【DRY-RUN】主 文 原判決を破棄する。 被告人を懲役参年に処する。 原審における未決勾留日数中、百八十日を右本刑に算入する。 訴訟費用中、原審において証人A、同B、同
主文 原判決を破棄する。 被告人を懲役参年に処する。 原審における未決勾留日数中、百八十日を右本刑に算入する。 訴訟費用中、原審において証人A、同B、同C、同D、同E、同F、同Gに支給した分並に当審訴訟費用は、被告人の単独負担とし、原審証人H、同I、同J、同K、同L、同M、同N、同O、同P、同Qに支給した分は、被告人と原審相被告人Rとの平等負担となる。 理由 本件控訴の趣意は、弁護人中根稔及び被告人の各控訴趣意書を引用する。 弁証人の論旨第二点について、(1) 被告人の司法警察員及び検察官に対する供述調書は、強制拷問に基くものであるから任意性がないと謂う点について案ずるに、被告人が取調を受けた碧海地区警察署で、強制拷問を受けたかどうかについて、被告人は、原審公判廷及び当審でこの旨供述し、当審証人S、同T、同C、同U、同D、同Rの各証言は、これについての一応の証拠とされているが、右の各証言は、何れも、被告人が司法警察員から拷問を受けたのを直接見たり聞いたりしたものでなく、被告人から聞いたことや又は自己も被疑者又は被告人として取り調べを受けたときひどい目にあつたというにあつて、而かも右各証人は、被告人と親子関係その他近親関係にあるか又は刑事被告人として有罪とされた者で、確実な根拠に基いて供述するのでなく、被告人の供述や主張を聞いて取り次ぐ程度のものに過ぎないから、証明力に乏しいものと謂わねばならない。又被告人が前記警察署から岡崎刑務支所に移監されてからも、被告人が司法警察員から加えられた暴行で受けた傷が額に残存していたと当審証人C、同U、同D、同Vが証言しているが、被告人が逮捕されたのは、昭和二十七年十二月二十四日午前七時二十分頃であり、岡崎刑務支所に移監されたのは から加えられた暴行で受けた傷が額に残存していたと当審証人C、同U、同D、同Vが証言しているが、被告人が逮捕されたのは、昭和二十七年十二月二十四日午前七時二十分頃であり、岡崎刑務支所に移監されたのは、昭和二十八年一月八日であることは、当審において取り調べた逮捕状謄本(詐欺被疑事実により昭和二十七年十二月二十四日午前七時二十分執行)名古屋拘置所長の検察官宛の回答書及び前掲各証人の証言により明らかである。右証人の中には、昭和二十八年一月末頃、被告人の額の傷を見たと言つたり同年三月初頃見たと証言し、その証言の内容を検討するときは、同年一月又は二月に見たというのは、記憶違いであることが判明して居り、而かも早く見た者もおそく見た者も、傷は、長さ一糎か一、五糎位、幅五粍の擦り傷で、かさぶたができていたと供述しているが、原審第一回公判期日である昭和二十八年一月二十九日には、この傷に裁判官、検察官、弁護人並に被告人の家族である前掲証人の一部は、親しく被告人に面接していたにも拘らず、傷の存在を覚知して居らず、更に岡崎刑務支所に移監の際、被告人の身体検査をしたとき、右のような傷が存在していなかつたことは被告人の身上調査表によつて明らかであるから、被告人が司法検察員によつて額に傷を加えられたとか又はその後勾留中に暴行を受けて負傷したという事実はなかつたものと認めざるを得ない。前記各証言は信用することができないもので、これ等の証言によつて、被告人が拷問を受けたということは証明することができない。次に被告人の司法警察員一回供述調書は、昭和二十七年十二月二十五日作成せられて居り、本件により被告人の逮捕状の執行されたのは、昭和二十七年十二月二十五日午後七時であることは、本件の逮捕状によつて明らかであるから、これ等の点から見れば、右供述調の作成に疑問を持ち得るかも知 て居り、本件により被告人の逮捕状の執行されたのは、昭和二十七年十二月二十五日午後七時であることは、本件の逮捕状によつて明らかであるから、これ等の点から見れば、右供述調の作成に疑問を持ち得るかも知れないが、前記の如く、被告人は、詐欺被疑事実により、昭和二十七年十二月二十四日午前七時二十分に逮捕され、本件により逮捕されるまで、前掲警察署に留置されていたことが認められるから、前記の十二月二十五日附の供述調書作成の疑問は氷解し、この調書作成に違法があつたとは認められない。而して、被告人の取調を担当した司法警察員を原審及び当審で、証人として取り調べた結果、前記警察署で、強制拷問があつたことを疑うに足る事実を認めることができない。又被告人が警察官の面前においても、警察署で暴行を受けることを怖れて、不利益な供述をしたことを認めることもできない。右の如く、被告人の公判廷における供述又は被告人から聞いた結果を調書する前記証人の証言は、何れも、被告人が公判廷において、供述調書の証拠能力を争う手段として為す弁解に過ぎないもので、採用することができない。果して然らば、被告人の供述調書は任意性があり、これを証拠としても、憲法第三十八条第二項、刑事訴訟法第三百十九条に違反するものではない。この点についての論旨は、理由がない。 (2) 原審相被告人Rの供述調書又は公判廷における供述は証明力がないという論旨について、原審相被告人Rは、原判決で、心神耗弱者と認定され、これが確定しているが、心神耗弱者の証言又は供述でも証拠能力があり、その証明力は、裁判所又は裁判官の自由心証によるものであるから、原審がこれを証拠としたことについて何等の違法もなく、Rの供述がしばしば変つているが、原判決挙示の裏付の証拠によつて、Rの証言又は供述が全部信用できないということはできない。 証によるものであるから、原審がこれを証拠としたことについて何等の違法もなく、Rの供述がしばしば変つているが、原判決挙示の裏付の証拠によつて、Rの証言又は供述が全部信用できないということはできない。論旨は、理由がない。 (3) 原判決は、被告人の自白又は原審相被告人Rの自白を唯一の証拠として有罪の認定をしたという論旨について、共同被告人の自白又は供述を他の被告人の不利益な証拠とすることは違法ではたい。被告人を公判廷で、尋問することは許されないにしても、質問をして、任意の供述を求め得るものであつて、この供述は、共同被告人にとつて有利であると不利益であるとを問わず、証拠となることができるものである。但し、共同被告人の自白が唯一の証拠であるときは、刑事訴訟法第三百十九条により、その共同被告人はもとより、他の被告人も有罪と為し得ないものと解すべきであるが、本件においては、原審相被告人Rの自白と被告人の自白があつて、互に補強しあつているばかりでなく、他に補強証拠も存在しているから、自白を唯一の証拠として有罪の認定をした違法はない。論旨は、理由がない。 弁護人の論旨第一点の事実誤認の論旨並に被告人の論旨について、被告人が司法警察員又は検察官の面前で、不利益な供述をしたのは、強制拷問に基くという論旨については、前掲説明の通り理由がないこと明らかであるから、これを引用する。 然れども、原判決は、被告人に対する強盗致死の犯罪事実として、Rと共犯関係にあるという理由として、Rが被害者Wを殺害するため実行行為に出でた後、「Rと意思相通じてこれを傍観助勢し」と認定している。共同正犯となるためには、犯罪の実行竹為前に、意思相通じて、犯罪を共同加工する意思があることを要するものであつて、他人の犯罪行為を傍観していただけでは、必ずしも共犯者ということはで と認定している。共同正犯となるためには、犯罪の実行竹為前に、意思相通じて、犯罪を共同加工する意思があることを要するものであつて、他人の犯罪行為を傍観していただけでは、必ずしも共犯者ということはできない。この点において、原判決は、理由不備の違法があつて、破棄を免れない。 よつて当審において原判決破棄を前提として被告人が強盗致死の犯罪について、共謀の事実があつたかどうかについて検討するに、被告人の司法警察員第五回、第六回供述調書、Rの司法警察員第四、第五回、第七回供述調書の中には十二月十日右両名がW方へ行く途中Wが金を出さんときは殺しても取つてくると相談したとか本件現場でXが伏臥せるWの後頭部を一升桝で二回殴つたとかあり被告人もRと協力して、Wを殺害した旨の供述があるが、被告人及びRの司法警察負及び検察官に対する各供述調書及び当審証人Rの証言、原判決挙示の証拠を綜合すれば、前記の如き被告人とRの事前の共謀及被告人の積極的な協同行為は認められない(原審もその事実摘示によれば同一の結論に出たものの如くである)が被告人は、Rと共に、昭和二十七年十二月九日の夜、及び同月十日の夜も、W方に行つて居り、十日の夜は、被告人は、表入口まで行き、RがWとRの妻Mの貯金通帳引渡について交渉するのを待つていたところ、Rは、Wと右通帳の引渡を要求している中、口論となり、遂に激昂して、Wと互に格闘するようになつて、強盗目的の下に原判示の通りWを死に致らしめたけれども、被告人は其間表入口外にいたにとどまり、Rに協力したり、声援したりしなかつたことが認められる。Rに対し、予め、しつかりやれと激励した事実は、認められるが、これは、Mの貯金通帳引渡の交渉をしつかりやれという趣旨にもとれるので、これだけでは、強盗を共謀したとは認められない。 被告人は、原審並に当審にお め、しつかりやれと激励した事実は、認められるが、これは、Mの貯金通帳引渡の交渉をしつかりやれという趣旨にもとれるので、これだけでは、強盗を共謀したとは認められない。 被告人は、原審並に当審において昭和二十七年十二月九日も同月十日も、W方に行かぬといつているが、当審証人Rの証言並に被告人及びRの各供述調書によつて、W方に右両日共に行つたことが認められ、且つWが死亡後、Rと共にW方のタンスの中やらWの胴巻を物色して、二人で合計現金約五千円を取つて来たことが認められ、被告人が、十二月九日、Rと連れ立つてW方に行つたことは、原審証人H、同Iの証言により、右証人等がRと被告人にW方の居村の少し手前で出遭つたことが認められることにより明らかである。この点についての原審並に当審証人Dの証言は、信用できない。然れども、原判決挙示の証拠を綜合するも、被告人が、Rと強盗について共謀した事実又はこれを助勢した事実は認め難く、従つて、被告人がRの強盗致死行為を傍観していたことがあつても、被告人において、強盗又は同致死罪の犯意があつたとは認められない。従つて、Wが昏倒又は死亡した後、被告人がW方のタンスの中を物色したり又はWの胴巻を物色して現金を取り出しても、この被告人の行為は、窃盗罪に該当するに過ぎない。或は刑法第二百三十九条の昏酔強盗に該当するのではないかとの疑問があるかも知れないが、Wが昏酔又は死亡したことは明らかであるけれども、これは被告人の責任ある行為<要旨>に出でたものでないので、被告人に昏酔強盗の責任を負わすわけにはいかない。昏酔強盗が成立するために</要旨>は、強盗犯人自らが被害者を昏酔せしめることが必要てあつて、他人が昏酔せしめていたり又は被害者自らが昏酔又は熟睡している間に、被害者の財物を奪取しても強盗罪とはならない。これは単純窃盗であ </要旨>は、強盗犯人自らが被害者を昏酔せしめることが必要てあつて、他人が昏酔せしめていたり又は被害者自らが昏酔又は熟睡している間に、被害者の財物を奪取しても強盗罪とはならない。これは単純窃盗であるに過ぎない。 従つて、被告人の本件行為は、結果から見れば、Rの強盗致死罪の行為の一部に協力したことになるが、被告人に強盗の犯意がなかつたから、被告人については、軽い窃盗の罪によつて処断すべきものである。以上の通り原判決が、被告人を強盗致死罪と認定したのは、理由不備及び事実誤認がある。論旨は理由がある。 よつて刑事訴訟法第三百九十七条第三百七十八条第四号第三百八十二条により、原判決を破棄し、同法第四百条但書により、次の通り判決する。 原判決挙示の証拠と当審証人Rの尋問調書とにより、次の犯罪事実を認定する。 被告人Xは、原審相被告人Rが愛知県碧海郡a村大字b宇cd番地居住のWの三女Mと婚姻するに際し、その媒酌人であつて、Rから、Mが婚姻前の折衝に当つたこともあるが、昭和二十七年十二月十日夜、Rから、更にWに交渉するにつき同行を求められ、これを承諾し、同夜、Rと共に前記W方に到り、被告人は、同家表入口外附近に待合せ、R独りで、Wと交渉中口論となり、Rは、奮激の余り、強盗目的の下にW方の土間にあつた藁打用木槌(証第二号)で、Wの頭部を数回に亘つて強打し、Wをその場に昏倒せしめ、間もなく死亡するにいたらしめたのであるが、被告人は、Rの右暴行又は被害行為を共謀したこともなく、又これを助勢したこともないが、Wが昏倒死亡した後、其場に於てRと共に、Wが着していた現金数千円在中の胴巻一個を窃取したものである。 法律に照すに、被告人の右所為は、犯罪の結果から見れば、刑法第二百四十条後段の強盗致死罪に該当なるが、被告人は、強盗及び致死の行為については、犯意がな 数千円在中の胴巻一個を窃取したものである。 法律に照すに、被告人の右所為は、犯罪の結果から見れば、刑法第二百四十条後段の強盗致死罪に該当なるが、被告人は、強盗及び致死の行為については、犯意がなかつたから、刑法第二百三十五条第六十条の窃盗罪によつて処断すべきものであつて、その刑期範囲内で、被告人を懲役三年に処し、原審における未決勾留日数中、百八十日は、刑法第二十一条により、右本刑に算入し、訴訟費用については、刑事訴訟法第百八十一条を適用して、主文掲記の通り負担させる。 よつて主文の通り判決なる。 (裁判長判事高城運七判事柳沢節夫判事赤間鎮雄)
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