平成31年3月14日判決言渡平成26年(行ウ)第422号鉄道運賃上限認可取消請求事件主文 1 本件訴えをいずれも却下する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 国土交通大臣が平成26年3月4日付けで北総鉄道株式会社に対してした旅客運賃の上限変更認可処分を取り消す。 2 国土交通大臣が平成26年3月4日付けで京成電鉄株式会社に対してした同 社の成田空港線に係る旅客運賃の上限変更認可処分を取り消す。 第2 事案の概要北総鉄道株式会社(以下「北総鉄道」という。)は,北総線(京成高砂駅~印旛日本医大駅間の路線)における旅客の運送を行い,京成電鉄株式会社(以下「京成電鉄」という。)は,北総鉄道が所有する鉄道線路(京成高砂駅~小室駅 間)及び千葉ニュータウン鉄道株式会社(以下「千葉ニュータウン鉄道」という。)が所有する鉄道線路(小室駅~印旛日本医大駅間)等を使用して,成田空港線(京成高砂駅~成田空港駅の間の路線)における旅客の運送を行っているところ,平成26年4月1日から消費税率が5%から8%に引き上げられたこと(以下「平成26年消費税率引上げ」という。)に伴い,北総鉄道においては北 総線について,京成電鉄においては成田空港線についての旅客運賃の上限変更の認可をそれぞれ申請した(以下,北総鉄道による上記申請を「本件北総申請」といい,京成電鉄による上記申請を「本件京成申請」といい,両申請を併せて「本件各申請」という。)。本件各申請に対し,国土交通大臣は,鉄道事業法16条1項に基づき,いずれも平成26年3月4日付けで,旅客運賃の上限変更認可処 分(以下,本件北総申請に対する処分を「本件北総処分」,本件京成申請に対す る処分を「本件京成処分」とい 条1項に基づき,いずれも平成26年3月4日付けで,旅客運賃の上限変更認可処 分(以下,本件北総申請に対する処分を「本件北総処分」,本件京成申請に対す る処分を「本件京成処分」といい,両処分を併せて「本件各処分」という。)をした。 本件は,本件各処分の当時,北総線及び成田空港線の沿線住民であった原告らが,本件各申請に係る旅客運賃の上限が「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないもの」(鉄道事業法16条2項)になって おらず,同項に違反する違法があるなどと主張して,本件各処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定め本件に関係する鉄道事業法の定めは別紙2-1(ただし,平成11年法律第49号による改正〔以下「平成11年法改正」という。〕前のものは別紙2- 2),鉄道事業法施行規則の定めは別紙2-3,国土交通省設置法の定めは別紙2-4,運輸審議会一般規則の定めは別紙2-5,「申請事案等の処理区分について運輸審議会一般規則第13条の規定により運輸審議会が定める基準(平成25年1月15日改正後のもの)」(以下「審議会基準」という。乙31)は別紙2-6のとおりである。 国土交通大臣は,旅客運賃の上限の設定又は変更を認可する処分(鉄道事業法16条1項。以下,これらの認可を併せて「旅客運賃の上限認可」といい,これらの認可により設定又は変更された旅客運賃の上限を「上限運賃」という。)をしようとするときは,能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであるかどうかを審査しなければならない (同条2項)ところ,これを算定する方法及び手順として,「JR旅客会社,大手民鉄及び地下鉄事業者の収入原価算定要領」及び「中小民鉄事業者の収入原価算定要領」( どうかを審査しなければならない (同条2項)ところ,これを算定する方法及び手順として,「JR旅客会社,大手民鉄及び地下鉄事業者の収入原価算定要領」及び「中小民鉄事業者の収入原価算定要領」(以下,これらを併せて「収入原価算定要領」といい,後者〔乙58〕のみを指す場合は「中小民鉄算定要領」という。)が定められており,北総鉄道に係る旅客運賃の上限認可申請については,通常,中小民鉄算定 要領に従って審査することとされている。 中小民鉄算定要領の内容は別紙3のとおりである。 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 北総線及び成田空港線の線路使用状況等について(別紙4〔乙5〕参照) ア北総線の線路使用状況等(乙22の1~2,乙23)北総鉄道は,京成電鉄の子会社であり,北総線(京成高砂駅~印旛日本医大駅の区間。〔以下「北総線区間」という。〕)において,主に各駅に停車する列車を運行している。 北総鉄道は,北総線区間のうち,京成高砂駅~小室駅の区間について は,自らが敷設した鉄道線路を使用して鉄道による旅客の運送を行う第一種鉄道事業(鉄道事業法2条2項)を営む一方,小室駅~印旛日本医大駅の区間については,千葉ニュータウン鉄道(第三種鉄道事業者〔同条4項〕であり,京成電鉄の100パーセント子会社)が保有する鉄道線路を使用して鉄道による旅客の運送を行う第二種鉄道事業(同条3項)を営ん でいる(以下,後者の区間を「千葉ニュータウン鉄道区間」という。)。 イ成田空港線の線路使用状況等(乙23,乙24の1~3)京成電鉄は,成田空港線(京成高砂駅~成田空港駅の区間の路線。なお,通称は「成田スカイアクセス線」である。)におい 区間」という。)。 イ成田空港線の線路使用状況等(乙23,乙24の1~3)京成電鉄は,成田空港線(京成高砂駅~成田空港駅の区間の路線。なお,通称は「成田スカイアクセス線」である。)において,アクセス特急(上記区間のうち8駅に停車する特別急行料金の不要な列車)及びスカイ ライナー(京成本線京成上野駅を出発して,日暮里駅に停車し,北総線区間を通過して,空港第2ビル駅に停車し,成田空港駅に至る〔往復を含む。〕,特別急行料金の必要な列車)を運行している。 京成電鉄は,成田空港線に係る京成高砂駅~成田空港駅の区間について,以下の4社が保有する鉄道線路を使用して鉄道による旅客の運送を行 う第二種鉄道事業を営んでいる。 (ア) 京成高砂駅~小室駅の区間につき,北総鉄道(第一種鉄道事業者)(イ) 小室駅~印旛日本医大駅の区間につき,千葉ニュータウン鉄道(第三種鉄道事業者)(ウ) 印旛日本医大駅から成田空港高速鉄道線(後記(エ))との接続点までの区間につき,成田高速鉄道アクセス株式会社(第三種鉄道事業者) (エ) 成田高速鉄道アクセス線(上記(ウ))との接続点から成田空港駅までの区間につき,成田空港高速鉄道株式会社(第三種鉄道事業者)ウ北総線及び成田空港線と他の路線との相互直通運転(乙25,26の1~2)相互直通運転は,2社以上の鉄道事業者間において,一方の事業者が第 一種鉄道事業又は第二種鉄道事業を経営している区間を,他方の事業者の所有する車両が走行する仕組みである。 北総鉄道は,京成電鉄等と相互直通運転を実施しており,北総鉄道の車両は,北総線区間(印旛日本医大駅~京成高砂駅)から京成本線(京成高砂駅~青砥駅)及び京成押上線(青砥駅~押上駅)を経由し である。 北総鉄道は,京成電鉄等と相互直通運転を実施しており,北総鉄道の車両は,北総線区間(印旛日本医大駅~京成高砂駅)から京成本線(京成高砂駅~青砥駅)及び京成押上線(青砥駅~押上駅)を経由して,都営浅草 線(押上駅~西馬込駅)等に乗り入れている。なお,北総鉄道の車両は,印旛日本医大駅より東方に延びる同駅から成田空港駅までの区間は走行しておらず,印旛日本医大駅が北総線の終点となっている。 (2) 原告らによる北総線の利用状況等ア原告A,B及びCは,いずれも原告Dの息子であり,平成26年3月4 日(本件各処分の日)当時,千葉県α市(以下「α市」という。)内で同居していた(甲8)。 イ原告Dの長男である原告A(平成5年▲月▲日生)は,平成25年4月,E大学に入学し,平成26年3月4日当時,通学定期券を利用して北総線F駅から北総線,京成押上線,都営浅草線及び総武線を経由してG駅 まで通っていた(甲9の1~2,甲10,42の1~3)。 原告Aは,平成30年3月にE大学を卒業した後,東京都内の会社に就職し,平日は会社の寮(東京都新宿区内に会社が借り上げているマンション)に居住し,週末はα市内の実家(肩書住所地)に戻り,原告Dが同市内で経営する英語塾(以下「本件塾」という。)の講師を務めるなどしており,そのために,1か月に4~8回程度,北総線を利用してい る(甲72,弁論の全趣旨)。 ウ原告Dの二男であるB(平成5年▲月▲日生。原告Aの双子の弟である。)は,平成25年4月,H大学に入学し,平成26年3月4日当時,通学定期券を利用して北総線F駅から北総線,京成押上線等を経由してI駅まで通っていた(甲11,41の1~3) 。 なお,Bは,原告らとともに本件訴えを提起したが,平成30年3 3月4日当時,通学定期券を利用して北総線F駅から北総線,京成押上線等を経由してI駅まで通っていた(甲11,41の1~3) 。 なお,Bは,原告らとともに本件訴えを提起したが,平成30年3月6日付け取下書により自らの訴えを取り下げた。 エ原告Dは,平成23年にα市議会議員に当選し,平成25年頃からα市内で本件塾を経営している(甲72)。なお,原告らの主張によれば,原告Dは,①1か月に3回程度,本件塾で使用する教材の選定や購入のため 東京都内の書店に赴き,②1か月に1~2回程度,本件塾のチラシをポスティングするためにJ駅やK駅に赴き,③1か月に1~2回程度,市議会議員の活動のために移動するが,これら①~③の際に北総線を利用しているとされ,また,原告A及びBの通学定期券代の一部を負担していたとされている。 オ原告Dの三男であるC(平成16年▲月▲日生)は,平成29年4月に千葉県β市内にあるL中学校に入学し,通学定期券を利用して北総線F駅からK駅を経由してM駅まで通っている(甲72,弁論の全趣旨)。 なお,原告らの主張によれば,原告Dは,Cの通学定期券代を負担し,自らも1か月に1回程度,同中学校のPTA活動のために北総線を利用 しているとされている。 (3) 本件各認可処分に至る経緯等ア(ア) 運輸大臣は,平成10年9月4日付けで,北総鉄道に対し,旅客運賃変更認可処分をした(以下「平成10年北総認可処分」という。乙56)。 (イ) 京成電鉄は,平成22年7月17日から成田空港線(成田スカイ アクセス線)の運行を開始した。 成田空港線のアクセス特急が停車する8駅のうち,北総線区間の5駅(京成高砂,東松戸,新鎌ケ谷,千葉ニュータウン中央,印旛日本医大の各駅。以下「北総線内京成停車 アクセス線)の運行を開始した。 成田空港線のアクセス特急が停車する8駅のうち,北総線区間の5駅(京成高砂,東松戸,新鎌ケ谷,千葉ニュータウン中央,印旛日本医大の各駅。以下「北総線内京成停車駅」という。)においては,北総鉄道の車両(各駅停車)及び京成電鉄の車両(アクセス特急)の双方が停車 することから,旅客がどちらの列車に乗車したのかを把握することが困難となる。そのため,北総鉄道及び京成電鉄は,平成21年12月16日,北総鉄道の所有する鉄道線路に係る使用条件につき,「北総線における京成電鉄株式会社の旅客運輸営業及び線路の使用等に関する基本協定」を締結し,これに基づく鉄道線路の使用条件の設定についての認可 申請をした。上記基本協定には,運賃収入の帰属についての合意(以下「本件運賃帰属合意」という。例えば,北総線内で京成電鉄の列車が停車しない駅〔新柴又,矢切,北国分,秋山,松飛台,大町,西白井,白井,小室及び印西牧の原の各駅。以下「北総単独駅」 という。〕相互間の発着旅客及び北総単独駅と北総線内京成停車駅相互間の発着旅客に ついては,全て北総鉄道の帰属とされる。)や,京成電鉄が北総鉄道に支払う線路使用料に係る合意が含まれている(鉄道事業法15条1項参照,乙7,27,28)。 国土交通大臣は,平成22年2月19日付けで,上記申請のとおり使用条件の設定につき認可するとともに,京成電鉄に対し,成田空港線に 係る旅客運賃の上限設定認可処分をした(乙29,57)。 北総線区間に係る成田空港線の旅客運賃は,北総線の旅客運賃と同額に設定された(弁論の全趣旨)。 イ平成24年8月22日,消費税率を5%から8%へ引き上げることを定める「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法 の旅客運賃と同額に設定された(弁論の全趣旨)。 イ平成24年8月22日,消費税率を5%から8%へ引き上げることを定める「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」(平成24年法律第68号)が制 定され,平成26年4月1日から施行された(乙8,平成26年消費税率引上げ)。 上記法律の制定を踏まえ,国土交通省は,平成25年10月29日,「公共交通事業における消費税の運賃・料金への転嫁の方法に関する基本的な考え方」を定め,消費税率引上げ相当分について事業者の運賃等 の改定申請がされた場合には,運賃等への転嫁を基本として対処することとするとともに,改定申請手続に関する運用をできる限り簡素化するなど,事業者の負担の軽減を図ることとした。そして,国土交通省鉄道局は,同日,「消費税率の引上げに伴う鉄軌道事業の旅客運賃等の変更に関する処理方針」(以下「本件処理方針」という。)を定め,旅客運賃等 の変更による増収割合が事業全体として105分の108以内であることを前提に,消費税率引上げ相当分の転嫁のみを理由として旅客運賃等の上限変更認可を申請する場合には,収入原価算定要領を適用しないこととした。(乙11,12)ウ本件北総処分 (ア) 北総鉄道は,平成25年12月19日,関東運輸局を経由して,国土交通大臣に対し,北総線について,平成26年消費税率引上げに伴う引上げ相当分を運賃に転嫁することを理由として,旅客運賃の上限変更認可を申請した(本件北総申請,乙13)。 (イ) 国土交通大臣は,平成26年3月4日,本件処理方針に従い,本件 北総申請が平成26年消費税率引上げに伴う引上げ相当分の転嫁のみを 理由とし,上限運賃の変更がその範囲内 (イ) 国土交通大臣は,平成26年3月4日,本件処理方針に従い,本件 北総申請が平成26年消費税率引上げに伴う引上げ相当分の転嫁のみを 理由とし,上限運賃の変更がその範囲内であることを確認した上で,①改定内容に関し,利用者への分かりやすく丁寧な説明に努めること,②1円単位運賃の導入に当たっては,1円単位運賃と10円単位運賃を利用者にとって分かりやすい方法で表示することを条件として,本件北総申請のとおり認可する旨の旅客運賃上限変更認可処分をした(本件北総 処分,乙14)。 (ウ) 北総鉄道は,平成26年3月7日,鉄道事業法16条3項に基づき,上記(イ)の認可による上限運賃の範囲内で旅客運賃を変更する旨の届出をし,さらに,同年12月19日にも,同項に基づき,上記の範囲内で旅客運賃の変更をする旨の届出をした(乙15,20)。 エ本件京成処分(ア) 京成電鉄は,平成25年12月19日,関東運輸局を経由して,国土交通大臣に対し,成田空港線について,平成26年消費税率引上げに伴う引上げ相当分を運賃に転嫁することを理由として,旅客運賃の上限変更認可を申請した(本件京成申請,乙17)。 (イ) 国土交通大臣は,平成26年3月4日,本件処理方針に従い,本件京成申請が平成26年消費税率引上げに伴う引上げ相当分の転嫁のみを理由とし,上限運賃の変更がその範囲内であることを確認した上で,①改定内容に関し,利用者への分かりやすく丁寧な説明に努めること,②1円単位運賃の導入に当たっては,1円単位運賃と10円単位運賃を利 用者にとって分かりやすい方法で表示することを条件として,本件京成申請のとおり認可する旨の旅客運賃上限変更認可処分をした(本件京成処分,乙18)。 (ウ) 京成電鉄 10円単位運賃を利 用者にとって分かりやすい方法で表示することを条件として,本件京成申請のとおり認可する旨の旅客運賃上限変更認可処分をした(本件京成処分,乙18)。 (ウ) 京成電鉄は,平成26年3月7日,鉄道事業法16条3項に基づき,上記(イ)の認可による上限運賃の範囲内で旅客運賃を変更する旨の届出 をした(乙19)。 オ国土交通大臣は,平成26年5月23日,運輸審議会一般規則13条に基づき,運輸審議会に対し,本件各処分をした旨通知した(乙16)。 (4) 本件訴えの提起等ア原告ら及びBは,平成26年9月3日,本件訴えを提起した。 イ原告A及びBはいずれも平成25年4月に大学に入学したものであると ころ,入学から4年を経過する平成29年5月の時点ではいずれも大学に在学中であるとして,各大学長の発行する在学証明書等(甲41及び42〔枝番を含む。〕)を同年7月27日の本件第14回口頭弁論期日において提出した。当裁判所は,同年9月27日の進行協議期日において,今後の主張立証の予定について双方当事者に確認するとともに,原告A及びB の大学卒業予定時期との関係で,平成29年度内の審理終結を希望するか否かの意向も併せて尋ねたところ,原告ら及びBは,同年10月12日の本件第15回口頭弁論期日において,平成29年度内の審理終結は特に希望しない旨の回答をした(当裁判所に顕著な事実)。 ウその後,Bは,平成30年3月6日に訴えを取り下げたが,原告Aは訴 訟を維持し,同日の本件第17回口頭弁論期日において,自身の通学定期券に係る費用を一部負担して北総線を反復継続して日常的に利用しているから原告適格を有する旨を記載した原告第10準備書面を陳述した。 ところが,原告Aは,平成30年3月に大学を卒 いて,自身の通学定期券に係る費用を一部負担して北総線を反復継続して日常的に利用しているから原告適格を有する旨を記載した原告第10準備書面を陳述した。 ところが,原告Aは,平成30年3月に大学を卒業し,その後は東京都内の会社に就職し,平日は会社の寮に寝泊まりしていたものであり(前 提事実(2)イ),かかる事実は,原告D作成に係る同年5月24日付け陳述書(甲72。同年7月5日の本件第19回口頭弁論期日において提出された。)によって,本件訴訟上初めて明らかにされた。 3 争点(1) 原告適格の有無(本案前の争点) (2) 本件各処分の適法性(本案の争点) これらの争点に関する当事者の主張の要旨は別紙5のとおりである。なお,同別紙で使用した略語は本文においても用いる。 第3 当裁判所の判断当裁判所は,原告らは,いずれも,本件各処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有していると認めることができず,本件訴えについて原告適格を欠くも のというべきであるから,本件訴えは不適法なものとしていずれも却下すべきであると判断する。その理由の詳細は次のとおりである。 1 行政事件訴訟法9条は,取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然 的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され るにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれの ある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。そして,処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を 考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項,最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年12月7日大法 廷判決・民集59巻10号2645頁参照)。 2 上記の見地に立って,原告らが本件各処分の取消しを求める原告適格を有するか否かについて検討する。 (1) 鉄道事業法は,鉄道事業等の運営を適正かつ合理的なものとすることにより,輸送の安全を確保し,鉄道等の利用者の利益を保護するとともに,鉄道事業等の健全な発達を図り,もって公共の福祉を増進することを目的とし (1条),鉄道事業について国土交通大臣を許可権者とする許可制を採り(3条1項),許可の要件として,その事業の計画が経営上適切なものであることを定め(5条1項1号),許可申請書には,予定する路線,経営しようとする鉄道事業の種別(第一種 を許可権者とする許可制を採り(3条1項),許可の要件として,その事業の計画が経営上適切なものであることを定め(5条1項1号),許可申請書には,予定する路線,経営しようとする鉄道事業の種別(第一種鉄道事業,第二種鉄道事業又は第三種鉄道事業。2条参照)等のほか,鉄道事業の種別ごとに,国土交通省令で定める 鉄道の種類,施設の概要,計画供給輸送力その他の国土交通省令で定める事業の基本となる事項に関する計画を記載し,事業収支見積書その他国土交通省令で定める書類を添付しなければならないと定めている(4条1項,2項)。また,鉄道事業法は,鉄道運送事業者において,旅客運賃等の上限を定め,国土交通大臣の認可を受けなければならず,これを変更しようとする ときも同様とすること(16条1項),国土交通大臣において認可をしようとするときは,能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであるかどうかを審査しなければならないこと(同条2項)を定めている。 鉄道は,人や荷物を大量,高速,定時に輸送する公共交通機関として,我 が国において重要な地位を占めており,特に,都市圏等で通勤や通学等をする者にとっては,居住地から職場や学校等まで徒歩や車両により移動することが可能な場合を除き,これらに日々通うために不可欠な移動手段となっている。上記のとおり,鉄道事業法が,鉄道事業の許可を受ける際に,事業の計画が経営上適切なものであることを要するものとしているのみならず,旅 客運賃等の上限を定める際,又はこれを変更する際にも国土交通大臣の認可 を受けなければならないとし,国土交通大臣がその認可をするに当たっては能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであるかどうかを審査しなければな 臣の認可 を受けなければならないとし,国土交通大臣がその認可をするに当たっては能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであるかどうかを審査しなければならないと定めているのは,鉄道事業が上記のとおり公共交通事業としての性格を有すること及びその我が国における重要な地位に鑑み,事業の健全な発達を図ることが必要とされるほか, 通勤や通学等のために日々鉄道を利用する者を始めとする多くの利用者にとって,旅客運賃額がその生活上の利益に影響を及ぼすことから,鉄道利用者の利益を保護する(1条)ために,新たに鉄道事業を開始する場合ばかりでなく,旅客運賃額を定める場合についても,国土交通大臣による旅客運賃の上限認可を要することとして事前に規制する趣旨であると解される。 (2)アところで,鉄道事業法の制定以前は,鉄道国有法,日本国有鉄道法,国有鉄道運賃法及び地方鉄道法が鉄道事業について規制をしていたところ,日本国有鉄道が昭和60年代に民営化され,鉄道事業に関する一元的な法制度を整備するために昭和61年に鉄道事業法が新たに制定された。同法は,目的規定(1条)に,「鉄道事業等の健全な発達」とともに「利用者 の利益の保護」を掲げ,平成11年法改正の前は,旧16条1項において,旅客運賃等の設定及び変更について運輸大臣の認可を受けなければならないと規定するとともに,同条2項3号において,「旅客又は貨物の運賃及び料金を負担する能力にかんがみ,旅客又は荷主が当該事業を利用することを困難にするおそれがないものであること」を認可の要件として定めて いた(別紙2-2)。他方, 現行の鉄道事業法16条1項には,かかる要件が定められていないところ,これは,平成11年法改正により,認可の対象が旅客運賃等そのも こと」を認可の要件として定めて いた(別紙2-2)。他方, 現行の鉄道事業法16条1項には,かかる要件が定められていないところ,これは,平成11年法改正により,認可の対象が旅客運賃等そのものではなく旅客運賃の上限の設定及び変更とされたことに伴うものであって,上記(1)のとおり,多くの鉄道利用者にとって旅客運賃額がその生活上の利益に影響を及ぼすという点では改正前 と異なるものではなく,旅客運賃の上限認可を通じて鉄道利用者の利益を 保護しようとするものであると解されるのであるから,鉄道事業法は,認可の対象が変わったことにより,利用者の負担能力に鑑みて当該事業を利用することを困難にするおそれが生じることを容認するものではないというべきである。また,現行の鉄道事業法23条1項1号は,国土交通大臣は鉄道事業者の事業について利用者の利便を阻害している事実があると認 めるときは,当該事業者に対し旅客運賃等の上限を変更することを命ずることができる旨を定めており,この規定に鑑みると,国土交通大臣は,旅客運賃の上限認可がされた後に上記事実が判明した場合に上記の変更命令ができるだけでなく,上限認可をしようとするときに,上記事実(又はそのおそれ)が判明した場合にも,認可を拒否することができるというべき である。そうすると,旅客運賃の上限の認可申請に対する国土交通大臣による審査は,このような観点からも行われるものということができる。 イまた,国土交通大臣が鉄道事業法16条1項に基づき旅客運賃の上限認可をしようとするときは,運輸審議会に諮らなければならないとされ(同法64条の2第1号),同審議会は,付議事項について必要があると認め るときは公聴会を開くことができ,同審議会の定める利害関係人の請求があったときは公聴会 議会に諮らなければならないとされ(同法64条の2第1号),同審議会は,付議事項について必要があると認め るときは公聴会を開くことができ,同審議会の定める利害関係人の請求があったときは公聴会を開かなければならないとされている(国土交通省設置法15条1項,23条)ところ,運輸審議会一般規則5条6号は,上記の利害関係人として,「運輸審議会が当該事案に関し特に重大な利害関係を有すると認める者」と規定している。この点,国土交通大臣から権限の 委任を受けた地方運輸局長が,旅客運賃の上限認可をしようとするに当たっても,利害関係人の申請があったときは利害関係人又は参考人の出頭を求めて意見を聴取しなければならない(鉄道事業法65条1項,2項)ところ,鉄道事業法施行規則は,その場合の利害関係人として,認可の申請者及び申請者と競争関係にある者に加えて,「利用者その他のうち地方 運輸局長が当該事案に関し重大な利害関係を有すると認める者」(73条 3号)を定め,利害関係人の選定に関して「利用者」を特に例示しているのであり,このことに鑑みれば,同じ旅客運賃の上限認可に係る手続である運輸審議会の公聴会の開催の請求をすることができる利害関係人の選定についても,「利用者」が含まれると解するのが相当である。したがって,運輸審議会や地方運輸局長が当該事案に関し,特に重大な利害関係を有す ると認める利用者は,公聴会の開催の請求や意見聴取の申請による手続関与の機会が与えられているといえる。 ウ以上によれば,旅客運賃の上限認可に関する鉄道事業法の規定は,違法な上限認可によって鉄道利用者の利便を阻害するような旅客運賃の上限の設定又は変更がされることによって,鉄道利用者の生活上の利益が 不当に害されることを防止し,もって鉄道利用者の利 規定は,違法な上限認可によって鉄道利用者の利便を阻害するような旅客運賃の上限の設定又は変更がされることによって,鉄道利用者の生活上の利益が 不当に害されることを防止し,もって鉄道利用者の利益を保護することも,その趣旨及び目的とするものと解される。 そして,違法な旅客運賃の上限認可によって鉄道利用者の利便を阻害するような旅客運賃の上限の設定又は変更がされることにより,鉄道利用者が直接的に受ける被害の程度は,その利用者が当該鉄道を利用する 目的や,反復・継続して利用する頻度・期間によっては,その生活上の利益に係る著しい被害を受ける事態にも至りかねないものであり,例えば,職場に通勤できないことによって雇用の機会を失うことや,学校に通学できないことによって教育を受ける機会を失うことにつながりかねないものである。そして,かかる被害の内容,性質,程度等に照らせば, 上記の被害を受けない利益は,一般的公益の中に吸収解消させることが困難なものというべきである。 (3) 以上のような旅客運賃の上限認可に関する鉄道事業法の規定の趣旨及び目的,これらの規定が同認可の制度を通して保護しようとしている利益の内容及び性質を考慮すれば,同法は,これらの規定を通じて,鉄道事業等 の健全な発達を図るなどの公益的見地から旅客運賃の上限を規制するとと もに,利用者の利便を阻害するような旅客運賃の上限の設定又は変更がされることによりその生活上の利益に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある個々の鉄道利用者に対して,そのような被害を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当である。 したがって,鉄道利用者のうち,違法な旅客運賃の上限認可によって利用者の利便を阻害するような旅 という利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当である。 したがって,鉄道利用者のうち,違法な旅客運賃の上限認可によって利用者の利便を阻害するような旅客運賃等の上限の設定又は変更がされた場合にその生活上の利益に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は,当該認可処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。 3(1) 特定の鉄道利用者が,違法な旅客運賃の上限認可によって利用者の利便を害するような旅客運賃の上限の設定又は変更がされた場合にこれにより生活上の利益に係る著しい被害を直接的に受けるおそれがある者に当たるか否かは,当該利用者の鉄道の利用目的,反復・継続して利用する頻度・期間等の利用状況を中心として,社会通念に照らし,合理的に判断すべきものであ るところ,通勤や通学のために定期券を購入するなどして日常的に当該鉄道を利用している者は,上記のおそれがある者に当たるというべきである。 (2) 原告Aは,本件各処分がされた当時から平成30年3月までは,北総線に係る通学定期券を購入し,大学への通学のために北総線を日常的に利用していたことが認められ,上記(1)のおそれがある者に当たるものであったと 解される。 しかし,原告Aは,前提事実(2)イのとおり,平成30年3月に大学を卒業し,その後東京都内の会社に就職し,平日は東京都新宿区内にある会社の寮に居住しているというのであるから,通勤や通学のために定期券を購入している者には当たらない。また,週末等に実家や自身が講師を務める本件塾 に訪れるため北総線又は成田空港線を利用することがあるものの,その頻度 は1か月に4~8回程度にすぎないという ている者には当たらない。また,週末等に実家や自身が講師を務める本件塾 に訪れるため北総線又は成田空港線を利用することがあるものの,その頻度 は1か月に4~8回程度にすぎないというのであるから,日常的に北総線又は成田空港線を利用しているものと認めることもできない。したがって,原告Aについて本件各処分の取消しを求める法律上の利益は同年4月以降消滅したというべきであるから,原告Aは,本件訴えについて原告適格を有しないと解すべきである。 (3) 原告Dについては,同原告の陳述書(甲72)によっても,書店を訪ねたり,本件塾のチラシのポスティングをするなどの個別の目的のために北総線又は成田空港線を利用しているにとどまり,通勤や通学のために定期券を購入している者には当たらず,しかも,その利用頻度は,原告Aの上記利用頻度(1か月に多くて8回程度)よりも多いとはいえない(前提事実(2)エ 参照)というのであるから,日常的に北総線又は成田空港線を利用しているものと認めることもできない。したがって,原告Dは,本件各処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有すると解することはできず,本件訴えについて原告適格を有しないというべきである。 なお,原告Dは,本件各処分の当時は息子である原告A及びBの通学定期 券代の一部を負担し,本件口頭弁論終結時においては,Cの通学定期券代を負担しているから本件各処分の取消しを求める法律上の利益を有するとも主張するが,いずれも北総線に係る通学定期券を利用して通学するのは上記息子らであり,原告D自身が生活上の利益に係る著しい被害を直接的に受けるおそれがある者に当たると認めることはできない。したがって,原告Dの上 記主張は採用することができない。 第4 結論以上の次第で,本件訴えは, 生活上の利益に係る著しい被害を直接的に受けるおそれがある者に当たると認めることはできない。したがって、原告Dの上記主張は採用することができない。 主文 以上の次第で、本件訴えはいずれも不適法であるからこれらを却下することとして、主文のとおり判決する。 理由 東京地方裁判所民事第51部 裁判長裁判官清水知恵子 裁判官村松悠史 裁判官松長一太(別紙1省略) (別紙4省略) (別紙2-1) ○ 鉄道事業法 (目的) 第一条 この法律は、鉄道事業等の運営を適正かつ合理的なものとすることにより、輸送の安全を確保し、鉄道等の利用者の利益を保護するとともに、鉄道事業等の健全な発達を図り、もって公共の福祉を増進することを目的とする。 (定義) 第二条 この法律において「鉄道事業」とは、第一種鉄道事業、第二種鉄道事業及び第三種鉄道事業をいう。 この法律において「第一種鉄道事業」とは、他人の需要に応じ、鉄道(軌道法(大正十年法律第七十六号)による軌道及び同法が準用される軌道に準ずべきものを除く。 応じ、鉄道(軌道法(大正十年法律第七十六号)による軌道及び同法が準用される軌道に準ずべきものを除く。 以下同じ。 )による旅客又は貨物の運送を行う事業であつて、第二種鉄道事業以外のものをいう。 この法律において「第二種鉄道事業」とは、他人の需要に応じ、自らが敷設する鉄道線路(他人が敷設した鉄道線路であつて譲渡を受けたものを含む。 )以外の鉄道線路を使用して鉄道による旅客又は貨物の運送を行う事業をいう。 この法律において「第三種鉄道事業」とは、鉄道線路を第一種鉄道事業を経営する者に譲渡する目的をもつて敷設する事業及び鉄道線路を敷設して当該鉄道線路を第二種鉄道事業を経営する者に専ら使用させる事業をいう。 ~ (略) (許可) 第三条 鉄道事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。 鉄道事業の許可は、路線及び鉄道事業の種別(前条第一項の鉄道事業の種別をいう。 なければならない。 鉄道事業の許可は、路線及び鉄道事業の種別について行う。 (許可申請) 第四条 鉄道事業の許可を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を国土交通大臣に提出しなければならない。 一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名 二 予定する路線 三 経営しようとする鉄道事業の種別 四~五(略) 六 鉄道事業の種別ごとに、国土交通省令で定める鉄道の種類、施設の概要、計画供給輸送力その他の国土交通省令で定める事業の基本となる事項に関する計画(以下「事業基本計画」という。) 七~十(略) その事業の開始のための工事の要否 前項の申請書には、事業収支見積書その他国土交通省令で定める書類を添付しなければならない。 (許可基準) 第五条 国土交通大臣は、鉄道事業の許可をしようと 添付しなければならない。 (許可基準) 第五条 国土交通大臣は、鉄道事業の許可をしようとするときは、次の基準に適合するかどうかを審査して、これをしなければならない。 一 その事業の計画が経営上適切なものであること。 二 その事業の計画が輸送の安全上適切なものであること。 三 前二号に掲げるもののほか、その事業の遂行上適切な計画を有するものであること。 四 その事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであること。 (鉄道線路の使用等) 第十五条 第一種鉄道事業者及び第三種鉄道事業の許可を受けた者(以下「第三種鉄道事業者」という。)は、許可を受けた路線に係る鉄道線路を第二種鉄道事業者に使用させようとするときは、使用料その他の国土交通省令で定める使用条件について、国土交通大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。 条件について、国土交通大臣の認可を受けなければならない。 これを変更しようとするときも、同様とする。 (略) 国土交通大臣は、前二項に規定する使用条件又は譲渡条件が、鉄道事業の適正な運営の確保に支障を及ぼすおそれがあると認める場合を除き、前二項の認可をしなければならない。 (旅客の運賃及び料金) 第十六条 鉄道運送事業者は、旅客の運賃及び国土交通省令で定める旅客の料金(以下「旅客運賃等」という。 )の上限を定め、国土交通大臣の認可を受けなければならない。 これを変更しようとするときも、同様とする。 国土交通大臣は、前項の認可をしようとするときは、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであるかどうかを審査して、これをしなければならない。 鉄道運送事業者は,第 項の認可を受けた旅客運賃等の上限の範囲内で旅客運賃等を定め,あらかじめ,その旨を国土交通大臣 は、第 項の認可を受けた旅客運賃等の上限の範囲内で旅客運賃等を定め、あらかじめ、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。 国土交通大臣は、第三項の旅客運賃等又は前項の旅客の料金が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、当該鉄道運送事業者に対し、期限を定めてその旅客運賃等又は旅客の料金を変更すべきことを命ずることができる。 一 特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき。 二 他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき。 (事業改善の命令) 第二十三条 国土交通大臣は、鉄道事業者の事業について輸送の安全、利用者の利便その他公共の利益を阻害している事実があると認めるときは、鉄道事業者に対し、次に掲げる事項を命ずることができる。 一 旅客運賃等の上限若しくは旅客の料金(第十六条第一項及 対し、次に掲げる事項を命ずることができる。 一 旅客運賃等の上限若しくは旅客の料金(第十六条第一項及び第四項に規定するものを除く。)又は貨物の運賃若しくは料金を変更すること。 二~七(略) ~ (略) (運輸審議会への諮問) 第六十四条の二 国土交通大臣は、次に掲げる処分等をしようとするときは、運輸審議会に諮らなければならない。 一 第十六条第一項の規定による旅客運賃等の上限の認可 二~四(略) (意見の聴取) 第六十五条 地方運輸局長は、第六十四条の規定により、旅客運賃等の上限に関する認可に係る事項がその権限に属することとなった場合において、(別紙2-1) 当該事項について必要があると認めるときは、利害関係人又は参考人の出頭を求めて意見を聴取することができる。 地方運輸局長は、その権限に属する前項に規定する事項について利害関係人の申請があったときは、利害関係人又は参考人の出頭を求 権限に属する前項に規定する事項について利害関係人の申請があったときは、利害関係人又は参考人の出頭を求めて意見を聴取しなければならない。 (略) (別紙2-2) ○ 鉄道事業法(平成一一年法律第四九号による改正前のもの) (目的) 第一条 この法律は、鉄道事業等の運営を適正かつ合理的なものとすることにより、鉄道等の利用者の利益を保護するとともに、鉄道事業等の健全な発達を図り、もって公共の福祉を増進することを目的とする。 (運賃及び料金) 第十六条 鉄道運送事業者は、旅客又は貨物の運賃及び料金(・・・(略)・・・)を定め、運輸大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。 運輸大臣は、前項の認可をしようとするときは、次の基準によって、これをしなければならない。 一 能率的な経営の下における適正な原価を償い るときは,次の基準によって,これをしなければならない。 一 能率的な経営の下における適正な原価を償い,かつ,適正な利潤を含むものであること。 二 特定の旅客又は荷主に対し不当な差別的取扱いをするものでないこと。 三 旅客又は貨物の運賃及び料金を負担する能力にかんがみ,旅客又は荷主が当該事業を利用することを困難にするおそれがないものであること。 四 他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすこととなるおそれがないものであること。 (別紙2-3) ○ 鉄道事業法施行規則 (旅客運賃等の上限の認可申請) 第三十二条(略) 法第十六条第一項の規定により旅客運賃等の上限の設定又は変更の認可を申請しようとする者は、次に掲げる事項を記載した運賃(料金)上限設定(変更)認可申請書を提出しなければならない。 一 氏名又は名称及び住所 二 設定し、 (料金)上限設定(変更)認可申請書を提出しなければならない。 一 氏名又は名称及び住所 二 設定し、又は変更しようとする旅客運賃等の上限を適用する路線 三 設定し、又は変更しようとする旅客運賃等の上限の種類、額及び適用方法(変更の認可申請の場合には、新旧の対照を明示すること。) 四 変更の認可申請の場合には、変更を必要とする理由 前項の申請書には、原価計算書その他の旅客運賃等の上限の額の算出の基礎を記載した書類を添付しなければならない。 (略) (旅客運賃等の届出) 第三十三条 法第十六条第三項の規定により旅客運賃等の設定又は変更の届出をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した運賃(料金)設定(変更)届出書を提出しなければならない。 一 氏名又は名称及び住所 二 設定し、又は変更しようとする旅客運賃等の種類、額及び適用方法(変更の届出の場合には、新旧の対照を明示すること。) ようとする旅客運賃等の種類、額及び適用方法(変更の届出の場合には、新旧の対照を明示すること。) 三 適用する期間又は区間その他の条件を付す場合には、その条件 (権限の委任) 第七十一条 法及びこの省令に規定する国土交通大臣の権限で次に掲げるものは、地方運輸局長に委任する。 一~五(略) 六 法第十六条第一項の認可であって次に掲げるもの イ 前号イの告示で定める鉄道事業者の旅客運賃等に係るもの ロ イに掲げるもののほか、普通旅客運賃、定期旅客運賃その他の基本的な旅客の運賃(旅客の運送に係る路線の長さ、直通運輸の実施の状況等を考慮して国土交通大臣が告示で定める鉄道事業者(以下「特定旅客鉄道事業者」という。)にあっては、普通旅客運賃、定期旅客運賃、特別急行料金その他の基本的な旅客運賃等)に係るもの(軽微なものを除く。)以外のもの 七~十六(略) (略) 第七十三条 法第六十五条第一項及 もの(軽微なものを除く。)以外のもの 七~十六(略) (略) 第七十三条 法第六十五条第一項及び第二項の利害関係人(以下第七十五条までにおいて「利害関係人」という。)とは、次のいずれかに該当する者をいう。 一 鉄道事業における基本的な旅客運賃等の上限に関する認可の申請者 二 第一号の申請者と競争の関係にある者 三 利用者その他の者のうち地方運輸局長が当該事案に関し特に重大な利害関係を有すると認める者 (別紙2-4) ○ 国土交通省設置法 (所掌事務等) 第十五条 運輸審議会は、鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)、軌道法(大正十年法律第七十六号)、都市鉄道等利便増進法(平成十七年法律第四十一号)、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(平成十七年法律第八十五号)、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律(平成十九年法律第五十九号)、都市の低炭素化の促進に関する法律(平成二十 の活性化及び再生に関する法律(平成十九年法律第五十九号)、都市の低炭素化の促進に関する法律(平成二十四年法律第八十四号)、道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)、貨物自動車運送事業法(平成元年法律第八十三号)、特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法(平成二十一年法律第六十四号)、海上運送法、内航海運業法(昭和二十七年法律第百五十一号)、内航海運組合法(昭和三十二年法律第百六十二号)、港湾運送事業法(昭和二十六年法律第百六十一号)、港湾法及び航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)の規定により同審議会に諮ることを要する事項のうち国土交通大臣の行う処分等に係るものを処理する。 (略) 第一項に規定する事項に係る処分等及び前項に規定する裁決(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第四号に規定する不利益処分(以下「不利益処分」とい る裁決(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第四号に規定する不利益処分(以下「不利益処分」という。)を除く。)のうち、運輸審議会が軽微なものと認めるものについては、国土交通大臣は、運輸審議会に諮らないでこれを行うことができる。 (公聴会) 第二十三条 運輸審議会は、第十五条第一項に規定する事項及び同条第二項の規定により付議された事項については、必要があると認めるときは、公聴会を開くことができ、又は国土交通大臣の指示若しくは運輸審議会の定める利害関係人の請求があったときは、公聴会を開かなければならない。 (政令への委任) 第二十六条 この款に定めるもののほか、運輸審議会の組織、委員その他の職員その他運輸審議会に関し必要な事項は、政令で定める。 (別紙2-5) ○ 運輸審議会一般規則 (公聴会主義の原則) 第一条 運輸審議会は、事案に関し、できる限り公聴会を開き、公平且つ合理的 則 (公聴会主義の原則) 第一条 運輸審議会は、事案に関し、できる限り公聴会を開き、公平且つ合理的な決定をしなければならない。 (利害関係人) 第五条 国土交通省設置法(平成十一年法律第百号。以下「法」という。)第二十三条の規定による利害関係人とは、当該事案に関し、次の各号のいずれかに該当する者をいう。 一~五(略) 六 前各号に掲げる者のほか、運輸審議会が当該事案に関し特に重大な利害関係を有すると認める者 (軽微な事案) 第十二条 運輸審議会が事案を軽微なものとする認定は、関係官庁の職員の説明を聴取してするものとする。運輸審議会は、事案を軽微なものと認定したときは、当該事案の申請書その他の書類にその旨を表示するものとする。 第十三条 国土交通大臣は、運輸審議会があらかじめ軽微な事案に関する認定基準を定めた場合において、その基準に該当する事案について処分をしたときは、文書をも な事案に関する認定基準を定めた場合において、その基準に該当する事案について処分をしたときは、文書をもつてその旨を運輸審議会に通知するものとする。 (公述の申出) 第三十五条 公聴会において公述しようとする者は、第三十一条第一項の規定により公示した期限までに、公述申込書及び公述書を運輸審議会に提出しなければならない。 この場合において、自己のために公述を申し込んだ者があるときは、その者に関しとりまとめて公述の申出をすることができる。 第三十六条 公述申込書には、公述しようとする者の氏名、住所、職業、年令(法人にあつては、その名称及び住所並びにその法人を代表して公述する者の氏名、職名及び年令)及び当該事案に対する賛否並びに利害関係人にあつては利害関係を説明する事項を記載しなければならない。 ~ (略) (公述人の選定) 第三十七条 運輸審議会は、第三十五条の規定により提出された文書を審査 ~ (略) (公述人の選定) 第三十七条 運輸審議会は、第三十五条の規定により提出された文書を審査して、公述内容が同類であるか、又は事案の範囲外にあると認めるときは、公述申込書に記載された者のうちから公述人を選定することができる。 運輸審議会は、前項の規定による選定を行なつたうえ、さらに、議事の整理上必要があると認めるときは、利害関係人以外の者であつて公述の申出をしたものについては、数を定めて公述人を選定することができる。 この場合において、選定されなかつた者の公述書は、事実の審理の資料に供するものとする。 (略) (別紙2-6) 〇 申請事案等の処理区分について運輸審議会一般規則第13条の規定により運輸審議会が定める基準(平成25年1月15日改正後のもの)港湾,鉄道及び軌道並びに一般乗合旅客自動車運送事業に関する事案で,下記に 係るものは国土交通省設置法15条3項の規定に該当するものと認定する。 ただし,本基準で国土交通省設置法15条3項の規定に該当するものとして処理することとなっている事案についても,利害関係人の異議申立てがなされ又は予想される等,当該事案の内容が重要又は異例と判断されるものにつ 本基準で国土交通省設置法15条3項の規定に該当するものとして処理することとなっている事案についても,利害関係人の異議申立てがなされ又は予想される等,当該事案の内容が重要又は異例と判断されるものについては,この限りでない。 記一港湾(以下略)二鉄道及び軌道 1 (略) 2 上限運賃及び上限料金の設定又は変更認可申請事案(以下略) (一) (略)(二) (略)(三) 消費税又は地方消費税の改定に伴い,運賃・料金区界を変更することなく,適切な増収率の範囲内で転嫁が行われるもの三一般乗合旅客自動車運送事業(以下略) (別紙3)中小民鉄算定要領について 1 「中小民鉄事業者の収入原価算定要領」(中小民鉄算定要領)(乙58)は,上限運賃を決定する基準となる「収入」及び「原価」について,それぞれの 算定方法と手順とを定めている。具体的には,中小民鉄要領においては,上限運賃の改定年度の前年度の実績を基に,原価計算期間である上限運賃の改定年度の翌年度以降3年間(同期間を構成する単年度を「平年度」という。)の将来予測等を基礎として,当該期間における平年度1年ごとの上限運賃による総収入と,総括原価とを算定するための方法及び手順が定められている。 2 上限認可申請旅客運賃の上限認可申請をしようとする中小民鉄事業者は,以下のとおり,中小民鉄算定要領における算定方法及び手順に従って,原価計算期間(3年間)における平年度1年ごとの「上限運賃による総収入」と「総括原価」とを算定し,その結果を「原価計算書」(鉄道事業法施行規則32条3項)にまとめ,原価計 算期間の総括原価の合計と均衡する総収入となる限度での上限運賃を設定し,認可申請をすることとされている。 (1) 原 その結果を「原価計算書」(鉄道事業法施行規則32条3項)にまとめ,原価計 算期間の総括原価の合計と均衡する総収入となる限度での上限運賃を設定し,認可申請をすることとされている。 (1) 原価計算期間における平年度1年ごとの「上限運賃による総収入」と「総括原価」の算定は,次のように行われる。 例えば,平成29年度に旅客運賃の上限変更認可申請を行う場合(すなわ ち,改定年度が平成29年度となる場合)には,当該認可申請を行った鉄道運送事業者において直近の決算が終了した年度である平成28年度が,原価計算期間における収入及び原価を算定する基礎となる「実績年度」となる。そして,この「実績年度」である平成28年度の収入及び原価を基に,原価計算期間に当たる改定年度(平成29年度)の翌年度以降の3年間(平成30年度 〔平年度①〕,平成31年度〔平年度②〕,平成32年度〔平年度③〕)につ いて,鉄道運送事業者は,平年度1年ごとの「上限運賃による総収入」と「総括原価」とを将来予測等に基づき算定し,当該3年間の総括原価の合計と,当該3年間の上限運賃による総収入の合計とが均衡する限度で,旅客運賃の上限変更認可をすることとされている。 (2) 原価計算期間における平年度1年ごとの総括原価を算出するための項目 (乙58)旅客運賃の上限認可申請をしようとする中小民鉄事業者は,原価計算期間における平年度1年ごとに,「適正な原価」を構成する項目である①人件費,②修繕費,③経費,④諸税,⑤減価償却費,⑥営業外費用を算定し,これに「適正な利潤」を構成する項目である⑦配当所要額を加えることにより,「総括原 価」を算出することとされている。 例えば,①人件費については「実績及び事業計画を考慮して適正に算定する」,②修繕費について 潤」を構成する項目である⑦配当所要額を加えることにより,「総括原 価」を算出することとされている。 例えば,①人件費については「実績及び事業計画を考慮して適正に算定する」,②修繕費については「実績を基礎として物価上昇等を考慮して算定する」とされている。また,「適正な利潤」を構成する⑦配当所要額については,「払込資本金に対し10%配当に必要な額の鉄軌道事業分担額とする」と されている。 (3) 原価計算期間における平年度1年ごとの上限運賃による総収入を算出するための項目旅客運賃の上限認可申請を行おうとする中小民鉄事業者は,上限運賃による総収入を構成する項目として①旅客運輸収入,②貨物運輸収入,③運輸雑収, ④営業外収益を算定することとされている。 例えば,①旅客運輸収入については「過去の輸送実績に基づき,過去及び将来の特殊事情を考慮して旅客輸送数量を推計し,実績年度におけるキロ別輸送数量及びキロ別運賃を基礎として算定する」,③運輸雑収については「実績を基礎とし,増収努力を見込んで算定する」とされている。 3 国土交通大臣による審査 (1) 上限運賃による総収入の審査の在り方国土交通大臣は,原価計算書に記載された「収入」(上限運賃による総収入を意味する。)に関して,これを構成する旅客運輸収入,運輸雑収などの各項目について,鉄道運送事業者から提供される資料などを基に,実績を基礎とするなど,中小民鉄算定要領に則った各々の算定方法に基づいて確認した上で, 適正に算定されているかの審査を行うこととされている。 例えば,旅客運輸収入については,まず,算定の前提となる旅客輸送量が過去の輸送実績を基礎として過去及び将来の特殊要因を考慮し算定されていることを確認した上で,当該旅客輸送量に基づき,上 れている。 例えば,旅客運輸収入については,まず,算定の前提となる旅客輸送量が過去の輸送実績を基礎として過去及び将来の特殊要因を考慮し算定されていることを確認した上で,当該旅客輸送量に基づき,上限運賃により適切に算定されているかの審査を行う(なお,貨物運輸収入についてもこれに準ずる審査を行 う。)。 (2) 総括原価の審査の在り方国土交通大臣は,原価計算書に記載された「原価」(総括原価を意味する。)に関して,これを構成する人件費,修繕費,営業外費用,配当所要額などの各項目について,実績及び計画等を基礎とするなど,中小民鉄算定要領に 則った各々の算定方法に基づいて確認した上で,適正に算定されているかの審査を行うこととされている。 例えば,人件費については,適正な人員計画に基づき,実績を基準賃金等,法定福利費,退職給付引当費用に区分する。その上で,基準賃金等については,更に一般職員,新規採用者等に区分した上で,適正な算出基礎となってい ること,昇給率等が適正な基準として算定されていることを確認した上で,審査を行う。 減価償却費については,実績年度末における鉄軌道事業固定資産及び設備投資計画の内容,所要額,工事期間等を基礎として,固定資産ごとの法定耐用年数,償却方法により適切に算定されていることを確認した上で,審査を行う。 配当所要額については,資本金に対し10%配当を行うのに必要となる配当 金及び法人税等について鉄軌道事業の分担額が算定されていること,法人税等については,税法に定める各税率を基準として算定されていることを確認した上で,審査を行う。 以上 (別紙5)争点に関する当事者の主張の要旨 1 争点(1)(原告適格の有無)について(原告らの主張の要旨 て算定されていることを確認した上で,審査を行う。 以上 (別紙5)争点に関する当事者の主張の要旨 1 争点(1)(原告適格の有無)について(原告らの主張の要旨)(1) 以下の点からは,鉄道事業法は,少なくとも居住地から職場や学校等へ の日々の通勤や通学等の手段として反復継続して日常的に鉄道を利用している者が有する具体的利益を,個別に保護する趣旨を有しているというべきであり,かかる者は,旅客運賃の上限変更認可処分の取消しを求めるにつき,原告適格を有する。 ア平成11年法改正前の鉄道事業法は,目的規定(1条)に,「鉄道等の 利用者の利益」の保護を明記し,同法16条(以下「旧16条」という。)2項3号は,旅客運賃等の認可において「旅客又は貨物の運賃及び料金を負担する能力にかんがみ,旅客又は荷主が当該事業を利用することを困難にするおそれがないものであること」を定めている。 イ現行の鉄道事業法においても,旅客運賃の上限変更認可処分の考え方 は,上記アと変わらないものというべきであり,また同鉄道事業法16条5項1号及び23条1項1号は,利用者の利益を保護するために,各号所定の場合に国土交通大臣に旅客運賃又はその上限の変更を命じる権限を与えているものである。 ウまた,国土交通大臣が旅客運賃の上限変更認可処分をしようするとき に,運輸審議会に諮らなければならない(鉄道事業法64条の2)ところ,公聴会の請求をすることができる利害関係人に,利用者が含まれているなど,鉄道利用者に手続関与の機会が付与されている。 エ旅客運賃の上限変更認可処分が違法にされた場合,通勤や通学等の手段として当該鉄道を日常的に利用する者は,当該鉄道を日常的に利用するこ とが困難になり,仕事や居住場所 会が付与されている。 エ旅客運賃の上限変更認可処分が違法にされた場合,通勤や通学等の手段として当該鉄道を日常的に利用する者は,当該鉄道を日常的に利用するこ とが困難になり,仕事や居住場所といった日常生活の基盤を揺るがすよう な重大な損害が生じかねない。そのような利益は,具体的であり,専ら一般的公益の中に吸収解消させることはできない。 (2) 原告Aは,平成30年4月以降,週1~2回(月4~8回)程度,東京都内の会社の寮から,北総線等を利用してα市内の本件塾に通っており,旅客運賃の上限変更認可処分が違法にされた場合,日常的に北総鉄道を利用す ることができなくなり,本件塾の講師を務めることができなくなるところ,かかる不利益は,日常生活の基盤を揺るがすような重大な損害に当たるというべきである。したがって,原告Aは,本件各処分の取消しを求める法律上の利益を有するというべきである。 また,原告Dは,本件各処分当時,原告A及びBの通学定期券代の一部を 負担し,自らもパスモや回数券を利用して,本件塾で使用する教材の選択や購入等のために北総線を利用しており,原告A及びBは平成30年3月に大学を卒業したものの,原告適格の判断基準時である口頭弁論終結時には,Cの通学定期券代を負担していたのであるから,原告Aと同様に本件各処分の取消しを求める原告適格を有するというべきである。 (被告の主張の要旨)(1) 以下の点からは,鉄道事業法は,不特定多数者である鉄道利用者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめているのであって,かかる不利益が帰属する個々の鉄道利用者の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものではない。 ア鉄道事業法1条が同法の目的について「鉄道等の利用者の利益を保護 いるのであって,かかる不利益が帰属する個々の鉄道利用者の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものではない。 ア鉄道事業法1条が同法の目的について「鉄道等の利用者の利益を保護する」と規定した趣旨は,「鉄道事業等の運営を適正かつ合理的なものとすること」による結果として実現される「公共の福祉を増進すること」の内容を例示したものにすぎず,同法16条1項及び2項は,鉄道事業が公共性の高い事業であること等に鑑み,旅客運賃に関して,その上限決定につ いては国土交通大臣による認可にかからしめることにより,鉄道事業者の 経営の安定及び合理化を図り,国民に対する安定的な運送サービスの提供を実現することで,公益の保護を図ることを趣旨とするものである。鉄道事業法は,平成11年改正に伴い,運賃の認可制度に関して,鉄道事業者の自主性を尊重する趣旨から,それまでの運賃認可制度から上限認可制度に変更して規制を緩和するとともに,運賃変更命令制度を導入するほか, 改正前鉄道事業法の運賃認可の要件であった「旅客又は貨物の運賃及び料金を負担する能力にかんがみ,旅客又は荷主が当該事業を利用することを困難にするおそれがないものであること」(旧16条2項3号)が削除されたところ,かかる経緯からすれば,平成11年改正後の鉄道事業法においては,不特定多数者としての鉄道利用者の利益,すなわち公益を保護す ることによって,その反射的利益として個々の利用者の利益を保護するという立法政策を採用することが,より明確になったというべきである。 イ旅客運賃等の変更命令を定める鉄道事業法16条5項1号は,運賃等が様々な鉄道利用者に対してあまねく公平に設定されることを実現するためのものであり,また旅客運賃等の変更命令を定める同法23条1項1号 旅客運賃等の変更命令を定める鉄道事業法16条5項1号は,運賃等が様々な鉄道利用者に対してあまねく公平に設定されることを実現するためのものであり,また旅客運賃等の変更命令を定める同法23条1項1号 は,その要件が「利用者の利便その他公共の利益を阻害している事実」と定められている。したがって,これらの規定は,いずれも公益の保護を趣旨・目的とするものである。 ウ 「利用者その他の者のうち(中略)当該事案に関し特に重大な利害関係を有する者」と規定する鉄道事業法施行規則73条3号は,鉄道事業法6 4条に基づき国土交通大臣の権限委任を受けた地方運輸局長が行う意見の聴取(同法65条)に係る規定である。運輸審議会に公聴会の開催を申請することができる「利害関係人」(国土交通省設置法23条)の範囲を規定している運輸審議会一般規則5条は,6号において「運輸審議会が当該事案に関し特に重大な利害関係を有すると認める者」を掲げていたが,鉄 道の利用者は列挙していなかったほか,現在の運輸審議会一般規則におい ても,鉄道利用者であれば直ちに同規則5条の利害関係人に該当するというものでもない。また,一般の鉄道利用者による公述が不可欠なものとされているわけでもない(同規則35条~37条参照)。 エ違法な旅客運賃の上限変更認可処分によって侵害される鉄道利用者の利益は,日常生活ないし社会・経済生活上の利益にとどまるのであって,生 命,身体,健康等の利益と比較すれば,要保護性が低いものであり,かかる利益について処分する際に保護の対象とするか否かについては,立法府の裁量に委ねられることになるところ,そのような利益を保護するような手続規定は見当たらない。運賃は,鉄道利用者であればあまねく公平に負担する公共料金であるから,違法な旅客運賃の上 については,立法府の裁量に委ねられることになるところ,そのような利益を保護するような手続規定は見当たらない。運賃は,鉄道利用者であればあまねく公平に負担する公共料金であるから,違法な旅客運賃の上限変更認可処分がされた 場合に,侵害される鉄道利用者の利益(経済的利益)の態様及び程度はいずれの鉄道利用者においても均一であり,特定の鉄道利用者において殊更に利益侵害の態様及び程度が大きいということはない。定期券購入者など特定の利用形態による鉄道利用者の利益について,一般の鉄道利用者の利益と区別して特にその保護を図った規定は見当たらず,理論的には無限定 に広がる鉄道利用者の中から,個別的に保護されているとする一定範囲の者を切り出すことは,極めて困難である。 また,違法な旅客運賃の上限変更認可処分がされたとしても,実際の運賃は,その上限の範囲内で定められるものであり,違法な旅客運賃上限額が直ちに運賃として定められるとは限らず,鉄道利用者の利益が侵害 されるとは限らない。 (2)ア仮に,居住地から職場や学校等への日々の通勤や通学等の手段として反復継続して日常的に鉄道を利用している者の利益が,法律上保護された利益に当たるとしても,原告Aは平成30年3月に大学を卒業し,それ以降,平日は会社の寮に居住し,会社に通勤しているから,仮に原告Aが違 法な旅客運賃の上限変更認可処分により本件塾の講師をすることができな くなったとしても,それが日常生活の基盤を揺るがすような重大な損害に当たるものではない。 原告D自身の北総線の利用状況は,同原告の陳述書(甲72)を前提としても月に合計5~6回程度に過ぎず,その行先はまちまちであるから,北総線を反復継続して日常的に鉄道を利用しているとはいえない。 また,原告Dが息子 利用状況は,同原告の陳述書(甲72)を前提としても月に合計5~6回程度に過ぎず,その行先はまちまちであるから,北総線を反復継続して日常的に鉄道を利用しているとはいえない。 また,原告Dが息子の通学定期を負担しているとしても,原告適格が認められるものではない上,同原告が原告Aの通学定期券代を負担していたかは不明であり,Cの通学定期券代を負担するようになったのは,本件各処分がされた後である。 よって,原告らは,本件各処分の取消しを求める原告適格を有しない。 イなお,北総鉄道の発売する乗車券を所持する旅客は,京成高砂駅から印旛日本医大駅の間において,北総鉄道の列車及び京成電鉄の列車の双方に乗車することができるが,本件運賃帰属合意によれば,当該乗車券の収入は全て北総鉄道に帰属することになる。そうすると,仮に原告らがその区間の一部区間において京成電鉄の列車を利用しているとしても,原告らが 購入した乗車券の収入は京成電鉄に帰属しないため,本件京成処分により原告らが害される経済的利益はそもそも存在しないこととなる。かかる意味においても,原告らは,本件京成処分の取消しを求めることについての原告適格を有しないというべきである。 2 争点(2)(本件各処分の適法性)について (被告の主張の要旨)(1) 鉄道事業法16条2項は,旅客運賃の上限変更認可について「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないもの」という抽象的,概括的な要件を定めているところ,この判断に当たっては,鉄道事業の適正かつ合理的な運営の確保のみならず,不当な運賃の設定等によ る一般鉄道利用者の利益侵害の排除という公益に配慮することを要するた め,鉄道運輸行政に精通し,専門的かつ技術的な知識経験を有する 的な運営の確保のみならず,不当な運賃の設定等によ る一般鉄道利用者の利益侵害の排除という公益に配慮することを要するた め,鉄道運輸行政に精通し,専門的かつ技術的な知識経験を有する国土交通大臣に裁量権が認められているというべきであるから,旅客運賃の上限変更認可の判断において,国土交通大臣に与えられた裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があった場合に限り,当該処分は違法となる。 この点,本件各申請は,いずれも,平成26年消費税率引上げに伴う旅客 運賃に対する消費税の転嫁のみを変更事由とするものであるから,本件各申請を受けた国土交通大臣は,当該変更事由のみを審査して認可の可否の判断をしなければならず,申請の範囲を超えて,消費税率引上げ前の上限運賃の妥当性について審査することは許されないというべきである。 そして,消費税は,最終的には消費者が負担すべき税であり,旅客運送事 業者が消費税率引上げによる増税部分を適正な範囲において運賃に転嫁することは当然に認められるべきものであるから,消費税率の引上げに伴う鉄道運賃に対する消費税の転嫁のみを変更事由として上限変更認可申請が行われた場合,当該申請に係る上限運賃が消費税率の引上げにより許容された増収の範囲内(本件では105分の108以内の増収)であれば,引上げ後の消 費税に該当する部分を控除した税抜運賃額により算定される収入が,変更前の税抜運賃額により算定される収入を超えることがない上,変更前の上限運賃については,既に一度,収入原価算定要領に基づく実質的な審査を経ているから,そのような申請について鉄道事業法16条2項に定める「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないもの」と して認可する旨の本件処理方針は,短期間に多数の審査を迅速かつ そのような申請について鉄道事業法16条2項に定める「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないもの」と して認可する旨の本件処理方針は,短期間に多数の審査を迅速かつ適正に行うという観点からしても,その審査方法に特段不合理な点は見当たらないから,本件各処分に当たって,本件処理方針に基づき,収入原価算定要領に基づく審査をせずに,簡易な審査をした国土交通大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用はない。 (2) 本件各申請について,仮に収入原価算定要領に基づく審査をしなければ ならなかったとしても,本件各申請当時の北総線の上限運賃は,鉄道事業法16条2項の要件を満たしていたというべきである。 ア北総鉄道に対しては,これまで千葉県をはじめとする関係者により累次の経営支援策が講じられており,本件北総処分直前の平成24年3月に,借入金の無利子据置期間の延長,金利の引下げや債務返済期間の延長等の 支援が実施され,平成25年度においても,北総鉄道は200億円を超える多額の累積損失を抱えるなど,財務体質は脆弱であった。北総鉄道の収益をその利用者に還元する方法については,会社の経営判断に係る問題であり,収益が上がったからといって直ちに旅客運賃を値下げしなければならないということにはならない。 イ鉄道事業法上,線路使用料等の鉄道線路の使用条件は原則として鉄道事業者相互間の調整に委ねられており(鉄道事業法15条3項),使用条件の設定内容は,同法16条2項の要件適合性に直接的な影響を及ぼすものではない。また,千葉ニュータウン鉄道区間における北総鉄道の収支が恒常的な赤字となっていることや北総鉄道が京成電鉄から受け取る線路使用 料額が過小であるとの原告らの主張は誤りであり,本件北総 ではない。また,千葉ニュータウン鉄道区間における北総鉄道の収支が恒常的な赤字となっていることや北総鉄道が京成電鉄から受け取る線路使用 料額が過小であるとの原告らの主張は誤りであり,本件北総処分当時の北総鉄道の収支が能率的な経営によるものではなかったとはいえない。 ウ中小民鉄算定要領は,経営効率化を促すものとなっていることなどからすれば,不適切なものではなく,同要領を適用すれば,本件北総申請当時の北総線の上限運賃は,鉄道事業法16条2項の要件を満たしていなかっ たとはいえない。また,本件北総申請直前の上限運賃が適正であったことは,それまで同法23条1項の事業改善命令を発出すべき不適切な状況が認められていなかったことからも,担保されているといえる。 エ京成電鉄が運行する成田空港線については,平成22年に新たに開業した路線であり,その整備に係る資本費負担が巨額であることなどから,受 益と負担の公平化の原則に基づき,当該路線の総括原価を超えない範囲 で,京成本線等とは異なる運賃を設定することとしたものであり,旅客の無用の混乱を避けるために北総線の現行運賃と同一の運賃となるように設定されたことに問題はないというべきである。 (3) 本件各処分にあたり,運輸審議会への諮問を経ていないことは手続上の瑕疵に当たるものではない。 消費税率引上げ相当分を運賃に転嫁することのみを理由とする旅客運賃の上限変更認可申請については,審議会基準において,「利害関係人の異議申立てがなされ又は予想される等,当該事案の内容が重要又は異例と判断されるもの」に当たらない限り,「運輸審議会が軽微なものと認めるもの」(国土交通省設置法15条3項)とされ,運輸審議会に諮らないで国土交通大臣 が処分等を行うことができるところ, は異例と判断されるもの」に当たらない限り,「運輸審議会が軽微なものと認めるもの」(国土交通省設置法15条3項)とされ,運輸審議会に諮らないで国土交通大臣 が処分等を行うことができるところ,運輸審議会は,そのような申請が消費税の転嫁を理由とする定型的なものであることから,軽微なものと認めたものである。 (原告らの主張の要旨)(1) 本件各処分は,本件処理方針に従い,国土交通大臣が,平成26年消費 税率引上げにより許容された増収の範囲内かどうかのみを審査したものであるところ,そのような簡易な審査のみで鉄道事業法16条2項の要件を満たしていると判断するためには,その前提として,申請前の上限運賃が同項の要件を満たしている必要がある。ところが,以下の点等からすれば,北総線及び成田空港線の申請前の上限運賃は,上記要件を満たしていなかったか ら,簡易な審査によりされた本件各処分は違法である。 ア北総鉄道は,平成13年3月期以降,本件北総処分直前の平成25年3月期までの間,13期連続で経常収支が黒字であり,その額は40億円を超え,利益率は28.3%と同業他社よりも格段に高くなっていることから,平成10年北総認可処分時に比べ,北総鉄道の損益は大きく改善して いたといえる。 イ本件北総処分当時の北総鉄道の収支は,能率的な経営によるものとはいえない。北総鉄道は,千葉ニュータウン鉄道区間につき,千葉ニュータウン鉄道から負担金を受領しているものの,収益の全額を千葉ニュータウン鉄道に支払っているため,収支は恒常的な赤字となっている。また,北総鉄道が京成電鉄から受け取る線路使用料は,京成電鉄が行う高速運転に伴 う設備の運用,維持管理が京成電鉄の負担とされていないことなどから,過小である。北総鉄道が能率的な経 となっている。また,北総鉄道が京成電鉄から受け取る線路使用料は,京成電鉄が行う高速運転に伴 う設備の運用,維持管理が京成電鉄の負担とされていないことなどから,過小である。北総鉄道が能率的な経営をしていれば,収支は大幅に改善するものと推定される。 ウ北総鉄道に適用される中小民鉄算定要領は,経営効率化に向けた動機付けという機能をほとんど有しない費用積上げ方式を採用していることなど からすれば,基準として不適切なものであるが,仮にこれにより審査したとしても,本件北総処分直前の北総線の上限運賃が,鉄道事業法16条2項の要件を満たしているとはいえないことは,北総鉄道の損益状況を見れば明らかである。 エ成田空港線の北総線区間の上限運賃は,北総鉄道のそれと同一であると ころ,北総鉄道と京成電鉄は経営形態や経営条件のみならず,車両の運行速度及び方法や使用する車両の種類が異なることからすれば,原価の額が同額になることはありえないから,成田空港線の上限運賃は鉄道事業法16条2項の要件とは関係なく定められているものといえる。また,成田空港線の上限運賃が,北総線のそれと同一とするのであれば,成田空港線に ついて区分経理をしなければならないが,京成電鉄はそれをしていない。 (2) 本件各処分は,運輸審議会への諮問を経ずにされたものであり,鉄道事業法64条の2第1号に違反し,違法である。 本件各処分当時,北総線及び成田空港線の上限運賃について訴訟が提起されていたことからすれば,本件各処分がされれば,取消訴訟が提起されるこ とが予想できたといえる。したがって,審議会基準によれば,運輸審議会へ の諮問を要しない場合に当たらない。 以上 できたといえる。したがって,審議会基準によれば,運輸審議会への諮問を要しない場合に当たらない。 以上
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