平成19(行ウ)52 処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成20年3月13日 神戸地方裁判所 その他
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判決文本文12,764 文字)

- 1 -主文 本件訴えを却下する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求兵庫県知事が,平成19年1月11日付けで原告に対してした不当景品類及び不当表示防止法7条,並びに,農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律19条の14第1項の規定に基づく指示を取り消す。 第2事案の概要本件は,原告がその経営する店舗で和牛以外の国産牛肉商品に和牛と記載したシールを貼付して販売していたことは,不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。),並びに,農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(以下「JAS法」という。)に違反するとして,景品表示法7条,並びに,JAS法19条の14第1項の規定に基づき指示を受けたことに対して,同指示は行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たるところ,同指示は要件を欠き,又は,重きに失しており,違法であると主張して,その取消しを求めている事案である。 前提となる事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)原告ア原告は,aの名称でスーパー(以下「原告店舗」という。)を経営している者である。 イ原告は,原告店舗で販売する牛肉を,滋賀県近江八幡市に本社のある株式会社b(以下「b」という。)から仕入れていた。原告がbから仕入れた牛肉のうち,商品名「○○」は,和牛と国産牛の交雑牛であった(甲6の1及び6の2,乙1の1ないし1の3,弁論の全趣旨)。 - 2 -(2)原告店舗に対する調査の経緯ア国の農林水産省近畿農政局兵庫農政事務所の担当職員らは,平成18年12月18日,原告店舗に対する調査を行い,原告が,商品パックに「○○」と表示された商品(以 (2)原告店舗に対する調査の経緯ア国の農林水産省近畿農政局兵庫農政事務所の担当職員らは,平成18年12月18日,原告店舗に対する調査を行い,原告が,商品パックに「○○」と表示された商品(以下「原告販売商品」という。)に,「和牛」と記載したシール(以下「本件シール」という。)を貼付して販売していたことを確認し,原告販売商品が和牛ではないことを原告に対して指摘した。 イこれを受けて,原告は,同日から,原告販売商品に本件シールを貼付することを打ち切った。 ウ被告の農林水産部農政企画局消費流通課外の担当職員らは,平成18年12月25日,原告店舗に対する調査を行った。 (3)原告に対する指示の経緯兵庫県知事は,原告が原告店舗で和牛ではない原告販売商品に1年以上前から本件シールを貼付し,少なくとも平成18年11月1日から同年12月18日までの間に陳列,販売したことは,景品表示法4条1項1号,及び,JAS法19条の13第1項の規定に基づき定められた生鮮食品品質表示基準(平成12年農林水産省告示第514号。以下「本件告示」という。)6条1号に違反するとして,平成19年1月11日付けで原告に対し,景品表示法7条,及び,JAS法19条の14第1項の規定に基づき,次の内容の指示(以下「本件指示」という。)をした(甲3,乙2)。 ア貴店が販売していた牛肉の一部に不適正な表示が行われた主たる原因として,貴店における食品表示制度に関する認識が欠けており,不適正表示を防止する相互チェック体制及び商品管理体制に不備があると考えざるを得ないことから,これらを含め原因を徹底的に究明し分析すること(以下「指示事項1」という。)。 イ貴店内において,食品表示制度の重要性を十分認識するとともに正しい知識を習得し,その遵守を徹底すること(以下「指示事項2」という 原因を徹底的に究明し分析すること(以下「指示事項1」という。)。 イ貴店内において,食品表示制度の重要性を十分認識するとともに正しい知識を習得し,その遵守を徹底すること(以下「指示事項2」という。)。 - 3 -ウ貴店における表示チェックの責任の所在を明確にするとともに,相互チェックが可能な店内組織体制及び商品管理体制を整えるなど再発防止対策を実施すること(以下「指示事項3」という。)。 エ貴店が販売を行っている食品について,直ちに表示の点検を行い,不適正な表示の商品が発見された場合には,適正な表示に訂正した上で販売すること(以下「指示事項4」という。)。 オ指示事項1から4までの対応結果について,平成19年2月9日までに兵庫県知事あて報告すること(以下「指示事項5」といい,指示事項1から5までを併せて「本件各指示事項」という。)。 (4)本件指示後の経緯等被告は,平成19年1月15日,本件指示を公表し,原告が本件指示を受けたことは,新聞各紙で報道され,また,被告のホームページにも掲載された(甲4,5の1及び5の2)。 法令等の定め(1)景品表示法ア景品表示法4条1項は,「事業者は,自己の供給する商品・・・の取引について,次の各号に掲げる表示をしてはならない。」旨規定し,同項1号は,「商品・・・の品質,規格その他の内容について,一般消費者に対し,実際のものよりも著しく優良であると示し,又は事実に相違して当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示すことにより,不当に顧客を誘引し,公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示」を掲げている。 イ同法7条は,「都道府県知事は,・・・第四条第一項の規定に違反する行為があると認めるときは,当該事業者に対し,その行為を取りやめ若しくはその行 するおそれがあると認められる表示」を掲げている。 イ同法7条は,「都道府県知事は,・・・第四条第一項の規定に違反する行為があると認めるときは,当該事業者に対し,その行為を取りやめ若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を指示することができる。その指- 4 -示は,当該違反行為が既になくなつている場合においても,することができる。」旨規定している。 ウ同法8条1項は,「都道府県知事は,前条の規定による指示を行つた場合において当該事業者がその指示に従わないとき,その他同条に規定する違反行為を取りやめさせるため,又は同条に規定する違反行為が再び行われることを防止するため必要があると認めるときは,公正取引委員会に対し,この法律の規定に従い適当な措置をとるべきことを求めることができる。」旨規定している。 (2)JAS法アJAS法19条の13第1項は,「農林水産大臣は,飲食料品の品質に関する表示の適正化を図り一般消費者の選択に資するため,農林物資のうち飲食料品(生産の方法又は流通の方法に特色があり,これにより価値が高まると認められるものを除く。)の品質に関する表示について,農林水産省令で定める区分ごとに,次に掲げる事項のうち必要な事項につき,その製造業者等(農林物資の製造,加工(調整又は選別を含む。),輸入又は販売を業とする者を指す。)が守るべき基準を定めなければならない。」旨規定し,同項1号は,「名称,原料又は材料,保存の方法,原産地その他表示すべき事項」を,同項2号は,「表示の方法その他前号に掲げる事項の表示に際して製造業者等が遵守すべき事項」を,それぞれ掲げている。 イ同法19条の14第1項は,「農林水産大臣は,前条第一項・・・第一号に掲げる事項(以下「表示 表示の方法その他前号に掲げる事項の表示に際して製造業者等が遵守すべき事項」を,それぞれ掲げている。 イ同法19条の14第1項は,「農林水産大臣は,前条第一項・・・第一号に掲げる事項(以下「表示事項」という。)を表示せず,又は同項・・・第二号に掲げる事項(以下「遵守事項」という。)を遵守しない製造業者等があるときは,当該製造業者等に対して,表示事項を表示し,又は遵守事項を遵守すべき旨の指示をすることができる。」旨規定している。また,同条3項は,「農林水産大臣は,前二項の指示を受けた者が,正当な- 5 -理由がなくてその指示に係る措置をとらなかつたときは,その者に対し,その指示に係る措置をとるべきことを命ずることができる。」旨規定している。 ウ同法23条1項は,「この法律に規定する農林水産大臣の権限に属する事務の一部は,政令で定めるところにより,都道府県知事が行うこととすることができる。」旨規定し,JAS法施行令11条1項1号は,JAS法19条の14第1項の規定に基づく指示の権限について,「その主たる事務所並びに事業所,工場及び店舗が一の都道府県の区域内のみにある製造業者等・・・に関するものは当該都道府県の知事が・・・行うこととする。」旨規定している。 エ同法24条は,「次の各号のいずれかに該当する者は,一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。」旨規定し,同条8号は,「第十九条の十四第三項の規定による命令に違反した者」を掲げているが,同法19条の14第1項の規定による指示に違反した者は掲げられてはいない。 (3)本件告示(乙2)JAS法19条の13第1項の規定に基づき定められた本件告示6条は,「次に掲げる事項は,これを表示してはならない。」旨規定し,同条1号は,「実際のものより著しく優良又は有利であると誤認させる用語」を JAS法19条の13第1項の規定に基づき定められた本件告示6条は,「次に掲げる事項は,これを表示してはならない。」旨規定し,同条1号は,「実際のものより著しく優良又は有利であると誤認させる用語」を掲げている。 (4)農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律における品質表示基準に基づく販売業者等の表示義務に関する県の調査及び指導等における実施要領(以下「県実施要領」という。)(乙4)ア被告は,JAS法23条,JAS法施行令11条1項の品質表示基準に基づく製造業者,加工包装業者,輸入業者,販売業者等(以下「販売業者等」という。)の表示義務に関する県の調査及び指導等について従うべき要領として,県実施要領を定めている。 - 6 -イ県実施要領第4「指導又は指示及び公表」,1は,「立入検査又は調査の結果,品質表示基準に違反している販売業者等に対しては,消費流通課長及び県民局長は次に掲げる場合は指導を行い,次に該当しない場合は令(JAS法施行令を指す。)第11条第1項第1号により指示を行う。」旨規定し,(1)として「品質表示基準に定められた表示事項が表示されていないが,直ちに改善する意思を示している場合」を,(2)として「品質表示基準に定められた遵守事項が遵守されていないが,常習性がなく過失による一時的なものであることが明らかであり,かつ,直ちに改善する意思を示している場合」を,それぞれ掲げている。 ウまた,県実施要領第4「指導又は指示及び公表」,2は,「消費流通課長及び県民局長は指示を行った場合には,次に定める事項について,原則として記者発表等により公表する。ただし,県情報公開条例に照らし非公開と判断されるような場合は公表しないこととする。」旨規定し,(1)として「違反した事業者の氏名又は名称及び住所」を,(2)として「違反 て記者発表等により公表する。ただし,県情報公開条例に照らし非公開と判断されるような場合は公表しないこととする。」旨規定し,(1)として「違反した事業者の氏名又は名称及び住所」を,(2)として「違反事実」を,(3)として「指示の内容」を,それぞれ掲げるとともに,3は,「消費者利益の保護の観点から,違反事実を早急に公表する必要性の高い場合であって,違反事実が確認されている場合には,消費流通課長及び県民局長は指示を行わなくても違反した事業者の氏名又は名称及び住所,違反事実について公表することができる。」旨規定している。 争点 本件の主要な争点は,(1)処分性の有無(本件指示は,「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行訴法3条2項)に当たるか否か。)(2)訴えの利益の有無(原告には,本件指示の取消しを求める訴えの利益があるか否か。)(3)本件指示の違法性の有無(本件指示は違法であり,取り消されるべきで- 7 -あるか否か。)の各点である。 当事者の主張本件各争点に関する当事者の主張は次のとおりである。 (1)争点(1)(処分性の有無)についてア原告の主張(ア)本件指示は,原告に対し,本件各指示事項を履行すべきことを義務付けるものであるから,処分性が認められるものというべきである。 (イ)また,景品表示法7条やJAS法19条の14第1項に基づく指示には,県実施要領により,違反事業者が直ちに改善する意思を示している場合,表示事項を正確に表示するように指導して,事業者がその指導に従わなかったことが確認された場合に指示を行うという指針があり,指示を行った場合には必ず公表するというのであるから,これは制裁として行われるものであって,指示は行政指導にすぎない指導とは異なり,処分性が認められるものというべきである。 を行うという指針があり,指示を行った場合には必ず公表するというのであるから,これは制裁として行われるものであって,指示は行政指導にすぎない指導とは異なり,処分性が認められるものというべきである。 (ウ)さらに,景品表示法7条やJAS法19条の14第1項に基づく指示は必ず公表され,本件においても,原告は違反事業者であると決め付けられて公表されており,国民に周知徹底させた。その結果,原告店舗の売上げは急激に減少した。行訴法は,法律上保護された利益のみならず,法律上保護に値する利益をも保護していると解されるところ,原告には,本件指示により原告店舗の売上げが急激に減少するといった不利益が生じており,これは,法律上保護に値する利益であって,本件指示により,これに直接影響が及ぼされている以上,本件指示には処分性が認められるというべきである。 イ被告の主張(ア)景品表示法7条やJAS法19条の14第1項に基づく指示は,当- 8 -該指示を受けた者が任意にこれに従うことを期待してなされる行政指導であり,当該指示を受けた者の権利義務を形成し,あるいはその範囲を確定するような法的効果を何ら生ずるものではないから,行訴法に基づく取消訴訟の対象となる行政処分ではない。 (イ)本件指示について見ても,本件各指示事項は,一般的抽象的に,品質に関する適正な表示について,内部での自主的な調査・検討・対応を促し,その結果を報告するよう求めるものであって,原告の権利義務を形成し,あるいはその範囲を確定するような法的効果を何ら生ずるものではないことは明らかである。 (ウ)原告は,県実施要領によれば,JAS法19条の14第1項の規定に基づく指示は,行政指導たる指導に従わない者に対して行われる制裁というべきであるから,当該指示は行政指導ではなく行政処分である旨 (ウ)原告は,県実施要領によれば,JAS法19条の14第1項の規定に基づく指示は,行政指導たる指導に従わない者に対して行われる制裁というべきであるから,当該指示は行政指導ではなく行政処分である旨主張するようであるが,そもそも本件は指導に従わなかったから指示をしたという事案ではないから前提を異にする上に,原告の主張はいずれの行為をもっていかなる意味で制裁というのかが定かではないが,ある行為に従わないことに対する制裁が用意されていることをもって,当然にその行為が処分性を有するということにはならないから,失当であるというべきである。 なお,県実施要領にいう指導とJAS法19条の14第1項の規定に基づく指示とは,単に異なる方式の行政指導の繰り返しにすぎない。 また,公表は,義務の不履行があった場合に消費者保護のためにその事実を公にするものであって,指示の内容をなすものではなく,情報提供のために行っているものにすぎないから,制裁ではない。現に,指示をする場合にはこれに応じるか否かを問わず公表しているし,指示をしない場合でも緊急の必要性がある場合には公表を行う場合がある。公表に基づき,原告には何らの権利義務の変動も生じてはいない。 - 9 -さらに,原告は営業上の利益も景品表示法やJAS法の保護法益であるかのような主張をするが,売上げの減少の証明は不十分であり,また,本件指示との因果関係も明らかではないばかりか,これらの法は一般消費者の利益を保護しているのであって,事業者の営業上の利益は,せいぜい単なる事実上の利益にすぎないから,これをもって処分性の根拠とすることはできないというべきである。 (2)争点(2)(訴えの利益の有無)についてア原告の主張(ア)前記のとおり,景品表示法7条やJAS法19条の14第1項に基づく指示は必ず公表さ 根拠とすることはできないというべきである。 (2)争点(2)(訴えの利益の有無)についてア原告の主張(ア)前記のとおり,景品表示法7条やJAS法19条の14第1項に基づく指示は必ず公表され,本件においても,原告は違反事業者であると決め付けられて公表されており,国民に周知徹底させた。その結果,原告店舗の売上げは急激に減少しており,本件指示により,原告の法律上の利益に直接影響が及ぼされた。 (イ)行訴法は,法律上保護された利益のみならず,法律上保護に値する利益をも保護していると解されるところ,原告には,本件指示により原告店舗の売上げが急激に減少したままの不法状態を排除することによって回復されるべき法的地位があり,これは,法律上保護に値する利益であるというべきであるから,訴えの利益が認められる。 イ被告の主張(ア)原告は営業上の利益も景品表示法やJAS法の保護法益であるかのような主張をするが,売上げの減少の証明は不十分であり,また,本件指示との因果関係も明らかではないばかりか,これらの法は一般消費者の利益を保護しているのであって,事業者の営業上の利益は,せいぜい単なる事実上の利益にすぎないから,これをもって訴えの利益の根拠とすることはできないというべきである。 (イ)仮に,本件指示に本件各指示事項を履行すべき法的義務を課すとい- 10 -う処分性が認められたと仮定しても,本件指示は,原告が既に本件各指示事項を履行し,その目的を達成したことにより,その法的効果が消滅しており,その取消しによって回復すべき法律上の利益が失われたから,狭義の訴えの利益がないものというべきである。 (3)争点(3)(本件指示の違法性の有無)についてア被告の主張(ア)国の農林水産省近畿農政局兵庫農政事務所地域第2課牛トレーサビリティ第2係 狭義の訴えの利益がないものというべきである。 (3)争点(3)(本件指示の違法性の有無)についてア被告の主張(ア)国の農林水産省近畿農政局兵庫農政事務所地域第2課牛トレーサビリティ第2係は,平成18年11月17日,本件シールが貼付されて原告店舗で販売されていた原告販売商品を買い上げて,DNA鑑定を行ったところ,これが和牛以外の牛(交雑種)であることが判明した。 (イ)同課は,原告販売商品はアウトパック商品(小売店が仕入れる段階で既に包装されて名称や原産地等の表示が行われた商品)であったことから,平成18年12月18日,本件シールの貼付についての事実確認を行うため,原告店舗に対する任意調査を実施し,原告自らが原告販売商品に本件シールを貼付している事実を確認した。 (ウ)また,国から情報提供を受けた被告は,平成18年12月25日,原告店舗に対する任意調査を実施し,原告が,1年以上前から原告販売商品に本件シールを貼付し,販売,陳列していたことを確認した。 (エ)原告の上記行為は,JAS法19条の13第1項の規定に基づき定められた本件告示6条1号,及び,景品表示法4条1項1号に違反するものである。 (オ)県実施要領によれば,品質表示基準に定められた遵守事項が遵守されていない事業者に対しては,一般消費者の保護の観点から,原則として指示を行うものとし,例外的に,①常習性がなく過失による一時的なものであることが明らかであり,かつ,②直ちに改善する意思を示している場合に限り,いったん指導を行い,その指導に従わなかったことが- 11 -確認された場合のみ指示を行うものとされている。 本件においては,原告は,食肉販売を業とする者であり,日常的に食肉の品種等について知る機会の少ない一般消費者と同程度の認識しかないなどということはないから, れた場合のみ指示を行うものとされている。 本件においては,原告は,食肉販売を業とする者であり,日常的に食肉の品種等について知る機会の少ない一般消費者と同程度の認識しかないなどということはないから,1年以上前から和牛ではない原告販売商品に本件シールを貼付した行為は過失による一時的なものなどではなく,常習性があることは明らかである。 この点,原告は,常習性には違法性の認識が必要であると主張するようであるが,品質表示基準は,一般消費者の保護のために定められたものであって,行為者の主観や意図により左右されるべきものではなく,指示を行う権限のある者の合理的な裁量に指示の有無がゆだねられていると解すべき本件事案においては,一般消費者の保護の観点からすれば,立証困難な行為者の主観的意図ないし認識によって常習性の有無を判断すべきではないから,1年以上前から不適正な表示を行ってきたことをもって,常習性があるというべきである。 また,原告は,表示事項と遵守事項とを混同し,表示事項に関する県実施要領第4の1(1)について述べるが,本件は,遵守事項を遵守しなかった場合であり,同(1)ではなく,同(2)が適用される事例であって,同(1)に係る原告の主張は前提を欠き,失当である。 (カ)また,景品表示法4条1項1号においては,「実際のものよりも著しく優良であると示し,又は事実に相違して当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す」ものであれば,「不当に顧客を誘引し,公正な競争を阻害するおそれがあると認められる」ので,表示を行う事業者の主観的意図や,故意又は過失は,問題とされない。 よって,原告販売商品に本件シールを貼付した行為は,これに違反することが明らかである。 - 12 -なお,景品表示法7条の規定に基づく指示については,J 的意図や,故意又は過失は,問題とされない。 よって,原告販売商品に本件シールを貼付した行為は,これに違反することが明らかである。 - 12 -なお,景品表示法7条の規定に基づく指示については,JAS法19条の14第1項に基づく指示についての県実施要領に相当するような指針はない。 (キ)なお,原告は,本件指示当時,和牛の定義は定まってはいなかったかのような主張をするが,食肉販売事業者団体においては,昭和49年9月から,一般消費者に誤認を生じさせないよう,和牛の表示をできる場合について規定して周知し,公正な基準ないし取引慣行として既に定着しているところであり,原告販売商品が和牛に当たらないことは明らかである。 イ原告の主張(ア)原告は,bのみから牛肉を仕入れていたところ,bは牛肉を事前に包装し,「○○」との記載のある,食肉の表示事項を表示したプライスラベルを貼付した上で,原告店舗に牛肉を納入していた。 そして,原告は,bの本社が滋賀県近江八幡市にあること,及び,商品名が「○○」であることから,これが,和牛である近江牛の若い牛であると思い込んでいたため,原告販売商品に本件シールを貼付していたものであり,このようなことは誰でも信じやすい一時的な過失である。 国からの指摘を受けた平成18年12月18日に本件シールの貼付を打ち切って以来,原告は,原告販売商品に本件シールを使用しておらず,常習性がないことも明らかである。 (イ)景品表示法7条やJAS法19条の14第1項に基づく指示には,県実施要領により,違反事業者が直ちに改善する意思を示している場合,表示事項を正確に表示するように指導して,事業者がその指導に従わなかったことが確認された場合に指示を行うという指針があるところ,原告は,指導内容を履行しているから,本件指示は県実施要領に基づ 場合,表示事項を正確に表示するように指導して,事業者がその指導に従わなかったことが確認された場合に指示を行うという指針があるところ,原告は,指導内容を履行しているから,本件指示は県実施要領に基づく要件を欠き,又は,行き過ぎであって,違法である。 - 13 -また,原告の過失は,軽過失であるところ,県実施要領にいう常習性とは,悪いことを悪いことと知りながら反復して行うことを指すのであり,原告が本件シールの貼付を直ちに止めていることからしても,原告に常習性がないことは明らかであって,やはり,本件指示は県実施要領に基づく要件を欠き,又は,行き過ぎであって,違法である。この点,被告は,常習性の認定のためには主観的要件は不要である旨主張するが,用語の通常の意味に反する上,景品表示法4条1項1号の「不当に顧客を誘引し,公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示」や,本件告示6条1号の「実際のものより著しく優良又は有利であると誤認させる用語」の解釈の際に行為者の故意又は過失を問わないとする理屈は,常習性における主観的要件を排除する理由にはならないから,失当であるというべきである。 (ウ)加えて,和牛の定義は不明確であり,食肉の表示に関する検討会が「和牛」と呼べるための指針について取りまとめて農林水産省が関係団体に通知した「和牛等特色ある食肉の表示に関するガイドライン」にも強制力はなく,しかも,これが策定されたのは平成19年3月であって,本件指示の際にはかかるガイドラインは未策定であったのであるから,原告には景品表示法又はJAS法に違反した事実自体があったとはいえず,本件指示は違法というべきである。 第3当裁判所の判断 争点(1)(処分性の有無)について(1)原告は,本訴において,本件指示が行政処分に当たるとして,行訴法3条2 自体があったとはいえず,本件指示は違法というべきである。 第3当裁判所の判断 争点(1)(処分性の有無)について(1)原告は,本訴において,本件指示が行政処分に当たるとして,行訴法3条2項に基づく処分の取消しを求めている。 しかしながら,同項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,行政庁が相手方に対して優越的な地位に立ち一方的に行う行為であって,その行為によ- 14 -り,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものでなければならないところ,景品表示法7条やJAS法19条の14第1項に基づく指示は,行政処分であることを前提とした係争方法や指示の内容自体の直接強制の方法等は上記各法その他関係諸法令に一切規定されてはおらず,当該指示を受けた者の権利義務を形成し,あるいはその範囲を確定するような法的効果を何ら生ずるものではなく,単に,当該指示を受けた者が任意にこれに従うことを期待してなされる行政指導であり,現に,本件指示に係る本件各指示事項は,一般的抽象的に,品質に関する適正な表示について,内部での自主的な調査・検討・対応を促し,その結果を報告するよう求めるものであって,本件指示は,原告の権利義務を形成し,あるいはその範囲を確定するような法的効果を何ら生ずるものではないものというべきであるから,行訴法に基づく取消訴訟の対象となる行政処分ではないものといわざるを得ない。 (2)アこの点,原告は,県実施要領に基づく指導に従わない者に対して行われる制裁としてJAS法19条の14第1項の規定に基づく指示が行われる以上,当該指示は行政指導ではなく行政処分である旨主張するようであるが,仮に上記指示が指導に従わなかった場合の制裁としてJAS法 れる制裁としてJAS法19条の14第1項の規定に基づく指示が行われる以上,当該指示は行政指導ではなく行政処分である旨主張するようであるが,仮に上記指示が指導に従わなかった場合の制裁としてJAS法が用意していたものであったと仮定しても,そのことによって,当然にその行為が処分性を有するということにはならず,このことを加味したとしても,上記の認定を左右しないものといわざるを得ない。 イまた,原告は,本件指示には公表という制裁が伴っており,単なる行政指導とは異なるとか,公表により原告の信用が毀損し,原告店舗の売上げが減少しており,かかる原告の法律上保護に値する利益である営業上の利益が,本件指示によって,直接に影響を及ぼされている以上,本件指示には処分性が認められるべきであるとかとも主張するが,公表は,消費者保護の観点から情報公開のためにその事実を公にする事実の通知であって,- 15 -指示の内容をなすものではなく,指示の効力として行われるものでも,指示の続行手続として行われるものでもないから,公表されることをもって指示の処分性を認めることはできないし,公表による原告の営業上の利益への影響も事実上のものというほかないから,これをもって,本件指示に処分性が認められるということにもならないものといわざるを得ない。 ウさらに,原告が本件指示に従わなかった場合,兵庫県知事は,公正取引委員会への措置請求(景品表示法8条1項)を行うことができ,また,農林水産大臣は,命令(JAS法19条の14第3項)を発することができ,当該命令違反には罰則も用意されている(JAS法24条。なお,指示違反に対する罰則は規定されていない。)が,必ずしもこれが行われるかは定かではなく,また,措置請求や命令の内容も,指示の内容から直ちに推測されるものともいえないから,かか JAS法24条。なお,指示違反に対する罰則は規定されていない。)が,必ずしもこれが行われるかは定かではなく,また,措置請求や命令の内容も,指示の内容から直ちに推測されるものともいえないから,かかる後続措置が法律上予定されているからといって,本件指示の時点でこれに処分性を認めて争わせることが紛争の成熟性といった観点から適切であるともいえないものといわざるを得ない。 そうすると,本件指示は,行訴法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」には当たらないことに帰着するから,本件訴えは訴訟要件を欠く不適法な訴えであることとなる。 第4 結論 以上の次第で,その余の点について判断するまでもなく,原告の本件訴えは不適法であるから,これを却下することとして,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部佐藤明裁判長裁判官- 16 -菊池章裁判官重高啓裁判官

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