平成30年3月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成28年(行ウ)第22号補助金支出差止請求事件口頭弁論終結日平成29年11月28日判決 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,南a西b南西地区第一種市街地再開発事業に係る補助金として公金を 支出してはならない。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,札幌市に居住する原告が,札幌市が南a西b南西地区第一種市街地再開発事業(以下「本件再開発事業」という。)を施行する南a西b南西地区市街地 再開発組合(以下「本件組合」という。)に対して補助金を支出することは,公益上の必要性を欠き,地方自治法(以下「法」という。)232条の2に違反すると主張して,札幌市長である被告に対し,法242条の2第1項1号に基づき,本件組合に対して補助金として公金を支出することの差止めを求める事案である。 2 関係法令の規定等 ⑴ 駐車場法ア都市計画法8条1項1号の商業地域,同号の近隣商業地域,同号の第一種住居地域,同号の第二種住居地域,同号の準住居地域若しくは同号の準工業地域内において自動車交通が著しくふくそうする地区又は当該地区の周辺の地域内において自動車交通が著しくふくそうする地区で,道路の効用を保 持し,円滑な道路交通を確保する必要があると認められる区域については, 都市計画に駐車場整備地区を定めることができる。(3条1項)イ地方公共団体は,駐車場整備地区内又は商業地域内若しくは近隣商業地域内において,延べ面積が2000㎡以上で,条例で定める規模以上の建築物を新築し,延べ面積が当該規模以上の建築物について増築をし,又は建 方公共団体は,駐車場整備地区内又は商業地域内若しくは近隣商業地域内において,延べ面積が2000㎡以上で,条例で定める規模以上の建築物を新築し,延べ面積が当該規模以上の建築物について増築をし,又は建築物の延べ面積が当該規模以上となる増築をしようとする者に対し,条例で,そ の建築物又はその建築物の敷地内に自動車の駐車のための施設(以下「附置駐車施設」ということがある。)を設けなければならない旨を定めることができる。(20条1項前段)⑵ 札幌市建築物における駐車施設の附置等に関する条例(昭和40年札幌市条例第20号。以下「駐車施設条例」という。) ア駐車場整備地区内又は商業地域内若しくは近隣商業地域内において,駐車場法20条1項に規定する特定用途に供する部分の床面積と,非特定用途に供する部分の床面積に4分の3を乗じて得た面積との合計の面積が1500㎡を超える建築物を新築しようとする者は,①百貨店その他の店舗又は事務所の用途に供する部分の床面積を200㎡で除して得た数値,②特定用途 (百貨店その他の店舗及び事務所の用途を除く。)に供する部分の床面積を250㎡で除して得た数値,③非特定用途に供する部分の床面積を400㎡で除して得た数値を合計した数値以上の台数の自動車が駐車することができる駐車場を当該建築物又は当該建築物の敷地内に附置しなければならない。(2条1項本文) イ駐車場整備地区内においては,特定用途に供する部分の床面積が2000㎡を超える建築物を新築しようとする者は,その建築物のうち,①百貨店その他の店舗の用途に供する部分の床面積を6000㎡で除して得た数値,②事務所の用途に供する部分の床面積を8000㎡で除して得た数値,③特定用途(百貨店その他の店舗及び事務所の用途を除く。)に供する部分の床面 用途に供する部分の床面積を6000㎡で除して得た数値,②事務所の用途に供する部分の床面積を8000㎡で除して得た数値,③特定用途(百貨店その他の店舗及び事務所の用途を除く。)に供する部分の床面 積を7000㎡で除して得た数値を合計した数値以上の台数の荷さばきの ための自動車が駐車することができる規模を有する駐車施設を当該建築物又は当該建築物の敷地内に附置しなければならない。(3条1項)ウ上記荷さばき用の駐車施設の駐車台数は,上記アにより附置しなければならない駐車施設の台数に含めることができる。(3条の2)エ建築物の構造又は敷地の状態により,市長が特にやむを得ないと認める場 合において,当該建築物の敷地からおおむね200m以内の場所に所定の規模を有する駐車施設(以下「隔地駐車施設」ということがある。)を設置するときは,当該駐車施設は,当該建築物又は当該建築物の敷地内に附置されたものとみなす。隔地駐車施設を設置しようとする者は,あらかじめ被告の承認を得なければならない。(6条1項,3項前段) オ上記ア,イにより駐車施設を附置しようとする者は,当該建築物及び駐車施設の位置,規模,構造等を被告に届け出なければならない。(5条の3前段)⑶ 札幌市建築物における駐車施設の附置等に関する条例施行規則(昭和40年札幌市規則第57号。以下「駐車施設条例施行規則」という。) 上記⑵オの届出は,駐車施設を附置しようとする建築物に係る建築確認申請等の際にしなければならない。(5条本文)⑷ 札幌市建築物における駐車施設の附置等に関する条例及び同条例施行規則の手引き札幌市は,駐車施設条例所定の特例承認の審査基準を分かりやすくまとめた ものとして,札幌市建築物における駐車施設の附置等に関する条例及び 施設の附置等に関する条例及び同条例施行規則の手引き札幌市は,駐車施設条例所定の特例承認の審査基準を分かりやすくまとめた ものとして,札幌市建築物における駐車施設の附置等に関する条例及び同条例施行規則の手引き(以下「本件手引き」という。)を定めている。本件手引きには,次のとおりの基準が記載されている。 ア以下の場合には,駐車施設条例6条1項に規定する「市長が特にやむを得ないと認める場合」に当たる。 ① 既存建築物に既設の駐車施設を減らさない方法で増築又は駐車施設条 例2条3項に規定する用途変更をする場合で,敷地,建築物の構造上,駐車施設の設置が困難な場合② 敷地の道路に接する間口が狭く,駐車施設又は駐車施設の出入口を設置することが極めて困難な場合③ 駐車施設又は駐車施設の出入口の位置が他の法令に抵触するため,設置 が不可能又は困難である場合④ 駐車施設又は駐車施設の出入口が交通規制のため,通常の利用が不可能又は困難な場合⑤ 都市景観上の観点から,駐車施設又は駐車施設の出入口を設置することが好ましくない場合 ⑥ 敷地と一体に利用できるとみなし得る位置の自己所有地等に駐車施設を設置する場合⑦ 2棟以上の建築物が共同で駐車施設を設置する場合⑧ 大規模建築物で,駐車施設とのバス送迎等,地域の交通混雑・危険の解消等,公共性に寄与する計画で,当該施設の附属又は補完施設とみなし得 る駐車施設を設置する場合(以下「条件8」という。)⑨ 建築物の敷地が駐車場整備地区内にあり,隔地駐車場が原則1か所である場合(以下「条件9」という。)イ条件8又は条件9により隔地駐車施設を設ける場合でも,車椅子利用者のための駐車施設は,当該建築物又は建築物の敷地内に設けなければならない。 則1か所である場合(以下「条件9」という。)イ条件8又は条件9により隔地駐車施設を設ける場合でも,車椅子利用者のための駐車施設は,当該建築物又は建築物の敷地内に設けなければならない。 ウ隔地駐車施設は,駐車施設を附置すべき者が所有又は管理運営に権利を有する駐車施設であること。既存の駐車施設を隔地駐車施設とする場合は,5年以上の賃貸借契約等とし,当該期間後は自動更新とする旨を設定すること。 ⑸ 国土交通省の標準駐車場条例ア国土交通省は,駐車場法の規定に基づき定めるべき条例のひな形として標 準駐車場条例(平成6年1月20日付け建設省都再発第3号建設省都市局長 通達。以下,単に「標準駐車場条例」という。)を定めている。(乙46,弁論の全趣旨)イ国土交通省は,近年の駐車問題に適切に対処するため,平成16年7月2日付けで,標準駐車場条例を改正した。これにより,同条例30条1項は,次のとおり改められた。 改正前第25条から第27条までの規定により駐車施設を附置すべき者が,当該建築物の構造又は敷地の状態から市長がやむを得ないと認める場合において,当該建築物の敷地からおおむね200m以内の場所に駐車施設を設けたときは,当該建築物又は当該建築物の敷地内に駐車施設を附置した ものとみなす。 改正後第25条から第27条までの規定により駐車施設を附置すべき者が,交通の安全及び円滑化又は土地の有効な利用に資するものとして市長の認定を受けて当該建築物の敷地以外の場所に駐車施設を設けたときは,当該 建築物又は当該建築物の敷地内に駐車施設を附置したものとみなす。 3 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実である。 ⑴ 当事者 建築物又は当該建築物の敷地内に駐車施設を附置したものとみなす。 3 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実である。 ⑴ 当事者 ア原告は,札幌市の住民である。(弁論の全趣旨)イ被告は,普通地方公共団体である札幌市の長たる執行機関である。(顕著な事実)⑵ 本件再開発事業及び補助金の支出等ア本件再開発事業は,札幌駅前通と狸小路商店街との交差部に位置する札幌 市中央区南a条西b丁目南街区の西側約0.6haの区域(以下「本件地区」 という。)を施行地区として,既存建物を取り壊し,新規に高さ約122mのビル(以下「本件ビル」という。)を建築するほか,一般市民が自由に通行及び利用することができる広場等を整備することなどを内容とする第一種市街地再開発事業である。本件地区は,駐車場法3条1項の規定に基づく駐車場整備地区内にある。(甲1,乙1,13,弁論の全趣旨) イ札幌市は,平成25年12月6日,本件再開発事業に係る都市計画を決定し,被告は,平成27年11月12日,本件組合の設立を認可した。(甲1,乙1,5,6)ウ札幌市は,本件組合に対し,本件再開発事業に対する補助金(以下「本件補助金」ということがある。)として,総額約64億0170万円を支出する ことを予定しており,平成25年度に1億0780万円を,平成28年度に1億8100万円を,それぞれ支出した。(乙31~34,弁論の全趣旨)⑶ 本件訴訟に至る経緯ア原告は,平成28年3月29日,札幌市監査委員に対し,本件補助金の支出の差止めを求める住民監査請求をしたが,札幌市監査委員は,同年5月2 7日,同請求を棄却し,監査結果を原告に通知した。(争いのない事実)イ 3月29日,札幌市監査委員に対し,本件補助金の支出の差止めを求める住民監査請求をしたが,札幌市監査委員は,同年5月2 7日,同請求を棄却し,監査結果を原告に通知した。(争いのない事実)イ原告は,平成28年6月24日,本件訴えを提起した。(顕著な事実) 4 争点本件補助金の支出が,法232条の2に規定する「公益上必要がある場合」に当たるか 5 争点に対する当事者の主張(原告の主張)⑴ 本件再開発事業に違法性がある場合,そのような違法な事業を推進することが公益上必要であるとは認められないから,法232条の2に規定する「公益上必要がある場合」に当たるとして本件補助金を支出することは,被告の裁量 権の範囲を逸脱又は濫用するものとして違法となる。 そして,本件再開発事業には,以下のとおり,違法性がある。 ア駐車施設設置義務の違反本件地区は,駐車場法3条1項に規定する駐車場整備地区内にあるため,駐車施設条例及び駐車施設条例施行規則(以下,併せて「駐車施設条例等」ということがある。)が適用される。 駐車施設条例2条1項は,建築物の用途ごとに,建築物の床面積に応じた専用駐車施設を敷地内に附置しなければならないと規定している。駐車施設条例等によれば,本件ビルの敷地内に附置しなければならない駐車施設の台数は156台であるのに対し,本件再開発事業において敷地内に附置される予定の駐車施設は53台にとどまっており,本件再開発事業は駐 車施設条例等に違反している。 駐車施設条例6条1項は,建築物の構造又は敷地の状態により「市長が特にやむを得ないと認める場合」で,当該建築物の敷地からおおむね200m以内の場所に所定の隔地駐車施設を設置するときは,当該隔地駐車施設は敷地内に附置されたもの 物の構造又は敷地の状態により「市長が特にやむを得ないと認める場合」で,当該建築物の敷地からおおむね200m以内の場所に所定の隔地駐車施設を設置するときは,当該隔地駐車施設は敷地内に附置されたものとみなしている。そして,被告は,本件再開 発事業は,本件手引きが特例として隔地駐車施設の設置を認める要件のうち,条件8及び条件9に当たると主張する。しかしながら,以下のとおり,本件再開発事業は,「市長が特にやむを得ないと認める場合」には該当しないから,駐車場施設条例6条1項に違反している。 a 隔地駐車施設を認めることが当該建築物の構造又は敷地の状態によ り特にやむを得ないとは認められないこと本件ビルは新築物件となることが予定されているところ,現在の建築技術等からすれば,建物の設計段階で建物内に駐車施設を設置することは十分に可能であり,設置することによる問題も生じない。 したがって,本件再開発事業において隔地駐車施設を認めることが, 当該建築物の構造又は敷地の状態により特にやむを得ないとは認めら れない。 b 条件8に該当しないこと条件8が駐車施設とのバス送迎等をあえて例示していることからすると,条件8にいう「公共性に寄与する計画」とは,文理解釈上,自動車の交通との関係において公共性に寄与する計画であると解されると ころ,歩行者や自転車などの交通事情はこれに含まれない。仮に,歩行者や自転車等の交通事情を含むとしても,隔地駐車施設の設置が地域の交通環境の改善に及ぼす影響については明らかとされていない。 また,隔地駐車施設が条件8にいう「当該施設の附属又は補完施設とみなし得る駐車施設」といえるためには,当該隔地駐車施設が継続的か つ専属的に当該施設の不足部分を補う関係であることが求められる。 また,隔地駐車施設が条件8にいう「当該施設の附属又は補完施設とみなし得る駐車施設」といえるためには,当該隔地駐車施設が継続的か つ専属的に当該施設の不足部分を補う関係であることが求められる。しかしながら,本件ビルにおいて,隔地駐車施設としての使用が予定されている札幌市中央区南c条西d丁目e番地所在のAパーキングビル内にある駐車施設(以下「Aパーキング」という。)は,現在第三者が賃借しており,本件ビルの隔地駐車施設として使用できるか否かが不透明で ある。また,Aパーキングビルが都市再開発法施行令1条の3に規定する耐用年限(以下「耐用年数」という。)を既に経過していることや,将来的に所有者が変更される可能性があることからすれば,Aパーキングを本件ビルの隔地駐車施設として継続して使用することができるか否かも不透明である。さらに,本件ビルに必要な駐車台数のうち,商業用 に必要な駐車台数のほぼ全てをAパーキングに求めることは,明らかに「補完」の域を超えている。したがって,Aパーキングは「附属又は補完施設とみなし得る駐車施設」には当たらない。 c 条件9は駐車施設条例6条1項の趣旨に反していること駐車場整備地区は自動車交通が著しくふくそうする地区であるため, 駐車施設の附置がより厳格に求められるにもかかわらず,条件9は,駐 車場整備地区内にあることを駐車施設の附置を緩和する要素としている点で,駐車施設条例6条1項の趣旨に反している。 また,原則1か所であれば隔地駐車施設を認めるとする条件9を満たすことは余りに容易であるから,条件9は,「市長が特にやむを得ないと認める場合」という駐車施設条例6条1項の文言にも反する。 d 本件ビルに車椅子利用者のための駐車施設を設置する計画になっていないこと本件 あるから,条件9は,「市長が特にやむを得ないと認める場合」という駐車施設条例6条1項の文言にも反する。 d 本件ビルに車椅子利用者のための駐車施設を設置する計画になっていないこと本件手引きは,建築物の敷地内に車椅子利用者のための駐車施設を設けることを義務付けているところ,かかる趣旨は,乗用車を利用せざるを得ない車椅子利用者が当該施設を安全に利用できるようにすること にある。 しかしながら,本件再開発事業においては,車椅子利用者の駐車施設と荷さばき用駐車施設はごく近い場所に設置されることが予定されており,車椅子利用者と搬入業者の接触事故が起こる危険性が高く,本件手引きの趣旨に反する。 したがって,本件事業計画においては,本件手引きが要求している車椅子利用者のための駐車施設の設置が予定されているとはいえない。 イ保留床の処分方法の違反都市再開発法108条1項は,保留床の賃貸又は譲渡について,原則として公募によることを要求しているところ,本件再開発事業においては,公募 によることなくB銀行に本件ビルの保留床を利用させることを予定しており,都市再開発法108条1項に違反する。 ウ大規模小売店舗立地法違反大規模小売店舗立地法(以下「大店法」という。)により,本件ビルに必要とされる駐車施設の台数は最低173台である。 この駐車施設は現実に店舗のために整備している駐車施設でなければな らないところ,本件ビル内の駐車施設のうち54台はこれに該当しない。仮にAパーキングを隔地駐車施設とすることが許されるとしても,本件ビルには現実に店舗のために整備している駐車施設は合計で126台しかなく,大店法に違反する。 ⑵ 仮に,本件再開発事業が違法でも直ちには本件補助金の支出が裁量権の逸 することが許されるとしても,本件ビルには現実に店舗のために整備している駐車施設は合計で126台しかなく,大店法に違反する。 ⑵ 仮に,本件再開発事業が違法でも直ちには本件補助金の支出が裁量権の逸脱 又は濫用に当たらないと解したとしても,上記のとおりの本件再開発事業の違法性に加え,以下の事情を考慮すると,法232条の2に規定する「公益上必要がある場合」に当たるとして本件補助金を支出することは,裁量権の範囲を逸脱し又は濫用するものとして違法である。 ア経済性の原則 本件地区は,札幌市の中心部において狸小路の一部を構成する場所であり,現状においても極めて多数の利用者の集客に成功しているが,本件再開発事業によって現在以上の集客能力を有するようになるか否かは明らかではない。 また,本件再開発事業で設置が予定されている公共施設は公共駐輪場のみ である。札幌市の気候からすれば,当該施設は降雪のある季節には利用が見込まれない上,本件地区付近において放置自転車等が問題となっているといった事情もない。加えて,当該公共駐輪場は,保留床を札幌市が買い取って設置するものであり,保留床取得費用まで支出することを併せ考えれば,支出に見合う公益性はない。 このほか,本件再開発事業がどのように公共の利益に資することになるのかについて,具体的な検証内容は明らかにされていない。 以上によれば,本件再開発事業においては,多額の補助金が支出されるにもかかわらず,同事業によって確実に実現される主たる公共施設は,公共に対する効果の小さい公共駐輪場のみであるから,本件補助金の支出は明らか に過大である。 イ本件再開発事業の採算性の悪化札幌市は,「札幌市公共事業【国土交通省関連補助事業及び交付金事業】再評価実施 輪場のみであるから,本件補助金の支出は明らか に過大である。 イ本件再開発事業の採算性の悪化札幌市は,「札幌市公共事業【国土交通省関連補助事業及び交付金事業】再評価実施要領」(以下「再評価実施要領」という。)に従い,国が費用の一部を補助する市街地再開発事業のうち,社会経済情勢の急激な変化,技術革新等により再評価の実施の必要性が生じた事業については,事業継続に関して 見直しを行い,場合によっては中止することも検討すべき責務を負っている。 しかしながら,札幌市は,東日本大震災発生後,建築費が高騰し続けていたことから本件再開発事業の見直しを検討すべきであったにもかかわらず,漫然と本件補助金の予算額を増額した。 その結果,本件再開発事業は,計画当初と比べると,計画内容に大きな変 化がないにもかかわらず,本件再開発事業に係る予定総事業費及び総補助金額は毎年度増額され,補助割合も大きく高まっており,もはや当初計画していた事業との同一性が認められないレベルに達している。 このように,実質的な理由なく増額された本件補助金の支出は,不当である。 ウ説明責任が果たされていないこと被告には,本件組合に対して具体的な事業計画の策定を求めるとともに,これに基づき議会に対して多額の公金を投入する理由について合理的な説明をすべき義務があるが,かかる義務は果たされていない。 また,本件再開発事業に係る予定総事業費及び総補助金額は,毎年度増額 され,補助割合も大きく高まっており,もはや当初計画していた事業との同一性が認められないレベルに達しているのであるから,被告は,補助金額及び補助割合を高騰させてでも本件再開発事業に現時点で着手する理由について合理的な説明を積極的に行う必要があるが,かかる観点からの説 一性が認められないレベルに達しているのであるから,被告は,補助金額及び補助割合を高騰させてでも本件再開発事業に現時点で着手する理由について合理的な説明を積極的に行う必要があるが,かかる観点からの説明はされていない。 エ他の再開発事業と比べて,本件再開発事業の補助金負担割合が突出して高 いこと再開発事業における札幌市の補助金の負担割合は,北f条西g丁目の再開発事業及び北h条東i丁目の再開発事業においてはそれぞれ17.6%,14.7%であるのに対し,本件再開発事業においては26.6%に及んでいるが,本件再開発事業に対して突出して高い割合の補助金を支出しなければ ならない合理的理由はない。 オ都市計画法21条1項違反都市計画法21条1項は,都市計画を定めた際に基本とした重要な基礎的事実に変更があった場合には,その計画を遅滞なく変更しなければならないことを定めているところ,本件再開発事業においては,東日本大震災発生後 の建築費の高騰により,補助金を大幅に増加させなければ再開発事業が成り立たない状況となったのであるから,都市計画決定を変更する必要性を審理しなければならなかった。そうであるにもかかわらず,札幌市は,審理はおろか,その基礎となる再評価すら行っていない。したがって,本件再開発事業の前提となる都市計画決定は,都市計画法21条1項に違反しており,本 件再開発事業も違法となる。 カ都市再開発法17条4号違反都市再開発法17条4号によれば,再開発組合の設立認可に当たっては,再開発組合に第一種市街地再開発事業を遂行するために必要な経済的基礎が認められることが必要であるところ,本件組合は,情勢の変化により,補 助金が増額されなければ事業を維持できない状態にあったのであるから,こ 種市街地再開発事業を遂行するために必要な経済的基礎が認められることが必要であるところ,本件組合は,情勢の変化により,補 助金が増額されなければ事業を維持できない状態にあったのであるから,この要件を満たさなくなったことは明らかである。したがって,本件組合の設立認可に関して再度審理を行うことが必要であったことは明らかであるにもかかわらず,札幌市は,これを行っていないのであるから,本件再開発事業は違法である。 (被告の主張) ⑴ 本件再開発事業に違法な点は存在しない。したがって,法232条の2に規定する「公益上必要がある場合」に当たるとして,本件組合に対して本件補助金を支出することは適法である。 ア駐車施設設置義務の違反について駐車施設条例5条の3の規定による届出は,駐車施設を附置しようとす る建築物に係る建築確認申請の際に行うこととされ,また,当該届出の内容が駐車施設条例等に適合するか否かは当該届出がされた時点で被告において確認することとされている。ところが,本件ビルについては建築確認申請もされていないことから当該届出もされておらず,現時点において本件ビルが駐車施設条例等に適合するか否かを確定的に判断することは できない。したがって,本件ビルが駐車施設条例等に違反するとはいえない。 現時点における本件ビルの予定設計によれば,本件ビルに設置が義務付けられる駐車施設の台数は156台(そのうち,荷さばき用駐車施設は4台)であるところ,本件再開発事業では,商業業務用120台,共同住宅 用48台,荷さばき用5台及び車椅子利用者用1台の合計174台の駐車施設を,敷地内に54台分,隔地駐車施設に120台分設ける計画である。 本件地区は,車道と接する部分が札幌駅前通と南a条線の2つのみである 荷さばき用5台及び車椅子利用者用1台の合計174台の駐車施設を,敷地内に54台分,隔地駐車施設に120台分設ける計画である。 本件地区は,車道と接する部分が札幌駅前通と南a条線の2つのみであるところ,札幌駅前通には市電の路線が整備されており,駐車施設の出入口を設けると大きな交通混雑を生み出すおそれが高いことから,車両出入 口を配置できるのは南a条線側のみとなる。本件ビル内に全ての駐車台数を組み込んだ場合,計3か所の車両出入口を南a条線側に作る必要があり,その結果,歩行者動線が過度に分断され歩行者の安全性が損なわれることになるほか,入庫待ち車両によって南a条線の渋滞を招くおそれがある。 このような本件ビルの敷地の状態からすれば,隔地駐車施設を設置するこ とが「特にやむを得ないと認める場合」に当たる。 本件再開発事業は,歩道沿い空地の確保や公共駐輪場の設置によって安全な歩行者動線の確保や路上放置自転車の減少が見込まれることから,公共性に寄与する計画であると評価できる。また,本件再開発事業で整備される荷さばき用駐車施設は,本件再開発事業により建築される本件ビル内の店舗以外の地下街の店舗も共同で利用できる構造となっているほか,駐 車施設条例の求める荷さばき用の駐車台数よりも多い台数を確保することによって都心における路上荷さばきの減少も期待できるため,公共性に寄与するものといえる。さらに,隔地駐車施設を確保することにより,車両がそれぞれの駐車施設に分散することから,商業業務用の駐車施設を敷地内に設けた場合よりも近隣の自動車等の交通の混雑の解消や歩行者・自 動車等の危険の減少に寄与するものといえる。 以上によれば,本件再開発事業は条件8を満たす。 本件ビルの敷地は駐車場整備地区内にあり,予定している隔 動車等の交通の混雑の解消や歩行者・自 動車等の危険の減少に寄与するものといえる。 以上によれば,本件再開発事業は条件8を満たす。 本件ビルの敷地は駐車場整備地区内にあり,予定している隔地駐車施設はAパーキング1か所であるから,条件9を満たす。また,条件9は,「敷地が狭小であるため駐車場を敷地内に設けると建築計画が立てにくい」, 「駐車場の出入口によって歩道が分断され,歩行環境が悪化する」といった,駐車場整備地区内における駐車施設の課題を踏まえて,適切に設定されたものであり,駐車施設条例6条1項の趣旨に反しているとはいえない。 車椅子利用者のための駐車施設を含めた本件ビルの敷地内部の配置計画は,都市再開発法72条1項の規定に基づく権利変換計画の認可まで確 定せず,暫定的なものではあるものの,現在予定されている車椅子利用者のための駐車施設の場所は,荷さばき用駐車施設を横切る必要のない場所であり,車椅子利用者に危険はない。したがって,本件ビルには,本件手引きが要求している車椅子利用者のための駐車施設の設置が予定されているといえる。 本件組合は,Aパーキングの所有者から,本件ビル竣工後の5年間,A パーキングを本件ビルの隔地駐車施設として利用すること,更新時期までに双方から解除の申出がない場合は同一の条件で5年間契約が自動更新されることを内容とする使用承諾書の交付を受けている。 イ保留床の処分方法の違反について現時点において,本件ビルの保留床の処分方法や利用者自体何ら確定し ていないのであるから,確定していない保留床の処分方法や利用者について適法か違法かを論じることには意味がない。 都市再開発法108条1項2号の規定による,従前の土地・建物所有者の営業に必要な床面積を確保する あるから,確定していない保留床の処分方法や利用者について適法か違法かを論じることには意味がない。 都市再開発法108条1項2号の規定による,従前の土地・建物所有者の営業に必要な床面積を確保するための保留床の特定分譲は,再開発事業の中で広く一般的に行われており,本件再開発事業における今後の権利変 換計画の決定・認可の時点において,仮に原告の主張どおりにB銀行に保留床を利用させたとしても,何ら違法ではない。 ウ大店法違反について大規模小売店舗を設置する者が配慮すべき事項に関する指針(平成19年経済産業省告示第16号)によれば,本件ビルに設置することが必要な駐車 施設の台数は101台であるところ,本件ビルにおいては,合計174台の駐車場を設けることとされているから,共同住宅用の48台分を除いたとしても,上記指針が定める必要駐車台数を満たしている。 ⑵ 法232条の2に基づく補助金は,客観的にみて公益上必要がある場合において,地方公共団体の裁量により支出することができるものであり,地方公共 団体は,補助金支出の目的及び効果,政策の優先順位,地方公共団体の財政事情等を総合的に勘案し,その合理的な裁量判断に基づいて,補助金を支出することが許されるものである。 したがって,仮に,本件再開発事業に法令に抵触する点があったとしても,それが比較的軽微なものであって再開発事業全体が違法と評価されるに至ら ない場合には,公益上の必要性に影響を与えるものではない。 そして,以下の事情に照らせば,被告の判断に裁量権の逸脱又は濫用は存在しない。 ア本件再開発事業の公益性本件再開発事業は,①複合機能の導入と都市機能の更新,②拠点的な交流空間の創出,③重層的な歩行者空間ネットワークの形成,④交通環境の改善 又は濫用は存在しない。 ア本件再開発事業の公益性本件再開発事業は,①複合機能の導入と都市機能の更新,②拠点的な交流空間の創出,③重層的な歩行者空間ネットワークの形成,④交通環境の改善 の4つの整備方針を基に,老朽化した7棟のビルを共同化して新たに本件ビルを建設し,都市商業の中心地にふさわしい土地の高度利用を図るとともに,ループ化された路面電車,地下街ポールタウン,狸小路商店街などと地上・地下で重層的に連携したにぎわい空間を創出し,商業地としての活性化を図ろうとするものであり,事業目的及び事業内容において高い公益性を有する。 機能性及び防災性の向上本件地区内の建物の約半分が昭和55年政令第196号による改正前の建築基準法施行令により適用されていた耐震基準(以下「旧耐震基準」といい,同改正後の建築基準法施行令により適用されていた耐震基準を「新耐震基準」という。)の下において建築された建物であり,さらに,そ のほとんどが耐用年数の3分の2を経過して老朽化が著しくなっている。 本件再開発事業を実施することで,これらの建物が,新耐震基準に適合する耐火建築物であり,かつ災害時における避難路等としても配慮がされた本件ビルに建て替わることとなり,機能性及び防災性が向上する。 良好な景観の創出 現在の本件地区内の建物は老朽化が著しく,特段景観に配慮されたものでもないが,本件ビルは,低層部は高さを周辺の建物の高さに揃え,高層部は建物の配置をセットバックさせて圧迫感の低減を図るなど,札幌の街並みに配慮した景観形成を図ることとしている。また,遠景,中景及び近景のそれぞれからの景観にも配慮がされているのであって,良好な景観が 作出される。 にぎわいや憩いの空間の整備本件再開発事業によ 図ることとしている。また,遠景,中景及び近景のそれぞれからの景観にも配慮がされているのであって,良好な景観が 作出される。 にぎわいや憩いの空間の整備本件再開発事業により,地上と地下街の移動に係る利便性が向上するとともに,狸小路内の歩行者動線がより円滑になる。また,多目的広場の整備による新たな回遊性・交流拠点の形成,集客力の高い商業施設の整備による集客力の増加,路面電車のループ化に対応した滞留空間の整備等によ って,本件地区のにぎわいが向上する。 公共駐輪場の設置本件再開発事業によって設置される予定である公共駐輪場は,本件地区における路上放置自転車の問題の解消に資する。 イ本件補助金の額が適正であること 本件補助金の支出は,札幌市市街地再開発事業補助金交付要綱(以下「札幌市要綱」という。)の規定に適合する範囲内でされるものであり,適法である。 再開発事業における資金計画は,計画の初期段階においては事業遂行上の不確定要素が多く,全ての事業費を確定させることは困難であって,そ の後,計画・設計業務が行われることによって事業に要する費用が明確となり,最終的には事業終了までの具体的な資金計画が固められ,組合設立時に確定されるものであるから,当初の資金計画から金額が変更されるのは当然である。また,東日本大震災発生後の建築工事費の高騰も,本件補助金の額が増加する原因となった。したがって,本件補助金の額が増加し た経緯について,何ら不合理な点はない。 ウ事業の再評価について再評価実施要領は,社会経済情勢の急激な変化や技術革新等により再評価の実施の必要性がある場合に再評価を要求している。ところが,東日本大震災発生後の建築費高騰は,本件再開発事業に限られるものではなく一般 評価実施要領は,社会経済情勢の急激な変化や技術革新等により再評価の実施の必要性がある場合に再評価を要求している。ところが,東日本大震災発生後の建築費高騰は,本件再開発事業に限られるものではなく一般的に 起こり得ることであり,本件再開発事業自体の必要性を失わせるような社会 経済情勢の変化等があったとは認められない。また,工事費の増加によって本件再開発事業の継続が不可能となるなどの事情もない。そうすると,再評価実施要領が定める再評価が必要な場合には該当しない。 エ被告の議会及び市民に対する説明責任被告は,都市計画決定,本件組合の設立,「札幌市まちづくり戦略ビジョ ン・アクションプラン2015」の策定,本件再開発事業に係る補助金が計上された予算案の審議等の各段階において,意見の募集,必要となる説明,決定事項の公表等を適切に行い,必要な説明責任を果たしている。 オ他の市街地再開発事業との比較について再開発事業ごとに採算性は異なるものであるから,本件再開発事業の補助 率が高いからといって一概に公平性を欠くとはいえない。 カ都市計画法21条1項違反には当たらないこと都市計画法21条1項所定の都市計画の変更が必要となる事由は,いずれも都市計画に定めるべき事項について変更が必要となるような場合であるところ,都市計画に定めるべき事項の中に,都市再開発事業に対する補助金 の支出予定額や収支計画は含まれない。したがって,都市計画法21条1項違反には当たらない。 キ都市再開発法17条4号違反には当たらないこと被告は,本件補助金の額が約64億円となることを予定して本件組合の設立を認可したのであり,情勢の変化により,本件組合が都市再開発法17条 4号に定める認可の要件を欠くに至ったわけではない 被告は,本件補助金の額が約64億円となることを予定して本件組合の設立を認可したのであり,情勢の変化により,本件組合が都市再開発法17条 4号に定める認可の要件を欠くに至ったわけではない。したがって,都市再開発法17条4号違反には当たらない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実のほか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認 められる。 ⑴ 本件地区及びその周辺の状況ア本件地区は,西側は札幌駅前通に,南側は狸小路商店街に,北側は南a条線にそれぞれ面している。(甲38,乙1,弁論の全趣旨)イ札幌駅前通は,JR札幌駅からすすきの方面へと南北に延びる幹線道路であり,本件地区付近の道路の両端には路面電車(市電)の軌道が敷設されて いる。また,狸小路商店街は,札幌市の中心部において東西約1km にわたって新旧約200の店舗が軒を連ねる,活気あふれる商店街であり,歩行者専用道路となっている。(甲18の1~4,甲19の1~5,甲23,24,弁論の全趣旨)ウ本件地区内の建物は,建築基準法2条9号の2に規定する耐火建築物及び 同条9号の3に規定する準耐火建築物が多いものの,その半分程度が旧耐震基準の下で建築された建物であり,また,平成25年9月時点で,そのほとんどが耐用年数の3分の2以上を経過していた。(乙2,28,弁論の全趣旨)エ札幌市が都心部における駐輪の実態を調査した結果によれば,本件地区を 含む大通公園以南は,平成27年10月23日時点で,午後3時台に5674台の自転車の乗り入れがあったのに対し,駐輪容量は825台にとどまり,4603台の路上放置自転車が存在していた。(乙19)オ札幌市が平成24年8月1日から同月22日にかけて,18歳以上の市民 4台の自転車の乗り入れがあったのに対し,駐輪容量は825台にとどまり,4603台の路上放置自転車が存在していた。(乙19)オ札幌市が平成24年8月1日から同月22日にかけて,18歳以上の市民男女1500人に無作為抽出の方法で行った世論調査の結果によれば,都心 部において多くの放置自転車が存在することについて,40.1%が「非常に歩きにくく危険である」,24.8%が「景観を著しく損なっている」と回答しており,「特に問題ない」との回答は1.7%,「好ましくはないが仕方がない」との回答は19.7%にとどまった。また,放置自転車をなくすための対策としては,「駐輪場を整備する」との回答が46.6%と最も多かっ た。(乙20) カ本件地区は,地下街「ポールタウン」に接しているが,同地下街には本件地区の地上部と直結するエレベーターが設置されていないため,同地下街からエレベーターを利用して地上に出るには,地下鉄大通駅又はすすきの駅のコンコース内に設置されたエレベーター等を利用する必要がある。(乙28,弁論の全趣旨) キ株式会社Cが平成29年4月9日及び同月10日に行った南a条線の交通量調査の結果によれば,本件ビルにおける来店車両及び退店車両の各右折車両台数はいずれも可能最大交通容量を下回っており,交通容量には余裕がみられる状態であった。(甲27)⑵ 本件再開発事業の経緯 ア札幌市は,平成14年,「都心まちづくり計画」を策定した。同計画では,本件地区を含む一帯は都心商業エリアとして位置付けられ,街づくりの目標として,「豊かで多面的な時間消費を支える商業地の形成」,「商業と多様な都心居住を主体とする複合機能を有する市街地の形成」,「各商店街の特徴付けによる回遊性の向上」が掲げられた。(乙3) の目標として,「豊かで多面的な時間消費を支える商業地の形成」,「商業と多様な都心居住を主体とする複合機能を有する市街地の形成」,「各商店街の特徴付けによる回遊性の向上」が掲げられた。(乙3) イ札幌市は,平成23年,「さっぽろ都心まちづくり戦略」を策定した。同戦略は「都心まちづくり計画」を補完するものとして策定され,その中で,本件地区を含む一帯は「大通地区」に位置付けられ,街づくりの目標として,回遊や交流を支える交流空間の形成と変化に富んだ奥行きのある身近な公共空間の創出,人を中心とした安全・快適な回遊ネットワークの形成,地下 空間の拡充と回遊を生み出す活用の促進などが掲げられた。(乙4,弁論の全趣旨)ウ平成24年8月,南a西b南西地区市街地再開発準備組合(以下「本件準備組合」という。)が設立された。(甲2,38,弁論の全趣旨)エ本件準備組合は,平成25年9月,札幌市に対し,本件再開発事業の企画 提案書を提出した。(乙28,37) オ札幌市は,平成25年12月6日,本件再開発事業に係る都市計画決定を行い,その旨を告示した。(乙1,5)カ本件準備組合は,上記都市計画決定に基づき,事業計画を策定し,平成27年10月6日,札幌市に対し,市街地再開発組合設立認可申請書を提出した。被告は,同年11月12日,都市再開発法11条1項及び同法137条 に基づき,本件組合の設立を認可した。(甲1,乙1,2,6,弁論の全趣旨)キ札幌市は,平成27年12月,「札幌市まちづくり戦略ビジョン・アクションプラン2015」(以下「アクションプラン」という。)を策定した。アクションプランをまとめた冊子には,本件再開発事業の補助金額は62億9300万円であると記載されていた。(乙25,弁論の全趣旨) ラン2015」(以下「アクションプラン」という。)を策定した。アクションプランをまとめた冊子には,本件再開発事業の補助金額は62億9300万円であると記載されていた。(乙25,弁論の全趣旨) ⑶ 本件再開発事業の概要本件再開発事業の企画提案書(乙28),事業計画書(甲1)等によれば,現時点における本件再開発事業の概要は,次のとおりである。 ア事業の目的(乙28)複合機能の導入と都市機能の更新 豊かで多面的な時間消費を支える商業地の形成や既成市街地の都市機能の更新,充実を図るとともに,都心居住ニーズに対応するため,商業・業務と都心居住を主体とする複合機能を導入する。また,建築物の低層階に集客力の高い商業施設を配置することにより,にぎわいを創出する。 拠点的な交流空間の創出 札幌駅前通と狸小路商店街が交差する回遊動線の一角に,多様な交流や活動に資する地上広場及び地下広場を一体的に整備するとともに,緑豊かな滞留空間として屋上広場を整備し,新たな回遊,交流の創出を図る。また,路面電車の路線のループ化により新たに整備される停留場と一体となったにぎわい・滞留空間を創出する。さらに,歩行者の増加に対応するた め,歩道に面して空地を整備し,地下街出入口の施設内への取り込みと併 せて,地区周辺の回遊性の向上を図る。 重層的な歩行者空間ネットワークの形成地上と地下の一体的な空間整備を行うことで,地上と地下のアクセス性の向上と重層的移動の円滑化を図る。また,地下街接続部に近接した位置にエレベーターを設置し,車椅子利用者等にも対応した安全で快適な歩行 者動線を確保する。 都心部の交通環境の改善地下街出入口を本件地区内に取り込むことにより,狸小路商店街の円滑な歩行者動線を確保 ターを設置し,車椅子利用者等にも対応した安全で快適な歩行 者動線を確保する。 都心部の交通環境の改善地下街出入口を本件地区内に取り込むことにより,狸小路商店街の円滑な歩行者動線を確保する。また,公共駐輪場を施設内の利便性の高いフロアに整備することにより,都心部の歩行環境や自転車利用環境の改善を図 り,人を中心とした安全で快適な回遊ネットワークの形成を図る。 イ本件ビルの概要本件ビルの設計の概要a 設計方針(甲1,乙28)敷地中央に高層住宅を配置するとともに,低層部は高さを周辺の建物 の高さに揃え,札幌駅前通の連続性に配慮し,高層部はセットバックにより圧迫感の低減を図り,都心にふさわしい商業・業務・公益等の機能を複合的に配置する。また,狸小路商店街からの連続性に配慮し,狸小路商店街に面する南側のエリアには路面店やショーウインドウを配置する。さらに,沿道や角地部分を歩行空間や広場等のオープンスペース として整備することで施設内外の交流機能を充実・強化する。加えて,地下街入口を敷地内に取り込み,地上と地下の一体的な空間整備をすることで,歩行者空間の重層的なネットワーク形成を図る。 b 構造等(甲1,乙1,29)⒜ 構造鉄骨造,鉄筋コンクリート造,鉄骨鉄筋コンクリート 造 ⒝ 規模地上28階,地下2階⒞ 高さ約122m⒟ 駐車台数住宅用約48台,荷さばき用約5台,車椅子用約1台(1階),商業・業務用約120台(敷地外)⒠ 駐輪台数商業・業務用約115台,住宅用約154台,公共用約 750台⒡ 延床面積商業施設約2万0829㎡,業務施設約2091㎡,共同住宅約1万9165㎡,公共駐輪場約805㎡,合計約4万2890㎡本件ビル敷地の 住宅用約154台,公共用約 750台⒡ 延床面積商業施設約2万0829㎡,業務施設約2091㎡,共同住宅約1万9165㎡,公共駐輪場約805㎡,合計約4万2890㎡本件ビル敷地の設計の概要 低層部は札幌駅前通に対し,壁面を4m後退させ,歩道状空地を計画し,路面電車等の停留場や隣接する歩道のにぎわいと一体となった計画を目指す。北側の南a条線側についても,安全等に配慮して,2mセットバックさせた計画とする。高層棟については,できる限り札幌駅前通側への圧迫感が少なくなるように,東寄りの配置とし,北側や南側の隣接建物に対 しても等距離となるようにする。本件ビルの公開空地については,地下2階,地上1階に広場を計画し,互いににぎわいがつながるような計画とするとともに,地上7階にも屋上広場を計画することで,施設の各エリアにおいて市民が憩いの場とできるような場を設ける。(甲1)⑷ 本件補助金について ア札幌市要綱被告は,札幌市要綱3条により,市の予算の範囲内で,第一種市街地再開発事業の施行者に対し,所定の費用の合計額の3分の2以内で,事業等の内容,緊急度等を勘案した額を補助することができるとされている。(乙7)補助の対象となるべき適用要件,経費の範囲及び限度額については,市街 地再開発事業に係る国の補助金の支出等について定めた昭和62年5月2 0日建設省住宅局長通知「市街地再開発事業等補助要領」(建設省住街発第47号。以下「国要領」という。)に準ずることとされている。また,国土交通省は,平成22年3月26日に「社会資本整備総合交付金交付要綱」(以下「国要綱」という。)が制定されたことに伴い,これまで国要領に規定されていた補助の対象の範囲が国要綱にも同様に規定されたため,札幌市に ,平成22年3月26日に「社会資本整備総合交付金交付要綱」(以下「国要綱」という。)が制定されたことに伴い,これまで国要領に規定されていた補助の対象の範囲が国要綱にも同様に規定されたため,札幌市において も,補助の対象となる費用の範囲については,国要領のみでなく,国要綱にも準じることとしている。(乙8,10の1~3,弁論の全趣旨)イ本件再開発事業は,社会資本整備総合交付金の交付対象に当たるため,国要綱に基づき,国から札幌市に対して交付金が交付される。国要綱によれば,交付金の上限額は,札幌市が本件組合に補助する費用の2分の1又は調査設 計計画費,土地整備費及び共同施設整備費の合計の3分の1のいずれか低い額とされている。 また,札幌市による補助の対象となる費用の範囲は,国要領及び国要綱に準じているため,調査設計計画費,土地整備費及び共同施設整備費が,札幌市による補助の対象となる。(以上につき乙10の3,弁論の全趣旨) ウ補助金増額の経緯札幌市は,平成25年2月,本件再開発事業の予定総事業費を約153億円,総補助金額(国と札幌市の負担額合計。以下同じ。)を約23億円と想定した。しかしながら,その後,建築費の高騰により,平成26年1月には,本件再開発事業の予定総事業費を約170億円,総補助金額を約2 6億円と想定し,平成27年6月には,本件再開発事業の予定総事業費を約240億円,総補助金額を64億円と想定するに至った。(甲13,乙21~23,弁論の全趣旨)また,本件組合の設立が認可された平成27年11月時点では,本件再開発事業の予定総事業費は237億0600万円,総補助金額は64億0 170万円と見込まれており,そのうち32億0085万円については国 から札幌市への交付金が充 月時点では,本件再開発事業の予定総事業費は237億0600万円,総補助金額は64億0 170万円と見込まれており,そのうち32億0085万円については国 から札幌市への交付金が充てられる予定である。(甲1,前提事実⑵ウ)札幌市が作成した本件再開発事業に関する平成26年度及び平成27年度の各事業評価調書には,本件再開発事業の課題として,建築工事費高騰の影響により事業採算性が悪化しているため,事業収支の改善に向けた取組が必要であると記載されている。(甲14,15) ⑸ 本件ビルの隔地駐車施設ア Aパーキングは,札幌市中央区南c条西d丁目e番地に所在する,いわゆる立体駐車場であり,本件ビルの敷地からおおむね200m以内の場所に位置している。(甲29,30,弁論の全趣旨)イ本件準備組合は,平成24年7月23日付けで,当時Aパーキングビルを 所有していた株式会社Dから,本件ビル竣工後にAパーキングを本件ビルの隔地駐車施設として使用することを承諾する旨の使用承諾書の交付を受けた。(甲28,乙17)ウ株式会社Dは,平成29年2月27日,株式会社DビルにAパーキングビルを譲渡した。(甲28) 本件組合は,平成29年6月19日付けで,株式会社Dビルから,Aパーキングを本件ビルの隔地駐車施設として使用することを承諾する旨の使用承諾書の交付を受けた。同承諾書には,使用期間は本件ビル竣工後5年とし,更新時期までに双方から解除の申出がない場合は更に同一の条件で5年間更新されるとの条件が記載されていた。(乙44) エ駐車施設条例等によれば,本件ビルに附置すべき駐車施設の台数は156台(うち4台は荷さばき用)である。現時点では,本件ビルには174台分の駐車施設が用意される計画となっており,う 4) エ駐車施設条例等によれば,本件ビルに附置すべき駐車施設の台数は156台(うち4台は荷さばき用)である。現時点では,本件ビルには174台分の駐車施設が用意される計画となっており,うち54台分(共同住宅用48台,荷さばき用5台,車椅子利用者用1台)は敷地内に駐車施設を設置し,うち120台分はAパーキングを利用することが計画されている。(甲1, 弁論の全趣旨) 2 検討⑴ 基本的な考え方ア法232条の2は,「普通地方公共団体は,その公益上必要がある場合においては,寄附又は補助をすることができる。」と規定しているところ,地方公共団体の長は,地方自治の本旨の理念に沿って,住民の福祉の増進を図る ために地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を担う地方公共団体の執行機関として,住民の多様な意見及び利益を勘案し,補助の要否についての決定を行うものである。したがって,その決定は,事柄の性質上,諸般の事情を総合的に考慮した上での政策的判断を要するものであるから,同条にいう「公益上必要がある場合」に当たるか否かの判断に当たっては, 補助の要否を決定する地方公共団体の長に一定の裁量権があるものと解される。 一方,法232条の2が地方公共団体による補助金の支出について公益上の必要性という要件を課した趣旨は,恣意的な補助金の支出によって当該地方公共団体の財政秩序を乱すことを防止することにあると解される以上,地 方公共団体の長の裁量権の範囲も無制限とはいえないのであって,当該地方公共団体の長による公益上の必要性に関する判断に裁量権の逸脱又は濫用があると認められる場合には,当該補助金の支出は違法と評価されることになるものと解するのが相当である。 そして,地方公共団体の長が都市再開発事 による公益上の必要性に関する判断に裁量権の逸脱又は濫用があると認められる場合には,当該補助金の支出は違法と評価されることになるものと解するのが相当である。 そして,地方公共団体の長が都市再開発事業について補助金を支出する際 に行う公益上の必要性に関する判断に裁量権の逸脱又は濫用があるか否かを判断するに当たっては,当該再開発事業の目的,内容及び事業によって見込まれる効果や,支出が予定されている補助金の額及びその額が決定されるに至った経過等,当該再開発事業をめぐる諸般の事情を総合的に考慮した上で判断するのが相当である。 イこれに対し,原告は,再開発事業に違法性がある場合には,違法な事業を 推進することが公益上必要であるとは認められないから,法232条の2に規定する「公益上必要がある場合」に当たるとして補助金を支出することは,裁量権の範囲を逸脱又は濫用するものとして違法となると主張する。 しかしながら,上記アのとおり,地方公共団体の長による公益上の必要性に関する判断には一定の裁量権があるものと解される上,法令違反にもその 内容や程度には様々なものがあり得ることからすれば,補助の対象となる事業があらゆる関係法令等に適正に従っていなければ「公益上必要がある場合」に当たらないとまでは解されないから,再開発事業に何らかの法令違反があるからといって,当該事業に対して補助金を支出することが直ちに裁量権の逸脱又は濫用に当たるとまではいえないというべきである。そうすると,再 開発事業の法令適合性については,法令違反の内容及びその程度をも勘案しつつ,当該事業に対して補助金を支出することについて裁量権の逸脱又は濫用があったか否かについて判断するに当たって考慮すべき一事情として位置付けるのが相当である。 ウそこで びその程度をも勘案しつつ,当該事業に対して補助金を支出することについて裁量権の逸脱又は濫用があったか否かについて判断するに当たって考慮すべき一事情として位置付けるのが相当である。 ウそこで,上記に述べた観点から,被告が本件補助金を支出する際に行う公 益上の必要性に関する判断に,裁量権の逸脱又は濫用があるといえるか否かを検討することとする。 ⑵ 本件再開発事業の目的,内容及び事業によって見込まれる効果等ア前記認定事実⑵ア,イ,⑶アのとおり,本件再開発事業は,商業・業務と居住等の複合機能の導入と都市機能の更新,交流空間の創出,重層的な歩行 者空間ネットワークの形成等を行うことを目的としており,また,これらの目的は,札幌市が平成14年に策定した「都心まちづくり計画」や平成23年に策定した「さっぽろ都心まちづくり戦略」で掲げられた目標に合致するものといえる。 イまた,前記認定事実⑴ウのとおり,本件地区内の建物は,その半分程度 が旧耐震基準の下で建築された建物であり,また,平成25年9月時点で, そのほとんどが耐用年数の3分の2以上を経過していたものであり,相当程度老朽化が進んでいたものといえるから,これらの建物を新耐震基準に適合した建物に建て替えることには都市機能の更新及び防災性の向上の観点から重要な意義があるといえる。 これに対し,原告は,①耐用年数は税制上の必要から政策的に決められ た概念であり,建物の本来的な寿命とは関連性がない,②仮に耐用年数と建物の老朽化との間に関連性が認められるとしても,建築費用が高騰している現時点で本件再開発事業を実施する必要はなく,建物の耐用年数が経過するまでの期間に,建築費用が下がるのを待ち,その後に本件再開発事業に取り掛かるべきであると主張する。 ,建築費用が高騰している現時点で本件再開発事業を実施する必要はなく,建物の耐用年数が経過するまでの期間に,建築費用が下がるのを待ち,その後に本件再開発事業に取り掛かるべきであると主張する。 しかしながら,一般に,耐用年数を相当程度経過した建物は老朽化が進んでいるということができるし,上記のとおり,旧耐震基準の下で建築された建物を新耐震基準に適合した建物に建て替えることには防災性の向上等の観点から重要な意義があるといえ,可能な限り早期に実行に移すべきであることは明らかである。そうであるにもかかわらず,これを実行に 移さずに建築費用の下落という将来の不確実な事態を待つという判断は,合理的であるとはいえない。 したがって,原告の上記主張は,理由がない。 ウさらにのとおり,本件ビルは,低層部は高さを周辺の建物の高さに揃え,高層部はセットバックにより圧迫感の低減を図るなど, 周辺の街並みと調和するような配慮がされている。また,前記認定事実⑶イ狸小路商店街に面する南側のエリアには,路面店やショーウインドウを配置し,商店街からの連続性に対する配慮がなされており,本件再開発事業により,新旧の店舗が入り交じる狸小路商店街独特の雰囲気や景観が破壊されるとはいえない。 エ加えて,本件再開発事業によって多目的広場の整備,集客力の高い商業施 設の整備,路面電車のループ化に対応した滞留空間の整備等が行われることとなり,本件地区が回遊・交流の拠点となり,より一層にぎわいのある場所となる効果を期待することができる。また,前記認定事実⑴エ~カのとおり,本件地区は,路上放置自転車の問題や,地下街から本件地区の地上部に直結するエレベーターがないなどの問題を抱えているところ,本件再開発事業に おいて本件ビル内に公共 前記認定事実⑴エ~カのとおり,本件地区は,路上放置自転車の問題や,地下街から本件地区の地上部に直結するエレベーターがないなどの問題を抱えているところ,本件再開発事業に おいて本件ビル内に公共駐輪場及びエレベーターが整備されることにより,これらの問題を改善することが期待できる。さらに,地下街出入口を本件地区内に取り込むことにより,狸小路商店街の歩行者動線がより円滑になることも期待することができる。 オ以上のとおり,本件再開発事業は,商業・業務と居住等の複合機能の導入 と都市機能の更新,交流空間の創出,重層的な歩行者空間ネットワークの形成等を行うことを目的として計画されたものであるところ,こうした目的は,札幌市において長期的に計画されてきた街づくりの目標に合致するものである。また,その内容も,都市機能の更新及び防災性の向上といった重要な意義を有し,他方で,周辺の街並みや街の雰囲気にも配慮されたものである といえ,さらに,本件地区がより一層にぎわいのある場所となり,路上放置自転車等の問題を改善することが期待できるなどの効果を有するものといえる。 ⑶ 支出が予定されている補助金の額及びその額が決定されるに至った経過ア前記認定事実ウのとおり,本件再開発事業における予定総事業費及び 総補助金額は,平成25年2月にはそれぞれ約153億円,約23億円と想定されていたところ,平成26年1月及び平成27年6月にそれぞれ想定額が増額修正され,本件組合の設立が認可された平成27年11月時点においては,それぞれ237億0600万円,64億0170万円とされたものであり,当初想定されていた金額よりも相当程度増額されるに至ったものとい え,また,本件補助金の額も多額であるといえる。 もっとも,前記認定事 万円,64億0170万円とされたものであり,当初想定されていた金額よりも相当程度増額されるに至ったものとい え,また,本件補助金の額も多額であるといえる。 もっとも,前記認定事実ア~ウによれば,札幌市は,平成25年2月に予定総事業費及び総補助金の想定額を具体的に算定した上で,その後,年度ごとの事業評価を行いながら,上記の増額修正をしたものといえる上,本件補助金の額は,札幌市要綱のほか,国要領及び国要綱という公的な基準に従って定められたものである。また,前記認定事実ウのとおり,本件補助 金のうち32億0085万円については国からの交付金が充てられる予定とされている。さらに,前記認定事実⑶に加え,上記⑵でみた本件再開発事業の内容によれば,本件再開発事業は,札幌市の中心部において,高層ビルを新規に建築し,その周辺の施設等も改修するなど,大掛かりな再開発事業であるといえることからすれば,事業に要する費用も多額なものになり得る といえる。加えて,札幌市が,都市計画を大幅に見直さなければならないほど重大な財政上の問題を抱えているなどの事情は見当たらない。 これらの事情を考慮すると,本件補助金の額が当初想定されていた金額よりも相当程度増額された多額なものであり,また,前記認定事実ウのとおり,本件再開発事業においては事業収支の改善に向けた取組が課題である とされていることなどを踏まえても,本件補助金の額が,本件再開発事業の内容等に照らして不相当に過大であるとか,その決定過程に問題があるなどということはできないというべきである。 イこれに対し,原告は,本件再開発事業は建築費の高騰により計画当初と比べると予定総事業費及び総補助金額が大きく増加しており,もはや当初 計画していた事業との同一性 ないというべきである。 イこれに対し,原告は,本件再開発事業は建築費の高騰により計画当初と比べると予定総事業費及び総補助金額が大きく増加しており,もはや当初 計画していた事業との同一性が認められないレベルに達しているにもかかわらず,札幌市は,計画の見直しや市民に対する説明を行わず,漫然と本件補助金の額を増額したものであると主張する。 平成27年の各年度に事業評価を行い,本件再開発事業の課題について検 討をするなどしていたものである。また,被告は,本件再開発事業に係る 都市計画を決定するに当たって,公告及び縦覧を経て,都市計画法77条の2第1項の規定に基づく札幌市都市計画審議会への諮問を行っており,本件組合の設立を認可するに当たっても,事業計画の公告・縦覧の手続を経ているものと認められる(甲3,乙1,5,6,18,弁論の全趣旨)。 加えて,前記認定事実⑵キのとおり,札幌市がアクションプランをまとめ た冊子において本件補助金の額を62億9300万円と明記していた上,同プラン策定過程でパブリックコメントが実施され,札幌市が市議会総務委員会で説明を行っていること,本件再開発事業の総事業費及び総補助金額は札幌市によってその都度公表されており,本件補助金の支出についても予算案として市議会で審議されていることが認められる(甲16,乙2 1~23,弁論の全趣旨)。一方,被告が,本件補助金の必要性や相当性について議会等で説明を求められたにもかかわらず説明をしなかったことはうかがわれない。 したがって,原告の上記主張は,理由がない。 また,原告は,本件再開発事業に対し,北f条西g丁目の再開発事業や 北h条東i丁目の再開発事業など他の再開発事業と比べて突出して高い割合の補助金を支出しなければならな 主張は,理由がない。 また,原告は,本件再開発事業に対し,北f条西g丁目の再開発事業や 北h条東i丁目の再開発事業など他の再開発事業と比べて突出して高い割合の補助金を支出しなければならない合理的理由はないと主張する。 しかしながら,再開発事業の採算性は,施行地区の特性等によって異なるのであるから,本件再開発事業における補助金負担割合が他の再開発事業の場合よりも高いからといって,直ちに本件補助金の額が不相当である などということはできない。そして,原告が例示する上記各地区は,現在主に木造住宅,倉庫,青空駐車場等として使用されており(乙27の1及び2),本件地区に比べると補償費や解体費が低廉となることが見込まれるのであるから,本件地区とは事情を異にしており,比較対象として適切ではない。 したがって,原告の上記主張は,理由がない。 ⑷ 本件再開発事業における法令違反の有無ア駐車施設設置義務違反の有無はじめに原告は,①本件再開発事業は,本件ビルの構造又は敷地の状態により隔地駐車施設の設置が特にやむを得ないと認められる場合には当たらない から,駐車施設条例に違反している,②本件ビルには,本件手引きで義務付けられている車椅子利用者のための駐車施設の設置が予定されているとはいえないと主張する。 そこで,以下,上記各主張について順次検討する。 上記①(駐車施設条例違反)について a 前提原告は,本件ビルには駐車施設条例2条1項本文で義務付けられた附置駐車施設が設置されていないから,同条例に違反すると主張する。 しかしながら,現時点においては,本件ビルは設計段階の計画が明らかにされているにすぎず,建築確認申請すらされていない状況にあるか ら(弁論の全趣旨), いから,同条例に違反すると主張する。 しかしながら,現時点においては,本件ビルは設計段階の計画が明らかにされているにすぎず,建築確認申請すらされていない状況にあるか ら(弁論の全趣旨),原告の上記主張は,現状を前提として,現在明らかにされている計画どおりに本件ビルが建築された場合,本件ビルが駐車施設条例に違反することとなるというものと解される。そして,前記認定事実⑸エのとおり,駐車施設条例等によれば本件ビルに附置すべき駐車施設の台数は156台であるところ,敷地内に設置される駐車施設 (附置駐車施設)は54台にすぎないのであるから,駐車施設条例6条1項にいう「特にやむを得ないと認める場合」でない限りは,本件ビルは駐車施設条例2条1項本文に違反することとなる。 そこで,以下,「特にやむを得ないと認める場合」に当たるか否かを検討することとする。 b 駐車施設条例6条1項にいう「特にやむを得ないと認める場合」の意 義駐車施設条例は,駐車場法の規定に基づき制定された条例である(駐車施設条例1条)。そこで,駐車場法の規定をみると,同法の目的は,都市における自動車の駐車のための施設の整備に関し必要な事項を定めることにより,道路交通の円滑化を図り,もって公衆の利便に資すると ともに,都市の機能の維持及び増進にも寄与することにある(1条)。そして,同法は,この目的を達成するため,商業地域等において自動車交通が著しくふくそうする地区等で,道路の効用を保持し,円滑な道路交通を確保する必要があると認められる区域については,都市計画に駐車場整備地区を定めることができると規定している(3条1項)。その趣 旨は,大都市の中心部では,自動車の急激な増加により道路交通が混雑を極め,都心部の道路上には違法路上駐車 ては,都市計画に駐車場整備地区を定めることができると規定している(3条1項)。その趣 旨は,大都市の中心部では,自動車の急激な増加により道路交通が混雑を極め,都心部の道路上には違法路上駐車が蔓延し,道路交通が著しく妨げられているという実情を踏まえ,駐車場整備地区内においては,路上駐車場,路外駐車場及び附置駐車施設を総合的に整備することを可能とすることによって(同法4条,4条の2,5条,10条,20条参照), 道路交通の円滑化を図り,都市機能の維持,増進に寄与しようとする点にあると解される。 そして,駐車場法20条は,地方公共団体が駐車場整備地区内等における所定の大規模建築物について附置駐車施設の設置を条例で義務付けることができることとしている。その趣旨は,駐車場整備地区内等に おいては,大規模建築物の新築等により駐車需要が増大し,違法駐車の蔓延を引き起こすおそれがあることから,当該建築物又はその敷地内に駐車施設の附置を義務付けることにより,同地区内において将来にわたって安定的に駐車施設を確保して駐車需要を吸収し,もって道路交通の円滑化を図ろうとしたものであると解される。もっとも,附置駐車施設 を設置させる必要性は,都市における自動車交通量の状況,道路の整備 状況,当該地域の市街地の構成,建物密集度等の条件によって左右されるほか,都市部における自動車利用と公共交通機関等の利用とのバランスなど政策的な判断を要するものと考えられることから,地方公共団体が地域の実情に応じて,条例により定めることができることとしたものと解される。 このような駐車場法の規定を受けて制定された駐車施設条例は,附置駐車施設の設置義務及びその要件を定めるとともに(2条1項本文),その例外として,当該建築物の構造又は したものと解される。 このような駐車場法の規定を受けて制定された駐車施設条例は,附置駐車施設の設置義務及びその要件を定めるとともに(2条1項本文),その例外として,当該建築物の構造又は敷地の状態により被告が特にやむを得ないと認める場合において,当該建築物の敷地からおおむね200m以内の場所に所定の規模を有する駐車施設(隔地駐車施設)を設置 するときは,これを附置駐車施設とみなすものとしている(6条1項)。 このような例外を認めた趣旨は,当該建築物の構造等に照らして附置駐車施設の設置が不可能又は著しく困難な場合等があり得ることから,被告の判断により,附置駐車施設の設置義務を緩和することとして,駐車場整備地区内における大規模建築物の建築需要と道路交通の円滑化と の調和を図ろうとしたものと解される。もっとも,上記のとおり,駐車場法20条及び駐車施設条例2条1項本文の趣旨が駐車場整備地区内において将来にわたって安定的に駐車施設を確保しようとする点にあること,駐車施設条例6条1項が「特にやむを得ないと認める場合」という文言を用いていることからすれば,同項は,附置駐車施設の設置義 務を緩和することができる場合を限定的なものとし,駐車場整備地区内においては原則として附置駐車施設を設置すべきものとする趣旨であることは明らかである。このように解することは,附置駐車施設の設置義務を過度に緩和し隔地駐車場をもって代替することを安易に許容すれば,駐車場整備地区内の大規模建築物の利用者が隔地駐車施設に駐車 することを嫌って当該建築物の近隣に路上駐車することが懸念される ことに照らしても,一定の合理性を有するということができる。 そうすると,駐車施設条例6条1項にいう「特にやむを得ないと認める場合」とは,当該建築 物の近隣に路上駐車することが懸念される ことに照らしても,一定の合理性を有するということができる。 そうすると,駐車施設条例6条1項にいう「特にやむを得ないと認める場合」とは,当該建築物の構造又はその敷地の状態等に照らして当該建築物又はその敷地内に駐車施設を附置することが不可能又は著しく困難である場合や,実質的に当該建築物又はその敷地内に駐車施設を附 置したものと同視できる場合をいうものと解するのが相当である。 そして,前記関係法令の規定等⑸イのとおり,国土交通省は,平成16年7月2日に標準駐車場条例を改正し,附置駐車施設の設置義務の例外を定める30条1項について,「当該建築物の構造又は敷地の状態から市長がやむを得ないと認める場合において」とされていた文言を,「交 通の安全及び円滑化又は土地の有効な利用に資するものとして市長の認定を受けて」との文言に改めたものであるが,その後も札幌市は,駐車施設条例6条1項を改正することなく,上記改正前の標準駐車場条例30条1項とほぼ同じ文言を維持し続けていたのである。このことも併せ考慮すると,上記改正後も,駐車施設条例6条1項については,附置 駐車施設の設置義務の緩和を限定的なものとする上記の解釈が妥当するというべきである。 c 本件ビルについて以上を前提に,本件ビルにつき駐車施設条例6条1項にいう「特にやむを得ないと認める場合」に当たるといえるか否かを検討する。 この点,被告は,本件ビルに附置駐車施設を設置すると,南a条線側に計3か所の車両出入口を設ける必要があり,その結果,歩行者動線が過度に分断されるなどの支障が生ずると主張する。 確かに,前記認定事実⑴ア,イのとおり,本件地区は札幌駅前通及び南a条線に接しているところ,札幌駅前通には路面電車 要があり,その結果,歩行者動線が過度に分断されるなどの支障が生ずると主張する。 確かに,前記認定事実⑴ア,イのとおり,本件地区は札幌駅前通及び南a条線に接しているところ,札幌駅前通には路面電車の軌道が敷設さ れているから,札幌駅前通側に車両出入口を設けると大きな交通混雑を 生み出すおそれが高いのであって,本件ビルに附置駐車施設を設置する場合,南a条線側に車両出入口を設けるのが最も合理的であると考えられる。 しかしながら,仮に南a条線側にのみ車両出入口を設けたとしても,被告の主張するように,共同住宅用,荷さばき用及び商業業務用の車両 出入口を計3か所設ける必要があると認めるに足りる証拠はない。仮に用途に応じて複数の車両出入口を設ける必要があるとしても,本件ビルに附置駐車施設を設置することが不可能又は著しく困難といえるほど,歩行者動線が過度に分断されると認めるに足りる証拠はない。また,前記認定事実⑴キのとおり,現在のところ,南a条線の交通容量には余裕 がみられることからすれば,南a条線側のみに車両出入口を設けたとしても,周辺交通への影響が大きいとは認められない。 そうすると,本件ビルについては,その構造又はその敷地の状態等に照らして駐車施設を附置することが不可能又は著しく困難であるとは認められない。そして,Aパーキングが本件ビル又はその敷地内の附置 駐車施設と同視できるといえないことは明らかであるから,本件ビルに附置駐車施設を設けることが「特にやむを得ないと認める場合」に当たるとはいえない。 d 被告の主張についてこれに対し,被告は,本件ビルにおいてはAパーキングを隔地駐車施 設として利用することが予定されていることを前提に,本件手引きにおいて「特にやむを得ないと認める場合」の一 告の主張についてこれに対し,被告は,本件ビルにおいてはAパーキングを隔地駐車施 設として利用することが予定されていることを前提に,本件手引きにおいて「特にやむを得ないと認める場合」の一つとして挙げられている条件8及び条件9が満たされていると主張する。 条件8について条件8は,公共性に寄与する計画で,当該施設の附属又は補完施設 とみなし得る駐車施設を設置する場合に,附置駐車場の設置義務の緩 和を認めるものである。 しかしながら,前記のとおり,駐車施設条例6条1項にいう「特にやむを得ないと認める場合」には,実質的に当該建築物又はその敷地内に駐車施設を附置したものと同視できる場合も含まれると解されるものの,当該建築物の補完施設とみなし得る駐車施設を設 置した場合もこれに含まれると解することはできない(条件8のように,公共性への寄与と引換えに附置駐車施設の設置義務の緩和を認めることは,同項の解釈の限界を超えるといわざるを得ない。)。そして,前記認定事実⑸エのとおり,本件ビルに附置される駐車施設は合計54台分であって,駐車施設条例等によって要求されている台数の約3 5%にすぎず,その余はAパーキングによって賄われるのであるから,実質的に本件ビル又はその敷地内に駐車施設を附置したものと同視できるといえないことは明らかである。 そうすると,条件8が満たされるから「特にやむを得ないと認める場合」に当たるとする被告の主張は,その前提において失当である。 ⒝ 条件9について条件9は,建築物の敷地が駐車場整備地区内にあり,隔地駐車施設が原則1か所である場合に附置駐車施設の設置義務の緩和を認めるものである。 しかしながら,条件9は,附置駐車施設の設置が原則として義務付 けられる駐車 が駐車場整備地区内にあり,隔地駐車施設が原則1か所である場合に附置駐車施設の設置義務の緩和を認めるものである。 しかしながら,条件9は,附置駐車施設の設置が原則として義務付 けられる駐車場整備地区内において,特段の条件を加えることもなく,隔地駐車施設1か所の設置を許容するものであるから,駐車施設条例6条1項の趣旨に正面から抵触するものといわざるを得ない。 この点,被告は,駐車場整備地区内である都心部では,一般的に「敷地が狭小であるため駐車場を敷地内に設けると建築計画が立てにく い」,「駐車場の出入口によって歩道が分断され,歩行環境が悪化する」 といった課題があることから,札幌市が平成24年1月に策定した「札幌市総合交通計画」(乙16)においては,今後の都心部における駐車場施策について,「必要な駐車機能を,駐車場の共同化や既存駐車場の有効活用など,工夫して確保することにより,まちづくりの支障となることの無いように進めていく」必要があるとしており,これ を受けて条件9が設けられたと主張する。 しかしながら,駐車施設条例2条1項本文は,駐車場整備地区内における路上駐車の蔓延を防止するため大規模建築物を新築しようとする者に附置駐車施設の設置義務を課し,駐車施設条例6条1項は,その例外事由を限定的なものとしているのであって,札幌市において 駐車場政策を上記のとおり転換するのであれば,それに併せて駐車施設条例を改正すべきものである。現に,京都市においては,京都市駐車場条例26条で「建築物の構造又は敷地の状態その他特別の理由により駐車施設を当該建築物又はその敷地内に設置することが困難であると認められる場合」に限って附置駐車施設の設置義務の例外を認 めていたところ,自動車を重視した街づくりから,「歩く 特別の理由により駐車施設を当該建築物又はその敷地内に設置することが困難であると認められる場合」に限って附置駐車施設の設置義務の例外を認 めていたところ,自動車を重視した街づくりから,「歩く」ことを中心とした街づくりに転換するとの政策判断の下,附置駐車施設の設置義務を緩和することとして,同条の文言を「建築物又はその敷地の外に駐車施設を設置することが,交通の安全,円滑な交通又は土地の有効な活用に資するものであると認められる場合」と改めたことが認めら れる(甲39,弁論の全趣旨)。しかるに,札幌市においては,駐車施設条例6条1項の改正は何ら行われていないのであるから,附置駐車施設の設置義務を緩和する解釈を採用することはできない。 そうすると,条件9が満たされるから「特にやむを得ないと認める場合」に当たるとする被告の主張は,その前提において失当である。 e 小括 以上によれば,現状を前提とする限り,計画どおりに本件ビルが建築された場合,本件ビルは,駐車施設条例6条1項にいう「特にやむを得ないと認める場合」に当たるとはいえず,駐車施設条例2条1項本文に違反することとなるといわざるを得ない。 上記②(本件手引き違反)について 原告は,本件ビルにおいて設置が予定されている車椅子利用者のための駐車施設は,荷さばき用駐車施設にごく近い場所に設置されることが予定されており,車椅子利用者の事故の可能性が高いから,このような駐車施設は本件手引きで設置が求められている車椅子利用者の駐車施設とはいえないと主張する。 しかしながら,本件手引きにおいては,車椅子利用者のための駐車施設の位置については何ら制限していないから,荷さばき用駐車施設の近くに車椅子利用者のための駐車施設が設けられたとしても,本件 しかしながら,本件手引きにおいては,車椅子利用者のための駐車施設の位置については何ら制限していないから,荷さばき用駐車施設の近くに車椅子利用者のための駐車施設が設けられたとしても,本件手引きに違反するとはいえない。また,本件ビルにおいて設置が予定されている車椅子利用者のための駐車施設は,車椅子利用者が荷さばき用の駐車施設を横切 ることのないよう配慮されており(乙29),車椅子利用者の事故の可能性が高いともいえない。 したがって,原告の上記主張は,理由がない。 イ都市再開発法108条1項違反の有無原告は,本件再開発事業においては,公募によることなくB銀行に本件 ビルの保留床を利用させることが予定されているから,都市再開発法108条1項に違反すると主張する。 しかしながら,本件ビルの保留床の処分方法や利用者は,未だ確定していないと認められるから(弁論の全趣旨),保留床の処分方法や利用者について違法であるか否かについて,現時点で判断することはできない。ま た,都市再開発法108条1項2号においては,従前の土地・建物所有者 の営業に必要な床面積を確保するための保留床の特定分譲が認められているのであるから,仮に,本件再開発事業における今後の権利変換計画の決定及び認可の時点において,B銀行に保留床を利用させたとしても,直ちに同項に違反するものではない。 したがって,原告の上記主張は,理由がない。 ウ大店法違反の有無 原告は,大店法によれば,本件ビルに必要とされる駐車施設の台数は最低173台であるにもかかわらず,本件再開発事業においてはこれを満たしていないと主張する。 しかしながら,大店法にいう「店舗面積」とは,小売業(飲食店業を除 くものとし,物品加工修理 は最低173台であるにもかかわらず,本件再開発事業においてはこれを満たしていないと主張する。 しかしながら,大店法にいう「店舗面積」とは,小売業(飲食店業を除 くものとし,物品加工修理業を含む。)を行うための店舗の用に供される床面積をいうとされているところ(2条1項),本件ビルの店舗面積は約8371㎡と認められる(乙42)。これに対し,原告は,店舗面積を1万3767㎡として必要駐車台数を算定しているから,上記算定はその前提において誤っているといわざるを得ない。そして,本件ビルが大店法に違 反していると認めるに足りる証拠はないから,原告の上記主張は,理由がない。 エ都市計画法21条1項違反の有無 原告は,東日本大震災発生後の建築費の高騰があったのであるから,札幌市は本件再開発事業に係る都市計画決定を変更する必要性について審 理しなければならなかったにもかかわらず,審理はおろか,再評価すらしなかったものであるから,同都市計画決定は都市計画法21条1項に違反すると主張する。 しかしながら,本件再開発事業は,第一種市街地再開発事業に当たるところ(前提事実⑵ア),第一種市街地再開発事業の都市計画においては,市 街地開発事業の種類,名称及び施行区域,施行区域の面積,公共施設の配 置及び規模並びに建築物及び建築敷地の整備に関する計画を定めるべきものとされているものの(都市計画法12条2項,4項,都市再開発法4条1項),当該事業に対する補助金の交付予定額や収支計画を定めるべきものとはされていない。 したがって,原告の上記主張は,その前提を欠くものであって,理由が ない。 オ都市再開発法17条4号違反の有無原告は,本件組合は情勢の変化によって補助金の増額が ていない。 したがって,原告の上記主張は,その前提を欠くものであって,理由が ない。 オ都市再開発法17条4号違反の有無原告は,本件組合は情勢の変化によって補助金の増額がされなければ事業を維持できない状態にあったものであり,再開発組合に必要な経済的基礎を要求する都市再開発法17条4号の要件を満たさなくなったと主張 する。 しかしながら,前記認定事実⑵カ,ウのとおり,本件準備組合は,本件補助金の額を64億0200円とする事業計画を作成して市街地再開発組合設立認可申請をしたものであるところ,札幌市は,平成27年6月の時点で本件再開発事業の総補助金額を64億円と想定した上で,同年 11月12日,本件組合の設立を認可したものである。そうすると,本件組合の設立が認可された後に情勢の変化が生じて都市再開発法17条4号に定める認可の要件を欠くに至ったものではないことは明らかである。 したがって,原告の上記主張は,理由がない。 ⑸ まとめ ア上記⑵で検討したところによれば,本件再開発事業は,札幌市において長期的に計画されてきた街づくりの目標とも合致するものであり,その内容も,都市機能の更新等を図りつつ,周辺の街並み等への配慮もされたものであるほか,本件地区の活性化及び問題の改善等が期待できるといった効果を有するものといえることからすれば,公益性の高い事業であることは明らかであ るといえる。 イまた,上記⑶で検討したところによれば,本件補助金の額が,本件再開発事業の内容等に照らして不相当に過大であるとか,その決定過程に問題があるなどということはできない。 ウ一方,上記⑷アで検討したとおり,現状を前提とする限り,計画どおりに本件ビルが建築された場合,本件ビルは駐車施設 して不相当に過大であるとか,その決定過程に問題があるなどということはできない。 ウ一方,上記⑷アで検討したとおり,現状を前提とする限り,計画どおりに本件ビルが建築された場合,本件ビルは駐車施設条例2条1項本文に違反す ることとなるといわざるを得ない。 もっとも,駐車施設条例施行規則5条によれば,附置駐車施設の設置に係る届出は,当該駐車施設を附置しようとする建築物に係る建築確認申請を行う際に行うものとされており,本件再開発事業における駐車施設の設置について,駐車施設条例等の関係規定に適合するか否かの最終的な判断は,建築 確認申請の時点で行われるものとされている。そうすると,上記時点までに,本件ビルに附置駐車施設が設置され,あるいは「特にやむを得ないと認める場合」に当たるというべき事情が生ずるなどして,あるいは札幌市が駐車施設条例を改正することによって,本件ビルが駐車施設条例に違反しないこととなる可能性も否定できない。 また,前記認定事実⑸ア,エのとおり,本件ビルは,おおむね200m以内という至近距離に位置するAパーキングを隔地駐車施設として利用することが予定されており,しかも,附置駐車施設と隔地駐車施設とを併せると,駐車施設条例等で要求されている駐車施設の台数を大きく上回る台数分の駐車施設が確保される見通しとなっている。そうすると,本件ビルの附置駐 車施設の台数が駐車施設条例等で要求されている台数に満たないとしても,その影響は限定的なものと考えられる。 したがって,本件補助金を支出するとの判断に当たって,現状を前提に本件ビルが計画どおりに建築された場合には駐車施設条例2条1項本文に違反することが考慮されなかったとしても,その判断過程に重大な瑕疵がある とはいえない。 そして,上記⑷イ 提に本件ビルが計画どおりに建築された場合には駐車施設条例2条1項本文に違反することが考慮されなかったとしても,その判断過程に重大な瑕疵がある とはいえない。 そして,上記⑷イ~オのとおり,ほかに本件再開発事業に法令違反があるとは認められない。 エ上記ア~ウのとおり,本件再開発事業の目的,内容及び事業によって見込まれる効果や,支出が予定されている補助金の額及びその額が決定されるに至った経過に加え,本件再開発事業の法令違反の有無及びその内容等も含め た諸般の事情を総合考慮すれば,被告が本件補助金を支出する際に行う公益上の必要性に関する判断につき,裁量権の逸脱又は濫用があるとは認められない。 ⑹ 小括以上によれば,被告が本件組合に対して本件補助金を支出することが違法で あるとはいえない。 第4 結論したがって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官武藤貴明 裁判官都野道紀 裁判官岩竹 遼
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