平成21(行コ)56 年金支払等請求控訴事件(原審・名古屋地方裁判所平成21年(行ウ)第6号)

裁判年月日・裁判所
平成22年2月26日 名古屋高等裁判所 その他
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判決文本文4,273 文字)

主文 本件控訴(当審で追加した遅延損害金請求を含む)を棄却する。 。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求めた裁判 控訴の趣旨(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人は,控訴人に対し,6円及びこれに対する平成21年2月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 処分行政庁は「厚生年金保険法の一部を改正する法律の施行について」,と題する通達(昭和40年6月5日庁保発第22号)のうち,厚生年金保険法36条3項の規定により毎支払期日に支払う年金額に1円未満の端数がある場合の当該端数の取扱いについて,国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律3条の規定を適用していたものを同法2条1項を適用すると変更した部分を取り消せ。 (4) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 控訴の趣旨に対する答弁主文同旨第2事案の概要(以下,略称は原判決の表記に従い,適宜,原判決における記載箇所を示す)。 1(1) 本件は,65歳に到達した控訴人が,平成20年2月分以降の老齢厚生年金の年金額を197万8400円,老齢基礎年金の年金額を79万2100円とする裁定を処分行政庁から受けたものの,平成20年2月分から平成21年1月分までの現に支給を受けた年金額は,年6回の各支払期の支給額を計算する過程で1円未満の端数金額が切り捨てられたため,老齢厚生年金が合計197万8398円,老齢基礎年金が合計79万2096円となり,6 円の差額が生じたとして,①被控訴人に対し,上記差額6円の支払を求めるとともに,②処分行政庁に対し,厚生年金保険法36条3項の規定により毎支払期日に支払う年金額に1円未満の端数がある場合の当該端数の取扱いについて,国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律 求めるとともに,②処分行政庁に対し,厚生年金保険法36条3項の規定により毎支払期日に支払う年金額に1円未満の端数がある場合の当該端数の取扱いについて,国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律(以下「端数計算法」という)3条の規定を適用していたものを同法2条1項を適用すると。 変更した部分(本件通達。原判決2頁22行目)を取り消し,従前の扱いに戻すことを求めた事案である。 (2) 被控訴人は,①老齢厚生年金及び老齢基礎年金は,各支払期ごとに具体的な金銭支払請求権が発生するものであるから,端数計算法3条の「2以上の履行期限を定め,一定の金額に分割して履行することとされている場合」に当たらず,同法2条1項を適用して本件切捨て処理(原判決3頁19行目)を行うべきであり,そうすると,未払の年金債務は存在しない,②本件通達は,直接に一般国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定するとの法律効果が付与されているものではなく,行政事件訴訟法上の抗告訴訟の対象とならないから,本件通達の取消しを求める訴えは不適法であるとして,控訴人の請求を争った。 (3) 原審は,(ア)本件通達は抗告訴訟の対象となる行政庁の処分に当たらないからその取消しの義務付けを求める訴え(上記(1)の②)は不適法であるとして却下し,(イ)各支払期に支払う年金額は各支払期ごとに確定するのであって,1円未満の端数が生じた場合に端数計算法2条1項を適用して本件切捨て処理をしたことは違法ではないとした上,未払の年金債務は存しないとして,控訴人の差額請求(上記(1)の①)を棄却した。 控訴人は,これを不服として控訴し,差額6円のほか,当審においてこれに対する遅延損害金の支払請求を追加した。 なお,平成22年1月1日,社会保険庁が廃止され,日本年金機構法(平成19年法律第109号)に基づ ,これを不服として控訴し,差額6円のほか,当審においてこれに対する遅延損害金の支払請求を追加した。 なお,平成22年1月1日,社会保険庁が廃止され,日本年金機構法(平成19年法律第109号)に基づき同機構が設立されたことに伴い,本件に ついての処分行政庁は厚生労働大臣となった。 前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,以下のとおり当審における当事者の主張原審での主張の敷衍を含むを付加するほかは原判決事(。),「」「」,実及び理由欄の第2事案の概要1ないし3に記載のとおりであるからこれを引用する。なお,関連法令は,原判決別紙のとおりである。 (1) 控訴人の主張ア年金受給者が本件通達に拘束されているにもかかわらず,一般の国民が直接拘束されないとして,本件通達が行政庁の処分に当たらないとした原判決の判断は誤りである。 イ本件切捨て処理は,端数計算法を誤って適用した結果である。 国家公務員共済年金及び地方公務員共済年金においては,所轄官庁の通達により,4月,6月,8月,10月,12月に支給すべき端数金額を,2月に支給すべき金額に加算するとの運用が取られていることと比較しても,本件切捨て処理は違法である。 (2) 被控訴人の主張ア本件通達は,これによって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められるものではなく,控訴人の主張する不利益は,本件通達に従った端数処理がなされたことによって間接的に生じたにすぎない。 イ各支払期における受給金額は裁定によって定められた1年単位の金額を基礎として計算されるものではあるが,各支払期ごとに確定するのであって,各支払期に支払われる年金額が端数計算法にいう確定金額というほかなく,同法2条1項が適用されるべきである。 控訴人が提出する甲第7 礎として計算されるものではあるが,各支払期ごとに確定するのであって,各支払期に支払われる年金額が端数計算法にいう確定金額というほかなく,同法2条1項が適用されるべきである。 控訴人が提出する甲第7号証は,国家公務員共済年金及び地方公務員共済年金と国民年金及び厚生年金の端数処理が異なることについて,その原因が端数計算法の適用の有無にあることを説明した国会議員の答弁書であ り,本件切捨て処理が違法であることを裏付けるものではない。 第3当裁判所の判断当裁判所も,処分行政庁に対して本件通達の取消しを求める訴えは不適法であり,控訴人のその余の請求(当審において追加した遅延損害金の請求を含む)。 は理由がないと判断する。その理由は,以下のとおり,当審における控訴人の主張(原審での主張の敷衍を含む)に対する判断を付加するほかは,原判決「事。 実及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」1,2に記載のとおりであるから,これを引用する。 本件通達の取消しの義務付けを求める訴えについて抗告訴訟の対象となる行政庁の処分とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう(最高裁判所昭和37年(オ)第914号同39年1月24日第二小法廷判決・民集18巻1号113頁参照。 )原判決も指摘するように,一般に,通達は,上級行政機関が下級行政機関及び職員に対しその職務権限の行使を指揮し,職務に関して発する命令であり,たとえそれが国民の権利,義務ないし法律上の利益に関係のある事柄を内容とするものであっても,直接国民に対する法的拘束力を有するものではない。そして,本件通達に基づく本件切捨て処理により,老齢厚生年金及び老齢基礎年金の各裁定額と各受給額との間に合 関係のある事柄を内容とするものであっても,直接国民に対する法的拘束力を有するものではない。そして,本件通達に基づく本件切捨て処理により,老齢厚生年金及び老齢基礎年金の各裁定額と各受給額との間に合計6円の差額が生じていることの当否を,控訴人がその給付を求める訴えにおいて争うことができる本件においては,上記の解釈に変更を加えるべき特別の事情・必要もない。 よって,前記第2の2(1)アの控訴人の主張は,採用することができない。 本件切捨て処理の適否について厚生年金保険法及び国民年金法は,処分行政庁の裁定を経て初めて年金を受給できる旨を定めているが(厚生年金保険法33条,国民年金法16条,こ) れは,受給者が同法所定の受給権の発生要件等を満たす場合にも,給付主体である国と受給者との間の紛争を防止するなどの見地から,直ちに給付請求ができるとはせず,処分行政庁の裁定を要するものとしたと解すべきである。そして,原判決も指摘するように,実際に年金受給者に支払う際には,月単位で支給要件が判断されて年6回の各支払期に支払われることからすると,各支払期,。 ,における受給金額は各支払期ごとに確定するというべきであるそうすると各支払期に支払われる年金額が,端数計算法にいう確定金額であるということになるから,その確定金額に1円未満の端数がある場合には端数を切り捨てる旨の端数計算法2条1項を適用して行われた本件切捨て処理が違法であるということはできない。 なお,控訴人は,本件切捨て処理が国家公務員等の共済年金における端数処。 ,理と異なっていると指摘する端数処理について上記の違いが生じているのは厚生年金保険法及び国民年金法に基づく老齢厚生年金及び老齢基礎年金の場合と,国家公務員共済組合法等に基づく共済年金の場合とでは,端数計算法が適用されるか否か 数処理について上記の違いが生じているのは厚生年金保険法及び国民年金法に基づく老齢厚生年金及び老齢基礎年金の場合と,国家公務員共済組合法等に基づく共済年金の場合とでは,端数計算法が適用されるか否かが異なるからであり,仮に立法論として議論があるとしても,上記のとおり現行法上は前者には切捨て処理がなされるべき解釈上の要請があり,反対に前者について後者と同じ法律効果が生ずるようにすべき解釈上の根拠はない。 よって,前記第2の2(1)イの控訴人の主張は採用することはできない。 第4 結論 以上によれば,処分行政庁に対して本件通達の取消しを求める訴えは不適法で,(。)あり控訴人のその余の請求当審において追加した遅延損害金の請求を含むは理由がなく,これと同旨の原判決は相当であるから,本件控訴は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第1部 裁判長裁判官岡光民雄裁判官片田信宏裁判官光吉恵子

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