用の負担について(1) 本件訴訟の経緯に鑑み、傷害慰謝料及び、訴訟費用の負担について、以下検討する。 (2) 本件では、当初、本件事故当時、原告Bの過失割合を検討する前提として、被告パトカーがサイレンを鳴らしていたかが争点となっていた。また、被告は、本件訴訟係属中に、被告パトカーがサイレンを鳴らしており、原告Bに過失が存することを前提に、被告パトカーの損害等の賠償を求める反訴を提起していたが(当庁令和3年(ワ)第4317号)、サイレンを鳴らしていなかったことを自認したことから、同反訴を取り下げた。 (3) 被告パトカーのサイレン音に関する、被告の訴訟活動は、以下のとおりで - 10 -ある(裁判所に顕著)。 ア 被告パトカーに乗車していた警察官であるCは ら、同反訴を取り下げた。 (3) 被告パトカーのサイレン音に関する、被告の訴訟活動は、以下のとおりで - 10 -ある(裁判所に顕著)。 ア 被告パトカーに乗車していた警察官であるCは、令和2年4月7日、本件事故現場において実況見分を行い、本件事故当時、被告パトカーのサイレンが鳴っていた旨、供述した。なお、かかる実況見分に基づく実況見分調書は、令和3年1月10日になって作成された。(乙1)イ 原告Bは、原告車両のドライブレコーダーの映像を提出した(甲15)。 この映像には音声が入っており、本件事故当時、被告パトカーの赤色灯が点灯していたこと、本件事故直後に、被告パトカーのサイレンが鳴っていたことは確認できたものの、本件事故前にサイレンが鳴っていたかは明らかではないものであった。 ウ 被告は、被告パトカーのドライブレコーダーの映像(乙4、11)を提出したが、提出されたドライブレコーダーの映像は、音声データが含まれていないものであった。音声データが含まれていない点について、被告指定代理人である愛知県警察本部警務部監察官室に所属するIは、通常警ら中のパトカーは、ドライブレコーダーの録音機能を使用していないので、本件事故当時の被告車両のドライブレコーダーには音声が録音されていないと記載した報告書(乙6)を作成し当裁判所に提出した。 エ 当裁判所は、原告車両のドライブレコーダーの映像の音声データの周波数を検討すると、本件事故直前に、被告パトカーのサイレン音と同程度の周波数帯に音声が含まれているかが明らかではないこと、被告が提出したドライブレコーダーの映像のデータを見ると、音声データ部分のバイナリデータが極めて整っており、論理的に音声が入っていない可能性があること、緊急配備を開始し、捜査上の資料を保全し始めなければならないのに イブレコーダーの映像のデータを見ると、音声データ部分のバイナリデータが極めて整っており、論理的に音声が入っていない可能性があること、緊急配備を開始し、捜査上の資料を保全し始めなければならないのに録音をしていなかったという点に疑問が残ることを指摘し、被告において、ドライブレコーダーの映像の音声解析を試みること、捜査上の秘密に関する音声等を秘匿する際の編集過程等で、誤って音声データを消去した可能 - 11 -性がないかを再検討し、合わせて、被告パトカーに搭載されていたドライブレコーダーの型番の特定、マニュアルの提出、愛知県警察本部におけるドライブレコーダーの運用規程の提出を求めた。 オ 被告は、上記裁判所から釈明を求められた後、令和4年2月3日、被告パトカーのサイレンが鳴っていたとは認められないことを認め、同年3月24日、反訴を取り下げた。 (4) 以上のとおり、本件では、原告Bの損害論について争いがある一方で、過失割合に関連し、被告パトカーのサイレンが鳴っていたかが重大な争点となっており、本件訴訟が係属してから約10か月間、この争点について、証拠の提出を求め、攻撃防御が繰り返されていた。Cは、令和2年4月7日に、同人を過失運転致傷事件の被疑者として行われた実況見分において、被告パトカーのサイレンが鳴っていたと供述した。この実況見分に基づく実況見分調書が作成されたのが、実況見分が行われてから約9か月後であるというのは、実況見分を行った以上、調書を作成すべき義務があること(犯罪捜査規範104条2項)を踏まえると極めて不自然であるが、この点はさておくとしても、長期間、調書を作成しなかったというのは、現場の状況を保全するという観点から、極めて不相当といわざるを得ない。また、実況見分における現場説明ないし現場指示の重要性を知るべき の点はさておくとしても、長期間、調書を作成しなかったというのは、現場の状況を保全するという観点から、極めて不相当といわざるを得ない。また、実況見分における現場説明ないし現場指示の重要性を知るべき立場にあるCが、少なくとも正確な記憶に基づくことなく、かかる供述をしたことは、極めて遺憾といわざるを得ない。 加えて、本件訴訟が係属し、被告パトカーのサイレンが鳴っていたかが争点となっていることが明らかになった後もなお、被告は、警察内部の問題について調査すべき監察官室の調査結果として、音が録音されていなかった、という内容の報告書を提出し、サイレンを鳴らしていたと主張していたものであり、その主張に至る経緯は定かではないが、少なくとも、警察権の行使にあたり、適切な証拠収集と証拠保全、手続過程の記録化を旨としなければ - 12 -ならない警察の対応としては、杜撰というよりほかない。 これらの被告の訴訟追行態度の結果、当審における手続の約半分の期間を、被告パトカーのサイレンが鳴っていたか否かという争点に費やすこととなったものであるから、本件における訴訟費用は、民訴法63条の法意に鑑み、民訴法64条本文を適用して、各当事者に生じた費用の2分の1は、被告の負担とし、その余の費用については、同法64条1項、61条を適用して、請求額と認容額の割合等に応じて定めることが相当であり、かつ、傷害慰謝料を検討する際にも、事後の不誠実な対応として考慮することが相当である。 5 結論以上によれば、原告A株式会社の請求は、全部理由があるから認容することとし、原告Bの請求は、国家賠償法1条1項に基づいて、被告に対し、384万8141円及び同額に対する本件事故日である令和2年4月6日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める限 、原告Bの請求は、国家賠償法1条1項に基づいて、被告に対し、384万8141円及び同額に対する本件事故日である令和2年4月6日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法64条本文、61条を適用し、申立てにより、民訴法259条1項を適用し、かつ、職権により条件を付して、原告らの請求のうち、各認容部分について仮執行をすることができることを宣言し、申立てにより、民訴法259条3項を適用して、担保を立てて仮執行を免れることができることの宣言をすることとし、主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第3部 裁 判 官 西 尾 太 一
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