主文 1 原告らの被告岐阜県知事及び同岐阜県出納長に対する訴えのうち,平成10年6月から平成15年3月までにされた徳山ダム建設事業費負担金(工業用水分)の支出命令及び支出並びに平成43年4月以降にされる徳山ダム建設事業費負担金(工業用水分)の支出命令及び支出の差止めを求める訴えをいずれも却下する。 2 原告らの被告aに対する訴えのうち,平成2年6月から平成9年12月までにされた徳山ダム建設事業費負担金(工業用水分)の支出に係る損害賠償を求める訴えを却下する。 3 原告らの被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 平成10年度以降の徳山ダム建設事業費負担金(工業用水分)について,被告岐阜県知事は支出命令を,被告岐阜県出納長は支出を,それぞれしてはならない。 2 被告aは,岐阜県に対し,34億7348万7000円及びこれに対する平成11年4月10日(本訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等本件は,岐阜県の住民である原告らが,木曽川水系における水資源開発基本計画に係る徳山ダム建設に関する建設事業費負担金(工業用水分。以下「本件負担金」という。)について,岐阜県知事が平成元年及び平成10年にした費用負担の同意並びに岐阜県が平成2年以降に行った本件負担金の支出は,地方財政法6条,地方公営企業法17条の2第2項等に違反するなどと主張して,地方自治法(平成14年法律第4号地方自治法等の一部を改正する法律による改正前のもの。以下同じ。)242条の2第1項1号に基づき,平成10年6月以降毎年度四半期ごと(6月,9月,12月,3月)にされる被告岐阜県知事の本件負担金の支出命令及び被告岐阜県出納長の同負担金の支出の差止め 以下同じ。)242条の2第1項1号に基づき,平成10年6月以降毎年度四半期ごと(6月,9月,12月,3月)にされる被告岐阜県知事の本件負担金の支出命令及び被告岐阜県出納長の同負担金の支出の差止めを求めるとともに,平成2年度から平成9年度までの支出に関して,これに岐阜県知事として関与した被告aに対し,同項4号後段に基づき,岐阜県に代位して,上記期間の支出合計額相当の損害賠償を請求した事件である。 1 争いのない事実等(証拠を掲記した事項以外は当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告らは,いずれも岐阜県の住民である。 イ被告aは,平成元年2月以降現在に至るまで岐阜県知事の職にある者である。 (2) 徳山ダムの概要ア徳山ダムは,木曽川水系における水資源開発基本計画(以下,変更等の前後を含めて「フルプラン」と総称する。)に基づいて,水資源開発公団(当時。独立行政法人水資源機構が,独立行政法人水資源機構法〔平成14年法律第182号〕附則2条1項により,水資源開発公団の地位を承継した。以下,当時の水資源開発公団を「公団」という。)が水資源開発公団法(独立行政法人水資源機構法附則6条により廃止される前のもの。以下「公団法」という。)18条1項1号イにより建設するダムである。徳山ダム建設予定地は,揖斐川の河口から約90㎞上流の揖斐川本流で,岐阜県揖斐郡α村内(旧β村がα村に廃置分合される前の旧β村と旧α村の村境付近)に位置している。 なお,公団は,水資源開発促進法(以下「促進法」という。)の規定による水資源開発基本計画に基づく水資源の開発又は利用のための事業を実施すること等により,国民経済の成長と国民生活の向上に寄与することを目的とする法人である(公団法1条,2条)。 イ徳山ダムの工事計画の概要は次のとおりである。 (ア) 型式中央遮 のための事業を実施すること等により,国民経済の成長と国民生活の向上に寄与することを目的とする法人である(公団法1条,2条)。 イ徳山ダムの工事計画の概要は次のとおりである。 (ア) 型式中央遮水壁型ロックフィルダム(イ) 堤高 161.0m(ウ) 堤頂長 415.0m(エ) 堤長標高406.0m(オ) 堤体積約1390万立方メートル(カ) 事業費約2540億円(昭和60年度単価)ウ徳山ダムは,設置目的を①洪水調節,②流水の正常な機能の維持,③新規利水及び④発電とする多目的ダムである(甲6の5,甲8,甲9,弁論の全趣旨)。そのうち新規利水については,岐阜県内の水道用水として最大1.5立方メートル/S(毎秒立方メートル。以下毎秒○○立方メートルを「立方メートル/S」という。)「,愛知県内(名古屋市を除く。)の水道用水として最大4.0立方メートル/S,名古屋市の水道用水として最大2.0立方メートル/S,岐阜県内の工業用水として最大3.5立方メートル/S及び名古屋市の工業用水として最大1.0立方メートル/Sの取水を可能ならしめることとされている。 (3) 徳山ダム建設に関する現在までの経緯ア当初のフルプラン内閣総理大臣は,促進法4条1項に基づき,目標年次を昭和50年度として,「木曽川水系における水資源の総合的な開発及び利用の合理化の基本となる水資源開発基本計画」(当初のフルプラン)を策定し,昭和43年10月15日の閣議決定を経て,これを決定した。 イ旧フルプラン内閣総理大臣は,上記アの当初のフルプランの目標年次を昭和60年度とする全部変更を行い,昭和48年3月23日の閣議決定を経て,これを決定した(以下「旧フルプラン」という。)。なお,旧フルプランは,昭和57年3月26日一部変更されている。 ウ新フルプラン内 とする全部変更を行い,昭和48年3月23日の閣議決定を経て,これを決定した(以下「旧フルプラン」という。)。なお,旧フルプランは,昭和57年3月26日一部変更されている。 ウ新フルプラン内閣総理大臣は,旧フルプランの目標年次を平成12年度とする全部変更を行い,平成5年3月26日の閣議決定を経て,これを決定した(以下「新フルプラン」という。)。なお,新フルプランは,平成8年11月22日及び平成9年12月19日にそれぞれ一部変更されている。 エ事業実施方針(公団法19条)建設大臣(平成10年法律第103号中央省庁等改革基本法及びこれに基づく中央省庁改編前のもの。以下同じ。)は,昭和51年4月27日,公団法19条1項に基づき,「徳山ダム建設事業に関する事業実施方針」(以下「事業実施方針」という。)を定め,内閣総理大臣を経て,これを公団に指示した。その後,事業実施方針は,昭和63年12月28日及び平成9年12月26日にそれぞれ変更されている。 オ事業実施計画(公団法20条)公団は,上記指示を受け,昭和51年9月28日,公団法20条1項に基づき,「徳山ダム建設事業に関する事業実施計画」(以下「事業実施計画」という。)を作成し,建設大臣は,公団法20条1項に基づき,これを認可した。その後,前記エの2回の事業実施方針変更に伴い,公団は,平成元年2月13日及び平成10年1月8日に事業実施計画を変更し,それぞれ建設大臣の同計画変更の認可を受けている。 カ徳山ダムの建設徳山ダム建設事業は昭和46年に着手され,平成19年度に完成する予定となっている。 (4) 岐阜県の水需要予測ア岐阜県の長期需給計画策定岐阜県は,平成6年3月,平成2年を基準年,平成10年を計画目標年とした「岐阜県第五次総合計画」(乙16)を作成し,徳山ダム建設及 ている。 (4) 岐阜県の水需要予測ア岐阜県の長期需給計画策定岐阜県は,平成6年3月,平成2年を基準年,平成10年を計画目標年とした「岐阜県第五次総合計画」(乙16)を作成し,徳山ダム建設及び岐阜県の将来の水需要見通しを同計画の中に位置づけていた(乙16-40頁,99~100頁)岐阜県は,平成6年3月,長期水需給計画に関して,岐阜県第五次総合計画を基本として,平成22年を目標年とした「岐阜県水資源長期需給計画」(乙17。以下「長期需給計画」という。)を作成し,同計画の中で水需要の見通しを立てていた。 イ岐阜県全体の水需要予測(乙17,弁論の全趣旨)岐阜県は,長期需給計画の中で,岐阜県全体の水需要について別表1「用途別主要フレーム」のとおり推計した(乙17-24頁・表3-1)。 そして,用途別の水需要において,工業用水につき概ね次のとおり見通しを立てていた。 (ア) 岐阜県においては,今後,新高速三道(γ自動車道,δ自動車道,ε自動車道)等の高速自動車網の進展,ζ新幹線計画の実現により立地条件が飛躍的に向上することが期待されている。岐阜県は,技術立県をめざし先端技術産業を中心とした積極的な企業誘致を展開しており,東濃研究学園都市構想,テクノパークの建設により一層の産業集積,技術集積が進むものと期待されている。また,岐阜県南部における研究ネットワーク都市・アークぎふ構想等の新規立地が進むものと期待されている。 (イ) このため,岐阜県の工業製造品出荷額は,平成2年の約5.8兆円(平成2年価格)が,平成10年には約7.4兆円(同),平成22年には約10.3兆円(同)に増加するものと予測される。 (ウ) 工業用の淡水補給水量は,生産性の向上及び水利用の合理化に伴う使用水原単位の減少,回収率の向上が見込まれるものの,製造品出荷額の着 22年には約10.3兆円(同)に増加するものと予測される。 (ウ) 工業用の淡水補給水量は,生産性の向上及び水利用の合理化に伴う使用水原単位の減少,回収率の向上が見込まれるものの,製造品出荷額の着実な増加に伴い,安定して増加するものと見込まれる。 (エ) 上記予測を前提として,岐阜県は,下記ウの方法に基づき,長期需給計画の中で,工業用水の水需要予測について別表2「工業用水」のとおり推計した(乙17-33頁・表3-5)。 すなわち,岐阜県の工業用水需要量は,基準年(平成2年実績)の152万8000立方メートル/日(全事業所推計値)が,平成22年には202万立方メートル/日(同)に推移するものと予測される。 ウ岐阜県の工業用水の需要予測方法(乙17)岐阜県は,同県が実施している使用水量及び製造品出荷額等の統計調査を基礎として,製造業の業種を,基礎資材型,加工組立型,生活関連型の3つに分類し,さらに業種ごとに在来型,先端型に分類し,合計6種の業種に類別した上で分析した(別紙「水需要予測モデル」の1のモデル作成の方針)。 工業用需要水量の予測は,上記6分類ごとに,別紙「水需要予測モデル」の2記載のとおりの需要水量予測式に従い算出した。具体的には,製造品出荷額(平成2年価格に換算)及び使用水量の各業種別のデータにより使用水原単位を求めた。 エ大垣地域の工業用水の需要予測(乙17)岐阜県の長期需給計画における大垣地域の工業用水の需要予測は次のとおりである。 (ア) 使用水原単位の算出大垣地域の平成22年の使用水原単位については,過去からの動向分析を踏まえて,時系列式(逆ロジスティック曲線,ベキ曲線)により別紙「水需要予測モデル」の2の2-1(1)「使用水原単位予測モデル」のとおり算出した。 (イ) 製造品出荷額の算出工業統計調査結果 析を踏まえて,時系列式(逆ロジスティック曲線,ベキ曲線)により別紙「水需要予測モデル」の2の2-1(1)「使用水原単位予測モデル」のとおり算出した。 (イ) 製造品出荷額の算出工業統計調査結果から全事業所の製造品出荷額の実績値を算出し,平成10年までは岐阜県第五次総合計画の第二次産業の伸び率を基にし,その後,平成22年までは経済成長率2.8%として,岐阜県全体の製造品出荷額の計画値約10.3兆円を算出した(別紙の2の2-2「工業出荷額予測モデル」の(2)「製造業工業出荷額の実績および計画値」)。次に,地域別業種別の平成22年の製造品出荷額を一次式により算出し,その構成比を岐阜県全体の製造品出荷額の計画値に乗じて算出した。大垣地域の平成22年の製造品出荷額の合計及び内訳の予測は,別紙の2の2-2「工業出荷額予測モデル」の「工業出荷額2010年における将来値」のとおりである。 (ウ) 回収率の算出工業統計調査結果から従業者30人以上の使用水量に占める回収水の割合(回収率)のデータにより算出した。基礎資材型(在来型),加工組立型(在来型)については,それぞれロジスティック曲線,修正指数曲線により予測し,その他の業種については実績最高値に固定した。大垣地域の平成22年の回収率予測は,別紙の2の2-3「回収率予測モデル」の(4)「回収率予測モデル」のとおりである。 (エ)大垣地域の工業用水需要量の見通し以上により算出された業種別の需要水量を使用水原単位×製造品出荷額×(1-回収率)の式により計算した結果は,別紙の3「需給水量予測」記載のとおりであり,平成22年の大垣地域の工業用水需要量は63万8000立方メートル/日と推計された。 (5) 本件費用負担同意ア本件負担金の概算額(甲9,乙2,乙40,弁論の全趣旨)徳山ダム建設事業に あり,平成22年の大垣地域の工業用水需要量は63万8000立方メートル/日と推計された。 (5) 本件費用負担同意ア本件負担金の概算額(甲9,乙2,乙40,弁論の全趣旨)徳山ダム建設事業に要する費用は,概算額で約2540億円(昭和60年度単価)であるが,同建設費は,用途別事業費用割振りの割合(たとえば,後記のとおり,水道用水及び工業用水に係る費用については1000分の368)と使用水量に応じて分けられている。 同事業に要する費用のうち岐阜県の工業用水に係る費用の負担については,次のとおりとされた。 (ア) 水道用水及び工業用水に係る費用の額は,前記事業に要する費用の額に1000分の368を乗じて得た額(約934億7200万円)とし,公団において支弁するものとする。ただし,公団は,公団法29条1項及びこれに基づく政令の規定により,流水を水道及び工業用水道の用に供する者に負担させるものとする。 (イ) 岐阜県内において流水を工業用水道の用に供する者の負担金の額は,徳山ダム建設事業に要する費用の額に1000分の111を乗じて得た額とする(ただし,徳山ダム建設事業が完了するまでに物価の著しい変動その他重大な事情のある場合には,各用途別負担等を変更することがある。)。 (ウ) 岐阜県の本件負担金(徳山ダム建設事業費負担金〔工業用水分〕)の額は,前記の負担割合から約281億9400万円となり,国庫補助金(補助率30%)を控除した岐阜県の負担金(工業用水分)の具体的金額は,概算で約197億3580万円である。 イ平成元年同意公団は,岐阜県に対し,公団法20条2項に基づき,昭和64年1月5日付け「徳山ダム建設事業に要する費用の負担の同意について」と題する書面(乙42)により,徳山ダム建設事業に要する費用負担の同意を求めた。 被告岐阜県知事 公団法20条2項に基づき,昭和64年1月5日付け「徳山ダム建設事業に要する費用の負担の同意について」と題する書面(乙42)により,徳山ダム建設事業に要する費用負担の同意を求めた。 被告岐阜県知事は,公団に対し,平成元年2月1日付け「徳山ダム建設事業に要する費用の負担の同意について」と題する書面(乙43)により,上記費用負担について同意する旨回答した(以下「平成元年同意」という。)。 ウ平成10年同意公団は,岐阜県に対し,公団法20条2項に基づき,平成9年12月26日付け「徳山ダム建設事業に要する費用の負担の同意について」と題する書面(乙44)により,徳山ダム建設事業に要する費用負担の同意を求めた。 被告岐阜県知事は,公団に対し,平成10年1月6日付け「徳山ダム建設事業に要する費用の負担の同意について(回答)」と題する書面(乙45)により,上記費用負担について同意する旨回答した(以下「平成10年同意」といい,平成元年同意と合わせて「本件費用負担同意」という。)。 エ本件費用負担同意の額四半期毎の本件負担金の具体的金額は,公団の岐阜県に対する納付通知の際に岐阜県にとって明らかとなるものであり,前記の平成元年及び平成10年の費用負担同意の際には,前記費用負担割合及び徳山ダム建設事業概算額が決定済みであるにとどまり,具体的な負担金の額が決定していたわけではない(乙42から45まで,弁論の全趣旨)。 (6) 岐阜県の本件負担金の支出ア平成2年度から平成9年度までの支出岐阜県は,昭和51年から本件負担金を支出しているところ,平成元年同意及び平成10年同意後は,それぞれ各費用負担同意に基づいて本件負担金を支出している。そのうち,平成2年度から平成9年度までに支出された各年度の本件負担金の額は次のとおりであって,その合計額は34億73 平成10年同意後は,それぞれ各費用負担同意に基づいて本件負担金を支出している。そのうち,平成2年度から平成9年度までに支出された各年度の本件負担金の額は次のとおりであって,その合計額は34億7348万7000円である。 年度金額平成2年度 2億4315万7000円平成3年度 2億4315万7000円平成4年度 3億2239万7000円平成5年度 4億3341万5000円平成6年度 5億2269万9000円平成7年度 5億6579万4000円平成8年度 5億7143万4000円平成9年度 5億7143万4000円イ平成10年度以降の支出岐阜県は,平成10年度以降も本件負担金の支出を継続している。本件口頭弁論終結日前に,平成15年3月25日の2億7029万7000円(平成14年度第4四半期分)に至るまでの支出がされている(乙58から60の3まで,弁論の全趣旨)。 また,徳山ダムは平成19年度に完成する予定であるが,予定通りに完成した場合には,公団の岐阜県に対する本件負担金の賦課行為は平成43年3月まで継続する予定であり,これに対して岐阜県は本件負担金を支出する予定である(弁論の全趣旨)。 ウ岐阜県一般会計からの支出岐阜県は,本件負担金を,独立採算制の工業用水道事業特別会計を設けてそこから支出するのではなく,岐阜県の一般会計から直接支出しており,今後も同様に支出する予定である。 エ本件負担金支出に係る専決権者(乙39,弁論の全趣旨)岐阜県事務決裁規程(昭和43年岐阜県訓令甲第19号。乙39)によると,本件負担金の支出負担行為(額に応じて専決権者が異なる。),支出命令についての専決権者は次のとおりである(同決裁規程8条,別表第1の2)。 (ア) 支出負担行為の専決権者3億円以上5億円未満は,副知事1億円 出負担行為(額に応じて専決権者が異なる。),支出命令についての専決権者は次のとおりである(同決裁規程8条,別表第1の2)。 (ア) 支出負担行為の専決権者3億円以上5億円未満は,副知事1億円以上3億円未満は,基盤整備部長1億円未満は,基盤整備部建設管理局水資源課長(イ) 支出命令の専決権者基盤整備部建設管理局水資源課長オ本件負担金支出に係る手続(ア) 公団は,岐阜県に対し,各年度各四半期(各年度の6月,9月,12月,3月)の「徳山ダム建設事業費負担金(工業用水分)の納付について」と題する通知をする(乙8の1,乙9の1,乙10の1,乙11の1,乙3の1,乙4の1,乙5の1,乙6の1,乙59。以下,後記(ウ)の請求と合わせて,「納付通知」という。)。 (イ) 前記エのとおり,岐阜県事務決裁規程に基づき,額に応じて,専決権者が事前決裁書によって本件負担金の支出負担行為を専決する(乙31の1,乙32の1,乙33の1,乙34の1,乙35の1,乙36の1,乙37の1,乙38の1,乙58)。 (ウ) その後,公団は,岐阜県に対し,納入(振込)請求書の送付によって本件負担金の請求を行う(乙8の2,乙9の2,乙10の2,乙11の2,乙3の2,乙4の2,乙5の2,乙6の2,乙60の2)。なお,同請求書は,便宜上,上記(ア)の通知と同時に送付されている。 (エ) 前記エのとおり,本件負担金の支出命令の専決権者である基盤整備部建設管理局水資源課長は支出命令を行い,被告岐阜県出納長により支出がなされる(乙31の2,乙32の2,乙33の2,乙34の2,乙35の2,乙36の2,乙37の2,乙38の2,乙60の1)。 (オ) 岐阜県議会での手続岐阜県は,本件負担金の支出自体,さらに一般会計から支出している事実につき,毎年度「徳山ダム建設事業負担金」 5の2,乙36の2,乙37の2,乙38の2,乙60の1)。 (オ) 岐阜県議会での手続岐阜県は,本件負担金の支出自体,さらに一般会計から支出している事実につき,毎年度「徳山ダム建設事業負担金」として歳出予算の議会による承認を経ている。また,本件負担金支出は,一般会計予算の款・「総務費」,項・「企画開発費」,目・「水資源対策費」,節・「負担金補助金及び交付金」として計上されており,予算明細説明書の説明欄に「徳山ダム建設事業負担金」として金額を含め明示されていた(丙1から3まで,弁論の全趣旨)。 なお,徳山ダム建設事業については,岐阜県議会において,毎年建設反対の立場から,予算に関する質問を含め一般質問等でも争点となることが多かった(弁論の全趣旨)。 (7) 徳山ダムに関する工業用水道事業法3条1項の届出の有無岐阜県は,徳山ダムについては,同水源施設が未だ建設中であり,導管等の設備がないことから,現在,工業用水道事業法3条1項の届出をしていない。 なお,岐阜県は,岩屋ダムについては平成8年に通商産業大臣(平成10年法律第103号中央省庁等改革基本法及びこれに基づく中央省庁改編前のもの。以下同じ。)に対し,工業用水道事業法3条1項の届出を行った上で一部事業を実施している。 (8) 住民監査請求原告b外30名(別紙「当事者目録」のbからcまでに記載された原告)は,平成11年1月6日付けで,岐阜県監査委員に対し,本件負担金の支出の差止等を求めて住民監査請求を行った。これに対し,岐阜県監査委員は,同年2月8日付けで上記監査請求を却下する旨の決定を行い,上記原告bらは,同月9日同通知を受領した。 また,原告d外11名(別紙「当事者目録」のdからeまでに記載された原告)は,平成11年2月15日付けで,岐阜県監査委員に対し,上記同様の住民監 を行い,上記原告bらは,同月9日同通知を受領した。 また,原告d外11名(別紙「当事者目録」のdからeまでに記載された原告)は,平成11年2月15日付けで,岐阜県監査委員に対し,上記同様の住民監査請求を行った。これに対し,岐阜県監査委員は,同年2月24日付けで上記監査請求を却下する旨の決定を行い,上記原告dらは,そのころ同通知を受領した(以下,上記2回の住民監査請求を合わせて「本件監査請求」という。)。 2 争点(1) 本件費用負担同意及び本件負担金支出は全体として一個の財務会計行為であるか。 (2) 本件監査請求は,監査請求期間を遵守しているか。 (3) 本件負担金支出は適法か。 アフルプランは違法なものであるか。その違法性は本件負担金支出に承継されるか。 イ長期需給計画及び同計画に基づく本件費用負担同意は違法なものであるか。その違法性は本件負担金支出に承継されるか。 ウ本件負担金につき,公団法20条2項所定の費用負担同意があるか。 エ一般会計から本件負担金を支出することは,地方財政法6条,地方公営企業法17条の2第2項に違反するか。 (4) 被告aに故意又は過失があるか。 (5) 被告aに不法行為が成立する場合において,損害賠償請求権は消滅時効により消滅しているか。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)(財務会計行為の構成)について【原告らの主張】公団法20条に基づく本件費用負担同意と四半期毎にされる本件負担金支出は全体として一個の財務会計行為(広義の支出)を構成するというべきである。 本件負担金の支出は,水資源開発施設の開発水の利用者が,当該水資源開発施設の新築等に要する費用を負担することを定めた公団法29条1項に基づくものであるところ,同法20条2項は,水資源開発施設の開発水の利用者が特定しているときは,同法 開発水の利用者が,当該水資源開発施設の新築等に要する費用を負担することを定めた公団法29条1項に基づくものであるところ,同法20条2項は,水資源開発施設の開発水の利用者が特定しているときは,同法29条1項が規定する上記費用負担についてその者の同意を得なければならないとして,水資源開発施設の開発水の利用者にその新築等の費用の負担をさせるには,その者の同意が必要であることを規定している。そうすると,本件負担金の支出は,本件費用負担同意により根拠付けられるものであるということができる。他方,費用負担同意により,公団法20条に基づき,同意者は負担金の支払義務を負い,公団は同意者に費用負担をさせることができるものの,費用負担同意の段階では,費用負担割合のほか事業概算額が決定済みであるにとどまり,具体的な負担金の額が決定しているわけではないから,本件費用負担同意と本件負担金の各支出を併せてはじめて一個の財務会計行為といえるというべきである。 そして,違法性の判断基準時は,本件費用負担同意時と本件負担金の各支出時の両方の時点が問題になるというべきである。 【被告らの主張】原告らは,公団法20条に基づく本件費用負担同意と四半期毎になされる本件負担金支出は全体として一個の財務会計行為を構成すると主張する。 しかし,岐阜県は,徳山ダム建設事業に関し,平成元年同意及び平成10年同意という2回の費用負担同意(本件費用負担同意)をしているが,費用負担の同意をしたからといって,必ず公団が岐阜県に対して建設事業負担金の賦課行為をするとは限らないという関係にある。なぜなら,公団は,費用負担同意を得るほかに,内閣総理大臣との協議を経た上で(公団法53条),事業実施計画につき主務大臣の認可を得なければならない(公団法20条1項)などの手続が要求されているし,岐阜県 ら,公団は,費用負担同意を得るほかに,内閣総理大臣との協議を経た上で(公団法53条),事業実施計画につき主務大臣の認可を得なければならない(公団法20条1項)などの手続が要求されているし,岐阜県が費用負担の同意をした後であっても,主務大臣及び公団は岐阜県の意思に関係なく徳山ダム建設を中止することができるからである。 したがって,岐阜県が行った本件費用負担同意はそれ自体財務会計行為に該当しないし,また,本件負担金の支出と一体として一個の財務会計行為になるとの原告らの主張は失当である。 2 争点(2)(監査請求期間の遵守の有無)について【被告aの主張】(1) 被告aに対する損害賠償請求権は,平成2年度から平成9年度まで毎年四半期毎(6月,9月,12月,3月)に支出された本件負担金に関するものであるところ,原告らの本件監査請求の日は,平成11年1月6日及び同年2月15日であるから,同監査請求のうち平成10年1月6日以前の本件負担金支出に関する部分は,地方自治法242条2項本文が規定する1年の監査請求期間を経過してからされたものであって不適法である。 (2) 原告らは,本件負担金のうち上記部分の支出は秘密裡になされたものであるなどとして,地方自治法242条2項但書にいう「正当な理由」があると主張する。 しかし,岐阜県の本件負担金支出については,一般会計予算に計上され,予算審議の場で公開されているし,予算明細説明書の説明欄に「徳山ダム建設事業負担金」として金額を含め明示されている上,住民がこれを入手することも可能であった。さらに,徳山ダム建設事業については,岐阜県議会において,毎年建設反対陣営から予算に関する質問を含め一般質問等で争点となっていた。 これらの点から,本件負担金支出が秘密裡にされたとはいえず,また,住民が相当の注意力をもって ついては,岐阜県議会において,毎年建設反対陣営から予算に関する質問を含め一般質問等で争点となっていた。 これらの点から,本件負担金支出が秘密裡にされたとはいえず,また,住民が相当の注意力をもって調査すれば知ることができたもので,本件において「正当な理由」はないというべきである。 【原告らの主張】住民監査請求は,当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過したときはすることができない(地方自治法242条2項本文)が,「正当な理由」があるときはこの限りでないとされている(同項但書)。そして,当該行為が秘密裡にされた場合,同項但書にいう「正当な理由」の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当な注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか,また,当該行為を知ることができたと解されるときから相当な期間内に住民監査請求をしたかどうかによって判断すべきである(最高裁昭和63年4月22日第二小法廷判決・判例時報1280号63頁)。 原告fは,平成10年5月下旬,岐阜県開発企業局水資源課職員から本件負担金支出の事実を聞いて,初めてこれを知った(甲2の1)。しかし,そのときの問答では,本件負担金を一般会計から直接公団に支払っているのか,特別会計たる工業用水道事業会計から公団に支払っているのか明確な説明がなかった。その後,同年10月末ころまで数回にわたって,同課職員に対し,引き続き説明を求めたところ,ようやく一般会計から公団へ直接支出された事実が判明した。 したがって,本件負担金の支出について,岐阜県の住民が相当な注意力をもって調査したときに,客観的にみて本件負担金の支出が一般会計からされている事実を知り得たのは平成10年10月末ころであるというべきであるから,このときから相当な期間内に原告らが本件監 当な注意力をもって調査したときに,客観的にみて本件負担金の支出が一般会計からされている事実を知り得たのは平成10年10月末ころであるというべきであるから,このときから相当な期間内に原告らが本件監査請求をしている本件では地方自治法242条1項の「正当な理由」がある。 3 争点3ア(フルプランの違法性とその承継)について【原告らの主張】(1) フルプラン自体の違法性について旧フルプランでは,水需要について,昭和60年に都市用水(工業用水と水道用水)の木曽川水系からの1日最大取水量が132立方メートル/Sになる予測であったが,同年の水需要実績は37立方メートル/Sにとどまった。このように過大な見積もりであったため,予測されただけの水需要はその期限が切れる昭和60年の時点においては存在しなかったのであって,木曽川水系においては過剰な水余りの状況にあった。 このような状況において,平成5年3月に旧フルプランの改定が行われ,工業用水の需要予測について若干の下方修正がされたが,昭和60年から平成4年までの実績を平成12年まで単純に延長した場合の増加量が105万立方メートル/日であったにもかかわらず,新フルプランにおける昭和60年から平成12年までの予測都市用水増加量は約330立方メートル/日とされるなど,依然として過大な予測となっており,実績と予測増加量の間に乖離があった。木曽川水系における平成4年の保有水源(約800万立方メートル/日)からすれば,平成12年においても水需給の余裕は十分あったものである。 旧フルプランの期限が切れる昭和62年及び新フルプランの期限が切れる平成12年の各時点はもちろん,今後においても徳山ダムの水需要はなく,岐阜県にとって同ダムが無用の施設であることは明らかであった。このように水需要予測を著しく誤ったフルプラ フルプランの期限が切れる平成12年の各時点はもちろん,今後においても徳山ダムの水需要はなく,岐阜県にとって同ダムが無用の施設であることは明らかであった。このように水需要予測を著しく誤ったフルプランは違法である。 (2) フルプランの違法性の承継についてア前記(1)のとおり,フルプランは違法であり,岐阜県の予算執行の適正を確保する見地から看過することのできない程度の違法性がある。そして,事業実施計画は,フルプランに基づく事業実施方針に従って作成,認可されるものであり,フルプランによって定められた水資源開発計画の内容(水需要見通し,水源施設とその開発供給量,供給先)を実行するだけであるから,フルプラン自体の違法は,以後の事業実施計画とその認可及び費用負担に関する行為である本件負担金の納付通知の違法をもたらす(これらは,水源施設の建設と費用負担という目的のために相互に結合して一連の手続をなす行為過程であるから,違法性は承継される。)というべきである。 イこのような水需要予測について著しく合理性を欠く違法な事業実施計画及び本件負担金の納付通知により,岐阜県に本件負担金の支払義務が発生することはない。したがって,支払義務のない納付通知に基づく本件負担金の支出は,違法である。 ところで,本訴は,地方自治法242条の2第1項1号の差止請求と同法242条の2第1項4号の損害賠償代位請求を内容としているところ,後者の損害賠償代位請求については,その性格上,支出の違法性は支出に関する行為をする当該職員の職務上の行為規範や行為義務によって決定されるべきものであるが,前者の差止請求においては,当該支出の違法性自体が検討されるべきである。すなわち,差止請求は地方公共団体の財産的損害の防止を目的とするものであるから,違法に財産的損害を発生させるものに関す あるが,前者の差止請求においては,当該支出の違法性自体が検討されるべきである。すなわち,差止請求は地方公共団体の財産的損害の防止を目的とするものであるから,違法に財産的損害を発生させるものに関する支出は差し止める必要があるからである。そして,原因行為の違法は,そのような違法に財産的損害を発生させるものの一つであるから,本件負担金の支出は差し止められなければならない。 ウ上記のとおり,本件負担金の納付通知は違法であるところ,岐阜県は,公団からの費用負担請求が違法であるときは,違法な財産的損害を防止しなければならず,そのためには当該職員は,当該請求の無効確認あるいは当該賦課処分の取消しを求めなければならない。 すなわち,被告aは,当該職員として本件負担金を支出するに当たって負担している職務上の行為規範や行為義務に基づいて,本件負担金の納付通知の無効確認あるいは取消しを求める義務があったのにこれを怠り,平成2年度から平成9年度にかけて合計34億7348万7000円の本件負担金を支出させたものであるから,岐阜県に対し,これを賠償する義務がある。 【被告らの主張】(1) フルプラン自体の違法性についてフルプランが違法であるとの主張については争う。 (2) フルプランの違法性の承継について原告らは,フルプランの違法性が事業実施計画とその認可及び費用負担に関する行為である本件負担金の納付通知に承継され,ひいては本件負担金の支出が違法になるとの主張をしているが,これは独立した(指揮監督権限のない)異なる行政機関及び法人相互間における違法性の承継の場合ということができる。 ところで,このような内閣総理大臣,建設大臣,公団及び岐阜県という独立した行政機関又は法人間における複数の原因行為における違法性の承継の問題につき,被告岐阜県知事及び同岐阜県 ということができる。 ところで,このような内閣総理大臣,建設大臣,公団及び岐阜県という独立した行政機関又は法人間における複数の原因行為における違法性の承継の問題につき,被告岐阜県知事及び同岐阜県出納長に対して支出差止及び当該職員に対して損害賠償の各請求をすることができるのは,たとえ財務会計行為に先行する原因行為に違法事由が存する場合であっても,原因行為を前提としてされた岐阜県知事及び岐阜県出納長の各行為自体が,財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られると解すべきである(最高裁判所平成4年12月15日第三小法廷判決・民集46巻9号2753頁参照)。すなわち,本件負担金支出の適法性の有無は,住民訴訟の対象たる同負担金の支出に当たり,被告岐阜県知事及び同岐阜県出納長が従うべき行為規範に違反したのか否か,という点のみから判断されるのである。 そして,内閣総理大臣,建設大臣,公団及び岐阜県の各権限配分関係からすれば,上記行為のうち,①フルプラン,②事業実施計画,③納付通知につき,被告岐阜県知事及び同岐阜県出納長は,各行為が著しく合理性を欠き,そのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合でない限り,公団の岐阜県に対する本件負担金の納付通知を尊重し,その内容に応じた財務会計上の措置を採るべき義務があり,これを拒むことはできないというべきである。なぜなら,被告岐阜県知事及び同岐阜県出納長は,内閣総理大臣,建設大臣及び公団の固有の権限に属する事項まで介入することはできず,被告岐阜県知事らの有する予算執行機関としての職務権限には自ずから制約があるからである。 これを本件についてみると,被告岐阜県知事及び同岐阜県出納長が徳山ダム建設負担金の支出行為をするに当たって,上記①から③までの各行為について,著しく合理 職務権限には自ずから制約があるからである。 これを本件についてみると,被告岐阜県知事及び同岐阜県出納長が徳山ダム建設負担金の支出行為をするに当たって,上記①から③までの各行為について,著しく合理性を欠き,そのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存在するものとは解し得なかった。したがって,被告岐阜県知事及び同岐阜県出納長は,公団の岐阜県に対する費用負担の賦課行為に伴う所要の財務会計上の措置を採るべき義務があり,これに従って財務会計行為を行ったものであるから,本件負担金の支出に関して財務会計法規上の義務違反はない。また,本件負担金の支出は適法であるから,差止請求も認められない。 4 争点(3)イ(長期需給計画及び同計画に基づく本件費用負担同意の違法性とその承継)について【原告らの主張】(1) 長期需給計画自体の違法性について岐阜県の長期需給計画における大垣地域の工業用水需要予測(平成22年の補給水量63万8000立方メートル/日)には,次のような問題があり,過大な水需要予測で不合理であるから同計画は違法である。なお,現実の大垣地域の工業用水需要量は,昭和48年の64万6835立方メートル/日(使用水量は79万7376立方メートル/日)をピークとして,昭和55年には52万9264立方メートル/日(使用水量は77万4044立方メートル/日),昭和60年には40万7675立方メートル/日(使用水量は61万5617立方メートル/日)と減少し,平成2年には43万4561立方メートル/日(使用水量は64万4960立方メートル/日)とやや増加したものの,平成7年には37万1262立方メートル/日(使用水量は56万4264立方メートル/日),平成12年には33万1796立方メートル/日(使用水量は52万6700立方メートル/日) やや増加したものの,平成7年には37万1262立方メートル/日(使用水量は56万4264立方メートル/日),平成12年には33万1796立方メートル/日(使用水量は52万6700立方メートル/日)となり,漸減傾向を示している。 ア使用水量原単位について岐阜県予測は,使用水量原単位予測モデルとして,5業種について逆ロジスティック曲線,生活関連型(先端型)についてはベキ曲線を採用している。逆ロジスティック曲線は,一定の値に収斂していく式であり,ベキ曲線は増加し続ける式であるところ,岐阜県は,収斂する値(飽和値)の設定理由や増加し続ける理由について合理的な説明をしておらず,むしろ,収斂するとか,増加し続けるとの仮定は実績に基づいていない。 イ回収率について岐阜県予測は,回収率予測モデルとして基礎資材型(先端型),加工組立型(先端型),生活関連型(在来型),生活関連型(先端型)について実績最高値固定,基礎資材型(在来型)についてロジスティック曲線,加工組立型(在来型)について修正指数曲線を採用している。しかし,飽和値の取り方の説明がなく恣意的である。また,大垣地域の実績をみると,地域全体では冷却,温調率は70%前後で,冷却,温調用水に対する回収水の割合は50%前後であるなど,回収再利用が容易な冷却,温調用水の多くが回収再利用されていないのであって,これは全国的にみても著しく低い数値であり,回収率向上の余地が大きいから,回収率を実績最高値に固定して回収率の向上を考慮しないのは不合理である。 ウ工業出荷額について岐阜県は,日本経済の構造変化を無視し,工業出荷額は限りなく伸びるとの前提に立っている。しかし,日本の産業構造は,昭和48年及び昭和54年の第一次,第二次オイルショックを経て工業全体の生産の伸びは鈍化した。さらに,バブル経済 を無視し,工業出荷額は限りなく伸びるとの前提に立っている。しかし,日本の産業構造は,昭和48年及び昭和54年の第一次,第二次オイルショックを経て工業全体の生産の伸びは鈍化した。さらに,バブル経済崩壊の前後で大きく変化し,高度経済成長期には重化学工業,鉄鋼業,化学工業といった用水型の産業が中心であったものが,今日の成長産業は非用水部門が中心となっている。バブル経済崩壊以降の産業構造が将来にわたって大きく変化する要素は見い出せないから,工業出荷額の予想は横ばいあるいは減少傾向を考慮した手法が用いられるべきである。 特に,需給水量の61%を占める生活関連型(在来型)の中心である繊維工業の実績は,淡水補給水量はもちろん製造品出荷額,敷地面積も減少傾向にある。すなわち,平成2年の需要水量で全体水量の34%を占める繊維産業における平成4年以降の使用水量が大幅に減少しているにもかかわらず,岐阜県予測は,出荷額は伸び続けるという前提に立っているが,実態に反するもので不合理である。 エ予測式自体について岐阜県予測によれば,使用水量原単位及び回収率はいずれも一定の値に収斂するので,需要水量(補給水量)は工業出荷額の増加に伴って増加する関係となる。しかし,過去の実績からすれば,工業出荷額と需要水量(補給水量)の間にはそのような相関関係は認められないから不合理である。 オ工業用水道による供給必要水量の検討の欠如について徳山ダムによる工業用水の必要性をいうためには,工業用水道によって供給する水量がどれだけ必要かの検討をしなければならない。 工業用水道は,ある程度以上の規模の補給水量を必要とする事業所でなければ利用されない。小規模零細事業所は工業用水道の対象外である。ところが,岐阜県予測は,1人以上の事業所という小規模零細事業所まで需要水量の計算に入れ 程度以上の規模の補給水量を必要とする事業所でなければ利用されない。小規模零細事業所は工業用水道の対象外である。ところが,岐阜県予測は,1人以上の事業所という小規模零細事業所まで需要水量の計算に入れており,この点も不合理である。 (2) 長期需給計画の違法性の承継について前記(1)のとおり,大垣地域の補給水量の実績の動向は漸減であって,将来の増加は望めない。特に,工業用水需要量の大部分を占めている生活関連型(在来型)のさらに中心をなしている繊維工業が大きく減少しているのである。また,大垣地域の場合,回収率を向上させることが可能であるから,使用水量の増加があったとしても,補給水量は増加しないことが確実である。したがって,長期需給計画は違法であり,予算執行の適正確保の見地から看過できない程度の違法性がある。 そして,長期需給計画自体の違法は,これに基づいてなされた岐阜県の本件費用負担同意,費用負担に関する行為である本件負担金の納付通知,本件負担金の支出の違法をもたらす(違法性の承継)というべきである。 なお,フルプランに関する違法性の承継と異なり,長期需給計画,本件費用負担同意及び本件負担金の支出の主体はいずれも岐阜県であり,同一主体であるので,より容易に違法性の承継が認められるものというべきである。 しかるに,本件負担金の支出がなされ,あるいはされようとしており,違法である。 【被告らの主張】(1) 長期需給計画の違法性の主張について次のとおり,長期需給計画における岐阜県の大垣地域の工業用水需要予測は合理的なものであり,違法ではない。 ア使用水量原単位について原告らは,使用水量原単位の予測において,その値が一定値に収斂するものでないと主張しているが,甲第12号証によっても,平成3年までは実質工業出荷額の増加に伴い淡水使用量原 使用水量原単位について原告らは,使用水量原単位の予測において,その値が一定値に収斂するものでないと主張しているが,甲第12号証によっても,平成3年までは実質工業出荷額の増加に伴い淡水使用量原単位は減少し,平成4年以降は実質工業出荷額の増減にかかわらず,淡水使用量原単位はあまり変化しなくなり50立方メートル/日に収斂していることが読み取れるのであり,原告らの上記主張は失当である。 なお,長期需給計画では,逆ロジスティック曲線における飽和値(下限値)は,実績最低の1割減として設定している。 イ回収率について原告らは,大垣地域の回収率が他地域に比べ著しく低いと主張するが,岐阜県内で比較すれば,平成2年においては,地下水依存度が6.1%と低い可茂・益田地域の回収率が32.1%であるのに対し,地下水依存度が64.5%と高い大垣地域の回収率は32.6%であり,補給水のほとんどをダム開発水などの表流水に依存する可茂・益田地域と大差ない値となっている(乙49,乙50)。このように,大垣地域の回収率が他地域と比べて低いとはいえない。 原告らは,大垣地域では回収率向上の余地がかなりあるとも主張するが,冷却用や温調用水を回収し再利用するためには,工場内に循環用の配管や冷却装置などの施設整備があり,かつ,運転費や維持管理費の支出が必要であり,事業者の規模によってはこれら再利用施設の整備率が異なることが想像される。すなわち,実質の回収率の高低は,事業規模に影響を受けるのであり,この考え方を基にして平成2年時点での大垣地域の繊維工業とプラスチック製品製造業について回収率を検証すると,その回収率は全国平均並みであることが分かる(乙53,54)。したがって,原告らの上記主張は失当である。 なお,長期需給計画における大垣地域の水需要予測においては,どの分類 いて回収率を検証すると,その回収率は全国平均並みであることが分かる(乙53,54)。したがって,原告らの上記主張は失当である。 なお,長期需給計画における大垣地域の水需要予測においては,どの分類型も回収率の実績値が全国平均より低いことから,基礎資材型(在来型)と加工組立型(在来型)については,将来,回収率が全国平均並みになるとして飽和値(上限値)を設定し,上記2分類を除いた4分類については,回収率の実績値が減少傾向にあり,そのまま将来動向を予測すれば,漸増して一定値に収斂していくという全国動向に相反するので,データ収集期間の実績最大値を飽和値として設定したものである。 ウ工業出荷額について原告らは,平成4年以降,繊維産業が衰退し,その出荷額が大幅に落ち込んでいるから,出荷額が伸びていくとの予測は誤りであると主張する。 しかし,長期需給計画は繊維工業という単体ごとには実施していないところ,甲第12号証-13頁・図4を見ても,昭和59年から平成2年の間については実質出荷額は右肩上がりに推移しているし,また,新高速三道が開通すると,西濃地域の交通アクセスの利便性は一段と向上し,企業の集積が進むことが見込まれること等からすれば,今後,工業出荷額の伸びが見込まれないと断言することはできず,その増加を期待することが自然であるから,原告らの上記主張は失当である。 また,経済の動向には波があるものであり,データ収集期間の7か年において製造品出荷額は順調に伸びていた。現時点での水需要の実績値が予測値を下回ったとしても,この先の将来水需要が上昇することを必ずしも否定できるものではない。 エ予測式自体について原告らは,岐阜県が採用した予測式について,工業出荷額と需要水量には相関関係が認められない点が不合理であると主張する。しかし,工業用水の需要 必ずしも否定できるものではない。 エ予測式自体について原告らは,岐阜県が採用した予測式について,工業出荷額と需要水量には相関関係が認められない点が不合理であると主張する。しかし,工業用水の需要予測にあたって,計画目標年次における工業出荷額,使用水量原単位を基に必要水量を算出する方法は一般的なものであり,「建設省河川砂防技術基準(案)同解説計画編」(乙47)にも示されている手法であるから,原告らの上記主張は失当である。 オ工業用水道による供給必要水量の検討の欠如について全国の工業用水道事業の料金制度をみると,責任使用水量制を採っていても最低給水量を定めていない工業用水道もあり,使用水量の少ない事業者の工業用水道利用を妨げるものではない。むしろ,水道用水より高価な工業用水を工場で利用することも考えられる。そこで,小規模零細事業所が多い大垣地域において,仮に工業用水を利用すると予想する事業所規模を30人以上と仮定すると,大半の小規模零細事業所が予測対象から漏れることになり,水需要予測としては不適当になる。 (2) 長期需給計画の違法性の承継の主張についてア大垣地域では昭和48年に64万6835立方メートル/日の補給水量の実績がある。これは従業員30人以上の事業所の統計数値であり,全事業所についてはこれより使用水量は多くなる。岐阜県の長期需給計画における平成22年の補給水量予測は63万8000立方メートル/日であり,上記実績よりも低い。すなわち,上記予測は,過去の実績に基づき将来の水需要を推計し,給水制限など県民生活に重大な支障を及ぼす事態が生じないよう水源の安定的な確保を図るため計画されたものである。一方,昭和48年ころには地下水揚水が多くそのため大規模な地盤沈下域が形成された。したがって,今後増大する補給水位の需要に対応し,社 態が生じないよう水源の安定的な確保を図るため計画されたものである。一方,昭和48年ころには地下水揚水が多くそのため大規模な地盤沈下域が形成された。したがって,今後増大する補給水位の需要に対応し,社会基盤に重大な影響を及ぼす地盤沈下を防ぐためには水資源開発施設の整備が必要となる。したがって,長期需給計画の水需要予測に違法性はない。 イ岐阜県は,徳山ダム建設事業の必要性について,公団とは別に,長期需給計画に基づく水需要の見通しに基づいて平成10年同意をしたものであるところ,前記のとおり,長期需給計画においては,大垣地域の工業用水は,平成2年実績の53万立方メートル/日から平成22年には63万8000立方メートル/日に増加するものと予測された。そうすると,徳山ダムが建設されなければ,大垣地域においては10万8000立方メートル/日の工業用水が不足することになる。しかして,大垣地域における今後の工業用水の需要量増加に対しては,すべて徳山ダムによる開発水量に依存することとなり,他のダムは存在しない。また,大垣地域においては,「表流水他」の95%程が地下水であるところ,地盤沈下の防止を図るため地下水採取規制及び代替水源の確保等の必要性が生じた際には,徳山ダムは地盤沈下防止等対策として代替水源に位置づけられている。 岐阜県は,以上の諸事情を考慮して平成10年同意をしたものであり,上記同意は適法であるから,本件負担金の支出も適法である。 ウ仮に,長期需給計画における工業用水需要予測に違法性があったとしても,公団の岐阜県に対する本件負担金納付通知に違法性は承継されないというべきである。 けだし,岐阜県の長期需給計画における水需要予測と公団の岐阜県に対する本件負担金の納付通知では主体が別個であり,かつ,岐阜県と公団とは独立した行政主体であるから,岐 継されないというべきである。 けだし,岐阜県の長期需給計画における水需要予測と公団の岐阜県に対する本件負担金の納付通知では主体が別個であり,かつ,岐阜県と公団とは独立した行政主体であるから,岐阜県の長期需給計画は,公団の本件負担金賦課行為の原因行為に当たる関係にないからである。 5 争点(3)ウ(公団法20条2項所定の費用負担者の同意の有無)について【原告らの主張】(1) 公団法29条1項は,公団は,「水資源開発施設を利用して流水を水道若しくは工業用水道の用に供する者」等に当該水資源開発施設の新築等の費用を負担させると規定する。ここで,公団の水資源開発施設建設費の負担者は,地方公営企業としての工業用水道事業であって,地方公共団体ではないと解すべきである。 けだし,工業用水道事業は地方公営企業で経営しなければならず(地方公営企業法2条1項2号),地方公営企業である工業用水道事業の経営は後記のとおり独立採算を義務づけられているので,水源の取得とその費用負担は自らしなければならないからである。 (2) 次に,公団法20条2項は,公団は水資源開発施設の建設費負担について「水資源開発施設を利用して流水を水道又は工業用水道の用に供しようとする者が特定しているときは」その者の同意を得なければならないとしている。ここにいう同意とは,当該水資源開発施設の開発水を利用する工業用水道施設を建設,改良して工業用水道事業を行う管理者,すなわち岐阜県においては徳山ダム工業用水道事業の管理者の同意をいうと解すべきである。 けだし,前記のとおり,工業用水道事業は地方公営企業で経営しなければならず,地方公営企業である工業用水道事業の経営は独立採算を義務づけられているので,水源の取得とその費用負担は自らしなければならないという法の趣旨を押し進めると,地方公営企業と 企業で経営しなければならず,地方公営企業である工業用水道事業の経営は独立採算を義務づけられているので,水源の取得とその費用負担は自らしなければならないという法の趣旨を押し進めると,地方公営企業としての工業用水道事業がまずあって,その者が工業用水道事業法3条1項の届出をして同法に基づく工業用水道事業を営むのであり,被告らが主張するように工業用水道事業法3条1項の届出をした後に地方公営企業としての工業用水道事業が始まるのではないというべきところ,地方公営企業である工業用水道事業では,その用に供する資産の取得,管理,処分は工業用水道事業管理者が行うし(地方公営企業法9条7号,33条1項),経費の支払も工業用水道事業管理者が行い(同法9条11号,27条),一般行政事務を行う県知事,出納長等が行うものではないからである。 (3) したがって,岐阜県知事が本件費用負担の同意をしたからといって,これは法的意味のない政治的意見の表明にすぎず,これによって岐阜県が本件負担金の支払義務を負うものではなく,工業用水道事業者である地方公営企業の工業用水道事業管理者の同意がない以上,本件負担金の支出は公団法20条2項に違反することになる。ちなみに,前記のとおり,岐阜県では徳山ダムの工業用水に対する需要はなく,大垣地域で工業用水道を建設することも工業用水道事業を実施することもないから,工業用水道事業管理者は存在しないことになる。 【被告らの主張】(1) 公団法20条2項にいう「工業用水道の用に供しようとする者」は工業用水道事業の開始前を想定しての用語であり,同法29条1項にいう「工業用水道事業者」は工業用水道事業の開始後を想定しての用語であるという違いがあるが,徳山ダムに関しては,いずれも地方公共団体たる岐阜県がこれに該当するものである。 (2) まず,工業用 項にいう「工業用水道事業者」は工業用水道事業の開始後を想定しての用語であるという違いがあるが,徳山ダムに関しては,いずれも地方公共団体たる岐阜県がこれに該当するものである。 (2) まず,工業用水道事業法3条1項(ただし,中央省庁等改革関係法施行法による改正前のもの)は「地方公共団体は,工業用水道事業を営もうとするときは,その工業用水道施設の設置の工事の開始の日の60日前までに,その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。」と規定していることからすれば,同法は,工業用水道事業の工事開始前の「工業用水道事業を営もうとする者」として,地方公共団体を想定していることが明らかである。 そして,「工業用水道事業を営もうとする者」としての地方公共団体が,通商産業大臣に対して事業届出をし(工業用水道事業法3条1項),その届出をした工業用水道事業について,地方公営企業の業務を執行させるための「管理者」を置き(地方公営企業法7条),「管理者」が,地方公営企業の業務を執行し,その業務につき当該地方公共団体を代表し(同法8条),地方公営企業の経理は特別会計を設けて行なう(同法17条)という手続の流れになっているのである(3) 徳山ダムについては,通商産業大臣に対していまだ上記工業用水道事業の届出がされておらず,同事業の開始前であるから,地方公営企業法の適用はなく,当然「管理者」も置かれていない。したがって,原告らが主張する「工業用水道事業管理者」の費用負担の同意というのはそもそも考えられない。 (4) したがって,徳山ダムについて,公団法20条2項の「工業用水道の用に供しようとする者」である岐阜県が,本件費用負担同意をした上,公団法29条1項に基づき本件負担金の支出をしているのであるから,本件負担金支出は適法である。 6 争点3エ(一般会計からの支出が の用に供しようとする者」である岐阜県が,本件費用負担同意をした上,公団法29条1項に基づき本件負担金の支出をしているのであるから,本件負担金支出は適法である。 6 争点3エ(一般会計からの支出が地方財政法6条,地方公営企業法17条の2第2項に違反するか)について【原告らの主張】(1) 公団の水資源施設建設費負担者は,前記5の【原告らの主張】のとおり,地方公営企業としての工業用水道事業であり,公団が本件負担金を請求すべきは,地方公共団体たる岐阜県ではなく,岐阜県公営企業たる工業用水道事業である。これを前提とすると,水資源施設建設費はおよそ一般会計から支出することは許されず,工業用水道事業特別会計から支出しなければならない。 地方公営企業は独立採算の原則が採られており,一般会計から特別会計への繰入れさえ,法令で例外を定める場合を除いては認められない(地方財政法6条,地方公営企業法17条の2,17条の3)。すなわち,安易に一般会計から本件負担金の支出を認めると,一般行政事務の財源を奪うことになり,ひいては一般住民の福祉が制限される結果になるが,これに加えて,工業用水道事業は,市民生活に密着する事業ではなく,市民生活との関わりは間接的であるから,同事業は,地方公営企業(地方公営企業法2条1項各号参照)の中でも,特に独立採算の原則が厳格に維持されなければならないからである。 これらの点からすれば,本件負担金は,工業用水道事業特別会計から支出されなければならないというべきである。 なお,工業用水道事業法による事業の届出は,通商産業大臣が給水事業者に対して必要な指導等を行う前提として,事業者及び事業内容を把握するために要請されるものであり,地方公営企業法による企業の経済性発揮の要請には全く関係がないから,徳山ダム建設費負担金は,上記届出の前 対して必要な指導等を行う前提として,事業者及び事業内容を把握するために要請されるものであり,地方公営企業法による企業の経済性発揮の要請には全く関係がないから,徳山ダム建設費負担金は,上記届出の前後にかかわらず,特別会計から支出されなければならないものである。 (2) 仮に,上記(1)の主張が認められないとしても,岐阜県は,平成8年に岩屋ダムについて工業用水道事業特別会計を設置したから,地方公営企業法17条が規定する一事業一会計の原則から,工業用水道事業に関するすべての資産,費用は同特別会計で管理しなければならない。 よって,少なくとも平成8年度以降については,本件負担金は工業用水道事業特別会計から支出しなければならない。 (3) なお,被告らは,本件負担金支出が一般会計からであるか特別会計からであるかによって何ら損害が発生するわけではないし,仮に損害があったとしても相当因果関係がないと主張する。 しかし,地方公営企業法17条の2第1項所定の事由があれば,経費を一般会計から特別会計に繰り入れることは認められるものの,このような例外的な事由がないにもかかわらず一般会計から支出がなされると,一般行政事務の財源の減少を来たし,住民全体の利益を害することになって違法であるから,被告らの上記主張は失当である。 (4) したがって,本件負担金は,工業用水道事業特別会計から支出されなければならないにもかかわらず,一般会計から支出され,今後も支出される予定であるから,このような本件負担金支出は違法である。 【被告らの主張】(1) 地方公営企業法の適用を受ける時期に関して,当該事業を行うことについて行政庁の許認可を要するものは許認可の日,届出を要するものは届出を受理された日と解されている(乙13-46頁)。また,建設中の工業用水道事業への法適用時期に 時期に関して,当該事業を行うことについて行政庁の許認可を要するものは許認可の日,届出を要するものは届出を受理された日と解されている(乙13-46頁)。また,建設中の工業用水道事業への法適用時期に関する行政実例でも,地方公営企業法が適用となる時期は,工業用水道事業法3条1項に規定する届出をした時とされている(乙12)。そうすると,上記許認可又は届出がなされるまでは,たとえその事業を経営する意思があり,そのための建設が行われていても地方公営企業法は適用されないところ,建設中の徳山ダムについては,現在のところ,工業用水道事業法3条1項に規定する岐阜県の事業届出はされていない。 ところで,地方財政法6条は,「公営企業で政令の定めるものについては,その経理は特別会計を設けてこれを行」うと規定し,上記政令に当たる地方財政法施行令12条は,公営企業として,水道,工業用水道,交通等13事業を規定する。そして,地方公営企業法2条1項は,上記事業のうち水道(簡易水道を除く。),工業用水道,交通,電気,ガスの5事業に対して,同法を適用すると規定し,これらの事業に対する経営原則は地方公営企業法の定めるところによるから,地方公営企業法の適用がある事業のみが,地方財政法が規定する工業用水道事業に該当するものである。 そうすると,徳山ダムは建設中であり,導管等の施設の完成に至っておらず,工業用水の供給開始もされていない現在,岐阜県は通商産業大臣に対して工業用水道事業法3条1項に基づく事業届出をしておらず,工業用水道事業開始前であるから,地方公営企業法の適用がなく,地方財政法の適用もない。 (2) 前記5の【被告らの主張】のとおり,徳山ダムの流水を工業用水道の用に供して工業用水道事業を営む者は地方公共団体としての岐阜県であり,公団法20条2項にいう「工業用水道の 財政法の適用もない。 (2) 前記5の【被告らの主張】のとおり,徳山ダムの流水を工業用水道の用に供して工業用水道事業を営む者は地方公共団体としての岐阜県であり,公団法20条2項にいう「工業用水道の用に供しようとする者」,同法29条1項にいう「工業用水道の用に供する者」はいずれも岐阜県である。そうすると,公団法29条1項に規定する債務である本件負担金債務は岐阜県の債務である。岐阜県の債務である本件負担金債務につき,徳山ダムに関して工業用水道事業法による事業届出を岐阜県が行っていない以上,地方公営企業法17条の規定による特別会計を設けないで一般会計から支出することが違法となる余地はない。工業用水道事業法に基づく事業届出前に,ダム建設負担金の支出につき特別会計を設けるか一般会計で経理処理するかは,工業用水道事業を営もうとする者の判断に委ねられており,上記事業届出前に工業用水道事業特別会計を設けるべき法律上の要請はない。 しかも,地方公営企業の独立採算制といっても,一般会計において負担すべき経費(公共的要請により受益者負担の原則になじまない経費)を除いた部分についての独立採算制であり,完全な独立採算制が採られているわけでもない(地方公営企業法17条の2)。 (3) さらに,本件負担金支出が一般会計からであるか,特別会計からであるかによって岐阜県に損害が発生するわけではないし,仮に損害があったとしても相当因果関係がないというべきであるから,原告らの主張はこの点でも失当である。 (4) 一事業一会計の原則とは,地方公共団体の経営する複数の事業(水道事業,工業用水道事業,軌道事業等)の二つ以上の事業を通ずる特別会計を設置して,会計内容及び財政状況を不明確にしてはならないとの要請である。したがって,事業の合理的運営や経営内容及び財政状況の明確性のために 業用水道事業,軌道事業等)の二つ以上の事業を通ずる特別会計を設置して,会計内容及び財政状況を不明確にしてはならないとの要請である。したがって,事業の合理的運営や経営内容及び財政状況の明確性のために,事業を必要に応じて細分化し,細分化した事業ごとに別個の会計を設けることは一事業一会計の原則に反しない。 徳山ダムが完成し工業用水道事業の届出がなされたとしても,その流域は岩屋ダムと相違しており,受益者も異なっている。したがって,徳山ダムの水源費である工業用水道事業開始前の建設負担金を,岩屋ダムの特別会計から支出せず,一般会計から支出していることは,行政裁量の範囲内であって,一事業一会計の原則に反するものではない。 (5) したがって,岐阜県の一般会計から本件負担金が支出されていることによって,同支出が違法となることはない。 7 争点(4)(被告aの故意・過失)について【原告らの主張】被告aは,岐阜県知事として,岐阜県の公金支出に関して支出負担行為及び支出命令の本来的権限を有しているところ,違法な本件負担金支出に岐阜県知事として関与した被告aには,専決職員に対する指揮監督義務違反の過失が少なくとも認められるというべきである。 【被告aの主張】原告らの主張は争う。 8 争点(5)(消滅時効)について【被告aの主張】原告らが被告aに対して請求する債権は,不法行為に基づく損害賠償請求権であるから,そのうち平成8年2月27日以前の支出に係る部分は,民法724条により,3年の消滅時効期間が経過している。そして,被告aは,平成13年9月5日の本件弁論準備手続期日において,上記消滅時効を援用した。 したがって,平成8年2月27日以前の支出に係る損害賠償請求権は存在しない。 【原告らの主張】代位請求に係る損害賠償請求権の消滅時効期間は,地方自 準備手続期日において,上記消滅時効を援用した。 したがって,平成8年2月27日以前の支出に係る損害賠償請求権は存在しない。 【原告らの主張】代位請求に係る損害賠償請求権の消滅時効期間は,地方自治法236条1項により5年であるから,本件損害賠償請求権はその全部について消滅時効期間が経過しておらず,被告aの上記主張は失当である。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)(財務会計行為の構成)について原告らは,「2回にわたる本件費用負担同意と四半期毎の各支出」を一体として一個の財務会計行為(広義の支出)と構成することができると主張するので,この点について検討する。 (1) 財務会計行為に関して,いわゆる広義の公金の支出は,具体的には,①支出負担行為(支出の原因となるべき契約その他の行為)及び②支出命令がされた上で,③狭義の支出がされることによって行われるものである(地方自治法232条の2,232条の4第1項)。これらのうち支出負担行為及び支出命令は当該地方公共団体の長の権限に属するのに対し,支出は出納長又は収入役の権限に属するのであり,そのいずれについてもこれらの者から他の職員に委任等により各別に権限が委譲されることがある。また,これら各行為に適用される実体上,手続上の財務会計法規の内容も同一ではない。このように,これらは,公金を支出するために行われる一連の行為ではあるが,互いに独立した財務会計上の行為というべきものである。 そうすると,仮に,2回にわたる本件費用負担同意が広義の支出を構成する支出負担行為とみることができるとしても,四半期毎の本件負担金の支出と「一体の」財務会計行為とみる余地はないというほかないから,この点において既に原告ら主張の財務会計行為の構成は失当である。 (2) さらに,本件費用負担同意自体が財務会計行為たる支出負 負担金の支出と「一体の」財務会計行為とみる余地はないというほかないから,この点において既に原告ら主張の財務会計行為の構成は失当である。 (2) さらに,本件費用負担同意自体が財務会計行為たる支出負担行為であるといえるか否かについて検討すると,被告岐阜県知事がした本件費用負担同意は,前記第2の1(5)のとおり,平成元年及び平成10年費用負担同意の際,いずれも費用負担割合のほか事業概算額が決定済みであるにとどまり,具体的な負担金の額が決定しているわけではないし,費用負担の同意があったとしても,公団が岐阜県に対して本件負担金の賦課行為をするとは限らず,国土交通大臣又は公団が徳山ダム建設を中止することもできるものである。したがって,本件費用負担同意は,地方自治法242条1項にいう「義務の負担」には該当しないものというべきであり,この点でも原告ら主張の財務会計行為の構成は失当である。 結局,原告らの上記構成は,独自の見解であって採用することができない。 2 差止請求の訴えの利益等について原告らの被告岐阜県知事及び同岐阜県出納長に対する請求は,地方自治法242条の2第1項1号に基づき,平成10年6月以降の本件負担金の支出命令及び支出の差止めを求めるものである。 (1) 差止請求は当該行為がされる以前又は現にされつつあるときにのみ可能であって,既に差止めの対象となる行為がされた後にその行為の差止めを請求することはできず,このような差止請求には訴えの利益がなく,不適法であると解するのが相当であるところ,前記第2の1(6)イのとおり,岐阜県は,平成15年3月25日,平成14年度第4四半期分まで本件負担金を既に支出したことが認められる。 したがって,原告らの本件負担金の支出等の差止を求める訴えのうち,上記部分についての支出等の差止めに係る訴えは,訴え 25日,平成14年度第4四半期分まで本件負担金を既に支出したことが認められる。 したがって,原告らの本件負担金の支出等の差止を求める訴えのうち,上記部分についての支出等の差止めに係る訴えは,訴えの利益を欠くものであって,いずれも不適法である。 (2) また,差止請求は,地方公共団体の執行機関又は職員の当該財務会計行為がなされることが相当の確実性をもって予測される場合に限り可能であって,これが認められない場合,このような差止請求は不適法であると解される。 前記第2の1(6)イのとおり,岐阜県は,本件負担金については,平成43年4月以降の支出は予定しておらず,平成43年3月まで支出を予定しているにとどまることが認められるから,平成43年3月まで本件負担金の支出が行われることは相当の確実性をもって予測されるものといえるが,他方,平成43年4月以降については,同支出が確実に行われるとは認められない。 したがって,原告らの本件負担金の支出等の差止を求める訴えのうち,上記部分についての支出等の差止めに係る訴えは,いずれも不適法である。 3 争点(2)(監査請求期間遵守の有無)被告aは,本件監査請求のうち平成9年12月分までの本件負担金に係る部分は監査請求期間を経過してされたもので,原告らの被告aに対する訴えのうち上記部分に係る訴えは不適法である旨主張するので,検討する。 (1) 監査請求期間の経過ア原告らの被告aに対する請求は,本件負担金のうち平成2年6月から平成10年3月までに支出された部分について,地方自治法242条の2第1項4号に基づき岐阜県に代位して損害賠償を求めるものである。 イ当該地方公共団体の住民が住民訴訟を提起するには,予め「当該行為のあった日又は終わった日」から「1年」以内に住民監査請求をしなければならない(地方自治法2 に代位して損害賠償を求めるものである。 イ当該地方公共団体の住民が住民訴訟を提起するには,予め「当該行為のあった日又は終わった日」から「1年」以内に住民監査請求をしなければならない(地方自治法242条1項,2項,242条の2第1項)。この「1年」の起算点は,支出負担行為,支出命令及び支出については,地方自治法242条2項本文所定の監査請求期間は,それぞれの行為のあった日から各別に計算すべきものと解するのが相当である(最高裁判所平成14年7月16日第三小法廷判決・民集56巻6号1339頁参照)。 ウ本件負担金のうち平成2年6月から平成9年12月までに支出された部分については,原告らによる2回にわたる本件監査請求のうち早い方の日が平成11年1月6日であるから,同監査請求は,上記期間の本件負担金の各支出から1年を経過した後にされたことが認められる。 (2) 正当な理由の有無本件監査請求のうち平成2年6月から平成9年12月までに支出された本件負担金支出に関する部分は,前記認定のとおり,当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過した後にされたものであるが,原告らは,本件では「正当な理由」(地方自治法242条2項但書)が存在する旨主張するので,その有無について検討する。 当該行為が普通地方公共団体の住民に隠れて秘密裡にされた場合,同項但書にいう「正当な理由」の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当な注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか,また,当該行為を知ることができたと解されるときから相当な期間内に住民監査請求をしたかどうかによって判断するのが相当である(最高裁昭和63年4月22日第二小法廷判決・判例時報1280号63頁)。 本件負担金の支出については,前記第2の1(6)オ(オ 当な期間内に住民監査請求をしたかどうかによって判断するのが相当である(最高裁昭和63年4月22日第二小法廷判決・判例時報1280号63頁)。 本件負担金の支出については,前記第2の1(6)オ(オ)のとおり,岐阜県議会で審議,議決の手続が履践されるなど,通常の手続を経て行われたもので,関係者が特にこれを隠蔽しようとした事実は認められない。そして,上記予算,予算明細説明書(丙1から3まで)及び決算書等の書類は,その性質上,岐阜県の住民がこれを入手し閲覧することが可能である。したがって,本件負担金の支出は,秘密裡にされたものということはできない。 また,上記事実からすれば,岐阜県の住民としては,相当の注意力をもってする調査等によって,遅くとも上記各支出がなされたころには,当該行為があったことのみならず,当該行為が違法であることを基礎付ける事実をも了知して住民監査請求をすることが可能であったと認められる。したがって,この点からも正当理由は存在しないというべきである。 4 争点(3)ア(フルプランの違法性とその承継)について(1) 原告らは,新フルプランの平成12年度までの都市用水増加量予測約330立方メートル/日は著しく過大であり,平成12年度以降においても徳山ダムの水需要はないから,このように水需要予測を著しく誤った新フルプランは違法であり,その違法性がその後の事業実施計画の作成と認可,本件負担金の納付通知に承継されるところ,違法な納付通知には支払義務がないから,本件負担金の支出命令及び支出は違法であると主張する。 ところで,住民訴訟において,当該職員の財務会計上の行為をとらえて地方自治法242条の2第1項4号の規定に基づき損害賠償責任を問うことができるのは,たとえこれに先行する原因行為に違法事由が存在する場合であっても,上記原因行為 当該職員の財務会計上の行為をとらえて地方自治法242条の2第1項4号の規定に基づき損害賠償責任を問うことができるのは,たとえこれに先行する原因行為に違法事由が存在する場合であっても,上記原因行為を前提としてされた当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られると解するのが相当である(最高裁平成4年12月15日第三小法廷判決・民集46巻9号2753頁参照)。そして,この理は,地方自治法242条の2第1項1号の規定に基づく差止請求についても基本的に同様であるが,損害賠償請求と差止請求の性格の相違から,差止請求については,当該支出命令ないし支出が財務会計法規が要請する健全な財政運営に違反する違法なものであるときに限られると解するのが相当である。 そして,本件のように,内閣総理大臣が閣議決定を経てフルプランを決定し,同決定に基づいて建設大臣が事業実施方針を策定してこれを公団に指示し,同指示に基づいて公団が事業実施計画を策定して建設大臣の認可を受け,建設事業者の負担については岐阜県の同意を得た上で,公団が岐阜県に対して本件負担金の納付通知を発したという事案においては,上記納付通知が著しく合理性を欠き,そのためこれに岐阜県の健全な財政運営の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合に本件負担金の支出命令及び支出が違法となる,また,上記納付通知が著しく合理性を欠き,そのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合に被告岐阜県知事及び同岐阜県出納長は本件負担金を支出してはならない義務を負うと解するのが相当である。 (2) 新フルプランの平成12年度までの都市用水増加量予測が現実の増加量に対比して過大であったことは原告ら主張のとおりであるが,水需要予測は多くの不確定要因に左右されざるを得ない性質のもので る。 (2) 新フルプランの平成12年度までの都市用水増加量予測が現実の増加量に対比して過大であったことは原告ら主張のとおりであるが,水需要予測は多くの不確定要因に左右されざるを得ない性質のものである上,将来の長期間にわたってのものであることを考慮すると,今後も徳山ダムの水需要はないと断定することはできないというべきである。また,本件負担金の支出は,岐阜県がなした本件費用負担同意(これが裁量権の範囲を逸脱するものでないことは後記のとおり。)を前提とし,県議会の予算承認議決を得ていることをも考慮すると,上記納付通知が著しく合理性を欠き,そのためこれに岐阜県の健全な財政運営の見地から看過し得ない瑕疵が存するとも,また,予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するとも認められないというべきである。 したがって,原告らの前記主張は採用することができない。 (3) なお,原告らは,事業実施計画は,フルプランによって定められた水資源開発計画の内容(水需要見通し,水源施設とその開発供給量,供給先)を実行するだけであると主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。 5 争点(3)イ(長期需給計画及び同計画に基づく本件費用負担同意の違法性とその承継)について原告らは,岐阜県の長期需給計画における大垣地域の工業用水需要予測は過大で違法であるところ,その違法性が,これに基づいてなされた平成10年同意,本件負担金の納付通知へと承継され,ひいては本件負担金の支出が違法となる旨主張する。 (1) 前記4(1)のとおり,住民訴訟において,当該職員の財務会計上の行為をとらえて地方自治法242条の2第1項4号の規定に基づき損害賠償責任を問うことができるのは,たとえこれに先行する原因行為に違法事由が存在する場合であっても,上記原因行為を前提としてされた当該職員 をとらえて地方自治法242条の2第1項4号の規定に基づき損害賠償責任を問うことができるのは,たとえこれに先行する原因行為に違法事由が存在する場合であっても,上記原因行為を前提としてされた当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られ,この理は,地方自治法242条の2第1項1号の規定に基づく差止請求についても基本的に同様であるが,損害賠償請求と差止請求の性格の相違から,差止請求については,当該支出命令ないし支出が財務会計法規が要請する健全な財政運営に違反する違法なものであるときに限られると解するのが相当である。 そして,本件のように,岐阜県が自ら策定した長期需給計画に基づいて,被告岐阜県知事が平成10年同意をし,その結果,公団から岐阜県に対して本件負担金の納付通知がなされたという事案においては,長期需給計画に合理性がなく,同計画に基づいてなされた平成10年同意が裁量権の範囲を逸脱していると認められる場合に限って本件負担金の支出命令及び支出が違法となり,被告岐阜県知事及び同岐阜県出納長は本件負担金を支出してはならない注意義務を負うものと解するのが相当である。 (2) そこで,長期需給計画の水需要予測の合理性について検討する。 ア水需要予測の際の基本的態度ダム等の水資源開発施設は,その建設計画を進めるに当たり事業者と複数の利水者間で十分な調整を行う必要があり,また,開発の適地が希少で代替性に乏しく,複雑な権利関係を調整して初めて建設が可能となるものであり,計画から完成に至るまで長期間を要することも多いという特徴がある。このため,これらの施設の整備は,一時的な経済の変動や水需要の状況に左右されることなく,長期的な観点に立って立案されるべきものである。 また,ダム等の水資源開発施設の建設は,計画から完成に がある。このため,これらの施設の整備は,一時的な経済の変動や水需要の状況に左右されることなく,長期的な観点に立って立案されるべきものである。 また,ダム等の水資源開発施設の建設は,計画から完成に至るまで長期間を要する上,需要量が恒常的に変化するのに対して,水供給量は水資源開発施設の供用時点で段階的にしか増加せず,次の施設が供用されるまで供給能力の増加が見込めないことになり,その間,需要量が供給能力(確保水量)を上回れば給水制限を実施せざるを得なくなり,県民生活に重大な支障を生じることになる。そこで,需給が逼迫してから整備を行ったのでは,施設が完成するまで工業用水等の安定的な供給が阻害されることとなるから,水資源開発に当たっては,将来の経済,社会の発展にも対応できるよう,長期的な需要想定の下で先行的に開発を進めることが重要である。 なお,経済の動向には変動があるものであり,現時点での水需要の実績値が予測値を下回ることがあるとしても,将来水需要が上昇する可能性を否定することはできない。 イ長期需給計画における大垣地域の工業用水需要予測長期需給計画における大垣地域の工業用水需要予測結果は,前記第2の1(4)エ,別表2のとおりであり,大垣地域の工業用水は,平成22年には63万8000立方メートル/日に増加するというものである。そして,その際に岐阜県が採用した予測方法は,前記第2の1(4)ウ,エのとおりである。 ウ長期需給計画における大垣地域の工業用水(ア) 予測方法の合理性長期水需給計画において,工業用水の需要予測に当たり,計画目標年次における製造業出荷額(製造品出荷額に同じ)と工業用水原単位を基に必要水量を算定する方法を用いているが,乙47によれば,この方法は「建設省河川砂防技術基準(案)同解説計画編」にも記載されている一般 おける製造業出荷額(製造品出荷額に同じ)と工業用水原単位を基に必要水量を算定する方法を用いているが,乙47によれば,この方法は「建設省河川砂防技術基準(案)同解説計画編」にも記載されている一般的な方法と認められる。 なお,長期水需要計画の需要水量予測式は次のとおりである。 需要水量=使用水量原単位×(1-回収率/100)×製造業出荷額(イ) 地域及び業種の分類長期需給計画の予測対象地域は,県内が5ブロック(岐阜,大垣,可茂・益田,東濃,飛騨)に分けられ,製造業の業種は,基礎資材型,加工組立型,生活関連型の3種類に分類されている。この3分類は,日本標準産業分類による中分類項目を採用したもので,国土庁発行「水資源白書」でにおける分類に従ったものであり(乙19),一般的な方法と認められる。 長期需給計画は,前記のとおり,更に業種ごとに在来型,先端型の2種に類別して計6種の下記業種に分類し,需要予測を行ったものである。 基礎資材型(在来型),基礎資材型(先端型)加工組立型(在来型),加工組立型(先端型)生活関連型(在来型),生活関連型(先端型)(ウ) 基礎資料の対象期間使用水量及び製造品出荷額などについて需要予測のために用いた資料は,昭和59年から平成2年までの統計調査結果である。そして,長期需給計画は,平成2年を基準年として平成22年の目標年の水需要量を予測している(乙17,弁論の全趣旨)。 上記の基礎資料の対象期間について,統計データの処理等に必要とされる期間を考慮すると,岐阜県が平成2年までの資料を用いたことは相当というべきであり,平成3年以降の資料を敢えて捨象したという作為を窺わせる事情は認められない。 (エ) 6分類に係る使用水量原単位予測モデル式使用水量原単位とは,単位出荷額当たりの工業製品を作るのに必要となる使用水 平成3年以降の資料を敢えて捨象したという作為を窺わせる事情は認められない。 (エ) 6分類に係る使用水量原単位予測モデル式使用水量原単位とは,単位出荷額当たりの工業製品を作るのに必要となる使用水量である。製造工程の合理化などによって製品を作るのに必要となる水の量は減少していくが,一定量は必要であることから,原単位は,理論上一定値に収束していくと考えられている。 長期水需給計画では,生活関連型(先端型)を除く5分類について,このような性質を表現することのできる時系列式として逆ロジスティック曲線を用いて使用水量原単位の将来予測を行っている(別紙「水需要予測モデル」)。しかし,生活関連型(先端型)においては,基礎資料の対象期間内の使用水量原単位の実績が微増傾向にあり,これについて減少傾向を表現する逆ロジスティック曲線を当てはめることができないことから,上昇傾向を表す時系列式であるベキ曲線を適用して将来予測を行っている。 そして,乙57によれば,逆ロジスティック曲線及びベキ曲線は,いずれも厚生省監修「水道施設設計指針・解説」にも掲載されている一般的な予測式と認められる。 (オ) 逆ロジスティック曲線の飽和値の設定長期需給計画では,逆ロジスティック曲線において,飽和値(下限値)は実績最低の1割減に設定されている。使用水量原単位は製品を作るのに必要な水の量を表すものであり,その性質上限りなく減少するものではなく,一定値に収束すると考えられているところ,上記飽和値は,将来実現可能な値として実績最低の1割減として設定されたものである(甲12,証人g)。 なお,工業出荷額と補給水量の関係については,甲12-図4を見ると,平成元年から平成3年までは工業出荷額の伸びに伴って淡水補給水量も上昇していると認められるから,概ね両者は相関関係にあると認め 。 なお,工業出荷額と補給水量の関係については,甲12-図4を見ると,平成元年から平成3年までは工業出荷額の伸びに伴って淡水補給水量も上昇していると認められるから,概ね両者は相関関係にあると認められる。 (カ) 回収率回収率とは,工場等の使用水量のうち循環利用等により回収利用される水の割合として定義される。回収率は,循環利用施設の規模や回収技術,コストなどの要因により一定程度の値で頭打ちになるもので,この将来動向は上限値を設定することのできる時系列式である修正指数曲線やロジスティック曲線で表すことができる。 どちらの時系列式も式を構成する要素として飽和値(上限値)を設定しなければならないところ,長期需給計画の大垣地域の水需要予測において採用された飽和値は,どの分類型も回収率の実績値(回収水量を使用水量で割って求めた見かけ上の回収率)が全国平均よりも低いことから,将来,回収率は全国平均並みになるとして飽和値(上限値)を設定したものと認められる(弁論の全趣旨)。 なお,岐阜県は,修正指数曲線とロジスティック曲線のどちらの時系列式を採用するかについて,その式への適合度(相関係数)や将来の実現の可能性を検討した結果,基礎資材型(在来型)はロジスティック曲線,加工組立型(在来型)は修正指数曲線を採用し,他方,上記2分類型を除いた4分類型は,回収率の実績値が減少傾向にあり,そのまま時系列式を当てはめて将来動向を予測すれば回収率は減少し続けるものとして予測することとなり,漸増し一定値に収斂していくという回収率の全国動向と相反することとなるため,長期需給計画では,回収率の全国動向を踏まえ,時系列式による予測が適当でないものと判断し,基礎資料の期間の実績最大値が将来も続くとして予測を行なったと認められる(弁論の全趣旨)。 (キ) 地域別業種別の製造業 画では,回収率の全国動向を踏まえ,時系列式による予測が適当でないものと判断し,基礎資料の期間の実績最大値が将来も続くとして予測を行なったと認められる(弁論の全趣旨)。 (キ) 地域別業種別の製造業出荷額長期需給計画においては,まず,目標年次平成22年における県全体の製造業出荷額について,平成元年における全事業所の製造業出荷額の実績をもとに,平成10年までは岐阜県第五次総合計画の第2次産業の伸び率3.57%により,以降平成22年までは国の経済成長率を基に県計画との整合をとった伸び率2.80%によって計画値を予測算出している(別紙の2の2-2「工業出荷額予測モデル」)。そして,次に,目標年次における地域別業種別の製造業出荷額をデータ収集期間の実績データを基に一次予測式により推計し,目標年次における県全体の製造業出荷額に対する地域別業種別製造業出荷額の構成比を算出し,目標年次における地域別業種別の製造業出荷額を,この構成比に先に求めた岐阜県全体の製造業出荷額の予測値を乗じることにより算定している。しかして,このような算定方法は合理的なものと認められる。 エ原告らの主張の検討岐阜県の長期需給計画における水需要予測につき,原告らが不合理であると主張する点について検討する。 (ア) 使用水量原単位について原告らは,使用水量原単位の予測において,その値が一定値に収斂するものでないのに,収斂するものとした点が不合理であると主張する。 しかし,原告らが上記主張の根拠として提出する甲第12号証によっても,平成3年までは実質工業出荷額の増加に伴い淡水使用量原単位は減少し,平成4年以降は実質工業出荷額の増減にかかわらず,淡水使用量原単位はあまり変化しなくなり,50立方メートル/日に収斂していることが読み取れる。 したがって,原告らの上記主張は採用 量原単位は減少し,平成4年以降は実質工業出荷額の増減にかかわらず,淡水使用量原単位はあまり変化しなくなり,50立方メートル/日に収斂していることが読み取れる。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 (イ) 回収率について原告らは,大垣地域の回収率は他地域に比べ著しく低いから,向上の余地があり,これを考慮していない点が不合理であると主張する。 しかし,岐阜県内で比較すれば,平成2年においては,地下水依存度が6.1%と低い可茂・益田地域の回収率が32.1%であるのに対し,地下水依存度が64.5%と高い大垣地域の回収率は32.6%であり,補給水のほとんどをダム開発水などの表流水に依存する可茂・益田地域と大差がない値となっている。このように,大垣地域の回収率が他地域と比べて著しく低いとはいえないから,原告らの上記主張は採用することができない。 (ウ) 小規模零細事業所について原告らは,1人以上の事業所についても予測を行っている点が不合理であると主張する。 しかし,全国の工業用水道事業の料金制度を見ると,責任使用水量制(工業用水道使用者が基本使用水量の全部又は一部を使用しなかった場合であっても,基本使用水量まで使用したものと見なして課金する料金制度)を採っていても,新潟県工業用水道,滋賀県工業用水道のように最低給水量を定めていない工業用水道もあるから(弁論の全趣旨),料金制度の定め方によっては,使用水量の少ない事業者の工業用水道利用が妨げられるものではない。むしろ,水道用水より安価な工業用水を工場で利用することも考えられるところ,小規模零細事業所が多い大垣地域において,仮に工業用水を利用すると予想する事業所規模を30人以上と仮定すると,大半の小規模零細事業所が予測対象から漏れることになりかねない。 したがって,長期需 ろ,小規模零細事業所が多い大垣地域において,仮に工業用水を利用すると予想する事業所規模を30人以上と仮定すると,大半の小規模零細事業所が予測対象から漏れることになりかねない。 したがって,長期需給計画が1人以上の事務所についても水需要予測の対象としたことは不合理とはいえないから,原告らの上記主張は採用することができない。 (エ) 工業出荷額について原告らは,日本経済の構造変化により,将来の工業出荷額はせいぜい横ばいであるところ,大垣地域においては,その中心を占める繊維産業が平成4年以降衰退し,その出荷額が大幅に落ち込んでいるとして,工業出荷額が伸びていくとの予測は誤りであると主張する。 しかし,甲第12号証-13頁・図4を見ても,昭和59年から平成2年の間については実質出荷額は右肩上がりに推移しているし,また,新高速三道が開通すると,西濃地域の交通アクセスの利便性は一段と向上することから企業の集積が進むことが見込まれること(弁論の全趣旨)等の事情からすれば,現在はともかくとして,将来にわたっても工業出荷額の伸びが見込まれないと断定することはできず,その増加を期待することも全く根拠がないわけではなく不合理なものとはいえない。 オ過去の使用実績との比較大垣地域においては,昭和48年から昭和50年にかけて,長期需給計画で予測している平成22年の需要水量63万8000立方メートル/日より多い補給水量を使用していた実績がある。この3年間の使用水量は約80万立方メートル/日であった(甲13の1,乙17-33頁)。 カ以上アないしオを総合すると,岐阜県の長期需給計画には合理性がないとはいえないというべきである。 (3) 平成10年同意の裁量権逸脱の有無ア地盤沈下防止の代替水源確保の必要性西濃地域は地下水が豊富であり,工業用水の地下水 岐阜県の長期需給計画には合理性がないとはいえないというべきである。 (3) 平成10年同意の裁量権逸脱の有無ア地盤沈下防止の代替水源確保の必要性西濃地域は地下水が豊富であり,工業用水の地下水への依存率が高かったところ,過剰な地下水汲上げによって,現在,広範囲に地盤沈下が発生している(乙14,乙15の1~6,乙56)。そして,大垣地域は,濃尾平野地盤沈下防止等対策要綱の観測地域に指定されている。同要綱は,地下水採取による地盤沈下を防止し,あわせて地下水の保全を図るため,地下水採取規制,代替水源の確保及び代替水の供給,節水及び水利用の合理化,地盤沈下による災害の防止又は復旧等に関する事項を定めており,徳山ダムは地盤沈下防止等対策としての代替水源に位置づけられている(甲18,乙14,弁論の全趣旨)。また,大垣地域は,行政と企業から構成される「西濃地区地下水利用対策協議会」において,地下水揚水量の自主規制が行われている(乙56)。 上記認定事実によれば,住民の生活に大きな影響を及ぼす地盤沈下を防ぐためには,地下水の揚水量を抑制すべき必要があり,その代替水源を確保する必要があるということができる。 イ前記のとおり,岐阜県の長期需給計画には合理性がないとはいえないところ,長期需給計画によれば,徳山ダムが建設されなければ,大垣地域においては10万8000立方メートル/日の工業用水が不足することになること,上記アのとおり,大垣地域においては地盤沈下の防止を図るため代替水源を確保する必要があるところ,徳山ダムはその代替水源に位置づけられていること,前記5(2)アに記載したダム建設の特殊性等を総合考慮すると,平成10年同意が裁量権を逸脱しているとは認められない。 (4) 以上(1)ないし(3)によれば,争点(3)イについての原告らの主張は採用す 5(2)アに記載したダム建設の特殊性等を総合考慮すると,平成10年同意が裁量権を逸脱しているとは認められない。 (4) 以上(1)ないし(3)によれば,争点(3)イについての原告らの主張は採用することができない。 6 争点(3)ウ(公団法20条2項所定の費用負担者の同意の有無)について原告らは,公団法29条1項の「水資源開発施設を利用して流水を水道若しくは工業用水道の用に供する者」は工業用水道事業をいい,公団法20条2項の「同意」は工業用水道事業の管理者の同意をいうと解すべきであるから,岐阜県知事が本件費用負担同意をしたからといって,岐阜県が本件負担金の支払義務を負うものではなく,工業用水道事業管理者の同意がない以上,本件負担金の支出は公団法20条2項に違反すると主張するので,以下検討する。 (1) 公団法29条1項の費用負担者について工業用水道事業法3条1項は「地方公共団体は,工業用水道事業を営もうとするときは,その工業用水道施設の設置の工事の開始の日の60日前までに,その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。」と規定していることからすれば,同法は,工業用水道事業の工事開始前の「工業用水道事業を営もうとする者」として,地方公共団体を想定していることが明らかである。 そして,「工業用水道事業を営もうとする者」としての地方公共団体が,通商産業大臣に対して事業届出をし(工業用水道事業法3条1項),その届出をした工業用水道事業について,地方公営企業の業務を執行させるための「管理者」を置き(地方公営企業法7条),その「管理者」が,地方公営企業の業務を執行し,その業務につき当該地方公共団体を代表し(同法8条),地方公営企業の経理は特別会計を設けて行なう(同法17条)という手続となっている。 (2) 公団法20条2項の費用負担の同意者につ の業務を執行し,その業務につき当該地方公共団体を代表し(同法8条),地方公営企業の経理は特別会計を設けて行なう(同法17条)という手続となっている。 (2) 公団法20条2項の費用負担の同意者についてア公団法20条2項は,公団が同条1項に基づき事業実施計画を作成又は変更しようとする場合において,「当該事業実施計画に係る水資源開発施設を利用して流水を水道又は工業用水道の用に供しようとする者」が特定しているときは,あらかじめ,その者の意見を聞くとともに,同法29条1項の規定による同施設の新築又は改築に要する費用の負担についてその者の同意を得なければならないと規定している。 イ上記規定について,原告らは,同規定における費用負担の同意者は,当該水資源開発施設の開発水を利用する工業用水道施設の建設,改良を行う工業用水道事業管理者であって,同事業を行わない岐阜県ではないから,岐阜県が同規定による同意をしたからといって,岐阜県が本件負担金の支払義務を負うものではないと主張する。 ウしかしながら,同規定は,公団法29条1項と同様の趣旨の規定であって,当該水資源開発施設が将来建設された場合に,その建設によって利水面で恩恵を受ける者に同施設の新築費用等を負担させることを前提に,あらかじめその者の同意を得た上で,同施設に係る事業実施計画を作成又は変更することを公団に義務づけた規定であると解される。したがって,公団法20条2項の同意者は,将来水源として工業用水道を利用し,同施設の恩恵を受けようとする者であれば足りるのであり,その同意者が工業用水道事業管理者(地方公営企業法7条)である必要はない。 結局,原告らの前記主張は独自の見解に基づくものであって採用することができない。 (3) 徳山ダムについては,通商産業大臣に対していまだ上記工業用水道事業の 方公営企業法7条)である必要はない。 結局,原告らの前記主張は独自の見解に基づくものであって採用することができない。 (3) 徳山ダムについては,通商産業大臣に対していまだ上記工業用水道事業の届出がなされておらず,同事業の開始前であるから,地方公営企業法の適用はなく,したがって「管理者」も置かれていないから,原告らが主張する「工業用水道事業管理者」の費用負担の同意はそもそも考えられない。 (4) そうすると,公団法20条2項にいう「工業用水道の用に供しようとする者」,同法29条1項にいう「工業用水道事業者」とは,前者は工業用水道事業の開始前,後者は工業用水道事業の開始後を想定しての用語であるという違いがあるが,徳山ダムに関してはいずれも地方公共団体たる岐阜県がこれに該当するものであって,徳山ダムについて,公団法20条2項の「工業用水道の用に供しようとする者」である岐阜県が,本件費用負担同意をした上,公団法29条1項に基づき本件負担金の支出をしているのであるから,岐阜県が本件負担金支払義務を負わない旨の原告らの上記主張は失当である。 7 争点(3)エ(一般会計からの支出が地方財政法6条,地方公営企業法17条の2第2項に違反するか)について(1) 原告らは,本件負担金の支出は,地方公営企業の経費について独立採算の原則を定めた地方財政法6条,地方公営企業法17条の2第2項に違反すると主張するので,以下検討する。 ア地方公営企業としての工業用水道事業の範囲地方公営企業法2条では,法の適用を受ける企業の範囲として水道事業,工業水用水道事業等7事業を定めているが,地方公営企業としての工業用水道事業は工業用水道事業法2条4項にいう工業用水道事業である。すなわち,一般需要に応じ工業用水道(導管により工業用水を供給する施設であって,その供給をする を定めているが,地方公営企業としての工業用水道事業は工業用水道事業法2条4項にいう工業用水道事業である。すなわち,一般需要に応じ工業用水道(導管により工業用水を供給する施設であって,その供給をする者の管理に属するものの総体をいう。)により工業用水(工業の用に供する水〔水力発電の用に供するもの及び人の飲用に適する水として供給するものを除く。〕をいう。)を供給する事業であるとされている(乙13)。 そして,徳山ダムについては,いまだ水源自体の建設段階であって,導管により工業用水を供給する施設が完成に至っておらず,したがって,工業用水の供給も開始されていない。 イ地方公営企業法の適用を受ける時期地方公営企業法の適用を受ける時期は,同法の適用を受ける当該事業を行うことについて行政庁の許認可を要するものにあっては許認可の日,届出を要するものにあっては届出を受理された日と解される(乙13-46頁,建設中の工業用水道事業への法適用時期に関する行政実例でも,地方公営企業法が適用となる時期は,工業用水道事業法3条1項に規定する届出をなした時とされている〔乙12〕)。 したがって,許認可,届出がなされるまでは,たとえその事業を経営する意思があり,そのために建設事業が行われていても当然には同法の規定は適用されないと解するのが相当である。 これを本件についてみると,徳山ダムの水源についてはいまだ建設中であり,工業用水の供給も開始されていないし,岐阜県は通商産業大臣に対して工業用水事業法3条1項に規定する事業届出をしていないから,徳山ダムに係る工業用水道事業についてはいまだ地方公営企業法の適用はないというべきである。 ウ地方財政法との関係地方財政法では「公営企業で政令の定めるものについては,その経理は特別会計を設けてこれを行い」(6条)とされており ついてはいまだ地方公営企業法の適用はないというべきである。 ウ地方財政法との関係地方財政法では「公営企業で政令の定めるものについては,その経理は特別会計を設けてこれを行い」(6条)とされており,政令(施行令12条)で定める公営企業として,水道,工業用水道,交通等の13事業を掲げている。そして,地方公営企業法は,これらの事業のうち水道(簡易水道を除く),工業用水道,交通,電気,ガスの5事業に対して同法を適用すると規定し(地方公営企業法2条1項),これらの事業に対する経営原則は地方公営企業法の定めるところによるから,地方公営企業法の適用のある事業のみが,地方財政法が規定する工業用水道事業に該当するものである。 エまとめ以上のことから,水源施設である徳山ダムについてはいまだ建設中であり導管等の施設完成に至っておらず,工業用水の供給も開始されていない。したがって,岐阜県は通商産業大臣に対して,工業用水道事業法3条1項に規定する事業届出をしておらず,工業用水道事業は開始されていないから,徳山ダムに係る工業用水道事業は,現在地方公営企業法及び地方財政法の適用を受けるものではない。 しかして,工業用水道事業法に基づく事業届出以前に,ダム建設負担金の支出につき特別会計を設けるか一般会計で処理するかは,工業用水道事業を営もうとする者の裁量に委ねられていると解するのが相当であるから,岐阜県が地方公営企業法17条の規定による特別会計を設けないで一般会計から本件負担金を支出しても違法ということはできない。 (2) 一事業一会計の原則について原告らは,岐阜県が岩屋ダムの工業用水道事業について特別会計を設置していることを理由に,本件負担金を一般会計から支出することは一事業一会計の原則に反するとも主張する。 しかし,水道事業等の生産経済活動について, 県が岩屋ダムの工業用水道事業について特別会計を設置していることを理由に,本件負担金を一般会計から支出することは一事業一会計の原則に反するとも主張する。 しかし,水道事業等の生産経済活動について,地方公営企業法が地域住民の福祉の増進を目的として受益者負担の原則に基づき企業会計方式による独立採算制及び特別会計の設置を原則として要請する趣旨は,企業の経営内容及び財政状況を明確に把握するという点にある。そして,地方公営企業の独立採算制及び特別会計の設置は,一般会計との区分を前提に,一般会計において負担すべき経費(公共的要請により受益者負担の原則になじまない経費)を除いた部分についての独立採算制であり,完全な独立採算制はとられていない(地方公営企業法17条の2)。 これらの点に照らすと,一事業一会計の原則とは,地方公共団体の経営する複数の事業(水道事業,工業用水道事業,軌道事業,自動車運送事業等々)の二つ以上の事業を通ずる特別会計を設置して,会計内容及び財政状況を不明確にしてはならないとの要請であると解される。事業の合理的経営や経営内容及び財政状況の明瞭性のために,一事業を必要に応じて細分した事業ごとに別個の会計を設けることは一事業一会計の原則の要請には反しないと解するのが相当である。 本件において,将来,徳山ダムが完成し工業用水道事業の届出をしたとしても,その流域は岩屋ダムと相違しており(乙2-26頁),受益者(購入者)も相違することが明らかである。したがって,徳山ダムの水源費である工業用水道事業開始前の建設負担金を岩屋ダムの特別会計から支出していないことは,一事業一会計の原則に違反しないから,原告らの上記主張は採用することができない。 7 まとめそうすると,争点(4),(5)につき判断するまでもなく,前記却下部分を除く原告らの請求はい ないことは,一事業一会計の原則に違反しないから,原告らの上記主張は採用することができない。 7 まとめそうすると,争点(4),(5)につき判断するまでもなく,前記却下部分を除く原告らの請求はいずれも理由がないことになる。 第5 結論以上の次第で,原告らの被告岐阜県知事及び岐阜県出納長に対する訴えのうち,本件口頭弁論終結時までに支出がされた平成15年3月分以前の支出命令及び支出の差止めを求める部分及び平成43年4月分以後の支出命令及び支出の差止めを求める部分並びに原告らの被告aに対する訴えのうち,平成9年12月分以前に支出された本件負担金相当額についての損害賠償を求める部分は,いずれも不適法であるから却下することとし,その余の請求についてはいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 岐阜地方裁判所民事第2部裁判長裁判官林道春裁判官古閑裕二裁判官今井輝幸
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