平成10(行コ)16 第2次納税義務告知処分取消請求控訴

裁判年月日・裁判所
平成13年11月9日 福岡高等裁判所
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判決文本文19,556 文字)

主文 1原判決を次のとおり変更する。 2被控訴人が,平成2年5月11日付けをもって控訴人に対してした第2次納税義務の納付告知処分のうち,納税限度額につき金2852万4900円を超える部分を取り消す。 3控訴人のその余の請求を棄却する。 4訴訟費用は,第1,2審を通じ,これを3分し,その2を控訴人の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人が,平成2年5月11日付けをもって控訴人に対してした第2次納税義務の納付告知処分を取り消す。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,控訴人が,A株式会社から,別紙物件目録記載の不動産(以下,これらを一括して「本件物件」といい,同目録1ないし3の各土地を一括して「本件土地」,同目録4,5の各建物を一括して「本件建物」,個々の土地,建物を「1土地」「4建物」などという。)を買い受けたところ,被控訴人において,この売買(以下「本件譲渡」という。)が,国税徴収法39条所定の「著しく低い額の対価」による譲渡に該当するとして,控訴人に対し,第2次納税義務の納付告知処分をしたので,控訴人が,これを不服として,処分の取消を求めている事案である。 2 前提となる事実(争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実)(1)① A株式会社は,本件物件を所有し,事業用自動車28台を使用して一般旅客自動車運送事業を経営していたが,平成元年3月14日,運送事業に関する権利義務,事業用自動車,機械器具,その他の什器備品(土地建物以外の全財産)をB株式会社に譲渡する旨の契約を締結し,同年7月4日,この譲渡について九州運輸局長の認可を受けた(甲13の18項)。 ② A株式会社は,平成元年6月28日,本件物件を控訴人 (土地建物以外の全財産)をB株式会社に譲渡する旨の契約を締結し,同年7月4日,この譲渡について九州運輸局長の認可を受けた(甲13の18項)。 ② A株式会社は,平成元年6月28日,本件物件を控訴人に対し売却し(売却代金額については,控訴人は5000万円と主張し,被控訴人は3500万円と主張している。),同年7月10日,その旨の所有権移転登記手続をした。 ③ Cは,A株式会社の株式の50.5パーセントを保有しており,控訴人はCの長男である。 ④ A株式会社は,一般旅客自動車運送事業を経営していたが,平成元年6月28日,本件物件を控訴人に譲渡したことにより,無資産となり,滞納処分を執行しても,なお,その徴収すべき金額に不足すると認められる状態にある(同年7月20日限りで営業を廃止)。 (2) 被控訴人は,A株式会社の別紙滞納国税目録記載の滞納国税につき,控訴人に対し,平成2年5月11日,第2次納税義務者として5523万2400円を限度に滞納金額の全額を納付すべき旨の告知処分(以下「本件告知処分」という。)をした(乙4,5)。 (3) 本件告知処分は,控訴人の平成2年7月6日付け異議申立てによる同年10月5日付け異議決定により,納付限度につき,5423万2400円を超える部分が取り消された(乙6)。なお,納付限度額は,本件物件につき,後記のF鑑定による価格9076万6000円を前提とし,取得費用3653万3600円(売買代金3500万円,登録免許税89万円,不動産取得税63万3600円,収入印紙代1万円)を控除した金額である(乙21)。これに対し,控訴人は,国税不服審判所長に対し,同年12月5日に審査請求をしたところ,平成4年4月22日付けで同審査請求を棄却する旨の裁決がされ,同裁決書謄本は,同年6月5日,控訴人に到達した(乙21)。 (4) 人は,国税不服審判所長に対し,同年12月5日に審査請求をしたところ,平成4年4月22日付けで同審査請求を棄却する旨の裁決がされ,同裁決書謄本は,同年6月5日,控訴人に到達した(乙21)。 (4) 本件物件の時価については,次のとおり鑑定評価されている。 ① A株式会社の依頼により不動産鑑定士Dが作成した鑑定評価書(甲3,乙3の2。以下「D鑑定」という。)では,鑑定評価額5144万円② 控訴人及びA株式会社の代理人である三井嘉雄弁護士の依頼により不動産鑑定士Eが作成した鑑定評価書(甲4,以下「E鑑定」という。)では,鑑定評価額6111万9000円③ 大分税務署長の依頼により不動産鑑定士F作成の鑑定評価書(乙2,以下「F鑑定」という。)では,鑑定評価額9076万6000円④ 大分県別府県税事務所長の依頼により不動産鑑定士Gが作成した鑑定評価書(甲24,以下「G鑑定」という。)では,鑑定評価額8181万1000円⑤ 福岡高等裁判所平成9年(行コ)第1号における鑑定人不動産鑑定士Hが作成した鑑定評価書(甲29,以下「H鑑定」という。)では,鑑定評価額7880万8000円(H鑑定は,1土地の評価に際しての補正率を79パーセントとするところ,78パーセントとして算出しているので,この誤りを訂正すると,評価額は7898万9000円となる。)3争点(1)本件物件の売買代金額(被控訴人の主張)本件物件の売買代金額は3500万円である。 本件売買代金額を5000万円とする契約書及びこれに合わせた平成2年3月23日のA株式会社名義の銀行口座への1500万円の現金の振込入金は,控訴人が第2次納税義務を免れ,かつ,A株式会社も本件物件の譲渡益に対する課税処分を免れるために,本件物件の売買代金額を高めに仮装した偽装工作である。 (控訴人の主張)本件 円の現金の振込入金は,控訴人が第2次納税義務を免れ,かつ,A株式会社も本件物件の譲渡益に対する課税処分を免れるために,本件物件の売買代金額を高めに仮装した偽装工作である。 (控訴人の主張)本件物件の売買代金額は5000万円である。すなわち,A株式会社は,控訴人に対し,本件土地を代金4900万円,本件建物を100万円の合計5000万円で売り渡したものである(甲1)。このことは,控訴人が,平成元年6月28日手付金300万円,同年7月17日3200万円をA株式会社に支払ったほか,平成2年3月23日に1500万円を銀行口座への振込入金の方法により支払ったことからも明らかである(甲8の1,2)。平成2年3月23日付けA株式会社作成の1500万円の領収書(甲2)には「平成元年6月28日契約の土地売買代金の残額として」と記載があり,1500万円の振込入金が本件譲渡代金であることを優に示している。 (2)本件物件の本件譲渡時の時価(被控訴人の主張)本件物件の時価は,F鑑定による価格9076万6000円が適正である。 平成元年当時,本件土地近辺の道路の整備が確実に予想され,1土地の面積が958平方メートルもあることの個別的要因を勘案すれば,1土地の最有効使用は,わざわざ潰れ地の多く発生する戸建住宅ではなく,中低層の住宅用地とするのが合理的である。控訴人は,1土地について使用借権減価をすべきであると主張する。しかし,本件譲渡が行われた時点で,同土地には使用借権は設定されていなかったのであるから,使用借権減価をすべきでないことは明らかである。 (控訴人の主張)本件物件の時価は,D鑑定ないしE鑑定の価格程度であり,少なくともH鑑定が使用貸借を前提として算定した価格を超えるものではない。すなわち,本件物件につき,B株式会社が使用借権を有するから,使用 )本件物件の時価は,D鑑定ないしE鑑定の価格程度であり,少なくともH鑑定が使用貸借を前提として算定した価格を超えるものではない。すなわち,本件物件につき,B株式会社が使用借権を有するから,使用借権減価をすべきである。 また,B株式会社は,本件利用について平成元年7月から対価として賃料を支払っていたものであり,有償の利用を前提とした借地権減価が行われるべきであり,本件物件の時価評価額はH鑑定の価格をさらに下回るものである。なお,本件土地周辺地域は,平成元年当時はマンション適地として市場が形成されておらず,最有効使用は「戸建住宅の敷地」である。 (3) 低額譲渡該当性(被控訴人の主張)国税徴収法39条の「著しく低い額」に該当するかどうかは,当該取引価額が時価に比して,社会通念上著しく低いと認められるか否かにより判断されるものである。国税徴収法基本通達39条関係6は,注において,「値幅のある財産については,特別の事情がない限り,時価の概ね2分の1に満たない価額をもって著しく低いと判定しても差し支えない。」と規定しており,2分の1をある程度上回っても,譲渡等の行為の実態に照らし,低額譲渡にあたる場合がある。本件では,控訴人は本件物件を時価の2分の1を下回る金額ないしはほぼ2分の1に当たる対価で買い受けているのであり,本件譲渡価格は,時価に比し,社会通念上,著しく低い額と認めるのが相当である。 (控訴人の主張)本件物件の時価評価にあたって,B株式会社の使用借権等を考慮すれば,仮に本件不動産の売買代金額が3500万円だったとしても,売買代金額は,国税徴収法基本通達39条関係6の定める「著しく低い額」の判断基準である時価の2分の1を超えている。権力作用の謙抑性と租税法律主義による国民の予測可能性と課税の公平性確保の原則からすると,低額譲渡 国税徴収法基本通達39条関係6の定める「著しく低い額」の判断基準である時価の2分の1を超えている。権力作用の謙抑性と租税法律主義による国民の予測可能性と課税の公平性確保の原則からすると,低額譲渡の認定につき,課税庁に裁量権はないというべきであり,そうである以上,本件につき低額譲渡と認定することは許されない。 第3当裁判所の判断 1 本件物件の売買代金額について(争点(1))(1) 証拠(甲13ないし16,乙1,3の1,7,16,18の1,2,19,21,原審における証人I)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 ① A株式会社は,平成元年6月28日,本件物件を控訴人に売り渡し,同日,控訴人から手付金として300万円を受領した。そして,同年7月10日,同物件について,A株式会社から控訴人への所有権移転登記がされ,A株式会社は,同月18日,控訴人から同売買残代金として3200万円を受領した。 ② A株式会社は,大分税務署長から,別紙滞納国税目録記載の国税の納付について再三督促されたが,これに応じなかったため,大分税務署管理徴収第二部門の上席国税徴収官IがA株式会社の公簿上の財産を調査したところ,不動産は前記①のとおり,本件譲渡によりすべて控訴人に移転されており,他に処分可能な財産は見当たらなかった。そこで,Iは,平成元年8月9日にB株式会社の事務所に出向き,A株式会社の代表取締役であったJとの面接を申込んだ結果,Jから同月16日に面接に応じる旨の約束を取り付けた。そして,同日,その約束に基づき,JがZタクシーグループの副会長であったKとともに大分税務署に来署したため,Iの上司であった同所の統括国税徴収官のLがこれに応対した。その際,Lが,本件物件の売買の内容について尋ねたところ,J側は,契約書があるが持参して来ていないと たKとともに大分税務署に来署したため,Iの上司であった同所の統括国税徴収官のLがこれに応対した。その際,Lが,本件物件の売買の内容について尋ねたところ,J側は,契約書があるが持参して来ていないと回答した。このため,Lは,Jらに対し,このままでは滞納処分を行わざるを得ないとして,滞納している税金の納付計画書とともに契約書も持参するよう指示した。その翌日である同年8月17日,Jは,K及び税理士とともに大分税務署に来署し,面接を担当したIに対し,本件土地の売買代金は3400万円であると申し立て,売買代金を3400万円とし,売買代金の一部(手付金)として買主は300万円を売主に支払うこと,売主から買主に対する本件土地の引渡及び所有権移転登記手続は2週間以内に行い,登記申請完了後2週間以内に買主は売主に対し売買代金を支払うことなどを内容とする平成元年6月28日付土地売買契約書の写(乙1)を提出した。なお,その際,Jらは,Iに対し,本件物件の売買に係る契約書はその土地売買契約書のみであり,売買代金の授受は終了しているので,A株式会社は控訴人に対して債権を有していないと申し立てた。その後も,A株式会社は,前記国税を納付しなかったため,Iらは,平成元年9月19日から同月22日にかけて,A株式会社の取引金融機関の預金口座を調査した。しかし,差し押さえるべき預金は発見できず,前記滞納国税が短期間に完納される見込みがなかっため,同月28日,熊本国税局に対し,徴収の引継を行った。 ③ 他方,大分県別府県税事務所長(以下「県税事務所長」という。)は,平成元年10月19日,A株式会社に対し,昭和59年4月1日から昭和63年3月31日までの4事業年度に係る法人県民税及び法人事業税についての更正処分を行った。同更正処分を受けたにもかかわらず,A株式会社は,国税に対 9日,A株式会社に対し,昭和59年4月1日から昭和63年3月31日までの4事業年度に係る法人県民税及び法人事業税についての更正処分を行った。同更正処分を受けたにもかかわらず,A株式会社は,国税に対する不服を申し立てていることを理由に納税せず,しかもその営業を停止し,前記のとおり,本件物件及びその他の財産も他に譲渡していた。その後,県税事務所納税課納税第二係長Mが調査したところ,A株式会社は,営業を停止しており,本件物件その他の財産を既にすべて他に譲渡していた。そこで,Mは,第2次納税義務を課すべき者の有無を調査するため,平成元年12月11日及び同月22日に,A株式会社の会社事務所を訪ねて,Kと面会したところ,同月22日,Kから,本件物件を4000万円程度(本件建物は100万円)で売却し,受領した代金は社員の退職金等に充てたとの説明を受けた。 ④ Mは,平成2年1月25日,A株式会社の会社事務所で,Jと面会し,同人から本件土地売買の契約書として,I同様,売買価額3400万円の土地売買契約書の提示を受けると共に,売買価額100万円の建物売買契約書の提示も受けた。また,Jから,売買代金額について,路線価より単価が多少安くなっており,代金の授受及び所有権移転登記手続が終了しているとの説明を受けた。 (2)① 前記(1)で認定した事実によれば,本件物件の売買代金額は,3500万円であることが明白である。 ② この点に関し,大分地方裁判所平成11年(行ウ)第8号事件(以下「別件訴訟」という。)における証人Jの証言中には,本件譲渡の価額は,5000万円であったが,価額が3400万円と記載された土地売買契約書(乙1の原本と同様のもの。)及び100万円と記載された建物売買契約書(乙7の原本と同様のもの。)は,大分県別府県税事務所の職員が度々来訪するという たが,価額が3400万円と記載された土地売買契約書(乙1の原本と同様のもの。)及び100万円と記載された建物売買契約書(乙7の原本と同様のもの。)は,大分県別府県税事務所の職員が度々来訪するということがあり,平成2年3月に本件譲渡の残代金1500万円が入金される予定になっていたことから,入金を隠蔽し,A株式会社の事業の終了に伴う様々な支払に充てる資金として確保するために,本件譲渡代金のうち既払分(3500万円)を譲渡代金とする契約書を,平成2年1月中旬ころにJが控訴人に無断で作成したもので,前記各契約書中の控訴人名下の印影は,Jが事情を知らない控訴人の妻から控訴人の印章を借り出し,これを押捺したものである旨の部分があり,別件訴訟における控訴人本人尋問の結果中(甲15)には,控訴人も各契約書の作成には何ら関与していないとして,控訴人名下の印影が控訴人の意思に基づくものであることを否認し,前記各契約書は架空の内容のものである旨の部分がある。 ③ しかし,J及び控訴人の各供述は,前記(1)で認定した事実(Jは,平成元年8月の時点で,大分税務署の担当職員の要請に応じて,価額が3400万円と記載された土地売買契約書の写しを提示した。)に照らし,いずれも採用できない。 ④ さらに,控訴人は,本件譲渡の価額は5000万円である旨主張して,同額の譲渡代金が記載された売買契約書(甲1)を提出し,別件訴訟における証人J及び同Cの証言中(甲13の29項ないし40項,甲16の27項ないし30項,84項,85項)には,A株式会社が本件物件の時価の鑑定をD不動産鑑定士に依頼し,その鑑定評価額を参考に本件譲渡の価額を5000万円と決定したものであり,代金については,平成元年6月28日に300万円,同年7月17日に3200万円,平成2年3月23日に1500万円がそれ 依頼し,その鑑定評価額を参考に本件譲渡の価額を5000万円と決定したものであり,代金については,平成元年6月28日に300万円,同年7月17日に3200万円,平成2年3月23日に1500万円がそれぞれ銀行口座に振込入金されているとする部分がある。しかし,前記各証言部分は,前記(1)④で認定した路線価を参考にして譲渡代金を決めた趣旨と解されるJのMに対する前記弁明と矛盾する上,別件訴訟における証人Dの証言(甲12の82項ないし104項)によれば,A株式会社は,D不動産鑑定士に対して本件物件の鑑定を依頼し,鑑定結果を口頭で聞いた後,その8か月後に鑑定書の作成を依頼し,その間,鑑定料の支払もしていないというのであって,鑑定経過自体不自然であることからすると,本件譲渡の価額を決定するに当たってD不動産鑑定士の評価額を参考にしたとの点については重大な疑問があるといわなければならない。また,売買代金の入金についても,平成2年3月23日,A株式会社代表取締役J名義の普通預金口座に1500万円の現金が入金されているものの(甲8の1,2),これは,前記のとおり,大分税務署や県税事務所により,本件物件の売買代金額が不当に低額ではないかとの疑問をもたれ,その調査が開始された後に入金されたものであり,入金直後に,その大半がA株式会社の役員報酬やB株式会社への借入金の返済,A株式会社代表者用の高級車の購入費等に支出されており(甲8の1,2,甲14の102項ないし111項),A株式会社及びB株式会社がグループ企業であり,控訴人自身B株式会社の代表者であったこともあり,両者の役員らには親族関係等密接な関係が存在することが窺えることからすると,前記入金は,本件物件の売買代金額を5000万円と仮装するための偽装工作の一環にすぎないと認められるし,控訴人が主張する領収 両者の役員らには親族関係等密接な関係が存在することが窺えることからすると,前記入金は,本件物件の売買代金額を5000万円と仮装するための偽装工作の一環にすぎないと認められるし,控訴人が主張する領収書の記載についても同様である。 2 本件物件の本件譲渡時の時価について(争点(2))(1) 評価の前提となる点について証拠(甲29,30,乙20,当審における証人H)及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。この認定に反する甲24,乙2,乙17は,後記(2)②エbで説示するとおり採用することができない。本件物件は,JR大分駅の南西約1.5キロメートル(直線距離),大分交通バス「a」停留所(本件物件譲渡当時には存在しなかったが,近い将来に開設が見込まれていた)から東方約150メートル(徒歩約2分)のところに位置し,近隣地域は,戸建住宅と低層アパートの混在する住宅地域で,農地も多少残り,標準的使用は200平方メートル程度の敷地をもつ木造低層戸建住宅である。本件物件の所在する地域は市街化区域・第二種住居専用地域であり,建ぺい率60パーセント,容積率200パーセントである。本件物件の南西に大分自動車道のインターチェンジの建設が予定され,その「アクセス道路」として本件物件の南方に道路が開通する予定であり,西方にも同道路と接続する市道が開通する予定であった。1土地は南西側が幅員4メートルの舗装道路に接し,幅約18メートル(ただし,間口は約28メートル),奥行約53メートルの長方形に近い不整形の区画であって,公簿上の面積958平方メートルを有する。また,市道から本件土地に至る道路は途中狭くなったり,曲がったりしてはいるが,本件物件はタクシー会社の営業所兼駐車場として使用されているのであり,自動車の通行等に特段の支障はない。2土地は同道路を挟 た,市道から本件土地に至る道路は途中狭くなったり,曲がったりしてはいるが,本件物件はタクシー会社の営業所兼駐車場として使用されているのであり,自動車の通行等に特段の支障はない。2土地は同道路を挟んで1土地に接し,北東側が幅員4メートルの舗装道路及び南東側が幅員4メートルの舗装私道に接面する角地で,間口約16メートルの概ね長方形状の区画であって,公簿上の面積167.74平方メートルを有し,3土地は共有土地(持分4分の1)で,2土地南東側の舗装私道として利用されており,公簿上の面積222平方メートルを有し,4及び5建物は昭和46,7年に1土地上に建築された建物である。 (2) ① 本件物件の時価評価については,D鑑定,E鑑定,F鑑定,G鑑定及びH鑑定(価格時点はいずれも平成元年6月ないし7月)が存在し,いずれも使用借権が存在しないことを前提として,前記第2の2(4)のとおり本件物件の時価を鑑定している。まず,D鑑定及びE鑑定は,1土地の評価額を算定するにあたって考慮する個別的要因として,1土地を200平方メートル程度の分譲地として,分割して使用することを想定し,分割により発生する潰れ地(取付道路)や造成費を考慮して,大幅に単価を減じ,他の減価要因を勘案したうえで,1土地の時価を,D鑑定では,標準地価格の58.6パーセント,E鑑定では,同じく68.4パーセントとしており,その結果,1土地の評価額が,D鑑定は3873万5000円,E鑑定は4783万4000円となり,最有効使用について同様の見解をとっているH鑑定が袋地・不正形・造成減価を総合して標準値価格の79パーセントとしているのと比較して相当な差があり,他の鑑定結果と比較して大幅に低額となっている。しかるに,D鑑定及びE鑑定は,戸建住宅開発の場合の減価率算定にあたって,本件土地の形状が字 価格の79パーセントとしているのと比較して相当な差があり,他の鑑定結果と比較して大幅に低額となっている。しかるに,D鑑定及びE鑑定は,戸建住宅開発の場合の減価率算定にあたって,本件土地の形状が字図どおりであることを前提としているところ,前記のとおり,本件土地の現状の形状は,字図にみられるような大きなくびれ部分はなく,土地の現況に照らして,その減価率はいずれも過大であると考えられること,D鑑定は,採用した取引事例の価格修正をするにあたって,住宅地域を商業地域と見たことにより過剰に減価していること,E鑑定では,収益還元法における純収益を他の鑑定とかけ離れた低値に設定しているなどの問題点があり,これらの問題点が他の鑑定結果と比較して大幅に低額な評価額を算定した原因となっているものと考えられ,適正なものとは考えられないから,D鑑定及びE鑑定の評価額はいずれも採用できない。 ②そこで,F鑑定,G鑑定及びH鑑定のいずれかを採用できるかどうか検討するが,まず,それらの内容を概観しておくこととする。 ア F鑑定(乙2)a 要旨最有効利用 1土地につき中層建物の敷地,1土地につき住宅の敷地標準価格 8万5300円/㎡価格合計 9076万6000円個別の価格1土地 7357万4000円2土地 1459万3000円3土地 47万1000円本件建物 212万8000円b 内容F鑑定は,近隣地域における標準的な用途は,300ないし400平方メートル程度の土地については一般住宅の敷地,1000ないし2000平方メートル程度の土地については中層会社寮,賃貸アパートとした上,1土地の最有効の用途を中層建物の敷地,2土地の最有効の用途を住宅の敷地,3土地の最有効の用途を現況利用とし,取引事例比較法及 00平方メートル程度の土地については中層会社寮,賃貸アパートとした上,1土地の最有効の用途を中層建物の敷地,2土地の最有効の用途を住宅の敷地,3土地の最有効の用途を現況利用とし,取引事例比較法及び収益還元法の二方式を適用して,近隣地域における地域標準地(対象物件付近の5メートル公道に等高に接面する中間地に間口15メートル,奥行20メートルの300平方メートル程度の供給処理施設整備済みの画地)の比準価格を8万8000円/㎡,同収益価格を7万3200円/㎡と査定した上,比準価格が豊富な資料を駆使して市場の実情を反映した実証的な価格であるが,実勢追認的な側面を持った価格であること,収益価格が同一受給圏内の類似地域の標準的な収益事例から間接的に求めたもので,不動産の賃料に基づく純収益を資本還元した理論的な価格であるが,賃料固有の保守性及び遅行性から比準価格より低く求められたことを踏まえ,賃料の選択,要因分析等全般にわたって再検討するとともに,好景気に伴い売り手市場で強含みである不動産市場の動向を勘案の上,比準価格を3パーセント程度下方修正した価格を重視し,収益価格と関連づけて,地域標準地価格を8万5300円/㎡と決定している。そして,1土地については,幅員4メートルの公道に接面していること(3パーセント減),奥行長大であること(7パーセント減)を考慮して地域標準地価格に対して90パーセント程度の価格修正を行い,その更地価格を7万6800円/㎡と査定し,これに地積を乗じて得た7357万4000円をその時価とし,2土地については,正面公道は幅員4メートルであるが,角地であることを考慮して地域標準地価格に対して102パーセント程度の価格修正を行ってその鑑定評価額を8万7000円/㎡と査定し,これに地積を乗じて得た1459万3000円をその時価と ルであるが,角地であることを考慮して地域標準地価格に対して102パーセント程度の価格修正を行ってその鑑定評価額を8万7000円/㎡と査定し,これに地積を乗じて得た1459万3000円をその時価とし,3土地については,公衆用道路敷であり,4分の1の持分がある点を考慮して地域標準地価格に対して10パーセントの価格修正を行い,3土地の鑑定評価額を1平方メートル当たり8500円/㎡,総額188万7000円と査定し,持分割合4分の1を乗じて47万1000円をその時価とし,本件建物については,原価法により再調達価格を求め,この価格に耐用年数に基づく方法(定率法)及び観察減価法を併用して減価修正を行い,4建物の積算価格を10万6000円,5建物(未登記建物を含む。)の積算価格を202万2000円と査定し,本件物件の評価額を合計9076万6000円と鑑定している。 イ G鑑定(甲24)a 要旨最有効利用 1土地につき中低層共同住宅,2土地につき戸建住宅の敷地標準価格 7万8000円/㎡価格合計 8181万1000円個別の価格1土地 6743万8000円2土地 1334万5000円3土地 21万6000円本件建物 81万2000円b 内容G鑑定は,1土地の最有効の用途として中・低層の共同住宅用地とし,取引事例比較法(比準価格7万8000円/㎡)及び収益還元法(収益価格7万6200円/㎡)を適用し,地価調査基準地価格からの規準(7万5000円/㎡)をも行って調整した結果,実証性の高い比準価格を中心に,収益価格を考慮し,基準価格との均衡にも配慮して,本件物件の属する地域の標準価格を7万8000円/㎡と査定し,1土地については,個別要因(奥行逓減として5パーセント減)を斟酌して修正し 格を中心に,収益価格を考慮し,基準価格との均衡にも配慮して,本件物件の属する地域の標準価格を7万8000円/㎡と査定し,1土地については,個別要因(奥行逓減として5パーセント減)を斟酌して修正したうえ,さらに建付減価(5パーセント減)を考慮して得た額7万0395円/㎡に,地積を乗じて得た額6743万8000円をその時価とし,2土地については,角地として2パーセント増の補正を加えて地積を乗じた1334万5000円を,3土地については,私道減価として95パーセントを減じて地積を乗じた21万6000円を,それぞれの時価とし,また,4及び5建物については,原価法(間接法)により再調達原価を求め,この価格に耐用年数による原価・観察減価法(中古建物による市場性の減価を含む)等の修正を行って得た額に,床面積を乗じて得た額(4建物は無価値,5建物につき81万2000円)を価格時点における時価と評価し,その結果,本件物件の評価額を,合計8181万1000円と鑑定している。 ウ H鑑定a  要旨(括弧内の数字は計算ミス修正後の数値)最有効利用 1土地につき現在は戸建住宅,将来は中低層住宅の期待,2土地につき一般住宅の敷地標準価格 7万5300円/㎡個別の価格 7808万8000円(7898万9000円)1土地 6525万5000円(6543万6000円)2土地 1288万2000円3土地 41万8000円4建物 25万3000円b  内容H鑑定は,本件物件の周辺地域について分析を行い,5地域から13事例を選択し,個別要因に基づく標準化補正を行った上で,地価公示価格等から基準した価格との均衡にも配慮し,近隣地域の標準価格を7万5300円/㎡と査定し,1土地については,最有効用途を戸建住宅 13事例を選択し,個別要因に基づく標準化補正を行った上で,地価公示価格等から基準した価格との均衡にも配慮し,近隣地域の標準価格を7万5300円/㎡と査定し,1土地については,最有効用途を戸建住宅分譲としつつ,中低層建物の敷地として一体利用できる期待性を加味し,前者とした場合の袋地・不正形による補正を94パーセント,造成減価による補正を84パーセント(補正率計79パーセント。なお,鑑定書では78パーセントと誤って計算している。)とした上で,前記の期待性として16パーセント強を加えて(総合補正率95.5パーセント),評価額を算定するものとされている。それによると,1土地の評価額は7万1900円/㎡となり,地積を乗じて6888万円(100円未満四捨五入。 以下同じ。)と評価されることになり,建付減価を5パーセントと行うと,6543万6000円となる。2土地については,G鑑定と同率の角地加算を行って,1288万2000円と評価し,3土地については,私道減価を90パーセントみて,41万8000円としている。また,4建物については,再調達現価を7万円/㎡とみて,残価率5パーセント,観察減価50パーセントとして,時価を25万3000円と評価している。なお,5建物については,評価時において現存せず,評価されなかった。 エ鑑定についての検討aF鑑定,G鑑定及びH鑑定の鑑定手法は,前2者はいずれも取引事例比較法と収益還元法を用いており,H鑑定は,13例の比準事例に基づく取引事例比較法を用いており,鑑定手法自体特に問題とすべき事情はない(なお,被控訴人がH鑑定について種々非難するところを検討しても,H鑑定の全体の信用性は損なわれない。)。しかし,最有効使用の判定と,個別要因の認識とそれによる減価率について相違があるところ,以下に説示するとおり,それぞ 定について種々非難するところを検討しても,H鑑定の全体の信用性は損なわれない。)。しかし,最有効使用の判定と,個別要因の認識とそれによる減価率について相違があるところ,以下に説示するとおり,それぞれに難点があって,いずれか一つの鑑定を全面的に採用することはできないというべきである。 b まず,最有効利用の判定について検討する。 不動産の最有効利用とは,客観的にみて,良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法をいい,その判定においては,その不動産の属する近隣地域の一般的な標準仕様が重要な参考となるが,全ての不動産の最有効使用が必ずその不動産の属する近隣地域の一般的な標準的使用に一致するものではなく,最有効利用の判定はその不動産の規模,位置,環境等を考慮するとともに,その市場における需給動向をも洞察したうえで行うことが必要であるとされるところ(乙28),このような観点を踏まえて,F鑑定及びG鑑定の内容を検討すると,F鑑定及びG鑑定における1土地の最有効利用の判定が直ちに誤りであるとも断定し難いところである。しかしながら,証拠(甲29,30,当審における証人H)によれば,H鑑定は,本件物件の周辺地域は大分駅裏の既成住宅地に所在し,職住接近などによりアパート・マンション用地として優位な立地条件にあるが,本件物件の近隣地域は駅裏市街地の外縁部に所在し,一戸建住宅を主体としていると判断し,また,近隣周辺におけるマンション建設は,平成4年ころから徐々に増加したものであり,アパート・マンション建設は,旧農家の遊休地利用の目的で行われている傾向があることなどから,当該地域においては一般性に欠けることを理由に,本件物件譲渡がなされた時点における近隣地域の標準的使用は,一般住宅の敷地であると判断しているところ,地域要因の評価に れている傾向があることなどから,当該地域においては一般性に欠けることを理由に,本件物件譲渡がなされた時点における近隣地域の標準的使用は,一般住宅の敷地であると判断しているところ,地域要因の評価においてF鑑定及びG鑑定と意見を異にするものであるが,H鑑定の判断にも相当の合理性を認めることができ,これを一概に排斥することができないものである。そうすると,本件においては,1土地の最有効利用をF鑑定及びG鑑定のように中層建物の敷地や中・低層の共同住宅用地と認定することは,一般的にいって個別修正前の標準価格をより高額に算定することになる結果,被控訴人のした本件告知処分の適法性の全部又はその大部分を裏付ける関係にあるから,その事実の立証責任は被控訴人にあると解すべきところ,前記のH鑑定があり,これを排斥することができない以上,1土地の最有効利用を中層建物の敷地や中・低層の共同住宅用地であると認定することはできず,結局,1土地の最有効利用についてはH鑑定の結論を採用するべきものである(したがって,H鑑定に依拠して,前記(1)のとおり認定するのが相当である。)。 c さらに,F鑑定,G鑑定及びH鑑定について個別に検討する。F鑑定は,選択した取引事例がG鑑定やH鑑定に比較してやや高額であること,価格修正率が両鑑定と比較してやや少ない傾向があること,1土地の最有効利用を中層建物の敷地としていること,最有効利用をこのように判定した結果,潰れ地や造成による減価を考慮せず,個別要因としては接道条件と奥行長大のみをみて,標準地価格の90パーセントと評価した結果,他の鑑定価格と比較して突出した評価となっており,本件建物の評価も他の鑑定と比較して2倍以上も高額であり,これを全面的に採用することはできない。G鑑定は,簡易鑑定として実施されたものであり,近隣地域の範囲 価格と比較して突出した評価となっており,本件建物の評価も他の鑑定と比較して2倍以上も高額であり,これを全面的に採用することはできない。G鑑定は,簡易鑑定として実施されたものであり,近隣地域の範囲や標準的画地についての記載が欠如していること,取引事例比較法で使用した事例が3例と少ないこと,3例の個々の減価要因等についても記載がないこと,1土地の最有効の用途として中・低層の共同住宅地として評価していることなどの難点があるから,これをそのまま採用することはできない。H鑑定は,1土地の用途として,戸建住宅分譲用地と評価しながら,中低層建物用地として一体として利用できる期待性を加味しているところ,最有効利用を判定しつつも,将来性をみてより有効利用の可能性が現実的であれば,その期待性を考慮することは必ずしも不合理ではないが,証拠(甲30,当審における証人H)によれば,中低層建物用地としての利用が目論めるのは平成4年ころからであるというのであり,本件物件の譲渡から4年も先のことである。そうすると,その間,戸建住宅分譲用地としての利用ができなくなり,投下資本に対する金利負担などの問題も生じるから,このような不確実な期待が地価形成要因として大きく働くとは考えがたいところであり,期待性に対し16パーセント強もの補正をするのは過大というべきであって,これもそのまま採用することは困難である。 オ評価額の検討したがって,F鑑定,G鑑定及びH鑑定の合理性,相当性の認められる部分に依拠して,本件物件の価格を算定することになるところ,本件土地の取引事例比較法による比準価格は,H鑑定(7万5300円/㎡)とG鑑定(7万8000円/㎡)の平均値(7万6650円/㎡)を,収益還元法による価格は,G鑑定(7万6200円/㎡)とF鑑定(7万3200円/㎡)の平均値(7 準価格は,H鑑定(7万5300円/㎡)とG鑑定(7万8000円/㎡)の平均値(7万6650円/㎡)を,収益還元法による価格は,G鑑定(7万6200円/㎡)とF鑑定(7万3200円/㎡)の平均値(7万4700円/㎡)を採用し,不動産市場の動向を反映して実証性の高い比準価格を重視して,2対1の加重平均値である7万6000円/㎡をもって,近隣地域の標準価格とするのが相当と考えられる。そして,1土地については,F鑑定,G鑑定及びH鑑定をそれぞれ斟酌して,奥行低減・不整形減価・造成減価・建付減価を考慮し,標準価格の85パーセントの6188万6800円を時価と認めるのが相当である。2土地については,F鑑定,G鑑定及びH鑑定が一致して2パーセントの角地加算を行っているから,これに従って,1300万3200円とするのが相当である。3土地については,道路敷兼共有地減価として,G鑑定が5パーセント,F鑑定とH鑑定が各10パーセントと評価していることを参考として標準価格の8パーセントとし,33万7400円と評価するのが相当である。4建物については,H鑑定に従い25万3000円,5建物については,G鑑定に従い81万2000円と評価するのが相当である。 (3) 使用借権の有無及びその減価について証拠(甲13,14,乙16)及び弁論の全趣旨によれば,本件物件は,もとA株式会社が所有し,同社のタクシー事業の営業所兼駐車場として使用されていたこと,A株式会社と控訴人とは,新たに控訴人が設立代表者となって設立するB株式会社に,A株式会社のタクシー事業や資産を全部譲渡することにし,平成元年3月14日,A株式会社とB株式会社は,A株式会社の事業全部をB株式会社へ譲渡し,タクシー事業の譲渡譲受の認可の日をもって譲渡譲受の効力発生日とする旨の譲渡譲受契約を締結したこと,契 にし,平成元年3月14日,A株式会社とB株式会社は,A株式会社の事業全部をB株式会社へ譲渡し,タクシー事業の譲渡譲受の認可の日をもって譲渡譲受の効力発生日とする旨の譲渡譲受契約を締結したこと,契約締結にあたっては,B株式会社は,A株式会社から譲り受けたタクシー事業の営業所兼駐車場として本件物件を使用することが前提とされていたが,B株式会社に本件物件を購入する資力がなかったため,代表者であった控訴人が本件物件を購入することになったこと,B株式会社の設立登記は平成元年4月4日付でなされ,同年6月28日付で本件物件譲渡がなされ,同年7月4日付で譲渡譲受の認可がなされたこと,本件物件は,認可の日の前後を通じ,タクシー事業の営業所兼駐車場として現実の使用が継続されていることが認められる。以上によれば,本件物件譲渡においては,B株式会社が本件物件をタクシー事業の営業所兼駐車場として使用することが予定されていたものであり,控訴人とB株式会社(当時の代表者は控訴人)との間で,タクシー事業の譲渡譲受の認可を条件とする本件物件の使用貸借契約が暗黙裡に成立し,同年7月4日付で認可がなされたことにより,同日をもって本件不動産についてB株式会社の有する使用借権の効力が発生したと解さざるを得ないものである。そして,控訴人がB株式会社の代表者であること等の事情を考慮しても,控訴人が本件物件を最有効利用しようとするときに,前記使用貸借が障害にならないとはいえないから,本件においては使用借権の減価を行うべきものである。なお,控訴人は,B株式会社の本件物件の利用権は賃貸借であったとも主張し,賃料を支払っていた旨の証拠(甲26の1ないし9,27の1ないし8,28の1ないし4)を提出しているが,賃貸借契約書が作成された形跡はなく,前記証拠は,本件物件譲渡後の平成元年7月 ったとも主張し,賃料を支払っていた旨の証拠(甲26の1ないし9,27の1ないし8,28の1ないし4)を提出しているが,賃貸借契約書が作成された形跡はなく,前記証拠は,本件物件譲渡後の平成元年7月以降のB株式会社と控訴人との権利関係に関するものにすぎないから,B株式会社が使用借権を有していたとの認定が左右されるものではない。そして,本件において,使用借権の評価を行っているのはH鑑定のほかにはないところ,これによると,使用借権としては,本件土地(3土地を除く)の価格から15パーセントを減価すべきであるから,本件物件の時価は,1土地が5260万3800円,2土地が1105万2700円,3土地が33万7400円,4建物が25万3000円,5建物が81万2000円となり,その総額は,6505万8900円となる。 3 本件譲渡の低額譲渡性について(争点3)(1) 本件譲渡が国税徴収法39条が規定する第2次納税義務の制度は,形式的には第三者に財産が帰属しているものの,実質的には,なお,滞納者にその財産が帰属していると認めても公平を失しないような場合には,その形式的権利の帰属を否定しながら,しかも,私法秩序を乱すことを避けつつ,形式的に財産が帰属している第三者に対し,補充的に滞納者の納税義務を負担させることによって租税徴収の確保を図る制度である。したがって,ここにいう「著しく低い額」に該当するか否かは,当該財産の種類,数量の多寡,時価と対価の差額の大小等を総合して,当該取引価額が通常の取引額,すなわち,時価に比して,社会通念上著しく低いと認められるか否かにより,判断すべきものと解するのが相当である。 そして,国税徴収法基本通達39条関係6に照らすと,上場株式,社債等のように,一般に時価が明確な財産については,価額の差(時価と対価との差)が比較的僅少 より,判断すべきものと解するのが相当である。 そして,国税徴収法基本通達39条関係6に照らすと,上場株式,社債等のように,一般に時価が明確な財産については,価額の差(時価と対価との差)が比較的僅少であっても,「著しく低い」と判断すべき場合があるのに対し,不動産のように値幅のある財産については価額の差がある程度開いても直ちには「著しく低い」とはいえない場合があるが,少なくとも時価のおおむね2分の1に満たない場合は,特段の事情のない限り,「著しく低い」ということができるというべきである。したがって,おおむね2分の1とは,2分の1を境に低額譲渡と否とを峻別する趣旨ではなく,2分の1前後のある程度幅をもった概念であると解すべきであり,これに反する控訴人の主張は採用することができない。ところで,前記のとおり,本件譲渡の価格は3500万円であり,時価は6505万8900円であるから,控訴人は,本件物件を,時価のほぼ2分の1(53.8パーセント)に当たる対価で買い受けたのであり,本件譲渡時が平成元年であり,不動産価格が上昇気運にあったことも勘案すれば,本件譲渡は,時価に比して社会通念上「著しく低い額」による譲渡であるということができる。 (2) そして,前記認定の事実関係によれば,被控訴人が,A株式会社に対し,前記滞納にかかる法人税等につき,滞納処分を執行しても,なお,その徴収すべき額に不足すると認められること,本件譲渡がA株式会社の滞納国税のうち,最も古い事業年度にかかる滞納国税の法定納期限である平成元年8月3日の1年前の日以後に行われたこと,前記徴収不足は,A株式会社が,控訴人に対し,本件物件を前記のとおり譲渡したことに起因するものであること,本件物件の譲受人である控訴人が,譲渡人であるA株式会社の株式の50パーセント以上を保有するCの長男であ は,A株式会社が,控訴人に対し,本件物件を前記のとおり譲渡したことに起因するものであること,本件物件の譲受人である控訴人が,譲渡人であるA株式会社の株式の50パーセント以上を保有するCの長男であり,国税徴収法39条の特殊関係者に該当することになるから,控訴人は,本件譲渡により受けた利益の限度において,前記滞納国税の第2次納税義務を負うというべきである。本件において,控訴人は,時価6505万8900円の物件を売買代金3500万円で買い受けたのであるから,この差額3005万8900円から取得費用である登録免許税89万円,不動産取得税63万3600円,収入印紙代1万0400円(なお,審査請求を棄却した裁決書では,印紙代は1万円とされているが,本件土地の契約書(乙1)に貼付された1万円の収入印紙のみならず,本件建物の契約書(乙7)に貼付された400円の収入印紙も取得費用というべきである。)の合計153万4000円を控除した少なくとも2852万4900円が控訴人が本件譲渡により受けた利益であると認められる。 4 結論以上によれば,本件処分は納税限度額につき2852万4900円を超える部分について違法があるので,原判決を変更して,違法部分を取消し,控訴人のその余の請求は理由がないので棄却することとする。 福岡高等裁判所第1民事部裁判長裁判官宮良允通裁判官石村太郎裁判官野島秀夫別紙物件目録 1 所在大分市大字b字c地番  d番e地目宅地 地番  d番e地目宅地地積  958.00平方メートル 2 所在大分市大字b字c地番  e番f地目宅地地積  167.74平方メートル 3 所在大分市大字b字c地番  e番g地目公衆用道路地積  222平方メートルに対する持分4分の1 4 所在大分市大字b字cd番地e家屋番号 h番i種類倉庫構造鉄骨造スレート葺平家建床面積 144.50平方メートル 5 所在大分市大字b字cd番地e家屋番号 h番iのj種類居宅 トル 5 所在大分市大字b字cd番地e家屋番号 h番iのj種類居宅構造木造瓦葺2階建床面積 1階 71.67平方メートル2階 24.42平方メートル附属建物符号  ①種類倉庫構造木造瓦葺平家建床面積 24.30平方メートル 別紙滞納国税目録〈略〉

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