平成30(ワ)21900 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年5月20日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-90432.txt

キーワード

判決文本文93,472 文字)

令和3年5月20日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(ワ)第21900号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日令和3年2月26日判決原告株式会社セフト研究所 同訴訟代理人弁護士鮫島正洋同高橋正憲被告ビッグボーン商事株式会社同訴訟代理人弁護士堀籠佳典同牧野知彦 同訴訟代理人弁理士福田伸一同訴訟復代理人弁護士岡 田 健太郎 主文 1 被告は,別紙1被告製品目録記載の各製品を製造し,譲渡し,又は譲渡の申出をしてはならない。 2 被告は,前項記載の各製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,625万2147円及びうち284万5159円に対する平成30年7月15日から,うち340万6988円に対する令和元年11月7日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用はこれを5分し,その3を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 6 本判決は,第1項及び第3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 (目次省略) 第1 請求 1 被告は,別紙1被告製品目録記載の各製品を製造し,譲渡し,輸出し,輸入し又は譲渡の申出をしてはならない。 2 被告は,その占有に係る前項記載の各製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,3億3000万円及びうち2000万 載の各製品を製造し,譲渡し,輸出し,輸入し又は譲渡の申出をしてはならない。 2 被告は,その占有に係る前項記載の各製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,3億3000万円及びうち2000万円に対する平成30年7月15日から,うち3億1000万円に対する令和元年11 月7日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,発明の名称を「空調服の空気排出口調整機構,空調服の服本体及び空調服」とする特許第6158675号の特許(以下「本件特許」という。) に係る特許権(以下「本件特許権」という。)の特許権者である原告が,被告に対し,別紙1被告製品目録記載の各製品(以下「被告製品1」,「被告製品2」などといい,これらを総称して「被告各製品」という。)が本件特許の特許請求の範囲の請求項3記載の発明(以下「本件発明1」という。)及び請求項9記載の発明(以下「本件発明2」といい,本件発明1と併せて「本件各発 明」という。)の各技術的範囲に属し,被告による被告各製品の製造等が本件各発明の実施に当たると主張して,特許法(以下「法」という。)100条1,2項に基づき,被告各製品の製造,譲渡,輸出,輸入及び譲渡の申出の差止め並びに廃棄を求め,民法709条に基づき,損害金合計3億3000万円(法102条2項による損害金3億2000万円及び弁護士費用相当額1000万 円)及びうち2000万円に対する不法行為後の日である平成30年7月15日(訴状送達日の翌日)から,うち3億1000万円に対する不法行為後の日である令和元年11月7日(令和元年10月31日付け訴えの変更申立書送達日の翌日)から各支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金 に対する不法行為後の日である令和元年11月7日(令和元年10月31日付け訴えの変更申立書送達日の翌日)から各支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠(以下,書証番号は特 記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者ア原告は,空調服及び空調マットの開発,設計,製造,販売,輸出入等を目的とする株式会社である。 イ被告は,ユニホーム,カジュアルウェア等の開発,製造,販売等を行う 株式会社である。 ウ原告及び被告は,いずれも電動ファン付きウエア(電動ファン付きウエアについては,一般に「空調服」とも呼ばれている。以下,本判決においても「空調服」ということがある。)の販売等を行っている(甲12,35ないし38,乙33,107,108)。 (2) 本件特許原告は,平成25年10月9日,本件特許に係る特許出願(特願2013-212139号)をし,平成29年6月16日,本件特許権の設定の登録(請求項の数10)を受けた(甲1,2)。 (3) 本件各発明に係る特許請求の範囲 本件特許の特許請求の範囲の請求項3(本件発明1)及び請求項9(本件発明2)の各記載は,以下のとおりである(甲2)。 ア 【請求項3】送風手段を用いて人体との間に形成された空気流通路内に空気を流通させる空調服の襟後部と人体の首後部との間に形成される,前記空気流通路 内を流通する空気を外部に排出する空気排出口について,その開口度を調整するための空気排出口調整機構において,第一取付部を有し, 部と人体の首後部との間に形成される,前記空気流通路 内を流通する空気を外部に排出する空気排出口について,その開口度を調整するための空気排出口調整機構において,第一取付部を有し,前記空調服の服地の内表面であって前記襟後部又はその周辺の第一の位置に取り付けられた第一調整ベルトと,前記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能とな る複数の第二取付部を有し,前記第一調整ベルトが取り付けられた前記第 一の位置とは異なる前記襟後部又はその周辺の第二の位置に取り付けられた第二調整ベルトと,を備え,前記第一取付部を前記複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けることで前記空気流通路内を流通する空気の圧力を利用することに より,前記襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成することを特徴とする空気排出口調整機構。 イ 【請求項9】請求項1~8のいずれか一項に記載の空気排出口調整機構を備えた空調服の服本体。 (4) 本件各発明の構成要件の分説本件各発明は,以下の構成要件に分説することができる(以下,各構成要件につき,頭書の記号に従って「構成要件A」などという。)。 ア本件発明1A 送風手段を用いて人体との間に形成された空気流通路内に空気を流通 させる空調服の襟後部と人体の首後部との間に形成される,前記空気流通路内を流通する空気を外部に排出する空気排出口について,その開口度を調整するための空気排出口調整機構において,B 第一取付部を有し,前記空調服の服地の内表面であって前記襟後部又はその周辺の第一の位置に取り付けられた第一調整ベルトと, その開口度を調整するための空気排出口調整機構において,B 第一取付部を有し,前記空調服の服地の内表面であって前記襟後部又はその周辺の第一の位置に取り付けられた第一調整ベルトと, C 前記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能となる複数の第二取付部を有し,前記第一調整ベルトが取り付けられた前記第一の位置とは異なる前記襟後部又はその周辺の第二の位置に取り付けられた第二調整ベルトと,を備え,D 前記第一取付部を前記複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに 取り付けることで前記空気流通路内を流通する空気の圧力を利用するこ とにより,前記襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成することを特徴とするE 空気排出口調整機構。 イ本件発明2F 請求項1~8のいずれか一項に記載の空気排出口調整機構を備えた G 空調服の服本体。 (5) 被告による被告各製品の販売等ア被告は,本件特許権の登録日である平成29年6月16日から令和元年10月31日までの間,被告各製品合計●省略●個を販売し,これにより●省略●円の売上げがあり,少なくとも●省略●円の経費を要したので, 多くとも5233万4690円(消費税込みで5652万1465円)の利益があった。 イ被告製品1は,服背面下部のファン設置位置にファンを設置して使用する服である。ファンを作動させることで,ファン設置位置から空気を服本体に吸い込み,吸い込んだ空気が,人体と服の間を通過し,襟首等から服 本体の外部に排出される(別紙2写真目録記載1参照)。 また,被告製品2ないし22は,色やデザインは異なるが,被告製品1と同様の構成を有して 込んだ空気が,人体と服の間を通過し,襟首等から服 本体の外部に排出される(別紙2写真目録記載1参照)。 また,被告製品2ないし22は,色やデザインは異なるが,被告製品1と同様の構成を有している。 ウ被告各製品は,本件発明2の構成要件Gを充足する。 3 争点 (1) 被告各製品が本件各発明の技術的範囲に属するか(争点1)(2) 無効の抗弁の成否(争点2)ア明確性要件違反(争点2-1)イ特開2006-132040号(乙2。以下「乙2公報」という。)を主引用例とする新規性欠如(争点2-2) ウ乙2公報を主引用例とする進歩性欠如(争点2-3) (3) 損害額(争点3)(4) 差止め等の必要性(争点4)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被告各製品が本件各発明の技術的範囲に属するか)について(原告の主張) (1) 被告各製品の構成被告各製品は,以下の構成を有している。 ア構成①被告各製品は,服背面下部のファン設置位置にファンを設置して使用する服である。ファンを作動させることで,ファン設置位置から空気を服本 体に吸い込み,吸い込んだ空気が,人体と服の間を通過し,襟首等から服本体の外部に排出される。 イ構成②被告各製品は,服の襟後部に調整ゴムベルトを有し,調整ゴムベルトの有するボタン穴と,ボタンを取り付けることで,首元と服の間に空気の通 り道が生まれ,着用者にとって涼しく快適な環境が提供される。 ウ構成③被告各製品は,服の襟後部において,服の服地内表面の第一の位置に取り付けられた調整ベルトを有する。そして,その調整ベルトは,ボタンを有する。 が提供される。 ウ構成③被告各製品は,服の襟後部において,服の服地内表面の第一の位置に取り付けられた調整ベルトを有する。そして,その調整ベルトは,ボタンを有する。 被告各製品は,襟後部における,第一の位置とは異なる第二の位置に取り付けられた調整ゴムベルトを有する。そして,その調整ゴムベルトは,ボタンの形状に対応して取り付けが可能となる複数のボタン穴を有する。 エ構成④被告各製品は,ボタンとボタン穴を取り付ける位置を異ならせることで, 服の襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開口度の 空気排出口が形成される。 (2) 被告各製品の構成要件充足性ア構成要件A(ア) 被告各製品は,服背面下部のファン設置位置に「送風手段」に相当するファンを設置して使用するから(構成①),「送風手段を用い(る) …服」である。当該ファンを作動させることで,ファン設置位置から空気を服本体に吸い込み,吸い込んだ空気が「人体と(服と)の間に形成された空気流通路内」に相当する空間を通過し,襟首等から服本体の外部に排出されるから(構成①),当該服は「人体との間に形成された空気流通路内に空気を流通させる」機能を有する。 したがって,被告各製品は,構成要件Aの「送風手段を用いて人体との間に形成された空気流通路内に空気を流通させる空調服」に該当する。 (イ) 被告各製品は,服の襟後部に調整ゴムベルトを有し,調整ゴムベルトの有するボタン穴とボタンを取り付けることで,首元と服の間に空気の通り道が生まれ,涼しく快適な環境が提供されるという構成(構成②) を有する。そうすると,被告各製品の空気の通り道は,「空調服の襟後部と人体 穴とボタンを取り付けることで,首元と服の間に空気の通り道が生まれ,涼しく快適な環境が提供されるという構成(構成②) を有する。そうすると,被告各製品の空気の通り道は,「空調服の襟後部と人体の首後部との間に形成される…空気流通路」に相当し,かつ,その通り道を抜けた空気は,「空気流通路内を流通する空気を外部に排出する空気排出口」から排出されることになる。 したがって,被告各製品は,構成要件Aの「空調服の襟後部と人体の 首後部との間に形成される,前記空気流通路内を流通する空気を外部に排出する空気排出口」を有する。 (ウ) 被告各製品の空気排出口は,ボタンとボタン穴を取り付ける位置を異ならせることで,服の襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開口度を形成することができる(構成④)。そうだとすると, ボタンとボタン穴を取り付ける位置を異ならせることで「開口度を調整 する」ことができるから,当該構成は,「調整するための…調整機構」に該当する。 したがって,被告各製品は,構成要件Aの「その開口度を調整するための空気排出口調整機構」を有する。 (エ) 以上によれば,被告各製品は構成要件Aを充足する。 イ構成要件B及びC(ア) 被告各製品はボタンを有しており(構成③),これは「第一取付部」に該当する。また,被告各製品は調整ベルトを有しており(構成③),これは「第一調整ベルト」に該当する。そして,被告各製品の調整ベルトは,服の襟後部において,服の服地内表面の第一の位置に取り付けら れているので(構成③),「前記空調服の服地の内表面であって前記襟後部又はその周辺の第一の位置に取り付けられた」ベルトに該当する。 したがって,被告各製品は,構成要件Bの「 位置に取り付けら れているので(構成③),「前記空調服の服地の内表面であって前記襟後部又はその周辺の第一の位置に取り付けられた」ベルトに該当する。 したがって,被告各製品は,構成要件Bの「第一取付部を有し,前記空調服の服地の内表面であって前記襟後部又はその周辺の第一の位置に取り付けられた第一調整ベルト」を有する。 (イ) 被告各製品は調整ゴムベルトを有しており(構成③),これは「第二調整ベルト」に該当する。そして,被告各製品の調整ゴムベルトは,襟後部における,第一の位置とは異なる第二の位置に取り付けられたものであるから(構成③),「前記第一調整ベルトが取り付けられた前記第一の位置とは異なる前記襟後部又はその周辺の第二の位置に取り付けら れた第二調整ベルト」に該当する。また,被告各製品の調整ゴムベルトは,ボタン穴を有しており,このボタン穴は,複数存在するから(構成③),「複数の第二取付部」に該当する。そして,このボタン穴は,構成要件Bの「第一取付部」に該当するボタンの形状に対応して,このボタンと取り付けが可能となるものであるから(構成③),「前記第一取 付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能となる」機能を 有する。 したがって,被告各製品は,構成要件Cの「前記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能となる複数の第二取付部を有し,前記第一調整ベルトが取り付けられた前記第一の位置とは異なる前記襟後部又はその周辺の第二の位置に取り付けられた第二調整ベルト」 を有する。 (ウ) 被告は,「襟後部又はその周辺」(構成要件B及びC)とは「前記空気排出口」の「開口度」を「予め定め」ることを可能とする程度に「襟後部」(構成要件A及びD)に近接したものでなければならないとして, ) 被告は,「襟後部又はその周辺」(構成要件B及びC)とは「前記空気排出口」の「開口度」を「予め定め」ることを可能とする程度に「襟後部」(構成要件A及びD)に近接したものでなければならないとして,被告各製品の調整ゴムベルト(被告の主張では「ゴムベルト」)及び調 整ベルト(被告の主張では「布ベルト」)の取り付け位置が「周辺」に該当しないと主張する。 この点,広辞苑によると,「周辺」とは,周りの部分という意味であり(甲7),「襟後部又はその周辺」とは,襟後部又は襟後部の周りの部分をいう。そして,本件特許に係る特許出願の願書に添付した明細書 (以下,同図面と併せて「本件明細書」という。また,明細書の発明の詳細な説明中の段落番号を【0001】などと,図を【図1】などと記載する。)の記載によれば,本件各発明は,従来の空調服では,襟後部と首後部との間の空気排出口の開口度を適切に調整することが難しかったことに鑑み(【0006】),「空調服の襟後部と人体の首後部との 間に形成される空気排出口の開口度を簡単に調整することができる空気排出口調整機構を提供すること」(【0010】)を課題とし,この課題を達成するために,送風手段が作動した状態において,空調服内部から襟後部と人体の首後部の間の空気排出口を通って外部に排出する空気量が異なる複数段階となるように,襟後部と人体の首後部の間の空気排 出口を形成するものである。そうすると,本件各発明に係る「空気排出 口調整機構」の「第一調整ベルト」及び「第二調整ベルト」が取り付けられる「襟後部又はその周辺」とは,空調服内部から襟後部と人体の首後部の間の空気排出口を通って外部に排出する空気量が異なる複数段階となることが可能となる襟後部又は襟後部の周りの部分をいうと解すべきである。 又はその周辺」とは,空調服内部から襟後部と人体の首後部の間の空気排出口を通って外部に排出する空気量が異なる複数段階となることが可能となる襟後部又は襟後部の周りの部分をいうと解すべきである。 実験結果(甲5,8,9)によれば,被告各製品は,ファンを作動させ,これを着用した状態において,ボタンを取り付ける調整ゴムベルトのボタン穴の位置を異ならせることで,空気排出口の開口度が変化し,これに伴って空気排出口の風速も変化し,空気排出口から排出される空気量が異なる複数段階となることが認められる。また,「第一調整ベル ト」に相当する調整ベルト及び「第二調整ベルト」に相当する調整ゴムベルトが,襟後部又は襟後部の周りの部分に存在することは,明らかである。そうすると,被告各製品は,「空気排出口調整機構」の「第一調整ベルト」及び「第二調整ベルト」が,空調服内部から襟後部と人体の首後部の間の空気排出口を通って外部に排出する空気量が異なる複数段 階となることが可能となる襟後部又は襟後部の周りの部分に取り付けられていると認められる。 さらに,被告自身が顧客に提供する説明資料等(甲3,6)において,被告各製品の調整ゴムベルトは,「衿についているゴム」,「衿の内側にある調整ゴム」又は「衿の内側(下部分)にある調整ゴム」と表示さ れ,その状況が図示されるなどしており,当該表示等は,「第一調整ベルト」に相当する調整ベルト及び「第二調整ベルト」に相当する調整ゴムベルトが「襟後部」に取り付けられていることを示すものである。 したがって,被告各製品の調整ゴムベルト及び調整ベルトは,「襟後部又はその周辺」に取り付けられているといえ,被告の上記主張は理由 がない。 (エ) 以上によれば,被告各製品は構成要件B及びCを充足する。 ウ 整ゴムベルト及び調整ベルトは,「襟後部又はその周辺」に取り付けられているといえ,被告の上記主張は理由 がない。 (エ) 以上によれば,被告各製品は構成要件B及びCを充足する。 ウ構成要件D(ア) 前記イのとおり,被告各製品のボタンは「第一取付部」に,同ボタン穴は「第二取付部」に該当するところ,被告各製品の空気排出口は,ボタン(「第一取付部」)とボタン穴(「第二取付部」)を取り付ける位 置を異ならせることで,服の襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開口度で空気排出口が形成される(構成④)。そうだとすると,被告各製品は,構成要件Dの「前記第一取付部を前記複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けることで」「襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開口度で空気排出口 を形成する」に該当する。 また,被告各製品は,ファンを作動させることで,ファン設置位置から空気を服本体に吸い込み,吸い込まれた空気が,人体と服との間を通過し,襟首等から服本体の外部に排出される(構成①)。この際,人体と服の間には所定の空間しか存在せず,ファン作動時の服内は陽圧とな るので,「前記襟後部と人体の首後部との間に,」「前記空気排出口」が「形成」されるのは,「流通する空気の圧力を利用することによ」るものである。 したがって,被告各製品は,構成要件Dの「前記空気流通路内を流通する空気の圧力を利用することにより,前記襟後部と人体の首後部との 間に,」「前記空気排出口を形成する」に該当する。 (イ) 被告は,被告各製品では,調整ゴムベルト(被告の主張では「ゴムベルト」)及び二つの調整ベルト(被告の主張では「布ベルト」)が,襟後部ではなく,後ヨーク(又は後身頃上部)に取り付けられているから イ) 被告は,被告各製品では,調整ゴムベルト(被告の主張では「ゴムベルト」)及び二つの調整ベルト(被告の主張では「布ベルト」)が,襟後部ではなく,後ヨーク(又は後身頃上部)に取り付けられているから,襟後部と人体の首後部との間に「空気排出口」を形成せず,襟と調整ベ ルトで囲まれた領域を「空気排出口」と理解したとしても,襟部にはそ のような領域は存在しないから,「空気排出口」に該当する部分は存在しないと主張する。また,被告は,被告各製品において,襟後部と調整ゴムベルト及び二つの調整ベルトが設けられた箇所との間には距離があり,伸縮性のある調整ゴムベルトにボタン孔が設けられ,その長さが着用者の姿勢やファンによる送風の強さ等によって影響を受けるので, 「一定」とはいえないから,複数段階の予め定められた開口度で空気排出口を形成することはないとも主張する。 しかし,「前記空気排出口」(構成要件D)は,構成要件Aに記載された「送風手段を用いて人体との間に形成された空気流通路内に空気を流通させる空調服の襟後部と人体の首後部との間に形成される,前記空 気流通路内を流通する空気を外部に排出する空気排出口」を意味する。 そうすると,「前記空気排出口を形成する」場合は,「送風手段を用いて」いる状態,すなわち,送風手段が作動した状態が前提とされる。また,「空調服の襟後部と人体の首後部との間に形成される,」「空気排出口」(構成要件A)との記載から,「前記空気排出口」は,「空調服 の襟後部と人体の首後部との間に形成される」ものである。そして,本件各発明は,「前記空気流通路内を流通する空気を外部に排出する空気排出口について,その開口度を調整するため」(構成要件A)のものであり,「その開口度」を「調整」することで,空気排出口から外部に排出 件各発明は,「前記空気流通路内を流通する空気を外部に排出する空気排出口について,その開口度を調整するため」(構成要件A)のものであり,「その開口度」を「調整」することで,空気排出口から外部に排出する「空気流通路内を流通する空気」の量の調整を行うというもので あって,構成要件Dは,着用者の体格等の影響について全く規定していない。以上の請求項の文言からすると,「襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成する」(構成要件D)とは,送風手段が作動した状態において,空調服内部から空気を排出する際に,① 「襟後部と人体の首後部の間に」「空気排出 口を形成」し,② 当該「空気排出口」が「予め定められた開口度で」 「形成」され,もって,空気排出口から外部に排出する空気量が複数の異なる段階となることを意味するものであり,着用者の体格等の影響は考慮する必要がないと解すべきである。 上記解釈は,本件明細書の記載等によっても裏付けられる。すなわち,本件明細書の記載から,本件各発明は,「襟後部12と首後部との間に 形成される開口部を,他の空気排出部と区別するため,「空気排出口」」と定め(【0003】),この空気排出口の「開口度が大きいほど,空気がその空気排出部から受ける抵抗が小さくなり,その空気排出部から排出される空気の量が多くなる」(【0004】)ので,空気排出口から排出される空気量を調整するために,空気排出口調整機構を利用して, 空気排出口の開口度を調整するものであると理解できる。また,本件明細書においては,本件各発明の実施形態として,例えば,留め具を取り付け可能な貫通孔が複数個設けられている空調服において,① 留め具と貫通孔を取り付けないことで,空気流通路内を流通する空気の圧力によ 細書においては,本件各発明の実施形態として,例えば,留め具を取り付け可能な貫通孔が複数個設けられている空調服において,① 留め具と貫通孔を取り付けないことで,空気流通路内を流通する空気の圧力により襟後部と首後部との間に自動的にある程度の開口部が確保され,この 開口部が空気排出口となって,ここから少量の空気を外部に排出する構成や(【0026】及び【0041】),② 留め具と貫通孔の取り付け位置を異ならせることで,空調服の襟後部付近の弛みの程度を調整し,空気排出口から外部に排出される空気量を異ならせる構成(【0026】,【0041】及び【0048】)が開示されている。 そして,前記イ(ウ)の実験結果(甲5,8,9)は,送風手段が動作した状態において,空調服内部から空気を排出する際のものであり,ボタンを留める位置を服の内側にすればするほど,空気排出口の開口が大きくなり,排出される空気の風速が早くなることを示すものである。 さらに,被告各製品の製品パッケージには,空調服の送風手段が動作 した状態において,空調服の襟後部と人体の首後部の間の空気排出口か ら空気が排出されることが図示され,同封されているチラシ(甲6)や被告各製品の説明資料(甲3)にも,同趣旨の記載がある。このように,被告は,被告各製品において,空調服内部から空気を排出する際に,襟後部と人体の首後部の間に空気排出口を形成し,当該空気排出口が予め定められた開口度で形成されていることを認めている。 したがって,被告の上記主張はいずれも理由がない。 (ウ) 以上によれば,被告各製品は構成要件Dを充足する。 エ構成要件E前記ウのとおり,被告各製品は,「空気排出口」の開口度を調整する「機構」であって,「空気排出口調整機構」を有するから,構成要件Eを 上によれば,被告各製品は構成要件Dを充足する。 エ構成要件E前記ウのとおり,被告各製品は,「空気排出口」の開口度を調整する「機構」であって,「空気排出口調整機構」を有するから,構成要件Eを 充足する。 オ構成要件F前記アないしエのとおり,被告各製品は請求項3に記載の「空気排出口調整機構」を備えるので,構成要件Fを充足する。 カ小括 以上のとおり,被告各製品は,本件発明1の構成要件AないしE及び本件発明2の構成要件Fを充足し,前記前提事実(5)ウのとおり,構成要件Gを充足するので,本件各発明の技術的範囲に属する。 (被告の主張)(1) 被告各製品の構成 ア被告各製品の構成は,以下のとおりである。 (ア) 構成①’1送風手段を用いて人体との間に形成された空気流通路内に空気を流通させる空調服であって,人が着用すると,空調服の襟後部と人体の首後部との間に隙間が形成されることがある。ファンを作動させている場合 には,当該隙間から,前記空気流通路内を流通する空気が外部に排出さ れる。 (イ) 構成①’2前記空気流通路の途中には,後ヨーク(又は後身頃上部)と人体との間(概ね肩甲骨の高さ)に,二つの空気トンネルを形成する空気トンネル形成機構があり,前記空気トンネルを通過した空気は,前記隙間を通 って外に排出される。前記空気トンネル形成機構は,伸縮性のあるゴムベルトと二つの布ベルトを含んでいる。 (ウ) 構成②’前記二つの布ベルトは,ボタンを有し,前記空調服の服地の内表面であって前記後ヨーク(又は後身頃上部)の左右端で襟後部の下約15m m(被告製品1の場合。被告製品2ないし22では約13ないし58mm。)の位置に,縫い付けられている。 (エ) 構成 表面であって前記後ヨーク(又は後身頃上部)の左右端で襟後部の下約15m m(被告製品1の場合。被告製品2ないし22では約13ないし58mm。)の位置に,縫い付けられている。 (エ) 構成③’前記伸縮性のあるゴムベルトは,前記ボタンと取り付けが可能となる複数のボタンホールを有し,前記二つの布ベルトが取り付けられた前記 後ヨーク(又は後身頃上部)の左右端とは異なる前記後ヨーク(又は後身頃上部)の中央で襟後部の下約57mm(被告製品1の場合。被告製品2ないし22では約53ないし61mm。)の位置に,長さ方向中央部が縫い付けられている。 (オ) 構成④’ 前記ボタンを前記複数のボタンホールのいずれか一つに取り付けることで,前記後ヨーク(又は後身頃上部)と人体との間(概ね肩甲骨の高さ)に,前記二つの空気トンネルを形成することを特徴とする空気トンネル形成機構である。人が被告各製品を着用したときに襟後部と首後部の間に形成される隙間の形状は,主として前ファスナーの開閉の程度, 着用者の体格,姿勢等に依存し,ボタンを取り付けるボタンホールの位 置の影響をほとんど受けない。 イ被告各製品の構成に係る原告の主張について(ア) 構成②について被告各製品は,「服の襟後部に調整ゴムベルトを有し,」の構成を備えていない。被告各製品では,調整ゴムベルト(伸縮性のあるゴムベル ト)は,空調服本体の襟後部ではなく,襟後部の下約15mm(被告製品1の場合。被告製品2ないし22では約13ないし58mm。)の後ヨーク(又は後身頃上部)に取り付けられている。 また,被告各製品は,「調整ゴムベルトの有するボタン穴と,ボタンを取り付けることで,首元と服の間に空気の通り道が生まれ,」の構成 を備えていない。被告各製品では 上部)に取り付けられている。 また,被告各製品は,「調整ゴムベルトの有するボタン穴と,ボタンを取り付けることで,首元と服の間に空気の通り道が生まれ,」の構成 を備えていない。被告各製品では,人が着用すると,空調服の襟後部と人体の首後部との間に隙間が形成されることがあるが,「調整ゴムベルトの有するボタン穴と,ボタンを取り付けることで,首元と服の間に空気の通り道が生まれ」るのではない。 (イ) 構成③について 被告各製品では,調整ベルト(二つの布ベルト)は「服の襟後部」に取り付けられていない。 また,前記(ア)のとおり,被告各製品では,調整ゴムベルト(伸縮性のあるゴムベルト)は「襟後部」に取り付けられていない。 (ウ) 構成④について 被告各製品の調整ゴムベルト(伸縮性のあるゴムベルト)と調整ベルト(二つの布ベルト)は,後ヨーク(又は後身頃上部)と人体の間(概ね肩甲骨の高さ)に二つの空気トンネルを形成するものであり,襟後部と人体の首後部との間に「空気排出口」なるものを形成するものではない。 また,襟後部と人体の首後部との間の隙間の形状は,主として前ファ スナーの開閉の程度,人体の体格,姿勢等に依存し,「ボタンとボタン穴を取り付ける位置」の影響をほとんど受けない。 (2) 被告各製品の構成要件充足性ア構成要件A否認する。 イ構成要件B及びC(ア) 本件明細書の記載(【0010】,【0011】及び【0015】)によれば,本件発明1では,「前記襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成する」(構成要件D)手段として,「前記襟後部又はその周辺」に「第一調整ベルト」 及び「第二調整ベルト」を取り付けるこ 体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成する」(構成要件D)手段として,「前記襟後部又はその周辺」に「第一調整ベルト」 及び「第二調整ベルト」を取り付けること(構成要件B及びC)が規定されたものと理解される。 このような本件発明1の意義からすると,上記「襟後部又はその周辺」の「その周辺」とは,「前記襟後部と人体の首後部との間に」「形成」される「前記空気排出口」の「開口度」を「予め定め」ることができる 程度に,「襟後部」に近接したものでなければならない。この位置について,本件明細書の記載においては,「襟後部12に設けるよりも,襟後部12の少し下側」(【0036】)と表現され,本件明細書の図面では,襟後部にほぼ隣接する位置が示されている(【図4】)。 しかし,被告各製品では,襟後部と伸縮性のあるゴムベルト及び二つ の布ベルトが取り付けられた位置との間にかなりの距離がある(構成②’及び③’)。また,伸縮性のあるゴムベルトのいずれのボタンホールにボタンを取り付けるかによって襟後部と首後部の間に形成される隙間の形状を定めることはできず,同形状は主として前ファスナーの開閉の程度,着用者の体格,姿勢等に依存するので(構成④’),ボタンを取 り付けるボタンホールは「開口度」を「予め定め」ることができる位置 にない。 したがって,言葉の意味からしても作用効果の観点からしても,被告各製品の伸縮性のあるゴムベルト及び二つの布ベルトは「襟後部又はその周辺」に取り付けられていないので,構成要件B及びCを充足しない。 (イ) 原告は,「襟後部又はその周辺」とは,空調服内部から襟後部と人体 の首後部の間の空気排出口を通って外部に排出する空気量が異なる けられていないので,構成要件B及びCを充足しない。 (イ) 原告は,「襟後部又はその周辺」とは,空調服内部から襟後部と人体 の首後部の間の空気排出口を通って外部に排出する空気量が異なる複数の段階となることが可能となる襟後部又は襟後部の周りの部分をいうところ,実験結果(甲5,8,9)や被告が顧客に提供する説明資料等(甲3,6)によれば,調整ゴムベルト及び調整ベルトは「襟後部又はその周辺」に取り付けられていることが認められると主張する。 しかし,原告の実験において測定しているものは,「風速」であり,「排出する空気量」ではないから,被告各製品において「第一調整ベルト」及び「第二調整ベルト」が「空気排出口を通って外部に排出する空気量が異なる複数の段階となることが可能となる襟後部又は襟後部の周りの部分」に取り付けられているとはいえない。また,被告が顧客に提 供する資料等にある「首の後ろ」等の記載は,ゴムベルトのおおよその取り付け位置を示したものにすぎない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 ウ構成要件D(ア) 被告各製品の伸縮性のあるゴムベルト及び二つの布ベルトは,襟部で はなく,その下の後ヨーク(又は後身頃上部)に取り付けられているので(構成②’及び③’),これらは,後ヨーク(又は後身頃上部)に二つの空気トンネルを形成するものであり,襟後部と人体の首後部との間に「空気排出口」を形成するものではない。仮に,襟と「調整ベルト」で囲まれた領域を「空気排出口」と理解したとしても,襟部に襟と伸縮 性のあるゴムベルト及び二つの布ベルトで囲まれた領域はないから, 「空気排出口」に相当する部分は存在しない。 また,襟後部と伸縮性のあるゴムベルト及び二つの布ベルトが取り 襟部に襟と伸縮 性のあるゴムベルト及び二つの布ベルトで囲まれた領域はないから, 「空気排出口」に相当する部分は存在しない。 また,襟後部と伸縮性のあるゴムベルト及び二つの布ベルトが取り付けられた位置との間には距離があるので(構成②’及び③’),伸縮性のあるゴムベルト及び二つの布ベルトによって肩甲骨付近に「空気の圧力」による何らかの空気トンネルができたとしても,「襟後部と人体の 首後部との間に,複数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成すること」はない。 襟後部と首後部の間に形成される隙間の形状は,主として前ファスナーの開閉の程度,着用者の体格,姿勢等に依存し(構成④’),ボタンを取り付けるボタンホールの位置の影響をほとんど受けず,また,着用 者の姿勢等により伸縮性のあるゴムベルトの長さが変化し,これに伴って上記形状も変化するので,上記形状は,ボタンを取り付けるボタンホールの位置によって「複数段階の予め定められた」ものではない。 したがって,被告各製品は「前記襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成する」とはいえ ないから,構成要件Dを充足しない。 (イ) 原告は,構成要件Dの「予め定められた開口度」とは,着用者の体格等の影響があったとしても,「複数段階」の開口の度合いが形成されれば足り,また,本件各発明は,着用者の体格等の一定の影響は許容するものであって,原告の実験結果(甲5,8,9)によれば,被告各製品 は構成要件Dを充足し,このことは被告各製品のパッケージやチラシ(甲6)の記載からも明らかであると主張する。 しかし,構成要件Dは,「前記襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成する」と規定しており ッケージやチラシ(甲6)の記載からも明らかであると主張する。 しかし,構成要件Dは,「前記襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成する」と規定しており,形成される「前記空気排出口」が「複数段階の予め定められた開 口度」のものとなっていることが要件となっているから,単に「複数段 階の開口度」となっていればよいというものではない。したがって,原告の上記主張は,特許請求の範囲の記載から,「開口度」が「予め定められた」ものであるという要件を除外するものであって,失当である。 また,本件明細書においては,「強度のある布を用いることが望ましい。」(【0038】)との記載があるから,本件各発明は,「予め定 められた開口度」を形成するために,調整ベルトが伸縮しないものであることを前提としているといえる。この点,原告は,本件特許の審査段階での意見書(乙8)で,本件各発明の「予め定められた開口度で前記空気排出口を形成する」(構成要件D)が「形成される空気排出口の開口度が一義的に定まるもの」とする本件明細書の記載等(【0037】, 【0038】,【0048】,【図4】及び【図5】)に根拠を有する旨を主張していたところ,伸縮性のあるゴムベルトは,長さが変化するものであるから,「形成される空気排出口の開口度が一義的に定まるもの」とはいえない。 そして,原告の実験結果は,ボタンの取り付け位置を異にする場合に おける「風速」を測定しただけのものであって,「空気排出口」の「開口度」が「予め定められた」ものであることの証拠たり得ない。 さらに,被告各製品のチラシ等の図は,構成①’1に合致するものであり,そこに記載されている「首の後ろ」は,おおよその位置を示したものにすぎず,本件各発明の「襟後 」ものであることの証拠たり得ない。 さらに,被告各製品のチラシ等の図は,構成①’1に合致するものであり,そこに記載されている「首の後ろ」は,おおよその位置を示したものにすぎず,本件各発明の「襟後部」に該当することを示したもので はない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 エ構成要件E否認する。 オ構成要件F 否認する。 カ小括以上のとおり,被告各製品は,本件発明1の構成要件AないしE及び本件発明2の構成要件Fを充足しないので,本件各発明の技術的範囲に属しない。 2 争点2-1(明確性要件違反)について (被告の主張)(1) 「空気排出口」について本件明細書では,「襟後部12と首後部との間に形成される開口部を,他の空気排出部と区別するため,「空気排出口」と称することにする。」(【0003】)とあり,「空気排出口」は,人体と衣服との間を流通した 空気が外部に排出される開口部(「空気排出部」)のうち,襟後部12と首後部との間に形成される開口部のことを指し,「空気排出口調整機構」により形成されるものに限られていない。 他方で,本件明細書では,「新たな空気排出口調整機構により襟後部12と首後部との間に空気排出口13を形成しなくとも,送風手段11を作動さ せると,空気の圧力により襟後部12と首後部との間に自動的にある程度の開口部が確保されるので,使用目的によっては空気排出口13を形成しないほうがよい場合もある。」(【0009】)とあり,「空気排出口」は「空気排出口調整機構」により形成されるものに限られる記載ぶりとなっている。 したがって,「空気排出口」が自然に形成されるものを含むのか,「空気 排 009】)とあり,「空気排出口」は「空気排出口調整機構」により形成されるものに限られる記載ぶりとなっている。 したがって,「空気排出口」が自然に形成されるものを含むのか,「空気 排出口調整機構」により形成されるものに限られるのかという点において,本件明細書における「空気排出口」の記載は一貫しておらず,当業者はその意味を理解することができない。 (2) 「空気排出口」の「開口度」について本件発明1の構成要件Dは,「空気排出口」が「複数段階の予め定められ た開口度」で形成されると規定しているところ,前記(1)のとおり,「空気排 出口」の意味が不明であるため,「空気排出口」の「開口度」の意味や測定方法も不明である(本件明細書でも「ここで,空気排出部の性質上,各空気排出部の開口度を明確に数値で表すことはできない」(【0004】)とある。)。 また,襟後部12と首後部との間の隙間の形状は,主に着用者の体格,姿 勢,着用状態等に依存し,仮に「複数段階の予め定められた開口度」がこれらの要素の影響を受けない不変の何らかの測定値であるならば,それが何を意味するのか,どのように測定するのかが不明である(一方で,「空気排出口」の「開口度」が着用者の体格等により変化するパラメータであるならば,およそほとんどの調整機構は「予め定められた開口度」の要件を充足しな い。)。 したがって,「空気排出口」の「開口度」の意味や測定方法が不明であり,その結果,「複数段階の予め定められた開口度」の意味も不明である。 (3) 小括よって,本件発明1に係る構成要件Dの「前記襟後部と人体の首後部との 間に,複数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成する」部分は不明確であるから,本件発明1につい (3) 小括よって,本件発明1に係る構成要件Dの「前記襟後部と人体の首後部との 間に,複数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成する」部分は不明確であるから,本件発明1については,明確性要件違反が認められ,同様に,本件発明2についても,明確性要件違反が認められる。 (原告の主張)(1) 「空気排出口」について 本件明細書では,送風手段を作動させた状態での「襟後部12と首後部との間に形成される開口部を,他の空気排出部と区別するため,「空気排出口」と称することに」(【0003】)している。本件明細書に記載された「第一実施形態」(【0026】)及び「第二実施形態」(【0041】)のいずれの場合も,少量の空気を排出したいときは,留め具と貫通孔を取り付け ないことで,空気流通路内を流通する空気の圧力により自動的にある程度の 開口部が確保され,この開口部を「空気排出口」とし,大量の空気を排出したいときは,留め具と貫通孔を取り付けることで,空調服の襟後部の付近がゆるむので,これを利用して大きく開口された「空気排出口」を確保し,相当量の空気の排出を実現する。そして,留め具と貫通孔の取り付ける位置を段階的に異ならせることで,空調服の襟後部の付近のゆるみの程度を調整し, 空調服の「空気排出口」から外部に排出される空気量を異ならせる(【0026】,【0041】及び【0048】)。 このように,本件明細書における一般的な記載(【0003】)によっても,具体的な「空気排出口」の調整が記載された第一実施形態及び第二実施形態の記載によっても(【0026】,【0041】及び【0048】), 「空気排出口」とは,送風手段を作動させた状態における襟後部と首後部との間に形成される開口部を意味するとの 態及び第二実施形態の記載によっても(【0026】,【0041】及び【0048】), 「空気排出口」とは,送風手段を作動させた状態における襟後部と首後部との間に形成される開口部を意味するとの技術的範囲を確定できる。 したがって,本件特許の特許請求の範囲の記載は,本件各発明について明確性要件を具備する。 (2) 「空気排出口」の「開口度」について 前記1(原告の主張)(2)及び前記(1)のとおり,「襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成する」(構成要件D)とは,送風手段が作動した状態において,空調服内部から空気を排出する際,「襟後部と人体の首後部の間に」「空気排出口を形成」し,当該「空気排出口」が「予め定められた開口度で」「形成されている」こと により,「空気排出口」から外部に排出する空気量が複数の異なる段階となることを意味する。よって,「空気排出口」も「複数段階の予め定められた開口度」も,特許請求の技術的範囲を確定できる記載である。 また,前記(1)のとおり,本件明細書においては,留め具と貫通孔を取り付けない,又は段階的に取り付ける構成をもって,「複数段階の予め定められ た開口」が形成されることが開示されており(【0026】,【0041】, 【0048】等),その複数段階の開口の大きさの度合いを「開口度」と表現している。 化学分野におけるパラメータで規定された数値限定発明とは異なり,本件特許においては,「開口度」につき数値限定はされていないから,本件明細書における上記の開示を超えて開口度の測定方法等を開示することは,特許 発明の技術的範囲を確定する上で必要がない。 (3) 小括以上のとおり,本件各発明について,明確性要件違反の無効理 書における上記の開示を超えて開口度の測定方法等を開示することは,特許 発明の技術的範囲を確定する上で必要がない。 (3) 小括以上のとおり,本件各発明について,明確性要件違反の無効理由は認められない。 3 争点2-2(乙2公報を主引用例とする新規性欠如)について (被告の主張)(1) 本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である乙2公報には,以下の各発明が開示されている(以下,それぞれ,「乙2発明1」,「乙2発明2」という。符号については,別紙3乙2公報図面参照。)。 ア乙2発明1 送風手段(ファン50)を用いて人体との間に形成された空気流通路(空気流通部30)内に空気を流通させる空調服の襟後部と人体の首後部との間に形成される,前記空気流通路内を流通する空気を外部に排出する空気排出口(別紙4乙2発明1図面)について,その開口度(流通路の大きさ)を調整するための空気排出口調整機構(流通路拡張部80,別紙4 乙2発明1図面)において,第一取付部を有し,前記空調服の服地の内表面であって前記襟後部又はその周辺の第一の位置に取り付けられた第一調整ベルト(面状テープ80a)と,前記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能とな る複数の第二取付部を有し,前記第一調整ベルトが取り付けられた前記第 一の位置とは異なる前記襟後部又はその周辺の第二の位置に取り付けられた第二調整ベルト(面状テープ80b)と,を備え,前記第一取付部を前記複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けることで前記空気流通路内を流通する空気の圧力を利用することにより,前記襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開 口度で前記 記複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けることで前記空気流通路内を流通する空気の圧力を利用することにより,前記襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開 口度で前記空気排出口を形成することを特徴とする空気排出口調整機構。 イ乙2発明2乙2発明1の流通路拡張部を備えた空調服の服本体。 (2) 本件発明1と乙2発明1を,本件発明2と乙発明2を,それぞれ対比すれば,本件各発明は乙2発明1及び2と全て一致し,乙2公報にその全てが開示されていると認められる。 したがって,本件各発明は,いずれも,乙2公報に記載されている発明であるから,新規性欠如の無効理由が認められる。 (3) 原告の主張についてア 「第一調整ベルト」(構成要件B)を有しないとの主張について(ア) 原告は,乙2発明1において,「前記空調服の服地の内表面であって前記襟後部又はその周辺の第一の位置に取り付けられ」た面状テープ80aは全面が接合面であり,取付部であるから,乙2発明1は「第一調 整ベルト」を有しないと主張する。 しかし,本件発明1において,「第一取付部」は「第二取付部」と「取り付けが可能となる」部分である(構成要件C)とされているにすぎず,「第一調整ベルト」の「第一取付部」以外の部分が「第二調整ベルト」と「取り付けが可能」であることを排除していない。よって,乙 2発明1の面状テープ80aの全面が接合面であることは,面状テープ 80aが「第一調整ベルト」に相当しないとする理由とはならず,面状テープ80aのうち面状テープ80bと係合する部分を「第一取付部」と理解し,それを含んだ「第一調整ベルト」があると理解すれば足りる。 したがって,原告の上記主張は 当しないとする理由とはならず,面状テープ80aのうち面状テープ80bと係合する部分を「第一取付部」と理解し,それを含んだ「第一調整ベルト」があると理解すれば足りる。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (イ) 原告は,乙2発明1には「複数の第二取付部」が存在せず,これに取 り付けられるはずの「第一取付部」も存在しないから,「第一調整ベルト」を有しないと主張する。 しかし,乙2発明1の面状テープは,フック面とループ面を重ね合わせて,フックがループに引っかかることにより接合させるものであるところ,「第一取付部」をフック面とし,「第二取付部」をループ面とし た場合には,「第二取付部」(ループ面)は,「第一取付部」(フック面)の形状に対応して「第一取付部」と取り付けが可能となる(フック面とループ面を逆にした場合も同様である。)。したがって,乙2発明1には,「前記第一取付部の形状(フック面)に対応して前記第一取付部と取り付けが可能となる複数の第二取付部(ループ面)」が存在する。 また,乙2発明1においては,面状テープ80bに面状テープ80aを取り付けたときに,面状テープ80bのうち面状テープ80aを取り付けた部分がその時々の「第二取付部」となるから,「第一取付部の形状に対応」した「複数」の「第二取付部」を有するといえる。 さらに,面状テープ80aに面状テープ80bをある長さで取り付け たときの取り付け部分を「第一取付部」として固定的に考えたとしても,面状テープ80bを別の長さで取り付けたときには,当該「第一取付部」に対応する取り付け部分が,先の「第二取付部」とは別の「第二取付部」となると理解することができるから,「前記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能となる複数の第二取付部」を有する に対応する取り付け部分が,先の「第二取付部」とは別の「第二取付部」となると理解することができるから,「前記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能となる複数の第二取付部」を有する といえる。 したがって,乙2発明1において,「複数の第二取付部」は存在するから,原告の上記主張は理由がない。 イ 「第二調整ベルト」(構成要件C)を有しないとの主張について(ア) 原告は,前記ア(ア)の「第一調整ベルト」が存在しないというのと同様の理由で,乙2発明1において,「前記襟後部又はその周辺の第二の位 置に取り付けられ」るのは取付部であるから,「第二調整ベルト」を有しないと主張する。 しかし,前記ア(ア)と同様に,原告の上記主張には理由がない。 (イ) また,原告は,乙2公報では「第一取付部」が開示されていないので,「前記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能と なる複数の第二取付部」という概念自体が成立し得ないとして,乙2発明1は「第二調整ベルト」を有しないとも主張する。 しかし,前記ア(イ)のとおり,乙2発明1においては,「前記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能となる複数の第二取付部」が存在し,乙2公報には「第一取付部」の開示があるから,原 告の上記主張には理由がない。 ウ 「前記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能となる複数の第二取付部」(構成要件C)を有しないとの主張について原告は,① 面状テープ80a及び面状テープ80bは,一端から他端までの全面が一つの取付部であるから,乙2発明1は,一つの第一取付部と, 一つの第二取付部を有するのみで,「複数の第二取付部」を有しない,②構成要件Cでは「第一取付部」と一対一の形状対応 端までの全面が一つの取付部であるから,乙2発明1は,一つの第一取付部と, 一つの第二取付部を有するのみで,「複数の第二取付部」を有しない,②構成要件Cでは「第一取付部」と一対一の形状対応をする「第二取付部」が「複数」存在することが必要であるとの解釈を前提に,ある部分を第一取付部と考え,それに形状対応する部分を第二取付部とすると,これは一対一の形状対応をしているといえるが,上記第一取付部を別の位置変えた 場合には,別の第二取付部となり,上記第一取付部とは一対一の形状対応 をしていないことになるから,「複数の第二取付部」がないと主張する。 まず,上記①の点については,前記ア(ア)のとおり,本件発明1は「第一調整ベルト」の「第一取付部」以外の部分が「第二調整ベルト」と取り付け可能な形状であることを排除していないから,乙2発明1の面状テープ80aの全面を「第一取付部」に対応させなければならない理由はなく, 同様に,面状テープ80bの全面を「第二取付部」に対応させなければならない理由もないから,面状テープ80a及び面状テープ80bがそれぞれ一つの第一取付部及び一つの第二取付部しか有しないとはいえない。 次に,上記②の点について,構成要件Cにおいては,「第二取付部」が「前記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能とな る」とされているのみで,原告が主張するような「一対一の形状対応」は要求されていない。また,本件明細書に記載された「一組の調整紐21を結んで所望の長さになるようにすることは難し」いという本件発明1の課題(【0006】)に照らしても,「第一取付部」と「第二取付部」の「一対一の形状対応」は,上記課題の解決とは関係がないから,これを要 求するものではないといえる。仮に,「一対一」の形状 1の課題(【0006】)に照らしても,「第一取付部」と「第二取付部」の「一対一の形状対応」は,上記課題の解決とは関係がないから,これを要 求するものではないといえる。仮に,「一対一」の形状対応が必要であると考えたとしても,構成要件Cは,第一取付部としたものを取り付けられる箇所が複数あるという程度のことを定めたものにすぎないから,面状テープ80aの「第一取付部」と面状テープ80bの「第二取付部」のいずれの対応のさせ方においても,「一対一」の形状対応があるといえる。 以上によれば,乙2発明1は,「前記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能となる複数の第二取付部」を有しており,原告の上記主張は理由がない。 エ 「前記第一取付部を前記複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けることで…前記空気排出口を形成」(構成要件D)しないとの主 張について 原告は,乙2発明1においては,「複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付ける」という態様が観念できないと主張するが,前記ア(イ)のとおり,これを観念することはできるから,原告の主張には理由がない。 オ 「複数段階の予め定められた開口度」(構成要件D)を有しないとの主 張について原告は,「面状テープ」は重なり合う面の面積を自在に調整できるので,乙2発明1においては,「複数段階」の「予め定められた」開口の度合いは形成できないと主張する。 しかし,本件発明1は,「複数段階の」「開口度で前記空気排出口を形 成する」ことを規定するのであって,連続的な開口度で空気排出口が形成できることは排除していないから,「面状テープ」が重なり合う面の面積を自在に調整できることは,「複数段階の」「開口度で前記空気排出口を形成する」ことを否定する って,連続的な開口度で空気排出口が形成できることは排除していないから,「面状テープ」が重なり合う面の面積を自在に調整できることは,「複数段階の」「開口度で前記空気排出口を形成する」ことを否定する理由にならない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (原告の主張)(1) 本件発明1の「第一調整ベルト」は,「第一取付部」を有するところ(構成要件B),乙2発明1の面状テープ80aは,その一端から他端までの全面が接合面となって取付部を構成しているので,面状テープ80a自体が一つの取付部である。また,乙2公報の図面(別紙3乙2公報図面【図2】(b)) において,X1の位置の服地の内表面に取り付けられているのは,面状テープ80aである。したがって,乙2発明1において,「前記空調服の服地の内表面であって前記襟後部又はその周辺の第一の位置に取り付けられ」るのは,「調整ベルト」ではなく,「取付部」である。さらに,「第一取付部」は「複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付ける」ためのもの であり(構成要件D),後記(3)のとおり,乙2発明1には「複数の第二取付 部」が存在しないので,これに取り付けられるはずの「第一取付部」も存在しない。したがって,乙2公報に開示されている面状テープ80aが「前記空調服の服地の内表面であって前記襟後部又はその周辺の第一の位置に取り付けられた」「ベルト」だとしても,当該ベルトは「第一取付部を有し」ているわけではないので,乙2発明1は「第一調整ベルト」を有しない。 以上のとおり,本件発明1は「第一調整ベルト」を有するのに対し,乙2発明1はこれを有しない。 (2) 本件発明1の「第二調整ベルト」は,「第二取付部」を有するところ(構成要件C),乙2発明1の面状テープ80bは 本件発明1は「第一調整ベルト」を有するのに対し,乙2発明1はこれを有しない。 (2) 本件発明1の「第二調整ベルト」は,「第二取付部」を有するところ(構成要件C),乙2発明1の面状テープ80bは,その一端から他端までの全面が接合面となって取付部を構成しているので,面状テープ80b自体が一 つの取付部である。また,乙2公報の図面(別紙3乙2公報図面【図2】(b))において,X2の位置の服地の内表面に取り付けられているのは,面状テープ80bである。したがって,乙2発明1では,「前記襟後部又はその周辺の第二の位置に取り付けられ」るのは,「調整ベルト」ではなく,「取付部」である。さらに,前記(1)のとおり,乙2発明1には「第一取付部」が存在し ないので,これに取り付けられるはずの「前記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能となる複数の第二取付部」を観念することはできない。そうだとすると,乙2公報に「前記」「ベルトが取り付けられた前記第一の位置とは異なる前記襟後部又はその周辺の第二の位置に取り付けられた」「ベルト」が開示されているとしても,当該ベルトは「第二取付 部を有し」ているわけではないので,乙2発明1は「第二調整ベルト」を有しない。 以上のとおり,本件発明1は「第二調整ベルト」を有するのに対し,乙2発明1はこれを有しない。 (3) 本件発明1の「第二調整ベルト」は,「複数の第二取付部」を有し,この 「第二取付部」は,「前記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取 り付けが可能となる」ものであるから(構成要件C),「第一取付部」と一対一の形状対応をする「第二取付部」が「複数」存在することが必要である。 これに対して,乙2発明1の面状テープ80a及び面状テープ80bは, ものであるから(構成要件C),「第一取付部」と一対一の形状対応をする「第二取付部」が「複数」存在することが必要である。 これに対して,乙2発明1の面状テープ80a及び面状テープ80bは,いずれも,その一端から他端までの全面が接合面となり,一つの取付部を構成するので,乙2発明1は一つの「第一取付部」と一つの「第二取付部」し か有せず,面状テープ80bは「複数の第二取付部」を有しない。また,面状テープ同士が接合している部分だけが取付部を構成すると考えたとしても,面状テープは任意の箇所で接合され,取り付け位置に応じて取付部の取り付け面積(形状)が常に変化する。そのため,ある部分を第一取付部とし,それに形状対応する部分を第二取付部としたとしても,上記第一取付部を別の 位置に変えると,接合部(第二取付部)の面積(形状)は上記第一取付部と一対一の形状対応をしないことになるから,乙2発明1は,「第一取付部」に一対一の形状対応をした「第二取付部」を「複数」有しない。 したがって,本件発明1は「前記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能となる複数の第二取付部を有」するのに対し,乙2発 明1はこれを有しない。 (4) 本件発明1の「空気排出口」は,「前記第一取付部を前記複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けることで」「形成」されるところ(構成要件D),前記(3)のとおり,乙2発明1の面状テープ80bは「複数の第二取付部」を有しないので,空気排出口は「前記第一取付部を前記複数 の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けることで」「形成」されない。 したがって,本件発明1は「前記第一取付部を前記複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けることで…前記空気排出口を形成 なくともいずれか一つに取り付けることで」「形成」されない。 したがって,本件発明1は「前記第一取付部を前記複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けることで…前記空気排出口を形成」するのに対し,乙2発明1はこのように空気排出口を形成しない。 (5) 本件発明1は「複数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成 する」のに対し(構成要件D),前記(3)及び(4)のとおり,乙2発明1の面状テープ80bは「複数の第二取付部」を有せず,「空気排出口」は「前記第一取付部を前記複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けること」により形成されない。また,乙2発明1の面状テープ80a及び面状テープ80bは,重なり合う面の面積を自在に調整することができるので, 重なり合う面を「複数段階」で「予め定め」ることはできない。 したがって,本件発明1は「複数段階の予め定められた開口度」を有するのに対し,乙2発明1はこれを有しない。 (6) 以上によれば,本件各発明は乙2公報にその全てが開示されているものではないから,本件各発明について,新規性欠如の無効理由は認められない。 4 争点2-3(乙2公報を主引用例とする進歩性欠如)について(被告の主張)(1) 本件発明1が乙2発明1に基づいて,本件発明2が乙2発明2に基づいて,それぞれ容易に発明をすることができたこと本件発明1は「襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められ た開口度で前記空気排出口を形成する」のに対し,乙2発明1は流通路拡張部80の面状テープ80a及び面状テープ80bをつないだときの長さを無段階で調節できるものであるところ,仮にこの点が本件発明1と乙2発明1の相違点となるとしても,以下のとおり,本件発 1は流通路拡張部80の面状テープ80a及び面状テープ80bをつないだときの長さを無段階で調節できるものであるところ,仮にこの点が本件発明1と乙2発明1の相違点となるとしても,以下のとおり,本件発明1は,乙2発明1に基づいて容易に発明をすることができたものであり,進歩性が認められる余地は ない。 (2) 乙2発明1及び2に特開2007-270415号公報(乙3。以下「乙3公報」という。)に開示された発明を組み合わせることによる進歩性欠如本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である乙3公報には,暑さを調節するために衣服の襟部の開度を調節する機構であり,数か所 に設けられた釦(ボタン)又は留め孔で開度を調整する構成と,数か所に設 けられたマジックテープ(面状テープ)によって複数段階の予め定められた開口度に襟部を調節する構成とが,併記される形で開示されている(以下,これらのうちボタンによって調整する構成に係る発明を「乙3発明1」という。)。また,上記機構に関して,マジックテープを3点設ける構成も開示されている(以下,この構成に係る発明を「乙3発明2」という。)。 このように,乙3公報においては,マジックテープを使用して開度を調整する発明と乙3発明1及び2とが等価なものとして併記されている。 また,乙2発明1と乙3発明1及び2は,いずれも衣服という同じ分野の発明であり,暑さを調節するという課題も同様である。 一般論としても,マジックテープを用いれば,長さを調整することは容易 であるが,若干ずれたり,首筋等に触れるとチクチクしたりすることがあるのに対し,乙3発明1のボタンを使用すれば,取り付けるのに若干手間はかかるものの,確実に固定することができる上,チクチクすることもない。このことは,日常的 筋等に触れるとチクチクしたりすることがあるのに対し,乙3発明1のボタンを使用すれば,取り付けるのに若干手間はかかるものの,確実に固定することができる上,チクチクすることもない。このことは,日常的な経験則から自明であるといえる。 さらに,マジックテープとして,連続したものを使用する(乙2発明1) か,三つに分けたものを使用する(乙3発明2)かは,当業者にとって設計的事項というべきである。 したがって,襟後部に取り付ける部材として,乙2発明1のマジックテープに代えて乙3発明1のボタンを組み合わせること,又は乙3発明2の三つのマジックテープを組み合わせることは,いずれも設計的事項の置換程度の 問題にすぎないというべきである。 以上のとおり,当業者は,乙2発明1と乙3発明1又は2とを組み合わせることにより本件発明1を容易に発明することができ,同様に,乙2発明2と乙3発明1又は2とを組み合わせることにより本件発明2を容易に発明することができたものである。 (3) 乙2発明1及び2に周知技術を組み合わせることによる進歩性欠如 アマジックテープで留めることによって開度を調節する構造も,複数のボタン若しくは留め孔又は複数のマジックテープで調節する構造も,いずれも周知慣用の技術にすぎない。このことは,以下の各文献からも明らかである。 (ア) 乙2公報 主引用例である乙2公報自体に,「本実施例では,調節部40の開口の度合を調節するのにファスナーを使用する場合について説明したが,ファスナーの代わりに,ボタンやホックや面状ファスナー等を使用してもよい。」(【0027】)として,ボタン,面状ファスナー(面状テープ及びマジックテープと同義),ホック,ファスナーは,いずれにで も置き換えられることが開示されている ファスナー等を使用してもよい。」(【0027】)として,ボタン,面状ファスナー(面状テープ及びマジックテープと同義),ホック,ファスナーは,いずれにで も置き換えられることが開示されている。 (イ) 乙3公報乙3公報にも,襟の開度を調節するという課題を解決するための手段として,釦(ボタン)又は留め孔を設ける構造(【0006】),ホック構造(【0007】)及びマジックテープ構造(【0009】)が併 記されており,一枚の面状テープに代えて,3点に分けた面状テープを使ってよいこと(【0021】)も開示されている。 (ウ) 実開平6-42909号公報(乙5)上記公報には,「互いに着脱が可能な構造としては,ループ状繊維が多数形成されたテープとフック状繊維が多数形成されたテープの組合せ (通称マジックテープ),ボタンとボタンを通す穴の組合せ,雄雌スナップの組合せ,ベルトとバックルの組合せ等の公知の手段を利用する。」(【0013】)として,マジックテープとボタン及びボタン穴の組合せとが併記されている。 (エ) 特開2009-167553号公報(乙6) 上記公報には,「本実施の形態では,袖口の長さを調整する長さ調整 部材としての面ファスナ12を使用した場合について説明したが,これに限らず,長さ調整部材は,簡単な操作で,着用者自身が袖口の長さを調整することが可能であれば,ホック,ボタン,ゴム等,他の係合部材を使用してもよいことは勿論である。」(【0037】)との記載がある。 (オ) 特開2009-138321号公報(乙7)上記公報には,「なお,上記の例は,各結合手段として面ファスナを用いた場合を説明したが,互いに着脱可能なものであれば,スナップ,ボタン等の他の手段を用いても差し支えのないものである 号公報(乙7)上記公報には,「なお,上記の例は,各結合手段として面ファスナを用いた場合を説明したが,互いに着脱可能なものであれば,スナップ,ボタン等の他の手段を用いても差し支えのないものである。」(【0032】)との記載がある。 (カ) その他の周知技術に係る証拠衣服の分野においてボタンやファスナーを用いて係止位置を調節することが周知技術であったとの事実は,特開2010-150719号公報(乙13),特開2011-72499号公報(乙14),特開2007-46192号公報(乙15)及び実用新案登録第3099181 号公報(乙16)によっても認められる。 イ以上のとおり,マジックテープで留めることによって調節する構造を,複数のボタン及び留め孔のような構造又は複数のマジックテープの構造に置き換えることは,当業者における周知技術の置き換えにすぎない。また,これによってなんらかの顕著な効果が奏されるものでもない。 したがって,当業者は,乙2発明1に周知技術を組み合わせることにより本件発明1を容易に発明することができ,また,同様に,乙2発明2に周知技術を組み合わせることにより本件発明2を容易に発明することができたといえる。 (4) 原告の主張について ア原告が主張する本件各発明と乙2発明1及び2との相違点 原告が主張する本件発明1と乙2発明1との相違点は,次のとおりまとめることができる。本件発明2と乙2発明2との相違点も,同様である。 空気排出口調整機構における係止位置を調節する機構が,本件発明では,「係合位置が予め固定され,着用者が任意に調整できない」構成であるのに対し(乙8参照), 乙2発明1では,2つの面状テープは任意の位置で係止できる点イ乙2発明1 機構が,本件発明では,「係合位置が予め固定され,着用者が任意に調整できない」構成であるのに対し(乙8参照), 乙2発明1では,2つの面状テープは任意の位置で係止できる点イ乙2発明1と乙3発明1又は2との組合せについて(ア) 技術分野,課題,作用及び機能についてa 原告は,乙2発明1はファンの作用による身体を冷却する「空調衣服」の技術分野に属し,乙3発明1は,動力を用いない通常の「衣服」 の技術分野に属するから,両者は異なる技術分野に属すると主張する。 しかし,両者は同じ「衣服」の技術分野に属するものであり,乙2発明1の「空調衣服」には,「ファスナー」,「面状テープ」,「紐状部材」,「ボタン」,「ホック」など通常の「衣服」の技術が種々利用されている上,乙2発明1で用いられている「面状テープ」と乙 3発明1で用いられる数箇所の留め孔又はボタンは,係止位置を調整するという作用,機能を有するという点でも共通しているから,技術分野が共通しているか,少なくとも関連性がある。 b 原告は,乙2発明1は,ファンという動力により「身体の各部位を流れる空気の量を調節する」ことを課題にするのに対し,乙3発明1 は,通常の動力を用いない「衣服」分野の「シャツ」の「寒暑の変化」対応や,「儀礼上」の体裁を課題にするものであり,両者は,課題が異質であり,異なると主張する。 しかし,乙2公報の「【発明が解決しようとする課題】」には,「襟元が冷えすぎる」,「両腕の部分を十分に冷却することができな くなる」(【0004】)などの記載があるところ,乙3公報には, 「従来の構成でのシャツ等の問題点は,襟首において,開度が一定に決められており,例えば,寒暑の変化のときには,襟の開度を狭く又は広くして体温の上昇・下降を簡単 記載があるところ,乙3公報には, 「従来の構成でのシャツ等の問題点は,襟首において,開度が一定に決められており,例えば,寒暑の変化のときには,襟の開度を狭く又は広くして体温の上昇・下降を簡単に防止できる構成にはなっていない」(【0004】)などの記載があり,どちらも体温を調節するという課題が記載されているといえ,少なくとも課題が異質といえるよ うなものではない。 c 原告は,乙2発明1は,ファンという動力により流れる空気の量を調整することができる作用及び機能を有するのに対し,乙3発明1は,通常の動力を用いない「襟のある衣服」分野の「寒暖の変化又は礼節に応じ」ることが可能となる作用及び機能を有するものであり,両者 は,作用及び機能が異なると主張する。 しかし,本件発明1の空気排出口調整機構における係止位置を調節する機構は動力を用いたものではなく,係止位置を調整する機構としての乙2発明1の面状テープの作用及び機能と乙3発明1又は2の作用及び機能とは,繋ぐ場所を変えることによって長さや形状を調節し たり,外すことによって分離したりするという点で共通している。 また,乙3公報において,「襟の開度」を「広く」することによって「体温の上昇」を「防止できる」(【0004】)のは,襟の係止位置(開度)が調節されることによって,身体とシャツの間に存する体温によって温められた空気が外部に出され,外の空気と循環するか らであると考えられるところ,このことは,身体の表面を流れる空気の量を調節することによって体温を調節する(乙2公報【0019】)という乙2発明1と作用において共通しているといえる。 d 以上のとおり,乙2発明1と乙3発明1及び2との技術分野,課題,作用及び機能の共通性に係る原告の主張はいずれも理由がない。 0019】)という乙2発明1と作用において共通しているといえる。 d 以上のとおり,乙2発明1と乙3発明1及び2との技術分野,課題,作用及び機能の共通性に係る原告の主張はいずれも理由がない。 (イ) 阻害要因について a 原告は,乙2公報の記載(【0032】)を根拠に,乙2発明1の面状テープは,空調衣服を着用した状態で取り付けを行うものであるとして,乙2発明1の面状テープを,乙3発明1のボタン及び留め孔又は乙3発明2の三つのマジックテープに置き換えることには,阻害要因があると主張する。 しかし,面状テープ80aと面状テープ80bを繋ぐ作業を,空調衣服を着用した後に行うかどうかは,上記の記載からは明らかではない。むしろ,乙2公報の第1実施形態における流通路拡張部80は,図面(別紙3乙2公報図面【図1】)で示されるとおり,背中の中央に位置し,しかも,服の内側に設けられているところ,第1実施形態 の衣服はつなぎ服であるから(【0040】),上記の位置にある面状テープを,衣服を着用した後に繋ぐことはおよそ不可能である。また,面状テープの代わりに紐状部材を用いてもよいとされているが(【0047】),上記の位置に存在する紐状部材を衣服着用後に結ぶことができないことは明らかである。このことは,第1実施形態だ けでなく,同様に流通路拡張部を面状テープで形成している第2実施形態においても妥当するし,流通路拡張部を空調衣服の後ろ側の襟の直ぐ下に形成した乙2発明1においても同様である。 以上のとおり,乙2発明1の面状テープについて,必ず衣服を着用した状態で取り付けを行うものであると解釈することはできず,阻害 要因に係る原告の主張は,その前提において誤っている。 b 原告は,乙2発明1が面状テープを採用してい について,必ず衣服を着用した状態で取り付けを行うものであると解釈することはできず,阻害 要因に係る原告の主張は,その前提において誤っている。 b 原告は,乙2発明1が面状テープを採用している趣旨についても種々主張するが,前記aのとおり,その前提が誤っているから,当該主張にも理由がない。 また,原告は,乙2発明1の面状テープを乙3発明1の釦(ボタン) に代えることで,乙2発明1の課題が解決できなくなるなどとして種 々主張するが,やはり,その前提が誤っているために,筋違いの議論になっている。 c 以上のとおり,乙2発明1と乙3発明1又は2とを組み合わせることについての阻害要因に係る原告の主張はいずれも理由がない。 (ウ) 乙2発明1と乙3発明1又は2との組合せにより本件発明1に到達す るかについてa 原告は,本件発明1の「第二取付部」は,「前記襟後部又はその周辺の位置に取り付けられた第二調整ベルト」に設けられた手段であるところ,乙3発明1の数か所のボタン又は乙3発明2の三つのマジックテープは,襟部に設けられたもので,襟後部(その近傍)の「第二 調整ベルト」に設けられたものではないから,乙3発明1に「第二取付部」の開示はなく,乙2発明1と乙3発明1又は2とを組み合わせたとしても,本件発明1に到達しないと主張する。 しかし,乙2発明1の面状テープが襟後部又はその周辺に取り付けられている以上,乙3発明1で開示されている数か所のボタンが襟部 (身体の前の部分)に設けられていたとしても,乙2発明1と乙3発明1とを組み合わせることによって,「襟後部又はその周辺の位置に取り付けられた第二調整ベルト」に到達する。 b 原告は,乙2発明1の面状テープ80aに代えてボタンを,面状テープ80bに代えて留め孔を,そ を組み合わせることによって,「襟後部又はその周辺の位置に取り付けられた第二調整ベルト」に到達する。 b 原告は,乙2発明1の面状テープ80aに代えてボタンを,面状テープ80bに代えて留め孔を,それぞれ設置すると,服地の内表面に ボタンや留め孔が配置されることになるので,第一調整ベルト及び第二調整ベルトを有しない構成となり,本件発明1に到達しないと主張する。 しかし,乙2発明1における構成は乙2公報の図面(別紙3乙2公報図面【図2】(b))のとおりであり,このような乙2発明1に接した 当業者がこれと乙3発明1とを組み合わせた場合に,乙2発明1の面 状テープ同士が接合している部分にボタンや留め孔を設け,上記図面でいう紐状の部分はそのまま残そうと考えることはごく自然なことであり,当業者がこのような構成を採用することは容易である。 c 以上のとおり,乙2発明1に乙3発明1又は2を組み合わせることで本件発明1に到達するか否かに係る原告の主張はいずれも理由がな い。 ウ乙2発明1と周知技術との組合せについて原告は,乙2発明1の面状テープを複数のボタン若しくは留め孔又は複数のマジックテープに置き換えることはできず,仮に置き換えたとしても本件発明1に到達しないと主張するが,前記イのとおり,原告の主張はい ずれも理由がない。 エ本件各発明の進歩性に係る原告の主張はいずれも理由がないこと以上によれば,乙2発明1と乙3発明1若しくは2又は周知技術との組合せに係る原告の主張はいずれも理由がなく,同様に,乙2発明2と乙3発明1若しくは2又は周知技術との組合せに係る原告の主張も理由がない。 (5) 小括よって,本件各発明について,進歩性欠如の無効理由が認められる。 (原告の主張)(1) 本件各発明 明1若しくは2又は周知技術との組合せに係る原告の主張も理由がない。 (5) 小括よって,本件各発明について,進歩性欠如の無効理由が認められる。 (原告の主張)(1) 本件各発明と乙2発明1及び2との相違点前記3(原告の主張)のとおり,本件発明1と乙2発明1とは,① 本件発 明1は,「第一調整ベルト」を有しているのに対して,乙2発明1はこれを有していない点,② 本件発明1は,「第二調整ベルト」を有しているのに対して,乙2発明1はこれを有していない点,③ 本件発明1は,「前記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能となる複数の第二取付部を有」しているのに対して,乙2発明1はこれを有していない点,④ 本 件発明1は,「前記第一取付部を前記複数の第二取付部の少なくともいずれ か一つに取り付けることで…前記空気排出口を形成」するのに対して,乙2発明1は,このように空気排出口を形成しない点,⑤ 本件発明1は,「複数段階の予め定められた開口度」を有しているのに対し,乙2発明1は,これを有していない点で相違しており,本件発明2と乙2発明2も,同様の点で相違している。 そして,以下のとおり,乙2発明1及び2と乙3発明1若しくは2又は周知技術とを組み合わせることによって,当業者が本件各発明を容易に発明することができたとはいえない。 (2) 乙2発明1及び2と乙3発明1又は2との組合せについてア技術分野,課題,作用及び機能について 乙2発明1は,服地に取り付けられたファンの作用により身体を冷却する「空調衣服」なる技術分野に属するのに対し(乙2公報【0001】及び【0002】),乙3発明1及び2は,「衣服」のうち例えば「シャツ」の技術分野に属するので(乙3公報【0001】及び【00 冷却する「空調衣服」なる技術分野に属するのに対し(乙2公報【0001】及び【0002】),乙3発明1及び2は,「衣服」のうち例えば「シャツ」の技術分野に属するので(乙3公報【0001】及び【0011】),技術分野が異なる。 また,乙2発明1は,ファンという動力により生じる空気の流れを考慮して,「身体の各部位を流れる空気の量を調節すること」(乙2公報【0007】)を課題をするのに対し,乙3発明1及び2は,動力を用いない「衣服」分野の「シャツ」の「寒暑の変化」や「儀礼上」の体裁への対応(乙3公報【0004】)を課題をするものであり,両者の課題は異質で あって,異なる。 乙2発明1は,ファンという動力により生じる空気の量を調整することができるのに対し(乙2公報【0002】及び【0007】),乙3発明1及び2は,動力を用いない「襟のある衣服」分野の「寒暖の変化又は礼節に応じ」ることができるものであり(乙3公報【0010】),作用及 び機能が異なる。 イ阻害要因について乙2発明1の流通路拡張部は背面部にあり,これを調節するための面状テープも服の背面部の内側に配置しなければならないところ(乙2公報【0029】及び【0044】),乙2発明1においては,空調衣服を着用した状態で上記面状テープを取り付けることを前提としているため(同 【0032】),着用者は,取り付けが困難な位置にある上記面状テープの調整を,視認することができず,狭小な空間で,無理な姿勢で行わなければならない。そこで,このような問題を解決するために,簡易迅速な取り付けが可能な面状テープが採用されたものである。 しかるに,上記面状テープに代えてボタン及び留め孔又は三つのマジッ クテープを設けると,上記問題を解決することができなくなる。 ,簡易迅速な取り付けが可能な面状テープが採用されたものである。 しかるに,上記面状テープに代えてボタン及び留め孔又は三つのマジッ クテープを設けると,上記問題を解決することができなくなる。 さらに,乙3発明2におけるワイシャツのボタンサイズの三つのマジックテープでは,接着面積が小さいため,これを乙2発明1の面状テープに代えて使用した場合,人体の動きやファンの風力によりマジックテープがとれてしまう。 したがって,乙2発明1の面状テープを,乙3発明1のボタン及び留め孔又は乙3発明2の三つのマジックテープに置き換えることには,阻害要因が認められる。 ウ本件発明1の「第二取付部」は「襟後部又はその周辺の第二の位置に取り付けられた第二調整ベルト」に設けられたものであるところ,乙3発明 1の数か所のボタン及び留め孔又は乙3発明2の三つのマジックテープは襟部に設けられたもので,「襟後部又はその周辺」の「第二調整ベルト」に設けられたものではないから,「第二取付部」の開示がない。 また,乙2発明1の面状テープを乙3発明1のボタン及び留め孔又は乙3発明2の三つのマジックテープに代えると,服地の内表面にボタン及び 留め孔等を配置することになって,本件発明1の「第一調整ベルト」及び 「第二調整ベルト」を有しないことになる。 したがって,乙2発明1に乙3発明1又は2を組み合わせたとしても,「第二取付部」の構成を欠くか,「第一調整ベルト」及び「第二調整ベルト」を欠くことになるので,本件発明1に到達しない。 エしたがって,当業者は,乙2発明1と乙3発明1又は2とを組み合わせ ることにより本件発明1を容易に発明することができたとはいえず,同様に,乙2発明2と乙3発明1又は2とを組み合わせることにより本件発明2を容易に は,乙2発明1と乙3発明1又は2とを組み合わせ ることにより本件発明1を容易に発明することができたとはいえず,同様に,乙2発明2と乙3発明1又は2とを組み合わせることにより本件発明2を容易に発明することができたともいえない。 (3) 乙2発明1及び2と周知技術との組合せについて前記(2)のとおり,乙2発明1の面状テープを複数のボタン若しくは留め孔 又は複数のマジックテープに置き換えることはできず,仮に置き換えたとしても,本件各発明に到達しない。 したがって,当業者は,乙2発明1と周知技術とを組み合わせることにより本件発明1を容易に発明することができたとはいえず,また,乙2発明2と周知技術とを組み合わせることにより本件発明2を容易に発明することが できたともいえない。 (4) 小括よって,本件各発明について,進歩性欠如の無効理由は認められない。 5 争点3(損害額)について(原告の主張) (1) 原告が被った損害額ア前記前提事実(5)アのとおり,被告は,平成29年6月16日から令和元年10月31日までの間,被告各製品を販売し,これにより5652万1465円の利益を受けたので,原告は同額の損害を受けたと推定される(法102条2項)。 また,本件訴訟を追行するのに要する弁護士費用相当額は,1000万 円を下らない。 したがって,原告は,被告が本件特許権を侵害したことにより,請求額のうち少なくとも6652万1465円の損害を被った。 イ被告は,被告による本件特許権の侵害行為がなかったならば原告が利益を得たであろうという事情はないので,法102条2項の適用はないと主 張する。 しかし,同項が適用されるためには,原告が日本国内の市 よる本件特許権の侵害行為がなかったならば原告が利益を得たであろうという事情はないので,法102条2項の適用はないと主 張する。 しかし,同項が適用されるためには,原告が日本国内の市場において被告各製品と競合関係にある製品を製造販売していれば足り,本件各発明を実施していることは不要である。そして,電動ファン付きウエアを,原告は「空調服」との名称で,被告は「空調風神服」との名称で,それぞれ販 売し,令和元年の同ウエアの市場において,原告が製造販売する同ウエア(以下「原告製品」という。)は1位を,被告が製造販売する同ウエアは2位を,それぞれ占めており,上記市場において競合している。 したがって,原告製品と被告各製品とは日本国内の市場において競合関係にあるから,本件においては法102条2項の適用がある。 ウ被告は,被告各製品の売上額から●省略●に運送及び管理を委託したことによる委託料を経費として控除すべきであると主張する。 しかし,法102条2項の利益の額を算定するに当たり控除すべき経費は,侵害品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった費用であるところ,被告は被告各製品以外にも電動ファンの付いていない作業服その他 多数の製品を販売しており,●省略●に対する委託料は被告が販売する全製品に関して発生するものであるから,被告各製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった費用とはいえず,控除すべき経費に該当しない。 (2) 推定の覆滅事由ア本件各発明が被告各製品の部分のみに実施されていることについて (ア) 被告は,本件各発明は従来技術と比較してわずかな工夫をしたにすぎ ず,さしたる技術的意義はないなどと主張する。 しかし,従来 みに実施されていることについて (ア) 被告は,本件各発明は従来技術と比較してわずかな工夫をしたにすぎ ず,さしたる技術的意義はないなどと主張する。 しかし,従来の製品である,首後部に一組の調整紐を備え,これを適宜の長さに結ぶ方式の空調服(以下「調整紐型空調服」という。)においては,適切な長さに調整紐を結ぶことが困難であり,一定の開口度を目指して結ぼうと試みても,所定の位置に結び目を作ることが難しく, また,結び目が空気抵抗となり,空気排出の障害となるという課題を有していた(本件明細書【0015】及び【0033】)。 上記課題を解決した本件各発明が平成25年に出願され,原告は,平成26年に,1本の紐並びに当該紐の端部と服の内側に一組のボタン及びボタンホールを備え,ボタンを留めたり,留めなかったりする方式の 空調服(以下「2段階調整型空調服」という。)の販売を開始し,ほぼ全ての製品でこの方式を採用した。被告も,平成29年に「空調風神服」の販売を開始して以降,ほぼ全ての製品で,一つのボタンと複数のボタンホールにより開口度を調整することができる方式を採用した。 このように,本件各発明は,従来の製品が抱える重要な課題を解決し, 特許の出願から短期間のうちに多数の製品でその技術が採用されたものであるから,その技術的意義は極めて大きいというべきである。 (イ) 被告は,被告各製品のゴムベルトの位置からすると,ボタンを取り付けるボタンホールの位置を変えても,襟後部と首後部との間に形成される開口部の大きさ等に影響はないなどと主張するが,被告各製品が本件 各発明の技術的範囲に属する以上,推定を覆滅する事情には当たらない。 (ウ) 被告は,被告各製品のうち の間に形成される開口部の大きさ等に影響はないなどと主張するが,被告各製品が本件 各発明の技術的範囲に属する以上,推定を覆滅する事情には当たらない。 (ウ) 被告は,被告各製品のうち本件発明1が実施された部分に係る部品の価格は41ないし42円であり,空調服全体の価格に占める割合も1ないし2%にすぎないなどと主張するが,商品の価格全体に対する発明の実施部分の価格割合が小さいということだけでは推定を覆滅する事情に 当たらず,被告各製品における上記部分の位置付けや顧客誘引力等を考 慮すべきである。 (エ) 被告は,原告製品(乙31)の方が被告各製品うちの一つ(乙30)よりも高額で販売されているとして,被告各製品の本件発明1が実施された部分は,被告各製品の販売価格に影響を与えていないと主張する。 しかし,原告製品のうち被告各製品よりも価格が高いものは全体のわ ずか一部であり,被告各製品のうちにも原告製品より価格が高いものが存在するから,被告が主張するような価格の差は,推定を覆滅する事情に当たらない。 (オ) 被告は,被告各製品において,本件発明1が実施された部分は補助的な機能を果たすにすぎず,空調服の開発経緯に照らしても,空調服の目 的に対する同部分の貢献はわずかであるなどと主張するが,従来技術では,空調服の重要な課題である空気の排出に関して適切な解決を示すことができなかったところを,本件発明1がこれを解決したのであるから,被告各製品のうち本件発明1が実施されている部分は,重要であり,顧客誘引力を有する。 (カ) 被告は,需要者にとって襟後部と首後部との間に形成される開口部の開口度の調整機能は空調服を購入する際の動機になっていないなどと主張する。 しかし, を有する。 (カ) 被告は,需要者にとって襟後部と首後部との間に形成される開口部の開口度の調整機能は空調服を購入する際の動機になっていないなどと主張する。 しかし,原告は,本件各発明に係る「空調服」と共通する機能を有する2段階調整型空調服を販売して売上げを伸ばしたのだから,原告の売 上げが拡大したことは,本件各発明に顧客誘引力がないことを示すものではない。むしろ,原告のみならず被告も,このような調整機能を持つ空調服であることを大々的に宣伝し,顧客に対してこの機能を強く訴求してきたものである。 イ市場における競合品の存在について (ア) 被告は,電動ファン付きウエアの市場においては原告製品及び被告各 製品の代替製品が多数存在すると主張する。 しかし,被告が代替製品であると主張する製品は,いずれも襟後部と首後部との間に形成される開口部を予め定められた開口度に調整することができない方式のものであり,ボタンホールが複数あることで空気排出口を予め定められた開口度に調整することができる被告各製品とは機 能的に競合しない。また,上記代替製品がいつ販売され,どの程度の市場占有率を有していたのかは不明である。 (イ) 被告は,被告において,被告各製品を製造販売しなかったとしても,本件各発明の技術的範囲に属しない代替製品を販売したはずであるなどと主張するが,被告が機能的に大きく劣る従来型の調整紐型空調服を販 売することはあり得ないし,2段階調整型空調服を販売したとしても,それは同様の方式を採用している原告製品と競合することになるから,いずれにせよ推定は覆滅されない。 ウ被告の営業努力について被告は,被告各製品の名称である「空調風神服 しても,それは同様の方式を採用している原告製品と競合することになるから,いずれにせよ推定は覆滅されない。 ウ被告の営業努力について被告は,被告各製品の名称である「空調風神服」は独自のブランドとし て強い出所識別力を有するなどと主張するが,企業は製品を企画し,種々の営業努力を行うのが通常であるから,通常の工夫をしても推定覆滅事由には当たらないところ,被告が通常の範囲を超える営業努力を行ったことの主張立証はない。 エその他について (ア) 被告は,原告製品は本件各発明を実施したものではなく,被告各製品を販売したことにより原告が損害を受けることはないと主張するが,前記(1)イのとおり,原告製品と被告各製品とは市場において競合するから,被告が得た利益と原告が受けた損害との間には相当因果関係が認められる。 (イ) 被告は,原告製品は需要者の評判がよくないと主張するが,被告が挙 げる事情は,インターネットショッピングサイトのごく一部のレビューをとり上げたものにすぎず,推定を覆滅する事情には当たらない。 オ小括したがって,被告が主張するいずれの事情によっても,法102条2項の推定は覆滅されない。 (被告の主張)(1) 原告が被った損害額についてア法102条2項の適用が認められるためには,特許権者において,侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が必要である。 本件において,被告は,被告各製品を製造販売しなかったとしても,本件各発明の技術的範囲に属しない代替製品を製造販売したと考えられ,もともと被告各製品を購入しようとしていた者は,当該代替製品を購入するだけで,原告製品を購入したとはいえない。 しなかったとしても,本件各発明の技術的範囲に属しない代替製品を製造販売したと考えられ,もともと被告各製品を購入しようとしていた者は,当該代替製品を購入するだけで,原告製品を購入したとはいえない。 また,本件特許の出願前において,乙2公報に記載された面状テープ等 により紐の長さを調整することができる空調服が公知例として存在しており,これとの関係において本件各発明に技術的な優位性又は顧客誘引力があると判断されるのであれば,開口度を調整するための紐の長さを調整することすらできない原告製品が被告各製品と市場で競合するような製品であるとは評価できない。 したがって,原告には,被告による本件特許権の侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情は存在しないので,法102条2項の適用はないというべきである。 イ被告は,その販売する商品(主に作業服)の運送及び管理を,●省略●に委託しており,その委託料は●省略●円(●省略●円。消費税抜き。) である。 被告は,平成29年8月1日から平成30年7月31日までの間に●省略●点の商品を,同年8月1日から令和元年7月31日までの間に●省略●点の商品を,それぞれ販売したので,●省略●に対する委託料は,上記各期間において,商品1点当たりそれぞれ●省略●円及び●省略●円となり,平均すると●省略●円となる。 したがって,商品1点当たり●省略●円(合計●省略●円)を経費として控除すべきである。 (2) 推定の覆滅事由についてア本件各発明が被告各製品の部分のみに実施されていることについて(ア) 本件特許の出願当時に販売されていた株式会社サンエスのKU905 30等の製品は,調整紐型空調服であり,調整紐 ア本件各発明が被告各製品の部分のみに実施されていることについて(ア) 本件特許の出願当時に販売されていた株式会社サンエスのKU905 30等の製品は,調整紐型空調服であり,調整紐を結ぶ長さにより襟後部と首後部との間に形成される開口部の開口度を調整することができた。 また,乙2発明1では,2本の面状テープ又は紐状部材を襟後部又はその周辺部に設け,これらをつなぐ長さを調整することにより流通路の大きさを調整する手段が開示されている。このように,本件特許の出願時 において,調整紐等の長さを調整することにより,襟後部と首後部との間に形成される開口部の開口度を調整することは公知であった。そうすると,従来技術と比較した本件各発明の特徴は,上記の公知技術にホック,フック,ボタン等の留め具を適用することにより,留め位置を段階的に決定することができるという点に限定される。 しかし,本件特許の出願当時,既に,洋服を始めとする多種多様な用途において,2本の紐状又は帯状の部材の長さを調整するために,ホック,フック,ボタン等様々な留め具が利用されていたから,これらを使用することは単なる設計事項にすぎない。また,本件明細書においても,段階的な調整が可能となることによる効果やこれによって解決すべき課 題は一切記載されていない。 したがって,本件各発明は,従来技術と比較してわずかな工夫をしたものにすぎず,技術的意義はほとんどない。 (イ) 被告各製品においては,ゴムベルトは襟のかなり下に取り付けられているため,ボタンを取り付けるボタンホールの位置を変えても,襟後部と首後部との間に形成される開口部の大きさやそこから排出される空気 の流量にほとんど影響がない。 上記開口部の大 ているため,ボタンを取り付けるボタンホールの位置を変えても,襟後部と首後部との間に形成される開口部の大きさやそこから排出される空気 の流量にほとんど影響がない。 上記開口部の大きさや形状は,主として前ファスナーの開閉の程度,着用者の体格,姿勢等に依存し,ボタンを取り付けるボタンホールの位置の影響をほとんど受けず,少なくともこれが上記開口部の大きさ等を決定する支配的な要因ではない。 (ウ) 原告が被告各製品のうち本件発明1を実施したと主張する部分の部品の価格は41ないし42円であり,空調服の価格全体に占める割合は1ないし2%にすぎない。 また,本件発明2は「請求項1~8のいずれか一項に記載の空気排出口調整機構を備えた空調服」とされ,形式的には空調服全体に係るもの となっているが,本件発明1に何らの技術的な特徴も追加していない従属項にすぎず,発明としての本質は本件発明1と変わらない。 したがって,本件発明1は被告各製品の微細な一部分にすぎず,本件発明2についても,本件発明1と同様に評価すべきである。 (エ) 例えば,被告製品21は1着当たり4300円(消費税抜き)で販売 されているのに対し,被告製品21と同じ形であるが本件各発明を実施していない原告製品は,1着当たり6360円(消費税抜き)で販売されている。 このように,被告各製品の本件各発明を実施している部分は,被告各製品の販売価格に影響を与えていない。 (オ) 被告各製品は,小型の電動ファンによって体の表面に大量の風を流す ことにより,汗を気化させて,涼しく快適に過ごせるようにすることを目的とするものであるが,そのための重要な要素は,電動ファンの性能,バッテリーの性能 電動ファンによって体の表面に大量の風を流す ことにより,汗を気化させて,涼しく快適に過ごせるようにすることを目的とするものであるが,そのための重要な要素は,電動ファンの性能,バッテリーの性能,空気の流れをよくするための服の形状,生地の通気性等である。被告各製品のうち本件各発明を実施している部分は,首後部における空気の流れをよくするための工夫の一つではあるが,被告各 製品では,首後部の通気性をよくするために,首回りの大きさを通常よりも大きくするなどの工夫がされているので,上記部分は補助的な機能を果たすにすぎない。 そして,服の形状や電動ファンの性能等に多大な費用や労力をかけ,被告各製品が開発されたという経緯に照らすと,涼しく快適にすごすこ とができるという上記の目的に対する本件各発明の実施部分の貢献はわずかというべきである。 (カ) 平成30年及び令和元年の電動ファン付きウエアの市場のシェアによれば,原告製品は,本件各発明を実施していないにもかかわらず,その販売数は増えている。 また,空調服の種類や選び方等をまとめたインターネット上の記事(乙34,35)では,襟後部と首後部との間に形成される開口部の開口度の調整機能について触れられておらず,空調服製造各社を紹介した繊維ニュース(甲12)においても,デバイスの性能や衣服の機能性等については言及があるものの,上記機能については一切言及がない。 被告のウェブサイトや商品のカタログ(甲3)を見ても,主として豊富なデザインや電動ファンの性能,安全性等を紹介しており,上記開口部を段階的に調整できることを強く訴える記載はなく,被告各製品が備える多数の機能のうちの一つとして紹介するにすぎない。 したがって,需 電動ファンの性能,安全性等を紹介しており,上記開口部を段階的に調整できることを強く訴える記載はなく,被告各製品が備える多数の機能のうちの一つとして紹介するにすぎない。 したがって,需要者にとって,上記開口部の開口度を調整することが できるか否かは,空調服を購入する際の動機になっておらず,ましてや, これを段階的に調整できることは,需要者の商品選択と関係がなく,顧客誘引力はほとんどない。 (キ) 以上のとおり,本件発明1は被告各製品の製品全体のうちわずか一部分に実施されているにすぎず,これは本件発明2についても同様であって,本件特許の出願時における従来技術と比較してそれらの技術的意義 は限られている上,被告各製品のうち本件各発明が実施された部分は顧客誘引力が全くなかったから,本件各発明の被告各製品における寄与率は全くないか,極めて低かったというべきである。 イ市場における競合品の存在について(ア) ゴムベルト及び布ベルトがなくても,襟後部と首後部との間に形成さ れる開口部を形成することは可能であるから(本件明細書【0009】),襟部開口部に関する工夫がされているか否かにかかわらず,空調服一般が被告各製品の代替製品となる。また,原告製品及び被告各製品のほかにも,襟部開口部に関する工夫を行っている製品は多数存在する(乙39ないし45)。 したがって,被告が被告各製品を販売しなかったとしても,その分が原告の売上げとなるものではない。 (イ) 前記(1)アのとおり,被告は,被告各製品を製造販売しなかったとしても,もともと被告各製品を購入しようとしていた者は,本件各発明の技術的範囲に属しない被告の代替製品を購入するはずであるから,被告の 売上げや おり,被告は,被告各製品を製造販売しなかったとしても,もともと被告各製品を購入しようとしていた者は,本件各発明の技術的範囲に属しない被告の代替製品を購入するはずであるから,被告の 売上げや利益に変わりはなく,原告に得られたはずの利益は認められない。 ウ被告の営業努力について被告各製品は一般的な名称である「空調服」ではなく,「空調風神服」の名称で販売しており,「空調風神服」は独自のブランドとして強い出所 識別力を有し,電動ファン付きウエアの市場において相当のシェアを有し ている。 したがって,被告各製品の販売には,「空調風神服」のブランド力が大きく貢献している。 エその他について(ア) 原告製品において本件各発明は実施されておらず,前記(1)アのとおり, 開口度を調整するための紐の長さを調整することができない2段階調整型空調服である原告製品が,これができる被告各製品と市場で競合することはないから,被告が被告各製品を販売したことにより原告が損害を受けることはない。 (イ) 原告製品は,インターネットショッピングサイトであるAmazon のカスタマーレビューにおいて酷評されており,需要者の評判がよくない。 オ小括以上の事情によれば,被告各製品における本件各発明の寄与率は低く,被告が被告各製品を販売したことにより得た利益の全部又は少なくとも9 9.9%は,原告の損害との因果関係を欠くというべきであるから,推定が覆滅される。 6 争点4(差止め等の必要性)について(原告の主張)被告には,被告各製品を製造,譲渡,輸出,輸入又は譲渡の申出をすること により本件特許権を侵害するおそれがあるので,被告に対し 争点4(差止め等の必要性)について(原告の主張)被告には,被告各製品を製造,譲渡,輸出,輸入又は譲渡の申出をすること により本件特許権を侵害するおそれがあるので,被告に対してこれらの行為を差し止め,被告各製品を廃棄する必要性が認められる。 (被告の主張)被告各製品は,現在までに,複数のボタンホールを有するゴムベルトを備えるものから,一つのボタンホールのみ有するゴムベルトを備えるもの(2段階 調整型空調服)に仕様を変更したので,本件特許権を侵害する被告各製品は販 売していない。 また,被告は,被告各製品を輸入したり,輸出したりしたことはない。 したがって,被告に対する差止請求及び廃棄請求の必要性は認められない。 第4 当裁判所の判断 1 本件明細書の記載事項等 (1) 本件明細書(甲2)の「発明の詳細な説明」には,以下のとおりの記載がある(下記記載中に引用する図は別紙5本件特許図面参照)。 ア 【技術分野】【0001】本発明は,空調服の襟後部と人体の首後部との間に形成される,空調服 内を流通する空気を外部に排出する空気排出口について,その開口度を調整するための空気排出口調整機構に関するものである。 【背景技術】【0002】近年,送風手段を用いて人体との間に形成された空気流通路内に空気を 流通させることにより人体から出た汗を蒸発させる空調服が実用化されている。空調服の原理や構造についての詳しい説明は,例えば特許文献1に詳細に記載されている。図7は空調服における空気の流れを説明するための図,図8は従来の空調服における襟後部と人体の首後部との間に形成される空気排出部を説明するための図である。この空 えば特許文献1に詳細に記載されている。図7は空調服における空気の流れを説明するための図,図8は従来の空調服における襟後部と人体の首後部との間に形成される空気排出部を説明するための図である。この空調服1の裾には伸縮性 のあるベルトが取り付けられ,空調服1の前側には開閉用のファスナーが設けられている。また,空調服1の下部には二つの送風手段11,11が取り付けられている。ここで,送風手段11としては,プロペラを有するファンが用いられる。 【0003】 ベルトを締めると共にファスナーを閉じた後,二つの送風手段11,1 1を作動させると,図7に示すように,外気が各送風手段11から空調服1内に取り込まれる。そして,その取り込まれた外気は,空気流通路内を人体と平行に上方に流通し,空気排出部から排出される。ここで,空気排出部としては,空調服1の襟前部と人体の首前部との間の開口部,空調服1の襟後部12と人体の首後部との間の開口部,そして,空調服1の袖部 と人体の腕部との間の開口部がある。これらの開口部のうち,襟後部12と首後部との間の開口部は,他の開口部と異なり,明確に形成され,しかも,空気の排出量が最も多いという点で他の開口部に比べて重要なものである。以下では,襟後部12と首後部との間に形成される開口部を,他の空気排出部と区別するため,「空気排出口」と称することにする。 【0004】空調服1内に取り込まれた外気が空気流通路内を流通する間に人体から出た汗を蒸発させ,その蒸発するときの気化熱により体表面の温度を下げることができる。したがって,空調服1がその冷却機能を効率よく作用することができるようにするには,空気流通路内を流通する空気が空気排出 部から受ける抵抗を小さくし 化熱により体表面の温度を下げることができる。したがって,空調服1がその冷却機能を効率よく作用することができるようにするには,空気流通路内を流通する空気が空気排出 部から受ける抵抗を小さくし,大量の空気を人体と平行に流通させる必要がある。また,空調服1の着用者は,使用目的に応じて空調服1の冷却効果を調整したいことがある。このため,従来の空調服1には,各空気排出部の開口度を調整する機構が備わっている。ここで,空気排出部の性質上,各空気排出部の開口度を明確に数値で表すことはできないが,開口度が大 きいほど,空気がその空気排出部から受ける抵抗が小さくなり,その空気排出部から排出される空気の量が多くなる。具体的に,空調服1の袖部には,ワイシャツ等の通常の衣服のように,例えば二つのボタンが設けられている。かかるボタンを付けたり外したりすることにより,袖部と腕部との間の空気排出部の開口度を調整することができる。また,ファスナーの 位置を調整することにより,襟前部と首前部との間の空気排出部の開口度 を容易に調整することができる。この場合,ファスナーを上方に引き上げるほど,襟前部と首前部との間の空気排出の開口度が小さくなる。更に,従来の空調服1には,図8に示すように,襟後部12と首後部との間隔を広げたり狭めたりするための一組の調整紐21が設けられている。各調整紐21の端部は,襟後部12の内表面に取り付けられている。一組の調整 紐21を結び,その長さを調整することにより,襟後部12と首後部との間に空気排出口13を形成すると共に,その空気排出口13の開口度を調整することができる。 【発明が解決しようとする課題】【0006】 上述のように,従来の空調服1では,襟後部12と首後部との間の空気 空気排出口13の開口度を調整することができる。 【発明が解決しようとする課題】【0006】 上述のように,従来の空調服1では,襟後部12と首後部との間の空気排出口13の開口度を調整する機構として,図8に示すように,一組の調整紐21を所望の長さになるように結ぶことにより襟後部12の付近に弛みを設けるものを用いている。しかしながら,実際には,一組の調整紐21を結んで所望の長さになるようにすることは非常に難しく,ほとんどの 着用者は,襟後部12と首後部との間の空気排出口13について,その開口度を適正に調整することができず,そのため,空調服1 の性能を十分に発揮することが困難であった。 【0007】襟後部12と首後部との間の空気排出口13の開口度が,送風手段11 から空気流通路内に取り込まれた外気の量に対して小さいと,次のような問題が生じる。すなわち,(1)特に背中に沿って流れる空気の量を十分に確保することができない。(2)背中付近の空気の圧力が高まり,空調服1の服地が膨らんでしまうので,背中付近での空気流通路内において,人体の冷却に寄与しない,人体から離れた部分を流通する空気の割合が多 くなる。(3)空調服1の服地が膨らむことにより,着用者は例えば狭い 場所で作業するのが困難になる。(4)空調服1の服地が膨らむことにより,空調服1の外観が損なわれる。 【0008】一方,襟後部12と首後部との間の空気排出口13の開口度が,送風手段11から空気流通路内に取り込まれた外気の量に対してあまりに大きい と,空気排出口13が大きすぎて,空調服1の外観を損ねてしまう。しかも,空気排出口13から排出される空気の量が多くなりすぎるため,他の空気 流通路内に取り込まれた外気の量に対してあまりに大きい と,空気排出口13が大きすぎて,空調服1の外観を損ねてしまう。しかも,空気排出口13から排出される空気の量が多くなりすぎるため,他の空気排出部から排出される空気の量が著しく低下し,人体の各部位における冷却効果のバランスが著しく失われてしまう。また,一組の調整紐21を適正な長さに結んだ場合であっても,一組の調整紐21はその目的上, ある程度長く形成されているため,その結び目付近に調整紐21の先端部分が集まり,これが空気排出の障害になっている。 【0009】したがって,襟後部12と首後部との間の空気排出口13の開口度を簡単に調整することができる新たな空気排出口調整機構の実現が望まれてい る。かかる新たな空気排出口調整機構は次のような要求を満たす必要がある。すなわち,(1)洗濯に支障がないこと,(2)空気排出口13を確実に形成することができること,(3)安価に作製することができること,(4)空気排出口13を形成する必要がないときに使用者の邪魔にならないこと,である。ここで,新たな空気排出口調整機構により襟後部12と 首後部との間に空気排出口13を形成しなくとも,送風手段11を作動させると,空気の圧力により襟後部12と首後部との間に自動的にある程度の開口部が確保されるので,使用目的によっては空気排出口13を形成しないほうがよい場合もある。 【0010】 本発明は上記事情に基づいてなされたものであり,空調服の襟後部と人 体の首後部との間に形成される空気排出口の開口度を簡単に調整することができる空気排出口調整機構を提供することを目的とするものである。 イ 【課題を解決するための手段】【0013】 体の首後部との間に形成される空気排出口の開口度を簡単に調整することができる空気排出口調整機構を提供することを目的とするものである。 イ 【課題を解決するための手段】【0013】また,上記の目的を達成するための第二の発明は,送風手段を用いて人 体との間に形成された空気流通路内に空気を流通させる空調服の襟後部と人体の首後部との間に形成される,空気流通路内を流通する空気を外部に排出する空気排出口について,その開口度を調整するための空気排出口調整機構において,第一取付部を有し,空調服の服地の内表面であって前記襟後部又はその周辺の第一の位置に取り付けられた第一調整ベルトと,前 記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能となる複数の第二取付部を有し,第一調整ベルトが取り付けられた前記第一の位置とは異なる襟後部又はその周辺の第二の位置に取り付けられた第二調整ベルトと,を備え,第一取付部を複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けることで空気流通路内を流通する空気の圧力を利用すること により,襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開口で空気排出口を形成することを特徴とするものである。 【0014】第二の発明に係る空気排出口調整機構では,上記の構成により,第一取付部を第二取付部に取り付けるだけで,空調服の襟後部の付近に弛みを確 保して,空気排出口を容易に形成することができる。また,第一取付部をいずれの第二取付部に取り付けるかに応じて,空気排出口の開口度を複数段階に簡単に調整することができる。更に,第二取付部を有する第二調整ベルトを備えることにより,第一取付部を第二取付部に取り付けたときに,第一取付部が空調服の内側にとどまり,外部から見え 開口度を複数段階に簡単に調整することができる。更に,第二取付部を有する第二調整ベルトを備えることにより,第一取付部を第二取付部に取り付けたときに,第一取付部が空調服の内側にとどまり,外部から見えることがないので, 外観が損なわれることがない。 【発明の効果】【0015】本発明に係る空気排出口調整機構によれば,空調服の襟後部付近に空気排出口を容易に形成することができると共に,空気排出口の開口度を複数段階に簡単に調整することができる。 ウ 【発明を実施するための形態】【0026】具体的に,空調服1の着用者は,空気排出口13から少量の空気を排出したい場合には,留め具512をいずれの貫通孔52a,52bにも取り付けないようにすればよい。このように空気排出口調整機構50を利用し て空気排出口13を形成しなくとも,空調服1の送風手段11を作動させると,空気流通路内を流通する空気の圧力により襟後部12と首後部との間に自動的にある程度の開口部が確保されるので,この開口部が空気排出口13となって,ここから少量の空気を外部に排出することができる。また,着用者は,空気排出口13から通常の量の空気を排出したい場合には, 留め具512を第一貫通孔52aに取り付ければよく,空気排出口13から多量の空気を排出したい場合には,留め具512を第二貫通孔52bに取り付ければよい。このように,第一実施形態の空気排出口調整機構50を用いると,着用者は,空調服1の使用目的に応じて空気排出口13の開口度を3段階の開口度の中から選択し,所期の冷却効果を得ることができ る。 【0033】また,第一実施形態の空気排出口調整機構を備える空調服には,従来の空気 口13の開口度を3段階の開口度の中から選択し,所期の冷却効果を得ることができ る。 【0033】また,第一実施形態の空気排出口調整機構を備える空調服には,従来の空気排出口調整30機構である一組の調整紐を備える空調服に比べて,次のような利点がある。従来,一組の調整紐を備える空調服の使用に際して, 大半の着用者は,一組の調整紐を結ばず,襟後部と首後部との間に空気排 出口を形成していなかった。そして,使用目的に応じて一組の調整紐の長さを調整することも行っていなかった。このため,一組の調整紐を備える空調服は,その性能を十分に発揮することができる状態で使用されていなかった。これに対して,第一実施形態の空気排出口調整機構を備える空調服を,予め留め具を貫通孔に取り付けた状態で出荷することにより,着用 者がその空調服を出荷時の状態のまま使用しても,空調服の性能を十分に発揮させることができる。したがって,第一実施形態の空気排出口機構を備える空調服が普及すれば,空調服の性能に関する着用者の評価を大幅に高めることができる。また,第一実施形態の空気排出口調整機構を備える空調服を洗濯する際には,ボタン(留め具)をボタン孔(貫通孔)から外して おくようにする。これにより,洗濯時にボタンに無理な力がかかることがないので,空調服を何ら支障なく洗濯することができる。更に,一組の調整紐を備える空調服では,調整紐の結び目付近に集まった調整紐の先端部分が空気排出の障害になっていたが,第一実施形態の空気排出口調整機構を備える空調服では,調整ベルトに余分な部分がなく,調整ベルトが空気 に及ぼす抵抗は非常に小さいので,空気排出口調整機構自体が空気排出の妨げになることはない。 【0036】第二実施形 では,調整ベルトに余分な部分がなく,調整ベルトが空気 に及ぼす抵抗は非常に小さいので,空気排出口調整機構自体が空気排出の妨げになることはない。 【0036】第二実施形態の空気排出口調整機構50aは,図4に示すように,襟を折り返えすことができる通常の襟部2aを有する空調服1に設けられる。 ここで,図4には,襟部2aについて,折り返し部分Pを折り返さずに広げたときの状態が示されている。また,図6では,襟部2aについて折り返し部分Pを省略して示している。第二実施形態では,空気排出口調整機構50aは,襟部2aの中央部(襟後部12)ではなく,襟後部12の周辺の所定箇所,具体的には襟後部12の少し下側の箇所に設けられる。空 調服の形状にもよるが,通常の空調服では,空気流通路内を流通する空気 を空気排出口から外部にスムースに排出するには,空気排出口を,襟後部12に設けるよりも,襟後部12の少し下側に設ける方が合理的であるからである。 【0041】留め具512を貫通孔532に通して掛けると,図6に示すように,留 め具512の内面が貫通孔532の形成された部分における第二調整ベルト53の外表面に当接し,留め具512が第二調整ベルト53にしっかりと固定される。このとき,空調服1の襟後部12の付近が弛み,襟後部12と着用者の首後部との間に空気排出口13が形成される。また,空気排出口13から少量の空気を排出したい場合には,留め具512を貫通孔5 32に取り付けないようにする。この場合には,空気流通路内を流通する空気の圧力により襟後部12と首後部との間に自動的にある程度の開口部が確保されるので,この開口部が空気排出口13となって,ここから少量の空気を外部に排出することができる。 は,空気流通路内を流通する空気の圧力により襟後部12と首後部との間に自動的にある程度の開口部が確保されるので,この開口部が空気排出口13となって,ここから少量の空気を外部に排出することができる。したがって,第二実施形態の空気排出口調整機構50aを用いると,着用者は,空調服1の使用目的に応じ て空気排出口13の開口度を2段階の開口度の中から選択し,所期の冷却効果を得ることができる。 【0048】また,上記の第一実施形態では,貫通孔を空調服の襟後部に二つ設ける場合について説明したが,貫通孔を空調服の襟後部に一つだけ又は三つ以 上設けるようにしてもよい。更に,上記の第二実施形態では,貫通孔を第二調整ベルトに一つ設ける場合について説明したが,貫通孔を第二調整ベルトに二つ以上設けるようにしてもよい。貫通孔を多く設けるほど空気排出口の開口度を細かく調整することが可能となる。 【0049】 また,上記の第一実施形態では,調整ベルトを帯状部材で構成する場合 について説明したが,調整ベルトを帯状部材の代わりに紐状部材で構成するようにしてもよい。同様に,上記の第二実施形態では,第一調整ベルト及び第二調整ベルトをそれぞれ帯状部材で構成する場合について説明したが,第一調整ベルトを紐状部材で構成するようにしてもよく,また,第二調整ベルトを紐状部材で構成するようにしてもよい。更に,上記の第二実 施形態において,空調服の構造上,襟部の周囲には布がある場合があり,この場合,第二調整ベルトとしてはこの布を使用することも可能である。 【0050】更に,上記の各実施形態では,留め具としてボタンを用い,貫通孔(係合部)としてボタン孔を用いる場合について説明したが,本発明はこれに を使用することも可能である。 【0050】更に,上記の各実施形態では,留め具としてボタンを用い,貫通孔(係合部)としてボタン孔を用いる場合について説明したが,本発明はこれに 限定されるものではなく,留め具として専用のものを使用してもよい。この場合,係合部としては,その専用の留め具に対応したものを用いることにより,留め具を係合部に取り付ける際の利便性がさらに向上する。例えば,留め具及び係合部としては,面状ファスナーを用いてもよいし,或いは,金属製又は樹脂製の各種ホックやフックを用いてもよい。 (2) 前記(1)の記載事項によれば,本件明細書には,本件各発明に関し,以下とおりの開示があると認められる。 ア近年,送風手段を用いて人体との間に形成された空気流通路内に空気を流通させることにより人体から出た汗を蒸発させる空調服が実用化されているところ,この空調服において,ベルトを締めると共にファスナーを閉 じた後,送風手段を作動させると,外気が各送風手段から空調服内に取り込まれ,その取り込まれた外気は,空気流通路内を人体と平行に上方に流通し,空調服の襟前部と人体の首前部との間の開口部,空調服の襟後部と人体の首後部との間の開口部,そして,空調服の袖部と人体の腕部との間の開口部といった空気排出部から排出されるが,これらの開口部のうち, 襟後部と首後部との間の開口部(他の空気排出部と区別するため,「空気 排出口」と称することにする。)は,他の開口部と異なり,明確に形成され,しかも,空気の排出量が最も多いという点で,他の開口部に比べて重要なものである(【0002】及び【0003】)。 このような空調服において,その冷却機能を効率よく作用することができるようにするには,空気流通路内を流通 が最も多いという点で,他の開口部に比べて重要なものである(【0002】及び【0003】)。 このような空調服において,その冷却機能を効率よく作用することができるようにするには,空気流通路内を流通する空気が空気排出部から受け る抵抗を小さくし,大量の空気を人体と平行に流通させる必要があり,また,空調服の着用者は,使用目的に応じて空調服の冷却効果を調整したいことがあるため,従来の空調服には,各空気排出部の開口度を調整する機構が備わっており,図8に示すように,襟後部と首後部との間隔を広げたり狭めたりするための一組の調整紐が設けられ,これを所望の長さになる ように結ぶことにより襟後部の付近に弛みを設けるものが存在したが,実際には,一組の調整紐を結んで所望の長さになるようにすることは非常に難しく,ほとんどの着用者は,襟後部と首後部との間の空気排出口について,その開口度を適正に調整することができず,空調服の性能を十分に発揮することが困難であったため,襟後部と首後部との間の空気排出口の開 口度を簡単に調整することができる新たな空気排出口調整機構の実現が望まれている(【0004】及び【0006】ないし【0009】)。 イ 「本発明」は,前記アの事情に基づき,空調服の襟後部と人体の首後部との間に形成される空気排出口の開口度を簡単に調整することができる空気排出口調整機構を提供することを目的として,送風手段を用いて人体と の間に形成された空気流通路内に空気を流通させる空調服の襟後部と人体の首後部との間に形成される,空気流通路内を流通する空気を外部に排出する空気排出口について,その開口度を調整するための空気排出口調整機構において,第一取付部を有し,空調服の服地の内表面であって前記襟後部又はその周辺の第一の位置に取り付けられた第一調 気を外部に排出する空気排出口について,その開口度を調整するための空気排出口調整機構において,第一取付部を有し,空調服の服地の内表面であって前記襟後部又はその周辺の第一の位置に取り付けられた第一調整ベルトと,前記第 一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能となる複数の 第二取付部を有し,第一調整ベルトが取り付けられた前記第一の位置とは異なる襟後部又はその周辺の第二の位置に取り付けられた第二調整ベルトと,を備え,第一取付部を複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けることで空気流通路内を流通する空気の圧力を利用することにより,襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開口で空 気排出口を形成する構成を採用した(【0010】及び【0013】)。 「本発明」に係る空気排出口調整機構は,上記の構成により,第一取付部を第二取付部に取り付けるだけで,空調服の襟後部の付近に弛みを確保して,空気排出口を容易に形成することができ,第一取付部をいずれの第二取付部に取り付けるかに応じて,空気排出口の開口度を複数段階に簡単 に調整することができる上,第二取付部を有する第二調整ベルトを備えることにより,第一取付部を第二取付部に取り付けたときに,第一取付部が空調服の内側にとどまり,外部から見えることがないので,外観が損なわれることがなく,空調服の襟後部付近に空気排出口を容易に形成することができると共に,空気排出口の開口度を複数段階に簡単に調整することが できるとの効果を奏する(【0014】及び【0015】)。 2 争点1(被告各製品が本件各発明の技術的範囲に属するか)について(1) 被告各製品の構成前記前提事実(5)イ並びに証拠(甲3ないし6,10,11,乙1)及び弁論の全趣旨を 2 争点1(被告各製品が本件各発明の技術的範囲に属するか)について(1) 被告各製品の構成前記前提事実(5)イ並びに証拠(甲3ないし6,10,11,乙1)及び弁論の全趣旨を総合すれば,被告各製品は,以下の構成を有していると認めら れる。 ア被告各製品は,服背面下部のファン設置位置にファンを設置して使用する服であり,ファンを作動させることで,ファン設置位置から空気を服本体に吸い込み,吸い込んだ空気が,人体と服の間を通過し,襟首等から服本体の外部に排出される。 イ被告各製品の服の内側の背面上部で,襟部から下に約53ないし61m mの中央部に,1本のゴムベルトがその中央部で取り付けられており,上記ゴムベルトは,中央部から左右端かけてそれぞれ複数のボタンホール(被告製品1については8つずつ)を有する(別紙2写真目録記載2及び3参照)。 ウ被告各製品の服の内側の背面上部で,襟部から下に約13ないし58m mで中央部から左右対称の位置に,二つの布ベルトが縫い付けられており,被告各品を着用した場合,上記各布ベルトは,着用者の首後部と肩甲骨の上部との間に位置し,上記各布ベルトは,それぞれ一つのボタンを有する(別紙2写真目録記載2及び3参照)。 エ前記ウの各布ベルトのボタンは,前記イのゴムベルトの複数のボタンホ ールから一つを選択し,これに取り付けることができ,上記ボタンを,上記複数のボタンホールのうち中央部により近いものに取り付けると,服のうち二つの布ベルトで挟まれた部分のゆるみが大きくなり,中央部からより遠いものに取り付けると,当該部分のゆるみは小さくなる(別紙2写真目録記載4参照)。 (2) 被告各製品の構成要件充足性ア構成要件B及びC 分のゆるみが大きくなり,中央部からより遠いものに取り付けると,当該部分のゆるみは小さくなる(別紙2写真目録記載4参照)。 (2) 被告各製品の構成要件充足性ア構成要件B及びC(ア) 「第一取付部」及び「第一調整ベルト」並びに「第二取付部」及び「第二調整ベルト」についてa 本件発明1の特許請求の範囲においては,「第一取付部を有」する 「第一調整ベルト」(構成要件B),「前記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能となる複数の第二取付部を有」する「第二調整ベルト」(構成要件C),「前記第一取付部を前記複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付ける」(構成要件D)との記載がある。これらの記載から,「第一調整ベルト」は「第 一取付部」を,「第二調整ベルト」は「第二取付部」を,それぞれ有 しており,「第一取付部」と「第二取付部」とは,「第一取付部」を「第二取付部」に取り付けることが可能な構成を備えていると理解することができる。 そして,本件明細書においては,「第一調整ベルト51aは,図5(a)に示すように,第一の帯状部材511aと,第一の帯状部材5 11aの一方の端部に設けられた一つの留め具512とを有するものである。第二実施形態でも,留め具512としてボタンを用いる。」(【0037】),「第二調整ベルト53は,図5(b)に示すように,第二の帯状部材531と,第二の帯状部材531の一方の端部に形成された,留め具512と係合して留め具512を取り付けるため の一つの貫通孔532とを有するものである。…また,貫通孔532は本発明の係合部に該当する。この貫通孔532は,切り込み線を入れて作製されるボタン孔である。」(【0038】)との記載がある。 これらの記載から,「第二 2とを有するものである。…また,貫通孔532は本発明の係合部に該当する。この貫通孔532は,切り込み線を入れて作製されるボタン孔である。」(【0038】)との記載がある。 これらの記載から,「第二実施形態」において,「第一調整ベルト」は「留め具」を備えており,その「留め具」として「ボタン」が用い られること,「第二調整ベルト」は「留め具」と係合して「留め具」を取り付けるための「貫通孔」を有しており,その「貫通孔」は「切り込み線を入れて作成されるボタン孔」であると理解することができる。 b 以上の本件発明1の特許請求の範囲(請求項3)の記載及び本件明 細書の記載を前提に検討するに,前記(1)ウのとおり,被告各製品の二つの布ベルトは,それぞれ一つのボタンを有しており,他方,前記(1)イのとおり,被告各製品のゴムベルトは,複数のボタンホールを有していて,かつ,前記(1)エのとおり,上記布ベルトのボタンは,上記ゴムベルトの複数のボタンホールに取り付けることができる。 そうすると,被告各製品のボタンは「第一取付部」に該当すると認 められ,同布ベルトは「第一取付部を有」する「第一調整ベルト」に該当すると認められる。また,被告各製品のボタンホールは,「第一取付部」であるボタンを取り付けることができる複数のボタンホールすなわち「ボタン孔」であるから,「第二取付部」に該当すると認められ,同ゴムベルトは,この複数のボタンホールを有するから,「前 記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能となる複数の第二取付部を有」する「第二調整ベルト」に該当すると認められる。 (イ) 「襟後部又はその周辺」についてa 本件発明1の特許請求の範囲においては,「送風手段を用いて人体 との間に形成された空気流通路内 」する「第二調整ベルト」に該当すると認められる。 (イ) 「襟後部又はその周辺」についてa 本件発明1の特許請求の範囲においては,「送風手段を用いて人体 との間に形成された空気流通路内に空気を流通させる空調服の襟後部と人体の首後部との間に形成される,前記空気流通路内を流通する空気を外部に排出する空気排出口」(構成要件A)との記載があり,この記載を受けて,「前記襟後部又はその周辺の第一の位置に取り付けられた第一調整ベルト」(構成要件B)及び「前記第一調整ベルトが 取り付けられた前記第一の位置とは異なる前記襟後部又はその周辺の第二の位置に取り付けられた第二調整ベルト」(構成要件C)との記載がある。そして,「周辺」については,広辞苑第七版(甲7)において,「あるものをとりまく,まわりの部分。中心から離れたところ。 周囲。」を意味するとの記載があり,デジタル大辞泉(乙11)にお いて,「あるもののまわり。あるものをとりまく部分。」を意味するとの記載があるところ,上記の「前記襟後部又はその周辺」にいうところの「その周辺」の意味も,これと別異に解する理由はない。これらの記載から,構成要件B及びCの「襟後部」については,「送風手段を用いて人体との間に形成された空気流通路内に空気を流通させる 空調服」において,「人体の首後部との間に」「空気流通路内を流通 する空気を外部に排出する空気排出口」が「形成され」る部分であり,「その周辺」とは,そのような「襟後部」の周りの部分であって,「襟後部又はその周辺」に,「第一調整ベルト」が「取り付けられた」「第一の位置」及び「第二調整ベルト」が「取り付けられた」「第二の位置」が存在すると理解することができる。 また,本件明細書には,「襟後部12と首後部との間の開口部は,他 「取り付けられた」「第一の位置」及び「第二調整ベルト」が「取り付けられた」「第二の位置」が存在すると理解することができる。 また,本件明細書には,「襟後部12と首後部との間の開口部は,他の開口部と異なり,明確に形成され,しかも,空気の排出量が最も多いという点で他の開口部に比べて重要なものである。」(【0003】),「空調服の襟後部と人体の首後部との間に形成される空気排出口」(【0010】),「送風手段を用いて人体との間に形成され た空気流通路内に空気を流通させる空調服の襟後部と人体の首後部との間に形成される,空気流通路内を流通する空気を外部に排出する空気排出口」(【0013】),「第二実施形態の空気排出口調整機構50aは,図4に示すように,襟を折り返えすことができる通常の襟部2aを有する空調服1に設けられる。…第二実施形態では,空気排 出口調整機構50aは,襟部2aの中央部(襟後部12)ではなく,襟後部12の周辺の所定箇所,具体的には襟後部12の少し下側の箇所に設けられる。」(【0036】)との記載があり,これらの記載からも,上記と同様の理解をすることができる。 b 前記(1)ウのとおり,被告各製品の二つの布ベルトは,服の内側の背 面上部で,襟部から下に約13ないし58mmの位置に縫い付けられ,被告各製品を着用した場合,上記各布ベルトは,着用者の首後部と肩甲骨の上部との間に位置すると認められる。この位置は,背面全体から見ても,着用者の首後部との間に隙間を形成する襟部に相当近く,むしろ,その襟部のすぐ下ということができる。そうすると,前記(ア) のとおり「第一調整ベルト」に該当する上記各布ベルトは,人体の首 後部との間に空気流通路内を流通する空気を外部に排出する空気排出口が形成される部分である ができる。そうすると,前記(ア) のとおり「第一調整ベルト」に該当する上記各布ベルトは,人体の首 後部との間に空気流通路内を流通する空気を外部に排出する空気排出口が形成される部分である「前記空調服の服地の内表面であって前記襟後部又はその周辺の第一の位置」に取り付けられたと認めるのが相当である。 また,前記(1)イのとおり,被告各製品のゴムベルトは,二つの布ベ ルトの取り付け位置とは異なり,服の内側の背面上部で,襟部から下に約53ないし61mmの中央部に取り付けられ,着用者の首後部と肩甲骨の上部との間に位置すると認められる。この位置も,背面全体から見ても襟部に相当近く,襟部のすぐ下ということができる。 そうすると,前記(ア)のとおり「第二調整ベルト」に該当する上記ゴ ムベルトは,「前記第一調整ベルトが取り付けられた前記第一の位置とは異なる前記襟後部又はその周辺の第二の位置」に取り付けられたと認めるのが相当である。 (ウ) 被告の主張について被告は,① 構成要件B及びCの「その周辺」とは,構成要件Dの「前 記襟後部と人体の首後部との間に」「形成」される「前記空気排出口」の「開口度」を「予め定め」ることができる程度に「襟後部」に近接したものでなければならず,② 本件明細書では,「空気排出口調整機構50a」の位置について,「襟後部12に設けるよりも,襟後部12の少し下側」(【0036】)と表現され,本件明細書の【図4】では,襟 後部にほぼ隣接するものと示されているが,被告各製品では,襟後部とゴムベルト及び二つの布ベルトが取り付けられた位置との間にかなりの距離があり,また,襟後部と首後部との間に形成される隙間の形状は主として前ファスナーの開閉の程度等に依存するので,それらは「開口度 とゴムベルト及び二つの布ベルトが取り付けられた位置との間にかなりの距離があり,また,襟後部と首後部との間に形成される隙間の形状は主として前ファスナーの開閉の程度等に依存するので,それらは「開口度」を「予め定め」ることができる位置にないと主張する。 しかし,上記①について,そもそも,構成要件Dは「前記第一取付部 を前記複数の第二取付部の少なくともいずれかの一つに取り付けること」によって「前記襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成すること」を規定しているのみで,「第一取付部」及び「第二取付部」の位置について規定しているものではないから,この記載をもって直ちに構成要件B及びCの「その周辺」 を被告が主張するように限定して解釈すべきであるということができず,他に本件特許の特許請求の範囲及び本件明細書中に被告の上記解釈を裏付ける記載は認められない。 また,上記②について,本件明細書の「第二実施形態では,空気排出口調整機構50aは,襟部2aの中央部(襟後部12)ではなく,襟後 部12の周辺の所定箇所,具体的には襟後部12の少し下側の箇所に設けられる。空調服の形状にもよるが,通常の空調服では,空気流通路内を流通する空気を空気排出口から外部にスムースに排出するには,空気排出口を,襟後部12に設けるよりも,襟後部12の少し下側に設ける方が合理的であるからである。」(【0036】)との記載は,「空調 服の形状」に応じて「空気排出口調整機構」の位置を上下させることを前提としており,上記「少し下側」は必ずしも「襟後部」の直下のみを意味するとは解されない。本件明細書の【図4】も,本件発明1の実施例を示したものにすぎず,構成要件B及びCの「その周辺」について を前提としており,上記「少し下側」は必ずしも「襟後部」の直下のみを意味するとは解されない。本件明細書の【図4】も,本件発明1の実施例を示したものにすぎず,構成要件B及びCの「その周辺」について「第一調整ベルト」が襟後部にほぼ隣接するものに限るものではない。 そして,特許請求の範囲及び本件明細書の各記載並びに「周辺」の一般的な意味に照らして,被告各製品のゴムベルト及び二つの布ベルトが「前記襟後部」の「周辺」に取り付けられたと認められることは,前記(イ)のとおりである。 したがって,被告の上記各主張はいずれも採用することができない。 (エ) 小括 以上の検討結果及び弁論の全趣旨によれば,被告各製品は,「第一取付部を有し,前記空調服の服地の内表面であって前記襟後部又はその周辺の第一の位置に取り付けられた第一調整ベルト」及び「前記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能となる複数の第二取付部を有し,前記第一調整ベルトが取り付けられた前記第一の位置と は異なる前記襟後部又はその周辺の第二の位置に取り付けられた第二調整ベルト」を備えると認められるから,構成要件B及びCを充足する。 イ構成要件D(ア) 「襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成する」について a 本件発明1の特許請求の範囲においては,「送風手段を用いて人体との間に形成された空気流通路内に空気を流通させる空調服の襟後部と人体の首後部との間に形成される,前記空気流通路内を流通する空気を外部に排出する空気排出口について,その開口度を調整するための空気排出口調整機構」(構成要件A),「第一取付部と取り付けが 可能となる複数の第二取付部 される,前記空気流通路内を流通する空気を外部に排出する空気排出口について,その開口度を調整するための空気排出口調整機構」(構成要件A),「第一取付部と取り付けが 可能となる複数の第二取付部」(構成要件C)及び「前記第一取付部を前記複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けることで前記空気流通路内を流通する空気の圧力を利用することにより,前記襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成する」(構成要件D)との記載がある。これ らの記載から,「空調服」において,「送風手段を用いて人体との間に形成された空気流通路内」を「流通する空気を外部に排出する空気排出口」が,「第一取付部」を「複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けること」及び「前記空気流通路内を流通する空気の圧力を利用すること」により,「襟後部と人体の首後部との間に」, 「複数段階の予め定められた開口度で」,「形成」されるものと理解 することができる。 また,本件明細書には,「ベルトを締めると共にファスナーを閉じた後,二つの送風手段11,11を作動させると,図7に示すように,外気が各送風手段11から空調服1内に取り込まれる。そして,その取り込まれた外気は,空気流通路内を人体と平行に上方に流通し,空 気排出部から排出される。ここで,空気排出部としては,空調服1の襟前部と人体の首前部との間の開口部,空調服1の襟後部12と人体の首後部との間の開口部,そして,空調服1の袖部と人体の腕部との間の開口部がある。」(【0003】),「空気排出口調整機構により襟後部12と首後部との間に空気排出口13を形成しなくとも,送 風手段11を作動させると,空気の圧力により襟後部12と首後部との間に自動的にある程度 【0003】),「空気排出口調整機構により襟後部12と首後部との間に空気排出口13を形成しなくとも,送 風手段11を作動させると,空気の圧力により襟後部12と首後部との間に自動的にある程度の開口部が確保される」(【0009】),「空気排出口調整機構50を利用して空気排出口13を形成しなくとも,空調服1の送風手段11を作動させると,空気流通路内を流通する空気の圧力により襟後部12と首後部との間に自動的にある程度の 開口部が確保されるので,この開口部が空気排出口13となって,ここから少量の空気を外部に排出することができる。」(【0026】)及び「空気排出口13から少量の空気を排出したい場合には,留め具512を貫通孔532に取り付けないようにする。この場合には,空気流通路内を流通する空気の圧力により襟後部12と首後部との間に 自動的にある程度の開口部が確保されるので,この開口部が空気排出口13となって,ここから少量の空気を外部に排出することができる。」(【0041】)との記載がある。これらの記載から,空気排出口調整機構を利用しなくても,空気流通路内を流通する空気の圧力により,空調服の襟後部と人体の首後部との間に,自動的にある程度 の開口部が形成されるものと理解することができる。 以上の特許請求の範囲及び本件明細書の記載によれば,構成要件Dの「予め定められた開口度」とは,必ずしも第一取付部と第二取付部の取り付け位置によってのみ定まるものではなく,第一取付部を複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けること及び空気流通路内を流通する空気の圧力を利用することにより,複数段階の開口 の度合いが形成されれば足りると解するが相当である。 b 証拠(甲4,5,8,9)によれば,被告各製品の二つの び空気流通路内を流通する空気の圧力を利用することにより,複数段階の開口 の度合いが形成されれば足りると解するが相当である。 b 証拠(甲4,5,8,9)によれば,被告各製品の二つの布ベルトのボタンを,当該布ベルトと中央部から見て同じ側にあるゴムベルトの複数のボタンホールのうち,中央部により近いものにそれぞれ取り付けてファンを作動させると,服の襟後部と人体の首後部の間の隙間 は大きくなり,これから排出される空気の流速は速くなり,一方で,中央部からより遠いものにそれぞれ取り付けてファンを作動させると,上記隙間は小さくなり,排出される空気の流速は遅くなるという実験結果が得られたことが認められる。 前記(1)エのとおり,布ベルトのボタンをゴムベルトの複数のボタン ホールのうち中央部により近いものに取り付けると,二つの布ベルトで挟まれた部分のゆるみが大きくなり,中央部からより遠いものに取り付けると,当該部分のゆるみは小さくなることからすると,前者の場合は空気の出口が大きくなることから流れる空気の量が多くなり,後者の場合は空気の出口が小さくなることから流れる空気の量が少な くなると考えられる。そうすると,上記実験結果は合理的なものであるということができ,これを採用することができる。 したがって,被告各製品は,布ベルトのボタン(第一取付部)をゴムベルトの中央部から端部にかけて予め設けられた複数のボタンホール(第二取付部)のうちのいずれかに取り付けること及び空気流通路 内を流通する空気の圧力を利用することにより,複数段階の開口の度 合いを形成するといえるから,「空気排出口」を「複数段階の予め定められた開口度で」「形成する」ものと認めるのが相当である。 (イ) 被告の主張についてa ることにより,複数段階の開口の度 合いを形成するといえるから,「空気排出口」を「複数段階の予め定められた開口度で」「形成する」ものと認めるのが相当である。 (イ) 被告の主張についてa 被告は,① 被告各製品には,襟部に,襟とゴムベルト及び布ベルトで囲まれた領域がないから,「空気排出口」に相当する部分が存在し ない,② 襟後部とゴムベルト及び布ベルトとが離れているので,これらを取り付けることによって「複数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成すること」はない,③ 襟後部と首後部との間に形成される開口部の形状は,前ファスナーの開閉の程度や着用者の体格,姿勢,ゴムベルトの伸縮等の影響を受けるので,布ベルトのボタンを ゴムベルトのボタンホールに取り付ける位置によって決定されるものではないと主張する。 b 前記①について,構成要件Dは「前記第一取付部を前記複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けること」により形成される「空気排出口」が「前記襟後部と人体の首後部との間に」あると規 定するものにすぎず,襟(「襟後部」),ゴムベルト(「第二調整ベルト」)及び二つの布ベルト(「第一調整ベルト」)で領域を形成することを求めるものではない。 したがって,被告の前記①の主張は採用することができない。 c 前記②について,被告訴訟復代理人作成の報告書(乙1)の実験結 果においては,布ベルトのボタンとゴムベルトのボタンホールを取り付けても,人体の首後部と被告各製品の襟後部との間に隙間は形成されないとある。 しかし,被告各製品の襟後部と人体の首後部とのに隙間が生じるか否かは,被告自身が認める,前部ファスナーの締め具合,着用者の姿 勢や体格等のほか,フ 隙間は形成されないとある。 しかし,被告各製品の襟後部と人体の首後部とのに隙間が生じるか否かは,被告自身が認める,前部ファスナーの締め具合,着用者の姿 勢や体格等のほか,ファンの風力(強度),ボタンの取り付け位置 (上記実験結果においては,被告製品1及び15について,それぞれ2つの取り付け位置の比較しかされていない。),服の布地や布ベルト,ゴムベルト等の素材,襟部自体の形状等の影響を受けると考えられるところ,上記実験結果において,それらの点について厳密な条件設定がされたか否か不明である。そして,そもそも,上記実験結果に 係る写真を検討しても,着用者の姿勢を統一した上で,完全な鉛直方向から撮影された写真の比較が存在しないため,隙間の状況について十分に対比して確認することができない。そうすると,上記実験結果をもって,布ベルトのボタンとゴムベルトのボタンホールを取り付けても隙間が全く形成されないということはできない。 さらに,証拠(甲6)及び弁論の全趣旨によれば,被告自身,被告製品1ないし15の商品に同封した説明書において,布ベルトのボタンとゴムベルトのボタンホールを取り付けることにより首後部に空間ができ,首後部からより大きな空気を排出することができる旨を記載していることが認められるところ,被告において,この記載と上記実 験結果との整合性につき合理的な説明ができているとはいえない。 以上によれば,上記実験結果は直ちに採用することができず,それに基づく被告の前記②の主張も採用することができない。 d 前記③について,前記cのとおり,送風手段を作動させたときの空調服の襟後部と人体の首後部との間に形成される隙間(構成要件Dの 「空気排出口」)の形状は,ファンの風力,前部ファスナー d 前記③について,前記cのとおり,送風手段を作動させたときの空調服の襟後部と人体の首後部との間に形成される隙間(構成要件Dの 「空気排出口」)の形状は,ファンの風力,前部ファスナーの締め具合,着用者の姿勢や体格,服の布地や布ベルト,ゴムベルト等の素材,襟部の形状等の影響も受けると考えられるところ,構成要件Dでは「複数の第二取付部」のうち「第一取付部」を取り付ける位置のみによって「空気排出口」の「開口度」が定まるとは記載されておらず, むしろ,本件明細書には「空気排出部の性質上,各空気排出部の開口 度を明確に数値で表すことはできない」(【0004】)との記載があり,これらの記載から,本件各発明は,「空気排出口」の形状を「第一取付部」を取り付ける「第二取付部」の位置等により数値化することは困難であることを前提としているものと理解することができる。 被告訴訟復代理人作成の報告書(乙1,9)及び被告訴訟代理人作成の実験動画(乙10)の各実験結果においては,布ベルトのボタンをゴムベルトのボタンホールに取り付ける位置によって,襟後部と首後部との間に形成される開口部の形状に有意な差はないとある。しかし,前記cのとおり,被告自身,布ベルトのボタンとゴムベルトのボ タンホールを取り付けることによって首後部に空間ができると説明する上,ゴムベルトに複数のボタンホールがあることは,この空間の広狭を調整すること以外の目的は考えにくい。また,上記のとおり,上記開口部の形状は,着用者の体格や服の布地の素材,襟の形状等様々な要素の影響を受けると考えられ,ファンの強さや着用者の姿勢を同 じにしたとしても,その他の条件が変わることにより(例えば,素材の違う空調服を使用して実験することにより),上記形状も変わり得ると考 の影響を受けると考えられ,ファンの強さや着用者の姿勢を同 じにしたとしても,その他の条件が変わることにより(例えば,素材の違う空調服を使用して実験することにより),上記形状も変わり得ると考えられるから,上記実験結果のみをもって,布ベルトのボタンとゴムベルトのボタンホールの取り付け位置が上記形状に一切影響を与えないということはできない。したがって,上記各実験結果は採用 することができないというべきである。 以上によれば,被告の前記③の主張は採用することができない。 (ウ) 小括以上の検討結果及び弁論の全趣旨によれば,被告各製品は,「前記第一取付部を前記複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付け ることで前記空気流通路内を流通する空気の圧力を利用することにより, 前記襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成することを特徴とする」と認められるので,構成要件Dを充足する。 ウ構成要件A前記(1)アのとおり,被告各製品は,ファンを用いて外部から服内に空気 を取り込み,当該空気を服と人体との間に形成された空間に流通させる空調服であり,当該空気は襟後部と首後部との間に形成される開口部から外部に排出されるから,「送風手段を用いて人体との間に形成された空気流通路内に空気を流通させる空調服」に該当し,「襟後部と人体の首後部との間」に「前記空気流通路内を流通する空気を外部に排出する空気排出口」 が「形成される」ものであると認められる。 そして,前記イのとおり,布ベルトのボタンをゴムベルトの複数のボタンホールのいずれかに取り付けることによって,上記開口部の大きさを調整することができるから,「空気排出口」の「開口度を調整する そして,前記イのとおり,布ベルトのボタンをゴムベルトの複数のボタンホールのいずれかに取り付けることによって,上記開口部の大きさを調整することができるから,「空気排出口」の「開口度を調整するための空気排出口調整機構」を備えると認めるのが相当である。 したがって,被告各製品は構成要件Aを充足する。 エ構成要件E前記イのとおり,被告各製品における布ベルトのボタン及びゴムベルトの複数のボタンホールは,これらを取り付ける位置によって,襟後部と首後部との間に形成される開口部の大きさを調整することができるので, 「空気排出口調整機構」に該当すると認められる。 したがって,被告各製品は構成要件Eを充足する。 オ構成要件F前記アないしエのとおり,被告各製品は,構成要件AないしEを充足し,本件特許の請求項3の「空気排出口調整機構」を備えると認められるので, 構成要件Fを充足すると認められる。 (3) 小括以上の検討結果及び前記前提事実(5)ウによれば,被告各製品は,いずれも構成要件AないしGを充足するので,本件各発明の技術的範囲に属すると認められる。 3 争点2-1(明確性要件違反)について (1) 被告は,本件明細書において,構成要件Dの「空気排出口」が自然に形成されるものを含むのか,「空気排出口調整機構」により形成されるものに限られるのかが明らかでなく,「空気排出口」の記載内容が一貫していないから,当業者はその意味を理解することができないと主張する。 そこで検討するに,本件明細書では,「送風手段11,11を作動させる」 ことにより「空調服1内に」「取り込まれた外気は,空気流通路内を人体と平行に上方に流通し,空気排出部から排出され そこで検討するに,本件明細書では,「送風手段11,11を作動させる」 ことにより「空調服1内に」「取り込まれた外気は,空気流通路内を人体と平行に上方に流通し,空気排出部から排出され」るところ,「空気排出部としては,空調服1の襟前部と人体の首前部との間の開口部,空調服1の襟後部12と人体の首後部との間の開口部,そして,空調服1の袖部と人体の腕部との間の開口部があ」り,そのうち「襟後部12と首後部との間に形成さ れる開口部」を「空気排出口」という(【0003】)と記載されている。 この記載から,「空気排出口」とは,送風手段を作動させたときに襟後部と首後部との間に形成される開口部を意味すると理解することができ,送風手段を作動させること以外にこれを形成する条件は定まっていないといえる。 そして,本件各発明は,「襟後部12と首後部との間の空気排出口13の 開口度を簡単に調整することができる新たな空気排出口調整機構の実現」(本件明細書【0009】)を目指したものであるところ,それを実現するための構成に関し,本件明細書では,「空気排出口調整機構50を利用して空気排出口13を形成しなくとも,空調服1の送風手段11を作動させると,空気流通路内を流通する空気の圧力により襟後部12と首後部との間に自動 的にある程度の開口部が確保されるので,この開口部が空気排出口13とな って,ここから少量の空気を外部に排出することができる。」(【0026】)と記載されている。この記載から,「空気排出口」には,「空気排出口調整機構」により形成されるものと,「空気排出口調整機構」を用いることなく,送風手段を作動させることで空気流通路内を流通する空気の圧力により自動的に形成されるものとがあると理解することができる。 り形成されるものと,「空気排出口調整機構」を用いることなく,送風手段を作動させることで空気流通路内を流通する空気の圧力により自動的に形成されるものとがあると理解することができる。 また,本件明細書では,「新たな空気排出口調整機構により襟後部12と首後部との間に空気排出口13を形成しなくとも,送風手段11を作動させると,空気の圧力により襟後部12と首後部との間に自動的にある程度の開口部が確保されるので,使用目的によっては空気排出口13を形成しないほうがよい場合もある。」(【0009】)との記載がある。ここにいう「空 気排出口13」は,同記載の文脈からすると「空気排出口調整機構」により形成されるものと理解されるが,同記載から,送風手段を作動させることで空気流通路内を流通する空気の圧力により自動的に形成される「空気排出口」の存在を否定する趣旨までは読み取れない。 そうであるとすると,本件明細書の記載により,本件各発明の特許請求の 範囲における「空気排出口」の意味は,送風手段を作動させた状態における襟後部と首後部との間に形成される開口部であると確定することができるから,「空気排出口」の記載内容が一貫していないとはいえず,当業者がその意味を理解することができないとは認められない。 (2) 被告は,構成要件Dの「空気排出口」の意味が不明であるため,「空気排 出口」の「開口度」及び「複数段階の予め定められた開口度」の意味や測定方法が不明であると主張する。 しかし,「空気排出口」の意味は前記(1)のとおりに確定できるから,それが不明であるとはいえない。 また,「開口度」とは一般的に「開いた程度」を意味すると解されるとこ ろ,本件明細書では,「空気排出部の性質上,各空気排出部の開口 りに確定できるから,それが不明であるとはいえない。 また,「開口度」とは一般的に「開いた程度」を意味すると解されるとこ ろ,本件明細書では,「空気排出部の性質上,各空気排出部の開口度を明確 に数値で表すことはできないが,開口度が大きいほど,空気がその空気排出部から受ける抵抗が小さくなり,その空気排出部から排出される空気の量が多くなる。」(【0004】)との記載がある。この記載から,「開口度」の大小は,客観的に測定し得るものではなく,空調服そのものの性質やこれを使用する際の条件(ファンの風力,前部ファスナーの締め具合,着用者の 姿勢や体格,服の布地や布ベルト,ゴムベルト等の素材,襟部自体の形状等)を捨象して,各「空気排出部」において相対的に定まるものと理解することができる。 そして,本件明細書では,「第1実施形態」について,「空調服1の着用者は,空気排出口13から少量の空気を排出したい場合には,留め具512 をいずれの貫通孔52a,52bにも取り付けないようにすればよ」く,「空気排出口13から通常の量の空気を排出したい場合には,留め具512を第一貫通孔52aに取り付ければよく,空気排出口13から多量の空気を排出したい場合には,留め具512を第二貫通孔52bに取り付ければよい。 このように,第一実施形態の空気排出口調整機構50を用いると,着用者は, 空調服1の使用目的に応じて空気排出口13の開口度を3段階の開口度の中から選択」することができる(【0026】)との記載があり,「第2実施形態」についても,「留め具512を貫通孔532に通して掛けると」,「空調服1の襟後部12の付近が弛み,襟後部12と着用者の首後部との間に空気排出口13が形成され」,「空気排出口13から少量の空気を排出し た 「留め具512を貫通孔532に通して掛けると」,「空調服1の襟後部12の付近が弛み,襟後部12と着用者の首後部との間に空気排出口13が形成され」,「空気排出口13から少量の空気を排出し たい場合には,留め具512を貫通孔532に取り付けないようにする」ことにより,「第二実施形態の空気排出口調整機構50aを用いると,着用者は,空調服1の使用目的に応じて空気排出口13の開口度を2段階の開口度の中から選択し,所期の冷却効果を得ることができる。」(【0041】)との記載がある。これらの記載から,「着用者」は,予め設けられた(複数 の)「貫通孔」(複数あるときはそのうちのいずれか一つ)に「留め具」を 取り付け,又は取り付けないことを選択し,この選択により定まる「開口度」,すなわち,相対的な開いた程度を選ぶことによって,「空気排出口」から排出される空気の量を調整するものであって,「複数段階の予め定められた開口度」とは,このことをいうものと理解することができる(なお,本件発明1において,上記「複数段階」とは複数の「貫通孔」の中から一つを 選択することを意味することは,構成要件C及びDの記載から明らかである 。)。 そうすると,「空気排出口」の「開口度」及び「複数段階の予め定められた開口度」の意味や測定方法が不明であるとは認められない。 (3) したがって,構成要件Dのうち「前記襟後部と人体の首後部との間に,複 数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成する」との記載は,本件明細書を参照して理解することにより,その技術的範囲が明確であって,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確な内容を含んでいないといえるから,明確性要件(法36条6項2号)違反は認められない。 4 争点2-2(乙2公報を主引用例と ,その技術的範囲が明確であって,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確な内容を含んでいないといえるから,明確性要件(法36条6項2号)違反は認められない。 4 争点2-2(乙2公報を主引用例とする新規性欠如)について (1) 乙2公報の記載事項等ア本件特許の出願日である平成25年10月9日より前に日本国内において頒布された刊行物である乙2公報には,以下のとおりの記載がある(下記記載中に引用する図は別紙3乙2公報図面参照)。 (ア) 【特許請求の範囲】 【請求項1】身体の所定部位を覆うと共に,身体又は下着との空間に,身体又は下着の表面に沿って空気を案内するための服地部と,前記服地部と身体又は下着との空間に空気を流通させるための一又は複数の送風手段と, 前記送風手段に電力を供給する電源手段と, 少なくとも,前記服地部の袖部に設けられた切込み部の開口の度合を調節することにより,袖部から外部に流出する空気の量を調節する袖部調節手段を含む調節手段と,を備えることを特徴とする空調衣服。 【請求項3】 前記調節手段は,前記服地部の襟部に設けられた切込み部の開口の度合を調節することにより,襟部から外部に流出する空気の量を調節する襟部調節手段を含むものであることを特徴とする請求項1又は2記載の空調衣服。 【請求項7】 身体の所定部位を覆うと共に,身体又は下着との空間に,身体又は下着の表面に沿って空気を案内するための服地部と,前記服地部と身体又は下着との空間に空気を流通させるための一又は複数の送風手段と,前記送風手段に電力を供給する電源手段と, 前記服地部の一部を撓ませることにより,空気の流通路を拡張する流通路拡張手段を設けたことを特徴とする空調衣 させるための一又は複数の送風手段と,前記送風手段に電力を供給する電源手段と, 前記服地部の一部を撓ませることにより,空気の流通路を拡張する流通路拡張手段を設けたことを特徴とする空調衣服。 【請求項8】前記流通路拡張手段は,水平方向において任意の距離を隔てた前記服地部の内側の2箇所に各々の一端が取着された一組の接続部材を接続す ることにより,前記2箇所の間の服地部が外側に撓むようにしたものであることを特徴とする請求項7記載の空調衣服。 (イ) 【技術分野】【0001】本発明は,身体の表面に略平行な空気を流通させることにより身体を 冷却する空調衣服に関する。 【背景技術】【0002】近年,身体を冷却する空調衣服が広く知られるようになってきた(例えば,特許文献1参照)。かかる空調衣服は,服地部と身体又は下着との間に空気を流通させるための流通路と,服地部に取付けられたファン とを備える。ファンは,通常,服地の背中側の下部に取付けられる。空調衣服を着用し,ファンを駆動すると,ファンにより服地部と身体又は下着との空間に空気の流れが生じ,空気が身体の表面に沿って流通するようになる。これにより,身体の表面における湿度勾配を大きくして,身体が必要とする放熱量に応じて排出される汗を気化させることができ る。この結果,身体から気化熱が奪われ,身体が冷却される。 【発明が解決しようとする課題】【0004】空調衣服,例えばジャンパー型の空調衣服では,ファンの駆動により服地部と身体又は下着との空間に送り込んだ空気は,主に襟元の開口部 や両方の袖口の開口部から外部に排出される。ところで,服地部と身体又は下着との空間を流 ー型の空調衣服では,ファンの駆動により服地部と身体又は下着との空間に送り込んだ空気は,主に襟元の開口部 や両方の袖口の開口部から外部に排出される。ところで,服地部と身体又は下着との空間を流れる空気の全体の量は,ファンの回転数を変えることにより,変えることができる。しかしながら,従来の空調衣服では,例えば襟元が冷えすぎるので,襟元の開口部から排出される空気の量を少なくしようとして,ファンの回転数を低くすると,これにより両方の 袖口の開口部から排出される空気の量も減少し,両腕の部分を十分に冷却することができなくなるという問題があった。 【0005】また,従来の空調衣服では,例えば身体の腹部のように空気の流れやすい部分と,身体の背中の上部のように空気の流れ難い部分とがあり, したがって,身体を均一に冷却することができなかった。 【0006】更に,仮に空調衣服により身体を均一に冷却しても,冷やされたときの感じ方には個人差があり,人によって両腕部の冷却が足りないと感じたり,逆に両腕部の冷却が強すぎると感じたりする。また,着用時の体調や環境によっても冷やされたときの感じ方は異なり,例えば左腕だけ 冷却が強すぎると感じたりすることがある。このような場合でも,従来の空調衣服では,ファンによる全体の風量を調節できるだけである。したがって,従来の空調衣服では,着用者の体調や着用時の環境等に応じた効果的な冷却を行なうことができないという問題があった。 【0007】 本発明は上記事情に基づいてなされたものであり,身体の各部位を流れる空気の量を調節することができる空調衣服を提供することを目的とする。 (ウ) 【課題を解決するための手段】 本発明は上記事情に基づいてなされたものであり,身体の各部位を流れる空気の量を調節することができる空調衣服を提供することを目的とする。 (ウ) 【課題を解決するための手段】【0014】 上記の目的を達成するための請求項7記載の発明に係る空調衣服は,身体の所定部位を覆うと共に,身体又は下着との空間に,身体又は下着の表面に沿って空気を案内するための服地部と,前記服地部と身体又は下着との空間に空気を流通させるための一又は複数の送風手段と,前記送風手段に電力を供給する電源手段と,前記服地部の一部を撓ませるこ とにより,空気の流通路を拡張する流通路拡張手段を設けたことを特徴とする。 【0015】上記の目的を達成するための請求項8記載の発明に係る空調衣服は,請求項7記載の発明において,前記流通路拡張手段は,水平方向におい て任意の距離を隔てた前記服地部の内側の2箇所に各々の一端が取着さ れた一組の接続部材を接続することにより,前記2箇所の間の服地部が外側に撓むようにしたものであることを特徴とする。 (エ) 【発明を実施するための最良の形態】【0021】[第1実施形態]図1(a)は本発明の第1実施形態である空調衣服 の概略正面図,(b)は本発明の第1実施形態である空調衣服の概略背面図,図2は第1実施形態である空調衣服の図1(b)におけるA-A'矢視概略断面図であり,(a)は流通路拡張部を使用していないときの状態を示し,(b)は流通路拡張部を使用しているときの状態を示す。 【0022】 本実施形態の空調衣服は,図1及び図2に示すように,身体の所定部位を覆うと共に,身体又は下着の し,(b)は流通路拡張部を使用しているときの状態を示す。 【0022】 本実施形態の空調衣服は,図1及び図2に示すように,身体の所定部位を覆うと共に,身体又は下着の表面に沿って空気を案内するための服地部10と,服地部10の前部を開閉するためのファスナー(開閉手段)20と,服地部10と身体又は下着との空間である空気流通部30と,外部に排出する空気の流量を調節する調節部40と,空気流通部30を 流れる空気の量を調節する流量調節部70と,空気流通部30の空間を拡張する流通路拡張部80と,空気流通部30に空気を流通させるための二つのファン50,50と,ファン50,50に電力を供給する電源部60を備える。なお,本実施形態では,調節部40と表記したときには,後述する袖部調節部41,41と,裾部調節部42,42と,背部 調節部43の全体を示すものとする。 【0027】本実施形態の調節部40は,ファスナーを用いて外部に排出される空気の量を調節するものであり,服地部10の袖口部101に設けられた切込み部の開口の度合を調節することにより,袖部から外部に流出する 空気の量を調節する一組の袖部調節部(袖部調節手段)41,41と, 服地部10の脚部の裾部102に設けられた切込み部の開口の度合を調節することにより,脚部から外部に流出する空気の量を調節する一組の裾部調節部(脚部調節手段)42,42と,服地部の背部の上部に設けられた切込み部の開口の度合を調節することにより,背部から外部に流出する空気の量を調節する背部調節部43とを含んでいる。背部調節部 43は,空気の流れ難い背部の上部に形成された切込み部にファスナーを設けたものである。この背部調節部43の開口の度合を調節するこ 出する空気の量を調節する背部調節部43とを含んでいる。背部調節部 43は,空気の流れ難い背部の上部に形成された切込み部にファスナーを設けたものである。この背部調節部43の開口の度合を調節することにより,従来の空調衣服に比べて背部の上部にも,より多くの空気を流通させることができる。なお,本実施形態では,調節部40の開口の度合を調節するのにファスナーを使用する場合について説明したが,ファ スナーの代わりに,ボタンやホックや面状ファスナー等を使用してもよい。 【0029】流通路拡張部80は,図2に示すように,水平方向において任意の距離を隔てた服地部の背部の内側の2箇所X1,X2の各々に面状テープ 80a,80bの一端を取着したものである。流通路拡張部80を使用しないときには,同図(a)に示すように,背部の内側の2箇所X1,X2の間が撓まないように,面状テープ80a,80bを接続する。或いは,面状テープ80a,80bを接続しないようにしておく。また,流通路拡張部80を使用するときには,2箇所X1,X2の間の服地部 が外側に撓むように二つの面状テープ80a,80bを接続する。これにより,背部の空気流通部を拡張し,背部に流れる空気の量を多くすることができる。また,二つの面状テープ80a,80bを繋いだときの長さを調節することにより,この流通路の大きさを調節して,背部に流れる空気の量を調節することができる。 【0032】 次に,本実施形態の空調衣服の使用方法について説明する。着用者は,本実施形態の空調衣服を着用した後,袖部調節部41,41,裾部調節部42,42,背部調節部43の各ファスナーを用いて,各々の調節部40の開口の度合を調節する。また,服地部10の前 明する。着用者は,本実施形態の空調衣服を着用した後,袖部調節部41,41,裾部調節部42,42,背部調節部43の各ファスナーを用いて,各々の調節部40の開口の度合を調節する。また,服地部10の前部のファスナー20を用いて服地部10の前部の開口の度合を調節する。また,流量調節 部70のベルト状部材71を絞るようにして,ズボン部に流れる空気の量を調節する。更に,必要に応じて,流通路拡張部80の面状テープ80a,80bを繋いで,背部の空気流通部を拡張する。 【0044】また,上記の本実施形態では,流通路拡張部を背部に一箇所だけ形成 しているが,二箇所以上形成するようにしてもよいし,また背部以外の他の部分に流通路拡張部を設けるようにしてもよい。例えば,流通路拡張部は,空調衣服の後ろ側の襟の直ぐ下に形成するようにしてもよい。 これにより,襟の後ろ側の部分にも確実に空気を流して,背部の上部や首部の後ろ側を効果的に冷却することができる。この場合,背部調節部 は省略することも可能である。更に,流通路拡張部は省略することも可能である。 【0047】また,上記の本実施形態では,流通路拡張部80に面状テープを用いる場合について説明したが,流通路拡張部には,この面状テープの代わ りに紐状部材を用いるようにしてもよい。 イ前記アの記載事項によれば,乙2公報には,以下のような開示があると認められる。 (ア) 服地部と身体又は下着との間に空気を流通させるための流通路及び服地部に取り付けられたファンを備える空調衣服は,ファンを駆動するこ とにより,服地部と身体又は下着との空間に空気の流れを生じ,空気が 身体の表面に沿って流通することによって,気化熱が奪われ,身体 取り付けられたファンを備える空調衣服は,ファンを駆動するこ とにより,服地部と身体又は下着との空間に空気の流れを生じ,空気が 身体の表面に沿って流通することによって,気化熱が奪われ,身体が冷却される(【0002】)。 しかし,従来の空調衣服では,襟元が冷えすぎるのを防ぐためにファンの回転数を低くすると,両方の袖口の開口部から排出される空気の量も減少し,両腕部を十分に冷却することができないこと,身体の腹部の ように空気の流れやすい部分と背中の上部のように空気の流れにくい部分とがあり,身体を均一に冷却することができないこと,身体を均一に冷却しても,冷やされたときの感じ方には個人差があり,人によって両腕部の冷却が足りないと感じたり,逆に強すぎると感じたりすることがあるが,ファンによる全体の風量を調節することしかできないこととい った問題があった(【0004】ないし【0006】)。 (イ) 「本発明」は,前記(ア)のような事情を考慮してされたもので,身体の各部位を流れる空気の量を調整することができる空調衣服を提供することを目的として,身体の所定部位を覆うと共に,身体又は下着との空間に,身体又は下着の表面に沿って空気を案内するための服地部と,前記 服地部と身体又は下着との空間に空気を流通させるための一又は複数の送風手段と,前記送風手段に電力を供給する電源手段と,前記服地部の一部をたわませることにより,空気の流通路を拡張する流通路拡張手段を設け,前記流通路拡張手段は,水平方向において任意の距離を隔てた前記服地部の内側の2か所に各々の一端が取着された一組の接続部材を 接続することにより,前記2箇所の間の服地部が外側にたわむようにしたものである(【請求項7】,【請求項8】,【0014】及び【0 記服地部の内側の2か所に各々の一端が取着された一組の接続部材を 接続することにより,前記2箇所の間の服地部が外側にたわむようにしたものである(【請求項7】,【請求項8】,【0014】及び【0015】)。 (2) 本件発明1と乙2発明1との対比ア被告は,乙2公報には,次の乙2発明が開示されており,本件発明1は, 乙2発明1と全て一致することから,新規性を欠くと主張する。 「送風手段(ファン50)を用いて人体との間に形成された空気流通路(空気流通部30)内に空気を流通させる空調服の襟後部と人体の首後部との間に形成される,前記空気流通路内を流通する空気を外部に排出する空気排出口(別紙4乙2発明1図面)について,その開口度(流通路の大きさ)を調整するための空気排出口調整機構(流通路拡張部80, 別紙4乙2発明1図面)において,第一取付部を有し,前記空調服の服地の内表面であって前記襟後部又はその周辺の第一の位置に取り付けられた第一調整ベルト(面状テープ80a)と,前記第一取付部の形状に対応して前記第一取付部と取り付けが可能と なる複数の第二取付部を有し,前記第一調整ベルトが取り付けられた前記第一の位置とは異なる前記襟後部又はその周辺の第二の位置に取り付けられた第二調整ベルト(面状テープ80b)と,を備え,前記第一取付部を前記複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けることで前記空気流通路内を流通する空気の圧力を利用するこ とにより,前記襟後部と人体の首後部との間に,複数段階の予め定められた開口度で前記空気排出口を形成することを特徴とする空気排出口調整機構。」これに対し,原告は,乙2公報に開示された発明が,本件各発明の①「第一調整ベルト」,②「第二調整ベルト」,③「複数の第二 た開口度で前記空気排出口を形成することを特徴とする空気排出口調整機構。」これに対し,原告は,乙2公報に開示された発明が,本件各発明の①「第一調整ベルト」,②「第二調整ベルト」,③「複数の第二取付部」, ④「前記第一取付部を前記複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けることで」「前記空気排出口を形成する」態様及び⑤「複数段階の予め定められた開口度」をいずれも有しないと主張する。 そこで,以下検討する。 イ本件発明1の特許請求の範囲の記載によれば,「第一調整ベルト」は 「第一取付部」を「有し」(構成要件B),「第二調整ベルト」は「複数 の第二取付部」を「有し」ており(構成要件C),「第一取付部」は「複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付ける」ためのものであって(構成要件D),かつ,「第二取付部」は「第一取付部の形状に対応して第一取付部と取り付けが可能となる」ものであり(構成要件C),「第一取付部」と「第二取付部」とは一対一の形状対応をしており,「前 記第一取付部を前記複数の第二取付部の少なくともいずれか一つに取り付けることで」,「襟後部と人体の首後部との間に,」「複数段階の予め定められた開口度で」「空気排出口を形成する」ことができる(構成要件D)ものと理解することができる。 これに対し,乙2公報においては,被告が「第一調整ベルト」及び「第 二調整ベルト」に対応するものと主張する「面状テープ80a」及び「面状テープ80b」について定義する記載は見当たらず,また,「面状テープ」の一部分のみが接続可能であるといった記載も見当たらない。よって,「面状テープ80a」及び「面状テープ80b」については,一般的な面状テープの形状を有しており,一端から他端までの全面が接合面で構成さ れる 接続可能であるといった記載も見当たらない。よって,「面状テープ80a」及び「面状テープ80b」については,一般的な面状テープの形状を有しており,一端から他端までの全面が接合面で構成さ れるものであって,任意の箇所で接合可能なものであると理解するのが相当である。そうすると,上記「面状テープ80a」及び「面状テープ80b」は,いずれも,その全面が接合面となって,それら自体が一つの取付部となる上,任意の箇所で留めることができるため,上記「面状テープ80a」及び「面状テープ80b」は,一対一の形状対応をし,襟後部と人 体の首後部との間に複数段階の予め定められた開口度で空気排出口を形成する,本件発明1の「第一取付部」及び「第二取付部」を有しないというべきである。その結果,乙2発明1は,「第一取付部」を有する「第一調整ベルト」及び「第二取付部」を有する「第二調整ベルト」を備えていないということになる。 ウ以上の検討に基づき,本件発明1と乙2発明1とを対比すると,以下の 相違点が認められる。 (ア) 本件発明1は「第一取付部」を有する「第一調整ベルト」を備えるのに対し,乙2発明1はこれを備えていない点(相違点1)(イ) 本件発明1は「第一取付部」と取り付けることができる「複数の第二取付部」を有する「第二調整ベルト」を備えるのに対し,乙2発明1は これを備えていない点(相違点2)(ウ) 本件発明1は「第一取付部」を「複数の第二取付部」の少なくともいずれか一つに取り付けることにより「複数段階の予め定められた開口度で」「空気排出口」を形成するのに対し,乙2発明1はこれを形成しない点(相違点3) エこれに対して,被告は,① 本件発明1においては,「第一調整ベルト」のうち「第 定められた開口度で」「空気排出口」を形成するのに対し,乙2発明1はこれを形成しない点(相違点3) エこれに対して,被告は,① 本件発明1においては,「第一調整ベルト」のうち「第一取付部」(又は「第二調整ベルト」のうち「第二取付部」)以外の部分で「第二調整ベルト」(又は「第一調整ベルト」)と取り付けることができることは排除されていない,② 乙2発明1における2本の面状テープを取り付けた部分が本件発明1における「第一取付部」とこれに 対応する「第二取付部」となるから,乙2発明1においても「第一取付部の形状に対応」した「複数の第二取付部」が開示されている,③ 本件発明1において,「空気排出口」を「複数段階の予め定められた開口度」で形成することは,これを連続的な「開口度」で形成することを排除していないと主張し,本件発明1と乙2発明1との間に相違点はないと主張する。 上記①について,本件発明1は,「第一調整ベルト」(又は「第二調整ベルト」)が「第二取付部」(又は「第一取付部」)と取り付けることができる「第一取付部」(又は「第二取付部」)を有するとしているので,「調整ベルト」中に「取付部」と「取付部」ではない部分が存在し,「取付部」ではない部分において他方の「取付部」を取り付けることはできな いと解するのが自然である。しかし,乙2発明1の2本の面状テープは, 前記イのとおり,その一端から他端までの全面において取り付けることができることから,「取付部」において取り付けることができる「調整ベルト」ということはできない。 上記②について,本件発明1では,「第一取付部」と取り付けることができる「第二取付部」が「複数」あり,その「複数」ある「第二取付部」 のうちから一つを選択して「第一 ことはできない。 上記②について,本件発明1では,「第一取付部」と取り付けることができる「第二取付部」が「複数」あり,その「複数」ある「第二取付部」 のうちから一つを選択して「第一取付部」と取り付けることとなるので,「第二取付部」は一定の個数存在することが前提となる。しかし,乙2発明1の2本の面状テープは,前記イのとおり,その一端から他端までの全面において取り付けることができ,取り付けられる方の面状テープは,1本のみでその任意の箇所に取り付けられるので,「複数の第二取付部」と いうことはできない。 上記③について,上記のとおり,本件発明1は,「複数」ある「第二取付部」のうちから一つを選択して「第一取付部」と取り付けることにより,「開口度」を調整するものであるから,その調整は予め定められた段階的なものであることを前提とする。しかし,上記のとおり,乙2発明1の2 本の面状テープは,任意の箇所に取り付けることができるので,「空気排出口」が「複数段階の予め定められた開口度」で形成されるということはできない。 したがって,被告の上記各主張はいずれも採用することができない。 (3) 本件発明2と乙2発明2との対比 被告は,乙2公報には,次の乙2発明2が開示されており,本件発明2は,乙2発明2と全て一致することから,新規性を欠くと主張する。 「乙2発明1の流通路拡張部を備えた空調服の服本体。」しかし,本件発明2と乙2発明2とを対比すると,本件発明1と乙2発明 1と間に前記(2)ウの相違点が認められることから,本件発明2が本件発明1 の空気排出口調整機構を備えるのに対して乙2発明2はこれを備えない点が相違点となる。 (4) 小括したがって,本件 (2)ウの相違点が認められることから,本件発明2が本件発明1 の空気排出口調整機構を備えるのに対して乙2発明2はこれを備えない点が相違点となる。 (4) 小括したがって,本件発明1と乙2発明1とは前記(2)ウの相違点が認められるので,本件発明1について,乙2公報を主引用例とする新規性欠如の無効理 由は認められない。 また,本件発明2と乙2発明2とは前記(3)の相違点が認められるので,本件発明2について,乙2公報を主引用例とする新規性欠如の無効理由は認められない。 5 争点2-3(乙2公報を主引用例とする進歩性欠如)について (1) 乙2発明1及び2と乙3発明1又は2との組合せについてア乙3公報の記載事項等(ア) 本件特許の出願日である平成25年10月9日より前に日本国内において頒布された刊行物である乙3公報には,以下のとおりの記載がある(下記記載中に引用する図は別紙6乙3公報図面参照)。 a 【技術分野】【0001】本発明は,シャツの襟首の襟構成に関し,寒暖に応じて,襟の開度が調整できるようにしたものである。 【発明が解決しようとする課題】 【0004】上記の従来の構成でのシャツ等の問題点は,襟首において,開度が一定に決められており,例えば,寒暑の変化のときには,襟の開度を狭く又は広くして体温の上昇・下降を簡単に防止できる構成にはなっていない。 又,儀礼上襟を肌蹴ておくと,相手に失礼ではないかという懸念も あり,なかなか,難しい問題ではあった。従って,釦を,例え暑くても外すことははばかれていた。これが省エネルックの普及の問題点でもあった。 【0005】 いかという懸念も あり,なかなか,難しい問題ではあった。従って,釦を,例え暑くても外すことははばかれていた。これが省エネルックの普及の問題点でもあった。 【0005】本発明は,上記の問題点を改善して,構造簡単であって,襟首にお ける襟の開度を簡単に調整できるようにしたものであり,また儀礼上好ましい襟構造を得るものとし,老人や子供でも簡単に行うことができるもので,既製品においても容易に設けられる構造を得ることを目的とする。 b 【課題を解決するための手段】 【0006】上記の課題を解決するために本発明では,衣服の襟構造において,襟の開度を調節できるように,襟の開度に応じて固定できる手段を数箇所備えた衣服の襟開度調節構造であって,前記襟開度調節構造において,襟部には釦又は留め孔が設けられており,且つ衣服の本体の釦 又は留め孔に対応する部位には,開度が広がる部位の数箇所に留め孔又は釦が設ける等の固定手段を設けるものを提供する。 【0007】前記襟開度調節構造において,襟部と対応する開度の広がる部位の数箇所に設けられた衣服の本体との固定手段としてホック構造を備え ている衣服の襟開度調節構造を提供する。 【0009】前記襟開度調節構造において,襟部と対応する開度の広がる部位の数箇所に設けられた衣服の本体と固定手段はマジックテープ(登録商標)による結合手段を備えている衣服の襟開度調節構造を提供する。 c 【発明の効果】 【0010】本発明は,上記のように,襟の有る衣服において,寒暖の変化又は礼節に応じて,衣服の襟角度を,簡単に暑いときは拡げたり又は寒 c 【発明の効果】 【0010】本発明は,上記のように,襟の有る衣服において,寒暖の変化又は礼節に応じて,衣服の襟角度を,簡単に暑いときは拡げたり又は寒いときは狭めたりして,調節できるものであり,デザイン上も好ましい優れた省エネともなる衣服を提供することができる。 d 【発明を実施するための最良の形態】【0011】本発明は,衣服の,例えばシャツ等の襟部の開口を調節する手段を設けることで実現した。 【0021】 図2の(4)に示すように,マジックテープ(140)(240)(登録商標)としたものである。テープ(240)は伸びているので,どの部位・場所でも留めることが可能である。この種テープは,腹巻やオムツカバーなどに盛んに使用されているが,どの部位でも留められる利点がある。 勿論,連続としないで,前記のように三点にだけ設けることもできる。 (イ) 前記(ア)の記載事項によれば,乙3公報には,以下のとおりの発明が開示されていると認められる。 a 従来のシャツ等は寒暑の変化に対応して襟の開度を調整することが できず,また,襟をはだけることが失礼に当たる懸念があった(【0004】)。 b 「本発明」は,前記aのような事情を考慮してされたもので,襟首における襟の開度を容易に調整することができるようにしつつ,儀礼上好ましい襟構造となることを目的として, 「数か所に設けられた釦(ボタン)及び留め孔で開度を調整する構 成,及び数か所に設けられたマジックテープによって複数段階の予め定められた開口度に襟部を調節する構成」(乙3発明1)及び「マジックテープを3点 ン)及び留め孔で開度を調整する構 成,及び数か所に設けられたマジックテープによって複数段階の予め定められた開口度に襟部を調節する構成」(乙3発明1)及び「マジックテープを3点設ける構成」(乙3発明2)を提供するものである(【0005】,【0006】,【0009】及び【0021】)。 イ乙2発明1に乙3発明1又は2を組み合わせることの可否等(ア) 本件発明1と乙2発明1との間には,前記4(2)ウのとおり,相違点1ないし3が認められるところ,被告は,乙2発明1に乙3発明1又は2を組み合わせることで,本件発明1を容易に発明することができたと主張するので,以下検討する。 (イ) 乙2発明1が,空調衣服において,身体の各部位を流れる空気の量を調整することができるようにするため,服地部の内側の2か所に各々の一端が取着された一組の接続部材を接続することにより,前記2か所の間の服地部が外側にたわむようにすることで,空気の流通路を拡張する流通路拡張手段を設けたものであり,機械的に相当量の空気を流通させ る空調衣服において,より効果的な冷却性能を得ることを目的としたものである(前記4(1)イ)。これに対して,乙3発明1及び2は,シャツ等において,外観上礼を失することなく寒暑の変化に対応して襟の開度を容易に調整するために,数か所(又は3点)に設けられたボタン及び留め孔又はマジックテープを用いて,服地部の結合位置を直接変更する ことにより,襟部の開口度を調節するものであり(前記ア(イ)),人工的な空気の流れを利用することなく自然な涼を得ることを目的としたものである。そうすると,乙2発明1と乙3発明1及び2とでは,技術分野の関連性は否定できないとしても,乙2発明1が空調衣服における空 工的な空気の流れを利用することなく自然な涼を得ることを目的としたものである。そうすると,乙2発明1と乙3発明1及び2とでは,技術分野の関連性は否定できないとしても,乙2発明1が空調衣服における空気の流通路に関する発明であり,服地部の2か所の間に意図的にたわみを 形成し,これを調整しようとするものであるのに対し,乙3発明1及び 2はシャツ等の襟の開度に関する発明であり,服地部の結合位置を直接変更し,襟部の開口度を調節しようとしたものであるから,発明が解決しようとする課題及びその課題解決の手段は異なるというべきである。 また,乙2公報には,「第2実施形態」の「流通路拡張部」(別紙3乙2公報図面参照)において,面状テープを紐状部材に置き換える構成 の示唆はあるものの(乙2公報【0047】。なお,同【0027】には「ファスナーの代わりに,ボタンやホックや面状ファスナー等を使用してもよい。」と,面状テープとボタンとを代替することができる旨の記載があるが,これはファスナーを用いて調整を行う「調節部40」(別紙3乙2公報図面参照)に関する記載であり,「流通路拡張部80」 に関するものではない。),乙3発明1及び2のボタン及び留め孔や面状テープを数か所に設ける構成を示唆する記載は見当たらない(むしろ,乙2発明1では,面状テープや紐のように一定の長さを有し,任意の長さに調整することができる部品を想定している。)。他方,乙3公報にも,乙3発明1及び2の構成を空調服等において利用することを示唆す る記載はない。 以上を総合すれば,乙2発明1に乙3発明1又は2を組み合わせることについては,その動機付けを認めることができないというべきである。 (ウ) 本件発明1は,本件明細書の【図6】(別紙5本件特許図面参照)のとお 乙2発明1に乙3発明1又は2を組み合わせることについては,その動機付けを認めることができないというべきである。 (ウ) 本件発明1は,本件明細書の【図6】(別紙5本件特許図面参照)のとおり,空調服の服地,「第一調整ベルト」及び「第二調整ベルト」に より,一定の広さを有する囲まれた領域を形成する。 しかし,乙2発明1の一組の接続部材は,乙2公報の【図2】(b)(別紙3乙2公報図面参照)のとおり,それぞれ端部が服地部の内側に取着されたものであり,この取着された位置に,上記接続部材に代えて,乙3発明1で開示された,数か所に設けられたボタン及び留め孔又は数か 所に設けられたマジックテープをそのまま取り付けたところで,本件発 明1の「第一調整ベルト」及び「第二調整ベルト」に相当するものが存在しないから,上記領域を形成することができない。前記(イ)のとおり,上記接続部材に相当する面状テープを紐状部材に置き換えることの示唆はあるが,同じく結合部材であるボタンやホック,スナップ等に置き換えることの示唆はないことからしても,乙2発明1の流通路拡張部は, 一定の長さを有する結合部材によって構成することが予定されていたものであり,ボタン等では代替し得ないものであると考えられる。 被告は,当業者であれば,面状テープ同士が接合している部分にボタンや留め孔を設け,紐状の部材はそのまま残そうと考えるのが自然であると主張するが,面状テープに代えて,紐状部材にボタン及び留め孔を 設けることが技術常識であったことを認めるに足りる証拠はない。 そうすると,乙2発明1に乙3発明1又は2を組み合わせたところで,本件発明1に想到することはできないというべきである。 ウ小括したがって,乙2発明1に乙3発明1又は2を組み合わせる動 そうすると,乙2発明1に乙3発明1又は2を組み合わせたところで,本件発明1に想到することはできないというべきである。 ウ小括したがって,乙2発明1に乙3発明1又は2を組み合わせる動機付けが あるとは認められず,仮に組み合わせたとしても本件発明1に想到することができるとは認められないから,本件発明1について,当業者が乙2発明1に乙3発明1又は2を組み合わせることで容易に発明することができたとは認められない。 また,本件発明2についても,同様に,当業者が乙2発明2に乙3発明 1又は2を組み合わせることで容易に発明することができたとは認められない。 (2) 乙2発明1及び2と周知技術との組合せについて被告は,面状テープを留めることによって調節する構造を,複数のボタン及びボタンホール又は複数のマジックテープで調節する構造に置き換えるこ とは周知技術の置換えにすぎないから,当業者は乙2発明1及び2とこれら の周知技術とを組み合わせることにより本件各発明を容易に発明することができたと主張する。 そこで検討するに,証拠(乙4ないし7,13ないし16)及び弁論の全趣旨によれば,本件特許が出願された平成25年当時,衣服におけるサイズを調整する方法として,複数の位置に面ファスナーを設け,これらのいずれ か一つを選択して他方の面ファスナーを取り付けたり,複数のボタン及びボタンホールを取り付けたりする方法があり,これらは周知慣用の技術であったことが認められる。 しかし,前記(1)イ(イ)のとおり,乙2発明1が空調衣服においてより効果的な冷却性能を得るために,服地部の2か所の間に意図的にたわみを形成し, これを調整することを目的としたものであるのに対し,上記周知技術は衣服のサイズを調整することを目 調衣服においてより効果的な冷却性能を得るために,服地部の2か所の間に意図的にたわみを形成し, これを調整することを目的としたものであるのに対し,上記周知技術は衣服のサイズを調整することを目的としたものであり,両者の課題及びその課題解決の手段が異なるといえること,乙2公報の【図2】(別紙3乙2公報図面参照)の面状テープ80a及び面状テープ80bをボタンやホック,スナップ等に置き換えることを示唆する記載は見当たらず,むしろ,同【004 7】においては,これを,一定の長さを有し,任意の長さに調整することができる紐状部材に置き換える構成が示唆されていることからすると,乙2発明1の面状テープをボタン等に置き換える動機付けは認められないというべきである。 また,前記(1)イ(ウ)のとおり,本件発明1においては,空調服の服地, 「第一調整ベルト」及び「第二調整ベルト」により,一定の広さを有する囲まれた領域を形成するところ,乙2発明1の一組の接続部材に代えて,これらが取着された服地部の内側に,上記周知技術に係るボタンやホック,スナップ等をそのまま取り付けたところで,本件発明1の「第一調整ベルト」及び「第二調整ベルト」に相当するものがないから,上記領域を形成すること ができない。なお,乙13ないし16号証では,紐状又は帯状部材にボタン 等の結合部材が取り付けられた構成が開示されているが,紐状又は帯状部材によって領域を形成しようとするものではない。 したがって,乙2発明1に上記周知技術を組み合わせる動機付けがあるとは認められず,仮に組み合わせたとしても本件発明1に想到することができるとは認められないから,本件発明1について,当業者が乙2発明1に上記 周知技術を組み合わせることで容易に発明することができたとは認められ ,仮に組み合わせたとしても本件発明1に想到することができるとは認められないから,本件発明1について,当業者が乙2発明1に上記 周知技術を組み合わせることで容易に発明することができたとは認められない。 また,本件発明2についても,同様に,当業者が乙2発明2に上記周知技術を組み合わせることで容易に発明することができたとは認められない。 (3) 小括 以上のとおり,本件各発明について,乙2公報を主引用例とする進歩性欠如の無効理由は認められない。 6 争点3(損害額)について(1) 推定される損害額ア前記前提事実(5)のとおり,被告は,本件特許権の登録日である平成29 年6月16日から令和元年10月31日までの間,被告各製品合計●省略●個を販売し,これにより●省略●円の売上げがあり,少なくとも●省略●円の経費を要した。 したがって,法102条2項の利益の額は,5652万1465円(消費税込み)と認めるのが相当である。 イ被告は,被告による被告各製品の販売がなかったならば原告が利益を得られたであろうという事情は存在しないので,法102条2項の適用はないと主張する。 しかし,証拠(甲12,35ないし38,乙17,33,107,108)及び弁論の全趣旨によれば,① 電動ファン付きウエアの市場において, 平成29年当時,原告グループ(原告,株式会社空調服等。以下同じ。) は約30%,被告グループ(被告,株式会社サンエス等。以下同じ。)は約40%,平成30年当時,原告グループは約33%,被告グループは約33%,令和元年当時,原告グループは約40%,被告グループは約20%,令和2年当時,原告グループは約35%,被告グループは約20%の各シェアを占めていた ,原告グループは約33%,被告グループは約33%,令和元年当時,原告グループは約40%,被告グループは約20%,令和2年当時,原告グループは約35%,被告グループは約20%の各シェアを占めていたこと,② 原告は,首後部からの空気の排出口の大 きさを調整することができるように,空調服の販売を開始した当初は調整紐型空調服を製造販売し,その後,2段階調整型空調服を製造販売しているが,本件各発明を実施する空調服は製造販売していないことが認められる。 上記認定事実によれば,原告グループは電動ファン付きウエアの市場に おいて大きなシェアを占め,原告は,首後部からの空気の排出口の大きさを調整するために,調整紐型空調服又は2段階調整型空調服を販売していたものと認められる。他方で,被告各製品のように複数段階で調整できる空調服が多数販売され,他の電動ファン付きウエアの市場とは異なる独自の市場を形成していたことを認めるに足りる証拠はない。 そうすると,原告製品は被告各製品の競合品であると認めるのが相当であるから,被告が被告各製品を販売して本件特許権を侵害しなければ,原告は原告製品をさらに販売して利益を得られたであろうという事情が認められる。 したがって,本件には法102条2項が適用されるので,被告の上記主 張は採用することができない。 ウ被告は,商品の運用及び管理を●省略●に委託しており,平均すると商品1点当たり●省略●円の経費を要したから,売上げから合計●省略●円(●省略●円×●省略●個)を控除すべきであると主張する。 法102条2項の利益の額とは,侵害者の売上高から,侵害者において 侵害品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必 要となった 除すべきであると主張する。 法102条2項の利益の額とは,侵害者の売上高から,侵害者において 侵害品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必 要となった経費を控除した限界利益の額をいうところ,証拠(乙62)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,平成28年6月21日以降,●省略●に対し,被告の物流センターにおける衣料用繊維製品等の入出荷業務その他これに付随する業務全般を,製品の点数にかかわらず一律の月額委託料(平成29年8月1日以降は●省略●円)を支払うことを約して委託した ことが認められる。 そうすると,●省略●に対する委託料は,被告が被告各製品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費とは認められないから,前記アの被告各製品の売上げからこれを控除するのは相当でない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 (2) 推定の覆滅事由ア本件各発明が被告各製品の部分のみに実施されていること(ア) 前記1(2)のとおり,空調服は,送風手段を用いて外部から服内に空気を取り込み,当該空気が服内を流通し,その間に人体から出た汗を蒸発 させ,気化熱により体表面の温度を下げようとするものであるところ,本件発明1は,空調服の襟後部又はその周辺に二つの調整ベルトを設け,一方の調整ベルトの取付部と他方の調整ベルトの複数ある取付部のうちいずれか一つを取り付けることによって,襟後部と首後部との間に形成される開口部を広げたり,狭めたりすることを可能にし,より適切な空 調服の冷却効果を,より簡単に得ることを目指したものである。 しかし,本件特許の出願当時,既に,空調服の襟後部の内表面に一組の調整 たり,狭めたりすることを可能にし,より適切な空 調服の冷却効果を,より簡単に得ることを目指したものである。 しかし,本件特許の出願当時,既に,空調服の襟後部の内表面に一組の調整紐を設け,これらを結ぶことによって上記開口部の大きさを調整する技術があったところ(本件明細書【0004】),本件発明1は,一組の調整紐を任意の長さに結ぶことが難しく,上記開口部の大きさを 求める冷却効果に応じた適正なものにすることが困難であったことを解 決しようとしたものであり(同【0006】及び【0009】),上記開口部からの空気の排出の効率化という点では,従来技術の延長線上に位置付けられるものである。そして,本件発明1は,主として,従来技術における調整紐を「取付部」を有する「調整ベルト」に置き換えたものであるが,前記5(2)のとおり,本件特許の出願当時,ボタン及びボタ ンホール等を使用し,衣服におけるサイズを複数段階で調整することができる周知慣用の技術が存在したものである。 以上からすると,従来技術と比較したときの本件発明1の技術的意義は,必ずしも大きいものではなかったといわざるを得ない。 なお,本件発明2は,本件発明1の空気排出口調整機構を備える空調 服の服本体の発明であって,本件発明2につき本件発明1とは異なる独自の技術的意義は認められない。 (イ) 従来技術に係る調整紐型空調服において,送風手段を作動させたときの襟後部と首後部との間に形成される開口部の形状は,電動ファンの風力,前部ファスナーの締め具合,着用者の姿勢や体格,服の布地や布ベ ルト,ゴムベルト等の素材,襟部の形状等の影響を受けると考えられるところ,この点については,本件発明1を実施した空調服であっても異なる ァスナーの締め具合,着用者の姿勢や体格,服の布地や布ベ ルト,ゴムベルト等の素材,襟部の形状等の影響を受けると考えられるところ,この点については,本件発明1を実施した空調服であっても異なるところはない。そして,上記従来技術又は本件発明1に係る空気排出口調整機構が,上記の諸要素と比較して,上記開口部の形状決定にどの程度の影響を与えるのか,ひいては当該空調服の冷却性能にどの程度 の作用効果があるのかを確定するに足りる証拠はない。 また,調整紐型空調服の場合,結び目付近に調整紐の先端部分が集まり,空気排出の障害となることが指摘されるが(本件明細書【0008】),紐という形状から考えて障害の程度がさほど大きいものとはいえず,本件発明1により特に有意な作用効果が得られるとはいえない。 さらに,従来技術に係る調整紐型空調服においても,一定の技量があ れば調整紐を任意の長さに結ぶことは可能であり,本件発明はこの点について特段の技量を要しないこととしたところに発明の作用効果があるといえるものの,実際に空調服を使用するに際し,上記の調整紐の長さにつき,どれほどの頻度で,どの程度細かく調整することが必要とされていたのかは明らかではない。 そうすると,本件発明1は,容易に襟後部と首後部との間に空気排出口を形成し,これを調整することができるものの,従来技術に比して大きな作用効果があるものとは認められない。 (ウ) 証拠(乙34,35)及び弁論の全趣旨によれば,顧客が空調服を選択する際,空調服の価格,デザイン,服の素材並びに電動ファン及びバ ッテリーの性能に着目することが多いと認められ,空調服の襟後部と人体の首後部との間の空気排出口を調整する機構の有無が特に着目されたこと 空調服の価格,デザイン,服の素材並びに電動ファン及びバ ッテリーの性能に着目することが多いと認められ,空調服の襟後部と人体の首後部との間の空気排出口を調整する機構の有無が特に着目されたことを認めるに足りる証拠はない。 また,被告各製品のうちの本件各発明を実施する部分は,ボタン,ボタンホール,ゴムベルト及び布ベルトで構成され,その製造がさほど困 難であったとは認められず,証拠(乙19)及び弁論の全趣旨によれば,被告各製品に上記部分を設けるのに要する費用は1着当たり41ないし42円であり,被告各製品の販売価格の1ないし2%にすぎなかったと認められる。 さらに,証拠(甲3,乙57ないし59)及び弁論の全趣旨によれば, 平成29年から令和元年までの被告の商品のパンフレット及びウェブサイトにおいて,空調服の構造を紹介するページに,本件発明1に係るゴムベルト及び布ベルトが取り付けられた部分の写真が掲載され,その機能を紹介する記載があるが,同写真は,ファンの写真よりは小さく,ファンの取り付け位置及び着脱方法並びにバッテリーの各写真と同程度の 大きさであったこと,個々の空調服を紹介するページに,空調服が備え る機能として,ペンを差すポケット,バッテリー用ポケット,袖口の複数のボタン,保冷剤用ポケット等の各写真と並んで,上記部分の写真が掲載されていることが認められる。 そうすると,被告各製品が備える機能のうち本件発明1を実施した部分が占める割合は小さかったといえ,また,同部分の顧客誘引力が特に 高かったとはいえない。 (エ) 以上によれば,本件発明1の技術的意義や作用効果,被告各製品のうち本件発明1が実施された部分の顧客誘引力等に照らすと,本件特許権を侵害する同部分 特に 高かったとはいえない。 (エ) 以上によれば,本件発明1の技術的意義や作用効果,被告各製品のうち本件発明1が実施された部分の顧客誘引力等に照らすと,本件特許権を侵害する同部分が被告各製品の販売に貢献したところは小さいといわざるを得ないから,この事情に基づき,法102条2項により推定され る損害額の80%について推定の覆滅を認めるのが相当である。 イ市場における競合品の存在(ア) 前記(1)イのとおり,平成29年から令和元年までの電動ファン付きウエアの市場において,原告グループのシェアは約30ないし40%,被告グループのシェアは約20ないし40%であり,原告は,襟後部と首 後部との間に形成される開口部の大きさを調整することができるように,2段階調整型空調服を製造販売している。 また,前記ア(ウ)のとおり,被告は,その商品のパンフレット等において,ペンを差すポケット,バッテリー用ポケット等の機能と並んで本件発明1に係る部分を紹介しており,購入者が本件発明1が実施された部 分のみに着目して被告各製品を選択したとはいい難い。 一方で,証拠(乙39ないし45)及び弁論の全趣旨によれば,原告及び被告以外の業者も,首後部からの空気の排出をより効率的に行うための機能を備えた空調服や,その他種々の機能を備えた空調服を販売していることが認められる。 そうすると,空調服のうちの特定のものだけが被告各製品の競合品と なるとは認められず,競合品に係るシェアは上記の原告,被告及びその他の競業他社のシェアのとおりと認めるのが相当であり,これを踏まえると,被告が被告各製品を販売することがなかったとしてもその購入者の全てが原告製品を購入したとはいえないから 上記の原告,被告及びその他の競業他社のシェアのとおりと認めるのが相当であり,これを踏まえると,被告が被告各製品を販売することがなかったとしてもその購入者の全てが原告製品を購入したとはいえないから,この事情に基づき,法102条2項により推定される損害額の50%について推定の覆滅を認 めるのが相当である。 (イ) 被告は,被告各製品を製造販売しなかったとしても,被告各製品を購入しようとしていた顧客は,本件各発明の技術的範囲に属しない被告の代替製品を購入するはずであるから,被告各製品の販売と原告の損害との間には因果関係は認められず,仮に法102条2項が適用されるとし ても,この点は推定の覆滅事由になると主張する。 しかし,被告が被告各製品を製造販売しなかったとして,被告が他にいかなる空調服を製造販売したかは証拠上明らかではないから,被告の上記主張は採用することができない。 ウ被告の営業努力 被告は,独自のブランドである「空調風神服」の名称で被告各製品を販売しており,「空調風神服」には強い出所識別力があるから,被告各製品の販売には上記ブランドによる力が貢献していると主張する。 しかし,前記(1)イのとおり,遅くとも平成29年以降,電動ファン付きウエアの市場において,原告グループのシェアと被告グループのシェアは 拮抗し,むしろ原告グループのシェアの方が伸びていることからすると,原告製品の顧客吸引力と比較して「空調風神服」の名称に特に強い顧客吸引力があるとは認められないというべきであり,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 エその他 被告は,① 原告製品は本件発明1を べきであり,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 エその他 被告は,① 原告製品は本件発明1を実施しておらず,被告が被告各製品を販売したことにより原告が損害を受けることはない,② 原告製品はインターネットショッピングサイトにおいて酷評されていると主張する。 しかし,上記①について,前記(1)イのとおり,原告は,電動ファン付きウエアの市場において,被告各製品の競合品を製造販売していたから,原 告製品において本件各特許が実施されていなかったからといって,被告が被告各製品を製造販売したことにより,原告が損害を被ったことを否定することはできない。 また,上記②について,原告(原告グループ)が電動ファン付きウエアの市場において相当程度のシェアを占めていることは前記(1)イのとおりで あり,インターネットショッピングサイトにおけるごく一部の評価(乙46)をもって,被告各製品が販売されなかったとしても原告製品が売れることはなかったということはできない。 したがって,被告の上記各主張はいずれも採用することができない。 (3) 小括 ア以上によれば,本件各発明の被告各製品の売上げに対する貢献の程度により80%(前記(1)ア),電動ファン付きウエアの市場に競合品が存在することにより50%(前記(1)イ)の推定の覆滅を認めるべきであるから,被告による本件特許権の侵害により,原告が被った逸失利益に係る損害額は,565万2147円(5652万1465円×(1-0.8)×(1 -0.5))と認められる。 イ被告の上記不法行為と相当因果関係の認められる弁護士費用相当額は60万円と認め 害額は,565万2147円(5652万1465円×(1-0.8)×(1 -0.5))と認められる。 イ被告の上記不法行為と相当因果関係の認められる弁護士費用相当額は60万円と認めるのが相当である。 ウよって,原告が被った損害額は合計625万2147円である。 なお,この損害は,平成29年6月16日から令和元年10月31日ま での868日間に発生したものであるところ,損害が発生した具体的な日 を特定する証拠はないから,上記損害の全額について,本件訴訟の訴状送達日の翌日である平成30年7月15日までに発生したとは認められない。 上記期間中,被告は継続して被告各製品を販売したと認められること(弁論の全趣旨)からすると,期間で案分し,平成29年6月16日から平成30年7月15日までの395日間に生じた損害額は284万5159円 (625万2147円×395日÷868日)であり,同月16日から令和元年10月31日までの473日間に生じた損害額は340万6988円(625万2147円×473日÷868日)と認めるのが相当である。 7 争点4(差止め等の必要性)について前記のとおり,被告各製品は本件特許権を侵害するところ,証拠(乙63) 及び弁論の全趣旨によれば,被告は,現在,被告製品1ないし10,12,15及び16を販売していないこと,被告は被告製品11,13,14,19,21及び22につき本件発明1を実施する部分の設計を変更したこと,被告の在庫管理システム上,被告製品1ないし10,16ないし18及び20の在庫は0と表示されていることが認められる。 しかし,前記前提事実(1)及び(5)のとおり,被告は空調服等を製造販売する会社であり,平成29年から約3年間,被告各 ないし18及び20の在庫は0と表示されていることが認められる。 しかし,前記前提事実(1)及び(5)のとおり,被告は空調服等を製造販売する会社であり,平成29年から約3年間,被告各製品を販売し,●省略●円も売り上げていること,被告が本件特許権を侵害する被告各製品を一切保有していないことを認めるに足りる証拠はないこと,被告において,今後,本件特許権を侵害する被告各製品を製造販売することが困難であることをうかがわせる事 情は見当たらないことからすると,被告には本件特許権を侵害する被告各製品を製造し,販売するおそれがあると認めるのが相当である。 したがって,被告が被告各製品を製造し,譲渡し,譲渡の申出をすることを差し止め,これを廃棄する必要性が認められる。 他方で,被告が被告各製品を輸出したり,輸入したりしたことを認めるに足 りる証拠はないことからすると,被告が被告各製品を輸出し,輸入することを 差し止める必要性は認められない。 第5 結論以上によれば,原告の請求は,被告が被告各製品を製造し,譲渡し,又は譲渡の申出をしてはならず,被告各製品を廃棄し,原告に対して625万2147円及び内284万5159円に対する平成30年7月15日から,内340 万6988円に対する令和元年11月7日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないからいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 なお,主文第2項については,仮執行宣言を付するのは相当でないから,これを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 いから,これを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 小川暁 裁判官 佐々木亮 (別紙1)被告製品目録 以下の品番,型番又は商品名を有する服 1 BK6067 2 BK6059 3 BK6077 4 BK6078 5 BK6087 6 BK6097 7 BK6037F 8 BK6047F 9 BK6057K 10 BK6057 11 KU90470 12 KU90510 13 KU90520S 14 KU91310 15 KU91630 16 BK6058 17 K1001 18 K1003 19 K1005 20 K1007 21 KU90550 22 KU92310 (別紙2)写真目録 (別紙2)写真目録 (別紙3)乙2公報図面省略(別紙4)乙2発明1図面省略(別紙5)本件特許図面省略(別紙6)乙3公報図面省略

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る